(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】ストロークセンサとこれを備えたストロークセンサ組立体
(51)【国際特許分類】
G01B 7/00 20060101AFI20241125BHJP
G01D 5/12 20060101ALI20241125BHJP
【FI】
G01B7/00 101H
G01D5/12 H
(21)【出願番号】P 2023032431
(22)【出願日】2023-03-03
【審査請求日】2024-02-20
(31)【優先権主張番号】P 2022185841
(32)【優先日】2022-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 啓史
(72)【発明者】
【氏名】加藤 達也
【審査官】山▲崎▼ 和子
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-165803(JP,U)
【文献】特開2019-049492(JP,A)
【文献】特開2016-109538(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0390751(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 7/00-7/34
G01D 5/00-5/252
5/39-5/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線運動する移動体の位置を検出するストロークセンサであって、
磁界発生体と、
前記磁界発生体を支持する支持部と、
前記磁界発生体が発生する磁界を検出する磁界検出素子と、を有し、
前記支持部は、前記移動体の前記磁界検出素子に対する第1の相対移動を、前記磁界発生体の前記磁界検出素子に対する第2の相対移動に変換し、
前記第1の相対移動は第1の直線経路に沿って行われ、前記第2の相対移動は第2の直線経路に沿って行われ、前記第2の直線経路は前記第1の直線経路と異なる角度で延びる、ストロークセンサ。
【請求項2】
前記第2の直線経路は前記第1の直線経路より短い、請求項1に記載のストロークセンサ。
【請求項3】
前記移動体は前記支持部を案内する案内経路を有し、前記支持部は前記案内経路に沿って、前記移動体に対して相対移動する、請求項1に記載のストロークセンサ。
【請求項4】
前記磁界検出素子を備える素子搭載部を有し、
前記素子搭載部は前記第2の直線経路を有し、前記支持部は前記第2の直線経路に沿って、前記磁界検出素子に対して相対移動する、請求項3に記載のストロークセンサ。
【請求項5】
前記案内経路はスリットまたは溝であり、
前記支持部は前記スリットまたは前記溝に嵌合する第1のガイド部を有する、請求項4に記載のストロークセンサ。
【請求項6】
前記支持部に収容された弾性部材をさらに有し、
前記案内経路は平面部を有し、
前記支持部は、
前記弾性部材によって前記平面部に対して付勢される第1のガイド部を有する、請求項4に記載のストロークセンサ。
【請求項7】
前記弾性部材の弾性変形軸は前記第2の直線経路と平行である、請求項6に記載のストロークセンサ。
【請求項8】
前記第2の直線経路は溝であり、
前記支持部は前記溝に嵌合する第2のガイド部を有する、請求項4に記載のストロークセンサ。
【請求項9】
前記案内経路の、前記移動体の通常移動範囲に対応する対応区間は直線状である、請求項3に記載のストロークセンサ。
【請求項10】
前記案内経路は、前記対応区間の外側で前記対応区間に接続された少なくとも一つの付加区間を有し、前記少なくとも一つの付加区間は、前記対応区間の端部を始点として前記第1の直線経路と平行な方向に延びる、請求項9に記載のストロークセンサ。
【請求項11】
前記案内経路は、前記対応区間の外側で前記対応区間に接続された少なくとも一つの付加区間を有し、前記少なくとも一つの付加区間は、前記対応区間の端部を始点として、前記第1の直線経路と平行で前記対応区間の中心を通る直線から離れる方向に延びる、請求項9に記載のストロークセンサ。
【請求項12】
前記案内経路は前記案内経路の両端間を直線状に延びる、請求項11に記載のストロークセンサ。
【請求項13】
前記付加区間の幅は前記対応区間の幅と概ね同じである、請求項10に記載のストロークセンサ。
【請求項14】
前記第1の直線経路またはその延長線と、前記第2の直線経路またはその延長線とは直交している、請求項1に記載のストロークセンサ。
【請求項15】
前記案内経路の前記対応区間または前記対応区間の延長線と、前記第2の直線経路または前記第2の直線経路の延長線とは直交している、請求項9に記載のストロークセンサ。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか1項に記載のストロークセンサと、
前記移動体と、を有するストロークセンサ組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はストロークセンサとこれを備えたストロークセンサ組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
直線運動する移動体の位置を検出するストロークセンサが知られている。特許文献1には、磁界検出素子と、移動体に間隔をおいて取り付けられた複数の磁石と、を有するストロークセンサが開示されている。移動体が移動することで、複数の磁石が磁界検出素子の位置において発生させる磁界が変化する。磁界検出素子はこの磁界の変化を検出することによって、複数の磁石の磁界検出素子に対する相対位置、すなわち移動体の位置を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されたストロークセンサでは、複数の磁石が間隔を置いて設けられているため、移動体の移動範囲が広い場合磁石の間隔が広がる。これによって、複数の磁石が発生する磁界の強度が不足し、移動体の位置検出性能が低下することがある。磁界強度を上げることで移動体の位置検出性能の低下を抑制することは可能であるが、磁石の大型化や保磁力の高い磁性材料の使用などが必要となり、磁石及びストロークセンサのコストが増加する可能性がある。
【0005】
本発明は、移動範囲の大きい移動体の位置検出性能を確保することが可能で、コストが抑えられたストロークセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のストロークセンサは、直線運動する移動体の位置を検出する。ストロークセンサは、磁界発生体と、磁界発生体を支持する支持部と、磁界発生体が発生する磁界を検出する磁界検出素子と、を有する。支持部は、移動体の磁界検出素子に対する第1の相対移動を、磁界発生体の磁界検出素子に対する第2の相対移動に変換する。第1の相対移動は第1の直線経路に沿って行われ、第2の相対移動は第2の直線経路に沿って行われ、第2の直線経路は第1の直線経路と異なる角度で延びる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、移動範囲の大きい移動体の位置検出性能を確保することが可能で、コストが抑えられたストロークセンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るストロークセンサ組立体の概略斜視図である。
【
図2】
図1に示すストロークセンサ組立体と、移動体の収容体と、を示す概略斜視図である。
【
図3】
図1に示すストロークセンサ組立体の支持部と素子搭載部の概略断面図である。
【
図4】
図1に示すストロークセンサ組立体におけるストロークセンサと移動体の相対移動を示す概念図である。
【
図5】
図1に示すストロークセンサ組立体におけるストロークセンサと移動体の相対移動を示す概念図である。
【
図6】
図1に示すストロークセンサ組立体における第1及び第2の直線経路と案内経路を示す概念図である。
【
図7】比較例のストロークセンサ組立体における第1及び第2の直線経路と案内経路を示す概念図である。
【
図8】
図1に示すストロークセンサ組立体における移動体の位置とセンサ出力の関係を示すグラフの一例である。
【
図9】本発明の変形例に係るストロークセンサ組立体の支持部と素子搭載部の概略断面図である。
【
図10】本発明の他の変形例に係るストロークセンサ組立体におけるストロークセンサと移動体の相対移動を示す概念図である。
【
図11】
図10に示すストロークセンサ組立体における第1及び第2の直線経路と案内経路を示す概念図である。
【
図12】本発明の他の変形例に係るストロークセンサ組立体の支持部と素子搭載部の概略断面図である。
【
図13】
図12に示すストロークセンサ組立体の支持部と素子搭載部の概略断面図である。
【
図14】
図12に示すストロークセンサ組立体の支持部の相対移動を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下図面を参照して、本発明のストロークセンサ組立体とストロークセンサの実施形態について説明する。本実施形態のストロークセンサ組立体1とストロークセンサ3は用途が限定されるものではなく、自動車、二輪車などの車両、産業機械などに適用することができ、特に、移動範囲の大きい移動体の位置検出に好適に適用可能である。以下の説明及び図面において、X方向は移動体2の移動方向、Y方向は案内経路P3が設置される面と直交する方向であり、X方向と直交している。Z方向はX方向及びY方向と直交する方向である。以下の説明において相対移動という用語を用いるが、2つの部材のどちらが移動するかは文脈で判断される。例えば、部材Aが部材Bに対して相対移動するという記載は、部材Aが固定されている場合は、部材Bが移動すると解釈され、部材Bが固定されている場合は、部材Aが移動すると解釈される。
【0010】
(第1の実施形態)
図1はストロークセンサ組立体1の概略斜視図を、
図2はストロークセンサ組立体1とその収容体4の概略斜視図を示している。ストロークセンサ組立体1は、直線運動する移動体2と、移動体2の位置を検出するストロークセンサ3と、を有している。
図2に示すように、移動体2はハウジングなどの収容体4に収容され、収容体4の内部をX方向にスライドすることができる。すなわち、移動体2はX方向と平行な第1の直線経路P1を有し、移動体2は第1の直線経路P1に沿ってX方向に移動する。収容体4は車両や機械の本体(図示せず)に固定されている。第1の直線経路P1は移動体2のX方向の中心線C1と概ね一致する。移動体2の一端2Aは収容体4の外部に設けられ、駆動手段(図示せず)と連結されている。ストロークセンサ3は大部分が収容体4の外部に設けられている。移動体2のストロークセンサ3と対向する面にスリット6を備えた案内板5が固定され、後述するように、ストロークセンサ3はスリット6によって移動体2と接続されている。
【0011】
図3はストロークセンサ3の概略断面図を示す。ストロークセンサ3は、2つの磁界発生体10A,10Bを支持する支持部7と、磁界検出素子12を備える素子搭載部11と、を有する。磁界発生体10A,10Bは磁石であり、磁界検出素子12と対向する面の磁極が互いに逆向き(すなわち、一方がN極で、他方がS極)となっている。磁界発生体10A,10Bはヨーク16と接続されている。ヨーク16は、磁界発生体10A,10Bの磁束密度を高め、磁界発生体10A,10Bのサイズの増加を抑制する機能を有する。磁石の数は2つに限定されず、3つ以上の磁石を配置することもできる。3つ以上の磁石を配置する場合、3つ以上の磁石は互いに隣接する磁石の磁極が互いに逆向きとなるように配置される。また、一つの磁石だけを設けることもできる。この場合磁石の着磁方向はY方向、Z方向のいずれでもよい。
【0012】
支持部7は樹脂や非磁性の金属からなり、支持部7と磁界発生体10A,10Bは嵌合、接着、インサート成形などの適宜の方法で一体化されている。あるいは、支持部7と磁界発生体10A,10Bを、プラスチックマグネットを用いて一体形成してもよい。支持部7は概ねT字型の形状を有している。支持部7は、スリット6と嵌合しスリット6に案内される第1のガイド部8と、素子搭載部11の溝14に嵌合する第2のガイド部9と、を有している。第1のガイド部8は概ね円筒状の部材である。第2のガイド部9は溝14と同一の断面形状を有し、X方向に細長い形状を有している(
図5)が、第2のガイド部9の形状は限定されない。
【0013】
素子搭載部11は樹脂や非磁性の金属からなり、収容体4に固定されている。素子搭載部11は車両や機械の本体(図示せず)に固定されていてもよい。素子搭載部11は概ね直方体である。素子搭載部11は第2のガイド部9を案内する溝14を有している。溝14は、第1の直線経路P1(
図6参照)と異なる角度で延びる第2の直線経路P2(
図6参照)を構成する。溝14は素子搭載部11の互いに対向する2つの面と平行に設けられているので、素子搭載部11の容積の増加が抑えられる。本実施形態では、第1の直線経路P1(移動体2の移動経路)またはその延長線と、第2の直線経路P2(溝14の延びる経路)またはその延長線とは直交している。すなわち、溝14はZ方向に延びている。支持部7は溝14を介して、素子搭載部11ないし磁界検出素子12に対して、Z方向に相対移動することが可能である。
【0014】
磁界検出素子12は磁界発生体10A,10Bが発生する磁界を検出する。磁界検出素子12の構成は特に限定されず、磁気抵抗効果素子(例えばAMR素子、TMR素子、GMR素子)やホール素子を用いることができる。磁界検出素子12は基板13に搭載され、基板13を通じて外部との信号の授受を行う。磁界検出素子12は、磁界発生体10A,10Bによって形成されるY方向の磁界とZ方向の磁界を検出し、これらの合成磁界のなす角度から磁界発生体10A,10Bに対する相対位置を検出する。
【0015】
図4は移動体2(案内板5)がストロークセンサ3に対して相対移動する様子を示している。ストロークセンサ3は固定された位置にある。
図4(A)では、ストロークセンサ3がスリット6の対応区間S2(
図6参照)の右端に位置し、
図4(B)ではストロークセンサ3がスリット6の対応区間S2の中央部に位置し、
図4(C)ではストロークセンサ3がスリット6の対応区間S2の左端に位置している。
図5は
図4と同様の図であるが、便宜上移動体2が固定され、ストロークセンサ3が移動するように描いている。
図6(a)は
図5を模式化した図であり、第1及び第2の直線経路P1,P2と案内経路P3を、これらの中心線によって示している。
【0016】
上述のように、移動体2はスリット6を有している。スリット6は支持部7を案内する案内経路P3を構成し、支持部7はスリット6に沿って、移動体2に対して相対移動する。通常時、移動体2は特定の範囲(以下、通常移動範囲S1という)をX方向に移動する。従って、支持部7の第1のガイド部8は、通常移動範囲S1に対応する区間(以下、対応区間S2という)でスリット6と係合する。後述するように、スリット6は対応区間S2の外側に付加区間S4を備えているが、通常時に第1のガイド部8が付加区間S4に侵入することはない。対応区間S2において、案内経路P3はX-Z面をX軸から若干傾斜した方向に直線状に延びている。案内経路P3は直線に限定されず例えば正弦波状であってもよいが、スリット6の加工コストの観点から直線状が好ましい。移動体2の通常移動範囲S1はストロークセンサ組立体1の適用例によって異なるが、小さな場合数十mm、大きな場合は数百mmである。スリット6の幅はその全長で一定であり、第1のガイド部8の直径よりやや大きい値に設定される。
【0017】
ストロークセンサ3は以下のように作動する。まず、移動体2がX方向に移動するとする。ストロークセンサ3の素子搭載部11は固定されているので、移動体2のX方向への移動は素子搭載部11ないし磁界検出素子12に対するX方向の相対移動と等価である。この相対移動を第1の相対移動という。移動体2の第1の相対移動は、X軸と平行な第1の直線経路P1に沿って行われる。
【0018】
ストロークセンサ3の支持部7ないし磁界発生体10A,10Bは移動体2に対し、スリット6に沿って相対移動する。つまり、ストロークセンサ3の支持部7は移動体2に対してX方向とZ方向の2方向に相対移動する。しかし、支持部7ないし磁界発生体10A,10Bは素子搭載部11の溝14によってX方向に拘束されているので、素子搭載部11ないし磁界検出素子12に対してはZ方向だけに相対移動する。この相対移動を第2の相対移動という。第2の相対移動は第2の直線経路P2に沿って行われる。このように、支持部7は、移動体2の磁界検出素子12に対する第1の相対移動を、磁界発生体10A,10Bの磁界検出素子12に対する第2の相対移動に変換する。
【0019】
第2の直線経路P2は第1の直線経路P1より短い。L1を第1の直線経路P1に沿った移動体2の通常移動範囲S1の長さ、L2を第2の直線経路P2のL1に対応する長さ、すなわち移動体2の通常移動時における、支持部7の第2の直線経路P2に沿った移動範囲の長さとすると、L1>L2である。比率L2/L1は、第1の直線経路P1と案内経路P3の対応区間S2とがなす角度をθとしたときにtanθに等しい。
【0020】
仮に第1の直線経路P1に沿って磁界検出素子12と磁界発生体10A,10Bを設けた場合、第1の直線経路P1に沿った通常移動範囲S1の全域で必要な磁界強度を得るために、磁界発生体10A,10Bの磁界強度を上げることが必要となる。しかし、このことは磁界発生体10A,10Bの大型化やストロークセンサ3のコスト増加につながる。本実施形態では第1の直線経路P1が第2の直線経路P2に変換されるため、磁界発生体10A,10Bの移動範囲が短縮され、磁界発生体10A,10Bの大型化やストロークセンサ3のコスト増加を抑制することができる。一方、長さL2が短かすぎると、ストロークセンサ3の分解能が低下するため、長さL2は適切な範囲に設定することが好ましい。比率L2/L1は角度θによって調整可能である。
【0021】
案内経路P3は、移動体2の対応区間S2の外側で対応区間S2に接続された少なくとも一つの付加区間S4を有している。本実施形態では、対応区間S2の両側に付加区間S4が設けられている。2つの付加区間S4の長さは同一であるが、異なっていてもよい。第1の経路にも、通常移動範囲S1の両側に付加区間S4に対応する区間S3が設けられている。通常移動範囲S1と2つの区間S3を合わせた区間は、移動体2が物理的に移動可能な範囲に相当する。
【0022】
付加区間S4は対応区間S2の外側に設けられるため、通常は支持部7の第1のガイド部8が付加区間S4に侵入することはない。しかし、第1のガイド部8が何らかの理由で対応区間S2の外側に移動した場合、付加区間S4がないと第1のガイド部8やスリット6が破損する可能性がある。また、ストロークセンサ3の製造時にも、検査や調整などの目的で第1のガイド部8を対応区間S2の外側まで移動させる可能性がある。これらの場合に、付加区間S4は第1のガイド部8を収容することができる。第1のガイド部8が作動時や製造時に、対応区間S2の一方の外側だけに移動する可能性が高い場合などは、付加区間S4は対応区間S2の片側だけに設けてもよい。
【0023】
付加区間S4は、対応区間S2の端部を始点として第1の直線経路P1と平行な方向に延びている。
図7は比較例の付加区間S4を示している。第1の直線経路P1と平行で対応区間S2の重心ないし中心を通る直線を基準直線C2(
図5参照。
図7においてはP1と一致する)とすると、付加区間S4は対応区間S2の端部から基準直線C2に近づく方向に延びている。移動体2は通常移動範囲S1の任意の位置に停止する可能性があるが、その後移動体2が移動すれば磁界検出素子12に印加される磁界が変化するため、移動体2の移動方向を知ることができる。しかし、移動体2が通常移動範囲S1の端部に停止した後に移動した場合、移動体2がどちらの方向に移動しても、支持部7は同じ方向に(基準直線C2に向かう方向に)移動する。この結果、磁界発生体10A,10Bも同じ方向に移動するので、磁界検出素子12は移動体2の移動方向を検出することができない。
【0024】
本実施形態では、移動体2が通常移動範囲S1の端部から通常移動範囲S1の内部に移動した場合は、磁界発生体10A,10Bが磁界検出素子12に対して移動する。従って、磁界検出素子12が検出する磁界が変化する。これに対し、移動体2が通常移動範囲S1の端部から通常移動範囲S1の外部に移動した場合は、支持部7は案内経路P3に沿ってX方向に平行移動する。磁界発生体10A,10Bが磁界検出素子12に対して相対移動しないため、磁界検出素子12が検出する磁界は一定である。これらの違いに基づき移動体2の移動方向を検出することができる。
【0025】
このことから理解できるように、付加区間S4は対応区間S2の端部を始点として基準直線C2に近づく方向に延びていなければよいので、基準直線C2から離れる方向に延びていてもよい。例えば、
図6(b)に示すように、付加区間S4は対応区間S2の延長線と一致していてもよい。この場合、スリット6は両端間で直線状となるため、加工が容易である。また、移動体2が通常移動範囲S1の端部から通常移動範囲S1の内部に移動した場合と外部に移動した場合とでは、磁界検出素子12が検出する磁界が異なるので、本変形例においても移動体2の移動方向を検出することができる。
【0026】
スリット6の幅はその全長に渡って一定であることが好ましい。すなわち、付加区間S4の幅は対応区間S2の幅と概ね同じであることが好ましい。付加区間S4の幅が対応区間S2の幅より大きいと、付加区間S4の内部で第1のガイド部8のZ方向の位置が安定せず、上述したのと同様の課題が発生する可能性がある。
【0027】
図8は本実施形態におけるストロークセンサ3の位置検出特性、即ち移動体2の位置とセンサ出力の関係を計算した結果の一例を示している。移動体2の位置とセンサ出力の関係はほぼリニアであり、良好な特性が得られた。なお、線形性はセンサ出力を補正することで改善することができるため、センサ出力の線形性が多少悪くても大きな問題とはならない。
【0028】
本発明の実施形態について説明したが、本発明のこの実施形態に限定されない。例えば、案内経路P3はスリット6に限定されない。
図9は本実施形態の変形例を示している。案内経路P3は溝15である。すなわち、案内経路P3は案内板5の厚さ方向の途中で終端している。図示は省略するが、案内経路P3はレールのような細長い突起でもよい。あるいは、複数の案内経路P3を設けることもできる。
【0029】
図10,11は案内経路P3の他の構成を示している。
図10は
図5に対応し、
図11は
図6に対応している。案内経路P3の対応区間S2または対応区間S2の延長線と、第2の直線経路P2’または第2の直線経路P2’の延長線とは直交している。これによって第1の実施形態よりも第2の直線経路P2’を長くすることができる。具体的には、L2’を第2の直線経路P2’のL1に対応する長さ、すなわち移動体2の通常移動時における、支持部7の第2の直線経路P2’に沿った移動範囲の長さとすると、L2’>L2となる。これによって、第1の実施形態と比べてストロークセンサ3の分解能を高めることができる。
【0030】
図12~14は本実施形態の他の変形例を示している。
図12は
図3に対応する図で、X方向からみたストロークセンサ3の概略断面を示している。
図13は
図12のA-A線に沿った断面図で、Y方向からみたストロークセンサ3の概略断面を示している。
図13にはスリット6を併せて示している。
図13を参照すると、第2のガイド部9は磁界発生体10A,10Bを支持する部分のY方向側方に弾性部材21の収容部22を有している。収容部22は第1の環状溝23を有している。素子搭載部11は第1の環状溝23と対向する第2の環状溝24を有している。第1の環状溝23と第2の環状溝24にはコイルばねからなる弾性部材21の両端部が支持されている。弾性部材21は固定部である第2の環状溝24に支持され、可動部である第1の環状溝23の底部に弾性力を加える。この結果、支持部7には常に-Z方向の力が掛けられる。換言すれば、弾性部材21は第1のガイド部8をスリット6に対して-Z方向に付勢する。
【0031】
図13に第1のガイド部8とスリット6の位置関係を示す。図では誇張して示しているが、第1のガイド部8とスリット6との間にはギャップGが設けられている。第1のガイド部8はスリット6に嵌合するため、製作誤差を考慮するとギャップGを無くすことは困難である。第1のガイド部8はスリット6に対して双方向(+Z方向及び-Z方向)に相対移動する。仮に弾性部材21の付勢力がないと、第1のガイド部8はスリット6の+X方向への移動に伴い、スリット6の一方の面6Bに当接しながら+Z方向へ移動する。また、弾性部材21の付勢力がないと、第1のガイド部8はスリット6の-X方向への移動に伴い、スリット6の他方の面6Aに当接しながら-Z方向へ移動する。この結果、第1のガイド部8がスリット6に対しX方向のある特定の相対位置にあるとき、第1のガイド部8のスリット6に対するZ方向の相対位置は、移動方向によってギャップGの分だけずれることになる。これにより、第1のガイド部8のX方向の位置とZ方向の位置との関係は一対一でなく、ヒステリシスを描く。ヒステリシスはストロークセンサ3の誤差の一因となる。また、第1のガイド部8はストロークセンサ3を取り付けた車両等で振動や衝撃が発生した際にスリット6に衝突して振動や衝撃を受けるため、長時間使用する際にストロークセンサ3の故障の一因ともなる。
【0032】
図14にストロークセンサ組立体1の支持部7の相対移動を示している。
図14(a)では支持部7は溝14の一端側にあり、
図14(b)では支持部7は溝14の中間にあり、
図14(c)では支持部7は溝14の他端側にある。弾性部材21は支持部7のZ方向の全移動範囲に渡り圧縮されている(-Z方向の付勢力を生じる)。支持部7が溝14のどの位置にあっても、弾性部材21が第1のガイド部8をスリット6に対して-Z方向に付勢するため、第1のガイド部8の移動方向によらず、第1のガイド部8はスリット6の同じ面に当接する。従って、上述したヒステリシスの発生が抑制される。
【0033】
本変形例では第1のガイド部8はスリット6の面6Bのみに当接するため(
図13参照)、スリット6の面6Aは省略することができる。例えば、
図14において、案内板5の半部5Aは省略可能で、半部5Bだけ設ければ十分である。この場合、案内板5は
図1に示すような矩形ではなく、例えば当該矩形をその対角線で分割して得られる三角形のような形状でもよいので、物量の低減が可能となる。つまり、本変形例では、案内経路P3はスリット6または溝15でもよいが、少なくとも第1のガイド部8が当接する平面部(本変形例ではスロープ状の面6B)を有していればよい。
【0034】
第1の環状溝23の中心線と第2の環状溝24の中心線はZ方向に延びる一つの直線上にあることが好ましい。換言すれば、弾性部材21の弾性変形軸、すなわちコイルばねの中心軸は第2の直線経路P2(Z方向)と平行であることが好ましい。これによって、第1のガイド部8がスリット6に対して摺動する際の摩擦力を低減することができる。本変形例では案内経路がスリット6である例を示したが、案内経路が溝であっても同様の構成が可能である。
【0035】
(付記)本明細書は以下の開示を含む。
[構成1]
直線運動する移動体の位置を検出するストロークセンサであって、
磁界発生体と、
前記磁界発生体を支持する支持部と、
前記磁界発生体が発生する磁界を検出する磁界検出素子と、を有し、
前記支持部は、前記移動体の前記磁界検出素子に対する第1の相対移動を、前記磁界発生体の前記磁界検出素子に対する第2の相対移動に変換し、
前記第1の相対移動は第1の直線経路に沿って行われ、前記第2の相対移動は第2の直線経路に沿って行われ、前記第2の直線経路は前記第1の直線経路と異なる角度で延びる、ストロークセンサ。
[構成2]
前記第2の直線経路は前記第1の直線経路より短い、構成1に記載のストロークセンサ。
[構成3]
前記移動体は前記支持部を案内する案内経路を有し、前記支持部は前記案内経路に沿って、前記移動体に対して相対移動する、構成1または2に記載のストロークセンサ。
[構成4]
前記磁界検出素子を備える素子搭載部を有し、
前記素子搭載部は前記第2の直線経路を有し、前記支持部は前記第2の直線経路に沿って、前記磁界検出素子に対して相対移動する、構成3に記載のストロークセンサ。
[構成5]
前記案内経路はスリットまたは溝であり、
前記支持部は前記スリットまたは前記溝に嵌合する第1のガイド部を有する、構成4に記載のストロークセンサ。
[構成6]
前記案内経路は平面部を有し、
前記支持部は、前記第1のガイド部を前記平面部に対して付勢する弾性部材を有する、構成4に記載のストロークセンサ。
[構成7]
前記弾性部材の弾性変形軸は前記第2の直線経路と平行である、構成6に記載のストロークセンサ。
[構成8]
前記第2の直線経路は溝であり、
前記支持部は前記溝に嵌合する第2のガイド部を有する、構成4から7のいずれか1項に記載のストロークセンサ。
[構成9]
前記案内経路の、前記移動体の通常移動範囲に対応する対応区間は直線状である、構成3から8のいずれか1項に記載のストロークセンサ。
[構成10]
前記案内経路は、前記対応区間の外側で前記対応区間に接続された少なくとも一つの付加区間を有し、前記少なくとも一つの付加区間は、前記対応区間の端部を始点として前記第1の直線経路と平行な方向に延びる、構成9に記載のストロークセンサ。
[構成11]
前記案内経路は、前記対応区間の外側で前記対応区間に接続された少なくとも一つの付加区間を有し、前記少なくとも一つの付加区間は、前記対応区間の端部を始点として、前記第1の直線経路と平行で前記対応区間の中心を通る直線から離れる方向に延びる、構成9に記載のストロークセンサ。
[構成12]
前記付加区間は前記対応区間の延長線と一致する、構成11に記載のストロークセンサ。
[構成13]
前記付加区間の幅は前記対応区間の幅と概ね同じである、構成10から12のいずれか1項に記載のストロークセンサ。
[構成14]
前記第1の直線経路またはその延長線と、前記第2の直線経路またはその延長線とは直交している、構成1から13のいずれか1項に記載のストロークセンサ。
[構成15]
前記案内経路の前記対応区間または前記対応区間の延長線と、前記第2の直線経路または前記第2の直線経路の延長線とは直交している、構成9から13のいずれか1項に記載のストロークセンサ。
[構成16]
構成1から15のいずれか1項に記載のストロークセンサと、
前記移動体と、を有するストロークセンサ組立体。
【符号の説明】
【0036】
1 ストロークセンサ組立体
2 移動体
3 ストロークセンサ
6 スリット
7 支持部
8 第1のガイド部
9 第2のガイド部
10A,10B 磁界発生体
11 素子搭載部
12 磁界検出素子
14 溝
P1 第1の直線経路
P2,P2’ 第2の直線経路
P3 案内経路
S1 通常移動範囲
S2 対応区間
S4 付加区間