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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/20 20060101AFI20241125BHJP
【FI】
E02F9/20 Q
E02F9/20 M
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023016967
(22)【出願日】2023-02-07
(62)【分割の表示】P 2020036578の分割
【原出願日】2020-03-04
(65)【公開番号】P2023052968
(43)【公開日】2023-04-12
【審査請求日】2023-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマーパワーテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 耕平
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-222745(JP,A)
【文献】特開2002-195205(JP,A)
【文献】国際公開第2018/179577(WO,A1)
【文献】特開2007-162313(JP,A)
【文献】特開平08-270608(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機と、前記作業機を設計情報に従い自動制御する自動制御装置と、を備え、
前記自動制御が有効の時に、前記作業機の操作がされている間は、前記自動制御装置が無効にされる建設機械であって、
前記建設機械は、ショベルであって、下部走行体と、前記下部走行体に旋回自在に支持される上部旋回体を備え、
前記自動制御の有効、無効にかかわらず、前記上部旋回体の旋回と前記ショベルの掘削作業機の動作を同時に禁止する禁止装置を備える建設機械。
【請求項2】
前記禁止装置は、前記自動制御の有効、無効にかかわらず、前記上部旋回体の旋回と前記ショベルの掘削作業機の動作の禁止を同時に解除することができる請求項記載の建設機械。
【請求項3】
前記自動制御の有効と無効を択一的に切り替える自動スイッチを、備え、
前記自動スイッチと前記禁止装置を操作するスイッチは、前記作業機を操作するレバーに離間して配置され、前記レバーの把持部の表裏にそれぞれ配置されている請求項又は記載の建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、ブーム及びバケットを操作するための操作レバーの前面の上端面に設けられたマシンコントロールON/OFFスイッチが開示されている。
【0003】
特許文献1では、オペレータが自動敷き均し作業中に異変を感じて手動による敷き均し作業に変更しようとする場合、マシンコントロールON/OFFスイッチをその都度OFFとしなければならず、また、再び自動敷き均し作業に復帰する場合、マシンコントロールON/OFFスイッチをONとしなければならず、作業効率がよいとは言えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2018/179577号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、自動制御による作業の作業効率を向上できる建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る建設機械は、作業機と、前記作業機を設計情報に従い自動制御する自動制御装置と、前記作業機を手動制御する操作レバーと、前記操作レバーに装着され、前記自動制御の有効と無効を択一的に切り替える自動スイッチとを備え、
前記作業機の手動制御は、前記自動制御に優先される。
【0007】
この構成によれば、自動制御装置により作業機を自動制御して作業を実施する際、手動制御が自動制御よりも優先されるため、自動制御中であっても作業機を手動操作することができる。一方、手動操作を停止すれば、容易に自動制御に復帰することができる。その結果、自動制御による作業の作業効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係るショベルを示す左側面図
図2】排土装置の斜視図
図3】運転席周りの斜視図
図4】昇降レバーの把持部の正面図、右側面図、及び背面図
図5】ショベルが備える油圧回路を示す図
図6】ショベルが備える制御系を示すブロック図
図7】他の実施形態に係る昇降レバーの把持部の正面図
図8】他の実施形態に係る昇降レバーの把持部の正面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0010】
[ショベルの概要]
まず、図1を参照しながら、建設機械の一例としてのショベル1の概略構造について説明する。図1に示すように、ショベル1は、下部走行体2と、下部走行体2の上方で旋回可能に設けられた上部旋回体3と、上部旋回体3に対し上下方向に回動可能に支持された掘削作業機5とを備える。掘削作業機5は、上部旋回体3に対し水平方向に回動可能に取り付けられたブームブラケット4を介して上部旋回体3に支持される。
【0011】
下部走行体2は、エンジン30からの動力を受けて駆動し、ショベル1を走行させたり旋回させたりする。下部走行体2は、左右一対のクローラ21,21と、それらを駆動させる左右一対の走行モータ22,22とを備える。また、下部走行体2には、排土装置20(本発明の作業機の一例)が昇降自在に装着されている。
【0012】
図2は、排土装置20を後方から見た斜視図である。排土装置20は、下部走行体2に対し上下方向に回動可能に取り付けられるリフトアーム23と、リフトアーム23の前端に揺動可能に取り付けられる排土板24とを備える。排土板24は、リフトアーム23に対し、ショベル1のヨー方向及びロール方向に揺動可能となっている。また、排土装置20は、リフトアーム23を上下方向に回動させるリフトシリンダ25と、排土板24の左右両端を前後方向(ショベル1のヨー方向)に揺動させる左右一対のアングルシリンダ26,26と、排土板24の左右両端を上下方向(ショベル1のロール方向)に揺動させるチルトシリンダ27と、を有する。
【0013】
リフトアーム23は、前後方向に延びる左右一対の昇降アーム231,232と、昇降アーム231,232の間に左右方向に配置される前部補強バー233、後部補強バー234とを備える。昇降アーム231,232の中途部の外側には、第1シリンダブラケット231a,232aが設けられている。また、前部補強バー233の左右中央の後側には、第2シリンダブラケット233aが設けられ、左右中央の前側には、第3シリンダブラケット233bが設けられている。
【0014】
昇降アーム231,232の後端は、下部走行体2のトラックフレーム(図示していない)に対して上下方向に回動可能に支持されている。また、リフトシリンダ25のロッド側は、下部走行体2のトラックフレームの左右中央に対して上下方向に回動可能に支持され、リフトシリンダ25のボトム側は、前部補強バー233の第2シリンダブラケット233aに対して上下方向に回動可能に支持されている。これにより、リフトシリンダ25を伸縮させることで、リフトアーム23は、下部走行体2に対し上下方向に回動する。リフトアーム23を昇降操作することで、排土板24と地面との相対距離を調整することができる。
【0015】
排土板24の後側には、左右一対の第4シリンダブラケット24a,24aが設けられている。アングルシリンダ26,26のボトム側は、排土板24の第4シリンダブラケット24a,24aに対して左右方向に回動可能に支持され、アングルシリンダ26,26のロッド側は、昇降アーム231,232の第1シリンダブラケット231a,232aに対して左右方向に回動可能に支持されている。これにより、一対のアングルシリンダ26,26を伸縮させることで、排土板24の左右両端は、リフトアーム23に対し前後方向に揺動する。排土板24の左右両端を前後方向に揺動させることで、排土板24の前後方向に対する傾斜角を調整することができる。
【0016】
チルトシリンダ27のボトム側は、排土板24の右側の第4シリンダブラケット24aに対して前後方向に回動可能に支持され、チルトシリンダ27のロッド側は、前部補強バー233の第3シリンダブラケット233bに対して前後方向に回動可能に支持されている。これにより、チルトシリンダ27を伸縮させることで、排土板24の左右両端は、リフトアーム23に対し上下方向に揺動する。排土板24の左右両端を上下方向に揺動させることで、排土板24の左下端又は右下端と地面との間隔を調整することができる。排土板24には、傾斜角(チルト角)を検出する傾斜センサ27a(図6参照)が設けられている。
【0017】
排土板24には、測位衛星からの信号を受信して測位するGNSSアンテナ28が取り付けられている。GNSSアンテナ28は、排土板24の左後側に立設されたポール支持部24bにポール28aを介して取り付けられる。なお、本実施形態のショベル1は、RTK-測位方式を用いて排土板24の位置情報を取得しており、施工現場には不図示の基準局が設置される。
【0018】
上部旋回体3は、その中央部で上下方向に延びる軸線回りに旋回動作可能に構成されている。上部旋回体3には、エンジン30、カウンターウェイト31、キャビン32、旋回モータ33などが配設されている。油圧モータである旋回モータ33の駆動力で上部旋回体3が旋回ベアリングを介して旋回する。
【0019】
図3は、運転部を後方から見た斜視図である。キャビン32で囲まれた運転部には、オペレータが着座するための運転席321が装備されている。運転席321の左右に一対の作業操作レバー322,322、前方に一対の走行操作レバー323,323が配置されている。オペレータは、運転席321に着座して作業操作レバー322,322、走行操作レバー323,323等を操作することによって、エンジン30、各油圧モータ、各油圧アクチュエータ等の制御を行い、走行、旋回、作業等を行うことができる。
【0020】
右側の作業操作レバー322の外側には、昇降レバー324(操作レバーに相当する)が配置されている。昇降レバー324は、排土装置20の昇降操作を行うためのレバーであり、例えば前方に動かされると排土装置20は下降し、後方に動かされると排土装置20は上昇する。また、昇降レバー324の後方には、複数のスイッチ325が配置されている。
【0021】
図4は、左から順に、昇降レバー324の把持部3240の正面図、右側面図、及び背面図である。運転席321から見て把持部3240の裏面、すなわち把持部3240の背面には、自動手動切替スイッチ326(自動スイッチに相当する)が配置されている。自動手動切替スイッチ326は、後述するマシンコントロールコントローラ102による自動制御の有効と無効を択一的に切り替えることのできるスイッチであり、排土装置20を自動操作するか又は手動操作するかを選択できる。
【0022】
昇降レバー324は、排土板24のアングル動作又はチルト動作の少なくとも1つの動作を手動制御するためのアングルチルト操作手段327(操作手段に相当する)を備える。アングルチルト操作手段327は、運転席321から見て把持部3240の上部表面、すなわち把持部3240の正面上部に配置されている。アングルチルト操作手段327は、アングルチルト機能切替スイッチ327aと、操作用ローラスイッチ328とを備えている。アングルチルト機能切替スイッチ327aと操作用ローラスイッチ328は、左右に並べて配置されている。
【0023】
アングルチルト機能切替スイッチ327aは、操作用ローラスイッチ328によってアングルシリンダ26,26を操作するか又はチルトシリンダ27を操作するかを選択できるスイッチである。例えば、アングルチルト機能切替スイッチ327aの下部が押下されるとアングル機能が選択され、アングルシリンダ26,26を操作可能となり、アングルチルト機能切替スイッチ327aの上部が押下されるとチルト機能が選択され、チルトシリンダ27を操作可能となる。
【0024】
操作用ローラスイッチ328は、アングルチルト機能切替スイッチ327aにより選択されたアングルシリンダ26,26又はチルトシリンダ27を操作することができるローラタイプのスイッチである。例えば、アングルチルト機能切替スイッチ327aによりアングルシリンダ26,26が選択された場合、操作用ローラスイッチ328を前方に回転させると排土板24の右端が前方へ回動し、操作用ローラスイッチ328を後方へ回転させると排土板24の右端が後方へ回動する。また、例えば、アングルチルト機能切替スイッチ327aによりチルトシリンダ27が選択された場合、操作用ローラスイッチ328を前方に回転させると排土板24の右端が上方へ回動し、操作用ローラスイッチ328を後方へ回転させると排土板24の右端が下方へ回動する。なお、アングルシリンダ26,26又はチルトシリンダ27を操作する操作手段としては、押ボタン式の操作スイッチでもよい。
【0025】
ブームブラケット4は、上部旋回体3の前端部にステー34を介して取り付けられている。ステー34には、軸線を上下方向に向けた枢軸ピン40が設けられている。ブームブラケット4は、その枢軸ピン40を中心にして水平回動自在に(即ち、左右へ揺動自在に)支持されている。上部旋回体3とブームブラケット4との間には、前後方向に伸縮作動するスイングシリンダ(不図示)が設けられている。ブームブラケット4の水平回動は、スイングシリンダの伸縮に応じて作動する。
【0026】
掘削作業機5は、エンジン30からの動力を受けて駆動し、運転部での操作に応じて土砂の掘削作業などを行う。掘削作業機5は、ブームブラケット4に上下回動可能に支持さ
れている。ブームブラケット4には、軸線を水平方向に向けた枢軸ピン50が設けられている。掘削作業機5の基端部(後述するブーム51の基端部)は、その枢軸ピン50を中心にして上下回動自在に支持されている。掘削作業機5は、その枢軸ピン50の軸線と直交する鉛直面上で回動する。また、掘削作業機5は、ブームブラケット4の水平回動に連動してスイング動作を行うことができる。
【0027】
掘削作業機5は、ブーム51、アーム52、及びバケット53を備え、これらを独立して駆動することによって土砂等の掘削作業を可能としている。ブーム51は、基端部がブームブラケット4に上下回動可能に取り付けられており、伸縮自在に可動するブームシリンダ51aによって回動される。また、アーム52は、基端部がブーム51の先端部に支持されて、伸縮自在に可動するアームシリンダ52aによって回動される。そして、バケット53は、基端部がアーム52の先端部に支持されて、伸縮自在に可動するバケットシリンダ53aによって回動される。ブームシリンダ51a、アームシリンダ52a、及びバケットシリンダ53aは、油圧シリンダにより構成される。
【0028】
[油圧回路の構成]
図5を用いて、ショベル1が有する油圧回路6について説明する。油圧回路6は、複数の油圧アクチュエータ60、可変容量型ポンプ61、固定容量型ポンプ62、及びパイロットポンプ63を有する。
【0029】
複数の油圧アクチュエータ60は、第1走行用モータ22a、第2走行用モータ22b(左走行モータ22、右走行モータ22のいずれか)、ブームシリンダ51a、アームシリンダ52a、バケットシリンダ53a、リフトシリンダ25、アングルシリンダ26、チルトシリンダ27、及び旋回モータ33で構成されている。
【0030】
可変容量型ポンプ61及び固定容量型ポンプ62は、エンジン30によって駆動され、油圧アクチュエータ60へ供給される作動油を吐出する。可変容量型ポンプ61は、第1走行用モータ22a、第2走行用モータ22b、ブームシリンダ51a、アームシリンダ52a、及びバケットシリンダ53aに作動油を供給して駆動する。固定容量型ポンプ62は、リフトシリンダ25、アングルシリンダ26、チルトシリンダ27、及び旋回モータ33に作動油を供給して駆動する。
【0031】
複数の油圧アクチュエータ60には、それぞれ対応する方向切換弁が設けられる。方向切換弁は、可変容量型ポンプ61及び固定容量型ポンプ62から油圧アクチュエータ60へ圧送する作動油の方向と容量を切り換え可能なパイロット式の方向切換弁である。
【0032】
本実施形態においては、第1走行用モータ22aに対応する第1走行用方向切換弁64a、第2走行用モータ22bに対応する第2走行用方向切換弁64b、ブームシリンダ51aに対応するブーム用方向切換弁64c、アームシリンダ52aに対応するアーム用方向切換弁64d、バケットシリンダ53aに対応するバケット用方向切換弁64e、リフトシリンダ25に対応するリフト用方向切換弁64f、アングルシリンダ26及びチルトシリンダ27に対応するアングルチルト用方向切換弁64g、旋回モータ33に対応する旋回用方向切換弁64hが設けられている。これらの方向切換弁は、まとめてコントロールバルブ64と呼ばれる。
【0033】
アングルシリンダ26及びチルトシリンダ27の圧油の供給管とアングルチルト用方向切換弁64gとの間には、パイロット式のセレクタバルブ65が設けられている。セレクタバルブ65は、パイロット圧が入力されると、チルトシリンダ27へ供給される圧油がアングルシリンダ26へ供給されるように油路を切り換えることができる。
【0034】
パイロットポンプ63は、主にコントロールバルブ64へ入力される指令としてのパイロット油を吐出する。ただし、図2ではパイロットポンプ63からコントロールバルブ64に至る油路を一部省略している。パイロットポンプ63は、エンジン30によって駆動され、圧油を吐出することにより、油路内にパイロット圧を発生させる。
【0035】
また、油圧回路6は、ブーム用操作装置71、アーム用操作装置72、旋回用操作装置73、昇降レバー324、自動手動切替スイッチ326、アングルチルト機能切替スイッチ327a、及び操作用ローラスイッチ328を備えている。ブーム用操作装置71、アーム用操作装置72、及び旋回用操作装置73は、一対の作業操作レバー322,322で構成される。なお、図5には示していないが、油圧回路6は、一対の走行操作レバー323、バケット用操作装置、及びスイング用操作装置等を備えている。
【0036】
ブーム用操作装置71は、ブーム用方向切換弁64cに供給されるパイロット圧油の向きと圧力を切り換えるためのブーム用リモコン弁71aを有する。ブーム用リモコン弁71aには、パイロットポンプ63から吐出された圧油が供給される。ブーム用リモコン弁71aは、ブーム用操作装置71の操作方向と操作量に応じてパイロット圧を生成する。
【0037】
アーム用操作装置72は、アーム用方向切換弁64dに供給されるパイロット圧油の向きと圧力を切り換えるためのアーム用リモコン弁72aを有する。アーム用リモコン弁72aには、パイロットポンプ63から吐出された圧油が供給される。アーム用リモコン弁72aは、アーム用操作装置72の操作方向と操作量に応じてパイロット圧を生成する。
【0038】
旋回用操作装置73は、旋回用方向切換弁64hに供給されるパイロット圧油の向きと圧力を切り換えるための旋回用リモコン弁73aを有する。旋回用リモコン弁73aには、パイロットポンプ63から吐出された圧油が供給される。旋回用リモコン弁73aは、旋回用操作装置73の操作方向と操作量に応じてパイロット圧を生成する。
【0039】
昇降レバー324は、リフト用方向切換弁64fに供給されるパイロット圧油の向きと圧力を切り換えるためのリフト用リモコン弁324aを有する。リフト用リモコン弁324aには、パイロットポンプ63から吐出された圧油が供給される。リフト用リモコン弁324aは、昇降レバー324の操作方向と操作量に応じてパイロット圧を生成する。
【0040】
リフト用リモコン弁324aとリフト用方向切換弁64fとの間の第1油路324bには、第1シャトル弁324cを介して第1マシンコントロール油路324dが接続されている。第1マシンコントロール油路324dには、パイロットポンプ63からパイロット圧油が供給される。第1シャトル弁324cは、リフト用リモコン弁324aと第1シャトル弁324cの間の第1油路324bの圧油と、電磁比例弁103(後述する)と第1シャトル弁324cの間の第1マシンコントロール油路324dの圧油とのうち高圧側の圧油をリフト用方向切換弁64fに供給する。
【0041】
また、リフト用リモコン弁324aとリフト用方向切換弁64fとの間の第2油路324eには、第2シャトル弁324fを介して第2マシンコントロール油路324gが接続されている。第2マシンコントロール油路324gには、パイロットポンプ63からパイロット圧油が供給される。第2シャトル弁324fは、リフト用リモコン弁324aと第2シャトル弁324fの間の第2油路324eの圧油と、電磁比例弁103(後述する)と第2シャトル弁324fの間の第2マシンコントロール油路324gの圧油とのうち高圧側の圧油をリフト用方向切換弁64fに供給する。
【0042】
操作用ローラスイッチ328は、アングルチルト用方向切換弁64gに供給されるパイロット圧油の向きと圧力を切り換える。操作用ローラスイッチ328は、回転方向と回転
量に応じてパイロット圧を生成する。具体的には、パイロットポンプ63とアングルチルト用方向切換弁64gとの間の第3油路328a及び第4油路328bには、それぞれ電磁比例弁328c,328dが設けられ、電磁比例弁328c,328dは、操作用ローラスイッチ328からの制御指令によりパイロット圧を調圧可能となっている。
【0043】
第3油路328aには、第3シャトル弁328eを介して第3マシンコントロール油路328fが接続されている。第3マシンコントロール油路328fには、パイロットポンプ63からパイロット圧油が供給される。第3シャトル弁328eは、電磁比例弁328cと第3シャトル弁328eの間の第3油路328aの圧油と、電磁比例弁103(後述する)と第3シャトル弁328eの間の第3マシンコントロール油路328fの圧油とのうち高圧側の圧油をアングルチルト用方向切換弁64gに供給する。
【0044】
また、第4油路328bには、第4シャトル弁328gを介して第4マシンコントロール油路328hが接続されている。第4マシンコントロール油路328hには、パイロットポンプ63からパイロット圧油が供給される。第4シャトル弁328gは、電磁比例弁328dと第4シャトル弁328gの間の第4油路328bの圧油と、電磁比例弁103(後述する)と第4シャトル弁328gの間の第4マシンコントロール油路328hの圧油とのうち高圧側の圧油をアングルチルト用方向切換弁64gに供給する。
【0045】
第1マシンコントロール油路324d、第2マシンコントロール油路324g、第3マシンコントロール油路328f、第4マシンコントロール油路328hには、それぞれ電磁比例弁103が設けられている。電磁比例弁103は、後述するマシンコントロールコントローラ102からの制御指令によりパイロット圧を調圧可能となっている。これにより、マシンコントロールコントローラ102は、リフト用方向切換弁64f及びアングルチルト用方向切換弁64gを操作して、リフトシリンダ25、アングルシリンダ26、及びチルトシリンダ27の駆動を制御することができる。
【0046】
アングルチルト機能切替スイッチ327aは、パイロットポンプ63とセレクタバルブ65との間の第5油路65aに設けられた電磁弁65bに制御指令を与える。電磁弁65bは、アングルチルト機能切替スイッチ327aからの開放信号により第5油路65aを開放する。これにより、セレクタバルブ65は、パイロットポンプ63からのパイロット圧を受圧して、アングルチルト用方向切換弁64gからチルトシリンダ27へ供給される圧油がアングルシリンダ26へ供給されるように油路を切り換える。
【0047】
ブーム用リモコン弁71aとブーム用方向切換弁64cとの間の油路、アーム用リモコン弁72aとアーム用方向切換弁64dとの間の油路、及び旋回用リモコン弁73aと旋回用方向切換弁64hとの間の油路には、禁止装置としての電磁弁104が設けられている。また、不図示のバケット用リモコン弁とバケット用方向切換弁64eとの間の油路にも、電磁弁104が設けられる。電磁弁104は、後述する統合コントローラ100からの開放信号が切断されることにより、各リモコン弁から発信されるパイロット圧を遮断する。これにより、ブーム用方向切換弁64c、アーム用方向切換弁64d、バケット用方向切換弁64e、及び旋回用方向切換弁64hは、何れの入力ポートにもパイロット圧が入力されず中立位置となり、圧油は対応する油圧アクチュエータに供給されなくなるため、ブーム用操作装置71、アーム用操作装置72、バケット用操作装置、及び旋回用操作装置73の操作による上部旋回体3の旋回と掘削作業機5の動作が禁止される。
【0048】
[ショベルの制御系]
ショベル1が備える制御系の一例について簡単に説明する。このショベル1は、制御装置としての統合コントローラ100を備える。統合コントローラ100は、ショベル1の駆動制御を行う主制御部として、上述したエンジン30や油圧ポンプへの制御指示を出力
する。
【0049】
また、ショベル1は、排土板24、リフトシリンダ25、アングルシリンダ26、及びチルトシリンダ27を含む排土装置20を自動制御するためのマシンコントロールコントローラ102(自動制御装置に相当する)を備える。
【0050】
マシンコントロールコントローラ102には、マシンコントロールコントローラ102による自動制御の有効と無効を択一的に切り替える自動手動切替スイッチ326が接続されている。自動手動切替スイッチ326により自動操作を選択することで、排土装置20を自動制御することができる。
【0051】
マシンコントロールコントローラ102は、設計情報に従って排土装置20を自動制御する。具体的には、マシンコントロールコントローラ102は、施工計画の設計面データ(設計情報の一例)から得られる排土板24の目標位置情報と、排土板24の現在位置情報と、の差分に基づいて排土装置20を制御する。
【0052】
設計面データは、施工計画された工事区間の各水平座標位置における仕上げ面の高さを3次元化した電子データであり、予めマシンコントロールコントローラ102に入力される。設計面データは、設計面データ格納装置102aに保存される。設計面データに基づき、排土板24の目標位置を設定することができる。
【0053】
本実施形態では、排土板24の現在位置情報は、傾斜センサ27a及びGNSSアンテナ28により取得される。具体的には、GNSSアンテナ28により取得された排土板24の座標情報と、傾斜センサ27aにより検出された排土板24の傾斜角情報とを組み合わせることで、排土板24の位置と姿勢を含む現在位置情報を取得することができる。なお、マシンコントロールコントローラ102は、排土板24の幅、排土板24に対するGNSSアンテナ28の取付位置等に関する情報を予め保存しており、排土板24の現在位置情報を正確に演算できる。
【0054】
マシンコントロールコントローラ102は、ブレード制御指令算出部102bを備えている。ブレード制御指令算出部102bは、設計面データ格納装置102aに保存された設計面データから排土板24の目標位置情報を読み出し、この目標位置情報と排土板24の現在位置情報を比較して、排土板24が目標位置となるように各電磁比例弁103に送る制御指令値を算出する。
【0055】
電磁比例弁103は、マシンコントロールコントローラ102からの制御指令によりリフト用方向切換弁64f及びアングルチルト用方向切換弁64gへ入力されるパイロット圧を調圧することで、リフトシリンダ25、アングルシリンダ26、及びチルトシリンダ27の駆動を自動制御する。
【0056】
また、マシンコントロールコントローラ102は、パイロットポンプ63とセレクタバルブ65との間の第6油路65cに設けられた電磁弁65dに制御指令を与える。電磁弁65dは、マシンコントロールコントローラ102からの開放信号により第6油路65cを開放する。これにより、セレクタバルブ65は、パイロットポンプ63からのパイロット圧を受圧して、アングルチルト用方向切換弁64gからチルトシリンダ27へ供給される圧油がアングルシリンダ26へ供給されるように油路を切り換える。その結果、マシンコントロールコントローラ102は、チルトシリンダ27又はアングルシリンダ26の駆動を選択することができる。ただし、マシンコントロールコントローラ102による自動制御では、アングルシリンダ26の制御は通常行われない。そのため、マシンコントロールコントローラ102による自動制御を行う際には、アングルチルト機能切替スイッチ3
27aによりチルト機能が選択される。
【0057】
ところで、マシンコントロールコントローラ102からの制御指令により電磁比例弁103から出力される自動制御用のパイロット圧は、昇降レバー324の操作によりリフト用リモコン弁324aから出力される手動操作用のパイロット圧、及び操作用ローラスイッチ328の操作により電磁比例弁328c,328dから出力される手動操作用のパイロット圧よりも低くなるように、電磁比例弁103と電磁比例弁328c,328dが設定されている。これにより、自動制御と手動操作が同時に行われた場合、シャトル弁(第1シャトル弁324c、第2シャトル弁324f、第3シャトル弁328e、第4シャトル弁328g)によって高圧側の手動操作用のパイロット圧が選択される。すなわち、マシンコントロールコントローラ102からの自動制御信号よりも昇降レバー324及び操作用ローラスイッチ328からの操作信号が優先されるため、自動制御中であっても排土装置20を手動操作することができる。一方、手動操作を停止すれば、容易に自動制御に復帰することができる。
【0058】
以上のように、本実施形態のショベル1(建設機械の一例)は、排土装置20(作業機の一例)と、排土装置20を設計情報に従い自動制御するマシンコントロールコントローラ102(自動制御装置の一例)と、排土装置20を手動制御する昇降レバー324(操作レバーの一例)と、昇降レバー324に装着され、自動制御の有効と無効を択一的に切り替える自動手動切替スイッチ326(自動スイッチの一例)とを備え、
排土装置20の手動制御は、自動制御に優先されるものである。
【0059】
この構成によれば、マシンコントロールコントローラ102により排土装置20を自動制御して作業を実施する際、手動制御が自動制御よりも優先されるため、自動制御中であっても排土装置20を手動操作することができる。一方、手動操作を停止すれば、容易に自動制御に復帰することができる。その結果、自動制御による作業の作業効率を向上できる。
【0060】
また、本実施形態に係るショベル1において、昇降レバー324が、排土装置20の前端に設けられた排土板24のアングル動作又はチルト動作の少なくとも1つの動作を手動制御するアングルチルト操作手段327を備えているという構成でもよい。
【0061】
また、本実施形態に係るショベル1において、アングルチルト操作手段327が、運転席321から見て昇降レバー324の把持部3240の上部表面に配置されているという構成でもよい。
【0062】
この構成によれば、把持部3240を握ったままでも、親指でアングルチルト操作手段327を操作することができるため、自動制御による作業から手動制御による作業にスムーズに移行し、手動操作を停止すれば再び自動制御による作業に復帰することができるため、自動制御による作業の作業効率を向上できる。
【0063】
また、本実施形態に係るショベル1において、自動手動切替スイッチ326は、運転席321から見て昇降レバー324の把持部3240の裏面に配置されているという構成でもよい。
【0064】
この構成によれば、把持部3240を握ったままでも、人差し指で自動手動切替スイッチ326を操作することができるため、マシンコントロールコントローラ102による自動制御の有効と無効を容易に切り替えることができる。
【0065】
また、本実施形態に係るショベル1において、アングルチルト操作手段327は、アングルシリンダ26,26とチルトシリンダ27の何れかの操作を選択可能なアングルチルト機能切替スイッチ327aと、アングルチルト機能切替スイッチ327aにより選択されたアングルシリンダ26,26又はチルトシリンダ27を操作する操作用ローラスイッチ328と、を備えるという構成でもよい。
【0066】
この構成によれば、昇降レバー324の把持部3240に配置するスイッチを少なくすることができ、操作性の向上にも繋がる。
【0067】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0068】
上記の各実施形態で採用している構造を他の任意の実施形態に採用することは可能である。各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0069】
[他の実施形態]
(1)ショベル1は、上部旋回体3の旋回と掘削作業機5の動作を禁止する電磁弁104を備え、電磁弁104の禁止機能の有効と無効とを切り替える禁止スイッチ104aが把持部3240の上部表面に配置されているという構成でもよい。図7に示す例では、アングルチルト操作手段327の上方に禁止スイッチ104aが設けられている。
【0070】
禁止スイッチ104aが押下され、禁止スイッチ104aからの信号が統合コントローラ100に入力されると、統合コントローラ7が、ブームシリンダ51a、アームシリンダ52a、バケットシリンダ53a、及び旋回モータ33を制御する方向切換弁のパイロット圧の入力ポートと、各リモコン弁との間に設置された電磁弁104に流れる電流を遮断し、各リモコン弁から発信されるパイロット圧を遮断して、上部旋回体3の旋回と掘削作業機5の動作が禁止される。上部旋回体3の旋回と掘削作業機5の動作を禁止することで、掘削作業機5がGNSSアンテナ28に接触して破損したり、GNSSアンテナ28及び傾斜センサ27aと上部旋回体3とを連結するケーブルが切断されたりするのを防止することができる。また、禁止スイッチ104aが把持部3240の上部表面に配置されていることから、自動敷き均し作業中に旋回位置や作業機位置を変える際に禁止スイッチ104aをスムーズに操作でき、自動敷き均し作業を再開する際には禁止スイッチ104aの入れ忘れを防止できる。
【0071】
禁止スイッチ104aは、押しボタンスイッチでもシーソー型スイッチでもよい。また、禁止スイッチ104aは、必ずしも昇降レバー324の把持部3240に配置される必要はなく、昇降レバー324の後方の複数のスイッチ325の一つに割り当てられてもよい。
【0072】
(2)昇降レバー324及びアングルチルト操作手段327の操作が検出されると、マシンコントロールコントローラ102による自動制御が無効となるように構成してもよい。この構成によれば、自動制御による作業中にオペレータが異常を感知した場合、昇降レバー324及びアングルチルト操作手段327を操作することで自動制御が停止するため、地面の掘りすぎ等を防止することができる。特に、昇降レバー324による排土装置20のリフト操作が検出された際に自動制御を停止するのが好ましい。なお、昇降レバー324によるリフト操作は、圧力スイッチ等で検出可能である。
【0073】
(3)上記の実施形態では、アングルチルト操作手段327がアングルチルト機能切替スイッチ327a及び操作用ローラスイッチ328で構成されているが、これに限定されない。例えば、アングルチルト機能切替スイッチ327aの代わりにローラスイッチを別途配置して、一方のローラスイッチをアングル操作、他方のローラスイッチをチルト操作に割り当ててもよい。また、アングルチルト操作手段327は、図8に示すように一対のアングルスイッチ327b,327bと一対のチルトスイッチ327c,327cで構成されてもよい。
【0074】
(4)上記の実施形態では、アングルシリンダ26とチルトシリンダ27を操作するためにセレクタバルブ65により油路を切り換えているが、アングルシリンダ26とチルトシリンダ27に対応する方向切換弁をそれぞれ設けてもよい。
【0075】
(5)また、他の実施形態として、ショベル1は、GNSSアンテナ28に代えて全方位プリズムを備えるようにしてもよい。全方位プリズムは、施工現場に別途設置されたトータルステーションによって自動的に追尾される。トータルステーションは、全方位プリズムまでの距離と角度を測定し、測定したデータから排土板24の座標情報を取得することができる。排土板24の座標情報は、トータルステーションから無線でブレード制御指令算出部102bに転送される。その他の構成については、前述の実施形態と同じである。
【符号の説明】
【0076】
1 :ショベル
2 :下部走行体
3 :上部旋回体
5 :作業機
6 :油圧回路
7 :統合コントローラ
20 :排土装置
23 :リフトアーム
24 :排土板
25 :リフトシリンダ
26 :アングルシリンダ
27 :チルトシリンダ
100 :統合コントローラ
102 :マシンコントロールコントローラ
321 :運転席
324 :昇降レバー
326 :自動手動切替スイッチ
327 :アングルチルト操作手段
327a :アングルチルト機能切替スイッチ
328 :操作用ローラスイッチ
3240 :把持部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8