(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】キュービット処理方法
(51)【国際特許分類】
G06N 10/40 20220101AFI20241125BHJP
【FI】
G06N10/40
(21)【出願番号】P 2022554909
(86)(22)【出願日】2021-03-08
(86)【国際出願番号】 EP2021055819
(87)【国際公開番号】W WO2021180668
(87)【国際公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-11-15
(32)【優先日】2020-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521435167
【氏名又は名称】クオンタム モーション テクノロジーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】パトマキ ソフィア
(72)【発明者】
【氏名】モートン ジョーン
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン シモン
【審査官】大倉 崚吾
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0042965(US,A1)
【文献】国際公開第2019/108512(WO,A1)
【文献】BAART, T. A. et al.,"Nanosecond-timescale spin transfer using individual electrons in a quadruple-quantum-dot device",arXiv [online],2016年,p. 1-7,[2024年09月17日検索],インターネット<URL:https://arxiv.org/abs/1606.00292v1>,1606.00292v1
【文献】LI, R. et al.,"A Crossbar Network for Silicon Quantum Dot Qubits",arXiv [online],2017年,p. 1-24,[2024年09月17日検索],インターネット<URL:https://arxiv.org/abs/1711.03807v1>,1711.03807v1
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06N 10/00-10/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キュービット・プロセッサ内において量子コンピュテーションを実施するための方法であって、
第1の1キュービット操作を実施する第1のロケーションのセット内の第1のロケーションを構成するステップと、
第2の1キュービット操作を実施する前記第1のロケーションのセット内の第2のロケーションを構成するステップと、
2キュービット相互作用をイネーブルする第2のロケーションのセット内の第1のロケーションと第2のロケーションを構成するステップと、
時間t
1に、前記第1のロケーションのセット内の前記第1のロケーションにおいて第1のキュービットを受け取るステップと、
時間t
1
に、前記第1のロケーションのセット内の前記第2のロケーションにおいて第2のキュービットを受け取り、前記第1のキュービットおよび前記第2のキュービットは、n>2とするn個のキュービットを備えた第1のキュービットのグループ内に提供される、ステップと、
前記第1のロケーションのセット内の前記第1のロケーションにおいて前記第1のキュービットの状態に関して前記第1の1キュービット操作を実施するステップと、
前記第1のロケーションのセット内の前記第2のロケーションにおいて前記第2のキュービットの状態に関して前記第2の1キュービット操作を実施するステップと、
前記第1のキュービットを、前記第1のロケーションのセット内の前記第1のロケーションから前記第2のロケーションのセット内の前記第1のロケーションへ移行させるステップと、
前記第2のキュービットを、前記第1のロケーションのセット内の前記第2のロケーションから前記第2のロケーションのセット内の前記第2のロケーションへ移行させるステップと、
前記第2のロケーションのセット内において前記第1のキュービットと前記第2のキュービットの間の前記2キュービット相互作用をイネーブルするステップと、
前記第1のキュービットを、前記第2のロケーションのセット内の前記第1のロケーションから読み出しロケーションのセット内の第1のロケーションへ移行させるステップと、
前記第2のキュービットを、前記第2のロケーションのセット内の前記第2のロケーションから前記読み出しロケーションのセット内の第2のロケーションへ移行させるステップと、
t
2>t
1とする時間t
2に、前記第1のロケーションのセット内の前記第1のロケーションにおいて第2のキュービットのグループの第1のキュービットを受け取るステップと、
時間t
2に、前記第1のロケーションのセット内の前記第2のロケーションにおいて前記第2のキュービットのグループの第2のキュービットを受け取るステップと、
前記読み出しロケーションのセット内の前記第1のロケーションにおいて前記第1のキュービットの前記状態を読み出すステップと、
前記読み出しロケーションのセット内の前記第2のロケーションにおいて前記第2のキュービットの前記状態を読み出すステップと、
を備える、方法。
【請求項2】
前記第1のキュービットのグループの前記第1のキュービットは、時間t
trにおいて、前記第2のロケーションのセット内の前記第1のロケーションから第3のロケーションのセット内の第1のロケーションへ移行され、
前記第1のキュービットのグループの前記第2のキュービットは、時間t
trにおいて、前記第2のロケーションのセット内の前記第2のロケーションから前記第3のロケーションのセット内の第2のロケーションへ移行され、
t
2≧t
tr>t
1である、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のキュービットのグループの前記第1のキュービットの前記状態が、時間t
rにおいて読み出され、
前記第1のキュービットのグループの前記第2のキュービットの前記状態が、時間t
rにおいて読み出され、
t
r>t
2である、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
時間t
3において、前記第1のキュービットのグループの前記第1のキュービットを、前記第3のロケーションのセット内の前記第1のロケーションから第4のロケーションのセット内の第1のロケーションへ移行させるステップと、
時間t
3において、前記第1のキュービットのグループの前記第2のキュービットを、前記第3のロケーションのセット内の前記第2のロケーションから前記第4のロケーションのセット内の第2のロケーションへ移行させるステップと、
時間t
3において、前記第2のキュービットのグループの前記第1のキュービットを、前記第1のロケーションのセット内の前記第1のロケーションから前記第2のロケーションのセット内の前記第1のロケーションへ移行させるステップと、
時間t
3において、前記第2のキュービットのグループの前記第2のキュービットを、前記第1のロケーションのセット内の前記第2のロケーションから前記第2のロケーションのセット内の前記第2のロケーションへ移行させるステップと、
をさらに備え、
t
3>t
2である、
請求項
2に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のロケーションのセットにおいて初期化操作を実施することをさらに備える、
請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
N個のロケーションのセットをさらに備え、
N>3であり、
前記読み出しロケーションのセットが第Nのロケーションのセットである、
請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1のキュービットのグループの各キュービットが直接的または間接的に前記第1のキュービットのグループの他の全てのキュービットと相互作用するように、前記第1のキュービットのグループの第iのキュービットと前記第1のキュービットのグループの第(i+1)のキュービットの間における相互作用をイネーブルするステップをさらに備え、
1≦i<nである、
請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1のキュービットのグループの前記第1のキュービットと前記第2のキュービットのグループの前記第1のキュービットは、相互作用しない、
請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記移行させるステップのそれぞれは、電子シャトリングを包含する、
請求項1から8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記キュービットは、電子スピン・キュービットまたは捕獲イオン・キュービットである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記移行させるステップのそれぞれは、スワップ操作を包含する、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1から11の何れか一項に記載の方法を実施するためのキュービット・プロセッサであって、
第1のロケーションのセットと、
第2のロケーションのセットと、
読み出しロケーションのセットと、
を備え、
各ロケーションのセットは、それぞれ第1のキュービットと第2のキュービットを受け取るべく構成された少なくとも第1のロケーションと第2のロケーションとを包含し、
前記第1のロケーションのセット内の前記第1のロケーションは、第1の1キュービット操作を実施するべく構成され、前記第1のロケーションのセット内の前記第2のロケーションは、第2の1キュービット操作を実施するべく構成され、
前記第1のロケーションのセットは、
前記第1のロケーションにおいて第1のキュービットを、前記第2のロケーションにおいて第2のキュービットを受け取り、
前記第1のキュービットの状態に関して前記第1の1キュービット操作を実施し、かつ、
前記第2のキュービットの状態に関して前記第2の1キュービット操作を実施するべく構成され、
前記第2のロケーションのセット内の前記第1および第2のロケーションは、2キュービット相互作用をイネーブルするべく構成され、
前記第1のキュービットおよび前記第2のキュービットは、前記第1のロケーションのセットから前記第2のロケーションのセットへ移行され、前記第2のロケーションのセットは、前記第1のキュービットと前記第2のキュービットの間における前記2キュービット相互作用をイネーブルするべく構成され、
前記第1のキュービットおよび前記第2のキュービットは、前記第2のロケーションのセットから前記読み出しロケーションのセットへ移行され、
前記読み出しロケーションのセットは、前記第1のキュービットの前記状態と前記第2のキュービットの前記状態を読み出すべく構成される、
キュービット・プロセッサ。
【請求項13】
第3のロケーションのセットをさらに備え、
前記第1のロケーションのセットと前記第3のロケーションのセットに同時に電圧を印加するように、電圧源は、前記第1のロケーションのセットおよび前記第3のロケーションのセットに電気的に接続される、請求項12に記載のキュービット・プロセッサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キュービット処理方法および当該方法を実施するためのキュービット・プロセッサに関する。
【背景技術】
【0002】
量子コンピュテーションは、キュービットの取り回しおよび処理を含む。キュービットまたは量子ビットは、古典的なコンピューティングで使用される古典的な『ビット』に対応する、情報を入れる量子である。キュービットの処理に使用することが可能と考えられる量子コンピューティング・スキームはいくつもある。
【0003】
1つの量子コンピューティング・スキームは、量子ロジック・ゲートのシーケンスを使用してキュービットを取り回すことを含む。1つのその種のゲート・ベースのアプローチにおいては、パルス状のローカルおよびグローバル電磁波および静電ポテンシャルが、格子上に配された静的キュービットおよびキュービットのペアの状態をシーケンシャルに取り回す。格子を横切る一連の量子ロジック・ゲートを実装するべく電磁波およびポテンシャルのパラメータをコントロールすることによってキュービット状態の取り回しがコントロールされる。ゲートの構成は、時間にわたって変更される。通常、プロセスにおける最終段階がキュービット状態の読み出しであり、もっとも一般的には、格子内のすべてのキュービットを読み出す。
【0004】
近い将来の中間規模の量子コンピューティング、またはNISQ時代においては、各デバイス上のキュービットの数および密度が増加する。たとえば、シリコン金属酸化膜半導体(SiMOS)デバイスを使用して、この成長に物理的に適応可能な電子スピン・キュービットの稠密な2次元グリッドを作り出すことは可能である。
【0005】
しかしながら、デバイス上で一連の量子ロジック・ゲートを機能させる(たとえば、量子アルゴリズムを走らせる)ことは、当該デバイス上に、同時かつ複雑な高速パルスのシーケンスを引き渡すことを必要とし、キュービットの数の増加は、困難である。当該方法による多数のキュービットの処理は、リソース集約的であり、しかも技術的な難問でもある。そのため、その種のデバイスのスケールアップを実施することは困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
NISQ時代における使用に適したプロセッサおよび処理方法を作り出すことが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、キュービット・プロセッサ内において量子コンピュテーションを実施するための方法を提供する。前記方法は、第1の1キュービット操作を実施する第1のロケーションのセット内の第1のロケーションを構成するステップと;第2の1キュービット操作を実施する前記第1のロケーションのセット内の第2のロケーションを構成するステップと;2キュービット相互作用をイネーブルする第2のロケーションのセット内の第1のロケーションと第2のロケーションを構成するステップと;時間t1に、前記第1のロケーションのセット内の前記第1のロケーションにおいて第1のキュービットを受け取るステップと;時間t1に、前記第1のロケーションのセット内の前記第2のロケーションにおいて第2のキュービットを受け取るステップと;前記第1のキュービットおよび前記第2のキュービットは、n>2とするn個のキュービットを包含する第1のキュービットのグループ内に提供されるものとすることと;前記第1のロケーションのセット内の前記第1のロケーションにおいて前記第1のキュービットの状態に関して前記第1の1キュービット操作を実施するステップと;前記第1のロケーションのセット内の前記第2のロケーションにおいて前記第2のキュービットの状態に関して前記第2の1キュービット操作を実施するステップと;前記第1のキュービットを、前記第1のロケーションのセット内の前記第1のロケーションから前記第2のロケーションのセット内の前記第1のロケーションへ移行させるステップと;前記第2のキュービットを、前記第1のロケーションのセット内の前記第2のロケーションから前記第2のロケーションのセット内の前記第2のロケーションへ移行させるステップと;前記第2のロケーションのセット内において前記第1のキュービットと前記第2のキュービットの間の前記2キュービット相互作用をイネーブルするステップと;前記第1のキュービットを、前記第2のロケーションのセット内の前記第1のロケーションから読み出しロケーションのセット内の第1のロケーションへ移行させるステップと;前記第2のキュービットを、前記第2のロケーションのセット内の前記第2のロケーションから前記読み出しロケーションのセット内の第2のロケーションへ移行させるステップと;t2>t1とする時間t2に、前記第1のロケーションのセット内の前記第1のロケーションにおいて第2のキュービットのグループの第1のキュービットを受け取るステップと;時間t2に、前記第1のロケーションのセット内の前記第2のロケーションにおいて前記第2のキュービットのグループの第2のキュービットを受け取るステップと;前記読み出しロケーションのセット内の前記第1のロケーションにおいて前記第1のキュービットの前記状態を読み出すステップと;前記読み出しロケーションのセット内の前記第2のロケーションにおいて前記第2のキュービットの前記状態を読み出すステップと;を備える。
【0008】
好都合なことに、この方法によるキュービットの処理は、キュービット処理方法の実施に要求されるリソースを低減する。各ロケーションのセットは、コンピレーション段階において、特定の1キュービットまたは2キュービット操作を実施するべく構成される。各ロケーションのセットの構成は、実行段階の間にわたり固定されたままであるが、前記第1および第2のキュービットを1つのロケーションのセットから他のそれへ物理的に移行させ、一連の処理ステップを実施することが可能である。このようにして、各キュービットのグループが同じ方法で処理される。言い換えると、ロケーションのセット内の特定のロケーションにおいて受け取られた各キュービットは、同じ操作を受ける。前記第1のロケーションのセット内の前記第1および第2のロケーションは、第1および第2の1キュービット操作をそれぞれ実施するべく構成される。したがって、各キュービットのグループの第1のキュービットは、あらかじめ定義済みの第1の1キュービット操作に従って取り回されることになる。同様に、第2の1キュービット操作は、各キュービットのグループの第2のキュービットの状態に関して実施されることになる。第2のロケーションのセット内の第1および第2のロケーションは、2キュービット相互作用をイネーブルするべく構成され、したがって、この方法を使用して処理される各キュービットのグループの第1および第2のキュービットのそれぞれは、前記構成に従って前記第2のロケーションのセット内において前記2キュービット相互作用を受ける。
【0009】
所定のロケーションまたはロケーションのセットにおいては、その後に続くコンピレーション段階においてデバイスがリセットされるまで、1つのタイプの操作だけが実施される。たとえば、ロケーションのセットを、各ロケーションにおいてZ回転を実施するべく構成することができ、回転の量は、ロケーションのセット内の各ロケーションのために調整することができる。好ましくは、前記ロケーションが前記コンピレーション段階において所望のパラメータに対して調整され、実行段階の間にわたって一定にとどまる。
【0010】
前記第1のキュービットと前記第2のキュービットは、nを、2を超える数とするn個のキュービットを包含する第1のキュービットのグループ内に提供される。NISQ時代においては、キュービット・プロセッサが多数のキュービットを処理することができる。第1のキュービットのグループ内のキュービットの数は、前記キュービット処理方法が、古典的にシミュレートすることが可能でなかったシミュレーションを実施することが可能となるように、好ましくは50を超え、より好ましくは100を超えるものとする。通常、各ロケーションのセット内のロケーションの数は、前記第1のキュービットのグループ内のキュービットの数と同じか、またはそれより多くなる。各ロケーションは、好ましくは、キュービットへの操作を実施するべく構成することが可能な電極を包含する。オプションとして、前記第1のキュービットのグループを任意のロケーションのセット内においてサポートすることが可能であり、ユニットとして取り回し、ロケーションのセットの間で移行させることが可能である。これは、ロケーションのセットの間において高速なグローバル・コントロールを使用して前記移行ステップを実施することによってプロセスを簡素化することが可能である。
【0011】
前記キュービット処理方法は、時間t2に、前記第1のロケーションのセット内の前記第1および第2のロケーションにおいて、それぞれ、第2のキュービットのグループの第1のキュービットおよび第2のキュービットを受け取るステップを包含する。前記第1のキュービットのグループの前記第1および第2のキュービットは、時間t1に、前記第1のロケーションのセット内の前記第1および第2のロケーションのそれぞれにおいて受け取られ、t2>t1である。このキュービット処理方法の利点は、第1のキュービットのグループの直後に前記プロセッサ内において第2のキュービットのグループの処理を開始することによって、前記キュービット・プロセッサ内において同時に複数のキュービットのグループの処理が可能なことである。これは、前記第1のキュービットのグループを空間に移行させることによって達成が可能である。同時に複数のキュービットのグループを処理することは、スループットを増加することが可能である。好ましくは、キュービットに操作を実施することが可能な操作段階の間に、前記第1および第2のキュービットのグループが少なくとも2つの占有されていないロケーションのセットによって分離される。オプションとして前記第1および第2のキュービットのグループが、1つの占有されていないロケーションのセットによって分離される。
【0012】
時間ttrにおいて、前記第1のキュービットのグループの前記第1および第2のキュービットを第2のロケーションのセットの前記第1および第2のロケーションのそれぞれから前記第3のロケーションのセットの前記第1および第2のロケーションへ移行させることができるが、通常それは、前記第1のロケーションのセットにおいて前記第1のキュービットのグループが受け取られた後であり、すなわち、ttr>t1である。前記第3のロケーションのセットが、好ましくは、前記第2のロケーションのセットと前記読み出しロケーションのセットの間の中間のロケーションのセットになる。好ましくは、前記第2のロケーションのセットから前記第3のロケーションのセットへの前記第1のキュービットのグループの前記移行が、前記第1のロケーションのセットにおける前記第2のキュービットのグループの受け取りの前に生じ、すなわちttr≦t2である。好都合なことに、これは、前記プロセッサ内において、前記第1のキュービットのグループと前記第2のキュービットのグループの間に空のロケーションのセットを提供する。前記第1のキュービットのグループおよび前記第2のキュービットのグループは、最小限単一の占有されていないロケーションのセットによって分離することができる。この距離は、全体を通じて維持が可能であり、前記第1および第2のキュービットのグループを横切る意図しないキュービット相互作用を回避する。オプションとして、複数のキュービットのグループが、異なるロケーションのセット内の同じ相対的なロケーションを占有して、同時に、かつ独立して処理される。
【0013】
通常、前記キュービット・プロセッサ内にはN個のロケーションのセットがあり、N>3である。Nの値は、コンピュータ・プログラム内の望ましいステップ数によって決定することができる。好ましくは、各ロケーションのセットにおいて1つのステップが実施され、したがって、N個のロケーションのセットは、N個のプログラミング・ステップに適応することが可能である。通常、前記キュービットの前記状態は、前記コンピュテーションの最後に読み出される。第Nのロケーションのセットは、したがって、好ましくは前記読み出しロケーションのセットを包含する。
【0014】
オプションとして、前記第1のキュービットのグループの前記第1のキュービットの前記状態が、時間trにおいて読み出され;また、前記第1のキュービットのグループの前記第2のキュービットの前記状態が、時間trにおいて読み出され;tr>t2である。この例においては、時間t2に前記第1のロケーションのセットにおいて受け取られる前記第2のキュービットのグループの処理が、前記第1のキュービットのグループの処理が完了する前に開始する。通常、前記キュービット処理方法の最終ステップは、前記グループ内の前記キュービットの前記状態の読み出しである。好都合なことに、前記キュービット・プロセッサによる前記複数のキュービットのグループの同時処理が、処理キャパシティを増加させる。
【0015】
各キュービットのグループは、当該グループが前記キュービット・プロセッサを、連続するロケーションのセットを、前記第1のロケーションのセットから前記読み出しロケーションのセットを通って抜けるとき、同じ方法で処理される。したがって、エラーがまったく生じなければ、前記キュービットのグループのそれぞれの第iのキュービットの前記状態は同じになる。各キュービットのグループは、通常、n個のキュービットを包含し、1≦i<nである。それにもかかわらず、1つ以上のキュービットの前記状態に影響を与えるエラーの発生が予期される。現在のところ、エラーを完全に排除することは不可能であり、したがって、通常、量子コンピュテーションは、コンピュテーションへのエラーの影響を低減するべく複数回にわたって実施される。このキュービットを処理する方法は、都合よく、複数のキュービットのグループを前記キュービット・プロセッサ内において独立かつ同時に処理し、同じ一連の操作を迅速な連続で反復して複数回実施し、各キュービットの平均の状態を決定することを可能にする。
【0016】
好ましくは、前記キュービット・プロセッサ内の各ロケーションのセットが、キュービットのグループ内のキュービットの状態に関する操作を実施するべく構成することができる。操作は、オプションとして、待機からなるか、またはそれを包含する。各キュービットのグループは、通常、連続するロケーションのセットによって受け取られ、読み出しロケーションのセットにおいて終結する。複数のキュービットを同期して処理することができる。オプションとして、前記キュービット処理方法は、さらに:時間t3において、前記第1のキュービットのグループの前記第1のキュービットを、前記第3のロケーションのセット内の前記第1のロケーションから第4のロケーションのセット内の第1のロケーションへ移行させるステップと;時間t3において、前記第1のキュービットのグループの前記第2のキュービットを、前記第3のロケーションのセット内の前記第2のロケーションから前記第4のロケーションのセット内の第2のロケーションへ移行させるステップと;時間t3において、前記第2のキュービットのグループの前記第1のキュービットを、前記第1のロケーションのセット内の前記第1のロケーションから前記第2のロケーションのセット内の前記第1のロケーションへ移行させるステップと;時間t3において、前記第2のキュービットのグループの前記第2のキュービットを、前記第1のロケーションのセット内の前記第2のロケーションから前記第2のロケーションのセット内の前記第2のロケーションへ移行させるステップと;を包含し、t3>t2とする。好都合なことに、ロケーションのセットの間における複数のキュービットのグループの移行を、同期させて、かつグローバルに実施することが可能である。好ましくは、前記第4のロケーションのセットが、前記第3のロケーションのセットと前記読み出しロケーションのセットの間の中間のロケーションのセットになる。
【0017】
概して言えば、2キュービット相互作用を、前記キュービット処理方法内のロケーションのセットにおいてイネーブルすることができる。好ましくは、nキュービット処理方法が、さらに、前記第1のキュービットのグループの各キュービットが直接または間接的に前記第1のキュービットのグループの1つおきのキュービットと相互作用するように、前記第1のキュービットのグループの第iのキュービットと前記第1のキュービットのグループの第(i+1)のキュービットの間における相互作用をイネーブルするステップを包含する。n個のキュービットを包含する第1のキュービットのグループについて、1≦i<nである。特定のペアのキュービットの間の相互作用が生じる位置は、前記ロケーションのセットの構成および前記ロケーションのセット内の前記ロケーションに依存することができる。第iのキュービットと第(i+1)のキュービットは、好ましくはグループ内の物理的に隣接するキュービットであり、相互作用のイネーブルは、最近傍ハイゼンベルグ交換等の最近傍相互作用がイネーブルされるように、それらのキュービットを空間的に近づけ、それらのキュービットの間のトンネル結合を増加させることを包含することができる。
【0018】
前記キュービット処理方法は、2つのキュービットの間の相互作用をイネーブルするステップを包含する。より一般的に述べれば、nキュービットのグループにおいて、前記nキュービットのグループ内の任意の隣接するキュービットのペアの間で相互作用をイネーブルすることができる。しかしながら、連続するキュービットのグループの間における時間的空間的分離が、好ましく、グループ間のキュービットの相互作用がないことを保証する。たとえば、前記第1のキュービットのグループ内の前記第1のキュービットと前記第2のキュービットのグループ内の前記第1のキュービットは、相互作用しない。好ましくは、異なるキュービットのグループに属するキュービットの間の相互作用を回避するために、前記第1および第2のキュービットのグループは、操作段階の間にわたって少なくとも1つの占有されていないロケーションのセットによって分離される。前記取り回しステップおよび移行ステップの実施に要する時間がロケーションのセットの間において等しくない場合には、それぞれの占有されているロケーションのセットの間に2つ以上の占有されていないロケーションのセットを有する必要が生じることがある。
【0019】
占有されていないロケーションのセットは、初期化することができる。オプションとして、占有されていないロケーションのセットのうちのいずれかまたはすべてをグローバルに『ゼロ』にリセットすることができる。前記キュービット処理方法は、さらに、前記第1のロケーションのセットに初期化操作を実施することを包含することができる。初期化操作の実施は、前記第1のロケーションのセットの前記第1および第2のロケーションのそれぞれからの前記第1のキュービットのグループの前記第1および第2のキュービットの前記移行の後であり、かつ前記第1のロケーションのセットの前記第1および第2のロケーションのそれぞれにおける前記第2のキュービットのグループの前記第1および第2のキュービットの前記受け取りの前に生じることができる。これは、不完全なキュービットの移行があった場合の望ましくないクロストークを都合よく防止することが可能である。オプションとして、前記第1のロケーションのセットの前記第1および第2のロケーションからの前記第1のキュービットのグループの前記第1および第2のキュービットの前記移行に続き、前記初期化操作の実施前に前記キュービットの状態を測定することが可能である。この場合においては、エラーが生じていない限り測定値がゼロになる。したがって、エラーの発生の監視およびエラー発生時におけるグローバル・リセットの実施にこれを都合よく使用することが可能である。
【0020】
オプションとして、前記キュービットを電子スピン・キュービットまたは捕獲イオン・キュービットまたは超電導キュービットとする。電子スピン・キュービットは、それらを取り回し、ほかの電子スピン・キュービットと結合させることが容易に可能であることから、量子コンピュテーション・プロセスに適している。捕獲イオン・キュービットは、量子コンピュテーションの誤り許容性を向上させることが可能な安定性を有益に提供する。超電導キュービットは、長いコヒーレンス時間を提供できる。長いコヒーレンス時間を都合よく提供し、かつ既存のテクノロジとの互換性があることから、前記キュービットを、好ましくは、シリコン・ベースのデバイス内の電子スピン・キュービットとする。
【0021】
ロケーションのセットの間においてキュービットを移行させるステップは、通常、選択されたキュービットのタイプに依存する。たとえば、前記移行させるステップは、電子シャトリングを包含することができ、電子スピン・キュービットまたは捕獲イオン・キュービットを『シャトリング』することができる。これは、局所的な電気的ポテンシャル・エネルギが移送電荷に修正されるプロセスを参照する。電子は、電気的ポテンシャル・エネルギの景観内の極小で落ち着き、それの現在のロケーション内の電気的ポテンシャル・エネルギを上昇させ、かつ意図しているロケーション内の電気的ポテンシャル・エネルギを降下させ、その間、その他の場所では高ポテンシャル・バリアを維持し、前記電子を案内することによって前方へシャトリングすることが可能である。このプロセスは、信頼性があり、誤りに対する許容性があることから有利である。それに加えて、電子シャトリングを使用する移行は、前記プロセッサを通じた複数のキュービットのグループの移動のグローバル・コントロールを可能にする。
【0022】
それに代えて、前記移行させるステップは、スワップ操作を包含することができる。スワップ操作においては、2つのキュービットが交換される。オプションとして、スワップ操作を、超電導キュービットの移行に使用することができる。この例においては、各ロケーションのセット内の各ロケーションにキュービットが存在することができ、それによりスループットを有益に増加することができる。
【0023】
本発明の他の態様は、キュービット・プロセッサを提供する。前記キュービット・プロセッサは、本発明の第1の態様に従った前記キュービット処理方法を実装することが可能である。前記キュービット処理方法のあらゆる特徴を前記キュービット・プロセッサ内において実装することができ、前記キュービット・プロセッサのあらゆる特徴を前記キュービット処理方法の実施に使用することができる。本発明の各態様は、類似する利点を共有する。前記キュービット・プロセッサは、第1のロケーションのセットと;第2のロケーションのセットと;読み出しロケーションのセットとを包含する。各ロケーションのセットは、それぞれ第1のキュービットと第2のキュービットを受け取るべく構成された少なくとも第1のロケーションと第2のロケーションとを包含する。前記第1のロケーションのセット内の前記第1のロケーションは、第1の1キュービット操作を実施するべく構成され、前記第1のロケーションのセット内の前記第2のロケーションは、第2の1キュービット操作を実施するべく構成される。前記第1のロケーションのセットは:前記第1のロケーションにおいて第1のキュービットを、前記第2のロケーションにおいて第2のキュービットを受け取り;前記第1のキュービットの状態に関して前記第1の1キュービット操作を実施し;かつ、前記第2のキュービットの状態に関して前記第2の1キュービット操作を実施するべく構成される。前記第2のロケーションのセット内の前記第1および第2のロケーションは、2キュービット相互作用をイネーブルするべく構成される。前記第1のキュービットおよび前記第2のキュービットは、前記第1のロケーションのセットから前記第2のロケーションのセットへ移行される。前記第2のロケーションのセットは、前記第1のキュービットと前記第2のキュービットの間における前記2キュービット相互作用をイネーブルするべく構成される。前記第1のキュービットおよび前記第2のキュービットは、前記第2のロケーションのセットから前記読み出しロケーションのセットへ移行される。前記読み出しロケーションのセットは、前記第1のキュービットの前記状態と前記第2のキュービットの前記状態を読み出すべく構成される。
【0024】
好ましくは、前記キュービット・プロセッサがSiMOSテクノロジを使用して製造され、低電力要件を伴う高密度キュービット・アレンジメントが可能である。好ましくは、前記キュービット・プロセッサが、nキュービットのグループを処理するべく構成され、通常、各ロケーションのセットが、前記nキュービットのグループに適応するべく少なくともn個のロケーションを有して構成される。前記n個のロケーションのそれぞれは、電極を包含することができる。オプションとして、1つ以上の電極に電圧を印加し、1キュービットまたは2キュービット操作をもたらすことができる。処理ステップの数は、実装されるプログラムに依存する。通常、ステップの数Nは3より大きく、前記キュービット・プロセッサは、通常、少なくともN個のロケーションのセットを包含する。
【0025】
前記キュービット・プロセッサを製造するためのSiMOSテクノロジの使用は、プロセッシング・チップ上におけるキュービットの稠密に詰められたアレンジメントを可能にできるスケーラブル・アーキテクチャを提供することが可能である。説明されているnキュービット処理方法は、N×nの電極のアレンジメント、および好ましくは対応するN×nのロケーションのアレンジメントを必要とすることがある。これは、N個の異なるプロセスをシーケンシャルに実施することが可能な√n×√nアレンジメントの代わりに取り得る方法である。N×nのロケーションのアレンジメントにおいては、N個のロケーションのセットが、N個の時間ステップに好ましく対応し、各ロケーションのセット内のn個のロケーションが、グループ内のキュービットの数に好ましく対応する。SiMOSテクノロジを使用してより大きなロケーション数が可能になり、好都合にも前記キュービット処理方法が必要とする信号発生器からの入力は、より少なくなる。前記キュービット処理の間における前記キュービットのグループのコントロールは、都合よく簡素化される。
【0026】
前記キュービット・プロセッサは、オプションとして、第3のロケーションのセットを包含し;電圧源が、前記第1のロケーションのセットおよび前記第3のロケーションのセットと、前記第1のロケーションのセットと前記第3のロケーションのセットに同時に電圧が印加されるように電気的に接続される。前記第3のロケーションのセットが、好ましくは、前記第2のロケーションのセットと前記読み出しロケーションのセットの間の中間のロケーションのセットになる。説明されているキュービット処理方法の利点は、それぞれの時点において前記プロセッサ内の複数のキュービットのグループを処理する能力である。前記プロセッサに沿った1つのロケーションのセットから次のロケーションのセットへのキュービットの移行は、都合よくグローバルに実施することができる。たとえば、同一の電圧源を使用して前記第1のキュービットのグループおよび前記第2のキュービットのグループの両方を次のロケーションのセットへ、前記第1および第2のキュービットのグループが前記プロセッサ内において空間的に分離されることがあるとしてさえ、移行させることができる。好ましくは、各占有されているロケーションのセットを分離する少なくとも2つの占有されていないロケーションのセットが存在する。好都合なことに、電圧源を各占有されているロケーションのセットと電気的に接続し、前記キュービット・プロセッサを通じた複数のキュービットのグループの移動をコントロールすることができる。
【0027】
前記キュービット・プロセッサは、量子コンピュテーションの一部としてキュービット処理方法を走らせる前にセットアップすることができる。これは、通常、各ロケーションのセット内の各ロケーションが特定の取り回しまたは操作を実施するべく構成されることが可能となるように、各ロケーションにおいて前記電極を局所的に調整することを含む。1つのロケーションの電極を、シングル・キュービット操作を実施するべく構成することができるか、またはロケーションのセット内の隣接するロケーションのペアの電極を、2つのキュービットの間における相互作用をイネーブルするべく構成することができる。好ましくはキュービット・プロセッサが、コンピュテーションを実施する前に構成される。コンピュテーション段階の間においては、各ロケーションのセット、および前記ロケーションのセット内の各ロケーションが、受け取った連続するキュービットのグループのそれぞれに関して同一の操作を実施するように、前記キュービット・プロセッサの構成が、好ましくは固定されたままとなる。
【0028】
好ましくは、前記キュービット処理方法が、コンピレーション段階、ランタイム段階、および読み出し段階を包含する。前記コンピレーション段階の間は、前記第1のロケーションのセット内の前記第1および第2のロケーションは、第1および第2の1キュービット操作をそれぞれ実施するべく構成される。一例においては、前記第1の1キュービット操作がX回転であり、前記第2の1キュービット操作がZ回転である。他の例においては、前記第1および第2の1キュービット操作が同一タイプの操作になる。前記第2のロケーションのセット内の前記第1および第2のロケーションもまた、前記コンピレーション段階の間に、交換相互作用等の2キュービット相互作用をイネーブルするべく構成される。
【0029】
オプションとして、前記コンピレーション段階において、前記キュービット・プロセッサ内のロケーションのセット内のロケーションの電極に印加される電圧を調整することが可能である。この調整は、オプションとして、ロケーションのセット内の個別のロケーションのキュービット・ロジック・ゲートのレート、およびロケーションのセットの間の電子のトンネリング・レートをコントロールする。特定のロケーションのセット上において、電圧調整が、前記ロケーションのセット内の個別のロケーションにおけるキュービット対キュービットの結合強度をコントロールすることができる。ランタイム段階の間は、キュービットを受け取るステップ、操作を実施するステップ、キュービットを移行させるステップ、および相互作用をイネーブルするステップを実施することができる。これらの操作は、前記コンピレーション段階の間に設定された各ロケーションのセット内の各ロケーションの構成に従って実施される。前記コンピレーション段階の前記調整セットアップは、ランタイム段階の間のキュービットおよび前記キュービットによって伝達される量子情報のコントロールを提供することができる。
【0030】
オプションとして、前記ランタイム段階は、ロケーションの2次元グリッド内の第kのロケーションのセットにおけるn個のキュービットの状態を同期的に受け取るステップと;前記第kのロケーションのセットにおける前記キュービットの前記状態に関して、待機からなるとし得る同期された取り回しを実施するステップと;前記第kのロケーションのセットからその後に続く第(k+1)のロケーションのセット上へn個のキュービットの状態を同期的に移行させるステップとを包含する。
【0031】
通常、前記取り回しが1キュービット・ロジック・ゲートのセットを実現するように、交番するロケーションのセットが互いから分離される。中間のロケーションのセット上においては、取り回しが2キュービット・ロジック・ゲートを実現するように、特定の隣接するキュービットが互いに結合されることがある。
【0032】
好ましくは、すべてのロケーションのセットのための上記のランタイム・ステップが完了すると、前記読み出し段階の間に、n個のキュービットの状態が最後のロケーションのセット、すなわち前記読み出しロケーションのセットにおいて読み出される。
【0033】
本発明のさらなる態様は、キュービット・プロセッサ内において量子コンピュテーションを実施するための方法を提供する。前記方法は、第1のロケーションのセット内の第1のロケーションにおいて第1のキュービットを受け取るステップと;前記第1のロケーションのセット内の第2のロケーションにおいて第2のキュービットを受け取るステップと;前記第1のロケーションのセット内の前記第1のロケーションの前記第1のキュービットの状態に関して操作を実施するステップと;前記第1のロケーションのセット内の前記第2のロケーションの前記第2のキュービットの状態に関して操作を実施するステップと;前記第1のキュービットを、前記第1のロケーションのセット内の前記第1のロケーションから第2のロケーションのセット内の第1のロケーションへ移行させるステップと;前記第2のキュービットを、前記第1のロケーションのセット内の前記第2のロケーションから前記第2のロケーションのセット内の第2のロケーションへ移行させるステップと;前記第2のロケーションのセット内の前記第1のキュービットと前記第2のキュービットの間における相互作用をイネーブルするステップと;前記第1のキュービットを、前記第2のロケーションのセット内の前記第1のロケーションから読み出しロケーションのセット内の第1のロケーションへ移行させるステップと;前記第2のキュービットを、前記第2のロケーションのセット内の前記第2のロケーションから前記読み出しロケーションのセット内の第2のロケーションへ移行させるステップと;前記読み出しロケーションのセット内の前記第1のロケーションにおいて前記第1のキュービットの前記状態を読み出すステップと;前記読み出しロケーションのセット内の前記第2のロケーションにおいて前記第2のキュービットの前記状態を読み出すステップと;を包含する。
【0034】
本発明の他の態様は、キュービット・プロセッサを提供する。前記キュービット・プロセッサは、本発明の第1の態様に従った前記キュービット処理方法を実装することが可能である。前記キュービット処理方法のあらゆる特徴を前記キュービット・プロセッサ内において実装することができ、前記キュービット・プロセッサのあらゆる特徴を前記キュービット処理方法の実施に使用することができる。本発明の各態様は、類似する利点を共有する。前記キュービット・プロセッサは、第1のロケーションのセットと;第2のロケーションのセットと;読み出しロケーションのセットとを包含する。各ロケーションのセットは、少なくとも第1のロケーションと第2のロケーションとを包含する。前記第1のロケーションのセットは:前記第1のロケーションにおいて第1のキュービットを、前記第2のロケーションにおいて第2のキュービットを受け取り;かつ、前記第1のキュービットの状態および前記第2のキュービットの状態に関して操作を実施するべく構成される。前記第1のキュービットおよび前記第2のキュービットは、前記第1のロケーションのセットから前記第2のロケーションのセットへ移行される。前記第2のロケーションのセットは、前記第1のキュービットと前記第2のキュービットの間における相互作用をイネーブルするべく構成される。前記第1のキュービットおよび前記第2のキュービットは、前記第2のロケーションのセットから前記読み出しロケーションのセットへ移行される。前記読み出しロケーションのセットは、前記第1のキュービットの前記状態と前記第2のキュービットの前記状態を読み出すべく構成される。
【0035】
以下、次に挙げる添付図面を参照し、本発明の実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】第1の実施形態に従ったキュービット・プロセッサを図解した概略図である。
【
図2】第2の実施形態に従ったキュービット・プロセッサを図解した概略図である。
【
図3】第3の実施形態に従ったキュービット・プロセッサを図解した概略図である。
【
図4A】時間t
aにおける第4の実施形態に従ったキュービット・プロセッサを図解した概略図である。
【
図4B】時間t
b>t
aにおける第4の実施形態に従ったキュービット・プロセッサを図解した概略図である。
【
図5】第5の実施形態に従ったキュービット・プロセッサを図解した概略図である。
【
図6A】時間t
1における第6の実施形態に従ったキュービット・プロセッサを図解した概略図である。
【
図6B】時間t
2における第6の実施形態に従ったキュービット・プロセッサを図解した概略図である。
【
図6C】時間t
3における第6の実施形態に従ったキュービット・プロセッサを図解した概略図である。
【
図6D】時間t
4における第6の実施形態に従ったキュービット・プロセッサを図解した概略図である。
【
図7】第7の実施形態に従ったキュービット・プロセッサにおける操作を図解した概略図である。
【
図8A】第8の実施形態に従ったキュービット・プロセッサにおける操作を図解した第1の概略図である。
【
図8B】第8の実施形態に従ったキュービット・プロセッサにおける操作を図解した第2の概略図である。
【
図9】第9の実施形態に従ったキュービット・プロセッサにおける操作のフローチャートである。
【
図10A】第10の実施形態に従ったキュービット・プロセッサにおける操作を図解した第1の概略図である。
【
図10B】第10の実施形態に従ったキュービット・プロセッサにおける操作を図解した第2の概略図である。
【
図10C】第10の実施形態に従ったキュービット・プロセッサにおける操作を図解した第3の概略図である。
【
図11】第11の実施形態に従ったキュービット・プロセッサにおける操作のフローチャートである。
【
図12】第12の実施形態に従ったキュービット・プロセッサを図解した概略の上面図である。
【
図13A】第13の実施形態に従ったキュービット・プロセッサを図解した概略の上面図である。
【
図13B】第13の実施形態に従ったキュービット・プロセッサを図解した概略の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1は、第1の実施形態における第1、第2、第3、および第Nのロケーションのセット101、102、103、および107を略図的に示している。各ロケーションのセット101-103、107は、キュービットのグループ108を支持し、かつグループ内のキュービットの状態を取り回すべく構成される。この実施形態においては、各ロケーションのセット101-103、107が、当該ロケーションのセット内のキュービットに対してあらかじめ決定済みの操作を実施するべく構成される。量子コンピューティング・スキームにおける一連の操作をキュービットに対して実施するために、キュービットのグループが、1つのロケーションのセットから次のロケーションのセットへシャトリングされる。この実施形態においては、N個のロケーションのセットを含めることによってN個のステップを包含するキュービット処理方法を実装することが可能である。第nのステップは、1≦n≦Nとする第nのロケーションのセットにおいて実施される。第Nのロケーションのセット107は、読み出しロケーションのセットであり、読み出し装置109によって当該グループ内の各キュービットの状態を読み出すことが可能である。
【0038】
図2は、第2の実施形態に従った6つの隣接するロケーションのセット201、202、203、204、205、206を略図的に示している。この実施形態においては、操作の実施に要する時間が各ロケーションのセット201-206について同じになる。キュービット処理方法は、操作ステップとシャトリング・ステップを交番することによって進む。操作ステップの間においては、当該ロケーションのセットのためのあらかじめ決定済みの操作に従ってキュービットのグループが取り回される。シャトリング・ステップの間においては、キュービットのグループが第nのロケーションのセットから第(n+1)のロケーションのセットへシャトリングされ、1≦n≦N-1であり、合計でN個のロケーションのセットが存在する。このキュービットの処理方法は、複数のキュービットのグループを連続的に処理することを都合よく可能にする。
【0039】
図2は、示されている6個のロケーションのセット201-206の間における電気的接続を図解している。第1と第4のロケーションのセット201、204は、第1の電圧源211によって同期してコントロールされる。同様に、第2と第5のロケーションのセット202、205、第3と第6のロケーションのセット203、206は、それぞれ、第2および第3の電圧源212、213によって同期してコントロールされる。電圧源211-213のそれぞれは、高速パルス発生器であり、ロケーションのセットと2つおきに電気的に接続される。電圧源のそれぞれによって印加される電圧は、
図7を参照して説明を後述するとおり、キュービットのグループを第nのロケーションのセットから第(n+1)のロケーションのセットへシャトリングするべく修正することが可能である。単一の電圧源を用いた2つおきのロケーションのセットの同時コントロールは、キュービットのグループを2つおきのロケーションのセットに投入し、かつ同時にシャトリングすることを可能にする。たとえば、
図2を参照するが、第1のロケーションのセット内の第1のキュービットのグループと第4のロケーションのセット内の第2のキュービットのグループを、それぞれ、第1と第4のロケーションのセットのためのあらかじめ決定済みの操作に従って取り回すことが可能である。操作ステップに続いて、第1および第2の電圧源に印加される電圧をコントロールすることによって、第1と第2のキュービットのグループを、それぞれ、第2と第5のロケーションのセットへシャトリングさせることが可能である。シャトリング・ステップに続いて、第1と第2のキュービットのグループを、それぞれ、第2と第5のロケーションのセットのためのあらかじめ決定済みの操作に従って取り回すことが可能である。
【0040】
代替実施形態においては、1つのロケーションのセットからその後に続くロケーションのセットへのキュービットのグループの移行は、スワップ操作を使用して実施される。この例においては、各ロケーションのセット内の各ロケーションが占有されているとすることができる。キュービットは、あらかじめ構成済みのアレンジメントに従って特定のロケーション内において取り回され、その後、スワップ操作が実施される。スワップ操作の間においては、第nの取り回し操作を受けた第nのロケーションのセット内のキュービットを、第nと第(n+1)のロケーションのセットを結合することによって第(n+1)のロケーションのセット内のキュービットと交換することが可能であり、1≦n≦N-1であり、合計でN個のロケーションのセットが存在する。この方法においては、データ・キュービットのグループが、プロセッサを通って第1のロケーションのセットから第Nのロケーションのセットへ進み、そこでそれらの状態が読み出され、補助キュービットが逆方向へ進み、プロセッサ全体を通じたスワップを可能にする。スワップ操作は、任意タイプのキュービットの移行に使用することができるが、特に、超電導キュービットを使用する実装において有利となり得る。シャトリング要件と同様に、第1と第2のキュービットのグループは、少なくとも2つのロケーションのセットに分けられて、隣接するロケーションのセットが結合されるときのグループ間キュービットの相互作用が回避される。
【0041】
キュービット処理方法は、通常、代表的な統計結果の確立に多くの反復を必要とする。説明されるとおりのキュービット・プロセッサ内における連続するキュービットのグループの同時処理は、多くの反復の実施を可能にする。
【0042】
各ロケーションのセットのための操作およびシャトリングの時間が一定であれば、最大で1つおきのロケーションのセットが占有されることがあり、したがって、1つのロケーションのセットから次のロケーションのセットへキュービットのグループを移行させるステップを実施する各電圧源を1つおきのロケーションのセットと電気的に接続することが可能である。他の実施形態においては、各ロケーションのセットのための操作およびシャトリングの時間が一定でないとすることができる。この場合においては、N個のロケーションのセットを、各ブロックのための操作およびシャトリングのステップの実施に要する時間が同じになるブロックに分割することが可能である。各ロケーションのセットのための操作およびシャトリングの時間が一定でない場合には、各占有されているロケーションのセットの間に2より多くの占有されていないロケーションのセットを有する必要が生じることがある。この場合においては、ブロック内の各ロケーションのセットが、異なる電圧源と電気的に接続されることになる。複数のロケーションのセットのコントロールに1つの電圧源を同時に使用することは、キュービット処理方法において必要とされる数、コントロールの複雑性、およびリソースの相互接続を都合よく減ずる。
【0043】
他の実施形態においては、特定のロケーションのセットにおける操作が、ほかのロケーションのセットにおける操作の実施に要するより有意に、たとえば一桁以上長いことがある。たとえば、第1のロケーションのセットにおける初期化操作または第Nのロケーションのセットにおける読み出し操作が、実施に長い時間を要することがある。この例においては、キュービット・プロセッサが、単一のキュービットのグループのサポートだけが可能であるとすることができる。しかしながら、プロセッサを通じたグループの移行に必要とされるリソース、および、同様に処理の複雑性は、それにもかかわらず低減されることになる。キュービット・プロセッサによって同時に1つだけのキュービットのグループが処理される場合には、移行ステップの実施に電圧源をN個ではなく3つだけ使用することができる。
【0044】
図3は、第3の実施形態に従ったキュービット・プロセッサ回路の例示的な部分である。4つのロケーションのセット301、302、303、304が示されており、各ロケーションのセット301-304内のそれぞれのロケーションにある5つの電極305、306、307、308、309を含む。各ロケーションのセット301-304は、nキュービットのグループを受け取ることができ、各電極305-309がキュービット(単数形)を受け取ることができる。この実施形態においては、各キュービットのグループ内に5つのキュービットが存在し、すなわちn=5である。第1のロケーションのセット301には、5つのシングル・キュービット量子ロジック・ゲート311、312、313、314、315が存在する。第2のロケーションのセット302においては、第1と第2の電極、および第4と第5の電極が、それぞれ結合されて2キュービット量子ロジック・ゲート321、322を形成している。第2のロケーションのセット302は、第1のロケーションのセット301からの、第1のロケーションのセットにおいてシングル・キュービット操作を受けた第1と第2のキュービットが、第2のロケーションのセット302において互いに相互作用するように構成される。類似する相互作用が、第2のロケーションのセット302内の第4と第5のキュービットの間において生じる。第3のロケーションのセット303および第4のロケーションのセット304内にそれぞれ略図的に図解されている2キュービット量子ロジック・ゲート323、324は、キュービット処理方法の間に各キュービットが、直接または間接的に残りのキュービットと相互作用することを確保する。これは、概して、隣接するキュービット、すなわち、1<i<nについての第iのキュービットと第(i-1)および第(i+1)のキュービットの間における相互作用をイネーブルすることによって達成される。代替実施形態においては、2つの電極を結合して2キュービット相互作用をイネーブルすることが、キュービット・プロセッサ内の任意のロケーションのセット内において生じることができる。
【0045】
図4Aおよび4Bは、第4の実施形態に従ったキュービット・プロセッサ回路の一部を略図的に図解している。この例においては、キュービットが電子スピン・キュービットであり、電子が、量子ドット内に閉じ込められ、量子情報が電子のスピン状態に収められる。3つのロケーションのセット401、402、403が示されている。
図4Aにおいては、5つのキュービットを包含するnキュービット405、406、407、408、409(すなわち、n=5)のグループが、第1のロケーションのセット401のためにプリセットされたコントロール・パラメータに従って取り回される。この実施形態においては、第1のロケーションのセット内のロケーションの各電極が、シングル・キュービット量子ロジック・ゲート411、412、413、414、415として構成される。第1のロケーションのセット401における操作ステップの間に、キュービットのグループ内の各キュービット405-409が、したがって、シングル・キュービット操作を受ける。第1のロケーションのセット401における操作ステップの後であり、かつ第1のロケーションのセット401から第2のロケーションのセット402へのシャトリング・ステップの前の時間t
aにおける各キュービット405-409の状態が、Ψ
i
taとして表されており、1≦i≦5である。シャトリング時間Δt
sにわたり、5つのキュービット405-409が、第2のロケーションのセット402へ、水平のラインによって示されているとおり、移行される。
【0046】
図4Bにおいては、キュービット405-409のグループが第2のロケーションのセット402内にある。第2のロケーションのセットは、1つの1キュービット量子ロジック・ゲート422と、2つの2キュービット量子ロジック・ゲート421、423を包含している。キュービット405-409のグループは、操作時間Δt
gの間に、1キュービットおよび2キュービット・ゲート421、422、423によって取り回される。時間t
bにおけるキュービット405-409のそれぞれの状態が、Ψ
i
tbとして表されており、1≦i≦5である。実施される操作は、キュービット処理プログラムを走らせる前にプリセットされるコントロール・パラメータの調整に依存する。調整のレベルが陰影によって略図的に示されている。たとえば、1キュービット量子ロジック・ゲートのために回転の角度を調整することが可能であり、あるいは2キュービット量子ロジック・ゲートのためにキュービットキュービットの相互作用の強度を調整することが可能である。コントロール・パラメータは、特定のプログラムの実行の間にわたって固定されたままであるが、異なるプログラムの実施に向けて再調整することが可能である。
【0047】
図5は、第5の実施形態に従ったキュービット・プロセッサ回路の例示的な部分であり、分離構成と結合構成のロケーションのセットが交番する。4つのロケーションのセット351、352、353、354が示されており、各ロケーションのセット351-354内のそれぞれのロケーションにある5つの電極355、356、357、358、359を含む。第1と第3のロケーションのセット351、353は、分離構成である。第1のロケーションのセット351には、5つの1キュービット量子ロジック・ゲート361、362、363、364、365が存在する。第3のロケーションのセット353もまた、5つの1キュービット量子ロジック・ゲート381、382、383、384、385を有する。中間のロケーションのセット、すなわち第2および第4のロケーションのセット352、354は、結合構成であり、2キュービット・ロジック・ゲートを具現するべく隣接するキュービットが互いに結合される。第2のロケーションのセット352においては、第1と第2の電極355、356のキュービット、および第3と第4の電極357、358のキュービットが結合されて2キュービット量子ロジック・ゲート371、372を形成している。第4のロケーションのセット354においては、第2と第3の電極356、357、および第4と第5の電極358、359のキュービットがそれぞれ結合されて、2キュービット量子ロジック・ゲート391、392が構成されている。第4のロケーションのセット354内の2キュービット量子ロジック・ゲート391、392は、第2のロケーションのセット352内の2キュービット量子ロジック・ゲート371、372からオフセットされている。この2キュービット・ゲートのアレンジメントは、キュービット・プロセッサ内におけるキュービットの間の直接または間接的相互作用をもたらす。代替実施形態においては、隣接する電極の任意のペアを結合して2キュービット・ゲートを具現することができる。
【0048】
図5において、第1から第4までの時間、t
11、t
12、t
13、t
14は、時間的に連続するポイントにおけるプロセッサ内のキュービットのグループの位置を略図的に示している。時間t
11では、キュービットのグループが、第1のロケーションのセット351から第2のロケーションのセット352へ移行される。時間t
12では、キュービットのグループ内の隣接するキュービットの間の第2のロケーションのセット352における相互作用がイネーブルされる。時間t
13では、キュービットのグループが、第2のロケーションのセット352から第3のロケーションのセット353へ移行される。時間t
14では、キュービットのグループ内の各キュービットが、第3のロケーションのセット353において1キュービット操作を受ける。
【0049】
図6A、6B、6C、および6Dは、第6の実施形態に従ったキュービット・プロセッサ回路の一部を略図的に図解している。分離構成と結合構成が交番する4つのロケーションのセット451、452、453、454が示されている。キュービット処理方法のランタイム段階の間の時間的に異なるポイントにおける5つのキュービット455、456、457、458、459を包含するキュービットのグループのキュービット・プロセッサ内における位置決めが図解されている。キュービット・プロセッサの処理パラメータ、すなわちキュービットの歳差周波数および最近傍接続性が、ランタイム段階に先行するコンピレーション段階において調整される。最近傍接続性の選択的調整が、1キュービットおよび2キュービット・ロジック・ゲートを形成する。
【0050】
図6Aには、第1の移行ステップが図示されている。時間t
1におけるキュービットが図解されており、キュービットの状態が、1≦i≦5に関してΨ
i
t1として表されている。第1のロケーションのセット451は、5つの1キュービット量子ロジック・ゲート461、462、463、464、465を含む分離アレンジメントで構成される。キュービットのグループ455-459内の、第1のロケーションのセット451の1キュービット・ゲート461-465における1キュービット操作を受けた各キュービットは、水平のラインによって示されるとおり、時間Δt
sにわたって第2のロケーションのセット452へ移行される。
【0051】
図6Bにおいて、キュービットのグループ内のキュービット455-459は、時間t
2>t
1における、結合アレンジメントで構成された第2のロケーションのセット452内にある。操作時間Δt
gにわたって、キュービット455-459のグループが取り回される。第1の2キュービット量子ロジック・ゲート471において第1と第2のキュービット455、456の間、および第2の2キュービット量子ロジック・ゲート472において第3と第4のキュービット457、458の間の相互作用がイネーブルされる。2キュービット量子ロジック・ゲート473の一部が示されているが、第5のキュービット459が隣接するキュービット(図示せず)と相互作用する。時間t
2におけるキュービットの状態が、1≦i≦5に関してΨ
i
t2として表されている。
【0052】
図6Cは、
図6Aに示されているものに類似の、第2の移行ステップを図解している。時間t
3>t
2におけるキュービットの状態が、1≦i≦5に関してΨ
i
t3として表されている。キュービット455-459は、
図6Bに図解されているとおり、第2のロケーションのセット452内において2キュービット操作を受けている。時間Δt
sの間に、キュービットのグループ455-459が、第2のロケーションのセット452から第3のロケーションのセット453へ移行される。
【0053】
図6Dは、時間t
4>t
3における第3のロケーションのセット453のキュービットのグループ455-459を図解しており、1≦i≦5に関するΨ
i
t4としてキュービットの状態が表されている。第3のロケーションのセット453は、分離構成である。第3のロケーションのセット453には、5つの1キュービット量子ロジック・ゲート481、482、483、484、485が存在する。操作時間Δt
gの間に、キュービットのグループ内の各キュービット455-459は、1キュービット操作を受ける。
【0054】
図7は、第7の実施形態に従ったキュービットのシャトリングを略図的に図解している。グラフは、ある距離にわたる電気的ポテンシャル・エネルギ(任意単位)の変化を図示する。電気的ポテンシャル・エネルギは、2つのロケーションのセット501、502内の2つの捕獲ロケーションを横切る。この実施形態において、電子を『捕獲』し、1つのロケーションのセットから他のロケーションのセットへ電子を運ぶべく電子ポテンシャルの景観を変更することが可能である。電気的ポテンシャル・エネルギは、シャトリング時間Δt
sの間の時間的な4つのポイントt
s1、t
s2、t
s3、t
s4において図解されており、t
s1<t
s2<t
s3<t
s4である。時間t
s1においては、電子が第1のロケーションのセット501内に捕獲される。電子は、ロケーションのセット501と502の間においてバイアスを逆にすることによって第1のロケーションのセット501から第2のロケーションのセット502へシャトリングされる。これは、シャトリング・ステップの間に、第1のロケーションのセット501内の捕獲ロケーションにおける電極の電気的ポテンシャル・エネルギの上昇と、第2のロケーションのセット502内の捕獲ロケーションにおける電極の電気的ポテンシャル・エネルギの降下をもたらす。その間、周囲の電極の電気的ポテンシャル・エネルギは、ロケーションのセット内の特定のロケーションに電子が閉じ込められるように、捕獲スレッショルドより上に維持される。第2のロケーションのセット502のためのバイアス電圧が増加し、第1のロケーションのセット501のためのそれが減少することから、電気的ポテンシャルとともに電子が移動し、電子が低い電気的ポテンシャルを捜し出して1つのロケーションのセットから次へとシャトリングされる。バイアスのシフトは、単一のキュービットのグループのために最小の移動ポテンシャルを局所的に作り出す。時間t
s4において、電子が、第2のロケーションのセット502内に捕獲される。
【0055】
図8Aおよび8Bは、1つのキュービットキュービットのシャトリング操作を略図的に図解している。この例においては、各ロケーションのセット601、602、603、604、605、606における操作ステップのための処理時間が同じである。したがって、各キュービットのグループは、直前のキュービットのグループから3つのロケーションのセットの後にキュービット・プロセッサに入ることが可能である。この実施形態においては、6つの連続するロケーションのセット601-606が示されている。各ロケーションの各電極が、正方形によって略図的に示されており、電極の電子のポテンシャルが陰影の濃さによって示されている。より暗い陰影は、より高い電気的ポテンシャル・エネルギに対応する。キュービット611、612は、電極上の円によって示されている。この実施形態においては、各ロケーションのセット601-606は、低い電気的ポテンシャル・エネルギを含む電極を包含する『捕獲』ロケーションを包含する。各捕獲ロケーションは、高い電気的ポテンシャル・エネルギを含む電極を包含する閉じ込めロケーションによって取り囲まれている。
図8Aにおいて、第1と第4のロケーションのセット601、604のポテンシャルは、それぞれの捕獲ロケーション621、624の電極のポテンシャル井戸が、捕獲スレッショルドより下に落ち、電子611、612が捕獲されるようにオフセットされる。
【0056】
シャトリング・プロセスにおいては、第2と第5のロケーションのセット602、605の電気的ポテンシャル・エネルギが下げられ、その一方で第1と第4のロケーションのセット601、604の電気的ポテンシャル・エネルギが上げられる。このようにして電子が、キュービット・プロセッサに沿って並列に移行される。
図8Bにおいては、電子が、それぞれ第2と第5のロケーションのセット602、605内の捕獲ロケーション622、625にシャトリングされている。捕獲ロケーション621、622、623、624、625、626を取り囲む閉じ込めロケーション631、632、633、634、635、636、641、642、643、644、645、646における電極の電気的ポテンシャル・エネルギは、電子を捕獲するには高すぎ、したがって、これらの電極は、ロケーションのセット内の選択されたロケーションへ電子を案内する。
【0057】
図9は、キュービット処理方法における単一キュービットを含む操作を説明したフローチャートである。第nのロケーションのセット内のあるロケーションでキュービットが受け取られる(701)。これは、オフセット電圧を印加して第nのロケーションのセットのポテンシャル井戸を下げ、捕獲ロケーションに電子を捕獲することによって達成される。キュービットが捕獲された後、キュービットの状態に関する操作が実施される(702)。当該操作は、たとえば、XまたはZ回転とすることができ、この操作をコントロールするパラメータは、キュービット・プロセッサのコンピレーション段階においてあらかじめ決定される。キュービットの状態の取り回しの後、キュービットは、第nのロケーションのセット内の当該ロケーションから、第(n+1)のロケーションのセット内の対応するロケーションへ移行される(703)。
【0058】
図10A、10B、および10Cは、2つのキュービットを含むシャトリング操作を略図的に図解している。
図10Aにおいては、第2のロケーションのセット802のポテンシャルが、第2のロケーションのセット802内にn個のキュービットのグループが捕獲されるようにオフセットされ、これにおいて、n=2である。第2のロケーションのセット802内の電極は、2つのキュービット831、832が捕獲ロケーション843、844内に捕獲され、閉じ込めロケーション854、855、856によって分離されるように構成される。各キュービット831、832は、第2のロケーションのセット802内においてシングル・キュービット操作を受けるが、それに要する時間は、Δt
g2である。
【0059】
図10Bは、シャトリング・プロセスにおける第2のロケーションのセット802から第3のロケーションのセット803への電子の移動を図解している。このシャトリング・プロセスに要する時間は、Δt
s2である。第3のロケーションのセット803内においては、第2のロケーションのセット802内の閉じ込めロケーション855によって分離された2つのキュービット831、832が結合される。これは、第2のロケーションのセット802内の閉じ込めロケーション854-856の電極および第3のロケーションのセット803内の閉じ込めロケーション857、858、859の電極を、第2のキュービット832が、第2のロケーションのセット802内の捕獲ロケーション844から第3のロケーションのセット803内の捕獲ロケーション846へ斜めにシャトリングされるように構成することによって達成される。第1のキュービット831は、第2のロケーションのセット802内の捕獲ロケーション843から第3のロケーションのセット803内の捕獲ロケーション845へ水平にシャトリングされる。第3のロケーションのセット803内においては、第1と第2のキュービット831、832の間のトンネル結合が、それらが隣接ロケーション内にあることから増加する。これは、第3のロケーションのセット803内における第1と第2のキュービット831、832の間の2キュービット相互作用をイネーブルする。この例においては、2キュービット相互作用が、時間Δt
g3=Δt
g2にわたって生じる。
【0060】
図10Cには、時間Δt
s3=Δt
s2を要する第2のシャトリング・プロセスにおける電子の移動が示されており、第1のキュービットのグループが第3のロケーションのセット803から第4のロケーションのセット804へシャトリングされる。第4のロケーションのセット804においては、第2のキュービット832が、斜めにシャトリングされて第1のキュービット831から離れ、第1と第2のキュービット831、832が、第4のロケーションのセット804内において、時間Δt
g4=Δt
g2にわたってシングル・キュービット操作を受ける。第1のキュービットのグループが第3のロケーションのセット803から第4のロケーションのセット804へシャトリングされるときと同時に、第1のロケーションのセット801において第3のキュービット833および第4のキュービット834を包含する第2のキュービットのグループが受け取られる。
【0061】
この例においては、シャトリング時間Δtsi(これにおいて、iは、キュービットのグループの移行元のロケーションのセットを示す)が、各ロケーションのセットについて等しい。同様に操作時間Δtgi(これにおいて、iは、操作が実施されるロケーションのセットを示す)が、各ロケーションのセットについて等しい。通常、操作時間は、シャトリング時間より有意に長く、Δtgi>>Δtsiである。たとえば、操作時間を1×10-6秒台とすることができ、シャトリング時間を1×10-9秒台とすることができる。ほかの実施形態においては、操作時間および/またはシャトリング時間がロケーションのセットの間において異なることができ、また第1と第2のキュービットのグループを、2つより多くの占有されていないロケーションのセットに分離することができる。
【0062】
キュービットのグループを次々にシャトリングする一方、基礎となる電気的ポテンシャルの景観を固定したままにするために、電圧源が特定のロケーションのセットへのグローバル・オフセットの印加に使用される。このシャトリング・プロセスは、高速であり、要する時間は、通常、約1ナノ秒である。そのため、
図10Cの第1のロケーションのセット801内に捕獲された第2のキュービットのグループの第3と第4のキュービット833、834は、
図10A、10B、および10Cの第1のキュービットのグループの第1と第2のキュービット831、823について図解されているとおりの同じパターンの相互作用を受けることになる。
【0063】
図11は、キュービット処理方法における2つのキュービットを含む操作を説明したフローチャートである。第1のキュービットのグループが第1のロケーションのセットにおいて受け取られる(901)。それに続いて、あらかじめ決定済みのパラメータに従ってキュービットの状態が取り回される(902)。その後、第1のキュービットのグループは、第1のロケーションのセットから第2のロケーションのセットへ移行され(903)、そのポイントにおいて、それらの状態が再び取り回される(904)。第2のロケーションのセット内における操作段階の後、第1のキュービットのグループは、第3のロケーションのセットへ移行される(905)。この実施形態においては、第1と第2のロケーションのセットにおける操作がシングル・キュービット操作であり、第3のロケーションのセットに2キュービット操作が存在する。電気的ポテンシャルの景観は、通常、2つのキュービットをきわめて接近させてトンネル結合を増加させることによって2キュービット相互作用をイネーブル(906)するような形になる。たとえば、第1のキュービットを水平に移動することができ、第2のキュービットを、第1のキュービットと隣接するように、水平および垂直に移動することができる。2つのキュービットの相互作用の後、第1のキュービットのグループは、第3のロケーションのセットから第4のロケーションのセットへ移行される(907)。同時に、第1のロケーションのセットにおいて、第2のキュービットのグループが受け取られる(908)。第2のキュービットのグループは、第1のキュービットのグループと同じ操作ステップ、移行ステップ、および相互作用ステップ902-907を、わずかな時間的遅延を伴って受ける。このアレンジメントを使用し、同じ方法で複数のキュービットのグループを取り回し、処理することが可能である。
【0064】
図12は、SiMOSテクノロジを使用して製造された電子スピン・キュービットのためのキュービット・プロセッサの実装の上面図を略図的に図解している。下側シリコン層、中間絶縁層、および上側シリコン層を包含するシリコン・オン・インシュレータ(SOI)基板が、シリコン・ナノワイヤ(SiNW)の隆起した『グリッド』1001が残るように選択的にエッチングされる。上側シリコン層は、グリッドが作成され、かつSOI基板(図示せず)の下側シリコン層および中間絶縁層によって支持されるように選択的にエッチングされる。
【0065】
グリッドは、水平SiNW 1002および垂直SiNW 1003と呼ばれる直交するナノワイヤの2次元アレイを包含する。二酸化ケイ素SiO
2等の誘電体材料がSiNWのトップに配されて静電バリアを形成する。4つの表面電極1011、1012、1013、1014が、水平と垂直のSiNW 1002、1003の間の交点におけるグリッドの実質的に平坦な領域上に備えられる。3つの交換電極1004、1006、1008が、水平SiNW 1002の実質的に平坦な領域上に備えられる。交換電極1004、1006、1008の下側の各交換領域は、2つの閉じ込め領域と結合することが可能であり、閉じ込め領域は、表面電極1011-1014の下側になる。
図12において、第1と第2の表面電極1011、1012は、第1の交換電極1004を挟んで対向する側に位置決めされる。
【0066】
垂直SiNW 1003のそれぞれは、2つのエッジ1020、1030、1040、1050を有する。20個のエッジ電極1021、1022、1023、1024、1025、1031、1032、1033、1034、1035、1041、1042、1043、1044、1045、1051、1052、1053、1054、1055が、垂直SiNW 1003のそれぞれのエッジ1020、1030、1040、1050の上に備えられる。第1のエッジ1020上の各エッジ電極1021-1025は、第2のエッジ1030上の他のエッジ電極1031-1035の反対側に配され、エッジ電極のペアを形成する。同様に、第3のエッジ1040上の各エッジ電極1041-1045は、第4のエッジ1050上の他のエッジ電極1051-1055の反対側に配され、エッジ電極のペアを形成する。各ペアのエッジ電極は、10ナノメートルで離隔される。エッジ電極の隣接ペアは、10ナノメートルで離隔される。代替実施形態においては、SiNWを横切るエッジ電極の間の離隔を最大で200ナノメートルとすることができ、またSiNWに沿ったエッジ電極の間の離隔を最大で200ナノメートルとすることができる。各エッジ電極1021-1025、1031-1035、1041-1045、1051-1055は、量子ドットを、それぞれのエッジ電極の下のシリコン・グリッド1001内に誘導可能となるように構成される。これらの量子ドットは、キュービットを受け取ることが可能なロケーションを定義する。
【0067】
表面電極1011-1014は、ポリシリコンから形成される。金から形成されたそれぞれの導電性ビア1015、1016、1017、1018、または垂直相互接続アクセスが、表面電極1011-1014のそれぞれと電気的に接続されている。バイアス・ポテンシャルを表面電極1011-1014に印加して、それぞれの表面電極1011-1014の下のシリコン・グリッド1001内に閉じ込め領域を誘導することが可能である。交換電極1004、1006、1008もまた、導電性材料を包含し、対応する、導電性材料を包含する導電性ビア1005、1007、1009と電気的に接続されている。バイアス・ポテンシャルを交換電極1004、1006、1008に印加して、これらの交換電極の下の領域をドープし、垂直SiNW 1003の間において量子情報を交換する手段を提供することが可能である。
【0068】
同様に、エッジ電極1021-1025、1031-1035、1041-1045、1051-1055は、導電性材料を包含し、対応する、導電性材料を包含する導電性ビア1061、1062、1063、1064、1065、1071、1072、1073、1074、1075、1081、1082、1083、1084、1085、1091、1092、1093、1094、1095と電気的に接続されている。
図12において、これらの導電性ビアは、各エッジ電極の一端に位置決めされている。しかしながら、導電性ビアの位置決めは、デバイスの電気的パフォーマンスに影響を与えない。バイアス・ポテンシャルをエッジ電極1021-1025、1031-1035、1041-1045、1051-1055に印加して、SiNWのエッジに量子ドットを誘導することが可能である。
【0069】
代替実施形態においては、交換電極1004、1006、1008、表面電極1011-1014、エッジ電極1021-1025、1031-1035、1041-1045、1051-1055、および導電性ビア1005、1007、1009、1015-1018、1061-1065、1071-1075、1081-1085、1091-1095を、任意の導電性材料から形成することが可能である。
【0070】
エッジ電極1021-1025、1031-1035、1041-1045、1051-1055、および表面電極1011-1014は、キュービット処理方法の間におけるシリコン・グリッド1001内のキュービットのサポートに使用することが可能であり、交換電極1004、1006、1008は、2キュービット相互作用のイネーブルに使用することが可能である。
【0071】
図12に示されている実装においては、以前の図に関して説明されているとおり、ロケーションのセットが水平SiNW 1002と平行である。ロケーションのセット内の各ロケーションは、電極を包含する。キュービット処理方法の間におけるキュービットの移動は、実質的に垂直である。たとえば、第1のキュービットは、(a)第1のエッジ1020の第1のエッジ電極1021から第1の表面電極1011へ、その後(b)第1のエッジ1020の第2のエッジ電極1022へ、その後(c)第1のエッジ1020の第3のエッジ電極1023へ、その後(d)第2のエッジ1030の第4のエッジ電極1034へ、その後(e)第3の表面電極1013へ、その後(f)第2のエッジ1030の第5のエッジ電極1035へ移動することができる。第2のキュービットは、(a)第4のエッジ1050の第1のエッジ電極1051から第2の表面電極1012へ、その後(b)第4のエッジ1050の第2のエッジ電極1052へ、その後(c)第4のエッジ1050の第3のエッジ電極1053へ、その後(d)第3のエッジ1040の第4のエッジ電極1044へ、その後(e)第4の表面電極1014へ、その後(f)第3のエッジ1040の第5のエッジ電極1045へ移動することができる。
【0072】
第1と第2のキュービットは、グループとしてキュービット・プロセッサを通って移動することになるキュービットのグループの一部を形成する。第1のキュービットのためのステップ(a)-(f)は、第2のキュービットのためのステップ(a)-(f)と同時に生じる。ステップ(a)においては、第1のキュービットおよび第2のキュービットのそれぞれが、エッジ電極から第1および第2の表面電極1011、1012へそれぞれ移行される。この時点において、第1と第2のキュービットの間において2キュービット相互作用がイネーブルされる。2キュービット相互作用は、第1の交換電極1004によってもたらされる。シングル・キュービット操作は、水平SiNW 1002と平行な任意のエッジ電極のペアにおいて実施することができる。ステップ(e)においては、第1と第2のキュービットが、それぞれ、第3と第4の表面電極1013、1014へ移行される。
【0073】
代替実施形態においては、隣接する水平SiNWの間に任意数のエッジ電極を位置決めすることができる。さらにまた、各表面電極の間に交換電極を位置決めすることができる。交換電極は、選択的なバイアシングによってコントロールされ、関係する交換相互作用を提供する2キュービット・ゲートのロケーションをコントロールすることが可能である。
【0074】
図13Aおよび13Bは、キュービット・プロセッサの他の実装の上面図および断面側面図をそれぞれ略図的に図解している。この実装は、
図12を参照して説明されている実装と類似である。
【0075】
図13Aにおいては、SiNWグリッド2001が、水平SiNW 2002および垂直SiNW 2003を備える。二酸化ケイ素SiO
2を包含する第1の誘電体層2101が、SiNWグリッド2001上に備えられる。水平SiNW 2002の実質的に平面状の領域上に備えられる交換電極2004は、第1と第2の表面電極2011、2012のそれぞれの下の閉じ込め領域の間における交換相互作用をもたらすべく構成することが可能である。交換電極2004は、導電性ビア2005と電気的に接続されており、第1と第2の表面電極2011、2012は、導電性ビア2015、2016とそれぞれ電気的に接続されている。
【0076】
金属のエッジ電極2021および導電性ビア2031が、
図12に関して説明されているとおり、垂直SiNW 2003のエッジに沿って提供される。第2の誘電体層2102が、SiNW 2002、2003、交換電極2004、表面電極2011、2012、およびエッジ電極2021の上に重なってグリッド2001上に備えられる。トップ電極2041が、垂直SiNW 2003の上に重なって備えられる。
【0077】
この実施形態においては、水平および垂直のSiNW 2002、2003の幅が実質的に同じであるが、第2の誘電体層2012およびトップ電極2041がSiNW 2002、2003の上に重なって位置決めされていることから、上面図においてはこれが不明瞭である。
【0078】
図13Bは、
図13Aに示されているラインAに沿ったプロセッサの断面図を示している。第1の誘電体層2101は、垂直SiNW 2003の上に重ねて配される。SiNW 2003は、2つのエッジ2020、2030を有する。2つの金属のエッジ電極2021は、SiNW 2003のそれぞれのエッジ2020、2030上に重ねて位置決めされる。2つの導電性ビア2031のそれぞれは、2つの金属のエッジ電極2021のうちの1つと電気的に接触している。第2の誘電体層2102は、SiNW 2003および金属のエッジ電極2021の上に重ねて配される。
【0079】
認識されるとおり、方法の実施に必要となるリソースが低減されるNISQ時代に使用するための向上したキュービット処理方法およびキュービット・プロセッサが提供されている。量子コンピューティングのためのSiMOSデバイス内に稠密なキュービット・アーキテクチャを実装することが可能である。提供されるキュービットの大規模アレイのコントロールの簡素化は、これらのデバイスのスケールアップを実現可能にする。
【符号の説明】
【0080】
101、102、103、107、301、302、303、304、351-354、401、402、403、501、502、601、602、603、604、605、606 ロケーションのセット
305、306、307、308、309、355-358 電極
311、312、313、314、315、321、322、361、361、362、363、364、365、371、372、381、382、383、384、385、391、392、411、412、413、414、415、421、423、461、462、463、464、465 ロジック・ゲート
405、406、407、408、409、455、456、457、458、459、611、612、831、832 キュービット
622、625、843、844 捕獲ロケーション
631、632、633、634、635、636、641、642、643、644、645、646、854、855、856 閉じ込めロケーション
1004、1006、1008 交換電極
1005、1007、1009、1015、1016、1017、1018、1061、1062、1063、1064、1065、1071、1072、1073、1074、1075、1081、1082、1083、1084、1085、1091、1092、1093、1094 導電性ビア
1011、1012、1013、1014、2011、2012 表面電極
1020、1030、1040、1050、2020、2030 エッジ