IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 積水化学工業株式会社の特許一覧

特許7592719非導電性フラックス、接続構造体及び接続構造体の製造方法
<>
  • 特許-非導電性フラックス、接続構造体及び接続構造体の製造方法 図1
  • 特許-非導電性フラックス、接続構造体及び接続構造体の製造方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】非導電性フラックス、接続構造体及び接続構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/29 20060101AFI20241125BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20241125BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20241125BHJP
   H01L 21/60 20060101ALI20241125BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20241125BHJP
   C08K 5/09 20060101ALI20241125BHJP
   C08K 5/52 20060101ALI20241125BHJP
【FI】
H01L23/30 D
H01L23/12 501B
H01L21/60 311S
H01L23/30 R
C08L63/00 Z
C08K5/09
C08K5/52
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022534236
(86)(22)【出願日】2022-01-20
(86)【国際出願番号】 JP2022001988
(87)【国際公開番号】W WO2022158527
(87)【国際公開日】2022-07-28
【審査請求日】2024-09-12
(31)【優先権主張番号】P 2021007135
(32)【優先日】2021-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】保井 秀文
(72)【発明者】
【氏名】松下 清人
【審査官】ゆずりは 広行
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-183480(JP,A)
【文献】国際公開第2009/147828(WO,A1)
【文献】特開2005-039206(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/29
H01L 23/12
H01L 21/60
C08L 63/00
C08K 5/09
C08K 5/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ化合物と、酸無水物硬化剤と、有機リン化合物とを含み、
25℃での接着力が、100000N/m 以上210000N/m 以下である、非導電性フラックス。
【請求項2】
25℃での粘度が、400Pa・s以下である、請求項1に記載の非導電性フラックス。
【請求項3】
25℃での粘度が、50Pa・s以下である、請求項に記載の非導電性フラックス。
【請求項4】
前記酸無水物硬化剤100重量部に対して、前記有機リン化合物の含有量が、0.5重量部以上10重量部以下である、請求項1~のいずれか1項に記載の非導電性フラックス。
【請求項5】
非導電性フラックス100重量%中、前記酸無水物硬化剤の含有量が、5重量%以上50重量%以下である、請求項1~のいずれか1項に記載の非導電性フラックス。
【請求項6】
ペーストである、請求項1~のいずれか1項に記載の非導電性フラックス。
【請求項7】
第1の電極を表面に有する第1の接続対象部材と、
第2の電極を表面に有する第2の接続対象部材と、
前記第1の接続対象部材と、前記第2の接続対象部材とを接続している樹脂部とを備え、
前記第1の電極が、第1の電極本体と、前記第1の電極本体の表面上にはんだ粒子とを備え、
前記第1の電極本体と前記第2の電極とが、電気的に接続されており、
前記樹脂部の材料が、請求項1~のいずれか1項に記載の非導電性フラックスである、接続構造体。
【請求項8】
第1の電極を表面に有し、前記第1の電極が、第1の電極本体と前記第1の電極本体の表面上にはんだ粒子とを備える第1の接続対象部材を用いて、かつ、請求項1~のいずれか1項に記載の非導電性フラックスを用いて、前記第1の接続対象部材における前記はんだ粒子の表面上に、前記非導電性フラックスを配置する第1の配置工程と、
前記非導電性フラックスが配置された前記第1の接続対象部材と、第2の電極を表面に有する第2の接続対象部材とを、前記第1の電極と前記第2の電極とが対向するように配置する第2の配置工程と、
前記はんだ粒子及び前記非導電性フラックスを加熱することで、前記第1の電極と前記第2の電極とを電気的に接続し、かつ、前記第1の接続対象部材と前記第2の接続対象部材とを接続している樹脂部を前記非導電性フラックスにより形成する工程とを備える、接続構造体の製造方法。
【請求項9】
前記第1の配置工程において、前記非導電性フラックスをディッピングにより配置する、請求項に記載の接続構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非導電性フラックスに関する。また、本発明は、上記非導電性フラックスを用いた接続構造体及び接続構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、データサーバー、パーソナルコンピューター(PC)及び携帯端末等の電子機器の小型化、軽量化、及び高機能化に伴い、プリント配線板等における配線のファインピッチ化が進んでいる。そのため、配線がチップの真下に伸びるボールグリッドアレイ(BGA)や、超小型のチップスケールパッケージ(CSP)等の表面実装型パッケージが注目されている。
【0003】
しかし、BGA等の表面実装型パッケージでは、従来のピン挿入型パッケージとは異なり、はんだボールにより配線基板の表面の電極同士が接続されているため、接着性が低くなり、落下した際に破損しやすい(耐衝撃性が低い)という問題がある。
【0004】
そこで、表面実装型パッケージと配線基板との間に、アンダーフィル材を充填した後に硬化させることで、接合部分を補強することがある。
【0005】
下記の特許文献1には、一方の面に半導体チップがフリップチップ実装される半導体パッケージ基板が開示されている。該半導体パッケージ基板は、該半導体パッケージ基板の他方の面側から、プリント配線板に実装される。上記半導体パッケージ基板は、コア基材と、ビルドアップ層と、応力緩衝層とを備える。上記ビルドアップ層は、配線パターンと絶縁樹脂層とが交互に積層された多層配線層であり、ビルドアップ層の最上層は配線パターンである。また、上記応力緩衝層は、上記他方の面側にてビルドアップ層の表面上に備えられている。上記応力緩衝層は、第一の応力緩衝層と、該第一の応力緩和層上に第二の応力緩衝層とを備え、上記第一の応力緩衝層と上記第二の応力緩衝層とはそれぞれ、ビアと配線パターンとを備える。上記半導体パッケージ基板の一方の面上に半導体チップが実装された後に、半導体チップと半導体パッケージ基板との間に、アンダーフィル材が封入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-186121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のようなアンダーフィル材を封止剤として用いた場合には、半導体チップと半導体パッケージ基板との接着性を高め、得られる接続構造体(半導体パッケージ)の耐衝撃性を高めることができる。
【0008】
しかしながら、接続構造体の生産工程においては、電極同士を接続するためにリフロー工程を行った後に、半導体チップと半導体パッケージ基板との間にアンダーフィル材を毛細管現象により浸透させて充填し、アンダーフィル材を硬化させるためのリフロー工程を再度行う必要がある。すなわち、従来のアンダーフィル材を用いる接続構造体の製造方法では、リフロー工程を2回行う必要があるため、生産性が低いという課題がある。さらに、従来のアンダーフィル材を用いた接続構造体では、2回目のリフロー工程の際に、電極同士を接続しているはんだが溶融することによって、はんだがアンダーフィル材と部品(又は基板)との界面を破壊しながら進展する現象(はんだフラッシュ)が発生することがある。はんだフラッシュが発生すると、ショート又はオープン不良が発生することがある。
【0009】
本発明の目的は、得られる接続構造体の生産性及び耐衝撃性を高め、はんだフラッシュの発生を抑制することができる非導電性フラックスを提供することである。また、本発明の目的は、上記非導電性フラックスを用いた接続構造体及び接続構造体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の広い局面によれば、エポキシ化合物と、酸無水物硬化剤と、有機リン化合物とを含む、非導電性フラックスが提供される。
【0011】
本発明に係る非導電性フラックスのある特定の局面では、25℃での接着力が、100000N/m以上210000N/m以下である。
【0012】
本発明に係る非導電性フラックスのある特定の局面では、25℃での粘度が、400Pa・s以下である。
【0013】
本発明に係る非導電性フラックスのある特定の局面では、25℃での粘度が、50Pa・s以下である。
【0014】
本発明に係る非導電性フラックスのある特定の局面では、前記酸無水物硬化剤100重量部に対して、前記有機リン化合物の含有量が、0.5重量部以上10重量部以下である。
【0015】
本発明に係る非導電性フラックスのある特定の局面では、前記非導電性フラックス100重量%中、前記酸無水物硬化剤の含有量が、5重量%以上50重量%以下である。
【0016】
本発明に係る非導電性フラックスのある特定の局面では、前記非導電性フラックスは、ペーストである。
【0017】
本発明の広い局面によれば、第1の電極を表面に有する第1の接続対象部材と、第2の電極を表面に有する第2の接続対象部材と、前記第1の接続対象部材と、前記第2の接続対象部材とを接続している樹脂部とを備え、前記第1の電極が、第1の電極本体と、前記第1の電極本体の表面上にはんだ粒子とを備え、前記第1の電極本体と前記第2の電極とが、電気的に接続されており、前記樹脂部の材料が、上述した非導電性フラックスである、接続構造体が提供される。
【0018】
本発明の広い局面によれば、第1の電極を表面に有し、前記第1の電極が、第1の電極本体と前記第1の電極本体の表面上にはんだ粒子とを備える第1の接続対象部材を用いて、かつ、上述した非導電性フラックスを用いて、前記第1の接続対象部材における前記はんだ粒子の表面上に、前記非導電性フラックスを配置する第1の配置工程と、前記非導電性フラックスが配置された前記第1の接続対象部材と、第2の電極を表面に有する第2の接続対象部材とを、前記第1の電極と前記第2の電極とが対向するように配置する第2の配置工程と、前記はんだ粒子及び前記非導電性フラックスを加熱することで、前記第1の電極と前記第2の電極とを電気的に接続し、かつ、前記第1の接続対象部材と前記第2の接続対象部材とを接続している樹脂部を前記非導電性フラックスにより形成する工程とを備える、接続構造体の製造方法が提供される。
【0019】
本発明に係る接続構造体の製造方法のある特定の局面では、前記第1の配置工程において、前記非導電性フラックスをディッピングにより配置する。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る非導電性フラックスは、エポキシ化合物と、酸無水物硬化剤と、有機リン化合物とを含む。本発明に係る非導電性フラックスでは、上記の構成が備えられているので、得られる接続構造体の生産性及び耐衝撃性を高め、はんだフラッシュの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る非導電性フラックスを用いて得られる接続構造体を模式的に示す断面図である。
図2図2(a)~(d)は、本発明の一実施形態に係る非導電性フラックスを用いて、接続構造体を製造する方法の一例の各工程を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0023】
(非導電性フラックス)
本発明に係る非導電性フラックスは、エポキシ化合物と、酸無水物硬化剤と、有機リン化合物とを含む。上記非導電性フラックスは、導電性を有しない。上記非導電性フラックスは、導電性物質を含まないことが好ましい。上記非導電性フラックスは、導電性粒子を含まないことが好ましい。上記非導電性フラックスは、はんだを含まないことが好ましい。上記非導電性フラックスは、はんだ粒子を含まないことが好ましい。また、上記非導電性フラックスは、熱硬化可能である。上記非導電性フラックスは、加熱により硬化する特性を有する。
【0024】
従来のようなアンダーフィル材を用いて封止を行った場合には、はんだ接合及びアンダーフィル材の硬化のためにリフロー工程を2回行うことになり、生産性が低いという課題がある。
【0025】
本発明に係る非導電性フラックスでは、上記の構成が備えられているので、上記非導電性フラックスを用いて接続構造体を作製する際に、1回のリフロー工程により、はんだを溶融させて電極同士を接続することができ、かつ、上記非導電性フラックスを硬化させることができる。このため、リフロー工程を2回行う必要がない。すなわち、本発明の非導電性フラックスでは、接続構造体を作製する際に一括実装が可能であるので、生産性を高めることができる。
【0026】
本発明に係る非導電性フラックスは、はんだを溶融させて電極同士を接続するために行われるリフロー工程の前に、はんだ粒子の表面上に配置されて用いられてもよい。すなわち、本発明に係る非導電性フラックスは、先入れアンダーフィル材として用いられてもよい。本発明に係る非導電性フラックスは、先入れアンダーフィル材として用いられることが好ましい。この場合、電極同士を接続するためのリフロー工程後にアンダーフィル材を充填し、再度リフロー工程を行う場合に比べて、リフロー工程の回数を減らすことができる。すなわち、本発明に係る非導電性フラックスが先入れアンダーフィル材として用いられる場合には、接続構造体を作製する際に一括実装が可能であるので、生産性をより一層高めることができる。
【0027】
また、本発明に係る非導電性フラックスでは、上記の構成が備えられているので、例えば、ディッピングによりパッケージに非導電性フラックスを配置する際に、十分な量を配置することができる。結果として、本発明に係る非導電性フラックスを用いた接続構造体に落下等の衝撃が加わった際に、接続不良等が発生して接続構造体が故障する確率を低くすることができる。すなわち、得られる接続構造体の耐衝撃性を高めることができる。また、接続対象部材に非導電性フラックスを配置する時に、接続対象部材をディッピング槽から容易に引き上げることができる。
【0028】
さらに、本発明に係る非導電性フラックスでは、上記の構成が備えられているので、得られる接続構造体のはんだフラッシュの発生を抑制することができ、耐はんだフラッシュ性を高めることができる。結果として、本発明に係る非導電性フラックスを用いた接続構造体において、ショート及びオープン不良の発生を抑制することができる。
【0029】
さらに、本発明に係る非導電性フラックスでは、上記の構成が備えられているので、得られる接続構造体における上下の電極間の接続抵抗を低くすることができ、結果として、導通信頼性を高めることができる。特に、本発明では、酸無水物硬化剤と有機リン化合物とが併用されていることで、フラックス効果をかなり高めることができる。
【0030】
本発明において、非導電性とは、絶縁抵抗が1.0×10Ω以上であることをいう。非導電性フラックスの絶縁抵抗は、例えば、以下の方法で測定することができる。銅電極を表面に有する櫛型基板の表面上に、非導電性フラックスを厚み100μmで塗布して試験体を得る。得られた試験体を、リフローシミュレーター(例えば、コアーズ社製「Core9046a」)を用いて、窒素雰囲気下(酸素濃度100ppm以下)で2℃/秒で160℃まで昇温させた後、室温(23℃)まで冷却する。その後、5Vの電圧を印加し、測定装置(例えば、ESPEC社製「エレクトロケミカルマイグレーション評価システム」)を用いて、絶縁抵抗を測定する。
【0031】
本発明において、フラックスとは、以下のはんだぬれ性試験におけるはんだぬれ径が600μm以上である組成物をいう。金メッキプリント基板の表面上に、組成物を厚み150μmで塗布し、該組成物の表面上に、SnBiはんだ粒子(粒子径500μm、融点139℃)を配置して、試験体を得る。得られた試験体を、リフローシミュレーター(例えば、コアーズ社製「Core9046a」)を用いて、窒素雰囲気下(酸素濃度100ppm以下)で2℃/秒で160℃まで昇温させ、3分間保持した後、室温(23℃)まで冷却する。その後、ぬれ拡がったはんだの形状を楕円で近似し、該楕円の短径と長径との平均((短径+長径)/2)を、組成物のはんだぬれ径とする。なお、上記楕円は正円を含む概念であり、上記楕円が正円である場合には、組成物のはんだぬれ径は、正円の直径となる。
【0032】
本発明に係る非導電性フラックスは、表面実装型パッケージと配線基板との接続に好適に用いることができる。上記表面実装型パッケージとしては、BGA、及びCSP等が挙げられる。
【0033】
上記非導電性フラックスの25℃での接着力(タック力)は、好ましくは50000N/m以上、より好ましくは100000N/m以上、さらに好ましくは120000N/m以上、特に好ましくは140000N/m以上である。上記非導電性フラックスの25℃での接着力(タック力)は、好ましくは250000N/m以下、より好ましくは210000N/m以下、さらに好ましくは170000N/m以下、特に好ましくは160000N/m以下である。上記非導電性フラックスの25℃での接着力が上記下限以上であると、ディッピングによりパッケージに上記非導電性フラックスを配置する際に、十分な量を配置することができる。結果として、得られる接続構造体の耐衝撃性をより一層効果的に高めることができる。また、上記非導電性フラックスの25℃での接着力が上記上限以下であると、ディッピング槽から容易にパッケージを引き上げることができる。
【0034】
上記非導電性フラックスの25℃での接着力(タック力)は、以下のようにして測定する。上記非導電性フラックスをステンレス板の表面上に厚み50μmで塗布し、積層体を得る。タック試験機を用いて、上記積層体にプローブ(直径8mm、10g)を10秒押し込んだ後、0.1mm/秒の速度でプローブを引き上げた時の荷重を測定する。タック試験機としては、UBM社製「TA-500」等が挙げられる。
【0035】
得られる接続構造体の耐衝撃性をより一層効果的に高める観点からは、上記非導電性フラックスの25℃での粘度(η25)は、好ましくは5Pa・s以上、より好ましくは25Pa・s以上であり、好ましくは400Pa・s以下、より好ましくは300Pa・s以下、さらに好ましくは50Pa・s以下、特に好ましくは40Pa・s以下である。上記粘度(η25)は、配合成分の種類及び配合量により適宜調整することができる。
【0036】
上記粘度(η25)は、例えば、E型粘度計(東機産業社製「TVE22L」)等を用いて、25℃及び10rpmの条件で測定することができる。
【0037】
得られる接続構造体の耐衝撃性を高める観点からは、上記非導電性フラックスは、25℃で液状であることが好ましく、ペーストであることが好ましい。
【0038】
得られる接続構造体の耐衝撃性をより一層効果的に高める観点からは、上記非導電性フラックスの融点は、好ましくは40℃以上、より好ましくは70℃以上であり、好ましくは350℃以下、より好ましくは310℃以下である。
【0039】
上記非導電性フラックスの融点は、示差走査熱量測定(DSC)により求めることができる。示差走査熱量測定(DSC)装置としては、SII社製「EXSTAR DSC7020」等が挙げられる。
【0040】
導通信頼性を高める観点からは、上記非導電性フラックスの反応開始温度は、好ましくは50℃以上、より好ましくは70℃以上、さらに好ましくは80℃以上であり、好ましくは250℃以下、より好ましくは200℃以下、さらに好ましくは150℃以下、特に好ましくは140℃以下である。
【0041】
<エポキシ化合物>
上記エポキシ化合物は、少なくとも1個のエポキシ基を有する化合物である。上記エポキシ化合物としては、ビキシレノール型エポキシ化合物、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物、ビフェニルノボラック型エポキシ化合物、ビフェノール型エポキシ化合物、ナフタレン型エポキシ化合物、フルオレン型エポキシ化合物、フェノールアラルキル型エポキシ化合物、ナフトールアラルキル型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物、アントラセン型エポキシ化合物、アダマンタン骨格を有するエポキシ化合物、トリシクロデカン骨格を有するエポキシ化合物、ナフチレンエーテル型エポキシ化合物、及びトリアジン核を骨格に有するエポキシ化合物等が挙げられる。上記エポキシ化合物は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0042】
ディッピング性を高める観点からは、上記エポキシ化合物は、ビキシレノール型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物又はトリアジン核を骨格に有するエポキシ化合物であることが好ましく、ビキシレノール型エポキシ化合物又はビスフェノールF型エポキシ化合物であることがより好ましい。上記エポキシ化合物は、ビキシレノール型エポキシ化合物であることがさらに好ましい。
【0043】
得られる接続構造体の耐衝撃性をより一層高める観点からは、上記エポキシ化合物は、25℃で液状であることが好ましい。
【0044】
得られる接続構造体の耐衝撃性をより一層高める観点からは、上記非導電性フラックス100重量%中、上記エポキシ化合物の含有量は、好ましくは15重量%以上、より好ましくは30重量%以上、さらに好ましくは50重量%以上であり、好ましくは70重量%以下、より好ましくは60重量%以下、さらに好ましくは55重量%以下である。
【0045】
<酸無水物硬化剤>
上記酸無水物硬化剤は、上記エポキシ化合物を熱硬化させる。上記酸無水物硬化剤と、後述する有機リン化合物とを併用することにより、上記非導電性フラックスのフラックス効果をかなり高めることができる。結果として、得られる接続構造体中の電極及びはんだの表面の酸化膜を良好に除去することができる。
【0046】
上記酸無水物硬化剤としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルブテニルテトラヒドロ無水フタル酸、フタル酸誘導体の無水物、無水マレイン酸、無水ナジック酸、無水メチルナジック酸、無水グルタル酸、無水コハク酸、グリセリンビス無水トリメリット酸モノアセテート、及びエチレングリコールビス無水トリメリット酸等の2官能の酸無水物硬化剤、無水トリメリット酸等の3官能の酸無水物硬化剤、並びに、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸無水物、及びポリアゼライン酸無水物等の4官能以上の酸無水物硬化剤等が挙げられる。上記酸無水物硬化剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0047】
ディッピング性を高める観点からは、上記酸無水物硬化剤は、テトラヒドロ無水フタル酸又はヘキサヒドロ無水フタル酸であることが好ましく、ヘキサヒドロ無水フタル酸であることがより好ましい。ディッピング性をより一層高める観点からは、上記ヘキサヒドロ無水フタル酸は、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸であることが好ましい。
【0048】
上記非導電性フラックス100重量%中、上記酸無水物硬化剤の含有量は、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上、さらに好ましくは25重量%以上であり、好ましくは60重量%以下、より好ましくは50重量%以下、さらに好ましくは45重量%以下である。上記酸無水物硬化剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、得られる接続構造体の耐衝撃性及び耐はんだフラッシュ性をより一層高めることができる。
【0049】
上記エポキシ化合物100重量部に対して、上記酸無水物硬化剤の含有量は、好ましくは50重量部以上、より好ましくは60重量部以上、さらに好ましくは70重量部以上であり、好ましくは120重量部以下、より好ましくは110重量部以下、さらに好ましくは100重量部以下である。上記酸無水物硬化剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、得られる接続構造体の耐衝撃性及び耐はんだフラッシュ性をより一層高めることができる。
【0050】
<有機リン化合物>
上記有機リン化合物と、上記酸無水物硬化剤とを併用することにより、非導電性フラックスのフラックス性を高めることができる。結果として、得られる接続構造体中の電極及びはんだの表面の酸化膜を良好に除去することができる。また、得られる接続構造体の耐衝撃性を高めることができる。
【0051】
上記有機リン化合物としては、有機ホスホニウム塩、有機リン酸、有機リン酸エステル、有機ホスホン酸、有機ホスホン酸エステル、有機ホスフィン酸、及び有機ホスフィン酸エステル等が挙げられる。上記有機リン化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0052】
導通信頼性を高める観点からは、上記有機リン化合物は、有機ホスホニウム塩、有機リン酸又は有機リン酸エステルであることが好ましく、有機ホスホニウム塩であることがより好ましい。
【0053】
上記有機ホスホニウム塩としては、ホスホニウムイオンとその対イオンとで構成されている有機ホスホニウム塩が挙げられる。
【0054】
導通信頼性を高める観点からは、上記有機ホスホニウム塩は、メチルトリブチルホスホニウムジメチルホスフェート、トリブチルメチルホスホニウムビス(2-エチルヘキシル)ホスフェート、又はテトラブチルホスホニウムブロマイドであることが好ましく、メチルトリブチルホスホニウムジメチルホスフェートであることがより好ましい。
【0055】
上記有機ホスホニウム塩の市販品としては、日本化学工業社製「ヒシコーリン」シリーズ等が挙げられる。
【0056】
上記有機リン酸、上記有機リン酸エステル、上記有機ホスホン酸、上記有機ホスホン酸エステル、上記有機ホスフィン酸、及び上記有機ホスフィン酸エステルとしては特に限定されず、従来公知の化合物や市販品を用いることができる。
【0057】
得られる接続構造体の耐衝撃性をより一層高める観点からは、上記有機リン化合物は、25℃で液状であることが好ましい。
【0058】
得られる接続構造体の耐衝撃性及び耐はんだフラッシュ性をより一層高める観点からは、上記非導電性フラックス100重量%中、上記有機リン化合物の含有量は、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは0.8重量%以上であり、好ましくは10重量%以下、より好ましくは8.0重量%以下、さらに好ましくは4.0重量%以下である。
【0059】
得られる接続構造体の耐衝撃性及び耐はんだフラッシュ性をより一層高める観点からは、上記酸無水物硬化剤100重量部に対して、上記有機リン化合物の含有量は、好ましくは0.5重量部以上、より好ましくは1重量部以上、さらに好ましくは2重量部以上であり、好ましくは10重量部以下、より好ましくは5重量部以下である。
【0060】
<他の成分>
上記非導電性フラックスは、必要に応じて、例えば、充填剤、増量剤、軟化剤、可塑剤、チキソ剤、レベリング剤、重合触媒、硬化触媒、着色剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤及び難燃剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
【0061】
フラックス性をより一層高める観点から、上記非導電性フラックスは、カルボキシル基を有する化合物を含んでいてもよく、カルボン酸化合物を含んでいてもよい。上記非導電性フラックスはフラックス性に優れているので、上記非導電性フラックスは、カルボキシル基を有する化合物を含んでいなくてもよく、カルボン酸化合物を含んでいなくてもよい。
【0062】
(接続構造体及び接続構造体の製造方法)
本発明に係る非導電性フラックスは、接続構造体を得るために好適に用いられる。本発明に係る非導電性フラックスは、はんだの表面上に塗布するために好適に用いられる(非導電性フラックスのはんだの表面への使用)。本発明に係る非導電性フラックスは、はんだ粒子の表面上に塗布するために好適に用いられる(非導電性フラックスのはんだ粒子の表面への使用)。本発明に係る非導電性フラックスは、はんだの被覆材料であってもよい。本発明に係る非導電性フラックスは、はんだ粒子の被覆材料であってもよい。本発明に係る非導電性フラックスは、電極の表面上に塗布するためにも好適に用いられる(非導電性フラックスの電極の表面への使用)。本発明に係る非導電性フラックスは、導電性粒子の表面上に塗布するためにも好適に用いられる(非導電性フラックスの導電性粒子の表面への使用)。本発明に係る非導電性フラックスは、電極の被覆材料であってもよい。本発明に係る非導電性フラックスは、導電性粒子の被覆材料であってもよい。
【0063】
本発明に係る接続構造体は、第1の電極を表面に有する第1の接続対象部材と、第2の電極を表面に有する第2の接続対象部材と、上記第1の接続対象部材と、上記第2の接続対象部材とを接続している樹脂部とを備える。本発明に係る接続構造体では、上記第1の電極は、第1の電極本体と、上記第1の電極本体の表面上にはんだ粒子とを備える。本発明に係る接続構造体では、上記第1の電極本体と上記第2の電極とが、電気的に接続されている。本発明に係る接続構造体では、上記樹脂部の材料が、上述した非導電性フラックスである。
【0064】
本発明に係る接続構造体の製造方法では、第1の電極を表面に有する第1の接続対象部材が用いられ、上記第1の電極は、第1の電極本体と、上記第1の電極本体の表面上にはんだ粒子とを備える。本発明に係る接続構造体の製造方法では、上述した第1の接続対象部材を用いて、かつ、上述した非導電性フラックスを用いて、上記第1の接続対象部材における上記はんだ粒子の表面上に、上記非導電性フラックスを配置する第1の配置工程を備える。本発明に係る接続構造体の製造方法は、上記非導電性フラックスが配置された上記第1の接続対象部材と、第2の電極を表面に有する第2の接続対象部材とを、上記第1の電極と上記第2の電極とが対向するように配置する第2の配置工程を備える。本発明に係る接続構造体の製造方法は、上記はんだ粒子及び上記非導電性フラックスを加熱することで、上記第1の電極と上記第2の電極とを電気的に接続し、かつ、上記第1の接続対象部材と上記第2の接続対象部材とを接続している樹脂部を上記非導電性フラックスにより形成する工程を備える。
【0065】
本発明に係る接続構造体の製造方法では、上記第1の配置工程において、上記非導電性フラックスを、ディスペンスにより配置してもよく、スクリーン印刷により配置してもよく、インクジェット装置による吐出により配置してもよく、ディッピングにより配置してもよい。生産性をより一層高める観点からは、上記第1の配置工程において、上記非導電性フラックスをディッピングにより配置することが好ましい。
【0066】
従来のアンダーフィル材を用いる接続構造体の製造方法では、電極同士を接続するためのリフロー工程を行った後、接続対象部材間にアンダーフィル材を毛細管現象により浸透させて充填し、アンダーフィル材を硬化させるためのリフロー工程を再度行う必要がある。すなわち、従来のアンダーフィル材を用いる接続構造体の製造方法では、リフロー工程を2回行う必要があるため、生産性が低いという課題がある。さらに、従来のアンダーフィル材を用いた接続構造体では、はんだフラッシュが発生することがある。はんだフラッシュが発生すると、ショート又はオープン不良が発生することがある。
【0067】
本発明に係る接続構造体及び接続構造体の製造方法では、特定の非導電性フラックスを用いているので、1回のリフロー工程により、電極同士を電気的に接続し、かつ、上記非導電性フラックスを硬化させることができる。このため、リフロー工程を2回行う必要がない。すなわち、本発明に係る接続構造体及び接続構造体の製造方法では、一括実装が可能であるので、結果として、生産性をより一層高めることができる。また、本発明に係る接続構造体及び接続構造体の製造方法では、特定の非導電性フラックスを用いているので、例えば、ディッピングによりパッケージに非導電性フラックスを配置する際に、十分な量を配置することができる。結果として、接続構造体に落下等の衝撃が加わった際に、接続不良等が発生して接続構造体が故障する確率を低くする(耐衝撃性を高める)ことができる。さらに、本発明に係る接続構造体及び接続構造体の製造方法では、特定の非導電性フラックスを用いているので、はんだフラッシュの発生を抑制することができる。結果として、得られる接続構造体において、ショート又はオープン不良の発生を抑制することができる。
【0068】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明する。
【0069】
図1は、本発明の一実施形態に係る非導電性フラックスを用いて得られる接続構造体を模式的に示す断面図である。
【0070】
図1に示す接続構造体1は、第1の接続対象部材2と、第2の接続対象部材3と、第1の接続対象部材2と第2の接続対象部材3とを接続している樹脂部4とを備える。樹脂部4は、非導電性フラックス4Xa(図2(a)~(d)参照)により形成されている。樹脂部4の材料は、非導電性フラックス4Xaである。本実施形態では、非導電性フラックス4Xaは、エポキシ化合物と、酸無水物硬化剤と、有機リン化合物とを含む。本実施形態では、非導電性フラックス4Xaは、ペーストである。
【0071】
樹脂部4は、非導電性フラックス4Xaが熱硬化された硬化物部である。
【0072】
第1の接続対象部材2は表面(下面)に、複数の第1の電極を有する。上記第1の電極は、第1の電極本体2aと、第1の電極本体2aの表面上にはんだ部2B(はんだ粒子)とを備える。上記第1の電極は、第1の電極本体2aとはんだ部2Bとの複合電極である。第2の接続対象部材3は表面(上面)に、複数の第2の電極3aを有する。接続構造体1では、第1の電極本体2aと第2の電極3aとが、電気的に接続されている。接続構造体1では、第1の電極本体2aと第2の電極3aとが、はんだ部2Bにより電気的に接続されている。
【0073】
図1に示すように、接続構造体1では、第1の電極本体2aと第2の電極3aとの間で、はんだ粒子の少なくとも第2の電極3aに接する部分が溶融した後、はんだ粒子が固化して、はんだ部2Bが形成されている。このため、はんだ部2Bと第2の電極3aとの接続面積が大きくなる。上記接続構造体では、はんだ粒子が残存していてもよい。上記接続構造体では、はんだ粒子とはんだ部とが存在してもよい。
【0074】
次に、図2(a)~(d)を用いて、接続構造体の製造方法の一例を具体的に説明する。図2(a)~(d)は、本発明の一実施形態に係る非導電性フラックスを用いて、接続構造体を製造する方法の一例の各工程を説明するための断面図である。
【0075】
先ず、図2(a)及び図2(b)に示すように、第1の電極を表面(下面)に有する第1の接続対象部材2を用意する。上記第1の電極は、第1の電極本体2aと、第1の電極本体2aの表面上にはんだ粒子2bとを備える。また、非導電性フラックス4Xaを用意する。非導電性フラックス4Xaは、ディッピング槽4X内に充填されている。第1の接続対象部材2におけるはんだ粒子2bの表面上に、非導電性フラックス4Xaを配置する(第1の配置工程)。非導電性フラックス4Xaは、エポキシ化合物と、酸無水物硬化剤と、有機リン化合物とを含む。
【0076】
第1の配置工程において、第1の接続対象部材2におけるはんだ粒子2bの表面上に、非導電性フラックス4Xaをディッピングにより配置する。第1の接続対象部材2を、非導電性フラックス4Xaが充填されたディッピング槽4Xに浸漬させて、第1の接続対象部材2におけるはんだ粒子2bの表面上に非導電性フラックス4Xaを配置する。非導電性フラックス4Xaは、はんだ粒子2bの表面を被覆しており、被覆層である。非導電性フラックス4Xaである被覆層は、はんだ粒子2bの表面に沿って配置されている。
【0077】
はんだ粒子の表面上に配置する非導電性フラックスの量は、得られる接続構造体において、第1の接続対象部材と第2の接続対象部材との空隙を埋めることができる量であることが好ましい。
【0078】
また、第2の電極3aを表面(上面)に有する第2の接続対象部材3を用意する。次に、図2(b)及び(c)に示すように、非導電性フラックス4Xaが配置された第1の接続対象部材2と、第2の接続対象部材3とを、第1の電極(第1の電極本体2a及びはんだ粒子2b)と第2の電極3aとが対向するように配置する(第2の配置工程)。第1の接続対象部材2の第1の電極側に向けて、第2の電極3a側から、第2の接続対象部材3を配置する。このとき、第1の電極本体2aと第2の電極3aとを対向させる。
【0079】
次に、図2(d)に示すように、はんだ粒子2b及び非導電性フラックス4Xaを加熱する(第3の工程)。好ましくは、上記はんだ粒子の第2の電極と接する部分が溶融する温度以上に上記非導電性フラックスを加熱する。より好ましくは、上記エポキシ化合物の硬化温度以上に非導電性フラックス4Xaを加熱する。この加熱によって、第1の電極(第1の電極本体2a、及び、はんだ粒子2b又ははんだ部2B)と第2の電極2aとが電気的に接続される。また、非導電性フラックス4Xaは熱硬化する。この結果、図2(d)に示すように、第1の接続対象部材2と第2の接続対象部材3とを接続している樹脂部4が、非導電性フラックス4Xaにより形成される。非導電性フラックス4Xaが熱硬化することによって樹脂部4が形成される。また、図2(d)に示すように、はんだ粒子2bによってはんだ部2Bが形成され、第1の電極本体2aと第2の電極3aとが、はんだ部2Bにより電気的に接続される。
【0080】
このようにして、図1に示す接続構造体1が得られる。なお、上記第2の工程と上記第3の工程とは連続して行われてもよい。また、上記第2の工程を行った後に、第1の接続対象部材2と非導電性フラックス4Xaと第2の接続対象部材3との積層体を、加熱部に移動させて、上記第3の工程を行ってもよい。上記加熱を行うために、加熱部材上に上記積層体を配置してもよく、加熱された空間内に上記積層体を配置してもよい。
【0081】
上記第3の工程における上記加熱温度は、好ましくは140℃以上、より好ましくは160℃以上であり、好ましくは450℃以下、より好ましくは250℃以下、さらに好ましくは200℃以下である。上記第3の工程における上記加熱温度は、上記はんだ粒子の融点以上に加熱することが好ましい。上記第3の工程における上記加熱温度は、上記エポキシ化合物の硬化温度以上に加熱することが好ましい。上記第3の工程における上記加熱温度は、上記はんだ粒子の第2の電極と接する部分が溶融する温度以上であることが好ましく、上記エポキシ化合物の硬化温度以上であることがより好ましい。
【0082】
上記第3の工程における加熱方法としては、上記積層体全体を、リフロー炉を用いて又はオーブンを用いて加熱する方法や、上記積層体のはんだ部(はんだ粒子)及び樹脂部(非導電性フラックス)のみを局所的に加熱する方法が挙げられる。
【0083】
局所的に加熱する方法に用いる器具としては、ホットプレート、熱風を付与するヒートガン、はんだゴテ、及び赤外線ヒーター等が挙げられる。
【0084】
また、ホットプレートにて局所的に加熱する際、はんだ部(はんだ粒子)及び樹脂部(非導電性フラックス)直下は、熱伝導性の高い金属にて、その他の加熱することが好ましくない個所は、フッ素樹脂等の熱伝導性の低い材質にて、ホットプレート上面を形成することが好ましい。
【0085】
接続構造体におけるはんだ部の厚みは、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下である。
【0086】
接続構造体における樹脂部の厚みは、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下である。
【0087】
はんだ粒子の融点での非導電性フラックスの粘度(ηmp)は、好ましくは0.1Pa・s以上、より好ましくは0.2Pa・s以上であり、好ましくは50Pa・s以下、より好ましくは10Pa・s以下、さらに好ましくは1Pa・s以下である。上記粘度(ηmp)が、上記下限以上及び上記上限以下であれば、導通信頼性をより一層良好にすることができる。
【0088】
上記粘度(ηmp)は、例えば、Thermo Fisher Scientific社製レオメーター「HAAKE MARS III」を用いて、周波数2Hz、昇温速度0.11℃/秒、測定温度範囲25℃~200℃(但し、はんだ粒子の融点が200℃を超える場合には温度上限をはんだ粒子の融点とする)の条件で測定可能である。測定結果から、はんだ粒子の融点(℃)での粘度が評価される。
【0089】
非導電性フラックスがペースト(液状)である場合、非導電性フラックスの塗布量によって、樹脂部の厚みを調整することが容易になる。
【0090】
上記第1,第2の接続対象部材は、特に限定されない。上記第1,第2の接続対象部材としては、具体的には、半導体チップ、半導体パッケージ、LEDチップ、LEDパッケージ、コンデンサ及びダイオード等の電子部品、並びに樹脂フィルム、プリント基板、フレキシブルプリント基板、フレキシブルフラットケーブル、リジッドフレキシブル基板、ガラスエポキシ基板及びガラス基板等の回路基板等の電子部品等が挙げられる。上記第1,第2の接続対象部材は、電子部品であることが好ましい。
【0091】
上記接続対象部材に設けられている電極としては、金電極、ニッケル電極、錫電極、アルミニウム電極、銅電極、モリブデン電極、銀電極、SUS電極、及びタングステン電極等の金属電極が挙げられる。上記接続対象部材がフレキシブルプリント基板である場合には、上記電極は金電極、ニッケル電極、錫電極、銀電極又は銅電極であることが好ましい。上記接続対象部材がガラス基板である場合には、上記電極はアルミニウム電極、銅電極、モリブデン電極、銀電極又はタングステン電極であることが好ましい。なお、上記電極がアルミニウム電極である場合には、アルミニウムのみで形成された電極であってもよく、金属酸化物層の表面にアルミニウム層が積層された電極であってもよい。上記金属酸化物層の材料としては、3価の金属元素がドープされた酸化インジウム及び3価の金属元素がドープされた酸化亜鉛等が挙げられる。上記3価の金属元素としては、Sn、Al及びGa等が挙げられる。
【0092】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
【0093】
エポキシ化合物:
エポキシ化合物1(ビスフェノールF型エポキシ化合物、新日鉄住金化学社製「YDF-8170C」)
エポキシ化合物2(ビキシレノール型エポキシ化合物、三菱ケミカル社製「YX-4000HK」)
【0094】
硬化剤:
酸無水物硬化剤1(ヘキサヒドロ無水フタル酸とメチルヘキサヒドロ無水フタル酸との混合物、新日本理化社製「リカシッドMH-700」)
酸無水物硬化剤2(テトラヒドロ無水フタル酸、新日本理化社製「リカシッドTH」)
イミダゾール硬化剤(四国化成工業社製「2E4MZ-A」)
【0095】
有機リン化合物:
有機リン化合物1(テトラブチルホスホニウムブロマイド、日本化学工業社製「ヒシコーリン PX-4B」、融点:110℃)
有機リン化合物2(メチルトリブチルホスホニウムジメチルホスフェート、日本化学工業社製「ヒシコーリン PX-4MP」、融点:10℃)
【0096】
(実施例1,3~7、参考例2,8及び比較例1,2)
(1)非導電性フラックス又は組成物の作製
下記の表1~3に示す成分を下記の表1~3に示す配合量で配合して、非導電性フラックス又は組成物を得た。
【0097】
(2)接続構造体の作製
作製直後の非導電性フラックス(組成物)を、ディッピング槽に充填した。第1の電極を表面に有する第1の接続対象部材(パッケージ)として、BGA(0.8mmピッチ、100電極)を用意した。第2の接続対象部材として、第1の接続対象部材に対応する第2の電極(金電極)を表面に有するプリント基板(材質:FR4、厚み:1mm)を用意した。上記第1の接続対象部材を、ディッピング槽に1秒間浸漬し、非導電性フラックス(組成物)を第1の電極本体の表面上のはんだ粒子に配置した(第1の配置工程)。次に、非導電性フラックス(組成物)の下面に、第2の接続対象部材を電極同士が対向するように積層した(第2の配置工程)。はんだ粒子及び非導電性フラックス(組成物)には、第2の接続対象部材の重量は加わる。その状態から、はんだ粒子及び非導電性フラックスの温度が、昇温開始から50秒後にはんだ粒子の融点となるように加熱した。さらに、昇温開始から65秒後に、はんだ粒子(はんだ部)及び非導電性フラックス(樹脂部)の温度が160℃となるように加熱した。その後、120秒間160℃で保持し、非導電性フラックス(組成物)を硬化させ、接続構造体を得た。加熱時には、加圧を行わなかった。
【0098】
(評価)
(1)粘度
得られた非導電性フラックス(組成物)0.1mLについて、E型粘度計(東機産業社製「TVE22L」)を用いて、25℃での粘度(η25)を、25℃及び10rpmの条件で測定した。なお、コーンロータは、3°×R7.7のコーンロータを用いた。
【0099】
(2)接着力
得られた非導電性フラックス(組成物)をステンレス板の表面上に厚み50μmで塗布し、積層体を得た。タック試験機(UBM社製「TA-500」)を用いて、上記積層体にプローブ(直径8mm、10g)を10秒押し込んだ後、0.1mm/秒の速度でプローブを引き上げた時の荷重を測定し、25℃での接着力とした。
【0100】
(3)耐衝撃性(落下信頼性)
得られた接続構造体を、1500Gの加速度で300回落下させた。落下試験後の接続構造体20個中、オープン不良が発生している接続構造体の数を故障数とした。耐衝撃性を、以下の基準で判定した。
【0101】
[耐衝撃性の判定基準]
○○:故障数が0個
○:故障数が1個
△:故障数が2個
×:故障数が3個以上
【0102】
(4)はんだフラッシュ発生の抑制性
得られた接続構造体について、昇温開始から50秒後にはんだ粒子の融点となるように加熱した。さらに、昇温開始から75秒後に、はんだ部及び樹脂部の温度が180℃となるように加熱し、60秒間180℃で保持した。その後冷却し、接続構造体20個中、オープン不良又はショートが発生している接続構造体の個数を、オープン不良又はショートの発生数とした。はんだフラッシュ発生の抑制性を、以下の基準で判定した。
【0103】
[はんだフラッシュ発生の抑制性の判定基準]
○:オープン不良又はショートの発生数が0個
×:オープン不良又はショートの発生数が1個以上
【0104】
(5)導通信頼性(上下の電極間)
得られた接続構造体20個において、上下の電極間の接続抵抗100箇所について、2端子の抵抗計で測定し、接続抵抗の平均値を算出した。なお、電圧=電流×抵抗の関係から、一定の電流を流した時の電圧を測定することにより接続抵抗を求めることができる。導通信頼性を、以下の基準で判定した。
【0105】
[導通信頼性の判定基準]
○:接続抵抗の平均値が0.9mΩ以下
×:接続抵抗の平均値が0.9mΩを超える、又は接続不良が生じている
【0106】
(6)ディッピング性
上記接続構造体の作製において、第1の接続対象部材を、ディッピング槽に1秒間浸漬した後、第1の接続対象部材を引き上げた。はんだ粒子に付着した非導電性フラックス(組成物)の量を目視で確認した。ディッピング性を、下記の基準で判定した。
【0107】
[ディッピング性の判定基準]
○:ディッピング槽から第1の接続対象部材を引き上げることができ、かつ、はんだ粒子の表面に、接続対象部材間の空隙を埋めるのに十分な量の非導電性フラックス(組成物)を配置することができる
×:ディッピング槽から第1の接続対象部材を引き上げることができない、又は、はんだ粒子の表面に、接続対象部材間の空隙を埋めるのに十分な量の非導電性フラックス(組成物)を配置することができない
【0108】
(7)フラックス性
金メッキプリント基板の表面上に、得られた非導電性フラックス(組成物)を厚み150μmで塗布し、該組成物の表面上に、SnBiはんだ粒子(粒子径500μm、融点139℃)を配置して、試験体を得た。得られた試験体を、リフローシミュレーター(コアーズ社製「Core9046a」)を用いて、窒素雰囲気下(酸素濃度100ppm以下)で2℃/秒で160℃まで昇温させ、3分間保持した後、室温(23℃)まで冷却した。その後、ぬれ広がったはんだの形状を楕円で近似し、該楕円の短径と長径との平均((短径+長径)/2)を、非導電性フラックス(組成物)のはんだぬれ径とした。フラックス性を、下記の基準で判定した。なお、上記楕円が正円である場合には、非導電性フラックス(組成物)のはんだぬれ径は、正円の直径とした。
【0109】
[フラックス性の判定基準]
〇:はんだぬれ径が、600μm以上
×:はんだぬれ径が、600μm未満
【0110】
(8)非導電性
銅電極を表面に有する櫛型基板の表面上に、非導電性フラックス(組成物)を厚み100μmで塗布して試験体を得た。得られた試験体を、リフローシミュレーター(コアーズ社製「Core9046a」)を用いて、窒素雰囲気下(酸素濃度100ppm以下)で2℃/秒で160℃まで昇温させた後、室温(23℃)まで冷却した。その後、5Vの電圧を印加し、測定装置(ESPEC社製「エレクトロケミカルマイグレーション評価システム」)を用いて、絶縁抵抗を測定した。非導電性を、下記の基準で判定した。
【0111】
[非導電性の判定基準]
〇:絶縁抵抗が1.0×10Ω以上
×:絶縁抵抗が1.0×10Ω未満
【0112】
結果を下記の表1~3に示す。
【0113】
【表1】
【0114】
【表2】
【0115】
【表3】
【0116】
なお、いずれの実施例及び参考例においても、リフロー工程は1回のみであった。
【符号の説明】
【0117】
1…接続構造体
2…第1の接続対象部材
2a…第1の電極本体
2b…はんだ粒子
2B…はんだ部
3…第2の接続対象部材
3a…第2の電極
4…樹脂部
4X…ディッピング槽
4Xa…非導電性フラックス
図1
図2