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特許7592701ホルムアルデヒドおよびプロピオンアルデヒドからメタクロレインを製造する方法、ならびにその製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】ホルムアルデヒドおよびプロピオンアルデヒドからメタクロレインを製造する方法、ならびにその製造装置
(51)【国際特許分類】
   C07C 45/75 20060101AFI20241125BHJP
   C07C 47/22 20060101ALI20241125BHJP
【FI】
C07C45/75
C07C47/22 H
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2022513392
(86)(22)【出願日】2020-08-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-04
(86)【国際出願番号】 EP2020073355
(87)【国際公開番号】W WO2021037671
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2023-08-17
(31)【優先権主張番号】19194665.6
(32)【優先日】2019-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】319013746
【氏名又は名称】レーム・ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Roehm GmbH
【住所又は居所原語表記】Deutsche-Telekom-Allee 9, 64295 Darmstadt, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ルドルフ ブアクハート
(72)【発明者】
【氏名】シュテフェン クリル
(72)【発明者】
【氏名】フローリアン チュンケ
(72)【発明者】
【氏名】エドゥアート ルンダール
(72)【発明者】
【氏名】トーステン パナク
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ヘルムート ケーニッヒ
【審査官】長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特表2022-546074(JP,A)
【文献】特開昭58-188831(JP,A)
【文献】国際公開第2018/217963(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/217962(WO,A1)
【文献】特表平07-505390(JP,A)
【文献】国際公開第2015/043861(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第102442892(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07B31/00-63/04
C07C1/00-409/44
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも酸および塩基をベースとする均一系触媒混合物の存在下でホルムアルデヒドおよびプロピオンアルデヒドからメタクロレインを製造する方法であって、前記方法は、
- ステップS1:ホルムアルデヒド、プロピオンアルデヒド、および均一系触媒混合物を反応器(1)に導入するステップ、
- ステップS2:前記反応器(1)内で過圧下に液体の反応混合物を製造し、その際、前記反応混合物は、メタクロレインに加えて、同伴成分をも含むものとするステップ、
- ステップS3:前記液体の反応混合物を減圧することにより、前記減圧により気相に移行する前記反応混合物の画分である第1の減圧物質混合物と、液相に残る前記反応混合物の画分である第2の減圧物質混合物とを生じさせるステップ、
- ステップS4:前記第1の減圧物質混合物と前記第2の減圧物質混合物とを減圧容器(5)で分離するステップ、
- ステップS5:前記第1の減圧物質混合物を第1の冷却器(9)に導入し、前記第1の減圧物質混合物を前記第1の冷却器(9)で凝縮させるステップ、
- ステップS6:前記第2の減圧物質混合物を第1の蒸留塔(11)に導入し、導入された前記第2の減圧物質混合物を少なくとも、第1の蒸留物質混合物と第2の蒸留物質混合物とに分離し、その際、前記第1の蒸留物質混合物は、前記第1の蒸留塔(11)の頂部(12)で気相として存在し、かつメタクロレインを含み、前記第2の蒸留物質混合物は、前記第1の蒸留塔(11)の底部(13)で液相として存在し、かつ水および触媒混合物を含むものとするステップ、ならびに
- ステップS7:前記第1の蒸留塔(11)の頂部(12)から排出された前記第1の蒸留物質混合物を前記第1の冷却器(9)に導入し、排出された前記第1の蒸留物質混合物を前記第1の冷却器(9)で凝縮させるステップ
を含む、方法。
【請求項2】
前記ステップS3の実施直前の前記反応混合物は、100~210℃の範囲から選択される温度を有し、かつ15~100bar(絶対圧)の範囲から選択される圧力であり、その際、前記圧力は、前記反応器(1)内の前記反応混合物が選択された前記温度で液体のままとなるように選択されている、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第1の冷却器(9)で得られた凝縮液を第1の相分離器(18)に導入し、前記第1の相分離器(18)で第1の分離物質混合物と第2の分離物質混合物とに分離し、その際、前記第1の分離物質混合物は、メタクロレインを含む有機相として存在し、前記第2の分離物質混合物は、水相として存在する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記第2の分離物質混合物を第2の蒸留塔(23)に導入し、そこで少なくとも、第3の蒸留物質混合物と第4の蒸留物質混合物とに分離し、その際、前記第3の蒸留物質混合物は、前記第2の蒸留塔(23)の頂部(24)に気相として存在し、かつメタクロレインを含み、前記第4の蒸留物質混合物は、前記第2の蒸留塔(23)の底部(25)に液相として存在し、かつ水を含む、請求項3記載の方法。
【請求項5】
第3の蒸留物質混合物を前記第2の蒸留塔(23)の頂部(24)から排出し、前記第1の冷却器(9)に導入する、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記第3の蒸留物質混合物を第2の冷却器(51)に導入してそこで凝縮させ、前記第2の冷却器(51)から凝縮液を排出して前記第1の相分離器(18)に導入する、請求項4または5記載の方法。
【請求項7】
前記第3の蒸留物質混合物を第2の冷却器(51)に導入してそこで凝縮させ、前記第2の冷却器(51)から凝縮液を排出して第2の相分離器(61)に導入し、前記第2の相分離器(61)で、第3の分離物質混合物と第4の分離物質混合物とに分離し、その際、前記第3の分離物質混合物は、メタクロレインを含む有機相として存在し、前記第4の分離物質混合物は、水相として存在する、請求項4から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記第3の蒸留物質混合物を前記第1の蒸留塔(11)に導入する、請求項4から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記第3の蒸留物質混合物を前記減圧容器(5)に導入する、請求項4から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記第2の分離物質混合物を前記第1の蒸留塔(11)に導入する、請求項から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
少なくとも酸および塩基をベースとする均一系触媒混合物の存在下で、出発材料であるホルムアルデヒドおよびプロピオンアルデヒドからメタクロレインを製造するための製造装置(100,200,300,400,500)において、前記製造装置(100,200,300,400,500)は、
- 反応器(1)であって、均一系触媒の存在下でホルムアルデヒドおよびプロピオンアルデヒドからメタクロレインを形成する反応を液相にて過圧下で実施することができる、反応器(1)、
- 減圧容器(5)であって、前記反応により得られる反応混合物の減圧により気相に移行する前記反応混合物の画分である第1の減圧物質混合物と、前記反応混合物の減圧後に液相に残る前記反応混合物の画分である第2の減圧物質混合物とを互いに分離することができ、その際、前記減圧容器(5)は、第1の減圧物質混合物を排出するための第1の出口(6)と、第2の減圧物質混合物を排出するための第2の出口(7)とを有する、減圧容器(5)、
- 頂部(12)および底部(13)を有し、かつ前記減圧容器(5)の前記第2の出口(7)に流体的に接続されている第1の蒸留塔(11)であって、前記第1の蒸留塔(11)で、第2の減圧物質混合物を少なくとも、気相として存在し、かつメタクロレインを含む第1の蒸留物質混合物と、液相として存在し、かつ水および触媒混合物を含む第2の蒸留物質混合物とに分離することができる、第1の蒸留塔(11)、
- 前記減圧容器(5)の前記第1の出口(6)と前記第1の蒸留塔(11)の頂部(12)とを流体的に接続している第1の冷却器(9)であって、前記第1の冷却器(9)により、供給された第1の減圧物質混合物および供給された第1の蒸留物質混合物を凝縮することができる、第1の冷却器(9)
を有する、製造装置(100,200,300,400,500)。
【請求項12】
前記製造装置は、前記第1の冷却器(9)と流体的に接続されている第1の相分離器(18)を有し、それにより、前記第1の冷却器(9)から供給された凝縮液に含まれる有機相の第1の分離物質混合物と、前記第1の冷却器(9)から供給された凝縮液に含まれる水相の第2の分離物質混合物とを分離することができ、その際、前記第1の相分離器(18)は、第1の分離物質混合物を排出するための第1の出口(19)と、第2の分離物質混合物を排出するための第2の出口(20)とを有する、請求項11記載の製造装置。
【請求項13】
前記製造装置は、頂部(24)および底部(25)を有する第2の蒸留塔(23)を有し、それにより、第2の分離物質混合物を少なくとも、気相として存在し、かつメタクロレインを含む第3の蒸留物質混合物と、液相として存在し、かつ水を含む第4の蒸留物質混合物とに分離することができ、前記製造装置はさらに、前記第2の蒸留塔(23)と前記第1の相分離器(18)の前記第2の出口(20)とを接続する相分離器排出管設備(22)を有し、これを通じて、第2の分離物質混合物を、前記第1の相分離器(18)の前記第2の出口(20)から前記第2の蒸留塔(23)に送ることができる、請求項12記載の製造装置。
【請求項14】
蒸留塔排出管設備(26)が、前記第2の蒸留塔(23)の頂部(24)と前記第1の冷却器(9)とを流体的に接続しており、第3の蒸留物質混合物を、前記第2の蒸留塔(23)の頂部(24)から前記蒸留塔排出管設備(26)を通じて前記第1の冷却器(9)に送ることができる、請求項13記載の製造装置。
【請求項15】
前記製造装置は、第2の冷却器(51)と、前記第2の蒸留塔(23)の頂部(24)を前記第2の冷却器(51)に流体的に接続する蒸留塔排出管設備(50)とを有し、その際、第3の蒸留物質混合物を、前記第2の蒸留塔(23)の頂部(24)から前記蒸留塔排出管設備(50)を通じて前記第2の冷却器(51)に送り、前記第2の冷却器(51)で凝縮させることができ、その際、前記第2の冷却器(51)は、前記第1の相分離器(18)と流体的に接続されており、それにより、前記第2の冷却器(51)の凝縮液を前記第2の冷却器(51)からさらに前記第1の相分離器(18)に送ることができる、請求項13または14記載の製造装置。
【請求項16】
前記製造装置は、
- 第2の冷却器(51)、
- 前記第2の蒸留塔(23)の頂部(24)を前記第2の冷却器(51)に流体的に接続する蒸留塔排出管設備(50)であって、その際、第3の蒸留物質混合物を、前記第2の蒸留塔(23)の頂部(24)から前記蒸留塔排出管設備(50)を通じて前記第2の冷却器(51)に送り、前記第2の冷却器(51)で凝縮させることができる、蒸留塔排出管設備(50)、および
- 前記第2の冷却器(51)と流体的に接続された第2の相分離器(61)であって、それにより、前記第2の冷却器(51)の凝縮液を、前記第2の冷却器(51)からさらに前記第2の相分離器(61)に送ることができ、前記第2の相分離器(61)により、前記第2の冷却器(51)から供給された凝縮液に含まれる有機相の第3の分離物質混合物と、前記第2の冷却器(51)から供給された凝縮液に含まれる水相の第4の分離物質混合物とを分離することができ、その際、前記第2の相分離器(61)は、第3の分離物質混合物を排出するための第1の出口(62)と、第4の分離物質混合物を排出するための第2の出口(63)とを有する、第2の相分離器(61)
を有する、請求項13から15までのいずれか1項記載の製造装置。
【請求項17】
蒸留塔排出管設備(70)は、前記第2の蒸留塔(23)の頂部(24)と前記第1の蒸留塔(11)とを流体的に接続しており、第3の蒸留物質混合物を、前記第2の蒸留塔(23)の頂部(24)から前記蒸留塔排出管設備(70)を通じて前記第1の蒸留塔(11)に送ることができる、請求項13から16までのいずれか1項記載の製造装置。
【請求項18】
蒸留塔排出管設備(80)が、前記第2の蒸留塔(23)の頂部(24)と前記減圧容器(5)とを流体的に接続しており、第3の蒸留物質混合物を、前記第2の蒸留塔(23)の頂部(24)から前記蒸留塔排出管設備(80)を通じて前記減圧容器(5)に送ることができる、請求項13から17までのいずれか1項記載の製造装置。
【請求項19】
前記第1の蒸留塔と前記第1の相分離器の前記第2の出口とを接続する相分離器排出管設備が設けられおり、これを通じて、第2の分離物質混合物を前記第1の相分離器の前記第2の出口から前記第1の蒸留塔に送ることができる、請求項13から18までのいずれか1項記載の製造装置。
【請求項20】
メタクロレインを製造するための、請求項13から19までのいずれか1項記載の製造装置の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも酸および塩基をベースとする均一系触媒混合物の存在下でホルムアルデヒドおよびプロピオンアルデヒドからメタクロレインを製造する方法、ならびにその製造装置に関する。
【0002】
この反応は通常、より高い反応速度を達成し、ひいては出発材料であるホルムアルデヒドおよびプロピオンアルデヒドからメタクロレインへのより迅速な転化を達成するために比較的高い温度で行われる。しかし、触媒混合物をなおも含む反応混合物が長期間にわたって比較的高い温度に留まると、副生成物および/またはジメタクロレインの形成が増加し、望ましくない。なぜならば、最終的なメタクロレイン生成物の純度に対する要求が高いほど、副生成物またはジメタクロレインの分離に必要なコストが高くなるためである。
【0003】
先行技術で提案されている経路は、触媒混合物をなおも含む反応混合物を可能な限り迅速に蒸留塔に供給し、そこで触媒混合物を分離することである。この経路は、例えば独国特許出願公開第3213681号明細書に教示されている。独国特許出願公開第3213681号明細書には、管状反応器において、均一系触媒混合物の存在下で、ホルムアルデヒドおよびプロピオンアルデヒドから液相にて過圧下でメタクロレインを製造する方法が記載されている。反応混合物が常圧へと減圧され、第1の蒸留塔に送られる。第1の蒸留塔の頂部からメタクロレインと水とを含むガス状の頂部流が排出される。底部には水および触媒混合物が溜まる。このように、均一系触媒混合物の分離は第1の蒸留塔で行われる。また、独国特許出願公開第3213681号明細書では、少量の触媒混合物のみで良好な反応結果が得られる反応器運転が提案されている。このように、すでに最初から、使用される触媒混合物は少ない。独国特許出願公開第3213681号明細書では、均一系触媒混合物を含む分離された水相の取り扱いについて、いくつかの変形例が提案されている。第1の変形例では、缶出液が完全に廃棄される。第2の変形例では、缶出液の一部が廃棄され、残りの部分が反応器に返送される。第3の変形例では、缶出液は第2の蒸留塔に供給され、頂部を通じて蒸留により水が分離される。よって、第2の蒸留塔の缶出液中の触媒混合物の濃度は、第1の蒸留塔の缶出液中の触媒混合物の濃度よりも高い。第2の蒸留塔の缶出液は、反応器に返送される。第4の変形例では、第2の蒸留塔の缶出液の一部のみが反応器に返送され、残りの部分は廃棄される。第3および第4の変形例と比較して、第1および第2の変形例はエネルギー的に有利であり、設備的にもはるかに単純である。しかし、第3および第4の変形例に比べてより多くの触媒混合物が失われる。第1の変形例では、缶出液全体が廃棄され、第2の変形例では、任意に多くの水を反応器に返送できるわけではないため、返送可能な触媒混合物の量がより少ない。しかし、第1の蒸留塔の缶出液中の触媒混合物の含有量が多く、缶出液が廃水として自治体の排水処理施設に放出できない場合、第2、第3および第4の変形例は、問題のある廃水の量を減少させるのに適している。このことは、第2の変形例では、第1の蒸留塔の缶出液の一部を反応器に返送することによって達成され、第3の変形例では、第2の蒸留塔の缶出液全体を蒸留での水の分離により反応器に返送することができ、その結果、問題となる廃水が生じないことによって達成され、第4の変形例では、蒸留での水の分離および第2の蒸留塔の缶出液の反応器への部分的な返送により、問題となる廃水の量が第2の変形例よりもさらに減少することによって達成される。第1の蒸留塔の頂部流は、冷却器で凝縮される。凝縮液は、液-液相分離器で、メタクロレインを主に含む液体の有機相と液体の水相とに分離される。有機相は、生成物として収集タンクに収集される。水相は、第1の蒸留塔に返送される。
【0004】
国際公開第2016/042000号にも、触媒混合物をなおも含む反応混合物を可能な限り迅速に蒸留塔に供給し、そこで触媒混合物を分離する方法が提案されている。管状反応器において、均一系触媒混合物の存在下で、ホルムアルデヒドおよびプロピオンアルデヒドから液相にて過圧下でメタクロレインが製造される。反応混合物は減圧されて第1の蒸留塔に送られる。第1の蒸留塔の頂部から、メタクロレインと水とを含むガス状の頂部流が排出される。第1の蒸留塔の底部には、水および触媒混合物が蓄積される。このようにして、均一系触媒混合物の分離が第1の蒸留塔で行われる。均一系触媒混合物を含む、分離された相の取り扱いに関して、国際公開第2016/04200号には、第1の蒸留塔に返送される部分とは別に、第1の蒸留塔の缶出液を少なくとも部分的に反応器に返送することが提案されている。反応器に返送されない部分は、後処理部または廃棄処理部に送られる。後処理は、第2の蒸留塔または膜分離段階で行うことができる。第1の蒸留塔の頂部流は、凝縮される。凝縮液は、液-液相分離器に送られ、そこで液体の有機相と液体の水相とに互いに分離される。有機相にはメタクロレインが高濃度で含まれているため、生成物流として排出される。水相の全てまたは一部が、第1の蒸留塔に返送される。
【0005】
欧州特許出願公開第2829531号明細書は、触媒混合物をなおも含む反応混合物を可能な限り迅速に蒸留塔に供給し、そこで触媒混合物を分離する方法を提案するさらなる文献である。管状反応器において、均一系触媒混合物の存在下で、ホルムアルデヒドおよびプロピオンアルデヒドから液相にて過圧下でメタクロレインが製造される。反応混合物が減圧され、蒸留塔に送られる。蒸留塔の頂部から、メタクロレインと水とを含むガス状の頂部流が排出される。蒸留塔の底部には、水および触媒混合物が蓄積される。このようにして、均一系触媒混合物の分離が蒸留塔で行われる。均一系触媒混合物を含む、分離された水相のさらなる取り扱いに関して、欧州特許出願公開第2829531号明細書では、底部流の一部を反応器に返送し、もう一方の部分を膜分離段階による後処理部に送ることが提案されている。触媒混合物が濃縮されている膜分離段階の濃縮液は、少なくとも一部が反応器に返送される。濃縮液のうち返送されなかった部分は、廃棄処理される。透過液は、汚染度の低い水相として別途廃棄処理される。1つの膜分離段階ではなく2つの膜分離段階が設けられていてもよい。蒸留塔の頂部流は、凝縮される。凝縮液は、液-液相分離器に送られ、そこで液体の有機相と液体の水相とに互いに分離される。有機相にはメタクロレインが高濃度で含まれているため、生成物流として排出される。水相は、蒸留塔に返送される。
【0006】
先行技術で提案された別の経路は、副反応および/またはジメタクロレインの生成を大幅に減少させるために、反応混合物を強度に冷却することである。これにより、反応混合物のさらなる後処理のための時間が得られる。この経路は、欧州特許出願公開第2829531号明細書において代替案として提案されている。反応混合物が冷却され、それに伴って減圧が生じ、蒸留塔の上流の液-液相分離器に送られる。液-液相分離器において、メタクロレインを高い割合で含む液体の有機相と、均一系触媒混合物を含む液体の水相とが分離される。この分離工程には時間がかかるが、この時間は、反応混合物が強度に冷却されることで得られる。水相の分離により、触媒混合物の大部分が有機相から分離されるだけではない。有機相のみが蒸留塔に送られるため、蒸留塔に導入される水もかなり少なくなる。これにより、一方では最初から純度の高い物質混合物が蒸留塔に導入され、これにより、蒸留塔の頂部流の純度がさらに高まる。他方では、第1の蒸留塔に導入される物質量も少なくなるため、それに応じて加熱が必要な物質量も少なくなり、蒸留塔を小型に構成することも可能となる。蒸留塔の缶出液に関して、この場合、欧州特許出願公開第2829531号明細書では、これを第1の変形例で液-液相分離器に返送すること、これを第2の変形例で膜分離段階に送ること、そこに液-液相分離器からの水相の少なくとも一部も送り、これを液-液相分離器からの水相の一部に関しても可能なように第3の変形例で反応器に返送すること、またはこれを第4の変形例で廃棄処理することが提案されている。
【0007】
国際公開第2018/217961号は、副反応および/またはジメタクロレインの生成を大幅に減少させるために反応混合物を強度に冷却する経路を提案するさらなる文献である。該文献では、均一系触媒混合物の存在下でホルムアルデヒドおよびプロピオンアルデヒドからメタクロレインを製造する方法が開示されており、反応は、100℃より高い温度、例えば150~220℃の範囲の温度、および液相での過圧で実施される。均一系触媒混合物を含む反応混合物が強度に冷却され、すなわち15℃未満、好ましくは5℃未満まで冷却される。この冷却に伴って、相応する圧力低下も生じる。冷却された反応混合物は、第1の液-液相分離器に送られ、そこで、メタクロレインを高い割合で含む液体の有機相と、均一系触媒混合物を含む液体の水相とに互いに分離される。水相は、第1の蒸留塔に送られ、有機相は、第2の蒸留塔に送られる。水相と有機相とが事前に分離されていることによる効果は、触媒混合物の大部分が有機相から分離されたことだけではない。第1および第2の蒸留塔にはそれぞれ最初から純度の高い物質混合物も供給され、これにより第1および第2の蒸留塔の頂部流および底部流の純度がさらに高くなる。さらに、第1の蒸留塔から水性の側方流を排出することで第1の蒸留塔の缶出液の水含有量が低減され、それにより第1の蒸留塔の缶出液中の触媒混合物濃度が高められる。任意に多くの水を反応器に返送できるわけではないため、これによって反応器に返送できる触媒混合物の量が増え、廃棄処理しなければならない問題のある廃水の量が低減される。第1の蒸留塔の缶出液の一部は反応器に返送され、他の一部は排出され、残りの部分は第1の蒸留塔に返送される。第1の蒸留塔の頂部流は、凝縮されて第2の液-液相分離器に送られ、液体の有機相と液体の水相とに互いに分離される。第2の液-液相分離器に水を追加で供給することで、第1の蒸留塔の頂部流に含まれるメタノールが除去される。液体の水相は排出される。第2の液-液相分離器からの液体の有機相も同様に、第2の蒸留塔に送られる。第2の蒸留塔の頂部流は、凝縮されて第1の液-液相分離器に送られる。主にメタクロレインを含む第2の蒸留塔の缶出液は、第2の蒸留塔に返送される部分を除き、第3の蒸留塔に送られる。第3の蒸留塔の底部を通じて、望ましくない有機成分が分離される。第3の蒸留塔の頂部流は凝縮され、高純度のメタクロレインを含む。
【0008】
国際公開第2018/127963号には、均一系触媒混合物の存在下でホルムアルデヒドおよびプロピオンアルデヒドからメタクロレインを製造する方法が開示されており、この方法は特に、第1の蒸留塔の頂部流がその凝縮後に第2の液-液相分離器に送られず、第2の生成物流として排出されるという点で、国際公開第2018/217961号から知られている方法と相違している。
【0009】
国際公開第2018/217964号には、均一系触媒混合物の存在下でホルムアルデヒドおよびプロピオンアルデヒドからメタクロレインを製造する方法が開示されており、この方法は特に、
- 第2の蒸留塔の頂部流が、第1および第2の蒸留塔の上流の液-液相分離器に、部分的に返送されずに、完全に第1の生成物流として排出され、かつ
- 第2の蒸留塔の缶出液は、第3の蒸留塔に送られるものではなく、廃棄物流であって排出されるものである
という点で、国際公開第2018/127963号から知られている方法と相違している。
【0010】
国際公開第2015/065610号にも、副反応および/またはジメタクロレインの生成を大幅に減少させるために反応混合物を強度に冷却する経路が提案されている。該文献には、均一系触媒混合物の存在下でホルムアルデヒドおよびプロピオンアルデヒドからメタクロレインを製造する方法が開示されており、この方法は特に、
- 第1の蒸留塔の頂部流が、第2の生成物流として排出されずに、凝縮後に一部が、第1の蒸留塔と、第1および第2の蒸留塔の上流にあるデカンタとして設計された液-液相分離器とに送られ、
- 第2の蒸留塔の缶出液が第3の蒸留塔に送られず、そのまま生成物流として排出され、かつ
- 第2の蒸留塔の凝縮された頂部流の一部が、第2の蒸留塔に返送される
という点で、国際公開第2018/127963号から知られている方法と相違している。この方法はさらに、第2の蒸留塔の凝縮された頂部流の一部を別のデカンタに送り、このデカンタで分離された液体の有機相を第2の蒸留塔に送り、かつ/または第2の蒸留塔の底部流に加えるという構成であってもよい。さらに、第1の蒸留塔の凝縮された頂部流の一部をさらに別のデカンタに送り、このデカンタで分離された液体の有機相を第2の蒸留塔に送り、このデカンタで分離された液体の水相を第1の蒸留塔に送るという構成であってもよい。
【0011】
本発明は、少なくとも酸および塩基をベースとする触媒の存在下でホルムアルデヒドおよびプロピオンアルデヒドからメタクロレインを製造する方法であって、反応器から出る反応混合物の良好な後処理を良好なエネルギー収支で実施することができ、装置に関して可能な限り簡単に実施することができる方法を提供するという課題に基づく。また本発明は、それに対応する製造装置を提供するという課題にも基づく。
【0012】
本発明によれば、方法上の課題は、請求項1の特徴を有する方法によって解決される。反応器から出る反応混合物は、液体であり、圧力下にある。この液体の反応混合物の減圧によって、反応混合物の一部が気相に移行し、それによって、第1の減圧物質混合物、すなわち減圧により気相に移行する反応混合物の画分と、第2の減圧物質混合物、すなわち液相に残る反応混合物の画分とが生じる。第1の減圧物質混合物中のメタクロレイン割合は、第2の減圧物質混合物中よりも多い。その結果、減圧は、すでにメタクロレイン含有量の高い物質混合物を得るためのステップとなっている。第1の減圧物質混合物と第2の減圧物質混合物とが、減圧容器内で互いに分離される。
【0013】
減圧は、冷却を伴っている。そのため、この冷却のために追加のエネルギーコストや設備コストは必要ない。また、減圧に伴う冷却にもかかわらず、減圧に相当するエネルギー量が系内に残る。
【0014】
第2の減圧物質混合物のみを第1の蒸留塔に送り、蒸留プロセスのために加熱すれば済む。第1の減圧物質混合物は直ちに第1の冷却器に送られ、そこで第1の蒸留塔の頂部から来る第1の蒸留物質混合物と共に凝縮される。
【0015】
好ましくは、ステップS3の実施直前の反応混合物は、100~210℃の範囲から選択される温度、好ましくは130~180℃の範囲から選択される温度を有し、15~100bar(絶対圧)の範囲から選択される圧力、好ましくは22~50bar(絶対圧)の範囲から選択される圧力で存在し、その際、圧力は、反応器(1)内の反応混合物が選択された温度で液体のままとなるように選択されている。100~210℃の範囲の温度および15~100bar(絶対圧)の範囲の圧力では、減圧によって十分な割合の第1の減圧物質混合物を生成することが可能である。130~180℃の範囲の温度および22~50bar(絶対圧)の範囲の圧力では、減圧によって十分な割合の第1の減圧物質混合物を生成することが可能であり、その際、この割合は、適用される圧縮エネルギーおよび熱エネルギーに対して良好な状態にある。
【0016】
有利には、第1の冷却器からの凝縮水を第1の相分離器に送り、第1の相分離器で第1の分離物質混合物と第2の分離物質混合物とに分離することができ、その際、第1の分離物質混合物はメタクロレインを含む有機相として存在し、第2の分離物質混合物は水相として存在する。これにより、容易かつ効果的に水相、ひいては多くの水が、メタクロレインを高い割合で含み得る有機相から分離される。
【0017】
好ましくは、第2の分離物質混合物を第2の蒸留塔に送り、そこで少なくとも第3の蒸留物質混合物と第4の蒸留物質混合物とに分離することができ、その際、第3の蒸留物質混合物は、第2の蒸留塔の頂部に気相として存在し、第4の蒸留物質混合物は、第2の蒸留塔の底部に存在し、水を含む。このようにしてさらに、第2の分離物質混合物に含まれるメタクロレインの大部分を頂部で排出することができる。さらに、触媒混合物は第1の蒸留塔の底部に集まり、第2の分離物質混合物に含まれる触媒混合物の量はそれに応じて少ないため、第2の蒸留塔において、問題となる物質による汚染がわずかである缶出液を得ることができ、廃棄処理において有利である。
【0018】
特に好ましくは、第3の蒸留物質混合物を第2の蒸留塔の塔頂から排出して第1の冷却器に導入することができる。これにより、第3の蒸留物質混合物用の専用の冷却器および相分離器が不要となり、この点で、設備コストが削減されている。第1の冷却器では、第3の蒸留物質混合物がその凝縮液に合流し、これが第1の相分離器に送られる。
【0019】
本発明の有利な実施形態では、第3の蒸留物質混合物を第2の冷却器に導入してそこで凝縮させ、第2の冷却器から凝縮液を排出して第1の相分離器に導入することができる。第2の冷却器では、第3の蒸留物質混合物を第1の冷却器と独立して凝縮させることができる。さらに、第3の蒸留物質混合物を第2の蒸留塔に少なくとも部分的に再循環させるために、第2の冷却器を利用することができる。
【0020】
特に有利には、第3の蒸留物質混合物を第2の冷却器に導入してそこで凝縮させることができ、凝縮液を、第2の冷却器から排出して第2の相分離器に導入し、第2の相分離器において第3の分離物質混合物と第4の分離物質混合物とに分離することができ、その際、第3の分離物質混合物は、メタクロレインを含む有機相として存在し、第4の分離物質混合物は、水相として存在する。第2の相分離器によって行われる物質分離によって、第3の分離物質混合物を、第1の分離物質混合物とは別の、十分に後処理されたメタクロレインの生成物流として利用することも、第1の分離物質混合物と統合して、十分に後処理されたメタクロレインの共通の生成物流を形成することもできる。つまり、第3の分離物質混合物を、必ずしも第1の相分離器に導入する必要はない。さらに、特に、第2の冷却器および第2の相分離器により、第3の蒸留物質混合物の一部、すなわち第4の分離物質混合物を第2の蒸留塔に返送し、それによって第2の蒸留塔で特に良好な物質分離、特に一方ではメタクロレインの、他方では水の良好な分離を実施できる可能性がある。
【0021】
特に有利には、第3の蒸留物質混合物は第1の蒸留塔に導入される。このようにして、第3の蒸留物質混合物は、第1の蒸留塔および第1の相分離器によって行われる後処理に供給される。
【0022】
有利には、第3の蒸留物質混合物は減圧容器に導入される。このようにして、第3の蒸留物質混合物は、減圧容器を経由して、第1の蒸留塔および第1の相分離器によって行われる後処理に供給される。
【0023】
有利な変形例では、第2の分離物質混合物を第1の蒸留塔に供給することができる。この第2の分離物質混合物の第1の蒸留塔への返送によって、第1の蒸留物質混合物の純度を向上させることができ、すなわち、第1の蒸留物質混合物中の物質のうち第1の蒸留塔の頂部を通じて分離される割合を、前述の返送によって増加させることができる。さらに、返送された第2の分離物質混合物を用いることで、ここから第1の蒸留塔の頂部を通じて液滴が同伴するのを打ち消すことができる。
【0024】
本発明によれば、装置上の課題は、請求項11の特徴を有する製造装置によって解決される。反応器から出る反応混合物は、液体であり、圧力下にある。これが減圧されると、反応混合物の一部が気相に移行して第1の減圧物質混合物を形成し、反応混合物の一部は液相に残って第2の減圧物質混合物を形成する。第1の減圧物質混合物中のメタクロレイン含有量は、第2の減圧物質混合物中のメタクロレイン含有量よりも多い。その結果、減圧は、メタクロレイン含有量の高い物質混合物を得るためのステップとなっている。減圧容器により、第1および第2の減圧物質混合物を互いに分離することができ、したがって、それぞれさらなる後処理ステップに別個に供給することができる。
【0025】
減圧は冷却を伴う。そのため、この冷却のために追加のエネルギーコストや設備コストは必要ない。また、減圧に伴う冷却にもかかわらず、減圧に相当するエネルギー量が系内に残る。
【0026】
第2の減圧物質混合物のみを第1の蒸留塔に送り、蒸留プロセスのために加熱すれば済む。第1の減圧物質混合物を直ちに第1の冷却器に送り、そこで第1の蒸留塔の頂部から来る第1の蒸留物質混合物と共に凝縮することができる。このため、第1の蒸留塔は、減圧容器の第2の出口に流体的に接続されており、第1の冷却器は、減圧容器の第1の出口および第1の蒸留塔の頂部に流体的に接続されている。
【0027】
好ましくは、製造装置は、第1の冷却器に流体的に接続された第1の相分離器を有することができ、この第1の相分離器で、第1の冷却器から供給された凝縮液に含まれる有機相の第1の分離物質混合物と、第1の冷却器から供給された凝縮液に含まれる水相の第2の分離物質混合物とを分離することができ、その際、第1の相分離器は、第1の分離物質混合物を排出するための第1の出口と、第2の分離物質混合物を排出する第2の出口とを有することができる。この構成により、容易かつ効果的に水相、ひいては多くの水を、メタクロレインを高い割合で含み得る有機相から分離することができる。
【0028】
特に有利には、製造装置は、頂部と底部とを有する第2の蒸留塔を有することができ、これにより、第2の分離物質混合物を少なくとも、気相として存在しメタクロレインを含む第3の蒸留物質混合物と、液相として存在し水を含む第4の蒸留物質混合物とに分離することができ、また製造装置は、第2の蒸留塔と第1の相分離器の第2の出口とを接続する相分離器排出管設備を有することができ、これを通じて第2の分離物質混合物を第1の相分離器の第2の出口から第2の蒸留塔に送ることができる。第2の蒸留塔によりさらに、第2の分離物質混合物に含まれるメタクロレインの大部分を分離することができ、これは、頂部を通じて排出された第3の蒸留物質混合物を含む。第2の分離物質混合物に含まれる触媒混合物の量はそれに応じて少ないため、問題となる物質による汚染がわずかである、第2の蒸留塔の底部に集まる残留物を得ることができ、廃棄処理において有利である。
【0029】
特に好ましくは、蒸留塔排出管設備は、第2の蒸留塔の頂部と第1の冷却器とを流体的に接続することができ、第3の蒸留物質混合物を、第2の蒸留塔の頂部から蒸留塔排出管設備を通じて第1の冷却器に送ることができる。この構成により、第3の蒸留物質混合物を第1の冷却器で凝縮することができる。その結果、第3の蒸留物質混合物の凝縮に別個の冷却器を必要とせず、この点で、設備コストが削減されている。第1の冷却器では、第3の蒸留物質混合物がその凝縮液に合流し、これを第1の相分離器に送ることができる。
【0030】
有利には、製造装置は、第2の冷却器と、第2の蒸留塔の頂部を第2の冷却器に流体的に接続する蒸留塔排出管設備とを有することができ、その際、第3の蒸留物質混合物を、第2の蒸留塔の頂部から蒸留塔排出管設備を通じて第2の冷却器に送り、第2の冷却器で凝縮させることができ、その際、第2の冷却器は、第1の相分離器に流体的に接続されていてよく、それによって、第2の冷却器の凝縮液を、第2の冷却器からさらに第1の相分離器に送ることができる。第2の冷却器では、第3の蒸留物質混合物を第1の冷却器と独立して凝縮させることができる。さらに、第3の蒸留物質混合物を第2の蒸留塔に少なくとも部分的に再循環させるために、第2の冷却器を利用することができる。
【0031】
好ましくは、製造装置は、第2の冷却器と、第2の蒸留塔の頂部を第2の冷却器に流体的に接続する蒸留塔排出管設備とを有することができ、その際、第3の蒸留物質混合物を、第2の蒸留塔の頂部から蒸留塔排出管設備を通じて第2の冷却器に送り、第2の冷却器で凝縮させることができ、また製造装置は、第2の冷却器に流体的に接続している第2の相分離器を有することができ、それにより、第2の冷却器の凝縮液を、第2の冷却器からさらに第2の相分離器に送ることができ、この第2の相分離器によって、第2の冷却器から供給された凝縮液に含まれる有機相の第3の分離物質混合物を、第2の冷却器から供給された凝縮液に含まれる水相の第4の分離物質混合物と分離することができ、その際、第2の相分離器は、第3の分離物質混合物を排出するための第1の出口と、第4の分離物質混合物を排出するための第2の出口とを有することができる。第2の相分離器によって行うことができる物質分離によって、第3の分離物質混合物を、第1の分離物質混合物とは別の、十分に後処理されたメタクロレインの生成物流として利用することも、第1の分離物質混合物と統合して、十分に後処理されたメタクロレインの共通の生成物流を形成することもできる。つまり、第3の分離物質混合物を、必ずしも第1の相分離器に導入する必要はない。さらに、特に、第2の冷却器および第2の相分離器により、第3の蒸留物質混合物の一部、すなわち第4の蒸留物質混合物を第2の蒸留塔に返送し、それによって第2の蒸留塔で特に良好な物質分離、特に一方ではメタクロレインの、他方では水の良好な分離を実施できる可能性がある。
【0032】
特に有利には、蒸留塔排出管設備により、第2の蒸留塔の頂部を第1の蒸留塔に流体的に接続することができ、第3の蒸留物質混合物を、第2の蒸留塔の頂部から蒸留塔排出管設備を通じて第1の蒸留塔に送ることができる。これにより、第3の蒸留物質混合物を、第1の蒸留塔および第1の相分離器を用いて行われる後処理に供給することができる。
【0033】
好ましくは、蒸留塔排出管設備により、第2の蒸留塔の頂部を減圧容器に流体的に接続することができ、第3の蒸留物質混合物を、第2の蒸留塔の頂部から蒸留塔排出管設備を通じて減圧容器に送ることができる。この構成により、第3の蒸留物質混合物を、減圧容器を経由して、第1の蒸留塔および第1の相分離器によって行われる後処理に供給することができる。
【0034】
有利な実施形態では、第1の蒸留塔と第1の相分離器の第2の出口とを接続する相分離器排出管設備が設けられていてよく、これを通じて、第2の分離物質混合物を第1の相分離器の第2の出口から第1の蒸留塔に送ることができる。これにより、第2の分離物質混合物の第1の蒸留塔への返送が可能となり、それにより、第1の蒸留物質混合物の純度を向上させることができ、すなわち、第1の蒸留物質混合物中の物質のうち第1の蒸留塔の頂部を通じて分離される割合を、前述の返送によって増加させることができる。さらに、返送された第2の分離物質混合物を用いることで、ここから第1の蒸留塔の頂部を通じて液滴が同伴するのを打ち消すことができる。
【0035】
特に好ましくは、製造装置は、メタクロレインを製造するために、特に、少なくとも酸および塩基をベースとする均一系触媒混合物の存在下でホルムアルデヒドおよびプロピオンアルデヒドからメタクロレインを製造するために使用することができる。
【0036】
図面に、本発明のいくつかの可能な実施形態を示す。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】概略フロー図に基づく本発明の第1の実施形態を示す図である。
図2】概略フロー図に基づく本発明の第2の実施形態を示す図である。
図3】概略フロー図に基づく本発明の第3の実施形態を示す図である。
図4】概略フロー図に基づく本発明の第4の実施形態を示す図である。
図5】概略フロー図に基づく本発明の第5の実施形態を示す図である。
【0038】
図1図5の概略フロー図において、矢印は、当該処理を行う際の各媒体の流れ方向を示している。矢印を省略した場合、図1図5は、本発明の第1~第5の実施形態の製造装置を概略的に表したものとなる。
【0039】
図1を参照する。ここで例示された本発明の第1の実施形態の製造装置100は、過圧下で液相での反応を行うことができる反応器1を有し、この反応器では、水の存在下、かつ少なくとも酸および塩基をベースとする均一系触媒の存在下でホルムアルデヒドおよびプロピオンアルデヒドからメタクロレインが生成される。反応器排出管設備2は、反応器1と減圧弁3とを流体的に接続し、それによって反応器排出管設備2を通じて反応器1から減圧弁3へ反応物混合物を送ることができる。減圧弁3により、反応器1から来て過圧の状態にある反応混合物を低圧に減圧させることができ、その際、減圧弁3により同時に反応器1内の圧力を調整することができる。減圧弁3は、圧力保持/減圧弁とも呼ぶことができる。
【0040】
減圧弁3は、特に減圧弁排出管設備4を通じて製造装置100の減圧容器5と流体的に接続されている。減圧容器5では、反応混合物の減圧により気相に移行する反応混合物の画分である第1の減圧物質混合物と、反応混合物の減圧後に液相に残る反応混合物の画分である第2の減圧物質混合物とを互いに分離することができる。減圧容器5は、減圧ドラムとして示すこともでき、その際、これはドラム形状を有する必要はなく、またフラッシュボックスとして示すこともできる。
【0041】
減圧容器5は、第1の減圧物質混合物を排出するための第1の出口6と、第2の減圧物質混合物を排出するための第2の出口7とを有する。
【0042】
製造装置100はさらに、第1の冷却器9を有する。減圧容器5の第1の出口6は、第1の減圧容器排出管設備8を通じて第1の冷却器9に流体的に接続されており、これにより減圧容器5から第1の冷却器9に第1の減圧物質混合物を送ることができる。第1の冷却器9により、第1の減圧物質混合物を凝縮させることができる。
【0043】
製造装置100はさらに、頂部12と底部13とを有する第1の蒸留塔11を有する。減圧容器5の第2の出口7は、第2の減圧容器排出管設備10を通じて第1の蒸留塔11と流体的に接続されており、その際、第2の減圧物質混合物を、減圧容器5から第2の減圧容器排出管設備10を通じて第1の蒸留塔11に送ることができる。第1の蒸留塔11では、第2の減圧物質混合物を、気相として存在し、かつメタクロレインを含む第1の蒸留物質混合物と、液相として存在し、かつ水および触媒を含む第2の蒸留物質混合物とに分離することができる。
【0044】
第1の蒸留塔11の頂部12は、第1の蒸留塔排出管設備14を通じて第1の冷却器9と流体的に接続されている。第1の蒸留塔排出管設備14を通じて、第1の蒸留塔11の頂部12から第1の冷却器9に第1の蒸留物質混合物を送ることができる。第1の冷却器9では、供給された第1の蒸留物質混合物を凝縮させることができる。
【0045】
第1の減圧容器排出管設備8および第1の蒸留塔排出管設備14は、それぞれ第1の冷却器9のそれぞれの専用の入口と接続されている。
【0046】
第1の蒸留塔11の底部13は、第2の蒸留塔排出管設備15を通じて反応器1と流体的に接続されている。第2の蒸留塔排出管設備15を通じて、第1の蒸留塔11から第2の蒸留物質混合物を反応器1に送ることができる。
【0047】
製造装置100はさらに、第1の相分離器18を有する。第1の相分離器18は、冷却器排出管設備17を通じて第1の冷却器9の凝縮液出口16に流体的に接続されている。冷却器排出管設備17を通じて、第1の冷却器9の凝縮液を第1の冷却器9から第1の相分離器18に送ることができる。第1の相分離器18により、第1の冷却器9の凝縮液に含まれる有機相の第1の分離物質混合物と、第1の冷却器9の凝縮液に含まれる水相の第2の分離物質混合物とを分離することができる。第1の相分離器18は、第1の分離物質混合物を排出するための第1の出口19と、第2の分離物質混合物を排出するための第2の出口20とを有する。第1の相分離器排出管設備21は、第1の相分離器18の第1の出口19に流体的に接続されており、これを通じて第1の分離物質混合物を第1の相分離器18から排出することができる。第2の相分離器排出管設備22は、第2の出口20に流体的に接続されており、これを通じて第2の分離物質混合物を第1の相分離器18から排出することができる。
【0048】
製造装置100はさらに、頂部24と底部25とを有する第2の蒸留塔23を有する。第1の相分離器18の第2の出口20は、第2の相分離器排出管設備22を通じて第2の蒸留塔23に流体的に接続されている。第2の相分離器排出管設備22を通じて、第2の分離物質混合物を、第1の相分離器18の第2の出口から第2の蒸留塔23に送ることができる。第2の蒸留塔23では、第2の分離物質混合物を少なくとも、気相として存在しメタクロレインを含む第3の蒸留物質混合物と、液相として存在し水を含む第4の蒸留物質混合物とに分離することができる。
【0049】
第2の蒸留塔23の頂部24には、第3の蒸留塔排出管設備26が流体的に接続されている。第2の蒸留塔23の頂部24は、第3の蒸留塔排出管設備26を通じて第1の冷却器9に流体的に接続されており、その際、第3の蒸留物質混合物を、第3の蒸留塔排出管設備26を通じて、第2の蒸留塔23の頂部24から第1の冷却器9に送ることができる。
【0050】
第3の蒸留塔排出管設備26は、第1の冷却器9の専用の入口に接続されている。
【0051】
第2の蒸留塔23の底部25には、第4の蒸留塔排出管設備27が流体的に接続されており、これを通じて第2の蒸留塔23から第4の蒸留物質混合物を排出することができる。
【0052】
製造装置100は、第1の蒸留塔11の底部13に流体的に接続されている膜装置28を有する。膜装置28は、第2の蒸留塔排出管設備15によって第1の蒸留塔11の底部13と流体的に接続されており、その際、第2の蒸留塔排出管設備15を通じて第1の蒸留塔11の底部13から膜装置28に第2の蒸留物質混合物を送ることができる。
【0053】
第2の蒸留塔排出管設備15を通じて、第2の分離物質混合物を製造装置100から排出することもできる。
【0054】
図1に示す実施形態の第2の蒸留塔排出管設備15は、第1のセクション29、第2のセクション30、第3のセクション31、および第4のセクション32を有する。第1のセクション29は、一方では第1の蒸留塔11の底部13と流体的に接続されており、他方では第2のセクション30、第3のセクション31および第4のセクション32と流体的に接続されている。第2のセクション30は、反応器1と流体的に接続されており、これにより、第2の蒸留物質混合物を、第1の蒸留塔11の底部13から第2の蒸留塔排出管設備15の第1のおよび第2のセクション29、30を経由して、第1の蒸留塔11の底部13から反応器1へ送ることができる。第2の蒸留塔排出管設備15の第1および第3のセクション29、31を経由して、第2の蒸留物質混合物を製造装置100から排出することができる。第4のセクション32は、膜装置28と流体的に接続されており、それにより、第2の蒸留物質混合物を、第1の蒸留塔11の底部13から第2の蒸留塔排出管設備15の第1および第4のセクション29、32を経由して膜装置28に送ることができる。
【0055】
膜装置28により、膜装置28に供給された第2の蒸留物質混合物に含まれる触媒の少なくとも一部を保持することができる。膜装置28は、保持された触媒を含む濃縮液物質混合物を排出するための第1の出口33と、透過液物質混合物を排出するための第2の出口34とを有する。第1の出口33は、第1の膜装置排出管設備35に流体的に接続されており、これにより濃縮液物質混合物を膜装置28の第1の出口33を通じて膜装置28から排出することができる。
【0056】
図1に示す実施例では、第1の膜装置排出管設備35は、第1のセクション36、第2のセクション37、および第3のセクション38を有する。第1のセクション36は、一方では膜装置28の第1の出口33に、他方では第1の膜装置排出管設備35の第2のセクション37および第3のセクション38に流体的に接続されている。第1の膜装置排出管設備35の第2のセクション37は、第2の蒸留塔排出管設備15の第2のセクション30に流体的に接続されており、それにより、濃縮液物質混合物を、膜装置28からその第1の出口33、第1の膜装置排出管設備35の第1および第2のセクション36、37を経由して第2の蒸留塔排出管設備15の第2のセクション30に送ることができ、これを通じてさらに反応器1に送ることができる。第1の膜装置排出管設備35の第1および第3のセクション36、38を経由して、濃縮液物質混合物を製造装置100から排出することができる。
【0057】
膜装置28の第2の出口34には、第2の膜装置排出管設備39が流体的に接続されており、その際、透過液物質混合物を、膜装置28の第2の出口34から第2の膜装置排出管設備39を通じて製造装置100から排出することができる。
【0058】
図1に示す本発明の実施形態では、ホルムアルデヒド供給源40は、ホルムアルデヒド供給管設備41を通じて第2の蒸留塔排出管設備15に流体的に接続されており、それにより、ホルムアルデヒドを、ホルムアルデヒド供給管設備41を通じて第2の蒸留塔排出管設備15に送ることができ、これを通じてさらに反応器1に送ることができる。プロピオンアルデヒド供給源42は、プロピオンアルデヒド供給管設備43を通じて第2の蒸留塔排出管設備15に流体的に接続されており、それにより、プロピオンアルデヒドを、プロピオンアルデヒド供給源42からプロピオンアルデヒド供給管設備43を通じて第2の蒸留塔排出管設備15に送ることができ、これを通じてさらに反応器1に送ることができる。塩基供給源44は、塩基供給管設備45を通じて第2の蒸留塔排出管設備15に流体的に接続されており、それにより、塩基を、塩基供給管設備45を通じて第2の蒸留塔排出管設備15に送ることができ、これを通じてさらに反応器1に送ることができる。酸供給源46は、酸供給管設備47を通じて第2の蒸留塔排出管設備15に流体的に接続されており、それにより、酸を、酸供給管設備47を通じて第2の蒸留塔排出管設備15に送ることができ、これを通じてさらに反応器1に送ることができる。
【0059】
製造装置100により、例えば、水の存在下、かつ少なくとも酸および塩基をベースとする均一系触媒の存在下でホルムアルデヒドおよびプロピオンアルデヒドからメタクロレインを製造する後述の方法を実施することができる。
【0060】
第2の蒸留塔排出管設備15の第2のセクション30を通じて、ホルムアルデヒド、プロピオンアルデヒド、水、および均一系触媒が反応器1に導入される。ここで、新たなホルムアルデヒドがホルムアルデヒド供給源40からホルムアルデヒド供給管設備41を通じて第2の蒸留塔排出管設備15の第2のセクション30に導入され、新たなプロピオンアルデヒドがプロピオンアルデヒド供給源42からプロピオンアルデヒド供給管設備43を通じて導入され、新たな塩基が塩基供給源44から塩基供給管設備45を通じて導入され、新たな酸が酸供給源46から酸供給管設備47を通じて導入される。ホルムアルデヒド、酸および塩基は、それぞれ水溶液中に存在し、すなわち、これらの水溶液は水を含む。酸は、均一系触媒の塩基と組み合わせられる。
【0061】
適切なホルムアルデヒド水溶液は、例えば、ホルムアルデヒドの含有量がホルムアルデヒド溶液の全質量に対して30~55質量%であり、好ましくはメタノールの含有量がホルムアルデヒド溶液の全質量に対して例えば0.3~10質量%と低いものである。
【0062】
プロピオンアルデヒドは、高濃度で入手可能である。プロピオンアルデヒド原料混合物は、例えば、残留水分量がプロピオンアルデヒド原料混合物の全質量に対して0.1~2.5質量%であり、プロピオン酸含有量がプロピオンアルデヒド原料混合物の全質量に対して0.01~1質量%であるものが入手可能である。
【0063】
反応器入口で、ホルムアルデヒドは、プロピオンアルデヒドよりわずかに過剰であることが好ましい。特に好ましくは、反応器入口でのホルムアルデヒドに対するプロピオンアルデヒドのモル比は、0.90~0.99、非常に好ましくは0.95~0.98の範囲となるように選択される。これにより、一方では、低いホルムアルデヒド消費量で良好な転化率が達成できる。他方では、同時にさらに触媒が保護される。これは、ホルムアルデヒドの含有量が多すぎると、ジメチルアミンからトリメチルアミンへの変換が促進されるためである。
【0064】
適切な酸は、特に無機酸、有機モノカルボン酸、有機ジカルボン酸および有機ポリカルボン酸である。その他の有機酸も原理的には使用可能であるが、コスト上の理由で通常は使用されない。好ましくは有機モノカルボン酸が使用される。
【0065】
無機酸としては、例えば、硫酸および/またはリン酸を使用することができる。
【0066】
有機モノカルボン酸のうち、脂肪族有機モノカルボン酸が好ましい。脂肪族モノカルボン酸のうち、2~10個の炭素原子を有するものが好ましく、特に2個、3個または4個の炭素原子を有するものが好ましい。
【0067】
脂肪族ジカルボン酸およびポリカルボン酸のうち、2~10個の炭素原子を有するものが好ましく、特に2個、4個、5個または6個の炭素原子を有するものが好ましい。有機ジカルボン酸および有機ポリカルボン酸は、芳香族カルボン酸、芳香脂肪族カルボン酸および脂肪族カルボン酸であってよく、脂肪族ジカルボン酸およびポリカルボン酸が好ましい。
【0068】
例えば、酢酸、プロピオン酸、メトキシ酢酸、n-酪酸、イソ酪酸、シュウ酸、コハク酸、酒石酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸またはフマル酸を用いることができるが、酢酸を用いることが好ましい。
【0069】
また、2種類以上の酸の混合物を用いてもよい。
【0070】
適切な塩基は、特に有機塩基であり、アミンが好ましい。アミンのうち、第二級アミンが好ましく、特に式RNHのものが好ましく、ここで、RおよびRは、
- 同一であっても異なっていてもよく、
- それぞれ、以下のものを表すことができる:
・1~10個の炭素原子、好ましくは1~8個の炭素原子、特に好ましくは1~4個の炭素原子を有するアルキル基であって、その際、炭素原子は、エーテル基、ヒドロキシ基、第二級アミノ基または第三級アミノ基により、好ましくはこれらの基のうち1つまたは2つの基により置換されていてもよく、
・7~12個の炭素原子を有するアラルキル基、
・5~7個の炭素原子を有するシクロアルキル基、
・隣接する窒素と一緒に、複素環、好ましくは5~7員環の要素となっており、該環はさらに、窒素原子および/または酸素原子を含んでいてもよく、かつ1~4個の炭素原子を有するヒドロキシアルキル基またはアルキル基によって置換されていてもよい。
【0071】
1種以上の塩基を使用することができる。
【0072】
アミンとして、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、メチルエチルアミン、メチルプロピルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジイソブチルアミン、メチルイソプロピルアミン、メチルイソブチルアミン、メチル-sec.-ブチルアミン、メチル-(2-メチルペンチル)アミン、メチル-(2-エチルヘキシル)アミン、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、N-メチルピペラジン、N-ヒドロキシエチルピペラジン、ピペラジン、ヘキサメチレンイミン、ジエタノールアミン、メチルエタノールアミン、メチルシクロヘキシルアミン、メチルシクロペンチルアミンまたはジシクロヘキシルアミンを使用することができる。
【0073】
また、2種以上の塩基の混合物を使用することもできる。
【0074】
アミンの混合物を使用する場合、使用するアミンの少なくとも1つがヒドロキシ基を有していないアミンとなるように選択することが好ましい。特に好ましくは、反応器中の少なくとも1つのヒドロキシ基を有するアミンの割合は、使用するアミンの質量に対して、50質量%以下、好ましくは30質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。
【0075】
反応器中のプロピオンアルデヒドに対する酸(合計)の割合は、好ましくは0.1~20モル%の範囲、特に好ましくは0.5~10モル%の範囲、非常に特に好ましくは1~5モル%の範囲にある。反応器内の酸の量、つまり触媒の量が少なすぎると、反応器をかなり大型に建造し、かなり高温で運転しなければならなくなる。酸の量、つまり触媒の量が多すぎると、反応器がかなり高温になる。
【0076】
反応器内で、塩基に比べて酸を若干多くすることが推奨される。マンニッヒ反応にはプロトンが必要なため、このことが有利となる。また、酸は塩基と結合することができる。例えば、酸として酢酸を、塩基としてジメチルアミンを選択すると、酢酸が易揮発性のジメチルアミンと結合する。これにより、易揮発性成分であるジメチルアミンが第1の蒸留塔11の頂部に達することが防止される。例えば、酸として酢酸、塩基としてジメチルアミンを選択した場合、反応器入口でのジメチルアミンに対する酢酸のモル比は、2.0~1.1の範囲が好適であり、ジメチルアミンに対する酢酸のモル比が1.1であることが特に好ましい。
【0077】
反応器入口でのプロピオンアルデヒドに対する塩基(合計)の割合は、好ましくは反応器の入口でのプロピオンアルデヒドのモル数に対して0.1~20モル%の範囲であり、特に好ましくは反応器の入口でのプロピオンアルデヒドのモル数に対して0.5~15モル%の範囲であり、非常に特に好ましくは反応器の入口でのプロピオンアルデヒドのモル数に対して1~10モル%の範囲である。塩基の使用量が少なすぎると、反応の選択性が低くなり、反応器をより高温で運転する必要がある。塩基の使用量が多すぎると、反応の実施はますます不経済になり、廃水がさらに汚染される。例えば、ジメチルアミンを塩基として用いる場合、反応器入口でのプロピオンアルデヒドに対するジメチルアミンのモル比は、好ましくは0.08~0.12、特に好ましくは0.08~0.1の範囲である。
【0078】
マンニッヒ塩基を分解するのに十分な酸度を有し、特に易揮発性の塩基を使用した場合に塩基を良好に結合させることができ、第1の蒸留塔の底部13に良好に移行させることができ、かつそこから排出させることができるようにするためには、塩基に対する酸の化学量論比を1より大きくすることが好ましい。
【0079】
反応器1では、液相でマンニッヒ反応が行われ、その際、ホルムアルデヒドおよびプロピオンアルデヒドを水の存在下、かつ均一系触媒の存在下で反応させてメタクロレインを生成する。反応器1の反応ゾーンの出口での反応温度は、好ましくは100℃~210℃の範囲、特に好ましくは110℃~200℃の範囲、非常に特に好ましくは120℃~190℃の範囲、非常に殊に好ましくは130℃~180℃の範囲となるように選択される。これにより、高い転化率および良好な収率を達成することができる。反応器1内の圧力は、反応器1内の反応混合物が液体のままとなるように、少なくとも十分に高く選択される。この前提の下で、反応器1内に適切な圧力が設定され、この圧力は、好ましくは15~100barの範囲、特に好ましくは18~80barの範囲、非常に特に好ましくは22~50barの範囲、非常に殊に好ましくは25~40barの範囲にある。圧力は、絶対圧である。
【0080】
液体反応混合物が反応器1の反応ゾーンを出た後でも、特に反応混合物が反応ゾーン内を支配している圧力下にあり続け、反応ゾーンを出るときに有する温度を実質的に有し続けるならば、マンニッヒ反応および他の後続反応、例えばメタクロレインからジメタクロレインへの反応またはメタクロレインのオリゴマー化がさらにかなりの程度進行し得る。反応滞留時間とは、ここでは、反応器1の反応ゾーンに出発材料が進入してから減圧弁3で反応混合物の減圧が開始されるまでの平均時間であると理解される。反応ゾーンでの滞留時間は、好ましくは0.001分~25分の範囲、特に好ましくは0.001分~10分の範囲、非常に特に好ましくは0.1秒~300秒、非常に殊に好ましくは1秒~50秒、さらに好ましくは5秒~20秒の範囲である。こうすることで、良好な収率で、副反応および後続反応を良好に制限することができる。
【0081】
反応混合物は、メタクロレイン、同伴成分である水、未反応ホルムアルデヒド、未反応プロピオンアルデヒド、および触媒を含む。また、1種以上の以下のさらなる同伴成分を含むことができる:
- 新たなホルムアルデヒド水溶液にメタノールが含まれていた場合には、メタノール
- ジメタクロレイン
- ジメチルアミンを塩基として使用する場合には、トリメチルアミン
- 高沸点物質、特に高沸点アルドール化生成物
- オリゴマー、特にメタクロレインのオリゴマー
- 安定剤(例えば、Tempol)
- プロピオンアルデヒドの二量体
【0082】
反応混合物は、反応器排出管設備2を通じて減圧弁3に送られ、減圧弁3により所望の圧力、例えば500mbar(絶対圧)から常圧の範囲の圧力に減圧される。減圧によって反応混合物の少なくとも一部が液相から気相に移行し、それによって、第1の減圧物質混合物、すなわち減圧により気相に移行する反応混合物の画分が形成される。減圧後に液相に残る反応混合物の画分は、第2の減圧物質混合物である。メタクロレインと水との共沸混合物は水よりも沸点が低く、したがって水よりも蒸発し易いため、第1の減圧物質混合物は、第2の減圧物質混合物よりもメタクロレインの質量割合が多い。この場合、反応混合物に含まれる全メタクロレインの90質量%超が第1の減圧物質混合物に移行することができる。すなわち、減圧弁3による減圧は、すでにメタクロレインを精製するための第1のステップである。減圧と、反応混合物の一部の気相への移行とによって、気相に移行する反応混合物の部分(第1の減圧物質混合物)と、液相に残る反応混合物の部分(第2の減圧物質混合物)の温度が低下する。その結果、この冷却効果のために他の冷却を必要としない。好ましくは、本方法は、第1および第2の減圧物質混合物が、減圧後に約60~120℃の範囲の温度、好ましくは約70~110℃の範囲の温度、特に好ましくは約80~90℃の範囲の温度を有するように運転される。これらの温度範囲では、起こり得る望ましくない副反応および後続反応の程度は、考えられているよりも重大ではないことがわかっている。特に、第1および第2の減圧物質混合物は、数分間、好ましくは0.1~15分間、特に好ましくは1~5分間、なおより好ましくは0.5~3分間、示した温度範囲に留まっていてもよい。これらは、望ましくない副反応および後続反応に関して十分に認容できる滞留時間である。好ましくは、減圧容器5における第1の減圧物質混合物の滞留時間は、第2の減圧物質混合物の滞留時間よりも短い。
【0083】
減圧弁3に供給された反応混合物が、例えば165℃の温度および35bar(絶対圧)の圧力を有し、組成物がその全質量に対して63.51質量%の水および29.04質量%のメタクロレインを含む場合、0.85bar(絶対圧)への急速な減圧によって、第1および第2の減圧物質混合物の温度は78.9℃となり得る(本発明による第1の試験例を参照のこと)。
【0084】
第1の減圧物質混合物および第2の減圧物質混合物は、減圧弁排出管設備4を通じて減圧容器5に送られる。減圧容器5では、第1の減圧物質混合物と第2の減圧物質混合物とが互いに分離される。
【0085】
第1の減圧物質混合物は、減圧容器5の第1の出口6および第1の減圧容器排出管設備8を通じて第1の冷却器9に送られる。第2の減圧物質混合物は、減圧容器5の第2の出口7および第2の減圧容器排出管設備10を通じて第1の蒸留塔11に送られる。
【0086】
好ましくは、減圧容器5は、第2の減圧物質混合物が十分な充填レベルでその中に存在するように運転され、その際、減圧容器5における第2の減圧物質混合物の滞留時間は、第1の減圧物質混合物の滞留時間よりも著しく高い。
【0087】
第1の冷却器9において、第1の減圧物質混合物が凝縮される。
【0088】
第1の蒸留塔11において、第2の減圧物質混合物は、第1の蒸留物質混合物と第2の蒸留物質混合物とに分離され、その際、第1の蒸留物質混合物は、第1の蒸留塔11の頂部12に気相として存在し、第2の蒸留物質混合物は、第1の蒸留塔11の底部13に液相として存在する。第1の蒸留物質混合物は、第2の蒸留物質混合物よりもメタクロレインの質量割合が高い。第1の蒸留物質混合物はさらに、未反応プロピオンアルデヒドおよび未反応ホルムアルデヒドを含む。第2の蒸留物質混合物は、第1の蒸留物質混合物よりも水の質量割合が高い。さらに、第2の蒸留物質混合物は、第1の蒸留物質混合物と比較して、第2の減圧物質混合物によって供給された触媒の少なくともより大きい部分を含む。さらに、第2の蒸留物質混合物は、未反応ホルムアルデヒドを含む。
【0089】
第2の減圧物質混合物によって供給された触媒のほぼ全てが第1の蒸留塔11の底部13に存在するように、第1の蒸留塔11のプロセスを設計することができる。
【0090】
例えば、第1の蒸留塔11を、その底部13の温度が100℃をわずかに超えるように、常圧で運転することができる。(常圧で)100℃をわずかに超える上昇は、底部13に存在する触媒分によって第2の蒸留物質混合物の沸点が相応に上昇することによるものである。第1の蒸留塔11の頂部12の温度は、常圧で68~98℃の範囲で、好ましくは80~90℃の範囲で選択することができる。その結果、頂部12の温度が低いときよりも多くの水が頂部12に達する。
【0091】
第1の蒸留塔排出管設備14を通じて、第1の蒸留物質混合物は第1の冷却器9に送られ、そこで同様に凝縮される。第1の冷却器9の凝縮液は、メタクロレインを含む有機相(第1の分離物質混合物)と、水相(第2の分離物質混合物)とを含む。
【0092】
第1の冷却器9の凝縮液は、その凝縮液出口16および冷却器排出管設備17を通じて第1の相分離器18に送られる。そこで有機相と水相、すなわち第1の分離物質混合物と第2の分離物質混合物とが互いに分離される。有機相、すなわち第1の分離物質混合物は、第1の相分離器18の第1の出口19および第1の相分離器排出管設備21を通じて、例えばタンクまたはさらなる処理装置、例えばメチルメタクリレート製造用装置へ排出される。水相、すなわち第2の分離物質混合物は、第1の相分離器18の第2の出口20および第2の相分離器排出管設備22を通じて、第2の蒸留塔23に送られる。第2の分離物質混合物中の水の含有量は、第2の分離物質混合物の全質量に対して75質量%以上であり得る。第2の分離物質混合物中のメタクロレインの含有量は、第2の分離物質混合物の全質量に対して2~10質量%の範囲であり得る。第2の分離物質混合物中のメタノールの含有量は、第2の分離物質混合物の全質量に対して1~10質量%の範囲であり得る。第2の分離物質混合物は、ホルムアルデヒドを含むこともできる。当然のことながら、第2の分離物質混合物の全成分を合わせたものが、第2の分離物質混合物の全質量に対して100質量%を占める。
【0093】
本発明の本実施形態において、第2の分離物質混合物が第1の蒸留塔11ではなく第2の蒸留塔23に送られることにより、第1の蒸留塔11に達する水が少なくなる。これにより、第1の蒸留塔11の底部13における触媒の濃度が、第2の分離物質混合物が第1の蒸留塔11に送られる場合よりも高くなる。反応器1に返送できる水の量は限定的であるため、反応器1に返送できる第2の蒸留物質混合物の量も、そこに含まれる水の量によって抑制されている。本発明の本実施形態による第2の蒸留物質混合物は、より高い割合の触媒を含むため、この触媒のより高い割合を反応器1に返送することができる。そのため、新たな触媒を節約することができる。
【0094】
第1の蒸留塔11に供給される水の量がより少ないため、第2の蒸留物質混合物の生成量も少なくなる。したがって、第2の蒸留物質混合物を廃棄処理する場合は、より少ない量の第2の蒸留物質混合物を廃棄すれば済む。
【0095】
第2の蒸留塔23で、第2の分離物質混合物は、第3の蒸留物質混合物と第4の蒸留物質混合物とに分離され、その際、第3の蒸留物質混合物は、第2の蒸留塔23の頂部24に気相として存在し、かつメタクロレインを含み、第4の蒸留物質混合物は、第2の蒸留塔23の底部25に液相として存在し、かつ水を含む。触媒の大部分は第1の蒸留塔11の底部13に達するため、それに応じて、第2の蒸留塔23の底部25に達する触媒はより少なくなる。したがって、第4の蒸留物質混合物は、第2の蒸留物質混合物よりもその環境特性の点で問題が少ない。第2の減圧物質混合物に含まれる触媒のほぼ全量が第1の蒸留塔11の底部13に集まるように第1の蒸留塔11を運転することができ、またそれに加えてさらに、減圧容器5内の第2の減圧物質混合物の液滴がその第1の出口6を通じて外に出ることを十分に効率的に防止できるため、触媒をわずかにのみ含むか、または触媒がほとんど含まれない第4の蒸留物質混合物を得ることが可能となる。このように、触媒の環境負荷がわずかであるかまたは実質的にない第4の蒸留物質混合物を得ることができ、その点で、例えば自治体の排水処理施設に放出することで容易に廃棄処理することができる。
【0096】
第2の蒸留塔23は、例えばメタノールやメタクロレインなどの低沸点物質が第2の蒸留塔の頂部24に達することを促進するために、その底部25において約100~102℃の範囲の温度が優勢になるように、例えば常圧で運転することができる。第2の蒸留塔の頂部24の温度は、常圧で65~99℃の範囲、好ましくは70~95℃の範囲に選択することができる。これにより、廃水中の低沸点物質の十分な減少が促進される。
【0097】
例えば、その全質量に対して30質量%超のメタクロレインと、40質量%超の水とを含む第3の蒸留物質混合物を得ることができる。さらなる成分として、第3の蒸留物質混合物は主にメタノールを含むことができる。ここで、例えば、その全質量に対して98質量%超の水と、1質量%未満のメタノールとを含み、かつメタクロレインをほとんど含まない第4の蒸留物質混合物を得ることができる。
【0098】
第3の蒸留物質混合物は、第2の蒸留塔23の頂部24から第3の蒸留塔排出管設備26を通じて第1の冷却器9に送られ、そこで凝縮される。
【0099】
第4の蒸留物質混合物は、第2の蒸留塔23の底部25から第4の蒸留塔排出管設備27を通じて製造装置から排出される。これをタンクに収集してもよいし、さらなる処理装置、例えばメチルメタクリレートを製造するための製造装置に供給してもよく、その際、第4の蒸留物質混合物に含まれるメタクロレインは、メチルメタクリレート製造の出発材料である。
【0100】
第2の蒸留物質混合物は、第2の蒸留塔排出管設備15の第1のセクションを経由して送られる。その後、
- 第2の蒸留物質混合物のうち反応器1に送られる部分が、第2の蒸留塔排出管設備15の第2のセクション30に、ひいては反応器1に送られ、
- 第2の蒸留物質混合物のうち製造装置100から排出される部分が、第2の蒸留塔排出管設備15の第3のセクション31に送られ、
- 第2の蒸留物質混合物のうち膜装置28に送られる部分が、第2の蒸留塔排出管設備15の第4のセクション32に送られる。
【0101】
膜装置28では、第2の蒸留物質混合物に含まれる触媒の少なくとも一部が保持される(濃縮液物質混合物)。したがって、濃縮液物質混合物は、第2の蒸留物質混合物よりも触媒濃度が高い。これに対応して、膜装置28の透過液物質混合物は触媒の割合が低い。したがって、透過液物質混合物は、その触媒含有量の点で、濃縮液物質混合物よりも環境への負荷が低い。適切に効果的な膜装置を用いれば、触媒濃度が非常に低い透過液物質混合物を得ることが可能であり、例えば、透過液物質混合物を自治体の排水処理施設に放出することによって、その触媒濃度に関して問題なく廃棄処理することができる。
【0102】
膜装置としては、逆浸透膜装置が好ましい。
【0103】
濃縮液物質混合物は、膜装置28の第1の出口33を通じて、第1の膜装置排出管設備35の第1のセクション36に送られる。濃縮液物質混合物のうち反応器1に送られる部分は、第1の膜装置排出管設備35の第2のセクション37を経由して、第2の蒸留塔排出管設備15の第2のセクション30に送られる。濃縮液物質混合物のうち製造装置100から排出される部分は、第1の膜装置排出管設備35の第3のセクション38を経由して製造装置100から排出される。透過液物質混合物は、膜装置28の第2の出口34および第2の膜装置排出管設備39を通じて製造装置100から排出される。
【0104】
透過液物質混合物の触媒含有量が十分に少ない場合は、少なくともその触媒含有物に関しては、公共の排水処理施設に放出して廃棄処理することができる。
【0105】
第2の蒸留物質混合物に含まれる触媒、トリメチルアミンおよび/または望ましくない高沸点物質を廃棄処理することが問題である場合、濃縮液物質混合物の廃棄処理は、第2の蒸留塔排出管設備15の第3のセクション31を経由して第2の蒸留物質混合物を直接廃棄処理することに比べて、濃縮液物質混合物が同じ量の触媒、トリメチルアミンおよび/または望ましくない高沸点物質に対してより少ない水を含むという点で、より有利である。例えば、燃焼部に加えることにより廃棄処理する場合、第2の蒸留物質混合物を燃焼部に加えることにより同じ量の触媒、トリメチルアミンおよび/または望ましくない高沸点物質を廃棄処理する場合よりも、水を一緒に蒸発させる量が少なくて済むため、濃縮液物質混合物の廃棄処理に必要なエネルギーはより少ない。
【0106】
ジメチルアミンがトリメチルアミンに変換されることにより、第2の蒸留物質混合物および/または濃縮液物質混合物を反応器1に返送することによって、ジメチルアミンの含有量を犠牲にして第2の蒸留物質混合物中のトリメチルアミンの含有量が増加する。トリメチルアミンのためにジメチルアミンを減少させすぎると、それに伴って反応器1でのメタクロレイン収率が低下し、あるいは反応器1でのメタクロレイン収率の低下を十分に打ち消すために、それに対応して反応温度を上昇させることが必要となる。しかし、反応温度が高すぎると、望ましくない副生成物の発生が促進される。反応器1に返送されるトリメチルアミンの量は、特に、第2の蒸留塔排出管設備15の第3のセクション31を経由して第2の蒸留物質混合物を排出すること、および/または第1の膜装置排出管設備35の第3のセクション38を経由して濃縮液物質混合物を排出することによって減少させることができる。このように、失われた触媒は、新たな触媒を反応器1に供給することによって補うことができる。
【0107】
反応器1に返送できる水の量は限定的である。得られた第2の蒸留物質混合物に含まれる水の量が、反応器1に返送できるまたは返送される水の量よりも多いために、得られた第2の蒸留物質混合物の全てを反応器1に返送することができないか、または返送されない場合には、得られた第2の蒸留物質混合物に含まれる触媒の全てを再利用できるわけでない。反応器1に返送される第2の蒸留物質混合物の量を減らし、反応器1に導入される濃縮液物質混合物の量を増やすことにより、得られる第2の蒸留物質混合物に含まれる、反応器1に返送できる触媒の量を増やすことができる。
【0108】
特に、未反応ホルムアルデヒド、水および触媒は、第2の蒸留塔排出管設備15の第1のセクション29および/または膜装置排出管設備35の第2のセクション37から第2の蒸留塔排出管設備15の第2のセクション30に導入された物質混合物と共に反応器1に返送される。
【0109】
酸供給源46および塩基供給源44から適切な量の酸および塩基を反応器1に送ることによって、新たな触媒を反応器1に供給することができる。
【0110】
出発材料であるホルムアルデヒドおよびプロピオンアルデヒドは、ホルムアルデヒド供給源40およびプロピオンアルデヒド供給源42から反応器1に供給される。
【0111】
図2を参照する。ここでフロー図で概略的に示されている本発明の第2の実施形態の製造装置200は、本発明の第1の実施形態の製造装置100と一部のみ異なる。以下、相違点のみを説明する。
【0112】
本発明の第1の実施形態の製造装置100とは異なり、第2の実施形態の製造装置200は、さらに第2の冷却器51を有する。ここで、本発明の第1の実施形態の第3の蒸留塔排出管設備26とは対照的に、第2の蒸留塔23の頂部24を、第1の冷却器9とではなく第2の冷却器51に流体的に接続する第3の蒸留塔排出管設備50が設けられており、その際、第3の蒸留物質混合物を、第2の蒸留塔23の頂部24から、本発明の第2の実施形態の第3の蒸留塔排出管設備50を通じて第2の冷却器51に送ることができる。第2の冷却器51では、第3の蒸留物質混合物を凝縮させることができる。第2の冷却器51は、第2の冷却器排出管設備53によって第1の相分離器18に流体的に接続されている凝縮液出口52を有し、その際、第2の冷却器51の凝縮液を、第2の冷却器51から第2の冷却器排出管設備53を通じて第1の相分離器18に送ることができる。
【0113】
第2の冷却器51により、第3の蒸留物質混合物を第1の冷却器9とは独立して凝縮させることができる。第2の冷却器51は第1の相分離器18に流体的に接続されているため、第1の相分離器18を、第2の冷却器51の凝縮液のさらなる後処理にも使用することができる。つまり、第2の相分離器が不要になる。
【0114】
図3を参照する。ここでフロー図で概略的に示されている本発明の第3の実施形態の製造装置300は、本発明の第2の実施形態の製造装置200と一部のみ異なる。以下、相違点のみを説明する。
【0115】
図2に示す本発明の第2の実施形態の製造装置200とは異なり、本発明の第3の実施形態の製造装置300は、第2の相分離器61をさらに有し、この第2の相分離器61により、第2の冷却器51の凝縮液に含まれる有機相(第3の分離物質混合物)と、第2の冷却器51の凝縮液に含まれる水相(第4の分離物質混合物)とを分離することができる。ここで、第2の冷却器51の凝縮液出口52を、第1の相分離器18に代えて第2の相分離器61に流体的に接続する第2の冷却器排出管設備60が設けられており、それにより、第2の冷却器51の凝縮液を第2の冷却器51から第2の冷却器排出管設備60を通じて第2の相分離器61に送ることができる。第2の相分離器61は、分離された有機相を排出するための、すなわち第3の分離物質混合物を排出するための第1の出口62と、水相を排出するための、すなわち第4の分離物質混合物を排出するための第2の出口63とを有する。第2の相分離器61の第1の出口62は、第3の相分離器排出管設備64によって第1の相分離器排出管設備21に流体的に接続されており、それにより、第3の分離物質混合物を第3の相分離器排出管設備64を通じて第1の相分離器排出管設備21に導入し、第1の分離物質混合物と共に、下流側の合流点に続く第1の相分離器排出管設備21のセクションを経由して排出することができる。
【0116】
第2の冷却器51の凝縮液は、第2の相分離器61に送られる。そこで、第3の分離物質混合物と第4の分離物質混合物とが分離され、その際、第3の分離物質混合物は、第4の分離物質混合物よりもメタクロレインを多く含み、第4の分離物質混合物は、第3の分離物質混合物よりも水を多く含む。第1の分離物質混合物と同様に、第3の分離物質混合物も十分なメタクロレイン含有量を有し、例えばメチルメタクロレインを製造するためのさらなる処理に使用することができる。
【0117】
本発明の第3の実施形態では、第3の分離物質混合物は、第3の相分離器排出管設備64を通り、下流側の合流点に続く第1の相分離器排出管設備21のセクションを経由して送られる。すなわち、本発明の第3の実施形態では、第1および第3の分離物質混合物が合流させられる。
【0118】
第2の相分離器61の第2の出口63は、第4の相分離器排出管設備65を通じて第2の蒸留塔23に流体的に接続されており、その際、第4の分離物質混合物を、第2の相分離器61から第4の相分離器排出管設備65を通じて第2の蒸留塔23に送ることができる。第4の分離物質混合物を第2の蒸留塔23に導入することにより、第4の分離物質混合物に含まれるメタクロレインと、第4の分離物質混合物に含まれる水とを分離することができる。
【0119】
図4を参照する。図4に概略的に示されている本発明の第4の実施形態は、図1に示されている本発明の第1の実施形態と一部のみ異なる。以下、本発明の第1の実施形態に対する本発明の第4の実施形態の相違点のみを説明する。
【0120】
本発明の第4の実施形態の製造装置400において、第2の蒸留塔23の頂部24を第1の冷却器9に代えて本発明の第4の実施形態の第1の蒸留塔11に流体的に接続する第3の蒸留塔排出管設備70が設けられており、その際、第3の蒸留物質混合物を、第2の蒸留塔23の頂部24から第3の蒸留塔排出管設備70を通じて第1の蒸留塔11に送ることができる。第3の蒸留物質混合物を第1の蒸留塔11に導入することにより、第3の蒸留物質混合物は、適切なさらなる後処理に供給される。確かに、第3の蒸留物質混合物には水も含まれている。しかし、第1の蒸留塔11への、これに伴う水の導入量は管理可能であり、第2の分離物質混合物が第1の蒸留塔11に導入される場合よりも著しく少ないものである。第2の分離物質混合物を第1の蒸留塔11ではなく第2の蒸留塔23に導入することによって得られる利点は、良好に維持される。
【0121】
図5を参照する。本発明の第5の実施形態は、本発明の第4の実施形態と一部のみ異なる。以下、相違点のみを説明する。
【0122】
本発明の第5の実施形態の製造装置500では、本発明の第4の実施形態の製造装置400とは異なり、第3の蒸留塔23の頂部24を第1の蒸留塔11に代えて減圧容器5に接続する第3の蒸留塔排出管設備80が設けられている。この第3の蒸留塔排出管設備80を通じて、第3の蒸留物質混合物を第2の蒸留塔23の頂部24から減圧容器5へ送ることができる。第3の蒸留物質混合物を減圧容器5に導入することにより、第3の蒸留物質混合物は、適切なさらなる後処理に供給される。特に、第3の蒸留物質混合物はガス状であるため、第1の減圧物質混合物と共に第1の減圧容器排出管設備8を通じて第1の冷却器9に流れ込み、そこで凝縮される。第1の冷却器9の凝縮液の一部として、凝縮された第3の蒸留物質混合物は、第1の冷却器排出管設備17を通じて第1の相分離器18に送られ、そこで分離工程を通過する。
【0123】
さらなる可能な変形例を以下に説明するが、これらは個別に、または任意の組み合わせで実施することができる。
【0124】
第1、第2、第3、第4、および第5の実施形態の複数または全てを互いに組み合わせた製造装置が可能である。
【0125】
一部または全ての蒸留塔は、各底部物質混合物を通してその中で加熱するリボイラ循環部を備えることができる。
【0126】
一部または全ての蒸留塔は、個別の冷却器循環部を有することができ、この循環部により頂部物質混合物が凝縮されて当該蒸留塔に返送され、その際、個別の冷却器循環部は、専用の冷却器を有する。また、第1の蒸留塔の頂部物質混合物を凝縮させるために第1の冷却器9を併用することも可能であり、すなわちこの場合、個別の冷却器は不要である。さらに、本発明の第2および/または第3の実施形態の第2の蒸留塔の頂部物質混合物を凝縮させるために、それぞれの第2の冷却器51を併用することも可能であり、すなわちこの場合、個別の冷却器は不要である。
【0127】
一部または全ての蒸留塔はそれぞれ、液滴保持ユニットを有することができ、それにより、液滴がその頂部を通じて当該蒸留塔から離れることを防止することができる。液滴保持ユニットは、例えば、ファインメッシュスクリーン、いわゆるデミスタ、または液体放出ユニットとして形成されていてよく、それにより、当該蒸留塔の内部で蒸留塔の底部の方向に液体が放出され、その際、この液体が、上昇する液滴を捕捉し、それによって液滴の液体が底部の方向に移動させられる。液滴保持ユニットにより、当該蒸留塔の分離効率が向上する。
【0128】
第2の蒸留塔23は、充填塔もしくはトレイ塔、またはそれらの混合形態であってよい。
【0129】
一部または全ての蒸留塔は、不規則充填物および/または規則充填物を含むことができる。
【0130】
冷却器9、51の1つ以上は、1つ以上の反応の廃ガスを排出することができる排気口を有することができる。
【0131】
冷却器9、51の1つ以上は、多段、例えば2段に形成されていてよい。2段式の場合、第1の冷却器段で例えば約30~40℃まで冷却し、第2の冷却器段で例えば約3~10℃、好ましくは4℃まで冷却することができる。多段式とすることで、冷却ブラインを節約することができる。多段式冷却器を使用する場合、凝縮液の一部を第1の冷却段に返送、重合防止安定剤と混合することができる。
【0132】
冷却器9、51の1つ以上は、当該冷却器中に存在する気相をこの冷却器から排出することができる気相排出ユニットを有することができる。
【0133】
第2の分離物質混合物には、重合に対抗する薬剤、例えばメタクロレインおよび/またはジメチルアミンの重合に対抗する薬剤を混合することができる。この改良された第2の分離物質混合物を1つまたは複数の冷却器に導入して、すでにそこで重合に対抗することができる。
【0134】
反応器1に導入された物質を、例えば約130℃の温度まで予熱することができる。
【0135】
反応器1は、管状反応器として形成されていてよい。
【0136】
反応器1に導入された、塩基供給源44からの塩基、酸供給源46からの酸、ならびに/または第2の蒸留塔排出管設備15の第1のセクション29および/もしくは第1の膜装置排出管設備35の第2のセクション37から第2の蒸留塔排出管設備15の第2のセクション30を経由して反応器1へ導入される返送流を、ホルムアルデヒド供給源40およびプロピオンアルデヒド供給源42から反応器1に導入される新たなホルムアルデヒドおよび新たなプロピオンアルデヒドよりも強度に予熱することができる。ここで、酸、塩基および/または前記返送流を、これらを新たなホルムアルデヒドおよび新たなプロピオンアルデヒドと混合した後にのみ所望の予混合温度に達する程度に加熱することができる。このようにして、新たなホルムアルデヒドおよび新たなプロピオンアルデヒドは、所望の予混合温度よりも低い温度でより長く留まる。また、前記返送物質を予熱することもできる。
【0137】
第1の蒸留塔11の底部13から排出される第2の蒸留物質混合物から熱を取り出して、反応器1に導入される物質の少なくとも一部を予熱するために少なくとも部分的に利用することができる。
【0138】
一部または全ての減圧容器5は、液滴保持ユニットを有することができ、それにより、第2の減圧物質混合物の液滴が、その第1の出口6を通じて第1の減圧物質混合物と共に減圧容器5から離れることを防止することができる。液滴保持ユニットは、例えば、ファインメッシュスクリーンとして形成されていてよい。液滴保持ユニットにより、減圧容器5の分離効率が向上する。したがって、減圧容器5からその第1の出口6を通じて出て行く触媒の量も減少する。減圧容器5の液滴保持ユニットは、いわゆるデミスタとして形成されていてよい。
【0139】
また、減圧容器5は、液滴保持ユニットの効果を高めるために、液滴保持ユニットに下方から液体を噴霧することができる噴霧ユニットを有することができる。この液体は、例えば、第2の減圧物質混合物、またはメタクロレインおよび/もしくはジメチルアミンの重合に対抗する薬剤を含む液体であってよい。
【0140】
必要であれば、安定剤を、例えば、第1の冷却器9および/または第2の蒸留塔排出管設備15の第2のセクション30に加えることができる。
【0141】
本発明の第1~第5の実施形態では、図1図5に示すように、減圧弁3は、減圧容器5の外側に配置されている。しかし、減圧弁3を減圧容器5の内部に配置することや、その壁面に一体化させることもできる。その場合、減圧弁排出管設備を省略できる構成も可能である。
【0142】
本発明の第1~第5の実施形態では、第1の減圧容器排出管設備8および第1の蒸留塔排出管設備14は、別個に第1の冷却器9に通じている。しかし、第1の減圧容器排出管設備8と第1の蒸留塔排出管設備14とが一体となって、第1の冷却器9の共通の入口に接続されている、すなわちこの共通の入口に流体的に接続されていることも可能である。
【0143】
本発明の第1の実施形態では、第3の蒸留塔排出管設備26は、別個に第1の冷却器に個別に通じている。しかし、第3の蒸留塔排出管設備26と第1の蒸留塔排出管設備14とが一体となって、第1の冷却器9の共通の入口に接続されている、すなわちこの共通の入口に流体的に接続されていることも可能である。
【0144】
本発明の第1~第5の実施形態において、第2の蒸留塔排出管設備15が設けられている。しかし、2つの別個の第2の蒸留塔排出管設備を設けることもでき、その際、一方は、本発明の第1~第5の実施形態の第2の蒸留塔排出管設備15の第1および第2のならびに任意に第3のセクション29、30、31を有し、結果として、第1の蒸留塔11の底部13と特に反応器1とを流体的に接続し、他方は、第1の蒸留塔11の底部13と膜装置28とを流体的に接続する。
【0145】
本発明の第2および第3の実施形態において、第3の蒸留塔排出管設備50は、第2の蒸留塔23の頂部24を第2の冷却器51のみと接続する。また、第2の蒸留塔23の頂部24を第1の冷却器9と第2の冷却器51との双方に流体的に接続する第3の蒸留塔排出管設備を設けることもできる。
【0146】
本発明の第3の実施形態では、第1および第3の分離物質混合物が合流させられる。しかし、第3の相分離器排出管設備が第1の相分離器排出管設備21に流体的に接続されておらず、これとは別個にタンクまたはさらなる処理装置に流体的に接続されているように、第3の相分離器排出管設備を設けることもできる。
【0147】
膜装置28は常に任意であり、省略することもできる。
【0148】
膜装置28は、単段式または多段式に形成されていてよい。
【0149】
好ましくは、膜装置は3段式の逆浸透膜装置であり、その第1の段は80~120bar(絶対圧)の圧力範囲で運転され、その第2の段は20~80bar(絶対圧)の圧力範囲で運転され、その第3の段は20~40bar(絶対圧)の圧力範囲で運転される。塩基としてジメチルアミン、酸として酢酸を用いた場合、このように運転される逆浸透膜装置により、第2の蒸留物質混合物に含まれるジメチルアミンを99%超、第2の蒸留物質混合物に含まれる酢酸を約80%、第2の蒸留物質混合物に含まれるホルムアルデヒドを約70~80%保持することができる。
【0150】
膜装置28は、特に膜装置の動作温度を調節することができる冷却装置を有することができる。
【0151】
本発明の第1~第5の実施形態において、ホルムアルデヒド供給管設備41、プロピオンアルデヒド供給管設備43、塩基供給管設備45、および酸供給管設備47は、第2の蒸留塔排出管設備15の第2のセクション30に流体的に接続されている。あるいは、ホルムアルデヒド供給管設備41、プロピオンアルデヒド供給管設備43、塩基供給管設備45および/または酸供給管設備47を反応器1に直接流体的に接続することも可能であり、それにより、ホルムアルデヒド、プロピオンアルデヒド、塩基および/または酸を反応器1に直接導入することができる。
【0152】
本発明の第1~第5の実施形態では、新たなホルムアルデヒド、新たなプロピオンアルデヒド、新たな酸および新たな塩基は、別個の供給源から供給される。また、
- 新たなホルムアルデヒドと新たなプロピオンアルデヒドとを予混合すること、もしくは適切な供給源からホルムアルデヒドとプロピオンアルデヒドとの混合物を供給すること、および/または
- 新たな酸と新たな塩基とを予混合すること、もしくは適切な供給源から酸と塩基との混合物を供給すること
も可能である。
【0153】
酸と塩基との予混合が行われない場合には、まず酸を第2の蒸留塔排出管設備15の第2のセクション30に送り、その後、塩基を第2の蒸留塔排出管設備15の第2のセクション30に送ることができる。この順序により、局所的な塩基過剰に対抗することがより容易に可能となる。
【0154】
第1の相分離器18は、例えば第1の相分離器18の第2の出口20と第1の蒸留塔11とを流体的に接続する相分離器排出管設備を通じて第1の蒸留塔11に流体的に接続されていてよく、その際、第2の分離物質混合物を、第1の相分離器18の第2の出口20からこの相分離器排出管設備を通じて第1の蒸留塔11に送ることができる。
【0155】
第2の相分離器61が存在する場合、第2の相分離器61は、例えば、第2の相分離器61の第2の出口63を第1の蒸留塔11に流体的に接続する相分離器排出管設備を通じて第1の蒸留塔11に接続されていてよく、その際、この相分離器排出管設備を通じて第4の分離物質混合物を第1の相分離器61の第2の出口63から第1の蒸留塔11に送ることができる。
【0156】
なお、第2の蒸留塔23は省略してもよい。この場合、第2の相分離器排出管設備は、第1の相分離器18を第1の蒸留塔11に流体的に接続し、その際、第2の分離物質混合物を第1の相分離器18の第2の出口20から第2の相分離器排出管設備を通じて第1の蒸留塔11に送ることができる。第2の相分離器も設けられている場合、第4の相分離器排出管設備は、第2の相分離器61の第2の出口63を第1の蒸留塔11に流体的に接続することができ、その際、第4の分離物質混合物を、第2の相分離器61の第2の出口63から第4の相分離器排出管設備を通じて第1の蒸留塔11に送ることができる。
【0157】
[本発明による第1の試験例]
Aspen Technologies, Inc.のシミュレーションプログラムAspen Plus V8.8を使用して、以下に示す変更を除いては本発明の第1の実施形態に従って本発明による製造装置の本発明による運転をシミュレーションしたが、その際、これらの変更にもかかわらず、以下では本発明の第1の実施形態の参照符号が使用される:
- 製造装置は、膜装置を有しない。
- ホルムアルデヒド供給管設備とプロピオンアルデヒド供給管設備とが一体となって、ホルムアルデヒド-プロピオンアルデヒド供給管設備となり、これが、第2の蒸留塔排出管設備15の第2のセクション30に通じている。
- 第1の冷却器9は、気相を燃焼させるための燃焼装置に流体的に接続されている気相排出ユニットを有する。
- 第1の冷却器9は、その第1の出口6の上流に配置された液滴保持ユニットを有し、これはいわゆるデミスタとして形成されている。
- 第1の冷却器9は、第1の減圧物質混合物、第1の蒸留物質混合物および第3の蒸留物質混合物の流入をまとめる集合入口を有する。
- 第1の冷却器9は、2段式で形成されている。
【0158】
第1の蒸留塔11の底部13から、返送流が、第2の蒸留塔排出管設備15の第2のセクション30を経由して反応器1に向かって流れる。酸供給源44から、酢酸水溶液が、酸供給管設備45を通じて第2の蒸留塔排出管設備15の第2のセクション30に導入される。塩基供給源46から、塩基供給管設備47を通じて、ジメチルアミン水溶液が第2の蒸留塔排出管設備15の第2のセクション30に導入される。そのようにして得られた物質混合物が130℃に予熱される。ホルムアルデヒド水溶液が、ホルムアルデヒド供給源40からホルムアルデヒド供給管設備41を通じてホルムアルデヒド-プロピオンアルデヒド供給管設備に導入され、プロピオンアルデヒド水溶液が、プロピオンアルデヒド供給源42からプロピオンアルデヒド供給管設備43を通じてホルムアルデヒド-プロピオンアルデヒド供給管設備に導入される。そのようにして得られたホルムアルデヒド溶液とプロピオンアルデヒド溶液との混合物は、130℃に予熱され、第2の蒸留塔排出管設備15の第2のセクション30に導入される。この時点で、第2の蒸留塔排出管設備15の第2のセクション30に存在する物質混合物が、本発明による本試験例では管状反応器として形成されている反応器1に導入される。
【0159】
反応器1内の滞留時間は9.5秒であり、反応器内の圧力は35bar(絶対圧)である。ほぼ完全な転化が達成される。反応器から排出される反応混合物の温度は、165℃である。反応混合物を減圧容器5で0.85bar(絶対圧)まで減圧させる。
【0160】
第1の冷却器9の第1の段は冷却水で冷却され、その第2の段は温度が4℃の冷却ブラインで冷却される。
【0161】
第1の冷却器内に存在する気相は、気相排出ユニットを通じて燃焼部に供給される。
【0162】
以下の表1に、本発明による試験例のいくつかの流れのマスフロー、圧力、温度、および組成を示す。表1において、
- 「流れA」は、塩基供給管設備47を通るジメチルアミン溶液流を意味し、
- 「流れB」は、酸供給管設備45を通る酢酸溶液流を意味し、
- 「流れC」は、プロピオンアルデヒド供給管設備43を通るプロピオンアルデヒド溶液流を意味し、
- 「流れD」は、ホルムアルデヒド供給管設備41を通るホルムアルデヒド溶液流を意味し、
- 「流れE」は、反応器1に入る流れを意味し、
- 「流れF」は、反応器排出管設備2を通る反応混合物流を意味し、
- 「流れG」は、第1の減圧容器排出管設備8を通る第1の減圧物質混合物流を意味し、
- 「流れH」は、第2の減圧容器排出管設備10を通る第2の減圧物質混合物流を意味し、
- 「流れI」は、第1の蒸留塔排出管設備14を通る第1の蒸留物質混合物流を意味し、
- 「流れJ」は、第2の蒸留塔排出管設備15の第1のセクション29を通る第2の蒸留物質混合物流を意味し、
- 「流れK」は、第2の蒸留塔排出管設備15の第1のセクション29から第2の蒸留塔排出管設備15の第2のセクション30へ流れる第2の蒸留物質混合物流を意味し、
- 「流れL」は、第2の蒸留塔排出管設備15の第1のセクション29から第2の蒸留塔排出管設備15の第3のセクション31に流入して廃棄部に送られる第2の蒸留物質混合物流を意味し、
- 「流れM」は、第1の冷却器9の集合入口を通る流れを意味し、
- 「流れN」は、第1の相分離器排出管設備21を通る第1の分離物質混合物流を意味し、
- 「流れO」は、第2の相分離器排出管設備22を通る第2の分離物質混合物流を意味し、
- 「流れP」は、第3の蒸留塔排出管設備26を通る第3の蒸留物質混合物流を意味し、
- 「流れQ」は、第4の蒸留塔排出管設備27を通る第4の蒸留物質混合物流を意味し、
- 「%」の表示は、当該流れの全質量に対する質量%を表し、
- 小数点以下の桁数は、数値の正確さを表す。
【0163】
【表1】
【0164】
表1から、第1の減圧物質混合物流(流れG)は、メタクロレイン含有量が77.06質量%と高いのに対して、第2の減圧物質混合物流(流れH)は、メタクロレイン含有量が1.54質量%と低いことがわかる。このように、減圧容器の分離性能は高い。
【0165】
さらに表1から、第1の減圧物質混合物流(流れG)は、マスフローが16136kg/hであることがわかる。この大きなマスフローは、第1の冷却器9に送られる。したがって、これを第1の蒸留塔11で処理する必要はない。
【0166】
さらに表1から、第1の減圧物質混合物流(流れG)のメタクロレイン含有量は、本発明による第1の試験例では75.10質量%である第1の蒸留物質混合物流(流れI)よりも高くなり得ることがわかる。
【0167】
[本発明による第2の試験例]
Aspen Technologies, Inc.のシミュレーションプログラムAspen Plus V8.8を使用して、本発明による第2の製造装置の本発明による運転をシミュレーションした。本発明による第1の試験例とは対照的に、本発明による第2の試験例の製造装置は、第2の蒸留塔を有しておらず、第2の相分離器排出管設備は、第1の蒸留塔に流体的に接続されている。よって、本発明による第2の試験例の製造方法は、本発明による第1の試験例の製造方法と異なる。これらの変更にもかかわらず、以下では本発明の第1の実施形態の参照符号が使用される。
【0168】
以下の表2に、本発明による第2の試験例のいくつかの流れのマスフロー、圧力、温度、および組成を示す。表2において、
- 「流れA」は、塩基供給管設備47を通るジメチルアミン溶液流を意味し、
- 「流れB」は、酸供給管設備45を通る酢酸溶液流を意味し、
- 「流れC」は、プロピオンアルデヒド供給管設備43を通るプロピオンアルデヒド溶液流を意味し、
- 「流れD」は、ホルムアルデヒド供給管設備41を通るホルムアルデヒド溶液流を意味し、
- 「流れE」は、反応器1に入る流れを意味し、
- 「流れF」は、反応器排出管設備2を通る反応混合物流を意味し、
- 「流れG」は、第1の減圧容器排出管設備8を通る第1の減圧物質混合物流を意味し、
- 「流れH」は、第2の減圧容器排出管設備10を通る第2の減圧物質混合物流を意味し、
- 「流れI」は、第1の蒸留塔排出管設備14を通る第1の蒸留物質混合物流を意味し、
- 「流れJ」は、第2の蒸留塔排出管設備15の第1のセクション29を通る第2の蒸留物質混合物流を意味し、
- 「流れK」は、第2の蒸留塔排出管設備15の第1のセクション29から第2の蒸留塔排出管設備15の第2のセクション30へ流れる第2の蒸留物質混合物流を意味し、
- 「流れL」は、第2の蒸留塔排出管設備15の第1のセクション29から第2の蒸留塔排出管設備15の第3のセクション31に流入して廃棄部に送られる第2の蒸留物質混合物流を意味し、
- 「流れM」は、第1の冷却器9の集合入口を通る流れを意味し、
- 「流れN」は、第1の相分離器排出管設備21を通る第1の分離物質混合物流を意味し、
- 「流れO」は、第2の相分離器排出管設備22を通る第2の分離物質混合物流を意味し、
- 「%」の表示は、当該流れの全質量に対する質量%を表し、
- 小数点以下の桁数は、数値の正確さを表す。
【0169】
【表2】
【0170】
表2から、第1の減圧物質混合物流(流れG)は、メタクロレイン含有量が77.59質量%と高いのに対して、第2の減圧物質混合物流(流れH)は、メタクロレイン含有量が1.54質量%と低いことがわかる。このように、本発明による第2の試験例においても、減圧容器の分離性能は高い。
【0171】
さらに表2から、第1の減圧物質混合物流(流れG)は、マスフローが16044kg/hであることがわかる。この大きなマスフローは、第1の冷却器9に送られる。したがって、これを第1の蒸留塔11で処理する必要はない。
【0172】
さらに表2から、第1の減圧物質混合物流(流れG)のメタクロレイン含有量は、本発明による第2の試験例では57.50質量%である第1の蒸留物質混合物流(流れI)よりも大幅に高くなり得ることがわかる。
図1
図2
図3
図4
図5