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特許7592688弦楽器において縦波を低減するためのサドル及びブリッジ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】弦楽器において縦波を低減するためのサドル及びブリッジ
(51)【国際特許分類】
   G10D 3/04 20200101AFI20241125BHJP
   G10D 3/22 20200101ALI20241125BHJP
   G10D 1/08 20060101ALI20241125BHJP
【FI】
G10D3/04
G10D3/22
G10D1/08
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2022503552
(86)(22)【出願日】2020-07-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-10
(86)【国際出願番号】 US2020043006
(87)【国際公開番号】W WO2021016313
(87)【国際公開日】2021-01-28
【審査請求日】2023-07-13
(31)【優先権主張番号】62/876,217
(32)【優先日】2019-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516315845
【氏名又は名称】テイラー - リスタグ、インコーポレイテッド ドゥーイング ビジネス アズ テイラー ギターズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パワーズ、アンドリュー テイラー
【審査官】土井 悠生
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-125686(JP,U)
【文献】特開2007-033806(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0160634(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0007753(US,A1)
【文献】特開昭61-245191(JP,A)
【文献】実開昭56-066999(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2003/0019349(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10D 1/00-3/22
G10H 1/00-7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の材料を含む弦接触面と、
前記弦接触面の概して反対側で、前記第1の材料を含むサドル端面と、
前記第1の材料とは異なる振動吸収性材料を含む2つの対向する側面と
前記2つの対向する側面に対して概して垂直であり且つ前記振動吸収性材料を含む2つの追加の対向する側面と
を備える弦楽器のサドルであって、
前記振動吸収性材料は、前記弦楽器の弦によって生成される縦波を減衰させる役割があり、
前記振動吸収性材料は、前記弦に接触せず、
前記第1の材料は、前記弦によって生成される横波が前記弦接触面及び前記サドル端面を介して前記弦楽器の本体に伝達することを可能にする役割がある、サドル。
【請求項2】
前記2つの対向する側面の第1の側面は、
前記第1の材料を含む少なくとも1つの第1のセクションと、
前記振動吸収性材料を含む複数の第2のセクションと
を備える、請求項1に記載のサドル。
【請求項3】
前記複数の第2のセクションのうちの2つの第2のセクションは前記第1のセクションによって離隔されている、請求項2に記載のサドル。
【請求項4】
前記第1の側面は前記サドルのピン側である、請求項2に記載のサドル。
【請求項5】
前記振動吸収性材料は、前記2つの対向する側面の少なくとも1つの側面上の前記第1の材料におけるくぼみ内に配置されている、請求項1に記載のサドル。
【請求項6】
前記振動吸収性材料の外面は、前記少なくとも1つの側面上の前記第1の材料の外面と概して同一平面である、請求項5に記載のサドル。
【請求項7】
前記振動吸収性材料は、以下に列挙する、ゴム、シリコン、プラスチック、又は発泡体から選択される、請求項1に記載のサドル。
【請求項8】
前記振動吸収性材料は、前記第1の材料よりも低い密度を有する、請求項1に記載のサドル。
【請求項9】
前記振動吸収性材料は、前記2つの対向する側面及び前記2つの追加の対向する側面の周りに連続して延在する、請求項に記載のサドル。
【請求項10】
ネックと、
本体と、
上部と、
前記上部に取り付けられたブリッジであって、スロット端面及び2つの側壁を有するスロットを含むブリッジと、
前記スロット内に少なくとも部分的に配置されたサドルであって、第1の材料を含む弦接触面と、前記弦接触面の概して反対側で、前記第1の材料を含むサドル端面と、振動吸収性材料を含む2つの対向する側面とを有するサドルと
を備えるギターであって、
前記振動吸収性材料は、前記2つの対向する側面の少なくとも1つの側面上の前記第1の材料におけるくぼみ内に配置され、前記振動吸収性材料の外面は、前記少なくとも1つの側面上の前記第1の材料の外面と概して同一平面であり、
前記振動吸収性材料は、前記ギターの弦によって生成される縦波を減衰させる役割があり、
前記振動吸収性材料は、前記弦に接触せず、
前記第1の材料は、前記弦によって生成される横波が前記弦接触面及び前記サドル端面を介して前記本体に伝達することを可能にする役割がある、ギター。
【請求項11】
前記スロットの側壁上に位置する少なくとも1つの第1のトランスデューサであって、前記サドルの前記2つの対向する側面のうちの側面のセクションと接触しているトランスデューサ接触面を有する第1のトランスデューサをさらに備え、前記側面の前記セクションは前記振動吸収性材料とは異なる材料を含む、請求項1に記載のギター。
【請求項12】
前記2つの対向する側面の第1の側面は、
前記第1の材料を含む少なくとも1つの第1のセクションと、
前記振動吸収性材料を含む複数の第2のセクションと
を含む、請求項1に記載のギター。
【請求項13】
前記複数の第2のセクションのうちの2つの第2のセクションは前記第1のセクションによって離隔されている、請求項12に記載のギター。
【請求項14】
前記第1の側面は前記サドルのピン側である、請求項12に記載のギター。
【請求項15】
前記振動吸収性材料は、以下に列挙する、ゴム、シリコン、プラスチック、又は発泡体から選択される、請求項1に記載のギター。
【請求項16】
前記振動吸収性材料は、前記第1の材料よりも低い密度を有する、請求項1に記載のギター。
【請求項17】
スロットを備えるブリッジであって、前記スロットは、
スロット端面と、
2つの側壁と
を含み、前記2つの側壁は振動吸収性材料を含み、サドルが前記スロット内に少なくとも部分的に配置され、前記サドルは、第1の材料を含む弦接触面と、前記弦接触面の概して反対側で、前記第1の材料を含むサドル端面と、前記2つの側壁と接触している2つの対向する側面とを有し、
前記スロットは、前記2つの側壁に対して概して垂直である2つの追加の側壁をさらに含み、
前記2つの追加の側壁は、前記振動吸収性材料を含み、前記サドルは、前記2つの対向する側面に対して概して垂直であり且つ前記2つの追加の側壁と接触している2つの追加の対向する側面をさらに含み、
前記振動吸収性材料は、弦楽器の弦によって生成される縦波を減衰させる役割があり、
前記振動吸収性材料は、前記弦に接触せず、
前記第1の材料は、前記弦によって生成される横波が前記弦接触面及び前記サドル端面を介して前記弦楽器の本体に伝達することを可能にする役割がある、ブリッジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施例は、概して、弦楽器の構成要素の構成及び構造に関する。特に、本開示は弦楽器において縦波を低減するためのサドル及びブリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
概してギターなどの弦楽器(弦を有する楽器と称することもある)は、一般に1つ以上の木、又は同様の材料から作られる固体又は中空の共振体で構成される。この楽器本体には一般にネックと称される細い延長部が取り付けられており、この細い延長部に対して、弦の張力を制御するために使用される調節可能なペグで固定された複数の弦が取り付けられる。弦の遠位端は、弦の振動を増幅し且つ振動を可聴にするために、楽器の本体に弦の振動を伝達するブリッジに取り付けられる。
【0003】
弦の振動長は、弦の長さに垂直である2つの固定された接触点、調節可能な固定ペグ付近の1つの点、及びブリッジ上の1つの点によって決定される。弦は、これら2つの接触点でぴんと張られる。このブリッジ上の接触点は、通常、弦を置く硬い材料を含み、しばしば、天然骨、象牙、又は密度の高い合成材料で作られ、ギターの硬い木のブリッジに形成された細長い開口にしっかりと嵌合するサドルである。ミュージシャンは、これらの弦を動かすように弦をかき鳴らし又は爪弾いて音を出す。演奏音のピッチは、ネックに対して弦を止めることによって決定されてスピーキング又は振動長さ及び対応する周波数を変える。
【0004】
ギターのような楽器の弦が振動すると、その動きは、当業者によって横波動及び縦波動と称される、2つの波形の和と説明することができる。横波動は、弦が静止しているときに、弦の軸線に対して垂直又は横方向に振動する弦のムーブメントを特徴とする。縦波動は弦の軸線に平行に移動する。ギターや他の弦楽器では、横波は主に可聴音のピッチによる動きである。横方向の弦の動きの周波数は、弦の張力、並びにアクティブなスピーキング長さを変えることによって意図的に調整することができる。縦波は、通常、横波よりも高い速度及び周波数で移動し、そのピッチ又は周波数が張力によって大幅に変えることができないため、調整することがより困難である。縦波は、材料の密度又は柔軟性を変更するように弦自体の組成を変えることによって、又は弦の全体的な長さを変えることによって調整することができる。
【0005】
弦楽器を作る際に克服すべき課題は、2つの振動の動きが互いに干渉し且つ所望の音符の倍音を破壊することを防ぐために弦の長さ、大きさ、重量、剛性、張力及びピッチを介して横方向及び縦方向の動きのバランスをとることである。
【0006】
楽器に電気機械ピックアップ・センサが嵌合されると、縦波動は楽器を音楽的に機能させることに対して特に重要且つ有害である。圧電結晶が、このような弦楽器を増幅する際にしばしば採用される。これらの結晶は振動に非常に敏感であり、ブリッジに設置されたサドル片の振動の動きに反応する。弦楽器のブリッジに設置されているとき、電気機械ピックアップ・システムは、弦の縦波動を受けること(このことにより、横波動によって与えられた音楽周波数の望ましくない共振周波数及び倍音の破壊が生じる)に対して特に敏感である。
【0007】
縦波と横波とのバランスをとるための既存の技術は弦の組成及び/又は長さを変えることを含む。1つの方法はHarold Conklin(特許文献1)によって教示され、ピアノ弦のアクティブな振動長は、横波動及び縦波動が所定の音楽的に心地よい倍音関係において互いに関連する周波数を有するように決められる。
【0008】
別の既存の方法はJames Ellis(特許文献2)によって教示され、縦波形態及び横波形態は、縦波の共振周波数が横波によって干渉され取り消されるようにピアノ・ハンマー又はチェンバロ・ピックから弦組成又はアーティキュレーション点を変えることによって決定される。
【0009】
しかしながら、これらの既存の技術はギターに採用することができない。1つ以上の個々の弦を使用して各音を出すピアノとは異なり、ギターは、プレイヤーが弦をフレットまで押し下げて横方向振動弦部分の長さを変え、縦弦振動と横弦振動との関係を連続的に変えて以前に教示された方法の使用を防ぐことによって、各弦で多くの音を出すことが期待される。したがって、ギター及び他のフレットを有する弦楽器において縦波形態の可聴効果を低減するための技術が当業において必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国特許第3523480号明細書
【文献】米国特許第5874685号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示は、概して、弦楽器、特にギターの構成要素に関する。
【0012】
一実施例は、第1の材料を含む弦接触面と、弦接触面の概して反対側で、第1の材料を含むサドル端面と、第1の材料とは異なる振動吸収性材料を含む2つの対向する側面とを備える、弦楽器のサドルを提供する。
【0013】
別の実施例は、ネックと、本体と、上部と、上部に取り付けられたブリッジであって、スロット端面及び2つの側壁を有するスロットを含むブリッジと、スロット内に少なくとも部分的に配置されたサドルであって、弦接触面と、該弦接触面の概して反対側のサドル端面と、振動吸収性材料を含む2つの対向する側面とを有するサドルと、を備えるギターを提供する。
【0014】
別の実施例は、スロットを備え、該スロットは、スロット端面と、2つの側壁と、を含み、2つの側壁は振動吸収性材料を含み、サドルがスロット内に少なくとも部分的に配置され、サドルは、弦接触面と、弦接触面の概して反対側のサドル端面と、2つの側壁と接触している2つの対向する側面とを有する、ブリッジを提供する。
【0015】
本開示の上記の列挙された特徴を詳細に理解できるように、開示のより具体的な説明は、上述のように簡単に要約しているが、実施例を参照することができ、その一部が添付図面に示される。しかしながら、添付図面は、この開示の通常の実施例のみを示すので、その範囲を限定するものとは考えられず、本開示は他の同等に有効な実施例を認めてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1A】従来技術のサドルの図である。
図1B】従来技術のサドルの図である。
図1C】従来技術のサドルの図である。
図1D】従来技術のサドルの図である。
図1E】従来技術のサドルの図である。
図1F】従来技術のサドルの図である。
図1G】従来技術のサドルの図である。
図2A】本開示の実施例によるサドルの図である。
図2B】本開示の実施例によるサドルの図である。
図2C】本開示の実施例によるサドルの図である。
図2D】本開示の実施例によるサドルの図である。
図2E】本開示の実施例によるサドルの図である。
図2F】本開示の実施例によるサドルの図である。
図2G】本開示の実施例によるサドルの図である。
図3A】本開示の実施例が実施され得るブリッジを示す。
図3B】ブリッジ内に配置された本開示の実施例によるサドルを示す。
図4A】本開示の他の実施例によるサドルの図である。
図4B】本開示の他の実施例によるサドルの図である。
図4C】本開示の他の実施例によるサドルの図である。
図4D】本開示の他の実施例によるサドルの図である。
図4E】本開示の他の実施例によるサドルの図である。
図4F】本開示の他の実施例によるサドルの図である。
図4G】本開示の他の実施例によるサドルの図である。
図5A】本開示の実施例が実施され得るピックアップ・システムと結合されたブリッジを示す。
図5B】ピックアップ・システムと結合されたブリッジ内に配置された本開示の実施例によるサドルを示す。
図6】ブリッジ内に配置された本開示の実施例によるサドルを示す。
図7A】本開示の実施例によるブリッジを示す。
図7B】本開示の実施例によるブリッジ内に配置されたサドルを示す。
図8】本開示の実施例が実施され得るギターを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示は弦楽器において縦波を低減するためのサドル及びブリッジに関する。
【0018】
本開示の実施例は、弦が弦楽器上で、その上部に置かれているブリッジ内に挿入されると、所望の横波動に干渉することを防ぐために縦波を減衰させるように修正されたサドル片を含む。本開示の他の実施例は、サドル片が挿入され、縦波を減衰させるように修正されたブリッジを含む。
【0019】
図1A~1Gは弦楽器の従来技術のサドル100の異なる図を示す。図1Aは底面図、図1Bは等角図、図1Cは側面図、図1Dは別の側面図、図1Eは別の側面図、図1Fは別の側面図、そして図1Gはサドル100の上面図である。
【0020】
図示されるように、サドル100は、弦が通常置かれている弦接触面102を含む。サドル100は、サドル100が挿入されるブリッジ上のスロットの底部に概して接触するサドル端面104も含む。サドル100はまた、2つの対向する側面106及び108を含み、これらはサドル100が挿入されるブリッジ上のスロットの側壁に概して接触する。サドル100はまた、2つの追加側面152及び154を含み、これらはサドル100が挿入されるブリッジのスロットの追加の側壁に概して接触する。
【0021】
サドル100は、通常、天然骨、象牙、又は密度の高い合成材料などの硬い材料で作られ、ブリッジのスロット内にしっかりと嵌合される。弦楽器の弦の振動は、通常、弦の振動を増幅し且つ振動を可聴にするためにサドル100を介してブリッジによって楽器の本体に伝達される。しかしながら、従来技術のサドル100で、望ましくない縦波が所望の横波とともに楽器の本体に伝達される。
【0022】
図2A~2Gは本開示の実施例による弦楽器において縦波を低減するためのサドル200の様々な図を示す。図2Aは底面図であり、図2Bは等角図であり、図2Cは側面図であり、図2Dは別の側面図であり、図2Eは別の側面図であり、図2Fは別の側面図であり、そして図2Gはサドル200の上面図である。
【0023】
図1のサドル100と同様に、サドル200は、弦が通常、置かれている弦接触面202を含む。サドル200は、サドル200が挿入されるブリッジ上のスロットの底部に概して接触するサドル端面204も含む。サドル200はまた、2つの対向する側面206及び208を含み、これらはサドル200が挿入されるブリッジ上のスロットの側壁に概して接触する。サドル200はまた、2つの追加側面252及び254を含み、これらはサドル200が挿入されるブリッジのスロットの追加側壁に概して接触する。サドル200は、弦楽器の弦のアクティブなスピーキング長さの終端としての役割がある。
【0024】
サドル100のように、サドル200は、概していうと、天然骨、象牙、又は密度の高い合成材料などの硬くて密度の高い材料で作られている。しかしながら、サドル100とは異なり、サドル200は、その側面206、208、252、及び254の部分210、220、230、及び240に振動吸収性材料を含むように修正された。本明細書で使用される場合、振動吸収性材料は、ゴム、シリコーン、発泡体、プラスチック、又は他の型の振動吸収性材料を含んでもよい。より概していうと、振動吸収性材料は、サドル200の残りの部分が作られる材料よりも低い密度を有する。
【0025】
振動吸収性材料は、様々な方法でサドル200に添加してもよい。いくつかの実施例において、各面206、208、252、及び254の部分210、220、230、及び240は、サドル・スロットの側壁に接触する場所で切断又は粉砕され、振動吸収性材料で充填又はオーバーモールドされる。部分210、220、230、及び240における振動吸収性材料の外面は、サドル200の側面206、208、252、及び254の残りの部分の硬い材料の外面と概して同一平面である。代替の実施例において、振動吸収性材料は、サドル200の元の硬い材料のいずれかを切断又は粉砕することなく部分210、220、230、及び240に重ねてもよい。いくつかの実施例では、振動吸収性材料は、サドル200の周囲に連続的に延在して部分206、208、252、及び254を覆う。
【0026】
サドル200が弦楽器のブリッジのスロット内に挿入されると、部分220における振動吸収性材料は弦によって生成される縦波を減衰させる役割がある一方で、横波を、振動吸収性材料を含まないサドル端面204を介して、弦楽器の本体に伝達させることができる。
【0027】
図3Aは、弦楽器のブリッジ300を示す。ブリッジ300は、概していうと、硬い木で作られているが、金属又はプラスチックなどの弦と共振する他の材料から作られてもよい。
【0028】
ブリッジ300は、サドル用に設計されたスロット310を有する。サドルは、通常、スロット310内にしっかりと嵌合し、それにより弦からの振動がサドルからブリッジ300に伝達される。ブリッジ300は、概していうと、弦楽器に取り付けられ、振動はブリッジ300から弦楽器の本体に伝達される。いくつかの実施例では、図5A及び5Bに関して以下に説明するように、ブリッジ300にはピックアップが設けられてもよい。
【0029】
図3Bは、ブリッジ300内に配置された本開示の実施例によるサドル200を示す。例えば、サドル200は図2のサドル200であってもよく、ブリッジ300は図3Aのブリッジ300であってもよい。
【0030】
サドル200はブリッジ300のスロット310内にしっかりと嵌合される。サドル200の図2Aの底面又はサドル端面204はブリッジ310の床に置かれ、振動吸収性材料を含まず、それによって密度の高いサドル材料とブリッジの硬い表面との間の直接接触を維持する。サドル200の図2B、2C、2D、2E、及び2Fの部分210、220、230、及び240はスロット310の側壁に接触している。特定の実施例では、サドル200は、図2A、2B、2E、及び2Fの部分210、220、230、及び240がスロット310の上縁辺の少なくとも少し上方に延在するように、スロット310内に嵌合される。このように、振動吸収性材料は、スロット310の側壁に接触するサドル200の側面の全ての部分を覆う。サドル200の図2Cの弦接触面202は、弦楽器の弦が概して置かれているが、スロット310から上方に突出している。
【0031】
このようにサドル200及びブリッジ300が連結されると、弦の横方向の動きは、スロット310の床を介して妨げられていない弦楽器の上部に容易に伝達される。しかしながら、サドル200の側面の振動吸収性材料は、望ましくない縦波動、並びに楽器の音響音に干渉する可能性のある他の望ましくない高周波振動を吸収且つ減衰する役割がある。このように、サドル200を使用することによってサドルが配置される弦楽器の音が向上する。
【0032】
特定の実施例では、ブリッジ300には、スロット310の床に、圧電トランスデューサなどのトランスデューサが設けられている。このように、サドル200の図2Aのサドル端面204はトランスデューサの上部に置かれてもよい。これらの実施例では、サドル200の側面の振動吸収性材料は、縦波動などの望ましくない高周波振動を減衰させる役割がある一方で、弦の横方向の動きなどの所望の振動を図2Aのサドル端面204を介してトランスデューサに伝達することができる。
【0033】
図4A~4Gは、本開示の実施例による弦楽器において縦波を低減するための別のサドル400の様々な図を示す。図4Aは底面図であり、図4Bは等角図であり、図4Cは側面図であり、図4Dは別の側面図であり、図4Eは別の側面図であり、図4Fは別の側面図であり、そして図4Gはサドル400の上面図である。
【0034】
図2A~2Fのサドル200と同様に、サドル400は、弦が通常、置かれる弦接触面402を含む。サドル400はまた、サドル400が挿入されるブリッジ上のスロットの底部に概して接触するサドル端面404を含む。サドル400はまた、2つの対向する側面406及び408を含み、これらはサドル400が挿入されるブリッジ上のスロットの側壁に概して接触する。サドル400はまた、2つの追加側面452及び454を含み、これらはサドル400が挿入されるブリッジのスロットの追加側面に概して接触する。
【0035】
サドル200と同様に、サドル400は概して、その側面406、408、452、及び454の部分410、420、430、及び440において振動吸収性材料を含むように修正された硬く密度の高い材料から作られる。しかしながら、サドル200とは異なり、サドル400の部分420は側面408の全長に亘って延在しない。むしろ、部分420は、振動吸収性材料を含むように修正されていない側面408の元の硬い材料のセクションによって割り込まれている。特に、部分420は、振動吸収性材料を含まない側面408の3つのセクションによって割り込まれている。側面408のこの構成はピックアップを収容するように設計されている。例えば、側面408はブリッジに弦を取り付けるピンに面してもよく、ブリッジには圧電結晶などの3つのセンサを有する電気機械ピックアップが設けられてもよい。センサは、図5A及び5Bに関して以下に詳述するように、弦の横方向の動きが、妨げられていないセンサに伝達されるように振動吸収性材料を含まない側面408のセクションに接触し得る。
【0036】
図5Aは弦楽器のブリッジ500を示す。図3A及び3Bのブリッジ300のように、ブリッジ500は概して、硬い木から作られているが、代わりに金属又はプラスチックなどの弦と共振する他の材料、又は弦の振動をギターの本体に伝達することができる他の材料から作られてもよい。
【0037】
ブリッジ500はサドル用に設計されているスロット510を有する。ブリッジ500は概して弦楽器に取り付けられ、振動はブリッジ500から弦楽器の本体に伝達される。ブリッジ500は、3つのセンサ520を有する電気機械ピックアップも含む。センサ520は圧電トランスデューサなどのトランスデューサであってもよい。例えば、センサ520は、弦によって作られた音を増幅又は記録するために振動を受け電気信号に変換するためのピックアップ・アセンブリの一部であってもよい。いくつかの実施例では、振動吸収性材料は、ブリッジ500におけるセンサ520の後方に含まれる。
【0038】
図5Bは、ブリッジ500内に配置された本開示の実施例によるサドル400を示す。例えば、サドル400は図4のサドル400であってもよく、ブリッジ500は図5Aのブリッジ500であってもよい。
【0039】
サドル400は、ブリッジ500のスロット510内にしっかりと嵌合されている。サドル400の図4Dの底面又はサドル端面404はスロット510の床に置かれ、振動吸収性材料を含まず、それによって密度の高いサドル材料とブリッジの硬い表面との間の直接接触を維持する。サドル400の図4B、4C、4D、4E、及び4Fの部分410、420、430、及び440はスロット510の側壁と接触している。特定の実施例では、サドル400は、図4B、4C、4D、4E、及び4Fの部分410、420、430、及び440がスロット510の上縁辺の少なくとも少し上方に延在するようにスロット510内に嵌合されている。このように、振動吸収性材料は、スロット510の側壁に接触するサドル400の側面の全ての部分を覆う。
【0040】
サドル400の図4Bの側面408は、振動吸収性材料を含まないセクションであって、部分420に割り込むセクションがセンサ520と接触するように位置している。このように、サドル400の硬い表面は、弦からセンサ520に横波を伝達するためにセンサ520と接触して設けられている一方で、スロット510の側壁に接触するサドル400の側面の残りの部分は、縦波を減衰させるために振動吸収性材料で覆われている。
【0041】
サドル400の図4Cの弦接触面402は、弦楽器の弦が概して置かれているが、スロット410から上方に突出している。
【0042】
このようにサドル200及びブリッジ300が連結されると、弦の横方向の動きは、スロット310の床を介して妨げられていない弦楽器の上部、及び振動吸収性材料を含まない側面408のセクションを介してセンサ520に容易に伝達される。しかしながら、図4B、4C、4D、4E、及び4Fの部分410、420、430、及び440の振動吸収性材料は、楽器の音響音に干渉する可能性のある望ましくない縦波動、並びに楽器がセンサ520を含む電気機械ピックアップ・システムと嵌合される場合の音信号を吸収且つ減衰する役割がある。このように、サドル400を使用することによってサドルが配置される弦楽器の音は、プラグを抜いた状態とピックアップを介した状態との両方で向上する。
【0043】
図6は、ブリッジ600のスロット内に配置された本開示の実施例によるサドル650を示す。サドル650は、図2A~2Fのサドル200又は図4A~4Fのサドル400のいずれかであってもよい。ブリッジ600は図3A~3Bのブリッジ300又は図5A~5Bのブリッジ500のいずれかであってもよい。
【0044】
サドル600は、振動吸収性材料を含む部分610を含む側面608を有する。図示されたように、部分610はブリッジ600の表面の少し上方に延在し、それによって、振動吸収性材料に覆われていないサドル650のいずれの部分もサドル650が挿入されるブリッジ600におけるスロットの側壁に接触しないことを確実にする。
【0045】
図7Aは本開示の実施例によるブリッジ700を示す。
【0046】
ブリッジ700は、図3A~3Bのブリッジ300及び図5A~5Bのブリッジ500と同様に、概して、硬い材料で作られ、スロット710を含む。しかしながら、ブリッジ700上で、スロット710の側壁720は振動吸収性材料で覆われている。例えば、スロット710の側壁720上の硬い材料は、切断又は粉砕され、振動吸収性材料で充填又はオーバーモールドされてもよい。サドルがブリッジ700のスロット710内にしっかりと挿入されると、スロット710の側壁720上の振動吸収性材料は、サドル上に置かれた弦によって生成された縦波を減衰させる役割がある一方で、さらに横波をスロット710の床を介して楽器の本体に伝達させることができる。他の実施例では、振動吸収性材料は、側壁720の任意の部分を切断又は粉砕することなく側壁720に添加されてもよい。これらの実施例では、より小さなサドルをスロット710内に挿入してもよい。
【0047】
さらに、いくつかの実施例では、ブリッジ700は、圧電トランスデューサなどのセンサを含むピックアップ・システムを有する。このように、振動吸収性材料は、センサを含まない側壁710の部分のみを覆ってもよい。
【0048】
図7Bは本開示の実施例によるブリッジ700内に配置されたサドル750を示す。例えば、サドル750は図1A~1Fの従来技術のサドル100でもよく、サドル700は図7Aのサドル700でもよい。
【0049】
サドル750はブリッジ700のスロット710内にしっかりと嵌合している。サドル700の側壁はスロット710の側壁720上の振動吸収性材料に接触する。
【0050】
このようにサドル750及びブリッジ700が連結されると、弦の横方向の動きは、スロット710の床を介して妨げられていない弦楽器の上部に(そして、いくつかの実施例では、ピックアップ・システムのセンサに)容易に伝達される。しかしながら、側壁720の振動吸収性材料は、楽器の音響音に干渉する可能性のある望ましくない縦波動、並びに楽器が電気機械ピックアップ・システムと嵌合される場合の音信号を吸収且つ減衰する役割がある。このように、ブリッジ700を使用することによってサドルが配置される弦楽器の音は、プラグを抜いた状態とピックアップを介した状態との両方で向上する。
【0051】
図8は本開示の実施例が実施され得るギター800を示す。
【0052】
図8の実例では、ギターは、ギターの上部が音響サウンドボードとして作用するアコースティック・ギターであるが、本発明の要素は、電気ギター又は他のいかなる弦楽器に適用されても同様に有用である。ギターは、本体810、ネック820、及びヘッドストック830を含む。弦は、弦825を含むが、弦がキー840で好ましい張力に締め付けられているヘッドストックからブリッジ850(例えば、図3A~3Bのブリッジ300、図5A~5Bのブリッジ500、又は図7A~7Bのブリッジ700)まで延在し、ブリッジにおいて弦は1つずつブリッジピン855で固定されている。ナット860は、ヘッドストックに隣接する指板865の端部に配置され、弦の間隔、指板の縁辺からの距離、及び指板865の第1フレット870の上方の弦の高さを制御する。弦は、その長さに亘ってわずかに広げられブリッジ850に収容されているサドル875に延在する。サドル875は、図1A~1Fのサドル100、図2A~2Fのサドル200、又は図4A~4Fのサドル400であってもよい。爪弾いたときに音を出すように振動する弦の部分は、ナット860とサドル875との間に延在する部分である。弦はフレットの後方に押し込まれると停止又は効果的に短縮される。
【0053】
なお、特定の実施例はギターに関して説明されるが、本明細書に提示される技術は他の種類の弦楽器に採用されてもよい。本開示の実施例に関して上述したが、開示の他の及びさらなる実施例は、その基本範囲から逸脱することなく考案され得るものであり、その範囲は、以下の請求の範囲によって決定される。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図8