(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】油流出船舶探知システム及び探知方法
(51)【国際特許分類】
G01V 8/02 20060101AFI20241125BHJP
G01V 9/00 20060101ALN20241125BHJP
G01W 1/00 20060101ALN20241125BHJP
【FI】
G01V8/02
G01V9/00 Z
G01W1/00 Z
(21)【出願番号】P 2023102196
(22)【出願日】2023-06-22
【審査請求日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】10-2022-0075959
(32)【優先日】2022-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518304915
【氏名又は名称】コリア インスティテュート オブ オーシャン サイエンス テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,チャン・ス
(72)【発明者】
【氏名】ハルン‐アル・ラシッド・アーメド
【審査官】中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第2019-0000151(KR,A)
【文献】韓国登録特許第1534620(KR,B1)
【文献】特開2021-085730(JP,A)
【文献】特開2008-281423(JP,A)
【文献】特開2008-089360(JP,A)
【文献】特表2009-536329(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 9/00 - 10/00
G01V 1/00 - 99/00
G01W 1/00 - 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油流出が発生したと推定される領域である関心領域において流出油帯を識別するステップと、
前記識別された流出油帯の流出船舶を特定するステップと、
前記流出船舶の情報を確認するステップと、を含
み、
前記識別された流出油帯の流出船舶を特定するステップでは、特定の範囲内にある船舶を流出船舶として特定し、
前記特定の範囲は、前記識別された流出油帯の移動方向の端の延長線を中心として設定角度θを想定して扇形形状を作ることによって設定される、油流出船舶探知方法。
【請求項2】
前記関心領域において流出油帯を識別するステップは、
航空宇宙プラットフォームから前記関心領域のリモートセンシング情報を受信するステップと、
前記関心領域の海上情報及び気象情報を受信するステップと、
前記関心領域のリモートセンシング情報、海上情報及び気象情報を用いて流出油を抽出するステップと、
前記リモートセンシング情報から流出油の位置を仮想粒子データに加工するステップと、
前記海上情報、気象情報、及び風速と海流の空間的な変化を反映した流出油移動寄与比率を計算した係数値を用いて前記仮想粒子の移動を正方向又は逆方向に追跡することにより前記流出油の軌跡を追跡するステップと、を含む、請求項1に記載の油流出船舶探知方法。
【請求項3】
前記識別された流出油帯の流出船舶を特定するステップで、前記流出船舶の特定は、前記流出油帯の移動方向の端にある船舶を流出船舶として特定することにより行われる、請求項1に記載の油流出船舶探知方法。
【請求項4】
油流出が発生したと推定される領域である関心領域において流出油帯を識別する流出油帯識別部と、
前記識別された流出油帯の流出船舶を特定する流出船舶特定部と、
前記流出船舶の情報を確認する船舶情報確認部と、を含
み、
前記流出船舶特定部は、特定の範囲内にある船舶を流出船舶として特定し、
前記特定の範囲は、前記識別された流出油帯の移動方向の端の延長線を中心として設定角度θを想定して扇形形状を作ることによって設定される、油流出船舶探知システム。
【請求項5】
前記流出油
帯識別部は、
人工衛星から前記関心領域のリモートセンシング情報を受信する第1受信部と、
前記関心領域の海上情報及び気象情報を受信する第2受信部と、
前記関心領域のリモートセンシング情報、海上情報及び気象情報を用いて流出油を抽出する流出油抽出部と、
前記リモートセンシング情報から流出油の位置を仮想粒子データに加工するデータ加工部と、
前記海上情報、気象情報、及び風速と海流の空間的な変化を反映した流出油移動寄与比率を計算した係数値を用いて前記仮想粒子の移動を正方向または逆方向に追跡することにより前記流出油の軌跡を追跡する追跡部と、を含む、請求項
4に記載の油流出船舶探知システム。
【請求項6】
前記流出船舶特定部は、
前記流出油帯の移動方向の端にある船舶を流出船舶として特定する、請求項
5に記載の油流出船舶探知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油流出船舶探知システム及び探知方法に関し、特に、関心領域において流出油帯を探知し、前記流出油帯の周辺に1つ以上の船舶がある場合に当該流出油帯の流出船舶を探知する探知システム及び探知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶には、エンジン機関の動力を利用して推進されるので、燃料を貯蔵、供給するための油タンクが設けられるが、このような船舶が礁にぶつかったり他の船舶と衝突したりして油タンクが破損してしまい、油が外部へ流出することが起こる。このような油流出は、海洋を汚染させて海洋の生態系を破壊し、沿岸海資源を枯渇させ、養殖魚類を廃死させるなどの深刻な問題を生じさせ、特に、大型船舶やタンカーなどの場合には上記の問題点がさらに深刻に現れる。
【0003】
したがって、上述したような油流出による海洋汚染を低減するために、一般にオイルフェンスを設置して油の拡散を抑制し、乳化剤で油を分解して沈殿させる対策などが行われている。これらの対策を行い、油の拡散地域を予想するためには、海洋の油流出拡散範囲の早期予測が必要である。
【0004】
船舶が所定の航路から外れた場合、座礁したり港湾施設と衝突したりして人命及び財産の損失などが発生するおそれがある。これを防ぐために、海上交通管制センタ(Vessel Traffic Service Center)は、船舶の位置、速度及び針路を持続的に監視する管制機能を提供する。
【0005】
また、船舶は、基本的に、船舶自動識別装置(AIS:Auto Identification System)を介して周期的に位置と運航速度を知らせ、それにより船舶の状態を確認することができる。
【0006】
しかし、通信範囲の限界、混雑度、不法操業を行う船舶の意図的なAIS電源オフ、AIS故障などの理由でAIS情報を利用することができない場合が生じる。この場合、船舶の情報が分からないことが生じる。
【0007】
油流出が生じた場合、流出した油は、時間経過とともに流出油帯(帯状流出油)を形成し、海流と風の影響によって移動する。このとき、関心領域に1つ以上の船舶が存在する場合、どの船舶から油が流出したかを特定できないという問題が生じることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、関心領域において流出油帯を探知し、前記流出油帯の周辺に1つ以上の船舶がある場合には当該流出油帯の流出船舶を探知する油流出船舶探知システム及び探知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するための本発明による油流出船舶探知方法は、油流出が発生したと推定される領域である関心領域において流出油帯を識別するステップと、前記識別された流出油帯の流出船舶を特定するステップと、前記流出船舶の情報を確認するステップと、を含むことにその特徴がある。
【0011】
ここで、特に前記関心領域において流出油帯を識別するステップは、航空宇宙プラットフォームから前記関心領域のリモートセンシング情報を受信するステップと、前記関心領域の海上情報及び気象情報を受信するステップと、前記関心領域のリモートセンシング情報、海上情報及び気象情報を用いて流出油を抽出するステップと、前記リモートセンシング情報から流出油の位置を仮想粒子データに加工するステップと、前記海上情報、気象情報、及び風速と海流の空間的な変化を反映した流出油移動寄与比率を計算した係数値を用いて前記仮想粒子の移動を正方向又は逆方向に追跡することにより前記流出油の軌跡を追跡するステップと、を含むことにその特徴がある。
【0012】
ここで、特に、前記識別された流出油帯の流出船舶を特定するステップで、前記流出船舶の特定は、前記流出油帯の移動方向の端にある船舶を流出船舶として特定することにより行われることにその特徴がある。
【0013】
ここで、特に、前記識別された流出油帯の流出船舶を特定するステップで、前記流出船舶特定は、特定の範囲内にある船舶を流出船舶として特定することにより行われることにその特徴がある。
【0014】
ここで、特に、前記特定の範囲は、海流や風などの外力またはアジマスシフト現象を考慮して設定角度θを想定することにより設定されることにその特徴がある。
【0015】
ここで、特に、前記識別された流出油帯の流出船舶を特定するステップで、前記流出船舶の特定は、流出油帯の移動方向の端の逆追跡軌跡と、流出船舶として推定される船舶の逆追跡軌跡とのパターンを比較して流出船舶を特定することにその特徴がある。
【0016】
また、上記の目的を達成するための本発明による油流出船舶探知システムは、油流出が発生したと推定される領域である関心領域において流出油帯を識別する流出油帯識別部と、前記識別された流出油帯の流出船舶を特定する流出船舶特定部と、前記流出船舶の情報を確認する船舶情報確認部と、を含むことにその特徴がある。
【0017】
ここで、特に、前記流出油識別部は、航空宇宙プラットフォームから前記関心領域のリモートセンシング情報を受信する第1受信部と、前記関心領域の海上情報及び気象情報を受信する第2受信部と、前記関心領域のリモートセンシング情報、海上情報及び気象情報を用いて流出油を抽出する流出油抽出部と、前記リモートセンシング情報から流出油の位置を仮想粒子データに加工するデータ加工部と、前記海上情報、気象情報、及び風速と海流の空間的な変化を反映した流出油移動寄与比率を計算した係数値を用いて前記仮想粒子の移動を正方向または逆方向に追跡することにより前記流出油の軌跡を追跡する追跡部と、を含むことにその特徴がある。
【0018】
ここで、特に、前記流出船舶特定部は、前記流出油帯の移動方向の端にある船舶を流出船舶として特定することにその特徴がある。
【0019】
ここで、特に、前記流出船舶特定部は、前記流出船舶の特定を特定の範囲内にある船舶を流出船舶として特定することにその特徴がある。
【0020】
ここで、特に、前記特定の範囲は、海流や風などの外力またはアジマスシフト現象を考慮して設定角度θを想定することにより設定されることにその特徴がある。
【0021】
ここで、特に、前記流出船舶特定部は、流出油帯の移動方向の端の逆追跡軌跡と、流出船舶として推定される船舶の逆追跡軌跡とのパターンを比較して流出船舶を特定することにその特徴がある。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、関心領域において流出油帯を探知し、前記流出油帯の周辺に1つ以上の船舶がある場合には、当該流出油帯の流出船舶を探知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態による油流出船舶探知方法の構成を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態による関心領域内の流出油帯と船舶を示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態による流出船舶の特定方法を示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態による流出船舶の特定方法を示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態による流出船舶の特定方法を示す図である。
【
図6】本発明の一実施形態による流出船舶の特定方法を示す図である。
【
図7】本発明の一実施形態による油流出船舶探知システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の望ましい実施形態を添付の図面に基づいて詳しく説明するが、本発明は、これらの実施例により限定されるものではない。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態による油流出船舶探知方法の構成を示す図であり、
図2は、本発明の一実施形態による関心領域内の流出油帯と船舶を示す図であり、
図3乃至
図6は、本発明の一実施形態による流出船舶の特定方法を示す図である。
【0026】
図1乃至
図6を参照すると、本発明による油流出船舶探知方法は、まず、油流出が発生したと推定される領域である関心領域10において流出油帯100を識別するステップ(S100)が行われる。
【0027】
前記関心領域10は、i)海洋汚染事故発生届が届いた領域、ii)艦艇、航空機、衛星などの監視によって海洋汚染事故が発生する可能性があると判断された領域、iii)前記i)、ii)による領域で海洋汚染が移動すると予測される領域のうちの1つ以上を含むことができる。
【0028】
次に、前記識別された流出油帯100の流出船舶200を特定するステップ(S200)が行われる。
【0029】
その後、前記流出船舶200の情報を確認するステップ(S300)が行われる。
【0030】
図2に示すように、前記関心領域10において識別された流出油帯100に対応する流出船舶200が1つ以上存在する場合、どの船舶から油が流出したかを特定する必要があり、防除作業を迅速かつ効率よく行うためには流出船舶200が特定されなければならない。
【0031】
前記油流出が発生したと推定される領域である関心領域10において流出油帯100を識別するステップ(S100)は、航空宇宙プラットフォームから前記関心領域10のリモートセンシング情報を受信するステップ(S110)と、前記関心領域10の海上情報及び気象情報を受信するステップ(S120)と、前記関心領域10のリモートセンシング情報、海上情報及び気象情報を用いて流出油を抽出するステップ(S125)と、前記リモートセンシング情報から流出油の位置を仮想粒子データに加工するステップ(S130)と、前記海上情報、気象情報、及び風速と海流の空間的な変化を反映した流出油移動寄与比率を計算した係数値を用いて前記仮想粒子の移動を正方向または逆方向に追跡して前記流出油の軌跡を追跡するステップ(S140)と、を含んで行われる。
【0032】
前記航空宇宙プラットフォームは、人工衛星、有人機及び無人機のうちの1つ以上を含むことができる。ただし、これに限定されない。
【0033】
前記リモートセンシング情報、前記海上情報、及び前記気象情報は、前記関心領域10の第1時間に受信される情報であり、前記流出油の軌跡を追跡するステップ(S140)は、前記第1時間に受信される情報に基づいて、第2時間の間に前記流出油の移動速度及び移動範囲を追跡することができる。
【0034】
前記リモートセンシング情報は、光学センサ、赤外センサ、紫外線センサまたはマイクロ波センサから取得されるイメージデータ及び電波特性データのうちの少なくとも一つ以上を含むことができる。
【0035】
前記海上情報は、前記関心領域10の潮流の速度及び方向、ならびに海流の速度及び方向のうちの少なくとも一つを含むことができる。
【0036】
前記気象情報は、前記関心領域10の風速及び風向に関する情報を含むことができる。
【0037】
前記ステップS140の仮想粒子の移動を正方向または逆方向に追跡することは、下記数式1及び数式2に基づいて推定できる。
【数1】
【数2】
式中、
は、t-Δt、t、t+Δt瞬間のi番目の仮想粒子の位置であり、
vは、風速と海流の空間的な変化を反映した流出油移動寄与比率を計算した係数値を適用した速度であり、
u
dは、乱流拡散速度である。
前記風速と海流の空間的な変化を反映した流出油移動寄与比率を計算した係数値を適用した速度vは、下記数式3に基づいて行われる。
【数3】
式中、C
cは海流ドリフト係数(current drift coefficient)であり、u
cは表面海流速度(the surface current velocity)であり、C
wは風速割増係数(wind drag coefficient)であり、u
wは風速度である。
【0038】
図3を参照すると、一実施形態として、前記識別された流出油帯の流出船舶を特定するステップ(S200)で、流出船舶の特定は、前記流出油帯の移動方向の端にある船舶を流出船舶として特定することにより行われる。
【0039】
図4を参照すると、一実施形態として、前記識別された流出油帯の流出船舶を特定するステップ(S200)で、流出船舶の特定は、特定の範囲内にある船舶を流出船舶として特定することができる。
【0040】
前記特定の範囲は、海流や風などの外力またはアジマスシフト現象を考慮して設定角度θを想定することにより設定できる。
【0041】
前記特定の範囲は、流出油帯100の移動方向の端の延長線を中心として設定角度θを想定して扇形形状を作り、前記扇形形状内に位置する船舶を流出船舶として特定することができる。
【0042】
前記設定角度θは、海流や風などの外力を考慮して設定することができる。好ましくは、前記設定角度θは、5°以上~10°以下の間に設定することがよい。より好ましくは、海流や風などの外力が大きい場合には、前記設定角度θは10°に設定することがよく、海流や風などの外力が小さい場合には、前記設定角度θは5°に設定することがよい。
【0043】
図5を参照すると、前記識別された流出油帯の流出船舶を特定するステップ(S200)は、一実施形態として、アジマスシフト現象を考慮して流出船舶を特定することができる。船舶のように移動する物体は、アジマスシフト(Azimuth shift)現象が現れる。
図5において、流出油帯100に該当する油流出をした船舶が、表記した流出船舶200と同じである場合、アジマスシフト現象により後流主成分線と流出船舶200が一定間隔だけ離隔して現れるため、流出船舶200の特定の際にアジマスシフト現象を考慮して、特定の範囲内にある船舶を流出船舶200として特定することができる。
【0044】
図6を参照すると、一実施形態として、前記識別された流出油帯の流出船舶を特定するステップ(S200)で、流出船舶の特定は、流出油帯100の移動方向の端Pの逆追跡軌跡(a軌跡)と、流出船舶200として推定される船舶の逆追跡軌跡(b軌跡)とのパターンを比較して流出船舶200を特定することができる。
【0045】
より具体的には、
図6を参照すると、時間t0~時間t-2(逆追跡)の間の流出油帯100-0~100-2の移動方向の端P-0~P-2の軌跡をa軌跡として導出し、流出油帯100の流出船舶200-0~200-2として推定される船舶の時間t0~時間t-2の間の移動軌跡であるb軌跡を導出して前記a軌跡と前記b軌跡との類似性を判断し、類似性が高い場合には、当該船舶を流出船舶200として特定することができる。
【0046】
前記流出船舶200の情報を確認するステップ(S300)では、ステップS200で特定された流出船舶の情報を確認する。流出船舶の情報は、船舶の種類や船舶の移動経路など、管制塔やAIS情報などを介して得られる船舶に関するすべての情報を含む。当該情報を確認した後、防除作業を行うことにより、流出船舶情報に応じて防除作業をどのように行うかを決定するので、効率的な防除作業を行うことができる。
【0047】
図7は、本発明の一実施形態による油流出船舶探知システムの構成を示す図である。
【0048】
図7を参照すると、本発明による油流出船舶探知システムは、流出油帯識別部400、流出船舶特定部500及び船舶情報確認部600を含んで構成される。
【0049】
前記流出油帯識別部400は、油流出が発生したと推定される領域である関心領域10において流出油帯100を識別することができる。
【0050】
前記流出船舶特定部500は、前記識別された流出油帯100の流出船舶200を特定することができる。
【0051】
前記船舶情報確認部600は、前記流出船舶200の情報を確認することができる。
【0052】
前記油帯識別部400は、航空宇宙プラットフォームから前記関心領域のリモートセンシング情報を受信する第1受信部410と、前記関心領域の海上情報及び気象情報を受信する第2受信部420と、前記関心領域のリモートセンシング情報、海上情報及び気象情報を用いて流出油を抽出する流出油抽出部425と、前記リモートセンシング情報から流出油の位置を仮想粒子データに加工するデータ加工部430と、前記海上情報、気象情報、及び風速と海流の空間的な変化を反映した流出油移動寄与比率を計算した係数値を用いて前記仮想粒子の移動を正方向又は逆方向に追跡して前記流出油の軌跡を追跡する追跡部440と、を含んで構成される。
【0053】
前記航空宇宙プラットフォームは、人工衛星、有人機及び無人機のうちの1つ以上を含むことができる。ただし、これに限定されない。
【0054】
前記リモートセンシング情報、前記海上情報及び前記気象情報は、前記関心領域10の第1時間に受信される情報であり、前記流出油の軌跡を追跡するステップ(S140)は、前記第1時間に受信される情報に基づいて、第2時間の間に前記流出油の移動速度及び移動範囲を追跡することができる。
【0055】
前記リモートセンシング情報は、光学センサ、赤外センサ、紫外線センサまたはマイクロ波センサから取得されるイメージデータ及び電波特性データのうちの少なくとも一つ以上を含むことができる。
【0056】
前記海上情報は、前記関心領域10の潮流の速度及び方向、ならびに海流の速度及び方向のうちの少なくとも一つを含むことができる。
【0057】
前記気象情報は、前記関心領域10の風速及び風向に関する情報を含むことができる。
【0058】
前記追跡部440は、仮想粒子の移動を正方向または逆方向に追跡することを前記数式1及び数式2に基づいて推定することができる。
【0059】
前記風速と海流の空間的な変化を反映した流出油移動寄与比率を計算した係数値を適用した速度vは、前記数式3に基づいて行われる。
【0060】
図3を参照すると、一実施形態として、前記流出船舶特定部500は、流出船舶特定を前記流出油帯の移動方向の端にある船舶を流出船舶として特定することができる。
【0061】
図4を参照すると、一実施形態として、前記流出船舶特定部500は、特定の範囲内にある船舶を流出船舶として特定することができる。
【0062】
前記特定の範囲は、海流や風などの外力またはアジマスシフト現象を考慮して設定角度θを想定することにより設定できる。
【0063】
前記特定の範囲は、流出油帯100の移動方向の端の延長線を中心として設定角度θを想定して扇形形状を作り、前記扇形形状内に位置する船舶を流出船舶として特定することができる。
【0064】
前記設定角度θは、海流や風などの外力を考慮して設定することができる。好ましくは、前記設定角度θは、5°以上10°以下の間に設定することが良い。より好ましくは、海流や風などの外力が大きい場合には、前記設定角度θは10°に設定することがよく、海流や風などの外力が小さい場合には、前記設定角度θは5°に設定することがよい。
【0065】
図5を参照すると、前記流出船舶特定部500は、一実施形態として、アジマスシフト現象を考慮して流出船舶を特定することができる。船舶のように移動する物体は、アジマスシフト(Azimuth shift)現象が現れる。
図5において、流出油帯100に該当する油流出をした船舶が、表記した流出船舶200と同じである場合、アジマスシフト現象によって後流主成分線と流出船舶200が一定間隔だけ離隔して現れるため、流出船舶200の特定の際にアジマスシフト現象を考慮して、特定の範囲内にある船舶を流出船舶200として特定することができる。
【0066】
図6を参照すると、一実施形態として、前記流出船舶特定部500は、流出油帯100の移動方向の端Pの逆追跡軌跡(a軌道)と、流出船舶200として推定される船舶の逆追跡軌跡(b軌跡)とのパターンを比較して、流出船舶200を特定することができる。
【0067】
より具体的には、
図6を参照すると、時間t0~時間t-2(逆追跡)の間の流出油帯100-0~100-2の移動方向の端P-0~P-2の軌跡をa軌跡として導出し、流出油帯100の流出船舶200-0~200-2として推定される船舶の時間t0~時間t-2の間に移動軌跡であるb軌跡を導出して前記a軌跡とb軌跡との類似性を判断し、類似性が高い場合には、当該船舶を流出船舶200として特定することができる。
【0068】
前記船舶情報確認部600は、特定された流出船舶の情報を確認する。流出船舶の情報は、船舶の種類や船舶の移動経路など、管制塔やAIS情報などによって得られる船舶に関するすべての情報を含む。当該情報を確認した後、防除作業を行うことにより、流出船舶情報に応じて防除作業をどのように行うかを決定するので、効率的な防除作業を行うことができる。
【符号の説明】
【0069】
10 関心領域
100 流出油帯
200 流出船舶
400 流出油帯識別部
410 第1受信部
420 第2受信部
430 データ加工部
440 追跡部
500 流出船舶特定部
600 船舶情報確認部