(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】肢部ヒータ
(51)【国際特許分類】
A41D 13/005 20060101AFI20241125BHJP
A41D 13/06 20060101ALI20241125BHJP
A41D 13/08 20060101ALI20241125BHJP
【FI】
A41D13/005 101
A41D13/06 105
A41D13/08
(21)【出願番号】P 2022511265
(86)(22)【出願日】2020-08-10
(86)【国際出願番号】 US2020045616
(87)【国際公開番号】W WO2021034529
(87)【国際公開日】2021-02-25
【審査請求日】2023-08-09
(32)【優先日】2019-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522065473
【氏名又は名称】カーディナル・エンジニアリング・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Cardinal Engineering LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】マペン,バリー イー
(72)【発明者】
【氏名】ホィットニー,クリスチャン エイ
(72)【発明者】
【氏名】リチャーズ,ケビン ピー
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-023366(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0196275(US,A1)
【文献】特開2003-049305(JP,A)
【文献】国際公開第2019/108138(WO,A1)
【文献】特開2004-121685(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/005
A41D 13/06
A41D 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状のスリーブとして形成された加温衣料を備え、
前記加温衣料は、肢部に着用されるために構成され、筒形状を有し、
前記加温衣料は、
近位端部と、
前記近位端部から軸方向に間隔を空けられた遠位端部と、
背面部と、
径方向において前記背面部と対向する腹面部と、
前記近位端部にある近位開口部と、
前記遠位端部にある遠位開口部と、
を有し、
前記加温衣料は、前記近位端部が手首又は足首にあり、前記遠位端部が膝又は肘の近くにあり、前記背面部が前記肢部の背面部を覆い、前記腹面部が前記肢部の腹面部を覆うように、前記肢部上にスライドされるように構成され、
前記加温衣料には、前記加温衣料の少なくとも一部に沿って赤外線を
放射する赤外線加温源
と、伝導性加温源とを含む複数の加温源が埋め込まれ、
前記複数の加温源のうち少なくとも1つは、能動的に駆動し、血管及び前記血管の周囲の組織を加温するように熱を放射する、
加温システム。
【請求項2】
前記赤外線加温源は、第1のパターンと第2のパターンとの一方又は両方に分布し、
前記第1のパターンは、線状であり、前記加温衣料の前記腹面部における前記近位端部と前記遠位端部との間を延び、
前記第2のパターンは、線状であり、前記加温衣料の前記背面部における前記近位端部の周囲を延びる、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記赤外線加温源は、前記第1のパターンと前記第2のパターンとの両方に分布し、
前記第1のパターンと前記第2のパターンとは、互いに対して略垂直である、
請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記加温衣料は、前記赤外線加温源の径方向における外方に配置された赤外線加温シールドを有する、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記背面部の前記近位端部から延びる近位延在背部と、
前記近位延在背部の近位端部から延びる布の輪と、
を備え、
前記近位延在背部は、腕に着用されたときに手の背面部上を延びるように構成され、
前記布の輪は、前記腕に着用されたときに指の周囲に巻かれるように構成されることにより、前記腕に着用されたときに前記近位延在背部を前記手の近位面に対してしっかりと位置決めする、
請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
熱調整コントローラであるコントローラを備え、
前記コントローラは、前記赤外線加温源に操作上接続され、
前記コントローラは、作動/停止、作動/停止の持続時間、及び電力強度のうち1つ以上を含む前記赤外線加温源の動作パラメータを制御し、
前記コントローラは、調整可能に前記加温衣料に固定可能である、
請求項2に記載のシステム。
【請求項7】
前記赤外線加温源は、近赤外線加温源であり、
前記コントローラは、前記伝導性加温源に操作上接続され、
前記コントローラは、作動/停止、作動/停止の持続時間、及び電力強度のうち1つ以上を含む前記伝導性加温源の動作パラメータを制御する、
請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記コントローラは、前記赤外線加温源及び前記伝導性加温源に、時間的に交互な電力サイクル又は時間的に同期した電力サイクルを適用するように構成される、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記加温衣料は、各加温源の径方向における内方に配置された吸湿層を有する、請求項7に記載のシステム。
【請求項10】
前記コントローラに操作上接続され、前記加温衣料から取り外された1つ以上のセンサを備え、
前記コントローラは、1つ以上の前記センサによって感知された皮膚温に応じて各加温源を制御する、
請求項7に記載のシステム。
【請求項11】
複数の前記肢部に着用されるように構成された複数の前記加温衣料を備え、
複数の前記加温衣料の各々は、前記コントローラに操作上接続されている、
請求項6に記載のシステム。
【請求項12】
請求項11に記載のシステムを備える衣服衣料であって、
ワイヤが、複数の前記加温衣料と前記コントローラとを相互接続し、
前記ワイヤは、前記衣服衣料に埋め込まれる、
衣服衣料。
【請求項13】
肢部に熱を分配する方法であって、
管状のスリーブとして形成された加温衣料を、前記加温衣料の近位端部が手首又は足首にあり、前記加温衣料の遠位端部が膝又は肘の近くにあり、前記加温衣料の背面部が前記肢部の背面部に接触し、前記加温衣料の腹面部が前記肢部の腹面部に接触するように、前記肢部上にスライドさせることと、
前記加温衣料に埋め込まれた
複数の加温源のうち少なくとも1つが、能動的に駆動して、作動/停止、作動/停止の持続時間、及び電力強度のうち1つ以上を
能動的に制御
し、当該制御によって、血管及び前記血管の周囲の組織が加温されるように熱を放射することと、
を含
み、
前記加温衣料に埋め込まれた前記複数の加温源は、赤外線加温源と、伝導性加温源とを含む、
方法。
【請求項14】
前記加温衣料によって、前記赤外線加温源の径方向における外方の位置から赤外線放射に対するシールドを行うことを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
径方向における各加温源と皮膚との間の位置から、前記加温衣料によって汗を腕から逃がすことと、
腕に着用されたときに、近位延在背部を手の背面部に対して配置し、布の輪を指の上に配置して前記近位延在背部を手に対してしっかりと位置決めすることと、
のうち1つ以上を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記加温衣料に埋め込まれた伝導性加温源を作動させることと、
前記伝導性加温源の作動/停止、作動/停止の持続時間、及び電力強度のうち1つ以上を制御することと、
を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記伝導性加温源の径方向における外方の位置から、前記加温衣料によって伝導性の熱損失に対抗して断熱することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記赤外線加温源及び前記伝導性加温源に、時間的に交互な電力サイクル又は時間的に同期した電力サイクルを適用することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
1つ以上のセンサによって感知された皮膚温に応じて各加温源の作動/停止、作動/停止の持続時間、及び電力強度のうち1つ以上を制御することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
複数の前記加温衣料を複数の前記肢部の各々の上にスライドさせることと、
複数の前記加温衣料の各々に操作上接続された単一のコントローラを用いて、遠赤外線加温源の作動/停止、作動/停止の持続時間、及び電力強度のうち1つ以上を制御することと、
を含む、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の相互参照>
本出願は、2019年8月21日に出願された米国出願第62/890014号の利益を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
<背景>
本明細書の実施形態は、身体加温システムに関し、より具体的には、肢部の近位に着用される肢部加温機に関する。
【背景技術】
【0003】
四肢(例えば、手又は足)は、過度に冷たくなると、器用さ、強さ、及び触感を含む機能性の低下を被る。これらの四肢における体温損失は、周囲の環境に対する、伝導性、対流性、放射性、及び蒸発性の熱損失によって引き起こされ得る。
【0004】
体温による機能性の低下を阻むための既存の方法の1つは、肢部を手袋やミトンなどの個々に局在した断熱具で覆うことである。当該断熱具は、受動性のシステム又は能動性のシステムであり得る。このような被覆材は、肢部の器用さや触覚の感度を含む機能を低下させ得る。
【0005】
別の方法では、能動的に加温される体幹部ウォーマ(例えば、加温されるジャケット)が使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
より大きな体幹部を温めることは、小さな肢部を温めることよりも多くのエネルギを必要とする。その結果、本開示よりも効率の悪いシステムとなる。四肢に伝導され得る熱の量は、許容可能な最高の深部体温によって制限される。深部体温をさらに上げることは、着用者に不快感や怪我を引き起こし得る。このことは、本質的に、低温環境において肢部の機能を維持するシステムの能力を制限する。さらに、体幹部の加温は、着用者のいくつかの部位において発汗を引き起こし得る。発汗は、前記の部位における蒸発性の冷却につながり、システム全体の効率を更に低下させ得る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、管状のスリーブとして形成された加温衣料を備える加温システムである。前記加温衣料は、肢部に着用されるために構成され、筒形状を有する。前記加温衣料は、近位端部と、前記近位端部から軸方向に間隔を空けられた遠位端部と、背面部と、径方向において前記背面部と対向する腹面部と、前記近位端部にある近位開口部と、前記遠位端部にある遠位開口部と、を有する。前記加温衣料は、前記近位端部が手首又は足首にあり、前記遠位端部が膝又は肘の近くにあり、前記背面部が前記肢部の背面部を覆い、前記腹面部が前記肢部の腹面部を覆うように、前記肢部上にスライドされるように構成される。前記加温衣料は、前記加温衣料の少なくとも一部に沿って赤外線熱を分配する赤外線加温源を有する。
【0008】
1つ以上の前記に開示された態様に加えて又は代替として、前記赤外線加温源は、第1のパターンと第2のパターンとの一方又は両方に分布する。前記第1のパターンは、線状であり、前記加温衣料の前記腹面部における前記近位端部と前記遠位端部との間を延びる。前記第2のパターンは、線状であり、前記加温衣料の前記背面部における前記近位端部の周囲を延びる。
【0009】
1つ以上の前記に開示された態様に加えて又は代替として、前記赤外線加温源は、前記第1のパターンと前記第2のパターンとの両方に分布する。前記第1のパターンと前記第2のパターンとは、互いに対して略垂直である。
【0010】
1つ以上の前記に開示された態様に加えて又は代替として、前記加温衣料は、前記赤外線加温源の径方向における外方に分布する赤外線加温シールドを有する。
【0011】
1つ以上の前記に開示された態様に加えて又は代替として、前記システムは、前記背面部の前記近位端部から延びる近位延在背部と、前記近位延在背部の近位端部から延びる布の輪と、を備える。前記近位延在背部は、腕に着用されたときに手の背面部上を延びるように構成される。前記布の輪は、前記腕に着用されたときに指の周囲に巻かれるように構成されることにより、前記腕に着用されたときに前記近位延在背部を前記手の近位面に対してしっかりと位置決めする。
【0012】
1つ以上の前記に開示された態様に加えて又は代替として、前記システムは、熱調整コントローラであるコントローラを備える。前記コントローラは、前記赤外線加温源に操作上接続される。前記コントローラは、作動/停止、作動/停止の持続時間、及び電力(power)強度のうち1つ以上を含む前記赤外線加温源の動作パラメータを制御する。前記コントローラは、調整可能に前記加温衣料に固定可能である。
【0013】
1つ以上の前記に開示された態様に加えて又は代替として、前記加温衣料は、前記加温衣料の少なくとも一部に沿って熱を伝導する伝導性加温源を有する。前記コントローラは、前記伝導性加温源に操作上接続される。前記コントローラは、作動/停止、作動/停止の持続時間、及び電力強度のうち1つ以上を含む前記伝導性加温源の動作パラメータを制御する。
【0014】
1つ以上の前記に開示された態様に加えて又は代替として、前記コントローラは、前記赤外線加温源及び前記伝導性加温源に、時間的に交互な電力サイクル又は時間的に同期した電力サイクルを適用するように構成される。
【0015】
1つ以上の前記に開示された態様に加えて又は代替として、前記加温衣料は、各加温源の径方向における内方に配置された吸湿層を有する。
【0016】
1つ以上の前記に開示された態様に加えて又は代替として、前記システムは、前記コントローラに操作上接続され、前記加温衣料から取り外された1つ以上のセンサを備える。前記コントローラは、1つ以上の前記センサによって感知された皮膚温に応じて各加温源を制御する。
【0017】
1つ以上の前記に開示された態様に加えて又は代替として、前記システムは、複数の肢部に着用されるように構成された複数の前記加温衣料を備える。複数の前記加温衣料の各々は、前記コントローラに操作上接続されている。
【0018】
さらに、本開示は、1つ以上の前記に開示された態様を備える衣服衣料である。ワイヤが、複数の前記加温衣料と前記コントローラとを相互接続する。前記ワイヤは、前記衣服衣料に埋め込まれる。
【0019】
さらに、本開示は、肢部に熱を分配する方法である。前記方法は、管状のスリーブとして形成された加温衣料を、前記加温衣料の近位端部が手首又は足首にあり、前記加温衣料の遠位端部が膝又は肘の近くにあり、前記加温衣料の背面部が前記肢部の背面部に接触し、前記加温衣料の腹面部が前記肢部の腹面部に接触するように、前記肢部上にスライドさせることと、前記加温衣料に埋め込まれた赤外線加温源を作動させることと、前記赤外線加温源の作動/停止、作動/停止の持続時間、及び電力強度のうち1つ以上を制御することと、を含む。
【0020】
1つ以上の前記に開示された態様に加えて又は代替として、前記方法は、前記加温衣料によって、前記赤外線加温源の径方向における外方の位置から赤外線放射に対するシールドを行うことを含む。
【0021】
1つ以上の前記に開示された態様に加えて又は代替として、前記方法は、径方向における各加温源と皮膚との間の位置から、前記加温衣料によって汗を腕から逃がすことと、腕に着用されたときに、近位延在背部を手の背面部に対して配置し、布の輪を指の上に配置して前記近位延在背部を手に対してしっかりと位置決めすることと、のうち1つ以上を含む。
【0022】
1つ以上の前記に開示された態様に加えて又は代替として、前記方法は、前記加温衣料に埋め込まれた伝導性加温源を作動させることと、前記伝導性加温源の作動/停止、作動/停止の持続時間、及び電力強度のうち1つ以上を制御することと、を含む。
【0023】
1つ以上の前記に開示された態様に加えて又は代替として、前記方法は、前記伝導性加温源の径方向における外方の位置から、前記加温衣料によって伝導性の熱損失に対抗して断熱することを含む。
【0024】
1つ以上の前記に開示された態様に加えて又は代替として、前記方法は、前記赤外線加温源及び前記伝導性加温源に、時間的に交互な電力サイクル又は時間的に同期した電力サイクルを適用することを含む。
【0025】
1つ以上の前記に開示された態様に加えて又は代替として、前記方法は、1つ以上のセンサによって感知された皮膚温に応じて各加温源の作動/停止、作動/停止の持続時間、及び電力強度のうち1つ以上を制御することを含む。
【0026】
1つ以上の前記に開示された態様に加えて又は代替として、前記方法は、複数の前記加温衣料を複数の肢部の各々の上にスライドさせることと、複数の前記加温衣料の各々に操作上接続された単一のコントローラを用いて、前記赤外線加温源の作動/停止、作動/停止の持続時間、及び電力強度のうち1つ以上を制御することと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本開示は、例として示されるものであり、添付の図面における描写に限定されるものではない。当該図面において、同様の符号は、同様の要素を示す。
【0028】
【
図1】
図1は、肢部を温めるための、本開示に係る一次元の熱モデルを示す図である。
【
図2】
図2は、一実施形態に係るヒータの熱調整コントローラ(TRC: thermal regulation controller)を示す図である。TRCは、手首において外に出ており、腕に結ばれている。
【
図4】
図4は、伝導性布とIR素子とを有し腕を覆う、一実施形態に係るヒータを示す図である。
【
図5】
図5は、一実施形態に係る加温衣料の追加の特徴を示す図である。
【
図6】
図6は、動物を覆う加温衣料を示す図である。衣服は、複数の加温衣料を備える。
【
図7】
図7は、肢部を温める方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図を参照しながら、開示された実施形態の態様を述べる。任意の一図における態様は、明示のない限り、任意の他の図にも等しく適用可能である。図に示された態様は、本開示をサポートするためのものであり、開示される実施形態の範囲を何ら限定するものではない。図中の任意の符号の順序は、参照の目的のみのためのものである。
【0030】
身体、手、及び循環系は、強制水加温システムに類似して機能する。炉のような熱源は、家を循環する水を温める。当該水は、各部屋において、レジスタ又はラジエータ、例えば、加温ループから周囲の空気に熱を放散する金属の熱フィンを通過するときに、熱を放出する。
【0031】
人体においては、熱源は、胴部における代謝活動である。当該代謝活動は、動脈及び静脈を循環する血液を温める。熱は、表面積が大きく、循環する水から部屋の空気に熱を移動させるレジスタのような毛細血管において放出される。家の断熱材と同様に、皮膚は、部分的に伝導性の断熱材として機能し、胴部と手との両方において熱を保持するのに役立つ。手に流れ込む熱が断熱材を介して出て行く熱よりも少ないと、手はやがて冷える。手を温めるには、手において、熱の正味の増加がなければならない。このことは、手に供給される熱エネルギ、温度差、及び流量が手で起こる熱損失を超える必要があることを意味する。
【0032】
個々に捉えると、熱供給の効果を高めること又はシステムを介した損失を減らすことのいずれかは、システム全体の効率に役立つ。熱供給は、能動性の加温具を使用することによって向上し得る。同様に、熱損失が減少すれば、能動性の加温具は、より小さく、より効率的なものにされ得る。正味の結果として、周囲の環境への熱損失が減少し、手の熱損失を打ち消すために腕から手に伝導されて保持される熱が増加する。
【0033】
図1は、前腕加温衣料、すなわち、管状のスリーブ100の一実施形態の断面図である。管状のスリーブ100は、体にフィットするものであり得る。加温衣料100は、全体として110で示される、部材の複数の層から構成される。
【0034】
複数の層110のうちの第1の層L1は、最も内側の層である。第1の層L1は、肢部120Aの皮膚120に最も近くなるように構成されている。肢部120Aは、腕であり得る。第1の層L1は、吸湿性材料130(模式的に図示される)を含み得る。例えば、第1の層L1は、熱ベース層であり得る。
【0035】
複数の層110のうちの第2の層L2は、放射性加温源140(模式的に図示される)を有し得る。第2の層L2は、深部への加温を提供することが意図されたものである。
【0036】
複数の層110のうちの第3の層L3は、伝導性加温源150(模式的に図示される)を有し得る。第3の層L3は、皮膚120の表面又は浅い部分への加温を提供することが意図されたものである。
【0037】
複数の層110のうちの第4の層L4は、第1の断熱材160(模式的に図示される)を有し得る。第4の層L4は、伝導性及び対流性の熱損失を低減することが意図されたものである。
【0038】
複数の層110のうちの第5の層L5は、第2の断熱材170(模式的に図示される)を有し得る。第5の層L5は、放射性の損失を低減することが意図されたものである。
【0039】
複数の層110の各々は、加温衣料100内部の湿度レベルを低下させるために高い湿分移行率を有し得る。システム100は、深部への放射熱、蒸気の除去、断熱、及び放射熱の保持を提供し得る。このように、システム100は、熱の調整システムと湿度の調整システムとの両方を提供し得る。
【0040】
皮膚120の表面による皮膚組織及び血液を介したエネルギ吸収率は、エネルギの波長の関数として変化する。エネルギが吸収されたとき、吸収されたエネルギの大部分は、体内において吸収されるところで熱に変換される。電離性で組織を損傷する放射は、より短い紫外波長と関連する。赤外(IR: infrared)波長は、非電離性であり、安全な形式の放射とみなされている。
【0041】
IR波長は、血液及び深部組織に吸収されやすく、皮膚120の表面には吸収されにくい。このことは、太陽光が窓を通過するときに家の床を温めることと同様である。その結果、皮膚120の表面温度を危険又は不快な程度にまで上昇させることなく、血液及び深部組織をよく温めることができる。
【0042】
電磁スペクトルの電磁帯域に関し、IR波長のうち、安全とみなされている一帯域は、約4μmと約12μmとの間である。これは、IR帯域の遠赤外(FIR: far infrared)部内である。IR波長のうち、安全とみなされている別の帯域は、約760nmと約1440nmとの間である。これは、電磁スペクトルの近赤外(NIR: near infrared)部内である。中赤外は、近赤外帯域と遠赤外帯域との間、すなわち、1.4μm~4μmである。一実施形態では、システムは、FIRを用い得る。別の実施形態では、システムは、NIRを用い得る。別の実施形態では、IRスペクトルの複数の帯域は、本明細書に開示のように、システムの同じ部品又は異なる部品によって順次及び/又は同時に適用され得る。
【0043】
グラフェン、トルマリン、セラミック、炭素繊維などの材料は、IR波長を効率的に発生させることができる。これらの材料のいくつかは、加温衣料100を構成するために第2の層又は第3の層に使用され得る一般的な布に類似した柔軟なシートに直接製造されることができる。これらのIR放射材料のいくつかは、更に硬く、ボタンをシャツに取り付ける方法と同様に布材に取付可能な小さく硬い成形体に形成されることができる。いくつかの実施形態では、加温衣料100には、層(L2)のために、柔軟なIR放射シートが組み込まれ得る。いくつかの実施形態では、加温衣料100には、層(L2)のために、取り付けられた硬いIR放射成形体を有する布が組み込まれ得る。いくつかの実施形態では、加温衣料100には、層(L2)のために、柔軟なIR放射シートと取り付けられた硬いIR放射成形体を有する布との組合せが組み込まれ得る。
【0044】
血液の温度が周囲の組織の温度を超えると、熱は、血液から流れ出して、周囲の組織の部分を温める。このことは、血液が加温衣料100の加温容積(warming volume)を離れて肢部、例えば、手に移動した後の意図された結果である。このことは、加温衣料100の加温容積内で起こるとき、効率の損失とみなされることができる。
【0045】
いくつかの実施形態では、皮膚120の表面を含む浅い深さに加温することによってシステム効率を向上させるために、追加の加温源が加温衣料100に組み込まれ得る。このような加温源は、第3の層L3に含まれてわずかに皮膚に向かう補助的な熱を提供する源150であり得る。表面ヒータ150は、電気毛布、加温パッド、又は同様のデバイスと同様の伝導を介して加温し得る。一般的に、これらの表面ヒータ150は、伝導を介して熱を発生させるある種の抵抗素子を有し得る。例えば、伝導は、主に周囲の材料の1つ以上の層を介して皮膚120に移行され得る。表面ヒータは、伝導性繊維と混合された合成繊維で構成され得る。米国ニューヨーク州バッファローのSefar INC.から入手可能なSEFAR PowerHeatのような市販の布は、ポリエステルを保護するポリイミドフィルム及びマイクロステンレス鋼繊維の布で構成されている。この材料は、電気が加えられると、熱を発生する。当該材料は、洗濯可能であり、折り畳み可能であり、薄く軽量で、耐久性がある。
【0046】
いくつかの実施形態では、層L3のこれらの追加の浅い部分への加温の源は、皮膚120によって皮膚120の表面近傍で吸収されるように構成された電磁放射波長で機能し得る。この性質を有する電磁帯域の1つは、約2μmと約4μmとの間である。いくつかの実施形態では、層L2又は層L3の浅い部分への加温及び深部への加温は、同じソース、例えば、単一の層から生じる。例えば、層L2A(
図1)である。層が組み合わされるとき、要素は、加温要素が鉛直に隣り合う構成よりもむしろ、織物(weave)の形式、格子状の形式などのように、単一平面に分布し得ることが理解される。放射線放射材料は、放射される波長の分布を有し得る。例えば、炭素繊維は、浅い部分への加温と深部への加温との両方を同時に提供する約1μm~約12μmの範囲の広い帯域に亘るエネルギを放射することができる。
【0047】
図2に示す熱調整コントローラ(TRC: thermal regulation controller)200は、加温衣料100の上面部又は前腕背面部202において、前端部又は近位端部204と後端部又は遠位端部206との中間に取り付けられている。加温衣料100は実質的に筒状であるため、近位端部204は、軸方向において遠位端部206と対向する。使用時には、近位端部204は手首端部であり、遠位端部206は肘端部であることが理解される。さらに、前腕背面部202は、径方向において加温衣料100の底面部又は腹面部208と対向する。
【0048】
TRC200は、加温衣料100の加温を制御するための電子部品及び/又は電子機器を有する。当該電子部品及び/又は電子機器は、例えば、サーモスタットを含む。いくつかの実施形態では、TRC200は、1つ以上の加温要素に対して、開始、停止、パルス(pulsing)、絞り(throttling)、デューティーサイクル(duty cycling)などを同時に行うことによって、加温衣料100の加温を制御し得る。いくつかの実施形態では、TRC200は、加温素子の一部のみに同時にエネルギを与えるように、加温シーケンスを調整することができる。このことにより、加温衣料100の瞬間的なピークエネルギ消費を低減することができる。
【0049】
例えば、深部へのIRヒータ(層L2)は、電力(power)対時間を示す
図3A1及び
図3A2に示すように周期的に動作できる。表面ヒータ(層L3)は、電力対時間を示す
図3B1及び
図3B2に示すように周期的に動作し得る。
図3A1及び
図3B1では、層L2のヒータと層3L3のヒータとは、交互のシーケンスで次々と動作する。
図3C1に示すように、任意の時におけるピーク使用電力は、同じ時におけるいずれかの層による使用電力よりも大きくなることはない。
図3A2及び
図3B2では、層L2のヒータと層3L3のヒータとは、同期している。すなわち、層L2のヒータと層3L3のヒータとは、同じ時に動作する。
図3C2に示すように、任意の時におけるピーク使用電力は、同じ時における両方の層による使用電力の合計である。
【0050】
いくつかの実施形態では、TRC200には、加温衣料100を動作させるか又は無効にするための機構210(例えば、オン/オフトグルスイッチ又は照明された押しボタンスイッチ)が組み込まれ得る。布に埋め込まれたTRC200A(
図4)又は布に埋め込まれたスイッチ210A(
図4)、すなわち、加温衣料100自体に含まれるTRC200A(
図4)又は加温衣料100自体に含まれるスイッチ210A(
図4)は、本開示の範囲内である。このような埋め込まれた器具は、加温衣料100に取り付けられた器具に加えて、又は加温衣料100に取り付けられた器具に代えて、利用されてもよい。
【0051】
いくつかの実施形態では、TRC200には、選択可能なレベル機構220が組み込まれ得る。当該レベル機構220は、低/中/高のレベルの切り替えを行うための押しボタンであることができる。当該切り替えは、例えば、現在有効になっているレベルを示す多色LED(青、黄、赤)を有する単一の押しボタンによって実行されることができる。LEDは、スイッチと独立であることができる。または、3つの独立したLEDが、独自に低、中、高の設定を示すために使用されることができる。この機構によって、ユーザが目標の温度レベルを設定することが可能になる。機構220は、高/中/低スイッチ又はサーモスタットダイアルであり得る。
【0052】
いくつかの実施形態では、TRC200には、触覚によるフィードバック(例えば、力、振動、又は動作をユーザに適用することによって触覚の体験を生成可能な任意の技術)が組み込まれ得る。一実施形態では、触覚によるフィードバックは、TRC200によって与えられる振動を含む。これは、選択された目標の温度レベルの変更又は低バッテリなどの警告状態に応じてフィードバックを提供するためのものであり得る。振動を引き起こす器具は、TRC200に取り付けられた圧電変換器であり得る。フィードバックは、選択可能なレベル機構220(
図2)又は衣料の外層の表面下に存在し得るスイッチ210A(
図4)に関わることによって、気付かれることができる。
【0053】
触覚によるフィードバックを受けるための別の方法は、低電圧警告の形式などの警告状態の間である。触覚によるフィードバックの種類は、システムとの関わり合いの種類又はシステムによって提供される警告に応じて変化し得る。例えば、ユーザがジャケットを通じてユーザの前腕に配置されたスイッチに関わり合い、オフ/低/中/高の設定を切り替える(電気毛布に類似している)ことによりTRC200に関わり合う場合、システムは、振動の(唸る)応答を提供し、利用されている目標の温度レベルをユーザに知らせ得る。例えば、振動の応答は、1回、2回、若しくは3回(又は短、中、長)のインパルスの応答などの異なる振動パターンの形式であり得る。同様に、振動パターンは、電源のオン/オフなどの電力切替状態を示し得る。パターンは、表現のために意図された異なるものを示すために、モールス信号の様式の構成と同様であり得る。本開示は、フィードバック機構の様々な種類を制限すること、及び様々な種類のフィードバック機構の利用を制限することを意図するものではない。
【0054】
いくつかの実施形態では、TRC200は、加温衣料100の残りの部分から取り外し可能であり得る。例えば、いくつかの実施形態では、TRC200は、加温衣料100の背面部202上を近位端部204に延びる有線コネクタ270を介して、加温衣料100の残りの部分に取り付けられ得る。いくつかの実施形態では、TRC200は、加温衣料100の残りの部分に無線で接続され得る。いくつかの実施形態では、無線接続は、誘導結合であり得る。
【0055】
例えば、加温衣料100の電子機器及びTRC200は、誘導結合電源280A,280Bを有する。誘導結合電源280A,280Bの一方は、他方のすぐ近傍にあることによって、誘導的にエネルギを得る。一度電力が得られると、両者は、誘導的な電源によって駆動される無線周波数を用いて通信し、電力状態及び要求などの情報を交換し得る。本実施形態における電力供給及び情報の通信は、RFIDチップを用いた電力供給及び通信と類似している。
【0056】
いくつかの実施形態では、TRC200は、腕の全ての覆いの外側で前腕に取り付けられることができる。
図2は、手首において加温衣料100から出る有線コネクタ270を介して、TRC200が加温衣料100の残りの部分に接続される実施形態を示す。いくつかの実施形態では、TRC200は、TRC200を固定するために腕の周りに巻かれる調整可能なストラップ260を使用して、前腕に取り付けられることができる。いくつかの実施形態では、TRC200には、デバイス状態表示部230(
図2)が組み込まれ得る。表示部230は、表示デバイス状態を示す第1表示ライト230Aを有し得る。デバイス状態は、「オン/オフ」であり得る。表示部230は、加温状態を伝えるための第2表示ライト230Bを有し得る。加温状態は、「加温/アイドル」であり得る。表示部230は、エネルギ状態を伝える第3表示ライト230Cを有し得る。エネルギ状態は、バッテリ残量表示部の百分率であり得る。1つの種類は、百分率のない「バッテリ低下」LEDである。あり得る表示部230の前記の説明は、限定的や相互排他的であることを意図しない。
【0057】
いくつかの実施形態では、TRC200は、加温衣料100の加温を、フィードバックなしに(開ループ制御で)経時的に変化させることができる。いくつかの実施形態では、TRC200は、加温衣料100の加温を、フィードバックに応じて(閉ループ制御で)経時的に変化させることができる。いくつかの実施形態では、フィードバックは、加温衣料100の内部のセンサ240(
図2及び
図4)から届き得る。これらのセンサは、温度、湿度など、又はそれらの組合せを含み得る。いくつかの実施形態では、センサ240は、加温衣料100に埋め込まれ得る。センサ240は、皮膚の近傍にあるように、層L1又は層L2に配置され得る。いくつかの実施形態では、センサ240は、TRC200の一部であり得る。いくつかの実施形態では、センサは、加温衣料100及びTRC200から離れて配置され得る。例えば、温度センサ240Aは、着用者の深部体温をモニタするために、着用者の胴部の近くに配置され得る。このようなセンサ240Aは、有線で接続されてもよく、無線で接続されてもよい。接続が無線である場合、適用され得るプロトコルは、Ant+(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、及び他の既知のパーソナルエリアネットワークプロトコルを含む。
【0058】
図5を見ると、いくつかの実施形態では、エネルギ源250が、加温衣料100上のTRC200に設けられ得る。エネルギ源250は、貯蔵エネルギ源であり得る。貯蔵エネルギ源は、バッテリ技術、燃料電池、可燃性材料、発熱反応材料、核に基づくエネルギ源、キャパシタ、スーパーキャパシタ、誘導エネルギ貯蔵、磁気エネルギ貯蔵、ばね、巻線、他の電気貯蔵方法、他の化学的方法、他の機械的方法などを含み得るが、これらに限定されない。
【0059】
いくつかの実施形態では、エネルギ源250は、非貯蔵の方法によって与えられ得る。非貯蔵の方法は、太陽エネルギ、運動生成エネルギなどを含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、エネルギ源は、受動性と能動性との両方の1つ以上のエネルギ源で構成されることができる。
【0060】
いくつかの実施形態では、第1層L1(
図1)の吸湿性材料は、加温衣料100に組み込まれ得る。このことは、皮膚120の表面における蒸発性の損失を低減することができる。いくつかの実施形態では、当該層L1は、弾性材料から製造されることができる。このように、層L1は、体にフィットする層を提供する。当該体にフィットする層は、皮膚120との接触を増加させ、伝導される熱の抵抗を低減し得る。
【0061】
いくつかの実施形態では、層のうちの1つ以上、例えば、第4層L4(
図1)は、断熱材料を含み得る。断熱材料を含む当該層L4は、伝導性の熱損失機構、対流性の熱損失機構、又は2つの組合せの熱損失機構を低減し得る。いくつかの実施形態では、当該層L4は、高い透湿率(すなわち、通気性材料)を有することができる。これらの目標を達するために当該層L4に適した材料は、フリース加工された(fleeced)ポリエステルを含み得る。
【0062】
いくつかの実施形態では、1つ以上の層L5(
図1)は、放射性断熱材料を含み得る。断熱材料を有する当該層L5は、放射性の熱損失を低減し得る。いくつかの実施形態では、当該層L5は、米国カリフォルニア州サンタモニカのHologenix LLCによるCelliantのような高い透湿率を有し得る。
【0063】
いくつかの実施形態では、第2層L2又は第3層L3(
図1)の加温材料は、加温衣料100の長さに亘って前腕を囲み得る。いくつかの実施形態では、当該層L2又は層L3の加温材料は、加温衣料100の長さに沿って、手に向かって流れる前腕の主要な血管上に選択的に配置され得る。
図4に示すように、例えば、層L2の放射要素300及び/又は層L3の伝導要素302などの加温要素の配置は、加温衣料100における近位端部204と遠位端部206との間の腹面部208を延びる第1のパターン295(
図4)であり得る。このような第1のパターン295は、実質的に線状であり、橈骨動脈、尺骨動脈、細動脈などの向きをトレースしている。
【0064】
いくつかの実施形態では、層L2の放射要素300及び/又は層L3の伝導要素302などの加温材料は、加温衣料100の腹面部208の近位端部204に沿って、例えば、着用時の掌-手首領域(palmer-wrist area)上に、第2のパターン296で配置され得る。このような第2のパターン296は、実質的に線状であり、第1のパターンに対して垂直又は略垂直であり得る。このような領域は、加温衣料100の前方袖口領域306の内側領域の近傍である。このようなパターン295,296は、血管が皮膚120の表面により近い部分であり得る。図示されるように、加温衣料100の腹面部208の近位端部204は、前腕の手首-掌領域(wrist-palmer area)304であり、すなわち、手首の近傍であり得る。
【0065】
図4は、主要な血管をたどる放射要素300,302と、手首の周囲において表面に近い血管を囲む放射要素と、前腕の残りの部分の周囲における浅い部分への加温とを有する実施形態の組合せを示す。要素300,302は、第1のパターン295及び第2のパターン296の両方において交互のパターンに図示されているが、これらのパターンは限定を意図するものではない。
【0066】
図5に示すように、いくつかの実施形態では、加温衣料100は、加温衣料100の背面部202の近位端部204において、手の背面又は甲309上を延びる近位延在背部(proximate-extending dorsal section)308で形成される。加温衣料100の背面部202の近位端部204は、前方袖口領域306であって、腹面-手首領域304に対向する。さらに、布は、熱損失を低減するために“付着(cling)”の特徴を有し得る。近位延在背部308は、布のフラップで形成され得る。いくつかの実施形態では、近位延在背部308の近位端部311から近位に延びる部材に、1つ以上の布の輪又はストラップ310が組み込まれている。これらの輪は、1本以上の指の上に配置されて、手の甲309上で近位延在背部308を支持し、近位延在背部308を皮膚120のすぐ近傍に維持する。これらの増強は、手の機能に影響せず又はほとんど影響せずに、血管が表面の近くにある手の甲における熱損失を低減するのに役立つことができる。
【0067】
前記の第1層L1、第4層L4、及び第5層L5(
図1)を含む非加温層は、任意のものであり、衣服の独立した層に間接的に含まれ得ることが当業者によって理解されるべきである。例えば、加温衣料100は、吸湿性シャツの上、且つ、伝導性、対流性、及び放射性の断熱を有する冬物コートの下に着用される加温要素で構成され得る。さらに、加温衣料100は、シャツ、体にフィットするジャケット、及び/又は一組の長い下着(
図6及び以下の関連する開示を参照)のような完全な衣服と一体化され得る。このように組み合わされることで、全ての層が存在し得る。さらに、非加温層は、システム効率を向上させるが、システムが機能するために不可欠なものではないことが理解されるべきである。
【0068】
前記の実施形態は、スリーブとして着用されるときに、人が寒い天候において温かい素手を持つことを可能にし得る加温衣料100を提供する。条件(conditions)が手袋を必要とするときには、加温衣料100が着用されないときよりも、薄い手袋の層が利用され得る。
【0069】
加温衣料100は、上部又は近位開口部315と、下部又は遠位開口部316とを有して製造され得る。上部又は近位開口部315及び下部又は遠位開口部316は、それぞれ直径D1,D2を有し、長さLTH1によって隔てられている。それらのパラメータによって、子どもから大人までの人の前腕及び動物の脚への適用が可能になり得る。足を加温するために人のふくらはぎの周囲に着用することは、本開示の範囲内である。すなわち、加温衣料100は、様々な種の動物の付属器官に適し、その遠位の肢部に熱を供給するように構成されている。
【0070】
例えば、
図6を見ると、加温衣料100は、犬の脚の周囲に着用され得る。
図6は、ストラップ420によって接続された複数の衣料100を備えたバージョンの加温システム400を示す。ストラップ420は、エネルギ源250に接続され、その他の点では着用者によって着用される。ストラップ420は、衣服衣料(clothing garment)430に包まれ得る。衣服衣料430は、
図6では犬用ジャケットであり、単一又は一体型の衣料であり得る。
【0071】
電源250及びTRC200は、衣服衣料430に取り付けられ得る。本例では、電源は、衣服衣料430の首開口部450の前部440に対して装着されている。TRC200は、例えば、動物の付き添い人によるアクセスしやすさを提供するために、動物の首開口部450の背部460に取り付けられている。各加温衣料100は、動物の脚に適合するように適切な長さ及び適切な直径を有して構成される。
【0072】
衣服衣料430は、複数の衣料100を衣服衣料430に接続した状態に維持するためのストラップを必要としないことがあることが理解され得る。その代わりに、加温衣料100は、ジャケットの腕部分がジャケットの胴部に縫い合わされることと同様に、衣服衣料430の異なる領域に個別に縫い合わされ得る。さらに、示したように、衣服衣料430は、人によって着用され得るシャツ、体にフィットするジャケット、及び/又は一組の長い下着のような他の形状をとり得る。
【0073】
図7には、肢部に熱を分配する方法を示すフローチャートが示されている。ブロック110に示すように、本方法は、端部が開放した管状のスリーブの形状の加温衣料を肢部上にスライドさせることを含む。このことにより、加温衣料の近位端部は手首又は足首にあり、加温衣料の遠位端部は肘又は膝にあり、加温衣料の背面部は肢部の背面部に接触し、加温衣料の腹面部は肢部の腹面部に接触する。ブロック120に示すように、本方法は、加温衣料に埋め込まれた赤外線(IR)源を作動させることと、IR加温源の作動/停止、作動/停止の持続時間、及び電力強度のうち1つ以上を制御することと、を含む。ブロック130に示すように、本方法は、加温衣料によって、IR加温源の径方向における外方の位置からIR放射に対するシールドを行うことを含む。
【0074】
ブロック140に示すように、本方法は、各加温源の径方向における内方の位置から、加温衣料によって汗を腕から逃がすこと(wicking)を含む。ブロック150に示すように、本方法は、腕に着用されたときに、近位延在背部を手の背面部に対して配置し、布の輪を指の上に配置して、近位延在背部を手に対してしっかりと位置決めすることと、と含む。
【0075】
ブロック160に示すように、本方法は、加温衣料に埋め込まれた伝導性加温源を作動させること、伝導性加温源の作動/停止、作動/停止の持続時間、及び電力強度のうち1つ以上を制御することと、を含む。ブロック170に示されるように、本方法は、伝導性加温源の径方向における外方の位置から、加温衣料によって伝導性の熱損失に対抗して断熱する。
【0076】
ブロック180に示すように、本方法は、FIR加温源及び伝導性加温源に、時間的に交互な電力サイクル又は時間的に同期した電力サイクルを適用することを含む。ブロック190に示すように、本方法は、1つ以上のセンサによって感知された皮膚温に応じて、各加温源の作動/停止、作動/停止の持続時間、及び電力強度のうち1つ以上を制御する。
【0077】
ブロック200に示すように、本方法は、複数の加温衣料を複数の肢部の各々の上にスライドさせることを含む。ブロック210に示すように、本方法は、複数の加温衣料の各々に操作上接続された単一のコントローラを用いて、IR加温源の作動/停止、作動/停止の持続時間、及び電力強度のうち1つ以上を制御することを含む。
【0078】
前記のように、実施形態は、プロセッサ実行プロセス(processor-implemented processes)及びそれらのプロセスを実行するためのプロセッサなどのデバイスの形式であることができる。実施形態は、命令を含むコンピュータプログラムコードの形式であることもできる。当該命令を含むコンピュータプログラムコードは、ネットワーククラウドストレージ、SDカード、フラッシュドライブ、フロッピーディスク、CD ROM、ハードドライブ、又は任意の他のコンピュータ可読記憶媒体などの有形媒体で実現される。コンピュータプログラムコードがコンピュータによって読み込まれ実行されるとき、コンピュータは、実施形態を実行するためのデバイスになる。また、実施形態は、例えば、記憶媒体に保存されてコンピュータによって読み込み及び/又は実行されようが、いくつかの伝送媒体上を伝わってコンピュータによって読み込み及び/又は実行されようが、又は電気配線若しくはケーブル、光ファイバー、若しくは電磁放射を介するなど、何らかの伝送媒体を介して伝送されようが、コンピュータプログラムコードの形式であることができる。コンピュータプログラムコードがコンピュータによって読み込まれ実行されるとき、コンピュータは、実施形態を実行するためのデバイスになる。汎用マイクロプロセッサ上で実行される場合、コンピュータプログラムコードセグメントは、特定の論理回路を作製するようにマイクロプロセッサを構成する。
【0079】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態の説明のみを目的とするものであり、本開示の限定を意図するものではない。本明細書で使用される場合、単数形“a”、“an”、及び“the”は、文脈がそうでないことを明確に示していない限り、複数形も含むことが意図されている。さらに、用語“comprises”及び/又は“comprising”は、本明細書で使用される場合、記載された特徴、整数、ステップ、操作、要素、及び/又は構成要素の存在を明示するが、1以上の他の特徴、整数、ステップ、操作、要素、構成要素、及び/又はそれらの群の存在又は追加を排除するものではないことが理解されるであろう。
【0080】
当業者は、様々な例示的な実施形態が本明細書に提示及び説明され、各々が特定の実施形態における特定の特徴を有するが、本開示はこのように限定されないことを理解するであろう。むしろ、本開示は、ここまでに説明されていないが本開示の範囲に相応しい、任意の数の変形、変更、置換、組合せ、サブコンビネーション、又は均等物の配置を組み込むように変更されることができる。さらに、本開示の様々な実施形態が説明されたが、本開示の態様は、説明された実施形態のうちいくつかのみを含み得ることが理解される。したがって、本開示は、前記の説明によって限定されるものとは見なされず、添付の特許請求の範囲のみによって限定される。