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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】位相差フィルムおよび位相差層付偏光板
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20241125BHJP
   C08G 64/02 20060101ALI20241125BHJP
【FI】
G02B5/30
C08G64/02
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023122144
(22)【出願日】2023-07-27
(62)【分割の表示】P 2021509434の分割
【原出願日】2020-03-24
(65)【公開番号】P2023145609
(43)【公開日】2023-10-11
【審査請求日】2023-07-31
(31)【優先権主張番号】P 2019060693
(32)【優先日】2019-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(72)【発明者】
【氏名】中原 歩夢
(72)【発明者】
【氏名】清水 享
【審査官】鈴木 玲子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/020636(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/142689(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/101250(WO,A1)
【文献】特開2014-240906(JP,A)
【文献】特開2014-205829(JP,A)
【文献】特開2017-075254(JP,A)
【文献】特開2014-026266(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
C08G 64/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート系樹脂を含み、
Re(450)/Re(550)が0.98~1.03であり、
Re(550)が140nm~150nmであり、
前記ポリカーボネート系樹脂が、下記式(4)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、下記一般式(II)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、を含み、下記一般式(II)において、R が下記(IIb)で表される構造であり、n=0である、
位相差フィルム。
【化1】
HOCH -R -CH OH (II)
【化2】
【請求項2】
下記異形加工性試験においてカットされた部分にクラックが生じない、請求項に記載の位相差フィルム。
異形加工性試験:
前記位相差フィルムにCO レーザーを3kWのエネルギーで照射し、該フィルムの流れ方向および流れ方向と垂直の方向にカットする。
【請求項3】
下記耐皮脂性試験において白化およびクラックが生じない、請求項1または2に記載の位相差フィルム。
耐皮脂性試験:
前記位相差フィルムの片方の面に粘着剤を貼り付け、該粘着剤面をアルカリガラスの片面に貼り付けた後、オレイン酸溶液に、65℃、90%RHの条件下72時間浸漬させる。
【請求項4】
下記MIT試験において測定されるMIT回数が500回以上である、請求項1からのいずれかに記載の位相差フィルム。
MIT試験:
JIS P 8115に準拠して、前記位相差フィルムをMIT耐折疲労試験機に取り付け(荷重1.0kgf、クランプのR:0.38mm)、試験速度90cpmおよび折り曲げ角度90°で繰り返し折り曲げを行い、前記位相差フィルムが破断した時の折り曲げ回数をMIT回数とする。
【請求項5】
下記透湿度試験において測定される透湿度が130g/m・24h以下である、請求項1からのいずれかに記載の位相差フィルム。
透湿度試験:
JIS Z0208の透湿度試験(カップ法)に準拠して、温度40℃、湿度92%RHの雰囲気中、面積1m の前記位相差フィルムを24時間に通過する水蒸気量を透湿度とする。
【請求項6】
温度65℃かつ湿度90%の条件下において500時間保存した後の位相差変化が2.0%以下である、請求項1からのいずれかに記載の位相差フィルム。
【請求項7】
請求項1からのいずれかに記載の位相差フィルムで構成される位相差層と偏光子とを有する、位相差層付偏光板。
【請求項8】
画像表示装置の視認側に用いられる、請求項に記載の位相差層付偏光板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位相差フィルムおよび位相差層付偏光板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、薄型ディスプレイの普及と共に、有機ELパネルを搭載した画像表示装置(有機EL表示装置)が提案されている。有機ELパネルは反射性の高い金属層を有しており、外光反射や背景の映り込み等の問題を生じやすい。そこで、位相差フィルムを設けることにより、これらの問題を防ぐことが知られている。しかし、従来の位相差フィルムを画像表示装置に用いる場合、使用とともに白化および/またはクラックが発生する場合があり、さらに耐折性が不十分である場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3325560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、白化およびクラックが抑制され、かつ、優れた耐折性を有する位相差フィルムおよびそのような位相差フィルムを備える位相差層付偏光板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態における位相差フィルムは、ポリカーボネート系樹脂を含み、Re(450)/Re(550)は0.98~1.03であり、Re(550)は80nm~190nmである。
1つの実施形態においては、上記ポリカーボネート系樹脂は、下記式(4)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含む。
【化1】
1つの実施形態においては、上記ポリカーボネート系樹脂は、脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位をさらに含み、該脂環式ジヒドロキシ化合物は、下記一般式(II)で表され、Rが下記(IIb)で表される構造であり、n=0である。
HOCH-R-CHOH (II)
【化2】
1つの実施形態においては、上記位相差フィルムは異形加工性試験においてクラックが抑制される。
1つの実施形態においては、上記位相差フィルムは耐皮脂性試験において白化およびクラックが抑制される。
1つの実施形態においては、上記位相差フィルムのMIT回数は500回以上である。
1つの実施形態においては、上記位相差フィルムの透湿度は130g/m・24h以下である。
1つの実施形態においては、上記位相差フィルムの、温度65℃かつ湿度90%の条件下において500時間保存した後の位相差変化は2.0%以下である。
本発明の別の局面によれば、位相差層付偏光板が提供される。この位相差層付偏光板は、位相差層と偏光子とを備え、該位相差層は上記位相差フィルムで構成される。
1つの実施形態によれば、上記位相差層付偏光板は、画像表示装置の視認側に用いられる。
【発明の効果】
【0006】
本発明の実施形態によれば、所定のポリカーボネート系樹脂を含み、Re(450)/Re(550)が0.98~1.03であり、面内位相差が80nm~190nmである樹脂フィルムを用いることにより、白化およびクラックが抑制され、かつ、耐折性に優れた位相差フィルムを実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0008】
(用語および記号の定義)
本明細書における用語および記号の定義は下記の通りである。
(1)屈折率(nx、ny、nz)
「nx」は面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、「ny」は面内で遅相軸と直交する方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率であり、「nz」は厚み方向の屈折率である。
(2)面内位相差(Re)
「Re(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した面内位相差である。例えば、「Re(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した面内位相差である。Re(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Re(λ)=(nx-ny)×dによって求められる。
(3)厚み方向の位相差(Rth)
「Rth(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した厚み方向の位相差である。例えば、「Rth(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した厚み方向の位相差である。Rth(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Rth(λ)=(nx-nz)×dによって求められる。
(4)Nz係数
Nz係数は、Nz=Rth/Reによって求められる。
(5)角度
本明細書において角度に言及するときは、当該角度は基準方向に対して時計回りおよび反時計回りの両方を包含する。したがって、例えば「45°」は±45°を意味する。
【0009】
A.位相差フィルム
本発明の実施形態による位相差フィルムは、ポリカーボネート樹脂を含む。本発明の実施形態による位相差フィルムは、代表的には、ポリカーボネート樹脂フィルムの延伸フィルムである。
【0010】
上記位相差フィルムは、位相差値が測定光の波長によってもほとんど変化しないフラットな波長分散特性を示す。位相差フィルムのRe(450)/Re(550)は、0.98~1.03であり、好ましくは0.99~1.03であり、より好ましくは1.00~1.03である。このようなRe(450)/Re(550)が得られるポリカーボネート樹脂を用いることにより、耐皮脂性試験において白化およびクラックが抑制され、かつ、異形加工性および耐折性に優れた位相差フィルムが得られ得る。さらに、このような波長分散特性であれば、広帯域において優れた反射防止特性を実現することができる。
【0011】
上記位相差フィルムは、屈折率特性が好ましくはnx>ny≧nzの関係を示す。上記位相差層フィルムの面内位相差Re(550)は、80nm~190nmであり、好ましくは100nm~170nmであり、より好ましくは120nm~150nmである。すなわち、位相差フィルムはλ/4板として機能し得る。なお、ここで「ny=nz」はnyとnzが完全に等しい場合だけではなく、実質的に等しい場合を包含する。したがって、本発明の効果を損なわない範囲で、ny<nzとなる場合があり得る。
【0012】
上記位相差フィルムは、Nz係数が好ましくは0.9~1.5であり、より好ましくは0.9~1.3である。Nz係数がこのような範囲であれば、反射率および反射色相の視野角依存性に優れた画像表示装置を得ることができる。
【0013】
上記位相差フィルムの透湿度は、好ましくは130g/m・24h以下であり、より好ましくは120g/m・24h以下である。下限は、例えば、1g/m・24hであり得る。位相差フィルムの透湿度がこのような範囲であれば、加湿環境下における位相差の変化を抑制できるという利点が得られ得る。
【0014】
上記位相差フィルムの、温度65℃かつ湿度90%の条件下において500時間保存(加湿試験)した後の位相差変化は、好ましくは2.0%以下であり、より好ましくは1.8%以下である。下限は、例えば0.01%であり得る。上記位相差変化(%)は、|(Re500-Re)/Re|×100(%)で表される。Reは、試験開始前の位相差フィルムの面内位相差(nm)であり、Re500は、試験後の位相差フィルムの面内位相差(nm)である。位相差フィルムの位相差変化がこのような範囲であれば、画像表示装置上の場所ごとの位相差による色相変化が小さくなり、表示上の色ムラの発生が抑制されるという利点が得られ得る。
【0015】
上記位相差フィルムの厚みは、λ/4板として機能し得るよう適切に設定され得る。厚みは、好ましくは20μm~60μmであり、より好ましくは20μm~50μmであり、さらに好ましくは25μm~40μmである。
【0016】
上記位相差フィルムは、光弾性係数の絶対値が好ましくは2×10-11/N以下、より好ましくは2.0×10-13/N~1.5×10-11/N、さらに好ましくは1.0×10-12/N~1.2×10-11/Nである。光弾性係数の絶対値がこのような範囲であれば、加熱時の収縮応力が発生した場合に位相差変化が生じにくい。その結果、得られる画像表示装置の熱ムラが良好に防止され得る。
【0017】
上記位相差フィルムは、異形加工性試験においてクラックが抑制されている。すなわち、位相差フィルムは、異形形状が要求される用途においても良好に用いられ得る。位相差フィルムが後述する特定のポリカーボネート樹脂を含むことにより、このような利点が得られ得る。
【0018】
上記位相差フィルムは、耐皮脂性試験において白化およびクラックが抑制されている。すなわち、位相差フィルムが、例えば画像表示装置の視認側に用いられて使用者に継続的に接触された場合であっても、良好な特性を保持し得る。これは、位相差フィルムを、例えば画像表示装置の視認側に長期間使用してはじめて認識された課題を解決するものであり、予期せぬ優れた効果である。位相差フィルムが後述する特定のポリカーボネート樹脂を含むことにより、このような利点が得られ得る。
【0019】
上記位相差フィルムは、MIT回数が500回以上である。すなわち、位相差フィルムは、屈曲可能(好ましくは、折りたたみ可能)な画像表示装置に用いられた場合であっても、優れた耐折性を発揮し得る。後述する特定のポリカーボネート樹脂を含む樹脂フィルムを後述する特定の延伸方法および延伸条件で延伸して位相差フィルムを形成することにより、このような利点が得られ得る。
【0020】
B.樹脂フィルム
位相差フィルムは、上記のとおり、代表的には、ポリカーボネート樹脂フィルムの延伸フィルムである。
【0021】
(ポリカーボネート樹脂)
本発明に係るポリカーボネート樹脂は、下記構造式(1)で表される結合構造を有するジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を少なくとも含むものであり、分子内に少なくとも一つの結合構造 -CH-O- を有するジヒドロキシ化合物を少なくとも含むジヒドロキシ化合物と、炭酸ジエステルとを、重合触媒の存在下反応させることにより製造される。
【化3】
【0022】
ここで、構造式(1)で表される結合構造を有するジヒドロキシ化合物としては、2個のアルコール性水酸基をもち、分子内に連結基-CH-O-を有する構造を含み、重合触媒の存在下、炭酸ジエステルと反応してポリカーボネートを生成し得る化合物であれば如何なる構造の化合物であっても使用することが可能であり、複数種併用しても構わない。また、本発明に係るポリカーボネート樹脂に用いるジヒドロキシ化合物として、構造式(1)で表される結合構造を有さないジヒドロキシ化合物を併用しても構わない。以下、構造式(1)で表される結合構造を有するジヒドロキシ化合物をジヒドロキシ化合物(A)、構造式(1)で表される結合構造を有さないジヒドロキシ化合物をジヒドロキシ化合物(B)と略記することがある。
【0023】
(ジヒドロキシ化合物(A))
ジヒドロキシ化合物(A)における「連結基-CH-O-」とは、水素原子以外の原子と互いに結合して分子を構成する構造を意味する。この連結基において、少なくとも酸素原子が結合し得る原子又は炭素原子と酸素原子が同時に結合し得る原子としては、炭素原子が最も好ましい。ジヒドロキシ化合物(A)中の「連結基-CH-O-」の数は、好ましくは1以上、より好ましくは2~4である。
【0024】
さらに具体的には、ジヒドロキシ化合物(A)としては、例えば、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-イソブチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-tert-ブチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3,5-ジメチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-tert-ブチル-6-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(3-ヒドロキシ-2,2-ジメチルプロポキシ)フェニル)フルオレンで例示されるような、側鎖に芳香族基を有し、主鎖に芳香族基に結合したエーテル基を有する化合物、ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]ジフェニルメタン、1,1-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]エタン、1,1-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-1-フェニルエタン、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル]プロパン、2,2-ビス[3,5-ジメチル-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、1,1-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、1,4-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、1,3-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル]プロパン、2,2-ビス[(2-ヒドロキシエトキシ)-3-イソプロピルフェニル]プロパン、2,2-ビス[3-tert-ブチル-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]ブタン、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-4-メチルペンタン、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]オクタン、1,1-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]デカン、2,2-ビス[3-ブロモ-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[3-シクロヘキシル-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパンで例示されるような、ビス(ヒドロキシアルコキシアリール)アルカン類、1,1-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、1,1-ビス[3-シクロヘキシル-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、1,1-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロペンタンで例示されるような、ビス(ヒドロキシアルコキシアリール)シクロアルカン類、4,4’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ジフェニルエ-テル、4,4’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-3,3’-ジメチルジフェニルエ-テルで例示されるような、ジヒドロキシアルコキシジアリールエーテル類、4,4’-ビス(2-ヒドロキエトキシフェニル)スルフィド、4,4’-ビス[4-(2-ジヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル]スルフィドで例示されるような、ビスヒドロキシアルコキシアリールスルフィド類、4,4’-ビス(2-ヒドロキエトキシフェニル)スルホキシド、4,4’-ビス[4-(2-ジヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル]スルホキシドで例示されるような、ビスヒドロキシアルコキシアリールスルホキシド類、4,4’-ビス(2-ヒドロキエトキシフェニル)スルホン、4,4’-ビス[4-(2-ジヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル]スルホンで例示されるような、ビスヒドロキシアルコキシアリールスルホン類、1,4-ビスヒドロキシエトキシベンゼン、1,3-ビスヒドロキシエトキシベンゼン、1,2-ビスヒドロキシエトキシベンゼン、1,3-ビス[2-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロピル]ベンゼン、1,4-ビス[2-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロピル]ベンゼン、4,4’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ビフェニル、1,3-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-5,7-ジメチルアダマンタン、下記式(4)で表されるジヒドロキシ化合物に代表される無水糖アルコール、および下記一般式(6)で表されるスピログリコール等の環状エーテル構造を有する化合物が挙げられ、これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
【化4】
【0026】
これらジヒドロキシ化合物(A)は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明において、前記式(4)で表されるジヒドロキシ化合物としては、立体異性体の関係にある、イソソルビド、イソマンニド、イソイデットが挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
なお、ジヒドロキシ化合物(A)のうち、資源として豊富に存在し、容易に入手可能な種々のデンプンから製造されるソルビトールを脱水縮合して得られるイソソルビドが、入手及び製造のし易さ、光学特性、成形性の面から最も好ましい。本願発明においては、ジヒドロキシ化合物(A)として、イソソルビドが好適に用いられる。
【0028】
(ジヒドロキシ化合物(B))
本発明においては、ジヒドロキシ化合物としてジヒドロキシ化合物(A)以外のジヒドロキシ化合物である、ジヒドロキシ化合物(B)を用いてもよい。ジヒドロキシ化合物(B)としては、例えば、脂環式ジヒドロキシ化合物、脂肪族ジヒドロキシ化合物、オキシアルキレングリコール類、芳香族ジヒドロキシ化合物、環状エーテル構造を有するジオール類を、ポリカーボネートの構成単位となるジヒドロキシ化合物として、ジヒドロキシ化合物(A)、例えば式(4)で表されるジヒドロキシ化合物とともに用いることができる。
【0029】
本発明に使用できる、脂環式ジヒドロキシ化合物としては、特に限定されないが、好ましくは、通常5員環構造又は6員環構造を含む化合物を用いる。また、6員環構造は共有結合によって椅子形もしくは舟形に固定されていてもよい。脂環式ジヒドロキシ化合物が5員環又は6員環構造であることにより、得られるポリカーボネートの耐熱性を高くすることができる。脂環式ジヒドロキシ化合物に含まれる炭素原子数は通常70以下であり、好ましくは50以下、より好ましくは30以下である。この値が大きくなるほど、耐熱性が高くなるが、合成が困難になったり、精製が困難になったり、コストが高価だったりする。炭素原子数が小さくなるほど、精製しやすく、入手しやすくなる。
【0030】
本発明で使用できる5員環構造又は6員環構造を含む脂環式ジヒドロキシ化合物としては、具体的には、下記一般式(II)又は(III)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物が挙げられる。
HOCH-R-CHOH (II)
HO-R-OH (III)
(式(II)、(III)中、R、Rはそれぞれ、炭素数4~20のシクロアルキレン基を示す。)
上記一般式(II)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるシクロヘキサンジメタノールとしては、一般式(II)において、Rが下記一般式(IIa)(式中、Rは炭素数1~12のアルキル基又は水素原子を示す。)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。
【0031】
【化5】
【0032】
上記一般式(II)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるトリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノールとしては、一般式(II)において、Rが下記一般式(IIb)(式中、nは0又は1を示す。)で表される種々の異性体を包含する。
【0033】
【化6】
【0034】
上記一般式(II)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるデカリンジメタノール又は、トリシクロテトラデカンジメタノールとしては、一般式(II)において、Rが下記一般式(IIc)(式中、mは0、又は1を示す。)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、2,6-デカリンジメタノール、1,5-デカリンジメタノール、2,3-デカリンジメタノールなどが挙げられる。
【0035】
【化7】
【0036】
また、上記一般式(II)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるノルボルナンジメタノールとしては、一般式(II)において、Rが下記一般式(IId)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、2,3-ノルボルナンジメタノール、2,5-ノルボルナンジメタノールなどが挙げられる。
【0037】
【化8】
【0038】
一般式(II)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるアダマンタンジメタノールとしては、一般式(II)において、Rが下記一般式(IIe)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、1,3-アダマンタンジメタノールなどが挙げられる。
【0039】
【化9】
【0040】
また、上記一般式(III)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるシクロヘキサンジオールは、一般式(III)において、Rが下記一般式(IIIa)(式中、Rは炭素数1~12のアルキル基又は水素原子を示す。)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、1,2-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、2-メチル-1,4-シクロヘキサンジオールなどが挙げられる。
【0041】
【化10】
【0042】
上記一般式(III)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるトリシクロデカンジオール、ペンタシクロペンタデカンジオールとしては、一般式(III)において、Rが下記一般式(IIIb)(式中、nは0又は1を示す。)で表される種々の異性体を包含する。
【0043】
【化11】
【0044】
上記一般式(III)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるデカリンジオール又はトリシクロテトラデカンジオールとしては、一般式(III)において、Rが下記一般式(IIIc)(式中、mは0、又は1を示す。)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、2,6-デカリンジオール、1,5-デカリンジオール、2,3-デカリンジオールなどが用いられる。
【0045】
【化12】
【0046】
上記一般式(III)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるノルボルナンジオールとしては、一般式(III)において、Rが下記一般式(IIId)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、2,3-ノルボルナンジオール、2,5-ノルボルナンジオールなどが用いられる。
【0047】
【化13】
【0048】
上記一般式(III)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるアダマンタンジオールとしては、一般式(III)において、Rが下記一般式(IIIe)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては具体的には、1,3-アダマンタンジオールなどが用いられる。
【0049】
【化14】
【0050】
上述した脂環式ジヒドロキシ化合物の具体例のうち、特に、シクロヘキサンジメタノール類、トリシクロデカンジメタノール類、アダマンタンジオール類、ペンタシクロペンタデカンジメタノール類が好ましく、入手のしやすさ、取り扱いのしやすさという観点から、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノールが好ましい。本願発明においては、ジヒドロキシ化合物(B)として、トリシクロデカンジメタノールが好適に用いられる。
【0051】
本発明に使用できる脂肪族ジヒドロキシ化合物としては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、1,5-ヘプタンジオール、1,6-ヘキサンジオールが挙げられる。本発明に使用できるオキシアルキレングリコール類としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコールが挙げられる。
【0052】
本発明に使用できる芳香族ジヒドロキシ化合物としては、例えば、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン[=ビスフェノールA]、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジエチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-(3,5-ジフェニル)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,4’-ジヒドロキシ-ジフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシ-5-ニトロフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジクロロジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシ-2,5-ジエトキシジフェニルエーテル、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ-2-メチル)フェニル]フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-2-メチルフェニル)フルオレンが挙げられる。
【0053】
本発明に使用できる環状エーテル構造を有するジオール類としては、例えば、スピログリコール類、ジオキサングリコール類が挙げられる。なお、上記例示化合物は、本発明に使用し得る脂環式ジヒドロキシ化合物、脂肪族ジヒドロキシ化合物、オキシアルキレングリコール類、芳香族ジヒドロキシ化合物、環状エーテル構造を有するジオール類の一例であって、何らこれらに限定されるものではない。これらの化合物は、1種又は2種以上を式(4)で表されるジヒドロキシ化合物とともに用いることができる。
【0054】
これらのジヒドロキシ化合物(B)を用いることにより、用途に応じた柔軟性の改善、耐熱性の向上、成形性の改善などの効果を得ることができる。本発明に係るポリカーボネート樹脂を構成する全ジヒドロキシ化合物に対するジヒドロキシ化合物(A)、例えば式(4)で表されるジヒドロキシ化合物の割合は特に限定されないが、好ましくは10モル%以上、より好ましくは40モル%以上、さらに好ましくは60モル%以上、好ましくは90モル%以下、より好ましくは80モル%以下、さらに好ましくは70モル%以下である。他のジヒドロキシ化合物に由来する構成単位の含有割合が多過ぎると、光学特性等の性能を低下させたりすることがある。
【0055】
上記他のジヒドロキシ化合物の中で、脂環式ジヒドロキシ化合物を用いる場合、ポリカーボネートを構成する全ジヒドロキシ化合物に対するジヒドロキシ化合物(A)、例えば式(4)で表されるジヒドロキシ化合物と脂環式ジヒドロキシ化合物の合計の割合は特に限定されないが、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上である。
【0056】
また、本発明に係るポリカーボネート樹脂における、ジヒドロキシ化合物(A)、例えば式(4)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位と脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位との含有割合については、任意の割合で選択できるが、式(4)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位:脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位=1:99~99:1(モル%)が好ましく、特に式(4)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位:脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位=10:90~90:10(モル%)であることが好ましい。上記範囲よりも式(4)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位が多く脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位が少ないと着色しやすくなり、逆に式(4)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位が少なく脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位が多いと分子量が上がりにくくなる傾向がある。
【0057】
さらに、脂肪族ジヒドロキシ化合物、オキシアルキレングリコール類、芳香族ジヒドロキシ化合物、環状エーテル構造を有するジオール類を用いる場合、ポリカーボネートを構成する全ジヒドロキシ化合物に対するジヒドロキシ化合物(A)、例えば式(4)で表されるジヒドロキシ化合物とこれらの各ジヒドロキシ化合物の合計の割合は特に限定されず、任意の割合で選択できる。また、ジヒドロキシ化合物(A)、例えば式(4)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位とこれらの各ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位との含有割合も特に限定されず、任意の割合で選択できる。
【0058】
ポリカーボネート系樹脂の詳細は、例えば、特開2012-31370号公報に記載されている。当該特許文献の記載は、本明細書に参考として援用される。
【0059】
C.位相差フィルムの製造方法
本発明の実施形態による位相差フィルムの製造方法は、樹脂フィルムを延伸処理することを含む。樹脂フィルムは、上記B項で説明したポリカーボネート樹脂から形成されたフィルムである。
【0060】
1つの実施形態においては、位相差フィルムは、二軸延伸により作製され得る。二軸延伸は、同時二軸延伸であってもよく、逐次二軸延伸であってもよい。長手方向の延伸倍率は、好ましくは1.0倍をこえて2.0倍以下であり、より好ましくは1.1倍~1.5倍である。幅方向の延伸倍率は、好ましくは1.6倍~2.2倍であり、より好ましくは1.8倍~2.0倍である。上記のポリカーボネート樹脂から形成されたフィルムをこのような延伸倍率で延伸することにより、所望の光学特性のみならず、非常に優れた機械的特性(例えば、異形加工性、耐折性)を実現することができる。
【0061】
上記樹脂フィルムの延伸温度は、好ましくはTg-30℃~Tg+30℃であり、より好ましくはTg-15℃~Tg+15℃であり、さらに好ましくはTg-10℃~Tg+10℃である。このような温度で延伸することにより、本発明において適切な特性を有する位相差フィルムが得られ得る。なお、Tgは、フィルムの構成材料のガラス転移温度である。
【0062】
上記のような延伸方法および延伸条件を選択し、上記のようなポリカーボネート樹脂を含む樹脂フィルムを延伸することにより、耐皮脂性試験において白化およびクラックが抑制され、かつ、異形加工性および耐折性に優れた位相差フィルムが得られ得る。
【0063】
D.位相差層付偏光板
上記A項~C項に記載の位相差フィルムは、他の光学フィルムおよび/または光学部材との積層体として提供され得る。1つの実施形態においては、位相差フィルムは、偏光板との積層体(位相差層付偏光板)として提供され得る。したがって、本発明は、上記位相差フィルムを有する位相差層付偏光板を包含する。本発明の実施形態による位相差層付偏光板は、偏光板と上記位相差フィルムにより構成される位相差層とを備える。偏光板は、偏光子と、偏光子の一方の側に配置された第1の保護層と、偏光子のもう一方の側に配置された第2の保護層とを含む。目的に応じて、第1の保護層および第2の保護層の一方は省略されてもよい。位相差フィルムにおいて、偏光板の偏光子の吸収軸と位相差フィルムの遅相軸とのなす角度は、用途および目的に応じて適切に設定され得る。1つの実施形態においては、上記角度は、好ましくは40°~50°であり、より好ましくは42°~48°であり、さらに好ましくは約45°である。
【0064】
上記位相差層付偏光板においては、導電層または導電層付等方性基材が設けられてもよい。導電層または導電層付等方性基材は、代表的には、偏光板の外側(位相差層と反対側)に設けられる。導電層または導電層付等方性基材が設けられる場合、位相差層付偏光板は、画像表示セルと偏光板との間にタッチセンサが組み込まれた、いわゆるインナータッチパネル型入力表示装置に適用され得る。
【0065】
本発明の位相差層付偏光板は、枚葉状であってもよく長尺状であってもよい。本明細書において「長尺状」とは、幅に対して長さが十分に長い細長形状を意味し、例えば、幅に対して長さが10倍以上、好ましくは20倍以上の細長形状を含む。長尺状の位相差層付偏光板は、ロール状に巻回可能である。位相差層付偏光板が長尺状である場合、偏光板および位相差層も長尺状である。この場合、偏光子は、好ましくは長尺方向に吸収軸を有する。位相差層は、好ましくは、長尺方向に対して例えば40°~50°の角度をなす方向に遅相軸を有する斜め延伸フィルムである。偏光子および位相差層がこのような構成であれば、位相差層付偏光板をロールトゥロールにより作製することができる。
【0066】
実用的には、位相差層付偏光板は、画像表示セル側の最外層として粘着剤層を有し、画像表示セルに貼り付け可能とされている。さらに、粘着剤層の画像表示セル側には、位相差層付偏光板が使用に供されるまで、剥離フィルムが仮着されていることが好ましい。剥離フィルムを仮着することにより、粘着剤層を保護するとともに、ロール形成が可能となる。
【0067】
偏光板は、代表的には、偏光子と、偏光子の少なくとも片側に配置された保護層と、を有する。
【0068】
偏光子としては、任意の適切な偏光子が採用され得る。例えば、偏光子を形成する樹脂フィルムは、単層の樹脂フィルムであってもよく、二層以上の積層体であってもよい。
【0069】
単層の樹脂フィルムから構成される偏光子の具体例としては、ポリビニルアルコール(PVA)系フィルム、部分ホルマール化PVA系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質による染色処理および延伸処理が施されたもの、PVAの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。好ましくは、光学特性に優れることから、PVA系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸して得られた偏光子が用いられる。
【0070】
上記ヨウ素による染色は、例えば、PVA系フィルムをヨウ素水溶液に浸漬することにより行われる。上記一軸延伸の延伸倍率は、好ましくは3~7倍である。延伸は、染色処理後に行ってもよいし、染色しながら行ってもよい。また、延伸してから染色してもよい。必要に応じて、PVA系フィルムに、膨潤処理、架橋処理、洗浄処理、乾燥処理等が施される。例えば、染色の前にPVA系フィルムを水に浸漬して水洗することで、PVA系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるだけでなく、PVA系フィルムを膨潤させて染色ムラなどを防止することができる。
【0071】
積層体を用いて得られる偏光子の具体例としては、樹脂基材と当該樹脂基材に積層されたPVA系樹脂層(PVA系樹脂フィルム)との積層体、あるいは、樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる偏光子が挙げられる。このような偏光子の製造方法の詳細は、例えば、特開2012-73580号公報等に記載されている。当該特許文献の記載は、本明細書に参考として援用される。当該公報は、その全体の記載が本明細書に参考として援用される。
【0072】
1つの実施形態においては、偏光子の厚みは、好ましくは1μm~25μmであり、より好ましくは3μm~10μmであり、さらに好ましくは3μm~8μmである。偏光子の厚みがこのような範囲であれば、加熱時のカールを良好に抑制することができ、および、良好な加熱時の外観耐久性が得られる。
【0073】
保護層は、偏光子を保護するフィルムとして使用できる任意の適切な保護フィルムで形成される。当該保護フィルムの主成分となる材料の具体例としては、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂や、ポリエステル系、ポリビニルアルコール系、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリスチレン系、ポリノルボルネン系、ポリオレフィン系、(メタ)アクリル系、アセテート系等の透明樹脂等が挙げられる。また、(メタ)アクリル系、ウレタン系、(メタ)アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂等も挙げられる。この他にも、例えば、シロキサン系ポリマー等のガラス質系ポリマーも挙げられる。また、特開2001-343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルムも使用できる。このフィルムの材料としては、例えば、側鎖に置換または非置換のイミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換または非置換のフェニル基ならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物が使用でき、例えば、イソブテンとN-メチルマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合体とを有する樹脂組成物が挙げられる。当該ポリマーフィルムは、例えば、上記樹脂組成物の押出成形物であり得る。
【0074】
第2の保護層が設けられる場合、当該内側保護層は、光学的に等方性であることが好ましい。本明細書において「光学的に等方性である」とは、面内位相差Re(550)が0nm~10nmであり、厚み方向の位相差Rth(550)が-10nm~+10nmであることをいう。該保護層は、光学体に等方性である限り、任意の適切な材料で構成され得る。当該材料は、保護層に関して上記した材料から適切に選択され得る。
【0075】
保護層の厚みは、好ましくは10μm~100μmである。保護層は、接着層(具体的には、接着剤層、粘着剤層)を介して偏光子に積層されていてもよく、偏光子に密着(接着層を介さずに)積層されていてもよい。必要に応じて、位相差層付偏光板の最表面に配置される保護層には、ハードコート層、防眩層および反射防止層などの表面処理層が形成され得る。
【0076】
上記位相差層付偏光板は、画像表示装置の視認側に用いられ得る。さらに、位相差層付偏光板における位相差層は、視認側に配置されてもよく、表示セル側に配置されてもよい。当該位相差層付偏光板における位相差層が、視認側に配置された場合には、耐皮脂性試験において白化およびクラックが抑制され得る。当該位相差層付偏光板における位相差層が、表示セル側に配置された場合には、優れた反射率が得られ得る。
【実施例
【0077】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各特性の測定方法および評価方法は以下の通りである。
(1)面内位相差および波長分散特性
実施例および比較例で得られた位相差フィルムを長さ4cmおよび幅4cmに切り出し、測定試料とした。当該測定試料について、Axometrics社製、製品名「Axoscan」を用いて面内位相差Re(550)を測定した。さらに、Re(450)も測定し、Re(450)/Re(550)を算出した。
(2)透湿度
実施例および比較例で得られた位相差フィルムについて、JIS Z0208の透湿度試験(カップ法)に準拠して、温度40℃、湿度92%RHの雰囲気中、面積1mの試料を24時間に通過する水蒸気量(g)を測定した。
(3)位相差変化
実施例および比較例で得られた位相差フィルムを、5cm×5cmに切りだし、片方の面に粘着剤をハンドローラーで貼り付け、粘着剤面をアルカリガラスの片面に貼り付けて試験片を得た。試験片を温度65℃かつ湿度90%のオーブンに500時間保存(加湿試験)し、試験開始前および試験後の位相差変化(%)を算出した。
(4)異形加工性試験
実施例および比較例で得られた位相差フィルムまたは位相差層付偏光板にCOレーザーを3Kwのエネルギーで照射し、フィルムの流れ方向および流れ方向と垂直の方向にカットし、200mm×200mmの測定試料を得た。レーザー顕微鏡を用いてカットされた部分を観察し、クラックが入っていなければ〇、クラックが入るおよび/またはカットができない場合は×とした。
(5)耐皮脂性試験
実施例および比較例で得られた位相差フィルムまたは位相差層付偏光板を5cm×5cmに切りだし、片方の面に粘着剤をハンドローラーで貼り付け、粘着剤面をアルカリガラスの片面に貼り付けて試験片を得た。得られた試験片を、オレイン酸溶液に、65℃、90%RHの条件下72時間浸漬させ、取り出した後に透明なものを〇、白化またはクラックが入っているものを×とした。
(6)MIT回数
MIT試験は、JIS P 8115に準拠して行った。具体的には、実施例および比較例で得られた位相差フィルムを長さ15cmおよび幅1.5cmに切り出し、測定試料とした。測定試料をMIT耐折疲労試験機BE-202型(テスター産業(株)製)に取り付け(荷重1.0kgf、クランプのR:0.38mm)、試験速度90cpmおよび折り曲げ角度90°で繰り返し折り曲げを行い、測定試料が破断した時の折り曲げ回数を試験値とした。経験値が500回以上のものを〇、500回未満のものを×とした。
(7)反射率
実施例および比較例で得られた位相差フィルムを用いて、表面処理層/偏光子/位相差フィルム/糊をこの順に有する積層体を作製した。当該積層体を、有機ELパネルに実装し、分光測色系にて反射率を測定した。反射率が2.0%以下のものを〇、2.0%を超えるものを×とした。
(8)寸法収縮率
実施例および比較例で得られた位相差層付偏光板を、幅100mm、長さ100mmに切り取り(試験片)、4隅部にクロスでキズを付けクロスキズの中央部4点の長手方向(MD方向)と幅方向(TD方向)の加熱前の長さ(mm)をCNC三次元測定機(株式会社ミツトヨ社製 LEGEX774)により測定した。その後、オーブンに投入し、加熱処理(温度65℃、湿度90%)を行った。室温で1時間放冷後に再度、4隅部4点のMD方向とTD方向の加熱後の長さ(mm)をCNC三次元測定機により測定し、その測定値を下記式に代入することにより、MD方向とTD方向のそれぞれの熱収縮率を求めた。
熱収縮率(%)=[[加熱前の長さ(mm)-加熱後の長さ(mm)]/加熱前の長さ(mm)]×100
熱収縮率が0%~0.5%のものを〇、0.5%以上のものを×とした。
【0078】
参考例1]
1.樹脂フィルムの作製
イソソルビド(以下「ISB」と略記することがある)81.98質量部に対して、トリシクロデカンジメタノール(以下「TCDDM」と略記することがある)47.19質量部、ジフェニルカーボネート(以下「DPC」と略記することがある)175.1質量部、及び触媒として、炭酸セシウム0.2質量%水溶液0.979質量部を反応容器に投入し、窒素雰囲気下にて、反応の第1段目の工程として、加熱槽温度を150℃に加熱し、必要に応じて攪拌しながら、原料を溶解させた(約15分)。次いで、圧力を常圧から13.3kPaにし、加熱槽温度を190℃まで1時間で上昇させながら、発生するフェノールを反応容器外へ抜き出した。反応容器全体を190℃で15分保持した後、第2段目の工程として、反応容器内の圧力を6.67kPaとし、加熱槽温度を230℃まで、15分で上昇させ、発生するフェノールを反応容器外へ抜き出した。攪拌機の攪拌トルクが上昇してくるので、8分で250℃まで昇温し、さらに発生するフェノールを取り除くため、反応容器内の圧力を0.200kPa以下に到達させた。所定の攪拌トルクに到達後、反応を終了し、生成した反応物を水中に押し出して、ポリカーボネート樹脂のペレットを得た。得られたポリカーボネート樹脂を80℃で5時間真空乾燥をした後、単軸押出機(東芝機械社製、シリンダー設定温度:250℃)、Tダイ(幅300mm、設定温度:250℃)、チルロール(設定温度:120~130℃)および巻取機を備えたフィルム製膜装置を用いて、厚み135μmのポリカーボネート樹脂フィルムを作製した。
【0079】
2.位相差フィルムの作製
未延伸の上記ポリカーボネート樹脂フィルムを、同時二軸延伸機を用い、予熱処理および同時二軸延伸に供し、位相差フィルムを得た。予熱温度は138.5℃とした。延伸温度は138.5℃とし、長手方向の延伸倍率を1.2倍、幅方向の延伸倍率を1.9倍とした。得られた位相差フィルムの波長分散値は1.025であり、面内位相差Re(550)は135nmであり、透湿度は110g/m・24hであり、位相差変化は1.5%であった。得られた位相差フィルムを、上記(4)~(6)の評価に供した。結果を表1に示す。
【0080】
[実施例2]
延伸温度を137.5℃としたこと以外は参考例1と同様にして、位相差フィルムを得た。得られた位相差フィルムの波長分散値は1.022であり、面内位相差Re(550)は140nmであり、透湿度は88g/m・24hであり、位相差変化は0.9%であった。得られた位相差フィルムを、上記(4)~(7)の評価に供した。結果を表1に示す。
【0081】
[実施例3]
延伸温度を137℃としたこと以外は参考例1と同様にして、位相差フィルムを得た。得られた位相差フィルムの波長分散値は1.022であり、面内位相差Re(550)は144nmであり、透湿度は82g/m・24hであり、位相差変化は0.8%であった。得られた位相差フィルムを、上記(4)~(7)の評価に供した。結果を表1に示す。
【0082】
参考例4]
延伸温度を136.5℃としたこと以外は参考例1と同様にして、位相差フィルムを得た。得られた位相差フィルムの波長分散値は1.021であり、面内位相差Re(550)は100nmであり、透湿度は85g/m・24hであり、位相差変化は1.2%であった。得られた位相差フィルムを、上記(4)~(6)の評価に供した。結果を表1に示す。
【0083】
参考例5]
延伸温度を139℃としたこと以外は参考例1と同様にして、位相差フィルムを得た。得られた位相差フィルムの波長分散値は1.026であり、面内位相差Re(550)は155nmであり、透湿度は81g/m・24hであり、位相差変化は0.9%であった。得られた位相差フィルムを、上記(4)~(7)の評価に供した。結果を表1に示す。
【0084】
[実施例6]
1.樹脂フィルムの作製および位相差フィルムの作製
延伸温度を137℃としたこと以外は参考例1と同様にして、位相差フィルムを得た。得られた位相差フィルムの波長分散値は1.020であり、面内位相差Re(550)は144nmであり、透湿度は87g/m・24hであり、位相差変化は0.8%であった。得られた位相差フィルムを、上記(7)の評価に供した。結果を表1に示す。
【0085】
2.偏光板の作製
樹脂基材として、長尺状で、Tg約75℃である、非晶質のイソフタル共重合ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み:100μm)を用い、樹脂基材の片面に、コロナ処理を施した。
ポリビニルアルコール(重合度4200、ケン化度99.2モル%)およびアセトアセチル変性PVA(日本合成化学工業社製、商品名「ゴーセファイマー」)を9:1で混合したPVA系樹脂100重量部に、ヨウ化カリウム13重量部を添加したものを水に溶かし、PVA水溶液(塗布液)を調製した。
樹脂基材のコロナ処理面に、上記PVA水溶液を塗布して60℃で乾燥することにより、厚み13μmのPVA系樹脂層を形成し、積層体を作製した。
得られた積層体を、130℃のオーブン内で縦方向(長手方向)に2.4倍に一軸延伸した(空中補助延伸処理)。
次いで、積層体を、液温40℃の不溶化浴(水100重量部に対して、ホウ酸を4重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(不溶化処理)。
次いで、液温30℃の染色浴(水100重量部に対して、ヨウ素とヨウ化カリウムを1:7の重量比で配合して得られたヨウ素水溶液)に、最終的に得られる偏光子の単体透過率(Ts)が所望の値となるように濃度を調整しながら60秒間浸漬させた(染色処理)。
次いで、液温40℃の架橋浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを3重量部配合し、ホウ酸を5重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(架橋処理)。
その後、積層体を、液温70℃のホウ酸水溶液(ホウ酸濃度4重量%、ヨウ化カリウム濃度5重量%)に浸漬させながら、周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に総延伸倍率が5.5倍となるように一軸延伸を行った(水中延伸処理)。
その後、積層体を液温20℃の洗浄浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを4重量部配合して得られた水溶液)に浸漬させた(洗浄処理)。
その後、約90℃に保たれたオーブン中で乾燥しながら、表面温度が約75℃に保たれたSUS製の加熱ロールに接触させた(乾燥収縮処理)。
このようにして、樹脂基材上に厚み約5μmの偏光子を形成し、樹脂基材/偏光子の構成を有する偏光板を得た。
さらに、得られた偏光子の樹脂基材と反対側の面に、保護層として、シクロオレフィン系フィルム(日本ゼオン社製、商品名「ゼオノア」)を、紫外線硬化型接着剤を介して貼り合せた。具体的には、硬化型接着剤の総厚みが約1.0μmになるように塗工し、ロール機を使用して貼り合わせた。その後、UV光線をシクロオレフィン系フィルム側から照射して接着剤を硬化させた。次いで、樹脂基材を剥離してシクロオレフィン系フィルム(保護層)/偏光子の構成を有する偏光板を得た。該保護層の面内位相差は135nmであった。保護層の遅相軸と偏光子の吸収軸とのなす角度は、実質的に平行とした。
【0086】
3.位相差層付偏光板の作製
上記偏光板の偏光子側に、上記位相差層フィルムを貼り合わせた。偏光子の吸収軸と位相差フィルムの遅相軸とのなす角度は45°とした。さらに、位相差フィルムの偏光子と反対側に、ハードコート層を形成して、位相差層付偏光板を得た。得られた位相差層付偏光板を、上記(4)、(5)および(8)の評価に供した。結果を表1に示す。
【0087】
[実施例7]
延伸温度を142℃としたこと以外は参考例1と同様にして、位相差フィルムを得た。得られた位相差フィルムの波長分散値は1.020であり、面内位相差Re(550)は140nmであり、透湿度は84g/m・24hであり、位相差変化は0.7%であった。さらに、得られた位相差フィルムを、上記(7)の評価に供した。次に、得られた位相差フィルムを用いて、実施例6と同様にして、位相差層付偏光板を得た。得られた位相差層付偏光板を、上記(4)、(5)および(8)の評価に供した。結果を表1に示す。
【0088】
[実施例8]
延伸温度を147℃としたこと以外は参考例1と同様にして、位相差フィルムを得た。得られた位相差フィルムの波長分散値は1.020であり、面内位相差Re(550)は140nmであり、透湿度は89g/m・24hであり、位相差変化は0.8%であった。さらに、得られた位相差フィルムを、上記(7)の評価に供した。次に、得られた位相差フィルムを用いて、実施例6と同様にして、位相差層付偏光板を得た。得られた位相差層付偏光板を、上記(4)、(5)および(8)の評価に供した。結果を表1に示す。
【0089】
[比較例1]
延伸温度を135℃としたこと以外は参考例1と同様にして、位相差フィルムを得た。得られた位相差フィルムの波長分散値は1.021であり、面内位相差Re(550)は210nmであり、透湿度は89g/m・24hであり、位相差変化は0.8%であった。得られた位相差フィルムを、上記(4)~(7)の評価に供した。結果を表1に示す。
【0090】
[比較例2]
樹脂フィルムとして市販のシクロオレフィン系樹脂フィルム(日本ゼオン社製、商品名「ゼオノア」)を用いて、予熱温度180℃、延伸温度175℃で延伸を行ったこと以外は参考例1と同様にして位相差フィルムを得た。得られた位相差フィルムの波長分散値は1.01であり、面内位相差Re(550)は135nmであり、透湿度は29g/m・24hであり、位相差変化は0.8%であった。得られた位相差フィルムを、上記(4)~(7)の評価に供した。結果を表1に示す。
【0091】
[比較例3]
トリアセチルセルロース(TAC)フィルム(富士フィルム社製)の長手方向に対してラビングローラーの回転軸が反時計回りに45°となるように調節し、ラビング処理を行った。ラビング処理した上記TACフィルムに液晶塗工をして、液晶塗工トリアセチルセルロース(TAC)フィルムを得た。樹脂フィルムとして、この液晶塗工TACフィルムを用いたこと、および延伸を行わなかったこと以外は参考例1と同様にして位相差フィルムを得た。得られた位相差フィルムの波長分散値は1.09であり、面内位相差Re(550)は132nmであり、透湿度は330g/m・24hであり、位相差変化は4.0%であった。得られた位相差フィルムを、上記(4)~(6)の評価に供した。結果を表1に示す。
【0092】
[比較例4]
樹脂フィルムとして市販のシクロオレフィン系樹脂フィルム(日本ゼオン社製、商品名「ゼオノア」)を用いて、予熱温度を147℃とし、延伸温度を144℃とし、長手方向の延伸倍率を1.2倍、幅方向の延伸倍率を1.9倍としたこと以外は参考例1と同様にして、位相差フィルムを得た。得られた位相差フィルムの波長分散値は1.010であり、面内位相差Re(550)は136nmであり、透湿度は15g/m・24hであり、位相差変化は0.2%であった。得られた位相差フィルムを、上記(7)の評価に供した。結果を表1に示す。次に、得られた位相差フィルムを用いて、実施例6と同様にして、位相差層付偏光板を得た。得られた位相差層付偏光板を、上記(4)、(5)および(8)の評価に供した。結果を表1に示す。
【0093】
【表1】
【0094】
表1から明らかなように、本発明の実施例の位相差フィルムは、透湿度、位相差変化、異形加工性試験、耐皮脂性試験およびMIT試験のすべてにおいて優れていることがわかる。さらに、本発明の実施例の位相差フィルムを、画像表示装置のパネル側に設けた場合、優れた反射率を示すことが分かる。また、本発明の実施例の位相差層付偏光板は、異形加工性試験、耐皮脂性試験および寸法変化率のすべてにおいて優れていることがわかる。これは、特定のポリカーボネート樹脂を含む樹脂フィルムを、特定の延伸方法および延伸条件で延伸することにより実現されると推察される。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明の実施形態による位相差フィルムは、画像表示装置に好適に用いられる。