(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】半導体装置、モジュール、カメラおよび機器
(51)【国際特許分類】
H01L 27/146 20060101AFI20241125BHJP
H04N 25/70 20230101ALI20241125BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20241125BHJP
H10K 65/00 20230101ALI20241125BHJP
H10K 59/38 20230101ALI20241125BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20241125BHJP
【FI】
H01L27/146 D
H04N25/70
G09F9/30 365
G09F9/30 349B
H10K65/00
H10K59/38
G02B5/20 101
(21)【出願番号】P 2023187535
(22)【出願日】2023-11-01
(62)【分割の表示】P 2018205557の分割
【原出願日】2018-10-31
【審査請求日】2023-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】大重 秀将
【審査官】黒田 久美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-234999(JP,A)
【文献】特開2017-016822(JP,A)
【文献】特開2018-163734(JP,A)
【文献】特開2015-170493(JP,A)
【文献】特開2015-072770(JP,A)
【文献】特開2012-178328(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/146
H04N 25/70
G09F 9/30
H10K 65/00
H10K 59/38
G02B 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板
の主面に、有機EL素子を有する有効画素が設けられた有効画素領域および前記有効画素領域の周辺に位置する周辺領域を有する半導体デバイスと、
前記基板に対する平面視において、前記有効画素領域および前記周辺領域に重なるように配置された透光板とカラーフィルタ層と、を備え、
前記基
板、前記有機EL素子、前記カラーフィルタ層、前記透光板をこの順に備え、
前記平面視において、前記有効画素領域から前記カラーフィルタ層の外縁の少なくとも一部までの第1距離が100μm以上であり
、
前記カラーフィルタ
層から前記透光板
の前記カラーフィルタ層側の面までの前記主面に垂直な方向における第2距離が0μmよりも大き
く、
前記第1距離は、前記第2距離の2倍以上であることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
基板
の主面に、有機EL素子を有する有効画素が設けられた有効画素領域および前記有効画素領域の周辺に位置する周辺領域を有する半導体デバイスと、
前記基板に対する平面視において、前記有効画素領域および前記周辺領域に重なるように配置された透光板とカラーフィルタ層と、を備え、
前記基
板、前記有機EL素子、前記カラーフィルタ層、前記透光板をこの順に備え、
前記平面視において、前記有効画素領域から前記カラーフィルタ層の外縁の少なくとも一部までの第1距離が100μm以上であり、
前記カラーフィルタ
層から前記透光板の
前記カラーフィルタ層側の面までの前記主面に垂直な方向における第2距離が0μmよりも大きく、
前記第1距離は、前記第2距離の2倍以上であり、
前記平面視において前記半導体デバイスは、前記有効画素領域に重なるように
レンズを有することを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
前記第1距離は、前記第2距離の10倍以上であることを特徴とする請求項1
または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1距離は、前記第2距離の100倍以上であることを特徴とする請求項1乃至
3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記カラーフィルタ層の外縁の少なくとも一部が、青色の光を透過するカラーフィルタであることを特徴とする請求項1乃至
4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記カラーフィルタ層の外縁の全周が、青色の光を透過するカラーフィルタであることを特徴とする請求項
5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記平面視において、前記周辺領域に重なるように配された前記カラーフィルタ層は、第1部分と、第2部分と、を有し、
前記第1部分は、第1の色の光を透過するカラーフィルタと第2の色の光を透過するカラーフィルタとを有し、前記第2部分は、第3の色の光を透過するカラーフィルタのみからなることを特徴とする請求項1乃至
6のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第1部分の幅と前記第2部分の幅は互いに異なることを特徴とする請求項
7に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第1部分の幅が、前記第2部分の幅以上であることを特徴とする請求項
7または
8に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第3の色の光を透過するカラーフィルタが、青色のカラーフィルタであることを特徴とする請求項
7乃至
9のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記第3の色の光を透過するカラーフィルタの幅は前記第1の色の光を透過するカラーフィルタの幅よりも大きく、かつ、前記第2の色の光を透過するカラーフィルタの幅よりも大きいことを特徴とする請求項
7乃至
10のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記第3の色の光を透過するカラーフィルタは前記第1の色の光を透過するカラーフィルタと同じ色の光を透過する、または、前記第3の色の光を透過するカラーフィルタは前記第2の色の光を透過するカラーフィルタと同じ色の光を透過することを特徴とする請求項
7乃至
11のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記カラーフィルタ層と前記透光板との間に設けられ、前記透光板に接触する透光部材を備えることを特徴とする請求項1乃至
12のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記透光部材は前記カラーフィルタ層と前記透光板との間に充填されることを特徴とする請求項
13に記載の半導体装置。
【請求項15】
前記半導体デバイスが、
レンズをさらに有することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項16】
前記周辺領域は周辺回路が配された周辺回路領域を含み、前記カラーフィルタ層は前記周辺回路領域の上に配されていることを特徴とする請求項1乃至
15のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項17】
前記周辺領域は、前記周辺回路領域と前記有効画素領域との間に位置し、非有効画素が設けられた領域を含み、前記カラーフィルタ層は前記非有効画素が設けられた前記領域の上に配されていることを特徴とする請求項
16に記載の半導体装置。
【請求項18】
前記透光板と前記周辺領域との間に配置され、前記透光板と前記半導体デバイスとを接合する接合部材をさらに有することを特徴とする請求項1乃至
17のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項19】
前記平面視において、前記カラーフィルタ層の外縁の少なくとも一部が、前記有効画素領域と前記接合部材との間に位置することを特徴とする請求項
18に記載の半導体装置。
【請求項20】
前記平面視において、前記カラーフィルタ層の外縁の全周が、前記有効画素領域と前記接合部材との間に位置することを特徴とする請求項
19に記載の半導体装置。
【請求項21】
前記接合部材は、樹脂からなるマトリックスと、前記マトリックスに分散した、樹脂からなるフィラーと、を含むことを特徴とする請求項
18乃至
20のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項22】
前記有機EL素子は、複数の画素電極と、前記複数の画素電極に対向する対向電極と、前記複数の画素電極と前記対向電極との間に設けられた発光層と、を有し、前記平面視において、前記カラーフィルタ層の外縁が前記対向電極に重なることを特徴とする請求項1乃至
21のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項23】
前記複数の画素電極と前記基板との間に配線構造が設けられており、前記対向電極は前記対向電極と前記配線構造との接触部を有し、前記平面視において、前記カラーフィルタ層の前記外縁は前記接触部と前記有効画素領域との間に位置することを特徴とする請求項
22に記載の半導体装置。
【請求項24】
前記基板を貫通する電極をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至
23のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項25】
請求項
18乃至
21のいずれか一項に記載の半導体装置と、
前記半導体装置に接続されたフレキシブル配線板と、を備えるモジュールであって、
前記平面視において、前記半導体装置と前記フレキシブル配線板との電気的な接続部と、前記
カラーフィルタ層の外縁の少なくとも一部と、の間に前記接合部材が位置することを特徴とするモジュール。
【請求項26】
イメージセンサーと、
電子ビューファインダーと、を備えるカメラであって、
前記電子ビューファインダーの表示装置は請求項1乃至
24のいずれか1項に記載の半導体装置を備えることを特徴とするカメラ。
【請求項27】
請求項1乃至
24のいずれか1項に記載の半導体装置を備える機器であって、
前記半導体装置を制御する制御装置を更に備えることを特徴とする機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフィルタ層を備えた半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
撮像または表示を行う半導体装置では、カラー画像を撮像または表示を行うために、カラーフィルタ層が設けられる。半導体装置を保護するために、半導体デバイスに対向する透光板が設けられる。透光板は接合部材によって半導体デバイスに接合される。カラーフィルタ層は透光板と半導体デバイスとの間に位置することになる。
【0003】
特許文献1には、基板間隔設定部を介して配された基板と半導体基板との間に。カラーフィルタが設けられた表示装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
カラーフィルタ層の配置の仕方によっては、透光板の接合信頼性が低下したり、画質(撮影品質または表示品質)が低下したりする可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段は、
基板の主面に、有機EL素子を有する有効画素が設けられた有効画素領域および前記有効画素領域の周辺に位置する周辺領域を有する半導体デバイスと、
前記基板に対する平面視において、前記有効画素領域および前記周辺領域に重なるように配置された透光板とカラーフィルタ層と、を備え、
前記基板、前記有機EL素子、前記カラーフィルタ層、前記透光板をこの順に備え、
前記平面視において、前記有効画素領域から前記カラーフィルタ層の外縁の少なくとも一部までの第1距離が100μm以上であり、
前記カラーフィルタ層から前記透光板の前記カラーフィルタ層側の面までの前記主面に垂直な方向における第2距離が0μmよりも大きく、
前記第1距離は、前記第2距離の2倍以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、透光板の接合信頼性と、画質を向上した半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】モジュールおよび半導体装置を説明する模式図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態を説明する。なお、以下の説明および図面において、複数の図面に渡って共通の構成については共通の符号を付している。そのため、複数の図面を相互に参照して共通する構成を説明し、共通の符号を付した構成については適宜説明を省略する。
【0010】
図1(a)は、半導体装置200を備えたモジュール400の断面図である。半導体装置200は、半導体デバイス100と、カラーフィルタ層70と、カラーフィルタ層70に対向して配置された透光板90と、透光板90と半導体デバイス100とを接合する接合部材80と、を備える。
図1(a)に示すように、半導体装置200は、カラーフィルタ層70と透光板90との間に設けられ、透光板90に接触する透光部材83をさらに備えることができる。なお、透光部材83を省略することもでき、代わりに、カラーフィルタ層70と透光板90との間に空隙を設けることもできる。モジュール400は、半導体装置200の外部接続端子41に接続されたフレキシブル配線板300を備える。外部接続端子41とフレキシブル配線板300との電気的な接続部は、半田やACF(異方性導電性フィルム)などの導電部材310によって構成される。モジュール400は、半導体装置200に固定された枠部材320と、枠部材320に固定され、透光板90を覆うカバー340と、をさらに備えることができる。カバー340と透光板90との間には、枠部材320で囲まれた空間330が位置する。本実施形態の半導体装置200は表示装置あるいは撮像装置であり、半導体デバイス100は表示デバイスあるいは撮像デバイスであり、モジュール400は表示モジュールあるいは撮像モジュールである。
【0011】
図1(b)は半導体装置200を半導体デバイス100の主面に対して平面視した際の平面図を示している。平面視における配置とは、半導体デバイス100の主面に対して垂直な方向(主面の法線方向)から半導体装置200を視た際の配置であり、重なっている部材については、透視可能であるものとする。半導体デバイス100の主面に対する平面視において、透光板90が半導体デバイス100およびカラーフィルタ層70に重なる。透光板90が半導体デバイス100およびカラーフィルタ層70に対向する方向(対向方向)は、半導体デバイス100の主面に対して垂直な方向(主面の法線方向)である。半導体デバイス100は、有効画素が設けられた有効画素領域11および有効画素領域11の周辺に位置する周辺領域14を有する。有効画素領域11は四辺形であり、有効画素領域11の対角長は例えば5~50mmである。周辺領域14は、周辺回路が配された周辺回路領域13を含みうる。表示装置における周辺回路は、有効画素を駆動するための駆動回路や、有効画素に入力する信号を処理する、DAC(デジタルアナログ変換回路)等の処理回路を含む。撮像装置における周辺回路は、有効画素を駆動するための駆動回路や、有効画素から出力された信号を処理する、ADC(アナログデジタル変換回路)等の処理回路を含む。周辺領域14は、周辺回路領域13と有効画素領域11との間に位置し、非有効画素が設けられた非有効画素領域12を含みうる。非有効画素とは、有効画素としては機能しない、ダミー画素や基準画素、テスト画素、モニタ画素などである。
【0012】
図1(a)に示した透光板90は、有効画素領域11および周辺領域14に対向して配置されている。接合部材80は、透光板90と半導体デバイス100の周辺領域14との間に配置されており、透光板90は接合部材80と半導体デバイス100とを接合している。
図1(a)に示したカラーフィルタ層70は、透光板90と有効画素領域11との間および透光板90と周辺領域14との間に配置されている。
図1(b)には、カラーフィルタ層70のうちの、透光板90と有効画素領域11との間に配された部分である有効画素部71を示している。
図1(b)には、カラーフィルタ層70のうちの、透光板90と非有効画素領域12との間に配された部分である非有効画素部72を示している。
図1(b)には、カラーフィルタ層70のうちの、透光板90と周辺回路領域13との間に配された部分である周辺回路部73を示している。非有効画素部72が有効画素部71と周辺回路部73との間に位置する。
【0013】
図1(b)にはカラーフィルタ層70の外縁75を示している。外縁75は四辺形であり、外縁75はその一部として、下辺部76と右辺部77とを含む。外縁75はその一部として、上辺部と左辺部とを含むが、
図1(b)において、これらの符号を省略している。周辺領域14は、その上にカラーフィルタ層70が配置されていない、非配置領域74を含んでいる。カラーフィルタ層70の外縁75は、非配置領域74の内縁に一致する。
【0014】
図1(b)から理解されるように、半導体デバイス100の主面に対する平面視において、カラーフィルタ層70の外縁75の少なくとも一部(本例では全周)が、有効画素領域11と接合部材80との間に位置している。この点について、
図1(b)に示したA-A線における断面を、
図2(a)に示した断面図で説明し、
図1(b)に示したB-B線における断面を、
図2(b)に示した断面図で説明する。半導体デバイス100は半導体基板10を含み、半導体基板10の表面と裏面のうち、トランジスタが設けられた面を主面1とする。
【0015】
下辺部76、右辺部77が有効画素領域11と接合部材80との間に位置しているため、下辺部76、右辺部77の近傍において、カラーフィルタ層70が接合部材80と半導体デバイス100との間に位置していない。当然、カラーフィルタ層70は接合部材80と透光板90との間にも位置していない。これによりカラーフィルタ層70が接合部材80と半導体デバイス100との間あるいは接合部材80と透光板90との間に位置する場合に比べて有利な効果が生じる。その効果は、接合部材80と透光板90との間の接合強度を向上でき、接合信頼性を向上できることである。
【0016】
仮に、周辺領域14にカラーフィルタ層70を全く配置しない場合、周辺領域14で光が反射したり、周辺領域14に光が入射したりするため、画質が低下しうる。そこで、有効画素領域11からある程度の範囲にはカラーフィルタ層70が設けられる。その結果、外縁75は有効画素領域11よりも外側に位置することになる。具体的には、有効画素領域11から下辺部76までの距離Daは、有効画素領域11におけるカラーフィルタ層70(有効画素部71)から透光板90までの距離Dbよりも大きい。同様に、有効画素領域11から右辺部77までの距離Dhは、有効画素領域11におけるカラーフィルタ層70(有効画素部71)から透光板90までの距離Dbよりも大きい。
【0017】
典型的なモデルとして、有効画素領域11の端から主面1に対して45度の角度をもって出射した光が、透光板90で反射し、周辺領域14に入射すると考える。周辺領域14への入射位置は、有効画素領域11の端から距離Dbの2倍の位置となる。そのため、距離Da、Dhは距離Dbの2倍以上であることが好ましい。距離Da、Dhは距離Dbの10倍以上であってもよく、100倍以上であってもよい。距離Da、Dhは、例えば100μm以上であり、例えば1000μm以下であり、例えば700μmである。距離Dbは、接合部材80の厚さTによって制御される。厚さTは、カラーフィルタ層70の厚さよりも大きくなるように設定することが好ましい。距離Dbは、接合部材80と透光板90との間の距離(本例ではゼロ)よりも大きくすることができ、距離Dbは、カラーフィルタ層70自体の厚さよりも大きくてもよい。本実施形態のように、カラーフィルタ層70を透光板90から離間させて(Db>0)、透光板90を有効画素領域11に近づけることにより、光の広がりに起因する、解像感やクロストークを低減できる。カラーフィルタ層70の厚さは例えば0.5~1.5μmである。距離Dbは、例えば1μm以上であり、例えば50μm以下であり、例えば10μm以下であり、例えば3μmである。距離Da、Dhを極端に大きくすると、半導体装置200自体の面積が大きくなってしまう。そこで、距離Daは下辺部76から半導体デバイス100の端までの距離Dcよりも小さくてもよい。同様に、距離Dhは右辺部77から半導体デバイス100の端までの距離Diよりも小さくてもよい。距離Dc、Diは例えば500μm以上であり、例えば1mm以上であってもよいが、例えば5mm以下であることが好ましい。
図2(a)の例では、距離Daが下辺部76から接合部材80までの距離Dgよりも大きいが、距離Daが下辺部76から接合部材80までの距離Dgよりも小さくすることもできる。距離Dgは、例えば500μm以上であり、例えば2000μm以下であり、例えば1000μmである。
図2(b)の例では、距離Dhが右辺部77から接合部材80までの距離Dkよりも小さいが、距離Daが右辺部77から接合部材80までの距離Dkよりも大きくすることもできる。距離Dkは、例えば500μm以上であり、例えば2000μm以下であり、例えば1000μmである。接合部材80の幅Dm,Dnについては、Dm<Dc-Dgであり、Dn≦Di-Dkである。幅Dm,Dnは例えば500μm以上であり、例えば2000μm以下であり、例えば1000μmである。距離Dc-Dg-Dmは接合部材80の外側における半導体デバイス100の幅に相当するが、下辺部76には外部接続端子41が配置されるため、距離Dc-Dg-Dmは例えば500μm以上であり、例えば5000μm以下であり、例えば1500μmである。Dn=Di-Dkのとき、接合部材80の外側面が半導体デバイス100の端と一致する。換言すれば、Di-Dk-Dn=0である。下辺部76以外の右辺部、左辺部、城辺部の近傍では、外部接続端子41が配置されないため、接合部材80の外側面、透光板90の外側面が半導体デバイス100の端と一致していてもよい。
【0018】
以上説明したように、本実施形態では、外縁75の少なくとも一部において、Dg>0とDa>Dbの両方を満たせば、この外縁75の一部分の近傍において、接合強度の向上と、画質の向上の両方が実現できる。上記では四辺形の接合部材80の下辺部76と右辺部77のそれぞれを、外縁75の一部分に当てはめたが、これに限らない。例えば、四辺形の接合部材80の1辺の中の一部(例えば中央部)で上記条件を満たし、四辺形の接合部材80の1辺の中の他の一部(例えば周辺部)で上記条件を満さない形態でも、中央部において、接合強度の向上と、画質の向上が達成できる。設計上あるいは製造上の理由で、外縁75の一部分において、上述した関係を満たさない部分があっても、本実施形態の範疇である。とはいえ、外縁75の大部分(50%以上)において、Dg>0とDa>Dbの関係を満たすことが好ましいであろう。上述した各種寸法の関係の一例をまとめると、下辺部76近傍では、Db≦T<100μm<Df≦De<Da<Dm≦Dg≦1000μm<Dc-Dg-Dm<Dcの関係を満たしうる。右辺部77近傍では、Di-Dk-Dn<Db≦T<100μm<Dh<Dn≦Dk≦1000μm<Diの関係を満たしうる。
【0019】
カラーフィルタ層70の詳細について説明する。カラーフィルタ層70の有効画素部71は、複数色のカラーフィルタがアレイ状に配されて構成される。カラーフィルタ層の色は赤色(R)、緑色(G)、青色(B)であるが、シアン、マゼンタ、イエローなどでもよい。各色のカラーフィルタの配列は、ストライプ配列、デルタ配列、ベイヤー配列などであり、本例ではベイヤー配列である。また、周辺領域14の上においてカラーフィルタ層70は、複数色のカラーフィルタがアレイ状に配された部分である、複色部を有する。周辺領域14の上においてカラーフィルタ層70は、単色のカラーフィルタが延在する部分である、単色部を有する。ここで単色部における単色のカラーフィルタの幅は、有効画素部71における単色のカラーフィルタの幅(すなわち1画素分の幅)よりも大きい。また、複色部における単色のカラーフィルタの幅よりも大きい。単色部における単色のカラーフィルタの幅は、距離Daよりも大きいことが好ましい。単色部の幅は、例えば10μm以上であり、例えば100μm以上であり、例えば、1000μm以下である。そして、複色部が単色部と有効画素部71との間に位置している。本例では、非有効画素部72が複色部であり、周辺回路部73が単色部であるが、複色部と単色部の区別は周辺領域14の構成とは無関係に配置することもできる。単色部の色は、カラーフィルタ層70に含まれる複数色のカラーフィルタのうち、可視光の吸収波長が最短のものを用いることが好ましい。赤色(R)、緑色(G)、青色(B)、シアン、マゼンタ、イエローの中では青色フィルタを単色部に用いることが好ましい。外縁75を複色部で構成することもできるが、周辺領域14で発生する迷光の色を制御する上では、外縁75を単色部で構成することが好ましい。外縁75の少なくとも一部を青色のカラーフィルタが構成することが好ましく、本例では、外縁75の全周を青色のカラーフィルタからなる単色部で構成している。
【0020】
図2(a)、(b)を用いて、半導体装置200のより詳細な構成について説明する。
図2(a)に示すように、半導体デバイス100は、半導体基板10と、配線構造40と、絶縁部材30と、を含む。半導体基板10は単結晶シリコンなどの半導体からなる。半導体素子20はトランジスタやダイオードであり、その少なくとも一部は半導体基板10の中に設けられている。配線構造40はアルミニウム層や銅層などの多層配線層と、ビアプラグやコンタクトプラグを含む。
図2(a)に示す絶縁部材30は、
図2(b)に示す複数の層間絶縁層からなる絶縁膜31やパッシベーション膜32を含む。絶縁膜31は酸化シリコン層や窒化シリコン層、炭化シリコン層などからなり、パッシベーション膜32は窒化シリコン層や酸化シリコン層などからなる。なお、酸窒化シリコンや炭窒化シリコンは、窒素とシリコンを主たる元素とすることから、窒化シリコンの一種とみなす。
【0021】
図2(a)に示すように、半導体デバイス100の有効画素領域11には機能素子50が設けられている。機能素子50は、半導体装置200が表示装置であれば表示素子である。表示素子は、ELD(エレクトロルミネッセンスディスプレイ)におけるEL素子、LCD(リキッドクリスタルディスプレイ)における液晶素子、DMD(デジタルミラーデバイス)における反射素子である。機能素子50は、半導体装置200が撮像装置であれば光電変換素子である。
図2(b)には機能素子50について、より詳細に示している。有効画素領域11には、複数の画素電極51と、複数の画素電極51に対向する対向電極52と、複数の画素電極51と対向電極52との間に設けられた機能層55と、が設けられている。絶縁部材30は、複数の画素電極51の間に配された分離部33(バンクとも称する)を含みうる。
図2(a)に示した機能素子50は、
図2(b)に示すように、画素電極51と、機能層55と、対向電極52と、を含んで構成される。有機EL素子における機能層55は有機発光層であり、EL素子において、画素電極51がアノード(陽極)、対向電極52がカソード(陰極)として機能する。光電変換素子における機能層55は光電変換層である。機能素子50の少なくとも一部が半導体基板10の中に配されてもよく、例えば機能素子50は半導体基板10の中に配されたフォトダイオードであってもよい。
【0022】
図2(b)に示すように、カラーフィルタ層70の外縁75(右辺部77)が対向電極52に重なっている。換言すると、対向電極52はカラーフィルタ層70の外縁75よりも外側(半導体基板10の端側)まで延在している。
配線構造40は、複数の画素電極51と半導体基板10の間に設けられている。配線構造40の適当な配線が、画素電極51と対向電極52にそれぞれ接続されている。対向電極52は配線構造40との接触部を有し、配線構造40は対向電極52との接触部を有し、これらをカソードコンタクト53と総称する。
図1(b)に示すように、平面視において、カラーフィルタ層70の外縁75(右辺部77)はカソードコンタクト53と有効画素領域11との間に位置する。
【0023】
図2(b)に示すように、パッシベーション膜32は機能素子50(対向電極52、機能層55、画素電極51)や、配線構造40、絶縁部材30、半導体基板10を覆っている。便宜的に、パッシベーション膜32と、半導体基板10と、パッシベーション膜32と半導体基板10との間に配された構造物と、を半導体デバイス100と呼ぶことにする。
【0024】
半導体デバイス100の上に樹脂層81を介してカラーフィルタ層70が設けられている。カラーフィルタ層70の上に設けられた樹脂層82を備える。換言すると、樹脂層81と樹脂層82との間にカラーフィルタ層70が位置する。樹脂層81は接着層として、樹脂層82は平坦化層として機能する。樹脂層82は、有効画素領域11および周辺領域14の上に配されている。カラーフィルタ層70は、樹脂層82と半導体デバイス100との間に位置する。接合部材80は樹脂層81、82と透光板90との間に配されている。つまり、接合部材80と半導体デバイス100との間には樹脂層81および樹脂層82が延在している。接合部材80は、樹脂からなるマトリックスと、マトリックに分散した、樹脂からなるフィラーと、を含みうる。フィラーの粒子径の中央値は2~50μmである。接合部材80のマトリックス樹脂が半導体デバイス100と透光板90の双方に接触する。接合部材80の他の例として、接合部材80の厚さの大半を占める基部と、基部と半導体デバイス100とを接着する接着層と、基部と透光板90とを接着する接着層と、で接合部材80を構成することもできる。透光部材83は、カラーフィルタ層70と透光板90との間に設けられており、透光板90に接触する。透光部材83は透光板90とカラーフィルタ層70との間を充填している。透光部材83は例えば樹脂からなる。透光部材83は透光板90よりも屈折率の低い材料で構成されていてもよい。
【0025】
図2(a)に示すように、半導体デバイス100は、
図1(a)に示したように半導体デバイス100に接続されたフレキシブル配線板300との電気的な接続を行うための外部接続端子41(パッドとも称する)を有している。外部接続端子41は配線構造40に含まれる配線層で構成されうる。半導体デバイス100の主面1に対する平面視において、外部接続端子41と、外縁75の一部である下辺部76と、の間に接合部材80が位置している。
【0026】
実施形態の一例である有機EL表示装置の製造方法について、
図2を用いて説明する。
図2に示すように、本実施形態による有機EL表示装置は半導体基板10を含む。半導体基板10は例えばシリコンを用いることができる。半導体基板10の表面である主面1には、トランジスタ等の半導体素子20が設けられている。半導体素子20及び半導体基板10の主面1の上には、絶縁部材30が設けられている。絶縁部材30は酸化シリコン、窒化シリコン等が用いられる。絶縁部材30には、半導体素子20に電気的に接続されたコンタクトプラグ(不図示)が配されている。コンタクトプラグにはタングステン等の導電部材が埋め込まれている。絶縁部材30の内部には、コンタクトプラグを介して半導体素子20に電気的に接続された配線構造40が設けられている。配線構造40はアルミニウム、銅などの金属部材が用いられ、絶縁層への金属拡散を抑制するために絶縁層と配線構造40との界面にTi、Ta、TiN、TaN等のバリアメタルを設けてもよい。半導体基板10の周辺回路領域13には配線構造40と同じ層で外部接続端子41や接地配線(不図示)が設けられるが、外部接続端子41上は絶縁部材30が取り除かれ、絶縁部材30の開口38から外部接続端子41が露出した状態とする。また接地配線も後述するように有機EL素子を構成する対向電極52と接続するために絶縁部材30の接地配線上が開口した状態とする。
【0027】
有効画素領域11における絶縁部材30の上には有機EL素子としての機能素子50が設けられる。機能素子50は少なくとも配線構造40とスルーホールを介して電気的に接続された画素電極51、有機発光層としての機能層55、対向電極52からなる。画素電極51は分離部33により画素毎に分離して配置され画素電極51としても機能する。画素電極51間には画素電極51と対向電極52の短絡を抑制するために絶縁層による分離部33(バンク)により画素電極51の端部を被覆する構造を採用するのが好ましい。画素電極51から正孔を注入、輸送しやすくするために正孔注入層、正孔輸送層を有機発光層と画素電極51の間に形成するのが好ましい。また対向電極52から電子を注入、輸送しやすくするために電子輸送層、電子注入層を有機発光層と対向電極52の間に形成するのが好ましい。ここでは画素電極51/正孔注入層/正孔輸送層/有機発光層/電子輸送層/電子注入層/対向電極52の積層構造とした。正孔注入層/正孔輸送層/有機発光層/電子輸送層/電子注入層が機能層55である。対向電極52は全画素共通の電極であり、周辺回路領域13まで延伸配置され前述の接地配線に接続される。配線構造40の接地配線と対向電極52の各々は、互いの接続を行うための、カソードコンタクト53と呼ばれる接触部を含む。有機発光層や対向電極52はメタルマスクを用いた蒸着やスパッタリングにより有効画素領域11の全面に形成されるが、メタルマスクと半導体基板10との間にギャップが生じるためメタルマスク開口よりも外側に回り込みが発生する。有機発光層の回り込みは0.2mm以上であるため、カソードコンタクト53の位置は少なくとも有効画素領域11の端部から0.2mm以上外側に設けることが好ましい。カソードコンタクト53の幅は例えば50μm以上であり、例えば500μm以下であり、例えば100~200μmである。
【0028】
この後、後述のカラーフィルタ層70の周辺回路部73を形成する前に、有機EL素子の画素間段差を緩和するために平坦化用の樹脂層81を形成することができる。また、有機EL素子上に水分の浸透を抑制するための封止用のパッシベーション膜32を形成することもできる。パッシベーション膜32の上に光取り出し効率を高めるためのレンズ構造を別途設けてもよい。次いで有効画素領域11における機能素子50(有機EL素子)上にカラーフィルタ層70の有効画素部71が設けられる。カラーフィルタ層70の有効画素部71は赤、緑、青色の3色のカラーフィルタからなり、例えばベイヤー配列で配置される。有効画素領域11の外側には主に周辺回路が配置される周辺回路領域13となっており、周辺回路領域13における絶縁部材30の上にはカラーフィルタ層70の周辺回路部73が設けられる。カラーフィルタ層70の周辺回路部73は、カラーフィルタ層70の有効画素部71と同様に赤、緑、青色の3色並列配置でもよいし、遮光性を高めるために3色積層構造でもよいし、いずれかの色の単色配置でも構わない。単色配置の場合、有機EL表示装置のように表示領域(有効画素領域11)外側の背景が黒となる用途においては、カラーフィルタ層70の周辺回路部73を青色にすると最も視認しづらいため好ましい。カラーフィルタ層70の周辺回路部73は、カラーフィルタ層のようなべイヤー配置である必要はなく、任意のパターンで配置することができるが、この先の工程で形成される接合部材80の形成領域には配置しない。また前述のカソードコンタクト53の近傍は凹凸が大きいため、カラーフィルタ層70はカソードコンタクト53の内側に配置し、カソードコンタクト53上には設けないのが好ましい。カソードコンタクト53と外縁75(右辺部77)との距離は、カラーフィルタ層70の厚さよりも大きいことが好ましく、距離Dbよりも大きいことが好ましいが、カソードコンタクト53の幅よりも小さくてよい。カソードコンタクト53と外縁75(右辺部77)との距離は例えば10μm以上であり、例えば100μm以下であり、例えば50μmである。カソードコンタクト53と外縁75との間の距離は、カソードコンタクト53と接合部材80との間の距離よりも小さくてもよい。カソードコンタクト53と接合部材80との間の距離は例えば200μm以上であり、例えば2000μm以下であり、例えば500~1000μmである。よって対向電極52の外端部はカラーフィルタ層70の外縁75よりも外側に配置するのが好ましい。その結果、カラーフィルタ層70の外縁75は対向電極52に重なることになる。本例では、対向電極52が接合部材80に重なっている。接合部材80は透光板90を貼り合わせた際に横方向に拡がるが、その際に拡がった接合部材80がカラーフィルタ層70に接することがないようにカラーフィルタ層70を配置しない非配置領域74を設けておく必要がある。なお本実施例では接合部材80の内側にのみカラーフィルタ層70を配置しているが、カラーフィルタ層70を接合部材80直下に配置しなければよいので、接合部材80の内側と外側それぞれにカラーフィルタ層70を配置しても構わない。
図1(b)に示すようにカラーフィルタ層70の周辺領域14に配置される幅は距離Da、Dhであらわされる。カラーフィルタ層の表面保護や平坦化の目的のため、カラーフィルタ層70の有効画素部71及びカラーフィルタ層70の周辺回路部73の上に透明な樹脂層82を形成してもよい。
【0029】
次いで半導体基板10の周辺回路領域13におけるカラーフィルタ層70の周辺回路部73や外部接続端子41を除く領域に接合部材80となる樹脂材料をディスペンスやスクリーン印刷等の手法で形成する。そして、透光板90を半導体基板10に貼り合わせた後に樹脂材料を硬化させ、接合部材80を形成する。
図1(b)に示すように半導体基板10と透光板90との間隔は硬化後の接合部材80の厚さTとなる。接合部材80はUV硬化樹脂、熱硬化樹脂、2液混合型樹脂等のエポキシ、アクリル、ウレタン、ポリイミド等の任意の樹脂を用いることができ、樹脂の中に適宜フィラーを含有するのが好ましい。フィラーを含有することで、フィラーのサイズによって半導体基板10と透光板90を貼り合わせた際の接合部材80の厚さにより、半導体基板10と透光板90の間隔(ギャップ)を制御することができるので好適である。またフィラーはガラスビーズや樹脂ビーズ等任意のフィラーを用いることができるが、半導体基板10上の絶縁層や(封止層を形成する場合)封止層が損傷しにくい樹脂ビーズを用いるのが好ましい。接合部材80はカラーフィルタ層70の無い非配置領域74に配置されるため、カラーフィルタ層70の厚さよりも接合部材80の厚さが大きくなるように設定するのが望ましい。カラーフィルタ層70の厚さは例えば0.5~1.5μm程度なので、接合部材80の厚さは2μm以上が望ましく、最大50μmもあれば十分である。
【0030】
周辺領域14の遮光性を高めるために、カラーフィルタ層70を半導体基板10の端まで形成し、カラーフィルタ層70上に接合部材80を形成して透光板90を貼り合わせることが考えられる。しかしながら、カラーフィルタ層70は顔料を含有しておりカラーフィルタ層70と下地層との密着性が低い。そのため、カラーフィルタ層70と接合部材80との界面やカラーフィルタ層70と下地層との界面で層間剥離するという問題がある。このような層間剥離は、接合部材80を形成する際の樹脂の硬化収縮や、半導体装置が高温高湿環境等に曝された際の膨張収縮によって生じうる。前述のように本実施形態では接合部材80の配置される領域にはカラーフィルタ層70を配置しておらず、半導体基板10の主面1において接合部材80は絶縁部材30と接着される。接合部材80の下にカラーフィルタ層70を設けないことで、接合部材80が硬化する際の体積収縮による接合部材80とカラーフィルタ層70との間の層間剥離を抑制することができる。また、接合部材80の下にカラーフィルタ層70を設けないことで、高温高湿環境下等に曝された場合における材料の膨張収縮による接合部材80とカラーフィルタ層70との間の層間剥離を抑制することができる。また、カラーフィルタ層70とカラーフィルタ層70の下地層との界面での層間剥離も抑制することができる。とりわけ、カラーフィルタ層70が顔料を含有している場合には、カラーフィルタ層70が染料を含有している場合に比べて、被着体との密着性が低い。そのため、カラーフィルタ層70が顔料を含有している場合には、接合部材80が硬化する際の体積収縮や、半導体装置が高温高湿環境等に曝された際に膨張収縮による層間剥離は生じやすい。よって、カラーフィルタ層70が顔料を含有している場合には、本実施形態が好適である。透光板90は透明性の高い材料であれば特に限定されないがガラス等を用いることができる。
【0031】
なお、ウエハレベルでのパッケージングを行うこともできる。例えば、半導体基板10をシリコンウエハとして用意し、シリコンウエハ上に複数のデバイスを形成し、デバイス毎にカラーフィルタ層70を形成する。そして、シリコンウエハの上に各デバイスを囲むように接合部材80を形成する。透光板90となるガラスウエハを用意し、接合部材80を介してシリコンウエハにガラスウエハを貼り合わせる。そして、シリコンウエハとガラスウエハの接合体を、デバイス毎にダイシングする。ガラスウエハのうち、外部接続端子41の上方の部分は、ダイシング後に除去すればよい。
【0032】
この後、ボンディングワイヤ、バンプ、異方性導電樹脂等の実装手段(不図示)を用いて外部接続端子41と外部電源(不図示)が接続され、本発明の有機EL表示装置が完成する。また本実施例では、半導体基板10と透光板90の間の接合部材80で区画された領域に樹脂を充填して透光部材83を配置した構造である。その場合、接合部材80をまず半導体基板10上に塗布しておき、接合部材80の内側に充填樹脂を滴下した後に透光板90を貼り合わせればよい。あるいは、真空注入法のように、接合部材80で透光板90を貼り合わせた後に、接合部材80に設けた開口部から充填樹脂を注入してもよい。半導体基板10と透光板90の間の接合部材80で区画された領域に透光部材83を設ける代わりに、気体を封入して中空にしてもよい。
【0033】
ここで、
図3を用いて有機EL表示装置におけるカラーフィルタ層70と接合部材80の厚さの関係について詳述する。
図3(a)は周辺領域14におけるカラーフィルタ層70が無い場合における、最外周画素の有機EL素子から出射した光の光線図を示している。
図3(a)に示すように有機EL素子表面から空気中に出射角θで発光した光線は空気層を通ってガラスからなる透光板90に入射角(90-θ)°で入射する。光の出射位置を基準とした透光板90の光入射面の位置を高さHとする。高さHは上述した距離Dbや厚さTに相当する。そして、大部分は透光板90内へと屈折し透過するが、一部(例えばθ=45°の場合には約4%)の光は空気/ガラス界面で反射する。反射した光は半導体基板10の周辺回路領域へと再入射するが、発光点から再入射点までの距離X=2Htan(90-θ)となり透光板90の高さHと出射角θに依存する。半導体基板10に再入射した光は周辺回路を構成する配線部で反射し、有機EL表示装置としての画質を低下する要因となる。そこで
図3(b)に示すように周辺領域14におけるカラーフィルタ層70の幅Wを発光点から再入射点までの距離X以上に設定すれば周辺回路領域における反射を抑制することができる。上述のように発光点から再入射点までの距離は出射角が小さいほど大きくなるため、周辺領域14におけるカラーフィルタ層70の幅Wは大きいほど望ましいが有機EL表示装置としてのサイズが大きくなってしまう。有機EL素子の発光強度の出射角度分布としては、半導体基板10第一主面の法線方向(
図3(a)における出射角90°)が最も強度が大きく、出射角が90°よりも小さくなるにつれて発光強度は小さくなる。出射角60°未満の発光に比べて出射角60°以上の発光のほうの比率がかなり大きいため、出射角60°以上の発光に限って反射による影響を抑制可能な幅Wを設定してもよい。出射角60°の場合X=1.1Hとなり、ほぼW>Hの関係を満たせばよいことが分かる。このように、考慮すべき出射角を適宜設定したうえでW>2Htan(90-θ)となるように周辺領域14におけるカラーフィルタ層70の幅Wを設定すればよく、有機EL素子の場合にはW>Hの関係が導かれる。H=Tとすれば、
図3(b)に記載したように、W>2Ttan(90-θ)となる。
【0034】
以上述べたように、周辺領域14におけるカラーフィルタ層70の幅を、距離Dbや接合部材80の厚さT以上に設定することで、周辺回路領域における反射を抑制し有機EL表示装置としての画質を向上することができる。また周辺領域14におけるカラーフィルタ層70を接合部材80の下に配置しないことで、接合部材80と周辺領域14におけるカラーフィルタ層70との間の層間剥離が抑制され、歩留まりや環境信頼性を向上することが可能となる。
【0035】
図4に示した実施形態は、撮像装置への適用例である。半導体基板10は例えばシリコンを用いることができる。半導体基板10の一方の表面である主面1には、トランジスタ等の半導体素子20及びフォトダイオードPDが設けられる。半導体素子20、フォトダイオード54及び半導体基板10の主面1の上には、絶縁部材30が設けられる。絶縁部材30は酸化シリコン、窒化シリコン等が用いられる。絶縁部材30には、半導体素子20に電気的に接続されたコンタクトプラグ(不図示)が配されている。コンタクトプラグにはタングステン等の導電部材が埋め込まれている。絶縁部材30の内部には、コンタクトプラグを介して半導体素子20に電気的に接続された配線構造40が設けられている。
図4に示すように有効画素領域11の外側には暗電流補正用のオプティカルブラック(OB)画素である非有効画素領域12が設けられ、非有効画素領域12には配線構造40と同層でOB遮光膜44が設けられる。非有効画素領域12の更に外側の周辺回路領域13には配線構造40と同じ層で外部接続端子41が設けられる。配線構造40、OB遮光膜44、外部接続端子41はアルミニウム、銅などの金属部材が用いられ、絶縁層への金属拡散を抑制するために絶縁層と配線構造40との界面にTi、Ta、TiN、TaN等のバリアメタルを設けてもよい。次いで有効画素領域11における絶縁部材30上にはカラーフィルタ層70の有効画素部71が設けられ、非有効画素領域12及び周辺回路領域13における絶縁部材30上にはカラーフィルタ層70の非有効画素部72、周辺回路部73が設けられる。カラーフィルタ層70の非有効画素部72、周辺回路部73については、
図2の実施形態と同様に構成され、カラーフィルタ層70はこの先の工程で形成される接合部材80の形成領域には配置しない。
図4に示すようにカラーフィルタ層70の周辺回路部73の幅はDfとする。カラーフィルタ層70の周辺回路部73の幅については後ほど詳述する。図示はしないがカラーフィルタ層の表面保護や平坦化の目的のため、カラーフィルタ層70の有効画素部71及びカラーフィルタ層70の周辺回路部73の上に透明樹脂層を別途形成してもよい。
【0036】
次いで
図2の実施形態と同様に透光板90を半導体基板10に接合部材80を介して貼り合わせる。実施形態と同様の材料、製法を用いることができる。
図4に示すように半導体基板10と透光板90との間隔は接合部材80の厚さTとなる。接合部材80の厚さについても実施形態と同様である。前述のように本発明では接合部材80が配置される領域にはカラーフィルタ層70の周辺回路部73を配置しておらず、半導体基板10の主面1において接合部材80は絶縁部材30と接着される。接合部材80の下にカラーフィルタ層70を設けないことで、接合部材80が硬化する際の体積収縮や、高温高湿環境下等に曝された場合における材料の膨張収縮による接合部材80とカラーフィルタ層70との間の層間剥離を抑制することができる。透光板90は透明性の高い材料であれば特に限定されないがガラス等を用いることができる。
【0037】
この後、半導体基板10の裏面から配線構造40まで延伸するビアを形成し、ビアの内部に銅等の導電部材を埋設した貫通電極47が設けられる。貫通電極47は半導体デバイス100に含まれる半導体基板10を貫通する電極である。さらに貫通電極47と外部電源とをボンディングワイヤ、バンプ、異方性導電樹脂等の実装手段で接続することで本発明の撮像装置が完成する。本実施形態のように貫通電極TSVにより半導体基板10の裏面側から外部電源と接続することで、撮像装置を小型化することが可能となる。
【0038】
ここで、
図5を用いて撮像装置におけるカラーフィルタ層70の周辺回路部73と接合部材80の厚さの関係について詳述する。
図5(a)はカラーフィルタ層70の周辺回路部73が無い場合の、透光板90に入射する外光の光線図を示している。
図5(a)に示すように透光板90に入射角θで発光した光線は透光板90から出射角θで出射する。ここでは高さHを厚さTで近似しているが、高さHを距離Dbで近似してもよい。出射した光は半導体デバイスのうち、出射点からH×tanθ=T×tanθだけ離れた位置に到達し、例えば周辺回路領域13に入射し配線構造40の側面等で乱反射する。乱反射した光の一部が非有効画素領域12のフォトダイオードPDに入射すると暗電流が大きくなり画質が低下する。もちろんOB遮光膜44を外側まで延伸形成することで前述の課題は解消できるが、その分、周辺回路領域13が外側に配置する必要があり装置が大型化するという問題が生じる。本発明では外光がOB画素に入射するのをカラーフィルタ層70の周辺回路部73により抑制することができ、カラーフィルタ層70の周辺回路部73の幅WをW>H×tanθ=T×tanθに設定すればよい。空気から透光板90への入射角が大きくなるに伴い、フレネル反射率が大きくなり、透光板90表面における反射量が大きくなる。空気とガラスに関していうと、入射角0~45°までは反射量が小さいが、45°を超えると次第に反射量が大きくなり透光板90を透過する光は少なくなってくる。つまり入射角45°までの外光の影響が支配的である。よって入射角45°の場合を考えると、W>H×tanθ=T×tanθ=T=Hとなり、W>T、W>Hの関係を満たせば十分であるといえる。
【0039】
以上述べたように、カラーフィルタ層70の周辺回路部73の幅を接合部材80の厚さ以上に設定することで、透光板90から入射した外光による周辺回路領域13における反射を抑制し撮像装置の画質を向上することができる。またカラーフィルタ層70の周辺回路部73を接合部材80の下に配置しないことで、接合部材80とカラーフィルタ層70の周辺回路部73との間の層間剥離が抑制され、歩留まりや環境信頼性を向上することが可能となる。ここでは撮像装置における撮像装置の外部からの入射光の影響を例示したが、前述の表示装置における表示装置の外部からの入射光でも同様のことが起こりうる。また、前述の表示装置の内部で生じる光を、撮像装置の外部からの入射光が有効画素領域11で反射することに置き換えると、
図3のモデルを撮像装置に適用することもできる。
【0040】
図6(a)は、半導体装置930を備える機器9191の模式図である。機器9191は、半導体装置930に加えて、光学系940、制御装置950、処理装置960、記憶装置970、表示装置980、および、機械装置990の少なくともいずれかを更に備える。光学系940は半導体装置930に対応付けられて、半導体装置930に結像する。制御装置950は半導体装置930を制御する。処理装置960は半導体装置930から出力された信号を処理する。記憶装置970は半導体装置930で得られた情報を記憶する。表示装置980は半導体装置930で得られた情報を表示する。機械装置990は半導体装置930で得られた情報に基づいて動作する。機械装置990は半導体装置930を機器9191の中で、あるいは機器9191ごと移動させる移動装置であってもよい。機器9191の中で半導体装置930を移動させることで防振(イメージスタビライザー)機能を実現できる。
【0041】
半導体装置930は、半導体デバイス910(半導体デバイス100に相当)と実装部材920とを含みうる。半導体デバイス910は半導体層(半導体基板10に相当)を有する。半導体デバイス910は、機能素子が配列された有効画素領域901(有効画素領域11に相当)と、周辺回路(不図示)が配列された周辺回路領域902(周辺回路領域13に相当)を含む。機器9191における半導体装置930に、上述した実施形態における半導体装置200の構成を適用することができる。周辺回路には、上述の駆動回路やAD(またはDA)変換回路、デジタル信号処理回路や制御回路などが含まれる。有効画素領域901と周辺回路領域902は、同一の半導体層に配されてもよいが、本例では、互いに積層された別々の半導体層(半導体基板10)に配されてもよい。
【0042】
実装部材920は、セラミックパッケージやプラスチックパッケージ、プリント配線板、フレキシブルケーブル、半田、ワイヤボンディングなどを含む。光学系940は、例えばレンズやシャッター、フィルタ、ミラーである。制御装置950、例えばASICなどの半導体デバイスである。処理装置960は、例えばAFE(アナログフロントエンド)あるいはDFE(デジタルフロントエンド)を構成する、例えばCPU(中央処理装置)やASIC(特定用途向け集積回路)などの半導体デバイスである。表示装置980は、例えばEL表示装置や液晶表示装置である。記憶装置970は、SRAMやDRAMなどの揮発性メモリ、あるいは、フラッシュメモリやハードディスクドライブなどの不揮発性メモリであり、例えば磁気デバイスや半導体デバイスである。機械装置MCHNはモーターやエンジン等の可動部あるいは推進部を有する。
【0043】
図6(a)に示した機器9191は、撮影機能を有する情報端末(例えばスマートフォンやウエアラブル端末)やカメラ(例えばレンズ交換式カメラ、コンパクトカメラ、ビデオカメラ、監視カメラ)などの電子機器でありうる。カメラにおける機械装置990はズーミングや合焦、シャッター動作のために光学系940の部品を駆動することができる。また、機器9191は、車両や船舶、飛行体、人工衛星などの輸送機器(移動体)でありうる。輸送機器における機械装置990は移動装置として用いられうる。輸送機器としての機器9191は、半導体装置930を輸送するものや、撮影機能により運転(操縦)の補助および/または自動化を行うものに好適である。運転(操縦)の補助および/または自動化のための処理装置960は、半導体装置930で得られた情報に基づいて移動装置としての機械装置990を操作するための処理を行うことができる。また、機器9191は、分析機器や、医療機器でありうる。
【0044】
本実施形態による半導体装置930は、その設計者、製造者、販売者、購入者および/または使用者に、高い価値を提供することができる。そのため、半導体装置930を機器9191に搭載すれば、機器9191のも高めることができる。よって、機器9191の製造、販売を行う上で、本実施形態の半導体装置930の機器9191への搭載を決定することは、半導体装置930の価値を高める上で有利である。
【0045】
図6(b)に示したカメラCMRは、イメージセンサーCISと、電子ビューファインダーEVFを備える。電子ビューファインダーEVFが、
図1(a)に示したモジュール400で構成されており、電子ビューファインダーEVFの表示装置が上述した実施形態で説明した半導体装置200である。イメージセンサーCISに結像するためのレンズLNSは交換可能であってもよい。カメラCMRはノンレフレックスカメラでありうる。
【符号の説明】
【0046】
11 有効画素領域
14 周辺領域
100 半導体デバイス
90 透光板
70 カラーフィルタ層
80 接合部材
75 外縁
76 下辺部
77 右辺部
Da、Db 距離