(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】膜における自己制限性プロテイン細孔挿入のためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
G01N 27/00 20060101AFI20241125BHJP
C12M 1/34 20060101ALN20241125BHJP
C12M 1/00 20060101ALN20241125BHJP
【FI】
G01N27/00 Z
C12M1/34 Z
C12M1/00 A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023165006
(22)【出願日】2023-09-27
(62)【分割の表示】P 2021532362の分割
【原出願日】2019-12-11
【審査請求日】2023-09-27
(32)【優先日】2018-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100196243
【氏名又は名称】運 敬太
(72)【発明者】
【氏名】ハラダ,タケシ
(72)【発明者】
【氏名】コマディナ,ジェイソン
(72)【発明者】
【氏名】マネー,ジュニア,ジェイ・ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】ヤーン,シャーロット
(72)【発明者】
【氏名】バラル,ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】カーマン,ジョージ・ジョン
【審査官】村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-535589(JP,A)
【文献】国際公開第2018/001925(WO,A1)
【文献】特開2016-095314(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0283867(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0370903(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00-27/10
G01N 27/14-27/24
G01N 33/48-33/98
C12M 1/00-1/42
C12Q 1/00-1/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ細孔センサセルのアレイを形成する方法であって、
ナノ細孔を含むバルク電解質をセルのサンプルチャンバに保持させること、ここで前記セルは、作用電極と、誘電体層で形成されたウェルと、前記ウェル上に形成された膜と、前記膜上にあって前記誘電体層でウェルから分離されたサンプルチャンバと、を有し、前記サンプルチャンバがバルク電解質を含み、前記作用電極は、電気的に接続された電源により電力が供給されるものであり、前記膜が、ナノ細孔の長さより厚い膜である、
電圧波形を、前記セルの前記膜にわたって適用すること、前記電圧波形は、第1の電圧にて始まり、第2の電圧まである期間にわたって大きくなるものである、
前記電圧波形を適用するステップの間に、前記ナノ細孔を前記膜内に挿入することと、
を含み、
前記電圧波形は、前記第1の電圧と前記第2の電圧との間に、複数の漸進的ステップを含み、
前記膜が、ナノ細孔を挿入するために適用された電圧波形を用いて薄くされる、
前記方法。
【請求項2】
前記第1の電圧は、約0と100mVとの間にあり、前記第2の電圧は、約100から2000mVの間にある、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記作用電極は容量電極である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記複数の漸進的ステップは、約1から100mVずつ漸進する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記複数の漸進的ステップは、約1から25mVずつ漸進する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
各漸進的ステップは、約0.1から60秒の間の期間を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記漸進的ステップの前記期間は可変的である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
より低い電圧での前記漸進的ステップの前記期間は、より高い電圧での前記漸進的ステップの前記期間より長い、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記漸進的ステップの前記期間は一定である、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
ナノ細孔センサセルのアレイを形成する方法であって、
ナノ細孔を含むバルク電解質をセルのサンプルチャンバに保持させること、ここで前記セルは、作用電極と、誘電体層で形成されたウェルと、前記ウェル上に形成された膜と、前記膜上にあって前記誘電体層でウェルから分離されたサンプルチャンバと、を有し、前記サンプルチャンバがバルク電解質を含み、前記作用電極は、電気的に接続された電源により電力が供給されるものであり、
電圧波形を、前記セルの前記膜にわたって適用すること、前記電圧波形は、第1の電圧にて始まり、第2の電圧まである期間にわたって大きくなるものである、
前記電圧波形を適用するステップの間に、前記ナノ細孔を前記膜内に挿入することと、
を含み、
前記電圧波形は、前記第1の電圧と前記第2の電圧との間に、複数の漸進的ステップを含み、
ここで、前記電圧波形は、AC変調成分を含み、前記AC変調成分は、前記電圧波形が、前記セルの前記膜にわたって適用されている間に、前記作用電極を通して、電気的測定値が取得され得るよう構成されている、
前記方法。
【請求項11】
前記AC変調成分は、100mV未満の振幅を有する、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
前記AC変調成分は、10Hzと1000Hzとの間の周波数を有する、請求項
10に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の電圧は、約0と100mVとの間にあり、前記第2の電圧は、約100から2000mVの間にある、請求項
10~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記作用電極は容量電極である、請求項
10~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記複数の漸進的ステップは、約1から100mVずつ漸進する、請求項
10~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記複数の漸進的ステップは、約1から25mVずつ漸進する、請求項
10~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
各漸進的ステップは、約0.1から60秒の間の期間を有する、請求項
10~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記漸進的ステップの前記期間は可変的である、請求項
17に記載の方法。
【請求項19】
より低い電圧での前記漸進的ステップの前記期間は、より高い電圧での前記漸進的ステップの前記期間より長い、請求項
17に記載の方法。
【請求項20】
前記漸進的ステップの前記期間は一定である、請求項
17に記載の方法。
【請求項21】
前記膜が、ナノ細孔の長さより厚い膜であり、
前記膜を薄くすることをさらに含み、
ここで、前記膜を薄くすることが、ナノ細孔を膜に挿入する前、又はナノ細孔を膜に挿入するのと同時に行われるものであり、
膜を薄くすることが、前記電圧波形の適用すること、前記電圧波形の印加前に別の電圧を印加すること、及び/又は膜にわたってオスモル濃度の不均衡を操作することによって行われる、
請求項
10~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記膜が、ナノ細孔を挿入するために適用された電圧波形を用いて薄くされる、請求項
21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年12月11日に出願の、米国仮特許出願第62/777,976号に対する優先権の利益を主張するものであり、上記仮特許出願の内容全体を、すべての目的のために、参照により本明細書に援用する。
【0002】
参照による援用
本明細書において言及する出版物及び特許出願のすべては、各個別の出版物又は特許出願が、具体的に、及び、個別に、参照により本明細書に援用するものと、あたかも示されたことと同じ程度に、参照により本明細書に援用する。
【背景技術】
【0003】
ナノ細孔ベースの配列決定チップは、デオキシリボ核酸(deoxyribonucleic acid又はDNA)配列決定に使用され得る分析ツールである。これらのデバイスは、アレイとして構成された、非常に多数のセンサセルを組み込むことができる。例えば、配列決定チップは、1000行×1000列のセルなどの、100万個のセルのアレイを含むことができる。アレイのセルのそれぞれは、膜と、内径において1ナノメートルオーダーの細孔サイズを有するプロテイン細孔と、を含むことができる。そのようなナノ細孔は、ヌクレオチドの迅速な配列決定において有効であることが示されている。
【0004】
電位が、伝導性流体に浸されたナノ細孔にわたって印加されると、ナノ細孔にわたるイオンの伝導に起因する小イオン電流が存在できる。電流のサイズは、細孔サイズと、ナノ細孔内に配置された分子のタイプと、に影響を受けやすい。分子は、特定のヌクレオチドに取り付けられた特定のタグとなり得る。したがって、核酸の特定の位置でのヌクレオチドの検出が可能となる。分子の抵抗を測定する方法として、ナノ細孔を含む回路における電圧又は他の信号が(例えば、積分コンデンサにて)測定され得る。したがって、ナノ細孔内にどのような分子があるかを検出することが可能となる。
【0005】
配列決定チップが適切に機能するためには、一般的に、所与のセルに対する膜において、細孔が1つのみ挿入されるべきである。複数の細孔が単一の膜内に挿入されると、複数の細孔を同時に通過したヌクレオチドにより生成された電気的シグニチャのインタープリテーションが、はるかに難しくなる。
【0006】
細孔挿入ステップ中の、膜にわたる電圧の印加は、おそらくは、膜の安定性を下げることと、細孔自体が、膜内に、より容易に挿入できるようにすることと、により、細孔挿入のプロセスを促進する場合がある。しかし、膜にわたる過大な電圧の印加は、膜の甚大な破壊を引き起こし得る。これにより、セルは、使用できない状態となる。
【0007】
したがって、膜が過剰に損傷するリスクを下げつつ、単一の細孔を膜内に確実に挿入するためのシステム及び方法を提供することが好適である。
【発明の概要】
【0008】
種々の実施形態が、ナノ細孔ベースの配列決定チップのセルにおける、単一の細孔の膜内への挿入に関する技術及びシステムを提供する。いくつかの実施形態では、細孔の膜内への挿入は、さらなる細孔の膜内への挿入の可能性を下げる。
【0009】
他の実施形態は、以下に説明される方法に関連付けられたシステム及びコンピュータ可
読媒体に向けられている。
【0010】
いくつかの実施形態では、ナノ細孔センサセルのアレイを形成する方法が提供される。この方法は、ナノ細孔をセルの最も近くに導入することであって、セルは、作用電極と、セルを密封する膜と、を有し、作用電極は、交流(alternating current又はAC)接続された電源により電力が供給される、ナノ細孔をセルの最も近くに導入することと、電圧波形を、セルの膜にわたって適用することであって、電圧波形は、第1の電圧にて始まり、第2の電圧まである期間にわたって大きくなる、電圧波形を、セルの膜にわたって適用することと、電圧波形を適用するステップの間に、ナノ細孔を膜内に挿入することと、を含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、第1の電圧は、約0と100mVとの間にある。第2の電圧は、約100から2000mVの間にある。
【0012】
いくつかの実施形態では、作用電極は容量電極である。
【0013】
いくつかの実施形態では、電圧波形は、第1の電圧と第2の電圧との間に、複数の漸進的ステップを含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、複数の漸進的ステップは、約1から100mVずつ漸進する。
【0015】
いくつかの実施形態では、複数の漸進的ステップは、約1から25mVずつ漸進する。
【0016】
いくつかの実施形態では、各漸進的ステップは、約0.1から60秒の間の期間を有する。
【0017】
いくつかの実施形態では、漸進的ステップの期間は可変的である。
【0018】
いくつかの実施形態では、より低い電圧での漸進的ステップの期間は、より高い電圧での漸進的ステップの期間より長い。
【0019】
いくつかの実施形態では、漸進的ステップの期間は一定である。
【0020】
いくつかの実施形態では、電圧波形は、第1の電圧と第2の電圧との間に傾斜を含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、傾斜は、毎分約0.1から2.0Vの間にある。
【0022】
いくつかの実施形態では、傾斜は、一定のスロープを有する。
【0023】
いくつかの実施形態では、傾斜は、可変スロープを有する。
【0024】
いくつかの実施形態では、傾斜は、より高い電圧でのスロープより小さい、より低い電圧でのスロープを有する。
【0025】
いくつかの実施形態では、電圧波形を適用することは、薄くされていない膜に適用される。
【0026】
いくつかの実施形態では、この方法は、薄くされていない膜を、適用された電圧波形を用いて薄くすることをさらに含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、分子の配列決定のためのシステムが提供される。このシステムは、基板上のセルのアレイであって、セルのそれぞれは、作用電極と、膜により密封されるよう構成されている開口と、を有し、作用電極は、交流(alternating current又はAC)接続された電源により電力が供給される、基板上のセルのアレイと、対電極と、電源であって、各作用電極にAC接続されている電源と、コントローラであって、第1の電圧にて始まり、第2の電圧まである期間にわたって大きくなる電圧波形を、作用電極と対電極とを使用して、セルに供給するようプログラムされたコントローラと、を含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、作用電極は容量電極である。
【0029】
いくつかの実施形態では、電圧波形は、第1の電圧と第2の電圧との間に、複数の漸進的ステップを含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、電圧波形は、第1の電圧と第2の電圧との間に傾斜を含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、コントローラは、電圧波形を、薄くされていない膜に供給するようさらにプログラムされている。
【0032】
いくつかの実施形態では、ナノ細孔センサセルのアレイを形成する方法が提供される。この方法は、ナノ細孔をセルの最も近くに導入することであって、セルは、作用電極と、セルを密封する膜と、を有し、作用電極は、電気的に接続された電源により電力が供給される、ナノ細孔をセルの最も近くに導入することと、電圧波形を、セルの膜にわたって適用することであって、電圧波形は、第1の電圧にて始まり、第2の電圧まである期間にわたって大きくなり、電圧波形は、交流(alternating current又はAC)変調成分を含み、AC変調成分は、電圧波形が、セルの膜にわたって適用されている間に、作用電極を通して、電気的測定値が取得され得るよう構成されている、電圧波形を、セルの膜にわたって適用することと、電圧波形を適用する間に、ナノ細孔を膜内に挿入することと、を含むことができる。
【0033】
いくつかの実施形態では、AC変調成分は、100mV未満の振幅を有する。いくつかの実施形態では、AC変調成分は、10Hzと1000Hzとの間の周波数を有する。
【0034】
いくつかの実施形態では、膜で覆われたセルを形成する方法が提供される。この方法は、膜形成材料をセル上に流すことであって、セルは、作用電極を有し、作用電極は、電気的に接続された電源により電力が供給される、膜形成材料をセル上に流すことと、膜形成材料の層をセル上に配置することと、電圧波形を、膜形成材料の層にわたって、作用電極と、膜形成材料の層の反対側にある対電極と、を使用して適用することであって、電圧波形は、交流(alternating current又はAC)変調成分を含み、AC変調成分は、電圧波形が、膜形成材料の層にわたって適用されている間に、作用電極を通して、電気的測定値が取得され得るよう構成されている、電圧波形を、膜形成材料の層にわたって、作用電極と、膜形成材料の層の反対側にある対電極と、を使用して適用することと、膜形成材料の層を膜に薄くすることであって、膜は、ナノ細孔を受容するよう構成されている、膜形成材料の層を膜に薄くすることと、を含むことができる。
【0035】
いくつかの実施形態では、AC変調成分は、100mV未満の振幅を有する。いくつかの実施形態では、AC変調成分は、10Hzと1000Hzとの間の周波数を有する。
【0036】
本発明の実施形態の特性及び利点の良好な理解は、以下の詳細説明及び添付の図面を参
照して得ることができる。
【0037】
本発明の新規な特徴は、特に、以下の特許請求の範囲に説明される。本発明の特徴及び利点の良好な理解は、本発明の原理が利用されている、実例となる実施形態を説明する、以下の詳細説明と、以下の添付の図面と、を参照して得られる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】
図1は、ナノ細孔セルのアレイを有するナノ細孔センサチップの実施形態の上面図である。
【
図2】
図2は、ポリヌクレオチド又はポリペプチドの特性を評価するために使用され得るナノ細孔センサチップにおけるナノ細孔セルの実施形態を示す。
【
図3】
図3は、ヌクレオチドの配列決定を、ナノ細孔ベースの、合成による配列決定(Nano-sequencing-by-synthesi又はNano-SBS)技術を使用して行うナノ細孔セルの実施形態を示す。
【
図4】
図4は、ナノ細孔セルにおける電気回路の実施形態を示す。
【
図5】
図5は、ナノ細孔セルから、ACサイクルの明期及び暗期中に取得されたデータポイントの例を示す。
【
図6】
図6は、ナノ細孔センサセルの回路図の実施形態を示す。
【
図7】
図7は、細孔挿入を促進するために使用され得るステップ状の電圧波形を示す。
【
図8】A及びBは、細孔挿入を促進するために使用され得る傾斜した電圧波形を示す。
【
図9】A及びBは、いくつかの実施形態において、細孔が挿入されると、細孔は、上昇した電圧を膜自体にわたって消散させることができ、したがって、細孔が挿入された後に、電圧がさらに上昇する際に、膜への損傷のリスクを下げることと、さらなる細孔挿入の可能性を下げることと、の双方を示す。
【
図10】Aは、電圧と、時間と、に応じての、アレイにおける細孔挿入数のプロットを示し、Bは、電圧と、時間と、に応じての、膜の破壊から生じる、失活/ショート数のプロットを示す。
【
図11】
図11は、本開示の特定の態様に係るコンピュータシステムである。
【0039】
用語
特に定義されない限り、ここに使用される技術用語及び科学用語は、当業者に一般的に理解されるものと同じ意味を有する。ここに説明されるそれらと同様の、又は、等価な、方法、デバイス、及び材料は、開示される技術の実践において使用され得る。以下の用語は、頻繁に使用される特定の用語の理解を促進するために提供され、本開示の範囲を限定することを意味しない。ここに使用される略語は、化学及び生体学の分野におけるそれらの一般的な意味を有する。
【0040】
「ナノ細孔」とは、膜内に形成された、又は、さもなければ提供された、細孔、チャネル、又は通路を指す。膜は、脂質二分子層などの有機膜、又は、高分子材料製の膜などの合成膜、であり得る。ナノ細孔は、相補型金属酸化膜半導体(complementary metal oxide semiconductor又はCMOS)又は電界効果トランジスタ(field effect transistor又はFET)回路などの、センシング回路、又は、そのようなセンシング回路に接続された電極に隣接して、又は、これに近接して配置され得る。いくつかの例では、ナノ細孔は、約0.1ナノメートル(nanometers又はnm)から約1000nmオーダーの、特徴的な幅又は直径を有する。いくつかの実装では、ナノ細孔は、プロテインであってよい。
【0041】
「核酸」とは、デオキシリボヌクレオチド、又は、リボヌクレオチド、及び、一本鎖型
又は二本鎖型のいずれかの、それらのポリマーを指す。この用語は、既知のヌクレオチド類似体、又は、修飾された骨格鎖残基若しくは連鎖を含む核酸を包含する。これらは、合成物質、天然に存在するもの、及び、天然に存在しないものである。これらは、参照核酸と同様の結合特性を有する。これらは、参照ヌクレオチドと同様の様式にて代謝される。そのような類似体の例としては、ホスホロチオエート、ホスホラミダイト、メチルホスホネート、キラルメチルホスホネート、2-O-メチルリボヌクレオチド、及びペプチド核酸(peptide-nucleic acids又はPNAs)が含まれるが、これらに限定されない。特に示されない限り、特定の核酸配列はまた、暗に、それらの保存的に修飾された変異体(例えば、縮重コドン置換体)、及び、相補的配列、同様に、明示された配列を包含する。具体的には、縮重コドン置換体は、1つ又はそれ以上の選択された(又は、すべての)コドンの第三番目が、混合基及び/又はデオキシイノシン残基と置換された配列を生成することにより達成され得る(Batzerら、Nucleic Acid Res.19:5081(1991)、Ohtsukaら、J.Biol.Chem.260:2605-2608(1985)、Rossoliniら、Mol.Cell.Probes8:91-98(1994))。核酸という用語は、遺伝子、相補的デオキシリボ核酸(complementary DNA又はcDNA)、伝令リボ核酸(messenger ribonucleic acid又はmRNA)、オリゴヌクレオチド、及びポリヌクレオチドと、互いに交換可能に使用され得る。
【0042】
用語「ヌクレオチド」は、天然に存在するリボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチドモノマーを指すことに加えて、(相補的塩基に対する混成などの)ヌクレオチドが使用されている特定のコンテキストに関して、そのコンテキストがさもなければ明確に示さない限りは、機能的に等価な誘導体及び類似体を含む、それらの関連する構造変異体を指すものと理解され得る。
【0043】
用語「タグ」とは、原子若しくは分子、又は、原子若しくは分子の集合体であり得る、検出可能な部分を指す。タグは、光学的な、電気化学的な、磁気的な、又は静電性(例えば、誘導性、又は、容量性)シグニチャを提供できる。このシグニチャは、ナノ細孔の助力によって検出され得る。典型的には、ヌクレオチドがタグに取り付けられると、このタグは、「タグ付けされたヌクレオチド」と呼ばれる。タグは、リン酸塩部分を介してヌクレオチドに取り付けられ得る。
【0044】
用語「テンプレート」とは、DNA合成のために、DNAヌクレオチドの相補鎖にコピーされた一本鎖核酸分子を指す。いくつかの場合では、テンプレートは、mRNAの合成中にコピーされたDNAの配列を指し得る。
【0045】
用語「プライマ」とは、DNA合成のための開始ポイントを提供する、短い核酸配列を指す。DNAポリメラーゼなどの、DNA合成において触媒として作用する酵素は、DNAの複製のために、新たなヌクレオチドをプライマに加えることができる。
【0046】
用語「ポリメラーゼ」とは、ポリヌクレオチドの、テンプレートに向けられた合成を行う酵素を指す。この用語は、ポリペプチド全体と、ポリメラーゼ活性を有するドメインと、の双方を包含する。DNAポリメラーゼは当業者によく知られており、これらに限定されないが、ピロコッカス・フリオサス、テルモコッカス・リトラリス、及びサーモトガ・マリティマ、又は、それらの修飾されたバージョンから切り離された、又は、これらから派生したDNAポリメラーゼを含む。これらは、逆転写酵素などの、DNA依存性ポリメラーゼ及びRNA依存性ポリメラーゼの双方を含む。DNA依存性DNAポリメラーゼの少なくとも5つのファミリが知られている。最も知られたものは、ファミリA、ファミリB、及びファミリCである。これらの種々のファミリの間では、配列決定における類似性は、わずかであるか、又はまったく無い。ファミリAポリメラーゼのほとんどは、ポリメラーゼ、3′から5′のエキソヌクレアーゼ活性と、5′から3′のエキソヌクレアーゼ活性と、を含む、複数の酵素機能を含むことができる、一本鎖型プロテインである。ファミリBポリメラーゼは、典型的には、ポリメラーゼ及び3′から5′のエキソヌクレアーゼ活性と、同様に、補助要素と、を伴う単一の触媒ドメインを有する。ファミリCポリメラーゼは、典型的には、重合化と、3′から5′のエキソヌクレアーゼ活性と、を伴うマルチサブユニットプロテインである。大腸菌(Escherichia coli又はE.coli)では、DNAポリメラーゼI(ファミリA)、DNAポリメラーゼII(ファミリB)、及びDNAポリメラーゼIII(ファミリC)の3つのタイプのDNAポリメラーゼが見つかっている。真核細胞では、DNAポリメラーゼα、δ、及びεの3つの異なるファミリBポリメラーゼが、核の複製において関与している。ファミリAポリメラーゼの1つであるポリメラーゼγが、ミトコンドリアDNA複製のために使用される。他のタイプのDNAポリメラーゼとしては、ファージポリメラーゼが含まれる。同様に、RNAポリメラーゼとしては、典型的には、真核性RNAポリメラーゼI、II、並びにIII、及び、細菌性RNAポリメラーゼ、同様に、ファージ並びにウイルスポリメラーゼ、が含まれる。RNAポリメラーゼは、DNA依存性及びRNA依存性であり得る。
【0047】
用語「明期」とは、一般的に、AC信号を通して印加された電界により、タグ付けされたヌクレオチドのタグがナノ細孔内に押し込められる期間を指す。用語「暗期」とは、一般的に、AC信号を通して印加された電界により、タグ付けされたヌクレオチドのタグがナノ細孔から押し出される期間を指す。ACサイクルは、明期と、暗期と、を含むことができる。異なる実施形態では、ナノ細孔セルを明期(又は、暗期)にするために、ナノ細孔セルに適用される電圧信号の極性を、異ならせることができる。
【0048】
用語「信号値」とは、配列決定セルから出力される配列決定信号の値を指す。特定の実施形態によると、配列決定信号は、1つ又はそれ以上の配列決定セルの回路におけるポイントにて測定され、及び/又は、そこから出力された電気的信号である。例えば、信号値は、電圧又は電流である(又は、これを表す)。信号値は、電圧及び/又は電流の直接測定の結果を表すことができ、及び/又は、間接測定値を表してよい。例えば、信号値は、電圧又は電流が指定値に到達するまでにかかる、測定された期間であり得る。信号値は、ナノ細孔の抵抗率と相互に関連し、(挿通された、及び/又は、挿通されていない)ナノ細孔の抵抗率及び/又はコンダクタンスが導かれ得る、いずれの測定可能な量を表すことができる。別の例としては、信号値は、例えば、ポリメラーゼを用いて核酸に加えられたヌクレオチドに取り付けられた蛍光体からの光の強度に対応することができる。
【0049】
用語「オスモル濃度」とは、これは浸透圧濃度としても知られており、溶質濃度の測定単位を指す。オスモル濃度は、溶液の単位体積毎の溶質粒子のオスモル数を測定する。オスモルは、溶液の浸透圧に寄与する溶質のモル数の測定単位である。オスモル濃度は、溶液の浸透圧の測定と、浸透圧濃度が異なる2種類の溶液を分離する半透膜(浸透作用)にわたって、溶媒がどのように分散するかの決定と、を可能にする。
【0050】
用語「オスモライト」とは、溶液内に溶解されると、その溶液のオスモル濃度を上げる、いずれの溶解可能な化合物を指す。
【発明を実施するための形態】
【0051】
特定の実施形態によると、以下に開示される技術及びシステムは、ナノ細孔ベースの配列決定チップのセルにおける、単一の細孔の膜内への挿入に関する。いくつかの実施形態では、細孔の膜内への挿入は、さらなる細孔の膜内への挿入の可能性を下げる。これは、したがって、細孔挿入をさらに自己制限性のあるものとし、挿入ステップ中のアクティブなフィードバックの必要性を減らす、又は、これを排除する。
【0052】
ナノ細孔システム、回路、及び配列決定操作の例がまず説明される。続いて、DNA配列決定セルにおいてナノ細孔を置き換える技術例が説明される。本発明の実施形態は、多くの方法にて実施され得る。これらの方法は、プロセス、システム、及びコンピュータ可読記憶媒体上に具現化されるコンピュータプログラム製品、及び/又は、プロセッサ、例えば、プロセッサであって、そのプロセッサに接続されたメモリ上に保存された、及び/又は、このメモリにより提供された命令を実行するよう構成されているプロセッサ、を含む。
【0053】
I.ナノ細孔ベースの配列決定チップ
図1は、ナノ細孔セル150のアレイ140を有するナノ細孔センサチップ100の実施形態の上面図である。ナノ細孔セル150のそれぞれは、ナノ細孔センサチップ100のシリコン基板上に統合された制御回路を含む。いくつかの実施形態では、側壁136がアレイ140に含まれており、ナノ細孔セル150のグループをそれぞれ分離し、グループのそれぞれが、特性評価のために、異なるサンプルを受け取ることができるようになっている。ナノ細孔セルのそれぞれは、核酸の配列を決定するために使用され得る。いくつかの実施形態では、ナノ細孔センサチップ100は、カバープレート130を含む。いくつかの実施形態では、ナノ細孔センサチップ100はまた、コンピュータプロセッサなどの他の回路と相互作用する複数のピン110をも含む。
【0054】
いくつかの実施形態では、ナノ細孔センサチップ100は、同じパッケージに複数のチップを含み、例えば、マルチチップモジュール(multi-chip module又はMCM)、又は、システムインパッケージ(system-in-package又はSiP)を構成する。チップは、例えば、メモリ、プロセッサ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(field-programmable gate array又はFPGA)、特定用途向け集積回路(application-specific integrated circuit又はASIC)、データコンバータ、高速I/Oインターフェース、などを含むことができる。
【0055】
いくつかの実施形態では、ナノ細孔センサチップ100は、ナノチップワークステーション120に接続される(例えば、ドッキングされる)。ナノチップワークステーション120は、以下に開示される、プロセスの種々の実施形態を実行する(例えば、自動的に実行する)ための種々の構成要素を含むことができる。これらのプロセスは、例えば、脂質懸濁液、又は、他の膜構造懸濁液、分析物溶液、及び/又は、他の液体、懸濁液、又は固体を供給するための、ピペットなどの、分析物デリバリメカニズムを含むことができる。ナノチップワークステーションの構成要素は、ロボティックアーム、1つ又はそれ以上のコンピュータプロセッサ、及び/又はメモリをさらに含むことができる。複数のポリヌクレオチドが、ナノ細孔セル150のアレイ140上にて検出され得る。いくつかの実施形態では、ナノ細孔セル150のそれぞれは、個別のアドレス化が可能である。
【0056】
II.ナノ細孔配列決定セル
ナノ細孔センサチップ100におけるナノ細孔セル150は、多くの異なる方法にて実装され得る。例えば、いくつかの実施形態では、異なるサイズ及び/又は化学構造のタグが、配列決定される核酸分子における異なるヌクレオチドに取り付けられる。いくつかの実施形態では、異なるポリマーでタグ付けされたヌクレオチドを、テンプレートと混成することにより、相補鎖が、配列決定される核酸分子の、そのテンプレートに合成されてよい。いくつかの実装では、核酸分子と、取り付けられたタグと、の双方が、ナノ細孔を通って移動する。ナノ細孔を通過するイオン電流が、ナノ細孔内にあるヌクレオチドを、そのヌクレオチドに取り付けられたタグの特定のサイズ及び/又は構造により、示すことができる。いくつかの実装では、タグのみが、ナノ細孔内に移される。ナノ細孔内の異なるタグはまた、多くの異なる方法でも検出され得る。
【0057】
A.ナノ細孔配列決定セル構造
図2は、
図1のナノ細孔センサチップ100におけるナノ細孔セル150などの、ナノ細孔センサチップにおける例示的なナノ細孔セル200の実施形態を示す。これは、ポリヌクレオチド又はポリペプチドの特性を評価するために使用され得る。ナノ細孔セル200は、誘電体層201及び204で形成されたウェル205と、ウェル205上に形成された脂質二分子層214などの膜と、脂質二分子層214上の、脂質二分子層214によりウェル205から分離されたサンプルチャンバ215と、を含むことができる。ウェル205は、多量の電解質206を含むことができる。サンプルチャンバ215は、溶解性プロテインナノ細孔膜貫通分子錯体(protein nanopore transmembrane molecular complexes又はPNTMCs)などの、ナノ細孔を含むバルク電解質208と、対象分析物(例えば、配列決定される核酸分子)と、を保持することができる。
【0058】
ナノ細孔セル200は、ウェル205の底にある作用電極202と、サンプルチャンバ215内に配置された対電極210と、を含むことができる。信号源228は、電圧信号を、作用電極202と対電極210との間に適用することができる。単一のナノ細孔(例えば、PNTMC)は、電圧信号により開始するエレクトロポレーションプロセスにより、脂質二分子層214内に挿入され得る。したがって、ナノ細孔216が脂質二分子層214内に形成される。アレイ内の個別の膜(例えば、脂質二分子層214又は他の膜構造)は、化学的にも電気的にも互いに接続されないものとすることができる。したがって、アレイにおけるナノ細孔セルのそれぞれは、独立した配列決定マシンであり得る。これは、対象分析物に作用し、さもなければ不浸透性の脂質二分子層を通してイオン電流を変調するナノ細孔に関連付けられた、単一のポリマー分子に固有のデータを生成する。
【0059】
細孔挿入のためのシステム及び方法の追加的な実施形態が、以下のセクションIIIにて説明される。特に、これらのシステム及び方法は、セルの膜における、単一細孔挿入を効率的に達成する、自己制限性細孔挿入を説明する。
【0060】
図2に示すように、ナノ細孔セル200は、シリコン基板などの基板230上に形成され得る。誘電体層201は、基板230上に形成され得る。誘電体層201を形成するために使用される誘電材料としては、例えば、ガラス、酸化物、窒化物、などを含むことができる。電気的刺激を制御することと、ナノ細孔セル200から検出される信号を処理することと、のための電気回路222は、基板230上、及び/又は、誘電体層201内に形成され得る。例えば、複数のパターン化された金属層(例えば、金属1から金属6)が、誘電体層201内に形成され得る。そして、複数のアクティブデバイス(例えば、トランジスタ)が、基板230上に作られ得る。いくつかの実施形態では、信号源228は、電気回路222の一部として含まれる。電気回路222は、例えば、アンプ、積分器、アナログ-デジタルコンバータ、ノイズフィルタ、フィードバック制御ロジック、及び/又は種々の他の構成要素、などを含むことができる。電気回路222は、メモリ226に接続されたプロセッサ224にさらに接続され得る。ここでは、プロセッサ224は、配列決定データを分析し、アレイにおいて配列決定されたポリマー分子の配列を決定できる。
【0061】
作用電極202は、誘電体層201上に形成され得、ウェル205の底の一部を少なくとも形成できる。いくつかの実施形態では、作用電極202は金属電極である。非ファラデー性伝導について、作用電極202は、例えば、白金、金、窒化チタン、及び黒鉛などの、腐食及び酸化に耐性のある金属又は他の材料製であり得る。例えば、作用電極202は、白金が電気めっきされた白金電極であり得る。別の例では、作用電極202は、窒化チタン(TiN)製作用電極であり得る。作用電極202は多孔質であり得る。これは、したがって、その表面積が広くなり、作用電極202に関連付けられた静電容量をもたら
す。ナノ細孔セルの作用電極は、別のナノ細孔セルの作用電極から独立し得るため、作用電極は、本開示ではセル電極と呼ばれ得る。
【0062】
誘電体層204は、誘電体層201の上に形成され得る。誘電体層204は、ウェル205を取り囲む壁を形成する。誘電体層204を形成するために使用される誘電材料としては、例えば、ガラス、酸化物、一窒化シリコン(silicon mononitride又はSiN)、ポリイミド、又は他の好適な疎水性絶縁材料などを含むことができる。誘電体層204の上面は、シラン処理され得る。シラン処理は、誘電体層204の上面の上に疎水層220を形成できる。いくつかの実施形態では、疎水層220は、約1.5ナノメートル(nm)の厚さを有する。
【0063】
誘電体層204の壁により形成されたウェル205は、作用電極202の上に、多量の電解質206を含む。多量の電解質206はバッファされ得、次の1つ又はそれ以上を含むことができる:塩化リチウム(LiCl)、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カリウム(KCl)、グルタミン酸リチウム、グルタミン酸ナトリウム、グルタミン酸カリウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、塩化カルシウム(CaCl2)、塩化ストロンチウム(SrCl2)、塩化マンガン(MnCl2)、及び塩化マグネシウム(MgCl2)。いくつかの実施形態では、多量の電解質206は、約3ミクロン(μm)の厚さを有する。
【0064】
また、
図2に示すように、膜が、誘電体層204の上に形成され得る。この膜は、ウェル205にわたって広がる。いくつかの実施形態では、この膜は、疎水層220の上に形成された脂質単分子層218を含む。この膜が、ウェル205の開口に到達すると、脂質単分子層208は、ウェル205の開口にわたって広がる脂質二分子層214に変遷できる。脂質二分子層は、リン脂質などの脂質類を含む、又は、これらからなることができる。脂質類は、例えば、次から選択される:ジフィタノイル-ホスファチジルコリン(DPhPC)、1,2-ジフィタノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジ-O-フィタニル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DoPhPC)、パルミトイル-オレオイル-ホスファチジルコリン(POPC)、ジオレオイル-ホスファチジル-メチルエステル(DOPME)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、スフィンゴミエリン、1,2-ジ-O-フィタニル-sn-グリセロール、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-350]、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-550]、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-750]、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-1000]、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-2000]、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-ラクトシル、GM1ガングリオシド、リゾホスファチジルコリン(LPC)、又は、これらのいずれの組み合わせ。他のリン脂質誘導体がまた、使用されてよい。例えば、ホスファチジン酸誘導体(例えば、DMPA、DDPA、DSPA)、ホスファチジルコリン誘導体(例えば、DDPC、DLPC、DMPC、DPPC、DSPC、DOPC、POPC、DEPC)、ホスファチジルグリセロール誘導体(例えば、DMPG、DPPG、DSPG、POPG)、ホスファチジルエタノールアミン誘導体(例えば、DMPE、DPPE、DSPE、DOPE)、ホスファチジルセリン誘導体(例えば、DOPS)、PEGリン脂質誘導体(例えば、mPEGリン脂質、ポリグリセリンリン脂質、官能性リン脂質、末端活性リン脂質)、ジフィタノイルリン脂質(例えば、DPhPC、DOPhPC、DPhPE、及びDOPhPE)。いくつかの実施形態では、二分子層は、例えば、次の非脂質ベースの材料を使用して形成され得る:両親媒性ブロック共重合体(例えば、ポリ(ブタジエン)-ブロック-ポリ(酸化エチレン)、PEGジブロック共重合体、PEGトリブロック共重合体、PPGトリブロック共重合体、並びにポロクサマー)、及び、非イオン性又はイオン性であってよい、他の両親媒性共重合体。いくつかの実施形態では、二分子層は、脂質ベースの材料と、非脂質ベースの材料と、の組み合わせから形成され得る。いくつかの実施形態では、二分子層材料は、アルカン(例えば、デカン、トリデカン、ヘキサデカン、など)、及び/又は、1つ又はそれ以上のシリコーンオイル(例えば、AR-20)などの、1つ又はそれ以上の有機溶媒を含む溶媒相にて供給され得る。
【0065】
ここに示すように、脂質二分子層214には、例えば、単一のPNTMCにより形成された、単一のナノ細孔216が埋め込まれている。上述されるように、ナノ細孔216は、エレクトロポレーションにより、単一のPNTMCを脂質二分子層214内に挿入することにより形成され得る。ナノ細孔216は、対象分析物の少なくとも一部位、及び/又は、小さいイオン(例えば、Na+、K+、Ca2+、CI-)を、脂質二分子層214の2つの側の間に通すために、十分に大きなものであり得る。
【0066】
サンプルチャンバ215は、脂質二分子層214の上にあり、特性評価対象分析物の溶液を保持することができる。溶液は、バルク電解質208を含む水溶液であり、最適なイオン濃度にバッファされ、ナノ細孔216を開いたままにするために最適なpHにて維持され得る。ナノ細孔216は、脂質二分子層214を横断し、バルク電解質208から作用電極202へのイオンフローの進路を唯一提供する。ナノ細孔(例えば、PNTMC)及び対象分析物に加えて、バルク電解質208は、次の1つ又はそれ以上をさらに含むことができる:塩化リチウム(LiCl)、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カリウム(KCl)、グルタミン酸リチウム、グルタミン酸ナトリウム、グルタミン酸カリウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、塩化カルシウム(CaCl2)、塩化ストロンチウム(SrCl2)、塩化マンガン(MnCl2)、及び塩化マグネシウム(MgCl2)。
【0067】
対電極(counter electrode又はCE)210は、電気化学的な電位センサであり得る。いくつかの実施形態では、対電極210は、複数のナノ細孔セルの間にてシェアされており、したがって、共通電極と呼ばれ得る。いくつかの場合では、共通電位及び共通電極は、すべてのナノ細孔セルに、又は、少なくとも、特定のグルーピング内のすべてのナノ細孔セルに共通し得る。共通電極は、共通電位を、ナノ細孔216に接触しているバルク電解質208に印加するよう構成され得る。対電極210と、作用電極202と、は、脂質二分子層214にわたって電気的刺激(例えば、電圧バイアス)を提供するために、信号源228に接続され得、脂質二分子層214の電気的特徴(例えば、抵抗、静電容量、及びイオン電流フロー)を感知するために使用され得る。いくつかの実施形態では、ナノ細孔セル200はまた、参照電極212をも含むことができる。
【0068】
いくつかの実施形態では、較正の一部として、ナノ細孔セルの作成中に、種々のチェックが行われる。ナノ細孔セルが作成されると、例えば、所望するように作動しているナノ細孔セル(例えば、セル内の1つのナノ細孔)を識別するために、さらなる較正ステップが行われ得る。そのような較正チェックは、物理的チェック、電圧較正、オープンチャネル較正、及び単一のナノ細孔を有するセルの識別を含むことができる。
【0069】
B.ナノ細孔配列決定セルの検出信号
ナノ細孔センサチップ100におけるナノ細孔セル150などの、ナノ細孔センサチップにおけるナノ細孔セルは、合成(Nano-SBS)技術による、単一分子ナノ細孔ベ
ースの配列決定を使用する、並列配列決定を可能とする。
【0070】
図3は、Nano-SBS技術を使用する、ヌクレオチドの配列決定を行うナノ細孔セル300の実施形態を示す。Nano-SBS技術では、配列決定されるテンプレート332(例えば、ヌクレオチド酸分子又は別の対象分析物)と、プライマと、が、ナノ細孔セル300のサンプルチャンバ内のバルク電解質308内に導入され得る。例として、テンプレート332は、円形又は線形であり得る。核酸プライマは、テンプレート332の一部位に混成され得る。ここに、4つの異なるポリマーでタグ付けされたヌクレオチド338が加えられ得る。
【0071】
いくつかの実施形態では、酵素(例えば、DNAポリメラーゼなどのポリメラーゼ334)が、相補鎖をテンプレート332に合成することにおける使用のために、ナノ細孔316に関連付けられている。例えば、ポリメラーゼ334は、共有結合によって、ナノ細孔316に取り付けられ得る。ポリメラーゼ334は、ヌクレオチド338の、一本鎖核酸分子をテンプレートとして使用する、プライマ上への組み込みにおいて、触媒として作用することができる。ヌクレオチド338は、A、T、G、又はCの、4つの異なるタイプの1つであるヌクレオチドを用いるタグ種(「タグ」)を含むことができる。タグ付けされたヌクレオチドが、ポリメラーゼ334と、正しく錯体とされると、このタグは、脂質二分子層314及び/又はナノ細孔316にわたって印加される電圧により生成される電界の存在下において生成される力などの電気力により、ナノ細孔内に引き込まれ(例えば、ロードされ)得る。タグの末端は、ナノ細孔316のバレル内に配置され得る。ナノ細孔316のバレル内に保持されたタグは、そのタグの明確な化学構造及び/又はサイズにより、固有のイオン封鎖信号340を生成できる。したがって、タグが取り付けられた添加塩基が、電子的に識別される。
【0072】
ここで使用されるように、「ロードされた(loaded)」又は「挿通された(threaded)」タグは、0.1ミリ秒(ms)から10000msなどの、相当な期間にわたって、ナノ細孔内に、又はその付近に配置され、及び/又は、残る。いくつかの場合では、タグは、ヌクレオチドから解放される前に、ナノ細孔内にロードされる。いくつかの例では、ヌクレオチド組み込みイベント後に解放された後に、ロードされたタグがナノ細孔を通過する(及び/又は、ナノ細孔により検出される)確率は、90%から99%など、好適に高い。
【0073】
いくつかの実施形態では、ポリメラーゼ334がナノ細孔316に接続される前には、ナノ細孔316のコンダクタンスは高く、約300ピコシーメンス(300pS)などである。ナノ細孔においてタグがロードされると、タグの明確な化学構造及び/又はサイズにより、固有のコンダクタンス信号(例えば、信号340)が生成される。例えば、ナノ細孔のコンダクタンスは、約60pS、80pS、100pS、又は120pSであり得る。これらのそれぞれは、上記の4つのタイプのタグ付けされたヌクレオチドの1つに対応する。ポリメラーゼは、続いて、異性化及びリン酸転移反応を経て、ヌクレオチドを、成長中の核酸分子内に組み込み、タグ分子を解放することができる。
【0074】
いくつかの場合では、タグ付けされたヌクレオチドのいくつかは(相補的塩基)、核酸分子(テンプレート)の現在の位置とマッチしない場合がある。核酸分子との塩基対になっていない、タグ付けされたヌクレオチドもまた、ナノ細孔を通過できる。これらの、対になっていないヌクレオチドは、正しく対になっているヌクレオチドが、ポリメラーゼに関連付けられたままとなる時間スケールよりも短い時間スケール内に、ポリメラーゼにより排斥され得る。対になっていないヌクレオチドに向けられたタグは、ナノ細孔を迅速に通過し得、短い期間(例えば、10ms未満)にわたって検出され得る。一方、対になっているヌクレオチドに向けられたタグは、ナノ細孔内にロードされ、長い期間(例えば、少なくとも10ms)にわたって検出され得る。したがって、対になっていないヌクレオチドは、ヌクレオチドがナノ細孔内にて検出される時間の少なくとも一部に基づいて、下流プロセッサにより識別され得る。
【0075】
ロードされた(挿通された)タグを含むナノ細孔のコンダクタンス(又は、抵抗に等価)は、信号値(例えば、ナノ細孔を通過する電圧又は電流)を介して測定される。したがって、タグ種の識別、したがって、現在の位置にあるヌクレオチド、が提供される。いくつかの実施形態では、(例えば、タグがナノ細孔を通って移動する方向が反転されないよう)直流(direct current又はDC)信号が、ナノ細孔セルに適用される。しかし、直流を使用して、ナノ細孔センサを長い期間にわたって作動させることは、電極の組成を変え、ナノ細孔にわたるイオン濃度をアンバランスなものとし、ナノ細孔セルの寿命に悪影響を及ぼし得る他の好ましくない効果を有し得る。交流(alternating current又はAC)波形を適用することは、電子移動を減らし、これらの好ましくない効果を回避し、以下に説明されるような、特定の利点を有することができる。ここに説明される、タグ付けされたヌクレオチドを利用する核酸配列決定方法は、印加されるAC電圧との親和性が十分にある。したがって、それらの利点を達成するために、AC波形が使用され得る。
【0076】
AC検出サイクル中に電極を再帯電させることができることは、犠牲電極、これは、通電反応において分子的特徴が変わる電極(例えば、銀を含む電極)、又は、通電反応における分子的特徴が変わる電極、が使用される場合に好適であり得る。直流信号が使用される場合、電極は、検出サイクル中に消耗し得る。再帯電させることは、電極が小型である場合(例えば、電極が、1平方ミリメートル毎に少なくとも500の電極を有する電極のアレイを提供することに十分小さい場合)に問題であり得る、完全に消耗するなどの、電極が消耗限度に到達することを防ぐことができる。電極寿命は、いくつかの場合では、電極の幅と共に伸びる。つまり、電極寿命は少なくとも、電極の幅に部分的に依存する。
【0077】
ナノ細孔を通過するイオン電流を測定するための好適な条件は、当業者に知られている。それらの例を、以下に提供する。測定は、膜及び細孔にわたって印加される電圧を用いて実行され得る。いくつかの実施形態では、使用される電圧は、-400mVから+400mVの範囲にある。使用される電圧は、好適には、-400mV、-300mV、-200mV、-150mV、-100mV、-50mV、-20mV、及び0mVから選択される下限と、+10mV、+20mV、+50mV、+100mV、+150mV、+200mV、+300mV、及び+400mVから独立して選択される上限と、を有する範囲にある。使用される電圧は、より好適には、100mVから240mVの範囲、最も好適には、160mVから240mVの範囲にあり得る。印加される電位を大きくすることにより、ナノ細孔による、異なるヌクレオチド同士の識別を大きくすることができる。AC波形と、タグ付けされたヌクレオチドと、を使用する核酸配列決定は、2013年11月6に出願された、発明の名称が「タグを使用する核酸配列決定(Nucleic Acid Sequencing Using Tags)」という、米国特許公報第2014/0134616号に説明されている。その内容全体は、参照により本明細書に援用されている。米国特許出願公開第2014/0134616号に説明されている、タグ付けされたヌクレオチドに加えて、配列決定は、例えば、アデニン、シトシン、グアニン、ウラシル、及びチミン(Horhotaら、有機書簡(Organic Letters)、8:5345-5347[2006])の、5つの共通する核酸塩基の(S)-グリセロールヌクレオシドトリホスフェート(glycerol nucleoside triphosphates又はgNTPs)などの、糖部分又は非環式部分が少ないヌクレオチド類似体を使用して行われ得る。
【0078】
C.ナノ細孔配列決定セルの電気回路
図4は、ナノ細孔セル400などの、ナノ細孔セル内の電気回路400(これは、
図2の電気回路222の各部位を含み得る)の実施形態を示す。上述されるように、いくつかの実施形態では、電気回路400は、ナノ細孔センサチップにおける複数のナノ細孔セル又はすべてのナノ細孔セルの間にてシェアされ得、したがって、共通電極とも呼ばれ得る、対電極410を含む。共通電極は、電圧源V
LIQ420に接続することにより、共通電位を、ナノ細孔セルにおける脂質二分子層(例えば、脂質二分子層214)に接触しているバルク電解質(例えば、バルク電解質208)に印加するよう構成され得る。いくつかの実施形態では、AC非ファラデーモードが利用され、AC信号(例えば、矩形波)を用いて電圧V
LIQを変調し、この変調した電圧V
LIQを、ナノ細孔セルにおいて、脂質二分子層に接触しているバルク電解質に印加する。いくつかの実施形態では、V
LIQは、±200から250mVの大きさと、例えば、25と400Hzとの間の周波数と、を有する矩形波である。対電極410と脂質二分子層(例えば、脂質二分子層214)との間のバルク電解質は、例えば、100μF以上の大型のコンデンサ(図示せず)によりモデル化され得る。
【0079】
図4はまた、作用電極402(例えば、作用電極202)と、脂質二分子層(例えば、脂質二分子層214)と、の電気的性状を表す電気的モデル422をも示す。電気的モデル422は、脂質二分子層に関連付けられた静電容量をモデル化するコンデンサ426(C
二分子層)と、ナノ細孔に関連付けられた可変抵抗をモデル化する抵抗器428(R
細孔)と、を含む。これらは、ナノ細孔における特定のタグの存在に基づいて変わることができる。電気的モデル422はまた、二重層静電容量(C
二重層)を有し、作用電極402とウェル205との電気的性状を表すコンデンサ424をも含む。作用電極402は、他のナノ細孔セルにおける作用電極から独立した、明確な電位を印加するよう構成され得る。
【0080】
パスデバイス406はスイッチであり、脂質二分子層と、作用電極と、を、電気回路400に接続する、又は、この接続を断つことに使用され得る。パスデバイス406は、制御線407により制御され得、ナノ細孔セルにおける脂質二分子層にわたって印加される電圧刺激を有効又は無効にする。脂質が堆積して脂質二分子層を形成する前には、ナノ細孔セルのウェルが密封されていないために、これら2つの電極間のインピーダンスが非常に低い場合がある。したがって、短絡状況を回避するために、パスデバイス406は開いた状態に維持され得る。脂質溶媒がナノ細孔セルに堆積して、ナノ細孔セルのウェルが密封された後に、パスデバイス406は閉じられ得る。
【0081】
回路400は、オンチップ積分コンデンサ408(ncap)をさらに含むことができる。積分コンデンサ408は、スイッチ401を閉じるリセット信号403を使用することにより、予め帯電され得、積分コンデンサ408が、電圧源VPRE405に接続されるようになる。いくつかの実施形態では、電圧源VPRE405は、900mVなどの大きさの特定の基準電圧を提供する。スイッチ401が閉じられると、積分コンデンサ408は、電圧源VPRE405の基準電圧レベルまで、予め帯電され得る。
【0082】
積分コンデンサ408の予めの帯電が完了すると、スイッチ401を開くリセット信号403が使用され得、積分コンデンサ408の、電圧源VPRE405からの接続が断たれるようになる。この時点にて、電圧源VLIQのレベルに依存して、対電極410の電位は、作用電極402(及び、積分コンデンサ408)の電位のそれよりも高いレベルにあり得る。その逆もしかり。例えば、電圧源VLIQからの矩形波の正相(例えば、AC電圧源信号サイクルの明期又は暗期)中は、対電極410の電位は、作用電極402の電位より高いレベルにある。電圧源VLIQからの矩形波の負相(例えば、AC電圧源信号サイクルの暗期又は明期)中は、対電極410の電位は、作用電極402の電位より低いレベルにある。したがって、いくつかの実施形態では、積分コンデンサ408は、明期の
間に、電圧源VPRE405の予め帯電された電圧レベルから、より高いレベルまで、さらに帯電され、また、暗期の間に、対電極410と作用電極402との間の電位差により、より低いレベルまで放電し得る。他の実施形態では、帯電及び放電はそれぞれ、暗期及び明期に行われる。
【0083】
積分コンデンサ408は、アナログ-デジタルコンバータ(analog-to-digital converter又はADC)435の、1kHz、5kHz、10kHz、100kHzより高くあり得る、又はこれらの値より高くあり得るサンプリングレートに依存して、一定期間にわたって帯電され得る、又は、放電し得る。例えば、1kHzのサンプリングレートでは、積分コンデンサ408は、約1msの期間にわたって帯電され/放電し得る。これに続いて、電圧レベルがサンプリングされ、これが、積分期間の終わりに、ADC435により変換され得る。特定の電圧レベルが、ナノ細孔における特定のタグ種に対応し、したがって、テンプレート上の現在の位置にあるヌクレオチドに対応する。
【0084】
ADC435によりサンプリングされた後に、積分コンデンサ408は再度、スイッチ401を閉じるリセット信号403を使用することにより、予め帯電され得、積分コンデンサ408が再度、電圧源VPRE405に接続されるようになる。積分コンデンサ408を予め帯電することと、積分コンデンサ408が帯電又は放電する一定期間にわたって待機することと、ADC435により、積分コンデンサの電圧レベルをサンプリングすること及び変換することと、のステップは、配列決定プロセスを通してのサイクルのそれぞれにおいて繰り返され得る。
【0085】
デジタルプロセッサ430は、例えば、正規化、データバッファリング、データフィルタリング、データ圧縮、データの削減、イベントの抽出、又は、ナノ細孔セルのアレイから、種々のデータフレームへのADC出力データのアセンブリングのために、ADC出力データを処理できる。いくつかの実施形態では、デジタルプロセッサ430は、塩基の決定などの下流の処理をさらに行う。デジタルプロセッサ430は、(例えば、グラフィック処理ユニット(graphics processing unit又はGPU)、FPGA、ASIC、などでの)ハードウェアとして、又は、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせとして、実装され得る。
【0086】
したがって、ナノ細孔にわたって適用される電圧信号は、ナノ細孔の特定の状態を検出することに使用され得る。ナノ細孔の可能性のある状態の1つは、タグが取り付けられたポリリン酸塩が、ナノ細孔のバレルからなくなる際の、オープンチャネル状態である。これはまた、以下では、挿通されていないナノ細孔の状態とも呼ばれる。ナノ細孔の、他の4つの可能性のある状態はそれぞれ、4つの異なるタイプのタグが取り付けられたポリリン酸塩ヌクレオチド(A、T、G、又はC)の1つが、ナノ細孔のバレル内に保持されている際の状態に対応する。ナノ細孔のさらに別の可能性のある状態は、脂質二分子層が破れた際の状態である。
【0087】
積分コンデンサ408上の電圧レベルが一定期間後に測定されると、ナノ細孔の異なる状態は、異なる電圧レベルの測定値となり得る。これは、積分コンデンサ408上の電圧減衰(放電による下降、又は、帯電による上昇)の率(つまり、時間プロットに対する、積分コンデンサ408上の電圧のスロープの傾き)が、ナノ細孔抵抗(例えば、抵抗器R細孔428の抵抗)に依存するためである。とりわけ、異なる状態において、ナノ細孔に関連付けられた抵抗が、分子の(タグの)明確な化学構造により異なるため、電圧減衰の、異なる、対応する率が観察され得、これが、ナノ細孔の異なる状態を識別するために使用され得る。電圧減衰曲線は、RC時定数τ=RCの指数関数曲線であり得る。ここでは、Rは、ナノ細孔(つまり、R細孔抵抗器428)に関連付けられた抵抗である。Cは、Rと同時に、膜(つまり、C二分子層コンデンサ426)に関連付けられた静電容量である。ナノ細孔セルの時定数は、例えば、約200から500msであり得る。減衰曲線は、二分子層の詳細な実装により、指数関数曲線とは正確に合わない場合がある。しかし、減衰曲線は、指数関数曲線と同様であり、単調なものであり、したがって、タグの検出を可能にし得る。
【0088】
いくつかの実施形態では、オープンチャネル状態において、ナノ細孔に関連付けられた抵抗は、100MOhmから20GOhmの範囲にある。いくつかの実施形態では、タグが、ナノ細孔のバレルの内側にある状態において、ナノ細孔に関連付けられた抵抗は、200MOhmから40GOhmの範囲内にあり得る。他の実施形態では、積分コンデンサ408は省略されている。なぜなら、ADC435への電圧が、電気的モデル422における電圧減衰により、依然として変化するためである。
【0089】
積分コンデンサ408上の電圧の減衰の率は、異なる方法にて決定され得る。上述されるように、電圧減衰の率は、一定期間中の電圧減衰を測定することにより決定され得る。例えば、積分コンデンサ408上の電圧はまず、ADC435により、時間t1にて測定され得る。続いて、電圧が再度、ADC435により、時間t2にて測定される。時間曲線に対する、積分コンデンサ408上の電圧のスロープが、より急であれば、電圧差は、より大きい。電圧曲線のスロープが、より急でなければ、電圧差は、より小さい。したがって、電圧差は、積分コンデンサ408上の電圧の減衰の率、したがって、ナノ細孔セルの状態、を決定するための測定基準として使用され得る。
【0090】
他の実施形態では、電圧減衰の率は、電圧減衰の、選択された量に対して必要な期間を測定することにより決定される。例えば、電圧が、降下するために必要な時間、又は、第1の電圧レベルV1から第2の電圧レベルV2に上昇するために必要な時間が測定され得る。電圧のスロープが、時間曲線に対して、より急であれば、必要な時間は、短い。電圧のスロープが、時間曲線に対して、急でなければ、必要な時間は、より長い。したがって、測定された、必要な時間は、積分コンデンサncap408上の電圧の減衰の率、したがって、ナノ細孔セルの状態、を決定するための測定基準として使用され得る。当業者であれば、例えば、電圧又は電流の測定などの、信号値測定技術を含む、ナノ細孔の抵抗を測定するために使用され得る種々の回路を理解するであろう。
【0091】
いくつかの実施形態では、電気回路400は、オンチップにて作られる、パスデバイス(例えば、パスデバイス406)と、追加コンデンサ(例えば、積分コンデンサ408(ncap))と、を含まない。これは、したがって、ナノ細孔ベースの配列決定チップのサイズの削減を促進する。膜(脂質二分子層)のその薄い、という特性により、膜(例えば、コンデンサ426(C二分子層))に関連付けられた静電容量は、追加的なオンチップ静電容量を必要とすることなく、それ単体で、必要なRC時定数を作るために十分なものとできる。したがって、コンデンサ426は、積分コンデンサとして使用され得、電圧信号VPREにより予め帯電され得、続いて、電圧信号VLIQにより放電し得る、又は、帯電され得る。電気回路において、さもなければ、オンチップにて作られる、追加コンデンサと、パスデバイスと、の排除は、ナノ細孔配列決定チップにおける単一のナノ細孔セルの取付面積を、大きく減らすことができる。これは、したがって、より多くのセルを含むようにする(例えば、ナノ細孔配列決定チップにおいて、数百万のセルを有するようにする)、ナノ細孔配列決定チップのスケーリングを促進する。
【0092】
D.ナノ細孔セルにおけるデータのサンプリング
核酸の配列決定を行うために、積分コンデンサ(例えば、積分コンデンサ408(ncap)又はコンデンサ426(C二分子層))の電圧レベルは、タグ付けされたヌクレオチドが、核酸に加えられている間に、ADC(例えば、ADC435)によりサンプリン
グされ、変換され得る。例えば、印加される電圧が、VLIQがVPREより低くなるようなものであれば、対電極と、作用電極と、を通して印加されている、ナノ細孔にわたる電界により、ヌクレオチドのタグは、ナノ細孔のバレル内に押し込まれ得る。
【0093】
1.挿通
挿通イベントは、タグ付けされたヌクレオチドが、テンプレート(例えば、一片の核酸)に取り付けられ、そのタグが、ナノ細孔のバレルに出入りして移動する場合である。この移動は、挿通イベント中に複数回生じ得る。タグが、ナノ細孔のバレル内にあれば、ナノ細孔の抵抗は、より大きいものであり得、ナノ細孔を通って流れることができる電流は、より小さい。
【0094】
配列決定中、タグは、ACサイクルによっては、ナノ細孔内になくともよい(オープンチャネル状態と呼ばれる)。ここでは、ナノ細孔の抵抗がより小さいために、電流は最大である。タグが、ナノ細孔のバレル内に引き込まれると、ナノ細孔は、明モードとなる。タグが、ナノ細孔のバレルから押し出されると、ナノ細孔は、暗モードとなる。
【0095】
2.明期及び暗期
ACサイクル中、積分コンデンサ上の電圧は、ADCにより複数回サンプリングされ得る。例えば、1つの実施形態では、AC電圧信号が、システムにわたって、例えば、約100Hzにて適用される。ADCの取得率は、セル毎に約2000Hzであり得る。したがって、約20のデータポイント(電圧測定値)が、ACサイクル(AC波形のサイクル)毎に取得され得る。AC波形の1つのサイクルに対応する複数のデータポイントは、セットと呼ばれ得る。ACサイクルに対する1セットのデータポイントでは、例えば、タグが、ナノ細孔のバレル内に押し込められた場合の、明モード(期間)に対応することができる、VLIQが、VPREより低い場合に、サブセットが取得され得る。別のサブセットは、例えば、VLIQが、VPREより高い場合に、タグが、ナノ細孔のバレルから、印加された電界により押し出された場合の、暗モード(期間)に対応することができる。
【0096】
3.測定電圧
データポイントのそれぞれについて、スイッチ401が開かれると、例えば、VLIQが、VPREより高い場合に、VPREからVLIQへの上昇として、又は、VLIQが、VPREより低い場合に、VPREからVLIQへの降下として、VLIQによる帯電/放電の結果として、積分コンデンサ(例えば、積分コンデンサ408(ncap)又はコンデンサ426(C二分子層))での電圧が変わり、減衰する。作用電極が帯電することにより、最終的な電圧値は、VLIQから逸脱し得る。積分コンデンサ上の電圧レベルの変化の率は、ナノ細孔を含むことができ、したがって、ナノ細孔において分子(例えば、タグ付けされたヌクレオチドのタグ)を含むことができる、二分子層の抵抗の値によって統制され得る。電圧レベルは、スイッチ401が開いた後の所定の時間にて測定され得る。
【0097】
スイッチ401は、データ取得の率にて作動できる。スイッチ401は、データの、2回の取得の間の比較的短い期間、典型的には、ADCによる測定の直後、に閉じられ得る。スイッチは、VLIQのACサイクルのそれぞれのサブ期間(明又は暗)のそれぞれの間の、複数のデータポイントの取得を可能にする。スイッチ401が開かれたままであれば、積分コンデンサ上の電圧レベル、したがって、ADCの出力値は十分に減衰しており、その状態にてとどまっている。その代わりに、スイッチ401が閉じられていれば、積分コンデンサは再度、予め帯電され(VPREまで)、別の測定の用意ができている状態となる。したがって、スイッチ401は、ACサイクルのそれぞれのサブ期間(明る又は暗)のそれぞれにわたる、複数のデータポイントの取得を可能にする。そのような複数回の測定は、固定のADCを用いた、(例えば、平均化されてよい、測定数が多いことによる、8ビットから14ビットの)より高い解像度を可能にできる。複数回の測定はまた、ナノ細孔内に挿通された分子についての運動情報を提供できる。タイミング情報は、挿通が行われる期間の決定を可能にできる。これはまた、核酸鎖に加えられた複数のヌクレオチドの配列が決定されているか否かの決定を補助するために使用され得る。
【0098】
図5は、ナノ細孔セルから、ACサイクルの明期及び暗期中に取得されたデータポイントの例を示す。
図5では、データポイントの変化が、説明を目的として、強調されている。作用電極、又は、積分コンデンサに印加された電圧(V
PRE)は、例えば、900mVなどの、一定のレベルにある。ナノ細孔セルの対電極に適用された電圧信号510(V
LIQ)は、矩形波として示されるAC信号である。ここでのデューティサイクルは、例えば、約40%などの、50%以下の、いずれの好適な値であり得る。
【0099】
明期520中、対電極に適用された電圧信号510(VLIQ)は、作用電極に印加された電圧VPREより低く、(例えば、タグ上の電荷及び/又はイオンのフローにより)作用電極と、対電極と、にて適用された、異なる電圧レベルにより引き起こされた電界により、タグが、ナノ細孔のバレル内に押し込められ得るようになっている。スイッチ401が開かれると、ADCの前のノードでの(例えば、積分コンデンサでの)電圧が降下する。電圧データポイントが取得された後に(例えば、指定期間後に)、スイッチ401は閉じられ得、測定ノードでの電圧が上昇し、VPREに再び戻る。複数の電圧データポイントを測定するこのプロセスは、繰り返すことができる。このようにして、複数のデータポイントが、明期中に取得され得る。
【0100】
図5に示すように、V
LIQ信号のサインの変化後の明期における第1のデータポイント522(第1のポイントデルタ(FPD)とも呼ばれる)は、後続のデータポイント524より低い場合があり得る。これは、ナノ細孔内にタグがなく(オープンチャネル)、したがって、ここでの抵抗は低く、放電率が高いためであり得る。いくつかの例では、第1のデータポイント522は、
図5に示すように、V
LIQレベルを超えることができる。これは、信号をオンチップコンデンサに接続する二分子層の静電容量により引き起こされ得る。データポイント524は、挿通イベントが生じた後に、つまり、タグが、ナノ細孔のバレル内に押し込められた後に、取得され得る。ここでは、ナノ細孔の抵抗、したがって、積分コンデンサの放電の率は、ナノ細孔のバレル内に押し込められた、特定のタイプのタグに依存する。データポイント524は、以下に説明されるように、C
二重層424にて積み上げられた電荷により、測定のそれぞれに対して若干減少することができる。
【0101】
暗期530中、対電極に適用された電圧信号510(VLIQ)は、作用電極に印加された電圧(VPRE)より高く、いずれのタグが、ナノ細孔のバレルから押し出されるようになっている。スイッチ401が開かれると、電圧信号510(VLIQ)の電圧レベルがVPREより高いために、測定ノードでの電圧が上昇する。電圧データポイントが取得された後に(例えば、指定期間後に)、スイッチ401は閉じられ得、測定ノードでの電圧が降下し、VPREに再び戻る。複数の電圧データポイントを測定するこのプロセスは、繰り返すことができる。したがって、第1のポイントデルタ532と、後続のデータポイント534と、を含む、複数のデータポイントが、暗期中に取得され得る。上述されるように、暗期中、いずれのヌクレオチドタグがナノ細孔から押し出され、したがって、正規化における使用に加えて、いずれのヌクレオチドタグについての最小限の情報が取得される。
【0102】
図5はまた、明期540中、対電極に適用された電圧信号510(V
LIQ)が、作用電極に印加された電圧(V
PRE)より低くても、挿通イベントは生じない(オープンチャネル)、ということをも示す。したがって、ナノ細孔の抵抗は低く、積分コンデンサの放電の率は高い。結果として、第1のデータポイント542と、後続のデータポイント544と、を含む、取得されるデータポイントは、低電圧レベルを示す。
【0103】
明期又は暗期中に測定される電圧は、ナノ細孔の一定の抵抗の(例えば、1つのタグがナノ細孔内にある間に、所与のACサイクルの明モード中に行われる)測定のそれぞれに対して、おおよそ同じであると予期される場合がある。しかし、これは、二重層コンデンサ424にて電荷(C
二重層)が積み上げられる場合には当てはまらないこともある。この積み上げられた帯電は、ナノ細孔セルの時定数を長くさせることができる。結果として、電圧レベルがシフトされ得、したがって、あるサイクルにおけるデータポイントのそれぞれについて、測定した値を小さくする。したがって、
図5に示すように、サイクル内では、データポイントが、データポイントから別のデータポイントへと幾分変わる場合がある。
【0104】
測定に関するさらなる詳細を、例えば、次に見ることができる:発明の名称が「異なる電圧刺激でのナノ細孔ベースの配列決定(Nanopore-Based Sequencing With Varying Voltage Stimulus)」という、米国特許公報第2016/0178577号、発明の名称が「異なる電圧刺激でのナノ細孔ベースの配列決定(Nanopore-Based Sequencing With
Varying Voltage Stimulus)」という、米国特許公報第2016/0178554号、発明の名称が「電気的刺激に応じた二分子層の測定値を使用する非破壊二分子層モニタリング(Non-Destructive Bilayer Monitoring Using Measurement Of Bilayer Response To Electrical Stimulus)」という、米国特許出願第15/085,700号、及び、発明の名称が「二分子層形成の電気的増進(Electrical Enhancement Of Bilayer Formation)」という、米国特許出願第15/085,713号。これらの開示の内容全体を、すべての目的のために、参照により本明細書に援用する。
【0105】
4.正規化及び塩基の呼び出し
ナノ細孔センサチップの使用可能なナノ細孔セルのそれぞれについて、核酸を配列決定するためのプロダクションモードが実行され得る。配列決定中に取得されるADC出力データは、より高い精度を提供するために正規化され得る。正規化は、サイクルシェイプ、ゲインドリフト、電荷注入オフセット、及びベースラインシフトなどのオフセット効果からなる。いくつかの実装では、挿通イベントに対応する、明期サイクルの信号値は、平らにされ得、サイクルに対して、単一の信号値(例えば、平均値)が取得されるようにする。又は、イントラサイクル減衰(サイクルシェイプ効果の1つのタイプ)を減らすよう、測定された信号に対して、調整が行われ得る。ゲインドリフトは、一般的に、信号全体に広がり、100sから1,000sの秒のオーダーにて変更する。例として、ゲインドリフトは、溶液の変化(細孔抵抗)、又は、二分子層静電容量の変化によりトリガされ得る。ベースラインシフトは、100msまでの時間スケールを伴って生じ、作用電極での電圧オフセットに関する。ベースラインシフトは、明期から暗期に、配列決定セルにおける荷電平衡を維持する必要性の結果としての、挿通からの有効整流比の変化により駆動され得る。
【0106】
正規化後、実施形態のそれぞれは、挿通されたチャネルに対する、電圧のクラスタを決定できる。ここでは、クラスタのそれぞれは、異なるタグ種、したがって、異なるヌクレオチド、に対応する。クラスタは、所与のヌクレオチドに対応する所与の電圧の確率を決定するために使用され得る。別の例としては、クラスタは、異なるヌクレオチド(塩基)同士を識別するためのカットオフ電圧を決定するために使用され得る。
【0107】
III.自己制限性細孔挿入
細孔が、セルの膜内に挿入された後に、膜にわたる電圧は、細孔の比較的高いコンダクタンスにより、急速に降下し始める。膜にわたる電圧の降下は、膜におけるさらなる細孔挿入に対する駆動力を減らす。
【0108】
図6は、ナノ細孔センサセルについての回路
図600の実施形態を示す。ここでは、ここに説明されるシステム及び方法に関し得る、種々の電圧、及び、センサセルの構成要素、のいくつかがハイライトされている。これらの例としては、次が上げられる:作用電極と対電極との間に印加される電圧(V
app)602、二分子層にわたる電圧(V
bly)604、作用電極(C
二重層)608と積分コンデンサ(N
CAP)610との予めの帯電に使用される電圧(V
pre)606、及び、対電極に印加される電圧(V
liq)612。
【0109】
ここに説明されるものは、プロテイン細孔を挿入し、挿入ステップ中のアクティブなフィードバックなく、単一細孔挿入を制御するこの性状を利用する方法及びシステムである。この細孔挿入方法のいくつかの実施形態では、AC接続された電圧が、容量性の作用電極を介して印加される。この電圧は、細孔のない膜のコンダクタンスが低いことにより、膜にわたって維持される。いくつかの実施形態では、細孔挿入の現在の状態に関わらず、電圧は、セルのアレイ全体に印加され得る。いくつかの実施形態では、電圧は、膜を有するセルに印加され得る。適用される電圧波形は、傾斜として、複数の拡大ステップとして、又は、追加的なプロテイン細孔挿入の確率を低くし、一方で、膜が損傷するリスクをも減らすよう設計された他の形状として、段階的に大きくされ得る。これは、小さい電圧ステップ、電圧傾斜における、穏やかな電圧上昇の率、などを使用することにより、電圧印加過渡特性を制限することにより達成され得る。
【0110】
例えば、いくつかの実施形態では、
図7に示すように、細孔挿入電圧(V
app)は、0mVにて始まり、5秒毎に100mVのインクリメントにて、600mVの最大電圧まで上昇する、ステップ状の電圧波形700として印加され得る。いくつかの実施形態では、初期電圧は、約0、10、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100mVであり得る。いくつかの実施形態では、ステップの上昇は、約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、又は300mVであり得る。いくつかの実施形態では、ステップのそれぞれの期間は、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、又は60秒であり得る。いくつかの実施形態では、ステップのそれぞれは、可変の期間を有することができる。例えば、いくつかの実施形態では、より低い電圧にあるステップのいくつか又はすべては、より高い電圧にあるステップのそれより長い期間を有することができる。いくつかの実施形態では、最大電圧は、約100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、又は2000mVである。いくつかの実施形態では、細孔挿入電圧波形の1つ又はそれ以上の要素は、初期開始電圧、電圧ステップの上昇の大きさ、ステップのそれぞれの期間、及び/又は最大電圧、などの、所定のものであり得る。
【0111】
いくつかの実施形態では、
図8Aに示すように、細孔挿入電圧は、0mVにて始まり、毎分1Vの率にて、600mVの最大電圧まで上昇する、傾斜した電圧波形800として印加され得る。いくつかの実施形態では、初期電圧は、約0、10、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100mVであり得る。いくつかの実施形態では、電圧上昇の率は、毎分約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0Vである。いくつかの実施形態では、最大電圧は、約100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、又は2000mVである。いくつかの実施形態では、細孔挿入電圧波形の1つ又はそれ以上の要素は、初期開始電圧、電圧上昇の率、及び/又は最大電圧、などの、所定のものであり得る。
【0112】
いくつかの実施形態では、細孔挿入電圧波形の1つ又はそれ以上の要素は、膜が、セルにわたってシールを形成した後の、その膜にわたる抵抗である、膜密封抵抗などの、セルの構成要素の、測定された電気的及び/又は物理的性状に基づいて決定され得る。いくつかの実施形態では、これらの測定値は、電圧波形が適用される前に取得され得、その波形が、適用される前に、完全に決定されるようになっている。これは、1つ又はそれ以上の刺激パラメータを変更するために、刺激中に取得された測定値を使用する、アクティブなフィードバックに基づく方法とは異なる。ここに説明されるポレーションの方法は自己制限性があるため、細孔を膜内に挿入することから導き出される、システム、又は、システムの構成要素の、電気的又は物理的性状の変化を測定することと、続いて、これに応じて、第2の細孔の膜内への挿入を防ぐために、ポレーション電圧を調整することと、を含む、アクティブなポレーションの方法を利用する必要はない。
【0113】
いくつかの実施形態では、ここに説明される方法は、懸垂膜を伴うマイクロウェルの基部に、容量性電極と、膜の反対側に、対電極と、を有するセンサのアレイに適用され得る。これらのセンサは、挿入駆動電圧の印加が、すべてのセルから取り除かれた後に、細孔の存在を検出することに使用され得る。電圧の印加中に細孔の存在を検出することは可能であるが、この方法ではそれは必要ない。アレイにおける、又は、集合体における、いずれの個別のセンサ上での電圧の印加に対するフィードバックなく、細孔は挿入され得る。
【0114】
この方法は、アレイ内の個別の膜同士、アレイ上の狭い領域又は広い領域同士、又は、1つのデバイスからのアレイから、第2のデバイスからの別のアレイへの間、にて異なり得る、細孔挿入活性化バリアに打ち勝つために必要な電圧を、効果的にスキャンする。加えて、ポレーション電圧は、細孔の突然変異体同士、及び、脂質二分子層、ブロック共重合体、又は他の実装を含む、膜の組成並びに構造同士、にて異なり得る。電圧を、狭い範囲から広い範囲にわたって、スキャンすること、又は、スウィープすることにより、単一の電圧波形は、非常に多数の、異なるタイプの細孔アレイ、又は、一定の量の変動性を伴う、同じタイプの細孔アレイにおいて、効果的に機能する、十分に強固なものとされ得る。
【0115】
加えて、低い電圧から高い電圧にかけてスウィープすることにより、二分子層が、膜を損傷する臨界電圧レベルに到達する前に、膜において、細孔が挿入される可能性がより高くなり得る。加えて、
図9A及び
図9Bに示すように、細孔が挿入されると、細孔は、上昇した電圧を膜にわたって消散させることができ、したがって、細孔が挿入された後に、電圧がさらに上昇する際に、膜への損傷のリスクを下げることと、さらなる細孔挿入の可能性を下げることと、の双方が可能となる。電圧ステップの大きさ、又は、電圧傾斜の上昇の率が大きすぎない限りは、細孔は、過剰な電圧の上昇を膜にわたって効果的に消散させることができ、したがって、膜が損傷するリスクを下げ、さらなる細孔挿入の可能性を下げる。一方、ポレーションステップを完了するための時間を短くするために、電圧ステップの大きさを大きくする、又は、電圧傾斜の上昇の率を上げることが望ましい。
【0116】
いくつかの実施形態では、電圧波形の上限は、電圧と、時間と、に応じての、細孔挿入の動態及び/又は確率を、電圧と、時間と、に応じての、膜が損傷する動態及び/又は確率と比較することにより、決定され得る。例えば、
図10Aは、電圧に応じての、アレイ
における細孔挿入数のプロットを示す。
図10Bは、典型的には、電圧に応じての、膜の破壊及び損傷から生じる、失活/ショート数のプロットを示す。これら2つのプロットから、細孔挿入数が多く、失活/ショート数が少ない、バランスのとれた、最適な最大電圧が決定され得る。
【0117】
いくつかの実施形態では、細孔挿入ステップ中の、溶液中の細孔の濃度は、十分に低く、細孔の膜内へのパッシブな挿入を減らすよう、一方で、依然として十分に高く、電圧により支援された、細孔の膜内への挿入を可能にするよう、選択される。細孔のパッシブな挿入とは、細孔挿入における支援のための、膜にわたる電圧の印加のない、細孔の膜内への挿入を指す。いくつかの実施形態では、パッシブな挿入を通して挿入される細孔の割合は、50%、40%、30%、20%、又は10%未満である。電圧支援挿入を通して挿入される細孔の割合は、少なくとも、50%、60%、70%、80%、又は90%である。パッシブな細孔挿入の率を下げることは、複数の細孔が、単一の膜内に挿入される可能性を下げ得る。
【0118】
いくつかの実施形態では、漏れ電流は、セル上に膜が配置されてからの、アレイ内の1つ又はそれ以上のセルにおける電圧の上昇を引き起こし得る。この閉じ込められた電荷は、それらの大きさにおいて、時間と共に、セル間にて変化し得る。これは、ポレーションを誘導する際に、セルの膜のすべてにわたって均一な電圧を印加することを困難にする。例えば、閉じ込められた電荷が、様々な量にて、アレイ内のセルにおいて存在する際に、均一な電圧(Vapp)を、セルのすべてに印加することは、ポレーションステップ中に、セルが、実効電圧を異なる量にて受けることとなり得る。これは、単一細孔挿入のあるセルの数の変動性のレベルが高くなり得、及び/又は、いくつかのセルでは、電圧が、過剰な量にて印加され得ることとなる。これは、膜への損傷を引き起こし得る。ステップ状の、又は、傾斜した電圧波形を使用することは、これらの問題を解決できる。
【0119】
いくつかの実施形態では、セルの開口上の膜の形成は、セルの開口上に、脂質又はブロック共重合体などの、溶媒及び膜材料を流すことにより達成される。続いて、例えば、脂質が使用されている場合は、米国特許公報第20170283867A1号にさらに説明されているように、膜は、この膜にわたって電圧を印加することにより、及び/又は、国際特許公報第WO2018001925号にさらに説明されているように、この膜にわたって、オスモル濃度の不均衡を操作することにより、二分子層に薄くされ得る。これらそれぞれの内容全体を、すべての目的のために、参照により本明細書に援用する。以下に説明されるように、薄くされた膜とは、細孔が膜内に挿入され得るよう、十分に薄くされた(つまり、例えば、厚さが、細孔の長さ未満の)膜である。一方、薄くされていない膜とは、細孔の挿入を可能にするには厚すぎる厚さを有する(つまり、例えば、厚さが、細孔の長さより厚い)膜である。いくつかの実施形態では、アレイ内のセル上の、薄くされた膜(つまり、脂質二分子層)の形成は、ポレーションプロセスを開始する前、及び、細孔を膜内に挿入する前に完了され得る。他の実施形態では、膜を薄くするプロセスは、例えば、薄くするプロセスとポレーションプロセスと、の双方のための、ここに説明される電圧波形のいずれなど、同じ電圧波形を使用することにより、細孔を膜内に挿入するプロセスと組み合され得る。細孔の複合体は、薄くすることとポレーションとの組み合せプロセスの間に、膜上に流され得る。いくつかの実施形態では、薄くすることとポレーションとの組み合せプロセスは、膜材料が、セル上にすでに分配され、膜材料の分配中に、電圧を印加することにより、アレイ内のセルにわたって、薄くされていない膜が形成された後に、適用され得る。初期的な薄くされていない膜の形成により、電荷が不均一に閉じ込められ得る。加えて、不均一な浸透圧は、薄くすることとポレーションとの組み合せプロセスの間に、膜にわたって達成され得る。薄くするステップと、ポレーションステップと、を組み合わせることは、実質的に、アレイ状の細孔センサを用意することにかかる時間を減らすことができる。したがって、センサアレイシステムのスループットを改善する。
【0120】
ここに説明される方法は、良好な単一細孔挿入の率を改善することと、複数の細孔挿入の率を下げることと、膜が損傷する可能性を下げることと、を含む、多くの利点を提供する。
【0121】
IV.電圧波形のAC変調
いくつかの実施形態では、
図7に示すように、細孔挿入波形700は、AC変調を伴う電圧波形であり得る。ここに示すように、細孔挿入波形702はステップ状である。AC変調702の成分は、ステップ状の電圧のそれぞれにて、迅速な電圧の変動を提供するよう、電圧波形700の上部に重ねられ得る。電圧の変動又は変化は、細孔挿入中の、エレクトロポレーションステップ中に、細孔挿入波形700が適用されている間に、電気的測定値が取得されることを可能にする。これらの電気的測定値は、膜の完全性をチェックする(つまり、ショート状態などの、膜の不良を検出する)、膜の漏れやすさ(つまり、膜の抵抗及び/又はコンダクタンス)をチェックする、及び、細孔の挿入をチェックするために使用され得、一般的に、エレクトロポレーションステップの進捗をモニタするために使用され得る。いくつかの実施形態では、測定値は、電圧波形が適用されている間には取得され得ない。これらの実施形態では、測定値は、一般的に、電圧波形の適用前、適用後、又は、適用と適用との間に取得される。AC変調成分を電圧波形に重ねることは、電圧波形の同時適用と、測定値を取得することと、を可能にする。
【0122】
いくつかの実施形態では、他の電圧波形にもまた、AC変調成分が重ねられる。例えば、膜形成波形は、ウェル上に膜を形成するステップ中に、その膜形成波形が適用されている間に、電気的測定値が取得され得るよう、AC変調され得る。これらの電気的測定値は、ウェルが、膜形成材料で覆われているか否かの(つまり、ショート状態をチェックする)ために、膜の完全性をチェックする(つまり、ショート状態などの、膜の不良を検出する)ために、膜の漏れやすさ(つまり、膜の抵抗及び/又はコンダクタンス)をチェックするために、膜が、細孔挿入のために好適な厚さのものであるか否かのために、使用され得、一般的に、膜形成ステップの進捗をモニタするために使用され得る。
【0123】
いくつかの実施形態では、AC変調され得る別の電圧波形は、分子を、細孔を通して転座するために使用され得る、転座電圧波形である。
【0124】
いくつかの実施形態では、AC変調成分の振幅は、そのAC変調成分の、電圧波形の主な機能(つまり、膜の形成又は細孔挿入)への影響を減らし、一方で、正確な測定が取得できるようにするために、最小化され得る。比較的大きな振幅のAC変調成分により、予想より高い過渡電圧が、膜形成ステップ及び/又は細孔挿入ステップ中に、膜に大きく影響する場合がある。これは、例えば、膜の不良又はマルチポレーションを引き起こし得る。したがって、いくつかの実施形態では、AC変調成分の振幅は、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、100、90、80、70、60、50、40、30、20、又は10mV未満であってよい。いくつかの実施形態では、AC変調成分の振幅は、変調されている電圧波形の振幅の50、40、30、20、又は10%未満であってよい。他の実施形態では、AC変調成分の振幅は、変調されている電圧波形の振幅と共に広がることができる。
【0125】
いくつかの実施形態では、AC変調成分の周波数は、最小化され得る一方、正確な測定を依然として可能にする。いくつかの実施形態では、AC変調の周波数は、サンプリング最大周波数の10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0.5、0.1倍未満であり得る。いくつかの実施形態では、周波数は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、又は1000Hzである。いくつかの実施形態では、周波数は、1000、900、800、700、600、500、400、300、200、100、90、80、70、60、50、40、30、20、又は10Hz未満である。いくつかの実施形態では、周波数は、10から1000Hz、又は、25から750Hz、又は、50から500Hzの間である。
【0126】
図8Bは、測定を行うために、AC変調成分802が加えられた、
図8Aに示す自己制限性ポレーション波形の実施形態を示す。この実施形態では、AC変調成分の振幅は100mVであり、グラフ上に、線の太さとして示されている。
【0127】
いずれの他の電圧波形には、その電圧波形が適用されている間に、測定値が取得され得るよう、AC変調成分が重ねられ得る。
【0128】
V.コンピュータシステム
ここに説明されるコンピュータシステムのいずれも、多くのそれらが任意のものであってよい、いずれの好適な数のサブシステムを利用できる。そのようなサブシステムの例を、コンピュータシステム1110における、
図11に示す。いくつかの実施形態では、コンピュータシステムは、単一のコンピュータ装置を含む。ここでは、サブシステムは、そのコンピュータ装置の構成要素であり得る。他の実施形態では、コンピュータシステムは、複数のコンピュータ装置を含む。それらのそれぞれは、内部構成要素を有するサブシステムである。コンピュータシステムは、デスクトップ及びラップトップコンピュータ、タブレット、携帯電話、及び他のモバイルデバイス、を含むことができる。
【0129】
図11に示すサブシステムは、システムバス1180を介して相互接続されている。プリンタ1174、キーボード1178、ストレージデバイス(単一又は複数)1179、ディスプレイアダプタ1182に接続されているモニタ1176、などの追加的なサブシステムが示されている。I/Oコントローラ1171に接続される周辺デバイス及び入力/出力(I/O)デバイスは、I/Oポート1177(例えば、ユニバーサルシリアルバス(universal serial bus又はUSB)、FireWire(登録商標))などの、当業者に既知のいずれの多数の手段を用いて、コンピュータシステムに接続され得る。例えば、I/Oポート1177又は外部インターフェース1181(例えば、Ethernet(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)、など)が、コンピュータシステム1110を、インターネットなどのワイドエリアネットワーク、マウス入力デバイス、又はスキャナに接続するために使用され得る。システムバス1180を介した相互接続は、セントラルプロセッサ1173が、サブシステムのそれぞれと通信し、システムメモリ1172又はストレージデバイス(単一又は複数)1179(例えば、ハードドライブなどの固定ディスク、又は、光ディスク)からの複数の命令の実行と、同様に、サブシステム間の情報の交換と、の制御を可能にする。システムメモリ1172及び/又はストレージデバイス(単一又は複数)1179は、コンピュータ可読媒体を具現化できる。別のサブシステムは、カメラ、マイクロフォン、加速度計、又は他のセンサなどの、データ収集デバイス1175である。ここに説明されるデータのいずれは、1つの構成要素から別の構成要素に出力され得、ユーザに出力され得る。
【0130】
コンピュータシステムは、例えば、外部インターフェース1181により、内部インターフェースにより、又は、1つの構成要素から別の構成要素に接続され得、取り外され得る、リムーバブルストレージデバイスを介して、共に接続された、複数の同じ構成要素又はサブシステムを含むことができる。いくつかの実施形態では、コンピュータシステム、サブシステム、又は装置は、ネットワークを経由して通信する。そのような例では、1つのコンピュータは、クライアントと見なされ得、別のコンピュータは、サーバーと見なされ得る。それらのそれぞれは、同じコンピュータシステムの一部であり得る。クライアント及びサーバーはそれぞれ、複数のシステム、サブシステム、又は構成要素を含み得る。
【0131】
実施形態の様々な態様が、ハードウェア回路(例えば、APSIC又はFPGA)を使用する、及び/又は、一般的に、モジュラーでの、又は、統合された、プログラマブルプロセッサを用いる、コンピュータソフトウェアを使用する、制御ロジックの形態にて実装され得る。ここで使用されるように、プロセッサは、単一のコアプロセッサ、同じ集積チップ上のマルチコアプロセッサ、又は、単一の回路基板、若しくは、ネットワーク化されたもの、同様に、専用のハードウェア上の、複数の処理ユニットを含むことができる。ここに提供される開示及び教示に基づき、当業者は、ハードウェア、及び、ハードウェア並びにソフトウェアの組み合わせを使用する、本発明の実施形態のそれぞれを実装する他の様式及び/又は方法を知り、理解するであろう。
【0132】
本出願に説明されるソフトウェア構成要素又は機能のいずれも、例えば、Java(登録商標)、C、C++、C#、オブジェクティブC、Swiftなどの、いずれの好適なコンピュータ言語、又は、従来の技術若しくはオブジェクト指向の技術を使用する、例えば、Perl又はPythonなどのスクリプト言語を使用して、プロセッサにより実行されるソフトウェアコードとして実装され得る。ソフトウェアコードは、保存及び/又は伝送のために、コンピュータ可読媒体上の一連の命令又はコマンドとして保存され得る。好適な非一時的コンピュータ可読媒体は、ランダムアクセスメモリ(random access memory又はRAM)、読み取り専用メモリ(read only memory又はROM)、ハードドライブ若しくはフロッピーディスクなどの磁気的媒体、又は、コンパクトディスク(compact disk又はCD)若しくはデジタルバーサタイルディスク(digital versatile disk又はDVD)などの光学的媒体、フラッシュメモリ、などを含むことができる。コンピュータ可読媒体は、そのような保存又は伝送デバイスのいずれの組み合わせであり得る。
【0133】
そのようなプログラムはまた、エンコードされ、インターネットを含む、種々のプロトコルに準拠する有線ネットワーク、光ネットワーク、及び/又は無線ネットワークを介しての伝送に適合されたキャリア信号を使用して、伝送され得る。そのため、コンピュータ可読媒体は、そのようなプログラムを用いてエンコードされたデータ信号を使用して作成され得る。プログラムコードを用いてエンコードされたコンピュータ可読媒体は、互換性のあるデバイスを用いてパッケージ化され得る、又は、他のデバイスとは別に提供され得る(例えば、インターネットを介してダウンロードされ得る)。いずれのそのようなコンピュータ可読媒体は、単一のコンピュータ製品(例えば、ハードドライブ、CD、若しくはコンピュータシステム全体)上に、若しくは、その内部に与えられ得る、又は、システム若しくはネットワーク内の異なるコンピュータ製品上に、若しくは、その内部に存在し得る。コンピュータシステムは、ここに説明される結果のいずれをユーザに提供するための、モニタ、プリンタ、又は他の好適なディスプレイを含むことができる。
【0134】
ここに説明される方法のいずれは、上記のステップを行うよう構成され得る、1つ又はそれ以上のプロセッサを含むコンピュータシステムを用いて完全に、又は、部分的に行われてよい。したがって、実施形態のそれぞれは、ここに説明される方法のいずれのステップを、潜在的に、ステップのそれぞれ、又は、ステップのグループのそれぞれを行う、異なる構成要素を用いて、行うよう構成されているコンピュータシステムに向けられ得る。ここでの方法のステップは、順序立てられたステップとして提示されているが、同時に、又は、異なる時に、又は、異なる順序にて、行なわれ得る。追加的に、これらのステップの部位のそれぞれは、他の方法からの他のステップの部位のそれぞれと共に使用され得る。また、1つのステップのすべて、又は、その部位のそれぞれは、任意であり得る。追加的に、これらの方法のいずれのステップのいずれは、これらのステップを行うためのシステムのモジュール、ユニット、回路、又は他の手段を用いて行なわれ得る。
【0135】
特定の実施形態の具体的な詳細は、本発明の実施形態の精神及び範囲から逸脱することなく、いずれの好適な様式にて組み合わされ得る。しかし、本発明の他の実施形態は、各個別の態様、又は、それら個別の態様の具体的な組み合わせに関連する具体的な実施形態に向けられ得る。
【0136】
先の実施形態を、理解を明確にする目的のために、いくらか詳細に説明したが、本発明は、提供された、それらの詳細に限定されない。本発明を実施するための、多くの代替的な方法がある。開示された実施形態は、説明のためであり、限定するものではない。本発明の例示的実施形態の上記説明は、図示及び説明を目的として提示されている。これらは、包括的なものとなることも、又は、本発明を、説明された正確な形に限定することも、意図されていない。上記の教示を踏まえ、多くの変更例及びバリエーションが可能である。
【0137】
ある特徴又は要素が、別の特徴又は要素の「上にある(on)」、とここで言う場合、これは、その別の特徴又は要素上に直接あるものとでき、若しくは、これらの間に介在する特徴及び/又は要素があってもよい。対照的に、ある特徴又は要素が、別の特徴又は要素の「上に直接ある(directly on)」、と言う場合、これは、これらの間に介在する特徴又は要素がない、ということである。ある特徴又は要素が、別の特徴又は要素に「接続され(connected)」、「取り付けられ(attached)」、又は「接続され(coupled)」ている、と言う場合、これは、その別の特徴又は要素に直接接続され、取り付けられ、又は接続されているものとでき、若しくは、これらの間に介在する特徴又は要素があってもよい、ということもまた、理解されるであろう。対照的に、ある特徴又は要素が、別の特徴又は要素に「直接接続され(directly connected)」、「直接取り付けられ(directly attached)」、又は「直接接続され(directly coupled)」ている、と言う場合、これは、これらの間に介在する特徴又は要素がない、ということである。1つの実施形態に関して説明又は示されたが、説明又は示された特徴及び要素は、他の実施形態を適用することができる。別の特徴「に隣接して(adjacent)」配置された構造又は特徴、という場合、これは、その隣接する特徴と重なる部位があり得る、又は、下にある部位があり得る、ということが、当業者にもまた理解されるであろう。
【0138】
ここに使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、本発明を限定することは意図されていない。例えば、ここで使用されるように、単数形の「a」、「an」、及び「the」は、そのコンテキストがさもなければ明確に示さない限りは、複数形を同様に含むことが意図されている。用語「含む(comprises)」及び/又は「含む(comprising)」が本明細書にて使用される場合、これらは、ここに記される特徴、ステップ、作動、要素、及び/又は構成要素の存在を明記するが、1つ又はそれ以上の他の特徴、ステップ、作動、要素、構成要素、及び/又はそれらのグループの存在又は追加を除外しない、ということがさらに理解されるであろう。ここで使用されるように、用語「及び(and)/又は(or)」は、1つ又はそれ以上の、関連する、列挙されたアイテムのいずれ及びすべての組み合わせを含む。これらは、「/」と省略される場合がある。
【0139】
「下(under)」、「下(below)」、「下(lower)」、「上(over)」、「上(upper)」などの空間的に相対的な用語が使用され、説明を容易にするために、図面に示すような、1つの要素又は特徴の、別の要素(単一又は複数)又は特徴(単一又は複数)との関係をここで説明する場合がある。これらの空間的に相対的な用語は、図面に示される向きに加えて、使用中又は作動中のデバイスの異なる向きを含むことが意図される、ということが理解されるであろう。例えば、図面内のデバイスの上下が
逆になっている場合、他の要素又は特徴の「下(under)」又は「下(beneath)」と説明されている要素は、その他の要素又は特徴の「上(over)」となる。したがって、「下(under)」という例示的な用語は、上(over)及び下(under)の双方を含み得る。デバイスは、他に(90度回転されて、又は、他の向きに)向けられてよく、ここで使用される空間的に相対的な記述子により、したがって、解釈されてよい。同様に、用語「上(upwardly)」、「下(downwardly)」、「垂直(vertical)」、「水平(horizontal)などは、さもなければ特に具体的に示されていない限りは、説明のみを目的として、ここに使用されている。
【0140】
用語「第1(first)」及び「第2(second)」は、(ステップを含む)種々の特徴/要素を説明するためにここに使用される場合があるが、これらの特徴/要素は、コンテキストがさもなければ示さない限りは、これらの用語により限定されるべきではない。これらの用語は、1つの特徴/要素を、別の特徴/要素と区別するために使用される場合がある。したがって、本発明の教示から逸脱することなく、以下に説明される第1の特徴/要素は、第2の特徴/要素と言うことができ、同様に、以下に説明される第2の特徴/要素は、第1の特徴/要素と言うことができる。
【0141】
本明細書と、以下に続く特許請求の範囲と、を通して、コンテキストがさもなければ必要としない限り、「含む(comprise)」という言葉と、「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」などのそのバリエーションは、種々の構成要素が、本方法及び各条項(例えば、デバイス及び方法を含む構成及び装置)において共に採用され得る、ということを意味する。例えば、用語「含む(comprising)」は、ここに記されるいずれの要素又はステップを含むことを暗示するが、いずれの他の要素又はステップを除外することを含まない、と理解される。
【0142】
各例において使用されるようなことを含み、さもなければ明示的に指定されない限りは、本明細書及び特許請求の範囲において、ここで使用されるように、すべての数値は、「約(about)」又は「おおよそ(approximately)」という言葉が、それらのそれぞれが明示的になくとも、あたかも前置きされるように読まれてよい。フレーズ「約(about)」又は「おおよそ(approximately)」は、説明される値及び/又は位置が、値及び/又は位置の合理的に予期される範囲内にある、ということを示すために、大きさ及び/又は位置を説明する際に使用される場合がある。例えば、ある数値は、示す値(又は、値の範囲)の+/-0.1%、示す値(又は、値の範囲)の+/-1%、示す値(又は、値の範囲)の+/-2%、示す値(又は、値の範囲)の+/-5%、示す値(又は、値の範囲)の+/-10%、などの値を有する場合がある。ここに与えられるいずれの数値はまた、コンテキストがさもなければ示さない限りは、約又はおおよその、その値、を含むものとも理解されるべきである。例えば、値「10」が開示される場合、これは「約10」とも開示される。ここに列挙されるいずれの数値的範囲は、それらに属するすべての部分的な範囲を含むことが意図されている。ある値が、その値「以下(less than or equal to)」として開示される場合、当業者に適切に理解されるように、「その値以上(greater than or equal to)」、及び、値と値との間の可能な範囲もまた開示される、ということがまた理解される。例えば、値「X」が開示される場合、これは、「X以下(less than or equal to)」、同様に、「X以上(greater than or equal to)」とも開示される(例えば、Xは数値)。本出願を通して、データは、多くの異なるフォーマットにて提供され、このデータは、終了ポイント並びに開始ポイント、及び、データポイントのいずれの組み合わせに対する範囲を表す、ということがまた理解される。例えば、特定のデータポイント「10」及び特定のデータポイント「15」が開示される場合、10及び15より大きい、以上、未満、以下、及び、これらに等しい数が、10と15との間と同様に、開示されるものと見なされる、ということが理解
される。2つの特定の単位の間の各単位もまた開示される、ということがまた理解される。例えば、10及び15が開示される場合、11、12、13、及び14もまた開示される。
【0143】
種々の実例となる実施形態を先に説明したが、種々の実施形態に対して、特許請求の範囲に記載される、本発明の範囲を逸脱することなく、いずれの多数の変更が行われてよい。例えば、説明する種々の方法ステップが行われる順序は、代替的な実施形態においてしばしば変更されてよい。他の代替的な実施形態では、1つ又はそれ以上の方法ステップが、ともにスキップされてよい。種々のデバイス及びシステムの実施形態の任意の特徴が、いくつかの実施形態では含まれてよく、他の実施形態では含まれなくともよい。したがって、先の説明は、主に例示を目的として提供されており、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0144】
ここに含まれる例及び図は、限定ではなく、図示を目的として、本主題が実践され得る具体的な実施形態を示す。上述されるように、本開示の範囲を逸脱することなく、構造的及び論理的な置き換え及び変更が行われてよいように、他の実施形態が利用されてよく、それらからの派生があってよい。本発明の主題のそのような実施形態は、それらが1つを超えて、実際に開示される場合、それらは、利便性のみのために、いずれの単一の発明又は発明に関するコンセプトに対する本出願の範囲の自主的な限定を意図することなく、個別に、又は、総称して、用語「発明(invention)」により、ここで参照される場合がある。したがって、具体的な実施形態がここに図示され、説明されているが、同目的を達成するために計算されたいずれのアレンジメントが、ここに示される具体的な実施形態に対して置き換えられてよい。本開示は、種々の実施形態のいずれ及びすべてのアダプテーション又はバリエーションをカバーすることが意図されている。上記実施形態と、ここに具体的に説明されていない他の実施形態と、の組み合わせが、先の説明を検討することにより、当業者に明らかとなるであろう。
【0145】
ここに説明されるすべての特許、特許出願、出版物、及び説明文は、それらの内容全体を、すべての目的のために、参照により本明細書に援用する。従来技術と認められるものは無い。
以下に、出願時の特許請求の範囲を示す。
[請求項1]
ナノ細孔センサセルのアレイを形成する方法であって、
ナノ細孔をセルの最も近くに導入することであって、前記セルは、作用電極と、前記セルを密封する膜と、を有し、前記作用電極は、電気的に接続された電源により電力が供給される、ナノ細孔をセルの最も近くに導入することと、
電圧波形を、前記セルの前記膜にわたって適用することであって、前記電圧波形は、第1の電圧にて始まり、第2の電圧まである期間にわたって大きくなる、電圧波形を、前記セルの前記膜にわたって適用することと、
前記電圧波形を適用するステップの間に、前記ナノ細孔を前記膜内に挿入することと、
を含む方法。
[請求項2]
前記第1の電圧は、約0と100mVとの間にあり、前記第2の電圧は、約100から2000mVの間にある、請求項1に記載の方法。
[請求項3]
前記作用電極は容量電極である、請求項1に記載の方法。
[請求項4]
前記電圧波形は、前記第1の電圧と前記第2の電圧との間に、複数の漸進的ステップを含む、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の方法。
[請求項5]
前記複数の漸進的ステップは、約1から100mVずつ漸進する、請求項4に記載の方法。
[請求項6]
前記複数の漸進的ステップは、約1から25mVずつ漸進する、請求項4に記載の方法。
[請求項7]
各漸進的ステップは、約0.1から60秒の間の期間を有する、請求項4から請求項6のいずれか一項に記載の方法。
[請求項8]
前記漸進的ステップの前記期間は可変的である、請求項7に記載の方法。
[請求項9]
より低い電圧での前記漸進的ステップの前記期間は、より高い電圧での前記漸進的ステップの前記期間より長い、請求項7に記載の方法。
[請求項10]
前記漸進的ステップの前記期間は一定である、請求項7に記載の方法。
[請求項11]
前記電圧波形は、前記第1の電圧と前記第2の電圧との間に傾斜を含む、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の方法。
[請求項12]
前記傾斜は、毎分約0.1から2.0Vの間にある、請求項11に記載の方法。
[請求項13]
前記傾斜は一定のスロープを有する、請求項12に記載の方法。
[請求項14]
前記傾斜は可変スロープを有する、請求項12に記載の方法。
[請求項15]
前記傾斜は、より高い電圧でのスロープより小さい、より低い電圧でのスロープを有する、請求項12に記載の方法。
[請求項16]
前記電圧波形を適用することは、薄くされていない膜に適用される、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の方法。
[請求項17]
前記薄くされていない膜を、適用された前記電圧波形を用いて薄くすることをさらに含む、請求項16に記載の方法。
[請求項18]
前記電源は、前記作用電極にAC接続されている、請求項1に記載の方法。
[請求項19]
前記電圧波形は、AC変調成分を含み、前記AC変調成分は、前記電圧波形が、前記セルの前記膜にわたって適用されている間に、前記作用電極を通して、電気的測定値が取得され得るよう構成されている、請求項1に記載の方法。
[請求項20]
前記AC変調成分は、100mV未満の振幅を有する、請求項19に記載の方法。
[請求項21]
前記AC変調成分は、10Hzと1000Hzとの間の周波数を有する、請求項19に記載の方法。
[請求項22]
分子の配列決定のためのシステムであって、
基板上のセルのアレイであって、前記セルのそれぞれは、作用電極と、膜により密封されるよう構成されている開口と、を有し、前記作用電極は、AC接続された電源により電力が供給される、基板上のセルのアレイと、
対電極と、
電源であって、前記作用電極のそれぞれに電気的に接続されている電源と、
コントローラであって、
第1の電圧にて始まり、第2の電圧まである期間にわたって大きくなる電圧波形を、前記作用電極と前記対電極とを使用して、前記セルに供給するようプログラムされたコントローラと、
を含むシステム。
[請求項23]
前記作用電極は容量電極である、請求項22に記載のシステム。
[請求項24]
前記電圧波形は、前記第1の電圧と前記第2の電圧との間に、複数の漸進的ステップを含む、請求項22に記載のシステム。
[請求項25]
前記電圧波形は、前記第1の電圧と前記第2の電圧との間に傾斜を含む、請求項22に記載のシステム。
[請求項26]
前記コントローラは、前記電圧波形を、薄くされていない膜に供給するようさらにプログラムされている、請求項22に記載のシステム。
[請求項27]
前記電源は、各作用電極のそれぞれにAC接続されている、請求項22に記載のシステム。
[請求項28]
膜で覆われたセルを形成する方法であって、
膜形成材料をセル上に流すことであって、前記セルは、作用電極を有し、前記作用電極は、電気的に接続された電源により電力が供給される、膜形成材料をセル上に流すことと、
膜形成材料の層を前記セル上に配置することと、
電圧波形を、前記膜形成材料の層にわたって、前記作用電極と、前記膜形成材料の層の反対側にある対電極とを使用して、適用することであって、前記電圧波形は、AC変調成分を含み、前記AC変調成分は、前記電圧波形が、前記膜形成材料の層にわたって適用されている間に、前記作用電極を通して、電気的測定値が取得され得るよう構成されている、電圧波形を、前記膜形成材料の層にわたって、前記作用電極と、前記膜形成材料の層の反対側にある対電極とを使用して適用することと、
前記膜形成材料の層を膜に薄くすることであって、前記膜は、ナノ細孔を受容するよう構成されている、前記膜形成材料の層を膜に薄くすることと、
を含む方法。
[請求項29]
前記AC変調成分は、100mV未満の振幅を有する、請求項28に記載の方法。
[請求項30]
前記AC変調成分は、10Hzと1000Hzとの間の周波数を有する、請求項28に記載の方法。