(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】外科用顕微鏡を操作する方法及び外科用顕微鏡
(51)【国際特許分類】
G06F 3/01 20060101AFI20241125BHJP
【FI】
G06F3/01 510
(21)【出願番号】P 2022540575
(86)(22)【出願日】2020-12-29
(86)【国際出願番号】 EP2020087976
(87)【国際公開番号】W WO2021136777
(87)【国際公開日】2021-07-08
【審査請求日】2022-07-13
【審判番号】
【審判請求日】2024-03-08
(32)【優先日】2019-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502303382
【氏名又は名称】カール ツアイス メディテック アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】尤 放
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド ドゥベルスタイン
(72)【発明者】
【氏名】ステファン ザウアー
【合議体】
【審判長】山澤 宏
【審判官】村松 貴士
【審判官】野崎 大進
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-134876(JP,A)
【文献】特開2018-198685(JP,A)
【文献】特開2015-192697(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F3/01
G06F3/03 -3/039
G06F3/041-3/048
G06F3/14 -3/153
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科用顕微鏡を操作する方法であって、前記外科用顕微鏡が、
視野を有する少なくとも1つのカメラと、
前記少なくとも1つのカメラ用の支持体であって、対象物に対して前記少なくとも1つのカメラを位置決めするための少なくとも1つのアクチュエータを含む、支持体と、
前記少なくとも1つのカメラによって記録された画像を表示するように構成されたディスプレイと
を含み、前記方法が、
ユーザの身体部分の運動量を検出することと、
前記ユーザの前記身体部分の前記検出された運動に基づいて前記カメラの運動量を決定することと、
前記決定された運動量だけ前記カメラを移動することと
を含む、方法であり、
前記カメラの前記決定された運動量が、前記カメラと前記視野を結ぶ線を横断する方向における並進運動量を含み、
前記カメラの前記運動量を決定すること
は以下のように実行される、すなわち、
(1)
前記ディスプレイ上に表示される前記カメラの前記視野内の対象物の画像の倍率が第1の倍率であ
り、
前記ディスプレイからの前記ユーザの前記身体部分の距離が第1の身体部分距離であ
り、
前記カメラの前記視野からの前記カメラの距離が第1のカメラ距離であ
り、
かつ、
前記ディスプレイに平行な方向における前記ユーザの前記身体部分の前記検出された運動量が所定の検出量であるとき
には、
前記カメラの前記決定された並進運動量は、第1の決定量であり、
(2)
前記ディスプレイ上に表示される前記カメラの前記視野内の前記対象物の前記画像の前記倍率が、前記第1の倍率より大きい第2の倍率であ
り、
前記ディスプレイからの前記ユーザの前記身体部分の前記距離が第1の
身体部分距離であ
り、
前記カメラの前記視野からの前記カメラの前記距離が前記第1のカメラ距離であ
り、
かつ、
前記ディスプレイに平行な前記方向における前記ユーザの前記身体部分の前記検出された運動量が前記所定の検出量であるとき
には、
前記カメラの前記決定された並進運動量は、前記第1の決定量より小さい第2の決定量であり、
(3)
前記ディスプレイ上に表示される前記カメラの前記視野内の前記対象物の前記画像の前記倍率が前記第1の倍率であ
り、
前記ディスプレイからの前記ユーザの前記身体部分の前記距離が、前記第1の身体部分距離より短い第2の身体部分距離であ
り、
前記カメラの前記視野からの前記カメラの前記距離が前記第1のカメラ距離であ
り、
かつ、
前記ディスプレイに平行な前記方向における前記ユーザの前記身体部分の前記検出された運動量が前記所定の検出量であるとき
には、
前記カメラの前記決定された並進運動量は、前記第1の決定量より小さい第3の決定量であり、
(4)
前記ディスプレイ上に表示される前記カメラの前記視野内の前記対象物の前記画像の前記倍率が前記第1の倍率であ
り、
前記ディスプレイからの前記ユーザの前記身体部分の前記距離が前記第1の身体部分距離であ
り、
前記カメラの前記視野からの前記カメラの前記距離が、前記第1のカメラ距離より短い第2のカメラ距離であ
り、
かつ、
前記ディスプレイに平行な前記方向における前記ユーザの前記身体部分の前記検出された運動量が前記所定の検出量であるとき
には、
前記カメラの前記決定された並進運動量は、前記第1の決定量より小さい第4の決定量である
ように実行される、方法。
【請求項2】
前記決定された運動量だけ前記カメラを移動することが、前記少なくとも1つのカメラの向きを一定に維持しながら、前記決定された並進運動量だけ前記カメラを移動することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
外科用顕微鏡を操作する方法であって、前記外科用顕微鏡が、
視野を有する少なくとも1つのカメラと、
前記少なくとも1つのカメラ用の支持体であって、対象物に対して前記少なくとも1つのカメラを位置決めするための少なくとも1つのアクチュエータを含む、支持体と、
前記少なくとも1つのカメラによって記録された画像を表示するように構成されたディスプレイと
を含み、前記方法が、
ユーザの身体部分の運動量を検出することと、
前記ユーザの前記身体部分の前記検出された運動に基づいて前記カメラの運動量を決定することと、
前記決定された運動量だけ前記カメラを移動することと
を含む、方法であり、
前記カメラの前記決定された運動量が、前記カメラの回転運動量を含み、
前記カメラの前記運動量を決定すること
は以下のように実行される、すなわち、
(1)
前記ディスプレイ上に表示される前記カメラの前記視野内の対象物の画像の倍率が第1の倍率であ
り、
前記ディスプレイからの前記ユーザの前記身体部分の距離が第1の身体部分距離であ
り、
前記カメラの前記視野からの前記カメラの距離が第1のカメラ距離であ
り、
かつ、
前記ユーザの前記身体部分の前記検出された回転運動量が所定の検出量であるとき
には、
前記カメラの前記決定された回転運動量は、第1の決定量であり、
(2)
前記ディスプレイ上に表示される前記カメラの前記視野内の前記対象物の前記画像の前記倍率が、前記第1の倍率より大きい第2の倍率であ
り、
前記ディスプレイからの前記ユーザの前記身体部分の前記距離が第1の
身体部分距離であ
り、
前記カメラの前記視野からの前記カメラの前記距離が前記第1のカメラ距離であ
り、
かつ、
前記ユーザの前記身体部分の前記検出された回転運動量が前記所定の検出量であるとき
には、
前記カメラの前記決定された回転運動量は、前記第1の決定量より小さい第2の決定量であり、
(3)
前記ディスプレイ上に表示される前記カメラの前記視野内の前記対象物の前記画像の前記倍率が前記第1の倍率であ
り、
前記ディスプレイからの前記ユーザの前記身体部分の前記距離が、前記第1の身体部分距離より短い第2の身体部分距離であ
り、
前記カメラの前記視野からの前記カメラの前記距離が前記第1のカメラ距離であ
り、
かつ、
前記ユーザの前記身体部分の前記検出された回転運動量が前記所定の検出量であるとき
には、
前記カメラの前記決定された回転運動量は、前記第1の決定量より小さい第3の決定量であり、
(4)
前記ディスプレイ上に表示される前記カメラの前記視野内の前記対象物の前記画像の前記倍率が前記第1の倍率であ
り、
前記ディスプレイからの前記ユーザの前記身体部分の前記距離が前記第1の身体部分距離であ
り、
前記カメラの前記視野からの前記カメラの前記距離が、前記第1のカメラ距離より短い第2のカメラ距離であ
り、
かつ、
前記ユーザの前記身体部分の前記検出された回転運動量が前記所定の検出量であるとき
には、
前記カメラの前記決定された回転運動量は、前記第1の決定量より小さい第4の決定量である
ように実行される、方法。
【請求項4】
前記カメラの前記決定された運動量が、前記カメラの回転運動量を含み、
前記カメラの前記運動量を決定することが、前記決定された運動量だけ前記カメラを移動する前に前記カメラの前記視野内に位置する対象物の部分が、前記決定された運動量だけ前記カメラを移動することが完了したときにも前記カメラの前記視野内に位置するようにさらに実行される、請求
項3に記載の方法。
【請求項5】
開始コマンドを検出することをさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法であって、
前記決定された運動量だけ前記カメラを移動することが、前記開始コマンドが検出された後にのみ実行される、方法。
【請求項6】
停止コマンドを検出することをさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法であって、
前記カメラを移動することが、前記停止コマンドが検出されるまでに限って実行される、方法。
【請求項7】
顕微鏡システムを操作する方法であって、前記顕微鏡システムが、
視野及びズームレンズを有する少なくとも1つのカメラと、
前記少なくとも1つのカメラ用の支持体であって、対象物に対して前記少なくとも1つのカメラを位置決めするための少なくとも1つのアクチュエータを含む、支持体と、
画像倍率を使用して前記少なくとも1つのカメラによって記録された対象物の画像を表示するように構成されたディスプレイと
を含み、前記方法が、
ユーザの身体部分の運動量を検出することと、
前記ユーザの前記身体部分の前記検出された運動に基づいて前記画像倍率の変化量を決定することと、
前記画像倍率の前記決定された変化量だけ前記画像倍率を変化させることと
を含む、方法であり、
前記画像倍率の前記変化量を決定すること
は以下のように実行される、すなわち、
(1)
前記ディスプレイ上に表示される前記カメラの前記視野内の対象物の画像の倍率が第1の倍率であ
り、
前記ディスプレイからの前記ユーザの前記身体部分の距離が第1の身体部分距離であ
り、
前記カメラの前記視野からの前記カメラの距離が第1のカメラ距離であ
り、
かつ、
前記ディスプレイに垂直な方向における前記ユーザの前記身体部分の前記検出された運動量が所定の検出量であるとき
には、
前記画像倍率の前記決定された変化量は、第1の決定量であり、
(2)前記ディスプレイ上に表示される前記カメラの前記視野内の前記対象物の前記画像の前記倍率が、前記第1の倍率より大きい第2の倍率であ
り、
前記ディスプレイからの前記ユーザの前記身体部分の前記距離が前記第1の身体部分距離であ
り、
前記カメラの前記視野からの前記カメラの前記距離が前記第1のカメラ距離であ
り、
かつ、
前記ディスプレイに垂直な前記方向における前記ユーザの前記身体部分の前記検出された運動量が前記所定の検出量であるとき
には、
前記画像倍率の前記決定された変化量は、前記第1の決定量より小さい第2の決定量であり、
(3)前記ディスプレイ上に表示される前記カメラの前記視野内の前記対象物の前記画像の前記倍率が前記第1の倍率であ
り、
前記ディスプレイからの前記ユーザの前記身体部分の前記距離が、前記第1の身体部分距離より短
い第2の身体部分距離であ
り、
前記カメラの前記視野からの前記カメラの前記距離が前記第1のカメラ距離であ
り、
かつ、
前記ディスプレイに垂直な前記方向における前記ユーザの前記身体部分の前記検出された運動量が前記所定の検出量であるとき
には、
前記画像倍率の前記決定された変化量は、前記第1の決定量より小さい第3の決定量であり、
(4)
前記ディスプレイ上に表示される前記カメラの前記視野内の前記対象物の前記画像の前記倍率が前記第1の倍率であ
り、
前記ディスプレイからの前記ユーザの前記身体部分の前記距離が前記第1の身体部分距離であ
り、
前記カメラの前記視野からの前記カメラの前記距離が、前記第1のカメラ距離より短い第2のカメラ距離であ
り、
かつ、
前記ディスプレイに垂直な前記方向における前記ユーザの前記身体部分の前記検出された運動量が前記所定の検出量であるとき
には、
前記画像倍率の前記決定された変化量は、前記第1の決定量より小さい第4の決定量である
ように実行される、方法。
【請求項8】
前記ディスプレイに垂直な前記方向における前記ユーザの前記身体部分の前記運動が、前記ディスプレイに向かう方向への前記ユーザの前記身体部分の運動を含む
場合には、前記画像倍率の前記決定された変化量は、前記画像倍率の増加である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ディスプレイに垂直な前記方向における前記ユーザの前記身体部分の前記運動が、前記ディスプレイから離れる方向への前記ユーザの前記身体部分の運動を含む
場合には、前記画像倍率の前記決定された変化量は、前記画像倍率の減少である、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記画像倍率を変化させることが、前記対象物に向かう方向に前記カメラを移動すること及び前記カメラの前記ズームレンズの倍率を増加することの少なくとも1つを含む
場合には、前記画像倍率の前記変化量は、前記画像倍率の増加である、請求項7~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記画像倍率を変化させることが、前記対象物から離れる方向に前記カメラを移動すること及び前記カメラの前記ズームレンズの倍率を減少することの少なくとも1つを含む
場合には、前記画像倍率の前記変化量は、前記画像倍率の減少であり、請求項7~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
開始コマンドを検出することをさらに含む、請求項7~11のいずれか一項に記載の方法であって、
前記画像倍率の前記決定された変化量だけ前記画像倍率を変化させることが、前記開始コマンドが検出された後にのみ実行される、方法。
【請求項13】
停止コマンドを検出することをさらに含む、請求項7~12のいずれか一項に記載の方法であって、
前記画像倍率の前記決定された変化量だけ前記画像倍率を変化させることが、前記停止コマンドが検出されるまでに限って実行される、方法。
【請求項14】
前記開始コマンドが、前記ユーザが発する音声コマンド、前記ユーザによって実行されるボタンの操作及び前記ユーザのジェスチャの少なくとも1つを含む、請求項5又は12に記載の方法。
【請求項15】
前記停止コマンドが、前記ユーザが発する音声コマンド、前記ユーザによって実行されるボタンの操作及び前記ユーザのジェスチャの少なくとも1つを含む、請求項6又は13に記載の方法。
【請求項16】
前記ユーザの前記身体部分が、前記ユーザの頭部、前記ユーザの胸部及び前記ユーザの肩部の少なくとも1つを含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記少なくとも1つのカメラが、ステレオカメラである、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも1つのカメラが、2つのカメラを含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記ディスプレイが、立体画像を表示するように構成されたディスプレイである、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記ディスプレイが、
前記少なくとも1つのカメラの第1のカメラ及び第2のカメラによって記録された前記画像を処理することによって得られた前記画像を表示するスクリーンと、
ユーザが着用可能な1組のメガネであって、前記第1のカメラによって記録された前記画像を処理することによって得られた
、前記スクリーンに表示
された前記画像を彼又は彼女の左の眼で見ること及び前記第2のカメラによって記録された前記画像を処理することによって得られた
、前記スクリーンに表示
された前記画像を彼又は彼女の右の眼で見ることを、前記ユーザが行えるようにするための1組のメガネと
を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記少なくとも1つのカメラと、
前記少なくとも1つのカメラ用の支持体であって、対象物に対して前記少なくとも1つのカメラを位置決めするための少なくとも1つのアクチュエータを含む、支持体と、
前記少なくとも1つのカメラによって記録された画像を表示するように構成された
前記ディスプレイと、
外科用顕微鏡を使用して請求項1~
20のいずれか一項に記載の方法を実行するように構成されたコントローラと
を含む、外科用顕微鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外科用顕微鏡と、そのような外科用顕微鏡を操作する方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の外科用顕微鏡は、2つの接眼レンズを有する顕微鏡光学機器を含む顕微鏡本体を含む。顕微鏡本体は、支持体によって保持され、支持体は、並進及び回転運動によって対象物に対する顕微鏡光学機器の位置決め及び再位置決めを行えるような連結式構造を有する。これらの運動は、例えば、接眼レンズをのぞき込んでいるユーザがその手を使用して顕微鏡本体に力を加えることによって開始される。そのような外科用顕微鏡は、ユーザが永続的に接眼レンズをのぞき込む必要があり、それにより、疲労が生じ、例えば、ユーザの首に痛みをもたらす場合がある。その上、顕微鏡を再位置決めするためにその手を必要とするユーザは、現在使用している手術道具を脇に置かなければならず、手術の流れが中断される。
【0003】
最近の外科用顕微鏡は、手術中の対象物の画像を記録するためのカメラと、顕微鏡のユーザに記録画像を表示するためのディスプレイとを含む。ユーザは、もはや接眼レンズをのぞき込む必要がないため、都合の良い頭部の位置を想定して手術を実行し、ディスプレイ上の画像を観察することができる。その上、これらの顕微鏡の支持体は、支持体の連結接合部を位置決めするためのアクチュエータを含み得、その結果、カメラは、空間内の所望の場所に所望の向きで位置決めされる。所望の場所及び向きは、様々な手段によって外科用顕微鏡に入力することができる。例えば、国際公開第2015/151447A1号パンフレットは、カメラの新しい位置を決定するためにユーザの注視方向及びユーザの頭部の動きが検出される外科用顕微鏡について開示している。次いで、支持体のアクチュエータは、検出された注視方向及び頭部の動きに従ってカメラを再位置決めするように操作される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記で示される技術は、接眼レンズを有する従来の外科用顕微鏡に勝る大きな利点を提供する。しかし、カメラを位置決めするプロセスを改善できる可能性があることが判明している。
【0005】
本発明は、上記の考察を考慮に入れることによって達成されており、本発明の目的は、カメラの再位置決めを伴う手術におけるユーザ経験を改善する外科用顕微鏡と、そのような外科用顕微鏡を操作する方法とを提供することである。
【0006】
本開示の前述の及び他の有利な特徴は、添付の図面を参照して、以下の例示的な実施形態の詳細な説明からより明らかになるであろう。可能な実施形態のすべてが必ずしも本明細書で特定される利点の各々及びすべて又はいずれかを呈するとは限らないことに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】
図1の外科用顕微鏡のカメラの並進運動を示す。
【
図3】
図1の外科用顕微鏡のカメラの回転運動を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明によれば、外科用顕微鏡は、視野を有する少なくとも1つのカメラと、少なくとも1つのカメラ用の支持体であって、対象物に対して少なくとも1つのカメラを位置決めするための少なくとも1つのアクチュエータを含む、支持体と、少なくとも1つのカメラによって記録された画像を表示するように構成されたディスプレイとを含む。
【0009】
本発明の実施形態によれば、外科用顕微鏡を操作する方法は、ユーザの身体部分の運動量を検出することと、ユーザの身体部分の検出された運動に基づいてカメラの運動量を決定することと、決定された運動量だけカメラを移動することとを含む。
【0010】
本明細書の実施形態によれば、カメラの決定された運動量は、カメラと視野を結ぶ線を横断する方向における並進運動量を含む。カメラの並進運動量は、ディスプレイに平行な方向におけるユーザの身体部分の検出された運動量に依存して決定される。カメラの決定された並進運動量と、ディスプレイに平行な方向におけるユーザの身体部分の検出された運動量との間の依存性は、ディスプレイ上に表示されるカメラの視野内の対象物の画像の倍率、ディスプレイからのユーザの身体部分の距離、カメラの視野からのカメラの距離、及び、ディスプレイに平行な方向におけるユーザの身体部分の検出された運動量に依存する。
【0011】
いくつかの実施形態によれば、カメラの決定された並進運動量と、ディスプレイに平行な方向におけるユーザの身体部分の検出された運動量との間の依存性は、ディスプレイ上に表示されるカメラの視野内の対象物の画像の倍率が増加すると、カメラの決定された並進運動量が減少するように構成される。
【0012】
さらなる実施形態によれば、カメラの決定された並進運動量と、ディスプレイに平行な方向におけるユーザの身体部分の検出された運動量との間の依存性は、ディスプレイからのユーザの身体部分の距離が減少すると、カメラの決定された並進運動量が減少するように構成される。
【0013】
さらなる実施形態によれば、カメラの決定された並進運動量と、ディスプレイに平行な方向におけるユーザの身体部分の検出された運動量との間の依存性は、カメラの視野からのカメラの距離が減少すると、カメラの決定された並進運動量が減少するように構成される。
【0014】
特定の実施形態によれば、カメラの運動量を決定することは以下のように実行される、すなわち、
(1)ディスプレイ上に表示されるカメラの視野内の対象物の画像の倍率が第1の倍率であり、
ディスプレイからのユーザの身体部分の距離が第1の身体部分距離であり、
カメラの視野からのカメラの距離が第1のカメラ距離であり、かつ、
ディスプレイに平行な方向におけるユーザの身体部分の検出された運動量が所定の検出量であるとき
には、カメラの決定された並進運動量は、第1の決定量であり、
(2)ディスプレイ上に表示されるカメラの視野内の対象物の画像の倍率が、第1の倍率より大きい第2の倍率であり、
ディスプレイからのユーザの身体部分の距離が第1の身体部分距離であり、
カメラの視野からのカメラの距離が第1のカメラ距離であり、かつ、
ディスプレイに平行な方向におけるユーザの身体部分の検出された運動量が所定の検出量であるとき
には、カメラの決定された並進運動量は、第1の決定量より小さい第2の決定量であり、
(3)ディスプレイ上に表示されるカメラの視野内の対象物の画像の倍率が第1の倍率であり、
ディスプレイからのユーザの身体部分の距離が、第1の身体部分距離より短い第2の身体部分距離であり、
カメラの視野からのカメラの距離が第1のカメラ距離であり、かつ、
ディスプレイに平行な方向におけるユーザの身体部分の検出された運動量が所定の検出量であるとき
には、カメラの決定された並進運動量は、第1の決定量より小さい第3の決定量であり、
(4)ディスプレイ上に表示されるカメラの視野内の対象物の画像の倍率が第1の倍率であり、
ディスプレイからのユーザの身体部分の距離が第1の身体部分距離であり、
カメラの視野からのカメラの距離が、第1のカメラ距離より短い第2のカメラ距離であり、かつ、
ディスプレイに平行な方向におけるユーザの身体部分の検出された運動量が所定の検出量であるとき
には、カメラの決定された並進運動量は、第1の決定量より小さい第4の決定量である
ように実行される。
【0015】
いくつかの実施形態によれば、決定された運動量だけカメラを移動することは、少なくとも1つのカメラの向きを一定に維持しながら、決定された並進運動量だけカメラを移動することを含む。
【0016】
いくつかの実施形態によれば、カメラの決定された運動量は、カメラの回転運動量を含む。カメラの回転運動量は、ユーザの身体部分の検出された回転運動量に依存して決定される。カメラの決定された回転運動量と、ユーザの身体部分の検出された回転運動量との間の依存性は、ディスプレイ上に表示されるカメラの視野内の対象物の画像の倍率、ディスプレイからのユーザの身体部分の距離、カメラの視野からのカメラの距離、及び、ユーザの身体部分の検出された回転運動量に依存する。
【0017】
いくつかの実施形態によれば、カメラの決定された回転運動量と、ユーザの身体部分の検出された回転運動量との間の依存性は、ディスプレイ上に表示されるカメラの視野内の対象物の画像の倍率が増加すると、カメラの決定された回転運動量が減少するように構成される。
【0018】
さらなる実施形態によれば、カメラの決定された回転運動量と、ユーザの身体部分の検出された回転運動量との間の依存性は、ディスプレイからのユーザの身体部分の距離が減少すると、カメラの決定された回転運動量が減少するように構成される。
【0019】
さらなる実施形態によれば、カメラの決定された回転運動量と、ユーザの身体部分の検出された回転運動量との間の依存性は、カメラの視野からのカメラの距離が減少すると、カメラの決定された回転運動量が減少するように構成される。
【0020】
特定の実施形態によれば、カメラの運動量を決定することは以下のように実行される、すなわち、
(1)ディスプレイ上に表示されるカメラの視野内の対象物の画像の倍率が第1の倍率であり、
ディスプレイからのユーザの身体部分の距離が第1の身体部分距離であり、
カメラの視野からのカメラの距離が第1のカメラ距離であり、かつ、
ユーザの身体部分の検出された回転運動量が所定の検出量であるとき
には、カメラの決定された回転運動量は、第1の決定量であり、
(2)ディスプレイ上に表示されるカメラの視野内の対象物の画像の倍率が、第1の倍率より大きい第2の倍率であり、
ディスプレイからのユーザの身体部分の距離が第1の身体部分距離であり、
カメラの視野からのカメラの距離が第1のカメラ距離であり、かつ、
ユーザの身体部分の検出された回転運動量が所定の検出量であるとき
には、カメラの決定された回転運動量は、第1の決定量より小さい第2の決定量であり、
(3)ディスプレイ上に表示されるカメラの視野内の対象物の画像の倍率が第1の倍率であり、
ディスプレイからのユーザの身体部分の距離が、第1の身体部分距離より短い第2の身体部分距離であり、
カメラの視野からのカメラの距離が第1のカメラ距離であり、かつ、
ユーザの身体部分の検出された回転運動量が所定の検出量であるとき
には、カメラの決定された回転運動量は、第1の決定量より小さい第3の決定量であり、
(4)ディスプレイ上に表示されるカメラの視野内の対象物の画像の倍率が第1の倍率であり、
ディスプレイからのユーザの身体部分の距離が第1の身体部分距離であり、
カメラの視野からのカメラの距離が、第1のカメラ距離より短い第2のカメラ距離であり、かつ、
ユーザの身体部分の検出された回転運動量が所定の検出量であるとき
には、カメラの決定された回転運動量は、第1の決定量より小さい第4の決定量である
ように実行される。
【0021】
いくつかの実施形態によれば、カメラの決定された運動量は、カメラの回転運動量を含み、カメラの運動量を決定することは、決定された運動量だけカメラを移動する前にカメラの視野内に位置する対象物の部分が、決定された運動量だけカメラを移動することが完了したときにもカメラの視野内に位置するようにさらに実行される。これにより、例えば、カメラの視野の中心に位置する対象物の場所を変更することなく、カメラの視点方向を変更することができる。
【0022】
いくつかの実施形態によれば、方法は、開始コマンドを検出することを含み、決定された運動量だけカメラを移動することは、開始コマンドが検出された後にのみ実行される。
【0023】
その上、さらなる実施形態によれば、方法は、停止コマンドを検出することをさらに含み、カメラを移動することは、停止コマンドが検出されるまでに限って実行される。
【0024】
さらなる実施形態によれば、外科用顕微鏡を操作する方法は、ユーザの身体部分の運動量を検出することと、ユーザの身体部分の検出された運動に基づいて画像倍率の変化量を決定することと、画像倍率の決定された変化量だけ画像倍率を変化させることとを含む。
【0025】
本明細書の実施形態によれば、画像倍率の変化量は、ディスプレイに垂直な方向におけるユーザの身体部分の検出された運動量に依存して決定される。画像倍率の決定された変化量と、ディスプレイに垂直な方向におけるユーザの身体部分の検出された運動量との間の依存性は、ディスプレイ上に表示されるカメラの視野内の対象物の画像の倍率、ディスプレイからのユーザの身体部分の距離、カメラの視野からのカメラの距離、及び、ディスプレイに垂直な方向におけるユーザの身体部分の検出された運動量に依存する。
【0026】
いくつかの実施形態によれば、画像倍率の決定された変化量と、ディスプレイに垂直な方向におけるユーザの身体部分の検出された運動量との間の依存性は、ディスプレイ上に表示されるカメラの視野内の対象物の画像の倍率が増加すると、画像倍率の決定された変化量が減少するように構成される。
【0027】
いくつかの実施形態によれば、画像倍率の決定された変化量と、ディスプレイに垂直な方向におけるユーザの身体部分の検出された運動量との間の依存性は、ディスプレイからのユーザの身体部分の距離が減少すると、画像倍率の決定された変化量が減少するように構成される。
【0028】
いくつかの実施形態によれば、画像倍率の決定された変化量と、ディスプレイに垂直な方向におけるユーザの身体部分の検出された運動量との間の依存性は、カメラの視野からのカメラの距離が減少すると、画像倍率の決定された変化量が減少するように構成される。
【0029】
特定の実施形態によれば、画像倍率の変化量を決定することは以下のように実行される、すなわち、
(1)ディスプレイ上に表示されるカメラの視野内の対象物の画像の倍率が第1の倍率であり、
ディスプレイからのユーザの身体部分の距離が第1の身体部分距離であり、
カメラの視野からのカメラの距離が第1のカメラ距離であり、かつ、
ディスプレイに垂直な方向におけるユーザの身体部分の検出された運動量が所定の検出量であるとき
には、画像倍率の決定された変化量は、第1の決定量であり、
(2)ディスプレイ上に表示されるカメラの視野内の対象物の画像の倍率が、第1の倍率より大きい第2の倍率であり、
ディスプレイからのユーザの身体部分の距離が第1の身体部分距離であり、
カメラの視野からのカメラの距離が第1のカメラ距離であり、かつ、
ディスプレイに垂直な方向におけるユーザの身体部分の検出された運動量が所定の検出量であるとき
には、画像倍率の決定された変化量は、第1の決定量より小さい第2の決定量であり、
(3)ディスプレイ上に表示されるカメラの視野内の対象物の画像の倍率が第1の倍率であり、
ディスプレイからのユーザの身体部分の距離が、第1の身体部分距離より短い第2の身体部分距離であり、
カメラの視野からのカメラの距離が第1のカメラ距離であり、かつ、
ディスプレイに垂直な方向におけるユーザの身体部分の検出された運動量が所定の検出量であるとき
には、画像倍率の決定された変化量は、第1の決定量より小さい第3の決定量であり、
(4)ディスプレイ上に表示されるカメラの視野内の対象物の画像の倍率が第1の倍率であり、
ディスプレイからのユーザの身体部分の距離が第1の身体部分距離であり、
カメラの視野からのカメラの距離が、第1のカメラ距離より短い第2のカメラ距離であり、かつ、
ディスプレイに垂直な方向におけるユーザの身体部分の検出された運動量が所定の検出量であるとき
には、画像倍率の決定された変化量は、第1の決定量より小さい第4の決定量である
ように実行される。
【0030】
いくつかの実施形態によれば、ディスプレイに垂直な方向におけるユーザの身体部分の運動が、ディスプレイに向かう方向へのユーザの身体部分の運動を含む場合には、画像倍率の決定された変化量は、画像倍率の増加である。
【0031】
いくつかの実施形態によれば、ディスプレイに垂直な方向におけるユーザの身体部分の運動が、ディスプレイから離れる方向へのユーザの身体部分の運動を含む場合には、画像倍率の決定された変化量は、画像倍率の減少である。
【0032】
いくつかの実施形態によれば、画像倍率を変化させることが、対象物に向かう方向にカメラを移動すること及びカメラのズームレンズの倍率を増加することの少なくとも1つを含む場合には、画像倍率の変化量は、画像倍率の増加である。
【0033】
いくつかの実施形態によれば、画像倍率を変化させることが、対象物から離れる方向にカメラを移動すること及びカメラのズームレンズの倍率を減少することの少なくとも1つを含む場合には、画像倍率の変化量は、画像倍率の減少である。
【0034】
いくつかの実施形態によれば、方法は、開始コマンドを検出することをさらに含み、画像倍率の決定された変化量だけ画像倍率を変化させることは、開始コマンドが検出された後にのみ実行される。
【0035】
いくつかの実施形態によれば、方法は、停止コマンドを検出することをさらに含み、画像倍率の決定された変化量だけ画像倍率を変化させることは、停止コマンドが検出されるまでに限って実行される。
【0036】
実施形態によれば、開始コマンドは、ユーザが発する音声コマンド、ユーザによって実行されるボタンの操作及びユーザのジェスチャの少なくとも1つを含む。
【0037】
実施形態によれば、停止コマンドは、ユーザが発する音声コマンド、ユーザによって実行されるボタンの操作及びユーザのジェスチャの少なくとも1つを含む。
【0038】
いくつかの実施形態によれば、ユーザの身体部分は、ユーザの頭部、ユーザの胸部及びユーザの肩部の少なくとも1つを含む。
【0039】
いくつかの実施形態によれば、カメラは、1対のステレオ画像を記録するように構成されたステレオカメラである。例えば、少なくとも1つのカメラは、この目的のために、2つのカメラを含み得る。
【0040】
いくつかの実施形態によれば、ディスプレイは、立体画像を表示するように構成される。本明細書のいくつかの実施形態によれば、ディスプレイは、外科用顕微鏡のユーザによって保持することができる頭部装着型ディスプレイである。他の実施形態によれば、ディスプレイは、1対のステレオ画像を処理することによって得られた画像を表示するスクリーンと、ユーザが着用可能な1組のメガネであって、複数対のステレオ画像の左の画像を処理することによって得られた、スクリーンに表示された画像を左の眼で見ること及び複数対のステレオ画像の右の画像を処理することによって得られた、スクリーンに表示された画像を右の眼で見ることをユーザが行えるようにするための1組のメガネとを含む。
【0041】
本発明の実施形態によれば、外科用顕微鏡は、上記で示される方法を実行するように構成されたコントローラを含む。
【0042】
以下で説明される例示的な実施形態では、機能及び構造上において同様のコンポーネントは、できる限り同様の参照番号によって指定される。従って、特定の実施形態の個々のコンポーネントの特徴を理解するため、他の実施形態の説明及び本開示の概要の説明を参照すべきである。
【0043】
図1は、外科用顕微鏡1の概略図である。外科用顕微鏡1は、拡大ズームレンズ7及び2つのカメラ9を含む顕微鏡光学機器5を収容する顕微鏡本体3を含む。カメラ9は、焦点面11におけるカメラ9の視野の画像を記録する。光学機器5は、外科用顕微鏡1のコントローラ13によって制御されるアクチュエータ(
図1には図示せず)を操作することによって、顕微鏡本体からの焦点面11の距離を調整するように構成される。カメラ9によって記録されたカメラ9の視野の画像は、コントローラ13に送信される。カメラ9によって記録される画像における視野に位置する対象物の倍率は、コントローラによって、ズームレンズ7のアクチュエータ15を操作することによって調整することができる。
【0044】
顕微鏡本体3は、支持体17によって保持され、支持体17は、手術室の床に置かれるベース19と、手術室のアクセス可能な領域内に顕微鏡本体3を位置決めするためにコントローラ13によって制御されるアクチュエータ23を含む接合部によって接続される多数の部材21とを含む。支持体17は、顕微鏡本体3が3つの独立した方向における並進運動と3つの独立した軸の周りの回転運動の両方を実行できるように、コントローラ13によって制御されるように構成される。具体的には、支持体のアクチュエータ23は、外科用顕微鏡1のユーザ33がその手37に保持する手術道具35で手術を実行する手術エリア31とカメラの視野が一致するように、カメラ9を位置決めするように操作することができる。この目的のため、ユーザは、コントローラ13から送信された画像を示すディスプレイを見ることによって、手術エリア31を観察する。ディスプレイ上に表示される画像は、カメラ9によって記録された画像を処理することによって得られた画像であり得る。画像の処理は、クロップ、回転、コントラスト増強、色補正、及び、画像データに対する実質的な変更がない記録画像の直接表示など、任意の画像処理動作を含み得る。
【0045】
ディスプレイは、例えば、支持体17に装着することができるフラットパネルディスプレイ39、又は、ユーザ33によって保持される頭部装着型ディスプレイ41であり得る。
【0046】
2つのカメラ9によって記録される画像は、異なる角度から手術エリアを示す複数対のステレオ画像である。複数対のステレオ画像は、ユーザが頭部装着型ディスプレイ41を使用することによって観察することができ、その結果、ユーザ33は、手術エリアの三次元印象を感知することができる。同様に、フラットパネルディスプレイ39もまた、ステレオ画像を表示するように構成することができ、ユーザ33は、ユーザの左右の眼に送信される表示画像を選択する適切なメガネを着用することになる。例えば、メガネがユーザ33の左右の眼に光を交互に送信するアクティブシャッターメガネである一方で、フラットパネルディスプレイ39は、左右の眼に対する画像を交互に表示することができる。その上、フラットパネルディスプレイ39は、スクリーンの画素の異なる偏光状態を使用してユーザの左右の眼に対する画像を同時に表示することができ、ユーザ33は、対応する偏光メガネを保持する。
【0047】
外科用顕微鏡1は、顕微鏡本体3に対する、カメラ9の視野11に対する又は手術室内の他の何らかの適切な位置に対する身体部分(ユーザ33の頭部47など)の位置及び向きをコントローラが決定できるようにするためのセンサ45をさらに含む。センサ45は、支持体17の要素、ディスプレイ39、41上など、任意の適切な位置に装着することができる。その上、センサは、多数の分散場所に配置された多数のセンサ素子を含み得る。
【0048】
外科用顕微鏡1は、ユーザ33の注視方向をコントローラ13が決定できるようにするためのセンサ49をさらに含む。具体的には、コントローラ13は、ユーザが見詰めるディスプレイ39、41上に表示される画像内の位置を決定することができる。また、センサ49は、支持体17の要素、ディスプレイ39、41上など、任意の適切な位置に装着することができる。その上、センサは、多数の分散場所に配置された多数のセンサ素子を含み得る。
【0049】
外科用顕微鏡1は、ユーザ33が発したコマンドをコントローラ13が受信できるようにするためのセンサ51をさらに含む。例えば、センサ51は、開始コマンド及び停止コマンドを入力するためにユーザ33が操作するスイッチを含み得る。その上、センサ51は、「開始」及び「停止」などの音声コマンドをコントローラ13が検出できるようにするためのマイクロホンを含み得る。
【0050】
図2は、顕微鏡本体3に含まれるカメラの並進運動を示す。開始コマンドに続いて、ユーザは、頭部47の並進運動を実行する。ユーザの頭部の並進運動量は、カメラの並進運動量を決定する。カメラ9の主軸101は、円形の対象物103がカメラ9の視野11の中心に配置されるように配置される。視野11の画像は、カメラ9によって記録され、ディスプレイ39上に表示される。ディスプレイ39は、円錐形105によって示されるようにユーザの視界内に位置し、ユーザは、矢印107によって示されるように対象物103の画像の中心を注視する。
【0051】
顕微鏡本体3の参照位置は、111で示される。この参照位置111は、カメラ9とカメラ9の視野11との間の距離を決定するために使用することができる。
【0052】
ユーザ33の頭部47の参照位置は、113で示される。参照位置113は、ユーザの頭部47又は眼とディスプレイ39との間の距離を決定するために使用することができる。
【0053】
ユーザ33は、外科用顕微鏡によって認識される事前に定義された開始コマンドを発することによって、対象物103に対してカメラ9を位置決めするプロセスを開始することができる。開始コマンドが受信され次第、外科用顕微鏡は、停止コマンドが検出されるまで、ユーザ33の頭部47の位置を追跡し、ユーザ33の頭部47の運動量を決定する。
図2に示される例では、頭部47の検出された運動は、
図2の矢印114によって示されるように、ディスプレイ39に平行な並進運動である。外科用顕微鏡は、ユーザの頭部の検出された運動量に基づいてカメラの運動量を決定し、決定された運動量だけカメラ9が移動される。
図2に示される例では、カメラの結果として生じる運動は、
図2の矢印115によって示されるように、並進運動である。
【0054】
図3は、顕微鏡本体3に含まれるカメラの回転運動を示す。開始コマンドに続いて、ユーザは、頭部47の回転運動を実行する。ユーザの頭部の回転運動量は、カメラの回転運動量を決定する。
【0055】
図3に示される例では、頭部47の検出された運動は、
図3の矢印123によって示されるように、回転運動である。外科用顕微鏡は、ユーザの頭部の検出された運動量に基づいてカメラの回転運動量を決定し、決定された運動量だけカメラ9が回転される。それに加えて、カメラは、カメラの主軸101がカメラ9とカメラ9の視野11との間に位置する中心125の周りで回転されるような量だけ並進される。並進運動と回転運動の組合せにより、中心125の周りのカメラの回転に似た組合せ運動が生じる。
【0056】
図4は、外科用顕微鏡によって提供される画像倍率の変化を示す。画像倍率は、ディスプレイ39上の対象物103の画像の直径を対象物自体の直径で割った比率と定義することができる。画像倍率は、カメラを対象物に近づけることによって、カメラのズームレンズをズームインに操作することによって、又は、ディスプレイ39、41上に表示される処理画像が大きくなるようにカメラによって記録された画像を処理することによって、増加することができる。
【0057】
図4に示される例では、頭部47の検出された運動は、
図4の矢印131によって示されるように、ディスプレイ39に垂直な並進運動である。外科用顕微鏡は、ユーザの頭部の検出された運動量に基づいて顕微鏡の倍率の変化量を決定する。
図4の例では、ユーザが彼の頭部をディスプレイ39に向かう方向に移動し、この動きにより、外科用顕微鏡によって提供される倍率が増加すると想定される。
図4から、ディスプレイ39上に表示された対象物103が
図2及び3より大きい直径を有することが明らかである。同様に、ディスプレイ39から離れる方向への頭部47の動きにより、外科用顕微鏡によって提供される倍率が低減する。
【0058】
上記の
図2、3及び4に関して示される顕微鏡光学機器の変化量(すなわち、
図2に示される並進運動、
図3に示される回転運動及び
図4に示される倍率の変化)は、ユーザの頭部の検出された運動量に依存する。本明細書では、頭部の検出された運動と顕微鏡光学機器の結果として生じる変化との間の依存性は、すべての状況に対して一定というわけではない。代わりに、この依存性は、ディスプレイ上に表示されるカメラの視野内の対象物の画像の倍率、ディスプレイからのユーザの身体部分の距離及びカメラの視野からのカメラの距離に依存する。
【0059】
具体的には、これらの変化量は、外科用顕微鏡によって提供される倍率の増加と共に減少し、それらの変化量は、ディスプレイからのユーザの身体部分の距離の減少と共に減少し、それらの変化量は、カメラの視野からカメラの距離の減少と共に減少する。
【0060】
上記で示される実施形態では、ユーザは、頭部又は他の何らかの身体部分の動きを実行することによって、カメラの場所及び向き並びに外科用顕微鏡によって提供される倍率を制御することができる。本明細書では、3つのすべての動作に共通の開始及び停止コマンドを定義することも、個々の動作の別々の開始及び/又は停止コマンドを定義することも可能である。
【0061】
本開示は、その特定の例示的な実施形態に関して説明してきたが、多くの改変形態、変更形態及び変形形態が当業者に明らかであることは明白である。それに従って、本明細書に記載される本開示の例示的な実施形態は、例示であり、いかなる方法でも制限されないことを意図する。以下の特許請求の範囲で定義されるように、本開示の精神及び範囲から逸脱しない範囲で、様々な変更を行うことができる。