(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】電極カテーテル及び電位検出装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/287 20210101AFI20241125BHJP
A61B 5/367 20210101ALI20241125BHJP
【FI】
A61B5/287
A61B5/367
(21)【出願番号】P 2023018905
(22)【出願日】2023-02-10
【審査請求日】2024-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】594170727
【氏名又は名称】日本ライフライン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】森 謙二
(72)【発明者】
【氏名】飯島 俊之
(72)【発明者】
【氏名】安立 啓介
【審査官】▲高▼原 悠佑
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2021/0093377(US,A1)
【文献】特開2011-257228(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106859765(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0077183(US,A1)
【文献】米国特許第06574492(US,B1)
【文献】中国特許出願公開第102551704(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/05-5/0538
A61B 5/24-5/398
A61N 1/00-1/44
A61B 18/00-18/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜状の基材と、
前記基材の形状支持構造と、
前記基材上に設けられた複数の電極とを備え、
前記複数の電極の少なくとも一部は、前記基材の表面及び裏面に露出して
おり、
前記形状支持構造は、前記基材の周に沿って配置された形状記憶部材である、電極カテーテル。
【請求項2】
前記複数の電極の少なくとも一部は、前記基材の表面に沿って延びる導線に接続され、
前記複数の電極の残りの一部は、前記基材の裏面に沿って延びる導線に接続されている、請求項1に記載の電極カテーテル。
【請求項3】
前記基材を複数備え、
前記電極カテーテルは、前記複数の基材の根元を保持するシャフトと、
隣接する前記基材同士を接続する接続部材をさらに備え、
前記複数の基材は、前記シャフトの周方向に沿って配列されており、かつ展開状態及び折り畳み状態を採ることができる、請求項1に記載の電極カテーテル。
【請求項4】
前記複数の電極の少なくとも一部は、前記基材の表面に沿って延びる表側導線に接続され、
前記複数の電極の残りの一部は、前記基材の裏面に沿って延びる裏側導線に接続されており、
前記表側導線及び前記裏側導線は、前記基材の根元の軸方向に沿って当該根元の外面に設けられている、請求項
3に記載の電極カテーテル。
【請求項5】
前記基材の根元は、前記基材の表側を向いた第1の面、及び前記基材の裏側を向いた第2の面とを備え、
前記表側導線は前記第1の面に設けられており、
前記裏側導線は、前記第2の面に設けられている、請求項
4に記載の電極カテーテル。
【請求項6】
前記電極を20個以上備える、請求項1に記載の電極カテーテル。
【請求項7】
薄膜状の基材と、
前記基材の形状支持構造と、
前記基材上に配置された複数の電極とを備え、
前記複数の電極の少なくとも一部は、前記基材の表面及び裏面に露出して
おり、
前記形状支持構造は、前記基材の周に沿って配置された形状記憶部材である、電位検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極カテーテル及び電位検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば心臓等の臓器の電位を検出するための電極カテーテルとして、特許文献1に開示されたものが知られている。特許文献1の電極カテーテルは、ほぼ平行に延びる4本のアームを備えており、各アームにはそれぞれ複数の電極が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている電極カテーテルは、複雑な形状を有する解剖に対する形状の追従性が低く、操作者(手技者)の思惑通りに電極を解剖に接触させるのが困難な場合があった。
【0005】
本開示は、解剖への追従性を向上させた電極カテーテルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本開示の一態様は、薄膜状の基材と、基材の形状支持構造と、基材上に設けられた複数の電極とを備え、複数の電極の少なくとも一部は、基材の表面及び裏面に露出している。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態による電極カテーテルの斜視図である。
【
図11】電極カテーテルの使用状態を示す図である。
【
図12】電極カテーテルの使用状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の実施形態について説明する。実施形態では、電位検出装置としていわゆるマッピング用の電極カテーテルを例に挙げる。本開示は、複雑な表面形状を有する様々な物の電位を検出するために用いることができる。なお以下の実施形態では、方向を説明するために3次元直交座標を用いることがある。3次元直交座標のZ軸はシャフトの軸方向に延び、シャフトの遠位側(操作者から見て遠位側)が負方向を指し、シャフトの近位側(操作者から見て近位側)が正方向を指すものとする。X軸は、シャフトの軸と直交する方向、つまりシャフトの径方向に延びる。説明の便宜上、X軸は、後述する基材(複数の基材のうちいずれか一つ)の長手方向に延びるものとする。基材の根元側の方向がX軸の負方向を指し、基材の先端側の方向がX軸の正方向を指すものとする。Y軸は、X軸及びZ軸と直交する。
【0009】
図1は、実施形態による電極カテーテルの斜視図である。
図1に示すように電極カテーテル10は、主として複数の電極12と、基材14と、シャフト16とを備える。一例として電極カテーテル10は、心臓内の複数個所の電位を取得し、取得結果から3次元マップを作成するために使用される、いわゆるマッピングカテーテルである。
【0010】
図2乃至
図5は、電極カテーテルの基材の概略図である。より具体的には
図2は基材14を一方の主面方向から(表面、つまり+Z方向から)見た図であり、
図3は基材14の他方の主面方向から(裏面、つまり-Z方向から)見た図である。
図4は基材14を-X方向から見た図であり、
図5は基材14を-Y方向から見た図である。
図2乃至
図5に示すように基材14は、いわゆる披針形の葉を模した形状を有している。より具体的には基材14は、XY平面において、根元側から先端側に向けて幅が漸増した後、変曲点を経て幅が漸減する形状を有している。基材14は、XZ平面及びYZ平面の両方において、湾曲した形状を有している。基材14は、薄膜状のシートを所定形状に加工して形成されている。基材14を構成する材料としては繊維状にしたポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルアルコール等の樹脂材料をランダムに集積した不織布を用いることができる。繊維の集積方法としては、いわゆるエレクトロスピニング技術を用いることができる。つまり基材14は、不織布シートである、ということもできる。なお、基材14としては、薄膜状であり、かつ電極12を構成する材料が含侵可能なものであればどのようなものを用いてもよい。したがって、基材14として織布を用いてもよい。
【0011】
基材14上には複数の電極12(図示の例では5個の電極)が設けられている。各電極12は、基材14の両面に露出するよう設けられている。つまり、基材14を表面から見たときと、裏面から見たときに複数の電極12は対応する位置に設けられている。対応する位置にある電極12は、1つの電極12が基材14を貫通するように形成した一体物であっても良いし、2つの独立した電極12を互いに電気的に接続したものであっても良い。電極12が基材14を貫通するように形成されているものである場合、電極12は導電性インクを基材14に含侵させて形成するのがよい。導電性インクを基材14に含侵させて形成するためには、基材14として布(不織布又は織布)を用いるのがよい。電極12の数は用途や適用される部位に応じて適宜選択可能である。一例として、電極12の数(電極12の総数)は20個以上であるのがよい。
【0012】
複数の電極12は、基材14にランダムに、かつ拡散して配置されるのがよい。複数の電極12は、互いに略等間隔で基材14上に配置されている、ともいえる。電極カテーテル10は複数の基材14を有するが、各基材14に配置される電極12の配置パターンは全て同じであっても良いし、それぞれ又は一部が異なっていてもよい。
【0013】
各電極12は、それぞれ導線18に接続されている。導線18は、基材14の表面又は裏面に沿って各電極12から基材14の根元部分20に延びる。つまり基材14上には複数の導線18が設けられている、ということもできる。複数の導線18は、全て根元部分20に集約される。複数の導線18の一部は基材14の表面(第1の面に相当)に沿って延び、残りの一部は基材14の裏面(第2の面に相当)に沿って延びる。基材14の表面に配置する導線18の数と、基材14の裏面に配置する導線18の数は、略同一であるのがよい。導線18の本数が奇数の場合、基材14の表面又は裏面の一方に配置される導線18の数を一本多く(又は一本少なく)すればよい。導線18同士は互いに電気的に接続されておらず、重複しないよう配置されている。
【0014】
図6は、基材の概要を示す斜視図である。具体的には
図6は基材14の根元部分20の拡大図である。
図6に示すように根元部分20は、基材14の主面と交差する方向(Z軸方向)に沿って延びる支柱により形成される。図示の例では根元部分20は四角柱の形状を有するが、根元部分20の形状はこれに限られるものではない。根元部分20の一方の面(-X側の面)には、複数の導線18のうちの一部(表面に沿って延びる導線18)が延びている。根元部分20の他方の面(+X側の面)には、複数の導線18のうちの残りの一部(裏面に沿って延びる導線18)が延びている。つまり、複数の導線18は、当該導線18が配置されている基材14の面と連続する面(根元部分20の面)に沿って延びる。
【0015】
図7は、形状支持構造を示す斜視図である。形状支持構造は、所定形状に加工された形状記憶部材22により構成されている。形状記憶部材22は、基材14の周(Z軸周りの周)に沿って延びる第1部分24と、根元部分20に沿って延びる第2部分26とを含む。第1部分24と第2部分26は、一本の連続する線材により形成されている。形状記憶部材22は、例えばNiTiにより形成するのがよい。第1部分24は、基材14と同様に披針形の葉を模した輪郭を有する。第1部分24の両端は互いに間隔をもって開いている。第2部分26は、それぞれ第1部分24の端からZ軸に沿って延びる2本の線材により形成されている。形状記憶部材22は、基材14の周に沿って接合されており、形状記憶部材22に外力が作用していない状態では、基材14は形状記憶部材22によって引っ張られて張った状態(展開状態)となっている。形状記憶部材22は、基材14が展開状態を維持できるよう、形状付けされている。したがって、基材14に何ら力が作用していない状態では、基材14は根元部分20からXY平面内で広がる姿勢(展開状態)をとる。
【0016】
図8はシャフトを示す概略図である。具体的には
図8は、シャフト16の+Z軸方向の端面近傍を示す。なお、図を分かり易くするために、
図8には1つのルーメンのみを示している。シャフト16の端面には、複数の開口28が設けられている。開口28は、シャフト16内を延びるルーメン30への出入り口である。複数のルーメン30は、シャフト16を軸方向に横切り、他方の端面まで延びる。各々の開口28には、基材14の根元部分20が挿入され、接着剤等の固着手段により固着される。1つの開口28には1つの基材14が挿入される。各基材14の導線18は、開口28を通してシャフト16内に入り反対側の端面を通してシャフト16から出る。各ルーメン30は互いに空間的に独立しており、複数の導線18同士は互いに絶縁されている。
【0017】
図9及び
図10は、電極カテーテルの側面図である。具体的には
図9は展開状態にある電極カテーテル10を示し、
図10は収縮状態にある電極カテーテル10を示す。
【0018】
図9に示すように電極カテーテル10は、展開状態において基材14が径方向外側に広がっている。複数の基材14は、電極12同士が重複しないよう配置されている。なお、展開状態と収縮状態との間を移行する際に、基材14同士が干渉し難くするために基材14同士も重複し無いようにするのが好ましい。電極カテーテル10に外力が作用していないときには、形状記憶部材22の復元力により電極カテーテル10は展開状態を維持する。基材14に所定値以上の外力が作用すると、基材14は形状記憶部材22の復元力に抗して変形する。基材14はその表面方向及び裏面方向のいずれにも変形可能である。基材14同士は互いに独立して変形可能であるのがよい。
【0019】
図10に示すように電極カテーテル10は、収縮状態において全ての基材14がシャフト16の軸に沿って延びる。つまり、収縮状態においては全ての基材14がシャフト16の軸に沿って集約している。これにより電極カテーテル10の外径が全体的に小さくなる。電極カテーテル10は、デリバリー時にデリバリシース内で収縮状態をとる。
【0020】
次に電極カテーテル10の作用について説明する。
【0021】
図11及び
図12は、電極カテーテルの使用状態を示す図である。
図11及び
図12は、左心房と左肺静脈との合流地点付近の電位をマッピングしている状態を示す。
図11及び
図12において電極カテーテル10は展開状態にある。
図11においては、電極カテーテル10の全ての基材14の表面(電位検出面)が解剖壁W(電位被検出面)に接触していることが分かる。一方、
図12においては一部の基材14の表面が解剖壁Wに接触しており、一部の基材14の裏面が解剖壁Wに接触している。
【0022】
電極カテーテル10を収縮状態から展開状態に移行させる際に、解剖壁Wの形状によっては、基材14のどちらの面が解剖壁Wに接触するのか制御するのが困難な場合がある。これに対して電極カテーテル10は、基材14の両面に電極12が存在するため、基材14のどちらの面が解剖壁Wに接触したとしてもマッピングを行える。
【0023】
実施形態は本開示の一態様に過ぎず、実施形態の各構成は本開示の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0024】
基材14の先端を、XY平面において丸めるか、根元側に凹ませてもよい。これにより、基材14の先端の先鋭形状を取り除ける。
【0025】
隣接する基材14同士をテザー等の引張部材で接続してもよい。これにより、基材14同士の周方向の相対的な位置のずれ量を減らせる。
【符号の説明】
【0026】
10 :電極カテーテル
12 :電極
14 :基材
16 :シャフト
18 :導線
20 :根元部分
22 :形状記憶部材
24 :第1部分
26 :第2部分
28 :開口
30 :ルーメン
W :解剖壁