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特許7592733圧力測定セル内の圧力を決定するための方法及び測定セルアセンブリ
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  • 特許-圧力測定セル内の圧力を決定するための方法及び測定セルアセンブリ 図1a
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】圧力測定セル内の圧力を決定するための方法及び測定セルアセンブリ
(51)【国際特許分類】
   G01L 9/00 20060101AFI20241125BHJP
【FI】
G01L9/00 Z
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2022549558
(86)(22)【出願日】2020-02-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-08
(86)【国際出願番号】 EP2020054239
(87)【国際公開番号】W WO2021164853
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2023-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】518303251
【氏名又は名称】インフィコン・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ムリス,フェリックス
【審査官】大森 努
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0297665(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0259360(US,A1)
【文献】特開2020-020270(JP,A)
【文献】特開2012-222518(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0061693(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0341618(US,A1)
【文献】特開昭63-246913(JP,A)
【文献】特開2008-062816(JP,A)
【文献】特開2003-258636(JP,A)
【文献】特開2013-178230(JP,A)
【文献】特開2007-316071(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0195577(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0138859(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/00-27/02
G01D 1/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力セル(2)内の圧力を決定するための方法であって、
-前記圧力セル(2)内の測定圧力に少なくとも比例する測定信号(x)が決定されることと、
-前記測定信号(x)は、出力信号(y)を生成するためのローパス特性を有する第1のフィルタユニット(10)でフィルタリングされ、前記第1のフィルタユニット(10)の前記ローパス特性は、第1の減衰係数(α)によって定義されることと
-前記出力信号(y)と前記測定信号(x)との差から生じる入力差(x_diff)が、出力差(y_diff)を決定するためのローパス特性を有する第2のフィルタユニット(20)でフィルタリングされ、前記第2のフィルタユニット(20)の前記ローパス特性が、第2の減衰係数(α)によって定義されることと、
-前記出力差(y_diff)の絶対値が絶対値ユニット(30)で決定されることと、
-前記出力差(y_diff)の前記絶対値が指数(exp)によって累乗されて、増強された出力信号(z)を生成することと、
-前記増強された出力信号(z)にフィルタ効果係数(FW)を乗算して積を決定することと、
-前記第1のフィルタユニット(10)の前記第1の減衰係数(α)が、前記積に基づいて決定されることと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記第1のフィルタユニット(10)が、第1の指数移動平均フィルタを備えることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2のフィルタユニット(0)が、第2の指数移動平均フィルタを備えることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記測定信号(x)が、時間インデックス(k)によって表される時間に離散時間サンプリングされた測定信号(x)として存在し、前記出力信号(y)が、前記時間インデックス(k)によって同様に表される時間に離散時間サンプリングされた出力信号(y)として同様に存在し、前記第1及び第2のフィルタユニット(10、20)が離散時間フィルタとして実装されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のフィルタユニット(10)及び/又は前記第2のフィルタユニット(20)の前記ローパス特性が1次であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記乗算の前記積が0~1の範囲に制限されることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記フィルタ効果係数(FW)が、0~1040の値の範囲であることを特徴とする、請求項からのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記指数(exp)が0~10の値の範囲であることを特徴とする、請求項又はに記載の方法。
【請求項9】
前記第2の減衰係数(α)が0~1の値の範囲であることを特徴とする、請求項1からのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
圧力セル(2)と、前記圧力セル(2)に動作可能に接続され、出力信号(y)を生成するためにローパス特性を有する第1のフィルタユニット(10)に適用される圧力依存測定信号(x)を生成する膜圧測定セル(2)とを有する測定セルアセンブリであって、前記第1のフィルタユニット(10)の前記ローパス特性は、第1の減衰係数(α)によって定義され、
-入力差(x_diff)を決定するために反転入力信号(x)及び前記出力信号(y)が供給される加算ユニット(11)が設けられ、
出力差(y_diff)を決定するために、ローパス特性を有する第2のフィルタユニット(20)に、前記入力差(x_diff)が、適用され、前記第2のフィルタユニット(20)の前記ローパス特性が、第2の減衰係数(α)によって定義され、
-前記出力差(y_diff)の絶対値を決定する絶対値ユニット(30)が設けられ、
-前記出力差(y_diff)の前記絶対値と増強された出力信号(z)を生成するための指数(exp)とが供給される関数ユニット(31)が設けられ、
-前記増強された出力信号(z)とフィルタ効果係数(FW)とが乗算ユニット(32)に供給されて、前記第1のフィルタユニット(10)に供給される前記第1の減衰係数(α)を生成する測定セルアセンブリ。
【請求項11】
前記第1のフィルタユニット(10)が、第1の指数移動平均フィルタを備えることを特徴とする、請求項1に記載の測定セルアセンブリ。
【請求項12】
前記第2のフィルタユニット(20)が、第2の指数移動平均フィルタを備えることを特徴とする、請求項1又は1に記載の測定セルアセンブリ。
【請求項13】
前記測定信号(x)が、時間インデックス(k)によって表される時間に離散時間サンプリングされた測定信号(x)として存在し、前記出力信号(y)が、前記時間インデックス(k)によって同様に表される時間に離散時間サンプリングされた出力信号(y)として同様に存在し、前記第1及び第2のフィルタユニット(10、20)が離散時間フィルタとして実装されることを特徴とする、請求項1から1のいずれか1項に記載の測定セルアセンブリ。
【請求項14】
前記第1のフィルタユニット(10)及び/又は前記第2のフィルタユニット(20)の前記ローパス特性が1次であることを特徴とする、請求項1から1のいずれか1項に記載の測定セルアセンブリ。
【請求項15】
制限ユニット(33)内の前記第1の減衰係数(α)を0~1の値の範囲に制限することができることを特徴とする、請求項1に記載の測定セルアセンブリ。
【請求項16】
前記フィルタ効果係数(FW)が、0~1040の値の範囲であることを特徴とする、請求項1から1のいずれか1項に記載の測定セルアセンブリ。
【請求項17】
前記指数(exp)が0~10の値の範囲であることを特徴とする、請求項10から16のいずれか1項に記載の測定セルアセンブリ。
【請求項18】
前記第2の減衰係数(α)が0~1の値の範囲であることを特徴とする、請求項1から17のいずれか1項に記載の測定セルアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルによる圧力セル内の圧力を決定するための方法、及び請求項12のプリアンブルによる測定セルアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜に圧力を加え、その結果生じる撓みを測定することによって、圧力又は圧力差を測定することが知られている。そのような膜の撓みを測定するための既知の適切な方法は、膜構成が可変電気静電容量として形成され、圧力の変化と相関する静電容量の変化が測定電子機器を介して評価されることである。静電容量は、薄い可撓性膜表面を本体の別の表面からわずかな距離に配置し、対向する両方の表面を導電性にすることによって形成される。膜及び本体が非導電性誘電材料で作られる場合、表面は、この目的のために、例えば導電性コーティングでコーティングされ、それによってコンデンサ電極を形成する。膜及び/又は本体自体も導電性材料で作ることができ、その場合、表面はやはりコンデンサ電極を形成する。膜に圧力が加えられると、撓みの結果として2つの電極間の距離が変化し、静電容量の評価可能な変化をもたらす。このタイプのセンサは、例えばシリコンから大量に製造される。平坦な基体及び膜の両方は、多くの場合、完全にシリコンで作られる。組み合わせた材料組成物、例えばガラスベースを有するシリコンを有するバージョンもある。したがって、センサを低コストで製造することができる。このタイプの圧力センサは、通常、約10-1mbarから数barまでの範囲のより高い圧力範囲にのみ使用することができる。約10-1mbarからのより低い圧力での高分解能は、材料としてシリコンを用いてもはや達成することができない。このタイプのセンサは、典型的な真空用途には適していない。制御されるべき様々な真空プロセスについて、真空中の圧力の測定は、大気と10-6mbarとの間の範囲で行われることが多い。そのような測定は、真空圧力測定の高分解能及び良好な再現性を有する高感度を必要とし、その目的のためには、特別に設計された測定セルのみが可能であり、高圧測定セルの設計から完全に逸脱する。
【0003】
Alなどの耐食性材料で作られた静電容量膜圧測定セルは、真空圧力測定に特に適している。欧州特許第1070239号明細書は、本質的に完全にセラミック製であり、したがって耐食性が高い既知の静電容量性真空測定セルを記載している。最大10-6mbarの非常に低い圧力を高精度で測定できるようにするために、例えば厚さ60μmの非常に薄いセラミック膜が使用され、これは無応力で対称的にセラミックハウジング内に配置される。
【0004】
コンデンサ電極又は膜表面とハウジング本体の表面との間の距離は、好ましくは2~50μmの範囲である。このような膜圧測定セルの直径は、好ましくは5~80mmの範囲である。このように形成され、測定される静電容量は、10pF~32pFの範囲である。新しい電子機器のおかげで、今や5pF~1000pFの範囲の静電容量を測定することが可能である。測定された静電容量は、ここでは測定される圧力の尺度として機能する。膜が圧力の関数として曲げられると、この静電容量はそれに応じて変化し、膜に加えられる圧力を測定することができる。静電容量が小さいことは、圧力変化によって引き起こされる静電容量の変化も非常に小さいことを意味するので、この静電容量測定は非常に正確でなければならず、小さい静電容量値では容易ではない。結果として、これから生成又は導出される電気信号も非常に小さく、したがって干渉を受けやすい。
【0005】
したがって、上記の説明による圧力信号を処理するための信号処理システムには、相応に高い需要がある。さらに、フィルタアルゴリズムを使用して、処理チャンバ内の圧力を制御するためなどのさらなる使用のために、測定された圧力信号の特性を最適化する。これに関連して、圧力信号を同時に処理するための2つの本質的に矛盾する目標を達成するフィルタアルゴリズムを指定する試みがなされる。第1に、例えば測定信号のステップ状の変化の後の過渡プロセスは、可能な限り迅速に完了されるべきであり、すなわち、フィルタの出力信号は、可能な限り迅速に安定した出力信号をもたらすべきである。これは、圧力の変化に起因して必要となり得る任意の動作を可能な限り迅速に開始することができることを意味する。第2に、ノイズ信号は、フィルタアルゴリズムによって可能な限り抑制されるべきである。したがって、第1の条件によれば、できるだけ速いフィルタが必要であるが、第2の条件によれば、遅いフィルタがより望ましい。
【0006】
2つの相反する目標を達成するために、フィルタアルゴリズム、したがってフィルタが測定信号を処理するための伝達関数を指定する多くの試みが知られている。既知のフィルタアルゴリズムは、高感度センサによる圧力測定のための本出願において満足のいく結果をもたらさない妥協に基づいている。
【0007】
米国特許第5838599号明細書には、入力信号の急激な変化を伴う短い整定プロセスと、整定状態の入力信号のノイズ信号成分の良好な低減との両方を可能にするフィルタの変形例が記載されている。
【0008】
さらに、ノイズを除去するために線形フィルタを使用する精巧な計算方法を開示している米国特許出願公開第2013/0016888号明細書を参照する。
【0009】
最後に、異なる時定数を有する2つの信号フィルタ並びに切り替え機構が記載されている方法が国際公開第2016/180547号パンフレットから知られている。この切り替え機構は、入力信号に応じて、又は入力信号の変化に応じて、信号経路において一方のフィルタから他方のフィルタへの切り替えを引き起こす。切り替え機構は、「速い」及び「遅い」の2つの機能ブロックに基づく。「速い」ブロックは速い信号変化を検出し、「遅い」ブロックは安定した又はゆっくりと変化する入力信号を検出する。「遅い」ブロックの時定数は、システムに起因して、「速い」ブロックの時定数よりかなり(典型的には1000倍程度)大きい。信号が安定しているかどうかを十分に確実に判定できるようにするためには、最低数の測定点を解析しなければならないからである。対照的に、信号変化を検出するには正確に1つの測定値で十分である。結果として、信号変化(エッジ)から安定値への遷移中の国際公開第2016/180547号パンフレットによる既知のシステムの挙動は、非常に不十分である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の目的は、顕著なノイズ信号抑制が達成されるが、同時に大幅に変化する測定信号に対する高速応答が可能である、測定信号を処理するための改善された方法を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、請求項1の特徴によって解決される。有利な設計並びに圧力測定セルを有する測定セルアセンブリが、さらなる請求項に与えられる。
【0012】
圧力セル内の圧力を決定するための本発明による方法は、
-圧力セル内の測定圧力に少なくとも比例する測定信号が決定され、
-測定信号が、出力信号を生成するためのローパス特性を有する第1のフィルタユニットでフィルタリングされ、第1のフィルタユニットのローパス特性が、第1の減衰係数によって定義される。
【0013】
本発明による方法は、
-出力信号と測定信号との間の差から生じる入力差が、出力差を決定するためのローパス特性を有する第2のフィルタユニットでフィルタリングされ、第2のフィルタユニットのローパス特性が、第2の減衰係数によって定義され、
-第1のフィルタユニットの第1の減衰係数が、第2のフィルタユニットの出力差に基づいて決定されることを特徴とする。
【0014】
本発明による方法の一実施形態変形例は、第1のフィルタユニットが第1の指数移動平均フィルタを備えることを特徴とする。
【0015】
本発明による方法のさらなる実施形態変形例は、第2のフィルタユニットが第2の指数移動平均フィルタを備えることを特徴とする。
【0016】
本発明による方法のさらに別の実施形態変形例は、測定信号が時間インデックスによって表される時点に離散時間サンプリングされた測定信号として存在し、出力信号が時間インデックスによって同様に表される時点に離散時間サンプリングされた出力信号として同様に存在し、第1及び第2のフィルタユニットが離散時間フィルタとして実装されることを特徴とする。
【0017】
本発明による方法のさらに別の実施形態変形例は、第1のフィルタユニット及び/又は第2のフィルタユニットのローパス特性が1次であることを特徴とする。
【0018】
本発明による方法のさらに別の実施形態変形例は、出力差の絶対値が絶対値ユニットで決定され、出力差の絶対値にフィルタ効果係数が乗算されて積が決定され、この乗算の積が第1の減衰係数を決定するために使用されることを特徴とする。
【0019】
本発明による方法のさらに別の実施形態変形例は、乗算の積が0~1の値の範囲に限定されることを特徴とする。
【0020】
本発明による方法のさらに別の実施形態変形例は、フィルタ効果係数による乗算が実行される前に、出力差の絶対値が指数によって累乗されることを特徴とする。
【0021】
本発明による方法のさらに別の実施形態変形例は、フィルタ効果係数が0~1040の値の範囲であることを特徴とする。
【0022】
本発明による方法のさらに別の実施形態変形例は、指数が0~10の値の範囲、典型的には0.5~5の値の範囲であり、さらにより典型的には2.5に等しいことを特徴とする。
【0023】
本発明による方法のさらに別の実施形態変形例は、第2の減衰係数が0~1の値の範囲、典型的には0.05~0.25の値の範囲であり、さらにより典型的には0.1に等しいことを特徴とする。
【0024】
さらに、本発明は、圧力セルと、圧力セルに動作可能に接続された膜圧測定セルとを有する測定セルアセンブリに関し、膜圧測定セルは、出力信号を生成するためのローパス特性を有する第1のフィルタユニットに適用される圧力依存測定信号を生成し、第1のフィルタユニットのローパス特性は、第1の減衰係数によって定義される。本発明による測定セルアセンブリは、
-入力差を決定するために反転入力信号及び出力信号が供給される加算ユニットが設けられ、
-ローパス特性を有する第2のフィルタユニットの入力差が、出力差を決定するために適用され、第2のフィルタユニットのローパス特性が、第2の減衰係数によって定義され、
-第2のフィルタユニットの出力差及び第2の減衰係数が、第1のフィルタユニットに供給される第1の減衰係数を生成するために適用されることを特徴とする。
【0025】
本発明による測定セルアセンブリの一実施形態変形例は、第1のフィルタユニットが第1の指数移動平均フィルタを備えることである。
【0026】
本発明による測定セルアセンブリのさらなる実施形態変形例は、第2のフィルタユニットが第2の指数移動平均フィルタを備えることである。
【0027】
本発明による測定セルアセンブリのさらなる実施形態変形例は、測定信号が時間インデックスによって表される時点に離散時間サンプリングされた測定信号として存在し、出力信号が時間インデックスによって同様に表される時点に離散時間サンプリングされた出力信号として同様に存在し、第1及び第2のフィルタユニットが離散時間フィルタとして実装されることである。
【0028】
本発明による測定セルアセンブリのさらなる実施形態変形例は、第1のフィルタユニット及び/又は第2のフィルタユニットのローパス特性が1次であることである。
【0029】
本発明による測定セルアセンブリのさらなる実施形態変形例は、出力差の絶対値を決定するための絶対値ユニットが設けられ、出力差の絶対値及び乗算ユニットのフィルタ効果係数が第1の減衰係数を決定するために適用されることである。
【0030】
本発明による測定セルアセンブリのさらなる実施形態変形例は、制限ユニット内の第1の減衰係数を0~1の値の範囲に制限することができることである。
【0031】
本発明による測定セルアセンブリのさらなる実施形態変形例は、出力差の絶対値と増強された出力信号を生成するための指数とが適用される関数ユニットが設けられることである。
【0032】
本発明による測定セルアセンブリのさらなる実施形態変形例は、フィルタ効果係数が0~1040の値の範囲であることである。
【0033】
本発明による測定セルアセンブリのさらなる実施形態変形例は、指数が0~10の値の範囲、典型的には0.5~5の値の範囲であり、さらにより典型的には2.5に等しいことである。
【0034】
本発明による測定セルアセンブリのさらに別の実施形態変形例は、第2の減衰係数が0~1の値の範囲、典型的には0.05~0.25の値の範囲であり、さらにより典型的には0.1に等しいことである。
【0035】
以下、本発明の例示的な実施形態を、図を参照して詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1a】膜圧測定セルが処理チャンバに接続された測定セルアセンブリを示し、膜圧測定セルアセンブリによって、本発明による信号処理ユニットにおける処理後にバルブに供給される測定信号が決定される。
図1b】膜圧測定セルが処理チャンバに接続された測定セルアセンブリを示し、膜圧測定セルアセンブリによって、本発明による信号処理ユニットにおける処理後にバルブに供給される測定信号が決定される。
図2】本発明による、特に図1による信号処理ユニットにおける実装のための第1の実施形態変形例のブロック図を示す。
図3】特に図2による第1のフィルタユニット及び/又は第2のフィルタユニットで使用するための、離散時間伝達関数としての1次ローパスフィルタタイプのそれ自体既知の指数移動平均フィルタのブロック図を示す。
図4】特に図1による信号処理ユニットにおける実装のための、本発明のさらなる実施形態変形例のブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1aは、処理チャンバ1、膜圧測定セル2、真空ポンプ3、信号処理ユニット4、制御ユニット5、バルブアクチュエータ6及びバルブ7を有する測定セルアセンブリを非常に簡略化したブロック図で示す。膜圧測定セル2は、真空プロセスに応じて規定される圧力が設定される処理チャンバ1内の圧力を決定するために使用される。真空プロセスには、コーティングプロセス、エッチングプロセス、ワークピースの熱処理などの多種多様なプロセスが含まれる。真空プロセスは多くの場合、プロセス中に反応性ガスとして積極的に、又は不活性ガスとして非積極的に必要とされる助燃ガスでも動作する。この目的のために、ガスはバルブ7を介して処理チャンバ1に供給され、バルブ7は、バルブアクチュエータ6によって制御され、処理チャンバ1内のガス供給及び圧力を制御するために使用することができる。測定信号xは膜圧測定セル2によって生成され、信号処理ユニット4及び制御ユニット5で処理されてバルブアクチュエータ6の制御信号sを形成する。正確なプロセス制御のために、膜圧測定セル2は、一方では可能な限り正確に測定するが、他方では可能な限り迅速に測定して、可能な限り迅速かつ正確に処理チャンバ1内の圧力変化に反応できるようにする必要がある。
【0038】
図1bは、図1aによる測定セルアセンブリのさらに簡略化されたブロック図を示すが、ここでは「上流圧力制御」ではなくいわゆる「下流圧力制御」である。下流圧力制御では、圧力計は、制御可能なガス入口バルブ8を介して真空ポンプの上流のコンダクタンスを制御する。図1aに示す上流圧制御とは対照的に、図1bに示す下流圧制御では、真空ポンプ3はバルブ7に接続されている。さらに、処理チャンバ1は、制御可能なガス入口バルブ8を介して閉鎖される。処理チャンバ1内で必要とされるガスは、必要に応じてガス入口バルブ8を介して処理チャンバ1に入る。
【0039】
本発明の簡略化された実施形態では、信号処理ユニット4の出力信号yは、処理チャンバ内の圧力を制御するために使用されないことも考えられる。したがって、閉鎖系ではなく開放系である。この場合、図1による処理チャンバ1と同様の任意のタイプの圧力セル内の圧力が、圧力測定セル2を用いて測定される。圧力測定セル2で測定された測定信号xはまた、安定してノイズがないが変化に迅速に反応する出力信号yを得るために、信号処理ユニット4で処理される。
【0040】
ここで、本発明は、再び図1による実施形態の変形例に関して、真空プロセスに存在する条件に関連する測定信号xの処理に関し、そのような真空プロセスで圧力信号として発生する可能性があるため、主に測定信号xの最適な信号処理を目的とする。これに関連して、信号処理ユニット4における信号処理は、基本的にアナログ又はデジタル方式で実行することができ、信号処理がアナログ方式又はデジタル方式で実行される場合の特別な注意事項(アナログ/デジタル変換、エイリアシングを回避するためのフィルタリング、サンプリング周波数の選択など)は、当業者に十分に知られているので、以下ではこれ以上説明しない。
【0041】
信号処理ユニット4の出力信号yは、制御ユニット5において、例えばいわゆるP、PI、PID又は状態コントローラによってさらに処理される。制御ユニット5に実装されたコントローラは、特に、バルブアクチュエータ6又はバルブ7の制御信号sの最適な追跡を担当する。
【0042】
原則として、信号処理ユニット4におけるプロセス及びそのブロック図に関する説明は、閉鎖系における実施形態変形例及び開放系における実施形態変形例の両方に対して有効である。
【0043】
図2は、信号処理ユニット4で処理される本発明による処理ステップのブロック図を概略的かつ簡略化して示す。改めて説明される本発明によるアルゴリズムの個々の処理ステップを実施するために、例えば、それに応じてプログラムされる信号プロセッサが使用される。プロセッサ容量がこの目的に十分であれば、他のタスクも信号プロセッサによって実行することができることが理解される。特に、制御ユニット5のコントローラも同じ信号プロセッサに実装されることが考えられる。
【0044】
図2から分かるように、測定信号xは、出力信号yを生成する第1のフィルタユニット10に供給される。測定信号x及び出力信号yを有する第1のフィルタユニット10は、信号処理ユニット4(図1)の実際の信号経路を形成する。第2のフィルタユニット20及び加算ユニット11などの説明される他の構成要素は、第1のフィルタユニット10の特性を規定するために設けられる。
【0045】
第1のフィルタユニット10は、離散時間システムにおいて、例えば次式に従って定義されるフィルタ特性を有する。
【0046】
=α・x+(1-α)・yk-1
ここで、yは時間離散出力信号、xは時間離散測定信号、kは時間依存インデックス、αは第1のフィルタユニット10の時定数を決定的に決定する値の変数であり、減衰係数αともいう。本発明の目的は、減衰係数αの値の最適な設定であり、すなわち、測定信号x内のノイズ信号が可能な限り抑制されるか、又は除去されるが、同時に、それに対応して迅速に反応することができるように、処理チャンバ1(図1)内の変化する圧力が迅速に検出される。
【0047】
減衰係数αを有する上述の式は、ノイズ信号成分を抑制するためのフィルタ特性としてローパス特性を有し、サンプリング間隔Tにおける1次フィルタの時定数τは、以下のように決定することができる。
【0048】
【数1】
【0049】
減衰係数αの値の選択は、本発明にとって重要である。測定信号xが安定した圧力値のノイズ信号のみを含む場合、αの値はかなり小さく、例えば0.0001である。したがって、測定信号xに存在するノイズ信号は最大限に抑制され、フィルタリングされた出力信号yは、制御ユニット5(図1)の下流コントローラでの使用に非常に適している。なぜなら、安定した出力信号は、バルブアクチュエータ6又はバルブ7の活動の低下をもたらし、したがってこれらの構成要素への負荷を低減し、既知のシステムと比較してそれらの故障の確率を大幅に低減するからである。
【0050】
一方、処理チャンバ1(図1)内の実際の圧力変化に起因する測定信号xの変化は、遅れなく検出されるべきであり、減衰係数αの異なる値、すなわち、例えば、0.3より大きいαの値が必要とされる。
【0051】
本発明によれば、減衰係数αの値は、出力信号と測定信号との間の差の関数として調整される。第1のフィルタユニット10が以下の式
=α・x+(1-α)・yk-1
による1次ローパスフィルタを有する離散時間システムから開始して、減衰係数αは、入力差x_diffを介して、又は離散時間システムでは、x_diffを介して、図2に示すアナログシステムから分かるように、加算ユニット11を用いてyk-1とxとの間の差を以下のように決定することによって決定される。
【0052】
x_diff=yk-1-x
入力差x_diffは第2のフィルタユニット20に供給され、第1の減衰係数αは、第2の減衰係数αを介して決定される。第2のフィルタユニット20もやはり、例えば、1次ローパス特性を有する。より高次のローパスフィルタ特性も考えられる。1次ローパスフィルタ特性の場合、離散時間システムの場合、式
α1k=α・x_diff+(1-α)・α1k-1
が、第2の減衰係数αが予め定義されている場合に適用可能である。例えば、第2の減衰係数αは、0から1の範囲、より具体的には0.05から0.25の範囲であり、さらにより具体的には0.1に等しい。
【0053】
フィルタ、特に1次フィルタの減衰係数αは、アナログ又は離散時間空間のいずれであっても、フィルタ設計の技術分野の当業者にとってカットオフ周波数fによって直接表すことができ、逆もまた同様であるという一般的な事実を参照する。サンプリング間隔Tについて、1次フィルタについて以下の式が得られる。
【0054】
【数2】
【0055】
又はその逆:
【0056】
【数3】
【0057】
このことは、第1のフィルタユニット10及び第2のフィルタユニット20の両方に当てはまる。
【0058】
図3に、離散時間伝達関数としての1次ローパスフィルタ型の周知の指数移動平均フィルタのブロック図を示す。既に述べた式が適用される。
【0059】
=α・x+(1-α)・yk-1
式中、kは時間に関する指数(及びサンプリング間隔Tだけ遅延した時間であるk-1に対応する)であり、αは減衰係数である。
【0060】
上式に従って、第1及び第2の加算器12、13と、遅延ユニット15と、減衰ユニット14とを備え、第1の加算器12の出力信号に減衰係数αを乗じた図3に示すブロック図が得られる。減衰ユニット14の出力信号は、遅延された出力信号yk-1に加算して出力信号yを生成する第2の加算器13に適用される。最後に、入力信号xと反転遅延出力信号yk-1とを加算することにより、第1の加算器12の出力信号が形成される。
【0061】
図3に示す指数移動平均フィルタのブロック図は、原則として、第1のフィルタユニット10及び第2のフィルタユニット20の両方に適用される。
【0062】
図4は、やはりブロック図を使用して、本発明のさらなる実施形態変形例を示す。測定信号xは、ここでも第1のフィルタユニット10に適用され、出力信号yが生成される。第1のフィルタユニット10は、やはり1次ローパス特性を有するが、より高次のフィルタも使用することができる。
【0063】
図2を参照して説明した本発明の第1の実施形態変形例のように、出力信号yk-1から入力信号xを減算することにより入力差x_diffを生成する加算ユニット11が設けられている。次に、入力差x_diffが第2のフィルタユニット20に適用される。第2のフィルタユニット20は、やはり1次ローパス特性を有するが、ここではより高次のフィルタも使用することができる。
【0064】
図4に示す本発明のさらなる実施形態変形例は、一方では、第2のフィルタユニット20で決定された出力差y_diffが、y_diffの絶対値、すなわち|y_diff|が決定される絶対値ユニット30に適用されることである。絶対値|y_diff|は、多項式の一般形の関数が絶対値|y_diff|に適用される関数ユニット31に適用される。簡略化された関数は、例えば、以下の関数ユニット3で実現される関数である。
【0065】
【数4】
【0066】
指数expは、例えば、0から10の範囲、典型的には0.5から5の範囲であり、又はさらにより典型的には2.5に等しい。exp=1の場合、すなわち、図4による実施形態変形例が図2による実施形態変形例に変化し、関数ユニット31は存在しないとみなすことができる場合、
以下であることは自明である。
【0067】
【数5】
【0068】
出力値z及びフィルタ効果係数FWは乗算ユニット32に供給され、乗算が実行されて積pが決定され、これは0から1の範囲の値に制限するために制限ユニット33に供給される。これにより、第1のフィルタユニット10の第1の減衰係数αが決定される。
【0069】
制限ユニット33で実行される機能は、以下のように形式的に説明することができる。
【0070】
【数6】
【0071】
フィルタ効果係数FWは、0から1040の範囲で自由に選択できることが示されている。
【0072】
最後に、第2の減衰係数αは、0~1の範囲、典型的には0.05~0.25の範囲で、さらにより典型的には0.1に等しく選択される。
【0073】
したがって、図4による実施形態変形例は、3つの予め決定可能なパラメータ、すなわち、フィルタ効果係数FW、第2の減衰係数α、及び指数expを備える。
【0074】
3つの予め決定可能なパラメータのうち、フィルタ効果係数FW及び指数expが特に重要である。これらの2つのパラメータは、フィルタ挙動に決定的な影響を及ぼす。すなわち、フィルタの感度は指数expを介して調整することができ、フィルタ効果は、名前が既に表すように、フィルタ効果係数FWを介して調整することができ、フィルタ効果係数FWは、信号内のノイズ成分に影響を及ぼす。
【符号の説明】
【0075】
符号のリスト
1 処理チャンバ
2 膜圧セル
3 真空ポンプ
4 信号処理ユニット
5 制御ユニット
6 バルブアクチュエータ
7 バルブ
8 ガス入口バルブ
10 第1のフィルタユニット
11 加算ユニット
12 第1の加算器
13 第2の加算器
14 減衰ユニット
15 遅延ユニット
20 第2のフィルタユニット
30 絶対値ユニット
31 関数ユニット
32 乗算ユニット
33 制限ユニット
x 測定信号
y 出力信号
s 制御信号
x_diff 入力差
y_diff 出力差
α 減衰係数
α,α 第1及び第2の減衰係数
FW フィルタ効果係数
Exp 指数
増強された出力信号
図1a
図1b
図2
図3
図4