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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】温室
(51)【国際特許分類】
   A01G 9/14 20060101AFI20241125BHJP
   A01G 9/24 20060101ALI20241125BHJP
【FI】
A01G9/14 C
A01G9/24 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023103980
(22)【出願日】2023-06-26
(62)【分割の表示】P 2020534367の分割
【原出願日】2018-12-21
(65)【公開番号】P2023123674
(43)【公開日】2023-09-05
【審査請求日】2023-07-20
(31)【優先権主張番号】2020176
(32)【優先日】2017-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】518355652
【氏名又は名称】ファン・デル・フーベン・ホルティカルチャラル・プロジェクツ・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビレム・ノベ
(72)【発明者】
【氏名】フィンセント・マルテイン・キッケルト
【審査官】星野 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特許第7304862(JP,B2)
【文献】実開昭59-08565(JP,U)
【文献】実開昭54-144768(JP,U)
【文献】特開平05-252837(JP,A)
【文献】西独国特許出願公開第01454648(DE,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/14
A01G 9/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明な壁と、温室の屋根の一部として1つ以上の棟梁を具備する構造体と、を備える温室であって、
棟梁は、屋根の上方および棟梁の両側に存在する2つの細長側部ゾーンを画定する屋根の上方に所定距離だけ延在し、
棟梁は1つ以上の細長中空スペースを備え、
棟梁は両側部ゾーンに1つ以上の閉鎖可能な開口部を備え、この開口部は温室の外部を棟梁の1つ以上の細長中空スペースと流体接続し、かつ、
棟梁は、温室の内部を棟梁の1つ以上の細長中空スペースと流体接続する1つ以上の開口部をその下端に備え、
前記棟梁は、細長い弁および固定部分を備え、前記弁は、固定部分に対して少なくとも第1の位置を有し、前記第1の細長側部ゾーンの前記1つ以上の開口部は、前記温室の前記外部を前記棟梁の1つ以上の細長中空スペースに流体接続し、前記反対側の1つ以上の開口部および第2の細長側部ゾーンは閉じており、前記弁は固定部分に対して第2の位置を有し、第2の細長側部ゾーンの1つ以上の開口部は、温室の外部を棟梁の1つ以上の細長中空スペースに流体接続し、第1の細長側部ゾーンの1つ以上の開口部が閉じており、
棟梁と平行に延びる軸に沿って回転することによって弁が1つの位置から別の位置に変化し、棟梁の中空スペースが管状の形状を有し、弁がこの管状中空スペース内に回転可能に配置され、弁は、使用時に管状細長スペース内で回転可能なシリンダの細長セグメントを備え、シリンダの細長セグメントには支持部品が設けられ、支持部品は、使用時に固定部分の一部である管状ハウジング内で回転し、かつ管状ハウジングが開口部を形成するように間隔を置いて配置される、
温室。
【請求項2】
前記弁は、前記温室の内部が、前記棟梁の開口部を通して前記温室の外部に流体接続されないことをもたらす、固定部分に対する第3の位置を有する、請求項1に記載の温室。
【請求項3】
前記弁は、固定部分に対して中間位置を有し、前記2つの細長側部ゾーンの内の1つにおける前記1つ以上の開口部の寸法および/または前記棟梁の下端における前記開口部の寸法は、前記他の細長側部ゾーンの前記1つ以上の開口部が閉じられている間、変更可能である、請求項1~2のいずれか1項に記載の温室。
【請求項4】
弁は、棟梁の下方に配置されたモータに回転自在に接続される伝達装置に回転自在に接続される、請求項1~3に記載の温室。
【請求項5】
前記屋根は、それぞれ前記棟梁が設けられた、多数の平行に配向された鞍状屋根の形状を有する、請求項1~のいずれか1項に記載の温室。
【請求項6】
温室がトンネル型であり、透明壁が透明ポリマーシートである、請求項1~のいずれか1項に記載の温室。
【請求項7】
前記温室が、該温室の外部から空気を取り入れる手段と、温室の外部からの空気を温室内からの空気と混合するように構成された空調混合ゾーンと、空調混合ゾーンに流体接続された多数の換気ダクトを通して空調ゾーンから温室の内部に空気を分配する手段とをさらに備える、請求項1~のいずれか1項に記載の温室。
【請求項8】
透明な壁と、温室の屋根の一部として1つ以上の棟梁を具備する構造体と、を備える、
請求項1~のいずれか1項に記載の温室の空調方法であって、
温室内の平均圧力と温室外の圧力との圧力差を維持すること、
調整された空気を得るために、この空気と温室内部から取り入れた空気とを混合すること、
強制的な流れによって調整された空気を温室内部へ分配すること、および、
圧力差を維持するために、1つ以上の棟梁に設けた開口部を通して温室内から所定体積の空気を排出すること、を備え、前記棟梁の開口部を通した空気の放出は、前記棟梁に対して側方方向に空気を導く開口部を通して行われ、前記棟梁に平行な軸上で回転する回転可能な弁が、前記空気の大部分を一方の側または他方の側に導くために使用される、
方法。
【請求項9】
棟梁の軸方向長さあたりの棟梁の開口部の面積が0.01~0.1m/mである、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記棟梁の開口部を通して排出される空気の体積は、外部空気の流れが所定の角度の下で前記棟梁の上を流れ、それによって前記棟梁の風下側および風上側を画定する状況で、前記棟梁の風下側の開口部を通して実行される、請求項8~9のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温室に関するものであり、この温室は、透明な壁と、この温室の屋根の一部としての一つ以上の棟梁を具備する構造体と、を備える。本発明はまた、新規な棟梁に関する。本発明はまた、温室内の空気を調整する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
独国特許発明第8426219号明細書は、換気を行う棟梁を備えた建物について説明している。棟梁の構造体は、同時に開閉できる2つの細長いフラップを備えており、それによって換気用の開口部を設けることができる。
【0003】
独国特許発明第1454648号明細書は、棟梁の近傍に窓を設け、空気が温室から逃げるようにした温室を記載している。
【0004】
このような温室は、国際公開第2017/176114号に記載されている。図1図2に鞍状屋根を持つ温室の模式図を示す。屋根の換気窓には、温室の内部から温室の外部に余分な空気を排出するための窓が設けられている。このような換気窓は、典型的には、規則的な間隔で全ての鞍状屋根に存在する。このような換気窓の欠点は、窓を操作するためのフレームおよび制御装置が光を奪い、したがって植物を成長させる温室の効率に悪影響を及ぼすことである。さらに、局所的な圧力差および温度差は、内部ガスがこれらの窓に向かって流れることから生じる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】独国特許発明第8426219号明細書
【文献】独国特許発明第1454648号明細書
【文献】国際公開第2017/176114号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、利用可能な太陽光の、より高い効率を有し、局所的な圧力差および温度差を回避する温室を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
これは、以下の温室によって達成される。
【0008】
透明な壁と、屋根の一部として1つ以上の棟梁を具備する構造体と、を備える温室であって、棟梁は、屋根の上方および該棟梁の両側に存在する2つの細長い側部ゾーンを画定する屋根の上のある距離に延在し、棟梁は、1つ以上の細長中空スペースを備え、棟梁は、温室の外部を棟梁の1つ以上の細長中空スペースと流体接続する開口部を両側部ゾーンに有する1つ以上の閉鎖可能な開口部を備え、棟梁は、温室の内部を該棟梁の1つ以上の細長中空スペースと流体接続する1つ以上の開口部を下端に備える。
【0009】
本発明による温室は、従来技術の温室よりも温室の屋根付近の遮光部分が少なくなる。さらに、屋根を通して温室内の空気をさらに外部に排出することも可能である。これは、温室内の局所的な圧力差および温度差を減少させる。さらなる利点は、本発明の好ましい実施形態を説明する際に議論される。
【0010】
棟梁は、温室内から棟梁の片側に空気を導くために細長の弁を設けるのが適当である。これは、温室を操作する操作員またはコンピュータが、風が温室上を吹いている場合に、風下側または風上側の棟梁の開口部を開けることができるので、有利である。風下側の開口部は、空気を温室からその外部に排出する場合に好ましく、風上側の開口部は、空気がその外部から温室に入る場合に好ましい。棟梁の開口部は、温室からその外部に空気を排出するために使用されることが好ましい。従来技術の温室では、換気窓は、典型的には、局所的に最も重要な風向のために屋根の風下側に配置される。本発明による温室は、風向きに依存しない風下側の開口部を通して空気を排出することができる。従来技術の温室では、風が特定の高い風速で誤った方向から吹くとき、換気窓を閉じなければならない。ここで、誤った方向とは、例えば、風が換気窓の開口部に吹き込むことを意味する。この窓の強制的な閉鎖は、温室内の空調の可能性を制限するため、好ましくない。ここで説明したような棟梁を有する温室では、常にその風下側の棟梁の開口部を使用することができるため、換気口の安全遮断などの必要がない。
【0011】
弁は、少なくとも第1の位置を有し、第1の細長い側部ゾーンの1つ以上の開口部は、温室の外部を棟梁の1つ以上の細長中空スペースと流体接続し、反対側および第2の細長側部ゾーンの1つ以上の開口部は閉じており、第2の位置では、第2の細長側部ゾーンの1つ以上の開口部は、温室の外部を棟梁の1つ以上の細長い中空スペースと流体接続し、第1の細長い側部ゾーンの1つ以上の開口部は閉じている。ここで、「閉じる」とは、実質的に閉じることも意味する。図1図2図9および図10に示すように、棟梁の中空スペースから閉じた開口部までガス通路があり、それによって、ごく少量の空気が温室の外側に向かって通過する可能性がある。しかしながら、このような少量の空気は、棟梁の作動には無意味であると考えられる。
【0012】
好ましくは、弁は、温室の内部が棟梁の開口部を通して温室の外部に流体接続されない結果となる第3の位置を有する。これは、2つの細長側部ゾーンの開口部を囲むことによって、および/または棟梁のその下端で1つまたは複数の開口部を囲むことによって行うことができる。好ましくは、弁は、2つの細長側部ゾーンの内の1つにおける、1つ以上の開口部の寸法および/または棟梁の下端における開口部の寸法を、他の細長側部ゾーンの1つ以上の開口部が閉じられている間に変化させることができる中間位置を有する。これは、次いで温室を完全に閉鎖し、温室の内部からその外部へ排出される空気の量を制御することができるので、有利である。
【0013】
弁は、棟梁の長手方向に移動し、2つの細長ゾーンに対するその位置に応じて、細長い寸法のゾーンのいずれかで開口部を閉鎖または開放することができる、1つ以上のスクリーンであってもよい。例えば、2つの細長ゾーンの開口部は、上方に延びる壁の開口部であってもよく、この開口部は、細長側部のいずれかに、開口部も設けられた下方に向けられたスクリーンを有する、細長で移動可能な頂部によって覆われている。スクリーンは、2つの上向きに延びる壁の内部に、または好ましくは2つの上向きに延びる壁の外側に延びることができる。スクリーンの開口部は、移動可能な頂部の位置に応じて、上方に延びる壁の開口部と位置合わせされてもよく、あるいは位置合わせされなくてもよい。開口部は、スクリーンの長さに沿って見た場合には2つのスクリーン内に交互に配置されてもよく、壁の長さに沿って見た場合には上方に延びる壁内に交互に配置されてもよい。頂部は、周知の技術によって動かすことができる。
【0014】
スクリーンを備えた上部の代わりに、長手方向に移動可能な弁は、管状の形状を有する棟梁の中空スペース内に配置された管であってもよい。次いで、管状弁は、この管状の中空スペース内で同軸移動可能である。
【0015】
弁は、棟梁と平行に延びる軸に沿った回転によって、ある位置から別の位置に変化することが好ましい。また、弁は、棟梁と平行に延びる複数の軸に沿って回転してもよい。弁は、この弁が1つの軸に沿って回転することによって位置を変化させる場合に、弁を回転させる手段に適切に接続される。このような手段は、管状モータであってもよい。この弁は、例えば傘歯車のような伝達装置を介して棟梁の下方に配置されたモータに回転可能に接続されているのが適切である。このモータは、ある程度の光を遮ることがあるが、換気窓を開閉する従来技術の手段によるほどではない。弁は、この弁が2つ以上の平行軸に沿った回転によって位置を変える場合に、弁を傾斜させるための手段に適切に接続される。
【0016】
弁は、上述の位置の内の1つ以上を達成することを適切にする任意の設計を有してもよい。1つの好ましい設計では、棟梁の中空スペースは、管状の形状を有し、弁は、この管状中空スペース内に回転可能に配置される。この弁は、2つの平行な開口部の列を備えた管であるのが適切である。管は、さらに、弁の内側の管状スペースを、2列の開口部および残りのスペースに流体接続された細長スペースに分離する細長の表面を有する。この残りは、管状壁の細長の表面および一部によって規定される、適切に細長い、囲まれたスペースである。管状弁が管状中空スペースの摺動面内に詰まるのを避けるために設けられることが好適である。このような表面は、固定棟梁の一部または回転弁の一部であってもよい。このような表面は、例えば、メッシング、テフロン(登録商標)、またはポリアミド、例えばナイロンのようなエンジニアリングプラスチックで作ることができる。棟梁および管状弁は、アルミニウム、鋼またはこれらの金属を含む合金で作ることができる。
【0017】
別の好ましい実施形態では、弁は、ここに説明されるように、細長の回転キャップ弁である。棟梁の上端部は、棟梁と平行に延びる軸に沿って回転でき、棟梁の中空スペース内に延びる細長のキャップ弁である。
【0018】
キャップ弁は、第1の回転可能な位置において、温室の外部を棟梁の細長中空スペースに流体接続する第1の細長側部ゾーン内の1つ以上の開口部が存在し、第2の細長側部ゾーンがキャップ弁によって閉じられ、第2の回転可能な位置において、温室の外部を棟梁の細長中空スペースに流体接続する第2の細長側部ゾーン内の1つ以上の開口部が存在し、第1の細長側部ゾーンがキャップ弁によって閉じられるように成形される。
【0019】
別の好ましい実施形態では、弁は、1つの細長側部ゾーンとしての第1の壁部分と、反対の細長側部ゾーンとしての第2の壁部分とから構成され、壁部分は、それらの下端で棟梁の固定部分に回転可能に接続される。壁部分は、更に、それらの上端において、両方とも、細長ブリッジ部分に回転可能に接続されている。4つの回転可能な接続部すべての回転軸は、細長の棟梁と平行に延びる。この構造は、ブリッジ部分が異なる位置で傾斜できることを可能にし、少なくとも1つの位置において、ブリッジ部分は、1つの壁部分の開口部を閉鎖し、かつ他の壁部分の開口部を通して温室外部と中空スペースとの間の流体接続を提供し、また、少なくとも別の位置において、ブリッジ部分は、第1および第2の壁部分の開口部を閉鎖する。
【0020】
棟梁の軸方向長さ当たりの該棟梁の開口部の面積は、好ましくは0.01~0.1m/mであり、より好ましくは0.01~0.04m/mである。棟梁は、幅広の構造ではないのが適切である。棟梁自体が太陽光を遮断しすぎないように、外部幅は好ましくは0.11m未満である。ここでは、開口部を最大許容開口部と定義している。したがって、開いた開口部と閉じた開口部の合計ではないことは明白である。
【0021】
温室の屋根の長さに沿って延びる棟梁は、セクションとして設けられてもよく、ここで、各セクションには弁が設けられ、この弁は、残りの弁から独立して作動させることができる。これにより、棟梁の長さに沿って排出される空気の体積を変えることができる。
【0022】
温室の屋根は、平行に配向された多数の鞍状屋根の形状を有することができ、これらにはそれぞれ棟梁が設けられる。そのような温室は、任意のタイプの透明な、好適にはガラスまたはポリカーボネートの壁を有してもよい。このような透明な壁は、骨組に適切に固定される。棟梁は、温室自体の構造を提供するこのような骨組の適切な部分である。温室はトンネル型であってもよく、透明な壁は透明なポリマーシートである。トンネル上端部には、長尺トンネルと同じ方向に延びる棟梁が設けられている。1つ以上のトンネルを、1つのスペースを形成する並列に配置することができる。
【0023】
温室は、好適には、いわゆる半閉鎖型温室である。このような温室には、温室の外部から空気を取り込む手段が適切に設けられており、温室の外部からの空気と温室内部からの空気とを混合するのに適した空調混合ゾーンと、空調混合ゾーンに流体接続された多数の換気ダクトを通して空調ゾーンから温室内部へ空気を分配する手段とが適している。
【0024】
このような温室は、通常、わずかな過剰圧力で動作され、その結果、棟梁の開口部内の流れ方向が温室の内部から外部に向かうことになる。これは、昆虫が温室に入り得ることを回避し、網などの追加の手段を回避することができる。温室内の圧力は、温室外部の圧力よりも0~100Pa高く、好ましくは10~20Pa高くてもよい。
【0025】
温室は、温室内から空調ゾーンへ、そして温室内部へ戻る空気を再循環させるだけで動作させることができる。このモードでは、外気が入らず、棟梁の開口部が適切に閉じられるか、温室内の圧力を下げなければならない場合にのみ開くことができる。別の動作モードでは、温室の外側からの空気は、空調ゾーンにのみ流入し、棟梁の開口部を通して排出される。温室内から空調ゾーンを経由した空気の再循環は行われない。最小限の再循環が好ましいことが分かっているので、このモードは省略することができる。3番目で最も使用されている温室の外側からの動作空気のモードでは、空調ゾーン内の温室内からの空気と混合され、換気ダクトを通して温室内部に送られる。温室に入る正味の過剰空気は、温室内の圧力が、その安全限界を超えることを回避するために、棟梁の開口部を通して排出される。必要に応じて、追加の開口部が、過剰な空気を排出するために存在し得る。
【0026】
換気ダクトは、実質的に均等な空気の温室内への分布を提供する任意の装置であってもよい。好ましくは、空気は、栽培の下の位置で温室内のこれらのダクトから排出される。このような換気ダクトの例は、例えば、欧州特許第1464219号明細書、国際公開第2000/76296号明細書、蘭国特許発明第1038219号明細書および米国特許出願公開第2010/0126062号明細書に記載されている。
【0027】
空調ゾーンには、温室に分配される前に空気を冷却、加熱、加湿または除湿する手段が適切に設けられている。このような手段は周知であり、例えば、国際公開第2004/032606号明細書、国際公開第2000/76296号明細書、国際公開第2015/012698号明細書および国際公開第2008/002686号明細書に記載されている。
【0028】
また、本発明は、上述され、さらに図面に示されるような棟梁にも向けられる。
【0029】
また、本発明は、透明な壁と、1つ以上の棟梁を屋根の一部として具備する構造体とを備える温室内の空気を、下記によって調整する方法にも関する。
【0030】
温室内の平均圧力と温室外部の圧力との間の圧力差を維持すること、
調整された空気を得るために、温室外の空気を取り込み、温室内部の空気と、この取り込んだ空気と混合すること、
調整された空気を強制的に温室内部に流すこと、および、
圧力差を維持するために、1つまたは複数の棟梁に存在する開口部を通して、所定の体積の空気を温室の内部から排出すること。
【0031】
棟梁の軸方向長さ当たりの該棟梁の開口部の面積は、好ましくは0.01~0.1m/mであり、より好ましくは0.01~0.04m/mである。
【0032】
棟梁の開口部を通した空気の放出は、温室内の圧力が温室の外部の圧力よりも0~100Pa高く、好ましくは10~20Pa高くなるように適切に制御される。
【0033】
好ましくは、棟梁の開口部を通して排出される空気の体積は、外部空気の流れがある角度の下で棟梁上を流れ、それによって棟梁の風下側を画定する状況において、棟梁の風下側の開口部を通して実行される。これは、先に論じた理由のために有利である。
【0034】
好ましくは、棟梁の開口部を通した空気の放出は、棟梁に対して側路方向に空気を導く開口部を通して行われる。このプロセスのために、棟梁に平行な軸上で回転する回転可能な弁が、空気の大部分を一方の側または他方の側に向けるために使用される。より好ましくは、本方法は、本発明による温室内で実施される。
【0035】
本発明は、以下の非限定的な図面によって説明される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明に係る棟梁および、これに設けた弁の断面図である。
図2】棟梁の弁の別の形態を示す断面図である。
図3】弁の断面図である。
図4図3の弁の部品を示す図である。
図5】弁の一部分を示す斜視図である。
図6】棟梁およびその内部に存在する弁を示す斜視図である。
図7a図6に示す弁の変形例を示す斜視図である。
図7b図6に示す弁の変形例を示す斜視図である。
図7c図6に示す弁の変形例を示す斜視図である。
図8】温室を示す斜視図である。
図9図8に示す温室における空気取り入れ手段を示す断面図である。
図10a】本発明に係る棟梁の別の例および、その動作を示す断面図である。
図10b】本発明に係る棟梁の別の例および、その動作を示す断面図である。
図10c】本発明に係る棟梁の別の例および、その動作を示す断面図である
図11】本発明に係る棟梁の別の例を示す断面図である。
図12図11に示す棟梁の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1は、上部を有する棟梁4を示しており、使用時には、温室1の屋根5の上方にある程度の距離で延在する。屋根5は、図示のように棟梁4の細長いスリーブに嵌合するガラスパネル2で構成されている。上部は、棟梁4の上部の両側に存在する2つの細長側部6、7からなる。棟梁4は、温室の構造体3の一部である固定部分3aと、1つ以上の細長い中空スペース8とから構成される。棟梁4には、両側部ゾーン6、7に1つ以上の閉鎖可能な開口部9が設けられている。
【0038】
図1は、棟梁4の中空スペース8が管状の形状を有することをさらに示している。この中空スペース8内には弁18が回転可能に位置決めされる。弁18には、図示のように側部7の開口部9と位置合わせされる開口部22aと、弁18の別の回転可能な位置の側部6の開口部9と位置合わせされるのに適した開口部22bとが設けられている。弁18の長さに沿って存在する表面23は、図1に示す弁18の位置において側部6で開口部9を閉じる。
【0039】
この図において、側部ゾーン7の開口部9は、弁18の開口部22aと位置合わせされ、温室1の外部10と棟梁4の細長中空スペース8とを流体接続する。棟梁4の下端12の開口部11は、弁18の開口部22bと位置合わせされ、温室1の内部13と細長中空スペース8とを流体接続する。その結果、温室1の内部13は、側部7の開口部9を通して温室1の外部10と流体接続される。弁18を時計回りに回転させることにより、側部7における開口部9の寸法および、開口部11の寸法が小さくなるものとする。このようにして、温室1から出る空気の流れを変化させることができ、温室の内部13と外部10との間の圧力差を制御することができる。弁18を回転させることによって、さらに側部7の開口部9が完全に閉じられてもよく、側部6の開口部9が弁18の開口部22bと位置合わせされ、開口部11が開口部22aと位置合わせされる。この位置では、温室1の内部13は、側部6の開口部9を通して温室1の外部10と流体接続されている。これは、弁18を有する棟梁が棟梁のいずれかの一方の側で開き、その反対側で閉じることができることを示している。弁18を有する棟梁4は、図3図6にさらに示される。
【0040】
図2に、回転弁の別の設計を示す。棟梁4の上端部は、棟梁4と平行に延びる軸31に沿って回転可能な細長のキャップ弁30である。軸31は、棟梁4の中空スペース8内に延びる。キャップ弁30は、その長さに沿って切断された管の湾曲部分27と、湾曲部分27に接続された細長表面26と、細長表面の中央に延びる中空開口部28とを備える。中空開口部28は、棟梁4の下部側固定部12の一部である軸29に回転自在に連結されている。図示の湾曲部分27は、約180°の角度を有し、60~270°の角度を有することができる。この角度は、ここでは、湾曲部分27の端部から軸31に向かって延びる2つの平面間の角度αとして定義される。部分27のためのより小さい角度範囲では、湾曲した壁29aおよび29bを棟梁4に設けることが望ましい。キャップ弁30には、使用時に温室1の外部10を棟梁4の細長中空スペース8に流体接続する第1の細長側部ゾーン6の1つ以上の開口部9が存在し、第2の細長側部ゾーン7がキャップ弁30によって閉鎖され、第2の回転可能位置において、使用時に温室の外部10を棟梁4の細長中空スペース8に流体接続し、第1の細長側部ゾーン6がキャップ弁30によって閉鎖される第2の細長側部ゾーン7の1つ以上の開口部9が存在するように成形される。
【0041】
図3は、弁18の断面図であり、表面23と、ポリマー部品33、34、35とを示している。ポリマー部品33、34、35は、半径方向外側にわずかな距離で延び、棟梁4の中空スペース8の内部に接触する摺動面を提供する。図4において、ポリマー部品33、34および35は別々に示されている。これらの部品は、弁18の、より容易な組立を可能にするための別個の部品である。
【0042】
図5は、弁18のセクションを示す。開口部22aおよび22bの2つの列20および21それぞれ。細長表面23は、弁18の内側管状スペースを、開口部22a、22bの2つの列20、21に流体接続された細長スペース24と、残りのスペース25とに分離する。ポリマー部品33は、分離された中空スペース8を提供する弁8のセクションの半分に示されている。接続手段36は、図示されたセクションに弁18の次のセクションに接続するために設けられている。
【0043】
図6は、図1の棟梁4のセクションの内側に存在する弁18を示しており、この図の弁18の回転位置は、温室1の内部13が棟梁4の開口部9を通して温室1の外部10に流体接続されないようになっている。面23は中空スペース8から開口部11(見えない)を囲む。弁は、棟梁4と平行に延びる軸39に沿った回転によって、ある位置から別の位置に変化させることができる。弁18は、伝達装置(見えない)に接続され、伝達装置は、棟梁4のセクションの下方に配置されたモータ39aに回転可能に接続される。棟梁4のセクションを棟梁4の次の断面に接続するために使用される、更なる接続手段38および38aが示されている。また、弁18のセクションは、接続手段18によって弁18の次のセクションに接続される。このようにして、1つのモータ39aは、棟梁の複数のセクションを回転させることができる。
【0044】
図7a~図7cは、図6の弁18の変形例を示しており、この回転弁は、使用時に管状の細長スペース8内で回転可能な、シリンダ23aの細長セグメントを備える。シリンダ23aの細長セグメントには支持部品24aが設けられており、この支持部品24aは、使用時には管状ハウジング25a内で回転する。支持部品24aおよび対応する管状ハウジング25aは、棟梁に沿って離間して、開口部9を形成する。管状ハウジング25aおよび、任意選択のさらなる支持部26aは、好ましくは分離可能である。図7aにおいて、弁18aは、温室1の内部13が細長スペース8および開口部9から流体的に閉じられている閉鎖位置で示されている。図7bでは、弁18aの回転位置が示されており、ここで温室の内部13は側部7の開口部9に流体接続されている。図7cには、弁18aの回転位置が示されており、ここで温室の内部13は側部6で開口部9に流体接続されている。この設計は、管状ハウジング25aを単純に分離することによって、弁18aをより容易に取り外すことを可能にする。さらに、接触面積が小さくなり、したがって、システムがブロックする危険性が少なくなる。
【0045】
図8は、本発明による棟梁4および雨樋48をそれぞれ具備する3つの鞍状屋根5を備えた温室1を示す。市販の温室は、1~100個、またはさらには100個を超えるこのような鞍状屋根5を有することができる。温室1の床には、7つのダクト44が示されている。温室は、このような平行に配置されたダクト44を2~250個またはそれ以上有することができる。ダクト44は、図8の棟梁4と平行に延びる。また、棟梁4の方向に対して垂直にダクト44を配置することも可能である。空気は、これらのダクトから開口部50を通して温室の内部13に分配される。この空気を分配する駆動力のために、ダクトの一端にファン49が設けられている。ダクト44の反対側の端部は閉じられている。ファン49に入る空気は、図8に示すように、空調混合ゾーンで調整されることが好ましい。
【0046】
図9は、温室の外部10から空気を取り入れるための手段40を設けた、図8に示す半密閉式温室の断面AA‘を示す。手段40は、シャッタ43によって開閉することができる温室の側壁の開口部である。更に、外部からの空気と温室1内からの空気45とが混合できる空調混合ゾーン41が示されている。このように混合された空気は、手段49を用いて温室の内部に分配され、好適には換気ダクト44にファンが接続される。好ましくは、温室内に空気43を均等に分配するために、複数の平行に配向された換気ダクトが存在する。混合ゾーン41は、好ましくは、温室の一方の側に沿って延びる単一のスペースである。シャッタ47の位置は、好ましくは、温室内の植生の実質的に上方にあるシャッタ47の方向への空気の流れを達成するのに十分に高くされる。混合ゾーンに入る温室内からの空気45の量は、シャッタ47によって制御することができる。シャッタ47および43および棟梁4の開口部ならびにファン49の換気電力を制御することによって、上述したように異なる動作モードを達成することができる。手段40を通して温室に流入する空気の量は、棟梁の開口部を通して温室から排出される空気46とほぼ同じ量になるであろう。
【0047】
図10a~図10cは、本発明による棟梁の別の例を示す。図10bは、棟梁4の両側部6、7に開口部9を有する棟梁61を示す。第1の壁部分56は、細長側部ゾーン6として存在し、第2の壁部分57は、反対の長形側部7ゾーンとして存在する。壁部分56、57は、細長ヒンジ52、55を介して、それらの下端で棟梁の固定部分3aに回転自在に連結されている。壁部分56、57は、更に、両方とも、細長ヒンジ53、54を介して、それらの上端において、細長ブリッジ部分51に回転可能に接続されている。4つの全ての回転可能な接続部またはヒンジ52、53、54、55の回転軸は、細長の棟梁4と平行に延びる。ヒンジ52、53、54、55は、固定部分3a、壁部分56、ブリッジ部分51、壁部分57および再度固定部分3aの長さに沿って延びる細長曲線状の端部である。
【0048】
ヒンジ52、53、54、55は、ブリッジ部分が、異なる位置で、少なくとも図10a~図10cに示される位置から別の図示される位置まで傾斜することができることを可能にする。中空スペース58と、棟梁61の下端60における開口部59とが示されている。図10aでは、ブリッジ部分51は、棟梁の両側部6および7で開口部9を閉じている。図10bにおいて、温室の内部13は、棟梁61の両側部6、7の開口部9と流体的に接続された中空スペース58と流体接続されている。図10cにおいて、弁51は、側部6の開口部9が開いている間、側部7の開口部9のみを囲み、開口部59を通して中空スペース58および温室の内部13に流体的に接続している。気流60は、温室から外部へ排出される空気の流路を示している。
【0049】
図11は、本発明による棟梁63の別の例を示す。棟梁4は、温室の構造体3の一部である固定部分3aを備えている。棟梁63は上部を有し、使用時には温室1の屋根5の上方にある程度の距離だけ延在している。上部は、棟梁63の上部の両側に存在する2つの細長い側部6、7を備える。細長の上部は、それらの上端部66で合致する2つの細長かつ上方に延びる壁64、65から構成される。壁64および65には開口部9が設けられている。壁64、65の上部には、棟梁63の長手方向に移動可能であることにより、前述の弁のように機能するスクリーン70が存在する。スクリーン70には開口部67、68が設けられており、これはスクリーン70の位置に応じて、側部6または側部7のいずれかの開口部9と位置合わせすることができる。開口部68が側部7の開口部9と位置合わせされると、これらの開口部を通して流体接続部が設けられ、中空スペース69と下部開口部70が、図12に示すように温室の外側と内部との間にある。スクリーン70の開口部67(図11では見えない)が側部6の開口部9と位置合わせされると、これらの開口部を通して流体接続部が設けられ、中空スペース69と下部開口部71とは、温室(図示せず)の外側と内部との間にある。第3の位置では、両側部の全ての開口部9が閉鎖される(図示せず)。
【0050】
図1図6図9および図10に示す棟梁は、好ましくは金属押出成形品である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7a
図7b
図7c
図8
図9
図10a
図10b
図10c
図11
図12