(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】統合された制御回路を備えるアプリケータ
(51)【国際特許分類】
B05B 12/04 20060101AFI20241125BHJP
B05B 12/00 20180101ALI20241125BHJP
【FI】
B05B12/04
B05B12/00 A
(21)【出願番号】P 2023075655
(22)【出願日】2023-05-01
(62)【分割の表示】P 2020517790の分割
【原出願日】2018-09-20
【審査請求日】2023-05-16
(31)【優先権主張番号】102017122492.0
(32)【優先日】2017-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】504389784
【氏名又は名称】デュール システムズ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】Durr Systems AG
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(72)【発明者】
【氏名】フリッツ、ハンス-ゲオルク
(72)【発明者】
【氏名】ヴェーア、ベンヤミン
(72)【発明者】
【氏名】クライナー、マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ブベック、モーリッツ
(72)【発明者】
【氏名】ベイル、ティモ
(72)【発明者】
【氏名】ヘルレ、フランク
(72)【発明者】
【氏名】ゾツニー、シュテッフェン
(72)【発明者】
【氏名】タンドラー、ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ベルント、トビアス
(72)【発明者】
【氏名】ガイガー、アンドレアス
【審査官】吉田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】特公昭49-022536(JP,B1)
【文献】特開2011-179647(JP,A)
【文献】特開2009-014184(JP,A)
【文献】特開2017-154135(JP,A)
【文献】特開平10-096480(JP,A)
【文献】特表2011-522352(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 12/04
B05B 12/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティング剤を部品に塗布するためのアプリケータ(1)であって、
a)前記コーティング剤をコーティング剤ジェットの形態で塗布するための複数のノズル、
b)個々の前記ノズルを通る前記コーティング剤の放出を制御するための複数のコーティング剤バルブ(2)、
c)前記コーティング剤バルブ(2)を制御するための複数の電気的に制御可能なアクチュエータ(L)、及び、
d)前記アクチュエータ(L)を電気的に駆動するための制御回路(5、6)であって
、
該制御回路(5、6)は、
d1)前記制御回路(5、6)は、前記アプリケータ(1)のハウジング内に統合され、及び/又は、
d2)前記制御回路(5、6)は、前記アプリケータ(1)
の接続フランジ内に統合されており、
統合された該制御回路(5、6)は、前記アクチュエータ(L)を駆動するためのパワーエレクトロニクス(5)を含む制御回路(5、6)、
を備え、
e)前記アクチュエータ(L)は、それぞれコイル(L)を有する電磁アクチュエータ(L)である、
f)前記パワーエレクトロニクス(5)は、起動電流(IS)で関連する前記コーティング剤バルブを開くために、前記アクチュエータ(L)の1つの前記コイル(L)を駆動する、及び、
g)前記パワーエレクトロニクス(5)は、保持電流(IH)で前記アクチュエータ(L)の1つの前記コイル(L)を駆動して、既に開かれている関連する前記コーティング剤バルブを保持し、前記保持電流(IH)は、前記起動電流(IS)と比べて小さい、
アプリケータ(1)であって、
a)統合された前記制御回路(5、6)は、プリントヘッド論理部(6)も備える、
b)前記プリントヘッド論理部(6)は、前記パワーエレクトロニクス(5)の出力側に接続される、
c)前記プリントヘッド論理部(6)は、ロボット制御部(8)及び/又はグラフィックモジュール(7)の入力側に接続される、
d)前記ロボット制御部(8)は、前記部品上をプログラム制御された方法で前記アプリケータ(1)を動かすコーティングロボットを制御し、前記ロボット制御部(8)は、ロボット制御データを前記プリントヘッド論理部(6)に伝える、
e)前記グラフィックモジュール(7)は、予め定められたグラフィックに従い前記アクチュエータ(L)のためにスイッチングパターンを特定し、それらを前記プリントヘッド論理部(6)に伝える、及び、
f)前記プリントヘッド論理部(6)は、前記ロボット制御データの機能として及び前記スイッチングパターンに応じて、前記パワーエレクトロニクス(5)を制御し、
前記プリントヘッド論理部(6)は、以下の:
a)前記ロボット制御部(8)との通信のための通信インターフェース、
b)前記グラフィックモジュール(7)から供給される前記スイッチングパターンを論理的に処理するための第1の論理ユニット、
c)前記グラフィックモジュール(7)から供給される前記スイッチングパターンを前記ロボット制御部(8)と同期させるための同期装置、及び、
d)様々な前記アクチュエータ(L)のための個々のチャンネルの正確な同期を達成するために、前記アクチュエータに(L)対する制御チェーンにおける誤差を補正するための第2の論理ユニット、
を備える、
ことを特徴とするアプリケータ(1)。
【請求項2】
a)前記パワーエレクトロニクス(5)は、300mm以下のライン長さを備えるライン(4)を介して前記アクチュエータ(L)に接続される、及び/又は、
b)前記パワーエレクトロニクス(5)は、6V~96Vの範囲の電圧で前記アクチュエータ(L)を駆動する、及び/又は、
c)前記パワーエレクトロニクス(5)は、0.01A~10Aの範囲の電流が個々の前記アクチュエータ(L)を流れるように、個々の前記アクチュエータ(L)を駆動する、及び/又は、
d)前記パワーエレクトロニクス(5)は、可変デューティサイクルのパルス幅変調、周波数変調又は別の変調で前記アクチュエータ(L)を駆動する、
ことを特徴とする請求項1に記載のアプリケータ(1)。
【請求項3】
a)第1のコイル接続部(9)で、前記コイル(L)は、スイッチング状態に関わらず、恒久的に接地される、又は供給電圧(DC)に恒久的に接続される、
b)第2のコイル接続部(10)で、前記コイル(L)は、制御可能なスイッチング素子(S)を介して接地される、又は供給電圧(DC)に接続される、及び/又は、
c)フリーホイールダイオード(D)は、前記コイル(L)と並列に接続される、
ことを特徴とする請求項1
又は2に記載のアプリケータ(1)。
【請求項4】
a)第1のコイル接続部(9)で、前記コイル(L)は、第1の制御可能なスイッチング素子(S1)を介して供給電圧(DC)に接続される、及び、
b)第2のコイル接続部(10)で、前記コイル(L)は、第2の制御可能なスイッチング素子(S2)を介して接地される、
ことを特徴とする請求項1
又は2に記載のアプリケータ(1)。
【請求項5】
a)前記第2のコイル接続部(10)で、前記コイル(L)は、第2のフリーホイールダイオード(D2)を介して、又は第3の制御可能なスイッチング素子(S4)を介して前記供給電圧(DC)に接続される、及び/又は、
b)前記第1のコイル接続部(9)で、前記コイル(L)は、第1のフリーホイールダイオード(D1)を介して、又は第4の制御可能なスイッチング素子(S3)を介して接地される、
ことを特徴とする請求項
4に記載のアプリケータ(1)。
【請求項6】
前記アプリケータ(1)は、防爆性である、
ことを特徴とする請求項1乃至
5のいずれか1項に記載のアプリケータ(1)。
【請求項7】
コーティングロボットであって、
請求項1乃至
6のいずれか1項に記載のアプリケータ(1)を備える、
ことを特徴とするコーティングロボット。
【請求項8】
前記コーティング剤を、前記部品に塗布するためのコーティング設備であって、
a)請求項
7に記載のコーティングロボット、
b)前記コーティングロボットのプログラム制御のための前記ロボット制御部(8)、及び、
c)予め定められたグラフィックに従って前記アクチュエータ(L)のためのスイッチングパターンを特定するための前記グラフィックモジュール(7)、
を備える、
ことを特徴とするコーティング設備。
【請求項9】
前記ロボット制御部(8)と前記プリントヘッド論理部(6)との間の少なくとも1つのケーブルを有し、
前記ケーブルは、以下の接続:
a)前記アクチュエータ(L)のための電源電圧供給、
b)前記プリントヘッド論理部(6)及び/又は前記パワーエレクトロニクス(5)のための制御電圧供給、
c)等電位化、及び、
d)前記ロボット制御部(8)への接続のための通信接続、
を備える、
ことを特徴とする請求項
8に記載のコーティング設備。
【請求項10】
前記ケーブルはハイブリッドケーブルであり、
a)前記ケーブルの全てのワイヤは、共通の保護シース下にある、及び/又は、
b)いくつかの機能は、共通のケーブルワイヤを共有する、
ことを特徴とする請求項
9に記載のコーティング設備。
【請求項11】
a)前記ロボット制御部(8)、前記グラフィックモジュール(7)、及び/又は前記プリントヘッド論理部(6)のための前記アプリケータ(1)での前記接続は、取り外し可能であり、及び/又は、
b)前記アプリケータ(1)での前記接続は、以下の:
b1)前記アプリケータ(1)のハウジング内、
b2)前記アプリケータ(1)の接続フランジ内、
b3)前記アプリケータ(1)の前記ハウジングの外、又は、
b4)前記アプリケータ(1)の接続フランジの外、
に配置される、
ことを特徴とする請求項
8乃至
10のいずれか1項に記載のコーティング設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティング剤(例えば、塗料)を部品(例えば、自動車車体部品又は自動車車体部品の追加部品)に塗布するためのアプリケータ(例えば、プリントヘッド)に関連する。
【背景技術】
【0002】
最新技術のドロップオンデマンド型プリントヘッド(例えば、特許文献1)が知られており、この操作原理は、電磁バルブの使用に基づく。磁気ピストン(バルブニードル)がコイル内でガイドされ、電流供給によってコイル内に運ばれる。これは、バルブ開口を開放し、開時間に応じて、流体(例えば、インク)を液滴として、又は様々なサイズの「ジェット部」として、放出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第9108424号明細書
【文献】米国特許出願公開第2002/0030707号明細書
【文献】独国特許出願公開第102012006371号明細書
【文献】欧州特許出願公開第1821016号明細書
【文献】国際公開第2010/046064号
【非特許文献】
【0004】
【文献】Applikationshandbuch Leistungshalbleiter, ISBN 978-3-938843-85-7
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
最新技術のプリントヘッドでは、パワーエレクトロニクスと、プリントヘッド論理部とは、プリントヘッドの外部に取り付けられる。パワーエレクトロニクスは、電磁バルブの操作に必要とされる電圧と電流とを生成するために使用され、一方、プリントヘッド論理部は、与えられたパターンに従って、ロボット制御部と同期して、個々の電磁バルブのスイッチング時間を決定するために使用される。
【0006】
多くの場合において、プリントヘッドは、固定されたホルダに固定され、塗装される(コーティングされる)対象物は、プリントヘッドを通過するようガイドされる。もしくは、プリントヘッドは線形ユニット上に搭載され、塗装される対象がプリントヘッド下をガイドされる間、プリントヘッドは線形ユニットによって線形に前後に移動する。これは、単純なモーションシーケンスの結果となる。しかしながら、プリントヘッドが、6軸又は7軸ロボットに搭載される場合、モーションシーケンスは非常に複雑になる。これは、バルブコイルを制御するための所望のプリントイメージ(タイムシーケンス)から得られるパターンにも影響する。
【0007】
プリントヘッドが、多数の(>5、>10、>20、>50)電気コイルを含む場合、所望のプリントイメージを生成するために、それぞれのコイルは個別に制御されなければならない。各コイルには、少なくとも1つのワイヤが、場合により複数のワイヤが、並びに場合によっては、制御ラインに質量又は電圧を供給するための共通線が、必要である。アクチュエータから生成されるべき力がより大きくなると、コイルをより大きく、より強く設計しなければならず、それに応じて要求される電流が多くなるために、個々のワイヤのケーブル断面積を、より大きくしなければならない。総ケーブル断面積は、ワイヤの数に従って増加する。ケーブルバンドルは、制御回路から又はパワーエレクトロニクスから、プリントヘッドまで配線しなければならない。
【0008】
静止しているプリントヘッドの場合、又はわずかにだけ移動可能な(例えば、直線軸上で)プリントヘッド及び移動する対象物の場合、注目に値するいくつかの欠点のみがある。しかしながら、プリントヘッドが多軸ロボット(6軸、7軸、n軸)に搭載される場合、ケーブルバンドルは、固定された制御回路から、ロボットのアームを通って、特に手軸を通って配線されなければならない。手軸の捻れ角は非常に大きく、且つ高速度及び高加速度により、大きな力がこれらのケーブルにかかることがある。これにより、このような適用に好適である高い柔軟性を備える特別なケーブルが必要となる。しかし、正確にはこの柔軟性は、限られた数のワイヤ、又はケーブルの限られた全体の直径までしか実現できない。加えて、より大きなケーブル断面は、ロボットの動きを制限する又は妨げることがある。ケーブルが手軸を通って配置される場合、限られた空間だけが利用可能(手軸の断面)であり、その空間は他のケーブル(コーティング剤、空気、溶剤)によって占有されることがある。
【0009】
更には、制御部とプリントヘッド内の電磁バルブとの間のケーブル長に問題がある。ケーブル長がより長くなると、追加のオーミック抵抗、追加のインダクタンス及び追加の電気容量を生じる。これは、一方では電力損失につながり、他方では時間的な影響につながり、最も単純な場合では、パワーエレクトロニクス又は制御論理によって補正しなければならず、修正が不可能な場合は、機能の損失に至る。修正ができる場合であっても、システムの試運転時には、各プリントヘッドごとに、又は各バルブの取付ごとに個別に実施しなければならない。一方、これは、(修正)パラメータを決定するための多大な労力を要し、他方で、システムの耐用年数(例えば、経年劣化、環境の影響又は部品の交換)にわたって変化するというリスクがある。
【0010】
バルブが、高速スイッチング操作モードで操作されている場合、長いラインは、EMCエミッション(EMC:電磁両立性(electromagnetic compatibility))にもつながり、EMCエミッションは、外部に影響を与え、他の装置に干渉し、並びに他のチャンネルに負の内部影響を与える。加えて、他のソースからの外部干渉は、長いラインで、プリントヘッドシステムにも誘導されることがあり、故障につながることがある。
【0011】
最後に重要なことは、多くの長くて動くラインは、ワイヤ自身で、又は必要なプラグインで、又は接点で遮断の影響を受けやすい。そのような遮断は、一方ではアプリケーションの問題につながり、他方では高いコストでしか故障診断できない。加えて、電磁アクチュエータを備えるプリントヘッドへの長い供給ラインは、防爆に関し、安全上のリスクをもたらす。コイルを流れる大電流では、コイルのインダクタンスによって供給ラインが遮断されると、高電圧のピークが生ずることがある。これらは、例えば、火花放電によって着火源として作用する可能性がある。ロボット内で、特にロボット手軸内で、前後に動く長い供給ラインは、ケーブルが破損するリスクを増加させる。
【0012】
従来の(塗装)ロボットを制御するため、特定のサイクルタイム(例えば、8ms、4ms、2ms、1ms)を有するロボット制御部が使用される。これらは、これらに接続されているアクチュエータに、直接又はバスシステムを介してコマンドを送ることができ、所望の塗布結果を達成することができる。達成可能な最小解像度は、ロボットのサイクルタイムと移動速度とによって定義される。原則として、これらのサイクルタイムは、プリントヘッドで望まれる(塗布)精度を達成するには不十分である。
【0013】
グラフィックを塗布するためには、個々のバルブを、ロボット制御部で可能なサイクル比よりも短い間隔で、スイッチをオン、オフしなければならない。例えば、0.1mmの所望の塗布解像度及び1000mm/sの最大ロボットパス速度について、最大100μsのサイクルタイムが必要である。
【0014】
従って、ロボット制御部より何倍も速くアクチュエータを制御することができる別個のプリントヘッド制御部を使用する必要がある。このプリントヘッド制御部には、アクチュエータをスイッチングするための情報がロボット制御部から供給され、ロボット制御部によるトリガーの後、個別に、これを処理する。
【0015】
図1は、コーティング部品(例えば、自動車車体部品又は自動車車体部品の追加部品)をコーティングするためのプリントヘッド1を備える従来のコーティング設備の概略図を示す。プリントヘッド1は、狭く限定されたコーティング剤のジェットを吐出するための複数のノズルを含み、それにより、ノズルからのコーティング剤の吐出は、複数の電磁バルブ2によって制御される。
【0016】
プリントヘッド1の制御は、マルチワイヤケーブル4によってプリントヘッド1に接続されたプリントヘッド制御部3によってなされる。ケーブル4におけるワイヤの数は、プリントヘッド1における電磁バルブ2の数に依存し、多数の電磁バルブ2では、ケーブル4は比較的厚くなり、従って柔軟性のない形となる。
【0017】
一方、プリンヘッド制御部3は、電磁バルブ2を制御するために必要な電圧と電流とを提供するパワーエレクトロニクス5を含む。
【0018】
一方、プリントヘッド制御部3は、電磁バルブ2のためのスイッチング時間を決定し、それに従ってパワーエレクトロニクス5を制御するプリントヘッド論理部6も含む。
【0019】
入力側では、プリントヘッド論理部6は、一方でグラフィックモジュール7に接続され、他方でロボット制御部8に接続される。図に示されているRPC及びRCMPの略語は、「ロボット及びプロセス制御(Robot and Process Control)」及び「ロボット制御モジュールパネル(Robot Control Modular Panel)」の用語を表す。
【0020】
グラフィックモジュール7は、プリントヘッド1によって部品(例えば、自動車車体部品)に塗布されるべき特定のグラフィックを指定し、それにより、グラフィックモジュール7によって指定されたグラフィックは、電磁バルブ2のスイッチング時間を決定する。その後、プリントヘッド論理部6は、グラフィックモジュール7によって指定されたグラフィックに応じてスイッチングポイントを決定する。
【0021】
ロボット制御部8は、コーティングされるべき部品(例えば、自動車車体部品)上で、プリントヘッド1をガイドする多軸コーティングロボットを制御する。対応するロボット制御データは、ロボット制御部8からプリントヘッド論理部6に送信される。例えば、これらのロボット制御データは、プリントヘッド1の位置及び方向を含み、又は少なくともプリントヘッド1の位置及び方向をロボット制御データから誘導することができる。次に、プリントヘッド論理部は、ロボット制御部8によって供給されるロボット制御データを考慮に入れ、グラフィックモジュール7により特定されたグラフィックに基づき、電磁バルブ2のためのスイッチング時間を決定し、ロボットの動作と同期させることができる。
【0022】
しかしながら、この周知の配置は、冒頭に詳細に説明した欠点を有する。
【0023】
本発明の一般的な背景技術に関して、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5及び非特許文献1も参照されるべきである。
【0024】
従って、本発明は、対応して改善されたアプリケータ(例えば、プリントヘッド)を作成するという課題に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0025】
この課題は、主請求項に係り本発明に係るアプリケータ(例えば、プリントヘッド)によって解決される。
【0026】
本発明に係るアプリケータ(例えば、プリントヘッド)は、コーティング剤の塗布のために一般に適している。従って、本発明は、塗布されるコーティング剤の種類に関して、特定のコーティング剤に限定されない。しかしながら、好ましくは、プリントヘッドは、塗料の塗布のために設計される。代わりに、コーティング剤は、例えば、車体の継ぎ目を封止するための接着剤又は封止材とすることが可能である。それゆえ、本発明に係るアプリケータは、接着剤アプリケータとして、又は封止材アプリケータとしても設計可能である。
【0027】
本発明に係るプリントヘッドは、コーティング剤(例えば、塗料)を特定の部品に塗布するために一般に適していることにも言及すべきである。コーティングされる部品の種類に関して、本発明も限定されない。しかしながら、好ましくは、本発明に係るプリントヘッドは、コーティング剤(例えば、塗料)を、自動車車体部品又は自動車車体部品の追加部品に塗布するために設計される。
【0028】
最新技術に従い、本発明に係るアプリケータは、コーティング剤ジェットの形態で、コーティング剤を塗布するための複数のノズルを第一に有する。それゆえ、各ノズルは、個別に制御可能なコーティング剤のジェットを放出する。
【0029】
ここで、本発明に係るプリントヘッドは、ノズルからコーティング剤のスプレーコーンを放出するのではなく、むしろ、小さなジェットの広がりだけを伴う空間的に限定されたジェットを放出することに言及すべきである。空間的に限られたコーティング剤のジェットを放出するのではなくコーティング剤のスプレーコーンを放出するアトマイザ(例えば、ロータリーアトマイザ、エアアトマイザ等)と、本発明に係るプリントヘッドと、は異なる。
【0030】
個々のコーティング剤ジェットは、空間的に分離されたコーティング剤の液滴からなり、その結果、コーティング剤ジェットは、液滴ジェットとしても説明され得る。代わりに、コーティング剤ジェットは、ジェットの長軸方向に連続することも可能である。
【0031】
加えて、最新技術に従い、本発明に係るアプリケータは、個々のノズルを通るコーティング剤の放出を制御するための複数のコーティング剤バルブを有する。
【0032】
これらのコーティング剤バルブは、従来、複数の電気的に制御可能なアクチュエータ(例えば、磁気アクチュエータ)によって制御することができ、結果として、アクチュエータの電気的な制御は、ノズルを通るコーティング剤の放出を制御する。しかしながら、本発明は、アクチュエータの動作の技術的な物理的原理に関して、磁気アクチュエータに限定されず、ほんの一例であるが、ピエゾ電子アクチュエータなどの他のアクチュエータの種類を用いても実現できる。
【0033】
ここで、アクチュエータの電気的制御のための制御回路がプリントヘッドに統合されるという事実によって、本発明に係るアプリケータは、最新技術とは区別される。これは、上述する最新技術の問題を回避することができるため、有利である。
【0034】
アプリケータ(例えば、プリントヘッド)へ制御回路を統合することで、制御回路とアクチュエータとの間のケーブルの長さを短くすることが可能となり、それにより、妨害となるインダクタンスと静電容量が減少する。
【0035】
加えて、アプリケータ(例えば、プリントヘッド)へ制御回路を統合することで、ケーブル長さが短くなることにより、EMCエミッションが減少し、外部EMCエミッションへの感受性低下にもつながる。
【0036】
更には、制御回路とアクチュエータとの間のケーブルが短くなることで、遮断への感受性も少なくなる。
【0037】
更には、制御回路とアクチュエータとの間のケーブルが短くなることで、コーティングバルブのより高いサイクル比、又はより短いスイッチング時間が可能となる。
【0038】
制御回路をプリントヘッドに統合することによって、ライン内に要求されるワイヤの数を著しく減少させることができるだけでなく、交差する部分も減少させることができる。従来の方法における制御キャビネット内に制御回路を組み込む場合では、多くの場合にプリントヘッドまでの10m~50mの範囲の距離がブリッジされなければならない。アンペア範囲のバルブコイルに求められる電流には、ライン損失を最小化するために、特定の断面積が必要である。この断面積は、それぞれのコイルごとに提供されなければならない。一方、パワーエレクトロニクスがプリントヘッドに統合された場合、通常のコイル電圧(例えば、12V)と比べて高いパワーエレクトロニクスの供給電圧(例えば、48V)を選択することによって、電流を最小化することができる。一方、同時よりもむしろわずかにずらして個々のコイルを交互に制御することで、電流を更に減少させることができる。これは、統合された制御論理の高いクロック速度で実現することができる。このため、塗布解像度から要求されるよりも更に高いクロック速度が必要である。
【0039】
例えば、統合された制御回路は、アクチュエータを制御するためのパワーエレクトロニクスを含むことができる。これは、パワーエレクトロニクスが、アクチュエータを操作するために必要な電圧及び電流を提供することを意味する。
【0040】
アプリケータにパワーエレクトロニクスを統合することによって、パワーエレクトロニクスとアクチュエータとの間のラインを短くすることが可能となり、それによって、ライン長さを、例えば、最大300mm、最大200mm、最大100mm、又は最大50mm、又は更には最大10mmとすることができる。ボーダーラインの場合、パワーエレクトロニクスをアクチュエータ上に直接搭載することもできる。
【0041】
パワーエレクトロニクスは、好ましくは6V~96Vの範囲、特に12V~48Vの範囲の電圧で、アクチュエータを駆動することにも言及すべきである。
【0042】
電流が、個々のアクチュエータを好ましくは0.01A~10Aの範囲で、特に0.25~5A又は0.05~1Aの範囲で流れるように、アクチュエータはパワーエレクトロニクスによって制御される。
【0043】
パワーエレクトロニクスは、好ましくは、アクチュエータを、可変可能なデューティサイクルで、パルス幅変調方式(PWM)で制御する。しかしながら、本発明は、使用する変調の種類に関して、パルス幅変調に限られず、別の種類の変調を用いて実施することもできる。
【0044】
加えて、統合された制御回路は、上述するプリントヘッド論理部も含むことができる。プリントヘッド論理部は、出力側のパワーエレクトロニクスに接続され、プリントヘッドの個々のコーティング剤バルブのスイッチング時間を決定する。入力側では、プリントヘッド論理部が、ロボット制御部及び/又はグラフィックモジュールに接続される。
【0045】
ロボット制御部は、コーティングロボットを制御し、コーティングロボットは、プログラム制御下において部品上でプリントヘッドを動かし、それにより、ロボット制御部は、対応するロボット制御データをプリントヘッド論理部に伝え、その結果、プリントヘッド論理部は、ロボット制御データに基づき、個々のコーティング剤バルブのためのスイッチングポイントを決定する。例えば、ロボット制御データは、プリントヘッドの位置及び向きを反映することができる。代わりに、プリントヘッド論理部が、ロボット制御データのみから、プリントヘッドの位置及び向きを誘導することも可能である。
【0046】
一方、グラフィックモジュールは、部品に塗布されるべき予め定められたグラフィックに従い、アクチュエータのためのスイッチングパターンを定義する。次に、これらのスイッチングパターンは、グラフィックモジュールからプリントヘッド論理部へと送信される。
【0047】
次に、プリントヘッド論理部は、ロボット制御データに基づき、及び/又はグラフィックモジュールのスイッチングパターンに基づきスイッチングポイントを決定し、それに従いパワーエレクトロニクスを制御する。
【0048】
プリントヘッド論理部は、アクチュエータの制御を介して、アクチュエータニードルに接続されたノズルの開閉処理を制御する。開閉処理は、上位ユニットで生成されるプログラムによって指定される。各バルブの状態(開又は閉)は、塗布されるべき表面を基準にしたロボットの位置ごとに、このプログラム内に保存される。
【0049】
プリントヘッドは、コーティング剤をジェットの形態で連続的に噴出する、又は液滴の形態でコーティング剤を噴出することが可能である。後者の場合、プリントヘッドがコーティングされる領域上をロボットによってガイドされている間、制御部は、ノズルを高周波数(例えば、10Hz~2000Hz、100Hz~10000Hz)で開閉する。
【0050】
従って、プリントヘッド論理部は、好ましくは、以下の部品又はアセンブリ:
-ロボット制御部との通信用の通信インターフェース、
-グラフィックモジュールから供給されるスイッチングパターンの論理処理のための第1の論理ユニット、
-グラフィックモジュールから供給されるスイッチングパターンを、ロボット制御部と同期させるための同期装置、及び/又は、
-様々なアクチュエータのための個々のチャンネルの正確な同期を達成するために、アクチュエータへの制御チェーンの誤差を補正するための第2の論理ユニット、
のうち少なくとも1つを有する。
【0051】
良好な塗布結果のため、プリントヘッド制御部が、ロボットの位置に対応して、バルブを正確にスイッチすることが重要である。この目的のため、制御回路は、ロボット制御部のサイクルと同期し、指定されたバルブプログラムが実行される時に、それによってトリガーされる。
【0052】
個々のバルブは、異なる特性を有することがあるため(例えば、製造誤差による)、制御回路は、各バルブを個別に制御することによって、これらを補正する機構を含む。制御回路をアプリケータ(例えば、プリントヘッド)に統合することで、完全にテスト及びパラメータ化できるユニットとなる。これにより、ユーザは、プリントヘッドをあるロボットから別のロボットへと容易に変更することが可能となる。
【0053】
本発明の1つの形態において、アクチュエータは電磁アクチュエータであり、それぞれコイルを備える。コイルに適用される電流に応じ、次にアーマチュアは、コイル内で動き、それにより、アーマチュアは直接的に又は間接的にバルブニードルに作用する。コーティング剤バルブを開けるため、パワーエレクトロニクスは、比較的高い起動電流で問題のアクチュエータのコイルを制御する。開いた後、コーティングバルブを開いた状態で維持するため、パワーエレクトロニクスは、アクチュエータを、起動電流よりも低いより低い保持電流で駆動しなければならないだけである。
【0054】
アクチュエータがそれぞれ1つのコイルを備える電磁アクチュエータとして設計される場合、スイッチング状態に関係なく、第1のコイル接続で、コイルは好ましくは恒久的に接地される又は供給電圧に恒久的に接続され、更に第2のコイル接続は、制御可能なスイッチング素子を介して接地される又は供給電圧に接続される。コイルをスイッチングするための制御可能なスイッチング素子は、プラス側(「ハイサイド」)又はマイナス側(「ローサイド」)のいずれかに配置されることができる。加えて、フリーホイールダイオードを、コイルに並列に接続することができる。
【0055】
一方、本発明の別の実施例において、両方のコイル接続は、制御可能なスイッチング素子を介して供給電圧に接続される又は接地される。コイルをスイッチングするための2つの制御可能なスイッチング素子を備える本発明の変形例は、2つの理由で有利である。第1に、コイルの磁場に蓄積されたエネルギーはコイルで消費されないが、電源に逆流する。一方、2つのスイッチング素子によるこのエネルギーの再配置は、コイルでの消費よりも非常に高速である。
【0056】
しかし、各バルブについて2つのワイヤが必要であり、更に、1つだけのスイッチング素子を用いたコイルのスイッチングでは、対応するより少ないワイヤを必要とするため、これらの2つの利点は、より高度な設置作業という欠点によって相殺される。しかしながら、パワーエレクトロニクスとアクチュエータとの間に短いラインだけが必要であるため、この欠点は、本発明に係るプリントヘッドへのパワーエレクトロニクスの統合に比べて二次的なものである。
【0057】
コイルをスイッチングするための2つの制御可能なスイッチング素子を備える本発明のこの変形例の場合、2つのフリーホイールダイオード又は2つの更なる制御可能なスイッチング素子のいずれかを設けることができる。
【0058】
シンプルな電力出力段の更なる特徴は、2つの異なるデューティサイクル間でのパルス幅変調(PWM)のシンプルなスイッチングであり、開けるために高電圧で、保持するために低電圧でコイルを制御する。コイルを流れる電流は、結果として生ずる電圧、コイルのDC抵抗(RDC)及び供給ラインのライン抵抗から生ずる。DC抵抗(RDC)は、一般に数オームの範囲であるので、ライン抵抗の影響を無視できないことが明確となる。これは、コイルを流れる電流への直接の影響を有し、従って、アクチュエータが適用できる力に直接影響する。ライン抵抗がより変動するほど(例えば、ケーブル長さ及び/又は断面が異なることによる)、この影響はさらに煩わしいものとなり、アプリケータへの統合によって、この影響を著しく最小限とすることができる。パワーエレクトロニクスがアクチュエータに近づくほど、2つの部品間の接続の影響が小さくなる。プリントヘッド内のパワーエレクトロニクスの配置により、アクチュエータへの電気リードは短い(≦300mm、≦250mm、≦200mm、または更に≦150mm)。加えて、この接続は、ロボットの動きに追従する必要はなく、固定することができる。
【0059】
加えて、温度の影響(特にコイルの抵抗)による変動がある。シンプルな制御システムでは、これらの変動は、十分な機能予備を得るために、コイルを実際に必要とされるより高電圧で操作するようにして、ライン損失と共に補正される。結果として、通常実際に必要とされるよりも多い電流がコイル内を流れ、さらにより多く発熱することにつながり、システム全体の効率が低下する。それゆえ、コイルを異なる電圧で操作することの代わりに、コイル内の電流を調整することが本質的に優れている。外部からの影響が最小限に抑えられるため、制御システムの安定性は、プリントヘッドへの統合からも利点を受ける。
【0060】
制御回路は、アプリケータハウジング内に、又はアプリケータの接続フランジ内に統合され得ることにも言及すべきである。
【0061】
本発明の好ましい例において、アプリケータは、特にDIN EN60079-2に従って、防爆される。これは、例えば、アプリケータのハウジングを圧縮ガスでフラッシングすることにより達成できる。該当する規制に従ってアプリケーター(例:プリントヘッド)を防爆にするために、ハウジング全体を不活性ガス(例:圧縮空気)でパージして、低い内圧(<1bar)を構築できる。センサは内圧を絶えず測定する。内圧の限界値(最小圧力及び最大圧力)は、安全コンセプトの一部であり、上位の制御システム内に保存されている。ハウジングに導入されたガスは、ハウジング内の又はハウジングに隣接する部品内のボア(スロットル、バルブ、逆止弁)を介して、プリントヘッドの近く又は他の圧力の弱い部分に、例えば、ロボットアーム内の手軸を介して、逃げる。特別なバージョンでは、ガスは、アクチュエータ及び/又は電子部品を冷却するように、ハウジング内に導入される。電子部品(例えば、回路基板、部品)は、自己架橋性ポリマーによりコーティングされ、防爆性の目標を達成することもできる。
【0062】
加えて、本発明は、1つの部品としての上述のアプリケータについてのみ保護を請求するものではないことに言及すべきである。むしろ、本発明は、アプリケータのようなコーティングロボット(例えば、塗装ロボット)の保護も請求する。
【0063】
最後に、本発明は、コーティングロボットの上に搭載されたアプリケータ、コーティングロボットのプログラム制御のためのロボット制御部、及び予め定められたグラフィックに従ったアクチュエータのスイッチングパターンの設定のためのグラフィックモジュールを具備する本発明に係るコーティングロボットを備える完全なコーティング設備(例えば、塗装システム)の保護も請求する。
【0064】
ロボット制御部とプリントヘッド制御部との間のワイヤを、最小限に減らすことができる。ケーブルは、特に0.1kW、0.5kW、又は1kWを超える電力で48VDCの電圧を持つアクチュエータのための電源を含むことができる。加えて、ケーブルは、特に24VDCの電圧を備える、プリントヘッド論理部及び/又はパワーエレクトロニクスのための制御電圧供給部を有することができる。ケーブルは、ロボット制御部への接続のために、等電位化及び/又は通信接続(例えば、イーサネット接続)を装備することもできる。
【0065】
本発明は、ケーブルを、ケーブルの全てのワイヤが共通の保護シースの下にあり、及び/又はいくつかの機能がケーブルの共通ワイヤを共有する、特に共通の接地線を共有するハイブリッドケーブルとすることも可能とする。
【0066】
最後に、ロボット制御部のためのアプリケータへの接続、グラフィックモジュール及び/又はプリントヘッド論理部は取り外し可能であるべき、特にプラグ可能であるべきであることに言及すべきである。ここで、アプリケータへの接続は、例えば、ハウジング内、接続フランジ内、ハウジングの外側、又はアプリケータの接続フランジの外側、とすることができる。
【0067】
本発明の有利な更なる変形例は、従属項において示される、又は、図を用いた本発明の好適な実施形態の説明を用いて以下に更に詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【
図1】プリントヘッドを備える従来の塗装設備の概略図である。
【
図2】プリントヘッド論理部及びパワーエレクトロニクスがプリントヘッドに統合された発明に基づく塗装設備の概略図を示す。
【
図3】パワーエレクトロニクスだけがプリントヘッドに統合された
図2の変形例である。
【
図4】ロボット制御部のグラフィックモジュールが予め設計されている場合の
図2の変形例である。
【
図5】単一のスイッチング素子による電磁バルブのコイルの制御を説明する概略図である。
【
図6】コイルを制御するための2つのスイッチング素子を備える
図5の変形例である。
【
図7】
図6におけるフリーホイールダイオードの代わりに追加の2つのスイッチング素子を備える
図6の変形例である。
【
図8】2つの異なるスイッチングパターンのためのパルス幅変調電圧を説明する図を示す。
【
図9】コイルをスイッチングする場合の電流曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0069】
図2は、本発明に係る塗装設備の概略図であり、例えば、自動車車体部品の塗装のために使用され得る。本発明に係るこの実施形態は、上述し、
図1に示す図に部分的に対応するため、繰り返しを避けるために、対応する詳細には同一の符号を使用し、上述の説明を引用する。
【0070】
この実施形態の特別な特徴は、プリントヘッド論理部6及びパワーエレクトロニクス5が、プリントヘッド1に統合されている点にある。
【0071】
一方、これは、パワーエレクトロニクス5と電磁バルブ2との間のライン4が、遮断の影響を受けにくいという利点を有する。
【0072】
一方、パワーエレクトロニクス5と電磁バルブ2との間のラインは、外部からのEMCエミッションの干渉も受けにくい。
【0073】
他の利点は、パワーエレクトロニクス5と電磁バルブ2との間のラインがより短く、結果として、ライン内での電力損失がより少なく、時間の影響も強くなりにくいことである。
【0074】
一般に、ラインを短くすることで、追加のオーミック抵抗、インダクタンス及び静電容量が少なくなる。
【0075】
加えて、パワーエレクトロニクス5と電磁バルブ2との間のラインは、プリントヘッド1におけるパワーエレクトロニクスの統合により、最新の技術の場合のような、いかなる機械的変形を受けない。
【0076】
図3は、
図2に示す実施形態の変形例を示し、繰り返しを避けるため、対応する詳細には同一の符号を使用して上記の説明を引用する。
【0077】
この実施形態の特別な特徴は、パワーエレクトロニクス5だけがプリントヘッド1に統合されており、プリントヘッド論理部6は、プリントヘッド1の外部のプリントヘッド制御部3に配置される点にある。
【0078】
図4に示す例も前述した例に大部分が対応しており、繰り返しを避けるため、適切な詳細には同一の符号を使用して上述の説明を引用する。
【0079】
この実施例の特別な特徴は、プリントヘッド論理部6が、
図1~3のようにグラフィックモジュール7に直接接続されないことである。むしろ、ロボット制御部8は、プリントヘッド論理部6とグラフィックモジュール7との間に配置される。それゆえ、プリントヘッド論理部6は、グラフィックモジュール7に間接的に接続されるだけである。
【0080】
図5は、電磁バルブ2においてコイルLを制御するための簡略された回路図を示す。コイルLの第1のコイル接続部9は、供給電圧DCに直接接続される。一方、第2のコイル接続部10は、制御可能なスイッチング素子Sを介して接地される。コイル接続部9は、供給電圧DCに直接接続される。
【0081】
フリーホイールダイオードDは、コイルLと並列に接続される。コイルの電圧は、接地電圧によって制御される。
【0082】
加えて、キャパシタCは、供給電圧DCと並列に接続される。
【0083】
上述した電源出力段の設計は、比較的単純であるが、この設計には、電磁バルブ2の閉時間が延びるという欠点がある。制御可能なスイッチング素子Sが閉じた状態で、エネルギーが供給され、コイルLの磁場に蓄積される。次に、このエネルギーが、バルブの制御に使用される。仮に、制御可能なスイッチング素子Sが、今、開いたとすると、蓄積されたエネルギーのために、磁場が完全に除去されるまで、フリーホイールダイオードDを介して電流が流れ続ける。これは、液滴を用いた印刷の場合に、特に望ましくない。
【0084】
それゆえ、
図6は、電力出力段の代替的に可能な設計を示し、同様に上述した単純な設計に部分的に対応するため、繰り返しを避けるため、対応する詳細には同じ参照符号を使用し、上述の説明を引用する。
【0085】
この設計の特別な特徴は、第1のコイル接続部9が、第1の制御可能なスイッチング素子S1を介して供給電圧DCに接続され、第2のコイル接続部Cが、第2の制御可能なスイッチング素子S2を介して接地されることである。
【0086】
加えて、第1のコイル末端9は、第1のフリーホイールダイオードD1を介して接地され、第2のコイル末端Cは、第2のフリーホイールダイオードD2を介して、供給電圧DCに接地される。
【0087】
この電源出力段の設計は、2つの利点を有する。第1に、コイルLの磁場に保存されるエネルギーは、コイルLで消費されないが、電源又は保存コンデンサCに逆流する。第2の利点は、エネルギーがコイルLで消費されないが、電源又は保存コンデンサCに逆流する。一方、コイルLからのエネルギーのこの再配置は、消費よりも非常に高速である。
【0088】
しかしながら、2つのスイッチング素子S1、S2を制御するためにバルブ2のそれぞれに2つのワイヤが必要であり、他方、
図5に従った単純な解決方法は一度にスイッチング素子Sを制御するために1つのワイヤだけが必要であるため、これらの2つの利点は、より高い取付作業という欠点によって相殺される。しかしながら、本発明に係るプリントヘッド1にパワーエレクトロニクス5を統合することによれば、この欠点は二次的なものである。
【0089】
図7は、
図6に係る実施形態の変形例を示し、繰り返しを避けるため、対応する詳細には同一の参照符号を使用して上述の説明を引用する。
【0090】
この実施形態の特別な特徴は、2つのフリーホイールダイオードD1、D2が、2つの制御可能なスイッチング素子S3、S4に置き換えられた点にある。
【0091】
図8は、2つの異なるスイッチングパターン11、12によるパルス幅変調における2つの異なる電圧U1、U2を説明する図を示す。スイッチパターン11は、比較的高い電圧U2を生成し、スイッチングパターン12は、より低い電圧U1を生成する。
【0092】
最後に、
図9は、電磁バルブ2の1つを作動させた場合の電流曲線を示す。起動オフセットt
Vの後、電流Iは最初に起動電流I
Sまで上昇し、その後、起動時間t
Sの間、この値に保持される。その後、電流はより小さい保持電流I
Hまで低下し、このより低い値で特定の保持時間t
Hの間、保持される。
【0093】
本発明は上述した好適な実施形態に限られない。むしろ、本発明は、それぞれの場合に及び特定の場合にも引用される請求項とは独立して、主請求項の特徴的な特徴なしに、従属項の主題及び特徴についての保護も請求する。従って、本発明は、互いに独立して、特に主請求項の技術的な教示なしに保護を享受する非常に多くの異なる発明の態様を包含する。
【0094】
[付記]
[付記1]
コーティング剤、特に塗料、接着材料又は封止材料を部品に、特に自動車車体部品又は自動車車体部品の追加部品に塗布するためのアプリケータ(1)、特にプリントヘッド(1)であって、
a)前記コーティング剤をコーティング剤ジェットの形態で塗布するための複数のノズル、
b)個々の前記ノズルを通る前記コーティング剤の放出を制御するための複数のコーティング剤バルブ(2)、及び、
c)前記コーティング剤バルブ(2)を制御するための複数の電気的に制御可能なアクチュエータ(L)、
を備え、
d)前記アクチュエータ(L)を電気的に駆動するための制御回路(5、6)が、前記アプリケータ(1)に統合されている、
ことを特徴とするアプリケータ(1)。
【0095】
[付記2]
前記統合された制御回路は、前記アクチュエータ(L)を駆動するためのパワーエレクトロニクス(5)を含む、
ことを特徴とする付記1に記載のアプリケータ(1)。
【0096】
[付記3]
a)前記パワーエレクトロニクス(5)は、最大300mm、200mm、100mm、50mm又は最大で10mmのライン長さを備える短いライン(4)を介して前記アクチュエータ(L)に接続される、及び/又は、
b)前記パワーエレクトロニクス(5)は、6V~96Vの範囲、特に12V~48Vの範囲の電圧で前記アクチュエータ(L)を駆動する、及び/又は、
c)前記パワーエレクトロニクス(5)は、0.01A~10Aの範囲の電流、特に0.2A~5Aまたは0.05A~1Aの範囲の電流が個々の前記アクチュエータ(L)を流れるように、個々の前記アクチュエータ(L)を駆動する、及び/又は、
d)前記パワーエレクトロニクス(5)は、可変デューティサイクルのパルス幅変調、周波数変調又は別の変調で前記アクチュエータ(L)を駆動する、
ことを特徴とする付記2に記載のアプリケータ(1)。
【0097】
[付記4]
a)前記統合された制御回路(5、6)は、プリントヘッド論理部(6)も備える、
b)前記プリントヘッド論理部(6)は、前記パワーエレクトロニクス(5)の出力側に接続される、
c)前記プリントヘッド論理部(6)は、ロボット制御部(8)及び/又はグラフィックモジュール(7)の入力側に接続される、
d)前記ロボット制御部(8)は、前記部品上をプログラム制御された方法で前記アプリケータ(1)を動かすコーティングロボットを制御し、前記ロボット制御部(8)は、ロボット制御データを前記プリントヘッド論理部(6)に伝える、
e)前記グラフィックモジュール(7)は、予め定められたグラフィックに従い前記アクチュエータ(L)のためにスイッチングパターンを特定し、それらを前記プリントヘッド論理部(6)に伝える、及び、
f)前記プリントヘッド論理部(6)は、前記ロボット制御データの機能として及び前記スイッチングパターンに応じて、前記パワーエレクトロニクス(5)を制御する、
ことを特徴とする付記2又は3に記載のアプリケータ(1)。
【0098】
[付記5]
前記プリントヘッド論理部(6)は、以下の:
a)前記ロボット制御部(8)との通信のための通信インターフェース、
b)前記グラフィックモジュール(7)から供給される前記スイッチングパターンを論理的に処理するための第1の論理ユニット、
c)前記グラフィックモジュール(7)から供給される前記スイッチングパターンを前記ロボット制御部(8)と同期させるための同期装置、及び/又は、
d)様々な前記アクチュエータ(L)のための個々のチャンネルの正確な同期を達成するために、前記アクチュエータに(L)対する制御チェーンにおける誤差を補正するための第2の論理ユニット、
を備える、
ことを特徴とする付記4に記載のアプリケータ(1)。
【0099】
[付記6]
a)前記アクチュエータ(L)は、それぞれコイル(L)を有する電磁アクチュエータ(L)である、
b)前記パワーエレクトロニクス(5)は、起動電流(IS)で関連する前記コーティング剤バルブを開くために、前記アクチュエータ(L)の1つの前記コイル(L)を駆動する、及び、
c)前記パワーエレクトロニクス(5)は、保持電流(IHで)前記アクチュエータ(L)の1つの前記コイル(L)を駆動して、既に開かれている関連する前記コーティング剤バルブを保持し、前記保持電流(IH)は、前記起動電流(IS)より小さい、
ことを特徴とする付記2乃至5のいずれか1つに記載のアプリケータ(1)。
【0100】
[付記7]
a)前記アクチュエータ(L)は、それぞれがコイル(L)を有する電磁アクチュエータ(L)である、
b)第1のコイル接続部(9)で、前記コイル(L)は、スイッチング状態に関わらず、恒久的に接地される、又は供給電圧(DC)に恒久的に接続される、
c)第2のコイル接続部(10)で、前記コイル(L)は、制御可能なスイッチング素子(S)を介して接地される、又は供給電圧(DC)に接続される、及び/又は、
d)フリーホイールダイオード(D)は、前記コイル(L)と並列に接続される、
ことを特徴とする付記1乃至6のいずれか1つに記載のアプリケータ(1)。
【0101】
[付記8]
a)前記アクチュエータ(L)は、それぞれがコイル(L)を有する電磁アクチュエータ(L)である、
b)第1のコイル接続部(9)で、前記コイル(L)は、第1の制御可能なスイッチング素子(S1)を介して供給電圧(DC)に接続される、及び、
c)第2のコイル接続部(10)で、前記コイル(L)は、第2の制御可能なスイッチング素子(S2)を介して接地される、
ことを特徴とする付記1乃至6のいずれか1つに記載のアプリケータ(1)。
【0102】
[付記9]
a)前記第2のコイル接続部(10)で、前記コイル(L)は、第2のフリーホイールダイオード(D2)を介して、又は第3の制御可能なスイッチング素子(S4)を介して前記供給電圧(DC)に接続される、及び/又は、
b)前記第1のコイル接続部(9)で、前記コイル(L)は、第1のフリーホイールダイオード(D1)を介して、又は第4の制御可能なスイッチング素子(S3)を介して接地される、
ことを特徴とする付記8に記載のアプリケータ(1)。
【0103】
[付記10]
a)前記制御回路(5、6)は、前記アプリケータ(1)の前記ハウジング内に統合される、及び/又は、
b)前記制御回路(5、6)は、前記アプリケータ(1)の前記接続フランジ内に統合される、
ことを特徴とする付記1乃至9のいずれか1つに記載のアプリケータ(1)。
【0104】
[付記11]
前記アプリケータ(1)は、特にDIN EN60079-2に従い、特に前記アプリケータ(1)のハウジングの圧縮ガスパージにより、防爆性である、
ことを特徴とする付記1乃至10のいずれか1つに記載のアプリケータ(1)。
【0105】
[付記12]
コーティングロボット、特に塗装ロボットであって、
付記1乃至11のいずれか1つに記載のアプリケータ(1)を備える、
ことを特徴とするコーティングロボット。
【0106】
[付記13]
前記コーティング剤、特に塗料を、前記部品に、特に自動車車体部品に又は自動車車体部品の追加部品に塗布するためのコーティング設備であって、
a)付記12に記載のコーティングロボット、
b)前記コーティングロボットのプログラム制御のための前記ロボット制御部(8)、及び、
c)予め定められたグラフィックに従って前記アクチュエータ(L)のためのスイッチングパターンを特定するための前記グラフィックモジュール(7)、
を備える、
ことを特徴とするコーティング設備。
【0107】
[付記14]
前記ロボット制御部(8)と前記プリントヘッド論理部(6)との間の少なくとも1つのケーブルを有し、
前記ケーブルは、以下の接続:
a)0.1kWより大きな、0.5kWより大きな、又は1kWより大きな電力で48VDCの電圧を特に備える、前記アクチュエータ(L)のための電源電圧供給、
b)前記プリントヘッド論理部(6)及び/又は前記パワーエレクトロニクス(5)のための、特に24VDCの電圧を備える制御電圧供給、
c)等電位化、及び、
d)前記ロボット制御部(8)への接続のための通信接続、特にイーサネット接続、
を備える、
ことを特徴とする付記13に記載のコーティング設備。
【0108】
[付記15]
前記ケーブルはハイブリッドケーブルであり、
a)前記ケーブルの全てのワイヤは、共通の保護シース下にある、及び/又は、
b)いくつかの機能は、共通のケーブルワイヤ、特に共通のアースコンダクタを共有する、
ことを特徴とする付記14に記載のコーティング設備。
【0109】
[付記16]
a)前記ロボット制御部(8)、前記グラフィックモジュール(7)、及び/又は前記プリントヘッド論理部(6)のための前記アプリケータ(1)での前記接続は、取り外し可能であり、特にプラグ可能であり、及び/又は、
b)前記アプリケータ(1)での前記接続は、以下の:
b1)前記アプリケータ(1)のハウジング内、
b2)前記アプリケータ(1)の接続フランジ内、
b3)前記アプリケータ(1)の前記ハウジングの外、又は、
b4)前記アプリケータ(1)の接続フランジの外、
に配置される、
ことを特徴とする付記13乃至15のいずれか1つに記載のコーティング設備。
【符号の説明】
【0110】
1 プリントヘッド
2 電磁バルブ
3 プリントヘッド制御部
4 プリントヘッド制御部とプリントヘッドとの間のケーブル
5 パワーエレクトロニクス
6 プリントヘッド論理部
7 グラフィックモジュール
8 ロボット制御部
9 第1コイル接続部
10 第2コイル接続部
11、12 スイッチングパターン
C コンデンサ
D、D1、D2 フリーホイールダイオード
DC 供給電圧
L 電磁バルブコイル
S 制御可能なスイッチング素子
S1~S4 制御可能なスイッチング素子
U1、U2 2つのスイッチングパターン11、12の電圧