(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】処置具
(51)【国際特許分類】
A61B 18/14 20060101AFI20241125BHJP
【FI】
A61B18/14
(21)【出願番号】P 2022576939
(86)(22)【出願日】2021-01-25
(86)【国際出願番号】 JP2021002453
(87)【国際公開番号】W WO2022157977
(87)【国際公開日】2022-07-28
【審査請求日】2023-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】304050923
【氏名又は名称】オリンパスメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100207789
【氏名又は名称】石田 良平
(72)【発明者】
【氏名】塩田 裕亮
(72)【発明者】
【氏名】加藤 裕昌
【審査官】北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/016941(WO,A1)
【文献】特表2010-505552(JP,A)
【文献】特開平03-080847(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/12 - 18/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有するシースと、
前記シースに対して進退可能であり、
前記シースの長手軸に沿って延びるロッド本体と、前記ロッド本体の先端に設けられた第一電極
とを有するロッドと、
前記シースの先端に設けられ、導電性を有する第二電極と、
を備え、
前記ロッド
本体は前記第二電極を貫通しており、
前記ロッドの前記進退により前記第一電極と前記第二電極が互いに接触した状態と離れた状態とに切り替え可能であり、
前記第二電極は、前記ロッドの前記第一電極と接触
した状態のときに通電され、
前記第一電極によって前記第二電極を押圧することで前記第二電極は変形する、
処置具。
【請求項2】
前記第一電極が前記第二電極を押圧
して前記第二電極
が変形
した状態において、前記第一電極を前進させることによって、前記第一電極は前記第二電極から離れるとともに前記第二電極は元の形状に戻る、
請求項1に記載の処置具。
【請求項3】
前記ロッド本体と前記第二電極との間は絶縁されている、
請求項1に記載の処置具。
【請求項4】
前記ロッド本体は、前記第二電極が有する貫通孔を挿通して前記第二電極を貫通しており、
前記第一電極は、
前記ロッド本体の径方向において、前記貫通孔の径方向の長さよりも長い寸法を有し、
前記第一電極を前記シースに対して後退させることによって、
前記第一電極は前記第二電極を押圧させるとともに、
前記第二電極の径方向の長さを前記シースの径方向の長さよりも大きくなるまで変形可能である、
請求項
1に記載の処置具。
【請求項5】
前記第二電極は、弾性部材である、
請求項1に記載の処置具。
【請求項6】
前記第二電極は、半球状に形成されている、
請求項1に記載の処置具。
【請求項7】
前記第一電極は、先端側に止血処置対象と接触させる第一止血処置面を形成し、
前記第二電極は、前記第一止血処置面と略平面状となる第二止血処置面を形成し、
第二止血処置面は、接触する前記第一電極が後退するにつれて大きくなる、
請求項1に記載の処置具。
【請求項8】
前記第二電極は、基端から先端に向かってスリットを有する、
請求項1に記載の処置具。
【請求項9】
前記第二電極の先端に設けられ、前記第二電極より硬質な素材で形成される導電性の補強電極を有する、
請求項1に記載の処置具。
【請求項10】
前記ロッドの周りの少なくとも一部に絶縁コーティングを有する、
請求項1に記載の処置具。
【請求項11】
前記シースの先端と前記第二電極の基端の間に前記第二電極より硬質な素材で形成される支持部材を有する、
請求項1に記載の処置具。
【請求項12】
前記第二電極が変形している状態
では、前記第二電極は、前記シースの径方向において、前記シースの外径よりも大きい、
請求項1に記載の処置具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処置具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)などの内視鏡治療において、高周波ナイフなどの切開・剥離用の内視鏡用処置具が使用されている。手技中に出血が生じた場合には、切開・剥離用の内視鏡用処置具を体腔内から一旦取り出し、止血用の内視鏡用処置具に入れ替えて、内視鏡的止血術を行う必要がある。
【0003】
特許文献1には、組織の切開・剥離処置と止血処置とを実施できる内視鏡用高周波処置具が記載されている。特許文献1に記載の内視鏡用高周波処置具は、処置具を入れ替えることなく、切開・剥離処置と止血処置とを実施できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された内視鏡用高周波処置具は、出血箇所を焼灼して止血する処置において、高周波電流が通電される先端部の形状を調整することできず、出血箇所の大きさに応じた止血処置を実施しにくい。
【0006】
上記事情を踏まえ、本発明は、切開・剥離処置と止血処置とを実施できる処置具であって、出血箇所の大きさに応じた好適な止血処置を実施できる処置具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の第一の態様に係る処置具は、可撓性を有するシースと、前記シースに対して進退可能であり、前記シースの長手軸に沿って延びるロッド本体と、前記ロッド本体の先端に設けられた第一電極とを有するロッドと、前記シースの先端に設けられ、導電性を有する第二電極と、を備え、前記ロッド本体は前記第二電極を貫通しており、前記ロッドの前記進退により前記第一電極と前記第二電極が互いに接触した状態と離れた状態とに切り替え可能であり、前記第二電極は、前記ロッドの前記第一電極と接触した状態のときに通電され、前記第一電極によって前記第二電極を押圧することで前記第二電極は変形する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の処置具によれば、切開・剥離処置と止血処置とを実施でき、かつ、出血箇所の大きさに応じた好適な止血処置を実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第一実施形態に係る内視鏡処置システムの全体図である。
【
図2】同内視鏡処置システムの処置具を示す全体図である。
【
図4】同処置具の先端部の正面図と長手方向に沿った断面図である。
【
図5】第二電極が変形した状態における同処置具の先端部の正面図と長手方向に沿った断面図である。
【
図6】第二電極がさらに変形した状態における同処置具の先端部の正面図と長手方向に沿った断面図である。
【
図7】第二電極が最も変形した状態における同処置具の先端部の正面図と長手方向に沿った断面図である。
【
図9】
図8のX-X線に沿った同操作部の断面図である。
【
図10】
図9のY-Y線に沿った同操作部の断面図である。
【
図11】
図9のY-Y線に沿った同操作部の断面図である。
【
図12】同操作部のスライダが先端側に固定された同処置具を示す図である。
【
図13】同操作部のスライダが基端側に固定された同処置具を示す図である。
【
図14】本発明の第二実施形態に係る処置具の先端部の斜視図である。
【
図15】同処置具の先端部の長手方向に沿った断面図である。
【
図16】同処置具の第二電極の変形例の長手方向に沿った断面図である。
【
図17】本発明の第三実施形態に係る処置具の先端部の長手方向に沿った断面図である。
【
図18】本発明の第四実施形態に係る処置具の先端部の長手方向に沿った断面図である。
【
図19】第二電極が変形した状態における同処置具の長手方向に沿った断面図である。
【
図20】本発明の第五実施形態に係る処置具の先端部の正面図と長手方向に沿った断面図である。
【
図21】第二電極が変形を開始した状態における同処置具の先端部の長手方向に沿った断面図である。
【
図22】第二電極がさらに変形した状態における同処置具の先端部の長手方向に沿った断面図である。
【
図23】本発明の第六実施形態に係る処置具の操作部の第二ロック機構の斜視図である。
【
図24】同第二ロック機構によりスライダの位置が先端側に固定された同操作部を示す図である。
【
図25】同第二ロック機構によりスライダの位置が基端側に固定された同操作部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第一実施形態)
本発明の第一実施形態に係る内視鏡処置システム300について、
図1から
図13を参照して説明する。
図1は本実施形態に係る内視鏡処置システム300の全体図である。
【0011】
[内視鏡処置システム300]
内視鏡処置システム300は、
図1に示すように、内視鏡200と処置具100とを備えている。処置具100は、内視鏡200に挿入して使用される。
【0012】
[内視鏡200]
内視鏡200は、公知の軟性内視鏡であり、先端から体内に挿入される挿入部202と、挿入部202の基端に取り付けられた操作部207と、を備える。
【0013】
挿入部202は、撮像部203と、湾曲部204と、軟性部205と、を有する。挿入部202の先端から、撮像部203、湾曲部204および軟性部205の順でそれぞれが配されている。挿入部202の内部には、処置具100を挿入するためのチャンネル206が設けられている。挿入部202の先端には、チャンネル206の先端開口部206aが設けられている。
【0014】
撮像部203は、例えばCCDやCMOSなどの撮像素子を備えており、処置対象となる部位を撮像可能である。撮像部203は、処置具100がチャンネル206の先端開口部206aから突出している状態において、処置具100の電極部3を撮像することができる。
【0015】
湾曲部204は、操作者による操作部207の操作に従って湾曲する。軟性部205は、可撓性を有する管状の部位である。
【0016】
操作部207は、軟性部205に接続されている。操作部207は、グリップ208と、入力部209と、チャンネル206の基端開口部206bと、ユニバーサルコード210と、を有する。グリップ208は、操作者によって把持される部位である。入力部209は、湾曲部204を湾曲動作させるための操作入力を受け付ける。ユニバーサルコード210は、撮像部203が撮像した画像を外部に出力する。ユニバーサルコード210は、プロセッサなどを備えた画像処理装置を経由して、液晶ディスプレイなどの表示装置に接続される。
【0017】
[処置具100]
図2は、処置具100を示す全体図である。
処置具100は、切開・剥離処置と止血処置とを実施できる処置具である。処置具100は、シース1と、ロッド2と、電極部3と、操作ワイヤ4(
図4に図示)と、操作部5と、を備える。以降の説明において、処置具100の長手方向Aにおいて、患者の体内に挿入される側を「先端側(A1)」、操作部5側を「基端側(A2)」という。
【0018】
シース1は、例えばテトラフルオロチレンなどの電気的な絶縁性を有する材料で形成され、可撓性を有し、先端1aから基端1bまで延びる長尺な部材である。シース1は、内視鏡200のチャンネル206に挿入可能な外径を有する。
図1に示すように、シース1がチャンネル206に挿入された状態において、シース1の先端1aは、チャンネル206の先端開口部206aから突没可能である。
【0019】
図3は、処置具100の先端部の斜視図である。
ロッド2は、ステンレス等の金属材料を有する略丸棒状の部材であり、シース1の先端1aに突没可能に設けられている。ロッド2は、ロッド本体20と、第一電極21と、ストッパ22と、を有する。
【0020】
図4は、処置具100の先端部の正面図と長手方向Aに沿った断面図である。
ロッド2は、長手方向Aに沿って電極部3を進退移動可能に貫通している。ロッド2の長手方向Aにおける中心軸O2は、シース1の長手方向Aにおける中心軸O1と略一致している。
【0021】
ロッド本体20は、ステンレス等の金属素材を有する丸棒状の部材である。ロッド本体20の先端部には絶縁コーティング20aが施されている。ロッド本体20の基端には、操作ワイヤ4がストッパ22を介して取り付けられている。ロッド本体20は、操作部5と接続された操作ワイヤ4から供給される高周波電流を第一電極21に供給する。
【0022】
第一電極21は、ロッド本体20の先端に設けられた円板状の導電部材である。長手方向Aに対して水平な方向から見た正面視において、第一電極21の外周は、ロッド本体20の外周と同心円状に形成されている。第一電極21の長手方向Aに対して垂直な径方向Rの長さL1は、ロッド本体20の径方向Rの長さL2よりも長い。第一電極21およびロッド本体20が第二電極32の先端から露出する部分は、生体組織に高周波電流を通電する高周波電極の機能を有しており、主に切開・剥離処置を行う。ただし、状況によっては、止血処置を行っても良い。
【0023】
第一電極21は、先端側A1に長手方向Aに対して垂直な第一止血処置面S1を有している。第一止血処置面S1は、第一電極21と第二電極32を接触させた状態で、止血処置に使用される。第一止血処置面S1は、平面に形成されていてもよく、曲面に形成されていてもよい。
【0024】
ストッパ22は、ロッド本体20と操作ワイヤ4の外周に設けられており、ロッド本体20と操作ワイヤ4とを接続する。また、ストッパ22は、ロッド本体20が第二電極32の先端から露出する長さを規制している。その結果、第一電極21の突出量も規制する。ストッパ22は、
図4に示すように、シース1の先端1aに設けられた電極部3と係合することで第一電極21の突出量を規制する。
【0025】
電極部3は、シース1の先端1aに設けられている。電極部3は、支持部材31と、第二電極32と、を有する。
【0026】
支持部材31は、ステンレス等の金属素材もしくはセラミック等の絶縁素材で形成されている。支持部材31は、シース1の先端1aに固定されており、第二電極32を支持する部材である。支持部材31は、シース1の先端1aに溶着や接着剤等によって固定されている。支持部材31は、ロッド2が貫通する貫通孔31aを有する。支持部材31は、第二電極32よりも硬質な素材で形成されており、第一電極の後退によって第二電極をシース1の内部に移動せず、径方向に変形し易くしている。
【0027】
第二電極32は、導電性および弾性を有する中空部材であり、例えば導電シリコンゴムで形成されている。第二電極32は、支持部材31の先端側に溶着や接着剤等によって固定されている。第二電極32は、ロッド2が貫通する貫通孔32bを有する。
【0028】
第二電極32は、
図4に示すように、外力がない状態において半球状になるように形成されている。具体的には、第二電極32は、外力がない状態において、先端側A1が凸状となる半球状に形成されている。本実施形態においては、先端側A1に最も凸状となった先端部32aは、第二電極32の長手方向Aにおける中心軸O3付近に位置している。
【0029】
貫通孔32bは、先端側A1に最も凸状となった先端部32aにおいて開口している。第二電極32は、貫通孔32bに近づくにつれて先端側A1への突出量が大きくなる。貫通孔32bは、第二電極32の長手方向Aにおける中心軸O3に沿って形成されている。
【0030】
貫通孔32bの径方向Rの長さL3は、ロッド本体20の径方向Rの長さL2よりも長い。そのため、ロッド本体20は、貫通孔32bを長手方向Aに沿って進退移動できる。以降の説明において、ロッド2が先願側A1に移動することを「前進」といい、基端側A2に移動することを「後退」という。
【0031】
図5は、第二電極32が変形した状態における処置具100の先端部の正面図と長手方向Aに沿った断面図である。第一電極21の径方向Rの長さL1は、貫通孔32bの径方向Rの長さL3よりも長い。そのため、第二電極32が後退すると、第二電極32は第二電極32の先端部32aと接触する。第二電極32は、第一電極21に接触して変形する。第一電極21が前進して第二電極32から離れると、第二電極32は元の形状に戻る。以降の説明において、第二電極32の元の形状を、第二電極32の「初期形状」ともいう。
【0032】
ロッド本体20の先端部には絶縁コーティング20aが施されており、高周波電流が通電するロッド本体20の先端部と第二電極32とが接触しても、ロッド本体20から第二電極32に通電されない。一方、高周波電流が通電されている第一電極21と第二電極32とが接触すると、第一電極21から第二電極32に高周波電流が通電される。この状態において、第二電極32は、生体組織に高周波電流を通電する高周波電極の機能を有しており、主に止血処置を行う。
【0033】
図5に示すように、第二電極32は、後退する第一電極21に押圧されることで変形する。具体的には、変形した第二電極32の先端部32aは、初期形状と比較して表面の曲率が小さくなる。その結果、先端側A1に曲率が小さい第二止血処置面S2が形成される。
【0034】
第一止血処置面S1と第二止血処置面S2とは、長手方向Aにおける正面に配置された出血箇所に対して止血処置をしやすい止血処置面Sを形成する。止血処置面Sは、略同一の平面または曲面を形成していることが好ましい。
【0035】
図6は、第二電極32がさらに変形した状態における処置具100の先端部の正面図と長手方向Aに沿った断面図である。第二止血処置面S2は、接触する第一電極21が後退するにつれて大きくなる。
【0036】
図7は、第二電極32が最も変形した状態における処置具100の先端部の正面図と長手方向Aに沿った断面図である。長手方向Aに対して水平な方向から見た正面視において、第二電極32は、径方向Rにおいてシース1よりも大きくなるまで変形する。第二止血処置面S2は、接触する第一電極21が最も後退した際に最も曲率が小さく、面積が大きくなる。
【0037】
操作ワイヤ4は、ステンレス等の金属素材のワイヤであり、シース1の内部空間10を挿通している。操作ワイヤ4の先端はロッド2に接続され、操作ワイヤ4の基端は操作部5に接続されている。
【0038】
図8は、操作部5の平面図である。
操作部5は、操作部本体51と、スライダ52と、給電コネクタ53と、ロック機構54と、を有する。
【0039】
操作部本体51の先端部は、シース1の基端1bと接続されている。操作部本体51は、操作ワイヤ4が挿通可能な内部空間Sを有している。操作ワイヤ4は、シース1の内部空間10および操作部本体51の内部空間50を通過してスライダ52まで延びている。
【0040】
スライダ52は、操作部本体51に対して長手方向Aに沿って移動可能に取り付けられている。スライダ52には、操作ワイヤ4の基端部が接続されている。術者がスライダ52を操作部本体51に対して相対的に進退させることにより、操作ワイヤ4およびロッド2がシース1に対して進退する。スライダ52には給電コネクタ53が固定されている。
【0041】
給電コネクタ53は、図示しない高周波電源装置に接続可能であり、操作ワイヤ4の基端部と電気的かつ物理的に接続されている。給電コネクタ53は、高周波電源装置から供給された高周波電流を、操作ワイヤ4およびロッド本体20を経由して第一電極21に供給可能である。
【0042】
図9は、
図8のX-X線に沿った操作部5の断面図である。
ロック機構54は、スライダ52の長手方向Aの位置を固定することで、ロッド2の突没位置を固定する。ロック機構54は、被係合溝部55と、可動係合部56と、を有する。
【0043】
被係合溝部55は、
図8および
図9に示すように、操作部本体51に形成された複数の溝55aを有する。溝55aは、長手方向Aに対して垂直な幅方向Bを深さ方向とする溝であり、操作部本体51の内部空間50側に開口している。複数の溝55aは、長手方向Aに複数配列している。
【0044】
可動係合部56は、
図9に示すように、スライダ52に取り付けられている。可動係合部56は、弾性を有しており、初期位置である第一位置P1と変形後の第二位置P2との間で移動可能である。長手方向Aに対して垂直な幅方向Bから見た正面視において、可動係合部56はL字形状の形成されており、スライダ52から突出する押付部56aを有する。
【0045】
図10は、
図9のY-Y線に沿った操作部5の断面図である。
図10に示す可動係合部56は、外力がない状態であり、初期位置である第一位置P1に配置されている。可動係合部56は、幅方向Bに突出する突出部56bを有する。可動係合部56が第一位置P1にあるとき、突出部56bは複数の溝55aのいずれかと係合する。その結果、スライダ52は、スライダ52の長手方向Aの位置が固定される。
【0046】
図11は、
図9のY-Y線に沿った操作部5の断面図である。
図11に示す可動係合部56は、術者により押付部56aがスライダ52に近づく方向に押し込まれ、第二位置P2に配置されている。可動係合部56が第二位置P2にあるとき、突出部56bは複数の溝55aのいずれかとも係合しない。その結果、スライダ52は、スライダ52の長手方向Aの位置が固定されない。
【0047】
術者は、押付部56aをスライダ52に近づく方向に押し込んで、可動係合部56を第二位置P2に移動させる。溝55aと突出部56bとの係合を解除(ロック機構54を解除)された後、術者はスライダ52の長手方向Aの位置を変更する。
【0048】
術者は、スライダ52の長手方向Aの位置を変更した後に、押付部56aに加えていた力を解除して、可動係合部56を第一位置P1に戻す。溝55aと突出部56bとが係合して、スライダ52の長手方向Aの位置が再度固定される。
【0049】
図12は、スライダ52が先端側に固定された処置具100を示す図である。
第一電極21が第二電極32に対して突出した状態で、ロッド2の突没位置が固定される。術者は、突出した状態で固定された第一電極21を用いて、切開・剥離処置を実施しやすい。
【0050】
図13は、スライダ52が基端側に固定された処置具100を示す図である。
第一電極21が第二電極32に接触した状態で、ロッド2の突没位置が固定される。術者は、第一電極21と第二電極32により形成された止血処置面Sを用いて、止血処置を実施しやすい。ロッド2の突没位置が固定されているため、止血処置面Sの大きさは維持される。
【0051】
[内視鏡処置システム300の使用方法]
次に、本実施形態の内視鏡処置システム300を用いた手技(内視鏡処置システム300の使用方法)について説明する。具体的には、ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)などの内視鏡治療における病変部の切開・剥離処置および止血処置について説明する。
【0052】
準備作業として、術者は、公知の方法により病変部を特定し、病変部を膨隆させる。具体的には、術者は内視鏡200の挿入部202を消化管内(例えば、食道、胃、十二指腸、大腸)に挿入し、内視鏡の撮像部203で得られる画像を観察しながら病変部を特定する。次に、術者は公知の粘膜下局注針を挿入部202のチャンネル206に挿通し、粘膜下局注針により局注用の液体(局注液)を注入し病変部を膨隆させる。局注液を注入後、粘膜下局注針をチャンネル206から抜去する。
【0053】
術者は処置具100をチャンネル206に挿入し、挿入部202の先端開口部206aからシース1の先端1aを突出させる。術者は、操作部5のスライダ52を操作部本体51に対して相対的に前進させ、ロッド2を突出させる。
【0054】
術者は、ロッド2を前進させ、高周波電流を通電させた状態で第一電極21を移動させて病変部の粘膜を切開する。また、術者は、ロッド2を前進させ、高周波電流を通電させた状態で、切開した病変部の粘膜を持ち上げて粘膜下層を露出させながら、切開した病変部の粘膜下層を剥離する。
【0055】
切開・剥離処置では、出血を伴うことが多い。出血した場合、術者は止血処置を行う。止血処置は、病変部を剥離した後の潰瘍部や切開、剥離処置中に出血した出血箇所を焼灼して止血する処理である。
【0056】
術者は、ロッド2を後退させ、第一電極21を第二電極32と接触させる。術者は止血対象にあわせて止血処置面Sの大きさを調整する。止血対象が大きい場合は、
図7に示すように、第二止血処置面S2が最も大きくなるまでロッド2を後退させる。第一止血処置面S1と第二止血処置面S2とで形成される止血処置面Sの大きさは、止血対象にあわせて多段階に調整される。
【0057】
長手方向Aに対して水平な方向から見た正面視において、第二電極32は、径方向Rにおいてシース1よりも大きくなるまで変形する。そのため、止血対象が大きい場合であっても、術者は止血処置面Sを大きくして好適に止血処置を実施できる。
【0058】
術者は、止血処置面Sを出血した潰瘍部や粘膜の止血対象に押し当て、ロッド2に高周波電流を通電して焼灼する。ロッド2の突没位置は操作部5のロック機構54により固定されているため、術者は止血処置面Sの大きさを維持しつつ止血処置を実施できる。そのため、止血が不要な箇所を焼灼してしまう事態を好適に防止できる。
【0059】
術者は、必要に応じて上述の動作(処置)を継続し、最終的に、病変部を切除し、ESDの手技を終了する。
【0060】
本実施形態に係る処置具100によれば、切開・剥離処置と止血処置とを実施でき、かつ、出血箇所の大きさに応じた好適な止血処置を実施できる。術者は、止血処置専用の処置具を使用することなく、容易に止血処置を行うことできる。術者は、止血対象にあわせて多段階に調整された止血処置面Sにより的確に止血対象を焼灼できる。
【0061】
以上、本発明の第一実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の実施形態および変形例において示す構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0062】
(変形例1-1)
上記実施形態において、内視鏡200は軟性内視鏡である。処置具100は、硬性内視鏡とともに内視鏡処置システムとして使用してもよい。
【0063】
(変形例1-2)
上記実施形態において、ロッド本体20の先端部に絶縁コーティング20aが施されおり、第一電極21が第二電極32に接触しない状態ではロッド2から第二電極32には通電されない。しかしながら、ロッド本体20と第二電極32との絶縁態様はこれに限定されない。ロッド本体20には絶縁コーティング20aが施されておらず、第二電極32の貫通孔32bの内周面に絶縁コーティングが施されていてもよい。
【0064】
(変形例1-3)
上記実施形態において、ロッド2は第二電極32を貫通する。しかしながら、ロッド2と第二電極32の態様はこれに限定されない。後退するロッド2が第二電極32を変形させることができる態様であれば、ロッド2は第二電極32を貫通してなくてもよい。
【0065】
(第二実施形態)
本発明の第二実施形態に係る処置具100Bについて、
図14から
図15を参照して説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0066】
[処置具100B]
処置具100Bは、第一実施形態の処置具100と同様に、内視鏡200とともに内視鏡処置システムとして使用される。処置具100Bは、切開・剥離処置と止血処置とを実施できる処置具である。処置具100Bは、シース1と、ロッド2と、電極部3Bと、操作ワイヤ4と、操作部5と、を備える。
【0067】
図14は、処置具100Bの先端部の斜視図である。
電極部3Bは、シース1の先端1aに設けられている。電極部3Bは、支持部材31と、第二電極32Bと、を有する。
【0068】
図15は、処置具100Bの先端部の長手方向Aに沿った断面図である。
第二電極32Bは、導電性および弾性を有する中実部材である。第二電極32Bは、支持部材31の先端側に溶着や接着剤等によって固定されている。第二電極32Bは、ロッド2が貫通する貫通孔32bと、スリット33Bと、を有する。
【0069】
第二電極32Bは、
図15に示すように、外力がない状態において半球状になるように形成されている。具体的には、第二電極32Bは、外力がない状態において、先端側A1が凸状となる半球状に形成されている。本実施形態においては、先端側A1に最も凸状となった先端部32aは、第二電極32Bの長手方向Aにおける中心軸O3付近に位置している。
【0070】
スリット33Bは、
図14に示すように、第二電極32Bの内部に設けられた切り込みである。スリット33Bは、第二電極32Bの長手方向Aにおける中心軸O3を回転中心として、周方向Cの全周に渡って形成されている。
【0071】
スリット33Bは、
図15に示すように、長手方向Aに沿った断面において、先端側A1を頂角とした二等辺三角形状の切り込みである。スリット33Bは、第二電極32Bの基端側A2において開口している。第二電極32Bの内部にはスリット33Bによって区画される内部空間34Bが形成されている。
【0072】
第二電極32Bは、第一実施形態の第二電極32と同様に、後退する第一電極21に押圧されることで変形する。第二電極32Bは、第一実施形態の第二電極32と比較すると、スリット33Bによって形成された内部空間34Bが基端側A2に形成されており、基端側A2の第二電極32Bが柔らかい。そのため、第二電極32Bは、第一実施形態の第二電極32と比較すると、基端側が変形しやすい。さらに、第二電極32Bは、先端側から押圧された場合において径方向Rにより広がりやすい。第二電極32Bが径方向Rに変化しやすいため、術者は止血処置面Sの大きさをより調整しやすい。
【0073】
本実施形態に係る処置具100Bによれば、切開・剥離処置と止血処置とを実施でき、かつ、出血箇所の大きさに応じた好適な止血処置を実施できる。術者は、止血処置専用の処置具を使用することなく、容易に止血処置を行うことできる。術者は、止血対象にあわせて多段階に調整された止血処置面Sにより的確に止血対象を焼灼できる。
【0074】
以上、本発明の第二実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の実施形態および変形例において示す構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0075】
(変形例2-1)
上記実施形態において、スリット33Bは、長手方向Aに沿った断面において先端側A1を頂角とした二等辺三角形状の切り込みである。しかしながら、スリット33Bを備える第二電極32Bの態様はこれに限定されない。
図16に示される処置具100Cは、第二電極32Bの変形例である第二電極32Cの長手方向Aに沿った断面図である。第二電極32Cは、スリット33Bに代えスリット33Cを有する。
【0076】
スリット33Cは、第二電極32Cの内部に設けられた切り込みである。スリット33Cは、第二電極32Cの長手方向Aにおける中心軸O3を回転中心として、周方向Cの全周に渡って形成されている。
【0077】
スリット33Cは、長手方向Aに沿った断面において、長方形状の切り込みである。スリット33Cは、第二電極32Cの基端側A2において開口している。第二電極32Cの内部にはスリット33Cによって区画される内部空間34Cが形成されている。スリット33Cは、スリット33Bと比較して加工しやすい。
【0078】
(第三実施形態)
本発明の第三実施形態に係る処置具100Dについて、
図17を参照して説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0079】
[処置具100D]
処置具100Dは、第一実施形態の処置具100と同様に、内視鏡200とともに内視鏡処置システムとして使用される。処置具100Dは、切開・剥離処置と止血処置とを実施できる処置具である。処置具100Dは、シース1と、ロッド2と、電極部3Dと、操作ワイヤ4と、操作部5と、を備える。
【0080】
図17は、処置具100Dの先端部の長手方向Aに沿った断面図である。
電極部3Dは、シース1の先端1aに設けられている。電極部3Dは、支持部材31と、第二電極32Dと、を有する。
【0081】
第二電極32Dは、導電性および弾性を有する中空部材である。第二電極32Dの内部には、内部空間34Dが形成されている。第二電極32Dは、支持部材31の先端側に溶着や接着剤等によって固定されている。第二電極32Dは、ロッド2が貫通する貫通孔32bを有する。
【0082】
内部空間34Dは、第二電極32Cの長手方向Aにおける中心軸O3を中心軸とした円柱形状に形成されている。内部空間34Dの径方向Rの長さL4は、第一電極21の径方向Rの長さL1よりも長い。
【0083】
貫通孔32bは内部空間34Dよりも先端側A1に形成されている。ロッド本体20は、
図17に示すように、内部空間34Dおよび貫通孔32bを貫通している。
【0084】
第二電極32Dは、第一実施形態の第二電極32と同様に、後退する第一電極21に押圧されることで変形する。第二電極32Dは、第一実施形態の第二電極32と比較すると、第二電極32Dが中空部材であり内部空間34Dが形成されているため、柔らかい。そのため、第二電極32Dは、第一実施形態の第二電極32と比較すると、ロッド2を後退させやすい。そのため、術者は止血処置面Sの大きさを調整しやすい。
【0085】
本実施形態に係る処置具100Dによれば、切開・剥離処置と止血処置とを実施でき、かつ、出血箇所の大きさに応じた好適な止血処置を実施できる。術者は、止血処置専用の処置具を使用することなく、容易に止血処置を行うことできる。術者は、止血対象にあわせて多段階に調整された止血処置面Sにより的確に止血対象を焼灼できる。
【0086】
以上、本発明の第三実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の実施形態および変形例において示す構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0087】
(変形例3-1)
上記実施形態において、中空部材である第二電極32Dの内部空間34Dは円柱形状に形成されている。しかしながら、内部空間34Dの形状はこれに限定されない。内部空間34Dは、例えば第二電極32Dの半球状と相似する半球形状であってもよい。
【0088】
(第四実施形態)
本発明の第四実施形態に係る処置具100Eについて、
図18から
図19を参照して説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0089】
[処置具100E]
処置具100Eは、第一実施形態の処置具100と同様に、内視鏡200とともに内視鏡処置システムとして使用される。処置具100Eは、切開・剥離処置と止血処置とを実施できる処置具である。処置具100Eは、シース1と、ロッド2と、電極部3Eと、操作ワイヤ4と、操作部5と、を備える。
【0090】
図18は、処置具100Eの先端部の長手方向Aに沿った断面図である。
電極部3Eは、シース1の先端1aに設けられている。電極部3Eは、支持部材31と、第二電極32と、補強電極36と、を有する。
【0091】
補強電極36は、例えばステンレス等の導電性を有する金属材料で形成されており、第二電極32よりも硬い電極である。補強電極36は、第二電極32の先端および第二電極32の貫通孔32bの内周面に設けられている。第二電極32と補強電極36とは、溶着や接着剤等で接続されている。
【0092】
図19は、後退した第一電極21により第二電極32が変形した状態における処置具100Eの長手方向Aに沿った断面図である。第二電極32は、第一実施形態の第二電極32と同様に、後退する第一電極21に押圧されることで変形する。第二電極32Eの先端には補強電極36が設けられているため、第二電極32は、後退する第一電極21と接触した補強電極36によって押圧されることで変形する。第二電極32Eの先端側A1には第二止血処置面S2が形成される。
【0093】
硬い補強電極36が第二電極32の先端および第二電極32の貫通孔32bの内周面に設けられているため、第一電極21が第二電極32を押し込む力がより均一になる。そのため、変形した第二電極32は、長手方向Aから見て中心軸O3に対して対称な形状に変化しやすく、術者は止血処置面Sの大きさを調整しやすい。
【0094】
高周波電流が通電されている第一電極21と第二電極32とが補強電極36を介して接触すると、第一電極21から第二電極32に高周波電流が通電される。
【0095】
本実施形態に係る処置具100Eによれば、切開・剥離処置と止血処置とを実施でき、かつ、出血箇所の大きさに応じた好適な止血処置を実施できる。術者は、止血処置専用の処置具を使用することなく、容易に止血処置を行うことできる。術者は、止血対象にあわせて多段階に調整された止血処置面Sにより的確に止血対象を焼灼できる。
【0096】
以上、本発明の第四実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の実施形態および変形例において示す構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0097】
(第五実施形態)
本発明の第五実施形態に係る処置具100Fについて、
図20から
図22を参照して説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0098】
[処置具100F]
処置具100Fは、第一実施形態の処置具100と同様に、内視鏡200とともに内視鏡処置システムとして使用される。処置具100Fは、切開・剥離処置と止血処置とを実施できる処置具である。処置具100Fは、シース1と、ロッド2と、電極部3Fと、操作ワイヤ4と、操作部5と、を備える。
【0099】
図20は、処置具100Fの先端部の正面図と長手方向Aに沿った断面図である。
電極部3Fは、シース1の先端1aに設けられている。電極部3Fは、支持部材31と、第二電極32Fと、を有する。ロッド2は第二電極32Fの中心軸に沿って第二電極32Fを貫通している。
【0100】
第二電極32Fは、例えばステンレス等の導電性を有する金属材料で形成された円錐状のコイルばね(竹の子ばね)である。第二電極32Fは、基端側から先端側に向かって外径が小さくなる円錐状に形成されている。第二電極32Fは、長手方向Aから見た正面視において、第二電極32F同士が重ならない螺旋形状となっている。第二電極32Fは、導電性を有するゴムにより形成されていてもよい。
【0101】
図21は、第二電極32Fが変形を開始した状態における処置具100Fの先端部の長手方向Aに沿った断面図である。第二電極32Fは、第一実施形態の第二電極32と同様に、後退する第一電極21に押圧されることで縮む。第二電極32Fの先端側A1には第二止血処置面S2が形成される。
【0102】
図22は、第二電極32Fがさらに変形した状態における処置具100Fの先端部の長手方向Aに沿った断面図である。
図22に示す第二電極32Fは、長手方向Aにおいて最も縮んだ状態となっている。第二電極32Fは、長手方向Aから見た正面視において、第二電極32F同士が重ならない螺旋形状となっている。そのため、第二電極32Fが長手方向Aに最も縮んだ状態となったとき、第二止血処置面S2は略平面となり、止血処置を実施する面として適している。
【0103】
高周波電流が通電されている第一電極21と第二電極32Fとが接触すると、第一電極21から第二電極32Fに高周波電流が通電される。
【0104】
本実施形態に係る処置具100Fによれば、切開・剥離処置と止血処置とを実施でき、かつ、出血箇所の大きさに応じた好適な止血処置を実施できる。術者は、止血処置専用の処置具を使用することなく、容易に止血処置を行うことできる。術者は、止血対象にあわせて多段階に調整された止血処置面Sにより的確に止血対象を焼灼できる。
【0105】
以上、本発明の第五実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の実施形態および変形例において示す構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0106】
(第六実施形態)
本発明の第六実施形態に係る処置具100Gについて、
図23から
図25を参照して説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0107】
[処置具100G]
処置具100Gは、第一実施形態の処置具100と同様に、内視鏡200とともに内視鏡処置システムとして使用される。処置具100Gは、切開・剥離処置と止血処置とを実施できる処置具である。処置具100Gは、シース1と、ロッド2と、電極部3と、操作ワイヤ4と、操作部5Gと、を備える。
【0108】
操作部5Gは、操作部本体51と、スライダ52と、給電コネクタ53と、ロック機構54と、第二ロック機構57と、を有する。
【0109】
図23は、操作部5Gの第二ロック機構57の斜視図である。
第二ロック機構57は、操作部本体51に着脱可能な部材である。第二ロック機構57は、U字状に形成されている。第二ロック機構57の両端部には返し部57aが形成されている。
【0110】
図24は、第二ロック機構57によりスライダ52の位置が先端側A1に固定された操作部5Gを示す図である。
図25は、第二ロック機構57によりスライダ52の位置が基端側A2に固定された操作部5Gを示す図である。第二ロック機構57は操作部本体51に取り付けられると、返し部57aが操作部本体51と係合し、操作部本体51に対して固定される。そのため、第二ロック機構57は操作部本体51に取り付けられることにより、スライダ52の進退移動を規制する。
【0111】
第二ロック機構57によりスライダ52の位置を固定することにより、第一電極21が第二電極32に対して突出した状態で、ロッド2の突没位置がより確実に固定される。術者は、突出した状態で固定された第一電極21を用いて、切開・剥離処置を実施しやすい。
【0112】
本実施形態に係る処置具100Gによれば、切開・剥離処置と止血処置とを実施でき、かつ、出血箇所の大きさに応じた好適な止血処置を実施できる。術者は、止血処置専用の処置具を使用することなく、容易に止血処置を行うことできる。術者は、止血対象にあわせて多段階に調整された止血処置面Sにより的確に止血対象を焼灼できる。
【0113】
以上、本発明の第六実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の実施形態および変形例において示す構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明は、止血処置に使用される処置具に適用することができる。
【符号の説明】
【0115】
300 内視鏡処置システム
200 内視鏡
100,100B,100C,100D,100E,100F,100G 処置具
1 シース
2 ロッド
20 ロッド本体
20a 絶縁コーティング
21 第一電極
22 ストッパ
3,3B,3D,3E,3F 電極部
31 支持部材
31b 貫通孔
32,32B,32C,32D,32F 第二電極
32a 先端部
32b 貫通孔
33B,33C スリット
34B,34C,34D 内部空間
36 補強電極
4 操作ワイヤ
5,5G 操作部
51 操作部本体
52 スライダ
54 ロック機構
57 第二ロック機構