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特許7592760電源装置、制御方法、及び制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】電源装置、制御方法、及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   B60L 3/00 20190101AFI20241125BHJP
   B60R 16/03 20060101ALI20241125BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20241125BHJP
   H02H 3/087 20060101ALI20241125BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20241125BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20241125BHJP
   B60L 58/18 20190101ALI20241125BHJP
   B60T 8/96 20060101ALI20241125BHJP
【FI】
B60L3/00 S
B60R16/03 A
H02J7/00 P
H02H3/087
B60L15/20 J
B60L50/60
B60L58/18
B60T8/96
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023001136
(22)【出願日】2023-01-06
(65)【公開番号】P2024097586
(43)【公開日】2024-07-19
【審査請求日】2023-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 和也
【審査官】上野 力
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-072398(JP,A)
【文献】特開2007-145208(JP,A)
【文献】特開2022-041513(JP,A)
【文献】特開2005-224047(JP,A)
【文献】特開2018-078682(JP,A)
【文献】特開2022-069929(JP,A)
【文献】特開2001-045602(JP,A)
【文献】特開2022-110417(JP,A)
【文献】特開2021-90246(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 3/00
B60R 16/03
H02J 7/00
H02H 3/087
B60L 15/20
B60L 50/60
B60L 58/18
B60T 8/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の制動動作を行う制動部と、
前記制動部に電力供給を行う主電源と、
前記主電源から電力を供給可能に接続された補助電源と、
前記主電源に関する第1失陥判定及び前記補助電源に関する第2失陥判定を行う電源制御部と、を備え、
前記制動部は第1制動部及び第2制動部を含み、
前記第1制動部は前記主電源及び前記補助電源から電力が供給可能に接続され、
前記第2制動部は前記主電源から電力が供給可能に接続され、
前記電源制御部は、
前記主電源に関する第1検知処理の結果に基づいて前記第1失陥判定を行い、
前記補助電源に関する第2検知処理の結果に基づいて前記第2失陥判定を行い、
前記第1検知処理の時間を、前記第2検知処理の時間より短く
前記主電源に関する失陥時に、前記補助電源から前記第1制動部に電力供給を行う、
電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電源装置であって、
前記移動体の移動制御を行う移動制御部を備え、
前記主電源に関する失陥の検出に伴って前記主電源から前記補助電源への電力供給を遮断し、前記第2失陥判定によって前記補助電源に関する失陥を検出した場合は、前記補助電源から前記第1制動部への電力供給を遮断し、
前記移動制御部は、前記補助電源に関する失陥に伴って前記補助電源から前記第1制動部への電力供給を遮断する場合、前記第2制動部を制御して前記移動体を停止させる、
電源装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電源装置であって、
前記電源制御部は、前記第1失陥判定によって前記主電源に関する失陥を検出し、前記制動部の電源供給元が前記主電源から前記補助電源に切り替わった後に、前記第2検知処理を開始する、
電源装置。
【請求項4】
請求項1に記載の電源装置であって、
前記電源制御部は、
前記第1失陥判定によって前記主電源に関する失陥を検出していない場合は、前記主電源から前記補助電源へ電力供給させる状態とし、
前記第1失陥判定によって前記主電源に関する失陥を検出した場合は、前記主電源から前記補助電源への電力供給を遮断する、
電源装置。
【請求項5】
請求項4に記載の電源装置であって
記電源制御部は、
前記主電源に関する失陥の検出に伴って前記主電源から前記補助電源への電力供給を遮断した後、
前記第2失陥判定によって前記補助電源に関する失陥を検出しなかった場合は、前記補助電源から前記制動部へ電力供給させる状態とし、
前記第2失陥判定によって前記補助電源に関する失陥を検出した場合は、前記補助電源から前記制動部への電力供給を遮断する、
電源装置。
【請求項6】
請求項5に記載の電源装置であって、
前記電源制御部は、
前記補助電源に関する失陥の検出に伴って前記補助電源から前記制動部への電力供給を遮断した場合、
前記主電源から前記制動部へ電力供給させる状態とする、
電源装置。
【請求項7】
請求項1に記載の電源装置であって
記電源制御部は、
前記第1失陥判定として、前記主電源の電圧降下を検出し、
前記第2失陥判定として、前記補助電源と前記制動部の間の短絡を検出する、
電源装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の電源装置であって、
前記主電源及び前記補助電源は、
前記制動部と、
前記移動体の移動制御を行う移動制御部と、
に電力供給を行い
前記移動制御部は、前記主電源に関する失陥が検出された場合に、前記制動部を制御して前記移動体を停止させる、
電源装置。
【請求項9】
請求項8に記載の電源装置であって、
前記制動部を制御して前記移動体を停止する場合に、前記移動体のユーザに対する通知を行う通知部を備える、
電源装置。
【請求項10】
移動体の制動動作を行う制動部と、前記制動部に電力供給を行う主電源と、前記主電源から電力を供給可能に接続された補助電源と、前記主電源に関する第1失陥判定及び前記補助電源に関する第2失陥判定を行う電源制御部と、を備える電源装置の制御方法であって、
前記制動部は第1制動部及び第2制動部を含み、
前記第1制動部は前記主電源及び前記補助電源から電力が供給可能に接続され、
前記第2制動部は前記主電源から電力が供給可能に接続され、
前記電源制御部が、
前記主電源に関する第1検知処理の結果に基づいて前記第1失陥判定を行い、
前記補助電源に関する第2検知処理の結果に基づいて前記第2失陥判定を行い、
前記第1検知処理の時間を、前記第2検知処理の時間より短く
前記主電源に関する失陥時に、前記補助電源から前記第1制動部に電力供給を行う、
制御方法。
【請求項11】
移動体の制動動作を行う制動部と、前記制動部に電力供給を行う主電源と、前記主電源から電力を供給可能に接続された補助電源と、前記主電源に関する第1失陥判定及び前記補助電源に関する第2失陥判定を行う電源制御部と、を備える電源装置の制御プログラムであって、
前記制動部は第1制動部及び第2制動部を含み、
前記第1制動部は前記主電源及び前記補助電源から電力が供給可能に接続され、
前記第2制動部は前記主電源から電力が供給可能に接続され、
前記電源制御部に、
前記主電源に関する第1検知処理の結果に基づいて前記第1失陥判定を行い、
前記補助電源に関する第2検知処理の結果に基づいて前記第2失陥判定を行い、
前記第1検知処理の時間を、前記第2検知処理の時間より短く
前記主電源に関する失陥時に、前記補助電源から前記第1制動部に電力供給を行う、
処理を実行させるための制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置、制御方法、及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、交通参加者の中でも脆弱な立場にある人々にも配慮した持続可能な輸送システムへのアクセスを提供する取り組みが活発化している。この実現に向けて予防安全技術に関する研究開発を通して交通の安全性や利便性をより一層改善する研究開発に注力している。
【0003】
従来、車両を遠隔操作して、指定された所定の駐車スペースに車両を駐車させたり、駐車スペースから車両を出庫させたりするリモートパーキングシステムが知られている。また、通常の車両走行時又は車両の駐車制御時に車両の電装品に電力を供給する主電源(二次電池)と、主電源の失陥時に車両を減速/停止させる安全装置に電力供給を行う補助電源(キャパシタ)とを備えた車両が知られている。特許文献1には、走行用のモータに供給する電力を蓄えている主電源と、主電源の出力電圧よりも低い電力で動作する補機と、出力電圧が補機の駆動電圧に等しい補機電源と、補機電源の短絡を検知する短絡検知部と、を備え、補機電源が短絡したときでも重要な補機に電力供給を継続することができる電気自動車が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-078752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1によれば、補機電源が短絡したときにその短絡を短絡検知部により検知し、その短絡した経路を遮断スイッチによって切り離すとともに、別に設けられた迂回経路を介して補機電源の電力を補機に供給することは可能である。しかしながら、このような動作を実行させるためには、短絡経路を遮断するための遮断回路や、補機に電力を供給するための迂回回路が必要になり、構成が複雑化するとともにコストアップにつながる。したがって、主電源と補助電源を備えた装置の電源失陥時における動作制御に関しては改良の余地がある。
【0006】
本発明は、主電源に関する失陥を早期に検知しつつ、補助電源に関する失陥の誤検知を抑制することが可能な電源装置、制御方法、及び制御プログラムを提供することを目的とする。そして、延いては持続可能な輸送システムの発展に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
移動体の制動動作を行う制動部と、
前記制動部に電力供給を行う主電源と、
前記主電源から電力を供給可能に接続された補助電源と、
前記主電源に関する第1失陥判定及び前記補助電源に関する第2失陥判定を行う電源制御部と、を備え、
前記制動部は第1制動部及び第2制動部を含み、
前記第1制動部は前記主電源及び前記補助電源から電力が供給可能に接続され、
前記第2制動部は前記主電源から電力が供給可能に接続され、
前記電源制御部は、
前記主電源に関する第1検知処理の結果に基づいて前記第1失陥判定を行い、
前記補助電源に関する第2検知処理の結果に基づいて前記第2失陥判定を行い、
前記第1検知処理の時間を、前記第2検知処理の時間より短く
前記主電源に関する失陥時に、前記補助電源から前記第1制動部に電力供給を行う、
電源装置である。
【0008】
本発明は、
移動体の制動動作を行う制動部と、前記制動部に電力供給を行う主電源と、前記主電源から電力を供給可能に接続された補助電源と、前記主電源に関する第1失陥判定及び前記補助電源に関する第2失陥判定を行う電源制御部と、を備える電源装置の制御方法であって、
前記制動部は第1制動部及び第2制動部を含み、
前記第1制動部は前記主電源及び前記補助電源から電力が供給可能に接続され、
前記第2制動部は前記主電源から電力が供給可能に接続され、
前記電源制御部が、
前記主電源に関する第1検知処理の結果に基づいて前記第1失陥判定を行い、
前記補助電源に関する第2検知処理の結果に基づいて前記第2失陥判定を行い、
前記第1検知処理の時間を、前記第2検知処理の時間より短く
前記主電源に関する失陥時に、前記補助電源から前記第1制動部に電力供給を行う、
制御方法である。
【0009】
本発明は、
移動体の制動動作を行う制動部と、前記制動部に電力供給を行う主電源と、前記主電源から電力を供給可能に接続された補助電源と、前記主電源に関する第1失陥判定及び前記補助電源に関する第2失陥判定を行う電源制御部と、を備える電源装置の制御プログラムであって、
前記制動部は第1制動部及び第2制動部を含み、
前記第1制動部は前記主電源及び前記補助電源から電力が供給可能に接続され、
前記第2制動部は前記主電源から電力が供給可能に接続され、
前記電源制御部に、
前記主電源に関する第1検知処理の結果に基づいて前記第1失陥判定を行い、
前記補助電源に関する第2検知処理の結果に基づいて前記第2失陥判定を行い、
前記第1検知処理の時間を、前記第2検知処理の時間より短く
前記主電源に関する失陥時に、前記補助電源から前記第1制動部に電力供給を行う、
処理を実行させるための制御プログラムである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、主電源に関する失陥を早期に検知しつつ、補助電源に関する失陥の誤検知を抑制することが可能な電源装置、制御方法、及び制御プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の電源装置を搭載した車両の一例を示す側面図である。
図2図1に示す車両の上面図である。
図3図1に示す車両の内部構成を示すブロック図である。
図4】電源装置の回路構成の一例を示す図である。
図5】主電源に関する失陥が検出されたときの電源装置の動作を説明する図である。
図6】主電源及び補助電源に関する失陥が検出されたときの電源装置の動作を説明する図である。
図7】電源に関する第1失陥判定と補助電源に関する第2失陥判定の実行タイミングの一例を示す図である。
図8】電源制御部による電源装置の制御の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の電源装置、制御方法、及び制御プログラムの一実施形態を、添付図面に基づいて説明する。なお、図面は、符号の向きに見るものとする。また、本明細書等では説明を簡単かつ明確にするために、前後、左右、上下の各方向は、図1及び図2に示す車両10の運転者から見た方向に従って記載し、図面には、車両10の前方をFr、後方をRr、左方をL、右方をR、上方をU、下方をD、として示す。
【0013】
<本発明の電源装置を搭載した車両10>
図1は、本発明の電源装置を搭載した車両10の一例を示す側面図である。図2は、図1に示した車両10の上面図である。車両10は、本発明の移動体の一例である。
【0014】
車両10は、駆動源(図示略)と、駆動源の動力によって駆動される駆動輪及び転舵可能な転舵輪を含む車輪と、を有する自動車である。本実施形態では、車両10は、左右一対の前輪及び後輪を有する四輪の自動車である。車両10の駆動源は、例えば電動機である。なお、車両10の駆動源は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関であってもよいし、電動機と内燃機関との組み合わせであってもよい。また、車両10の駆動源は、左右一対の前輪を駆動してもよいし、左右一対の後輪を駆動してもよいし、左右一対の前輪及び後輪の四輪を駆動してもよい。前輪及び後輪は、双方が転舵可能な転舵輪であってもよいし、いずれか一方が転舵可能な転舵輪であってもよい。
【0015】
車両10は、さらにサイドミラー11L,11Rを備える。サイドミラー11L,11Rは、車両10の前席ドアの外側に設けられた、運転者が後方及び後側方を確認するためのミラー(バックミラー)である。サイドミラー11L,11Rは、それぞれ垂直方向に延びる回転軸によって車両10の本体に固定されており、この回転軸を中心に回転することにより開閉可能である。
【0016】
車両10は、さらに前方カメラ12Fr、後方カメラ12Rr、左側方カメラ12L、及び右側方カメラ12Rを備える。前方カメラ12Frは、車両10の前方に設けられ、車両10の前方を撮像するデジタルカメラである。後方カメラ12Rrは、車両10の後方に設けられ、車両10の後方を撮像するデジタルカメラである。左側方カメラ12Lは、車両10の左のサイドミラー11Lに設けられ、車両10の左側方を撮像するデジタルカメラである。右側方カメラ12Rは、車両10の右のサイドミラー11Rに設けられ、車両10の右側方を撮像するデジタルカメラである。
【0017】
<車両10の内部構成>
図3は、図1に示した車両10の内部構成の一例を示すブロック図である。図3に示すように、車両10は、センサ群16と、ナビゲーション装置18と、制御ECU(Electronic Control Unit)20と、EPS(Electric Power Steering)システム22と、通信部24と、を有する。また、車両10は、駆動力制御システム26と、制動力制御システム28と、電源30と、を有する。
【0018】
センサ群16は、制御ECU20による制御に用いられる各種の検出値を取得する。センサ群16には、前方カメラ12Frと、後方カメラ12Rrと、左側方カメラ12Lと、右側方カメラ12Rとが含まれる。また、センサ群16には、前方ソナー群32aと、後方ソナー群32bと、左側方ソナー群32cと、右側方ソナー群32dとが含まれる。また、センサ群16には、車輪センサ34a,34bと、車速センサ36と、操作検出部38とが含まれる。なお、センサ群16にはレーダを含めてもよい。
【0019】
前方カメラ12Fr、後方カメラ12Rr、左側方カメラ12L、及び右側方カメラ12Rは、車両10の周辺を撮像することにより、車両10の外界を認識するための認識データ(例えば、周辺画像データ)を取得する。前方カメラ12Fr、後方カメラ12Rr、左側方カメラ12L、右側方カメラ12Rによって撮像される周辺画像は、それぞれ前方画像、後方画像、左側方画像、右側方画像と称される。左側方画像と右側方画像とによって構成される画像を側方画像と称してもよい。
【0020】
前方ソナー群32aと、後方ソナー群32bと、左側方ソナー群32cと、右側方ソナー群32dとは、車両10の周辺に音波を発射すると共に、他物体からの反射音を受信する。前方ソナー群32aは、例えば4つのソナーを含む。前方ソナー群32aを構成するソナーは、車両10の左斜め前方、前方左側、前方右側及び右斜め前方にそれぞれ設けられている。後方ソナー群32bは、例えば4つのソナーを含む。後方ソナー群32bを構成するソナーは、車両10の左斜め後方、後方左側、後方右側及び右斜め後方にそれぞれ設けられている。左側方ソナー群32cは、例えば2つのソナーを含む。左側方ソナー群32cを構成するソナーは、車両10の左側部前方及び左側部後方にそれぞれ設けられている。右側方ソナー群32dは、例えば2つのソナーを含む。右側方ソナー群32dを構成するソナーは、車両10の右側部前方及び右側部後方にそれぞれ設けられている。
【0021】
車輪センサ34a,34bは、車両10の車輪の回転角度を検出する。車輪センサ34a,34bは、角度センサによって構成されていてもよいし、変位センサによって構成されていてもよい。車輪センサ34a,34bは、車輪が所定角度回転する毎に検出パルスを出力する。車輪センサ34a,34bから出力される検出パルスは、車輪の回転角度及び車輪の回転速度の算出に用いられる。車輪の回転角度に基づいて、車両10の移動距離が算出される。車輪センサ34aは、例えば、左後輪の回転角度θaを検出する。車輪センサ34bは、例えば、右後輪の回転角度θbを検出する。
【0022】
車速センサ36は、車両10の車体の速度、すなわち車速Vを検出し、検出した車速Vを制御ECU20に出力する。車速センサ36は、例えば、トランスミッションのカウンタシャフトの回転に基づいて車速Vを検出する。
【0023】
操作検出部38は、操作入力部14を用いて行われるユーザによる操作内容を検出し、検出した操作内容を制御ECU20に出力する。操作入力部14には、例えばサイドミラー11L,11Rの開閉状態を切り替えるサイドミラースイッチや、シフトレバー(セレクトレバーやセレクタ)など各種のユーザインタフェースが含まれる。
【0024】
ナビゲーション装置18は、例えばGPS(Global Positioning System)を用いて車両10の現在位置を検出すると共に、目的地までの経路をユーザに案内する。ナビゲーション装置18は、地図情報データベースが備えられた不図示の記憶装置を有する。
【0025】
ナビゲーション装置18には、タッチパネル42と、スピーカ44とが備えられている。タッチパネル42は、制御ECU20の入力装置及び表示装置として機能する。スピーカ44は、車両10のユーザに対して各種の案内情報を音声で出力する。
【0026】
タッチパネル42は、制御ECU20に対する各種の指令を入力することができるように構成されている。例えば、ユーザは、タッチパネル42を介して、車両10の移動支援に関する指令を入力することが可能である。移動支援には、車両10の駐車支援及び出庫支援が含まれる。また、タッチパネル42は、制御ECU20の制御内容に関する各種の画面を表示するように構成されている。例えば、タッチパネル42には、車両10の移動支援に関する画面が表示される。具体的には、タッチパネル42には、車両10の駐車支援を要求する駐車支援ボタンや出庫支援を要求する出庫支援ボタンが表示される。駐車支援ボタンには、制御ECU20の自動操舵による駐車を要求する自動駐車ボタンや、ユーザの操作で駐車する際の補助を要求する補助駐車ボタンが含まれる。出庫支援ボタンには、制御ECU20の自動操舵による出庫を要求する自動出庫ボタンや、ユーザの操作で出庫する際の補助を要求する補助出庫ボタン含まれる。なお、タッチパネル42以外の構成要素、例えばスマートフォンやタブレット端末等を入力装置又は表示装置として用いるようにしてもよい。
【0027】
電源30は、主電源201と、補助電源202と、を有する。主電源201は、車両10に装備されている電力機器に電力を供給する電源である。例えば、主電源201は、急ブレーキ時に作動するABS(Anti-lock Brake System)、及び急ハンドル時に作動するEPS(Electric Power Steering)に電力を供給する。また、主電源201は、車両10を自動駐車するためのAPS(Auto Parking System)に電力を供給する。また、主電源201は、車両10を減速又は停止させるVSA(Vehicle Stability Assist)及びEPB(Electric Parking Brake)に電力を供給する。また、主電源201は、パススルー回路を介して補助電源202に電力を供給(充電)する電源である。
【0028】
補助電源202は、主電源201が失陥した際に、VSA及びEPBに電力を供給する電源である。補助電源202は、VSA、EPBの動作によりフェールセーフを作動させるために用いられる。主電源201は、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、鉛蓄電池などの二次電池である。補助電源202は、例えば、電気二重層のキャパシタなどである。主電源201及び補助電源202は、例えば、12V電圧である。電源30は制御ECU20と接続されている。
【0029】
制御ECU20は、入出力部50と、演算部52と、記憶部54とを有する。演算部52は、例えばCPU(Central Processing Unit)によって構成される。演算部52は、記憶部54に記憶されているプログラムに基づいて各部を制御することにより各種の制御を行う。また、演算部52は、入出力部50を介して、制御ECU20に接続される各部との間で信号を入出力する。制御ECU20は、本発明の電力機器の一例である。
【0030】
演算部52は、車両10の移動制御を行う移動制御部55と、主電源201及び補助電源202に関する失陥の判定を行う電源制御部56と、移動制御に関する情報をユーザに通知する通知部57と、を有する。
【0031】
移動制御部55は、ステアリング110の操作を移動制御部55の制御によって自動で行う自動操舵による車両10の自動駐車支援及び自動出庫支援を行う。自動駐車支援及び自動出庫支援では、アクセルペダル(図示せず)、ブレーキペダル(図示せず)及び操作入力部14の操作が自動で行われる。また、移動制御部55は、アクセルペダル、ブレーキペダル及び操作入力部14の操作をユーザ(運転者)が行って車両10を手動駐車及び手動出庫させる際の補助駐車支援及び補助出庫支援を行う。なお、自動駐車支援時及び自動出庫支援時には、ユーザは車両10に乗車した状態であってもよいし、車両10から降りて外部にいる状態であってもよい。
【0032】
例えば、移動制御部55は、前方カメラ12Fr、後方カメラ12Rr、左側方カメラ12L、及び右側方カメラ12Rによって取得された車両10の外界の認識データと、ユーザから指定される駐車スペースとに基づいて、車両10の移動を実行させる移動制御を行う。移動制御には、車両10を所定の駐車スペース(目標駐車位置)に自動駐車させる駐車制御と、車両10を所定の駐車スペースから目標移動位置に自動出庫させる出庫制御が含まれる。移動制御部55は、駐車制御及び出庫制御を、入出力部50を介して外部から入力される指示信号に従って実行する。外部からの入力とは、車両10のユーザが携帯可能な情報端末等からの無線通信による入力が含まれる。また、移動制御部55は、駐車制御及び出庫制御に関する情報を、入出力部50を介して外部の情報端末へ送信する。
【0033】
また、移動制御部55は、車両10の主電源201に関する失陥が検出された場合に、車両10の制動部を制御して車両10を停止させる制御を行う。車両10の制動部には、例えば、後述する制動力制御システム28が含まれる。
【0034】
電源制御部56は、主電源201に関する第1検知処理を行い、その第1検知処理の結果に基づいて主電源201に関する第1失陥判定を行う。また、電源制御部56は、補助電源202に関する第2検知処理を行い、その第2検出処理の結果に基づいて補助電源202に関する第2失陥判定を行う。また、電源制御部56は、主電源201に関する第1検知処理の時間を、補助電源202に関する第2検知処理の時間よりも短い処理時間に設定する。
【0035】
電源制御部56は、主電源201に関する第1失陥判定として、例えば、主電源201の電圧降下を検出する。また、電源制御部56は、補助電源202に関する第2失陥判定として、例えば、補助電源202と補助電源202の下流側に接続される制動部との間の短絡を検出する。主電源201に関する第1失陥には、例えば、定常的な負荷への電力の供給を行うDC/DC(Direct Current)コンバータ(図4参照)からの電力供給が遮断されることに伴う主電源201の電圧降下が含まれる。また、主電源201に関する第1失陥には、主電源201自体の劣化による性能低下に伴う主電源201の電圧降下が含まれる。また、主電源201に関する第1失陥には、DC/DCコンバータからの電力供給の遮断及び主電源201自体の劣化が重なることに伴う主電源201の電圧降下が含まれる。
【0036】
電源制御部56は、主電源201に関する第1失陥判定によって主電源201に関する失陥を検出し、電力機器の電源供給元が主電源201から補助電源202に切り替わった後に、補助電源202に関する第2検知処理を開始する。
【0037】
電源制御部56は、主電源201に関する第1失陥判定によって主電源201に関する失陥を検出していない場合、主電源201から補助電源202へ電力を供給(充電)させる状態にする。これに対して、電源制御部56は、主電源201に関する第1失陥判定によって主電源201に関する失陥を検出した場合、主電源201から補助電源202への電力の供給を遮断する。
【0038】
また、電源制御部56は、主電源201に関する失陥の検出に伴って主電源201から補助電源202への電力の供給を遮断した後、補助電源202に関する第2失陥判定によって補助電源202に関する失陥を検出しなかった場合、補助電源202から制動部(例えば、後述する制動力制御システム28)へ電力を供給させる状態とし、第2失陥判定によって補助電源202に関する失陥を検出した場合、補助電源202から制動部への電力の供給を遮断する。電源制御部56は、補助電源202に関する失陥の検出に伴って補助電源202から制動部への電力の供給を遮断した場合、主電源201から制動部へ電力を供給させる状態とする。
【0039】
通知部57は、主電源201に関する失陥が検知され、制動部が制御されて車両10が停止される場合に、車両10のユーザに対して通知を行う。通知には、例えば、「電源に故障が発生したので車両10を停止させる」ことの通知や、ユーザの対応についての通知などが含まれる。
【0040】
EPSシステム22は、舵角センサ100と、トルクセンサ102と、EPSモータ104と、レゾルバ106と、EPS ECU108と、を有する。舵角センサ100は、ステアリング110の舵角θstを検出する。トルクセンサ102は、ステアリング110に加わるトルクTQを検出する。
【0041】
EPSモータ104は、ステアリング110に連結されたステアリングコラム112に対して駆動力又は反力を付与することにより、乗員によるステアリング110の操作支援や駐車支援時の自動操舵を可能とする。レゾルバ106は、EPSモータ104の回転角度θmを検出する。EPS ECU108は、EPSシステム22の全体の制御を司る。EPS ECU108には、入出力部(図示せず)と、演算部(図示せず)と、記憶部(図示せず)とが備えられている。
【0042】
通信部24は、他の通信装置120との間で無線通信を行うことを可能とするものである。他の通信装置120には、基地局や、他車両の通信装置や、車両10のユーザが携帯可能なスマートフォンあるいはタブレット端末等の情報端末などが含まれる。例えば、通信部24は、情報端末とUWB(Ultra Wide Band:登録商標)通信を行うためのUWBインタフェースを備える。情報端末については後述する。
【0043】
駆動力制御システム26には、駆動ECU130が備えられている。駆動力制御システム26は、車両10の駆動力制御を実行する。駆動ECU130は、不図示のアクセルペダルに対するユーザによる操作に基づいて、不図示のエンジン等を制御することによって、車両10の駆動力を制御する。
【0044】
制動力制御システム28には、制動ECU132が備えられている。制動力制御システム28は、車両10の制動力の制御を実行する。制動ECU132は、不図示のブレーキペダルに対するユーザによる操作に基づいて、不図示のブレーキ機構等を制御することによって、車両10の制動力を制御する。制動力制御システム28は、本発明の制動部の一例である。制動部は、本発明の電力機器の一例である。
【0045】
<電源装置の構成及びその動作>
次に、本発明の電源装置200の構成及びその動作について説明する。
【0046】
[電源装置200の構成]
図4は、電源装置200の回路構成の一例を示す図である。図4に示すように、電源装置200は、主電源201と、補助電源202と、電源制御部56と、第1制動部60と、第2制動部70と、DC/DCコンバータ203と、を有する。電源装置200は、上述したように車両10に搭載される電源装置である。また、電源装置200の電源制御部56は、制御ECU20に含まれる電源制御部である。第1制動部60は、本発明の制動部の一例である。
【0047】
電源装置200において主電源201は、電源ラインL1を介して電源制御部56と接続されている。電源ラインL1にはヒューズh2が設けられている。主電源201は、電源制御部56に電力を供給することが可能である。
【0048】
また、主電源201は、電源ラインL2aを介して補助電源202と接続されている。電源ラインL2aには、ヒューズh4とスイッチs1が直列に接続されて設けられている。主電源201は、補助電源202に電力を供給(充電)することが可能である。
【0049】
また、主電源201は、電源ラインL3を介して第1制動部60と接続されている。電源ラインL3には、ヒューズh3とスイッチs3が直列に接続されて設けられている。主電源201は、第1制動部60に電力を供給することが可能である。
【0050】
また、主電源201は、電源ラインL5を介して第2制動部70と接続されている。電源ラインL5には、ヒューズh5に接続されて設けられている。主電源201は、第2制動部70に電力を供給することが可能である。
【0051】
補助電源202は、電源ラインL2bを介して第1制動部60と接続されている。電源ラインL2bにはスイッチs2が設けられている。補助電源202は、第1制動部60に電力を供給することが可能である。
【0052】
DC/DCコンバータ203は、電源ラインL4を介して電源制御部56と接続されている。電源ラインL4にはヒューズh1が設けられている。DC/DCコンバータ203は、電源制御部56に電力を供給することが可能である。また、DC/DCコンバータ203は、図示を省略するヘッドライトや、その他の制御ユニット等の電力機器に電力を供給することが可能である。
【0053】
電源制御部56は、信号ラインl1により電源ラインL2aのスイッチs1と接続されている。また、電源制御部56は、信号ラインl2により電源ラインL2bのスイッチs2と接続されている。また、電源制御部56は、信号ラインl3により電源ラインL3のスイッチs3と接続されている。電源制御部56は、スイッチs1、スイッチs2、及びスイッチs3のオン/オフを切り替える切替制御部としての機能を有する。スイッチs1、スイッチs2、及びスイッチs3は、例えば、FET(Field effect transistor)スイッチで構成される。
【0054】
また、電源制御部56は、電力機器であるICM(Integrated Control Module)、APS、PKS(Parking Sensor System)、ABS、EPS等としての機能を有する。
【0055】
第1制動部60は、例えば、図3における制動力制御システム28に含まれる。第1制動部60には、VSA、EPB等が含まれる。第2制動部70は、図3における制動力制御システム28に含まれる。第2制動部70には、例えばESB(Electric Servo Brake)が含まれる。
【0056】
[電源装置200の正常時における動作]
図4に基づいて、電源装置200の正常時における動作について説明する。まず、制御ECU20の電源制御部56は、主電源201に関する第1検知処理を行う。第1検知処理は、主電源201における出力端子(例えば、+12V)の電圧値を例えば電圧センサにより測定する。第1検知処理は、出力端子の電圧降下、例えば、出力端子の電圧値が9.5V未満に降下しているか否かを検知する。電源制御部56は、電圧値が9.5V未満に降下している時間が例えば200μsec以上継続しているか否かの第1失陥判定を行う。電源制御部56は、第1失陥判定において、9.5V未満に降下している電圧値の時間が200μsec以上継続していると検知された場合に主電源201が失陥したと判定し、200μsec以上継続していないと検知された場合に主電源201が失陥していないと判定する。
【0057】
電源制御部56は、第1失陥判定において、主電源201に関する失陥を検出しなかった場合、電源装置200を正常状態であると判定して通常に動作させる制御を行う。電源制御部56は、図4に示すように、電源ラインL2aのスイッチs1をオン状態、電源ラインL2bのスイッチs2をオフ状態、及び電源ラインL3のスイッチs3をオン状態に制御する。これにより、電源装置200において、主電源201から電源制御部56及び第1制動部60に対して電力が供給される状態となる。また、主電源201から補助電源202へ電力が供給(充電)される状態となる。
【0058】
[主電源201失陥時の電源装置200の動作]
図5は、主電源201に関する失陥が検出されたときの電源装置200の動作を説明する図である。
【0059】
制御ECU20の電源制御部56は、上記と同様に、主電源201に関する第1検知処理を行う。また、電源制御部56は、第1失陥判定において9.5V未満に降下している主電源201の電圧値の時間が200μsec以上継続していると検知された場合に主電源201が失陥(電圧降下)したと判定し、200μsec以上継続していないと検知された場合に主電源201が失陥(電圧降下)していないと判定する。
【0060】
電源制御部56は、第1失陥判定において、主電源201に関する失陥(電圧降下)を検出した場合、電源装置200を失陥状態であると判定して主電源失陥時の動作をさせる。主電源201の電圧降下は、例えば、DC/DCコンバータ203の負荷が増加した場合に発生する。DC/DCコンバータ203の負荷が増加すると過電流保護(ヒューズh1切れ)が働いてDC/DCコンバータ203からの電力供給が遮断する。この場合、DC/DCコンバータ203から供給されていた電力分が主電源201の負荷として加算されて主電源201に要求されるため主電源201に電圧降下が発生する。
【0061】
電源制御部56は、主電源失陥時において、図5に示すように、電源ラインL2aのスイッチs1をオフ状態、電源ラインL2bのスイッチs2をオン状態、及び電源ラインL3のスイッチs3をオフ状態に制御する。
【0062】
電源装置200において、スイッチs1がオフとなることにより、主電源201から補助電源202への電力の供給(充電)が遮断される。主電源201から補助電源202への電力の供給(充電)が遮断されることにより、主電源201の負荷が軽減するので主電源201の電圧降下が抑制される。これにより、主電源201から電源制御部56へ電力を供給できる状態が維持される。
【0063】
また、スイッチs2がオンとなることにより、補助電源202から第1制動部60に対して電力が供給される状態となる。なお、本例では、補助電源202から第1制動部60へと繋がる電源ラインL2bが単数のラインとなっているが、電源ラインL2bの数は単数に限定されない。例えば、第1制動部60が2系統の電源ラインを接続する構成となっている場合には、補助電源202から第1制動部60へと繋がる電源ラインL2bの数は2ライン設けられることになる。
【0064】
また、スイッチs3がオフとなることにより、主電源201から第1制動部60への電力の供給が遮断される。
【0065】
[主電源201及び補助電源202失陥時の電源装置200の動作]
図6は、主電源201及び補助電源202に関する失陥が検出されたときの電源装置200の動作を説明する図である。
【0066】
制御ECU20の電源制御部56は、上記図5で説明したように第1失陥判定によって主電源201に関する失陥を検出し、主電源201から補助電源202への電力供給を遮断するとともに、第1制動部60の電源供給元を主電源201から補助電源202に切り替えた後、補助電源202に関する第2検知処理を開始する。第2検知処理は、補助電源202の出力端子(例えば、12V)の電圧値を例えば電圧センサにより測定する。第2検知処理は、出力端子の電圧降下、例えば、出力端子の電圧値が11V以下に降下しているか否かを検知する。例えば、補助電源202と第1制動部60との間の短絡(地絡)が発生すると抵抗値の変動により電圧の低下が発生する。電源制御部56は、電圧値が11V以下に降下している時間が例えば30msec以上継続しているか否かの第2失陥判定を行う。電源制御部56は、第2失陥判定において11V以下に降下している電圧値の時間が30msec以上継続していると検知された場合に補助電源202が失陥したと判定し、30msec以上継続していないと検知された場合に補助電源202が失陥していないと判定する。
【0067】
電源制御部56は、第2失陥判定において、補助電源202に関する失陥(電圧降下)を検出した場合、電源装置200を失陥状態であると判定して補助電源失陥時の動作をさせる。電源制御部56は、図6に示すように、電源ラインL2bのスイッチs2をオフ状態に制御する。
【0068】
電源装置200において、スイッチs2がオフとなることにより、補助電源202から第1制動部60への電力の供給が遮断される。
【0069】
なお、第2失陥判定において補助電源202に関する失陥を検出しなかった場合には、電源制御部56は、補助電源202から第1制動部60へ電力を供給する状態(図5に示す状態)を維持する。
【0070】
<第1失陥判定と第2失陥判定>
次に、主電源201に関する第1失陥判定と補助電源202に関する第2失陥判定の実行タイミングについて説明する。図7は、主電源201に関する第1失陥判定と補助電源202に関する第2失陥判定の実行タイミングの一例を示す図である。図7に示すように、電源制御部56は、先ず主電源201に関する第1検知処理71を実行する。第1検知処理71の処理時間T1は、例えば200μsecである。電源制御部56は、第1検知処理71が終了すると、その結果に基づいて主電源201に関する第1失陥判定72を実行する。
【0071】
次に、電源制御部56は、主電源201に関する第1失陥判定72が終了した後に、補助電源202に関する第2検知処理73の実行を開始する。第2検知処理73の処理時間T2は、例えば30msecである。電源制御部56は、第2検知処理73が終了すると、その結果に基づいて補助電源202に関する第2失陥判定74を実行する。
【0072】
例えば、補助電源202の失陥を検知する処理時間T2を、主電源201の電圧降下を検出する処理時間T1(200μsec)と同じ時間に揃えることで処理時間を短くすることは可能である。しかしながら、処理時間T2を短くした場合、補助電源202の失陥を検知する位置の検知電圧が、例えば電源ラインL2bに設けられるスイッチs2(FET)等の抵抗値により安定しないため、正確に測定できない場合がある。一方、例えば、主電源201の電圧降下を検出する処理時間T1を、補助電源202の失陥を検知する処理時間T2(30msec)と同じ時間に揃えた場合、補助電源202の失陥の誤検知は抑制できるが、主電源201の電圧降下が大きくなり主電源201から電源制御部56への電力供給ができなくなる場合がある。そこで、主電源201の電圧降下を抑制可能な時間として処理時間T1を約200μsecに設定し、補助電源202の電圧を安定した状態で測定可能な時間として処理時間T2を約30msecに設定する。
【0073】
なお、本例では、補助電源202に関する第2検知処理73及び第2失陥判定74を1回のみ実行する場合を示しているが、補助電源202に関する失陥が検出されない場合、電源制御部56は、失陥が検出されるまで補助電源202に関する第2検知処理73及び第2失陥判定74の実行を繰り返す。また、本例では、主電源201に関する第1検知処理71及び第1失陥判定72を1回のみ実行する場合を示しているが、電源制御部56は、補助電源202に関する第2検知処理73及び第2失陥判定74の実行と並行して第1検知処理71と第1失陥判定72を繰り返し実行するようにしてもよい。
【0074】
<電源制御部56の制御例>
次に、電源装置200における電源制御部56の制御例について説明する。図8は、電源制御部56の制御の一例を示すフローチャートである。
【0075】
まず、電源制御部56は、電源装置200の主電源201に関する第1検知処理を実行する(ステップS11)。第1検知処理は、例えば、上述したように、主電源201の電圧値が9.5V未満に降下しているか否かを検知する。
【0076】
次に、電源制御部56は、ステップS11における第1検知処理において、主電源201の電圧に電圧降下が発生しているか否かを判定する(第1失陥判定:ステップS12)。第1失陥判定は、例えば、上述したように、主電源201の電圧値(12V電圧)が9.5V未満に降下し、その降下している時間が200μsec以上継続しているか否かにより判定する。
【0077】
ステップS11において、主電源201の電圧降下が発生していない場合(ステップS11:No)には、電源制御部56は、ステップS11に戻って各処理を繰り返す。
【0078】
ステップS11において、主電源201の電圧降下が発生している場合(ステップS11:Yes)には、電源制御部56は、例えば図5に示すように、スイッチs1をオフすることにより主電源201と補助電源202との間を遮断し、スイッチs3をオフすることにより主電源201と第1制動部60との間を遮断し、スイッチs2をオンすることにより補助電源202と第1制動部60との間を接続する(ステップS13)。これにより、第1制動部60には補助電源202から電力が供給される。
【0079】
次に、電源制御部56は、電源装置200の補助電源202に関する第2検知処理を実行する(ステップS14)。第2検知処理は、例えば、上述したように、補助電源202の電圧値が11V以下に降下しているか否かを検知する。
【0080】
次に、電源制御部56は、ステップS14における第2検知処理において、補助電源202と第1制動部60との間に短絡(地絡)が発生しているか否かを判定する(第2失陥判定:ステップS14)。第2失陥判定は、例えば、上述したように、補助電源202の電圧値(12V電圧)が11V以下に降下し、その降下している時間が30msec以上継続しているか否かにより判定する。
【0081】
ステップS14において、補助電源202と第1制動部60との間に短絡が発生している場合(ステップS14:Yes)には、電源制御部56は、例えば図6に示すように、スイッチs2をオフすることにより補助電源202と第1制動部60との間を遮断する(ステップS16)。このとき、電源制御部56は、第2制動部70を制御し、ESBによる車両固定を開始する。
【0082】
次に、電源制御部56は、第2制動部70による制動(車両固定)が完了したか否かを判定し(ステップS17)、第2制動部70による制動が完了するまで待つ(ステップS17:Noのループ)。第2制動部70による制動が完了すると(ステップS17:Yes)、電源制御部56は、スイッチs1をオンすることにより主電源201と補助電源202との間を接続し、スイッチs3をオンすることにより主電源201と第1制動部60との間を接続し(ステップS18)、一連の処理を終了する。これにより、図4の状態に戻る。
【0083】
ステップS14において、補助電源202と第1制動部60との間に短絡が発生していない場合(ステップS14:No)には、電源制御部56は、スイッチs2のオンを維持する。これにより、第1制動部60による車両固定が行われる状態が維持される。この場合、電源制御部56は、第1制動部60による制動(車両固定)が完了したか否かを判定し(ステップS19)、制動が完了するまで待つ(ステップS19:Noのループ)。第1制動部60による制動が完了すると(ステップS17:Yes)、電源制御部56は、スイッチs1をオンすることにより主電源201と補助電源202との間を接続し、スイッチs3をオンすることにより主電源201と第1制動部60との間を接続し、スイッチs2をオフすることにより補助電源202と第1制動部60との間を遮断し(ステップS20)、一連の処理を終了する。これにより、図4の状態に戻る。
【0084】
また、ステップS18,S20において、電源制御部56は、スイッチs2をオフにすることにより補助電源202と第1制動部60との間を遮断してもよい。この場合は、図4の状態、すなわち第1検出処理によって電圧降下が検出される前のデフォルト状態となる。
【0085】
以上説明したように、電源装置200の電源制御部56は、主電源201に関する失陥を検知する第1検知処理71の処理時間T1を補助電源202に関する失陥を検知する第2検知処理73の処理時間T2よりも短い時間にする。この構成によれば、主電源201の検知処理の処理時間T1を短く(例えば、約200μsec)することで、主電源201の失陥時における主電源電圧の電圧降下を抑制できる。また、補助電源202の検知処理の処理時間T2を長く(例えば、約30msec)することで、補助電源202の失陥の誤検知を抑制できる。よって、主電源201の電圧降下を抑制しつつ、補助電源202に関する失陥の誤検知を抑制することができる。
【0086】
また、電源制御部56は、第1失陥判定72によって主電源201に関する失陥を検出した場合、主電源201から補助電源202への電力供給を遮断し、第1制動部60の電源供給元を主電源201から補助電源202に切り替えた後に補助電源202に関する第2検知処理73を開始する。これにより、主電源201の電圧降下を抑制することができるとともに、補助電源202と第1制動部60との間に生じる失陥(短絡)を検知することが可能である。
【0087】
また、電源制御部56は、第1制動部60に対して補助電源202から電力を供給している状態において、第2失陥判定74によって補助電源202に関する失陥を検出した場合、補助電源202から第1制動部60への電力の供給を遮断し、主電源201から第1制動部60へ電力を供給する。これにより、補助電源202に失陥が発生した場合でも、第1制動部60(VSA、EPB)に電力を供給し続けることができる。
【0088】
なお、前述した実施形態で説明した制御方法は、予め用意された制御プログラムをコンピュータで実行することにより実現できる。本制御プログラムは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記録され、記憶媒体から読み出されることによって実行される。また、本制御プログラムは、フラッシュメモリ等の非一過性の記憶媒体に記憶された形で提供されてもよいし、インターネット等のネットワークを介して提供されてもよい。本制御プログラムを実行するコンピュータは、電源装置に含まれるものであってもよいし、電源装置と通信可能なスマートフォン、タブレット端末、又はパーソナルコンピュータ等の電子機器に含まれるものでもあってもよいし、これら電源装置及び電子機器と通信可能なサーバ装置に含まれるものであってもよい。
【0089】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。
【0090】
例えば、上記実施形態では、車両10が駐車スペース(目標駐車位置)に自動移動する場合について説明したが、これに限定されない。例えば、車両10が道路等を自動移動する場合においても本発明の電源装置を適用してもよい。
【0091】
また、本明細書には少なくとも以下の事項が記載されている。なお、括弧内には、上記した実施形態において対応する構成要素等を示しているが、これに限定されるものではない。
【0092】
(1) 電力機器に電力供給を行う主電源(主電源201)と、
前記主電源に関する失陥時に、前記電力機器に電力供給を行う補助電源(補助電源202)と、
前記主電源に関する第1失陥判定及び前記補助電源に関する第2失陥判定を行う電源制御部(電源制御部56)と、を備え、
前記電源制御部は、
前記主電源に関する第1検知処理の結果に基づいて前記第1失陥判定を行い、
前記補助電源に関する第2検知処理の結果に基づいて前記第2失陥判定を行い、
前記第1検知処理の時間を、前記第2検知処理の時間より短くする、
電源装置。
【0093】
(1)によれば、主電源の第1検知処理の時間を短くすることで、主電源の失陥時における電圧降下を抑制できる。また、補助電源の第2検知処理の時間を長くすることで、補助電源の失陥の誤検知を抑制できる。
【0094】
(2) (1)に記載の電源装置であって、
前記電力機器は移動体(車両10)の電力機器である、
電源装置。
【0095】
(2)のように、本電源装置は移動体に適用することが好ましい。
【0096】
(3) (1)又は(2)に記載の電源装置であって、
前記電源制御部は、前記第1失陥判定によって前記主電源に関する失陥を検出し、前記電力機器の電源供給元が前記主電源から前記補助電源に切り替わった後に、前記第2検知処理を開始する、
電源装置。
【0097】
(3)によれば、主電源の電圧降下を抑制することができるとともに、補助電源と電力機器との間に生じる失陥(短絡)を検知することが可能である。
【0098】
(4) (1)から(3)のいずれかに記載の電源装置であって、
前記電源制御部は、
前記第1失陥判定によって前記主電源に関する失陥を検出していない場合は、前記主電源から前記補助電源へ電力供給させる状態とし、
前記第1失陥判定によって前記主電源に関する失陥を検出した場合は、前記主電源から前記補助電源への電力供給を遮断する、
電源装置。
【0099】
(4)によれば、主電源に関する失陥を検出した場合に主電源から補助電源へ供給する電力を遮断することで主電源の電圧降下を抑制することができる。
【0100】
(5) (4)に記載の電源装置であって、
前記電力機器は移動体の制動部(第1制動部60)を含み、
前記電源制御部は、
前記主電源に関する失陥の検出に伴って前記主電源から前記補助電源への電力供給を遮断した後、
前記第2失陥判定によって前記補助電源に関する失陥を検出しなかった場合は、前記補助電源から前記制動部へ電力供給させる状態とし、
前記第2失陥判定によって前記補助電源に関する失陥を検出した場合は、前記補助電源から前記制動部への電力供給を遮断する、
電源装置。
【0101】
(5)によれば、補助電源に関する失陥を検出した場合に補助電源から制動部へ供給する電力を遮断することで補助電源の電力の消費を抑制できる。
【0102】
(6) (5)に記載の電源装置であって、
前記電源制御部は、
前記補助電源に関する失陥の検出に伴って前記補助電源から前記制動部への電力供給を遮断した場合、
前記主電源から前記制動部へ電力供給させる状態とする、
電源装置。
【0103】
(6)によれば、補助電源に失陥が発生した場合でも制動部に電力を供給し続けることができる。
【0104】
(7) (1)から(6)のいずれかに記載の電源装置であって、
前記電力機器は移動体の制動部を含み、
前記電源制御部は、
前記第1失陥判定として、前記主電源の電圧降下を検出し、
前記第2失陥判定として、前記補助電源と前記制動部の間の短絡を検出する、
電源装置。
【0105】
(7)のように、主電源の失陥としては電圧降下を検出することが好ましく、補助電源の失陥としては制動部との間の短絡を検出することが好ましい。
【0106】
(8) (1)から(7)のいずれかに記載の電源装置であって、
前記電力機器は、
移動体の制動部と、
前記移動体の移動制御を行う移動制御部と、
を含み、
前記移動制御部は、前記主電源に関する失陥が検出された場合に、前記制動部を制御して前記移動体を停止させる、
電源装置。
【0107】
(8)のように、制動部を制御して移動体を停止させるのは、主電源に関する失陥が検出された場合であることが好ましい。
【0108】
(9) (8)に記載の電源装置であって、
前記制動部を制御して前記移動体を停止する場合に、前記移動体のユーザに対する通知を行う通知部(通知部57)を備える、
電源装置。
【0109】
(9)のように、制動部の動作により移動体を停止させる場合には、ユーザにその旨を通知することが好ましい。
【0110】
(10) 電力機器に電力供給を行う主電源と、前記主電源に関する失陥時に、前記電力機器に電力供給を行う補助電源と、前記主電源に関する第1失陥判定及び前記補助電源に関する第2失陥判定を行う電源制御部と、を備える電源装置の制御方法であって、
前記電源制御部が、
前記主電源に関する第1検知処理の結果に基づいて前記第1失陥判定を行い、
前記補助電源に関する第2検知処理の結果に基づいて前記第2失陥判定を行い、
前記第1検知処理の時間を、前記第2検知処理の時間より短くする、
制御方法。
【0111】
(10)によれば、主電源の第1検知処理の時間を短くすることで、主電源の失陥時における電圧降下を抑制できる。また、補助電源の第2検知処理の時間を長くすることで、補助電源の失陥の誤検知を抑制できる。
【0112】
(11) 電力機器に電力供給を行う主電源と、前記主電源に関する失陥時に、前記電力機器に電力供給を行う補助電源と、前記主電源に関する第1失陥判定及び前記補助電源に関する第2失陥判定を行う電源制御部と、を備える電源装置の制御プログラムであって、
前記電源制御部に、
前記主電源に関する第1検知処理の結果に基づいて前記第1失陥判定を行い、
前記補助電源に関する第2検知処理の結果に基づいて前記第2失陥判定を行い、
前記第1検知処理の時間を、前記第2検知処理の時間より短くする、
処理を実行させるための制御プログラム。
【0113】
(11)によれば、主電源の第1検知処理の時間を短くすることで、主電源の失陥時における電圧降下を抑制できる。また、補助電源の第2検知処理の時間を長くすることで、補助電源の失陥の誤検知を抑制できる。
【符号の説明】
【0114】
10 車両(移動体)
55 移動制御部
56 電源制御部
57 通知部
60 第1制動部(制動部)
201 主電源
202 補助電源
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8