IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コンチネンタル・オートナマス・モビリティ・ジャーマニー・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツングの特許一覧 ▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧

特許7592816自車両の後方に位置する検出エリアにおいてターゲット車両を検出するための車両検出システムおよび方法
<>
  • 特許-自車両の後方に位置する検出エリアにおいてターゲット車両を検出するための車両検出システムおよび方法 図1
  • 特許-自車両の後方に位置する検出エリアにおいてターゲット車両を検出するための車両検出システムおよび方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】自車両の後方に位置する検出エリアにおいてターゲット車両を検出するための車両検出システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20241125BHJP
   G01S 13/931 20200101ALI20241125BHJP
【FI】
G08G1/16 C
G01S13/931
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023175376
(22)【出願日】2023-10-10
(65)【公開番号】P2024060586
(43)【公開日】2024-05-02
【審査請求日】2024-01-25
(31)【優先権主張番号】22202538
(32)【優先日】2022-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】322007626
【氏名又は名称】コンチネンタル・オートナマス・モビリティ・ジャーマニー・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】小原 崇弘
(72)【発明者】
【氏名】望月 朋彦
(72)【発明者】
【氏名】野原 孝良
(72)【発明者】
【氏名】高橋 将寛
【審査官】宮地 将斗
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-174320(JP,A)
【文献】再公表特許第2019/116871(JP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0298887(US,A1)
【文献】特開2020-147088(JP,A)
【文献】特表2020-523709(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0207269(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0238904(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
G01S 7/00- 7/42
G01S 13/00-13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両(50)の後方に位置する検出エリア(DA)においてターゲット車両(60)を検出するための車両検出システム(10)であって、前記車両検出システム(10)は判定手段(20)を備え、
前記判定手段(20)は、
走行車線(DL)の一方側にある第1隣接車線(ALF)において、前記走行車線(DL)を占有する前記自車両(50)に後方から接近することが検出され、かつ、前記第1隣接車線(ALF)から、前記走行車線(DL)を斜めに通過することにより、前記走行車線(DL)の他方側にある第2隣接車線(ALS)へ車線を変更することがさらに検出されたターゲット車両(60)が、警報対象であるか否かを判定し、
前記ターゲット車両(60)が警報対象であると前記判定手段(20)が判定したことに基づいて、前記自車両(50)の後方にターゲット車両(60)が存在することを前記自車両(50)の運転者に警告する警告手段(30)に判定の結果を出力し、
前記検出エリア(DA)における前記ターゲット車両(60)の横方向のオーバーラップ(65)の変化に基づいて、指定された時間にわたる前記横方向のオーバーラップ(65)の大きさの変化を表すオーバーラップ変化率を決定する
ように構成され、
前記判定手段(20)は、前記オーバーラップ変化率に基づいて、前記ターゲット車両(60)が警報対象である、または前記ターゲット車両(60)が警報対象ではないと判定するように構成される、車両検出システム(10)。
【請求項2】
前記自車両(50)の前記検出エリア(DA)は、前記自車両(50)の後方かつ前記自車両(50)の前記走行車線(DL)の領域、特に、少なくとも1つの前記第1隣接車線(ALF)の領域および/または少なくとも1つの前記第2隣接車線(ALS)の領域に対応する、請求項1に記載の車両検出システム(10)。
【請求項3】
前記検出エリア(DA)における前記ターゲット車両(60)の前記横方向のオーバーラップ(65)は、前記第1隣接車線(ALF)から前記第2隣接車線(ALS)への、その車線変更中に前記ターゲット車両(60)が横切る長手方向の基準線(70)から開始されることが決定され、横断方向に測定される、請求項1または2に記載の車両検出システム(10)。
【請求項4】
前記長手方向の基準線(70)は、前記検出エリア(DA)のサイドの遷移線(80)である、請求項3に記載の車両検出システム(10)。
【請求項5】
前記判定手段(20)は、前記走行車線(DL)を斜めに通過する間に前記ターゲット車両(60)の前記横方向のオーバーラップ(65)が連続的に増大する場合に、前記ターゲット車両(60)が警報対象ではないと判定するように構成される、請求項1または2に記載の車両検出システム(10)。
【請求項6】
前記判定手段(20)は、前記ターゲット車両(60)が警報対象ではないと前記判定手段(20)が判定したことに基づいて、ターゲット車両(60)が検出された場合であっても警告を抑制するように前記警告手段(30)に示す判定の結果を前記警告手段(30)に出力するように構成される、請求項1または2に記載の車両検出システム(10)。
【請求項7】
前記オーバーラップ変化率は、今回の横方向のオーバーラップと前回の横方向のオーバーラップとの間の差を、決定サイクルのサイクル時間、特に0.05sのサイクル時間で割ったものとして定義され、
オーバーラップ変化率警告しきい値は、1.0m/s~1.5m/sの範囲内に設定され、前記判定手段(20)は、前記オーバーラップ変化率がこのオーバーラップ変化率警告しきい値を超える場合に、前記ターゲット車両(60)が警報対象ではないと判定するようにさらに構成される、請求項1または2に記載の車両検出システム(10)。
【請求項8】
前記判定手段(20)は、
記ターゲット車両(60)の横方向速度に対する前記ターゲット車両(60)の横方向のオーバーラップの比を計算することによって、前記走行車線(DL)から出るための前記ターゲット車両(60)の横方向のTTE(退出時間)を決定するようにさらに構成され、かつ、反復される決定サイクルにおいて実行される、TTEが4.0sよりも小さいか、それともTTEが4.0s以上であるかの判定のために構成され、
TTEが4.0sよりも小さい場合、TTEと1.5sとの間の最小値に遅延タイマを設定し、遅延タイマが満了するまで、前記ターゲット車両(60)が警報対象ではないと判定し、
TTEが4.0s以上である場合、前記ターゲット車両(60)が警報対象であると判定するように構成される、請求項1または2に記載の車両検出システム(10)。
【請求項9】
自車両(50)のための運転者支援システム(1)であって、
前記自車両(50)の後方に位置する検出エリア(DA)においてターゲット車両(60)を検出するための検出手段(40)と、
請求項1または2に記載の車両検出システム(10)と、
前記ターゲット車両(60)が警報対象であると前記車両検出システム(10)の前記判定手段(20)が判定した場合にのみ、前記検出エリア(DA)内または前記走行車線(DL)内にターゲット車両(60)が存在することを前記自車両(50)の運転者に警告するための警告手段(30)と、
を備える、運転者支援システム(1)。
【請求項10】
前記検出手段(40)は、前記検出エリア(DA)においてターゲット車両(60)を検出するためのレーダセンサ、特に後方ターゲット接近通知(RTAN)および長距離後方ターゲット接近通知(L-RTAN)のためのレーダセンサを備え、前記判定手段(20)の前記判定は、L-RTANレーダ検出に基づく、請求項9に記載の運転者支援システム(1)。
【請求項11】
請求項9に記載の運転者支援システム(1)を備える車両。
【請求項12】
自車両(50)の後方に位置する検出エリア(DA)においてターゲット車両(60)を検出するための、特に請求項1または2に記載の車両検出システム(10)を制御するためのコンピュータ実装方法であって、当該方法は、以下のステップ:
走行車線(DL)の一方側にある第1隣接車線(ALF)において、前記走行車線(DL)を占有する前記自車両(50)に後方から接近することが検出され、かつ、前記第1隣接車線(ALF)から、前記走行車線(DL)を斜めに通過することにより、前記走行車線(DL)の他方側にある第2隣接車線(ALS)へ車線を変更することがさらに検出されたターゲット車両(60)が、警報対象であるか否かを判定するステップと、
前記ターゲット車両(60)が警報対象であると前記判定手段(20)が判定したことに基づいて、前記自車両(50)の後方にターゲット車両(60)が存在することを前記自車両(50)の運転者に警告する警告手段(30)に判定の結果を出力するステップと、
前記検出エリア(DA)における前記ターゲット車両(60)の横方向のオーバーラップ(65)の変化に基づいて、指定された時間にわたる前記横方向のオーバーラップ(65)の大きさの変化を表すオーバーラップ変化率を決定するステップと、
前記オーバーラップ変化率に基づいて、前記ターゲット車両(60)が警報対象である、または前記ターゲット車両(60)が警報対象ではないと判定するステップと、
を含む、方法。
【請求項13】
前記オーバーラップ変化率は、今回の横方向のオーバーラップと前回の横方向のオーバーラップとの間の差を、決定サイクルのサイクル時間、特に0.05sのサイクル時間で割ったものとして定義される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
オーバーラップ変化率警告しきい値は、1.0m/s~1.5m/sの範囲内に設定され、前記判定手段(20)は、前記オーバーラップ変化率がこのオーバーラップ変化率警告しきい値を超える場合に、前記ターゲット車両(60)が警報対象ではないと判定するようにさらに構成される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
プログラムがコンピュータによって実行されるときに請求項12に記載の方法を前記コンピュータに実行させる命令を含む、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両の後方に位置する検出エリアにおいてターゲット車両を検出するための車両検出システムに関する。さらに、本発明は、特に車両検出システムを制御するための、自車両の後方に位置する検出エリアにおいてターゲット車両を検出するための方法に関する。
【0002】
さらに、本発明は、そのような車両検出システムを備える車両用運転者支援システムと、上記方法を実行するための対応するコンピュータプログラムと、それぞれのコンピュータ可読媒体とに関する。
【背景技術】
【0003】
車両用の従来の運転者支援システムまたは先進運転者支援システム(ADAS)は、例えば、従来の車両ならびに自動運転車両に関連して広く使用されている。
【0004】
多くの車両事故は、そのような先進運転者支援システム(ADAS)によって回避され得るヒューマンエラーによって引き起こされる。一般的に知られている安全上重要なADASの用途は、例えば、歩行者の検出/回避、車線逸脱の警告/修正、交通標識の認識、自動緊急ブレーキおよび死角検出を含む。長距離レーダは、通常、緊急ブレーキアシストおよびアダプティブクルーズコントロールのような用途に使用されるが、短距離レーダは、例えば、死角検出(BSD)、後方交差交通警報、車線変更支援および後方プリクラッシュシステムのような用途に関連して使用されることが多い。
【0005】
例えば、そのような後方プリクラッシュシステムは、自車両の後方から、例えば自車両の車線または走行車線において、または自車両の車線に隣接する隣接車線から接近する車両を追跡し、差し迫った衝突の場合、インジケータ(光学または音響インジケータ)、エアバッグ、シートベルトなどの安全装置を事前に作動させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このようなシステムにおいて、例えば、長距離検出エリアのためにL-RTANまたは長距離後方ターゲット接近通知を、短距離検出エリアのためにRTANまたは後方ターゲット接近通知を用いるレーダによって、後方から自車両に接近するターゲット車両が検出された場合、例えば、ターゲット車両が自車両を追い越そうとしているときに、ターゲット車両が、自車両の走行車線に隣接する第1隣接車線から、走行車線に対して第1隣接車線とは反対側にある第2隣接車線に車線を変更し、走行車線を斜めに横切る場合、L-RTANまたはRTANによる警告信号のトリガは不要であると考えられるかもしれない。しかしながら、例えば退出時間(TTE)に基づいてターゲット車両が走行車線を横切ることを推定することは、特にターゲット車両までの距離が長い場合、困難かつ不正確になることがある。このため、ターゲット車両は、上記走行車線を連続的に通過するのではなく、上記走行車線に一時的に合流するように見えるかもしれない。この挙動は、ターゲット車両が合流ターゲット車両であると誤解させ、場合によってはRTANおよび/またはL-RTANによってトリガされる警告信号の発行をもたらす可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による車両検出システムは、自車両の後方に位置する検出エリアにおいてターゲット車両を検出するためのものであって、当該車両検出システムは、走行車線の一方側にある第1隣接車線において、走行車線を占有する自車両に後方から接近することが検出され、かつ、第1隣接車線から、走行車線を斜めに通過することにより、走行車線の他方側にある第2隣接車線へ車線を変更することがさらに検出されたターゲット車両が、警報対象であるかどうかを判定し、ターゲット車両が警報対象であると当該判定手段が判定したことに基づいて、自車両の後方にターゲット車両が存在することを自車両の運転者に警告する警告手段に判定の結果を出力し、検出エリアにおけるターゲット車両の横方向のオーバーラップの変化に基づいて、指定された時間にわたる横方向のオーバーラップの大きさの変化を表すオーバーラップ変化率を決定するように構成される判定手段を備え、当該判定手段は、オーバーラップ変化率に基づいて、ターゲット車両が警報対象である、またはターゲット車両が警報対象ではないと判定するように構成される。
【0008】
上記オーバーラップ変化率を使用することにより、ターゲット車両が第1隣接車線から反対側の第2隣接車線に車線を変更しながら上記走行車線を通過する間に、ターゲット車両の実際の走行ラインを非常に正確に決定および予測することができる。その結果、不要なアラームの警告/起動を回避することができる。
【0009】
有利には、判定手段は、ターゲット車両が警報対象でないと当該判定手段が判定したことに基づいて、ターゲット車両が検出された場合であっても警告を抑制することを警告手段に示す判定の結果を警告手段に出力するように構成される。
【0010】
好ましくは、自車両の検出エリアは、自車両の後方かつ自車両の走行車線の領域に対応する。検出エリアは、少なくとも1つの第1隣接車線の領域および/または少なくとも1つの第2隣接車線の領域をさらに含んでもよい。
【0011】
好ましくは、検出エリアにおけるターゲット車両の横方向のオーバーラップは、第1隣接車線から第2隣接車線への、その車線変更中にターゲット車両が横切る長手方向の基準線から開始されることが決定され、横断方向に測定される。
【0012】
さらに、車両検出システムは、長手方向の基準線が検出エリアのサイドの遷移線であるように構成されてもよい。
【0013】
好ましくは、判定手段は、走行車線を斜めに通過する間にターゲット車両の横方向のオーバーラップが連続的に増大する場合に、ターゲット車両が警報対象でないと判定するように構成される。
【0014】
有利には、オーバーラップ変化率は、今回の横方向のオーバーラップと前回の横方向のオーバーラップとの間の差を、決定サイクルのサイクル時間、特に0.05sのサイクル時間で割ったものとして定義される。オーバーラップ変化率警告しきい値は、1.0m/s~1.5m/sの範囲内、好ましくは1.3m/sにあるように設定され、判定手段は、オーバーラップ変化率がこのオーバーラップ変化率警告しきい値を超える場合に、ターゲット車両が警報対象ではないと判定するようにさらに構成される。
【0015】
好ましい実施形態によれば、判定手段は、好ましくはターゲット車両の横方向の速度に対するターゲット車両の横方向のオーバーラップの比を計算することによって、走行車線から出るためのターゲット車両の横方向のTTE(退出時間)を決定するようにさらに構成され、かつ、反復される決定サイクルにおいて実行される、TTEが4.0sよりも小さいか、それともTTEが4.0s以上であるかの判定のために構成され、かつ、TTEが4.0sよりも小さい場合、TTEと1.5sとの間の最小値に遅延タイマを設定し、遅延タイマが満了するまで、ターゲット車両が警報対象ではないと判定し(警報信号を抑制することを意味する)、TTEが4.0s以上である場合、ターゲット車両が警報対象であると判定する(警報信号を抑制しないことを意味する)ように構成される。
【0016】
したがって、車両検出システムは、ターゲット車両のオーバーラップ変化が突然に、特に特定の警告しきい値を超えて増大した場合に、警告信号が短期間において一時的に抑制されるように設定することができる。
【0017】
本発明による運転者支援システムは、自車両に提供され、自車両の後方に位置する検出エリアにおいてターゲット車両を検出するための検出手段と、上記のような本発明による車両検出システムと、ターゲット車両が警報対象であると当該車両検出システムの判定手段が判定した場合にのみ、検出エリア内または走行車線内にターゲット車両が存在することを自車両の運転者に警告するための警告手段とを備える。
【0018】
さらに、本発明による運転者支援システムは、検出手段が、検出エリアにおいてターゲット車両を検出するためのレーダセンサ、特に後方ターゲット接近通知(RTAN)および長距離後方ターゲット接近通知(L-RTAN)のためのレーダセンサを備えるようにさらに構成され得る。判定手段の判定は、L-RTANレーダ検出もしくはRTANレーダ検出のいずれか、または両方の検出に基づいてもよく、好ましくはL-RTANレーダ検出に基づく。
【0019】
本発明による車両、好ましくは自動運転車両は、上述のような本発明による運転者支援システムを備える。
【0020】
本発明によるコンピュータ実装方法は、自車両の後方に位置する検出エリアにおいてターゲット車両を検出するための、特に上述のような本発明による車両検出システムを制御するためのものであって、以下のステップ:走行車線の一方側にある第1隣接車線において、走行車線を占有する自車両に後方から接近することが検出され、かつ、第1隣接車線から、走行車線を斜めに通過することにより、走行車線の他方側にある第2隣接車線へ車線を変更することがさらに検出されたターゲット車両が、警報対象であるか否かを判定するステップと、ターゲット車両が警報対象であると判定手段が判定したことに基づいて、自車両の後方にターゲット車両が存在することを自車両の運転者に警告する警告手段に判定の結果を出力するステップと、検出エリアにおけるターゲット車両の横方向のオーバーラップの変化に基づいて、指定された時間にわたる横方向のオーバーラップの大きさの変化を表すオーバーラップ変化率を決定するステップと、オーバーラップ変化率に基づいて、ターゲット車両が警報対象である、またはターゲット車両が警報対象でないと判定するステップとを含む。
【0021】
さらに、上記方法は、オーバーラップ変化率が、今回の横方向のオーバーラップと前回の横方向のオーバーラップとの間の差を、決定サイクルのサイクル時間、特に0.05sのサイクル時間で割ったものとして定義されるようにさらに改良することができる。
【0022】
好ましくは、オーバーラップ変化率警告しきい値は、1.0m/s~1.5m/sの範囲内、好ましくは1.3m/sにあるように設定される。判定手段は、オーバーラップ変化率がこのオーバーラップ変化率警告しきい値を超える場合に、ターゲット車両が警報対象ではないと判定するようにさらに構成され得る。
【0023】
したがって、本発明による車両検出システムに関連して説明された特性および利点は、本発明による自車両の後方に位置する検出エリアにおいてターゲット車両を検出するための方法に関して同一または類似の態様で生じる。これは、繰り返しを避けるために、本発明による車両検出システムに関するそれぞれの説明が参照される理由である。
【0024】
本発明によるコンピュータプログラムは、当該プログラムがコンピュータによって実行されたときに本発明による方法をコンピュータに実行させる命令を含む。
【0025】
本発明による非一時的コンピュータ可読媒体は、本発明によるコンピュータプログラムを記憶している。
【0026】
本発明の好ましい実施形態および利点は、添付の図面と共に以下の詳細な説明を読めば、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】自車両と、自車両に後方から接近して車線変更を行うターゲット車両とを示す図であり、ターゲット車両は2つの位置に示されている。
図2】本発明による運転者支援システムの概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図面を参照して、本発明の1つの好ましい実施形態を、ここで例示目的のために具体的に説明する。この実施形態における成分または要素は、例としてのみ示され説明されるが、本発明をそれらに限定することを意図するものではないことを理解されたい。
【0029】
図1は、図2に関連して説明される本発明による運転者支援システム1が設けられた、本発明による車両または自車両50の一実施形態を示す。
【0030】
図2から分かるように、自車両50に設けられた運転者支援システム1は、本発明による車両検出システム10と、検出手段40と、警告手段30とを備える。
【0031】
検出手段40は、後述する自車両50の後方に位置する検出エリアDAにおいてターゲット車両60を検出するためのものである。
【0032】
この実施形態では、検出手段40は、検出エリアDAにおいてターゲット車両60を検出するためのレーダセンサを備える。これらのセンサは、例えば、従来の(後方)交差交通警報システムの一部であってもよく、図1に示すように、x方向およびy方向においてそれぞれ、少なくとも自車両50に対するターゲット車両60の相対位置、自車両50に対するターゲット車両60の相対スピード/速度を検出することができる。この場合、図1に示すx方向は、自車両50およびターゲット車両60の長手方向に対応する一方、図1に示すy方向は、自車両50およびターゲット車両60の横断方向に対応する。
【0033】
好ましくは、検出手段40は、後方ターゲット接近通知(RTAN)および長距離後方ターゲット接近通知(L-RTAN)のためのレーダセンサを備える。判定手段の判定は、L-RTANレーダ検出もしくはRTANレーダ検出のいずれか、または両方の検出に基づいてもよい。
【0034】
警告手段30は、検出エリアDAにターゲット車両60が存在することを自車両50の運転者に警告するためのものである。例えば、警告手段30は、例えば自車両50からの安全距離を下回り得るターゲット車両60が検出エリアDAに存在することを自車両50の運転者に通知可能な従来の視覚的または聴覚的インジケータ(ディスプレイまたはスピーカ)であってもよい。
【0035】
本発明による車両検出システム10は、コンピュータまたはプロセッサによって形成することが可能であり、特に、自車両50の後方に位置する検出エリアDAにおいてターゲット車両60を検出するためのものである。自車両50の検出エリアDA(図1)は、特に幅方向または横断方向において、完全にまたはある程度、自車両50の走行車線DLのエリアに対応する。検出エリアDAは、隣接エリアまたは第1隣接車線ALFを完全にまたはある程度含んでもよく、隣接エリアまたは第1隣接車線ALFは、検出エリアDAまたは走行車線DLの側方にまたは隣接して位置し、そこからターゲット車両60が自車両50の後方の走行車線DLを斜めに横切るための走行を開始する。さらに、検出エリアDAは、隣接エリアまたは第2隣接車線ALSを完全にまたはある程度含んでもよく、隣接エリアまたは第2隣接車線ALSは、検出エリアDAまたは走行車線DLの側方にまたは隣接して位置し、かつ、走行車線DLに対して第1隣接車線ALFの反対側に位置する。ターゲット車両60は、走行車線DLを横断しながら、この第2隣接車線ALSへ移動する。
【0036】
車両検出システム10は、検出エリアDAへの進入が検出されたターゲット車両60が警報対象であるか、それとも警報対象ではないかを判定し、かつ、判定の結果を警告手段30へ出力するための判定手段20を備える。
【0037】
ターゲット車両60は、特に自車両50を追い越そうとする場合、後方から自車両50に接近する間に、第1隣接車線ALFから走行車線DLに、さらに第2隣接車線ALSに車線を変更する。
【0038】
車線を変更する場合、ターゲット車両60は、横方向のオーバーラップ65の大きさを増やしながら検出エリアDAを占有する。横方向のオーバーラップ65は、基準位置または基準線70とターゲット車両60の側部75との間の横断方向またはy方向の距離であり、ターゲット車両60の側部75は、走行車線DL内かつ検出エリアDA内にあり、かつ、基準線70の反対側にある。ターゲット車両60のこの側部75は、例えば、図1の表現によれば、ターゲット車両60の左側にある。基準線70は、例えば、検出エリアDAのサイドライン、または第1隣接車線ALFへの走行車線DLのサイドラインもしくは遷移線80であり、検出エリアDAの大きさまたは幅に依存する。したがって、横方向のオーバーラップ65は、ターゲット車両60が実際に検出エリアDAにあるターゲット車両幅の割合に対応する。走行車線DLから第2隣接車線ALSへのターゲット車両60の車線変更中、横方向のオーバーラップ65の大きさは、特に連続的に増大する。この横方向のオーバーラップ65の大きさの変化は、検出手段40によって検出される。
【0039】
判定手段20は、車線変更中のターゲット車両60の変化する横方向のオーバーラップ65に基づいて、オーバーラップ変化率を決定する。このように、オーバーラップ変化率は、例えば、決定サイクルのサイクル時間のような指定された時間にわたる、経時的な横方向のオーバーラップ65の大きさの変化を表す。オーバーラップ変化率の決定は、例えば0.05sのサイクル時間で行われる。
【0040】
オーバーラップ変化率は、今回の横方向のオーバーラップと前回の横方向のオーバーラップとの間の差をサイクル時間で割ったものとして定義される。
【0041】
オーバーラップ変化率警告しきい値は、1.0m/s~1.5m/sの範囲内、好ましくは1.3m/sにあるように設定される。判定手段20は、ターゲット車両60が検出エリアDAに進入し、かつ、オーバーラップ変化率警告しきい値のこの値を保持している間に、オーバーラップ変化率がこのオーバーラップ変化率警告しきい値を超えた場合に、ターゲット車両60は警報対象ではないと判定するように構成される。そうでない場合、判定手段20は、ターゲット車両60が警報対象であると判定する。
【0042】
オーバーラップ変化率がこのオーバーラップ変化率警告しきい値を超える場合、判定手段20は、検出エリアDAから出るためのターゲット車両60の横方向のTTE(退出時間)を決定する。TTEは、例えば、ターゲット車両60の横方向の速度に対するターゲット車両60の横方向のオーバーラップの比を計算することによって決定されてもよく、またはシミュレーションもしくは実験などの他の方法で評価されてもよい。判定手段20はさらに、反復される決定サイクルにおいて、TTEが4.0sよりも小さいか、それともTTEが4.0s以上であるかを判定する。
【0043】
TTEが4.0sよりも小さい場合、遅延タイマがTTEと1.5sとの間の最小値に設定され、遅延タイマが満了するまでターゲット車両60は警報対象ではないと判定される。この場合、警告信号は、遅延タイマが再び設定される前に最大1.5sの間抑制される。
【0044】
TTEが4.0s以上である場合、判定手段20は、ターゲット車両60が警報対象であると判定する。
【0045】
このように、判定手段20は、走行車線DLを横断する車線変更中のオーバーラップ変化率に基づいて、ターゲット車両60が警報対象である、またはターゲット車両60が警報対象ではないと判定するように構成される。
【0046】
したがって、警告手段30は、ターゲット車両60が警報対象であると判定手段20が判定した場合にのみ、検出エリアDAにターゲット車両60が存在することを自車両50の運転者に警告する。他の場合、警告は出力されない。すなわち、警告手段30は、ターゲット車両60が警報対象であると判定手段20が判定したことに基づいて、ターゲット車両60が検出エリアDAに存在するとの警告を自車両50の運転者に出力し、かつ、ターゲット車両60が警報対象ではないと判定手段20が判定したことに基づいて、ターゲット車両60が検出手段40によって検出エリアDA内に検出された場合でも、警告の出力を抑制するように構成される。
【0047】
前述の説明、図面および特許請求の範囲に開示された本発明の特徴は、個別におよび任意の組合せで本発明を実現するために欠かせないものになり得る。
図1
図2