(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】通信方法、送電装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 50/80 20160101AFI20241125BHJP
H02J 50/10 20160101ALI20241125BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20241125BHJP
【FI】
H02J50/80
H02J50/10
H02J7/00 301D
(21)【出願番号】P 2023194421
(22)【出願日】2023-11-15
(62)【分割の表示】P 2019156801の分割
【原出願日】2019-08-29
【審査請求日】2023-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 亮輔
【審査官】三橋 竜太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-70074(JP,A)
【文献】特開2017-60335(JP,A)
【文献】特開2018-113849(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0123891(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/00-50/90
H02J 7/00-7/12
H02J 7/34-7/36
H04B 5/00-5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電装置
が行う通信方法であって、
第1の受電電力の値を示す情報を含む第1の受電電力パケットを受信する第1の受信工程と、
前記第1の受信工程の後に、第2の受電電力の値を示す情報を含む第2の受電電力パケットを受信する第2の受信工程と、
受電装置から受信する複数のControl Errorパケットが示す値に基づいて、前記第1の受電電力パケットに対して肯定応答又は否定応答を送信する第1の送信工程と、
肯定応答を送信する前記第1の送信工程の後に受信した複数のControl Errorパケットが示す値に基づいて、前記第2の受電電力パケットに対して肯定応答又は否定応答を送信する第2の送信工程と、
肯定応答を送信する前記第2の送信工程の後に、第3の受電電力の値を示す情報を含む第3の受電電力パケットを受信する第3の受信工程と、
を含むことを特徴とする通信方法。
【請求項2】
送電装置が行う通信方法であって、
第1の受電電力の値を示す情報を含む第1の受電電力パケットを受信する第1の受信工程と、
前記第1の受信工程の後に、第2の受電電力の値を示す情報を含む第2の受電電力パケットを受信する第2の受信工程と、
受電装置から受信するControl Errorパケットが示す値が所定の値である場合、前記第1の受電電力パケットに対して肯定応答を送信する第1の送信工程と、
前記第1の送信工程の後に受信したControl Errorパケットが示す値が所定の値である場合、前記第2の受電電力パケットに対して肯定応答を送信する第2の送信工程と、
前記第2の送信工程の後に、第3の受電電力の値を示す情報を含む第3の受電電力パケットを受信する第3の受信工程と、
を含むことを特徴とする通信方法。
【請求項3】
前記所定の値は、所定の閾値を超えない値であることを特徴とする請求項2に記載の通信方法。
【請求項4】
送電装置であって、
受電装置に無線で送電する送電手段と、
前記受電装置と通信する通信手段と、を有し、
前記通信手段は、
第1の受電電力の値を示す情報を含む第1の受電電力パケットを受信し、
前記第1の受電電力パケットを受信した後に、第2の受電電力の値を示す情報を含む第2の受電電力パケットを受信し、
前記受電装置から受信する複数のControl Errorパケットが示す値に基づいて、前記第1の受電電力パケットに対して肯定応答又は否定応答を送信し、
前記第1の受電電力パケットに対して肯定応答を送信した後に受信した複数のControl Errorパケットが示す値に基づいて、前記第2の受電電力パケットに対して肯定応答又は否定応答を送信し、
前記第2の受電電力パケットに対して肯定応答を送信した後に、第3の受電電力の値を示す情報を含む第3の受電電力パケットを受信することを特徴とする送電装置。
【請求項5】
送電装置であって、
受電装置に無線で送電する送電手段と、
前記受電装置と通信する通信手段と、を有し、
前記通信手段は、
第1の受電電力の値を示す情報を含む第1の受電電力パケットを受信し、
前記第1の受電電力パケットを受信した後に、第2の受電電力の値を示す情報を含む第2の受電電力パケットを受信し、
前記受電装置から受信するControl Errorパケットが示す値が所定の値である場合、前記第1の受電電力パケットに対して肯定応答を送信し、
前記第1の受電電力パケットに対して肯定応答を送信した後に受信したControl Errorパケットが示す値が所定の値である場合、前記第2の受電電力パケットに対して肯定応答を送信し、
前記第2の受電電力パケットに対して肯定応答を送信した後に、第3の受電電力の値を示す情報を含む第3の受電電力パケットを受信することを特徴とする送電装置。
【請求項6】
コンピュータに、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の通信方法を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送電装置、送電装置の制御方法及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、無線充電システム等の無線電力伝送システムの技術開発が広く行われている。特許文献1では、無線充電の標準化団体Wireless Power Consortium(WPC)が策定する規格(以下、「WPC規格」と呼ぶ)に準拠した送電装置が開示されている。また、特許文献1には、WPC規格において、送電アンテナ(コイル)近傍の送電対象でない金属片などの導電性の物体(以下、異物とする)の検出の精度を高めるために、キャリブレーション処理が規定されたことについて記載されている。
【0003】
キャリブレーション処理において、受電装置が異なる2つの状態それぞれにおいて、送電装置の送電電力とそれに対する受電装置の受電電力とが取得される。そして、この2つの送電電力と受電電力の組を用いて、実際に無線で送電されている際の受電電力又は送電電力に対してキャリブレーションするためのパラメータが算出される。このパラメータは、異物の検出処理に用いられる。つまり、例えば、送電装置により無線で送電されている際の受電電力に対して、上述したパラメータを用いてキャリブレーションされた受電電力を推定し、実際の送電装置の送電電力とその推定された受電電力との差分である電力損失を算出することができる。そして、この電力損失が所定値を超えた場合、異物による電力損失があると判定することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、送電装置における送電電力や送電―受電装置間の電力損失は常に一定であるとは限らない。例えば、送電装置の送電部はスイッチング素子(たとえばFieldEffect Transister、以後FETと呼ぶ)で構成されるスイッチング回路を使用して、直流電圧乃至電流を交流電圧乃至電流に変換する。スイッチング回路には2個のFETで構成されるハーフブリッジ回路や4つのFETで構成されるフルブリッジ回路があるが、送電部のスイッチング回路は送電電力の大きさによってこの2つの回路を切り替えて動作することが広く知られている。そして、当該動作によって送電部のスイッチング回路が消費する電力乃至送電アンテナが送電する電力が一時的に大きく変動し安定しないことがある。また、例えば送電装置上に置かれた受電装置がスマートフォンの場合、振動等により位置ずれが発生し、受電電力が安定しない状況が想定される。送電処理中の異物判定の際に、このような状況下の送電電力と受電電力を用いて算出された上記パラメータを用いると、異物を検出できなかったり、異物を誤検出してしまったりする可能性があった。
【0006】
本発明は、送電対象でない物体が存在するかの判定に用いられるパラメータの算出精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、送電装置が行う通信方法であって、第1の受電電力の値を示す情報を含む第1の受電電力パケットを受信する第1の受信工程と、前記第1の受信工程の後に、第2の受電電力の値を示す情報を含む第2の受電電力パケットを受信する第2の受信工程と、受電装置から受信する複数のControl Errorパケットが示す値に基づいて、前記第1の受電電力パケットに対して肯定応答又は否定応答を送信する第1の送信工程と、肯定応答を送信する前記第1の送信工程の後に受信した複数のControl Errorパケットが示す値に基づいて、前記第2の受電電力パケットに対して肯定応答又は否定応答を送信する第2の送信工程と、肯定応答を送信する前記第2の送信工程の後に、第3の受電電力の値を示す情報を含む第3の受電電力パケットを受信する第3の受信工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、送電対象でない物体が存在するかの判定に用いられるパラメータの算出精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る送電装置の構成例を示すブロック図。
【
図2】実施形態に係る受電装置の構成例を示すブロック図。
【
図4】実施形態に係る無線電力伝送システムの構成例を示す図。
【
図5】送電装置により実行される処理を示すフローチャート。
【
図6】送電装置により実行される処理を示すフローチャート。
【
図7】受電装置により実行される処理を示すフローチャート。
【
図8】実施形態に係る無線電力伝送システムの動作シーケンスの一例を示す図。
【
図9】実施形態に係る無線電力伝送システムの動作シーケンスの一例を示す図。
【
図10】送電装置が作成する想定受電電力グラフを示す図。
【
図11】送電装置により実行される異物検出処理を示すフローチャート。
【
図12】送電装置における送電電力計測処理の計測周期と計測期間の関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は本発明の技術的思想を説明するための一例にすぎず、本発明を実施形態で説明される構成や方法に限定することは意図されていない。
【0011】
[システムの構成]
図4に、本実施形態に係る無線電力伝送システム(非接触充電システム)の構成例を示す。本システムは、送電装置100と受電装置200を含んで構成される。以下では、送電装置をTXと呼び、受電装置をRXと呼ぶ場合がある。TX100は、自装置の充電台に載置されたRX200に対して無線で送電する電子機器である。RX200は、TX100より電力を受電し、バッテリへの充電を行う電子機器である。以下では、RX200が充電台に載置された場合を例にして説明を行う。ただし、TX100がRX200に送電するうえで、RX200はTX100の送電可能範囲(例えば
図4の破線で示す範囲)の中に存在していれば、充電台の上に載置されなくてもよい。
【0012】
また、RX200とTX100は、無線充電以外のアプリケーションを実行する機能を有しうる。RX200の一例はスマートフォンであり、TX100の一例はそのスマートフォンを充電するためのアクセサリ機器である。RX200及びTX100は、ハードディスク装置やメモリ装置などの記憶装置であってもよいし、タブレットやパーソナルコンピュータ(PC)などの情報処理装置であってもよい。また、RX200及びTX100は、例えば、撮像装置(カメラやビデオカメラ等)やスキャナ等の画像入力装置であってもよいし、プリンタやコピー機、プロジェクタ等の画像出力装置であってもよい。また、RX200は自動車等の車両であってもよいし、TX100は自動車のコンソール等に設置される充電台であってもよい。
【0013】
本システムでは、WPC規格に基づいて、無線充電のための電磁誘導方式を用いた無線電力伝送が行われる。すなわち、RX200とTX100は、RX200の受電アンテナとTX100の送電アンテナとの間で、WPC規格に基づく無線充電のための無線電力伝送を行う。なお、本システムに適用される無線電力伝送方式(非接触電力伝送方式)は、WPC規格で規定された方式に限られず、他の電磁誘導方式、磁界共鳴方式、電界共鳴方式、マイクロ波方式、レーザー等を利用した方式であってもよい。また、本実施形態では、無線電力伝送が無線充電に用いられるものとするが、無線充電以外の用途で無線電力伝送が行われてもよい。
【0014】
WPC規格では、RX200がTX100から受電する際に保証される電力の大きさが、Guaranteed Power(以下、「GP」と呼ぶ)と呼ばれる値によって規定される。GPは、例えばRX200とTX100の位置関係が変動して受電アンテナと送電アンテナとの間の送電効率が低下したとしても、RX200の負荷(例えば、充電用の回路等)への出力が保証される電力値を示す。例えばGPが5ワットの場合、受電アンテナと送電アンテナの位置関係が変動して送電効率が低下したとしても、TX100は、RX200内の負荷へ5ワットを出力することができるように制御して送電を行う。
【0015】
また、WPC規格では、TX100が、送電アンテナの近傍に送電対象ではない物体(異物)が存在することを検出する手法が規定されている。より詳細には、TX100における送電電力とRX200における受電電力の差分により異物を検出するパワーロス手法と、TX100における送電コイルの品質係数(Q値)の変化により異物を検出するQ値計測手法が規定されている。パワーロス手法による異物検出は、電力伝送中(後述のPower Transferフェーズ)に実施される。また、Q値計測手法による異物検出は、電力伝送前(後述のNegotiationフェーズまたはRenegotiationフェーズ)に実施される。
【0016】
また、本実施形態に係るRX200とTX100は、WPC規格に基づく送受電制御のための通信を行う。WPC規格では、電力伝送が実行されるPower Transferフェーズと実際の電力伝送が行われる前の1以上のフェーズとを含んだ、複数のフェーズが規定され、各フェーズにおいて必要な送受電制御のための通信が行われる。電力伝送前のフェーズは、Selectionフェーズ、Pingフェーズ、Identification and Configurationフェーズ、Negotiationフェーズ、Calibrationフェーズを含みうる。なお、以下では、Identification and ConfigurationフェーズをI&Cフェーズと呼ぶ。
【0017】
Selectionフェーズでは、TX100が、Analog Pingを間欠的に送信し、物体がTX100の充電台に載置されたこと(例えば充電台にRX200や導体片等が載置されたこと)を検出する。TX100は、Analog Pingを送信した時の送電アンテナの電圧値と電流値の少なくともいずれか一方を検出し、電圧値がある閾値を下回る場合又は電流値がある閾値を超える場合に物体が存在すると判断し、Pingフェーズに遷移する。
【0018】
Pingフェーズでは、TX100が、Analog Pingより大きい電力でDigital Pingを送信する。Digital Pingの電力は、TX100の充電台の上に載置されたRX200の制御部が起動するのに十分な電力である。RX200は、受電電圧の大きさをTX100へ通知する。このように、TX100は、そのDigital Pingを受信したRX200からの応答を受信することにより、Selectionフェーズにおいて検出された物体がRX200であることを認識する。TX100は、受電電圧値の通知を受けると、I&Cフェーズに遷移する。
【0019】
I&Cフェーズでは、TX100は、RX200を識別し、RX200から機器構成情報(能力情報)を取得する。そのため、RX200は、ID Packet及びConfiguration PacketをTX100に送信する。ID PacketにはRX200の識別情報が含まれ、Configuration Packetには、RX200の機器構成情報(能力情報)が含まれる。ID Packet及びConfiguration Packetを受信したTX100は、アクノリッジ(ACK、肯定応答)で応答する。そして、I&Cフェーズが終了する。
【0020】
Negotiationフェーズでは、RX200が要求するGPの値やTX100の送電能力等に基づいてGPの値が決定される。またTX100は、RX200からの要求に従って、Q値計測手法を用いた異物検出処理を実行する。また、WPC規格では、一旦Power Transferフェーズに移行した後、RX200の要求によって再度Negotiationフェーズと同様の処理を行う方法が規定されている。Power Transferフェーズから移行してこれらの処理を行うフェーズのことをRenegotiationフェーズと呼ぶ。
【0021】
Calibrationフェーズでは、WPC規格に基づいて、RX200が所定の受電電力値(軽負荷状態における受電電力値/高負荷状態における受電電力値)をTX100へ通知すると共にキャリブレーションの実行を要求する。TX100は、その受電電力値に対応する送電電力値を取得し、送電電力値と受電電力値に基づいて電力損失を算出し、算出した電力損失を送電電力と対応付けて記憶する。そして、TX100は、少なくとも2組の送電電力と電力損失を基に、パワーロス手法による異物検出処理のためのパラメータを算出する。このパラメータについては後述する。このように、キャリブレーション処理には、受電電力を取得し、その受電電力に対応する送電電力の取得や電力損失の算出を行い、送電電力と電力損失とを対応付けて記憶する処理が含まれる。また、キャリブレーション処理には、2つ以上の送電電力と電力損失との組から、TX100が行う異物検出処理のためのパラメータを算出する処理も含まれる。なお、電力損失は、TX100からRX200に送電した際に失われる電力である。例えば、送電電力が1ワット、受電電力が0.9ワットの場合、電力損失は0.1ワットとなる。なお、電力損失として、損失した電力値を用いず、その損失率(上記の例であれば10%)を用いるようにしても構わない。
【0022】
Power Transferフェーズでは、送電の開始、継続、及び異物検出や満充電による送電停止等のための制御が行われる。
【0023】
TX100とRX200は、これらの送受電制御のために、WPC規格に基づいて無線電力伝送と同じアンテナ(コイル)を用いて、アンテナから送信される電磁波に信号を重畳する通信を行う。なお、TX100とRX200との間で、WPC規格に基づく通信が可能な範囲は、TX100の送電可能範囲(例えば
図4の破線で示す範囲)とほぼ同様である。
【0024】
[装置構成]
続いて、本実施形態に係る送電装置100(TX100)及び受電装置200(RX200)の構成について説明する。なお、以下で説明する構成は一例に過ぎず、説明される構成の一部(場合によっては全部が)他の同様の機能を果たす他の構成と置き換えられ又は省略されてもよく、さらなる構成が説明される構成に追加されてもよい。さらに、以下の説明で示される1つのブロックが複数のブロックに分割されてもよいし、複数のブロックが1つのブロックに統合されてもよい。また、以下に示す各機能ブロックは、ソフトウェアプログラムとして機能が実施されるものとするが、本機能ブロックに含まれる一部または全部がハードウェア化されていてもよい。
【0025】
図1は、本実施形態に係るTX100の構成例を示す機能ブロック図である。TX100は、制御部101、電源部102、送電部103、通信部104、送電アンテナ105、メモリ106を有する。
図1では制御部101、電源部102、送電部103、通信部104、メモリ106は別体として記載しているが、これらの内の任意の複数の機能ブロックは、同一チップ内に実装されてもよい。
【0026】
制御部101は、例えばメモリ106に記憶されている制御プログラムを実行することにより、TX100全体を制御する。すなわち、制御部101は、
図1に示す各機能部を制御する。また、制御部101は、TX100における機器認証のための通信を含む送電制御に関する制御を行う。さらに、制御部101は、無線電力伝送以外のアプリケーションを実行するための制御を行ってもよい。制御部101は、例えばCPU(Central Processing Unit)又はMPU(MicroProcessor Unit)等の1つ以上のプロセッサを含んで構成される。なお、制御部101は、特定用途向け集積回路(ASIC:Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理に専用のハードウェアで構成されてもよい。また、制御部101は、所定の処理を実行するようにコンパイルされたFPGA(Field Programmable Gate Array)等のアレイ回路を含んで構成されてもよい。制御部101は、各種処理を実行中に記憶しておくべき情報をメモリ106に記憶させる。また、制御部101は、タイマ(不図示)を用いて時間を計測しうる。
【0027】
電源部102は、TX100全体に対して、制御部101によるTX100の制御や、送電と通信に必要な電力を供給する。電源部102は、例えば、商用電源又はバッテリである。バッテリには、商用電源から供給される電力が蓄電される。
【0028】
送電部103は、電源部102から入力される直流又は交流電力を、無線電力伝送に用いる周波数帯の交流周波数電力に変換し、その交流周波数電力を送電アンテナ105へ入力することによって、RX200に受電させるための電磁波を発生させる。例えば、送電部103は、電源部102が供給する直流電圧を、FET(Field Effect Transister)を使用したハーフブリッジ又はフルブリッジ構成のスイッチング回路で交流電圧に変換する。この場合、送電部103は、FETのON/OFFを制御するゲ-トドライバを含む。また、送電部103は、この2つのスイッチング回路を切り替えることにより送電電力を変更することができる。
【0029】
また、送電部103は、送電アンテナ105に入力する電圧(送電電圧)を調節することにより、出力させる電磁波の強度を制御する。送電電圧を大きくすると電磁波の強度が強くなり、送電電圧を小さくすると電磁波の強度が弱くなる。後述する通り、送電部103は、RX200から定期的に送信されるControl Errorパケット(以下、CEパケット)に従って、送電電圧を変更することで送電電力を制御することができる。なお、送電アンテナ105に入力する電流(送電電流)、又は送電電圧と送電電流の両方を調節することにより、出力させる電磁波の強度を制御するようにしてもよい。また、送電部103は、制御部101の指示に基づいて、送電アンテナ105からの送電が開始又は停止されるように、交流周波数電力の出力制御を行う。また、送電部103はWPC規格に対応したRX200の充電部206(
図2)に15ワット(W)の電力を出力するだけの電力を供給する能力があるものとする。
【0030】
通信部104は、RX200との間で、上述のようなWPC規格に基づく送電制御のための通信を行う。通信部104は、送電アンテナ105から出力される電磁波を変調し、RX200へ情報を伝送して、通信を行う。また、通信部104は、送電アンテナ105から出力されてRX200において変調された電磁波を復調してRX200が送信した情報を取得する。すなわち、通信部104で行う通信は、送電アンテナ105から送信される電磁波に信号が重畳されて行われる。なお、通信部104は、送電アンテナ105とは異なるアンテナを用いた他の通信方式によってRX200と通信を行ってもよい。例えば、IEEE802.11規格シリーズの無線LAN(例えばWi-Fi(登録商標))、Bluetooth(登録商標)、ZigBee、NFC(Near Field Communication)等によって行われてもよい。また、通信部104は、複数の通信を選択的に用いてRX200と通信を行ってもよい。
【0031】
メモリ106は、制御プログラムを記憶するほかに、TX100及びRX200の状態(受電電力値等)なども記憶しうる。例えば、TX100の状態は制御部101により取得され、RX200の状態はRX200の制御部201(
図2)により取得され、通信部104を介して受信されうる。
【0032】
図2は、本実施形態に係る受電装置200(RX200)の構成例を示すブロック図である。RX200は、制御部201、UI(ユーザインタフェース)部202、受電部203、通信部204、受電アンテナ205、充電部206、バッテリ207、メモリ208を有する。
【0033】
制御部201は、例えばメモリ208に記憶されている制御プログラムを実行することによりRX200全体を制御する。すなわち、制御部201は、
図2で示す各機能部を制御する。さらに、制御部201は、無線電力伝送以外のアプリケーションを実行するための制御を行ってもよい。制御部201は、例えばCPU又はMPU等の1つ以上のプロセッサを含んで構成される。なお、制御部201が実行しているOS(OperatingSystem)との協働によりRX200全体(RX200がスマートフォンである場合には当該スマートフォン全体)を制御するようにしてもよい。また、制御部201は、ASIC等の特定の処理に専用のハードウェアで構成されてもよい。また、制御部201は、所定の処理を実行するようにコンパイルされたFPGA等のアレイ回路を含んで構成されてもよい。制御部201は、各種処理を実行中に記憶しておくべき情報をメモリ208に記憶させる。また、制御部201は、タイマ(不図示)を用いて時間を計測しうる。
【0034】
UI部202は、ユーザに対する各種情報の出力を行う。ここでいう各種の出力とは、画面表示、LEDの点滅や色の変化、スピーカーによる音声出力、RX200本体の振動等の動作である。UI部202は液晶パネル、LED、スピーカー、バイブレーションモーター、その他の通知デバイスを含んで構成される。また、UI部202は、ユーザからのRX200に対する操作を受け付ける受付機能を有していてもよい。その場合、UI部202は例えば、ボタンやキーボード、マイク等の音声入力デバイス、加速度センサやジャイロセンサ等の動き検出デバイス、又はその他の入力デバイスを含んで構成される。なお、タッチパネルのように、ユーザへの情報の出力とユーザからの操作の受付とを共に可能なデバイスが用いられてもよい。
【0035】
受電部203は、受電アンテナ205において、TX100の送電アンテナ105から放射された電磁波による発生する電磁誘導により生じた交流電力(交流電圧及び交流電流)を取得する。そして、受電部203は、交流電力を直流又は所定周波数の交流電力に変換して、バッテリ207を充電するための処理を行う充電部206に電力を出力する。すなわち、受電部203は、RX200における負荷に対して電力を供給する。上述のGPは、受電部203から出力されることが保証される電力値である。受電部203は、充電部206がバッテリ207を充電するための電力を供給し、充電部206に15ワットの電力を出力するだけの電力を供給する能力があるものとする。さらに、受電部203は、現在の受電電力値を制御部201に通知することで、制御部201において、任意の時点における受電電力値を知ることができるようにする。
【0036】
充電部206は、受電部203から供給される電力により、バッテリ207に充電する。また充電部206は、制御部201の制御に基づいて、バッテリ207への充電を開始、または停止し、さらにバッテリ207への充電に使用する電力を、バッテリ207の充電状態に基づいて調整する。充電部206で使用する電力が変化すると、それに応じて受電部203から供給される電力、すなわちRX200における受電電力も変化する。ここで、充電部206は、RX200における負荷である。よって、充電部206にバッテリ207への充電を開始させる、ということは、受電部203に負荷を接続する、ということになる。同様に、充電を停止する、ということは、受電部203から負荷を切断する、ということになる。
【0037】
通信部204は、TX100が有する通信部104との間で、上述したようなWPC規格に基づく受電制御のための通信を行う。通信部204は、受電アンテナ205から入力された電磁波を復調してTX100から送信された情報を取得する。そして、通信部204は、その入力された電磁波を負荷変調することによってTX100へ送信すべき情報に関する信号を電磁波に重畳することにより、TX100との間で通信を行う。なお通信部204は、受電アンテナ205とは異なるアンテナを用いた他の通信方式を用いてTX100と通信を行ってもよい。例えば、IEEE802.11規格シリーズの無線LAN(例えばWi-Fi(登録商標))、Bluetooth(登録商標)、ZigBee、NFC等によって行われてもよい。また、通信部204は、複数の通信を選択的に用いてTX100と通信を行ってもよい。
【0038】
メモリ208は、制御プログラムを記憶するほかに、TX100及びRX200の状態なども記憶する。例えば、RX200の状態は制御部201により取得され、TX100の状態はTX100の制御部101により取得され、通信部204を介して受信されうる。
【0039】
次に、
図3を参照してTX100の制御部101の機能ブロック図を説明する。制御部101は通信処理部301、送電処理部302、異物検出処理部303、算出処理部304を有する。
【0040】
通信処理部301は、通信部104を介したWPC規格に基づいたRX200との制御通信に関する処理を行う。送電処理部302は、送電部103を制御し、RX200への送電に関する処理を行う。
【0041】
異物検出処理部303は、異物を検出する処理を行う。ここで検出される異物は、TX100の送電可能な範囲に存在する異物や、RX200が載置される載置面(接触面)に置かれている異物である。TX100からRX200に送電する際に影響を受ける位置にある異物が検出されればよく、その検出範囲を限定するものではない。異物検出処理部303は、パワーロス手法による異物検出機能と、Q値計測手法による異物検出機能を実現しうる。また異物検出処理部303は、その他の手法を用いて異物検出処理を行ってもよく、例えばNFC通信機能を備えるTX100においては、NFC規格による対向機検出機能を用いて異物検出処理を行ってもよい。
【0042】
算出処理部304は、送電部103を介してRX200に対して出力する電力を計測し、単位時間ごとに平均送電電力値を計算する。異物検出処理部303は、算出処理部304による計算結果と通信処理部301を介して受電装置から受信する受電電力情報をもとに、パワーロス手法による異物検出処理を行う。
【0043】
通信処理部301、送電処理部302、異物検出処理部303、算出処理部304は、制御部101において動作するプログラムとしてその機能が実現される。各処理部は、それぞれが独立したプログラムとして構成され、イベント処理等によりプログラム間の同期をとりながら並行して動作しうる。
【0044】
[受電装置の動作]
次に、
図7のフローチャートを用いて、本実施形態のRX200の動作について説明する。本処理は、例えばRX200の制御部201がメモリ208から読み出したプログラムを実行することによって実現されうる。
【0045】
図7は、RX200により実行される処理を示すフローチャートであり、パワーロス手法による異物検出に用いる電力損失の推定値(以下、推定電力損失と呼ぶ場合もある)をTX100に算出させるための処理手順を表す。
図7の処理は、RX200において前述のNegotiationフェーズが完了した後、バッテリ207に対する充電処理に先立って実行される。より詳細には、RX200がTX100にNegotiaionの完了を要求するパケットを送信し、TX100から肯定応答(ACKパケット)を受信した後に開始される。
【0046】
まずRX200は、基準受電電力情報として、低負荷(軽負荷)状態での受電電力値を算出する(S701)。なおここで低負荷状態とは、受電部203を負荷に接続しない状態、すなわち受電電力を最小とした状態であり、受電部203に出力される電力が500mW程度となる状態とする。そして、RX200は、WPC規格におけるReceived Powerパケット(以下、RPパケット)を用いて、TX100に対してキャリブレーションの実行を要求する(S702)。RPパケットには、基準電力情報として算出した低負荷状態での受電電力値と、1点目のキャリブレーションを行うことを示す情報である、Mode=1という情報が含まれる。
【0047】
なお、不図示であるが、RX200はNegotiationフェーズの完了後、TX100の送電電圧(送電電力)を制御するため、定期的にCEパケットを送信する。例えば、CEパケットにより、+1ボルト、-2ボルト、0(電圧維持)等の指示がなされる。キャリブレーションを行う場合は、受電電力が一定の値(例えば500mW)を保つべく、送電電力の微調整を要求するためにCEパケットが使用される。
【0048】
RX200はTX100からキャリブレーション要求に対するNAKパケットを受信すると(S703でNo)、最初にS702でRPパケットを送信してからの時間を計算し、タイムアウトしているかを確認する(S704)。タイムアウトした場合(S704でYes)、RX200はユーザにエラーが発生したことを通知し(S705)、充電処理を終了する。また、タイムアウトしていなければ(S704でNo)、RX200は再度受電電力値の算出と(S701)、RPパケットの送信(S702)を実施する。
【0049】
TX100からキャリブレーション要求に対するACKパケットを受信すると(S703でYes)、RX200は、高負荷状態での受電電力値を算出するため、CEパケットによりTX100に対して送電電圧を上げるように指示する(S706)。なお、ここでいう高負荷状態とは、受電部203に負荷に接続して受電電力を最大とした状態であり、ここでは、受電部203に出力される電力がWPC規格の範囲でおおよそ最大の電力である15W程度とする。なお、受電電力を最大とするときは、RX200が負荷に供給できる最大の電力、載置から充電完了までの期間に負荷で必要となると予想される最大の電力、またはGPに基づく電力のいずれかとする。RX200は受電部203に出力される電力を計測し、15W程度の出力になるように調整するため、CEパケットを複数回送信してもよい。TX100は、このCEパケットを受信すると、スイッチング回路を切り替えることにより、大きな電力を送電できるようにする。
【0050】
CEパケット送信後、受電電力がおおよそ15W程度まで上昇したことを確認したら、RX200は低負荷状態のときと同様に、基準受電電力情報としての受電電力値の算出(S707)とRPパケットを用いたキャリブレーションの要求を行う(S708)。ここで送信されるRPパケットには、高負荷状態での受電電力値の他に、2点目のキャリブレーションを行うことを示す情報である、Mode=2という情報が含まれる。
【0051】
RX200はTX100から2点目のキャリブレーション要求に対するNAKパケットを受信すると(S709でNo)、S708でRPパケットを送信してからの時間を計算し、タイムアウトしているかを確認する(S710)。タイムアウトした場合(S710でYes)、RX200はユーザにエラーが発生したことを通知し(S711)、充電処理を終了する。また、タイムアウトしていなければ(S710でNo)、RX200は再度受電電力値の算出と(S707)、RPパケットの送信(S708)を実施する。
【0052】
RX200は2点目のキャリブレーション要求に対するACKパケットをTX100から受信すると(S709でYes)、バッテリ207に対する充電処理を開始する(S712)。なお、2点目のキャリブレーションが完了した後、RX200はRPパケットにより自身の受電電力値を定期的にTX100に通知する。このように、キャリブレーションの実行を要求しない場合に送信されるRPパケットには、Mode=0という情報が含まれる。後述するように、TX100は、RX200から受信したMode=0のRPパケットに含まれる受電電力値を用いて、パワーロス手法による異物の検出を行う。
【0053】
[送電装置の動作]
次に、
図5、6のフローチャートを用いて、本実施形態のTX100の動作について説明する。本処理は、例えばTX100の制御部101がメモリ106から読み出したプログラムを実行することによって実現されうる。
【0054】
図5は、制御部101で動作する算出処理部304の処理動作を示すフローチャートであり、TX100がRX200に対して送電する際の送電電力を算出し、記憶する処理手順を表す。
図6は、制御部101で動作する各処理部の処理動作を示すフローチャートであり、TX100においてパワーロス手法による異物検知処理で用いる推定電力損失を算出する処理手順を表す。
図5、
図6の処理は、TX100において前述のNegotiationフェーズが完了した際にそれぞれ実行される。より詳細には、TX100がRX200よりNegotiaionの完了を要求するパケットを受信し、RX200に対して肯定応答(ACKパケット)を送信した後に開始される。また、
図5、
図6の処理はそれぞれが独立して並行動作する。
【0055】
まず、
図5の送電電力の計測・記憶処理について詳述する。
【0056】
S502~S508の処理は、TX100においてNegotiationフェーズ完了後、RX200に対する送電処理が完了する(S501でYes)まで継続的に実施される。より具体的には、通信処理部301がRX200からEnd Power Transferパケット(以下「EPTパケット」とする)を受信したり、温度上昇等の環境異常によって送電処理が継続できなくなったりするまで繰り返し実行される。
【0057】
TX100の算出処理部304は、計測周期T1ごと(S502でYes)に計測期間T2の間(S504でNo)、送電電力値を計測する(S503)。ここで、計測周期T1と計測期間T2の関係について
図12を用いて説明する。
【0058】
図12に示す図は、横軸に時間、縦軸にTX100の送電電力を取ったものであり、曲線1210が実際の送電電力の計測値を示している。図下方の直線は、算出処理部304における送電電力値の計測期間T2(S503を実行している期間)を表す。
【0059】
1220は1回目の計測を開始する時間(S502でYesに移行するタイミング)を表し、1221は1回目の計測を終了する時間(S504でYesに移行するタイミング)を表している。1230は2回目の計測を開始する時間を表し、1231は2回目の計測を終了する時間を表している。ここで、1220から1221まで、および1230から1231までの時間間隔が計測期間T2であり、1220から1230までの時間間隔が計測周期T1である。
図12で示すように、T1<T2の関係となるよう計測周期T1と計測期間T2を設定することで、算出処理部304はタイミングをずらしながら送信電力の計測処理を複数並行して実行する。本実施形態ではT1=3msec、T2=8msecとする。なお、T1≧T2の関係となるように設定してもよい。このように、TX100は送信電力値を定期的に計測している。これにより、後述するようにRX200からどのタイミングで受電電力値が通知されても、その受電電力値に対応する送電電力値を導出することができる。
【0060】
図5の説明に戻る。算出処理部304は計測期間T2が経過すると(S504でYes)、T2内に計測した複数の送電電力値の平均値と、送電電力値のばらつきの度合いを示す情報として標準偏差を算出する(S505)。そして、算出処理部304は、算出した送電電力値の平均値(以下、平均送電電力値と呼ぶ場合もある)と標準偏差とを対応付け、送電電力データとしてメモリ106に記憶する(S506)。なお、ここでは送電電力値のばらつきの度合いを示す情報として標準偏差を用いる場合について説明したが、例えば、分散や、最大値と最小値の差分値を、ばらつきの度合いを示す情報として用いても良い。また算出処理部304は、S505で算出した送電電力データを計測時間順に複数メモリ106に記憶する。記憶するデータはリングバッファとして管理され、バッファの最大記憶数を超える場合には古いデータから順に上書きして記憶する。
【0061】
算出処理部304は、RX200から送信されたCEパケットにより、事前に定めた閾値以上の送電電圧変更を要求されたか否かを判定する(S507)。ここで、閾値以上の送電電圧変更を要求されるのはいくつかのケースがあり、例えばS706でRX200からCEパケットが送信された場合が挙げられる。この場合、1点目のキャリブレーション(推定電力損失の算出)は完了したということであり、送電電圧変更前の送電電力値は不要となるため、S506で記憶した送電電力データを消去する(S508)。別のケースとして、1点目のキャリブレーションを実行中に、RX200の位置ずれ等の影響により受電電力が安定せず、RX200から定期的に送信されるCEパケットで指定される電圧の変更量が大きくなる場合も考えられる。これは、2点目のキャリブレーションを実行中にも起こりうる、このような場合、送電電力の計測のやり直しが必要となり、これまでの計測結果は不要となるため、S508において記憶済みの送電電力データが消去される。
【0062】
S507で閾値以上の送電電圧変更を要求されていない場合、又はS508でメモリ106に記憶された送電電力データを削除した場合、S501の処理に戻る。また算出処理部304は、RX200に対する送電処理が完了した際(S501でYes)にも同様に、S506でメモリ106に記憶した送電電力データを消去する(S509)。S508、S509でデータ消去を行うことで、メモリ106に記憶されるデータの量を抑制することが可能となり、メモリ106の容量が小さいハードウェア構成においても、本実施形態の処理を実施することが可能となる。
【0063】
このように、本実施形態におけるTX100は定常的に送電電力の計測・算出処理を行う。これにより、後述する
図6や
図11の処理においてRX200から受電電力値を取得した際に、当該受電電力値に対応する送電電力値を特定することが可能となる。
【0064】
次に、
図6の推定電力損失の算出処理について詳述する。
【0065】
S602~S620の処理は、TX100においてNegotiationフェーズ完了後、RX200に対する送電処理が完了する(S601でYES)まで継続的に実施される。
【0066】
当該処理において、TX100の通信処理部301は、
図7のS702またはS708でRX200から送信される基準受電電力情報としてのRPパケット(Mode=1or2)と、送電電圧変更指示としてのCEパケットの受信を待ち受ける。
【0067】
通信処理部301がRPパケットを受信した場合、すなわちキャリブレーション要求を受信した場合(S602でYes)、異物検出処理部303は送電部103のスイッチング回路が最後に切り替えられてからの時間を確認する(S603)。スイッチング回路が切り替えられてから所定の時間が経過していない場合(S603でYes)、TX100は送電出力が安定していないと判断し、通信処理部301がRX200に対してNAKパケットを送信する(S616)。
【0068】
スイッチング回路が切り替えられてから所定の時間が経過している場合(S603でNo)、異物検出処理部303は直近でRX200から受信したCEパケットで要求された電圧の変化量を確認する(S604)。当該変化量が事前に定めた閾値以上の場合(S604でYes)、TX100はRX200における受電電力が安定していないと判断し、通信処理部301がRX200に対してNAKパケットを送信する(S616)。当該変化量が事前に定めた閾値未満の場合(S604でNo)、TX100はRX200における受電電力が安定していると判断する。なお、S604で確認する値は、直近で受信した複数のCEパケットで指定された値をもとに判定してもよい。たとえば、TX100は、複数のCEパケットで指定された変化量の合計が閾値以上の場合にRX200における受電電力が安定している、閾値未満の場合に安定していないと判断するようにしてもよい。また、TX100は、直近複数回で受信したCEパケットの指定値(電圧変化量)が1回も閾値を超えていない場合にRX200における受電電力が安定している、1回でも閾値を超えた場合は安定していないと判断するようにしてもよい。
【0069】
RX200における受電電力が安定していると判断した場合(S604でNo)、異物検出処理部303は算出処理部304がS506で記憶した送電電力データ(送電電力値の平均値と標準偏差)のうち、電力損失算出に用いるデータを決定する(S605)。具体的には、RPパケットを受信した時点からT3時間遡った時間と、算出完了時間がもっとも近い送電電力データを採用する。ここでT3とは、RX200において受電電力の算出を完了してから、その値がRPパケットでTX100に通知されるまでの時間を見積もった値である。本実施形態ではT3=8msecとする。
【0070】
S605で決定した送電電力データに含まれる送電電力値の標準偏差が閾値以上の場合(S606でYes)、TX100は送電電力が安定していないと判断し、通信処理部301がRX200に対してNAKパケットを送信する(S616)。S605で決定した送電電力データに含まれる標準偏差が閾値未満の場合(S606でNo)、異物検出処理部303はS605で採用した平均送電電力値と、当該データの算出前に算出したn個の平均送電電力値の標準偏差を算出する(S607)。なお、ここでnは事前に定められた1以上の整数値で、前述した送電電力データを記憶するリングバッファのバッファ数以下の値をとる。本実施形態ではn=5とする。
【0071】
S607で算出した標準偏差が閾値以上の場合(S608でYes)、TX100は送電電力が安定していないと判断し、通信処理部301がRX200に対してNAKパケットを送信する(S616)。またS607で算出した標準偏差が閾値未満の場合(S608でNo)、TX100は送電電力が安定していると判断する。なお、S607、S608で算出、確認する値は標準偏差でなくてもよい。例えば、TX100は、分散や、最大値と最小値の差分値、毎回の算出値の変化量の合計を算出し、それぞれの値が閾値以上なら送電電力が安定していない、閾値未満なら安定していると判断してもよい。また、S605で採用した送電電力データの平均送電電力値と当該データの算出前に算出したn個の送電電力データの平均送電電力値が、閾値を一度も超えていない場合に送電電力が安定している、一度でも超えた場合は安定していないと判断しても良い。
【0072】
TX100は送電電力が安定していると判断した場合(S608でNo)、異物検出処理部303はTX100とRX200との間で失われる電力損失を算出する(S609)。具体的には、S605で採用した送電電力データに含まれる平均送電電力値から、S602で受信したRPパケットに含まれる受電電力値を引いた値を電力損失とする。続いて異物検出処理部303は、算出した電力損失をS605で採用した平均送電電力値と対応付けてメモリ106に記憶する(S610)。
【0073】
ここで、TX100は電力損失がm回分以上記憶されているか否かを判定する。m回分以上記憶されていない場合(S611でNo)、TX100はRX200との間の送電状態が安定していない可能性があるため、通信処理部301がRX200に対してNAKパケットを送信する(S616)。ここで、mは事前に定められた2以上の整数値であり、本実施形態ではm=3とする。
【0074】
電力損失がm回以上記憶されている場合(S611でYes)、異物検出処理部303は直近m回で算出した電力損失の標準偏差を算出する(S612)。S606~S608の処理により、TX100での送電電力は安定しているため、電力損失の標準偏差が大きい場合とは、RX200における受電電力にばらつきがある場合である。これは、RX200自身の問題により発生する場合と、TX100とRX200間の送電状態(送電環境)に何らかの変化が生じたことに起因して発生する場合とが考えられる。標準偏差が閾値以上の場合(S612でYes)、RX200による受電電力またはTX100はRX200との間の送電状態が安定していないと判断し、通信処理部301がRX200に対してNAKパケットを送信する(S616)。
【0075】
標準偏差が閾値未満の場合(S612でNo)、TX100はRX200との間の送電状態が安定したと判断し、異物検出処理部303はメモリ106に推定電力損失を記憶する(S613)。より詳細には、メモリ106に記憶された直近m回分の平均送電電力値(Avtp)と電力損失(Avloss)のそれぞれの平均値を算出し、送電電力がAvtpである時の推定電力損失がAvlossであるとして記憶する。
【0076】
なお、S612で算出・確認する値は標準偏差でなくてもよい。例えば、TX100は、分散や、最大値と最小値の差分値、毎回の算出値の変化量の合計を算出し、それぞれの値が閾値以上ならRX200との間の送電状態が安定していない、閾値未満なら安定していると判断してもよい。またTX100は、直近m回で算出した電力損失が閾値を一度も超えていない場合にRX200との間の送電状態が安定している、一度でも超えた場合は安定していないと判断しても良い。また、S612では、算出された電力損失の標準偏差等に基づいて送電状態が安定しているかを判定する場合について説明したが、取得した受電電力の標準偏差等に基づいて判定するようにしてもよい。
【0077】
その後、通信処理部301がRX200に対してACKパケットを送信する(S614)。また、異物検出処理部303は、S610でメモリ106に記憶した電力損失と平均送電電力値の情報は不要となるためクリアし(S615)、S601に戻る。
【0078】
通信処理部301がCEパケットを受信すると(S617でYes)、送電処理部302はCEパケットで指示された値に従って、送電部103にかける電圧を変更する(S618)。CEパケットで指示された電圧の変化量が事前に定めた閾値以上の場合(S619でYes)、RX200での受電電力が安定せず、キャリブレーションを再度行う必要がある。そこで、異物検出処理部303は、S610でメモリ106に記憶した電力損失と平均送電電力値の情報をクリアする(S620)。
【0079】
TX100からRX200に対する送電処理が完了すると(S601でYes)、異物検出処理部303は、S610でメモリ106に記憶した電力損失と平均送電電力値の情報とS613で記憶した推定電力損失情報をクリアする(S621)。
【0080】
このように、本実施形態におけるTX100は、RX200からキャリブレーション要求を受信した場合に、推定電力損失を安定して計測できる状況かを確認する。具体的には、TX100における送電電力が安定しているか、RX200における受電電力が安定しているか、等を確認する。そして、TX100は、安定して計測できる状況でないときにはNAKを応答し、安定して計測できる状態になってから推定電力損失を記憶し、ACKを応答する。したがって、推定電力損失の算出を精度良く行うことができ、異物の検出精度を向上させることが可能となる。
【0081】
次に、
図10および
図11を用いて、本実施形態のTX100におけるパワーロス手法による異物検出処理の動作について説明する。
【0082】
図10はTX100が作成する想定受電電力グラフ1000を表すグラフである。想定受電電力グラフ1000は、異物が載置されていない状態でTX100からRX200に対して送電したときの送電電力(横軸)に対して想定される受電電力(縦軸)をグラフ化したものである。このグラフは、上述した
図6のS613でメモリ106に記憶された送電電力値Av
tpと推定電力損失Av
lossとに基づいて算出処理部304により生成される。
【0083】
1010および1020は、それぞれS613で記憶した送電出力Avtpと推定電力損失Avlossを元にプロットしたもので、横軸の値がAvtp、縦軸の値がAvtp-Avlossである。すなわち、1010は上述した低負荷状態でのキャリブレーション結果に基づいてプロットされ、1020は高負荷状態でのキャリブレーション結果に基づいてプロットされる。算出処理部304はS613でプロットされた計測点間を線形補間し、特定のAvtp値に対してAvrp値が求まる計算式(グラフ)を作成する。本実施形態においては、このググラフで表される一次関数における傾きと切片は、上述した異物検出処理のためのパラメータに相当する。
【0084】
算出処理部304は継続的に自身の送電電力(1030)を計測し、対応する想定受電電力値(1040)を算出する。RX200から通知される受電電力値と想定受電電力値との差が所定の閾値以上である場合に、TX100は異物が送電アンテナ105の近傍(送電範囲)に存在すると判断する。
【0085】
なお、当該グラフを作成する方法は、上記の計測点間を線形補間する方法に限定されず、1つのAvtp値に対して1つのAvrp値が求まるグラフが導き出されればよい。例えば、上記2点以外にもキャリブレーションを行い、3点以上の計測点間を線形補間することでグラフを作成してもよい。また、計測点が3点以上存在する場合には、近似曲線を用いてグラフを作成してもよい。
【0086】
図11はTX100において想定受電電力グラフ1000を用いた異物検出処理を行う際のフローチャートである。
図11の処理は、
図6の処理を行った後、TX100がPower Transferフェーズにいる間、継続的に実行される。本処理は、例えばTX100の制御部101がメモリ106から読み出したプログラムを実行することによって実現されうる。
【0087】
TX100の算出処理部304は、想定受電電力グラフ1000に従って、自身の送電電力に対するRX200における想定受電電力値を継続的に算出する(S1101)。
【0088】
上述したとおり、RX200は、2点目のキャリブレーションが完了した後、RPパケット(Mode=0)により自身の受電電力値を定期的にTX100に通知する。通信処理部301がRX200から当該RPパケットを受信すると(S1102でYes)、算出処理部304はS1101で求めた想定受電電力値とRPパケットで受信した受電電力値の差を算出する(S1103)。
【0089】
S1103で求めた差が閾値以上の場合(S1104でYes)、TX100は異物を検出したものと判定し、RX200に対する送電処理を停止し、Selectionフェーズに遷移する(S1105)。またS1103で求めた差が閾値未満の場合(S1104でNo)、TX100はPower Transferフェーズにとどまり、送電処理を継続する。なお、S1104で判定に用いる閾値は、1つの固定値でも良いし、送電電力値や温度等の動的に変化する測定値に応じて決定される値を用いてもよい。
【0090】
また、S1101では、自身の送電電力に対するRX200における想定受電電力値を継続的に算出するものとして説明したが、S1102にてMode=0のRPパケットを受信した際に、対応する送電電力を求めるようにしてもよい。具体的には、
図6のS605と同様に、RPパケットを受信した時点からT3時間遡った時間と、算出完了時間がもっとも近い送電電力値を採用すればよい。
【0091】
[無線電力伝送システムのシーケンス]
続いて、
図8および
図9を参照して、TX100とRX200を含む無線電力伝送システムのシーケンスについて説明する。
図8および
図9は、RX200においてWPCによる充電機能を実行する設定を行ったうえでTX100にRX200を載置した際の、TX100とRX200間のキャリブレーションが完了するまでの通信シーケンスの一例を示すものである。
【0092】
図8は、TX100における推定電力損失の算出処理が、安定した状況下で実施できた場合の通信シーケンスの一例を示すものである。
【0093】
まずTX100とRX200は、WPC規格に従い、SelectionフェーズからNegotiationフェーズまでの処理を行う(S801)。
【0094】
Negotiationフェーズが終了すると、TX100の算出処理部304は、
図5を用いて説明した送電電力の計測・算出処理を開始する(S802)。その後、TX100はPower Transferフェーズが終了するまで継続的に送電電力の計測・算出処理を行う。
【0095】
RX200は、1点目のキャリブレーション要求として、軽負荷状態での受電電力値(500mW程度)を指定したRPパケット(Mode=1)をTX100に送信する(S803)。TX100は当該RPパケットに含まれる受電電力値に対応する送電電力データを特定する。そして、TX100は、当該送電電力データに含まれる平均送電電力値と、当該RPパケットに含まれる受電電力値との差分から電力損失を算出し、1回目の算出結果として記憶し(S804)、RX200に対してNAKパケットを送信する(S805)。
【0096】
NAKパケットを受信したRX200は、再度受電電力値を計測し、RPパケット(Mode=1)をTX100に送信する(S806)。RPパケットを受信したTX100は同様に電力損失の計算を行い、2回目の算出結果として記憶し(S807)、RX200に対してNAKパケットを送信する(S808)。続いて、RX200が再度RPパケットをTX100に送信すると(S809)、TX100は電力損失を算出し(S810)、1回目~3回目の算出結果の平均から、500mW送電時の推定電力損失を算出し、記録する(S811)。続いてTX100はACKパケットをRX200に送信し、1点目のキャリブレーション要求に対して推定電力損失の算出に成功したことを通知する(S812)。
【0097】
ACKパケットを受信したRX200は、高負荷状態(受電電力が15W程度)での推定電力損失算出を行うために、TX100にCEパケットを送信することで送電電圧を上げるよう指示する(S813)。
【0098】
CEパケットを受信したTX100は、指示された変更量分、送電電圧を上げるように送電部103を制御する(S814)。このとき、送電部103はFETのON/OFFを制御し、ハーフブリッジ構成からフルブリッジ構成の回路に切り替わるものとする。TX100は送電部103の回路切り替えからの経過時間を計測するタイマを起動する(S815)。
【0099】
その後、2点目のキャリブレーション要求として、RX200は高負荷状態での受電電力値(15W程度)を指定したRPパケット(Mode=2)をTX100に送信する(S816)。
【0100】
TX100が当該RPパケットを受信した時点では、S815で起動したタイマが満了し、送電部103の回路切り替えから所定時間が経過しているものとする。よって、TX100は、送電が安定していると判断し、電力損失を算出し、算出結果を高負荷状態における1回目の算出結果として記憶する(S817)。そして、TX100はRX200に対してNAKパケットを送信する(S818)。その後、S806~S810と同様の方法で2回目および3回目の電力損失が算出、記録される(S819~S823)。
【0101】
TX100は1回目~3回目の算出結果の平均から、15W送電時の推定電力損失を算出、記録する(S824)。続いて、TX100は2点目のキャリブレーション要求に対して推定電力損失の算出に成功したことを通知するACKパケットをRX200に送信する(S825)。
【0102】
図9は、TX100における推定電力損失の算出処理が、安定していない状況下で実施された場合の通信シーケンスの一例を示すものである。
図9では安定していない状況として、TX100の送電部103において回路切り替えが行われた直後にRX200からRPパケットが送信された場合を想定した通信シーケンスの一例を示す。
【0103】
S901~S915の処理は
図8で説明したS801~S815と同一であるため説明を省略する。
【0104】
RX200は、S913でCEパケットを送信した直後に、高負荷状態での受電電力値(15W程度)を指定したRPパケット(Mode=2)をTX100に送信する(S916)。この時、TX100は送電部103の回路切り替えから一定時間が経過していないので送電が安定していないと判断し(S917)、電力損失の算出・記録を行わずに、RX200に対してNAKパケットを送信する(S918)。
【0105】
その後、S915で起動したタイマが満了した後にRX200からRPパケットが送信されると(S919)、TX100はここで初めて電力損失を算出し、算出結果を高負荷状態における1回目の算出結果として記憶する(S920)。
【0106】
S921~S928の処理は
図8で説明したS818~S825と同一であるため説明を省略する。
【0107】
このように、本実施形態によれば、TX100において安定した環境下で、RX200との間の推定電力損失の計測・算出処理を行うことができる。言い換えれば、突発的な環境変化が発生した際等にばらついてしまう送電電力乃至受電電力を、推定電力損失の算出元データから除くことができる。これにより。上記のような送電電力と受電電力については、異物検出のためのパラメータの算出には使用されないことになる。これによって、その後行われる送電処理中に定常的に失われる電力を高い精度で推定することが可能となり、送電処理中の異物検出精度を向上させることが可能となる。
【0108】
上述の実施形態では、TX100の送電部103における内部回路の切り替え直後に計測・算出された送電電力値及び当該送電電力値に対応する受電電力値を推定電力損失の算出に用いない方法を示した。また、算出処理部304で継続的に計測・算出される送電電力の標準偏差等を計算し、その値が閾値以上の場合、当該データを推定電力損失の算出に用いない方法を示した。このような構成をとることにより、TX100内部の要因により計測・算出データのばらつきを考慮することができる。
【0109】
また上述の実施形態では、TX100において、RX200から送信されるRPパケットにて指定される受電電力値をもとに電力損失を算出し、その算出結果を平均して推定電力損失の算出を行う方法を示した。またその際、直近で算出した複数回の電力損失または受電電力の標準偏差等を計算し、その値が閾値以上の場合、当該データを推定電力損失の算出に用いない方法を示した。このような構成をとることにより、TX100とRX200との間の環境要因による計測・算出データのばらつきを考慮することができる。例えば、細かな振動によってTX100とRX200の接触面が少しずつずれているような状況で算出された値を静止状態での推定値としてしまうような問題を回避することができる。
【0110】
また上述の実施形態では、RX200からCEパケットで指示される電圧変更量が閾値以上の場合、TX100がその時点で計測・算出している送電電力値及び当送電電力値に対応する受電電力値を推定電力損失の算出に用いない方法を示した。CEパケットによる電圧変更量はRX200内部の処理・判断の結果として決定されるため、このような構成をとることでRX200内部の要因による計測・算出データのばらつきを考慮することができる。
【0111】
以上が代表的な実施形態の一例であるが、本実施形態は、明細書及び図面に示す実施形態に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲内で適宜変更されて実施されてもよい。
【0112】
本実施形態では、TX100においてRPパケットを受信した際、安定して推定電力損失が算出できない場合にはNAKを返し続けるとしたが、これに制限されるものではない。例えば、TX100は一定回数もしくは一定時間以上ACKが返ってこない場合、正常に異物検出が行えない環境であると判断して、送電を停止し、Selectionフェーズに戻る、という構成を採ることも可能である。このような構成をとることにより、常に送電出力が安定しないような状況下において推定電力損失の算出処理を継続してしまうことを回避することができる。
【0113】
また、TX100は一定回数もしくは一定時間以上ACKが返ってこない場合、算出値にばらつきがある状態が正常状態であると判断し、前述の各閾値を大きい値に変更したうえで安定しているかどうかの判定を行うようにすることも可能である。またその場合、実際の異物検出処理を行う際の閾値(推定電力損失との差分)を変更してもよい。このような構成をとることにより、例えば移動車両の中など、定常的に振動しているような環境において、好適な状態で送電処理と異物検出処理を行うことが可能となる。
【0114】
また本実施形態では、TX100からRX200に対する送電処理が安定しているかどうかを判定する方法として、送電電力、電力損失、受電電力それぞれのばらつき、指示される電力の変化量などを用いる方法を示したが、これに制限されるものではない。例えば、TX100に振動センサや磁気センサなどのハードウェアを備え、各センサが閾値以上の振動や磁気を検出している場合に送電処理が安定しないと判断し、RPパケットに対してNAKを返すようにしてもよい。また、TX100がRX200以外の外部装置と無線等により接続し、当該外部装置から送電処理が安定的に行えるかどうかを示す情報を取得して判断するようにしてもよい。本実施形態で示した方法も含め、これらの方法を組み合わせて構成することで、推定電力損失の算出処理の精度をさらに向上することができる。
【0115】
また本実施形態では、受電装置の受電状態として、低負荷状態と高負荷状態の2点において推定電力損失を算出する例について説明したが、これに制限されるものではない。例えば3点以上で推定電力損失を算出する際にも、上述した方法を用いても構わない。また、Negotiationフェーズの完了後、充電処理が開始されるまでの間に
図6の処理を行う場合について例示したが、これに制限されるものではない。例えば、TX100はPower Transferフェーズに遷移した後、3点目の推定電力損失を算出する際に
図6の処理を行ってもよい。
【0116】
また本実施形態では、TX100の送電電力を制御するための要求信号としてCEパケットを用いる例を示したが、これに制限されるものではない。また、RX200からTX100に受電電力値を通知するための信号としてRPパケットを用いる例を示したが、これに制限されるものではない。いずれも、その他任意のパケットを用いて指示・通知してもよい。また、複数のパケットに分けて指示・通知してもよいし、2つの指示・通知を1つのパケットで通知してもよい。
【0117】
また本実施形態で示した各種閾値やタイムアウト値は、事前に決定された固定値であるものとして説明したが、これに制限されるものではない。周辺環境の変化やソフトウェア・ハードウェア処理の実行状況によって動的に変更してもよいし、たとえばNegotiationフェーズにおけるTX100とRX200との間の交渉により決定するとしてもよい。
【0118】
また、本実施形態では、
図6のS613で送電電力と推定電力損失を対応づけて記憶し、これらの情報を用いて
図10のグラフを作成するものとして説明したが、他の組み合わせを用いても構わない。例えば、受電電力と推定電力損失とを対応づけて記憶し、これらを用いてグラフを作成してもよいし、送電電力と受電電力を対応づけて記憶し、グラフを作成してもよい。またこれら3つの情報をすべて記憶するようにしてもよい。すなわち、送電電力、受電電力、電力損失のうちの少なくとも2つを対応づけて記憶するようにすればよい。また、
図10では、横軸を送電電力、縦軸を受電電力としたグラフについて説明したが、横軸と縦軸の組み合わせとして、送電電力、受電電力、電力損失のどの情報を用いても構わない。いずれのグラフを用いた場合であっても、当該グラフを表す計算式における定数が、異物検出のためのパラメータに相当する。
【0119】
また、
図5~7、
図11のフローチャ-トで示される処理の少なくとも一部がハードウェアにより実現されてもよい。ハードウェアにより実現する場合、例えば、所定のコンパイラを用いることで、各ステップを実現するためのプログラムからFPGA上に自動的に専用回路を生成すればよい。また、FPGAと同様にしてGate Array回路を形成し、ハードウェアとして実現するようにしてもよい。
【0120】
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0121】
100 送電装置
200 受電装置