(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】インピーダンス整合回路およびプラズマ給電システムおよび動作させるための方法
(51)【国際特許分類】
H03H 11/28 20060101AFI20241125BHJP
H03H 7/38 20060101ALI20241125BHJP
H05H 1/46 20060101ALI20241125BHJP
【FI】
H03H11/28
H03H7/38 B
H05H1/46 R
(21)【出願番号】P 2022562696
(86)(22)【出願日】2021-04-12
(86)【国際出願番号】 EP2021059449
(87)【国際公開番号】W WO2021209390
(87)【国際公開日】2021-10-21
【審査請求日】2022-10-14
(31)【優先権主張番号】202020102084.6
(32)【優先日】2020-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】505169226
【氏名又は名称】トゥルンプフ ヒュッティンガー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】TRUMPF Huettinger GmbH + Co. KG
【住所又は居所原語表記】Boetzinger Strasse 80,D-79111 Freiburg,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ビルガー ノルトマン
【審査官】福田 正悟
(56)【参考文献】
【文献】特表2000-512460(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0041183(US,A1)
【文献】特表2019-525508(JP,A)
【文献】特開2003-258605(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 11/28
H03H 7/38
H05H 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波端子(RFin)に接続された直列回路(10)を備えたインピーダンス整合回路(11)であって、
前記直列回路(10)は、少なくとも1つのリアクタンスと、駆動制御回路(12)が接続された駆動制御入力側(G)を有する少なくとも1つのスイッチング素子(T1,T2)とを含
み、前記少なくとも1つのリアクタンスの一端が前記高周波端子(RFin)に接続され、前記少なくとも1つのリアクタンスの他端が前記少なくとも1つのスイッチング素子(T1,T2)の一端に接続されている、インピーダンス整合回路(11)において、
前記駆動制御回路(12)は、カプラ(13)を介してイネーブル信号入力側(enable)に接続されており、
前記駆動制御回路(12)は、参照回路(17)を介して前記
少なくとも1つのスイッチング素子(T1,T2)の他端に接続され、
前記参照回路(17)は、
直列に接続された2つの内部DC電圧源(V1,V2)を有
し、
前記直列に接続された前記2つの内部DC電圧源(V1,V2)の共通の接続点は、前記少なくとも1つのスイッチング素子(T1,T2)の前記他端に接続され、
前記直列に接続された前記2つの内部DC電圧源(V1,V2)の他の接続点は、前記駆動制御回路(12)に接続されている、
ことを特徴とする、インピーダンス整合回路(11)。
【請求項2】
前記インピーダンス整合回路は、動作中に、すなわち前記高周波端子(RFin)に電圧が印加されているときに、前記少なくとも1つのスイッチング素子(T1,T2)をオンオフするように設計されている、請求項1記載のインピーダンス整合回路。
【請求項3】
前記直列回路(10)は、逆直列に接続された2つのトランジスタを有し、前記トランジスタは、前記トランジスタのソース端子(S)において相互に接続され、共通のソース電位に置かれている、請求項1または2記載のインピーダンス整合回路。
【請求項4】
前記駆動制御回路(12)は、少なくとも1つのチョーク(L3,L4)を介して供給電圧(Vbias)に接続されている、請求項1から3までのいずれか1項記載のインピーダンス整合回路。
【請求項5】
前記駆動制御回路(12)は、ソース電位に接続されている、請求項1から4までのいずれか1項記載のインピーダンス整合回路。
【請求項6】
前記駆動制御回路(12)は、参照回路(17)を介して前記直列回路(10)のソース端子(S)に接続されている、請求項1から5までのいずれか1項記載のインピーダンス整合回路。
【請求項7】
前記参照回路(17)は、分圧器(R3,R4)を有している、請求項1から6までのいずれか1項記載のインピーダンス整合回路。
【請求項8】
前記内部DC電圧源(V1,V2)は、それぞれ1つのコンデンサ(C3,C4)を有している、請求項1から7までのいずれか1項記載のインピーダンス整合回路。
【請求項9】
前記直列に接続された前記2つの内部DC電圧源(V1,V2)の共通の接続点は、前記ソース電位に接続されている、請求項3を引用する請求項
8記載のインピーダンス整合回路。
【請求項10】
前記参照回路(17)は、少なくとも1つのチョーク(L3,L4)を介して供給電圧(Vbias)に接続されている、請求項1から
9までのいずれか1項記載のインピーダンス整合回路。
【請求項11】
前記直列回路(10)は、ソース電位がアース電位であるスイッチングトランジスタを有する、請求項1から
10までのいずれか1項記載のインピーダンス整合回路。
【請求項12】
プラズマ給電システム(1)であって、高周波電力発生器(40)と、基板をコーティングまたはエッチングするための、高周波によって動作されるプラズマプロセスの形態の負荷(28)と、請求項1から
11までのいずれか1項記載のインピーダンス整合回路(11)とを備えた、プラズマ給電システム(1)。
【請求項13】
請求項
12記載のプラズマ給電システムにおける、請求項1から
11までのいずれか1項記載のインピーダンス整合回路を動作させるための方法であって、
前記方法は、以下の方法ステップ:
a)1つまたは複数のスイッチング素子を、1つまたは複数の駆動制御端子と、1つまたは複数のソース端子との間の大きな正の電圧によってスイッチオンするステップと、
b)1つまたは複数のスイッチング素子を、1つまたは複数の駆動制御端子と、1つまたは複数のソース端子との間の負の電圧によってスイッチオフするステップと、
c)1つまたは複数のスイッチング素子の1つまたは複数のドレイン端子に高電圧を接続するステップであって、前記高電圧は、絶対値で見て、前記ドレイン端子と前記ソース端子との間の絶対値で見て最大の電圧よりも大きいステップと、
d)1つまたは複数のスイッチング素子の1つまたは複数のドレイン端子から高電圧を遮断するステップと
のうちの1つまたは複数を含む、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
本発明は、高周波端子(HF端子)に接続された直列回路を有するインピーダンス整合回路に関し、ここで、直列回路は、少なくとも1つのリアクタンス、特にキャパシタンスと、駆動制御回路が接続された駆動制御入力側を有する少なくとも1つのスイッチング素子とを含む。
【0002】
本発明は、そのようなインピーダンス整合回路を備えるプラズマ給電システムも含む。
【0003】
本発明は、特に上述したプラズマ給電システムにおける上述したインピーダンス整合回路を動作させるための方法も含む。
【0004】
本明細書で高周波(HF)とは、1MHz以上の周波数を意味する。特に、この場合、10MHz以上の周波数を意味する。
【0005】
リアクタンスは、インダクタンスまたはキャパシタンスまたはその両方の組み合わせであってよい。
【0006】
そのようなインピーダンス整合回路は、HF励起されたプラズマプロセスにおいて使用されることが多い。HF励起されたプラズマプロセスは、例えば、建築ガラス、半導体、太陽光発電要素、フラットスクリーン、ディスプレイ等の製造において、基板をコーティング(スパッタリング)および/またはエッチングするために使用される。そのようなプロセスにおけるインピーダンスの多くは極めて迅速に変化する。なぜなら、インピーダンス整合の多くは極めて迅速に(数ミリ秒以内に)整合された方がよいからである。そのようなプロセスの電力は、数100W(例えば300W以上)であるが、数kWや数10kWの場合も少なくない。このような電力では、インピーダンス整合回路内の電圧の多くは、100V以上(例えば300V以上)になり、1,000V以上の場合も少なくない。そのような回路における電流は、数アンペア、多くは数10A、時には100A以上になり得る。そのような電圧および電流におけるインピーダンス整合回路を実現することは、既に大きな挑戦となっている。そのようなインピーダンス整合回路におけるリアクタンスの迅速な可変性は、さらに極めて高い挑戦を意味する。
【0007】
そのようなインピーダンス整合回路は、例えば独国特許出願公開第102015220847号明細書に示されており、同明細書ではインピーダンス整合網と称されている。そこに示されているリアクタンス18,20,22は、インピーダンス整合を設定できるようにするために可変に調整可能である。可変の設定の1つの手段は、異なる値のリアクタンスを、電子的に駆動制御される半導体スイッチを用いて接続および遮断することにある。独国特許出願公開第102015220847号明細書の開示が参照され、本開示の対象となっている。
【0008】
そのようなインピーダンス整合回路では、接続されたインピーダンス整合回路において、リアクタンス、特にキャパシタンスを動的にHFパスに接続させる要求が生じる。このことは可及的に迅速に行うべきである。しかしながら、スイッチング過程では、スイッチング素子における損失が高まり、この損失は、スイッチング素子の熱的過負荷と破壊とを引き起こしかねない。損失および破壊の危険性を最小化するためには、短い切換時間を達成する必要がある。
【0009】
発明の課題
本発明の課題は、冒頭で述べたインピーダンス整合回路を発展させ、これによって、リアクタンス、特にキャパシタンスの接続時の上述の問題点を低減させることである。
【0010】
発明の説明
この課題は、本発明により、高周波端子に接続された直列回路を有するインピーダンス整合回路によって解決され、この場合、この直列回路は、少なくとも1つのリアクタンス、特にキャパシタンスと、駆動制御回路が接続された駆動制御入力側を有する少なくとも1つのスイッチング素子とを含み、この場合、駆動制御回路は、カプラを介してイネーブル信号入力側に接続されている。それにより、1つまたは複数のスイッチング素子において、僅かな損失のもとで僅かなスイッチング時間を達成することができる。この駆動制御回路は、好適には、少なくとも1つのスイッチング素子の駆動制御入力側を、当該少なくとも1つのスイッチング素子の状態が変更可能に、特に当該スイッチング素子のオンオフが可能になるように駆動制御可能に構成されている。カプラは、2つの分離された電位間で、特に電気的に分離された2つの電位間で、電気信号もしくは信号情報を伝送するために用いられる。つまりカプラの入力側および出力側には、異なる電位が存在してよい。カプラは、特に、スイッチング情報を駆動制御回路に伝送するために使用される。イネーブル信号入力側は、本発明の趣旨では、少なくとも1つのスイッチング素子の状態を変更すること、特にこのスイッチング素子をオンオフすることのできる信号入力側である。
【0011】
このカプラは、例えばオプトカプラ、磁気式カプラ、電気機械式もしくは電気式のカプラとして構成されてよい。磁気式カプラは、誘導式カプラとも称される。結合は、変化する磁場によって行われる。例えば、伝送器または変圧器は、インダクタンスを高める要素としてフェライトを伴って構成されてもよいし、あるいはフェライトを伴わずに構成されてもよい。電気式カプラは、容量式カプラとも称される。結合は、電場を介して行われる。電気式カプラについての典型的な例は、電気式コンデンサである。電気機械式カプラは、例えばリレーまたは圧電ベースのカプラであってよい。
【0012】
電気式カプラは、アースに対してインピーダンス整合回路において生じるHF電圧よりも大きい高電圧、特に直列回路において生じるHF電圧よりも大きい高電圧、特に少なくとも1つのリアクタンス、特にキャパシタンスおよび/または少なくとも1つのスイッチング素子において生じるHF電圧よりも大きい高電圧をブリッジするように設計されてよい。特に、高電圧は、300V以上、特に1,000V以上であり得る。
【0013】
電気式カプラは、インピーダンス整合回路が動作中に高周波端子に印加される高周波に相応する高周波(HF)を分離するように設計されてよい。特に、HFは、1MHz以上、特に10MHz以上であってよい。
【0014】
インピーダンス整合回路は、動作中に、すなわちHF端子にHF電圧が印加されているときに、1つまたは複数のスイッチング素子をオンオフし、特に、HF電流が1つまたは複数のスイッチング素子を通流しているときに当該スイッチング素子をスイッチオフするように設計されてよい。HF電流は、この場合、通流状態において1A以上、特に10A以上、好適には100A以上であってよい。
【0015】
駆動制御回路がカプラ内に統合されている場合、特別な利点が生じる。これにより、省スペースの配置構成が生じ得る。
【0016】
カプラは、個別部品から構成されてよい。例えば、カプラは、オプトカプラと組み合わせて光導波路として、変圧器、変換器、コンデンサとして、個々のコンポーネントからなる組み合わせとして、または複数の特性を1つにまとめた部品、例えば磁気結合と容量結合とを備えた変換器として構成されてよい。
【0017】
代替的に、カプラは、集積回路として構成されてもよい。特にカプラは、デジタルカプラ回路に構成されてもよい。
【0018】
駆動制御回路は、個別部品から構成されてもよい。代替的に、駆動制御回路は、集積回路として構成されてもよい。
【0019】
直列回路は、逆直列に接続された2つのトランジスタ、特に電界効果トランジスタを有することができ、これらのトランジスタは、電界効果トランジスタの場合には自身のソース端子に接続され、バイポーラトランジスタの場合にはエミッタに接続され、共通のソース電位もしくはエミッタ電位に置かれている。共通のソース電位もしくはエミッタ電位に置かれ、インピーダンス整合回路によって伝送すべき信号の周波数で共振する駆動制御回路は、ゲート-ソースキャパシタンスもしくはベース-エミッタキャパシタンスの迅速な再充電を可能にする。
【0020】
駆動制御回路は、少なくとも1つのチョークを介して供給電圧に接続されてよい。これにより、駆動制御回路の分離を行うことができる。好適には、2つのチョークが設けられている。特に、供給電圧の端子と駆動制御回路の端子との間にそれぞれ1つのチョークが設けられている。これらのチョークは、駆動制御回路および場合によってはカプラの平均供給電流を供給するように構成されている。これらのチョークは、高速なスイッチングエッジを伝送しないように構成されている。高速なスイッチングエッジとは、1ms以下、特に100μs以下、好適には10μs以下のエッジ持続時間(10%~90%)を意味する。チョークは、特に同じインダクタンスを有することができる。
【0021】
駆動制御回路は、ソース電位もしくはエミッタ電位に、特に直接接続されてもよい。特に、駆動制御回路は、参照回路を介して直列回路の端子点、特にソース端子、特にソース電位に接続されてもよい。参照回路は、供給電圧をソース電位に対してバイポーラで参照するために構成されてよく、特にそのために使用されてもよい。したがって、負の供給電圧をさらなるチョークを介して駆動制御回路に導く必要はない。参照回路は、伝送すべき信号の周波数と共振し得る。バイポーラ供給電圧は、ゲート-ソースキャパシタンスのより迅速な再充電に有用である。さらに、ゲート-ソース電圧に結合する高周波信号を補償することができる。
【0022】
端子点は、参照回路に直接接続してもよい。それにより、参照回路は、伝送すべき信号の周波数と特に良好に共振することができる。
【0023】
参照回路は、分圧器を有することができる。これにより、分離された供給電圧を参照することができる。分圧器は、特に直列に接続された2つの抵抗を有することができる。これらの抵抗は、特に同じ値を有することができる。
【0024】
直列に接続された2つの抵抗の接続点は、ソース電位に接続されてよく、特に直接接続されてもよい。
【0025】
参照回路は、1つ、特に2つの内部DC電圧源を有することができ、この場合、内部DC電圧源は、特にそれぞれ1つのコンデンサを有する。特に、1つのまたは複数の内部DC電圧源は、それぞれ1つのキャパシタンスからなり得る。各キャパシタンスは、1つまたは複数のコンデンサから形成されてもよい。
【0026】
2つの内部DC電圧源は、直列に接続されてよく、特に同じ電圧を有することができる。
【0027】
直列に接続された2つの内部DC電圧源の共通の接続点は、ソース電位に接続され、特に直接接続されてもよい。
【0028】
直列に接続された2つの内部DC電圧源の共通の接続点は、分圧器に、特に分圧器の2つの抵抗の接続点に接続されてもよい。これにより、2つの電圧源の電圧を一定に維持することができる。
【0029】
参照回路は、少なくとも1つのチョークを介して供給電圧に接続されてよい。チョークのインダクタンスは、駆動制御回路もしくは参照回路から供給電圧に流れるHF電流が無視できるほど僅かになるように設計仕様されてもよい。
【0030】
供給電圧は、電圧源を、トランジスタのスイッチングのために相応に設定された固定の電位に保持することができる。
【0031】
直列回路は、アース電位に置かれたソース電位を伴うスイッチングトランジスタを有し得る。
【0032】
直列回路は、並列に接続された少なくとも2つのスイッチング素子を有し得る。それにより、電流強度を高めることができる。
【0033】
インピーダンス整合回路は、複数の並列に接続された直列回路を有することができ、該直列回路の各々には駆動制御回路が接続されている。
【0034】
直列回路内に設けられたリアクタンス、特にキャパシタンスは、異なる値を有し得る。
【0035】
上記課題は、高周波電力発生器と、基板をコーティングまたはエッチングするための、HFによって動作されるプラズマプロセスの形態の負荷と、上述したインピーダンス整合回路とを備えたプラズマ給電システムによっても解決される。
【0036】
上記課題は、高周波電力発生器と、基板をコーティングまたはエッチングするための、HFによって動作されるプラズマプロセスの形態の負荷と、複数の上述したインピーダンス整合回路を有するインピーダンス整合装置とを備えたプラズマ給電システムによっても解決される。
【0037】
上記課題は、特に上述したプラズマ給電システムにおける上述したインピーダンス整合回路を動作させるための方法であって、以下の方法ステップ:
a)1つまたは複数のスイッチング素子を、特に、1つまたは複数の駆動制御端子と、1つまたは複数のソース端子との間の十分に大きな正の電圧によってスイッチオンするステップと、
b)1つまたは複数のスイッチング素子を、特に、1つまたは複数の駆動制御端子と、1つまたは複数のソース端子との間の十分な負の電圧によってスイッチオフするステップと、
c)1つまたは複数のスイッチング素子の1つまたは複数のドレイン端子に高電圧を接続するステップであって、この場合、高電圧は、絶対値で見て、ドレイン端子とソース端子との間の絶対値で見て最大の電圧よりも大きいステップと、
d)1つまたは複数のスイッチング素子の1つまたは複数のドレイン端子から高電圧を遮断するステップとのうちの1つまたは複数を含む方法によっても解決される。
【0038】
上述の方法ステップb)およびc)は、好適には同時に行うことができる。
【0039】
上述の方法ステップa)およびd)は、好適には同時に行うことができる。
【0040】
本発明のさらなる利点は、明細書および図面から明らかとなる。同様に、上述しかつさらに以下で説明される特徴は、本発明によれば、それ自体それぞれ個別に、あるいは複数の任意の組み合わせにおいて使用することができる。図示され説明される実施形態は、完結された列挙として理解されるべきではなく、むしろ、本発明を説明するための例示的な特徴を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】インピーダンス整合回路を備えたプラズマ給電システムを示す図である。
【
図2】インピーダンス整合回路の一部を示す図である。
【0042】
図1は、高周波電力発生器40を備えるプラズマ給電システム1を示しており、この高周波電力発生器40は、インピーダンス整合回路11を介して負荷28、特にプラズマ負荷に接続されている。インピーダンス整合回路11は、インピーダンス整合装置9の構成部品である。インピーダンス整合回路11は、図示の実施例では、リアクタンス18,20,22を含んでおり、これらのリアクタンス18,20,22はそれぞれ、駆動制御回路12,14,16を介して、それらのリアクタンス値を変更するために駆動制御される。駆動制御回路12,14,16は、制御部32によって駆動制御される。例えば電流および電圧、順方向電力および反射電力、ならびに/またはインピーダンス絶対値および位相角を検出する測定素子24,26を有し得る測定装置25を介して制御部32に接続されている。測定装置25によって求められた変量に基づいて、例えば、負荷28で反射される電力または反射係数を求めることができる。反射される電力は、整合エラーが存在している場合に、つまり負荷28のインピーダンスが電力発生器40の出力インピーダンスに整合されていない場合に発生する。代替的または付加的に、対応する測定装置が、インピーダンス整合装置9の入力側または内部に配置されてもよい。インピーダンス整合装置10は、負荷28の入力側における負荷インピーダンス27を、インピーダンス整合回路10の入力側における、つまり電力発生器側での変換された負荷インピーダンス29に変換するのに適している。
【0043】
図2は、インピーダンス整合回路11の一部を示している。直列回路10は、ここでは電界効果トランジスタとして構成されている2つのスイッチング素子T1,T2を含む。これらのスイッチング素子T1,T2は、それらのソース端子Sにおいて相互に接続されており、つまり逆直列に接続されている。さらに、直列回路10は、ここではキャパシタンスC1,C2を含む。より一般的な形態では、直列回路10は、少なくとも1つのリアクタンス、特にキャパシタンスC1,C2と、少なくとも1つのスイッチング素子T1,T2とを含む。そのような直列回路10は、
図1のリアクタンス18,20,22のうちの1つの一部であってよい。リアクタンスはインダクタンスまたはキャパシタンスC1,C2であってよい。特に、可変のリアクタンス18,20,22は、上述した直列回路10のように構成され並列に接続された複数の直列回路を有し得る。
【0044】
図2に示されている装置は、キャパシタンスC1,C2をHFパスに動的に接続するのに適している。HF路への端子は、RFinによって示されており、電力発生器40への端子に相当する。
【0045】
図2の回路の動作は以下のように説明することができる:
インピーダンス整合回路10内のキャパシタンスC1,C2が接続されるべき場合、スイッチング素子T1,T2はスイッチオンされ、つまり導通接続される。このことは、本発明の場合には、2つの駆動制御端子Gと2つのソース端子Sとの間の十分に大きな正の電圧によって行うことができる。
【0046】
インピーダンス整合回路10内のキャパシタンスC1,C2が遮断されるべき場合、スイッチング素子T1,T2はスイッチオフされ、つまり非導通接続される。このことは、本発明の場合には、2つの駆動制御端子Gと2つのソース端子Sとの間の十分な負の電圧によって行うことができる。スイッチオフされた状態では、スイッチング素子T1,T2の特定の実施形態の場合、詳細には市販のMOSFETの場合、ソース端子Sとスイッチング素子T1,T2のドレイン端子D1,D2との間の電圧は正でないことが許される。なぜならば、そうでないと、スイッチング素子T1,T2が、内部の寄生ダイオードを介して導通状態になり、スイッチング素子T1,T2が破壊されかねないからである。しかしながら、非導通状態ではスイッチング素子T1,T2にHF電圧が端子RFinもしくはRFoutを介して印加され、このHF電圧は極めて高く、正にも負にも形成可能であるため、この要求は、外部配線によって保証された方がよい。この外部配線は、本明細書では高電圧HVの接続によって行うことができる。この高電圧HVは、直流電圧であってよい。この高電圧HVは、絶対値で見てドレイン端子D1,D2のうちの1つに発生する最大負電圧よりも大きい方がよい。この高電圧HVは、さらなるスイッチング素子T3を介して接続可能であり、すなわち、このさらなるスイッチング素子T3は、動作中、駆動制御回路12がスイッチング素子T1,T2をスイッチオフ、つまり非導通接続にした場合に、スイッチオン、つまり導通接続される。
【0047】
さらなるスイッチング素子T3および高電圧HVは、HFフィルタリング装置を介して、特にRL素子を介して高周波から保護することができる。このRL素子は、本明細書では、それぞれ直列に接続されたそれぞれ1つの抵抗R1,R2およびそれぞれ1つのインダクタンスL1,L2を有している。
【0048】
スイッチング素子が再びスイッチオン、すなわち導通接続された場合、高電圧HVはスイッチング素子T1,T2から分離させた方がよく、つまりさらなるスイッチング素子T3は、直列回路10に高電圧による負荷をかけないために、スイッチオフ、すなわち非導通接続にした方がよい。
【0049】
図2の配置構成は、プリント基板(PCB)上で実現されてもよい。
【0050】
スイッチング素子T1,T2は、駆動制御回路12により、その駆動制御端子Gにおいて駆動制御される。これは、イネーブル信号入力側(enable)に接続されたカプラ13からのスイッチング信号を受け取る。スイッチング過程では、スイッチング素子T1,T2において高められた損失が発生し、これらの損失は、スイッチング素子T1,T2の熱的過負荷および破壊につながりかねない。損失および破壊の危険性を最小化するためには、僅かなスイッチング時間を達成する必要がある。
【0051】
スイッチング素子T1,T2は、共通のソース電位に置かれている。共通のソース電位に置かれ、電力発生器40によって生成された高周波信号の周波数で共振する駆動制御回路12は、スイッチング素子T1,T2のゲート-ソースキャパシタンスの迅速な再充電を可能にする。
【0052】
駆動制御回路12,14,16は、同じように構成されてもよい。カプラ13は、駆動制御回路12,14,16内に統合されていてもよく、または制御部32に実装されていてもよい。カプラ13は、複数の個別部品から構成されていてもよい。カプラ13は、オプトカプラ、磁気式カプラ、電気式カプラ、電気機械式カプラ、または情報伝送のための任意の装置として、特にデジタルカプラとして、特に集積回路として実現されてもよい。駆動制御回路12は、個別部品から、またはカプラ13に統合して実現可能である。
【0053】
供給電圧Vbiasは、HFチョークL3,L4を介して駆動制御回路12に提供される。これらのチョークL3,L4により、駆動制御回路12は分離される。チョークL3,L4は、駆動制御回路12および場合によってはカプラ13の平均供給電流のみを供給する。高速のスイッチングエッジは、もはやチョークL3,L4を介して伝送する必要がない。例えばスイッチングエッジの際の駆動制御回路12の供給入力側における電圧が損なわれないようにするために、付加的に参照回路17が駆動制御回路12の供給入力側に設けられてもよい。これは、一方では、駆動制御回路12の入力側における電圧を安定化するように構成されている。参照回路17のさらなる機能は、
図3に関連して説明される。
【0054】
図2中GND/RFoutと記された電位は、HF出力側として利用可能である。キャパシタンスC2は、GNDに置かれたソース電位を有するさらなるスイッチングトランジスタによって置き換えることができる。
【0055】
図3に詳細に示されている参照回路17は、供給電圧Vbiasをソース電位に対してバイポーラで参照するために構成されてよく、特にそのために使用することができる。したがって、負の供給電圧をさらなるチョークを介して駆動制御回路12に導く必要はない。参照回路17は、直列回路、特にソース端子Sの電位に接続されてもよい。そうすれば、参照回路17も同様に電力発生器40によって生成された信号の周波数と共振する。そのようなバイポーラ供給電圧は、ゲート-ソースキャパシタンスのより迅速な再充電のために有用である。さらに、ゲート-ソース電圧に結合するHF信号を補償することができる。参照回路17は、必ずしもバイポーラ電圧を生成する必要はない。チョークL4を介してGNDと接続された電位とソース電位(S)との接続も同様に可能である。
【0056】
図3は、参照回路17を示す。この参照回路17は、抵抗R3,R4およびキャパシタンスC3,C4を含む。参照回路17は、分圧器R3,R4と、2つの内部DC電圧源V1,V2とを有しており、この場合、内部DC電圧源は、それぞれ1つのコンデンサC3,C4を有する。
【0057】
2つの抵抗R3,R4は、直列に接続されている。
【0058】
直列に接続された2つの抵抗R3,R4の両方の共通の接続点は、ソース端子Sに接続されている。
【0059】
直列に接続された2つの抵抗R3,R4の両方の共通の接続点は、特に、直列に接続された2つの内部DC電圧源V1,V2の共通の接続点にも接続されている。
【0060】
2つの内部DC電圧源V1,V2は、直列に接続されている。各DC電圧源V1,V2は、それぞれキャパシタンスC3,C4からなる。各キャパシタンスC3,C4は、1つまたは複数のコンデンサから実現されてもよい。
【0061】
直列に接続された2つの内部DC電圧源V1,V2の共通の接続点は、ソース端子Sに接続されている。
【0062】
供給電圧Vbiasは、固定の出力電圧を伴う電流供給として構成されてもよく、この固定の出力電圧は、2つのキャパシタンスC3,C4をチョークL3,L4を介して再充電する、すなわちチョークL3,L4によってフィルタリングされた電流を用いて、駆動制御回路12が直列回路10の駆動制御のために消費した電荷を補給する。
【0063】
そのようなインピーダンス整合回路11は、例えば独国実用新案第202020103539号明細書にも示されており、そこではインピーダンス整合装置11とも称されている。そこに示されているリアクタンス18,20,22は、インピーダンス整合を設定できるようにするために同様に可変に調整可能である。可変の設定の1つの手段は、異なる値のリアクタンスを、電子的に駆動制御される半導体スイッチを用いて接続および遮断することである。独国実用新案第202020103539号明細書の開示も参照され、本開示の対象となっている。特に、本明細書で説明している直列回路10は、上記独国実用新案明細書で説明している回路装置116のように構成されてもよい。