(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】表面保護のための殺生物性エアロゲル組成物
(51)【国際特許分類】
A01N 43/40 20060101AFI20241125BHJP
A01N 59/16 20060101ALI20241125BHJP
A01N 25/04 20060101ALI20241125BHJP
A01P 1/00 20060101ALI20241125BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20241125BHJP
A01P 13/00 20060101ALI20241125BHJP
A01P 17/00 20060101ALI20241125BHJP
C09D 5/16 20060101ALI20241125BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20241125BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20241125BHJP
C09K 3/00 20060101ALI20241125BHJP
A01N 47/04 20060101ALI20241125BHJP
A01N 33/12 20060101ALI20241125BHJP
A01N 55/02 20060101ALI20241125BHJP
A01N 47/30 20060101ALI20241125BHJP
A01N 43/80 20060101ALI20241125BHJP
A01N 43/78 20060101ALI20241125BHJP
A01N 47/12 20060101ALI20241125BHJP
A01N 43/36 20060101ALI20241125BHJP
A01N 47/14 20060101ALI20241125BHJP
A01N 47/48 20060101ALI20241125BHJP
A01N 59/20 20060101ALI20241125BHJP
A01N 43/70 20060101ALI20241125BHJP
【FI】
A01N43/40 101L
A01N59/16 Z
A01N25/04
A01P1/00
A01P3/00
A01P13/00
A01P17/00
C09D5/16
C09D7/61
C09D7/63
C09K3/00 112E
A01N47/04
A01N33/12 101
A01N55/02 150
A01N55/02 160
A01N47/30 B
A01N43/80 102
A01N43/78 A
A01N47/12 Z
A01N43/36 A
A01N47/14 C
A01N47/48
A01N59/20
A01N43/70
(21)【出願番号】P 2022539195
(86)(22)【出願日】2020-12-23
(86)【国際出願番号】 EP2020087730
(87)【国際公開番号】W WO2021130288
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2023-12-14
(32)【優先日】2019-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520512971
【氏名又は名称】エアロゲル アンパーツゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】イーバ バルストラム
【審査官】高橋 直子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0242403(US,A1)
【文献】特表2013-521365(JP,A)
【文献】特表2011-503302(JP,A)
【文献】Lystbadmaling med minimeret biocidindhold,2015年
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N
A01P
C09D
C09K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
防汚添加剤であって、前記防汚添加剤は、
a.以下を含む無機シリカ含有エアロゲル;
b.多孔質ゲル格子、及び
c.任意選択的に、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Y、Zr、Nb、Ru、Hf、Ta、W、Re、Al、Ge、In、La、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb又はLuを含むアルコキシド、並びに
d.前記エアロゲル内に捕捉された1つ以上の殺生物性又は生物忌避性化合物、
を含み、
ここで前記シリカ含有エアロゲルが、少なくとも55重量%の前記1つ以上の殺生物性又は生物忌避性化合物を含み、及びここで前記1つ以上の殺生物性又は生物忌避性化合物の前記捕捉が、前記ゲルのゾル-ゲル形成中に起こり、及びここで前記1つ以上の殺生物性又は生物忌避性化合物がジウロン、トリルフルアニド、ジンクエチレンビスチオカルバメート(=ジネブ)、ジンクピリチオン、銅ピリチオン、3-ヨード-2-プロピニルブチルカルバメート(IPBC)、2-(p-クロロフェニル)-3-シアノ-4-ブロモ-5-トリフルオロメチルピロール(=Econea又はトラロピリル)、及び2-tert-ブチルアミノ-4-エチルアミノ-6-メチルチオ-1,3,5-トリアジン(テルブトリン)及びそれらの混合物からなる群から選択され、
及びここで前記エアロゲルが最大で75重量%のZnピリチオンを含むときに、前記エアロゲルの嵩密度が最大で0.5gr/mlの値を有し、及びここで前記防汚添加剤の熱伝導率が、0.01~0.05W/m
*Kである、前記防汚添加剤。
【請求項2】
少なくとも60重量%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも80%、又は例えば少なくとも85%の前記1つ以上の殺生物性又は生物忌避性化合物を含む、請求項1に記載の防汚添加剤。
【請求項3】
前記殺生物性又は生物忌避性化合物が、ジンクエチレンビスチオカルバメート(=ジネブ)、ジンクピリチオン、銅ピリチオン、2-(p-クロロフェニル)-3-シアノ-4-ブロモ-5-トリフルオロメチルピロール(=Econea又はトラロピリル)又はそれらの混合物から選択される、請求項1又は2に記載の防汚添加剤。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか一項に記載の防汚添加剤を含む、防汚コーティング組成物。
【請求項5】
前記1つ以上の殺生物性又は生物忌避性化合物が少なくとも6重量%含まれる、請求項
4に記載の防汚コーティング組成物。
【請求項6】
前記1つ以上の殺生物性又は生物忌避性化合物が、ジウロン、トリルフルアニド、ジンクエチレンビスチオカルバメート(=ジネブ)、ジンクピリチオン、銅ピリチオン、3-ヨード-2-プロピニルブチルカルバメート(IPBC)、2-(p-クロロフェニル)-3-シアノ-4-ブロモ-5-トリフルオロメチルピロール(=Econea又はトラロピリル)、及び2-tert-ブチルアミノ-4-エチルアミノ-6-メチルチオ-1,3,5-トリアジン(テルブトリン)及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項
5に記載の防汚コーティング組成物。
【請求項7】
前記1つ以上の殺生物性又は生物忌避性化合物が、ジンクエチレンビスチオカルバメート(=ジネブ)、ジンクピリチオン、銅ピリチオン、2-(p-クロロフェニル)-3-シアノ-4-ブロモ-5-トリフルオロメチルピロール(=Econea又はトラロピリル)及びそれらの混合物から選択される、請求項
5又は6に記載の防汚コーティング組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高充填量~非常に高充填量(55~90%w/w)のカプセル化された殺生物性及び/又は生物忌避性化合物を有し、かつ熱伝導率が非常に低いシリカエアロゲル、並びにそのようなエアロゲルを作製し、湿気の多い条件及び/又は海水を含む水に自然に曝され、それによりファウリングが発生しやすいコーティング(船舶用塗料、コーティング、ラッカー、木材保護)及びシーラントに特に好適である防汚組成物において使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
殺生物剤及び生物忌避剤は、海洋表層(ボート、船舶、及び建物、沈水設備を含む設備、又は他の領域からの生物有機体の望ましくない成長を防ぐために使用される物質である。殺生物剤及び生物忌避剤は通常、このような望ましくない成長の影響を受けやすい領域に適用されてもよい保護コーティング、コーティング及びラッカーなどの製品に添加され、また、屋内の高湿度に定期的に曝される領域、つまり、キッチン、バスルーム及びトイレなどの「湿った部屋」で通常使用されるシリコーンシーラントなどの弾性シーラントに添加される。
【0003】
外部又は内部で使用するために適用される保護コーティングは通常、保護と装飾という2つの基本的な機能を有する。弾性シーラントは通常、セラミックタイルなどの非弾性表面間の接合部及び亀裂を閉鎖するために使用され、この場合、シーラントの機能は、接合部及び亀裂を隠蔽し、非弾性表面の沈着物を吸収し、湿気の侵入を防ぐ。したがって、弾性シーラントも、保護と装飾という基本的な機能を有する。海水に曝される船の表面は、微生物、植物、藻類、及び動物が沈着し、それにより船舶の推進抵抗が増加し、したがって速度が低下するか、又は燃料消費量が増加する傾向があるため、特別な問題を呈する。この生物学的プロセスはファウリングと呼ばれ、大きく2つのグループに分類できる:単細胞の藻類及び細菌のコロニー(しばしば「スライム」と呼ばれる)を含むマイクロファウリング、及び植物(雑草)によるファウリングと動物によるファウリングの両方を含むマクロファウリング。特にマクロファウリングは、推進抵抗に関する問題を引き起こす。
【0004】
フジツボの大量の侵入によって課せられる推進抵抗は、船の燃料消費量を最大40%引き上げる場合がある(The Economist Technology Quarterly Q3 2011,Sep 3rd 2011)。したがって、一般的なファウリングの問題を解決すると、燃料コストの低下及びCO2排出量の削減により、経済的及び環境的にプラスの影響が得られるが、同時に、防汚塗料は、常に海に放出される殺生物性化合物(重金属を含む)の量に起因する問題を呈する。
【0005】
例えば真菌及び藻類などの生物有機体の攻撃(湿潤状態で、若しくはコーティング若しくはシーラントの表面で、のいずれか)は、コートフィルム又はシーラントによってもたらされる保護とその装飾効果の両方を損なう可能性がある。この生物学的プロセスは、ファウリングと呼ばれる。カビ及び白カビは一般的な真菌種であり、しばしば湿気が多くなる屋内と屋外の両方の表面を攻撃する可能性がある。カビの胞子は、深刻なアレルギーの問題になる可能性があり、時間の経過とともに、カビ及び他の真菌は、特に木質建築材料を破壊するため、カビ及び他の種類のファウリングを効率的に防ぐことが重要である。
【0006】
言及された種類のファウリングは、一般に、表面上で活性である殺生物性化合物を放出する塗料、コーティング及びシーラントを使用して対処する。殺生物剤は化合物であり、微生物細胞に対して毒性があるため、望ましくないミクロ及びマクロ生物(つまり、汚染生物(foulants))の成長を防ぐが、使用頻度の低い生物忌避剤は通常、毒性が比較的低く、そうでなければ汚染生物を誘引するであろう領域から望ましくない生物有機体を忌避又は抑止することによって作用する。
【0007】
ほとんどの防汚化合物は、すべての種類の汚染生物に対して効果的であるとはいえないため、活性化合物は組み合わせて使用される。従来の防汚コーティング及びシーラントでは、活性化合物の浸出が同じ減衰曲線に従うことはほとんどない。したがって、コーティング又はシーラントが、耐用年数を終える前に、部分的にしか汚れを防ぐことができなくなる場合がある。
【0008】
コーティング又はシーラントから洗い流されることによる殺生物剤の化学分解及び消散などの様々な要因によって、保護寿命が制限され、コーティング及びシーラントが保護すると想定される表面などの寿命よりもはるかに短くなる。したがって、保護コーティング及びシーラントの耐用年数を延ばすことには大きな価値がある。
【0009】
防汚コーティング及びシーラントからの殺生物剤及び/又は生物忌避剤の放出は、活性化合物をカプセル化することによって制御でき、望ましくない分解反応からそれらを保護し、かつゆっくりと放出することで、様々なマトリックスでの有効寿命を延ばす。したがって、理想的には、カプセル化方法は、カプセル化材料における殺生物剤/生体忌避剤の高充填量を可能にし、それらが構成成分であるコーティング又はシーラントの耐用年数を通してカプセル化材料から活性化合物を常に放出させるものである。この機能の組み合わせにより、長期にわたる防汚効果が保証され、添加された活性化合物が最大限に活用され、これにより、必要とされる殺生物剤が少なくなり、不必要に環境に放出される殺生物剤が少なくなるため、商品原価(CoG)と環境への悪影響の両方が低減される。
【0010】
カプセル化の概念自体は以前に対応されている。例えば、Jamsa S. et al(“Slow release of a biocidal agent from polymeric microcapsules for preventing biodeterioration”,Progress in Organic Coatings,Vol 76,Issue 1,January 2013,p269-276)(ここでは、殺生物剤/生物忌避剤は、水溶性ポリマー(ポリエチレンイミン(PEI)など)又はポリアクリレートカプセル内に捕捉されている)を参照のこと。別の同様のアプローチとしては、A Kamtsikakis et al.Bioengineering 2017,4(4),81,“Encapsulation of Antifouling Organic Biocides in Poly(lactic acid) Nanoparticles”(とりわけ、生分解性ポリマー粒子へのIrgarol 1051、Econea及びジンクピリチオン(ZPT、ZnP)のカプセル化について記載されている)を挙げることができる。
【0011】
これらの方法は、殺生物剤/生物忌避剤がカプセル内に閉じ込められた状態から逃れ得る前に、保護ポリマーシェルを最初に少なくとも部分的に溶解する必要があるため、殺生物剤/生物忌避剤の初期浸出を減らすという目標を達成するが、この特定のカプセル化の概念は、海洋用の防汚コーティングなどのコーティング又はシーラントの成分として使用される配合物の実用的な要件には対応していない。薄いポリマーシェルに囲まれた殺生物剤/生物忌避剤粒子は、コーティング又はシーラント組成物への混合中に最初に適用され、その後、当該コーティング又はシーラントを、海洋表層などの表面(例えば、船若しくは船舶の船体、又は沈水した静的建築物)に適用する際に適用される機械的(剪断)力のために容易に損傷する。さらに、記載されているようなポリマーカプセルにおける殺生物剤/生物忌避剤の充填量は十分に高くない。
【0012】
上で論じた物理的に弱いポリマーマイクロカプセルとは対照的に、シリカのような不活性で機械的に堅牢な材料は、防汚コーティング又はシーラント組成物内に分散される活性化合物をカプセル化するためのより良い選択肢である。シリカゲルには、その親水性/疎水性特性を所与の製品の種類に適合するように変更できるという利点がある。例えば、溶媒ベースのコーティング組成物への添加剤として、より疎水性のシリカゲルが好ましい場合があり、一方、水性組成物には、親水性のシリカゲルが好ましいであろう。
【0013】
本発明者らは、最初に、シリカエアロゲル粒子内に固体活性化合物をカプセル化するための方法を開発した。これは、国際特許出願の国際公開第2009/062975号に記載されている。記載された手順によれば、カプセル化された固体活性化合物の含有量が最大約50%w/wであるエアロゲルを小規模では達成することができた。しかしながら、同じ手順を使用して、固体活性化合物としてのカプセル化ジンクピリチオンの含有量が約75%w/wであるエアロゲルを生成する試みでは、しかしながら、容易に水を吸収しすぎるあまり、さらに不均質に見える製品が得られた。これは、国際公開第2009/062975号に記載されている方法では、およそ50%w/wを超える充填量で明確に定義された充填エアロゲルを提供できなかったことを示している。
【0014】
シリカエアロゲル中の固体活性化合物の充填量限界は、コーティング又はシーラント組成物の防汚成分としてのそれらの最終用途に非常に重要である。シリカエアロゲル内にカプセル化された殺生物剤が防汚組成物に添加される場合、シリカもまた、特定のエアロゲルの充填量パーセンテージによって決定される比率で必然的に添加される。本発明者らは、経験則として、防汚組成物は、そうでなければ厚く/粘性になり、均一に適用されることが困難になるため、約1.5%w/wを超えてSiO2(シリカ)を含有すべきではないことを見出した。したがって、シリカ限界が1.5%であるために、防汚コーティング又はシーラント組成物中の殺生物剤の量の増加は、コーティング組成物に大量の充填エアロゲルを添加するだけでは達成できない。
【0015】
例えば、
・殺生物剤の含有量が50%であるエアロゲルは、50%のシリカを含有する。したがって、このようなエアロゲルは、1.5%のシリカ限界未満に保つべく、最大で組成物の3%w/wで添加することができる。これは、最終組成物に1.5%w/wの殺生物剤が含有されることを意味する。1.5%のシリカ限界を超えずに、このルートでより多くの殺生物剤を添加することはできない。
・80%w/wの殺生物剤を含むエアロゲルにはシリカが20%含有されているので、このエアロゲルを最大で7.5%w/w、組成物に添加できる。このエアロゲルを用いて作製された最終組成物は、80%×7.5%=6%w/wの殺生物剤を含有し、それでも1.5%以下のシリカを含有するであろう。
・殺生物剤の充填量が90%のエアロゲルを使用する場合、15%w/wのエアロゲルを添加することができ、1.5%の「シリカ限界」を超えずに、組成物中13.5%w/wの殺生物剤レベルを達成する。
【0016】
図2は、コーティング組成物中の殺生物剤の含有量(w%)を、最大1.5%のシリカを組成物に加えてもよい場合のエアロゲル中の殺生物剤充填量の関数として示す。
【0017】
したがって、
・活性化合物の充填量が高く(好ましくは55%以上)、
・カプセル化された殺生物剤を組み込んだ、結果として得られるコーティング又はシーラントにおける吸水率が十分であり、
・防汚組成物の表面上の殺生物剤濃度がその寿命全体にわたって一定である、
カプセル化された形態の殺生物剤及び生物忌避剤の幅広い選択へのアクセスを与えることができる、改善されたカプセル化方法に対する必要性が依然として存在する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、固体のZnピリチオン(ZnP)粒子(
図1、黒丸)を含む防汚コーティング又はシーラント組成物の表面を示し、これらの粒子は、コーティング又はシーラントが、例えば、水、高湿度及び/又は温度変動への暴露によって時間とともに劣化するにつれて、フィルム表面で常にアクセス可能になる。しばらくすると、部分的に摩耗したZnP粒子は、コーティングから洗い流される(
図1、白い半円)。
【
図2】
図2は、最大で1.5%のシリカをコーティングに添加できる場合の、エアロゲル中の殺生物剤充填量の関数として、シリカエアロゲル粒子内にカプセル化された殺生物剤を含む塗料組成物中の殺生物剤の含有量(w%)を示す。
【
図3】
図3は、層内に均一に分布しているエアロゲル粒子を含有する防汚組成層の断面を示す。この場合、塗料層は、およそ300μm厚である。各エアロゲル粒子は、活性化合物のいくつかの別個の粒子を含有してもよく、各エアロゲル粒子は、粉砕の細かさに応じて、およそ10μmの寸法を有する。
【
図4】
図4は、
図3に示したエアロゲル粒子を含有する防汚組成物層の拡大図を示す。組成物は、湿気に曝されると、水を吸収し始め、それによって浸出層と呼ばれる上層を作製する。浸出層に埋め込まれたエアロゲル粒子は、シリカベースのエアロゲルの多孔性及び吸湿性のために水を吸収し、しばらくすると、エアロゲル粒子の内部に活性化合物(殺生物剤など)の飽和溶液が生成される。浸出層を介した拡散により、防汚組成物層の表面上に活性殺生物剤のフィルムが作製される。 浸出層は通常、層の上部の侵食及びインタクトな防汚組成物層のより深い位置にある領域への水の浸透によって再生される。侵食が無視できるか遅い場合、浸出層は時間とともに増加し、殺生物効果は純粋に拡散に起因するものとなるであろう。
【
図5】
図5は、本発明による好ましい殺生物剤及び生物忌避剤の表である。
【
図6】
図6は、殺生物剤ZnPのTGA(熱重量)分析を示す。この図には、次の3つのグラフが含まれる:問題となる空のエアロゲル、充填エアロゲル、及び殺生物剤自体。グラフから、加熱時の試料の重量損失に基づいて、実現された充填量の概算値を計算できる。
【
図7】
図7は、実施例8a及び8bの結果をまとめた表である。
【
図8】
図8ゲルは、異なる凍結温度でフリーズドライされたエアロゲルを比較した表である。 ・参照符号D1及びD2は、本発明に従って調製された2つの空のゲルであり、それぞれ-80℃及び18℃でフリーズドライされている。 ・参照符号D3及びD4は、湿潤ゲルをそれぞれ-80℃及び18℃でフリーズドライした場合の、65%w/wのジウロンを含有する、本発明に従って調製された2つの充填エアロゲルである。 ・参照符号D5は、D3及びD4(65%w/wのジウロンを含有)と同様に、しかし超臨界乾燥を用いて調製した充填ゲルである。 この表からわかるように、-80℃でフリーズドライされたエアロゲルと-18℃でフリーズドライされたエアロゲルの総多孔率にはわずかな違いがあり、超臨界乾燥はわずかに高い総多孔率をもたらすようである。エアロゲルの嵩密度は、充填方法にも乾燥方法にも影響されないようである。総圧入量は、試料間の差異を示すのに最適のようである。-18℃でフリーズドライされたエアロゲルの場合、平均総圧入量は、1.145ml/grである。-80℃でフリーズドライされたエアロゲルの場合、その値は1.255ml/grである。超臨界乾燥エアロゲルの場合、その値は0.709ml/grである。
【
図9】
図9は、空のエアロゲルと充填エアロゲルの3つの異なる熱重量比較を示す。 ・
図9Aは、国際公開第2020/002659号に従って調製された空のエアロゲル(黒色の実線グラフ)と、本発明に従って調製された2つの空のエアロゲルとの熱重量分析(TGA)による比較であり、最終乾燥工程は、超臨界乾燥(灰色の実線グラフ)又はフリーズドライ(黒色の点線グラフ)のいずれかである。この図から分かるように、本発明に従って調製された2つの空のエアロゲルの熱分解は、乾燥方法に関係なく、事実上同一である。この図はまた、本発明に従って調製された空のエアロゲルと、国際公開第2020/002659号に従って調製された空のエアロゲルとの間には、熱分解に関してほとんど差異がないことを示している。 ・
図9Bは、76%w/wのZnピリチオンを含有する、本発明に従って調製された2つのエアロゲルのTGAによる比較である。いずれの試料も、4時間(黒色の点線グラフ)又は8時間(黒色の実線グラフ)のいずれかにわたって、超臨界乾燥によって乾燥された。この図からわかるように、2つの試料の重量損失に差異はなく、4時間の乾燥時間で十分であることを示している。 ・
図9Cは、空のゲル(黒色の実線グラフ)又は65%のジウロンを含有する充填ゲル(黒色の点線グラフ)のいずれかとしての、本発明に従って調製された2つのフリーズドライエアロゲルの、TGAによる比較である。ニートな(カプセル化されていない)ジウロンが、参照として含まれている。この図からわかるように、空のゲルは、
図9Aのゲルと同様に動作する。また、TGA分析の過程にわたって、充填ゲルの重量が(予想されるように)およそ65%減少することもわかる。
【
図10】
図10は、2つの充填フリーズドライエアロゲルと、国際公開第2020/002659号に従って調製された空のエアロゲルとの熱伝導率を比較する表である。参照符号TC1は75%のCuピリチオンを含有し、TC2は75%のZnピリチオンを含有し、TC3は超臨界乾燥によって調製された空のゲルである(
図9Aの試料と同様)。表から分かるように、本発明の充填ゲルの熱伝導率は、国際公開第2020/002659号に従って調製された空のゲルのおよそ50%以下である。
【0019】
発明の概要
本発明の発明者は、長年にわたり、温度及び湿度に関して異なる条件下でエアロゲル粒子にカプセル化された殺生物性及び/又は生物忌避活性化合物を含む防汚コーティング及びシーラントの挙動を分析し、防汚効果が、組成物の吸水率を正しく管理することにかなり依存することを発見した。具体的には、吸水率が低すぎる(<1.5重量%)とファウリングが発生する(殺生物剤は乾燥しすぎた条件下ではその効果を発揮できないため)のに対し、吸水率が高すぎると溶解が速すぎて、最終的には殺生物剤が喪失することが見出された。したがって、防汚組成物が、コーティング又はシーラント組成物の表面層において活性化合物の飽和溶液を維持するのに十分な水を吸収できることが重要であることが見出された。約1.5~6%の範囲内の吸水率の値が最適とされている。
【0020】
さらに、本発明者らは、防汚コーティング及びシーラント組成物の性能を調整するために、埋め込まれたエアロゲル粒子自体の吸水率を制御する必要があることを見出した。この目的のための2つの最も重要な影響力のあるパラメーターは、1)カプセル化エアロゲル粒子への活性化合物の充填量、及び2)当該エアロゲル粒子の多孔率である。また、高い含有量の均一性、すなわち、エアロゲル粒子中のカプセル化された殺生物剤又は生物忌避剤の高度に均質な分布も、防汚コーティング及びシーラント組成物の性能にとって重要である。
【0021】
したがって、本発明の目的は、高充填量~非常に高充填量(55~95%w/w)の殺生物剤及び/又は生物忌避剤を含むシリカエアロゲル粒子を提供することであり、これらのエアロゲル粒子は、防汚コーティングに配合されると、乾燥コーティングの十分な吸水率(例えば、1.5~6%w/wの範囲)をもたらす。オンショア木造建築用のコーティングは、より高い範囲、例えば、最大11%w/wを有することができる。
【0022】
広範囲の様々な殺生物剤及び/又は生物忌避剤(様々な溶媒への溶解性及びpH耐性を含む様々な物理化学的特性を有する)に対してこの目的を達成するために、本発明者らは、最終組成物への配合に必要とされる機械的堅牢性及び高充填量~非常に高充填量の活性化合物を有する、カプセル化された殺生物剤及び/又は生物忌避剤を含む新規エアロゲル粒子の製造手順を開発した。
【0023】
これらの新規粒子は、防汚コーティング及びシーラントに配合されると、十分な吸水率をもたらす。したがって、粒子は、オフショアとオンショアの両方の目的で、防汚コーティング及びシーラントへの添加剤として価値があることが見出された。
【0024】
したがって、本発明の防汚添加剤は、定期的に又は常に沈水しているオフショア表面に適用されるコーティングに有用であることが見出された。常に沈水している表面の例としては、ボート、船、並びに商用タンカー、遊覧船、及びヨットの両方を含む他の船舶の船体が挙げられるが、スイミングプール、雨水溜池(rain water basins)、石油掘削装置、及び養魚場の建築物も、常に沈水している建築部品を含む。定期的に沈水しているだけの表面の例としては、海上風車のパイロンの下部などの静的な海洋建築物、並びに満潮時又は波による浸水によって定期的に沈水される他のオフショア建築物、桟橋及び港湾建築物が挙げられる。
【0025】
本発明の防汚添加剤はまた、湿った空気及び降雨に定期的に曝されるオンショア表面上に適用されるコーティング及びシーラントに有用であることが見出された。このような表面は通常、熱帯地域及び頻繁な降雨又は濃霧が発生する地域にある家屋及び他の建物に見られる。他の例としては、バスルーム、シャワー、サウナ、及び屋内スイミングプールなど、定期的に高湿度に曝される部屋の屋内表面が挙げられる。そのような「湿気のある屋内環境」の場合、本発明の防汚添加剤の特定の使用がシーラントに見出され、例えば、カビ及び白カビに襲われることが多いタイルなどの亀裂を埋めるために使用される。
【0026】
上記のように、本発明者らは、以前に、エアロゲルへのジンクピリチオン(ZnP)のカプセル化に取り組んできた(例えば、PCT出願の国際公開第2009/062975号を参照のこと)。本明細書に記載の新たな方法は、国際公開第2009/062975号に記載された元の手順における比率とほぼ同じ比率のテトラアルコキシシラン及びアルキルトリアルコキシシランを使用するが、ゲル化プロセスに使用される水の量は、はるかに少ない。
【0027】
さらに、触媒として使用されるアンモニアも少なく、アンモニアは、出発物質と混合された濃縮水溶液としてではなく、別個のエタノール溶液中でシリケートの溶液に徐々に添加される。さらに、酸性触媒作用は、殺生物剤がアルカリ性条件下で不安定である特定の場合にも有効であることが示されている。この研究は、本発明者らの同時係属出願の国際公開第2020/002659号に記載されている。
【0028】
本発明者らは、これまで溶解性の問題又は選択されたゲル化触媒との非相溶性によって制限されてきた殺生物剤及び生物忌避剤のさらに幅広い選択を可能にすることを目的として、カプセル化手順の開発を続けてきた。本明細書のこの結果は、詳細な説明において論じられているが、特に、本発明の最初に形成されたアルコゲル(「湿潤ゲル」)は、超臨界二酸化炭素抽出ではなくフリーズドライ(凍結乾燥)を使用して乾燥してもよい。凍結乾燥は、超臨界二酸化炭素抽出よりも商業的にはるかに実行可能かつスケーラブルな手順である。したがって、製造手順のこの変形によるエアロゲル粒子は、フリーズドライされた固体として単離される。
【0029】
新しい製造手順は、高充填量のカプセル化されたZnPを含有するエアロゲル粒子の生成を可能にするために最初に使用された。その後、この方法は、ZnP以外のカプセル化された殺生物剤を高充填で含有するエアロゲル粒子を提供できることが証明された。汚染物質は通常、1種類の殺生物剤だけに感受性があるのではないため、このことは先に検討したように重要である。この方法により、高充填量(>55%w/w)のエアロゲルが確実に得られる。
【0030】
本発明によって生成されたエアロゲル粒子(ZnPを含有する粒子を含む)は、国際公開第2009/062975号に記載された手順によって生成された粒子よりも良好な均質性及び異なる多孔性を有することが見出された。これは、水銀圧入ポロシメトリーによって測定することができ、例えば、エアロゲル粒子の圧入量又は嵩密度によって説明することができる(実施例セクションを参照のこと)。
【0031】
本発明によって生成されるエアロゲル粒子はまた、それらの不透明度及び熱伝導率に関して研究されてきた。
【0032】
したがって、本発明の充填エアロゲル粒子は、熱伝導率が非常に低く(0.01~0.05W/m*K)、純粋な殺生物剤及び/又は生物忌避剤自体よりも優れた絶縁体となることが見出された。
【0033】
さらに、本発明の充填エアロゲル粒子は、一般に、ISO6504-3:2019「隠蔽力の決定」に従って試験されると、それらの「隠蔽力」又は被覆率によって測定される不透明度であることが見出された。
【0034】
したがって、本発明の充填エアロゲルを、本発明者ら自身の公開出願の国際公開第2009/062975号及び国際公開第2020/002659号を含む先行技術と区別するものは、非常に低い熱伝導率(通常は0.01~0.05W/m*K)と相まって、達成可能な殺生物剤の高充填量~非常に高充填量(>55%w/w)である。
【0035】
したがって、第1の態様において、本発明は、
防汚添加剤であって、前記防汚添加剤は、
a.以下を含む無機シリカ含有エアロゲル;
b.多孔質ゲル格子、及び
c.任意選択的に、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Y、Zr、Nb、Ru、Hf、Ta、W、Re、Al、Ge、In、La、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb又はLuを含むアルコキシド、並びに、
d.前記エアロゲル内に捕捉された1つ以上の殺生物性又は生物忌避性化合物、
を含み、
前記シリカ含有エアロゲルが、少なくとも55重量%の前記1つ以上の殺生物性又は生物忌避性化合物を含み、
前記1つ以上の殺生物性又は生物忌避性化合物の前記捕捉が、前記ゲルのゾルゲル形成中に起こり、
前記防汚添加剤の熱伝導率が、0.01~0.1W/m*Kである、防汚添加剤を提供する。
【0036】
第1の態様の粒子は、前述のように、新たに開発された製造手順によって提供することができ、これは、PCT出願の国際公開第2009/062975号及び国際公開第2020/002659号号に記載されている方法のさらなる開発である。したがって、非常に大量の殺生物剤及び/又は生物忌避剤(「活性化合物」)は、任意選択的にアルキルトリアルコキシシランと組み合わせて、テトラアルコキシシラン(モノマーテトラアルキルオルトシリケート又は予備縮合テトラアルキルオルトシリケート又は予備縮合モノマーテトラアルキルオルトシリケート)+ゾルゲル調製において必要とされる活性化合物(最終工程でエアロゲルに変換され、乾燥される)を使用して、2段階の手順によって形成されたアルコゲルに、インサイチュでカプセル化することができる。
【0037】
得られたエアロゲル粒子は通常、含有量がおよそ55~75%w/wのカプセル化された活性化合物を含有するが、使用する殺生物剤に応じて、最大およそ90~95%w/wの含有量まで含有して生成できる。出発物質である触媒の比率を変えることによって、最終的なエアロゲル粒子の様々な多孔率、密度、及び疎水性/親水性挙動を得ることができる。エアロゲル粒子はまた、方法のこのような変形によって、溶媒ベース及び水性の両方のコーティング及びシーラントに一致するように調製することができる。
【0038】
したがって、本発明は、第2の態様において、以下の工程を含む、第1の態様の防汚添加剤を提供するための方法をさらに提供する。
a.溶液1の調製:100部のテトラアルコキシシラン(モノマーテトラアルキルオルトシリケート又は予備縮合テトラアルキルオルトシリケート又は予備縮合及びモノマーテトラアルキルオルトシリケートの混合物)を、0~50部のアルキルトリアルコキシシラン、350~500部のエタノール及び200~450部の殺生物剤と混合し、ミキサーで激しく撹拌する。別の低級アルコールを溶解に使用することができる。Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Y、Zr、Nb、Ru、Hf、Ta、W、Re、Al、Ge、In、La、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、又はLuを含むアルコキシドは、この時点で任意選択的に追加できる。
b.溶液2の調製:100部のエタノール、およそ50部の水、及び0.25~15部のゲル化触媒を混合する。
c.溶液2を溶液1に徐々に加え、20~25分かけて激しく攪拌する。およそ15分後にゲル化の兆候が観察されるまで、低速で撹拌を続ける。得られた溶液は、ゲル化のために1つ以上の別個の容器に移してもよい。ゲル化時間は、約30~60分である。
d.ゲルは、好適な容器に2~5日間保管し、その後抽出器(複数可)に移す。
e.湿潤ゲルをより小さい断片に切断し、エタノール下で好適な圧力容器(両端に加熱ジャケット及び金属フリットを装備したフローリアクター)に移す。そこで、ゲルにエタノールを0.5mL/分で流す。次に、エタノールの回収率が1ml/分未満になるまで、加熱ジャケット内の温度を37~40℃に上げ、圧力を3バール/分の速度で4~8時間、110~115バール(又はエタノールに可溶な殺生物剤の場合は、およそ80バール)に上げる。温度及び圧力の正確な値は、選択した充填エアロゲルにある程度依存するが、日常的な実験によって簡単に評価できる。CO2は、10℃で測定しておよそ6mL/分の速度で容器に流す。流した後、圧力を0.5~数時間の間ゆっくりと解放する。
【0039】
上記工程a~eの場合、エタノールは、tert-ブタノールなどの別のC1-C4アルコールに簡便に置き換えることができる。さらに、上記のように、超臨界乾燥手順は、フリーズドライ(凍結乾燥)に置き換えることができる。
【0040】
第3の態様では、第2の態様による方法によって得られる防汚添加剤が提供される。
【0041】
第4の態様では、海洋用コーティング又は木材保護若しくは湿気のある屋内環境を目的としたコーティングにおける、第1又は第3の態様による防汚添加剤の使用が提供される。
【0042】
第5の態様では、本発明の第1又は第3の態様による防汚添加剤を含む防汚塗料又はシーラント組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0043】
詳細な説明
本発明の概要に記載されるように、本発明者らは、コーティング及びシーラント組成物への配合に必要とされる機械的堅牢性及び活性化合物の高充填量~非常に高充填量を有するカプセル化された殺生物剤及び/又は生物忌避剤(「活性化合物」)を含む新規エアロゲル粒子の生成のための新しい製造手順を開発した。これらの粒子は、そのような防汚組成物に配合されると、乾燥コーティング又はシーラントの十分な吸水率をもたらす。したがって、前記粒子は、防汚コーティング及びシーラント組成物のための添加剤として価値があることが見出された。
【0044】
したがって、第1の態様において、本発明は、
防汚添加剤であって、前記防汚添加剤が
a.以下を含む無機シリカ含有エアロゲル;
b.多孔質ゲル格子、及び
c.任意選択的に、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Y、Zr、Nb、Ru、Hf、Ta、W、Re、Al、Ge、In、La、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb又はLuを含むアルコキシド、並びに、
d.前記エアロゲル内に捕捉された1つ以上の殺生物性又は生物忌避性化合物、
を含み、
前記シリカ含有エアロゲルが、少なくとも55重量%の前記1つ以上の殺生物性又は生物忌避性化合物を含み、
前記1つ以上の殺生物性又は生物忌避性化合物の前記捕捉が、前記ゲルのゾルゲル形成中に起こり、
前記防汚添加剤の熱伝導率が、0.01~0.05W/m*Kである、前記防汚添加剤を提供する。
【0045】
第1の態様の実施形態では、前記エアロゲルが最大で75重量%のZnピリチオンを含む場合、前記エアロゲルの嵩密度は、最大で0.5gr/mlの値を有する。
【0046】
エアロゲル粒子がジンクピリチオンを含有する本発明の特定の実施形態を、国際公開第2009/062975号の方法によって生成され、WALLSTRОM,E.et al.:‘‘A new concept for anti-fouling paint for Yachts’’,PROG.ORG.COAT vol.72,2011.pages 109-114で論じられている、「75%ZnPエアロゲル」とされる製品と区別するために、ZnP含有エアロゲルの嵩密度に関する限定(「前記エアロゲルが最大で75重量%のZnピリチオンを含む場合、前記エアロゲルの嵩密度は、最大で0.5gr/mlの値を有する」)が導入されている。
【0047】
上記のように、圧入ポロシメトリー実験によって、予備縮合シリケートで調製されたおよそ75%w/wのZnPを含有する充填エアロゲルが、通常のシリケートから生成されたエアロゲルよりも著しく低い嵩密度及び著しく高い圧入容積を有することが見出された。実験セクション(実施例8a)に見られるように、通常のシリケートで生成された75%w/wのZnPを含有するエアロゲルの平均嵩密度は、約0.58g/ml(バッチ1A~C)であるが、予備縮合シリケートで同様に生成された充填エアロゲル(バッチ2A~B)の場合の嵩密度は、約0.39g/mlである(一連の値はいずれも水銀圧入ポロシメトリーによって測定される)。国際公開第2009/062975号の方法で生成された「75%ZnPエアロゲル」に匹敵するエアロゲルの嵩密度は、0.56g/mlであることがわかった。
【0048】
本発明の方法によって生成されるおよそ75%w/wのCuPを含有するエアロゲルの平均嵩密度も、<0.50g/mlである(実施例8b、バッチ3A~C、
図7)が、本明細書に記載の充填エアロゲルの嵩密度は、特に実際の充填と使用された殺生物剤自体の密度との関数として著しく変動する場合があり(
図8も参照のこと)、したがって、新規の充填エアロゲルの一般的な限定特性ではない。新規の充填エアロゲルを先行技術と区別するものは、主に又はさらには排他的に、達成可能な殺生物剤の高充填量~非常に高充填量であり、これは、例えば、非常に低い熱伝導率(通常は0.01~0.05W/m
*K)と相まって、熱重量分析(TGA)によって検証することができる。
【0049】
それ以来、同じ製造手順を使用して、本発明者らは、他の殺生物剤、例えば、DCOIT、IPBC、トリルフルアニド、ジウロン、Cuピリチオン(CuP)などを用いて生成してきた。実施例セクションを参照のこと。
【0050】
好ましい実施形態では、第1の態様の防汚添加剤は、少なくとも55重量%、例えば少なくとも65重量%、例えば少なくとも70重量%、少なくとも75重量%、少なくとも80重量%、少なくとも85重量%、少なくとも90重量%、又は約95重量%のカプセル化された殺生物剤及び/又は生物忌避剤(「活性化合物」)を含むエアロゲル粒子を含む。
【0051】
本発明者らの知る限りにおいて、そのような高く均質に分布された量のカプセル化材料を含有するエアロゲルは、これまで開示されていない。国際公開第2009/062975号に開示された方法によって高充填エアロゲルを生成する以前の試みは、本発明の充填エアロゲルと比べて高すぎる吸水率及び異なる多孔性及び均質性を有する材料をもたらした。同時係属中の国際公開第2020/002659号の発明者らは、方法論をさらに開発し、本出願において、より広い範囲の殺生物剤/生物忌避剤に対応し、依然として元の目的を維持することができる製造方法の開発に成功した。
【0052】
したがって、本発明の高充填ゲル粒子は、同時に添加されるシリカの量を先に検討した1.5%w/wの限界未満に保ちつつ、大量の殺生物剤及び/又は生物忌避剤(「活性化合物」)を防汚コーティング及びシーラントに添加することを可能にする。
【0053】
本明細書に開示される製造手順によれば、非常に大量の殺生物剤及び/又は生物忌避剤(「活性化合物」)を、任意選択的にアルキルトリアルコキシシランと組み合わせて、テトラアルコキシシラン(モノマーテトラアルキルオルトシリケート又は予備縮合テトラアルキルオルトシリケート又は予備縮合モノマーテトラアルキルオルトシリケート)+ゾルゲル調製において必要とされる活性化合物(最終工程でエアロゲルに変換され、乾燥される)を使用して、2段階の手順によって形成されたアルコゲルに、インサイチュでカプセル化することができる。
【0054】
この新たな方法は、PCT出願の国際公開第2009/062975号に記載された元の手順における比率とほぼ同じ比率のテトラアルコキシシラン及びアルキルトリアルコキシシランを使用するが、ゲル化プロセスに使用される水の量は、はるかに少ない。さらに、触媒として使用されるアンモニアも少なく、アンモニアは、出発物質と混合された濃縮水溶液としてではなく、別個のエタノール溶液中でシリケートの溶液に徐々に添加される。さらに、酸触媒機能も作用することが示されており、これにより、一般にアンモニア又はアルカリ条件に感受性のある殺生物剤のカプセル化が可能になった。
【0055】
出願人の同時係属中のPCT出願の国際公開第2020/002659号に開示された方法と比較して、製造プロセスのさらなる改善は、驚くべきことに、大量の水及び逆添加手順でSOL-GELプロセスを実行することによって達成されている。これにより、エタノールへの溶解度が高い殺生物剤/生物忌避剤のカプセル化が可能になり、SOL相中の水の比率が高い凍結ゲルの融点がより高いため、得られたゲルがフリーズドライに好適であるという追加の利点がある。
【0056】
最後に、本発明の製造手順は、最初に形成されたアルコゲル(「湿潤ゲル」)が超臨界二酸化炭素抽出ではなくフリーズドライ(凍結乾燥)を使用して乾燥される場合があるという点で、国際公開第2020/002659号の製造手順とは異なる。凍結乾燥は、超臨界二酸化炭素抽出よりも商業的にはるかに実行可能かつスケーラブルな手順である。したがって、製造手順のこの変形によるエアロゲル粒子は、フリーズドライされた固体として単離される。
【0057】
一実施形態では、本発明の湿潤ゲルは、当技術分野で知られている任意の凍結技術によって凍結することができる。ゲルが、例えばSOL-GELプロセス工程後のゲルをエージングするために使用される容器の中に保たれている場合、ゲルを液体窒素、極低温混合物(ドライアイスアセトン浴など)、又は冷蔵庫内に配置することで凍結を実行できる。ゲルが合成又は溶媒交換に使用される溶媒の凍結温度よりも低い温度になっている限り、いずれの凍結方法でも作用する。溶媒としてtert-ブタノールを使用することは、この溶媒がほぼ室温で凍結し、したがって低温に冷却する必要がないため(家庭用冷凍庫で十分である)、フリーズドライ手順に特に有利であるようである。しかしながら、エタノール、1-ブタノール、ジメチルスルホキシド、及び四塩化炭素など、凍結温度の低い溶媒であれば作用する場合がある。次に、凍結したゲルは、従来のフリーズドライヤーを使用して乾燥されるか、より簡単には、真空チャンバーに配置されて従来のロータリーポンプで汲み上げられる。しかしながら、試料を収容するチャンバーの部分は、エアロゲルの崩壊につながる場合がある融解を避けるために、溶媒の凍結温度付近の温度で維持する必要がある。
【0058】
フリーズドライは、-18℃及び80℃の2つの異なる温度で試験されており(
図8を参照)、スケールアップに適しているとみなす必要がある。得られたエアロゲルは、超臨界乾燥によって生成された材料と臨界パラメーターの点で違いはなく、より費用効率が高い。
【0059】
国際公開第2009/062975号及び国際公開第2020/002659号に記載されている手順に対するこれらの変更により、多種多様な活性化合物(例えば、殺生物剤及び生物忌避剤)の非常に高充填量(>55%w/w)、許容可能な吸水率、及び国際公開第2009/062975号に記載されている手順で得られるよりもはるかに高い充填ゲルの均質性を有する充填エアロゲルのスケーラブルな生成が可能になった。
【0060】
得られたエアロゲル粒子は通常、含有量がおよそ55~75%w/wのカプセル化された活性化合物を含有するが、最大およそ90~95%w/wの含有量まで含有して生成できる。3つの出発物質間の比率を変えることによって、最終的なエアロゲル粒子の様々な多孔率、密度、及び疎水性/親水性挙動を得ることができる。エアロゲル粒子はまた、方法のこのような変形によって、溶媒ベース及び水性の両方のコーティング及びシーラントに一致するように調製することができる。
【0061】
前述のように、不透明度及び熱伝導率など、本発明によって生成されるエアロゲル粒子の他の物理的パラメーターも研究されてきた。
【0062】
いずれのパラメーターも、粒子の意図された最終用途にとって重要である:塗料、コーティング、及びシーラントへの添加剤として。それらの「隠蔽力」(被覆率としても知られる)によって測定される、そのような粒子の不透明度は、海洋用コーティング又は木材保護若しくは湿気のある屋内環境を目的とするコーティングへの当該粒子を含有する塗料及びコーティングの適用効率に影響を与える。粒子の隠蔽力が高いほど、塗料組成物がより効率的に表面を被覆する。
【0063】
塗料及びコーティングへの添加剤の熱伝導率は、当該添加剤を含有する塗料又はコーティングでコーティングされた表面を介した熱の放散に影響を与える。添加剤の熱伝導率が低いほど、より良好な断熱性が提供される。空のシリカエアロゲル粒子はコーティングの熱伝導率を低下させることが知られている。例えば、F.He et al., “Thermal Conductivity of Silica Aerogel Thermal Insulation Coatings” International Journal of Thermophysics 40(10)October 2019を参照のこと。
【0064】
シリカエアロゲルは、-175~25℃の温度で測定した場合、熱伝導率が低く(0.005W/m*K)、高多孔性であり(約80~99.98%)、光学的に透明なナノポリマーであることが知られている。例えば、S.S.Kistler,‘‘Coherent Expanded Aerogels,’’ The Journal of Physical Chemistry,1932 or CRC Handbook of Chemistry and Physicsを参照のこと。
【0065】
驚くべきことに、本発明の充填エアロゲル粒子は、純粋な化合物として0.2~0.3W/m
*Kのオーダーの熱伝導率を有するカプセル化された殺生物剤及び/又は生物忌避剤を最大90%w/w含有する場合でも、0.01~0.05W/m
*K(
図10を参照)の熱伝導率を有することが見出された。これは、本発明の充填エアロゲル粒子を含有する防汚塗料及びコーティングが、カプセル化されていない純粋な殺生物剤及び/又は生物忌避剤を含有するコーティングよりも良好な断熱特性を有することを意味する。
【0066】
本出願人は、本発明の充填エアロゲル粒子の熱伝導率を、出願人の同時係属出願の国際公開第2020/002659号に記載された方法に従って調製された空のエアロゲル粒子と比較した。驚くべきことに、国際公開第2020/002659号のこれらの空のエアロゲル粒子(すなわち、カプセル化された殺生物剤/生物忌避剤を含有しないエアロゲル)は、約0.07W/m*Kの熱伝導率、つまり、本発明の充填エアロゲル粒子について測定された値よりも大幅に高い値を有する。理論に拘束されることを望まないが、本発明者らは、本出願人の方法が、国際公開第2020/002659号に開示された方法によって生成されるよりも嵩密度が低く、含有量の均一性が改善された材料をもたらすと仮定する。
【0067】
一実施形態では、本発明の充填エアロゲル粒子は、0.01~0.05W/m*K、例えば0.015W/m*K~0.045W/m*K、例えば0.02W/m*K~0.04W/m*K、例えば0.025W/m*K~0.035W/m*K、例えば約0.03W/m*Kの熱伝導率を有する。
【0068】
さらに、本発明の充填エアロゲル粒子は、塗料及びワニスの「隠蔽力」測定規格であるISO6504-3:2019、「隠蔽力の決定-パート3:方法C(白黒チャート)」を使用して、一般に不透明であることが見出された。したがって、透明なワニスに適用されたときに充填エアロゲル粒子は、ISO規格6504-3:2019(EN)による「隠蔽力」を有することが見出された。
【0069】
酸性条件下でのTMOS又はTEOSモノマーなどのテトラアルコキシシランの予備重合から作製された部分縮合シリカを使用して、モノリシックシリカエアロゲルを調製することができる。本明細書で使用される予備重合されたTMOS及びTEOS前駆体は、市販されている。
【0070】
したがって、本発明は、第2の態様において、以下の工程を含む、第1の態様の防汚添加剤を提供するための方法をさらに提供する。
a.溶液1の調製:100部のテトラアルコキシシラン(モノマーのテトラアルキルオルトシリケート又は予備縮合テトラアルキルオルトシリケート又は予備縮合モノマーテトラアルキルオルトシリケートの混合物)を、0~50部のアルキルトリアルコキシシラン、350~500部のエタノール及び200~450部の殺生物剤と混合し、ミキサーで激しく撹拌する。Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Y、Zr、Nb、Ru、Hf、Ta、W、Re、Al、Ge、In、La、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、又はLuを含むアルコキシドは、この時点で任意選択的に追加できる。
b.溶液2の調製:100部のエタノール、およそ50部の水、及び0.25~15部のゲル化触媒を混合する。
c.溶液2を溶液1に徐々に加え、20~25分かけて激しく攪拌する。およそ15分後にゲル化の兆候が観察されるまで、低速で撹拌を続ける。得られた溶液は、ゲル化のために1つ以上の別個の容器に移してもよい。ゲル化時間は、約30~60分である。
d.ゲルは、好適な容器に2~5日間保管し、その後抽出器(複数可)に移す。
e.湿潤ゲルをより小さい断片に切断し、エタノール下で好適な圧力容器(両端に加熱ジャケット及び金属フリットを装備したフローリアクター)に移す。そこで、ゲルにエタノールを0.5mL/分で流す。次に、エタノールの回収率が1ml/分未満になるまで、加熱ジャケット内の温度を37~40℃に上げ、圧力を3バール/分の速度で4~8時間、110~115バール(又はエタノールに可溶な殺生物剤の場合は、およそ80バール)に上げる。温度及び圧力の正確な値は、選択した充填エアロゲルにある程度依存するが、日常的な実験によって簡単に評価できる。CO2を、10℃で測定しておよそ6mL/分の速度で容器に流す。流した後、圧力を0.5~数時間の間ゆっくりと解放する。
【0071】
上記工程a~eの場合、エタノールは、tert-ブタノールなどの別のC1-C4アルコールに簡便に置き換えることができる。さらに、上記のように、超臨界乾燥手順は、フリーズドライ(凍結乾燥)に置き換えることができる。
【0072】
したがって、本発明の方法の実施形態によれば、凍結乾燥された充填エアロゲルは、上記の工程a~cに従って生成された湿潤ゲルを最初に凍結することによって生成することができる。次に、凍結したゲルを真空チャンバーに入れ、昇華によって溶媒を除去する。これらの2つの工程は、市販のフリーズドライヤーに対応できる。
【0073】
超臨界乾燥に対する利点(その一部のみが本明細書において検討されている)としては、主に、製造手順のスケールアップがはるかに簡単であること、加えて、超臨界条件での乾燥によって生じる危険リスクが低減されることが挙げられる。凍結乾燥手順の第2の利点は、資本支出の大幅な削減である。超臨界乾燥に使用されるオートクレーブは、厚い壁を必要とし、超臨界乾燥に使用される圧力が高い(70気圧のオーダー)ために責任問題(liability issues)を生じる。フリーズドライでは、生成コストがはるかに低く、責任問題が最小限に抑えられる真空チャンバー(複数可)を代わりに使用する。通常、超臨界乾燥オートクレーブは、同じ容量のフリーズドライ真空チャンバーの10倍の費用がかかる。
【0074】
製造手順の一実施形態では、溶液1は、20~50部のアルキルトリアルコキシシランを含有する。別の実施形態では、特に親水性充填エアロゲルが想定される場合、又は非常に高充填量の殺生物剤が必要とされる場合、溶液1は、20部未満、例えば15部、又は例えば10部、又は例えば5部以下のアルキルトリアルコキシシランを含有する。別の実施形態では、溶液1は、アルキルトリアルコキシシランを含有しない。
【0075】
本発明で使用してもよいテトラアルコキシシランは、メチル、エチル、プロピル、及びブチルなどの1~4個の炭素原子の範囲のアルキル基を含む。最も好ましいテトラアルコキシシランは、テトラメチルオルトシリケート(TMOS)及びテトラエチルオルトシリケート(TEOS)である。
【0076】
好ましい実施形態では、テトラアルコキシシランは、TMOS(テトラメチルオルトシリケート)、TEOS(テトラエチルオルトシリケート)、テトラ-n-プロポキシシラン及びテトラ-n-ブトキシシランから選択される。
【0077】
別の好ましい実施形態において、予備加水分解/予備縮合テトラアルコキシシランは、予備加水分解テトラメチルオルトシリケート(例えば、Dynasylan(登録商標)M)、予備加水分解テトラエチルオルトシリケート(例えば、Dynasylan(登録商標)A)、又は予備加水分解テトラn-プロピルオルトシリケート(例えば、Dynasylan(登録商標)P)から選択される。
【0078】
好ましい実施形態において、アルキルトリアルコキシシランは、MTMS(メチルトリメトキシシラン)及びMTES(メチルトリエトキシシラン)から選択されるが、TMES(トリメチルエトキシシラン)及びETES(エチルトリエトキシシラン)などの他の低級アルキルトリエトキシシランを使用してもよい。
【0079】
ゲル化触媒は、アンモニア水(都合よく濃縮されたNH3水又は水中25%)などの、エアロゲル形成のために好都合に使用される任意の触媒であり得る。他の適用可能なゲル化触媒には、フッ化アンモニウム、フッ化ナトリウム及び炭酸ナトリウムが含まれる。このような代替触媒は、殺生物剤がアンモニアと反応する可能性がある場合に好ましい。酸性触媒機能も使用することができ、例えば、特に、閉じ込められる殺生物剤が一般にアンモニア又はアルカリ性条件に対して感受性を有する場合には、塩酸を使用する。
【0080】
一般的な方法の様々な変形の使用例は、スケールアップ実験を含む実験セクションにおいて見出すことができる。
【0081】
第3の態様では、第2の態様による方法によって得られる防汚添加剤が提供される。
【0082】
好ましい実施形態において、本発明は、ピリチオン化合物、塩基性炭酸銅、イソチアゾリノン化合物、置換トリアジン、カルバメート、塩素化芳香族尿素、トリアジン及びそれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の殺生物性又は生物忌避性化合物を含む、本発明の第1又は第3の態様による防汚添加剤を提供する。ピリチオン化合物の例としては、ジンクピリチオン、銅ピリチオン、ジルコニウムピリチオン、ナトリウムピリチオンなどの金属ピリチオン化合物が挙げられる。イソチアゾリノン化合物の例としては、4,5-ジクロロ-2-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン(DCOIT)、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン(BIT)、n-ブチルイソチアゾリノン(BBIT)、n-オクチルイソチアゾリノン(OIT)及びそれらの混合物が挙げられる。置換トリアジンとしては、例えば、テルブトリン(2-tert-ブチルアミノ-4-エチルアミノ-6-メチルチオ-1,3,5-トリアジン)が挙げられる。カルバメートとしては、例えば、ヨードプロピニルブチルカルバメート(IPBC)が挙げられる。塩素化芳香族尿素としては、例えば、ジウロン(ジクロロフェニルジメチル尿素)が挙げられる。ピリチオン化合物のうち、一般的に、費用及び有効性の観点からジンクピリチオンが使用される。カプセル化された殺生物性又は生物忌避性化合物の使用目的に応じて、当業者は、本発明において使用できる有効成分を決定することができるであろう。
【0083】
一実施形態では、本発明の第1又は第3の態様による防汚添加剤は、CO2による超臨界抽出を含むプロセスによって生成される。別の実施形態では、本発明の第1又は第3の態様による防汚添加剤は、フリーズドライ(凍結乾燥)を含むプロセスによって生成される。
【0084】
本明細書で使用される場合、「殺生物性又は生物忌避性化合物」という用語は、抗菌性、殺胞子性、殺真菌性などである有効成分を含むがこれらに限定されない、殺生物特性又は生物忌避特性を有する成分を意味することを意図する。
【0085】
本発明の防汚添加剤の使用目的は、木材保護(フェンス、建物など)、海洋用途(ボート、遊覧ヨット、商用船舶、石油掘削装置及び他のオフショア建築物などの沈水した静的建築物)、並びに自然に/定期的に湿気のある条件及び/若しくは水に曝される浴室、トイレ、サウナ、ジム、屋内スイミングプールエリアなどの湿気のある屋内環境に適用される防汚コーティング又はシーラント組成物に添加されることである。
【0086】
調製されたエアロゲル粒子が防汚コーティング又はシーラントに含まれる場合、カプセル化された活性化合物は、得られた層に均一に分布する。各エアロゲル粒子には、活性化合物のいくつかの別個の粒子が含有される場合がある(
図3)。
【0087】
故に、第4の態様では、海洋用コーティング又は木材保護若しくは湿気のある屋内環境を目的としたコーティングにおける、第1又は第3の態様による防汚添加剤の使用が提供される。
【0088】
第5の態様では、本発明の第1又は第3の態様による防汚添加剤を含む防汚コーティング又はシーラント組成物が提供される。
【0089】
防汚コーティング層の厚さは通常、約100μmであるが、シーラントははるかに厚い厚さで適用される。しかしながら、いずれの場合も、先に検討したように、防汚組成物が湿気の多い条件に曝されると、周囲から水を吸収した厚さ約20~40μmの層が徐々に発達する(Bressy C.et al.“Tin-free self-polishing marine antifouling coatings”Woodshead Publishing,2009)。この層の厚さは、防汚コーティング又はシーラント組成物の種類に依存する。溶剤ベースの組成物は、原則として、水性組成物よりも水を吸収しにくい。この「湿った」層は、殺生物活性化合物(複数可)が溶解し、拡散によって表面に輸送されるのは、硬化した組成物のこの層からであるため、浸出層と呼ばれる。
【0090】
コーティング又はシーラントの浸出層に埋め込まれたエアロゲル粒子は、シリカベースのエアロゲルの多孔性質及び吸湿性質のために水を吸収し始める。これにより、閉じ込められた活性化合物粒子の周囲の露出したエアロゲル粒子内に局所的な水性環境が作製され、活性化合物粒子はゆっくりと溶解し始める。しばらくすると、エアロゲル粒子内に活性化合物の飽和溶液が生成される(
図4)。
【0091】
次いで、この飽和溶液は活性化合物の貯蔵所として機能し、活性化合物がエアロゲル粒子の多孔質構造に浸透して防汚コーティング又はシーラントの表面上に出るときに、防汚コーティング又はシーラントの表面への放出が起こる。浸出層は、コーティングされた表面が水を通過するか、(静的な屋外用途の場合)雨、日光、及び温度変動に曝されることにより、層の上部の侵食によって常に再生される。屋内用途の場合、浸食は、シャワーなどの定期的な水への暴露、及び防汚組成物が適用されている洗剤による表面の物理的洗浄によって引き起こされるであろう。これにより、浸出層は上部からの侵食によって厚さが減少するが、同時に、防汚組成物層のより深い位置にある領域を含めることによって再生される。
【0092】
浸出層の侵食及び再生により、乾燥した防汚組成物の全耐用年数の間、乾燥した防汚組成物の表面に対する所望の防汚効果を維持するのに十分な量の殺生物剤が常に存在することが保証される。
【0093】
浸出層が侵食されると、埋め込まれたエアロゲル粒子は徐々に環境に曝されるようになる。しかしながら、部分的に曝されたれた場合でさえ、エアロゲル粒子は、先に検討したようにコーティング又はシーラントの侵食によって最終的に除去されるまで、防汚組成物中に(それらの残りの殺生物剤の含有量と共に)貼着したままである。
これは、
図1に示す状況との重要な差異であり、これは、捕捉されていない殺生物剤粒子が、防汚効果を発揮するために完全に使用されるかなり前にコーティングから喪失されることを示している。
【0094】
エアロゲル粒子の内部に未溶解の活性化合物が存在し、それによって溶解した活性化合物の飽和した貯蔵が確保される限り、表面への放出は実質的にゼロ次反応速度で起こる。言い換えれば、経時的な放出プロファイルは、実質的に線形である。
【0095】
したがって、防汚コーティングの表面上の殺生物剤/生物忌避剤の濃度は、表面が湿った空気、特に相対湿度が65%を超えている空気、雨、又は水との接触などの湿気に定期的に曝される限り、コーティング又はシーラントの予想される耐用年数の間、実質的に一定に保たれる。複数の殺生物剤/生物忌避剤が必要とされる場合は、各活性化合物を個別にカプセル化し、防汚組成物中に正しい比率で含まれ得るため、個々の活性化合物が保管中に相互作用しないこと、及び最終的なコーティング又はシーラントから放出された化合物間の一定の比率がその予想される耐用年数の間維持されることが保証される。
【0096】
好ましい実施形態において、本発明は、少なくとも2%w/wの殺生物剤、例えば少なくとも3%w/wの殺生物剤、少なくとも4%w/wの殺生物剤、例えば少なくとも5%w/wの殺生物剤、例えば少なくとも6%w/wの殺生物剤、例えば少なくとも7%w/wの殺生物剤に対応する量の本発明による防汚添加剤を含む防汚コーティング組成物を提供する。
【0097】
本発明のさらなる実施形態では、2つ以上の異なる殺生物剤及び/又は生物忌避剤を含み、異なるエアロゲル内に個別にカプセル化され、次いで所要の比率で防汚組成物に添加される防汚コーティングが提供される。
【0098】
本明細書に記載の手順は、ピリチオン、イソチアゾール及びイソチアゾロン、トリアゾール、イミダゾール及びベンズイミダゾール、ハロゲン化ピロール、尿素、カルバメート、スルファミド、並びに亜鉛及び銅塩(亜鉛チオカルバメートなど)、チオシアン酸銅、水酸化銅(II)及び炭酸銅(II)-水酸化銅(II)(1:1)及び金属銅などの多くの明確に異なる化学構造に対して良好に機能することが見出された。
一実施形態では、カプセル化された殺生物性又は生物忌避性化合物は、下記式のピリチオンから選択される:
【0099】
【0100】
式中、Metは、銅、亜鉛、ジルコニウム、又はナトリウムから選択される金属である。
【0101】
好ましい実施形態において、カプセル化された殺生物性又は生物忌避性化合物は、ジンクピリチオン、銅ピリチオン又はナトリウムピリチオンから選択される。
別の実施形態において、カプセル化された殺生物性又は生物忌避性化合物は、下記式のイソチアゾールから選択される:
【0102】
【0103】
式中、R1及びR2は、ハロゲン又は水素であってもよく、又はR1及びR2は融合して、任意選択的にさらに置換された芳香環及びR3=C3-C12アルキルを形成してもよい。
【0104】
特定の実施形態において、殺生物性又は生物忌避性化合物は、2-ブチル-ベンゾ[d]イソチアゾール-3-オン(BBIT)、2-オクチル-2H-イソチアゾール-3-オン(OIT)、又は4,5-ジクロロ-2-オクチルイソチアゾール-3(2H)-オン(DCOIT、Sea-Nine)から選択される。
【0105】
別の実施形態において、カプセル化された殺生物性又は生物忌避性化合物は、下記式のトリアゾールから選択される:
【0106】
【0107】
式中、R4=水素、C1-C6アルキル、R5=C1-C6アルキル、C1-C6アルキルオキシ、R6=アリール、C1-C6アリールアルキルであり、R4及びR5は融合して、少なくとも1つの酸素を含有する5~6員環を形成してもよい。
【0108】
特定の実施形態において、殺生物性又は生物忌避性化合物は、1-(4-クロロフェニル)-4,4-ジメチル-3-(1,2,4-トリアゾール-1-イル-メチル)ペンタン-3-オール(テブコナゾール)、1-[[2-(2,4-ジクロロフェニル)-4-プロピル-1,3-ジオキソラン-2-イル]メチル]-1H-1,2,4-トリアゾール(プロピコナゾール)、又は(2RS,3RS,2RS,3SR)-2-(4-クロロフェニル)-3-シクロプロピル-1-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)ブタン-2-オール(シプロコナゾール)から選択される。
【0109】
別の実施形態において、カプセル化された殺生物性又は生物忌避性化合物は、下記一般式のトリアジンから選択される:
【0110】
【0111】
式中、R7=C1-C6アルキルチオ、R8=C1-C6アルキルアミノ、R9=C1-C6アルキルアミノである。
【0112】
好ましい実施形態において、殺生物性又は生物忌避性化合物は、2-エチルアミノ-6-メチルチオ-4-tert-ブチルアミノ-1,3,5-トリアジン(テルブトリン)である。
【0113】
別の実施形態において、カプセル化された殺生物性又は生物忌避性化合物は、下記一般式のイミダゾールから選択される:
【0114】
【0115】
式中、R10及びR11は、水素、C1-C6アルキル又はC1-C3アリールアルキルであってもよく、又は融合して、ベンズイミダゾール環を形成してもよく、R12=水素、ヘテロアリール又はカルバモイルである。
【0116】
特定の実施形態において、殺生物性又は生物忌避性化合物は、2-チアゾール-4-イル-1H-ベンゾイミダゾール(チアベンダゾール)、(RS)-4-[1-(2,3-ジメチルフェニル)エチル]-3H-イミダゾール(メデトミジン)、及びメチル1H-ベンズイミダゾール-2-イルカルバメート(カルベンダジム)から選択される。
【0117】
別の実施形態において、カプセル化された殺生物性又は生物忌避性化合物は、下記一般式のハロゲン化ピロールから選択される:
【0118】
【0119】
式中、R13=アリール、R14=ハロゲン、シアノ、トリフルオロメチルスルホニル、R15=ハロゲン、トリフルオロメチルチオ、R16=シアノ、トリフルオロメチル、ハロゲン、R17=水素、C2-C6アルキルオキシメチルであり、
R14、R15及びR16のうちの少なくとも1つは、ハロゲンである。
【0120】
特定の実施形態において、殺生物性又は生物忌避性化合物は、4-ブロモ-2-(4-クロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピロール-3-カルボニトリル(トラロピリル)及び4-ブロモ-2-(4-クロロフェニル)-1-エトキシメチル-5-トリフルオロメチルピロール-3-カルボニトリル(クロルフェナピル)から選択される。
別の実施形態において、カプセル化された殺生物性又は生物忌避性化合物は、下記一般式のカルバメート、尿素又はスルファミドから選択される:
【0121】
【0122】
式中、Q=カルボニル(C=O)又はスルホニル(O=S=O)、R18=アリール、C1-C8アルキル、水素、及びR19=C1-C6アルキル、水素、G=O-R20又はN(R21R22)(式中、R20=C3-C6アルキニル、C1-C6アルキル、R21=C1-C8アルキル、トリハロメチルチオ、水素、及びR22=C1-C8アルキル、アリール、水素である)である。
【0123】
さらなる実施形態において、殺生物性又は生物忌避性化合物は、それぞれ、以下の3つの一般式のカルバメート、尿素又はスルファミドから選択される:
【0124】
【0125】
式中、R18=アリール、C1-C8アルキル、水素及びR19=C1-C6アルキル、水素、R20=C3-C6アルキニル、C1-C6アルキル、R21=C1-C8アルキル、トリハロメチルチオ、水素、及びR22=C1-C8アルキル、アリール、水素である。
【0126】
特定の実施形態において、殺生物性又は生物忌避性化合物は、3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素(ジウロン)、ジクロロ-N-[(ジメチルアミノ)-スルホニル]-フルオロ-N-(p-トリル)-メタンスルフェナミド(トリルフルアニド)、N-(ジクロロフルオロメチルチオ)-N’,N’-ジメチル-N-フェニルスルファミド(ジクロフルアニド)、3-ヨード-2-プロピニルブチルカルバメート(ヨードカルブ)から選択される。
【0127】
さらに別の実施形態では、カプセル化された殺生物性又は生物忌避剤化合物は、チオカルバミン酸亜鉛、チオシアン酸銅、水酸化銅(II)及び水酸化銅(II)-水酸化銅(II)(1:1)などの亜鉛塩及び銅塩、並びに金属銅から選択される。
【0128】
特に好ましい実施形態では、カプセル化された殺生物性又は生物忌避剤化合物は、トリオールフルアニド、N,N-ジデシル-N,N-ジメチルアンモニウムカーボネート、N,N-ジデシル-N,N-ジメチルアンモニウムバイカーボネート、ジンクピリチオン、銅ピリチオン、ジウロン、4,5-ジクロロ-2-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン(=Sea-Nine又はDCOIT)、3-ヨード-2-プロピニルブチルカルバメート(IPBC)、2-チアゾール-4-イル-1H-ベンゾイミダゾール(チアベンダゾール)、2-(p-クロロフェニル)-3-シアノ-4-ブロモ-5-トリフルオロメチルピロール(=Econea若しくはトラロピリル)又はそれらの混合物から選択される。
【実施例】
【0129】
実験
エアロゲル合成に使用される材料
ゲル形成材料は、テトラメチルオルトシリケート(TMOS、テトラメトキシシラン)又はテトラエチルオルトシリケート(TEOS、テトラエトキシシラン)などのSi、Ti、Fe、及びAlをベースとする金属酸化物から選択される。より疎水性の高い材料を作製するために、メチルトリメトキシシラン(MTMS又は同様のもの)が含まれ得る。予備重合(予備加水分解、予備縮合)テトラアルコキシシランは市販されているか、弱酸性条件下で関連するテトラアルコキシシランを加水分解した後、低温で一晩重合することにより生成することができる。
【0130】
カプセル化された殺生物剤/生物忌避剤を含むエアロゲルを調製するために使用される一般的な方法
様々な溶解性及び酸性又はアルカリ性条件に対する耐性を有する殺生物剤/生物忌避剤の幅広い選択に対応し、テトラアルコキシシランとアルキルトリアルコキシシランの様々な組み合わせの使用を可能にするために、本発明のカプセル化された殺生物剤/生物忌避剤を生成するために以下の方法が開発されている。
【0131】
・オリジナル処方(国際公開第2020/002659号)Dynasylan M/TMOSゲル(エタノール/アルコールへの溶解度が低い化合物をカプセル化するために使用(例えば、CPT、ZPT、ジネブ、ジウロン))
1.Dynasylan M、MTMS(含む場合又は含まない場合)及びEtOHをマグネチックスターラーで10分間混合する。殺生物剤を加え、およそ5分間又は均一な混合が達成されるまで激しく混合する。
3.NH4OHをEtOH+水と混合し、攪拌しながら殺生物剤混合物に添加する。
4.攪拌速度を、反応混合物がプリンのように嵩高になるまで(およそ15~25分かかる)低下させる。
5.容器を閉じ、乾燥を避けるためにゲルの上に少量のエタノールを加える。素材をおよそ3日間放置して成熟させる(冷蔵庫内で行うことができる)。
【0132】
得られたゲル材料は、超臨界CO2での乾燥に好適である。ゲル材料を凍結乾燥するには、湿潤段階のエタノールの代わりに、例えば、tert-ブタノールなどのより融点の高いアルコールを使用する必要がある。以下の一般的な乾燥方法のセクションを参照のこと。
【0133】
・ゲルの調製-フッ化アンモニウム-TEOS/Dynasylan Aを含むゲル(例えば、CPT、ZPT、ジネブ、ジウロン、Econea)
【0134】
原液の調製
1.852gのNH4Fを秤量し、100mLの水に加える。20.50g(22.78mL)の水酸化アンモニウム溶液を加える。後で再利用できるように、これをボトルに保管する。これが「フッ化アンモニウム/水酸化アンモニウム原液」である。
【0135】
ゲルの調製
1.Dynasylan A/TEOS及びエタノールを瓶に入れて混合する。10分間混合する。これが「アルコキシド溶液」である。
2.アルコキシド溶液に殺生物剤を加える。5分間攪拌する。
3.別の容器内で水とエタノールを混合する。フッ化アンモニウム/水酸化アンモニウム原液を加える。この混合物が「触媒溶液」である。
4.触媒溶液をアルコキシド溶液に注ぎ、攪拌する。これが「ゾル」である。
5.磁石が動かなくなるまで攪拌するか、又はゾルを型に流し込み、ゲルを形成する。ゲル化時間は約8~40分である。ゲル化時間は、アルコール/水比率及び(DynA+MTMS)対(水+エタノール)比率に依存する。
6.容器を閉じ、材料をおよそ3日間放置して熟成させることができる(冷蔵庫内で行うことができる)。
【0136】
このゲル材料は、凝固点/融点が-60℃超に保たれている限り、凍結乾燥に好適である。
【0137】
このゲル材料は、水分含有量が少ない限り、超臨界CO2での乾燥に好適である。それ以外の場合は、エタノールの代わりに、例えばtert-ブタノールを使用する必要がある。
【0138】
・ゲルの調製-水の比率が高い逆順(エタノール溶解性/混和性のため、例えば、ヨードカルブ(Iodocarb)、テルブトリン、トリルフルアニドなどの場合)
1.水、エタノール、分散剤(及び消泡剤)を瓶に入れて混合する。それをマグネチックスターラーで10分間混合する。
2.殺生物剤を加える。10分間攪拌する。
3.別の容器内でTMOS(及びMTMS)を混合する。
4.TMOS/MTMSをEtOH/水溶液/殺生物剤に注ぎ、5分間撹拌する。
5.NH4OH-塩基性触媒を加える。
6.磁石が動かなくなるまで攪拌するか、又はゾルを型に流し込み、ゲルを形成する。
7.容器を閉じ、材料をおよそ3日間放置して熟成させることができる(冷蔵庫内で行うことができる)。
【0139】
このゲル材料はフリーズドライに好適である。
【0140】
・ゲルの調製-酸(DCOITなどに必要?エタノール混和性、不安定、かつアルカリ感受性)
1.水、エタノール、分散剤を瓶に入れて混合する。それをマグネチックスターラーで10分間混合する。
2.HCLを加えて、10分間混合する。
3.殺生物剤を加える。10分間攪拌する。
4.別の容器内でDynasylan A及びMTMSを混合する。
5.DynA/MTMSをEtOH/水溶液/殺生物剤に注ぎ、5分間撹拌する。
6.NH4OH-塩基性触媒を加える。
7.磁石が動かなくなるまで攪拌するか、又はゾルを型に流し込み、ゲルを形成する。
8.容器を閉じ、材料をおよそ3日間放置して熟成させることができる(冷蔵庫内で行うことができる)。
【0141】
この材料はフリーズドライに好適である。
【0142】
・溶剤交換を含む一般的な乾燥方法
気密型に流し込んだ後、すべてのゲルを室温で1~3日間エージングさせる。超臨界乾燥の場合、湿潤ゲルをより小さい断片に切断し、エタノール下で圧力容器(両端に加熱ジャケット及び金属フリットを装備したフローリアクター)に移し、任意選択的に0.5mL/分でエタノールを流す。
【0143】
次に、加熱ジャケット内の温度を37~40℃に上げ、圧力を3バール/分の速度で80~120バールまで上げる。40℃及び110バールで3~4時間(最大8)、エタノールの回収率が1ml/分未満になるまで、10℃で測定した約6mL/分の速度でCO2をリアクターに流した。流した後、圧力を0.5~数時間かけてゆっくりと解放する。
【0144】
SOL相の組成に応じて、フリーズドライ前に、湿潤ゲル中の溶媒をtert-ブタノール(4×ゲルの容積、4時間ごとに3回)と交換することができる。水分の比率が高い湿潤ゲルの場合、凍結前に溶媒を交換する必要はない。エタノールの比率が高い湿潤ゲルの場合、凍結前にtert-ブタノールとの溶媒交換を行うことにより、その後のより高温でのフリーズドライが可能になる。これは、大規模操作に好適である。
【0145】
フリーズドライは、市販のフリーズドライヤー(VirTisモデルBenchtop K)内で-18℃又は-80℃で実施した。tert-ブタノールを含有するゲルを、業務用冷蔵庫内で-18℃で凍結させ、約-7℃の棚温度及び<3Torrの圧力でフリーズドライさせる。このようなゲルの場合、凍結温度は通常、-18℃以下である。凍結ゲルを、一次乾燥段階の開始時に選択された凍結温度付近の温度を維持する真空チャンバー内でフリーズドライさせる。乾燥プロセス中、温度をゆっくりと上げることができる。
【0146】
実施例1、2、3、3a、3b、4及び6は参照例である。
実施例1.およそ75%のカプセル化された殺生物剤(ZnP)を含むエアロゲルの調製
【0147】
1.溶液1:Dynasylan M又は純粋なTMOSのような0.64kgの予備凝縮TMOS(テトラメチルオルトシリケート)、0.32kgのMTMS(メチルトリメトキシシラン)、3.2kgのエタノール、及び1.44kgのジンクピリチオンを10リットル容器内で混合し、パドルミキサーで均質になるまで激しく攪拌した。
2.溶液2:0.64kgのエタノール、0.32kgの水、及び10mlのアンモニア溶液(濃縮)を混合する。
3.溶液2を、(1)と同じ混合条件で、500rpmで10~25分間、溶液1に加える。およそ15分以内にゲル化の兆候が現れるまで、混合速度を約100rpmに下げる。ゲル化時間は、およそ30分である。
4.ゲルをプラスチック容器に3~5日間保管し、その後抽出装置(複数可)に移す。
5.3)からの湿潤ゲルをより小さい断片に切断し、エタノール下で5又は10Lの圧力容器(両端に加熱ジャケット及び金属フリットを装備したフローリアクター)に移す。ゲルには0.5mL/分でエタノールを流すことができるが、必須ではない。次に、加熱ジャケット内の温度を37~40℃に上げ、圧力を3バール/分の速度で110~115バールまで上げた。エタノールの回収率が1ml/分未満になるまで、37~40℃及び110バールで3~4時間(最大8)。CO2を、10℃で測定しておよそ6mL/分の速度で容器に流す。流した後、圧力を0.5~数時間の間ゆっくりと解放した。超臨界乾燥エアロゲルの重量は、約1.9kgであった。
【0148】
実施例2.およそ80%のカプセル化された殺生物剤(CuP)を含むエアロゲルの調製
1.溶液1:Dynasylan M又は純粋なTMOS(テトラメチルオルトシリケート)のような0.96 kgの予備凝縮TMOS、3.2kgのエタノール及び1.77kgの銅ピリチオンを10リットルの容器内で混合し、パドルミキサーで均質になるまで激しく攪拌した。
2.溶液2:0.64kgのエタノール、0.32kgの水、及び10mlのアンモニア溶液(濃縮)を混合する。
3.溶液2を、(1)と同じ混合条件で、500rpmで10~25分間、溶液1に加える。ゲル化の兆候がおよそ15分で出現するまで、混合速度を下げる(100rpm)。ゲル化時間は、およそ30分である。
4.ゲルをプラスチック容器に3~5日間保管し、その後抽出装置(複数可)に移す。
3)からの湿潤ゲルをより小さい断片に切断し、エタノール下で5又は10Lの圧力容器(両端に加熱ジャケット及び金属フリットを装備したフローリアクター)に移す。ゲルには0.5mL/分でエタノールを流すことができるが、必須ではない。次に、加熱ジャケット内の温度を37~40℃に上げ、圧力を3バール/分の速度で110~115バールまで上げた。エタノールの回収率が1ml/分未満になるまで、37~40℃及び110バールで3~4時間(最大8)。CO2を、10℃で測定しておよそ6mL/分の速度で容器に流す。流した後、圧力を0.5~数時間の間ゆっくりと解放した。超臨界乾燥エアロゲルの重量は、約2.2kgであった。
【0149】
実施例3.予備凝縮TMOSからのおよそ80%のカプセル化されたZnPを含むエアロゲルの調製
1.溶液1:10.5gの予備凝縮TMOS、5.2gのMTMS及び45gのエタノールを、三角フラスコ内にてマグネチックスターラーでおよそ15分間撹拌した。混合中に30.0gのジンクピリチオンを加えた。溶液をさらに15分間混合した。
2.溶液2:18gのエタノール、1.5gの水、及び300μlのアンモニア溶液(濃縮)を混合する。
3.マグネチックスターラーで全速(1500RPM)で混合している間に、溶液2を溶液1に加えた。さらに2~5分間混合した後、白色の不透明な溶液をブルーキャップボトルに移した。およそ45分後、ゲル化が起こり、得られたゲルをエタノール中で室温で2~3日間エージングさせた後、乾燥させた。
4.3)からの湿潤ゲルをより小さい断片に切断し、エタノール下で5又は10Lの圧力容器(両端に加熱ジャケット及び金属フリットを装備したフローリアクター)に移す。ゲルには0.5mL/分でエタノールを流すことができるが、必須ではない。次に、加熱ジャケット内の温度を37~40℃に上げ、圧力を3バール/分の速度で110~115バールまで上げた。エタノールの回収率が1ml/分未満になるまで、37~40℃及び110バールで3~4時間(最大8)。CO2を、10℃で測定しておよそ6mL/分の速度で容器に流す。流した後、圧力を0.5~数時間の間ゆっくりと解放した。超臨界乾燥エアロゲルの重量は、37.5gであった。
【0150】
実施例3.a.予備凝縮TEOSからのおよそ76%のカプセル化されたZnPを含むエアロゲルの調製
1.溶液1:33.16gの予備凝縮TMOS(又は純粋なTEOS)及び93gのエタノールを、三角フラスコ内にてマグネチックスターラーでおよそ15分間撹拌した。混合中に40.25gのジンクピリチオンを加えた。溶液をさらに15分間混合した。
2.溶液2:36gのエタノール、74gの水、2.8gの触媒ベース(1.852gのNH4Fを秤量し、100mLの水に加える。20.50g(22.78mL)の水酸化アンモニウム溶液を加える。後で再利用できるように、これをボトルに保管する。これが混合「触媒ベース」である)。
3.マグネチックスターラーで全速で混合している間に、溶液2を溶液1に加えた。さらに8~15分間混合した後、白色の不透明な溶液をブルーキャップボトルに移した。およそ15分後、ゲル化が起こり、得られたゲルをエタノール中で3~5日間エージングさせた後、乾燥させた。
4.3)からの湿潤ゲルをより小さい断片に切断し、エタノール下で0.5Lの圧力容器(両端に加熱ジャケット及び金属フリットを装備した0.5Lフローリアクター)に移した。ゲルには0.5mL/分で0.5Lのエタノールを流すことができるが、必須ではない。次に、加熱ジャケット内の温度を37~40℃に上げ、圧力を3バール/分の速度で100バールまで上げた。およそ40℃及び100バールで4時間後、2.5kgのCO2を約6mL/分の速度で容器に流した。流した後、圧力を1時間かけてゆっくりと解放した。超臨界乾燥エアロゲルの重量は、およそ53gであった。
【0151】
実施例3.b予備凝縮TEOS及びMTMSからのおよそ76%のカプセル化されたZnPを含むエアロゲルの調製
1.溶液1:21.3gの予備凝縮TMOS(又は純粋なTEOS)、11.86gのMTMS及び93gのエタノールを、三角フラスコ内にてマグネチックスターラーでおよそ15分間撹拌した。混合中に40.25gのジンクピリチオンを加えた。溶液をさらに15分間混合した。
2.溶液2:36gのエタノール、74gの水、2.84gの触媒ベース(1.852gのNH4Fを秤量し、100mLの水に加える。20.50g(22.78mL)の水酸化アンモニウム溶液を加える。後で再利用できるように、これをボトルに保管する。これが「触媒ベース」である)、及び混合する。
3.マグネチックスターラーで全速で混合している間に、溶液2を溶液1に加えた。さらに8~15分間混合した後、白色の不透明な溶液をブルーキャップボトルに移した。およそ104分後、ゲル化が起こり、得られたゲルをエタノール中で3~5日間エージングさせた後、乾燥させた。
4.3)からの湿潤ゲルをより小さい断片に切断し、エタノール下で0.5Lの圧力容器(両端に加熱ジャケット及び金属フリットを装備した0.5Lフローリアクター)に移した。ゲルには0.5mL/分で1/2Lのエタノールを流すことができるが、必須ではない。次に、加熱ジャケット内の温度を37~40℃に上げ、圧力を3バール/分の速度で100バールまで上げた。およそ37~40℃及び100バールで4時間後、2.5kgのCO2を約6mL/分の速度で容器に流した。流した後、圧力を1時間かけてゆっくりと解放した。超臨界乾燥エアロゲルの重量は、およそ53gであった。
【0152】
実施例4.予備凝縮TMOSからのカプセル化されたジウロンを含むエアロゲルの調製
1.溶液1:10.5gの予備凝縮TMOS、5.2gのMTMS及び45gのエタノールの混合物を、三角フラスコ内にてマグネチックスターラーで15分間撹拌する。混合中に12gのジウロンを加えた。溶液をさらに15分間混合した。
2.溶液2:18gのエタノール、1.5gの水、及び0.8gのアンモニア溶液を混合する。
3.マグネチックスターラーで全速(1500RPM)で混合している間に、溶液2を溶液1に加えた。さらに2~5分間混合した後、白色の不透明な溶液をブルーキャップボトルに移した。およそ0.5時間後、ゲル化が起こり、得られたゲルをエタノール中で室温で室温で2~3日間エージングさせた後、乾燥させた。
4.3)からの湿ったゲルをより小さい断片に切断し、0.5Lの圧力容器に移した。次に、加熱ジャケット内の温度を37~40℃に上げ、圧力を3バール/分の速度で100バールまで上げた。37~40℃及び100バールで4時間後、2.5kgのCO2を、10℃で測定した約6mL/分の速度で容器に流した。流した後、圧力を1時間かけてゆっくりと解放した。超臨界乾燥エアロゲルの重量は約20gであり、これはおよそ60重量%のジウロンに相当する。
【0153】
実施例4.b.予備凝縮TEOSからのカプセル化されたジウロンを含むエアロゲルの調製
1.溶液1:10.72gの予備凝縮TEOS、6.09gのMTMS及び28.45gのエタノールの混合物を、三角フラスコ内にてマグネチックスターラーで15分間撹拌する。混合中に12.29gのジウロンを加えた。溶液をさらに15分間混合した。
2.溶液2:28.45gのエタノール、22.95gの水、1.19gの原液ベース(1.852gのNH4Fを秤量し、100mLの水に加える。20.50g(22.78mL)の水酸化アンモニウム溶液を加える。後で再利用できるように、これをボトルに保管する。これが「触媒ベース」である)を混合する。
3.マグネチックスターラーで全速で混合している間に、溶液2を溶液1に加えた。およそ40分後、ゲル化が起こり、得られたゲルをエタノール中でおよそ3日間の乾燥の間エージングさせた。
4.3)からの湿潤ゲルの試料を-80℃及び18℃でフリーズドライさせた。両方の試料を、Mercury Intrusionポロシメトリーによって分析する。
3)からの残りの湿潤ゲルをより細かく切断し、エタノール下で0.5Lの圧力容器(両端に加熱ジャケット及び金属フリットを装備した0.5Lフローリアクター)に移した。次に、加熱ジャケット内の温度を37~40℃に上げ、圧力を3バール/分の速度で100バールまで上げた。37~40℃及び100バールで4時間後、2.5kgのCO2を、10℃で測定した約6mL/分の速度で容器に流した。流した後、圧力を1時間かけてゆっくりと解放した。超臨界乾燥エアロゲルの重量は約35gであり、これはおよそ65重量%のジウロンに相当する。
【0154】
実施例5.予備凝縮TMOS又はTEOSからのおよそ75%のカプセル化されたIPBCを含むエアロゲルの調製
1.溶液1:14gの予備縮合TMOS又はTEOS、7gのMTMS及び60gのエタノールの混合物を、三角フラスコ内にてマグネチックスターラーで15分間撹拌した。混合中に35.0gのIPBC(3-ヨード-2-プロピニルブチルカルバメート)を加えた。溶液をさらに15分間混合した。
2.溶液2:24gのエタノール、2gの水、及び1.9mlのアンモニア溶液(濃縮)を混合する。
3.マグネチックスターラーで全速(1500RPM)で混合している間に、溶液2を溶液1に滴下する。さらに2分間混合した後、白色の不透明な溶液をブルーキャップボトルに移す。およそ180分後、ゲル化が起こり、得られたゲルをエタノール中で室温で2~3日間エージングさせた後、乾燥させる。アンモニア溶液の量を1gに減らして、ゲル化時間を延長することができる。
4.3)からの湿潤ゲルをより細かく切断し、エタノール(又は高級アルコール)下で0.5Lの圧力容器(両端に加熱ジャケット及び金属フリットを装備した0.5Lフローリアクター)に移す。そこで、ゲルに0.5Lのエタノールを0.5mL/分で流した。次に、加熱ジャケット内の温度を37~40℃に上げ、圧力を3バール/分の速度で110バールまで上げる。40℃及び110バールで4時間後、2.5kgのCO2を、10℃で測定した約6mL/分の速度で容器に流す。流した後、圧力を0.5~数時間かけてゆっくりと解放する。超臨界乾燥エアロゲルの収量:およそ47g(およそ75w/w%のIPBCを含有)。
【0155】
実施例5.a.TMOS及び/又はTEOSからのおよそ75%のカプセル化されたIPBCを含むエアロゲルの調製
1.溶液1:3.1gのエタノール、60,9gの水及び1.9ml、2gの分散剤(Tegoは740Wを分散させる)及び1gの消泡剤(Foamex 1488)を混合した。15.97gのヨードカルブ(3-ヨード-2-プロピニルブチルカルバメート)を加え、5分間撹拌する。
2.溶液2:14gのTMOS及び14gのTEOSの混合物を、マグネチックスターラーで容器内にて5分間撹拌した。
3.マグネチックスターラーで全速で混合する溶液2を溶液1に加えた。さらに5分間混合した後。触媒溶液を加え、ゲル化が起こるまで混合する。ゲルを、冷蔵庫で2~3日間エージングさせた後、乾燥させる。
4.水の量のためにフリーズドライが好ましい。ゲル中の殺生物剤の理論上のw/w%は、およそ56w/w%である。ゲルの総量は29gであると推定されている。
【0156】
実施例5.b.TMOSからのカプセル化されたテルブトリンを含むエアロゲルの調製
1.溶液1:50gの水、3gのエタノール、2.52gの分散剤(Tegoは740Wを分散させる)及び1gの消泡剤を混合した。15gのテルブトリンを加え、5分間攪拌する。
2.溶液2:20gのTMOS(又は予備縮合されたもの)と10gのMTMSとの混合物を、マグネチックスターラーで別の容器内にて5分間撹拌した。
3.マグネチックスターラーで全速で混合している間に、溶液2を溶液1に加えた。さらに5分間混合した後、0.4gの触媒(NH4OH)を混合物に注ぐ。ゲル化の後、得られたゲルをおよそ3日間エージングさせた後、乾燥させる。アンモニア溶液の量を減らして、ゲル化時間を延長することができる。
4.水の量のためにフリーズドライが好ましい。ゲル中の殺生物剤の理論上のw/w%は、およそ56w/w%である。ゲルの総量は27gであると推定されている。
【0157】
実施例6.予備凝縮TMOSからのおよそ75%のカプセル化されたDCOITを含むエアロゲルの調製
1.溶液1:17.5gの予備縮合TMOS、3.2gのMTMS(又はDEDMS)及び60gのエタノールの混合物を、三角フラスコ内にてマグネチックスターラーで15分間撹拌した。混合中に30.0gのDCOIT(4,5-ジクロロ-2-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン)を加えた。溶液をさらに15分間混合した。
2.溶液2:24gのエタノール、2gの水、及び9mlのHClを混合する。
3.マグネチックスターラーで全速で混合している間に、溶液2を溶液1に加えた。さらに2~5分間混合した後、白色の不透明な溶液をブルーキャップボトルに移す。ゲル化が起こった後、得られたゲルをエタノール中で室温で2~3日間エージングさせた後、乾燥させる。
4.3)からの湿潤ゲルをより小さい断片に切断し、エタノール下で0.5Lの圧力容器(両端に加熱ジャケット及び金属フリットを装備した0.5Lフローリアクター)に移した。そこで、ゲルに0.5Lのエタノールを0.5mL/分で流す。次に、加熱ジャケット内の温度を37~40℃に上げ、圧力を3バール/分の速度で90バールに上げる。35℃及び90バールで4時間後、2.5kgのCO2を、10℃で測定した約6mL/分の速度で容器に流す。流した後、圧力を0.5~数時間かけてゆっくりと解放する。超臨界乾燥エアロゲルの収量:およそ40g(およそ75w/w%のDCOITを含有)。
【0158】
実施例7.予備凝縮TMOS/TEOSからのカプセル化されたトリルフルアニドを含むエアロゲルの調製
1.溶液1:50gの水、3gのエタノール、2.52gの分散剤(Tegoは740Wを分散させる)及び1gの消泡剤を混合した。15gのトリルフルアニドを加え、5分間攪拌する。
2.溶液2:20gのTMOS(又は予備縮合されたもの)と10gのMTMSとの混合物を、マグネチックスターラーで別の容器内にて5分間撹拌した。
3.マグネチックスターラーで全速で混合している間に、溶液2を溶液1に加えた。さらに5分間混合した後、0.4gの触媒(NH4OH)を混合物に注ぐ。ゲル化の後、得られたゲルをおよそ3日間エージングさせた後、乾燥させる。アンモニア溶液の量を減らして、ゲル化時間を延長することができる。
水の量のためにフリーズドライが好ましい。ゲル中の殺生物剤の理論上のw/w%は、およそ56w/w%である。ゲルの総量は27gであると推定されている。
【0159】
実施例8.水銀ポロシメトリー測定
背景:
【0160】
水銀圧入ポロシメトリーでは、充填エアロゲルの乾燥試料を容器に入れ、次にそれを排出して、汚染ガス及び蒸気(通常は水)を除去する。容器がまだ排気されている間、水銀で容器を満たすことができる。これにより、固体、非湿潤性液体(水銀)、及び水銀蒸気で構成されるシステムが作製される。次の工程では、圧力が周囲に向かって増加する。これにより、水銀がエアロゲル試料のより大きな開口部に入り、その量が容積変化に反映される。次に、試料コンテナを圧力容器に入れ、加圧システムに取り付ける。これにより、システムの圧力を商用機器の一般的な最大値である約60,000psi(414MPa)まで上げることができる。これにより、水銀が直径約0.003μmの小さな細孔に押し込まれる。細孔の形状及びそれを定量化するために採用されるモデルに関係なく、エアロゲル試料の相互接続された細孔に押し込まれる水銀の量は、圧力が増加するにつれて増加する。水銀圧入は、空のエアロゲルの細孔構造の分析には適していない。これは、それらの固体フレームが高い圧縮力によって崩壊する場合があるからである。
【0161】
水銀圧入ポロシメトリーは、エアロゲルの細孔構造の多くの態様、特に、試料の空隙(空)スペースの体積を試料の総体積で割ったものとして定義される多孔度(%)に関する情報を提供する。また、試料の相互接続された多孔質部分の測定値である圧入量(ml/g)である。
【0162】
実施例8a.ZnP含有エアロゲルの測定
本実験では、すべて75%のZnPを含有する5つの異なるエアロゲル試料(1A、1B、1C、2A、及び2B)を、様々な細孔関連パラメーターについて水銀圧入ポロシメトリーによって試験した。試料1A、1B及び1Cは、様々なプロセス条件下で通常のケイ酸塩を使用して調製し、試料2A及び2Bは、予備凝縮TMOSを使用して調製した。
【0163】
通常のテトラアルコキシシラン又は予備縮合シリケートのいずれかを使用して生成されたエアロゲルの差異を定義する場合、嵩密度と圧入体積の両方が非常に記述的であることが判明した。
図7を参照のこと。
【0164】
実施例8aで実施された実験から、予備凝縮TMOSで調製されたZnP含有エアロゲルは、通常のシリケートから生成された同様のエアロゲルよりも著しく低い嵩密度及び著しく高い圧入容積を有すると結論付けることができる。一方、2種類のゲルの多孔率及びオイル数は同様の傾向を示さない。
【0165】
例8b.他の殺生物剤を含有するエアロゲルの測定
すべての試料について、カプセル化された殺生物剤の含有量を、熱重量分析(TGA)測定によって評価した。ZnP及びCuPについては、エアロゲル内に捕捉される予定の殺生物剤の量と、TGAによって測定した場合にエアロゲルに実際に存在する量との間に良好な一致が見られた(予定の75%に対して、それぞれ77%及び76%)。
【0166】
方法特徴評価用エアロゲル
ゲル特性
水銀圧入分析
高圧水銀(Hg)圧入分析は、MicromeriticsのAutopore V装置(初期測定:Autopore IVモデル9520又は同様のもの)で実行した。試料は、338μm~6.6nmの孔径スキャンに相当する0.5psia~30000psiaの圧力範囲で測定した。
1.すべての試料を、粉末試料を分析するために特別に設計された針入度計に充填した(つまり、容量5ml、キャピラリーステム容量1.13ml)。針入度計に注がれた試料の量は、20%の容量ステム使用を達成するのに十分であり、これはデータのより良い解像度を保証する。
2.分析の前に、試料を含む針入度計を、真空下で50μmHg未満の設定値限界まで脱気処理した。次に、試料を2つの異なる操作モードで分析した:低圧(最大40psia、ポイント数17)と高圧(最大30000psia、ポイント数32)。
3.低圧分析の完了後、Hg及び充填層を含む針入度計が再度秤量され、その値がソフトウェア入力として使用されて、嵩密度(すなわち粒子間多孔率)が決定される。
4.次に、針入度計を高圧ポートに配置し、高圧をかけながら、見掛け密度に関連する粒子内多孔率を測定した。
5.孔径は、ウォッシュバーン(Washburn)式を使用して、接触角(θ)を130度、水銀表面張力(γ)の値を0.48J/m2と仮定して計算した。最後に、データの要約が装置のソフトウェアによって表示される。
【0167】
オイル数
DIN53155/ISO587/5に記載の方法を使用して、生成されたゲルのオイル吸収値を測定した。オイル吸収値は、一定重量の顔料を完全に湿らせて、機械的に混合したときに固いペーストを形成するために必要な精製亜麻仁油の量(すなわち、ちょうど100gの顔料を飽和させるのに必要なオイルのグラム数)である。この値は定性的であると見なされるべきであり、予備的なミキサー操作に関連して意味がある。この値は、臨界顔料容積濃度の計算にも使用される。この場合、測定値は、表面積の湿潤と多孔質構造の浸透の組み合わせになる。
【0168】
吸水率
少量(およそ0.2グラム)の試料を小さなシャーレに秤量し、底に青いシリカゲルが入ったデシケーターに入れ、気候室に入れる。
1.通常4~6日後に安定した重量が得られるまで、試料の重量損失が記録され、乾燥重量が記録される。
2.乾燥した試料を、底に水道水が入ったデシケーター(およそ86%RH)に入れる。通常4~6日後に安定した重量が得られるまで、試料の増加した重量が記録される。
【0169】
増加した重量が計算される。これは、細孔容積=(飽和した試料の重量-乾燥試料の重量)/水の密度として表すことができる。
試験はデュプロで23±2℃で実行される。
【0170】
BET
BET(Brunauer, Emmett and Teller)分析により、孔径分布を含む試料の比表面積が測定される。粉末の比表面積は、固体の表面へのガスの物理吸着及び表面の単分子層に対応する吸着ガスの量を計算することによって決定される。物理吸着は、吸着ガス分子と試験粉末の吸着表面積との間の比較的弱い力(ファンデルワールス力)に起因する。測定は通常、液体窒素の温度で行われる。吸着されたガスの量は、容積測定又は連続フロー法によって測定することができる。この方法は、ガスが細孔と周囲の容積の間で連通することを前提としていることに注意されたい。実際にはこれは、細孔が閉じた空洞であってはならないことを意味する。この試験に使用されたBET装置:Micromeritics VacPrep又は同等の乾燥ステーションを備えたMicromeritics Geminiシリーズ。細孔容積>4×10-6cm3/gが測定される。
【0171】
熱重量(TGA)測定
試料をMettler Toledo TGA 40で分析した。試料(通常は10~25mg)をるつぼに入れ、秤量する。温度は、室温から800℃まで10℃/分で上昇させる。重量損失が記録される。溶媒は通常250℃になる前に消失し、ゲル作製に関連して通常150℃になる前に消失する。ポリマーを含む他の有機材料は450℃になる前に消失する。800℃では通常無機材料のみが残る。装置の機能制御はインジウムを用いて行い、温度プロフィールが装置の校正値内にあることを確認する。重量損失は、ソフトウェアプログラムSTAReバージョン7.01を使用して評価される。
【0172】
熱伝導率測定
試験方法
ISO 22007-1(2008):一般原則-線熱源法に準拠
【0173】
ASTM D 5930-0:非定常線熱源法によるプラスチックの熱伝導率の試験方法に準拠。測定は、試験試料に埋め込まれた線熱源から既知の距離で温度変化を測定する非定常技術である熱線法(ニードルプローブ法)のバリエーションに基づいている。
【0174】
装置
ISOMET 2114熱伝達分析装置-ニードルプローブ(0.015~0.050[W/m K])を装備。
ISOMET 2114は、気泡絶縁材料、プラスチック、液体、粉末状材料、及び土壌など、様々な等方性材料の熱伝達特性を直接測定するための携帯型ハンドヘルド測定器である。
【0175】
試験条件
およそ25℃の平均測定温度。
測定は、各測定の間に10分間の休止を挟んで、一連の6回の測定で行った。試験結果を
図10に示す。
【0176】
塗料及びワニスの隠蔽力(不透明度)の決定
規格:ISO 6504-3:2019(EN)隠蔽力の決定-パート3:方法C(白黒チャート)、一定の拡散率での明るい色の塗料のコントラスト比の決定(ISO 6504-3:2006)
【0177】
装置:
カラーガイド45/0;BYK Gardner
可変ギャブを備えたアプリケーター
黒白チャートのデータ:139×254mm-フォーム2A-不透明度;The Leneta Company
【0178】
方法(隠蔽力):
本発明の充填エアロゲルの各試料を、バインダー溶液中で粉砕し、2つの異なる層の厚さで適用した。異なる充填エアロゲルを比較すると、バインダーに対する充填エアロゲルの濃度は一定に保たれていた。乾燥後、黒色(B)及び白色(W)でコーティングされたチャートごとに隠蔽力を計算した。
【0179】
試料を、23±2℃及び50±5%の相対湿度で、様々なフィルム層厚の秤量された黒/白カートに適用する。少なくとも16時間乾燥した後、三刺激値Y10の測定を行うことができる。
【0180】
各コーティングされたチャートの三刺激値(色を表すために一緒に使用され、混合して考慮される色と同じ視覚的感覚を与えることができる3つの参照色の量である3つの値)を、各チャートの白領域及び黒色領域の両方の3つの位置、並びに低コーティング及び高コーティングのそれぞれの平均三刺激値
【数1】
で測定する。次に、所与の膜厚及び乾燥物質濃度量で、コーティングされたチャートごとに隠蔽力を計算する。次に、最終的な
【数2】
として計算する。
【0181】
試験結果
次の3つの塗料処方物を用意した。
【0182】
【0183】
続いて、上記のように塗料の隠蔽力を試験した。試験結果を以下の表に示す。
【0184】
【0185】
上記の試験結果から分かるように、本発明のエアロゲルを含むすべての塗料は、特に充填ゲルに関して、隠蔽力を有していた。
【0186】
防汚塗料組成物
塗料フィルムの吸水率は、浸出層、活性化合物の浸出、侵食速度、及び故に防汚特性に関連する重要なパラメーターである。吸水率は、色素沈着の選択、選択したゲル、及びゲルの量に影響される。エアロゲルは非常に多孔性であり、有効な測定を実行する前に、様々な成分間の平衡を達成する必要がある。塗料組成物では、バインダーシステムが、エアロゲルに浸透し、成分間の平衡が達成されるまで吸水率を低下させ、エアロゲル粒子が乾燥した塗料層にしっかりと固定され、水への暴露によって時間とともに洗い流されないことを保証することが示されている。シーラント組成物では、同様のメカニズムが作動可能であると考えられる。(水銀ポロメシトリーによって測定される)高い圧入容積値を有するゲルは、バインダーシステムによってより容易に浸透することができると想定される。