(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】投受光装置及び測距装置
(51)【国際特許分類】
G01S 7/481 20060101AFI20241125BHJP
G01C 3/06 20060101ALI20241125BHJP
H01L 31/0232 20140101ALI20241125BHJP
【FI】
G01S7/481 Z
G01C3/06 120Q
G01C3/06 140
H01L31/02 D
(21)【出願番号】P 2023185257
(22)【出願日】2023-10-30
(62)【分割の表示】P 2018195595の分割
【原出願日】2018-10-17
【審査請求日】2023-10-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 充
(72)【発明者】
【氏名】加園 修
【審査官】藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-038383(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0122308(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48 - 7/51
17/00 - 17/95
G01C 3/00 - 3/32
H01L 27/14,31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光が対象物によって反射された反射光を受光する受光面を有し、かつ前記受光面に沿って配列されて前記反射光を各々が検出する複数の受光セグメントを有する受光素子と、
前記受光面において、前記複数の受光セグメントのうちの隣り合う受光セグメント間の領域に各々設けられ、前記反射光に対して遮光性を有する複数の第1の壁部を有する遮光壁と、
前記複数の第1の壁部のうちの隣り合う第1の壁部の間の空間内に入射する前記反射光
を散乱させる散乱部である光学部材と、を有し、
前記複数の第1の壁部の各々は、前記受光セグメント間の領域内で終端していることを特徴とする受光装置。
【請求項2】
前記光学部材は、前記複数の第1の壁部のうち隣り合う第1の壁部の間の空間に設けられていることを特徴とする請求項
1に記載の受光装置。
【請求項3】
前記光学部材は、前記光学部材の一部が前記複数の第1の壁部の端面上に設けられていることを特徴とする請求項
1に記載の受光装置。
【請求項4】
前記複数の第1の壁部の各々の壁面は、前記反射光を反射又は散乱させるように構成されていることを特徴とする請求項1乃至
3のいずれか1つに記載の受光装置。
【請求項5】
前記遮光壁は、前記受光面における前記複数の受光セグメントの各々の外縁の領域を取り囲むように形成されていることを特徴とする請求項1乃至
4のいずれか1つに記載の受光装置。
【請求項6】
前記遮光壁は、前記受光面において、前記複数の第1の壁部の各々と共に前記受光面における前記複数の受光セグメントの各々が形成された領域の全体を取り囲むように形成された第2の壁部と、を有し、
前記第2の壁部は、前記複数の受光セグメントの各々に面しておりかつ前記受光面とのなす角度が90°よりも大きい壁面を有することを特徴とする請求項1乃至
5のいずれか1つに記載の受光装置。
【請求項7】
前記反射光を集光させつつ前記複数の受光セグメントの各々に導く集光光学系を有することを特徴とする請求項1乃至
6のいずれか1つに記載の受光装置。
【請求項8】
前記集光光学系は、前記受光面の上方の位置に前記反射光が集光されるように配置されていることを特徴とする請求項
7に記載の受光装置。
【請求項9】
前記集光光学系は、少なくとも1つの光学素子を含み、
前記光学素子は、前記複数の受光セグメントを覆う位置に配置されていることを特徴とする請求項
7または
8に記載の受光装置。
【請求項10】
請求項1乃至
9のいずれか1つに記載の受光装置と、
前記対象物に向けて光を出射する光源と、
を有することを特徴とする投受光装置。
【請求項11】
請求項
10に記載の投受光装置と、
前記受光素子による前記反射光の受光結果に基づいて前記対象物までの距離を測定する測距部と、を有することを特徴とする測距装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光の投光及び受光を行う投受光装置、並びに光学的な測距を行う測距装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、光を対象物に照射し、当該対象物によって反射された光を検出することで、当該対象物までの距離を測定する測距装置が知られている。当該測距装置は、光を投光しかつ光を受光する投受光装置と、当該投受光装置による光の投受光結果に基づいて測距情報を生成する測距部と、を有する。例えば、特許文献1には、投光部、受光部及び距離計測手段を含む光学式レーダ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、測距装置には、測距用の光を出射する光源と、対象物によって反射された光を受光する受光素子とが設けられている。また、例えば、独立して光を受光する複数の受光セグメントを有する受光素子を用いることで、複数の領域(複数の対象物や当該対象物における複数の表面領域など)の各々に対して一括して投受光を行うことができる。
【0005】
ここで、当該複数の領域の各々に対して正確に投受光及び測距を行うことを考慮すると、例えば、当該複数の受光セグメントのうちの1の受光セグメントには、当該複数の領域のうちの当該1の受光セグメントに対応する1の領域から戻ってきた光のみが受光されることが好ましい。
【0006】
従って、例えば、1の受光セグメントに複数の領域から戻ってきた光が受光されないこと、及び1の受光セグメントに受光されるべき光が他の受光セグメントに受光されないことが好ましい。換言すれば、複数の受光セグメント間での光のクロストークが抑制されていることが好ましい。
【0007】
本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、複数の受光セグメント間の光のクロストークが抑制され、正確な投受光を行うことが可能な投受光装置及び正確な測距を行うことが可能な測距装置を提供することを目的の1つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の受光装置は、光が対象物によって反射された反射光を受光する受光面を有し、かつ受光面に沿って配列されて反射光を各々が検出する複数の受光セグメントを有する受光素子と、受光面において、複数の受光セグメントのうちの隣り合う受光セグメント間の領域に各々設けられ、反射光に対して遮光性を有する複数の第1の壁部を有する遮光壁と、複数の第1の壁部のうちの隣り合う第1の壁部の間の空間内に入射する反射光の進行方向を変化させる光学部材と、を有し、複数の第1の壁部の各々は、受光セグメント間の領域内で終端していることを特徴とする。
【0009】
また、請求項11に記載の投受光装置は、請求項1乃至10のいずれか1つに記載の受光装置と、対象物に向けて光を出射する光源と、を有することを特徴とする。
【0010】
また、請求項12に記載の測距装置は、請求項11に記載の投受光装置と、受光素子による反射光の受光結果に基づいて対象物までの距離を測定する測距部と、を有することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例1に係る測距装置の全体構成を示す図である。
【
図2】実施例1に係る測距装置における光源の光出射面を示す図である。
【
図3】実施例1に係る測距装置における投光光の構成例を示す図である。
【
図4】実施例1に係る測距装置における受光素子及び遮光壁を示す図である。
【
図5A】実施例1に係る測距装置における反射光の集光光学系への進路を示す図である。
【
図5B】実施例1に係る測距装置における集光光学系、受光素子及び遮光壁の配置例を示す図である。
【
図6】実施例1に係る測距装置における受光素子及び遮光壁の上面図である。
【
図7】実施例1に係る測距装置における受光素子及び遮光壁の断面図である。
【
図8】実施例1に係る測距装置における受光素子及び遮光壁の断面図である。
【
図9】実施例1に係る測距装置における反射光の進路を示す図である。
【
図10】実施例1の変形例1に係る測距装置における受光素子及び遮光壁の断面図である。
【
図11】実施例1の変形例2に係る測距装置における受光素子及び遮光壁の上面図である。
【
図12】実施例1の変形例2に係る測距装置における受光素子及び遮光壁の断面図である。
【
図13】実施例2に係る測距装置における受光素子及び遮光壁の上面図である。
【
図14】実施例2に係る測距装置における受光素子及び遮光壁の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の実施例について詳細に説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は、実施例1に係る測距装置10の模式的な配置図である。測距装置10は、所定の領域(以下、走査領域と称する)R0の光走査を行い、走査領域R0内に存在する対象物OBまでの距離を測定する走査型の測距装置である。
図1を用いて、測距装置10について説明する。なお、
図1には、走査領域R0及び対象物OBを模式的に示している。
【0014】
まず、測距装置10は、光(以下、1次光と称する)L1を生成及び出射する光源11を有する。本実施例においては、光源11は、1次光L1として赤外領域にピーク波長を有するレーザ光を生成し、これを断続的に出射する。
【0015】
測距装置10は、1次光L1を投光用に整形する整形光学系(又は投光光学系)12を有する。整形光学系12は、例えば、1次光L1を集光しつつその断面形状(ビーム形状)及び光路を定める少なくとも1つのレンズを含む。
【0016】
測距装置10は、1次光L1を方向可変に偏向しつつ投光光(以下、2次光L2と称する)として投光する偏向素子(第1の偏向素子)13を有する。偏向素子13は、周期的な動作を行って1次光L1の偏向方向を周期的に変化させる。偏向素子13は、1次光L1の進行方向を屈曲させつつ出射し、またその屈曲方向を周期的に変化させる。偏向素子13によって偏向された1次光L1は、2次光L2として、走査領域R0に向けて投光される。
【0017】
本実施例においては、偏向素子13は、回動軸AYの周りに回動し、1次光L1を反射させる少なくとも1つの回動ミラー13Aを有する。例えば、偏向素子13は、ポリゴンミラーを含む。本実施例においては、偏向素子13は、回動ミラー13Aが回動しつつ1次光L1を反射させることで、1次光L1の反射方向を周期的に変化させる。すなわち、本実施例においては、2次光L2は、偏向素子13の回動ミラー13Aによって反射された1次光L1である。
【0018】
なお、走査領域R0は、偏向素子13を経た1次光L1(2次光L2)が投光される仮想の3次元空間である。また、本実施例においては、光源11は、回動ミラー13Aの回動軸AYの軸方向に沿って延びるライン状の断面形状を有するレーザ光を1次光L1として出射する。
【0019】
図1には、走査領域R0の外縁を破線で模式的に示した。また、
図1には、1次光L1及び2次光L2の主光軸を実線で示し、1次光L1における回動軸AYの軸方向に沿った端部の光路を破線で示した。
【0020】
例えば、走査領域R0は、2次光L2の断面における長手方向(以下、第1の方向と称する)D1に沿った高さ方向の方向範囲と、偏向素子13による1次光L1の偏向方向の可変範囲に対応する方向(以下、第2の方向と称する)D2に沿った幅方向の方向範囲と、2次光L2が所定の強度を維持できる距離方向の範囲(すなわち奥行範囲)と、を有する錐状の空間として定義されることができる。
【0021】
また、走査領域R0内における偏向素子13から所定の距離だけ離れた仮想の平面を走査面R1としたとき、走査面R1は、第1及び第2の方向D1及びD2に沿って広がる2次元的な領域として定義されることができる。2次光L2は、この走査面R1を走査するように、走査領域R0に向けて投光される。
【0022】
また、
図1に示すように、走査領域R0に対象物OB(すなわち2次光L2に対して反射性又は散乱性を有する物体又は物質)が存在する場合、2次光L2は、対象物OBによって反射又は散乱される。対象物OBによって反射された2次光L2は、その一部が、3次光(すなわち反射光又は戻り光)L3として、2次光L2とほぼ同一の光路を2次光L2とは反対の方向に向かって進み、偏向素子13に戻って来る。
【0023】
測距装置10は、3次光L3の光路上、本実施例においては偏向素子13と投光光学系12との間の1次光L1及び3次光L3に共通の光路上に設けられ、3次光L3を偏向する偏向素子(第2の偏向素子)14を有する。例えば、偏向素子14は、1次光L1を透過させかつ3次光L3を反射させることで1次光L1及び3次光L3を分離する光分離素子であり、本実施例においてはビームスプリッタである。
【0024】
本実施例においては、偏向素子13は、動作することで1次光L1を方向可変に偏向する走査用の可動式偏向素子である。一方、偏向素子14は、1次光L1及び3次光L3を分離するための固定式偏向素子である。
【0025】
測距装置10は、偏向素子14によって偏向された3次光L3を集光する集光光学系(又は受光光学系)15を有する。集光光学系15は、例えば、少なくとも1つのレンズを含む。
【0026】
測距装置10は、集光光学系15によって集光された3次光L3の光路上に設けられ、3次光L3を受光する受光素子16を有する。例えば、受光素子16は、3次光L3を検出し、3次光L3に応じた電気信号を生成する。
【0027】
受光素子16は、当該電気信号を3次光L3の検出結果(受光結果)として生成する。すなわち、測距装置10は、受光素子16によって生成された当該電気信号を走査領域R0の走査結果として生成する。
【0028】
測距装置10は、受光素子16に入射する光を制限するように設けられた遮光壁17を有する。遮光壁17は、3次光L3、すなわち2次光L2が走査領域R0(対象物OB)に投光されたことによって生成された光以外の受光素子16への入射を抑制するように構成されている。受光素子16及び遮光壁17の詳細については、後述する。
【0029】
測距装置10は、光源11、偏向素子13及び受光素子16の駆動及びその制御を行う制御部20を有する。例えば、本実施例においては、制御部20は、光源11の駆動及びその制御を行う光源制御部21と、偏向素子13の駆動及びその制御を行う偏向素子制御部22と、を有する。
【0030】
また、制御部20は、受光素子16を駆動し、受光素子16による3次光L3の受光結果に基づいて対象物OBまでの距離を測定する測距部23を有する。本実施例においては、測距部23は、受光素子16によって生成された電気信号から3次光L3を示すパルスを検出する。また、測距部23は、2次光L2の投光タイミングと3次光L3の受光タイミングとの間の時間差に基づくタイムオブフライト法によって、対象物OB(又はその一部の表面領域)までの距離を測定する。また、測距部23は、測定した距離情報を示すデータ(測距データ)を生成する。
【0031】
また、本実施例においては、測距部23は、走査領域R0(走査面R1)を複数の測距点(走査点)に区別し、当該複数の測距点の各々の測距結果(距離値)を画素として示す走査領域R0の画像(測距画像)を生成する。本実施例においては、測距部23は、測距点と回動ミラー13Aの変位とを示す情報とを対応付け、走査領域R0の2次元マップ又は3次元マップを示す画像データを生成する。
【0032】
また、測距部23は、例えば、2次光L2の投光方向の変化周期、すなわち走査領域R0を走査する周期である走査周期を測距画像の生成周期とし、当該走査周期毎に1つの測距画像を生成する。
【0033】
なお、走査周期とは、例えば、測距装置10が走査領域R0に対する光走査を周期的に行う場合において、回動ミラー12Aの所定の変位がその後に再度当該変位に戻るまでの期間をいう。また、測距部23は、生成した複数の測距画像を時系列に沿って動画として表示する表示部(図示せず)を有していてもよい。
【0034】
図2は、光源11の光出射面11Sを模式的に示す図である。また、
図3は、走査面R1上の2次光L2の軌跡を模式的に示す図である。本実施例においては、
図2に示すように、光源11は、第1の方向D1を長手方向とするライン状又は楕円状のビーム形状を有するレーザ光を1次光L1として出射するレーザ素子11Aを有する。本実施例においては、レーザ素子11Aは、第1の方向D1を長手方向とし、第2の方向D2を短手方向とする断面形状を有するライン状のレーザ光を出射する。
【0035】
また、偏向素子13は、1次光L1を第2の方向D2に沿って可変に偏向する。従って、
図3に示すように、本実施例においては、測距装置10は、第1の方向D1に延びるライン状の2次光L2の投光方向(出射方向)を第2の方向D2に沿って変化させることで走査面R1を走査する。
【0036】
図4は、受光素子16及び遮光壁17の斜視図である。まず、本実施例においては、受光素子16は、方向DAに沿って複数の受光セグメント16Aが配列された受光面16Sを有する。本実施例においては、受光素子16は、受光面16Sに複数の受光セグメント16Aが1列に配列されている。本実施例においては、受光素子16は、ライン状の受光面16Sを有するラインセンサである。
【0037】
本実施例においては、受光セグメント16Aの各々は、互いに独立して3次光L3の受光動作を行う。また、受光セグメント16Aの各々は、少なくとも1つの光電変換素子によって光検出を行う検出素子を有する。
【0038】
次に、本実施例においては、遮光壁17は、受光素子16の受光面16Sから突出するように、受光面16S上に形成されている。例えば、遮光壁17の表面は、3次光L3に対して反射性又は散乱性を有する。本実施例においては、遮光壁17の表面は、3次光L3に対して反射性及び散乱性を有する。
【0039】
また、本実施例においては、遮光壁17は、受光素子16の受光面16Sにおける受光セグメント16Aの外縁の領域を取り囲むように形成されている。また、本実施例においては、遮光壁17は、受光素子16の受光面16S上において複数の単位格子が配列されるように格子状に形成されている。
【0040】
以下においては、受光素子16の受光面16S内における受光セグメント16Aが配列された方向を受光セグメント16Aの配列方向(又は受光面16Sの長さ方向)DAと称する場合がある。また、受光面16S内における受光セグメント16Aの配列方向DAに垂直な方向を受光セグメント16Aの側方向(又は受光面16Sの幅方向)DBと称する場合がある。本実施例においては、受光セグメント16Aの配列方向DAは第1の方向D1に対応し、側方向DBは第2の方向D2に対応する。
【0041】
図5Aは、対象物OBに照射された2次光L2のスポット形状、及び対象物OBによって反射された2次光L2である3次光L3の集光光学系15への進路を模式的に示す図である。
図5Aに示すように、2次光L2が照射される対象物OBの領域は、第1の方向D1を長手方向とするライン状の形状を有する。そして、集光光学系15には、当該対象物OBにおける2次光L2の被照射領域から、種々の入射角を有する光が3次光L3として入射することとなる。
【0042】
図5Bは、集光光学系15と受光素子16及び遮光壁17との間の配置関係を模式的に示す図である。まず、受光素子16の受光面16Sは、平面状に形成され、集光光学系15の光軸に垂直に延びるように配置されている。
【0043】
また、集光光学系15に入射した3次光L3は、その集光光学系15への入射角に応じて、複数の部分光(以下、部分3次光と称する)L3Aに分割されることができる。これら部分3次光L3Aの各々は、
図5Bに示すように、受光セグメント16Aの各々によって受光される光となる。
【0044】
例えば、複数の部分光L3Aのうち、集光光学系15の光軸に平行な方向に沿って進む部分光(すなわち3次光L3における入射角が0度の成分)L3AAは、複数の受光セグメント16Aのうちの中央部に配置された受光セグメント16AAに入射し、この受光セグメント16AAによって受光及び検出される。
【0045】
このようにして、受光セグメント16A毎に受光された部分3次光L3Aに対応する電気信号が受光セグメント16Aの各々によって生成される。そして、従って、走査領域R0における2次光L2が1度に投光される領域を、第1の方向D1に沿って、受光セグメント16Aの各々に対応する複数の部分領域に分けたとき、当該複数の部分領域に対する走査情報が一括して取得される。また、これを第2の方向D2に沿って繰り返し行うことで、走査領域R0の全体の走査情報が取得される。
【0046】
また、本実施例においては、遮光壁17は、受光面16Sから、集光光学系15に向かって、受光面16Sに垂直な方向に沿って突出している。従って、遮光壁17の壁面(側面)17Sは、受光面16Sに垂直な方向に延びている。
【0047】
また、本実施例においては、集光光学系15は、受光素子16の受光面16Sから離間した位置(焦点位置)P1に3次光L3(反射光)が集光されるように配置されている。具体的には、例えば、集光光学系15が少なくとも1つのレンズを有する場合について、当該レンズの位置を位置P0とした場合、そのレンズの焦点距離LFだけ離れた位置P1よりも当該レンズから離れた位置に受光素子16の受光面16Sが配置されている。
【0048】
本実施例においては、集光光学系15は、遮光壁17によって画定される受光面16S上の空間内に3次光L3が集光されるように配置されている。従って、
図5に示すように、3次光L3(部分3次光L3Aの各々)は、完全には集光されていない状態で受光素子16の受光セグメント16Aの各々に入射する。
【0049】
図6は、受光素子16及び遮光壁17の上面図である。
図6に示すように、受光素子16においては、受光セグメント16Aが互いに離間して配列されている。従って、受光素子16の受光面16Sには、受光セグメント16Aが形成された領域(以下、セグメント領域と称する)A0と、隣接する受光セグメント16A間の領域(以下、セグメント間領域と称する)A1と、が形成される。
【0050】
また、遮光壁17は、セグメント間領域A1に形成された第1の壁部17Aと、セグメント領域A0の全体を取り囲むように形成された第2の壁部17Bとを有する。本実施例においては、第2の壁部17Bは、他の受光セグメント16Aに隣接しない受光セグメント16Aの側面の領域に形成されている。また、本実施例においては、第1及び第2の壁部17A及び17Bは、一体的に形成されている。
【0051】
図7及び
図8の各々は、受光素子16及び遮光壁17の断面図である。
図7及び
図8は、それぞれ、
図6の7-7線及び8-8線に沿った断面図である。
図7は、受光セグメント16Aの配列方向DAに沿った受光素子16及び遮光壁17の断面図である。また、
図8は、受光セグメント16Aの側方向DBに沿った受光素子16及び遮光壁17の断面図である。
【0052】
まず、
図7及び
図8に示すように、受光素子16は、基板31と、基板31上において並置された複数の光検出素子32と、複数の光検出素子32の上面全体を覆うように基板31上に一体的に形成された透光板33と、を有する。
【0053】
光検出素子32の各々は、3次光L3に対して光電変換を行う少なくとも1つの光電変換素子を有する。本実施例においては、光検出素子32の各々は、ガイガーモードで動作する少なくとも1つのアバランシェフォトダイオードを含む。また、本実施例においては、透光板33は、平板形状を有し、3次光L3に対して透光性を有する。
【0054】
本実施例においては、
図7に示すように、1つの光検出素子32と、透光板33における当該1つの光検出素子32上の部分とは、受光素子16における1つの受光セグメント16Aを構成する。また、透光板33の上面(遮光壁17側の表面)は、受光素子16における受光面16Sを構成する。
【0055】
また、遮光壁17の第1及び第2の壁部17A及び17Bは、透光板33上に形成されている。本実施例においては、第1及び第2の壁部17Aは、透光板33に接合されている。また、遮光壁17の壁面17S(
図5参照)は、第1の壁部17Aにおけるセグメント領域A0側に設けられた第1の壁面17ASと、第2の壁部17Bにおけるセグメント領域A0側に設けられた第2の壁面18BSと、を有する。
【0056】
なお、例えば、
図6乃至
図8に示す例では、遮光壁17の第1の壁部17Aは、セグメント間領域A1の間隔(配列方向DAにおける隣接する光検出素子32間の距離)と同一又はこれよりも小さな厚さを有している。しかし、遮光壁17の厚さはこれに限定されない。例えば、遮光壁17は、セグメント間領域A1の間隔よりも大きな厚さを有していてもよい。遮光壁17は、わずかにセグメント領域A0上に形成されることとなる。
【0057】
図9は、遮光壁17に入射した3次光L3の進路を模式的に示す図である。
図9は、
図7と同様の断面図である。まず、受光面16Sにおける隣接する受光セグメント16A間の領域には、遮光壁17の第1の壁部17Aが設けられている。
【0058】
また、遮光壁17によって画定された1つの空間内に入射した3次光L3(部分3次光L3A)は、当該1つの空間に対応する1つの受光セグメント16Aに受光されるべき光である。遮光壁17は、当該空間内に入射した3次光L3が他の空間に進むことを抑制する。従って、1つの受光セグメント16Aに受光されるべき部分3次光L3Aが他の受光セグメント16Aに受光されること、すなわち受光セグメント16A間の光のクロストークが抑制される。
【0059】
また、本実施例においては、
図9に示すように、遮光壁17における第1の壁部17Aの第1の壁面17ASは、3次光L3を散乱させるように構成されている。本実施例においては、遮光壁17の壁面17Sの全てが光を散乱させるように構成されている。例えば、遮光壁17は、その壁面17Sに凹凸などの光散乱処理が施されている。
【0060】
従って、遮光壁17の壁面17Sに入射した3次光L3(部分3次光L3A)は、
図9に示すように、遮光壁17によって散乱する。また、3次光L3は、遮光壁17に入射する度に散乱される。
【0061】
これによって、3次光L3がセグメント領域A0の全体に入射しやすくなる。従って、受光セグメント16A(光検出素子32)の全体で3次光L3を受光することができる。これによって、3次光L3を確実に受光及び検出することができる。
【0062】
また、本実施例においては、受光セグメント16Aの各々は、ガイガーモードで動作する少なくとも1つのアバランシェフォトダイオードを含む光検出素子32を有する。従って、光検出素子32における部分3次光L3が入射する領域が大きいほど、正確に光検出動作(フォトンカウンティング)を行うことができる。これに対し、遮光壁17が光散乱性を有することで、受光セグメント16Aの全体に部分3次光L3を受光させることができる。従って、より正確に3次光L3を受光及び検出することができる。
【0063】
なお、本実施例においては、受光素子16が一体的に形成された透光板33を有し、遮光壁17が透光板33上に形成される場合について説明した。しかし、受光素子16及び遮光壁17の構成はこれに限定されない。
【0064】
図10は、本実施例の変形例1に係る測距装置10Aにおける受光素子16M及び遮光壁18の断面図である。
図10は、受光素子16M及び遮光壁18における
図7と同様の断面図である。測距装置10Aは、受光素子16M及び遮光壁18の構成を除いては、測距装置10と同様の構成を有する。
【0065】
測距装置10Aにおいては、受光素子16Mは、基板31及び複数の光検出素子32と、各々が光検出素子32の上面上に形成された複数の透光板34と、を有する。本変形例においては、1つの光検出素子32及び当該光検出素子32上の透光板34が受光素子16Mにおける1つの受光セグメント16Aを構成する。また、透光板34の上面の各々が受光素子16Mの受光面16Sを構成する。
【0066】
また、本変形例においては、遮光壁18は、受光素子16Mの基板31上に形成されている。具体的には、遮光壁18の第1の壁部18Aは、受光素子16Mの基板31上における隣接する光検出素子32間の領域(すなわちセグメント間領域)A1に形成されている。また、第2の壁部18Bは、基板31上における光検出素子32の最外部の領域において、光検出素子32の全体を取り囲むように形成されている。
【0067】
なお、本変形例においては、遮光壁18の第1及び第2の壁部18A及び18Bは、基板31の上面から、受光面16Sを越えて形成されており、これによって受光面16Sから突出している。
【0068】
本変形例においては、光検出素子32の側面間に遮光壁18が設けられている。従って、例えば、1の受光セグメント16Aに向けて部分3次光L3Aが透光板34に入射した後に当該部分3次光L3Aが当該1の受光セグメント16Aではない他の受光セグメント16Aに受光されることが抑制される。従って、受光セグメント16A間のクロストークの抑制効果が大きい。このように遮光壁18が設けられていてもよい。
【0069】
図11は、本実施例の変形例2に係る測距装置10Bにおける受光素子16及び遮光壁19の上面図である。また、
図12は、受光素子16及び遮光壁19の断面図である。
図12は、
図11における12-12線に沿った断面図であり、受光セグメント16Aの側方向DBにおける断面図である。測距装置10Bは、遮光壁19の構成を除いては、測距装置10と同様の構成を有する。
【0070】
測距装置10Bにおいては、遮光壁19は、第2の壁部19Aの受光セグメント16A側に設けられた第2の壁面19ASが受光面16Sに対して傾斜している点を除いては、遮光壁17と同様の構成を有する。
【0071】
本変形例においては、第2の壁部19Aの各々は、受光セグメント16A側に設けられ、受光面16Sとのなす角度が90°よりも大きい第2の壁面19ASを有する。本変形例においては、遮光壁19の第2の壁部19Aは、対向する他の第2の壁部19Aとの距離が受光面16Sから離れるに従って徐々に大きくなるように、受光面16Sに対して傾斜する第2の壁面19ASを有する。
【0072】
第2の壁部19Aがこのように構成されていることで、受光セグメント16Aに入射する部分3次光L3Aの大部分が受光セグメント16Aに入射する前に遮光壁19に入射しやすくなる。従って、部分3次光L3Aを反射及び散乱させつつ受光セグメント16Aの全体に導くことができる。従って、受光セグメント16A間の光のクロストークを抑制しつつ、受光セグメント16Aに正確に3次光L3を受光させることができる。
【0073】
なお、本実施例及びその変形例においては、遮光壁17乃至19が受光セグメント16Aの領域を取り囲むように形成されている場合について説明した。しかし、遮光壁17乃至19の構成はこれに限定されない。
【0074】
例えば、遮光壁17は、セグメント間領域A1に設けられた第1の壁部17Aを有することによって、受光セグメント16A間の光のクロストークを抑制することができる。従って、例えば、遮光壁17は、第2の壁部17Bを有していなくてもよい。すなわち、遮光壁17は、受光素子16の受光面16Sにおける隣接する他の受光セグメント16A間の領域A1から突出していればよい。
【0075】
また、本実施例においては、例えば、遮光壁17が3次光L3、すなわち対象物OBによって反射された1次光L1に対して反射性及び散乱性を有するように構成されている場合について説明した。しかし、遮光壁17の構成はこれに限定されない。例えば、遮光壁17は、1次光L1に対して吸収性を有していてもよい。例えば、遮光壁17は、1次光L1に対して遮光性を有していればよい。
【0076】
また、本実施例及びその変形例においては、受光素子16及び16Mの受光セグメント16Aが第1の方向D1に沿って1列に配列される場合について説明した。しかし、受光素子16及び16Mの構成はこれに限定されない。
【0077】
例えば、受光素子16は、複数の受光セグメント16Aが配列された受光面16Sを有していればよい。また、集光光学系15は、3次光L3を集光させつつこれらの受光セグメント16Aの各々に導くように構成されていればよい。
【0078】
換言すれば、例えば、測距装置10は、3次光L3を受光し、複数の受光セグメント16Aが配列された受光面16Sを有する受光素子16と、3次光L3を集光させつつ受光セグメント16Aの各々に導く集光光学系15と、受光素子16の受光面16S内の互いに隣接する受光セグメント16A間の領域A1から突出し、1次光L1に対して遮光性を有する遮光壁17と、を有していればよい。
【0079】
これによって、受光セグメント16A間の光のクロストークを抑制しつつ、一括で走査領域R0内の複数の領域に対する2次光L2の投受光を行うことができる。そして、これによって正確な測距動作を行うことが可能な測距装置10を提供することができる。
【0080】
なお、正確に受光動作を行うことを考慮すると、例えば、遮光壁17の壁面17Sは、1次光L1を反射又は散乱させるように構成されていることが好ましい。また、3次光L3以外の装置内の迷光などの受光を抑制することを考慮すると、遮光壁17が第2の壁部17Bを有すること、すなわち遮光壁17が受光面16Sにおける受光セグメント16Aの各々の外縁の領域を取り囲むように形成されていることが好ましい。
【0081】
また、受光面16Sから離間した位置P1に3次光L3を集光させるように集光光学系15を配置することで、受光セグメント16Aの全体に3次光L3を入射させることができる。これらの場合、例えば光検出素子32としてガイガーモードで動作するアバランシェフォトダイオードのような検出面に入射する光の面積で光検出精度が異なる受光素子16を用いる場合の効果が大きい。
【0082】
また、本実施例においては、光源11がライン状の断面形状のレーザ光を1次光L1として出射する場合について説明した。しかし、光源11の構成はこれに限定されない。例えば、光源11は、任意の断面形状の光を1次光L1として出射すればよい。すなわち、光源11は、1次光L1を出射するように構成されていればよい。
【0083】
このように、本実施例においては、測距装置10は、1次光L1を出射する光源11と、1次光L1を方向可変に偏向しつつ2次光L2として投光する偏向素子13と、2次光L2が対象物OBによって反射された3次光L3を受光し、複数の受光セグメント16Aが配列された受光面16Sを有する受光素子16と、3次光L3を集光させつつ受光セグメント16Aの各々に導く集光光学系15と、受光素子16の受光面16S内の互いに隣接する受光セグメント16A間の領域A1から突出し、1次光L1に対して遮光性を有する遮光壁17と、受光素子16による3次光L3の受光結果に基づいて対象物OBまでの距離を測定する測距部23と、を有する。
【0084】
従って、複数の受光セグメント16A間の光のクロストークが抑制され、走査領域R0に対して正確な投受光を行うことで正確な測距を行うことが可能な測距装置10を提供することができる。
【0085】
なお、本実施例においては、測距装置10が偏向素子13を有する場合について説明した。しかし、測距装置10は、偏向素子13を有していなくてもよい。すなわち、測距装置10は、所定の方向に向けて1次光L1を出射し、対象物OBによって反射された1次光L1を受光するように構成されていてもよい。この場合でも、受光素子16の受光セグメント16A間の光のクロストークを抑制することができ、正確な測距を行うことができる。すなわち、測距装置10は、光源11及び受光素子16によって1次光L1の投受光を行うように構成されていればよい。
【0086】
また、受光素子16による3次光L3の受光結果は、測距以外の用途、例えば対象物OBの検出用途などにも有効に利用することができる。従って、測距装置10は、測距部24を有していなくてもよい。この場合、例えば、測距装置10における光源11、受光素子16、集光光学系15及び遮光壁17は、投受光装置として機能する。
【0087】
このように、本実施例においては、測距装置10は、1次光L1を出射する光源11と、1次光L1が対象物OBによって反射された3次光L3を受光し、複数の受光セグメント16Aが配列された受光面16Sを有する受光素子16と、3次光L3を集光させつつ受光セグメント16Aの各々に導く集光光学系15と、受光素子16の受光面16S内の互いに隣接する受光セグメント16A間の領域A1から突出し、1次光L1に対して遮光性を有する遮光壁17と、を有する。従って、受光素子16における複数の受光セグメント16A間の光のクロストークが抑制され、正確な投受光を行うことが可能な投受光装置を提供することができる。
【実施例2】
【0088】
図13は、実施例2に係る測距装置40における受光素子16、遮光壁17及び散乱板41の上面図である。また、
図14は、受光素子16、遮光壁17及び散乱板41の断面図である。
図14は、
図13における14-14線に沿った断面図である。
【0089】
測距装置40は、遮光壁17によって画定された受光面16S上の空間の各々内に設けられ、3次光L3を散乱させる複数の散乱セグメント41Aからなる散乱板41を有する点を除いては、測距装置10と同様の構成を有する。
【0090】
本実施例においては、散乱板41の散乱セグメント41Aの各々は、平板形状を有し、遮光壁17の壁面17Sに固定されている。また、本実施例においては、散乱セグメント41Aの各々は、遮光壁17内における受光セグメント16Aへの3次光L3の光路の全体に配置されている。
【0091】
従って、
図14に示すように、3次光L3は、散乱板41によって散乱された後、受光素子16の受光セグメント16Aに受光される。従って、遮光壁17及び散乱板41によって、受光セグメント16A間の光のクロストークを抑制しつつ、受光セグメント16Aの全体に3次光L3を受光させることができる。従って、受光セグメント16Aの各々毎、及び受光素子16全体の3次光L3の受光精度が向上する。
【0092】
なお、本実施例においては、散乱板41が遮光壁17の壁面17S、すなわち遮光壁17の側壁面に形成される場合について説明した。しかし、散乱板41は、遮光壁17の端面上に形成されていてもよい。散乱板41は、遮光壁17によって画定される集光光学系15と受光セグメント16Aの各々との間の3次光L3の光路上に設けられていればよい。例えば、散乱板41は、遮光壁17によって画定される受光面16S上の空間内に設けられていればよい。
【0093】
このように、測距装置40は、遮光壁17によって画定される集光光学系15と受光セグメント16Aの各々との間の3次光L3の光路上に設けられ、3次光L3を散乱させる散乱板41を有する。従って、受光素子16における複数の受光セグメント16A間の光のクロストークが抑制され、正確な投受光を行うことが可能な投受光装置及び正確な測距を行うことが可能な測距装置40を提供することができる。
【符号の説明】
【0094】
10、10A、10B、40 測距装置
16、16M 受光素子
17、18、19 遮光壁
41 散乱板