(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】医療機器の包装および関連する方法
(51)【国際特許分類】
A61M 5/00 20060101AFI20241125BHJP
A61M 5/28 20060101ALI20241125BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20241125BHJP
A61K 38/02 20060101ALI20241125BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20241125BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20241125BHJP
【FI】
A61M5/00 516
A61M5/00 518
A61M5/28
A61K39/395 H
A61K38/02
A61K9/08
A61P27/02
(21)【出願番号】P 2022505453
(86)(22)【出願日】2020-07-29
(86)【国際出願番号】 US2020044058
(87)【国際公開番号】W WO2021021925
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2023-07-21
(32)【優先日】2019-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】クック、アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ブラッドフォード、ビクター
【審査官】中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-159266(JP,A)
【文献】国際公開第2014/187779(WO,A1)
【文献】米国特許第03403714(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0128662(US,A1)
【文献】特開平11-334757(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/00
A61M 5/28
A61K 39/395
A61K 38/02
A61K 9/08
A61P 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1mL未満の公称サイズを有する滅菌シリンジ用の包装であって、
前記滅菌シリンジを収容するための空洞を有する可撓性のトレイであって、前記空洞は、開口部、1つまたは複数の側壁、および基部を含む、可撓性のトレイと、
前記開口部を取り囲むリップであって、前記空洞から半径方向外側に延びて前記トレイの周囲を画定する、リップと、
前記リップに接着された周囲を有する取り外し可能なカバーであって、蒸気過酸化水素またはエチレンオキシドのうちの1つまたは複数を含むガス状滅菌剤に対して透過性である、取り外し可能なカバーと、
前記空洞の前記基部に連なり、前記空洞の前記開口部とは反対の方向に前記空洞の前記基部から離れて延びる、突出部と
を備え
、
前記突出部は、前記滅菌シリンジのバレルに向かって変形して、前記トレイの一部を屈曲させ、前記滅菌シリンジを前記トレイから排出させるように構成されている、包装。
【請求項2】
前記突出部は、ドーム状であり、ドーム状の前記突出部の基部の直径は、約10mm~20mmである、請求項1に記載の包装。
【請求項3】
前記空洞は、前記トレイの長手方向軸に沿って直列に配置された3つの空洞部分を含み、前記3つの空洞部分は、狭まった部分を介して互いに接続されている、請求項1に記載の包装。
【請求項4】
前記突出部は、前記3つの空洞部分のうちの中間空洞部分に連なり、前記トレイは、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、またはポリエチレンテレフタレートグリコールのうちの1つまたは複数を含む適切な熱可塑性材料から形成されている、請求項3に記載の包装。
【請求項5】
前記滅菌シリンジは、前記空洞内に収容される場合、前記突出部の頂点から前記突出部の基部までの前記突出部の高さは、約5mm~6mmであり、前記突出部の前記基部と前記突出部を覆う前記
滅菌シリンジの一部との間の距離は、約3mm~4mmである、請求項3に記載の包装。
【請求項6】
前記滅菌シリンジは、事前充填式シリンジである、請求項5に記載の包装。
【請求項7】
前記トレイは、摩擦嵌めによって前記
滅菌シリンジを前記空洞内に保持するために、前記包装の少なくとも1つの側壁に位置する少なくとも2つの幾何学的特徴を含む、請求項1に記載の包装。
【請求項8】
前記トレイは、前記滅菌シリンジが前記空洞内に収容されることになる場所の下方に、前記空洞の前記基部に位置する第3の幾何学的特徴を含む、請求項7に記載の包装。
【請求項9】
前記滅菌シリンジは、アフリベルセプト、ラニビズマブ、ベバシズマブ、コンバーセプト、OPT‐302、RTH258(ブロルシズマブ)、PEG化設計されたアンキリン反復タンパク質(DARPin)、またはRG7716から選択される薬剤で事前充填されている、請求項6に記載の包装。
【請求項10】
外部滅菌済みシリンジを包装から取り出す方法であって、前記包装は、空洞を有するトレイと、ガス透過性材料で覆われた開口部と、を含み、該方法は、
前記トレイの前記開口部を露出させるように前記ガス透過性材料を除去することと、
前記トレイの一部が屈曲するように前記空洞の突出部を前記外部滅菌済みシリンジのバレルに向かって変形させることと、
前記外部滅菌済みシリンジを前記トレイから排出することと、を含む方法。
【請求項11】
前記外部滅菌済みシリンジを前記トレイから排出することは、ユーザが素手で前記外部滅菌済みシリンジに触れることなく行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ガス透過性材料は、蒸気過酸化水素またはエチレンオキシドのうちの1つまたは複数に対して透過性である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記外部滅菌済みシリンジには、アフリベルセプト、ラニビズマブ、ベバシズマブ、コンバーセプト、OPT‐302、RTH258(ブロルシズマブ)、PEG化設計されたアンキリン反復タンパク質(DARPin)、またはRG7716が事前充填されている、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記包装は、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、またはポリエチレンテレフタレートグリコールのうちの1つまたは複数を含む材料から形成されている、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
第1の状態において、前記突出部は、前記空洞の前記開口部とは反対の方向に前記
外部滅菌
済みシリンジから離れて延び、
前記突出部は、圧力を受けたときに前記第1の状態から第2の状態に遷移するように構成されており、
前記第2の状態において、前記突出部は、前記突出部の一部が前記突出部に沿って前記
外部滅菌
済みシリンジの前記一部に向かって延びるように、反転している請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の様々な実施形態は、医療機器用の包装に関する。具体的には、本開示の実施形態は、突出部、例えば、ドーム状部分、球根状部分、または盛り上がった部分を有するブリスター包装であって、突出部は包装の基部に連なっており、機器をブリスター包装内に収容するときにその突出部が機器から離れて延びる、ブリスター包装にかかる。突出部は、ブリスター包装から機器を排出するために使用することができる。具体的には、その突出の部分を使用して、ブリスター包装を屈曲させて、シリンジ、例えば、事前充填式シリンジをブリスター包装から取り出すことができる。
【背景技術】
【0002】
多くの医療機器は、例えば、医療施設への配布および保管または医療施設への配布もしくは保管のために包装されている。医療提供者が医療機器を使用する準備ができると、必要に応じて、患者への使用のために医療機器を包装から取り出して準備する。医療機器を包装から取り出すために、ユーザは多くの場合、機器を直接取り扱って、手を使って医療機器を押したり、引いたり、持ち上げたり、スライドさせたり、その他の方法で直接触れたりする必要がある。場合によっては、医療機器をそれらの包装から取り出すときに、例えば滅菌上の理由で、または医療機器への損傷を抑制するために、医療機器を過度に取り扱うことが望ましくない場合がある。例えば、シリンジ、特に事前充填式シリンジは、包装の除去中に取り扱われるときに汚染される可能性があり、シリンジ本体、針、針アタッチメント、および/またはその中に収容された任意の薬剤もしくは他の流体の無菌性が損なわれる可能性がある。事前充填式シリンジが眼科用シリンジである場合、包装からの取り出し中の取り扱いは、シリンジおよび薬剤の両方または一方の汚染につながる可能性があり、それは、眼の感染性炎症、例えば、注射後の眼内炎などの眼内感染につながる可能性がある。さらに、事前充填式シリンジの場合、例えば、包装からの取り出し中にシリンジプランジャがぶつかった場合、シリンジの取り扱いによって投与量の精度が損なわれる可能性がある。眼科用シリンジでは、投与量のサイズが比較的小さい場合、例えば、20ml以下、15ml以下、10ml以下、0.5ml以下、または1ml以下となる場合があるため、投与量の精度がより重要になり得る。例えば、投与量は、200μl以下、150μl以下、または100μl以下となる場合がある。したがって、包装からの取り出し中に、医療機器、特に事前充填式眼科用シリンジを直接取り扱う量を減らす医療機器包装の必要性が存在する。
【発明の概要】
【0003】
本開示の一態様によれば、1mL未満の公称サイズを有する滅菌シリンジ用の包装は、シリンジを収容するための空洞を有したトレイを含んでもよい。空洞は、開口部、1つまたは複数の側壁、および基部を含んでもよい。リップが、開口部を取り囲んでもよく、空洞から半径方向外側に延びてもよく、トレイの周囲を画定してもよい。取り外し可能なカバーが、リップに接着された周囲を有してもよく、取り外し可能なカバーは、蒸気過酸化水素またはエチレンオキシドのうちの1つまたは複数を含むガス状滅菌剤に対して透過性であってもよい。突出部は、空洞の基部に連なってもよく、空洞の開口部とは反対の方向に空洞の基部から離れて延びてもよい。突出部は変形可能な材料で作製されていてもよい。
【0004】
包装の様々な実施形態は、以下の態様のうちの1つまたは複数を含んでもよい。すなわち、突出部は、ドーム状であってもよく、ドーム状の突出部の基部の直径は約10mm~20mmであってもよいこと、空洞は、トレイの長手方向軸に沿って直列に配置された3つの空洞部分を含んでもよく、3つの空洞部分は、狭まった部分を介して互いに接続されてもよいこと、突出部は、3つの空洞部分のうちの中間空洞部分に連なってもよく、トレイは、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、またはポリエチレンテレフタレートグリコールのうちの1つまたは複数を含む適切な熱可塑性材料から形成されてもよいこと、滅菌シリンジが空洞内に収容される場合、突出部の頂点から突出部の基部までの突出部の高さは、約5mm~6mmであってもよく、突出部の基部と突出部を覆うシリンジの一部との間の距離は、約3mm~4mmであってもよいこと、滅菌シリンジは、事前充填式シリンジであってもよいこと、トレイは、摩擦嵌めによってシリンジを空洞内に保持するために、包装の少なくとも1つの側壁に位置する少なくとも2つの幾何学的特徴を含んでもよいこと、または、トレイは、滅菌シリンジが空洞内に収容されることになる場所の下方に、空洞の基部に位置する第3の幾何学的特徴を含んでもよいこと。
【0005】
別の態様では、本開示は、開口部と空洞とを有するトレイを備え、空洞が複数の側壁および基部を含む、包装を含む。滅菌シリンジが、空洞内に収容されてもよく、滅菌シリンジには薬剤が事前充填されてもよい。球根状突出部が、滅菌シリンジの一部に沿った位置でトレイに連なっていてもよい。第1の状態において、球根状突出部は、空洞の開口部とは反対の方向に滅菌シリンジから離れて延びてもよく、第2の状態において、球根状突出部は、球根状突出部の一部が球根状突出部に沿って滅菌シリンジの一部に向かって延びるように、反転してもよい。球根状突出部は、圧力を受けたときに第1の状態から第2の状態に遷移するように構成されてもよい。
【0006】
包装の様々な実施形態は、以下の態様のうちの1つまたは複数を含んでもよい。すなわち、球根状突出部は、第1の状態にあるとき、滅菌シリンジのバレルの下にあってもよいこと、空洞は、第1の空洞部分が滅菌シリンジのプランジャを収容し、第2の空洞部分が滅菌シリンジのバレルを収容し、第3の空洞部分が滅菌シリンジの遠位部分を収容する、という3つの空洞部分を含んでもよいこと、3つの空洞部分は、中間の狭まった部分によって互いに接続されてもよく、滅菌シリンジは、狭まった部分を通って延びてもよいこと、狭まった部分は、摩擦嵌めによって空洞内に滅菌シリンジを保持するために、狭まった部分内に突出する複数の幾何学的特徴を含んでもよいこと、包装は、基部の反対側の空洞の開口部を密封する取り外し可能なカバーを含んでもよく、取り外し可能なカバーは、ガス状滅菌剤に対して透過性であり、かつ滅菌バリアを維持するように構成されてもよいこと、または、薬剤は、アフリベルセプト、ラニビズマブ、ベバシズマブ、コンバーセプト、OPT‐302、RTH258(ブロルシズマブ)、PEG化設計されたアンキリン反復タンパク質(DARPin:designed ankyrin repeating protein)、もしくはRG7716のうちのいずれか1つであってもよいこと。
【0007】
別の態様では、本開示は、外部滅菌済みシリンジを包装から取り出す方法にかかる。この方法は、外部滅菌済みシリンジを受容するように構成された空洞を有するブリスター包装トレイから取り外し可能なカバーを剥がすことであって、ブリスター包装トレイは、ブリスター包装トレイの空洞の基部に連なり、かつ外部滅菌済みシリンジと位置合わせされたドーム状突出部を含む、剥がすこと、を含んでもよい。この方法は、ドーム状突出部の一部をブリスター包装トレイの空洞に向かって押すことであって、ドーム状突出部の一部を押すことにより、ブリスター包装トレイの一部を屈曲させる、押すこと、をさらに含んでもよい。この方法は、外部滅菌済みシリンジをブリスター包装トレイから滅菌表面上へと排出するために空洞の開口部が滅菌表面に対向するようにブリスター包装トレイを方向付けることも含んでもよい。
【0008】
この方法の様々な実施形態は、以下の態様の1つまたは複数を含んでもよい。すなわち、外部滅菌済みシリンジには、アフリベルセプト、ラニビズマブ、ベバシズマブ、コンバーセプト、OTP‐302、RTH258(ブロロシズマブ)、PEG化設計されたアンキリン反復タンパク質(DARPin)、またはRG7716が事前充填されてもよいこと、ブリスター包装トレイは、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、またはポリエチレンテレフタレートグリコールのうちの1つまたは複数を含む材料から製造されてもよいこと、取り外し可能なカバーは、ガス状滅菌剤に対して透過性であってもよいこと、および、ガス状滅菌剤は、蒸気過酸化水素またはエチレンオキシドであってもよいこと。
【0009】
別の態様では、本開示は、外部滅菌済みシリンジを包装から取り出す方法であって、包装は、空洞を有するトレイと、空洞に連なる変形可能な突出部と、ガス透過性材料で覆われた開口部と、を含む、方法にかかる。この方法は、トレイの開口部を露出させるようにガス透過性材料を除去することと、突出部を空洞内にかつ外部滅菌済みシリンジのバレルに向かって変形させることであって、突出部を変形させるステップにより、トレイの一部も屈曲させる、変形させることと、外部滅菌済みシリンジをトレイから排出することと、を含んでもよい。
【0010】
この方法の様々な実施形態は、以下の態様のうちの1つまたは複数を含んでもよい。すなわち、外部滅菌済みシリンジをトレイから排出することは、ユーザがシリンジを直接取り扱うことなく行われてもよいこと、ガス透過性材料は、蒸気過酸化水素またはエチレンオキシドに対して透過性であってもよいこと、変形可能な突出部は、球根形状を含んでもよいこと、または外部滅菌済みシリンジには、アフリベルセプト、ラニビズマブ、ベバシズマブ、コンバーセプト、OPT‐302、RTH258(ブロロシズマブ)、PEG化設計されたアンキリン反復タンパク質(DARPin)、または、RG7716が事前充填されてもよいこと。
【0011】
別の態様では、本開示は、外部滅菌済みシリンジを包装から取り出す方法であって、包装は、空洞を有するトレイと、ガス透過性材料で覆われた開口部と、を含む、方法にかかる。この方法は、トレイの開口部を露出させるようにガス透過性材料を除去することと、トレイの一部が屈曲するように空洞の一部を外部滅菌済みシリンジのバレルに向かって変形させることと、外部滅菌済みシリンジをトレイから排出することと、を含んでもよい。
【0012】
この方法の様々な実施形態は、以下の態様のうちの1つまたは複数を含んでもよい。すなわち、外部滅菌済みシリンジをトレイから排出することは、ユーザが素手で外部滅菌済みシリンジに触れることなく行われてもよいこと、ガス透過性材料は、蒸気過酸化水素またはエチレンオキシドのうちの1つまたは複数に対して透過性であってもよいこと、または、外部滅菌済みシリンジには、アフリベルセプト、ラニビズマブ、ベバシズマブ、コンバーセプト、OPT‐302、RTH258(ブロロシズマブ)、PEG化設計されたアンキリン反復タンパク質(DARPin)、またはRG7716が事前充填されてもよいこと。
【0013】
本明細書に組み込まれてその一部を構成する添付の図面は、様々な例示的な実施形態を示し、明細書と共に、開示された実施形態の原理を説明するのに役立つ。図面は、本開示の様々な態様を示し、適切な場合、異なる図における同様の構造体、構成要素、材料、および/または要素を示す参照番号は、同様にラベル付けされている。具体的に示されているもの以外の構造体、構成要素、および/または要素の様々な組み合わせが企図され、本開示の範囲内にあることを理解されたい。
【0014】
本明細書には、記載されおよび図示されている多くの発明が存在する。記載された発明は、単一の態様もしくはその実施形態、またはそのような態様および実施形態の両方もしくは一方の任意の組み合わせおよび順列または任意の組み合わせもしくは順列に限定されない。さらに、記載された発明の各態様およびその実施形態の両方または一方のそれぞれは、単独で、または記載された各態様およびその実施形態の両方または一方の他の態様の1つまたは複数と組み合わせて使用してもよい。簡潔にするために、特定の順列および組み合わせは、本明細書では別個に議論および図示または議論もしくは図示されていない。特に、本明細書で「例示的」として記載される実施形態または実施態様は、例えば、他の実施形態または実施態様よりも好ましいまたは有利であると解釈されるべきではなく、むしろ、それは、実施形態が「例示的な」実施形態であることを反映または示すことを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本開示の一実施形態による、例示的な包装の斜視図を提供する。
【
図2】本開示の一実施形態による、シリンジを収容している例示的な包装の底面図を提供する。
【
図3A】本開示の一実施形態による、シリンジを収容している
図2の包装の断面図を提供する。
【
図3B】本開示の一実施形態による、屈曲配置にある間に部分的に排出されたシリンジを収容している
図2の包装の断面図を提供する。
【
図4】本開示の一実施形態による、例示的な包装の上面図を提供する。
【
図5】本開示の一実施形態による、例示的な包装の斜視図を提供する。
【
図6】本開示の一実施形態による、シリンジを収容している例示的な包装の底面図を提供する。
【
図7】本開示の一実施形態による、例示的な包装の斜視図を提供する。
【
図8】本開示の一実施形態による、シリンジを収容している例示的な包装の底面図を提供する。
【
図9】本開示の一実施形態による、印刷されたシリンジを収容している例示的な包装の底面図を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書で使用される場合、用語「備える(comprises)」、「備える(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」またはそれらの任意の他の変形は、プロセス、方法、物品または要素のリストを含む装置が、それらの要素だけではなく、それらのプロセス、方法、物品、または装置に明示的に記載されていないかまたは固有の他の要素を含んでもよいような非排他的な包含を含むものとする。用語「例示的」は、「理想的」ではなく「例」の意味で用いられる。さらに、用語「第1」、「第2」などは、本明細書において、何らかの順序、量または重要性を示すものではなく、要素または構造体を別のものから区別するために用いられる。さらに、用語「(a)」および「(an)」は、本明細書において、量の限定を示すものではなく、参照される品目が1つまたは複数存在することを示す。
【0017】
「遠位端」という用語、またはその任意の変形は、注射操作中にその機器の操作者から最も遠い機器の部分を指す。例えば、シリンジの遠位端は、シリンジの針端になる。逆に、「近位端」という用語、またはその任意の変形は、注射操作中にその機器の操作者に最も近い機器の部分を指す。例えば、シリンジの近位端は、シリンジのプランジャ端になる。さらに、本明細書で使用される場合、「約」、「実質的に」、および「ほぼ」という用語は、通常、示された値の+/-10%を意味する。
【0018】
本開示で使用される場合、「滅菌」という用語は、商業的流通および使用のための製剤化された原薬または製剤に適切なレベルの滅菌を達成することを指す。そのようなレベルの無菌性は、例えば、アメリカ食品医薬品局(U.S. Food and Drug Administration)によって発表されているガイドラインなどの規制ガイドラインまたは規則で定義されてもよい。いくつかの実施形態では、そのようなレベルの無菌性は、例えば、医薬品の外面または内面(例えば、シリンジの外面またはブリスターパックの内面)に配置された生物学的指標の微生物集団の6‐log reductionを含んでもよい。他の実施形態では、そのようなレベルの無菌性は、例えば、生物学的指標の微生物集団の9‐logまたは12‐log reductionを含んでもよい。滅菌とは、そのような適切なレベルの滅菌を達成すると同時に、商業的流通および使用のための十分に低いレベルの残留滅菌化学物質(例えば、蒸気過酸化水素、エチレンオキシドなど)も達成することを指す。そのような低いレベルの残留滅菌化学物質も、規制ガイドラインまたは規則で定義されてもよい。
【0019】
本開示で使用される場合、「外部滅菌」という用語は、商業的流通および使用に適切な、一次包装構成要素、または一次包装構成要素と二次包装構成要素の両方などにおける、容器内または包装内の薬物送達装置の滅菌を指す。
【0020】
本開示の実施形態は、医療機器の包装、特に、シリンジ(例えば、事前充填式シリンジ)用の包装に関する。いくつかの実施形態では、包装は、外部滅菌済みシリンジを収容するように構成されてもよい。特に、本開示の実施形態は、眼科用薬剤を収容する、外部滅菌された、事前充填式シリンジ用の包装に関する。例示的な眼科用シリンジには、例えば、50mL以下、20mL以下、15mL以下、10mL以下、5mL以下、または1ml以下の眼科用薬剤が事前充填されてもよい。いくつかの実施形態では、例示的な包装は、1mL未満の公称サイズを有してもよい。例示的なシリンジは、国際出願第PCT/US2020/036200号に記載されており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。包装は、包装からの医療機器の取り外しを容易にするための1つまたは複数の特徴を含んでもよい。例えば、包装は、医療機器を取り外す、排出する、押す、または他の方法で動かして包装から解放するために、反転させても、押しても、および/または他の方法で変形させてもよい1つまたは複数の変形可能な突出した部分を含んでもよい。包装はまた、ユーザが突出部を押して包装を曲げたり屈曲させたりして、その中に収容される医療機器の解放を促進することを可能にするために可撓性であってもよい。
【0021】
いくつかの例示的な実施形態では、変形可能な部分は、医療機器が包装内に収容されるときに医療機器、例えばシリンジが位置決めされるように構成されている包装の基部に連なった、突出部、例えば、ドームマウンド、または他の球根状突出部を含んでもよい。突出部は、医療機器が位置するように構成された場所から外向きに延びてもよく、包装の外面からアクセス可能であってもよい。
【0022】
包装からの医療機器の取り外しを容易にするために、ユーザは、医療機器が排出されることになる表面に向かって包装の開口部が角度付けられるように、包装を方向付けてもよい。ユーザはまた、突出部を押して包装を屈曲させ、包装の中央部分が医療機器に向かって曲がりつつ、包装の1つまたは複数の縁が医療機器から離れるように曲がるようにしてもよい。例えば、ユーザは、シリンジをトレイから滅菌表面、例えば、滅菌したテーブル、トレイ、布、ライナーなどの上に排出するために、包装を屈曲させながら突出部を押して、包装を横向きにまたは上下逆向きにしてもよい。包装の開口部が重力的に下向きに角度付けられている間に包装が屈曲することにより、ユーザが医療機器に直接接触することなく包装のみに接触した状態で、医療機器を包装から表面上に解放すること、例えば、排出することができる。
【0023】
突出部を押すことにより、少なくとも部分的に突出部を反転させることもできる。突出部の反転部分は、医療機器を包装から押し出すのを助けるために、包装内に収容されている医療機器に接触してもよいし、接触しなくてもよい。いくつかの実施形態では、包装を屈曲させるために突出部を押すことによって機器が排出されれば足り得るが、他の実施形態では、反転した突出部により、医療機器の一部(例えば、シリンジのバレル)を押して、包装からの機器の排出を容易にしてもよい。実際、突出部は、包装を屈曲させて機器を排出するためにユーザが押すための中央のランドマークまたはターゲットとして機能し得る。突出部は、例えば、包装を屈曲させてシリンジを排出するために中央の場所で包装を押すことをユーザに示すための矢印または他の視覚的インジケータを含んでもよい。包装の例示的な態様を、本明細書でさらに詳細に説明する。
【0024】
図1は、医療機器用の例示的な包装100の底面図を示している。具体的には、包装100は、シリンジ、例えば、事前充填式シリンジなどの薬物送達装置を収容するように設計されてもよい。例示的な事前充填式シリンジは、新生血管(Wet)加齢黄斑変性(AMD:Age‐related Macular Degeneration)、網膜静脈閉塞(RVO:Retinal Vein Occlusion)後の黄斑浮腫、糖尿病性黄斑浮腫(DME:Diabetic Macular Edema)、および/または糖尿病性網膜症(DR:Diabetic Retinopathy)の患者の治療のためのものを含む、眼疾患の任意の療法に使用してもよい。特に、アフリベルセプト(Eylea(登録商標))、ラニビズマブ(Lucentis(登録商標))、ベバシズマブ(Avastin(登録商標))、コンバーセプト、OPT‐302、RTH258(ブロルシズマブ)、アビシパルペゴルのようなPEG化設計されたアンキリン反復タンパク質(DARPin)、またはRG7716などのVEGF、および/またはANG‐2の大分子および小分子拮抗薬を、例示的なシリンジで使用してもよい。本開示の実施形態は、化粧品用途または、アレルギー反応の治療または診断などの医療皮膚科学にも用いてもよい。包装100は、保管中にシリンジが収容されるトレイ8と、トレイ8の周囲に延びてトレイ8の開口部を画定するリップ9とを含む。トレイ8(
図4に示されている)の上部は、取り外し可能なカバー28(
図3A)で密封することができ、これにより、滅菌および保管中または滅菌もしくは保管中に、シリンジをトレイ8内に封入することができる。いくつかの実施形態では、包装100は、ブリスター包装であってもよく、つまり、包装100は、予め形成されたプラスチック包装であってもよく、トレイ8は、熱成形プラスチックなどの成形可能なウェブから作製されてもよい。
【0025】
包装100は、外部滅菌プロセス、例えば、蒸気過酸化水素(VHP:vapor hydrogen peroxide)滅菌プロセスおよびエチルアルコール滅菌プロセスの両方または一方での使用に適していてもよい。したがって、医療機器(例えば、事前充填式シリンジ)は、包装100内に包装され、次いで、外部滅菌に供することができる。VHPなどの滅菌剤は、シリンジ内に収容されている薬剤に影響を与えることなく、シリンジの外面を滅菌することができる。例示的な滅菌プロセスは、国際出願第PCT/US2018/021013号に記載されており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。包装100に使用される材料は、滅菌剤に対して半透過性であってもよく、これにより、滅菌剤は、医療機器が包装100内に密封された時点で、包装100の一部または全部を横断して、包装100内に収容されている医療機器の外部と包装100の内部とを滅菌することを可能にする。例えば、包装100の少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%が滅菌される。例えば、取り外し可能なカバー28(
図3A)は、蒸気過酸化水素およびエチルアルコールの両方または一方に対して透過性であってもよい。カバー28は、例えば、Tyvekまたは他の適切な高密度ポリエチレン繊維、エチレン‐酢酸ビニル、および/または他の熱可塑性材料で形成されてもよい。いくつかの実施形態では、トレイ8は、ユーザがトレイ8およびその内容物が滅菌されているかどうかを判断することを可能にするためのインジケータを含んでもよい。例えば、トレイ8は、滅菌プロセスが行われたかどうかを視覚的に示すために、色またはパターンの外観を変化させるインジケータ(例えば、テープまたはラベル)を含んでもよい。
【0026】
本明細書に記載されるように、外部滅菌プロセスで使用されるように、かつユーザが内容物を直接取り扱うことなく包装100の内容物を取り出すことが可能となるように包装100を設計することにより、収容されている医療機器の滅菌が損なわれる可能性が低減される。その結果、本明細書に記載されるように、包装100は、医療機器が使用される人が医療機器によって感染する可能性を低減することもできる。例えば、包装100が眼科用シリンジを収容する場合、包装100は、汚染されたシリンジの結果として、人が眼感染症、例えば、注射後眼内炎のような眼内感染症にかかるリスクを低減することができる。
【0027】
外部滅菌済みシリンジは、シリンジの表面上の生存可能な生物が消滅させられるかまたは殺されて、それらが残存し得たとしても生存不能になっているシリンジであってもよい。そのシリンジプランジャロッドの外面、フランジ、ピストンの後面、およびシリンジピストンの後ろのシリンジバレルの内部、ならびにシリンジの他の任意の外面が、外部滅菌されてもよい。いくつかの側面では、発熱物質除去および他の除去プロセスまたは発熱物質除去もしくは他の除去プロセスを、外部滅菌の前に行ってもよい。
【0028】
トレイ8は、シリンジの遠位部分を収容するように構成された空洞3を含んでもよい。シリンジの遠位端は、例えば、シリンジが使用のためにトレイ8から取り出されると針が結合され得る、ルアーロックおよびシリンジアタッチメントの両方または一方を含んでもよい。他の実施形態では、針は、包装100内でシリンジにすでに結合されていてもよく、包装100内での保管中にキャップでさらに覆われていてもよい。空洞2は、シリンジバレルの少なくとも一部(滅菌剤と適合性のあるガラスまたはプラスチック材料であり得る)を収容するように構成されていてもよく、空洞5は、シリンジのフランジおよびプランジャの両方または一方を含むように構成されてもよい。空洞5は、
図1に示されるように、シリンジのフランジおよびプランジャの両方または一方の形状に対応するように成形されてもよい。例えば、空洞5のフランジ部分6は、フランジの形状に対応してもよい。
図1、
図5、および
図7を比較すると、空洞5のフランジ部分6の形状および側壁の両方または一方は、シリンジのフランジを収容するように丸くてもよい。
図2、
図6、および
図8を比較すると、空洞5のフランジ部分6の内部領域は、シリンジのフランジを収容するように、例えば、丸い側壁を含むように構成されてもよい。
【0029】
いくつかの態様では、トレイ8内に収容されるシリンジは、例えば、硝子体内注射(
図7および
図8)のために、プランジャロッドを押すときの臨床医の手の安定性を高めるために、標準的なシリンジと比較して、より大きな、例えば、より広いプランジャロッド、またはプランジャロッドのより大きな部分を含んでもよい。そのような態様では、包装100は、より大きなプランジャロッドを収容するためのサイズおよび形状であってもよい。トレイ8内に収容されているシリンジが、シリンジプランジャの移動と、シリンジ内の薬剤の分配と、の両方または一方を防止するための保護プランジャストップ、カバー、および/または他の要素を含む場合、空洞5は、保護要素が適所にあるフランジおよびプランジャの両方または一方の輪郭を反映するように成形されてもよい。しかしながら、他の実施形態では、空洞5の内部領域がシリンジの近位部分、およびもし含まれていれば付随する保護要素、を収容するのに十分な大きさの空間を画定する限り、空洞5は、実質的に長方形、楕円形、または他の任意の適切な形状であってもよい。例えば、
図5および
図6は、空洞5の長手方向側壁が全体的に平面であり、シリンジのプランジャロッドの少なくとも一部に平行である場合の例示的な実施形態を示している。
図7および
図8は、空洞5が、フランジまたはプランジャの少なくとも一部の形状、例えば、シリンジプランジャの移動と、シリンジ内の薬剤の分配と、の両方または一方を防止するための保護プランジャストップ、カバー、および/または他の要素の形状に対応するように成形された、窪んだ部分11を含んでもよい場合の例示的な実施形態を示している。例えば、窪んだ部分11は、空洞5の主領域とフランジ部分6との間にあってもよい。例示的な実施形態では、例えば、
図5では、空洞5の形状は、包装100の高速製造を容易にして包装100の材料分布を改善するように、または、包装100の高速製造を容易にするかもしくは包装100の材料分布を改善するように、サイズ決めされてもよい。
【0030】
同様に、
図1の例示的な実施形態では、空洞3は実質的に長方形として示され、空洞2は全体的に正方形として示されているが、空洞3および空洞2は、それぞれ、シリンジの遠位端(および遠位端に連なる任意のカバー)と、シリンジバレルの少なくとも一部とを収容するように、任意の適切なサイズおよび形状またはサイズもしくは形状であってもよい。例えば、空洞2および3は、楕円形、円形、台形、またはより広いもしくはより狭い長方形、またはそれらの任意の組み合わせであってもよい。空洞2、空洞3、空洞5は、包装100の内面とシリンジの外面とを滅菌するために、滅菌プロセス中に滅菌剤が包装100内を循環することを可能にするために、空洞の壁とシリンジとの間に空間を提供するように寸法決めされてもよい。さらに、トレイ8および空洞2、空洞3、空洞5は、保管中に複数の包装が互いに積み重ね可能となるように、上下(例えば、カバー28および基部)に実質的に平坦な表面を有してもよい。平坦な表面は、オートクレーブ内での一貫した配置も可能にし得る。とはいえ、いくつかの実施形態では、空洞2、空洞3、空洞5およびトレイ8は、丸みを帯びた、例えば、円筒形、または任意の他の適切な形状を有してもよい。さらに、トレイ8は、丸みを帯びたまたは鋭い角および縁または角もしくは縁を有してもよい。例示的な実施形態では、例えば、
図5を参照すると、空洞2、空洞3、空洞5、およびトレイ8の形状およびサイズまたは形状もしくはサイズは、包装100の高速製造を容易にして包装100の材料分布を改善するように、または、包装100の高速製造を容易にするかもしくは包装100の材料分布を改善するように、成形およびサイズ決めまたは成形もしくはサイズ決めされてもよい。
【0031】
図1、
図5、および
図7の実施形態では、狭まった部分7は、空洞2と空洞3、空洞5との間に延び、3つの空洞すべてを流体的に結合している。狭まった部分7は、それらの中にシリンジバレルの領域を収容するように寸法決めされ、
図2、
図6、および
図8を見てわかるように、シリンジが包装100内に収容されるときに3つの空洞すべての中へと延びることを可能にする。例えば、
図2、
図6、および
図8では、前述のように、包装されたシリンジのプランジャフランジ14は、空洞5のフランジ部分6内にあり、シリンジバレル12は、狭まった部分7内および空洞2を横切って延び、ガード15(例えば、ルアーロック)によって少なくとも部分的に覆われたシリンジの遠位領域は、空洞3内にある。
【0032】
トレイ8は、長手方向軸22(
図2、
図6、および
図8)に沿って延び、狭まった部分7によって互いに接続された3つの空洞2、空洞3、空洞5を含むものとして示されているが、トレイ8は、適切な数の空洞を有してもよいことが考えられる。例えば、医療機器を保持するために実質的に等しい深さの1つの空洞が含まれてもよく、2つの空洞が含まれてもよいし、または3つを超える空洞が含まれてもよい。(複数の空洞を有する実施形態において)各空洞は、それらが組み合わさって医療機器を収容することができるように、互いに接続されてもよい。または、複数の医療機器または複数の構成要素がトレイ8に収容される場合、トレイ8は、互いに接続されていない複数の空洞を含んでもよい。そのような実施形態では、以下でさらに説明するように、トレイ8からの医療機器および構成要素の両方または一方の取り外しを容易にするための突出部を、空洞のうちの2つ以上が含んでもよいことが考えられる。
【0033】
図1および
図2の実施形態では、空洞2は、包装100の底部にドーム4を含む。ドーム4は、包装100からのシリンジの取り外しを容易にするように構成されたトレイ8内の可撓性の中空の突出部であってもよい。ドーム4は、シリンジが包装100内に収容されるときに、ドーム4がシリンジの下方で方向付けられるように、空洞2の基部に連なっている。
図2の実施形態では、ドーム4は、シリンジバレル12の中央領域と位置合わせされている。ドーム4は、圧力、例えば、ユーザによって加えられた圧力の下で変形する圧縮性材料で作製されてもよい。ドーム4は、トレイ8の残りの部分と同じ材料で作製されていてもよいし、または異なる、例えば、比較的高可撓性の材料で作製されてもよい。いくつかの実施形態では、上記のように、ドーム4およびトレイ8は、熱成形されたプラスチックであってもよい。例えば、ドーム4およびトレイ8の両方または一方は、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、またはポリエチレンテレフタレートグリコール(PETG:polyethylene terephthalate glycol)で形成されてもよい。ドーム4の基部の直径(例えば、ドーム4がトレイ8の基部と合流する、ドーム4の最も広い部分)は、約10mm~20mm、例えば、約10mm、約11mm、約12mm、約13mm、約14、約15mm、約16mm、約17mm、約18mm、または約19mmであってもよい。
図5を参照すると、
図1と比較して、ドーム4の基部の直径は、包装100の高速製造を容易にして包装100の材料分布を改善するように、または、包装100の高速製造を容易にするかもしくは包装100の材料分布を改善するように、サイズ決めされてもよい。
【0034】
図3Aは、シリンジ(例えば、眼科用薬剤を収容する空のまたは事前充填式シリンジ)を収容しているトレイ8の断面図を示している。上記のように、ドーム4は、シリンジがトレイ8に受容されるときにシリンジから離れてトレイ8の基部から外側に突出し、ドーム4は、シリンジバレル12と、その下(またはトレイ8の向きによっては上)に位置合わせされる。シリンジを包装100から取り出すために、取り外し可能なカバー28は取り外されてもよく、例えば、剥がされてもよく、トレイ8を横向きまたは上下逆向きにして、包装の開口部を表面に向けて位置付けてもよく、ドーム4はユーザによって押されてもよい。ユーザは、1本または複数本の指(例えば親指)で、包装内に収容されたシリンジに向かってドーム4を押してもよい。ユーザがドーム4を押すと、包装の中央部分が医療機器に向かって曲がりつつ、包装の1つまたは複数の縁が医療機器から離れるように曲がるように、包装が屈曲してもよい。包装100が屈曲すると(
図3B)、これにより、シリンジが包装から外れることができる。包装100は、開口部が重力的に下向き(または少なくとも下の表面に対して垂直)になるように方向付けられているので、シリンジを、包装100から表面上に排出することができる。したがって、ドーム4を押して包装100を屈曲させることにより、ユーザは、シリンジに直接触れることが一切なく、シリンジを包装100から取り外すことが可能になる。包装100が上下逆に保持されている場合、シリンジはそれ自体で脱落することなく、包装100は、例えばドーム4を押すことによってユーザが包装100を屈曲させるまで、シリンジを吊り下げて保持することができる。
【0035】
ユーザがドーム4を押してトレイ8を屈曲させると、ドーム4が変形し、少なくとも部分的に反転することができる。ドーム4は、反転した際にシリンジバレル12に接触するように構成されていてもよいし、または構成されていなくてもよい。いくつかの実施形態では、シリンジを包装100から出すのを助けるために、ドーム4がシリンジバレル12を押してもよい。そのような実施形態では、ドーム4の頂点からドーム4が延びる空洞の基部までのドーム4の高さは、空洞の基部から医療機器(例えば、シリンジ)がトレイ8内で位置付けられる場所までの距離よりも大きくてもよい。本明細書で使用される場合、「頂点」という用語は、ドーム4およびトレイ8の相対的な向きに関係なく、ドーム4が延びる空洞の基部から最も遠いドーム4の部分を指す。例示的な実施形態では、シリンジは、ドーム4の頂点からトレイ8の基部までのドーム4の高さが約5mm~6mmであるように、但し、トレイ8の基部とドーム4を覆うシリンジの底部との間の距離が約3mm~4mmであるように、トレイ8内に収容されてもよい。しかしながら、他の実施形態では、ドーム4は、ユーザによって押されたときにシリンジバレル12に接触しなくてもよい。代わりに、ドーム4を押すことによって引き起こされるトレイ8のたわみは、トレイ8の開口部を重力的に下向きに方向付けることと組み合わさって、シリンジをトレイ8から外してシリンジを表面(好ましくは滅菌表面)上に排出させるのに十分であってもよい。
【0036】
ユーザは、シリンジがその上に排出される表面に向かってトレイ8の開口部が下向きまたは横向きになるような、トレイ8の方向付けの前、最中、および/または後にドーム4を押してトレイ8を屈曲させることができる(すなわち、開口部が重力的に下向きになるようにトレイ8の向きを変える)。開口部を表面に向けてトレイを方向付けることにより、ユーザがシリンジを包装から取り出すためにシリンジを直接取り扱わなくても、シリンジをトレイ8から適切な滅菌表面に脱落させることが可能になる。ユーザがシリンジを取り扱う量を減らすことにより、シリンジおよびその内容物の両方または一方が汚染されてシリンジの内容物が注入される身体の部分を感染させる可能性を低下させ得る。例えば、滅菌眼科用シリンジを包装100内に収容してもよく、ドーム4および包装100は、シリンジを取り外すときにユーザによって無菌性が損なわれないようにすることができ、これは、最終的に、汚染されたシリンジに起因する、眼感染症、例えば注射後眼内炎のリスクを低下させ得る。シリンジの取り扱いを減らすことにより、シリンジを包装100から取り出すときに、シリンジから薬剤の一部を誤って排出するリスクを低下させることも可能になる。
【0037】
ドーム4状の突出部と、トレイ8上の他の突出した部分と、の両方または一方の位置は、シリンジの取り外しを容易にすることができるだけでなく、シリンジを包装100から取り外すときに包装100の特定の部分の取り扱い方についてユーザを案内することもできる。例えば、いくつかの実施形態では、ドーム4または包装100の他の部分は、トレイ8を屈曲させてシリンジを包装100から外すために押す場所をユーザに示すマーキング、印、および/または触覚的特徴(例えば、リッジ、バンプ、または溝)を含んでもよい。全体として、ドーム4または他の適切な突出部をトレイ8に含めることにより、ユーザの怪我、機器の損傷、機器または機器内の任意の薬剤の無菌性の喪失、および/または機器内の薬剤の不慮の放出の可能性のうちの1つまたは複数を減らすことができる。
【0038】
いくつかの実施形態では、ドーム4を押すことと、トレイ8を曲げるかもしくは屈曲させることと、の両方または一方により、シリンジをトレイ8の摩擦嵌め部分から解放させてもよい。例えば、
図4に示されるように、狭まった部分7は、狭まった部分内に突出して摩擦嵌めによって空洞内に滅菌シリンジを保持するための1つまたは複数の幾何学的特徴17を含んでもよい。幾何学的特徴17は、狭まった部分7の側壁と、狭まった部分7の底部と、の両方または一方に位置して、シリンジバレル12を狭まった部分7内に位置付けてもよい。シリンジをトレイ8内に包装して、包装100が滅菌をどちらも容易にするように、例えば、上下逆向きにしたときにシリンジをトレイ8内で保ち続けながらかつ吊るしながらシリンジとの接触面積を減らしてシリンジの最大表面積を滅菌に利用できるようにするために、シリンジはトレイ8に押し込まれて、シリンジバレル12が幾何学的特徴17を通り過ぎてスライドしてシリンジがトレイ8内に摩擦嵌められるようにしてもよい。シリンジバレル12がトレイ8内の適所に押し込まれると、幾何学的特徴17は、シリンジバレル12を狭まった部分7内に保ち、シリンジをトレイ8内に保持することができる。シリンジをトレイ8から解放するために、ドーム4を押すことによって、トレイ8を屈曲させることと、シリンジバレル12が幾何学的特徴17を越えて移動するようにシリンジバレル12を押し上げることと、の両方または一方ができる。例えば、トレイ8を曲げることにより、幾何学的特徴17を含むトレイ8の部分をシリンジから遠ざけ、これによりシリンジを解放するように強制してもよい。したがって、ドーム4は、トレイ8からのシリンジの解放を容易にするために、トレイ8の他の摩擦嵌め部分と組み合わせて使用され得る。
【0039】
狭まった部分7の基部に位置する1つまたは複数の幾何学的特徴17は、狭まった部分7の側壁および他の空洞のいずれかの側壁または狭まった部分7の側壁もしくは他の空洞のいずれかの側壁(例えば、包装100内に収容されるときの空洞2、空洞3、空洞5)にシリンジが直接接触しないようにシリンジを方向付けるために、狭まった部分7の側壁上の幾何学的特徴17と連動した働きを有してもよい。これは、包装100内の滅菌剤が包装100内およびシリンジの外面の周りを循環することを可能にし得る。包装の内面から離してシリンジを適所に保持するための幾何学的特徴17を含めることにより、幾何学的特徴17は、包装100の内壁と接触するシリンジの表面積を減少させ得、その結果、包装100内の滅菌剤に曝されるシリンジの表面積を増加させ得る。
【0040】
3つの幾何学的特徴17が
図4のそれぞれの狭まった部分7に描かれているが、各狭まった部分7には、より少ない数(例えば、2つ)または4つ以上の幾何学的特徴17が含まれてもよいことが考えられる。さらに、幾何学的特徴17は、狭まった部分7のようなより狭い部分の代わりに、またはそれに加えて、空洞の任意の組み合わせを含む、トレイ8の任意の適切な部分に含まれてもよい。
【0041】
本明細書ではドーム状部分に言及しているが、トレイ8上の突出部は、それが押されてトレイ8を屈曲させることと、反転位置に圧縮されることと、の両方または一方ができれば、任意の適切な形状を有してもよいことが当業者によって理解されるべきである。さらに、トレイ8は、狭まった部分7によって互いに接続された3つの空洞2、空洞3、空洞5を含むように描かれているが、トレイ8は、医療機器を収容するための1つまたは複数の空洞を備えた任意の適切な形状を有し得ることが考えられる。例えば、本開示の実施形態は、シリンジ、例えば、事前充填式シリンジ用の包装にかかるが、ドーム4などの突出部は、任意の適切な医療機器および消費者向け商品の両方または一方用の包装と組み合わせて使用され得ることを理解されたい。したがって、トレイ8は、他のタイプの医療機器を収容するように成形されてもよい。さらに、複数の突出部、例えば、複数のドーム4をトレイ8に組み込んで、その中の医療機器の取り出しを容易にしてもよい。
【0042】
前述のように、包装内に収容されたシリンジを解放するために包装(例えばブリスター包装)にドーム4を使用することにより、シリンジの内容物を人に投与する前に、ユーザがシリンジに直接触れる必要がある量を減らすことができるので、シリンジおよびユーザの無菌性、用量精度、および/または安全性を高めることができる。これにより、ひいては、人に薬剤を投与する前にシリンジの内容物を誤って排出するリスクを減らすこと、また、人への感染の発生率を減らすことができる。
【0043】
ここで
図1および
図2に戻って参照すると、包装100は、トレイ8の少なくとも一部の周りに延びてトレイ8の開口部を画定するリップ9も含んでもよい。リップ9は、保管中にトレイ8内に医療機器を収容するために、取り外し可能な(例えば、剥離可能な)カバー28がトレイ8の上部開口部上に封止されることを可能にしてもよい。接着剤18、例えば、グルー、ペースト、フィルム、テープ、感圧材料、および/またはコールド接着剤を使用して、取り外し可能なカバー28をリップ9に封止してもよい。接着剤18は、包装100に対して実施され得る、実施される外部滅菌のタイプとの使用に適合してもよい。接着剤18の幅は、トレイ8の上部開口部のサイズに応じて変更してもよく、例えば、トレイ8の上部開口部のサイズを大きくすると、接着剤18の幅が減少する。リップ9の角、例えば、
図2の角16は、接着剤18がなくてもよく、ユーザが取り外し可能なカバー28を角16から持ち上げて、トレイ8からカバーを取り外すことができるようにしてもよい。
図6および
図8に示されるように、角16は、ユーザが取り外し可能なカバー28を角16から持ち上げてトレイ8からカバー28を取り外すことを可能にするタブ20(または他の突出部もしくは凹み)を含んでもよい。タブ20は、リップ9の角16または取り外し可能なカバー28に含まれてもよい。例示的な実施形態では、
図2および
図6を参照すると、リップ9またはタブ20(または他の突出部もしくは凹み)のタイプ、形状、および/またはサイズは、包装100の高速製造を容易にして包装100の材料分布を改善するように、または、包装100の高速製造を容易にするかもしくは包装100の材料分布を改善するように構成されてもよい。取り外し可能なカバー28は、任意の適切な材料、例えば、ホイル紙、プラスチックなどで作製されてもよく、蒸気過酸化水素またはエチルアルコールなどの適切なガス状滅菌剤に対して透過性であってもよい。
【0044】
使用中、ユーザは、最初に、トレイ8から取り外し可能なカバー28を取り外して(例えば、リップ9からカバー28を剥がすことによって)、トレイ8の開口部を露出させることができる。次に、ユーザは、トレイ8の開口部を横向きまたは上下逆向きに方向付けて、開口部が、医療機器(例えば、事前充填式眼科用シリンジ)が排出されることになる表面に対向するようにすることができる。続いてまたは同時に、ユーザは、ドーム4(または他の突出部)を押すことができ、これにより、包装の中央部分が医療機器に向かって曲がりつつ、包装の1つまたは複数の縁が医療機器から離れるように曲がるように、トレイ8を屈曲させることができる。ドーム4を押すことにより、ドーム4を少なくとも部分的に反転させることができる。いくつかの実施形態では、ドーム4の反転部分は、医療機器(例えば、シリンジバレル12)に接触してもよいが、他の実施形態では、ドーム4は、シリンジに決して接触しないようにしてもよい。したがって、ドーム4を押してトレイ8を屈曲させることにより、医療機器がトレイ8の開口部が方向付けられた表面に着地するように、医療機器をトレイ8から排出することができる。適切な滅菌表面には、例えば、滅菌テーブル、医療機器を保持するためのトレイ、布、ライナー、または任意の他の適切な滅菌表面を含んでもよい。ドーム4を押すこと、ドーム4を反転させること、トレイ8を曲げること、および/またはトレイ8の基部がシリンジの上方および滅菌表面の上方で方向付けられるようにトレイ8を横向きまたは上下逆向きにすること、の組み合わせにより、ユーザは、実際にシリンジに直接触れることなくシリンジを取り外すことが可能になる。
【0045】
いくつかの実施形態では、ドーム4を押してトレイ8を屈曲させることにより、医療機器を、トレイ8の摩擦嵌め部分、例えば、1つまたは複数の幾何学的特徴17から解放してもよい。シリンジがトレイ8から解放されると(例えば、ドーム4の反転および曲げの両方または一方を介して)、トレイ8の向きを変えることでシリンジをトレイ8から脱落させることが可能になる。複数のドーム4(または複数の他の突出部)を含む実施形態では、複数のドーム4を押して、医療デバイスをトレイ8から解放してトレイ8の異なる部分を屈曲させてもよいし、または、医療デバイスをトレイ8から解放するかもしくはトレイ8の異なる部分を屈曲させてもよい。
【0046】
事前充填式シリンジの包装の場合、シリンジがトレイ8から解放されると、シリンジ上の追加の包装(例えば、遠位ガードまたはルアーロックおよび/またはプランジャガード)をシリンジから取り外してもよい。いくつかの実施形態では、シリンジは、針なしで包装100に収容されてもよく、針、例えば、ステーク針を、例えば、針アタッチメントを介して、シリンジの遠位端に取り付けてもよい。次いで、シリンジの内容物(例えば、アフリベルセプト(Eylea(登録商標))、ラニビズマブ(Lucentis(登録商標))、ベバシズマブ(Avastin(登録商標))、コンバーセプト、OPT‐302、RTH258(ブロルシズマブ)、アビシパルペゴルのようなPEG化設計されたアンキリン反復タンパク質(DARPin)、またはRG7716などのVEGF、および/またはANG‐2の大分子および/または小分子拮抗薬)を、対象者の眼に注射してもよい。
【0047】
前述のように、包装100の構成要素、およびそのような構成要素のサイズおよび形状またはサイズもしくは形状は、包装100の高速製造を容易にして包装100の材料分布を改善するように、または、包装100の高速製造を容易にするかもしくは包装100の材料分布を改善するように構成されてもよい。
図9は、包装100の製造プロセスの一部を示す例示的な実施形態であり、例えば、包装101a、101b、および101cは、材料30で密封されて取り外し可能なカバー28(
図3)を形成し、これは、例えば、Tyvekまたは他の適切な高密度ポリエチレン繊維、エチレン酢酸ビニル、および/または他の熱可塑性材料であってもよい。
【0048】
上記の説明と例は例示的なものであり、限定的なものではない。当業者であれば、本発明の全体的な範囲から逸脱することなく、多数の修正および変更または修正もしくは変更を行うことができる。例えば、および参照されてきたように、上述の実施形態(および/またはその態様)は、互いに組み合わせて使用することができる。さらに、上述の実施形態の一部は、本発明の範囲から逸脱することなく除去することができる。さらに、特定の状況または態様を様々な実施形態の教示に適合させるために、かかる特定の状況または態様の範囲から逸脱することなく修正を加えることができる。上記の記載を再検討することにより、当業者には、多くの他の実施形態も明らかとなるであろう。