(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】精算システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/40 20240101AFI20241125BHJP
【FI】
G06Q50/40
(21)【出願番号】P 2023100006
(22)【出願日】2023-06-19
【審査請求日】2023-06-19
(73)【特許権者】
【識別番号】592048741
【氏名又は名称】鉄道情報システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【代理人】
【識別番号】100203932
【氏名又は名称】高橋 克宗
(72)【発明者】
【氏名】久野 晃
【審査官】塚田 肇
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-269151(JP,A)
【文献】特開2002-092671(JP,A)
【文献】特開2005-222449(JP,A)
【文献】特開平10-275253(JP,A)
【文献】特開2017-107481(JP,A)
【文献】特開2012-215999(JP,A)
【文献】特開2018-169796(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道駅に設けられ、鉄道を利用する発着区間および乗車経路に応じた対価を支払うことで鉄道車両に乗車して移動できる鉄道利用権を証する電子情報を券片あるいは電子情報記録媒体に記録した乗車券類を発行する券売機と、
前記鉄道駅に設けられ、前記乗車券類の前記電子情報を読み取り、当該鉄道駅での入札および出札の処理が可能で、当該鉄道駅が前記乗車券類に設定された着駅では無い場合には、乗客が前記乗車券類の発行に支払った対価と、乗客が当該鉄道駅で下車する場合の料金との差額に基づいて、電子的に徴収あるいは返戻する精算処理が可能な自動改札機と、
前記鉄道駅に設けられ、当該鉄道駅が前記乗車券類に設定された着駅では無い場合に、乗客が前記乗車券類の発行に支払った料金と、乗客が当該鉄道駅で下車する場合の料金との差額に基づいて、追徴あるいは返戻する精算処理が可能な精算機と、
各鉄道駅に設置された前記券売機、前記自動改札機、前記精算機と直接あるいは間接的に通信可能で、前記乗車券類を販売するための情報を統括的に管理し、前記券売機から受けた前記乗車券類の発行に関する問い合わせに回答する中央処理装置と、
を含む精算システムであって、
前記中央処理装置は、前記券売機からの問い合わせに基づいて発行する前記乗車券類を一意に特定できるキー情報を前記乗車券類に割り当て、前記キー情報を少なくとも前記乗車券類の発着区間および乗車経路と紐付けて乗車券類データベースに記録しておき、
前記券売機は、前記中央処理装置により割り当てられた前記キー情報を前記電子情報に含めて記録した前記乗車券類を発行し、
乗客が所持する前記乗車券類の前記キー情報を読み取り可能なキー情報読取装置を、少なくとも、前記自動改札機と前記鉄道車両に設け、
前記中央処理装置は、前記自動改札機に設けた前記キー情報読取装置が読み取った前記キー情報を受け取
ると、前記乗車券類データベースから
当該キー情報の付された前記乗車券類を特定し、
また、特定した前記乗車券類に付された前記キー情報を前記鉄道車両に設けた前記キー情報読取装置から受け取ると、当該キー情報の送信元である前記キー情報読取装置を設けた前記鉄道車両の現在位置を推定し、特定した前記乗車券類の発着区間および乗車経路と、当該キー情報の送信元である前記キー情報読取装置
を設けた前記鉄道車両の現在位置
と、に基づいて、乗客が今後下車する可能性のある予測下車駅を選定し、選定した前記予測下車駅で途中下車した場合の予測精算額を前記予測下車駅ごとに求め、前記予測下車駅ごとに求めた前記予測精算額と前記キー情報とを含ませた予測精算情報を、それぞれ対応する前記予測下車駅へ送信し、
前記中央処理装置から送信された前記予測精算情報に含まれる前記キー情報の付された前記乗車券類を検知した前記自動改札機は、前記予測精算情報に含まれる前記予測精算額での精算処理を行う、
ことを特徴とする精算システム。
【請求項2】
前記精算機には、前記キー情報読取装置を設け、
前記中央処理装置から送信された前記予測精算情報に含まれる前記キー情報の付された前記乗車券類を検知した前記精算機は、前記予測精算情報に含まれる前記予測精算額での精算処理を行う、
ことを特徴とする請求項1に記載の精算システム。
【請求項3】
前記鉄道駅に設けられ、少なくとも、当該鉄道駅に設置された前記券売機、前記自動改札機および前記精算機と通信可能に接続され、前記中央処理装置と通信可能な駅サーバを備え、
前記予測下車駅に設置されている前記自動改札機および/または前記精算機は、精算処理が必要となる前記乗車券類を検知した場合、当該乗車券類に付された前記キー情報を前記駅サーバに問い合わせ、
前記キー情報の問い合わせを受けた前記駅サーバは、当該キー情報を含む前記予測精算情報を前記中央処理装置より受け取って管理している場合、当該予測精算情報に含まれる前記予測精算額を問い合わせ元の前記自動改札機または前記精算機へ送信し、前記自動改札機または前記精算機が当該予測精算額で精算処理を行う、
ことを特徴とする請求項2に記載の精算システム。
【請求項4】
前記鉄道駅に設けられ、少なくとも、当該鉄道駅に設置された前記券売機、前記自動改札機および前記精算機と通信可能に接続され、前記中央処理装置と通信可能な駅サーバを備え、
前記中央処理装置から前記予測精算情報を受け取った前記予測下車駅の前記駅サーバは、自駅に設置されている前記自動改札機および/または前記精算機へ、前記キー情報と前記予測精算額とを予め送信しておき、
前記自動改札機および/または前記精算機は、前記駅サーバより受け取った前記キー情報の付された前記乗車券類を検知した場合、当該キー情報に対応する前記予測精算額で精算処理を行う、
ことを特徴とする請求項2に記載の精算システム。
【請求項5】
前記中央処理装置は、前記キー情報読取装置から受け取った前記キー情報に基づいて選定した前記予測下車駅を、それぞれ前記キー情報と紐付けて前記乗車券類データベースに記録しておく、
ことを特徴とする請求項1~請求項4の何れか1項に記載の精算システム。
【請求項6】
前記中央処理装置は、
前記鉄道車両に設けた前記キー情報読取装置から受け取った前記キー情報に基づいて前記乗車券類データベースを検索し、当該キー情報と紐付いた前記予測下車駅が既に記録されていた場合、
当該キー情報の付された前記乗車券類の発着区間および乗車経路と、当該キー情報
を読み取った前記キー情報読取装置
が設けられている前記鉄道車両の現在位置
と、に基づいて、乗客が今後下車する可能性のある前記予測下車駅を新たに選定し、前記予測下車駅に含まれなくなった前記鉄道駅に対しては前記予測精算情報の削除指示を行い、新たに前記予測下車駅となった各鉄道駅に対しては新たに前記予測精算額をそれぞれ求めて、新たな前記予測下車駅にそれぞれ前記予測精算情報を送信し、新たに選定した前記予測下車駅で前記乗車券類データベースを更新する、
ことを特徴とする請求項5に記載の精算システム。
【請求項7】
鉄道駅に設けられ、鉄道を利用する発着区間および乗車経路に応じた対価を支払うことで鉄道車両に乗車して移動できる鉄道利用権を証する電子情報を券片あるいは電子情報記録媒体に記録した乗車券類を発行する券売機と、
前記鉄道駅に設けられ、前記乗車券類の前記電子情報を読み取り、当該鉄道駅での入札および出札の処理が可能で、当該鉄道駅が前記乗車券類に設定された着駅では無い場合には、乗客が前記乗車券類の発行に支払った対価と、乗客が当該鉄道駅で下車する場合の料金との差額に基づいて、電子的に徴収あるいは返戻する精算処理が可能な自動改札機と、
前記鉄道駅に設けられ、当該鉄道駅が前記乗車券類に設定された着駅では無い場合に、乗客が前記乗車券類の発行に支払った料金と、乗客が当該鉄道駅で下車する場合の料金との差額に基づいて、追徴あるいは返戻する精算処理が可能な精算機と、
各鉄道駅に設置された前記券売機、前記自動改札機、前記精算機と直接あるいは間接的に通信可能で、前記乗車券類を販売するための情報を統括的に管理し、前記券売機から受けた前記乗車券類の発行に関する問い合わせに回答する中央処理装置と、
を含む精算システムであって、
前記中央処理装置は、前記券売機からの問い合わせに基づいて発行する前記乗車券類を一意に特定できるキー情報を前記乗車券類に割り当て、前記キー情報を少なくとも前記乗車券類の発着区間および乗車経路と紐付けて乗車券類データベースに記録しておき、
前記券売機は、前記中央処理装置により割り当てられた前記キー情報を前記電子情報に含めて記録した前記乗車券類を発行し、
乗客が所持する前記乗車券類の前記キー情報を読み取り可能なキー情報読取装置を、少なくとも、前記自動改札機と駅構内の適所に設け、
前記中央処理装置は、前記自動改札機に設けた前記キー情報読取装置が読み取った前記キー情報を受け取ると、前記乗車券類データベースから当該キー情報の付された前記乗車券類を特定し、また、特定した前記乗車券類に付された前記キー情報を前記駅構内に設けた前記キー情報読取装置から受け取ると、当該キー情報の送信元である前記キー情報読取装置の位置に基づいて乗客が乗車できる路線を推定し、特定した前記乗車券類の発着区間および乗車経路と、当該キー情報の送信元である前記キー情報読取装置の位置から推定した乗車可能路線と、に基づいて、乗客が今後下車する可能性のある予測下車駅を選定し、選定した前記予測下車駅で途中下車した場合の予測精算額を前記予測下車駅ごとに求め、前記予測下車駅ごとに求めた前記予測精算額と前記キー情報とを含ませた予測精算情報を、それぞれ対応する前記予測下車駅へ送信し、
前記キー情報読取装置が読み取った前記キー情報を受け取った前記中央処理装置は、前記乗車券類データベースから前記キー情報の付された前記乗車券類を特定し、特定した前記乗車券類の発着区間および乗車経路と、当該キー情報の送信元である前記キー情報読取装置の現在位置に基づいて、乗客が今後下車する可能性のある予測下車駅を選定し、選定した前記予測下車駅で途中下車した場合の予測精算額を前記予測下車駅ごとに求め、前記予測下車駅ごとに求めた前記予測精算額と前記キー情報とを含ませた予測精算情報を、それぞれ対応する前記予測下車駅へ送信し、
前記中央処理装置から送信された前記予測精算情報に含まれる前記キー情報の付された前記乗車券類を検知した前記自動改札機は、前記予測精算情報に含まれる前記予測精算額での精算処理を行う、
ことを特徴とする精算システム。
【請求項8】
前記精算機には、前記キー情報読取装置を設け、
前記中央処理装置から送信された前記予測精算情報に含まれる前記キー情報の付された前記乗車券類を検知した前記精算機は、前記予測精算情報に含まれる前記予測精算額での精算処理を行う、
ことを特徴とする請求項7に記載の精算システム。
【請求項9】
前記鉄道駅に設けられ、少なくとも、当該鉄道駅に設置された前記券売機、前記自動改札機および前記精算機と通信可能に接続され、前記中央処理装置と通信可能な駅サーバを備え、
前記予測下車駅に設置されている前記自動改札機および/または前記精算機は、精算処理が必要となる前記乗車券類を検知した場合、当該乗車券類に付された前記キー情報を前記駅サーバに問い合わせ、
前記キー情報の問い合わせを受けた前記駅サーバは、当該キー情報を含む前記予測精算情報を前記中央処理装置より受け取って管理している場合、当該予測精算情報に含まれる前記予測精算額を問い合わせ元の前記自動改札機または前記精算機へ送信し、前記自動改札機または前記精算機が当該予測精算額で精算処理を行う、
ことを特徴とする請求項8に記載の精算システム。
【請求項10】
前記鉄道駅に設けられ、少なくとも、当該鉄道駅に設置された前記券売機、前記自動改札機および前記精算機と通信可能に接続され、前記中央処理装置と通信可能な駅サーバを備え、
前記中央処理装置から前記予測精算情報を受け取った前記予測下車駅の前記駅サーバは、自駅に設置されている前記自動改札機および/または前記精算機へ、前記キー情報と前記予測精算額とを予め送信しておき、
前記自動改札機および/または前記精算機は、前記駅サーバより受け取った前記キー情報の付された前記乗車券類を検知した場合、当該キー情報に対応する前記予測精算額で精算処理を行う、
ことを特徴とする請求項8に記載の精算システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道利用客が購入した乗車券類の乗降区間や経路とは異なる乗降区間や経路で鉄道を利用したことにより生じた過不足を降車駅で精算する精算システムに関する。
【背景技術】
【0002】
中長距離券を使って旅行している乗客が途中で行き先を変更したり、途中で下車したりする際には、運賃の精算が必要となる。精算は計算論理が複雑なので、演算能力の高くない自動改札機で精算処理を行わせようとすると、乗客の通過時間に間に合わない。また、自動改札機で精算処理を行うためには、各改札機に常に最新のプログラムと大量のデータを提供しておく必要がある。そのため、比較的演算能力の低い既存の自動改札機や精算機での精算処理では中長距離券に対応できず、現在でも、中長距離券の精算は有人窓口で対応することになっている。しかし、鉄道会社では、少子高齢化に伴う労働人口減少への対応、運営コストの削減、および乗車券類購入の利便性向上に向けた取り組みとして、駅改札業務の自動化・効率化を推進している。このような時代背景の中、有人窓口での対応を減らすことが望まれており、有人窓口での精算業務軽減が望ましい。
【0003】
そこで、携帯電話に乗車券機能を持たせておき、乗客が乗車した列車や区間などの乗車情報を携帯電話に記憶させ、精算時に携帯電話の記憶情報を利用して、精算機やサーバが乗車料金を自動的に計算して精算を行えるようにした精算システムが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。この特許文献1に記載の精算システムによれば、精算のために、有人窓口で駅員等が対応する必要が無いので、精算業務軽減に資するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の精算システムは、改札を入る前から乗車券機能を有効にした携帯電話を準備しておき、鉄道を利用している最中の乗車区間や乗換駅等の情報を継続的に携帯電話で記録しておく必要がある。よって、鉄道を利用している最中に携帯電話のバッテリー切れなどで通信機能が失われると、乗車した区間や列車の情報が記録されないため、降車駅に着いても、携帯電話の記憶情報による精算ができず、結果的に有人窓口での対応が必要となる可能性もある。
【0006】
加えて、特許文献1に記載の精算システムでは、駅の精算機や精算システムホストサーバと携帯電話を接続して、携帯電話に記憶された諸情報(乗車した区間の乗換駅、経由駅や列車などの情報)を提供し、駅の精算機や精算システムホストサーバによる精算処理を行わなければならない。自動改札機を通過するだけで自動精算されることに慣れている鉄道利用客にとっては、改札を通過する前に必要となる精算処理の一手間が、精算機や有人窓口に行くのと同等の手間に感じられるため、必ずしも利便性が良いとはいえない。
【0007】
したがって、特許文献1に記載の精算システムの如く、精算に必要な諸情報の管理を乗客が所持する携帯電話に委ねてしまうと、システムとしての信頼性が損なわれる危険性があると共に、既存の自動改札機や精算機を利用するのとは異なる精算処理を乗客に強いるために利便性が低いことから、本システムの利用率を上げて有人窓口の対応を減らすことは困難である。やはり、有人窓口の対応を減らすためには、精算に必要な情報を鉄道会社側で安全に管理してシステムの安定性を高め、中長距離券のように複雑な演算が必要となる精算処理を比較的演算能力の低い既存の自動改札機で迅速に行えることが望ましい。
【0008】
そこで、本発明は、システムの安定性が高く、比較的演算能力の低い既存の自動改札機での精算処理を迅速に行える精算システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、鉄道駅に設けられ、鉄道を利用する発着区間および乗車経路に応じた対価を支払うことで鉄道車両に乗車して移動できる鉄道利用権を証する電子情報を券片あるいは電子情報記録媒体に記録した乗車券類を発行する券売機と、前記鉄道駅に設けられ、前記乗車券類の前記電子情報を読み取り、当該鉄道駅での入札および出札の処理が可能で、当該鉄道駅が前記乗車券類に設定された着駅では無い場合には、乗客が前記乗車券類の発行に支払った対価と、乗客が当該鉄道駅で下車する場合の料金との差額に基づいて、電子的に徴収あるいは返戻する精算処理が可能な自動改札機と、前記鉄道駅に設けられ、当該鉄道駅が前記乗車券類に設定された着駅では無い場合に、乗客が前記乗車券類の発行に支払った料金と、乗客が当該鉄道駅で下車する場合の料金との差額に基づいて、追徴あるいは返戻する精算処理が可能な精算機と、各鉄道駅に設置された前記券売機、前記自動改札機、前記精算機と直接あるいは間接的に通信可能で、前記乗車券類を販売するための情報を統括的に管理し、前記券売機から受けた前記乗車券類の発行に関する問い合わせに回答する中央処理装置と、を含む精算システムであって、前記中央処理装置は、前記券売機からの問い合わせに基づいて発行する前記乗車券類を一意に特定できるキー情報を前記乗車券類に割り当て、前記キー情報を少なくとも前記乗車券類の発着区間および乗車経路と紐付けて乗車券類データベースに記録しておき、前記券売機は、前記中央処理装置により割り当てられた前記キー情報を前記電子情報に含めて記録した前記乗車券類を発行し、乗客が所持する前記乗車券類の前記キー情報を読み取り可能なキー情報読取装置を、少なくとも、前記自動改札機と前記鉄道車両に設け、前記キー情報読取装置が読み取った前記キー情報を受け取った前記中央処理装置は、前記乗車券類データベースから前記キー情報の付された前記乗車券類を特定し、特定した前記乗車券類の発着区間および乗車経路と、当該キー情報の送信元である前記キー情報読取装置の現在位置に基づいて、乗客が今後下車する可能性のある予測下車駅を選定し、選定した前記予測下車駅で途中下車した場合の予測精算額を前記予測下車駅ごとに求め、前記予測下車駅ごとに求めた前記予測精算額と前記キー情報とを含ませた予測精算情報を、それぞれ対応する前記予測下車駅へ送信し、前記中央処理装置から送信された前記予測精算情報に含まれる前記キー情報の付された前記乗車券類を検知した前記自動改札機は、前記予測精算情報に含まれる前記予測精算額での精算処理を行う、ことを特徴とする。
【0010】
また、上記構成において、前記精算機には、前記キー情報読取装置を設け、前記中央処理装置から送信された前記予測精算情報に含まれる前記キー情報の付された前記乗車券類を検知した前記精算機は、前記予測精算情報に含まれる前記予測精算額での精算処理を行ってもよい。
【0011】
また、上記構成において、前記鉄道駅に設けられ、少なくとも、当該鉄道駅に設置された前記券売機、前記自動改札機および前記精算機と通信可能に接続され、前記中央処理装置と通信可能な駅サーバを備え、前記予測下車駅に設置されている前記自動改札機および/または前記精算機は、精算処理が必要となる前記乗車券類を検知した場合、当該乗車券類に付された前記キー情報を前記駅サーバに問い合わせ、前記キー情報の問い合わせを受けた前記駅サーバは、当該キー情報を含む前記予測精算情報を前記中央処理装置より受け取って管理している場合、当該予測精算情報に含まれる前記予測精算額を問い合わせ元の前記自動改札機または前記精算機へ送信し、前記自動改札機または前記精算機が当該予測精算額で精算処理を行ってもよい。
【0012】
また、上記構成において、前記鉄道駅に設けられ、少なくとも、当該鉄道駅に設置された前記券売機、前記自動改札機および前記精算機と通信可能に接続され、前記中央処理装置と通信可能な駅サーバを備え、前記中央処理装置から前記予測精算情報を受け取った前記予測下車駅の前記駅サーバは、自駅に設置されている前記自動改札機および/または前記精算機へ、前記キー情報と前記予測精算額とを予め送信しておき、前記自動改札機および/または前記精算機は、前記駅サーバより受け取った前記キー情報の付された前記乗車券類を検知した場合、当該キー情報に対応する前記予測精算額で精算処理を行ってもよい。
【0013】
また、上記構成において、前記中央処理装置は、前記キー情報読取装置から受け取った前記キー情報に基づいて選定した前記予測下車駅を、それぞれ前記キー情報と紐付けて前記乗車券類データベースに記録しておいてもよい。
【0014】
また、上記構成において、前記中央処理装置は、前記キー情報読取装置から受け取った前記キー情報に基づいて前記乗車券類データベースを検索し、当該キー情報と紐付いた前記予測下車駅が既に記録されていた場合、当該キー情報の送信元である前記キー情報読取装置の現在位置に基づいて、乗客が今後下車する可能性のある前記予測下車駅を新たに選定し、前記予測下車駅に含まれなくなった前記鉄道駅に対しては前記予測精算情報の削除指示を行い、新たに前記予測下車駅となった各鉄道駅に対しては新たに前記予測精算額をそれぞれ求めて、新たな前記予測下車駅にそれぞれ前記予測精算情報を送信し、新たに選定した前記予測下車駅で前記乗車券類データベースを更新してもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る精算システムによれば、乗客が所持する乗車券類に付したキー情報を、自動改札機や鉄道車両に設けたキー情報読取装置で読み取り、中央処理装置へ送信すると、中央処理装置はキー情報読取装置の現在位置から、乗客が今後下車する可能性のある予測下車駅を選定し、選定した予測下車駅で乗客が途中下車した場合の予測精算額を予測下車駅ごとに求め、予測下車駅ごとに求めた予測精算額とキー情報とを含ませた予測精算情報を、対応する予測下車駅へ送信するので、中央処理装置により選定された各予測下車駅では、そのキー情報に紐付いた乗車券類を所持する乗客が途中下車する場合の精算に備えることができる。よって、予測下車駅の自動改札機が、予測精算情報に含まれるキー情報の付された乗車券類を検知した場合、予測精算情報に含まれる予測精算額で精算処理を行うので、比較的演算能力の低い既存の自動改札機であっても、精算処理を迅速に行える。また、キー情報に基づく乗客の乗降駅や乗り換えなどの移動経路は、中央処理装置にて管理し、予測下車駅で乗客が下車する場合の予測精算額の算出も中央処理装置が行うので、システムとしての安定性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る券売システムの一実施形態を示す概略構成図である。
【
図2】X駅に設置された自動改札機からの入場でキー情報の付された乗車券類を検出した場合における券売システムの動作説明図である。
【
図3】乗車券類データベースの一例を示すテーブル構成図である。
【
図4】X駅(乗車駅)からY駅まで鉄道車両を利用する経路の一例を示す路線図である。
【
図5】○○新幹線の鉄道車両でキー情報の付された乗車券類を検出した場合における券売システムの動作説明図である。
【
図6】○○本線の鉄道車両でキー情報の付された乗車券類を検出した場合における券売システムの動作説明図である。
【
図7】Y駅(降車駅)に設置された自動改札機からの出場でキー情報の付された乗車券類を検出した場合における券売システムの動作説明図である。
【
図8】O駅(乗車区間外の降車駅)に設置された自動改札機からの出場でキー情報の付された乗車券類を検出した場合における券売システムの動作説明図である。
【
図9】O駅(乗車区間外の降車駅)に設置された精算機にキー情報の付された乗車券類が投入された場合における券売システムの動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を、添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1に示すのは、精算システムSの実施形態を示す概略構成である。鉄道会社に属する各鉄道駅1には、駅サーバ2が設けられ、券売機3、自動改札機4、精算機5等と通信可能に接続されている。各鉄道駅1の駅サーバ2は、ネットワークNWを介して接続される中央処理装置6と通信可能である。また、後述するキー情報読取装置7は、鉄道駅1の自動改札機4や精算機5、鉄道車両8に搭載されているほか、駅構内の適所に設けられており、乗客が所持する乗車券類9のキー情報(後に詳述)をキー情報読取装置7が読み取ると、そのキー情報とキー情報読取装置7の現在位置を特定可能な情報(たとえば、設置駅の駅コードや鉄道車両8の位置情報など)が中央処理装置6へ送信される。本実施形態においては、各鉄道駅1に設けられた駅サーバ2、券売機3、自動改札機4および精算機5と、全ての鉄道駅1での乗車券類9の発行を統括的に管理する中央処理装置6と、自動改札機4や鉄道車両8等に搭載されるキー情報読取装置7とが連携することで、精算システムSとして機能する。
【0018】
図1では、鉄道会社に属する鉄道駅1として、例えば、A駅1a、B駅1b、C駅1c、D駅1d、E駅1e、F駅1f、G駅1g、H駅1h、I駅1i、J駅1j、K駅1k、L駅1l、M駅1m、N駅1n、O駅1o、X駅1x、Y駅1yを例示しており、これら全ての鉄道駅1における乗車券類9の販売が中央処理装置6によって一括管理される。中央処理装置6が各鉄道駅1で販売される乗車券類9を一括管理するために、乗車券類データベース61を用いる。また、乗車券類9とは、乗車券、急行券、寝台券、座席指定券などの総称であり、中央処理装置6が乗車券類9の販売を一括管理することで、指定席特急券や座席指定券が重複発行される不具合を回避できる。
【0019】
鉄道駅1に設置される券売機3は、乗客の求めに応じて乗車券類9を発行するものである。乗車券類9とは、鉄道を利用する発着区間(乗車する発駅から降車する着駅までの区間)および乗車経路(乗車路線や経由駅など)に応じた対価を乗客が支払うことで、鉄道車両8に乗車して発駅から着駅まで所定の経由で移動できる鉄道利用権を証する電子情報を記録した券片(例えば、磁気券)あるいは電子情報記録媒体(例えば、非接触型ICカード、スマートフォン等の携帯端末装置)である。この券売機3は、乗客の操作による乗車券類9の購入要求を受けると、駅サーバ2を介して中央処理装置6へ乗車券類9の発行に関して問い合わせ、この問い合わせに対して中央処理装置6から送信された回答内容に基づいて発券処理を行う。
【0020】
例えば、乗客が乗車券類9として扱える電子情報記録媒体を所持している場合、券売機3は、購入額分を電子情報記録媒体に紐付いた電子マネーから引き落とし、乗車券類9として利用可能となる電子情報を電子情報記録媒体に書き込み、発券処理を終了する。一方、乗客が乗車券類9として扱える電子情報記録媒体を所持していない場合、券売機3は、購入額分の現金を投入、あるいはキャッシュレス決済を行うことで、必要な電子情報を磁気的に記録した磁気券等の乗車券類9を乗客に提供し、発券処理を終了する。なお、乗車券類9に記録する電子情報としては、必ずしも発着区間や乗車経路等の詳細情報を含んでいる必要はなく、中央処理装置6が乗車券類データベース61によって管理するために必要な情報(例えは、販売した乗車券類9毎に付けるキー情報)が電子情報として含まれていれば、中央処理装置6にてキー情報から乗車券類9に紐付いた鉄道利用権の内容を特定できる。
【0021】
鉄道駅1に設けられる自動改札機4は、乗車券類9の電子情報を読み取り、鉄道駅1での入札および出札の処理を行う。乗客が磁気券等の乗車券類9を自動改札機4に投入して入札する場合、自動改札機4は入札ゲートを開くと共に、入札時刻や入札駅等の情報を書き込んだ乗車券類9を乗客に戻す入札処理を行う。乗客が磁気券等の乗車券類9を自動改札機4に投入して出札する場合、自動改札機4は出札ゲートを開くと共に、投入された乗車券類9を回収する出札処理を行う。乗客が非接触型ICカードや携帯端末装置等の乗車券類9を自動改札機4の読取り部に近接させて入札する場合、自動改札機4は入札ゲートを開くと共に、入札時刻や入札駅等の情報を乗車券類9に書き込む入札処理を行う。乗客が非接触型ICカードや携帯端末装置等の乗車券類9を自動改札機4の読取り部に近接させて出札する場合、自動改札機4は出札ゲートを開くと共に、出札時刻や出札駅等の情報を書き込んで乗車券類9を使用済みにする出札処理を行う。なお、乗車券類9として携帯端末装置を用いる場合には、記録された電子情報に基づき生成した二次元コード等を電子チケットとして用い、自動改札機4のコード読取り部で電子チケットを読み取って入札および出札の処理を行ってもよい。
【0022】
また、自動改札機4が設置されているこの鉄道駅1が乗車券類9に設定された着駅ではないとき、電子マネーによる支払い・受け取りが可能な乗車券類9(非接触型ICカードや携帯端末装置等)を自動改札機4の読取り部に近接させて乗客が出札する場合には、乗客が乗車券類9の発行に支払った料金と、乗客がこの鉄道駅1で下車する場合の料金との差額に基づいて、電子的に徴収あるいは返戻する精算処理を自動改札機4が行う。しかし、自動改札機4が設置されているこの鉄道駅1が乗車券類9に設定された着駅ではないとき、電子マネーによる支払い・受け取りが不可能な乗車券類9(磁気券等)を自動改札機4に投入して乗客が出札する場合には、電子的に徴収あるいは返戻する精算処理を行えないので、自動改札機4は出札ゲートを閉じて(或いは、閉じた状態を保持し)、精算機5や有人窓口での精算を乗客に促す。
【0023】
自動改札機4が料金データベースや電子マネー取扱機能を備えていれば、自動改札機4単独で精算処理を行うことが可能である。その場合、自動改札機4は、電子マネーの管理サーバ(図示省略)とも接続され、電子マネーを利用する電子情報記録媒体に対して入出金のための情報更新を行う。しかしながら、中長距離の乗車券類9の精算を自動改札機4単独で行わせるためには、それだけ大容量の記憶装置や高い処理性能のコンピュータを自動改札機4に搭載しておく必要がある。そのような高性能の自動改札機4は、導入コストも維持管理コストも嵩むので、到底現実的ではない。そこで、本実施形態の精算システムSにおいては、後述するように、キー情報読取装置7によって乗車券類9の電子情報に含まれるキー情報を読み取り、このキー情報に基づいて乗車券類9を所持する乗客の移動を中央処理装置6が先読みし、途中下車や経路変更をして下車する場合に備えておくことで、比較的演算能力の低い既存の自動改札機4であっても、精算処理を迅速に行うことができる。なお、乗車券類9の電子情報を読み取る機能を標準的に備える自動改札機4に対しては、特別なハードウェアを追加することなく、ソフトウェアの変更によってキー情報読取装置7の機能を付加することが可能である。
【0024】
鉄道駅1に設けられる精算機5は、この鉄道駅1が乗車券類9に設定された着駅では無い場合に、乗客が乗車券類9の購入に支払った料金と、乗客がこの鉄道駅1で下車する場合の料金との差額に基づいて、徴収あるいは返戻する精算処理を行う。精算機5が精算処理を行うためには、乗客がこの鉄道駅1で下車する場合の料金を求める必要があり、中長距離の乗車券類9の精算を精算機5単独で行わせるためには、それだけ大容量の記憶装置や高い処理性能のコンピュータを精算機5に搭載しておく必要があり、到底現実的ではない。そこで、本実施形態の精算システムSにおいては、後述するように、キー情報読取装置7によって乗車券類9の電子情報に含まれるキー情報を読み取り、このキー情報に基づいて乗車券類9を所持する乗客の移動を中央処理装置6が先読みし、途中下車や経路変更をして下車する場合に備えておくことで、比較的演算能力の低い既存の精算機5であっても、精算処理を迅速に行うことができる。特に、電子マネーによる支払い・受け取りが不可能な乗車券類9(磁気券等)で精算が必要な場合、有人窓口へ行かなくても、この精算機5で迅速に精算処理を行うことができるので、鉄道会社にとっても鉄道利用客にとっても利便性の高いものとなる。なお、乗車券類9の電子情報を読み取る機能を標準的に備える精算機5に対しては、特別なハードウェアを追加することなく、ソフトウェアの変更によってキー情報読取装置7の機能を付加することが可能である。
【0025】
鉄道駅1に設けられる駅サーバ2は、少なくとも、この鉄道駅1に設置された券売機3、自動改札機4および精算機5と通信可能に接続され、これら設置機器の統括的な管理を行う上位装置である。この駅サーバ2と構内設置機器(券売機3、自動改札機4および精算機5等)を接続する構内ネットワークは、無線接続でも有線接続でも構わない。なお、各鉄道駅1に駅サーバ2を設けず、当該鉄道駅1に設置されている全ての券売機3、自動改札機4、精算機5が直接ネットワークNWを介して中央処理装置6と接続する構成とすることも可能である。しかしながら、上位装置である駅サーバ2によって鉄道駅1内の諸設備を統括的に管理する構成とすれば、各鉄道駅1における設備管理を個別に行う必要がなく、実用的である。
【0026】
中央処理装置6は、各鉄道駅1に設置された駅サーバ2と通信可能で、乗車券類9を販売するための情報を統括的に管理し、各鉄道駅1の券売機3から駅サーバ2を介して受けた乗車券類9の発行に関する問い合わせに回答する。たとえば、列車予約の問い合わせとして、乗車日時・列車番号・人数などを中央処理装置6が受けると、該当列車の空席を確認し、座席や運賃等の回答情報を問い合わせ元の券売機3へ駅サーバ2を介して送信する。そして、この回答情報に基づく購入要望が券売機3から送信されると、この内容の乗車券類9に対応するキー情報を生成して購入要望元の券売機3へ送信すると共に、キー情報に紐付けた乗車券類9の情報を乗車券類データベース61にて管理する。なお、中央処理装置6は、運賃料金計算だけでなく、特別企画券の管理、列車案内や経路案内といった情報提供サービスなど多様な機能を実現できる大規模サーバ群により構成しても良い。
【0027】
上記のようにして、キー情報の付された乗車券類9が券売機3にて発行され、この乗車券類9を用いて鉄道利用客が鉄道駅1の自動改札機4から入場する。たとえば、
図2に示すように、X駅1xの自動改札機4に乗車券類9の電子情報が読み取られ、X駅1xが乗車券類9の発駅であれば問題なく自動改札機4のゲートが開き、鉄道利用客が入場できる。この自動改札機4には、キー情報読取装置7が設けられており、入札処理を行う乗車券類9のキー情報を取得できる。
【0028】
このキー情報と入札情報(たとえば、乗車駅、入場日時、改札機識別番号など)が駅サーバ2を介して中央処理装置6へ送信され、中央処理装置6が乗車券類データベース61からキー情報に紐付いた乗車券類9に対応するデータレコードのフィールドに必要情報を埋めてデータ更新を行う。乗車券類データベース61の一例を
図3に示す。キー情報に紐付けて、乗車券類9の内容(たとえば、発駅、着駅、経由、有効期間など)が記録されているほか、乗車券類9の利用履歴を管理するための内容(たとえば、乗車駅、下車駅、前回配信対象駅など)を記録できる。X駅1xの自動改札機4に設けたキー情報読取装置7によって乗車券類9の電子情報が読み取られたので、このキー情報に該当するデータレコードの乗車駅としてX駅1xを入力し、乗車券類データベース61を更新する。
【0029】
さらに、乗車券類データベース61からキー情報の付された乗車券類9を特定した中央処理装置6は、特定した乗車券類9の発着区間および乗車経路と、当該キー情報の送信元であるキー情報読取装置7の現在位置に基づいて、乗客が今後下車する可能性のある予測下車駅を選定できる。たとえば、
図4に示す鉄道網において、キー情報:20230123-0000001の発駅がX駅1x、着駅がY駅1yであり、その経由が○○新幹線→○○本線→□□環状線→△△線である場合、X駅1xの自動改札機4より入場して乗れる路線は○○新幹線のみであるから、予測下車駅としてA駅1a、B駅1b、C駅1c、D駅1dを選定するのが妥当である。
【0030】
なお、予測下車駅の選定手法は特に限定されるものではなく、現在地から分岐点となる駅までの全停車駅を予測下車駅に選定しても良いし、現在地から所定数だけ先の駅までを一括して予測下車駅に選定しても良い。また、この乗車券類9を所持する乗客がD駅1dで乗り換えずにそのまま○○新幹線を利用する可能性を考慮して、E駅1eやF駅1fを予測下車駅として含ませても良い。何れにしても、乗客が実際に降りた下車駅が予測下車駅に含まれていないという状況を回避できれば、予測精度が低くなっても下車可能性のある鉄道駅1を網羅するように予測下車駅を選定することが望ましい。
【0031】
上記のようにして予測下車駅を選定した中央処理装置6は、選定した予測下車駅で途中下車した場合の予測精算額を予測下車駅ごとに求め、予測下車駅ごとに求めた予測精算額とキー情報とを含ませた予測精算情報を、それぞれ対応する予測下車駅の駅サーバ2へ送信する。すなわち、A駅1aの駅サーバ2に対しては、X駅1xで○○新幹線に乗車してA駅1aで下車した場合の運賃と乗車券類9の購入金額との差額を予測精算情報として配信しておく。同様に、B駅1b、C駅1c、D駅1dの駅サーバ2に対しても、それぞれ予測精算情報を配信しておく。そして、中央処理装置6は、予測精算情報を送信したA~D駅1a~1dは、乗車券類データベース61の“前回配信対象駅”として記録しておく。すなわち、キー情報読取装置7から受け取ったキー情報と位置情報(入札情報に含まれる自動改札機4の設置駅)に基づいて選定した予測下車駅を、それぞれキー情報と紐付けて乗車券類データベース61に記録しておくのである。
【0032】
なお、鉄道利用客がX駅1xの自動改札機4から入場した後、鉄道車両8に乗らずに途中下車扱いで一旦出場したり、そのまま精算して鉄道移動をキャンセルしたりする可能性もあるので、自動改札機4のキー情報読取装置7が乗車券類9のキー情報を読み取ったタイミングで、予測下車駅の選定や予測精算情報の配信を行わない設定としてもよい。たとえば、乗客が鉄道車両8に乗車し、鉄道車両8に搭載されたキー情報読取装置7が乗車券類9のキー情報を読み取って送信し、中央処理装置6がそのキー情報を受け取ったタイミングで、予測下車駅を選定し、求めた予測精算情報を各予測下車駅に配信するようにしても良い。
【0033】
たとえば、
図5に示すように、鉄道車両8(たとえば、○○新幹線の鉄道車両8a)に設けられたキー情報読取装置7が乗車券類9のキー情報を読み取ると、読み取ったキー情報と鉄道車両8aの固有情報(たとえば、列車番号、停車中の駅や走行区間などの位置情報)がネットワークNWを介して中央処理装置6に送信される。なお、鉄道車両8aの位置情報は、キー情報読取装置7が送信する鉄道車両8aの固有情報から取得するほかに、中央処理装置6が管理する列車ダイヤと現在時刻に基づいて当該車両の現在位置を推定したり、鉄道車両8aに搭載された無線通信装置と繋がっている固定基地局の設置位置から当該車両の現在位置を推定したりすることもできる。
【0034】
そして、キー情報読取装置7が乗車券類9のキー情報を読み取ったとき、鉄道車両8aがX駅1xに停車中、あるいはX駅1xからA駅1aに向けて走行中であれば、中央処理装置6は、A駅1a、B駅1b、C駅1c、D駅1dを予測下車駅に選定し、それぞれの予測精算額を求め、各予測下車駅に予測精算情報を送信し、乗車券類データベース61の“前回配信対象駅”としてA~D駅1a~1dを記録する。なお、キー情報読取装置7の設置箇所やキー情報の読み取り手法は特に限定されるものではない。たとえば、鉄道車両8aの乗降口にキー情報読取装置7を設置しておき、乗車券類9を所持した乗客が乗車する時に磁気券を挿入したり、非接触型ICカードや携帯端末装置等を近接させたりして、その乗車券類9のキー情報を読み取れるようにしても良い。また、車両内の複数箇所にキー情報読取装置7を設けておき、近距離無線通信が可能な乗車券類9が所定の通信範囲に入ったとき、キー情報読取装置7が自動でキー情報を読み取るようにしても良い。
【0035】
乗車券類9のキー情報と現在位置に基づいて予測下車駅を選定し、各予測下車駅へ予測精算情報を送信して乗車券類データベース61を更新した後、鉄道車両8aがD駅1dに到着し、この乗客が他の鉄道車両8(たとえば、○○本線の鉄道車両8b)に乗り換える場合を
図6に示す。この乗車券類9が鉄道車両8bのキー情報読取装置7によって読み取られ、キー情報と鉄道車両8bの現在位置が中央処理装置6に送信される。中央処理装置6は、鉄道車両8bのキー情報読取装置7によって読み取られたキー情報に基づいて乗車券類データベース61を検索すると、このキー情報に対応するデータレコードには、“前回配信対象駅”としてA~D駅1a~1dが既に記録されていることがわかる。
【0036】
そこで、中央処理装置6は、当該キー情報の送信元であるキー情報読取装置7の現在位置に基づいて、乗客が今後下車する可能性のある予測下車駅を新たに選定し、予測下車駅に含まれなくなった各鉄道駅1に対しては予測精算情報の削除指示を行う。たとえば、鉄道車両8bのキー情報読取装置7によって読み取られたキー情報に紐付いたデータレコードの“前回配信対象駅”としてA~D駅1a~1dが既に記録されていれば、中央処理装置6がA~D駅1a~1dに対して削除情報を送信することで、A~D駅1a~1dの各駅サーバ2に配信された予測精算情報の削除を指示する。また、鉄道車両8bがD駅1dに停車中、あるいはD駅1dからG駅1gに向けて走行中であれば、中央処理装置6は、○○本線にて移動可能な駅のうち、たとえばG駅1gおよびH駅1hを予測下車駅に選定し、それぞれの予測精算情報を求め、G駅1gおよびH駅1hの駅サーバ2にそれぞれの予測精算情報を送信し、“前回配信対象駅”としてG駅1gおよびH駅1hを記録して乗車券類データベース61を更新する。
【0037】
なお、鉄道車両8bに設けたキー情報読取装置7によって乗車券類9のキー情報が読み取られた場合には、鉄道車両8bの列車番号などから、この鉄道車両8bの進行方向が分かるので、進行方向の駅に絞って予測下車駅を選定すればよい。しかしながら、駅構内の通路やプラットホームに向かう階段の途中にキー情報読取装置7を設け、このキー情報読取装置7で読み取ったキー情報に基づき予測下車駅の選定を行う場合、そのプラットホームで乗客が上り線に乗るのか下り線に乗るのか分からないので、両方向の複数駅をまとめて予測下車駅に選定しても良い。また、プラットホームに向かう階段の途中等に設けたキー情報読取装置7で読み取られたキー情報の付された乗車券類9を持つ乗客が移動したと推定されるプラットホームで乗車できる路線が複数種類ある場合には、複数の路線を網羅するように予測下車駅を選定してもよい。
【0038】
○○本線の鉄道車両8bに乗った乗客がG駅1gにて□□環状線に乗り換えたことを、□□環状線の鉄道車両8に設けたキー情報読取装置7から送信されたキー情報に基づいて判定した中央処理装置6は、G駅1gおよびH駅1hの駅サーバ2に対して削除情報を送信すると共に、□□環状線内のI駅1iおよびJ駅1jを新たな予測下車駅に選定する。なお、キー情報に紐付いた乗車券類データベース61に記録されている経由情報に基づき、中央処理装置6が、乗換駅であるG駅1gの次駅であるI駅1iから経由駅であるJ駅1jまでを予測下車駅に選定する場合を示したが、予測下車駅の選定手法はこれに限定されない。たとえば、乗換駅であるG駅1gを除いた□□環状線内の全駅(I駅1i、J駅1j、K駅1k、L駅1l、M駅1m)を予測下車駅に選定しても良い。
【0039】
□□環状線の鉄道車両8にのった乗客が△△線に乗り換えたことを、△△線の鉄道車両8に設けたキー情報読取装置7から送信されたキー情報に基づいて判定した中央処理装置6は、G駅1gおよびH駅1hの駅サーバ2に対して削除情報を送信すると共に、△△線内のN駅1nおよびO駅1oを新たな予測下車駅に選定する。なお、キー情報に紐付いた乗車券類データベース61に記録されている着駅情報は、△△線のY駅1yであるから、このY駅1yの手前駅であるN駅1nのみを予測下車駅に選定しても良いが、予定の着駅であるY駅1yを乗り越して下車する可能性もあるので、Y駅1yの先にあるO駅1oを含めて予測下車駅に選定しておくことが望ましい。
【0040】
上述したように、購入した乗車券類9の乗車経路で発駅であるX駅1xから着駅であるY駅1yまで移動してきた乗客が、Y駅1yの自動改札機4から出場する場合を
図7に示す。Y駅1yの自動改札機4に乗車券類9の電子情報が読み取られ、Y駅1yが乗車券類9の着駅であれば問題なく自動改札機4のゲートが開き、鉄道利用客が出場できる。また、この乗車券類9が自動改札機4のキー情報読取装置7によって読み取られ、キー情報と出札情報がY駅1yの駅サーバ2を介して中央処理装置6へ送信される。
【0041】
中央処理装置6は、Y駅1yにおける自動改札機4のキー情報読取装置7によって読み取られたキー情報に基づいて乗車券類データベース61を検索し、このキー情報に対応するデータレコードの下車駅情報としてY駅1yを登録し、この乗車券類9を使用済みとする。また、このキー情報に対応するデータレコードの“前回配信対象駅”としてN駅1nおよびO駅1oが記録されているので、N駅1nおよびO駅1oの各駅サーバ2に対して削除情報を配信し、予測精算情報の削除を指示する。なお、使用済みとした乗車券類9のキー情報に対応するデータレコードの“前回配信対象駅”のフィールドには、最後の配信対象駅としてN駅1nおよびO駅1oの記録を残しておいても良いし、このキー情報を付した乗車券類9が使用済みであることを明確にするため“前回配信対象駅”のフィールドをクリアしてもよい。
【0042】
一方、購入した乗車券類9の着駅であるY駅1yではない鉄道駅1、たとえば、O駅1oの自動改札機4から出場する場合を
図8に示す。乗客が乗車券類9として、電子マネー機能付きの乗車券類9aを持っており、その乗車券類9aに必要十分な額がチャージされていれば、O駅1oの自動改札機4にて精算を行えるので、乗客はそのまま出場できる。なお、自動改札機4は、図示を省略した電子マネー決済機関の管理サーバ等と直接あるいは駅サーバ2等を介して間接的に接続されており、電子マネーで追徴あるいは返戻することにより、途中下車や行き先変更に伴う乗車券類9aの精算を自動改札機4にて行える。
【0043】
図8に示すように、乗車券類9aを所持する乗客がO駅1oの自動改札機4から出場する場合、自動改札機4にて乗車券類9aの電子情報が読み取られ、O駅1oが乗車券類9の着駅でないので自動改札機4のゲートを閉じる、あるいは閉じたままとする。このとき、乗車券類9のキー情報が自動改札機4のキー情報読取装置7によって読み取られるので、このキー情報に基づく精算の問い合わせがO駅1oの駅サーバ2に対して行われる。
【0044】
予測下車駅であるO駅1oの駅サーバ2は、中央処理装置6から受け取った予測精算情報を管理しているので、自駅に設置されている自動改札機4(あるいは精算機5)のキー情報読取装置7が読み取ったキー情報と一致しているキー情報を含む予測精算情報が有るか否かを検索する。該当するキー情報を含む予測精算情報があれば、その予測精算情報に含まれる予測精算額を問い合わせ元の自動改札機4へ送信することで精算額の回答とする。駅サーバ2から精算額の回答を受けた自動改札機4は、その予測精算額に応じた追徴あるいは返戻を電子マネーで行い、精算処理を完了する。このように、乗車券類9aのキー情報に対応する予測精算情報を、中央処理装置6から予測下車駅に予め配信しておけば、乗客が本来の着駅ではない鉄道駅1で下車して精算処理が必要となった場合でも、中央処理装置6に精算額を問い合わせて結果が戻ってくるまでの遅延時間を無くせるので、迅速に精算処理を行うことが可能となる。
【0045】
上述したように、自動改札機4での精算処理が完了すると、自動改札機4は出札ゲートを開くと共に、出札時刻や出札駅等の情報を書き込んで乗車券類9aを使用済みにする出札処理を行い、その出札情報が、駅サーバ2を介してキー情報と共に中央処理装置6へ送信される。中央処理装置6は、O駅1oから送信されたキー情報に基づいて乗車券類データベース61を検索し、このキー情報に対応するデータレコードの下車駅情報としてO駅1oを登録し、この乗車券類9を使用済みとする。また、このキー情報に対応するデータレコードの“前回配信対象駅”としてN駅1nおよびO駅1oが記録されているので、N駅1nおよびO駅1oの各駅サーバ2に対して削除情報を配信し、予測精算情報の削除を指示する。なお、O駅1oの駅サーバ2は、キー情報に対応する予測精算情報を用いた精算処理を自動改札機4に行わせた時点で、このキー情報に紐付いた乗車券類9が使用済みであることを把握しているので、中央処理装置6からの削除情報の配信を待つことなく、対応する予測精算情報を削除しても良い。その場合、中央処理装置6は、下車駅となった予測下車駅に対する削除情報の配信を省略すれば良い。
【0046】
なお、上述したO駅1oの駅サーバ2は、キー情報を含む予測精算情報を中央処理装置6より受け取って一括管理し、自駅に設置されている自動改札機4または精算機5が、精算処理が必要となる乗車券類9aを検知した場合、その乗車券類9aに付されたキー情報から予測精算情報の有無を判定し、該当する予測精算情報があれば、予測精算額を問い合わせ元の自動改札機4または精算機5へ送信し、自動改札機4または精算機5に精算処理を行わせるものとした。しかしながら、予測精算情報に基づいて自動改札機4または精算機5によって精算処理を行う手法は、中央処理装置6より受け取った予測精算情報を駅サーバ2が一括管理してキー情報検出時に対象となる自動改札機4または精算機5へ提供する手法に限定されるものではない。
【0047】
たとえば、中央処理装置6から予測精算情報を受け取った予測下車駅の駅サーバ2は、自駅に設置されている全ての自動改札機4および精算機5へ、予測精算情報(キー情報および予測精算額)を予め送信しておき、それぞれの自動改札機4または精算機5にキー情報と予測精算額の管理を委ねても良い。その場合、自動改札機4または精算機5は、駅サーバ2より受け取ったキー情報の付された乗車券類9aを検知した場合、キー情報に対応する予測精算額で精算処理を行えば良いので、駅サーバ2に対する問い合わせを行ったり、その回答を待ったりする時間も省くことができ、一層迅速な精算処理を行うことが可能となる。なお、予測下車駅に選定される頻度が高くなる都市部などの鉄道駅1では、同時に管理する予測精算情報の数が多くなるため、予測精算情報の一時記憶に割り当てる大きな記憶容量が必要になると共に、多くの予測精算情報群の中からキー情報で迅速に検索できる高い演算処理性能も必要となるので、大きな記憶容量と高い演算処理性能を持った自動改札機4や精算機5を設置しておくことが望ましい。
【0048】
また、購入した乗車券類9の着駅であるY駅1yではない鉄道駅1、たとえば、O駅1oの精算機5で精算して出場する場合を
図9に示す。乗客が乗車券類9として、電子マネー機能の付いていない磁気券等よりなる乗車券類9bを持っている場合、O駅1oの自動改札機4にて精算を行えないので、精算機5にて精算する必要がある。なお、精算が必要であるにもかかわらず、乗車券類9bで自動改札機4から出場しようとした場合、自動改札機4のゲートが閉まり、警告音と共に精算機5での精算を促す旨の表示が行われる。いずれにしても、自動改札機4での精算対象とならない乗車券類9bを所持している乗客は、精算機5へ向かい、持っている乗車券類9bを精算機5に投入して精算することとなる。
【0049】
投入された乗車券類9bのキー情報が精算機5のキー情報読取装置7によって読み取られるので、このキー情報に基づく精算の問い合わせがO駅1oの駅サーバ2に対して行われる。予測下車駅であるO駅1oの駅サーバ2は、精算機5のキー情報読取装置7が読み取ったキー情報と一致しているキー情報を含む予測精算情報が有るか否かを検索し、該当するキー情報を含む予測精算情報があれば、その予測精算情報に含まれる予測精算額を問い合わせ元の精算機5へ送信することで精算額の回答とする。駅サーバ2から精算額の回答を受けた精算機5は、その予測精算額を乗客に提示し、現金の投入あるいはキャッシュレス決済による支払いを促す。なお、精算機5で払い戻しとなる場合には、予測精算情報に含まれる予測精算額を乗客に提示し、ボタン操作等による乗客の了承を得た後、精算額分の現金を払い出す。
【0050】
上述したように、精算機5で、乗車券類9bのキー情報に対応する予測精算額を追徴あるいは返戻して精算処理が完了すると、乗車券類9bを使用済みにして取り込み、乗客に出場証を発行する出場処理を行う。乗客はこの出場証を用いて自動改札機4あるいは有人改札を通過し、O駅1oを出場できる。また、精算機5が出場処理を行うと、その出札情報が、駅サーバ2を介してキー情報と共に中央処理装置6へ送信される。中央処理装置6は、O駅1oから送信されたキー情報に基づいて乗車券類データベース61を検索し、このキー情報に対応するデータレコードの下車駅情報としてO駅1oを登録し、この乗車券類9を使用済みとする。また、このキー情報に対応するデータレコードの“前回配信対象駅”としてN駅1nおよびO駅1oが記録されているので、N駅1nおよびO駅1oの各駅サーバ2に対して削除情報を配信し、予測精算情報の削除を指示する。なお、O駅1oの駅サーバ2は、キー情報に対応する予測精算情報を用いた精算処理を自動改札機4に行わせた時点で、このキー情報に紐付いた乗車券類9が使用済みであることを把握しているので、中央処理装置6からの削除情報の配信を待つことなく、対応する予測精算情報を削除しても良い。その場合、中央処理装置6は、下車駅となった予測下車駅に対する削除情報の配信を省略すれば良い。
【0051】
なお、購入した乗車券類9の着駅であるY駅1yではない鉄道駅1で下車する場合、その前の乗り換え時にキー情報読取装置7が乗車券類9のキー情報を読み取れていなかった等の事情で、その下車駅が中央処理装置6によって予測下車駅に選定されていないケースも起こり得る。たとえば、O駅1oが中央処理装置6によって予測下車駅に選定されておらず、予測精算情報がO駅1oの駅サーバ2に送信されていなかった場合、O駅1oで乗客が下車しようとしても、自動改札機4は予測精算額での精算処理を行えないため、出札できないこととなる。しかしながら、入札時にキー情報読取装置7を設けた自動改札機4を通っていれば、乗車駅(入札駅)は必ず乗車券類データベース61に記録されているので、中央処理装置6で精算額を算定する通常の精算処理で対応できる。たとえば、乗客が経路変更した下車駅であるO駅1oに設置された精算機5のキー情報読取装置7が下車精算用の乗車券類9からキー情報を読み取ると、当駅下車精算である旨と共にキー情報を中央処理装置6へ送信し、中央処理装置6が経路不明部分も含めて規定の運賃計算ルールに基づき精算額を求め、O駅1oの精算機5に下車精算額を送信するので、精算機5で精算処理を行うことができる。よって、精算システムSでは、予測下車駅を選定して予測精算情報を送信しておく先読み動作が働かなかった場合でも、下車駅の精算機5での精算処理を行えるので、有人窓口での対応を軽減できるという利点がある。
【0052】
また、購入した乗車券類9に設定された着駅であるY駅1yで下車する場合であっても、発駅から着駅までに使った経路が乗車券類9に設定されている本来の経路と異なることが、キー情報の検出位置の履歴から分かっており、精算が必要である場合には、中央処理装置6がY駅1yも予測下車駅に選定して予測精算情報を送信しておく運用とすることも出来る。たとえば、その乗車券類9の着駅に設定されているY駅1yにおいて、乗車券類9のキー情報を自動改札機4あるいは精算機5のキー情報読取装置7が読み取り、このキー情報に対応する予測精算額が予測精算情報として中央処理装置6よりY駅1yに送信されていれば、自動改札機4あるいは精算機5は出札処理を行わず、予測精算額に基づく精算処理を行うことが可能となる。
【0053】
以上説明したように、本実施形態の精算システムSによれば、乗客が所持する乗車券類9に付したキー情報を、自動改札機4や鉄道車両8に設けたキー情報読取装置7で読み取り、中央処理装置6へ送信すると、中央処理装置6はキー情報読取装置7の現在位置から、乗客が今後下車する可能性のある予測下車駅を選定し、選定した予測下車駅で乗客が途中下車した場合の予測精算額を予測下車駅ごとに求め、予測下車駅ごとに求めた予測精算額とキー情報とを含ませた予測精算情報を、対応する予測下車駅の駅サーバ2へ送信するので、中央処理装置6により選定された各予測下車駅では、そのキー情報に紐付いた乗車券類9を所持する乗客が途中下車する場合の精算に備えることができる。よって、予測下車駅の自動改札機4や精算機5が、予測精算情報に含まれるキー情報の付された乗車券類9を検知した場合、予測精算情報に含まれる予測精算額で精算処理を行うので、比較的演算能力の低い既存の自動改札機4や精算機5であっても、精算処理を迅速に行える。また、キー情報に基づく乗客の乗降駅や乗り換えなどの移動経路は、中央処理装置6にて管理し、予測下車駅で乗客が下車する場合の予測精算額の算出も中央処理装置6が行うので、システムとしての安定性が高い。
【0054】
以上、本発明に係る券売システムの実施形態を添付図面に基づいて説明したが、本発明は、この実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の構成を変更しない範囲で、公知既存の等価な技術手段を転用することにより実施しても構わない。
【符号の説明】
【0055】
S 券売システム
1 鉄道駅
2 駅サーバ
3 券売機
4 自動改札機
5 精算機
6 中央処理装置
61 乗車券類データベース
7 キー情報読取装置
8 鉄道車両
9 乗車券類
NW ネットワーク
【要約】
【課題】システムの安定性が高く、比較的演算能力の低い既存の自動改札機での精算処理を迅速に行える精算システムを提供する。
【解決手段】精算システムSは、乗客が所持する乗車券類9に付したキー情報を、自動改札機4や鉄道車両8に設けたキー情報読取装置7で読み取り、中央処理装置6へ送信すると、中央処理装置6はキー情報読取装置7の現在位置から、乗客が今後下車する可能性のある予測下車駅を選定し、選定した予測下車駅で乗客が途中下車した場合の予測精算額を予測下車駅ごとに求め、予測下車駅ごとに求めた予測精算額とキー情報とを含ませた予測精算情報を、対応する予測下車駅の駅サーバ2へ送信するので、中央処理装置6により選定された各予測下車駅では、そのキー情報に紐付いた乗車券類9を所持する乗客が途中下車する場合の精算に備えることができる。
【選択図】
図1