(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】CNS浮腫に関連する損傷または状態を処置する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/64 20060101AFI20241125BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20241125BHJP
A61P 9/10 20060101ALN20241125BHJP
A61P 1/16 20060101ALN20241125BHJP
A61P 7/10 20060101ALN20241125BHJP
A61P 43/00 20060101ALN20241125BHJP
A61K 31/166 20060101ALN20241125BHJP
A61P 17/02 20060101ALN20241125BHJP
A61P 9/00 20060101ALN20241125BHJP
A61K 45/00 20060101ALN20241125BHJP
【FI】
A61K31/64
A61P25/00
A61P9/10
A61P1/16
A61P7/10
A61P43/00 111
A61K31/166
A61P17/02
A61P9/00
A61K45/00
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023020327
(22)【出願日】2023-02-13
(62)【分割の表示】P 2021022562の分割
【原出願日】2016-10-07
【審査請求日】2023-02-13
(32)【優先日】2015-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510155324
【氏名又は名称】レメディー ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107489
【氏名又は名称】大塩 竹志
(72)【発明者】
【氏名】スヴェン マーティン ジェイコブソン
【審査官】濱田 光浩
(56)【参考文献】
【文献】Neurocrit.Care.,米国,2014年08月,Vol.21,p.43-51
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61P 25/00
A61K 31/64
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
広範囲の大脳半球梗塞の後の
被験体における後期神経学的増悪または死亡を低減する
ための組成物であって、
前記被験体が、100cc超えの脳病変体積を有し、前記組成物がグリブリドを含み、
前記組成物が前記被験体に投与され、前記投与は、
前記組成物の第1の連続注入及び第2の連続注入を含み、前記組成物の前記第1の連続注入及び第2の連続注入が、前記第1の連続注入の開始後少なくとも72時間にわたり累積的に持続し、前記第1の連続注入は、前記被験体が前記広範囲の大脳半球梗塞を経験した後9時間以内に開始される、組成物。
【請求項2】
前記組成物は、前記被験体が前記広範囲の大脳半球梗塞を経験した後の1時間以内に投与されることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物は、前記被験体が前記広範囲の大脳半球梗塞を経験した後の4.5時間以内に投与されることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物は、前記被験体が前記広範囲の大脳半球梗塞を経験した後の8時間経過より前に投与されることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物の連続注入の投与が、少なくとも96時間にわたり行われ得る、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物の連続注入の投与が、少なくとも120時間にわたり行われ得る、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記第1の連続注入が、ボーラス用量投与の後に開始される、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記第1の連続注入が、前記第2の連続注入よりも高い用量濃度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物の投与が、減圧開頭術と併用される、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
広範囲の大脳半球梗塞の後の被験体における脳の正中線偏位を低減させるための組成物であって、前記被験体が、100cc超えの脳病変体積を有し、前記組成物がグリブリドを含み、前記組成物が、前記広範囲の大脳半球梗塞を経験した前記被験体に投与されることを特徴とし、
前記投与は、前記組成物の第1の連続注入及び第2の連続注入を含み、前記組成物の前記第1の連続注入及び第2の連続注入が、前記第1の連続注入の開始後少なくとも72時間にわたり累積的に持続し、前記第1の連続注入は、前記被験体が前記広範囲の大脳半球梗塞を経験した後9時間以内に開始され、
前記組成物は、前記連続注入で処置されていない類似の集団と比較して、前記連続注入で処置された患者における脳の正中線偏位の程度に基づいて集団に対して決定されるときに、脳の正中線偏位を低減させる、組成物。
【請求項11】
前記組成物の投与が、少なくとも72時間にわたり累積的に続く1回又は複数回の連続注入を含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物の投与が、少なくとも96時間にわたり累積的に続く1回又は複数回の連続注入を含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
前記第1の連続注入が、ボーラス用量投与の後に開始される、請求項10に記載の組成物。
【請求項14】
前記第1の連続注入が、前記第2の連続注入よりも高い用量濃度を有する、請求項10に記載の組成物。
【請求項15】
血中グルコースレベルが、前記投与の前もしくは前記投与の間において測定される、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記被験体における血中グルコースレベルが、120mg/dL、もしくはそれ未満で検出され、デキストロース溶液が前記被験体に投与される、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記被験体における血中グルコースレベルが、100mg/dL、もしくはそれ未満で検出され、デキストロース溶液が前記被験体に投与される、請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
前記被験体における血中グルコースレベルが、80mg/dL超から100mg/dLで検出され、3重量%から8重量%のデキストロース溶液が前記被験体に50cc/時間から120cc/時間で投与される、請求項15に記載の組成物。
【請求項19】
前記被験体における前記血中グルコースレベルが55mg/dLから80mg/dLで検出され、8重量%から12重量%のデキストロース溶液が前記被験体に50cc/時間から120cc/時間で投与される、請求項15に記載の組成物。
【請求項20】
前記被験体における前記血中グルコースレベルが55mg/dL未満で検出され、8重量%から12重量%のデキストロース溶液が前記被験体に50cc/時間から120cc/時間で投与される、請求項15に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
脊髄損傷、心停止、肝不全、室内出血、神経外科手術、外傷性脳損傷、脳卒中(虚血性および/または出血性)、感染、脳マラリア、または他の類似の損傷もしくは病気、またはいずれかの形態の脳虚血の後、被験体は、空間占拠性脳浮腫(腫脹)に、または脊髄損傷のケースでは脊髄浮腫に罹患し得る。生命を脅かす脳腫脹は、全ての入院中の虚血性脳卒中患者の最大8%および全ての中大脳動脈卒中患者の最大15%で生じる。脳卒中に罹患している被験体では、脳腫脹は、通常は脳卒中の数日後に出現し、通常は2日目または3日目にピークを迎える。
【0002】
脳腫脹は頭蓋内圧を増大させ、血液が脳に流れることを止めることで脳から酸素を奪い得る。脳腫脹はまた、脳の排出経路を遮断し得、体液が脳を離れることを防ぎ得る。さらに、頭蓋内圧が頭蓋内で大きくなるにつれ、それまで健康だった脳組織は破壊され、テント切痕ヘルニアまたは鉤回ヘルニアが生じ得る。脳の内部および周囲の腫脹によって、病的状態および脳死、ならびに二次的神経障害および被験体の死亡も生じ得る。
【0003】
脳腫脹は、2つの個別の分子的および生理学的プロセス、すなわち、ニューロンおよび星状細胞の細胞腫脹、ならびに損傷部位へのイオンおよび体液の経毛細管性の流入と関連し得る。ニューロンおよび星状細胞の細胞腫脹は、細胞と細胞外空間との間のイオン勾配の変化の結果生じる。細胞腫脹と関連する1つのイオンチャネルは、SUR1-TRPM4チャネルとしても公知のNCCA-ATPチャネルである。このチャネルは、ニューロン細胞の細胞内ATPが枯渇すると活性化する、非選択性のCa2+活性化型ATP感受性陽イオンチャネルである。NCCA-ATPチャネルは、スルホニル尿素型受容体1(SUR1)を含む調節性サブユニット、および一過性受容器電位陽イオンチャネルサブファミリーMメンバー4(TRPM4)に関連するポアサブユニットからなると考えられている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
脳腫脹の程度を最小にすることは、脳浮腫が生じ得る状態または疾患に罹患している被験体を処置するときの医者の主な関心事である。しかし、脳浮腫の処置は、腫脹を伴う期間が長期にわたること、脳の全体的な機能、および頭蓋内での脳の配置を理由として、特に困難である。したがって、脳浮腫の程度を低減する処置の提供は、当技術分野における進歩となろう。
【0005】
この背景を念頭に置いて、本開示は、CNS浮腫、例えば脳腫脹、脊髄腫脹、および/または関連する状態を低減または処置する方法に関する。
【0006】
一実施形態では、CNS浮腫に関連する損傷または状態の後の、被験体における後期神経学的増悪(late neurological deterioration)(または死亡)の発生を低減する方
法が提示される。本方法は、被験体がCNS浮腫に関連する損傷または状態を経験した後に、SUR1-TRPM4チャネル阻害剤の1回または複数回の連続注入を被験体に投与すること、および連続注入を開始後少なくとも72時間続けることにより、後期神経学的増悪を低減することを含む。
【0007】
別の実施形態では、脳浮腫に関連する損傷または状態の後の、被験体における脳の正中線偏位を低減する方法が提示される。本方法は、被験体が脳浮腫に関連する損傷または状態を経験した後に、被験体にSUR1-TRPM4チャネル阻害剤を投与すること、および減圧開頭術を被験体に行うことを含む。
【0008】
さらに別の実施形態では、CNS浮腫に関連する損傷または状態に罹患した被験体における能力障害の程度を改善する方法が提示される。本方法は、被験体がCNS浮腫に関連する損傷または状態に罹患した後に、SUR1-TRPM4チャネル阻害剤の1回または複数回の連続注入を被験体に投与することを含む。さらなるステップは、被験体の能力障害の最初の程度を第1のスコアリングシステムまたは試験に基づいて確立すること、および能力障害の最初の程度が決定されてから一定期間後、第2のスコアリングシステムまたは試験を使用して能力障害の第2の程度を決定することを含む。一実施例では、第1および第2のスコアリングシステムまたは試験は、同一であり得るか、あるいは異なり得る。具体的な一実施例では、1つのスコアリングシステムが第1のスコアリングシステム(または試験)に使用される。
【0009】
別の実施形態では、SUR1-TRPM4チャネル阻害剤を受けている被験体における血中グルコースレベルの低下を中和する(counteracting)方法は、SUR1-TRPM
4チャネル阻害剤の1回または複数回の連続注入を被験体に投与すること、およびデキストロース溶液を被験体に共投与することを含み得る。
【0010】
別の実施例では、CNS浮腫に関連する損傷または状態の後の重度の脳または脊髄腫脹のリスクが高い被験体におけるCNS浮腫を防止または低減する方法は、被験体について重度の脳または脊髄腫脹のリスクが高いかどうかを決定すること、および被験体について重度の脳腫脹のリスクが高いと決定されたらSUR1-TRPM4チャネル阻害剤を被験体に投与することを含み得る。
【0011】
別の実施例では、グリブリドを被験体に安全に送達する方法は、グリブリドの1回または複数回の連続注入を被験体に投与すること、およびグリブリドの投与を続けながら肝臓酵素レベルを測定することを含み得る。
【0012】
別の実施例では、スルホニル尿素剤を被験体に投与する場合の心臓の活動をモニタリングする方法は、スルホニル尿素の1回または複数回の連続注入を被験体に投与すること、および心電図を被験体に行って被験体の心臓をモニタリングすることを含み得る。
【0013】
別の実施例では、グリブリドを被験体に送達する方法は、グリブリドを被験体に静脈内投与すること、ならびにグリブリドを被験体に静脈内投与している間の血中グルコース、肝臓酵素、およびQTcをモニタリングすることを含み得る。
【0014】
別の実施例では、広範囲の大脳半球梗塞に罹患している被験体を処置する方法は、治療有効量の静脈内SUR1-TRPM4チャネル阻害剤を被験体に投与することを含み得る。被験体は71歳未満であり得、処置によって、1つまたは複数のアウトカムスケールによって測定するところの機能的アウトカムが改善され得る。
【0015】
別の実施例では、広範囲の大脳半球梗塞に罹患している被験体を処置する方法は、治療有効量の静脈内SUR1-TRPM4チャネル阻害剤を被験体に投与することを含み得る。被験体は、少なくとも約100ccの病変体積、または5未満のもしくは5に等しいASPECTSスコア、またはその両方を有し得る。
【0016】
別の実施例では、広範囲の大脳半球梗塞に罹患している被験体を処置する方法は、治療有効量の静脈内SUR1-TRPM4チャネル阻害剤を被験体に投与することを含み得る。投与は、脳卒中確認(the index stroke)の時点から、または被験体が正常であると最後に観察されたときから9時間またはそれ未満に開始され得る。
【0017】
別の実施例では、外傷性脳損傷に罹患している被験体を処置する方法は、治療有効量の静脈内SUR1-TRPM4チャネル阻害剤を前記被験体に投与することを含み得る。被験体は、処置前に、前記外傷性脳損傷によって誘発される脳内血液の放射線学的エビデンスを示し得る。
【0018】
別の実施例では、LHIを処置するための処置を試験する方法は、放射線学的に定義されたLHIを有する少なくとも18歳の被験体を登録すること、被験体をSUR1-TRPM4チャネル阻害剤または適合プラセボで、脳卒中から、または正常であると観察された最後の時点から9時間またはそれ未満に始まり、最大約72時間処置すること、およびmRSを評価することを含み得る。本方法は、70歳またはそれより若い被験体において薬物に有利な統計上有意な結果が検出されれば、または70歳を超える被験体において記述的な利益が検出されれば、成功であると見なされ得る。
特定の実施形態では、例えば以下の項目が提供される。
(請求項1)
被験体がCNS浮腫に関連する損傷または状態を経験した後に、SUR1-TRPM4チャネル阻害剤を該被験体に投与するステップを含む、CNS浮腫に関連する該損傷または状態の後の、該被験体における後期神経学的増悪または死亡を低減する方法であって、該投与するステップが、該SUR1-TRPM4チャネル阻害剤の1回または複数回の連続注入の開始後少なくとも72時間にわたり累積的に続く該1回または複数回の連続注入を含み、該SUR1-TRPM4チャネル阻害剤が後期神経学的増悪を低減する方法。
(請求項2)
前記CNS浮腫が脳浮腫である、請求項1に記載の方法。
(請求項3)
前記投与するステップが前記被験体の死亡を防止する、請求項2に記載の方法。
(請求項4)
前記1回または複数回の連続注入で処置されていない類似の集団と比較した、該1回または複数回の連続注入で処置された患者における後期神経学的増悪または死亡の発生に基づいて集団に対して決定すると、前記後期神経学的増悪または死亡を低減する、請求項1に記載の方法。
(請求項5)
前記後期神経学的増悪または死亡を低減する前記方法が、前記被験体がCNS浮腫に関連する前記損傷または状態を経験した後1時間以内に前記SUR1-TRPM4チャネル阻害剤が最初に投与されると有効である、請求項1に記載の方法。
(請求項6)
後期神経学的増悪または死亡の発生を低減する前記方法が、前記被験体がCNS浮腫に関連する前記損傷または状態を経験した後4.5時間以内に前記SUR1-TRPM4チャネル阻害剤が最初に投与されると有効である、請求項1に記載の方法。
(請求項7)
後期神経学的増悪または死亡の発生を低減する前記方法が、前記被験体がCNS浮腫に関連する前記損傷または状態を経験した後4.5時間から10時間で前記SUR1-TRPM4チャネル阻害剤が最初に投与されると有効である、請求項1に記載の方法。
(請求項8)
後期神経学的増悪または死亡の発生を低減する前記方法が、前記被験体がCNS浮腫に関連する前記損傷または状態を経験した後6時間から12時間で前記SUR1-TRPM4チャネル阻害剤が最初に投与されると有効である、請求項1に記載の方法。
(請求項9)
前記後期神経学的増悪または死亡を低減する前記方法が、前記被験体がCNS浮腫に関連する前記損傷または状態を経験した後約8時間より前に前記SUR1-TRPM4チャネル阻害剤が最初に投与されると有効である、請求項1に記載の方法。
(請求項10)
前記SUR1-TRPM4チャネル阻害剤の前記1回または複数回の連続注入の投与が少なくとも96時間行われる、請求項1に記載の方法。
(請求項11)
前記SUR1-TRPM4チャネル阻害剤の前記1回または複数回の連続注入の投与が少なくとも120時間行われる、請求項1に記載の方法。
(請求項12)
前記SUR1-TRPM4チャネル阻害剤の前記1回または複数回の連続注入の投与が少なくとも168時間行われる、請求項1に記載の方法。
(請求項13)
前記SUR1-TRPM4チャネル阻害剤が、グリブリド、4-トランス-ヒドロキシ-グリベンクラミド、3-シス-ヒドロキシグリベンクラミド、トブタミド、クロルプロパミド、トラザミド、レパグリニド、ナテグリニド、メグリチニド、ミダグリゾール、トラザミド、グリキドン、LY397364、LY389382、グリクラジド、グリメピリド、SUR1と相互作用する代謝産物、およびそれらの組合せからなる群から選択されるメンバーを含む、請求項1に記載の方法。
(請求項14)
前記SUR1-TRPM4チャネル阻害剤がグリブリドである、請求項1に記載の方法。
(請求項15)
後期神経学的増悪または死亡を処置する前記方法が出血性脳卒中の結果である、請求項1に記載の方法。
(請求項16)
後期神経学的増悪または死亡を処置する前記方法が虚血性脳卒中の結果である、請求項1に記載の方法。
(請求項17)
前記虚血性脳卒中が中大脳動脈、頭蓋内頸動脈、頭蓋外頸動脈、それらの組合せで生じる、請求項16に記載の方法。
(請求項18)
後期神経学的増悪を処置する前記方法が外傷性脳損傷の結果である、請求項1に記載の方法。
(請求項19)
後期神経学的増悪または死亡を処置する前記方法が、心停止、肝不全、室内出血、または神経外科手術の結果である、請求項1に記載の方法。
(請求項20)
前記CNS浮腫が脊髄浮腫であり、かつ前記後期神経学的増悪が脊髄損傷である、請求項1に記載の方法。
(請求項21)
前記1回または複数回の連続注入がボーラス用量投与の後に開始される、請求項1に記載の方法。
(請求項22)
前記1回または複数回の連続注入が2回またはそれよりも多い連続注入投薬量を含み、第1の連続注入投薬量が第2の連続注入投薬量よりも多い、請求項1に記載の方法。
(請求項23)
前記1回または複数回の連続注入がボーラス用量投与の後に開始され、該1回または複数回の連続注入が2回またはそれよりも多い連続注入投薬量を含み、第1の連続注入投薬量が第2の連続注入投薬量よりも多い、請求項1に記載の方法。
(請求項24)
前記SUR1-TRPM4チャネル阻害剤を投与するステップが減圧開頭術と組み合わされる、請求項1に記載の方法。
(請求項25)
前記SUR1-TRPM4チャネル阻害剤を投与する前記ステップが、前記被験体が減圧開頭術を受ける必要性をなくすのに十分に、該被験体における脳の正中線偏位および脳浮腫を低減する、請求項1に記載の方法。
(請求項26)
被験体が脳浮腫に関連する損傷または状態を経験した後に、該被験体にSUR1-TRPM4チャネル阻害剤を投与するステップ、および
減圧開頭術を該被験体に行うステップ
を含む、脳浮腫に関連する該損傷または状態の後の該被験体における脳の正中線偏位を低減する方法。
(請求項27)
脳浮腫に関連する損傷または状態が脳卒中である、請求項26に記載の方法。
(請求項28)
1回または複数回の連続注入で処置されていない類似の集団と比較した、1回または複数回の連続注入で処置された患者における脳の正中線偏位の程度に基づいて集団に対して決定すると、前記脳の正中線偏位を低減する、請求項26に記載の方法。
(請求項29)
前記SUR1-TRPM4チャネル阻害剤が、グリブリド、4-トランス-ヒドロキシ-グリベンクラミド、3-シス-ヒドロキシグリベンクラミド、トブタミド、クロルプロパミド、トラザミド、レパグリニド、ナテグリニド、メグリチニド、ミダグリゾール、トラザミド、グリキドン、LY397364、LY389382、グリクラジド、グリメピリド、SUR1と相互作用する代謝産物、およびそれらの組合せからなる群から選択されるメンバーを含む、請求項26に記載の方法。
(請求項30)
前記SUR1-TRPM4チャネル阻害剤がグリブリドである、請求項26に記載の方法。
(請求項31)
前記SUR1-TRPM4チャネル阻害剤を投与するステップが、少なくとも72時間にわたり累積的に続く1回または複数回の連続注入を含む、請求項26に記載の方法。
(請求項32)
前記SUR1-TRPM4チャネル阻害剤を投与するステップが、少なくとも96時間にわたり累積的に続く1回または複数回の連続注入を含む、請求項26に記載の方法。
(請求項33)
前記SUR1-TRPM4チャネル阻害剤を投与するステップが、ボーラス用量投与と、その後の1回または複数回の連続注入とを含む、請求項26に記載の方法。
(請求項34)
前記SUR1-TRPM4チャネル阻害剤が病変の腫脹を処置する、請求項26に記載の方法。
(請求項35)
前記SUR1-TRPM4チャネル阻害剤が、前記脳浮腫に関連する前記損傷または状態の直後から、前記被験体が脳浮腫に関連する該損傷または状態を経験した後約12時間まで、該被験体に最初に投与される、請求項26に記載の方法。
(請求項36)
前記SUR1-TRPM4チャネル阻害剤が、脳浮腫に関連する前記損傷または状態の4.5時間後から、前記被験体が脳浮腫に関連する該損傷または状態を経験した後約12時間まで、該被験体に最初に投与される、請求項26に記載の方法。
(請求項37)
投与するステップが前記減圧開頭術の前またはその最中に行われる、請求項26に記載の方法。
(請求項38)
前記投与するステップが減圧開頭術の後に行われる、請求項26に記載の方法。
(請求項39)
被験体がCNW浮腫に関連する損傷または状態を経験した後に、SUR1-TRPM4チャネル阻害剤の1回または複数回の連続注入を該被験体に投与するステップ、
CNS浮腫に関連する該損傷または状態の後の該被験体の能力障害の最初の程度を、第1のスコアリングシステムまたは試験を使用して確立するステップ、および
能力障害の前記最初の程度に関して一定期間後、第2のスコアリングシステムまたは試験を使用して能力障害の第2の程度を決定するステップ
を含む、CNS浮腫に関連する該損傷または状態に罹患した該被験体を処置する方法であって、該SUR1-TRPM4チャネル阻害剤の投与の結果、能力障害の程度の差の改善が実現される方法。
(請求項40)
前記第1のスコアリングシステムまたは試験および前記第2のスコアリングシステムまたは試験が同一である、請求項39に記載の方法。
(請求項42)
前記第1のスコアリングシステムまたは試験および前記第2のスコアリングシステムまたは試験が異なる、請求項39に記載の方法。
(請求項43)
前記投与するステップが前記確立するステップの前である、請求項39に記載の方法。(請求項44)
前記確立するステップが前記投与するステップの前である、請求項39に記載の方法。(請求項45)
CNS浮腫に関連する前記損傷または状態が脳卒中である、請求項39に記載の方法。(請求項46)
前記第1のスコアリングシステムもしくは試験または前記第2のスコアリングシステムもしくは試験の一方または両方が、National Institutes of Health Stroke Scale(NIHSS)、Alberta Stroke
Program Early CT Score(ASPECTS)、磁気共鳴イメージング(MRI)、およびCTスキャンからなる群から選択される、請求項45に記載の方法。
(請求項47)
前記第1のスコアリングシステムまたは試験がNational Institutes of Health脳卒中スコアシステムに基づき、かつ前記第2のスコアリングシステムまたは試験が改変されたRankin Scaleまたはバーセルインデックスに基づく、請求項45に記載の方法。
(請求項48)
SUR1-TRPM4チャネル阻害剤の1回または複数回の連続注入を被験体に投与するステップ、および
デキストロース溶液を該被験体に共投与するステップ
を含む、該SUR1-TRPM4チャネル阻害剤を受けている該被験体における血中グルコースレベルの低下を中和する方法。
(請求項49)
前記投与するステップが、CNS浮腫に関連しない損傷または状態の処置のためである、請求項48に記載の方法。
(請求項50)
前記投与するステップが、脳浮腫に関連する損傷または状態の処置のためである、請求項48に記載の方法。
(請求項51)
前記デキストロース溶液が、食塩水または水、および約3重量%から約12重量%デキストロースを含む、請求項48に記載の方法。
(請求項52)
前記投与するステップの前またはその最中に血中グルコースレベルを測定するステップをさらに含む、請求項48に記載の方法。
(請求項53)
前記デキストロース溶液が、前記被験体の前記血中グルコースレベルが約120mg/dLまたはそれ未満であれば最初に投与される、請求項52に記載の方法。
(請求項54)
前記デキストロース溶液が、前記被験体の前記血中グルコースレベルが約100mg/dLまたはそれ未満であれば最初に投与される、請求項52に記載の方法。
(請求項55)
前記血中グルコースレベルが約80mg/dL超から100mg/dLである場合、3重量%から8重量%のデキストロース溶液が前記被験体に約50cc/時間から約120cc/時間で投与される、請求項52に記載の方法。
(請求項56)
前記血中グルコースレベルが約55mg/dLから80mg/dLである場合、8重量%から12重量%のデキストロース溶液が前記被験体に50cc/時間から120cc/時間で投与される、請求項52に記載の方法。
(請求項57)
前記血中グルコースレベルが55mg/dLを下回る場合、8重量%から12重量%のデキストロース溶液が前記被験体に50cc/時間から120cc/時間で投与される、請求項52に記載の方法。
(請求項58)
前記血中グルコースレベルが55mg/dLを下回る場合、前記SUR1-TRPM4チャネル阻害剤の投与が低減されるか、または停止される、請求項52に記載の方法。
(請求項59)
前記血中グルコースレベルが、ベッドサイドで別の測定を行うことによるか、または臨床検査によるかのいずれかで、最初に検証され、その後、前記SUR1-TRPM4チャネル阻害剤の投与を停止するかまたは低減する、請求項52に記載の方法。
(請求項60)
血中グルコースレベルを少なくとも12時間にわたり1時間毎にモニタリングするステップをさらに含む、請求項52に記載の方法。
(請求項61)
血中グルコースレベルを24時間にわたり1時間毎にモニタリングするステップ、次の24時間では血中グルコースの血液を2時間毎にモニタリングするステップ、および前記投与するステップを続けながら血中グルコースレベルを4時間毎にモニタリングするステップをさらに含む、請求項52に記載の方法。
(請求項62)
前記被験体の前記血中グルコースレベルが所定のレベル未満に低下すると、デキストロース溶液のボーラスを前記被験体に共投与するステップをさらに含む、請求項52に記載の方法。
(請求項63)
前記被験体の前記血中グルコースレベルが約80mg/dLより高いと、次に、前記デキストロース溶液を前記共投与するステップが停止される、請求項52に記載の方法。
(請求項64)
前記被験体の前記血中グルコースレベルが約100mg/dLより高いと、次に、前記デキストロース溶液を前記共投与するステップが停止される、請求項52に記載の方法。(請求項65)
前記被験体の前記血中グルコースレベルが約120mg/dLより高いと、次に、前記デキストロースを前記共投与するステップが停止される、請求項52に記載の方法。
(請求項66)
前記被験体の前記血中グルコースレベルが約140mg/dLより高いと、次に、前記デキストロース溶液を前記共投与するステップが停止される、請求項52に記載の方法。(請求項67)
血中グルコースが急速に低下する傾向にあった後にデキストロース投与の速度が増加される、請求項52に記載の方法。
(請求項68)
血中グルコースが前記急速に低下する傾向は、最後の測定からの≧10mg/dLの低減として定義される、請求項67に記載の方法。
(請求項69)
血中グルコースが前記急速に低下する傾向は、最後の測定からの≧30mg/dLの低減として定義される、請求項67に記載の方法。
(請求項70)
前記SUR1-TRPM4チャネル阻害剤が、グリブリド、4-トランス-ヒドロキシ-グリベンクラミド、3-シス-ヒドロキシグリベンクラミド、トブタミド、クロルプロパミド、トラザミド、レパグリニド、ナテグリニド、メグリチニド、ミダグリゾール、トラザミド、グリキドン、LY397364、LY389382、グリクラジド、グリメピリド、SUR1と相互作用する代謝産物、およびそれらの組合せからなる群から選択されるメンバーを含む、請求項48に記載の方法。
(請求項71)
前記SUR1-TRPM4チャネルの前記阻害剤がグリブリドである、請求項48に記載の方法。
(請求項72)
CNS浮腫に関連する前記損傷または状態が脳卒中である、請求項50に記載の方法。(請求項73)
被験体が重度の脳または脊髄腫脹のリスクが高いかどうかを決定するステップ、および該被験体が重度の脳または脊髄腫脹のリスクが高いと決定されたらSUR1-TRPM4チャネル阻害剤を該被験体に投与するステップ
を含む、CNS浮腫に関連する損傷または状態後の重度の脳または脊髄腫脹のリスクが高い該被験体におけるCNS浮腫を防止するかまたは低減する方法。
(請求項74)
前記被験体が脳卒中を経験しており、かつ前記CNS浮腫が脳浮腫である、請求項73に記載の方法。
(請求項75)
前記被験体が、少なくとも10のNational Institutes of Health Stroke Scale(NIHSS)スコア、7もしくはそれ未満のAlberta Stroke Program Early CT Score(ASPECTS)、4もしくはそれ未満のAlberta Stroke Program Early CT Score(ASPECTS)、70ccを超える磁気共鳴イメージング(MRI)拡散強調画像(DWI)、50ccを超えるCT灌流スコア、CT血管造影によって決定される側副循環の不良、および中大脳動脈領域の少なくとも33%に及ぶ低密度を示すCTスキャンからなる群から選択される少なくとも1つの因子またはスコアを示す場合、該被験体が重度の脳腫脹のリスクが高いと見なされる、請求項74に記載の方法。
(請求項76)
前記被験体が82ccを超える磁気共鳴イメージング(MRI)拡散強調画像(DWI)を示す場合、該被験体が重度の脳腫脹のリスクが高いと見なされる、請求項75に記載の方法。
(請求項77)
前記被験体が145ccを超える磁気共鳴イメージング(MRI)拡散強調画像(DWI)を示す場合、該被験体が重度の脳腫脹のリスクが高いと見なされる、請求項75に記載の方法。
(請求項78)
前記被験体が145ccを超える磁気共鳴イメージング(MRI)拡散強調画像(DWI)を示す場合、該被験体が重度の脳腫脹のリスクが高いと見なされる、請求項75に記載の方法。
(請求項79)
前記被験体が70ccを超えるCT灌流スコアを示す場合、該被験体が重度の脳腫脹のリスクが高いと見なされる、請求項75に記載の方法。
(請求項80)
前記被験体が前記中大脳動脈領域の少なくとも50%に及ぶ低密度を示すCTスキャンを示す場合、該被験体が重度の脳腫脹のリスクが高いと見なされる、請求項75に記載の方法。
(請求項81)
投与するステップが、少なくとも72時間の累積時間にわたるSUR1-TRPM4チャネル阻害剤の1回または複数回の連続注入による、請求項73に記載の方法。
(請求項82)
前記SUR1-TRPM4チャネル阻害剤が、グリブリド、4-トランス-ヒドロキシ-グリベンクラミド、3-シス-ヒドロキシグリベンクラミド、トブタミド、クロルプロパミド、トラザミド、レパグリニド、ナテグリニド、メグリチニド、ミダグリゾール、トラザミド、グリキドン、LY397364、LY389382、グリクラジド、グリメピリド、SUR1と相互作用する代謝産物、およびそれらの組合せからなる群から選択されるメンバーを含む、請求項73に記載の方法。
(請求項83)
前記SUR1-TRPM4チャネル阻害剤がグリブリドである、請求項73に記載の方法。
(請求項84)
前記投与するステップが前記CNS浮腫に関連する前記損傷または状態の12時間以内である、請求項73に記載の方法。
(請求項85)
グリブリドの1回または複数回の連続注入を被験体に投与するステップ、および
該グリブリドの投与を続けながら肝臓酵素レベルを測定するステップ
を含む、グリブリドを該被験体に送達する方法。
(請求項86)
前記投与するステップが、脊髄浮腫に関連する損傷または状態の処置のためである、請求項85に記載の方法。
(請求項87)
前記投与するステップが、脳浮腫に関連する損傷または状態の処置のためである、請求項86に記載の方法。
(請求項88)
脳浮腫に関連する前記損傷または状態が脳卒中である、請求項87に記載の方法。
(請求項89)
前記グリブリドを投与するステップの前に肝臓酵素レベルを測定する先行するステップをさらに含む、請求項85に記載の方法。
(請求項90)
肝臓酵素レベルを測定する前記ステップが、前記投与するステップを開始した特定の期間後に該肝臓酵素レベルを測定するステップを含む、請求項85に記載の方法。
(請求項91)
前記特定の期間が、約24時間、約48時間、約72時間、約96時間、約168時間、前記被験体が退院する日、またはそれらの組合せである、請求項90に記載の方法。
(請求項92)
測定される前記肝臓酵素がアスパラギン酸アミノ基転移酵素(AST)である、請求項85に記載の方法。
(請求項93)
測定される前記肝臓酵素がアラニンアミノ基転移酵素(ALT)である、請求項85に記載の方法。
(請求項94)
前記投与するステップが前記測定するステップの結果に基づいて変更されるかまたは中止される、請求項84に記載の方法。
(請求項95)
グリブリドを投与する前記ステップが、前記被験体のALTレベルが投与担当の医師によって決定されるときに、正常のALTレベルの上限の約8倍より高く上昇すれば中止される、請求項85に記載の方法。
(請求項96)
グリブリドを投与する前記ステップが、前記被験体が胆汁うっ滞性黄疸または肝炎を発症すれば中止される、請求項60に記載の方法。
(請求項97)
スルホニル尿素の1回または複数回の連続注入を被験体に投与するステップ、および
心電図を該被験体に行って該被験体の心臓をモニタリングするステップ
を含む、グリブリドを該被験体に投与する場合の心臓の活動をモニタリングする方法。
(請求項98)
前記投与するステップが、脊髄浮腫に関連する損傷または状態の処置のためである、請求項97に記載の方法。
(請求項99)
前記投与するステップが、脳浮腫に関連する損傷または状態の処置のためである、請求項97に記載の方法。
(請求項100)
脳浮腫に関連する前記損傷または状態が脳卒中である、請求項97に記載の方法。
(請求項101)
前記心電図を行う前記ステップが、前記スルホニル尿素を投与するステップの前に前記被験体に前記心電図を行う先行するステップを含む、請求項97に記載の方法。
(請求項102)
前記心電図を行う前記ステップが、前記投与するステップを開始した特定の期間後に前記被験体に心電図を行うステップを含む、請求項97に記載の方法。
(請求項103)
前記特定の期間が、約4時間から約6時間、約24時間、約48時間、約60時間から約72時間、約168時間、前記被験体が退院する日、またはそれらの組合せである、請求項97に記載の方法。
(請求項104)
前記心電図のQTcが約550msを超えれば前記スルホニル尿素を投与する前記ステップが中止される、請求項97に記載の方法。
(請求項105)
脳浮腫に関連する前記損傷または状態が脳卒中である、請求項97に記載の方法。
(請求項106)
グリブリドを被験体に静脈内投与するステップ、ならびに
該グリブリドを該被験体に静脈内投与するステップの間の血中グルコース、肝臓酵素、およびQTcをモニタリングするステップ
を含む、グリブリドを該被験体に送達する方法。
(請求項107)
デキストロースを前記被験体に投与するステップをさらに含む、請求項106に記載の方法。
(請求項108)
広範囲の大脳半球梗塞に罹患している被験体に治療有効量の静脈内SUR1-TRPM4チャネル阻害剤を投与するステップを含む、該被験体を処置する方法であって、該被験体が71歳未満であり、かつ該処置によって、1つまたは複数のアウトカムスケールによって測定される、機能的アウトカムが改善される方法。
(請求項109)
広範囲の大脳半球梗塞に罹患している被験体に治療有効量の静脈内SUR1-TRPM4チャネル阻害剤を投与するステップを含む、該被験体を処置する方法であって、該被験体が少なくとも約100ccの病変体積もしくは≦5のASPECTSスコアまたはその両方を有する方法。
(請求項110)
広範囲の大脳半球梗塞に罹患している被験体に治療有効量の静脈内SUR1-TRPM4チャネル阻害剤を投与するステップを含む、該被験体を処置する方法であって、該投与するステップが、脳卒中確認の時点から、または該被験体が正常であると最後に観察されたときから9時間またはそれ未満に開始される方法。
(請求項111)
外傷性脳損傷に罹患している被験体に治療有効量の静脈内SUR1-TRPM4チャネル剤を投与するステップを含む、該被験体を処置する方法であって、該被験体が、処置前に、該外傷性脳損傷によって誘発される脳内血液の放射線学的エビデンスを示す方法。
(請求項112)
放射線学的にLHIであると定義された少なくとも18歳の被験体を登録するステップ、
該被験体をSUR1-TRPM4チャネル阻害剤または適合プラセボで、脳卒中から、または正常であると観察された最後の時点から9時間またはそれ未満から開始して、最大約72時間処置するステップ、
mRSを評価するステップ、
を含む、広範囲の大脳半球梗塞のための処置を試験する方法であって、70歳もしくはそれより若い被験体において薬物に有利な統計上有意な結果が検出されるか、または70歳を超える被験体において記述的な利益が検出されれば成功であると見なされる方法。
【0019】
ここで、図解された例示的な実施形態を参照するが、具体的な用語がその実施形態を記載するために本明細書において使用される。しかし、これらの図面は例示的な実施形態を示すにすぎず、したがって、その範囲を限定するものであると見なされるものではないことが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、実行され本明細書において提示される臨床研究による、脳浮腫に関連する損傷または状態に罹患した個体における死亡数の発生率(incidence rate of mortality)を示す。
【
図2】
図2は、実行され本明細書において提示される臨床研究における、脳浮腫に関連する損傷または状態に罹患し、減圧開頭手術および研究薬物またはプラセボのいずれかで処置された個体における死亡数の発生率を示す。
【
図3】
図3は、臨床研究における個体のmRSスコアの分布を示す。
【
図4】
図4は、実行され本明細書において提示される臨床研究における、個体の90日のバーセルインデックススコアの中央値を示す。
【
図5】
図5は、研究参加者の脳の正中線偏位における低減パーセントの平均を示す。
【
図6】
図6は、実行され本明細書において提示される臨床研究における、個体のFLAIR比を示す。
【
図7】
図7は、実行され本明細書において提示される臨床研究における、個体の血液脳関門の破壊を示す。
【
図8】
図8は、広範囲の大脳半球梗塞における、病変サイズに応じたmRSアウトカムの分析を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の特定の実施形態を開示および記載する前に、本発明は本明細書において開示される特定のプロセスおよび材料に限定されず、したがってある程度変化し得ることを理解されたい。また、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲およびその同等物によってのみ定義されるため、本明細書において使用される用語法は特定の実施形態のみを記載する目的で使用されており、限定することを意図しているものではないことも理解されたい。
【0022】
本発明を記載するおよび特許請求するに当たり、以下の用語法を使用する。
【0023】
単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈が明らかに別のことを示さない限り、複数形の言及を含む。したがって、例えば、「1つのSUR1-TRPM4チャネル阻害剤」への言及は、このようなSUR1-TRPM4チャネル阻害剤の1つまたは複数への言及を含む。
【0024】
本明細書において使用する場合、用語「活性剤(active agent)」は、組成物に添加
されると特定の治療効果をもたらす傾向がある化合物または化合物の混合物を指す。
【0025】
本明細書において使用する場合、用語「広範囲の大脳半球梗塞」または「LHI」は、隣接する(例えば、前大脳動脈[ACA]および/または後大脳動脈[PCA])領域の関与を伴うまたは伴わない、中大脳動脈(MCA)の全領域またはほぼ全体的な(sub-total)領域を冒している虚血性脳卒中を指す。
【0026】
本明細書において使用する場合、「後期神経学的増悪」は、神経学的腫脹をもたらす損傷または状態の後に生じる神経学的増悪を指す。増悪は、損傷または状態が生じた後に始まるが基礎をなす損傷または状態の後最大72時間、96時間、120時間、144時間、168時間、またはそれよりも長い時間まで及ぶ時点で生じ得る。
【0027】
用語「病変」は、脳の組織における異常を指す。一部の場合では、病変は、認識可能な体積を有し、近くの組織および血管に影響し得る、占拠性病変であり得る。
【0028】
本明細書において使用する場合、用語「プラセボ」は、SUR1-TRPM4アンタゴニストを含有しない製剤、または、SUR1-TRPM4チャネル阻害剤の量(重量%)が同量(重量%)の他の不活性成分、例えば水で置き換えられていることを除いて組成が類似の製剤である。さらに、「プラセボ」は、当業者には理解されるように、薬物の非存在に起因する、典型的なわずかな製剤の差を有し得る。
【0029】
本明細書において使用する用語「被験体」は、哺乳動物を含む動物界の全てのメンバーを含み、最も典型的にはヒト患者を指す。
【0030】
用語「スルホニル尿素」は、スルホニル尿素、スルホニル尿素模倣体、およびSUR1のチャネルに関連する活性を遮断または低減するために有効なあらゆる他の組成物を含む。
【0031】
用語「CNS浮腫」または「中枢神経系浮腫」は、脳もしくは脳の近くまたは脊髄もしくは脊髄の近くを含む中枢神経系のどこにでも生じ得る腫脹を指す。したがって、「脊髄浮腫」および「脳浮腫」は2つの特異的なタイプのCNS浮腫であり、その1つは脊髄に、他方は脳に、それぞれ影響する。
【0032】
「CNS浮腫に関連する」または「脳浮腫に関連する」または「脊髄に関連する」「損傷または状態」という句は、浮腫、例えば脳浮腫または脊髄浮腫などのCNS浮腫を引き起こし得るまたはその原因となり得る、引き金となる事象を指す。しかし、これらの損傷または状態は全ての患者で常に浮腫を生じさせるわけではないことに留意されたい。例えば、脳卒中は、一般にはCNS浮腫に関連する状態であり、より具体的には脳浮腫に関連する。脳卒中は、ある特定のさらに重度のケースでは、生命を脅かす脳浮腫をもたらし得る。したがって、脳卒中は、脳卒中に関連する脳浮腫のリスクがあるという点で、CNS浮腫または脳浮腫に関連する状態である。一部の具体的な実施例では、脳浮腫に関連する損傷または状態には、虚血性脳卒中、出血性脳卒中、外傷性脳損傷、心停止、肝不全、室内出血、神経外科手術などが含まれ得る。脊髄損傷は、他方で、脊髄浮腫に関連し得る。これらの損傷または状態の一部は、心停止または肝不全のように脳または脊髄に直接的に関連しないが、これらの損傷または状態は、一部のケースではCNS浮腫または脳浮腫をもたらすことが公知である。
【0033】
「外傷性脳損傷」は、脳内または脳周辺の腫脹をもたらし、脳の区域に対して典型的に直接的である(例えば、脳浮腫の原因となり得る頭部または頭部近くの損傷に影響する)軽度の、中度の、または重度の損傷に関連する、損傷を指す。
【0034】
「脳卒中」は、脳への血流が少ないと生じ、細胞死をもたらし得る。本明細書で定義される場合、基本的に2つの公知のタイプの脳卒中、すなわち虚血性脳卒中または出血性脳卒中がある。虚血性脳卒中は脳への血流が不足すると生じ、出血性脳卒中は頭蓋円蓋部(cranial vault)で出血があるとまたは脳組織内で出血があると生じ、くも膜下出血および脳内出血を含む。両形態とも脳浮腫をもたらし得る。
【0035】
本明細書において使用する、かつ当技術分野において良く理解されている用語「処置する(treating)」または「処置(treatment)」は、臨床結果を含む有利なまたは所望の結果を得るためのアプローチを意味する。有利なまたは所望の臨床結果には、限定はしないが、検出可能であっても検出不可能であっても、1つまたは複数の症候または状態の軽減または緩解、疾患の程度の減弱、病状の安定化(すなわち悪化させない)、疾患の進行の遅延または減速、病状の緩解または緩和、疾患の再発の減弱、および寛解(部分または完全)が含まれ得る。「処置する(treating)」および「処置(treatment)」はまた、処置を受けない場合に予測される生存と比較して生存を延長させることも意味し得る。処置の方法として有用であることに加えて、本明細書において記載される方法は、疾患の防止または予防に有用であり得る。
【0036】
本明細書において使用する場合、用語「約」は、所与の値が数値範囲のエンドポイントを「わずかに上回り」得るまたは「わずかに下回り」得るとすることによって該エンドポイントに柔軟性を与えるために使用される。この用語の柔軟性の程度は、特定の変数によって規定され得、当業者にとっては経験および本明細書における関連する記載に基づいて決定することは知識の範囲内であろう。例えば、一実施形態では、柔軟性の程度は、その数値の約±10%以内であり得る。別の実施形態では、柔軟性の程度は、その数値の約±5%以内であり得る。さらなる実施形態では、柔軟性の程度は、その数値の約±2%、±1%、または±0.05%以内であり得る。
【0037】
本明細書では全体を通して、用語「または」は「および/または」を含む。
【0038】
本明細書において使用する場合、複数の活性剤、化合物、損傷または状態などは、利便性のために共通のリストで表され得る。しかし、これらのリストは、そのリストの各メンバーが個別のおよび固有のメンバーとして個々に同定されているとして解釈されるべきである。したがって、このようなリストのいずれの個々のメンバーも、別段の指示がない限り、共通の群におけるそれらの提示に基づいて、単独で、同一リストのあらゆる他のメンバーの事実上の同等物として解釈されるべきでない。
【0039】
濃度、量、および他の数値データは、本明細書では範囲形式で表され得るかまたは提示され得る。このような範囲形式は利便性および簡潔性のために使用されるにすぎず、したがって、範囲の限定として明確に引用されている数値のみならず、その範囲内に包含される全ての個々の数値または部分範囲(sub-range)も、各数値および部分範囲が明確に引
用されているかのように含むと柔軟に解釈されるべきであると理解されたい。例として、「約0.01から2.0」という数値範囲は、約0.01から約2.0という明確に引用されている値のみならず、示された範囲内の個々の値および部分範囲も含むと解釈されるべきである。したがって、この数値範囲に含まれるものは、0.5、0.7、および1.5などの個々の値、ならびに0.5から1.7、0.7から1.5、および1.0から1.5などの部分範囲である。さらに、このような解釈は、記載される範囲の幅または特徴に関係なく適用されるべきである。さらに、全てのパーセンテージは、別段の特定がない限り、重量であることに留意されたい。
【0040】
本明細書において使用する場合、全ての組成物パーセントは、別段の言及が無い限り、重量パーセントとして示される。成分の溶液が言及される場合、パーセンテージは、別段の指示がない限り、溶媒(例えば水)を含む組成物の重量パーセントを指す。
【0041】
本開示の範囲を理解するに当たり、本明細書において使用する場合、用語「含む(including)」または「含む(comprising)」およびその派生語は、言及された特性、構成要素、成分、群、整数、および/またはステップの存在を特定するものの、他の言及されていない特性、構成要素、成分、群、整数、および/またはステップの存在を排除しない、オープンエンドの用語であることを意図している。これはまた、用語「含む(including)」、「有する(having)」、およびその派生語などの、類似の意味を有する語にも適用される。本明細書において使用する用語「からなる(consisting)」およびその派生語は、言及された特性、構成要素、成分、群、整数、および/またはステップの存在を特定するものの、他の言及されていない特性、構成要素、成分、群、整数、および/またはステップの存在は排除する、クローズド型の用語(closed term)であることを意図している。本明細書において使用する場合、用語「から本質的になる(consisting essentially of)」は、言及された特性、構成要素、成分、群、整数、および/またはステップ、ならびに、特性、構成要素、成分、群、整数、および/またはステップの基本的なおよび新規な特徴(複数可)にあまり影響しない特性、構成要素、成分、群、整数、および/またはステップの存在を特定することを意図する。これらの転換語(transition terms)(すなわち、「含む(comprising)」、「からなる(consisting)」、または「から本質的になる(consisting essentially)」)のいずれか1つへの言及が、特定的に使用されていない他のtransition termsのいずれかへの置き換えを直接的にサポートすると理解される。例えば、用語を「含む(comprising)」から「から本質的になる(consisting essentially of)」に修正することは、この定義に起因して直接支持されよう。
【0042】
本明細書において使用する場合、複数の化合物またはステップは、利便性のために共通のリストで表され得る。しかし、これらのリストは、そのリストの各メンバーが個別のおよび固有のメンバーとして個々に同定されているとして解釈されるべきである。したがって、このようなリストのいずれの個々のメンバーも、別段の指示がない限り、共通の群におけるそれらの提示に基づいて、単独で、同一リストのあらゆる他のメンバーの事実上の同等物として解釈されるべきでない。
【0043】
さらに、ある特定の組成物、損傷または状態、ステップなどが、1つの具体的な実施形態の文脈で論じられ得る。これは利便性のためにすぎず、このような開示が本明細書で見られる他の実施形態に等しく適用可能であることが理解される。例えば、後期神経学的増悪または死亡を処置する方法に関して記載される活性剤または薬物のリストは、これらの薬物が本明細書における脳の正中線偏位を低減する方法に関する実施形態の文脈で再びリストされなくても、その実施形態の直接的なサポートとなる。
【0044】
一実施形態では、CNS浮腫に関連する損傷または状態の後の、被験体の後期神経学的増悪または死亡を低減する方法が提示される。本方法は、SUR1-TRPM4チャネル阻害剤の1回または複数回の連続注入を、被験体に、連続注入(複数可)の開始後少なくとも約72時間にわたり累積的に投与することを含む。SUR1-TRPM4チャネル阻害剤を投与することによって後期神経学的増悪または死亡のインシデントを低減させ得ることが見出されている。この方法は被験体に関連するが、通常、後期神経学的増悪または死亡の発生は、SUR1-TRPM4チャネル阻害剤で処置されなかった患者の群における後期神経学的増悪の発生との比較に基づいて決定され得る。「後期神経学的増悪」は、CNS浮腫に関連する損傷または状態の後、長期間経って生じる神経学的増悪を指す。長期間は、≧24時間、≧48時間、≧72時間、≧84時間、≧96時間、≧108時間、≧120時間、≧132時間、≧148時間、≧160時間、≧172時間、または約≧184時間を含み得る。
【0045】
SUR1-TRPM4チャネル阻害剤は、SUR1-TRPM4を遮断するために有効なあらゆる活性剤を含み得、一部の例には、グリブリド(グリベンクラミドとしても公知である)、4-トランス-ヒドロキシ-グリベンクラミド、3-シス-ヒドロキシグリベンクラミド、トブタミド(tobutamide)、クロルプロパミド、トラザミド、レパグリニド、ナテグリニド、メグリチニド、ミダグリゾール、トラザミド、グリキドン、LY397364、LY389382、グリクラジド(glyclazide)、もしくはグリメピリド、SUR1と相互作用する代謝産物、またはその組合せが含まれ得る。SURと関連し得る非選択性チャネルに対して作用する一部の化合物には、例えば、ピンコラント、フルフェナム酸、メフェナム酸(mefanamic acid)、ニフルム酸、リモナバン、およびSKF963
5が含まれる。一実施形態では、SUR1-TRMP4チャネル阻害剤はグリブリドである。別の実施形態では、SUR1-TRMP4チャネル阻害剤はトブタミドである。さらに別の実施形態では、SUR1-TRMP4チャネル阻害剤はグリカジド(glycazide)
である。
【0046】
SUR1-TRPM4チャネル阻害剤は、ボーラス注射、連続注入、またはその組合せとして投与され得る。一部の場合では、投与は、複数のボーラス注射または複数の連続注入を含み得る。他の実施形態では、投与は、ボーラス注射後の1回または複数回の連続注入を含み得る。例えば、ボーラス注射の後に第1の連続注入を行い、その後、第1の注入と比較して遅い注入速度の第2の連続注入を行うことができる。別の実施形態では、ボーラス注射の後に連続注入を行う。別の実施形態では、第1の連続注入の後にボーラス注射を行い、次いで、第2の連続注入を行う。さらに別の実施形態では、第1の連続注入の後に第2の連続注入および第3の連続注入を行う。
【0047】
本明細書で提示される投与は、長期間にわたり行われ得る。投与は、≧12時間、≧24時間、≧48時間、≧72時間、≧76時間、≧80時間、≧84時間、≧88時間、≧92時間、≧96時間、≧100時間、≧104時間、≧108時間、≧112時間、≧116時間、≧120時間、≧124時間、≧128時間、≧132時間、≧136時間、≧140時間、≧144時間、≧148時間、≧152時間、≧156時間、≧160時間、≧164時間、≧168時間、または≧172時間にわたり行われ得る。一実施形態では、投与は、累積された時間の長さが少なくとも72時間の1回または複数回の連続注入を含む。別の実施形態では、投与は、少なくとも96時間の1回または複数回の連続注入を含む。さらに別の実施形態では、投与は、少なくとも120時間の1回または複数回の連続注入を含む。代替の実施例では、1回または複数回の連続注入の投与は、≦72時間、≦48時間、または≦24時間にわたり行われ得る。
【0048】
正確な投薬量は、基礎をなす状態、腫脹の程度、被験体の体重、および/または投与されるSUR1-TRMP4チャネル阻害剤に基づいて変化する。ボーラス注射は、約100μgから約200μg投与されると予想される。一実施形態では、ボーラス注射は、約110μgから約140μg、または約125μgである。別の実施形態では、ボーラス注射は、約140μgから約160μg、または約150μgである。さらに別の実施形態では、ボーラス注射は、約160μgから約190μg、または約175μgである。連続注入は、約100μg/時間から約300μg/時間の注入速度で投与されると予想される。一実施形態では、注入速度は、約110μg/時間から約140μg/時間、または約125μg/時間である。別の実施形態では、注入速度は、約140μg/時間から約160μg/時間、または約150μg/時間である。さらに別の実施形態では、注入速度は、約160μg/時間から約190μg/時間、または約175μg/時間である。さらなる実施形態では、注入速度は、約190μg/時間から約225μg/時間、または約200μg/時間である。さらなる実施形態は、約225μg/時間から約300μg/時間、または約250μg/時間の注入速度を含む。
【0049】
虚血性脳卒中の被験体に典型的に投与されるクロットバスターとは異なり、SUR1-TRPM4チャネル阻害剤は出血を生じさせない。したがって、SUR1-TRPM4チャネル阻害剤は、損傷もしくは状態の直後に初回投与する場合、または脳浮腫に関連する損傷もしくは状態が生じる後のある期間に初回投与する場合の両方で効果的であり得る。一実施形態では、SUR1-TRPM4チャネル阻害剤の初回投与は、損傷または状態の発生の最初の1時間、最初の2時間、最初の3時間、最初の4時間(four 4 hours)、最初の6時間、最初の8時間、または最初の10時間以内であり得る。別の実施形態では、SUR1-TRPM4チャネル阻害剤の初回投与は、少なくとも4時間、少なくとも4.5時間(クロットバスターが効果的でないかまたはさらには危険となり得る期間)、少なくとも6時間、少なくとも8時間、または少なくとも10時間の、脳浮腫に関連する損傷または状態が生じる後の一定期間においてであり得る。他の実施例では、SUR1-TRPM4チャネル阻害剤の初回投与は、損傷または状態が生じる後の6時間以内の期間であり得る。さらなる実施形態では、SUR1-TRPM4チャネル阻害剤の初回投与は、損傷または状態が生じる6時間後の期間であり得る。別の実施形態では、初回投与は、損傷または状態の発生の8時間以内であり得る。さらなる実施形態では、SUR1-TRPM4チャネル阻害剤の初回投与は、損傷または状態の発生の10時間以内の期間であり得る。
【0050】
後期神経学的増悪、死亡、または本明細書で論じる他の状態をもたらす、基礎をなす損傷または状態は、特に限定されない。これには、脳腫脹をもたらすあらゆる疾患または状態が含まれ得る。一実施形態では、基礎をなす状態は外傷性脳損傷である。別の実施形態では、基礎をなす状態は脳卒中である。基礎をなす状態が脳卒中である場合、脳卒中は虚血性または出血性脳卒中であり得る。別の実施形態では、脳卒中は虚血性脳卒中であり得、中大脳動脈もしくは頸動脈(頭蓋内または頭蓋外の)または虚血性脳卒中に関連するあらゆる他の位置で生じる。脳卒中が出血性脳卒中である場合、これは、くも膜下出血または脳内出血の両方またはいずれかを含む出血性脳卒中に関連するあらゆる公知の位置で生じ得るかそこに由来し得る。
【0051】
同様に本明細書で提示されるものは、外傷性脳損傷または脳卒中の後の被験体における脳の正中線偏位を低減する方法である。脳の正中線偏位は、病変体積または病変の腫脹の変化によって引き起こされ得る。本方法は、被験体が脳浮腫に関連する損傷または状態を経験した後に、SUR1-TRPM4チャネル阻害剤を被験体に投与すること、および減圧開頭術を被験体に行うことを含み得る。正中線偏位は、CTスキャンもしくはMRIスキャンで、または経頭蓋ドプラを使用して測定され得る。正中線偏位の低減は、脳卒中またはSUR1-TRMP4チャネル阻害剤もしくは減圧開頭術で処置されていないTBI患者における正中線偏位の量と比較することによって決定され得る。脳の正中線偏位の低減は、約5%超、約8%超、約10%超、約15%超、約20%超、約25%超、約30%超、約35%超、約40%超未満(greater than less than about 40%)、約4
5%超、または約50%超であり得る。一部の実施形態では、脳の正中線偏位の低減は、SUR1-TRPM4チャネル阻害剤が投与されるか、または減圧開頭術が行われるか、いずれかの場合の低減よりも大きい。他の実施形態では、低減は、個々に行われたいずれかの処置の相加効果よりも大きい。一実施形態では、SUR1-TRPM4チャネル阻害剤は、病変体積および病変の腫脹の両方を低減させた。別の実施形態では、SUR1-TRPM4チャネルの阻害剤は、脳の正中線偏位を低減するのみならず、病変の腫脹の処置もする。一部の実施例では、本方法は、組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)またはクロットバスター活性剤をSUR1-TRPM4チャネル阻害剤の前にまたはそれとともに投与することをさらに含み得る。これは、TPAまたはクロットバスター活性剤が投与される場合に特に効果的であり得るが、例えば、脳浮腫に関連する損傷または状態が生じる最初の4.5時間以内では、依然として安全であると見なされる。共投与され得るTPAまたはクロットバスター活性剤の例には、アクチバーゼ、テネクテプラーゼ(tenectoplase)、ウロキナーゼ(eurokinase)、ストレプトキナーゼ、および/またはデスモテプラーゼが含まれ得る。さらに、クロットは、デバイス、すなわち機械的血栓摘出術によって除去され得る。TPAまたはクロットバスター活性剤の投与は、典型的には静脈内注入によるが、経口投与および皮下投与も投与経路として含まれる。SUR1-TRPM4チャネル阻害剤、投与型、投与速度、投与時間枠、初回投薬のための投与期間、基礎をなす状態、他の詳細などは、上記で論じた通りであり得る。
【0052】
さらに、本開示は、CNS浮腫に関連する損傷または状態に罹患した被験体における能力障害の程度を改善する方法に関する。本方法は、被験体がCNS浮腫に関連する損傷または状態に罹患した後に、SUR1-TRPM4チャネル阻害剤の1回または複数回の連続注入を被験体に投与することを含む。さらなるステップは、被験体の能力障害の最初の程度を第1のスコアリングシステムまたは試験に基づいて確立すること、および能力障害の最初の程度が決定されてから一定期間後に、第2のスコアリングシステムまたは試験を使用して能力障害の第2の程度を決定することを含む。一実施例では、第1および第2のスコアリングシステムまたは試験は、同一であり得るか、あるいは異なり得る。この実施例では、被験体における改善は、スコアリングシステム(複数可)によって決定、例えば定量される。この方法の一実施例では、SUR1-TRPM4チャネル阻害剤の投与の結果として、能力障害の程度の差の改善が、スコアリングシステム(単数または複数)に基づいて実現される。例えば、脳卒中スコアリングシステムに基づいて少なくとも約10%である、能力障害の程度の差の改善が実現され得る。他の実施形態では、能力障害の程度の低減は、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、または少なくとも約30%であり得る。スコアリングシステムは、特にCNS浮腫に関連する損傷または状態が脳卒中であれば、National Institutes of Healthの脳卒中スコアシステム(NIHSS)、改変されたRankin Scale、バーセルインデックス、またはCTおよび/もしくはMRIで測定された病変のサイズに基づき得る。一実施例では、第1のスコアリングシステムまたは試験はNIHSSに基づき得、第2のスコアリングシステムまたは試験は改変されたRankin ScaleまたはバーセルインデックスまたはNIHSSに基づき得る。画像化および/または他のスコアリングシステムが、CNS浮腫に関連する他の損傷または状態に使用され得る。
【0053】
別の実施例では、広範囲の大脳半球梗塞に罹患している被験体を処置する方法は、治療有効量の静脈内SUR1-TRPM4チャネル阻害剤を被験体に投与することを含み得る。一実施例では、被験体は71歳未満であり得、処置することによって、1つまたは複数のアウトカムスケールによって測定される機能的アウトカムが改善され得る。別の実施例では、被験体は、少なくとも約100ccの病変体積、または5未満のもしくは5に等しいASPECTSスコア、またはその両方を有し得る。別の実施例では、投与することは、脳卒中確認の時点から、または被験体が正常であると最後に観察されたときから9時間またはそれ未満に開始され得る。さらに別の実施例では、被験体は、処置前に、外傷性脳損傷によって誘発される脳内血液の放射線学的エビデンスを示し得る。放射線学的エビデンスは、MRIまたはCTを使用して得られ得る。脳内血液は、例えば少なくとも約0.5mLまたは少なくとも約1mLの最小体積を有する限局性の挫傷に起因し得る。
【0054】
別の実施例では、広範囲の大脳半球梗塞のための処置を試験する方法は、放射線学的にLHIであると定義された少なくとも18歳の被験体を登録すること、被験体をSUR1-TRPM4チャネル阻害剤または適合プラセボで、脳卒中から、または正常であると観察された最後の時点から9時間またはそれ未満から始まり、最大約72時間処置すること、およびmRSを評価することを含み得る。本方法は、70歳もしくはそれより若い被験体において薬物に有利な統計上有意な結果が検出されるか、または70歳を超える被験体において記述的な利益が検出されれば成功であると見なされ得る。
【0055】
SUR1-TRPM4チャネル阻害剤、投与型、投与速度、投与時間枠、初回投薬のための投与期間、基礎をなす状態、他の詳細などは、上記および本明細書のあらゆる箇所で論じた通りであり得る。
【0056】
別の実施形態では、SUR1-TRPM4チャネル阻害剤を受けている被験体における血中グルコースレベルの低下を中和する方法は、SUR1-TRPM4チャネル阻害剤の1回または複数回の連続注入を被験体に投与すること、およびデキストロース溶液を被験体に共投与することを含み得る。さらなるステップは、このような投与の前またはその最中に血中グルコースレベルを測定することを含み得る。一実施例では、投与は、CNS浮腫に関連する損傷または状態の後であり得るか、またはその結果としてであり得る。別の実施例では、このような方法はまた、CNS浮腫に関連する適応症以外の適応症へのSUR1-TRPM4チャネル阻害剤の投与のためのものであり得る。いずれのケースでも、これは、腎臓、肝臓、腸、または心臓を保護するために行われ得る。
【0057】
一実施形態では、デキストロース溶液は、被験体の血中グルコースレベルが約100mg/dLまたはそれ未満であれば最初に投与される。別の実施形態では、デキストロース溶液は、被験体の血中グルコースレベルが約95mg/dLまたはそれ未満であれば最初に投与される。さらに別の実施形態では、デキストロース溶液は、被験体の血中グルコースレベルが約90mg/dLまたはそれ未満であれば最初に投与される。さらに別の実施形態では、デキストロース溶液は、被験体の血中グルコースレベルが約80mg/dLまたはそれ未満であれば最初に投与される。さらなる実施形態では、デキストロース溶液は、被験体の血中グルコースレベルが約110mg/dLまたはそれ未満であれば最初に投与される。さらなる実施形態では、デキストロース溶液は、被験体の血中グルコースレベルが約120mg/dLまたはそれ未満であれば最初に投与される。さらに別の実施形態では、デキストロース溶液は、被験体の血中グルコースレベルが急速に低下する傾向にあれば投与される。一般に、血中グルコースが約140mg/dLより高ければ、デキストロースの補充は典型的には行われるべきではない。急速に低下する傾向は臨床医によって定義されるが、最後の測定から≧10mg/dL、≧20mg/dL、≧30mg/dL、≧40mg/dL、≧50mg/dL、≧60mg/dL、≧70mg/dL、≧80mg/dL、≧90mg/dL、または≧100mg/dLの低減を含み得る。
【0058】
デキストロース溶液は、デキストロースを食塩水中または水中に含み得る。デキストロース溶液中のデキストロースの重量パーセントは、典型的には1重量%から25重量%であるが、この範囲外の濃度、例えば、2重量%から20重量%、3重量%から15重量%、3重量%から12重量%、3重量%から8重量%、8重量%から12重量%なども使用され得る。言い換えると、デキストロース溶液中のデキストロースの重量パーセントは変化し得、被験体の血中グルコースレベルを含むある特定の変数に基づいて被験体に投与され得る。一般的に使用されるデキストロース溶液などの例示的なデキストロース溶液には、ノーマルセーライン中の5重量%デキストロース(D5NS)およびノーマルセーライン中の10重量%デキストロース(D10NS)が含まれ得るが、このような溶液はまた、ノーマルセーライン中よりも、水または一部ノーマルセーライン(例えば、1/2ノーマルセーライン)中の溶液であり得る。一実施形態では、被験体の血中グルコースレベルが約80mg/dL超から100mg/dLである場合、3重量%から8重量%のデキストロース溶液が被験体に約50cc/時間から約120cc/時間で投与され得る。別の実施形態では、被験体の血中グルコースレベルが約55mg/dLから80mg/dLである場合、8重量%から12重量%のデキストロース溶液が被験体に50cc/時間から120cc/時間で投与され得る。さらに別の実施形態では、被験体の血中グルコースレベルが<55mg/dLである場合、8重量%から12重量%のデキストロース溶液が被験体に50cc/時間から120cc/時間で投与され得る。さらなる実施形態では、被験体の血中グルコースレベルが55mg/dLを下回る場合、グリブリドまたは他のSUR1-TRPM4チャネル阻害剤を投与することは低減されるか、またはさらには完全に停止される。一部の実施形態では、被験体の血中グルコースレベルが70ml/dLなどのある特定のレベルを下回って低下すれば、本方法は、デキストロース溶液のボーラスを被験体に投与することをさらに含む。一実施形態では、ボーラスは、水または食塩水中の5重量%から60重量%デキストロース溶液であり得、具体的には水(D50W)、1/2ノーマルセーライン、またはノーマルセーライン中の50%デキストロースであり得る。
【0059】
送達されるデキストロースの量を決定するとき、医師は、被験体に適切に送達される総流体(これは、維持流体、およびSUR1-TRPM4チャネル阻害剤を含有する流体を含み得る)を考慮し得る。一実施例では、総流体体積は、例えば、50cc/時間から200cc/時間、または70cc/時間から150cc/時間、または80cc/時間から130cc/時間であり得る。正確な体積は臨床的判断に応じ得、肺水腫のあらゆる病歴を考慮すべきである。Holliday-Segarノモグラムを使用して、70kgの個体では、典型的な総流体速度は100cc/時間であり、100kgの個体では130cc/時間である。
【0060】
一部の実施形態では、本方法は、被験体の血中グルコースレベルをモニタリングすることをさらに含む。モニタリングは、1時間毎、2時間毎、4時間毎、8時間毎、12時間毎、24時間毎、またはその組合せに行われ得る。具体的な一実施形態では、モニタリングは、SUR1-TRPM4チャネル阻害剤が投与される最初の24時間では1時間毎であり得、次いで、モニタリングは、次の24時間、例えばSUR1-TRPM4チャネル阻害剤が投与される25時間目から48時間目の間では2時間毎になり、次いで、モニタリングは、残りのR1-TRPM4チャネル阻害剤注入では4時間毎に行われ得る。被験体の血中グルコースレベルが70mg/dL未満に低下すれば、モニタリングは、例えば、被験体の血中グルコースレベルが外因性のボーラスグルコース投与を行わずに3回の連続的な読み取りで≧80mg/dLに上昇するまで、15分毎に行われ得る。
【0061】
一部の場合では、血中グルコースレベルが高いと、デキストロース溶液の投与を停止する決定がなされ得る。この実施例では、デキストロース溶液は、被験体の血中グルコースレベルが≧150mg/dL、約≧140mg/dL、約≧130mg/dL、または約≧120mg/dLであると停止され得る。一つの例では、<70mg/dLの全血中グルコースは、ベッドサイドで別の測定を行うことによるか、または臨床検査によるかのどちらかで、薬物の投与を停止または低減する前に検証され得る。
【0062】
一実施形態では、SUR1-TRPM4阻害剤で処置された被験体は、一例では以下のようにして、血中グルコースについてモニタリングされ得る:
最初の約24時間では1時間(±30分)毎、
約25時間目から約48時間目では2時間(±30分)毎、および
その後4時間(±60分)毎。
【0063】
血中グルコースが約70mg/dL未満まで低下すると、モニタリング頻度は、血中グルコースが外因性グルコース補充を行わずに約3回の連続的な読み取りで約80より大きいかまたはそれに等しくなるまで、15分(±10分)毎まで増大され得る。
【0064】
薬物が中断および再開される場合、血中グルコースは、約3時間(±30分)にわたり1時間毎に測定され得る。
【0065】
グルコースが不要であれば、モニタリングは、それまでのプロトコールの頻度、例えばこの実施例では1、2、または4時間まで戻され得る。
【0066】
別の実施形態では、血中グルコースは、SUR1-TRPM4阻害剤で処置された被験体において、例えば以下のように制御され得る:
- ベースラインの血中グルコースが約100mg/dL未満であれば、最初の維持液は、約70から約100cc/時間の速度の、ノーマルセーライン中の約5%デキストロース(D5NS)であり得る。
- 血中グルコースが約100mg/dLを下回れば、D5NSは、約70から約100cc/時間で開始され得る。IV液体速度の上昇または低下の用量設定(titration)を
使用して、血中グルコースを約80mg/dLより上に維持することができる。
- 血中グルコースが約80mg/dL未満であれば、D5NSが開始され得るか、または、D5NSが既に投与されていれば、被験体をノーマルセーライン中の約10%デキストロース(D10NS)に切り替えることができる。
- 血中グルコースが急速または連続的に低下する傾向があれば、D5NSが開始され得るか、またはD5NSが既に投与されていれば、被験体をD10NSに切り替えることができる。
- 血中グルコースが約140mg/dLより高い事象では、D5NSまたはD10NSは投与され得ない。
- あらゆる確認された約70mg/dL未満の血中グルコースは、水中の約50%デキストロース(D50W)の50mLアンプルで処置され得る。D50Wが入手できなければ、別の濃度のデキストロース流体が、等しい量のデキストロースを達成するために十分な体積で使用され得る。
【0067】
SUR1-TRPM4チャネル阻害剤、投与型、投与速度、投与時間枠、初回投薬のための投与期間、基礎をなす状態、他の詳細などは、上記および本明細書のあらゆる箇所で論じた通りであり得るか、または例えば処置を担当する医療専門家によってなされた臨床的決定に従って修正され得る。例えば、異なる投薬量およびタイミングが実行され得るか、または異なる投与経路もまた実行され得る。
【0068】
別の実施例では、重度の脳腫脹のリスクが高い被験体における脳腫脹を防止する方法は、被験体について重度の脳腫脹のリスクが高いかどうかを決定すること、および重度の脳腫脹のリスクが高いと一旦決定された被験体にSUR1-TRMP4チャネル阻害剤の1回または複数回の連続注入を投与することを含み得る。
【0069】
この方法が利益をもたらすであろう例として脳卒中を記載するに当たり、生命を脅かす腫脹が入院中の虚血性脳卒中患者の最大8%および全ての中大脳動脈(MCA)脳卒中の最大15%で生じ得ることが一般に受け入れられている。このような腫脹に進行する患者は、優位脳半球が関与する場合には典型的に20を超える、および非優位脳半球が関与する場合には15を超える、National Institute of Heath Stroke Score(NIHSS)を示す。他の実施例では、有意な腫脹を発症するまでに至るケースのほとんど(恐らく99%超)は、≧10のNIHSSを有する。NIHSSスコアが10を下回る患者は、生命を脅かす腫脹を発症する傾向がない。したがって、このような腫脹を発症するリスクが高い患者は、画像化またはスコアリング技術を使用して同定され得る。したがって、脳卒中または脳浮腫に関連する他の損傷もしくは状態を有する被験体は、少なくとも10のNational Institutes of
Health Stroke Scale(NIHSS)スコア、7もしくはそれ未満のAlberta Stroke Program Early CT Score(ASPECTS)、4もしくはそれ未満のAlberta Stroke Program
Early CT Score(ASPECTS)、70ccを超える磁気共鳴イメージング(MRI)拡散強調画像(DWI)、82ccを超える磁気共鳴イメージング(MRI)拡散強調画像(DWI)、145ccを超える磁気共鳴イメージング(MRI)拡散強調画像(DWI)、50ccを超えるCT灌流コア(CT perfusion core)、70
ccを超えるCT灌流コア、CT血管造影(もしくは他の手段)によって決定される側副循環の不良、中大脳動脈領域の少なくとも33%に及ぶ低密度を示すCTスキャン、および/または中大脳動脈領域の少なくとも50%に及ぶ低密度を示すCTスキャンからなる群から選択される少なくとも1つの因子を示す場合、重度の脳腫脹のリスクが高いと見なされ得る。一部の実施形態では、被験体は、10またはそれより大きいNIHSSを有するとまず評価され、次いで、上記で概説した他の方法の1つによって評価される。一部の実施形態では、被験体は、ASPECTSスコアが≦5、≦4、≦3、または≦2である場合にリスクが高いと見なされ得る。一部の実施形態では、被験体は、MRI DWIが82ccより大きい場合にリスクが高いと見なされ得る。
【0070】
特に、広範囲の大脳半球梗塞(LHI)に罹患している患者は、腫脹のリスクが特にある。これらの被験体は、典型的には、中大脳動脈領域の脳卒中を有し、MRI、DWI、または少なくとも約70cc、少なくとも約80cc、少なくとも約90cc、もしくは少なくとも約100ccのCT灌流を使用して放射線学的にさらに同定され得るか、あるいは、≦5、≦4、≦3、または≦2のASPECTSスコアを示し得る。LHIを有する被験体を処置する、本明細書で意図される方法において、一実施例では、被験体は約76歳未満または約71歳未満であり得る。さらに、少なくとも10のNational Institutes of Health Stroke Scale(NIHSS)を有する被験体は、薬物が脳卒中確認または最後の既知のインシデントの時間から10時間またはそれ未満に投与された場合、許容可能な結果を有し得る。9時間またはそれ未満の投与時間もまた、許容可能な結果をもたらし得る。これらの方法は、生存/死亡率、改変されたRankin Scale(完全順序尺度としての、および/または二分された)、バーセルインデックス、および/またはEuroQolを含む、1つまたは複数の臨床的に意味のあるエンドポイントの改善をもたらし得る。これらの改善は、脳卒中後約90日(または約3ヶ月)、約180日(または約6ヶ月)、および/または約12ヶ月(または1年)を含む1つまたは複数の時点で明らかであり得る。
【0071】
LHIを処置する方法に関連して、LHIを処置するための薬物を試験する方法もまた意図される。これらの方法に従って、18歳およびそれより上のLHI患者が放射線学的に選択され得、登録され得る。試験される被験体は、10またはそれより上のNIHSSを典型的には有し得、また、脳卒中または最後の既知のインシデントの時間の10時間以内またはそれ未満以内(またはさらには9時間またはそれ未満)に始まり、SUR1-TRPM4チャネル阻害剤または適合プラセボで処置され得、処置は最大約72時間続く。これらの方法は、生存/死亡率、改変されたRankin Scale(完全順序尺度としての、および/または二分された)、バーセルインデックス、および/またはEuroQolを含む、1つまたは複数の臨床的に意味のあるエンドポイントに対する、薬物群対プラセボ群における改善をもたらし得る。これらの評価は、脳卒中後約90日(または約3ヶ月)、約180日(または約6ヶ月)、および/または約12ヶ月(または1年)を含むように1つまたは複数の時点で行われ得る。
【0072】
以下の表1は、例示的な投薬スケジュールを示す。質量への言及は、薬物のみにおけるSUR1-TRPM4チャネル阻害剤に関するものである(プラセボの分はないことに留意されたい)。
【表1】
【0073】
アウトカムの評価において、被験体は≦70歳および>70歳の2つ年齢群に分けられ得る。統計的有意性は、スライディング二分法を提供する、比例オッズの仮定の下での順序ロジスティック回帰であるマン・ホイットニー検定(および類似の試験)などの、順序尺度を保持する分析を使用するmRSで、≦70歳の集団においてのみ評価される。成功は、<0.05の両側p値、または90%信頼区間が1をまたがないオッズ比の観点から定義される。>70の集団は記述的にのみ分析され、これは、順序ロジスティック回帰、またはmRSの二分化の個々の点に基づく1つもしくは複数のオッズ比(例えば、0~4対5~6、0~3対4~6、または0~2対3~6)を使用して誘導された共通オッズ比の点推定を記載することを含み得る。生存/死亡率もまた評価される。このようなオッズ比は薬物処置に有利であるべきであるが、1をまたぐ90%信頼区間を伴っていてよい。類似の点推定を、マン・ホイットニー検定(または類似の試験)によって実証されるあらゆる処置効果の方向および大きさを解明するために≦70の集団において用いることができる。計算されるオッズ比は、薬物に有利には、約1.1超、約1.2超であり、さらにより望ましくは1.3超である。
【0074】
SUR1-TRPM4チャネル阻害剤、投与型、投与速度、投与時間枠、初回投薬のための投与期間、基礎をなす状態、他の詳細などは、上記および本明細書のあらゆる箇所で論じた通りであり得る。
【0075】
さらに、グリブリドを被験体に安全に送達する方法は、グリブリドの1回または複数回の連続注入を被験体に投与すること、およびグリブリドの投与を続けながら肝臓酵素レベルを測定することを含み得る。一実施例では、投与は、CNS浮腫に関連する損傷または状態の後であり得るか、またはその結果としてであり得る。別の実施例では、このような方法はまた、CNS浮腫に関連する適応症以外の適応症へのグリブリドの投与のためのものであり得る。いずれのケースでも、これは、腎臓、肝臓、腸、または心臓を保護するために行われ得る。経口グリブリドの添付文書に従うと、グリブリドはアミノ基転移酵素を一時的に上昇させ得る。
【0076】
一部の場合では、本方法は、グリブリドを投与する前に被験体の肝臓酵素レベルを測定する先行するステップをさらに含む。これは、ベースラインの肝臓酵素レベルを確立するために行われ得る。本方法はまた、投与ステップを開始した特定の期間後に肝臓酵素レベルを測定することを含み得る。一部の実施形態では、被験体の肝臓酵素レベルは、4時間間隔、6時間間隔、8時間間隔、12時間間隔、24時間間隔などでモニタリングされ得る。あるいは、レベルは、約12時間、約24時間、約36時間、約48時間、約60時間、約72時間、約84時間、約96時間、約108時間、約120時間、約132時間、約154時間、約168時間、被験体が退院した日、またはその組合せに検査され得る。
【0077】
モニタリングは、様々な酵素を測定することを含み得る。一実施形態では、測定される肝臓酵素はアスパラギン酸アミノ基転移酵素(AST)である。別の実施形態では、測定される肝臓酵素はアラニンアミノ基転移酵素(ALT)である。別の実施形態では、肝臓酵素は間接ビリルビンおよび/または直接ビリルビンおよび/または総ビリルビンである。モニタリングは、同様に、被験体のAST値およびALT値の両方、またはALTおよびビリルビン、またはALT、AST、およびビリルビンを測定することを伴い得る。一実施形態では、グリブリドの投与は、被験体のALTまたはASTレベルが正常ALTまたはASTレベルの上限の約8倍より高く上昇すれば中止される。一実施形態では、SUR1-TRPM4チャネル阻害剤の投与は、投与担当の医師によって決定されるときに、被験体のALTまたはASTレベルが正常ALTまたはASTレベルの上限の約6倍より高く上昇すれば中止され得る。さらに別の実施形態では、グリブリドの投与は、投与担当の医師によって決定されるときに、被験体のALTまたはASTレベルが正常ALTまたはASTレベルの上限の約4倍より高く上昇すれば中止される。さらなる実施形態では、グリブリドの投与は、被験体が胆汁うっ滞性黄疸または肝炎を発症すれば中止され得る。これらの正確なレベルが何か、および何が継続処置の安全でないリスクを構成するかは、既存の酵素レベル、安全であると見なされるレベル、酵素レベルとCNS浮腫を処置することとの間の得失評価などに基づいて、医師によって決定され得る。一実施形態では、グリブリドの投与は、被験体の総ビリルビンレベルが正常の上限の約2倍より大きく上昇すれば中止され得る。
【0078】
投与型、投与速度、投与時間枠、初回投薬のための投与期間、基礎をなす状態、他の詳細などは、上記および本明細書のあらゆる箇所で論じた通りであり得る。
【0079】
別の実施例では、スルホニル尿素剤を被験体に投与する場合の心臓の活動をモニタリングする方法は、グリブリドの1回または複数回の連続注入を被験体に投与すること、および心電図を被験体に行って被験体の心臓をモニタリングすることを含み得る。一実施例では、投与は、CNS浮腫に関連する損傷または状態の後であり得るか、またはその結果としてであり得る。別の実施例では、このような方法はまた、CNS浮腫に関連する適応症以外の適応症へのグリブリドの投与のためのものであり得る。いずれのケースでも、これは、腎臓、肝臓、腸、または心臓を保護するために行われ得る。グリブリドを含むスルホニル尿素は、心臓死亡率(cardiac mortality)について黒枠警告を有する。さらに、経口グリブリドの研究は、これがQTc延長を引き起こし得ることを示した。
【0080】
一実施形態では、本方法は、グリブリドまたは別のスルホニル尿素剤を投与する前に心電図を被験体に行うことをさらに含み得る。さらに別の実施形態では、心電図を行うステップは、投与するステップを開始した特定の期間後に心電図を被験体に行うことを含む。心電図を行うための特定の期間は、約2から8時間離して、約4から6時間離して、約4~6時間目(注入開始後)、約24時間、約48時間、約60~72時間、約168時間、被験体が退院した日、またはその組合せであり得る。本方法は、被験体のQTcが、例えば少なくとも約10分、少なくとも約15分、または少なくとも約30分の期間にわたり≧約550ms、≧約600ms、≧約500ms、≧約475ms、または≧約450msであればグリブリド投与を中止することを含み得る。必要であれば、読み取りが正確であることを確実にするために、リード(lead)を再配置することができる。
【0081】
投与型、投与速度、投与時間枠、初回投薬のための投与期間、基礎をなす状態、他の詳細などは、上記および本明細書のあらゆる箇所で論じた通りであり得る。
【0082】
別の実施例では、グリブリドを被験体に送達する方法は、グリブリドを被験体に静脈内投与すること、ならびにグリブリドを被験体に静脈内投与している間の血中グルコース、肝臓酵素、およびQTcをモニタリングすることを含み得る。本明細書において記載される実施形態のいずれも、それに伴う詳細と共に、この実施例に適用可能であり得る。
【0083】
本明細書で論じる様々な方法に関して、言及するように、これらの方法は、CNS浮腫に関連する様々な損傷または状態に適用可能である。とは言え、これらの損傷または状態の全てが常にCNS浮腫をもたらすとは言えず、したがって、CNS浮腫を生じさせる「ことに関連し」得るか、または「リスクがある」と別の言い方ができる。この一例は脳卒中である。例えば、大脳半球の(中大脳動脈領域全体またはそれを超えて冒す)虚血性脳卒中に続発する空間占拠性脳浮腫は、頭蓋内高血圧および最終的な脳ヘルニアをもたらし得、その結果、有意な病的状態および死亡率をもたらす。この状態は通常、虚血性脳卒中の発病後2日目から5日目の間にそれ自体顕在化し、腫脹はインシデントの2から3日後にピークを迎える。これはさらに、それまで健康であった脳組織の破壊、ならびに、テント切痕ヘルニアまたは鉤回ヘルニア形成および脳死をもたらす広範囲な脳組織偏位を生じさせ得、したがって、このような合併症は、このような患者で見られる急速な神経学的増悪の原因となり得る。例えば、生命を脅かす腫脹は、入院中の虚血性脳卒中患者の最大8%および全ての中大脳動脈(MCA)脳卒中の最大15%で生じ得る。したがって、それが脳卒中から来ていても、CNS浮腫に関連する他の損傷または状態から来ていても、本開示の方法は、CNS浮腫を経験しているまたはCNS浮腫を経験するリスクがあるこのような被験体の多くに有利であり得る。
【0084】
本開示の実施形態を以下の実施例を参照して記載するが、この実施例は例示的な目的で提供されるにすぎず、本発明の範囲を限定するためまたは本発明を解釈するために使用されるべきではない。
【実施例】
【0085】
(実施例1)
広範囲の大脳半球梗塞におけるランダム化二重盲検プラセボ対照研究
細胞腫脹およびCNS浮腫または脳浮腫に関連する神経学的状態を低減するかまたは処置するためのSUR1-TRPM4チャネル阻害剤の有効性を決定するために、ランダム化二重盲検プラセボ対照臨床研究を行った。この臨床研究において、82ccから300ccの脳病変を有すると臨床医によって推定された83人の被験体を、グリブリドの試験薬物溶液またはプラセボ溶液のいずれかで、脳浮腫に関連する損傷または状態の約10時間以内に処置した。「パープロトコール」群のうち、77人の患者は82ccから300ccの脳病変を有すると中央で確認された。被験体のうち41人に試験薬物を投与し、36人の被験体にプラセボを投与した。試験薬物の投与は以下の通りであった:0.13mgのSUR1-TRPM4チャネル阻害剤のボーラスをおよそ2分にわたり投与し、その後、0.16mg/時間の連続注入を6時間投与し、次いで、0.11mg/時間の連続注入を66時間投与し、総投薬期間は72時間であった。1日目、2日目、および3日目の研究薬物の1日総用量は、それぞれ、3.12mg、2.67mg、および2.67mgであった。
【0086】
死亡率データ
個体の死亡数の発生(incidence of mortality)を、処置の30日後および90日後の両方で記録した。SUR1-TRPM4チャネル阻害剤の投与の結果による死亡率の低減を以下の表2に示し、
図1でグラフ化する。
【表2-1】
【表2-2】
【0087】
上記の表で見られるように、試験薬物群の被験体は、死亡のパーセンテージがおよそ半分超低かった。
【0088】
減圧開頭術(DC)データ
死亡率データは減圧開頭術(DC)を伴うおよび伴わない薬物およびプラセボ処置に関連していたため、さらなる死亡率データを回収した。基本的に、死亡数の発生を、研究期間が終わる前にDC後に死亡した研究参加者について記録した。DCありをDCなしと比較した場合の死亡数の発生を以下の表3に示し、
図2でグラフ化する。
【表3】
【0089】
表3で見られるように、この特定の研究では、最良の結果は、DC手順も受けた試験薬物群で達成されたが、これらの結果は、DC手順を受けなかった試験薬物群での結果よりもわずかに良いだけである。さらに詳細には、プラセボ群では、DC手順ありはDC手順なしと比較して有益であったが、両方とも試験薬物群(減圧開頭手術ありまたはなし)で見られたアウトカムよりも劣った。
図2は、パーセンテージの観点からの、表3で見られる生データ値を示す。減圧前の平均時間はこれらの数について説明しないことに留意されたい。なぜなら、それらは、これらのタイプの決定を行う担当の医師の判断およびある程度まではスケジュールに基づいて大きく変動し得るためである。後期神経学的増悪に起因して、2回の遅い減圧手術が行われたことにも留意されたい。これらの手術は、患者がさらに長い期間、例えば5日または7日にわたりSUR1-TRPM4チャネル阻害剤で処置されれば避けることができたかもしれないものである。
【0090】
mRSスコア
この研究における被験体はまた、改変されたRankin Scale(mRS)を使用して試験された。研究されたものなどの、広範囲の脳卒中におけるアウトカムを評価するための1つの方法は、脳卒中の90日後に0~4のmRSを有する各群内の患者のパーセンテージを決定することである。90日目のmRS研究の結果を以下の表4に示し、
図3でグラフ化する。
【表4】
【0091】
表4で見られるように、SUR1-TRPM4チャネル阻害剤を受けた被験体における0~4のmRSスコアの割合は、研究薬物を受けなかった個体のmRSスコアよりも平均で14.6%高かった。さらに、処置群におけるmRSの中央値は4であり、それに対し、プラセボでは中央値5であった。
【0092】
バーセルインデックス
バーセルインデックスは、脳卒中患者のアウトカムを評価するために使用され得る別の機能的アウトカムである。本研究の被験体はまた、最初に、および約90日に再び、バーセルインデックスを使用してスコア付けされた。バーセルインデックススコアの改善の程度を以下の表5に示し、
図4でグラフ化する。
【表5】
【0093】
表5で見られるように、バーセルインデックススコアは、プラセボ群よりも試験薬物群で優れていた。
【0094】
正中線偏位データ
本研究の被験体にはまた、72~96時間にMRIスキャンを行い、画像を得て、正中線偏位の低減の程度を観察した。低減パーセントの平均を以下の表6で示し、
図5でグラフ化する。
【表6】
【0095】
MRIスキャン画像に基づいて、正中線偏位の低減パーセント(または正中線偏位のより大きな低減)は、平均でプラセボ群よりも試験薬物群の個体で有利であった。低減パーセントは、72~96時間での各群の正中線偏位の中央値を比較することによって決定した。
【0096】
FLAIR比
FLAIR比(血液脳関門の妨害のMRI尺度)研究もまた行い、ここでは、研究被験体が、可能であれば、血管原性浮腫の低減を決定するために評価された。FLAIR比の結果を以下の表7に示し、
図6でグラフ化する。
【表7】
【0097】
この研究に基づいて、試験薬物群は平均して、プラセボ群よりも良好なパフォーマンスであった。低いFLAIR比は、血液脳関門の妨害が少ないことの指標である。
【0098】
MMPの破壊
さらに、血液試料に基づくMMP-9の値を研究参加者について24時間および72時間に得、次いで平均化した。MMP-9レベルは脳卒中後に上昇することが公知であり、血液脳関門機能障害を表すと考えられている。MMP-9の平均値を以下の表8に示し、
図7でグラフ化する。
【表8】
【0099】
この研究に基づいて、試験薬物群は平均して、プラセボ群よりも良好なパフォーマンスであった。
【0100】
血中グルコースのモニタリングおよび修正
a)二重盲検プラセボ対照研究の間、10重量%デキストロース溶液を受けた患者の1人で血中グルコースレベルが51mg/dLまで低下したことが記録され、検査室で確認された。この実施例では、グリブリド注入速度の用量は30%低減し、患者の血中グルコースレベルは安定化した。
b)二重盲検プラセボ対照研究の間、患者の1人はケアの時点で57mg/dLの血中グルコースレベルを有し、検査室での再試験では67mg/dLであった。この場合、患者はノーマルセーラインを投与されており、次いで5重量%デキストロースに変えられ、そこで患者の血中グルコースは安定化した。
【0101】
≦70歳の被験体における結果
処置の利益を受ける可能性が最も高い集団を同定する試みにおいて、異なる年齢群を分析し、虚血性脳卒中が高齢者の状態であると理解されているという事実にもかかわらず、驚くべきことに、有効性が≦70歳の集団でより著しいことが見出され、これは、生存/死亡率、mRS、バーセルインデックス、およびEuroQol-5Dを含む複数のエンドポイントで一致した。
【0102】
生存の改善
パープロトコール集団全体において、オッズ比(OR)は様々な時点で2.54から2.74の範囲であった。これらの結果は90日目またはそれ以降で統計的有意性をまさに超えており(オッズ比1は効果なしを示した)、したがって、一般的に全面的な改善を示す。しかし、≦70のパープロトコール集団では、結果は全ての時点で統計的に有意であり、3.41から3.79にわたる、より実質的なOR範囲を有していた。データを以下の表9に示す。
【表9-1】
【表9-2】
【0103】
死亡率は多因子性であり得、既存の併存症およびリスク因子などの因子に応じ得る。グリブリドの効果をさらに理解するために、本発明らが仮定した作用メカニズムに起因する生存利益を解明した。具体的には、死亡原因は、研究薬物群に盲検の3人の判定者によって決定された。イメージングおよび臨床データを使用して、他のアウトカムの中から死亡原因を決定した。決定された、パープロトコール群における浮腫に起因する死亡率は2.44%(1/41)対22.22%(8/36)であり、p=0.01(フィッシャーの正確確率両側検定のp)であることが分かった。本発明者らの提案した作用メカニズムと一致して、浮腫に起因する死亡率は、全体的な死亡率の減少の背後にある要因であった。
【0104】
mRSの改善
mRSは脳卒中後の全体的な能力障害を評価するものであり、90日に評価されるものは、急性脳卒中トライアルで一般に使用される、最も広く使用される主要アウトカムの尺度である。この尺度は、0(症候なし)から6(死亡)のスケールの、能力障害を評価する順序階層スケールを提供する。mRSは二分アウトカムとして分析されていることが多いが、このアプローチは効果を検出する能力を弱めることが多く、実際、正および負の効果の両方を不明瞭にすることが分かっている。逆に、順序分析は、mRSの全能力を保持し得、各移行を値付けすることにより、健康状態をより良く反映する。
【0105】
順序尺度としてのmRSでのプラセボアームと処置アームとの間の差の大きさは、マン・ホイットニー検定を使用して測定されることが多く、共通オッズ比(OR)は、効果量を調べるための比例オッズ方法論を使用して誘導され得る。これに従って、共通OR1.2は、臨床的に意味のある差を表す。パープロトコール集団における≦70の患者の効果量についてのORは2.49であったが、これはかなりの臨床効果を表す。
【表10】
【0106】
それほど統計的に有意ではないが、パープロトコール集団における≦70の患者における0~3および0~4の二分化での効果量はそれぞれ14%および22%であり、これは、最小の臨床的に意味のある効果量を大きく上回るものであり、mRSでのかなりの臨床効果を実証した。
【0107】
BIの改善
バーセルインデックス(BI)は、日常生活の活動の尺度である。これは脳卒中トライアルにおいて広く使用および承認されており、急性脳卒中で使用されている、より普及しているスケールの1つである。一実施例では、測定誤差を超える最小の臨床的に重要な変化は100ポイントスケールに対して約20ポイントであり、これを、この研究において基準値として使用した。≦70のパープロトコール集団で90日、6ヶ月、および12ヶ月に薬物およびプラセボの間で見られたデルタまたは差の中央値は、それぞれ35、27.5、および45であり、これらは全て、許容される閾値を超えていた。BIの一般的な解釈では、≦40のスコアは明らかに不良なアウトカムであると見なされ、一方、≧60のスコアは明らかに良好なアウトカムである。このトライアルで、プラセボ群のBIスコア中央値は、90日、6ヶ月、および12ヶ月で≦40(それぞれ25、32.5、および30)であり、一方、グリブリド群では、スコアは全ての時点で≧60(それぞれ60、60、および75)であった。12ヶ月でのこれらの結果も統計的に有意であった(p=0.03)。
【表11】
【0108】
EQ-5Dの改善
EuroQol-5D(EQ-5D)は、脳卒中を含む様々な状態におけるクオリティー・オブ・ライフを評価するために使用される包括的判定手段である。これは、価格決定および償還の議論をサポートする生活の質の調整年(QALY)の計算において費用対効果の情報を集めるために最も一般に使用される判定手段(instrument)である。これは、最も広く使用される、臨床研究で使用される健康関連生活の質の判定手段の1つである。脳卒中における最小の臨床的に重要な差は0.08~0.12単位であると報告されている(Kimら、2015年)。パープロトコール集団全体および≦70のパープロトコール
集団の両方で、薬物およびプラセボの間の差の中央値は、全ての時点で0.12より大きかった。6ヶ月および12ヶ月では、差は≦70の集団で統計的に有意であった。
【表12】
【0109】
処置のタイミング
血塊の除去および組織が死ぬ前の組織の再灌流に依拠する、虚血性脳卒中での血栓溶解療法とは異なり、抗浮腫療法はより広い時間枠を有するべきである。なぜなら、浮腫の進展が起源の傷害に対する二次応答の一部であるためである。このプロセスの最終的な影響である脳ヘルニアは、実際、損傷の2~3日後にピークを迎える。再灌流を介する組織温存よりも浮腫への作用に基づく、作用メカニズムに基づいて、時間重要度が脳卒中確認後の最初の数時間に明らかとなろうことを演繹的に予想する理由はない。驚くべきことに、しかし、本発明者らは、このような効果を観察した。
【0110】
順序ロジスティック回帰を使用して、パープロトコール集団全体におけるmRS分布を、(脳卒中確認から、または被験体が正常であると見られた最後の時間から)9時間またはそれ未満に薬物を受けた集団と比較し、オッズ比の増強(オッズ比1は効果なしを示す)という形で処置効果の増強が実現されたことが観察された。死亡率(生存)に対する効果も、ロジスティック回帰を使用する分析において、同様に増強した。したがって、9時間またはそれ未満の薬物処置は、驚くべきことに、状態の自然な経過におけるこの時点では時間重要度の期待がないという事実にもかかわらず、優れているようである。
【表13】
【0111】
広範囲の大脳半球梗塞への特異性
浮腫は多くの異なる状態の一部に関与し、通常は虚血性脳卒中に関与するが、虚血性脳卒中における浮腫処置の臨床的効果は、ある程度の体積の梗塞に対してゼロまで最小化され得る。この研究のデータを使用して、その下ではアウトカムが薬物処置の影響を受けない閾値病変サイズを決定することができた。より具体的には、この分析で、mRSの「シフト」を、病変サイズの増加の関数として評価した。改変された治療意図(intent-to-treat)集団を、最も広い病変サイズ分布を含めるために利用した。ベースラインのDWI
病変サイズ(中央で決定された)における各10ccの増加を、プラセボ群における0.88のORと関連付け(p=0.026)、これは、病変サイズがアウトカムに関する負の予後変数であるという先の所見を裏付けるものである。処置および病変サイズの間の相互作用はOR1.09(p=0.244)をもたらし、これは、病変範囲が大きいほど処置効果が大きいこと、例えばDWIサイズが10cc増加する毎にmRSの「シフト」が1.09倍増加することを示した。約100ccの「ゼロ効果」の病変範囲を外挿することによって、薬物はより小さな病変を有する患者において有意に機能すると予想され得ず、このことは、これらの患者が臨床的に意味のある浮腫を発症する可能性がそもそも低いという事実と一致する。より大きな浮腫を有するより大きな病変は、より劇的な結果をもたらし得る。この概念を
図8に視覚的に表し、この図では、「ゼロ効果」は、1であるmRSシフトのORによって示される。この場合、約100cc未満ではシフトはなかった。より具体的には、≦100ccのベースライン病変を有する患者では、ORは1.00であると計算され(p=0.99)、例えば、100cc未満の病変における薬物の効果は最小から効果なしであり、このことは、相互作用分析の所見を裏付けられた。
【0112】
(実施例2)
外傷性脳損傷におけるランダム化二重盲検プラセボ対照研究
TBIにおける浮腫に対する代表的なSUR1-TRPM4チャネル阻害剤としてのグリブリドの効果を評価するために、二重盲検プラセボ対照研究を、CTスキャンで出血を有する中度のまたは重度のTBI(グラスゴー・コーマ・スケール・スコア4~12)または軽度のTBI(GCS13~14)を有する29人の被験体を伴って、3箇所の臨床現場で行った。試験薬物の投与は以下の通りであった:0.13mgのSUR1-TRPM4チャネル阻害剤のボーラスをおよそ2分にわたり投与し、その後、0.16mg/時間で6時間連続注入し、次いで、0.11mg/時間で66時間連続注入し、総投薬時間は72時間であった。1日目、2日目、および3日目の研究薬物の1日総用量は、それぞれ、3.12mg、2.67mg、および2.67mgであった。全ての被験体を、ベースラインおよび72時間にMRIスキャンによって評価した。
【0113】
ベースラインで病変血液(すなわち、挫傷に関連する血液)のエビデンスを有すると同定され、ベースラインおよび72時間の両方でMRIスキャンをされた14の被験体(7人の薬物および7人のプラセボ)を、MIMソフトウェアバージョン5.6を使用して浮腫について評価した。盲検の読み取り者(reader)は、取り損なわない限り、T2画像を使用して、見かけの挫傷全体のx、y、z測定値を解明し、取り損なったケースではDTI画像を使用した。確実に測定され得た(少なくとも約1ccの測定)挫傷のみを測定した。読み取り者はまた、SWI画像を使用して類似の様式で出血の体積測定値を解明した。線状の測定値はセンチメートル(cm)でキャプチャし、全ての体積は立方センチメートル(cc)でキャプチャした。体積は、ABC/2標準を使用して計算した。見かけの浮腫の体積を、見かけの挫傷体積全体および出血体積の間の差として計算した。分析では、複数の病変があれば、閾値を満たす全ての病変の体積を組み合わせた。
【0114】
ベースラインの薬物群は、より大きい平均浮腫体積(プラセボでの2.12mlに対し8.72ml、4倍の差)、グラスゴー・コーマ・スケール(GCS、プラセボでの7.67に対し6.14)の運動ドメイン平均および眼ドメイン平均によって測定されるところの、より悪い臨床的特徴、ならびに挿管率(プラセボでの7のうち3に対して7のうち5)を有していた。これにもかかわらず、薬物群はベースラインから72時間まで浮腫の進展をあまり示さず(プラセボでの10.28倍の成長に対し2.14倍の成長)、180日目での拡張グラスゴー・コーマ・スケールスコア(GOSE、プラセボでの6.17に対し6)の平均で差がなかった。これらのデータから、プラセボよりも、ベースラインで臨床的プロファイルがより重度であり、浮腫が4倍高いにもかかわらず、薬物は浮腫の増殖または成長を実質的に低減させ、プラセボ群と同一の臨床的アウトカムをもたらしたと結論付けることができる。病変のない被験体または病変を有さない脳の区域において、薬物関係の効果が検出されなかったが、このことは、薬物の効果が、驚くべきことに、浮腫特異的ではないが、しかし病変に関連する浮腫に特異的であることを示す。
【0115】
したがって、確実に測定され得(およそ0.5ccまたはそれより大きい)、かつ、GCSまたはその個々の構成要素(運動、眼、言語)などのベースラインの臨床的特徴に関してバランスが取れ得る、放射線学的に定義された(例えば、CTまたはMRI)病変を有するとベースラインで同定された被験体のみからなる研究において、薬物群が、プラセボよりも薬物に有利な少なくとも4%の最小効果量を有するGOSEまたは少なくとも1.2のオッズ比などのスケールで改善された臨床アウトカムをもたらし得ることが予想され得る。
【0116】
(実施例3)
血中グルコースの制御
本明細書において記載されるプロトコールに従って静脈内SUR1-TRPM4阻害剤で処置された被験体は、モニタリングおよびグルコース制御され得る。モニタリングおよび処置は、一実施例では、以下のように実施され得る:
最初の24時間では1時間(±30分)毎、
25時間目から48時間目は2時間(±30分)毎、および
その後4時間(±60分)毎。
【0117】
血中グルコースが約70mg/dL未満まで低下すると、モニタリング頻度は、血中グルコースが外因性グルコース補充を行わずに3回の連続的な読み取りで80またはそれより大きくなるまで、15分(±10分)毎まで増やされる。
【0118】
薬物が中断および再開される場合、血中グルコースは、約3時間(±30分)にわたり1時間毎に測定される。グルコースが不要であれば、モニタリングは、それまでの頻度(例えば、約1、2、または4時間)まで戻される。
【0119】
血中グルコースはさらに、静脈内SUR1-TRPM4阻害剤で処置された被験体において、以下のように制御され得る:
- ベースラインの血中グルコースが100mg/dL未満であれば、70から100cc/時間の速度の、ノーマルセーライン中の約5重量%デキストロース(D5NS)である最初の維持液が投与され得る。
- 血中グルコースが約100mg/dLを下回れば、D5NSは、70から100cc/時間の速度で開始される。IV流体速度の上昇または低下の用量設定を使用して、血中グルコースを約80mg/dLより上に維持することができる。
- 血中グルコースが80mg/dL未満であれば、D5NSが開始され得るか、または、D5NSが既に投与されていれば、被験体をノーマルセーライン中の約10重量%デキストロース(D10NS)に切り替えることができる。
- 血中グルコースが急速または連続的に低下する傾向があれば、D5NSが開始されるか、またはD5NSが既に投与されていれば、被験体をD10NSに切り替えることができる。
- 血中グルコースが約140mg/dLより高い事象では、D5NSまたはD10NSは投与されない。
- あらゆる確認された約70mg/dL未満の血中グルコースは、水中の50重量%デキストロース(D50W)の約50mLアンプルで処置され得る。D50Wが入手できなければ、別の濃度のデキストロース流体が、同量のデキストロースを達成するために十分な体積で使用され得る。
【0120】
上記のプロトコールまたはその類似の変型のいずれかは、医薬品に関連する様々な文書に記載されている可能性がある。この文書には、限定はしないが、プロトコール、統計分析プラン、治験薬概要書、臨床的ガイドライン、薬剤ガイド、リスク評価および仲介プログラム、処方情報、ならびに医薬品に関連し得る他の文書が含まれ得る。このような文書は、SUR1-TRPM4チャネル阻害剤医薬品と共に、キットとして、有益となるべく、または規制当局が規定しているように、物理的に包装され得ることが具体的に意図される。
【0121】
本開示をある特定の実施例に関して記載してきたが、当業者には、様々な修正、変更、省略、および置き換えが本開示の趣旨から逸脱することなく行われ得ることが理解されよう。したがって、本開示は、以下の特許請求の範囲によってのみ限定されることが意図される。