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特許7592707負荷を撮像することによる滅菌サイクルの調節
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】負荷を撮像することによる滅菌サイクルの調節
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/24 20060101AFI20241125BHJP
   A61L 2/20 20060101ALI20241125BHJP
【FI】
A61L2/24
A61L2/20 106
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2022523952
(86)(22)【出願日】2020-10-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-22
(86)【国際出願番号】 IB2020059913
(87)【国際公開番号】W WO2021079296
(87)【国際公開日】2021-04-29
【審査請求日】2023-10-18
(31)【優先権主張番号】62/924,710
(32)【優先日】2019-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/955,144
(32)【優先日】2019-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521437806
【氏名又は名称】アドバンスト・ステリライゼーション・プロダクツ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100101890
【弁理士】
【氏名又は名称】押野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100098268
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 豊
(72)【発明者】
【氏名】フライヤー・ベンジャミン・エム
(72)【発明者】
【氏名】シディキ・アリ・エス
(72)【発明者】
【氏名】ヤン・フォン・エス
(72)【発明者】
【氏名】モリソン・トッド
【審査官】粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-153966(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/20-2/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバ、カメラ、プロセッサ、および器具の画像のデータベースが記憶された非一時的記憶媒体を有する滅菌器を動作させる方法であって、前記滅菌器は、デフォルト期間にわたってデフォルト圧力でデフォルト量の滅菌剤に負荷を曝露する第1の滅菌サイクルを選択するように動作可能であり、前記方法は、
前記負荷を滅菌トレイ上に配するステップと、
前記カメラで前記負荷を撮像して、前記負荷の画像を取得するステップと、
前記プロセッサにより、前記負荷の前記画像を前記データベース内の前記器具の画像と比較して、前記負荷の決定された特性を決定するステップと、
前記プロセッサにより、前記負荷の前記決定された特性に基づいて、前記第1の滅菌サイクルを調整するステップと、
を含み、
前記決定された特性は、前記負荷内の器具の数を含み、前記方法は、
前記プロセッサにより、前記負荷内の前記器具の数が前記非一時的記憶媒体に予め記憶されている器具の数より少ないと決定するステップと、
前記負荷内の前記器具の数が予め記憶されている前記器具の数より少ないと決定したことに基づいて、前記プロセッサにより、前記デフォルト期間を減少させるステップと、をさらに含む、 方法。
【請求項2】
チャンバ、カメラ、プロセッサ、および器具の画像のデータベースが記憶された非一時的記憶媒体を有する滅菌器を動作させる方法であって、前記滅菌器は、デフォルト期間にわたってデフォルト圧力でデフォルト量の滅菌剤に負荷を曝露する第1の滅菌サイクルを選択するように動作可能であり、前記方法は、
前記負荷を滅菌トレイ上に配するステップと、
前記カメラで前記負荷を撮像して、前記負荷の画像を取得するステップと、
前記プロセッサにより、前記負荷の前記画像を前記データベース内の前記器具の画像と比較して、前記負荷の決定された特性を決定するステップと、
前記プロセッサにより、前記負荷の前記決定された特性に基づいて、前記第1の滅菌サイクルを調整するステップと、
を含み、
前記決定された特性は、前記負荷の容積を含み、前記方法は、
前記プロセッサにより、前記負荷の前記容積が前記非一時的記憶媒体に予め記憶されている容積未満であると決定するステップと、
前記負荷の前記容積が予め記憶されている前記容積未満であると決定したことに基づいて、前記プロセッサにより、前記デフォルト期間を減少させるステップと、をさらに含む、方法
【請求項3】
前記方法は、
前記プロセッサにより、前記負荷の前記容積が予め記憶されている前記容積より大きいと決定するステップと、
前記負荷の前記容積が予め記憶されている前記容積より大きいと決定した後で、前記プロセッサにより、前記滅菌剤に前記負荷を曝露する滅菌サイクルの開始を阻止するステップと、をさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項4】
チャンバ、カメラ、プロセッサ、および器具の画像のデータベースが記憶された非一時的記憶媒体を有する滅菌器を動作させる方法であって、前記滅菌器は、デフォルト期間にわたってデフォルト圧力でデフォルト量の滅菌剤に負荷を曝露する第1の滅菌サイクルを選択するように動作可能であり、前記方法は、
前記負荷を滅菌トレイ上に配するステップと、
前記カメラで前記負荷を撮像して、前記負荷の画像を取得するステップと、
前記プロセッサにより、前記負荷の前記画像を前記データベース内の前記器具の画像と比較して、前記負荷の決定された特性を決定するステップと、
前記プロセッサにより、前記負荷の前記決定された特性に基づいて、前記第1の滅菌サイクルを調整するステップと、
を含み、
前記決定された特性は、前記負荷の温度を含み、前記方法は、
前記プロセッサにより、前記負荷の前記温度が前記非一時的記憶媒体に予め記憶されている温度より高いと決定するステップと、
前記負荷の前記温度が予め記憶されている前記温度より高いと決定したことに基づいて、前記プロセッサにより、前記デフォルト期間を減少させるステップと、をさらに含む、方法
【請求項5】
前記方法は、
前記プロセッサにより、前記負荷の前記温度が予め記憶されている前記温度より低いと決定するステップと、
前記負荷の前記温度が予め記憶されている前記温度より低いと決定した後で、前記プロセッサにより、前記滅菌剤に前記負荷を曝露する滅菌サイクルの開始を阻止するステップと、をさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項6】
予め記憶されている前記容積は、約5.2リットル以上である、請求項に記載の方法。
【請求項7】
予め記憶されている前記温度は、5℃より低い、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記負荷の前記容積が予め記憶されている前記容積未満であると決定したことに基づいて、前記チャンバ内の圧力を、前記デフォルト圧力よりも高い動作圧力まで低下させるステップをさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記チャンバ内の前記圧力が前記動作圧力とほぼ等しいときに、前記負荷を前記滅菌剤に曝露するステップをさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記デフォルト圧力は、約40.00Pa(約0.3トル)である、請求項に記載の方法。
【請求項11】
チャンバ、カメラ、プロセッサ、および器具の画像のデータベースが記憶された非一時的記憶媒体を有する滅菌器を動作させる方法であって、前記滅菌器は、デフォルト期間にわたってデフォルト圧力でデフォルト量の滅菌剤に負荷を曝露する第1の滅菌サイクルを選択するように動作可能であり、前記方法は、
前記負荷を滅菌トレイ上に配するステップと、
前記カメラで前記負荷を撮像して、前記負荷の画像を取得するステップと、
前記プロセッサにより、前記負荷の前記画像を前記データベース内の前記器具の画像と比較して、前記負荷の決定された特性を決定するステップと、
前記プロセッサにより、前記負荷の前記決定された特性に基づいて、前記第1の滅菌サイクルを調整するステップと、
を含み、
前記プロセッサにより、前記負荷内の器具の数前記非一時的記憶媒体に予め記憶されている器具の数より少なく、前記負荷の容積前記非一時的記憶媒体に予め記憶されている容積未満であり、前記負荷の温度前記非一時的記憶媒体に予め記憶されている温度より高いと決定するステップと、
前記負荷内の前記器具の数が予め記憶されている前記器具の数より少なく、前記負荷の前記容積が予め記憶されている前記容積未満であり、前記負荷の前記温度が予め記憶されている前記温度より高いと決定したことに基づいて、前記プロセッサにより、前記デフォルト期間を減少させるステップと、をさらに含む、方法
【請求項12】
前記デフォルト期間は、約20分~約70分を含む、請求項1、2、4、及び、11の何れか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記デフォルト期間を減少させる前記ステップにおいて、前記デフォルト期間約0.5%~約25%だけ減少させられる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
チャンバ、カメラ、プロセッサ器具の画像のデータベースが記憶された非一時的記憶媒体、及び、前記チャンバに接続された滅菌剤の供給源を有する滅菌器であって
前記滅菌器は、デフォルト期間にわたってデフォルト圧力でデフォルト量の前記滅菌剤に負荷を曝露する第1の滅菌サイクルを選択するように動作可能であり、
前記カメラで滅菌トレイ上に配されている前記負荷を撮像して、前記負荷の画像を取得し、
前記プロセッサにより、前記負荷の前記画像を前記データベース内の前記器具の画像と比較して、前記負荷の決定された特性を決定し、
前記プロセッサにより、前記負荷の前記決定された特性に基づいて、前記第1の滅菌サイクルを調整し、
前記決定された特性は、前記負荷内の器具の数を含み、
前記プロセッサにより、前記負荷内の前記器具の数が前記非一時的記憶媒体に予め記憶されている器具の数より少ないと決定し、
前記負荷内の前記器具の数が予め記憶されている前記器具の数より少ないと決定したことに基づいて、前記プロセッサにより、前記デフォルト期間を減少させる、滅菌器
【請求項15】
チャンバ、カメラ、プロセッサ器具の画像のデータベースが記憶された非一時的記憶媒体、及び、前記チャンバに接続された滅菌剤の供給源を有する滅菌器であって
前記滅菌器は、デフォルト期間にわたってデフォルト圧力でデフォルト量の前記滅菌剤に負荷を曝露する第1の滅菌サイクルを選択するように動作可能であり、
前記カメラで滅菌トレイ上に配されている前記負荷を撮像して、前記負荷の画像を取得し、
前記プロセッサにより、前記負荷の前記画像を前記データベース内の前記器具の画像と比較して、前記負荷の決定された特性を決定し、
前記プロセッサにより、前記負荷の前記決定された特性に基づいて、前記第1の滅菌サイクルを調整し、
前記決定された特性は、前記負荷の容積を含み、
前記プロセッサにより、前記負荷の前記容積が前記非一時的記憶媒体に予め記憶されている容積未満であると決定し、
前記負荷の前記容積が予め記憶されている前記容積未満であると決定したことに基づいて、前記プロセッサにより、前記デフォルト期間を減少させる、滅菌器
【請求項16】
チャンバ、カメラ、プロセッサ器具の画像のデータベースが記憶された非一時的記憶媒体、及び、前記チャンバに接続された滅菌剤の供給源を有する滅菌器であって
前記滅菌器は、デフォルト期間にわたってデフォルト圧力でデフォルト量の前記滅菌剤に負荷を曝露する第1の滅菌サイクルを選択するように動作可能であり、
前記カメラで滅菌トレイ上に配されている前記負荷を撮像して、前記負荷の画像を取得し、
前記プロセッサにより、前記負荷の前記画像を前記データベース内の前記器具の画像と比較して、前記負荷の決定された特性を決定し、
前記プロセッサにより、前記負荷の前記決定された特性に基づいて、前記第1の滅菌サイクルを調整し、
前記決定された特性は、前記負荷の温度を含み、
前記プロセッサにより、前記負荷の前記温度が前記非一時的記憶媒体に予め記憶されている温度より高いと決定し、
前記負荷の前記温度が予め記憶されている前記温度より高いと決定したことに基づいて、前記プロセッサにより、前記デフォルト期間を減少させる、滅菌器
【請求項17】
前記デフォルト期間は、約20分~約70分を含む、請求項14~16の何れか一項に記載の滅菌器
【請求項18】
前記プロセッサにより前記デフォルト期間を減少させる減少期間は、前記デフォルト期間約0.5%~約25%である、請求項17に記載の滅菌器
【請求項19】
前記カメラは、前記滅菌器の外側に配されている、請求項14~16の何れか一項に記載の滅菌器。
【請求項20】
前記カメラは、前記チャンバのドアの上に配されている、請求項14~16の何れか一項に記載の滅菌器。
【請求項21】
前記カメラは、前記チャンバ内に配されている、請求項14~16の何れか一項に記載の滅菌器。
【請求項22】
前記カメラは、前記チャンバ内に面するレンズを含む、請求項14~16の何れか一項に記載の滅菌器。
【請求項23】
前記カメラは、サーモグラフィーカメラである、請求項14~16の何れか一項に記載の滅菌器。
【請求項24】
前記カメラは、サーモグラフィー機能性を有する撮像カメラである、請求項22に記載の滅菌器。
【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔分野〕
本明細書に開示される主題は、滅菌剤を使用する真空または滅菌チャンバ内の器具の滅菌に関する。
【0002】
〔背景〕
医療装置または器具は、汚染された装置が対象に使用され、対象に感染を引き起こす可能性を最小にするために、典型的には使用前に滅菌される。さまざまな滅菌技術は、ガスプラズマおよびエチレンオキシド(EtO)を伴うか、または伴わずに、蒸気、過酸化水素および気相滅菌などのさまざまな滅菌剤を使用して利用され得る。
【0003】
ある種の滅菌技術は、周囲圧力または大気圧以外の圧力で実施される。例えば、出願人のSTERRAD(登録商標)システム、STERRAD(登録商標)NXシステムまたはSTERRAD(登録商標)100NXシステムは、真空チャンバを含み、かつ低い圧力、例えば約26.66Pa(約0.2トル)までで動作する、滅菌システムまたは滅菌器の例であり、これは、液体として真空チャンバに注入された過酸化水素を気化させ、過酸化水素をガス状の形態で維持し、滅菌されている器具上にこの滅菌剤が凝縮するのを避けるのに役立つ。さまざまな滅菌器、例えば前述のSTERRAD(登録商標)システムは、医療装置が確実に滅菌されるのを助けるためにプロセス目標および閾値が満たされていると決定するように、または器具が滅菌されていないことを示し得るプロセスエラーを職員に通知するように、さまざまなプロセスパラメータを監視することができる。1つのプロセスパラメータは、真空チャンバ内の滅菌剤、例えば過酸化水素の体積濃度である。これらのシステムはそれぞれ、過酸化水素の濃度を監視して、経時的に最小濃度が達成されることを保証する。具体的には、STERRAD(登録商標)システムは、過酸化水素の濃度を時間の関数として監視し、曲線下面積またはAUCと呼ばれることもある、この濃度の時間に対する積分が所定の閾値を超えると、滅菌プロセスを継続することができる。しかしながら、このAUC閾値が満たされない場合、システムはプロセスを中止し得る。
【0004】
AUC閾値が満たされない場合、過酸化水素の凝縮が原因である可能性がある。チャンバ内の利用可能な容積(すなわち、器具が占有していない容積)および器具の温度を含む、さまざまな要因が過酸化水素の凝縮に寄与し得る。すなわち、器具がチャンバのかなりの部分を占有する場合、器具の温度が低すぎる場合、またはそれらの組み合わせである場合、過酸化水素蒸気が凝縮する可能性がある。したがって、STERRAD(登録商標)システムは、最小AUC閾値が確実に達成されるようにチェックし、これにより、凝縮が実質的に起こらず、滅菌処置が有効であった(すなわち、器具が滅菌された)という保証を提供する。
【0005】
〔開示の概要〕
滅菌器を動作させる方法が開示される。この方法は、器具の負荷を撮像して、負荷の光学画像および/または熱画像を取得するステップと、負荷の画像から決定された負荷の第1の特性に基づいて、滅菌器によって実行される滅菌サイクルを選択するステップと、を含む。負荷の第1の特性は、負荷が1~10個の器具を含むことを含み得、この負荷は、第1の器具を含む。加えて、負荷の第1の特性は、第1の器具が拡散制限空間、例えば内腔を有することを含み得る。
【0006】
この方法は、負荷の第1の特性に基づいて滅菌サイクルを調節するステップをさらに含み得る。例えば、サイクルの期間は、デフォルト期間とは異なる期間に調節され得る。代替的に、本方法は、負荷が最大数を超える器具を含むことを、負荷の第1の特性からシステムが決定した場合にサイクルを中止するステップを含み得る。
【0007】
この方法は、負荷の第2の特性、例えば負荷の容積を決定するステップと、負荷の容積に基づいてサイクルの期間または滅菌剤の量を調節するステップと、をさらに含み得る。この方法は、負荷の第3の特性、例えば負荷の温度を決定するステップと、負荷の温度に基づいてサイクルの期間または滅菌剤の量を調節するステップと、をさらに含み得る。
【0008】
本明細書は、本明細書に記載された主題を特に指摘し、明確に主張する特許請求の範囲で締めくくられるが、その主題は、添付図面と共に理解される特定の実施例に関する以下の説明からよりよく理解されると考えられ、添付図面では、同様の参照符号は同じ要素を特定している。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】カメラが滅菌器の外側に配された滅菌器の概略図を示す。
図2図1の滅菌器の概略図を示し、ただし、カメラが滅菌器の内側に配されている。
図3図1の滅菌器の概略図を示し、ただし、カメラが滅菌器のドアの上に配されている。
図4】滅菌器内で滅菌される器具の負荷を示す。
図5】滅菌器を使用する方法のフローチャートを示す。
【0010】
〔発明を実施する形態〕
以下の詳細な説明は、異なる図面における同様の要素に同じ符号が付されている図面を参照して読むべきである。図面は、必ずしも縮尺通りではないが、選択された実施形態を示しており、本発明の範囲を限定することを意図していない。詳細な説明は、本発明の原理を、限定としてではなく、例として示す。この説明は、当業者が本発明を製造および使用することを明らかに可能にし、本発明を実施する最良の態様であると現在考えられているものを含む、本発明のいくつかの実施形態、改作、変形例、代替案および使用を説明する。
【0011】
本明細書で使用される場合、任意の数値または範囲に対する「約」または「およそ」という用語は、構成要素の一部または集合が、本明細書に記載されるような、その意図された目的のために機能することを可能にする、適切な寸法公差を示す。より具体的には、「約」または「およそ」は、列挙された値の±10%の値の範囲を指すことができ、例えば、「約90%」は、81%~99%の値の範囲を指すことができる。加えて、本明細書で使用される場合、用語「患者」、「宿主」、「ユーザ」および「対象」は、任意のヒトまたは動物の対象を指し、システムまたは方法をヒトでの使用に制限することを意図しないが、ヒト患者における本発明の使用が、好ましい実施形態である。
【0012】
滅菌器100、例えばSTERRAD(登録商標)100NXシステムの概略図が図1および図2に反映されている。滅菌器100は、滅菌される器具の負荷(パック)114を内部に保持するように構成された真空チャンバ112を含む。器具は、滅菌トレイ上に配され得、負荷はトレイを含むことができる。滅菌トレイ内に配された器具を含む例示的な負荷114が、図4に反映されている。図示のように、負荷は、滅菌トレイ、内視鏡、および2つの鉗子を含む。しかしながら、把持器、ピンセット、または任意の他の再使用可能な医療装置など、さまざまな他の器具が、負荷114を追加的または代替的に構成し得る。
【0013】
1つ以上の滅菌インジケータ(例えば、生物学的インジケータ102)が、チャンバ112内に配され得、例えば負荷114に隣接して配置され得る。チャンバ112は、およそ40.00Pa(0.3トル)~399.97Pa(3トル)の低い圧力に対処するのに十分に頑強であり、そこに導入された任意の滅菌剤との反応またはその吸収を回避するのに十分に不活性である、任意の材料から形成され得る。このような材料は、アルミニウムおよびステンレス鋼を含むことができる。チャンバ112はまた、ドアのような開放可能かつ密閉可能なバリア116を含むことができ、これは、チャンバ112内への負荷114の配置および取り出しを可能にするために開けられ得る。バリアは、チャンバ112内の低い圧力に耐え、チャンバ112と周囲環境との間の漏れを回避するために、十分に頑強であるべきであり、かつ十分に頑強なシールを含むべきである。所望の動作圧力に到達可能な真空ポンプ118が、チャンバ112から空気および他のガス、例えば水蒸気を抜く。真空ポンプ118は、これをチャンバ112に接続するためのホースまたはパイプ120を含むことができる。真空ポンプ118は、弁122を含んでもよく、弁は、チャンバ112内の圧力変化を補助または防止するために、開放または閉鎖され得る。例えば、弁が開いていて真空ポンプが作動している場合、チャンバ112内の圧力を低下させることができる。あるいは、弁が開いていて真空ポンプが作動していない場合、チャンバ内の圧力は、周囲圧力に向かって上昇されるか、またはこれと等しくされ得、弁122は通気弁と考えられ得る。他の実施形態では、別の通気弁123を使用してチャンバ112を通気してもよい。圧力モニタまたは変換器124が、チャンバ112内の圧力を測定する。特に好適な圧力モニタは、MKS Instrumentsから入手可能なキャパシタンスマノメータである。加熱要素126が、チャンバ112を加熱するために使用され得る。これは、チャンバ112を均一に加熱するのに十分な場所でチャンバ112の外側に結合された別個の要素を含むことができる。ホースもしくはパイプ130をさらに含むか、またはこれに接続され得る、滅菌剤の供給源128、例えば(過酸化水素もしくは過酢酸などの)滅菌剤を収容するリザーバまたはカートリッジが、チャンバ112に接続される。いくつかの実施形態では、リザーバ128は、チャンバ112と供給源128との間に配されて、供給源128からホース130を通ってチャンバ112内に入る滅菌剤の流れを制御する、弁132をさらに含むか、またはこれに接続され得る。滅菌システム100はまた、プリンタ、ディスプレイ、およびアラームなどの出力装置をさらに含み得るユーザインターフェース136を含み得る。ユーザインターフェース136はまた、キーパッドまたはタッチスクリーンのような入力装置を含んでもよい。システム100はまた、滅菌剤モニタ146、例えば、過酸化水素データを監視および出力することができる、過酸化水素モニタ、を含むことができる。
【0014】
システム100は、カメラも含むことができる。例えば、図1に示すように、カメラ119aは、チャンバ112の外側に配され得る。したがって、カメラ119aは、機能性、例えばブルートゥース無線、または画像データを通信モジュール147などの別の装置に通信するためのデータ入出力ポート(例えば、USBポート)を提供する、標準的な市販のデジタルカメラ、例えばスマートフォンカメラであってよい。したがって、負荷114は、チャンバ112内に位置付けられる前に撮像され得る。代替的または追加的に、図2に示すように、カメラ119bまたは少なくともそのレンズは、負荷114がチャンバ112内に位置付けられた後で負荷114を撮像するために、チャンバ112内に配されるか、またはチャンバ112内に面することができる。図示のように、カメラ119bは、チャンバ112の頂部に近接して配される。しかしながら、これは、チャンバ112の側面または底部に近接して配されてもよい。さらに、複数のカメラ119bをチャンバ112の周囲のさまざまな位置に設けることができる。カメラ119aと同様に、カメラ119bも、機能性、例えばブルートゥース無線、または画像データを通信モジュール147などの別の装置に通信するためのデータ入出力ポート(例えば、USBポート)を含む。さらなる実施形態では、カメラ119aおよび119bのいずれかは、サーモグラフィーカメラであってよく、または撮像カメラは、例えば負荷114の温度を決定するために使用され得る、赤外線画像を捕捉するのにも使用され得るようにサーモグラフィー機能性を含む。典型的な使用では、負荷114は、カメラ119bが器具の光学画像を捕捉するのを防止する滅菌ラップに包まれ得る。それにもかかわらず、チャンバ112内に配された後の包まれた負荷の熱撮像は、チャンバ112の外側のカメラ119aおよびチャンバ112の内側のカメラ119bの両方を含むものとしてシステムを実施することを正当化し得る。
【0015】
図3を参照すると、カメラ119cが、ドア116の上に配され、例えば片持ち支持体またはバー150によって維持されているものとして示されている。カメラ119cは、負荷114がチャンバ112内に挿入されているときに負荷114の画像を捕捉するために使用され得る。ここでも、負荷114は、チャンバ112内に挿入される前に滅菌ラップで包まれ得るので、カメラ119cは、カメラ119a~bのように、負荷114の温度を決定するのに使用され得る赤外線画像を捕捉するために使用され得るように、サーモグラフィー機能性を含むサーモグラフィーカメラまたは撮像カメラであり得る。カメラ119cは、カメラ119a~bと同様に、機能性、例えば、ブルートゥース無線、または画像データを通信モジュール147などの別の装置に通信するためのデータ入出力ポート(例えば、USBポート)も含む。
【0016】
デジタルコンピュータなどの制御システム138が、滅菌器100およびそのさまざまな構成要素の動作を制御する。制御システム138は、1つ以上のマイクロプロセッサ140を使用することができる。これは、例えば情報およびデータを記憶することができる、ランダムアクセスメモリ(RAM)、ハードディスクドライブ、またはフラッシュメモリのような、非一時的記憶媒体142を使用することもできる。圧力データまたは過酸化水素濃度のようなアナログデータが収集される場合、アナログ・デジタル(A2D)変換器144を使用して、アナログデータをデジタルデータに変換することができる。タイマーまたはクロック回路145が、時間を記録する。制御システム138はまた、通信モジュール147を含むことができ、これにより、制御システム138およびそのマイクロプロセッサ140はデータまたは情報を他のコンピュータシステムに通信することができる。通信モジュール147は、標準的な市販の通信モジュール、例えばイーサネットまたはWi-Fiネットワークコントローラのようなネットワークインタフェースコントローラであってよく、これにより、マイクロプロセッサ140は、他のコンピュータ、例えばリモートコンピュータからインターネットを介して、データまたは情報を送受信することができる。さらに、通信モジュール147は、無線、例えばブルートゥース無線、または他の装置、例えばカメラ119a~cと通信するためのデータ入出力ポート(例えば、USBポート)を含むことができる。制御システム138は、ソフトウェアおよび/またはロジックをさらに含むことができ、これにより、マイクロプロセッサ140は、負荷114の容積と、閾値AUCに到達するために必要な時間、またはおよその時間とを、以下に詳述するように、負荷114の種々の特性、例えば、器具の数、容積、および温度に基づいて、決定することができる。プロセッサ140は、例えば、負荷114の容積が閾値容積より大きいこと、AUC閾値が満たされていること、またはAUC閾値が特定の時間内に満たされていないことを決定すると、滅菌プロセスを自動的に終了するように構成され得る。明確にするために、プロセッサ140と滅菌器100の他の構成要素との間のある特定の接続は示されていない。しかし、滅菌器100は、プロセッサ140が滅菌器100のすべての機能を制御し得るように構成されていることを理解されたい。
【0017】
STERRAD(登録商標)100NXシステムを引き続き参照すると、このシステムは、負荷が単一チャネル可撓性内視鏡、カメラ付き可撓性内視鏡、または再充電式電池を含み得る場合など、負荷のさまざまな特徴に基づいて医療従事者が選択し得る、さまざまなプロセスパラメータの下で、滅菌処置を実行することができる。STERRAD(登録商標)100NXシステムで滅菌される大部分の外科用器具は、約47分間持続する、システムの標準サイクルを使用して滅菌される。標準サイクルは、2つのハーフサイクルを含み、各ハーフサイクルは、ポンプダウンフェーズ、滅菌剤(過酸化水素)移送フェーズ、およびプラズマフェーズのような種々のフェーズを含む。それぞれを移送フェーズと呼ぶことができる過酸化水素移送フェーズにおいて、過酸化水素は、典型的にはチャンバ112内の圧力が約40.00Pa(約0.3トル)であるときに、チャンバ112内にポンピングされ始める。チャンバ112内への過酸化水素の継続的な導入は、チャンバ内の過酸化水素の圧力および濃度を上昇させる。市販版のSTERRAD(登録商標)100NXでは、5.5mLの液体過酸化水素が約8分間かけてチャンバ112内にポンピングされる。液体過酸化水素は、チャンバ内またはチャンバ112と供給源128との間に一直線に配された蒸発器内の圧力が低いためにガス状形態に相変化する。8分間の期間は、本明細書ではチャレンジ負荷容積およびチャレンジ負荷温度と呼ばれる、大きな容積(例えば、約5.2リットル以上)および低温(例えば、約5℃より低い)を有するいわゆる「チャレンジ」負荷に対応して出願人が行った決定に基づいて、市販版のSTERRAD(登録商標)100NXでは固定される。出願人は、8分以内に、少なくとも747mg-sec/LのAUCが達成されると決定し、これは、十分な濃度の過酸化水素が、チャレンジ負荷を滅菌するのに十分な時間の間、チャンバ112内に存在することに相当する。しかしながら、出願人の市販のシステムで滅菌された多くの負荷は、チャレンジ負荷容積よりも小さい容積を有し、チャレンジ負荷温度よりも温かい。したがって、これらの負荷については、AUCは一般に8分未満で達成されるが、それにもかかわらず、移送フェーズは8分間続く。逆に、チャレンジ負荷よりも大きいかまたはより低温である負荷が出願人の市販のシステム内に配置される場合、滅菌サイクルの開始を阻止し、代わりにユーザに警告することが有利であろう。
【0018】
したがって、時間と滅菌剤を節約する機会がある。具体的には、滅菌システムは、所定のAUC閾値(例えば、約747mg-sec/L)が満たされたと決定された場合に移送フェーズを終了するように、または、所定のAUC閾値が達成されそうにないとプロセッサ140が決定した場合に滅菌サイクルの開始を阻止するように、構成され得る。医療従事者と彼らの医療施設にとっての、時間節約の価値を最大化するために、時間節約を滅菌プロセスの前または滅菌プロセスの初期に医療従事者に伝えることは有益である。
【0019】
出願人は、チャレンジ負荷よりも小さいか、温かいか、または小さく温かい、負荷について、STERRAD(登録商標)100NXシステムの移送フェーズ中に約747mg-sec/Lの所定のAUC閾値を達成するのに必要な時間を決定するためにさまざまなトライアルを行った。これらのトライアルからの例示的データを表1に示す。表1に報告されているような容積および温度を有する負荷は、STERRAD(登録商標)100NXシステムのような滅菌器でしばしば滅菌される。
【表1】
【0020】
市販のSTERRAD(登録商標)100NXの移送フェーズは約8分間続くため、また、標準サイクル中に2つの移送フェーズが実行されるため、標準サイクルにおける全体的な時間節約は、8分間と、表1に報告されているAUCに達するまでの時間との差の2倍として計算することができる。したがって、標準サイクルの47分間という現在の全体的なデフォルト期間は、やはり表1に報告されているように、この量だけ短縮することができる。特に、報告されたトライアルは、約22%短い時間までの、デフォルトの47分間より実質的に短い時間の期間にわたり続いた。時間節約は、より低いチャレンジ負荷、例えば、約35℃を超える温度を有し、2.2リットル未満である負荷で、さらに大きくなり得る。
【0021】
上述したことに基づいて、負荷容積を処置期間に相関させる情報を、記憶媒体142に入力して記憶させることができる。そのような情報は、例えば、ルックアップテーブルまたは最良適合の関数として提供され得る。このような情報はまた、負荷温度、負荷重量、またはその両方を処置期間に相関させることができる。したがって、処置期間と相関している負荷の特性および標的AUCに到達する能力を決定すると、プロセッサ140は、全体的な滅菌プロセスの予想期間を決定し、それを、ユーザインターフェース136を介して医療従事者に報告することができる。さらにまたは代替的に、プロセッサ140は、容積および温度データを使用して、滅菌プロセスのさまざまなパラメータ、例えばデフォルトからの変更:チャンバ112に導入される滅菌剤の体積、滅菌を達成するために必要な過酸化水素の濃度、滅菌サイクルの期間、または滅菌剤がチャンバ112に導入される圧力、を動的に調節することができる。
【0022】
負荷114の特性の決定は、2019年3月29日に出願された出願人の同時係属中の米国特許出願第62/826,695号に記載されているように達成することができる。さらに、カメラ119a~cを使用して、負荷114の視覚画像、熱画像、または両方のタイプの画像を捕捉することができる。視覚画像は、負荷114の容積、負荷114内の器具の数、および負荷114内の器具のタイプを決定するために使用され得る。熱画像は、負荷の温度を決定するために使用され得る。このような決定は、プロセッサ140によって、またはカメラにより撮影されプロセッサ140により通信モジュール147を介して処理のためにリモートシステムに送信される画像を受信するリモートコンピュータシステムによって、行うことができる。
【0023】
例えば、プロセッサ140またはリモートシステムは、負荷内の器具のタイプ、各器具内の拡散制限空間(内腔など)の数、各器具の材料、負荷内の器具の数、およびトレイを含むかまたは含まない、負荷の全体的な容積などの、負荷114の特性を決定するために、負荷114の画像を、(例えば、記憶媒体142に記憶される)器具の画像のデータベースと比較することができる。換言すれば、当技術分野で既知のマシンビジョン技術を用いて、負荷114の特性を決定することができる。マシンビジョン目的での画像の処理は、プロセッサ140によって、または、(例えば、プロセッサ140より速い)追加の処理能力が望ましくなり得ると判断された場合にはリモートで、実行され得る。最後にアクセスされたのが2019年9月5日であるグーグルのVision AI、https://cloud.google.com/vision/に反映されるような、グーグルが提供するものを含む、特定のクラウドサービスが、画像のリモート処理に使用され得る。代替的または追加的に、カメラ119aがスマートフォンカメラである実施形態では、スマートフォンは、追加的または代替的に、記憶および処理機能性を提供してもよい。したがって、スマートフォンを使用して、負荷を撮像し、画像を処理し、本明細書に記載する負荷特性のいずれかまたはすべてを決定することができる。
【0024】
出願人は、負荷114の画像から負荷114の特性を決定することに基づいて、チャンバ(真空チャンバまたは滅菌チャンバ)を有する滅菌器を動作させる方法および変形例を考案した。図5に反映されるように、そのような1つの例示的な方法200は、滅菌トレイ上に1~10個の器具の負荷を配することを含むステップ202で始まる。次に、ステップ204で、負荷を撮像して負荷の画像を得る。ある特定の変形例では、負荷およびトレイをチャンバの内側に配する前に、負荷を撮像することができる。他の変形例では、負荷およびトレイがチャンバの内側に配された後に、負荷を撮像することができる。さらなる変形例では、負荷は、負荷およびトレイがチャンバの内側に配される前と後の両方で撮像され得る。
【0025】
ステップ206において、本明細書に記載される撮像技術によって決定され得る負荷の特性。これらの特性は、とりわけ、器具の数(例えば、1~10個)、器具内の拡散制限空間の存在(例えば、隣接する構成要素間のギャップ、または内腔)、各負荷内の器具のタイプ(例えば、内視鏡)、負荷内の器具の材料(例えば、金属もしくはポリマー、または、より具体的には、例えば、ポリエチレンもしくはポリテトラフルオロエチレン)、負荷の容積、および負荷の温度を含み得る。したがって、負荷の第1の特性は、第1の器具が拡散制限空間を有することを含み得る。例えば、第1の器具は、拡散制限空間を含むことができる。さらに、例えば、第1の器具は、内腔、カメラ、またはその両方を含むことができる。さらに、第1の器具は内視鏡であってよく、これはカメラをさらに含んでもよく、または単一の内腔のみを含んでもよい。器具、例えば第1の器具内の任意の内腔は、約0.7ミリメートルより大きく、約10ミリメートルより小さい(例えば、約1ミリメートルより大きい)直径を有し得る。さらにまたは代替的に、これらの内腔は、約1000ミリメートル未満、約850ミリメートル未満、または約500ミリメートル未満の長さを有し得る。
【0026】
負荷は1~10個の器具を含むことができるので、負荷の第1の特性は、負荷が第2の器具を有することも含み得る。第2の器具は、第1の器具に類似していてもよく、そのため、第2の器具は、第1の器具の第2の実例(例えば、同じモデルの別の内視鏡)とみなすことができる。あるいは、第2の器具は、第1の器具とは異なるものであってもよい。したがって、例えば、第2の器具は、鉗子、カメラ、または電池を含むことができる。ステップ210において、滅菌サイクルは、負荷の第1の特性、例えば、器具の数、器具のタイプ、および器具の拡散制限空間に基づいて選択され得る。
【0027】
滅菌器によって実施され得、画像から決定されるような負荷の少なくとも第1の特性に基づいて選択され得る滅菌サイクルの各々は、負荷が、例えば(STERRAD(登録商標)100NXシステムで利用されるような)過酸化水素、または過酢酸であってよい、デフォルト量の滅菌剤に曝露されるように、デフォルト量の滅菌剤がチャンバに導入されるステップを含む。これらのサイクルにおいて、負荷は、デフォルト量の時間またはデフォルト期間にわたって、デフォルト量の滅菌剤に曝露され得る。第1のサイクルでは、デフォルト期間は、約50分~約70分、例えば約60分とすることができる。第2のサイクルでは、デフォルト期間は、約40分~約50分、例えば、約47分または約42分とすることができる。第3のサイクルでは、デフォルト期間は、約20分~30分、例えば、約24分とすることができる。しかしながら、上述のように、これらの期間は、チャレンジ負荷に対応してよく、方法は、ステップ212において、負荷の第1、第2、および第3の特性に基づいて、例えば負荷がチャレンジ負荷よりも少ない器具を含むか、チャレンジ負荷よりも温かいか、チャレンジ負荷よりも小さい容積を有するか、またはチャレンジ負荷よりも少ない拡散制限空間を含むため、例えば負荷がチャレンジ負荷よりも滅菌するのが困難でないと決定されたら、例えば約0.5%~約25%(例えば、約5%、約10%、約15%、または約20%)だけデフォルト期間からサイクルの期間を減少させることによって、滅菌サイクルのパラメータを調節することを含み得る。一方、ステップ214では、例えば、負荷がチャレンジ負荷よりも多くの器具(例えば、2個または5個)を含むか、チャレンジ負荷よりも低温であるか、チャレンジ負荷よりも大きな容積を有するか、または、チャレンジ負荷より多くの拡散制限空間、もしくは、チャレンジ負荷より制限された拡散制限空間を含むため、負荷がチャレンジ負荷よりも滅菌するのが困難であるというステップ208での決定に続いて、滅菌サイクルは中止されるか、または開始を阻止され得る。
【0028】
この方法の特定の変形例では、負荷の第2の特性は、負荷の画像から決定され得、そのため、サイクルは、第2の特性に基づいてステップ212において調節され得る。特に、第2の特性は、負荷の容積であってよい。負荷の容積がチャレンジ負荷の容積未満、例えば約5.2リットル未満であると決定された場合、サイクルの期間は、デフォルト期間から約0.5%~約25%だけ減少させることができる。一方、負荷の容積が約5.2リットルより大きいと決定された場合、滅菌サイクルは、ステップ214で中止されるか、または開始を阻止され得る。
【0029】
この方法のさらなる具体的な変形例では、負荷の第3の特性が負荷の画像から決定され得、そのため、サイクルは、第3の特性に基づいてステップ212において調節され得る。特に、第3の特性は、負荷の温度であってよい。負荷の温度がチャレンジ負荷の温度よりも高い、例えば約5℃よりも高いと決定される場合、サイクルの期間は、デフォルト期間から約0.5%~約25%だけ減少させることができる。一方、負荷の温度がチャレンジ負荷の温度未満、例えば約5℃未満であると決定された場合、滅菌サイクルは、ステップ214で中止されるか、または開始を阻止され得る。
【0030】
第1の特性、第2の特性、または第3の特性のうちの任意の1つ以上に基づいて、ステップ212において、滅菌サイクルに対する追加の調節を行ってもよい。例えば、滅菌剤がチャンバに典型的に導入される、チャンバの標準またはデフォルト圧力は、約133.32Pa(約1トル)未満、例えば約40.00Pa(約0.3トル)である。したがって、チャレンジ負荷よりも滅菌するのが困難でない負荷、例えば、小さな負荷または高温の負荷については、チャンバ内の圧力は、滅菌剤が動作圧力でチャンバ内に導入され得、器具が動作圧力で滅菌剤に曝露され得るように、デフォルト圧力よりも高い圧力を有する動作圧力で維持され得る。
【0031】
ステップ212でサイクルに対する任意の調節が完了した後、ステップ216で滅菌サイクルを開始することができる。
【0032】
ステップ206において、プロセッサ(例えば、140)を使用して、負荷の画像に基づいて、負荷の第1の特性、負荷の第2の特性、および負荷の第3の特性を決定することができる。さらにまたは代替的に、プロセッサは、負荷の画像をリモートシステムに送信することができ、これにより、リモートシステムは、負荷の画像に基づいて、負荷の第1の特性、負荷の第2の特性、および負荷の第3の特性を追加的または代替的に決定することができる。リモートシステムが特性を決定する変形例では、プロセッサはまた、リモートシステムから特性の決定を受信する。いずれにしても、プロセッサはステップ210で滅菌サイクルを選択し、そのためユーザはサイクルを選択する必要がなく、ユーザエラーの考えられる原因を排除する。加えてまたは代替的に、プロセッサは、特性に基づいて、ステップ212において滅菌サイクルに対する調節(例えば、期間、動作圧力、滅菌剤の量)を引き起こす。
【0033】
本明細書に記載される実施例または実施形態のいずれも、上述したものに加えて、またはその代わりに、さまざまな他の特徴を含むことができる。本明細書に記載される教示、表現、実施形態、実施例等は、互いに分離して見るべきではない。本明細書の教示を組み合わせることができる種々の適切な方法は、本明細書の教示を考慮すると当業者にとって明らかなはずである。
【0034】
本明細書に含まれる主題の例示的な実施形態を示し、説明してきたが、本明細書に記載される方法およびシステムのさらなる改作は、特許請求の範囲から逸脱することなく、適切な修正によって達成することができる。さらに、上記の方法およびステップが特定の順序で発生する特定のイベントを示す場合、特定のステップは、説明された順序で実行される必要はなく、そのステップにより実施形態が意図された目的のために機能することができる限り、任意の順序で実行されることが意図される。したがって、本開示または特許請求の範囲に見られる本発明の等価物の趣旨の範囲内にある、本発明の変形が存在する範囲内で、本特許はそれらの変形もカバーすることが意図されている。いくつかのそのような修正は、当業者には明らかであるはずである。例えば、上述の実施例、実施形態、幾何学的形状、材料、寸法、比率、ステップ等は例示的なものである。したがって、特許請求の範囲は、明細書および図面に記載された構造および動作の具体的な詳細に限定されるべきではない。
【0035】
〔実施の態様〕
(1) チャンバを有する滅菌器を動作させる方法であって、
負荷を滅菌トレイ上に配するステップと、
カメラで前記負荷を撮像して、前記負荷の画像を取得するステップと、
前記負荷の前記画像から決定された前記負荷の第1の特性に基づいて、前記滅菌器によって実行される滅菌サイクルを選択するステップと、
を含む、方法。
(2) 前記滅菌トレイを前記チャンバ内に配置するステップをさらに含む、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記滅菌サイクルは、前記負荷をデフォルト量の滅菌剤に曝露することを含む、実施態様1または2に記載の方法。
(4) 前記滅菌剤は過酸化水素を含む、実施態様3のいずれかに記載の方法。
(5) 前記負荷を撮像するステップは、前記滅菌トレイを前記チャンバ内に配置するステップの後に実行される、実施態様2に記載の方法。
【0036】
(6) 前記負荷を撮像するステップは、前記負荷の熱撮像を含む、実施態様5に記載の方法。
(7) 前記負荷の前記第1の特性は、前記負荷が1~10個の器具を含むことを含み、前記負荷は、第1の器具を含む、実施態様1から6のいずれかに記載の方法。
(8) 前記負荷の前記第1の特性は、前記第1の器具が拡散制限空間を有することを含む、実施態様1から7のいずれかに記載の方法。
(9) 前記拡散制限空間は内腔を含む、実施態様8に記載の方法。
(10) 前記内腔は、約0.7ミリメートルより大きく約10ミリメートルより小さい直径を有する、実施態様9に記載の方法。
【0037】
(11) 前記内腔は、約1000ミリメートル未満の長さを有する、実施態様9または10に記載の方法。
(12) 前記内腔は、約850ミリメートル未満の長さを有する、実施態様9から11に記載の方法。
(13) 前記内腔は、約500ミリメートル未満の長さを有する、実施態様9から12のいずれかに記載の方法。
(14) 前記第1の器具は、内視鏡を含む、実施態様7から13のいずれかに記載の方法。
(15) 前記内視鏡の前記内腔は、単一の内腔である、実施態様14に記載の方法。
【0038】
(16) 前記内視鏡は、内視鏡カメラを含む、実施態様14または15に記載の方法。
(17) 前記内視鏡は、ポリエチレンを含む材料から製造される、実施態様14から16のいずれかに記載の方法。
(18) 前記内視鏡は、ポリテトラフルオロエチレンを含む材料から製造される、実施態様14から16のいずれかに記載の方法。
(19) 前記内視鏡は、ポリウレタンを含む材料から製造される、実施態様14から16のいずれかに記載の方法。
(20) 前記内腔は、約1ミリメートルより大きい直径を有する、実施態様9から18のいずれかに記載の方法。
【0039】
(21) 前記負荷の前記第1の特性は、前記負荷が第2の器具を含むことをさらに含む、実施態様7から20のいずれかに記載の方法。
(22) 前記第2の器具は、前記第1の器具の第2の実例を含む、実施態様21に記載の方法。
(23) 前記第2の器具は、器具カメラを含む、実施態様21または22に記載の方法。
(24) 前記第2の器具は、電池を含む、実施態様21から23のいずれかに記載の方法。
(25) 前記滅菌サイクルは、デフォルト期間を含む、実施態様1から24のいずれかに記載の方法。
【0040】
(26) 前記滅菌サイクルは、約50分~約70分のデフォルト期間を含む、実施態様25に記載の方法。
(27) 前記滅菌サイクルは、約40分~約50分のデフォルト期間を含む、実施態様25に記載の方法。
(28) 前記滅菌サイクルは、約20分~約30分のデフォルト期間を含む、実施態様25に記載の方法。
(29) 前記滅菌サイクルは、約60分のデフォルト期間を含む、実施態様26に記載の方法。
(30) 前記デフォルト期間は、約47分に等しい、実施態様27に記載の方法。
【0041】
(31) 前記滅菌サイクルは、約42分のデフォルト期間を含む、実施態様27に記載の方法。
(32) 前記滅菌サイクルは、約24分のデフォルト期間を含む、実施態様28に記載の方法。
(33) 前記サイクルの期間を約0.5%~約25%だけ前記デフォルト期間から減少させるステップをさらに含む、実施態様25~32のいずれかに記載の方法。
(34) 前記負荷が最大数を超える器具を含むことを決定するステップをさらに含む、実施態様1から33のいずれかに記載の方法。
(35) 前記滅菌サイクルの開始を阻止するステップをさらに含む、実施態様34に記載の方法。
【0042】
(36) 器具の前記最大数は、5である、実施態様35に記載の方法。
(37) 器具の前記最大数は、2である、実施態様35に記載の方法。
(38) 前記負荷の第2の特性を決定するステップをさらに含む、実施態様1から37のいずれかに記載の方法。
(39) 前記第2の特性は、前記負荷の容積を含む、実施態様38のいずれかに記載の方法。
(40) 前記負荷の前記容積が約5.2リットル未満であると決定するステップをさらに含む、実施態様39に記載の方法。
【0043】
(41) 前記サイクルの期間を約0.5%~約25%だけ前記デフォルト期間から減少させるステップをさらに含む、実施態様40に記載の方法。
(42) 前記負荷の前記容積が5.2リットルより大きいと決定するステップをさらに含む、実施態様39に記載の方法。
(43) 前記滅菌サイクルの開始を阻止するステップをさらに含む、実施態様42に記載の方法。
(44) 前記負荷の第3の特性を決定するステップをさらに含む、実施態様1から43のいずれかに記載の方法。
(45) 前記負荷の前記第3の特性に基づいて前記滅菌サイクルを調節するステップをさらに含む、実施態様44に記載の方法。
【0044】
(46) 前記第3の特性は、前記負荷の温度を含む、実施態様45に記載の方法。
(47) 前記負荷の前記温度が5℃より高いと決定するステップをさらに含む、実施態様46に記載の方法。
(48) 前記サイクルの期間を約0.5%~約25%だけ前記デフォルト期間から減少させるステップをさらに含む、実施態様47に記載の方法。
(49) 前記負荷の前記温度が5℃未満であると決定するステップをさらに含む、実施態様46に記載の方法。
(50) 前記滅菌サイクルの開始を阻止するステップをさらに含む、実施態様46に記載の方法。
【0045】
(51) 前記チャンバ内の圧力を、デフォルト圧力よりも高い動作圧力まで低下させるステップをさらに含む、実施態様1から50のいずれかに記載の方法。
(52) 前記チャンバ内の前記圧力が前記動作圧力とほぼ等しいときに、前記負荷が前記滅菌剤に曝露される、実施態様1から51のいずれかに記載の方法。
(53) 前記デフォルト圧力は、約40.00Pa(約0.3トル)である、実施態様52に記載の方法。
(54) 前記カメラのレンズが前記チャンバ内に向くように前記カメラが配される、実施態様53に記載の方法。
(55) 前記カメラは、前記チャンバの外側に配される、実施態様53に記載の方法。
【0046】
(56) 前記カメラは、前記チャンバへのドアの上に配される、実施態様54に記載の方法。
(57) プロセッサが、前記負荷の前記第1の特性を決定する、実施態様1から56のいずれかに記載の方法。
(58) 前記プロセッサは、前記負荷の前記第2の特性を決定する、実施態様57に記載の方法。
(59) 前記プロセッサは、前記負荷の前記第3の特性を決定する、実施態様58に記載の方法。
(60) 前記プロセッサは、前記負荷の前記画像をリモートシステムに送信する、実施態様1から59のいずれかに記載の方法。
【0047】
(61) 前記滅菌器は、前記プロセッサをさらに含む、実施態様1から60のいずれかに記載の方法。
(62) スマートフォンが前記プロセッサを含む、実施態様57から60のいずれかに記載の方法。
(63) 前記プロセッサは、前記リモートシステムから、前記第1の特性、前記第2の特性、前記第3の特性、またはこれらの任意の組み合わせの決定を受信する、実施態様60に記載の方法。
(64) 前記プロセッサは、前記第1の特性、前記第2の特性、前記第3の特性、またはこれらの任意の組み合わせに基づいて、前記滅菌サイクルに対する調節を引き起こす、実施態様1から63のいずれかに記載の方法。
(65) 前記滅菌サイクルに対する前記調節は、前記滅菌サイクルの期間を調節することを含む、実施態様64に記載の方法。
【0048】
(66) 前記滅菌サイクルに対する前記調節は、前記滅菌サイクルの前記動作圧力を調節することを含む、実施態様64に記載の方法。
(67) 前記滅菌サイクルに対する前記調節は、前記滅菌剤の前記デフォルト量よりも少ない動作量の滅菌剤に前記負荷を曝露することを含む、実施態様64に記載の方法。
(68) 滅菌器であって、
真空チャンバと、
前記真空チャンバに接続された滅菌剤の供給源と、
カメラと、
を含む、滅菌器。
(69) 前記カメラは、前記滅菌器の外側に配されている、実施態様68に記載の滅菌器。
(70) 前記カメラは、前記真空チャンバのドアの上に配されている、実施態様68または69に記載の滅菌器。
【0049】
(71) 前記カメラは、前記真空チャンバ内に配されている、実施態様68に記載の滅菌器。
(72) 前記カメラは、前記真空チャンバ内に面するレンズを含む、実施態様68に記載の滅菌器。
(73) 前記カメラは、サーモグラフィーカメラである、実施態様68から72のいずれかに記載の滅菌器。
(74) 前記カメラは、サーモグラフィー機能性を有する撮像カメラである、実施態様68から72のいずれかに記載の滅菌器。
図1
図2
図3
図4
図5