(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】船舶用電力供給システム
(51)【国際特許分類】
H02P 5/46 20060101AFI20241125BHJP
H02J 3/02 20060101ALI20241125BHJP
【FI】
H02P5/46 D
H02J3/02
(21)【出願番号】P 2023194626
(22)【出願日】2023-11-15
【審査請求日】2023-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000195959
【氏名又は名称】西芝電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145816
【氏名又は名称】鹿股 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100195718
【氏名又は名称】市橋 俊規
(74)【代理人】
【識別番号】100196003
【氏名又は名称】石川 太郎
(72)【発明者】
【氏名】大塚 貴夫
【審査官】谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】特開昭55-139087(JP,A)
【文献】特開2009-194993(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 5/46
H02J 3/02
B63H 21/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船内の発電機から電力が供給される交流母線と、
前記交流母線に接続され、第1電動機に交流電力を供給する第1系統の電力供給装置と、
前記交流母線に接続され、前記第1電動機に交流電力を供給する第2系統の電力供給装置と
を具備し、
前記第1系統の電力供給装置は、
前記交流母線から交流電力を受け取る第1変圧器と、
前記第1変圧器から供給される交流電流を直流電流に変換する第1整流回路と、
前記第1整流回路から供給される直流電流を交流電流に変換して前記第1電動機に供給する第1インバータと
を有し、
前記第2系統の電力供給装置は、
前記交流母線から交流電力を受け取る第2変圧器と、
前記第2変圧器から供給される交流電流を直流電流に変換する第2整流回路と、
前記第2整流回路から供給される直流電流を交流電流に変換して前記第1電動機に供給する第2インバータと
を有し、
前記第1変圧器がデルタ-デルタ型の変圧器であり、且つ、前記第2変圧器がデルタ-スター型の変圧器であるか、あるいは、
前記第1変圧器がスター-スター型の変圧器であり、且つ、前記第2変圧器がスター-デルタ型の変圧器であり、
前記交流母線と前記第1変圧器との間に配置される第1遮断器と、
前記交流母線と前記第2変圧器との間に配置される第2遮断器と、
前記第1遮断器、および、前記第2遮断器を制御する第1制御器と
を具備し、
前記第1制御器は、前記交流母線と前記第1変圧器との電気的接続と、前記交流母線と前記第2変圧器との電気的接続とが非同時に時間間隔を空けて行われるよう、前記第1遮断器および前記第2遮断器を制御する
船舶用電力供給システム。
【請求項2】
船内の発電機から電力が供給される交流母線と、
前記交流母線に接続され、第1電動機に交流電力を供給する第1系統の電力供給装置と、
前記交流母線に接続され、前記第1電動機に交流電力を供給する第2系統の電力供給装置と、
前記交流母線に接続され、第2電動機に交流電力を供給する第3系統の電力供給装置と、
前記交流母線に接続され、前記第2電動機に交流電力を供給する第4系統の電力供給装置と
を具備し、
前記第1系統の電力供給装置は、
前記交流母線から交流電力を受け取る第1変圧器と、
前記第1変圧器から供給される交流電流を直流電流に変換する第1整流回路と、
前記第1整流回路から供給される直流電流を交流電流に変換して前記第1電動機に供給する第1インバータと
を有し、
前記第2系統の電力供給装置は、
前記交流母線から交流電力を受け取る第2変圧器と、
前記第2変圧器から供給される交流電流を直流電流に変換する第2整流回路と、
前記第2整流回路から供給される直流電流を交流電流に変換して前記第1電動機に供給する第2インバータと
を有し、
前記第3系統の電力供給装置は、
前記交流母線から交流電力を受け取る第3変圧器と、
前記第3変圧器から供給される交流電流を直流電流に変換する第3整流回路と、
前記第3整流回路から供給される直流電流を交流電流に変換して前記第2電動機に供給する第3インバータと
を有し、
前記第4系統の電力供給装置は、
前記交流母線から交流電力を受け取る第4変圧器と、
前記第4変圧器から供給される交流電流を直流電流に変換する第4整流回路と、
前記第4整流回路から供給される直流電流を交流電流に変換して前記第2電動機に供給する第4インバータと
を有し、
前記第1変圧器がデルタ-デルタ型の変圧器であり、且つ、前記第2変圧器がデルタ-スター型の変圧器であるか、あるいは、
前記第1変圧器がスター-スター型の変圧器であり、且つ、前記第2変圧器がスター-デルタ型の変圧器であり、
前記第3変圧器がデルタ-デルタ型の変圧器であり、且つ、前記第4変圧器がデルタ-スター型の変圧器であるか、あるいは、
前記第3変圧器がスター-スター型の変圧器であり、且つ、前記第4変圧器がスター-デルタ型の変圧器であり、
前記第1変圧器の1次巻線の電圧位相は、前記第2変圧器の1次巻線の電圧位相と同位相であるように構成され、
前記第3変圧器の1次巻線の電圧位相は、前記第4変圧器の1次巻線の電圧位相と同位相であるように構成され、
前記第1変圧器の1次巻線の電圧位相は、前記第3変圧器の1次巻線の電圧位相と15度だけ異なるように構成される
船舶用電力供給システム。
【請求項3】
船内の発電機から電力が供給される交流母線と、
前記交流母線に接続され、第1電動機に交流電力を供給する第1系統の電力供給装置と、
前記交流母線に接続され、前記第1電動機に交流電力を供給する第2系統の電力供給装置と
を具備し、
前記第1系統の電力供給装置は、
前記交流母線から交流電力を受け取る第1変圧器と、
前記第1変圧器から供給される交流電流を直流電流に変換する第1整流回路と、
前記第1整流回路から供給される直流電流を交流電流に変換して前記第1電動機に供給する第1インバータと
を有し、
前記第2系統の電力供給装置は、
前記交流母線から交流電力を受け取る第2変圧器と、
前記第2変圧器から供給される交流電流を直流電流に変換する第2整流回路と、
前記第2整流回路から供給される直流電流を交流電流に変換して前記第1電動機に供給する第2インバータと
を有し、
前記第1変圧器がデルタ-デルタ型の変圧器であり、且つ、前記第2変圧器がデルタ-スター型の変圧器であるか、あるいは、
前記第1変圧器がスター-スター型の変圧器であり、且つ、前記第2変圧器がスター-デルタ型の変圧器であり、
前記第1インバータと前記第1電動機とを接続する第1交流電流路を開閉する第1開閉器と、
前記第2インバータと前記第1電動機とを接続する第2交流電流路を開閉する第2開閉器と、
前記第1交流電流路と前記第2交流電流路とを接続する第3交流電流路を開閉する第3開閉器と、
前記第1開閉器、前記第2開閉器、および、前記第3開閉器を制御する第1制御装置と
を更に具備し、
前記第1制御装置は、
前記第1開閉器を閉状態、前記第2開閉器を閉状態、前記第3開閉器を開状態にする第1制御モードと、
前記第1開閉器を閉状態、前記第2開閉器を開状態、前記第3開閉器を閉状態にする第2制御モードと、
前記第1開閉器を開状態、前記第2開閉器を閉状態、前記第3開閉器を閉状態にする第3制御モードと
を選択的に実行可能である
船舶用電力供給システム。
【請求項4】
前記第1制御装置は、前記第1制御モードから前記第2制御モードに制御モードを変更する際に、前記第1インバータの内部パラメータである電動機定数を自動変更するように構成され、
前記第1インバータは、前記第2制御モードが実行される際に、自動変更された前記電動機定数を含む前記内部パラメータと、前記第1インバータの外部から受け取る信号とに基づいて動作するように構成される
請求項
3に記載の船舶用電力供給システム。
【請求項5】
前記第1系統の電力供給装置の故障、および、前記第2系統の電力供給装置の故障の各々を検知可能な故障検知装置を更に具備し、
前記第1制御モードの実行時に、前記故障検知装置が前記第1系統の電力供給装置の故障を検知すると、
前記第1制御装置は、前記第1開閉器を閉状態から開状態に切り替え、前記第2開閉器を閉状態から開状態に切り替えるように構成され、
前記第2開閉器が開状態に切り替えられた後、前記第1制御装置は、前記第2インバータの内部パラメータを半出力用のパラメータに自動変更するように構成され、
前記第1制御装置は、前記第3開閉器を開状態から閉状態に切り替え、且つ、前記第2インバータの前記内部パラメータが半出力用のパラメータに自動変更された後に前記第2開閉器を開状態から閉状態に切り替えて、前記第3制御モードを実行するように構成される
請求項
3に記載の船舶用電力供給システム。
【請求項6】
前記第1インバータおよび前記第2インバータのうちの一方であるマスター側インバータから、前記第1インバータおよび前記第2インバータのうちの他方であるスレーブ側インバータに、前記スレーブ側インバータを前記マスター側インバータに追従同期制御させるための信号を送信する第1通信回路を更に具備し、
前記第1制御装置は、前記第1制御モードから前記第2制御モードに制御モードを変更する際に、前記第1通信回路を用いた追従同期制御を有効状態から無効状態に切り替えるように構成される
請求項
3に記載の船舶用電力供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、船舶用電力供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
船舶用インバータシステムが知られている。
図13に記載の船舶用インバータシステムは、発電機11と、交流母線12と、3巻変圧器13と、2つの整流器14と、2つのインバータ15と、推進用電動機16と、推進用電動機16によって駆動されるプロペラ17と、を備える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
図13に記載の船舶用インバータシステムでは、3巻変圧器13を交流母線12に接続するとき、3巻変圧器13に大きな励磁突入電流が流れる。このため、交流母線12の電圧が低下し過ぎないように、十分な容量の電源が必要となる。例えば、3巻変圧器13を交流母線12に接続するとき、発電機11を2台以上運転させておく必要がある。
【0004】
また、
図13に記載の船舶用インバータシステムでは、3巻変圧器13が故障すると、インバータ15が健全な場合でも、推進用電動機16を運転できなくなる。
【0005】
そこで、本発明の目的は、変圧器を交流母線に接続する際の励磁突入電流を抑制可能な船舶用電力供給システムを提供することである。また、本発明の任意付加的な目的は、複数系統の電力供給装置のうちの1つが故障しても、健全な他の電力供給装置を用いて電動機の運転を継続可能な船舶用電力供給システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の実施形態における船舶用電力供給システムは、船内の発電機から電力が供給される交流母線と、前記交流母線に接続され、第1電動機に交流電力を供給する第1系統の電力供給装置と、前記交流母線に接続され、前記第1電動機に交流電力を供給する第2系統の電力供給装置と、を具備し、前記第1系統の電力供給装置は、前記交流母線から交流電力を受け取る第1変圧器と、前記第1変圧器から供給される交流電流を直流電流に変換する第1整流回路と、前記第1整流回路から供給される直流電流を交流電流に変換して前記第1電動機に供給する第1インバータと、を有し、前記第2系統の電力供給装置は、前記交流母線から交流電力を受け取る第2変圧器と、前記第2変圧器から供給される交流電流を直流電流に変換する第2整流回路と、前記第2整流回路から供給される直流電流を交流電流に変換して前記第1電動機に供給する第2インバータと、を有し、前記第1変圧器がデルタ-デルタ型の変圧器であり、且つ、前記第2変圧器がデルタ-スター型の変圧器であるか、あるいは、前記第1変圧器がスター-スター型の変圧器であり、且つ、前記第2変圧器がスター-デルタ型の変圧器であり、前記交流母線と前記第1変圧器との間に配置される第1遮断器と、前記交流母線と前記第2変圧器との間に配置される第2遮断器と、前記第1遮断器、および、前記第2遮断器を制御する第1制御器とを具備し、前記第1制御器は、前記交流母線と前記第1変圧器との電気的接続と、前記交流母線と前記第2変圧器との電気的接続とが非同時に時間間隔を空けて行われるよう、前記第1遮断器および前記第2遮断器を制御することを特徴とする。
本発明の他の実施形態における船舶用電力供給システムは、船内の発電機から電力が供給される交流母線と、前記交流母線に接続され、第1電動機に交流電力を供給する第1系統の電力供給装置と、前記交流母線に接続され、前記第1電動機に交流電力を供給する第2系統の電力供給装置と、前記交流母線に接続され、第2電動機に交流電力を供給する第3系統の電力供給装置と、前記交流母線に接続され、前記第2電動機に交流電力を供給する第4系統の電力供給装置とを具備し、前記第1系統の電力供給装置は、前記交流母線から交流電力を受け取る第1変圧器と、前記第1変圧器から供給される交流電流を直流電流に変換する第1整流回路と、前記第1整流回路から供給される直流電流を交流電流に変換して前記第1電動機に供給する第1インバータとを有し、前記第2系統の電力供給装置は、前記交流母線から交流電力を受け取る第2変圧器と、前記第2変圧器から供給される交流電流を直流電流に変換する第2整流回路と、前記第2整流回路から供給される直流電流を交流電流に変換して前記第1電動機に供給する第2インバータとを有し、前記第3系統の電力供給装置は、前記交流母線から交流電力を受け取る第3変圧器と、前記第3変圧器から供給される交流電流を直流電流に変換する第3整流回路と、前記第3整流回路から供給される直流電流を交流電流に変換して前記第2電動機に供給する第3インバータとを有し、前記第4系統の電力供給装置は、前記交流母線から交流電力を受け取る第4変圧器と、前記第4変圧器から供給される交流電流を直流電流に変換する第4整流回路と、前記第4整流回路から供給される直流電流を交流電流に変換して前記第2電動機に供給する第4インバータとを有し、前記第1変圧器がデルタ-デルタ型の変圧器であり、且つ、前記第2変圧器がデルタ-スター型の変圧器であるか、あるいは、前記第1変圧器がスター-スター型の変圧器であり、且つ、前記第2変圧器がスター-デルタ型の変圧器であり、前記第3変圧器がデルタ-デルタ型の変圧器であり、且つ、前記第4変圧器がデルタ-スター型の変圧器であるか、あるいは、前記第3変圧器がスター-スター型の変圧器であり、且つ、前記第4変圧器がスター-デルタ型の変圧器であり、前記第1変圧器の1次巻線の電圧位相は、前記第2変圧器の1次巻線の電圧位相と同位相であるように構成され、前記第3変圧器の1次巻線の電圧位相は、前記第4変圧器の1次巻線の電圧位相と同位相であるように構成され、前記第1変圧器の1次巻線の電圧位相は、前記第3変圧器の1次巻線の電圧位相と15度だけ異なるように構成されることを特徴とする。
本発明の更に他の実施形態における船舶用電力供給システムは、船内の発電機から電力が供給される交流母線と、前記交流母線に接続され、第1電動機に交流電力を供給する第1系統の電力供給装置と、前記交流母線に接続され、前記第1電動機に交流電力を供給する第2系統の電力供給装置とを具備し、前記第1系統の電力供給装置は、前記交流母線から交流電力を受け取る第1変圧器と、前記第1変圧器から供給される交流電流を直流電流に変換する第1整流回路と、前記第1整流回路から供給される直流電流を交流電流に変換して前記第1電動機に供給する第1インバータとを有し、前記第2系統の電力供給装置は、前記交流母線から交流電力を受け取る第2変圧器と、前記第2変圧器から供給される交流電流を直流電流に変換する第2整流回路と、前記第2整流回路から供給される直流電流を交流電流に変換して前記第1電動機に供給する第2インバータとを有し、前記第1変圧器がデルタ-デルタ型の変圧器であり、且つ、前記第2変圧器がデルタ-スター型の変圧器であるか、あるいは、前記第1変圧器がスター-スター型の変圧器であり、且つ、前記第2変圧器がスター-デルタ型の変圧器であり、前記第1インバータと前記第1電動機とを接続する第1交流電流路を開閉する第1開閉器と、前記第2インバータと前記第1電動機とを接続する第2交流電流路を開閉する第2開閉器と、前記第1交流電流路と前記第2交流電流路とを接続する第3交流電流路を開閉する第3開閉器と、前記第1開閉器、前記第2開閉器、および、前記第3開閉器を制御する第1制御装置とを更に具備し、前記第1制御装置は、前記第1開閉器を閉状態、前記第2開閉器を閉状態、前記第3開閉器を開状態にする第1制御モードと、前記第1開閉器を閉状態、前記第2開閉器を開状態、前記第3開閉器を閉状態にする第2制御モードと、前記第1開閉器を開状態、前記第2開閉器を閉状態、前記第3開閉器を閉状態にする第3制御モードとを選択的に実行可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、変圧器を交流母線に接続する際の励磁突入電流を抑制可能な船舶用電力供給システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1の実施形態における船舶用電力供給システムの構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態における船舶用電力供給システムの構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、第1変圧器または第2変圧器の一次側のデルタ結線の一例を模式的に示す図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態の変形例における船舶用電力供給システムの構成の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、第2の実施形態における船舶用電力供給システムの構成の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、第2の実施形態における船舶用電力供給システムの構成の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、第2の実施形態における船舶用電力供給システムの構成の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、第2の実施形態における船舶用電力供給システムの構成の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、第1制御モードから第2制御モードに制御モードが切り替えられることに応じて、第1インバータが受け持つ第1電動機の巻線の長さが変わる様子を模式的に示す図である。
【
図10】
図10は、第2の実施形態における船舶用電力供給システムの構成の一例を示す図である。
【
図11】
図11は、第2の実施形態の変形例における船舶用電力供給システムの構成の一例を示す図である。
【
図12】
図12は、第3の実施形態における船舶の一例を示す概略2面図である。
【
図13】
図13は、従来例における船舶用電力供給システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態における船舶用電力供給システム1、および、船舶100に関して、添付図面を参照して説明する。なお、以下の説明において、同じ機能を有する部材、部位については、同一の符号が付され、同一の符号が付されている部材、部位について、繰り返しの説明は省略される。
【0010】
(第1の実施形態)
図1乃至
図4を参照して、第1の実施形態における船舶用電力供給システム1Aについて説明する。
図1、
図2は、第1の実施形態における船舶用電力供給システム1Aの構成の一例を示す図である。
図3は、第1変圧器32または第2変圧器42の一次側のデルタ結線の一例を模式的に示す図である。
図4は、第1の実施形態の変形例における船舶用電力供給システム1Aの構成の一例を示す図である。
【0011】
(構成・作用)
図1に例示されるように、船舶用電力供給システム1Aは、交流母線2と、第1系統の電力供給装置3と、第2系統の電力供給装置4と、を具備する。
【0012】
交流母線2には、船内の発電機Gから電力が供給される。
図1に記載の例において、交流母線2には、三相交流の電流が流れる。
【0013】
図1に記載の例では、船舶用電力供給システム1Aは、交流母線2に電力を供給可能な第1発電機G1と、交流母線2に電力を供給可能な第2発電機G2と、を備える。第1発電機G1と第2発電機G2とは、交流母線2に並列的に接続されている。付加的に、船舶用電力供給システム1Aは、交流母線2に電力を供給可能な第3発電機G3を備えていてもよい。換言すれば、交流母線2に電力を供給可能な発電機Gは、1台であってもよいし、2台であってもよいし、3台以上であってもよい。
【0014】
図2に記載の例において、第1系統の電力供給装置3は、交流母線2に接続され、第1電動機Q1に交流電力を供給する。
図2に記載の例では、第1電動機Q1は、船舶を推進させるための推進用誘導電動機である。第1電動機Q1は、水中に配置された第1プロペラP1を駆動する。
【0015】
図2に記載の例において、第1系統の電力供給装置3は、第1変圧器32と、第1整流回路35と、第1インバータ37と、を有する。
【0016】
第1変圧器32は、交流母線2から交流電力を受け取る。また、第1変圧器32は、交流母線2側(換言すれば、1次巻線側)の入力交流電圧を、第1整流回路35側(換言すれば、2次巻線側)の出力交流電圧に変換する。当該出力交流電圧(換言すれば、第1変圧器32の出力交流電圧)の大きさは、第1変圧器32の入力交流電圧の大きさと同じであってもよいし、異なっていてもよい。例えば、第1変圧器32の入力交流電圧の大きさ、および、第1変圧器32の出力交流電圧の大きさは、それぞれ、440Vであってもよい。
【0017】
第1整流回路35は、第1変圧器32から供給される交流電流を直流電流に変換する。より具体的には、第1整流回路35は、第1変圧器32から供給される三相交流電流を直流電流に変換する。第1整流回路35は、例えば、三相全波整流回路である。
【0018】
第1インバータ37は、第1整流回路35から供給される直流電流を交流電流に変換して第1電動機Q1に供給する。より具体的には、第1インバータ37は、第1整流回路35から供給される直流電流を三相交流電流に変換して第1電動機Q1に供給する。
【0019】
図2に記載の例において、第1インバータ37は、PWMインバータである。当該PWMインバータは、入力直流電圧を、PWM制御(すなわち、パルス幅変調制御)を用いて、所望の周波数の所望の交流電圧に変換して出力する。
【0020】
図2に記載の例において、第2系統の電力供給装置4は、交流母線2に接続され、第1電動機Q1に交流電力を供給する。第2系統の電力供給装置4は、第2変圧器42と、第2整流回路45と、第2インバータ47と、を有する。
【0021】
第2変圧器42は、交流母線2から交流電力を受け取る。また、第2変圧器42は、交流母線2側(換言すれば、1次巻線側)の入力交流電圧を、第2整流回路45側(換言すれば、2次巻線側)の出力交流電圧に変換する。当該出力交流電圧(換言すれば、第2変圧器42の出力交流電圧)の大きさは、第2変圧器42の入力交流電圧の大きさと同じであってもよいし、異なっていてもよい。例えば、第2変圧器42の入力交流電圧の大きさ、および、第2変圧器42の出力交流電圧の大きさは、それぞれ、440Vであってもよい。
【0022】
第2整流回路45は、第2変圧器42から供給される交流電流を直流電流に変換する。より具体的には、第2整流回路45は、第2変圧器42から供給される三相交流電流を直流電流に変換する。第2整流回路45は、例えば、三相全波整流回路である。
【0023】
第2インバータ47は、第2整流回路45から供給される直流電流を交流電流に変換して第1電動機Q1に供給する。より具体的には、第2インバータ47は、第2整流回路45から供給される直流電流を三相交流電流に変換して第1電動機Q1に供給する。
【0024】
第1電動機Q1の通常運転時に、第1電動機Q1は、第1インバータ37から供給される三相交流電流と、第2インバータ47から供給される三相交流電流とによって駆動される。また、第1電動機Q1は、水中に配置された第1プロペラP1を駆動する。
【0025】
図2に記載の例において、第2インバータ47は、PWMインバータである。当該PWMインバータは、入力直流電圧を、PWM制御(すなわち、パルス幅変調制御)を用いて、所望の周波数の所望の交流電圧に変換して出力する。
【0026】
図2に記載の例において、第1変圧器32は、デルタ-デルタ型の変圧器である。本明細書において、デルタ-デルタ型の変圧器とは、一次側(換言すれば、入力側)をデルタ結線、二次側(換言すれば、出力側)をデルタ結線とする三相2巻線変圧器を意味する。
【0027】
図1に記載の例において、第2変圧器42は、デルタ-スター型の変圧器である。本明細書において、デルタ-スター型の変圧器とは、一次側(換言すれば、入力側)をデルタ結線、二次側(換言すれば、出力側)をスター結線とする三相2巻線変圧器を意味する。
【0028】
図2に例示されるように、船舶用電力供給システム1Aの通常運転時には、第1系統の電力供給装置3、および、第2系統の電力供給装置4の両方から供給される交流電力を用いて、第1電動機Q1が駆動される。
【0029】
(効果)
第1の実施形態では、
図2に例示されるように、第1電動機Q1への電力供給が複数の系統(第1系統の電力供給装置3、第2系統の電力供給装置4)を介して行われ、各系統に、変圧器(31、41)が配置されている。よって、各変圧器の容量を、対応するインバータ1台分の容量に対応させて小さくすることができ、各変圧器当たりの励磁突入電流を低減することができる。
【0030】
また、第1変圧器32が、デルタ-デルタ型の変圧器であり、第2変圧器42が、デルタ-スター型の変圧器であることにより、第1変圧器32の出力電圧と、第2変圧器42の出力電圧との間の位相差が30度となる。当該位相差によって、第1インバータ37から発生する高調波成分の一部と、第2インバータ47から発生する高調波成分の一部とが互いに打ち消し合い、電圧歪みを抑制することができる。
【0031】
(任意付加的な構成)
続いて、
図1乃至
図4を参照して、第1の実施形態において採用可能な任意付加的な構成について説明する。
【0032】
(第3系統の電力供給装置5、第4系統の電力供給装置6)
図1に記載の例では、船舶用電力供給システム1Aは、第1系統の電力供給装置3、および、第2系統の電力供給装置4に加えて、第3系統の電力供給装置5、および、第4系統の電力供給装置6を備える。
【0033】
図2に記載の例において、第3系統の電力供給装置5は、交流母線2に接続され、第2電動機Q2に交流電力を供給する。
図2に記載の例では、第2電動機Q2は、船舶を推進させるための推進用誘導電動機である。第2電動機Q2は、水中に配置された第2プロペラP2を駆動する。
【0034】
図2に記載の例において、第3系統の電力供給装置5は、第3変圧器52と、第3整流回路55と、第3インバータ57と、を有する。
【0035】
第3変圧器52は、交流母線2から交流電力を受け取る。また、第3変圧器52は、交流母線2側(換言すれば、1次巻線側)の入力交流電圧を、第3整流回路55側(換言すれば、2次巻線側)の出力交流電圧に変換する。当該出力交流電圧(換言すれば、第3変圧器52の出力交流電圧)の大きさは、第3変圧器52の入力交流電圧の大きさと同じであってもよいし、異なっていてもよい。例えば、第3変圧器52の入力交流電圧の大きさ、および、第3変圧器52の出力交流電圧の大きさは、それぞれ、440Vであってもよい。
【0036】
第3整流回路55は、第3変圧器52から供給される交流電流を直流電流に変換する。より具体的には、第3整流回路55は、第3変圧器52から供給される三相交流電流を直流電流に変換する。第3整流回路55は、例えば、三相全波整流回路である。
【0037】
第3インバータ57は、第3整流回路55から供給される直流電流を交流電流に変換して第2電動機Q2に供給する。より具体的には、第3インバータ57は、第3整流回路55から供給される直流電流を三相交流電流に変換して第2電動機Q2に供給する。
【0038】
図2に記載の例において、第3インバータ57は、PWMインバータである。当該PWMインバータは、入力直流電圧を、PWM制御(すなわち、パルス幅変調制御)を用いて、所望の周波数の所望の交流電圧に変換して出力する。
【0039】
図2に記載の例において、第4系統の電力供給装置6は、交流母線2に接続され、第2電動機Q2に交流電力を供給する。第4系統の電力供給装置6は、第4変圧器62と、第4整流回路65と、第4インバータ67と、を有する。
【0040】
第4変圧器62は、交流母線2から交流電力を受け取る。また、第4変圧器62は、交流母線2側(換言すれば、1次巻線側)の入力交流電圧を、第4整流回路65側(換言すれば、2次巻線側)の出力交流電圧に変換する。当該出力交流電圧(換言すれば、第4変圧器62の出力交流電圧)の大きさは、第4変圧器62の入力交流電圧の大きさと同じであってもよいし、異なっていてもよい。例えば、第4変圧器62の入力交流電圧の大きさ、および、第4変圧器62の出力交流電圧の大きさは、それぞれ、440Vであってもよい。
【0041】
第4整流回路65は、第4変圧器62から供給される交流電流を直流電流に変換する。より具体的には、第4整流回路65は、第4変圧器62から供給される三相交流電流を直流電流に変換する。第4整流回路65は、例えば、三相全波整流回路である。
【0042】
第4インバータ67は、第4整流回路65から供給される直流電流を交流電流に変換して第2電動機Q2に供給する。より具体的には、第4インバータ67は、第4整流回路65から供給される直流電流を三相交流電流に変換して第2電動機Q2に供給する。
【0043】
第2電動機Q2の通常運転時に、第2電動機Q2は、第3インバータ57から供給される三相交流電流と、第4インバータ67から供給される三相交流電流とによって駆動される。また、第2電動機Q2は、水中に配置された第2プロペラP2を駆動する。
【0044】
図2に記載の例において、第4インバータ67は、PWMインバータである。当該PWMインバータは、入力直流電圧を、PWM制御(すなわち、パルス幅変調制御)を用いて、所望の周波数の所望の交流電圧に変換して出力する。
【0045】
図2に記載の例において、第3変圧器52は、デルタ-デルタ型の変圧器であり、第4変圧器62は、デルタ-スター型の変圧器である。
【0046】
図2に例示されるように、船舶用電力供給システム1Aの通常運転時には、第1系統の電力供給装置3、および、第2系統の電力供給装置4の両方から供給される交流電力を用いて、第1電動機Q1が駆動される。また、船舶用電力供給システム1Aの通常運転時には、第3系統の電力供給装置5、および、第4系統の電力供給装置6の両方から供給される交流電力を用いて、第2電動機Q2が駆動される。
【0047】
図2に記載の例において、第1変圧器32の1次巻線の電圧位相は、第2変圧器42の1次巻線の電圧位相と同位相であるように構成され、第3変圧器52の1次巻線の電圧位相は、第4変圧器62の1次巻線の電圧位相と同位相であるように構成されることが好ましい。
【0048】
図2に記載の例において、第1変圧器32の1次巻線の電圧位相は、第3変圧器52の1次巻線の電圧位相と15度だけ異なるように構成されることが好ましい。また、第2変圧器42の1次巻線の電圧位相は、第4変圧器62の1次巻線の電圧位相と15度だけ異なるように構成されることが好ましい。
【0049】
上述のとおり、
図2に記載の例では、第1変圧器32の出力電圧と、第2変圧器42の出力電圧との間の位相差が30度となる(換言すれば、第1変圧器32の2次巻線の電圧位相と、第2変圧器の2次巻線の電圧位相との差が30度となる。)。この場合、第1インバータ37と第2インバータ47とが同時運転される際に高調波の一部が互いに打ち消され、電圧歪みが抑制される。また、第1変圧器32および第2変圧器42の各々の1次巻線の電圧位相と、第3変圧器52および第4変圧器62の各々の1次巻線の電圧位相との位相差が15度であることにより、第1インバータ37、第2インバータ47、第3インバータ57、第4インバータ67が同時に運転される際に高調波の一部が互いに打ち消され、電圧歪みが更に抑制される。
【0050】
なお、第1変圧器32および第2変圧器42の各々の1次巻線の電圧位相と、第3変圧器52および第4変圧器62の各々の1次巻線の電圧位相との位相差を15度にするために、位相巻線付き変圧器が使用されてもよい。
【0051】
図3に、第1変圧器32の一次側(換言すれば、入力側)のデルタ結線311の一例、および、第2変圧器42の一次側(換言すれば、入力側)のデルタ結線411の一例が示されている。デルタ結線311(または、デルタ結線411)について、U相の1次巻線は、U相主巻線Umと、U相位相巻線Usとを含み、V相の1次巻線は、V相主巻線Vmと、V相位相巻線Vsとを含み、W相の1次巻線は、W相主巻線Wmと、W相位相巻線Wsとを含む。各相の主巻線(Um、Vm、Wm)の巻数と、各相の位相巻線(Us、Vs、Ws)の巻数との比率を調整することにより、交流母線2の電圧位相と、第1変圧器32(または、第2変圧器42)の1次巻線の電圧位相との位相差を所望の値にすることができる。
【0052】
図2に記載の例では、第1変圧器32が、交流母線2の電圧位相に対して、第1変圧器32の1次巻線の電圧位相を7.5度相対的に遅らせる位相巻線付きの変圧器であり、第2変圧器42が、交流母線2の電圧位相に対して、第2変圧器42の1次巻線の電圧位相を7.5度相対的に遅らせる位相巻線付きの変圧器である。また、第3変圧器52が、交流母線2の電圧位相に対して、第3変圧器52の1次巻線の電圧位相を7.5度相対的に進める位相巻線付きの変圧器であり、第4変圧器62が、交流母線2の電圧位相に対して、第4変圧器62の1次巻線の電圧位相を7.5度相対的に進める位相巻線付きの変圧器である。
【0053】
(第1遮断器31、第2遮断器41、第1制御器71)
図1に記載の例では、船舶用電力供給システム1Aは、第1遮断器31と、第2遮断器41と、第1制御器71と、を備える。
【0054】
第1遮断器31は、交流母線2と第1変圧器32との間に配置され、交流母線2と第1変圧器32との間の3相交流電流路L11を開閉する。第1遮断器31は、例えば、気中遮断器(換言すれば、空気中で電流を遮断する遮断器)である。なお、本明細書において、遮断器とは、当該遮断器が配置された電流路に負荷電流、事故電流のいずれが流れている状態でも、当該遮断器を閉状態から開状態に切り替えることにより、当該電流路を流れる電流を遮断することが可能な機器を意味する。
【0055】
第2遮断器41は、交流母線2と第2変圧器42との間に配置され、交流母線2と第2変圧器42との間の3相交流電流路L21を開閉する。第2遮断器41は、例えば、気中遮断器である。
【0056】
第1制御器71は、第1遮断器31、および、第2遮断器41を制御する。第1制御器71は、給電盤に含まれていてもよい。第1制御器71は、第1遮断器31および第2遮断器41に加えて、他の機器を制御可能であってもよい。
【0057】
図1に記載の例において、第1変圧器32および第2変圧器42が、交流母線2に電気的に接続される場合を想定する。第1制御器71は、交流母線2と第1変圧器32との電気的接続と、交流母線2と第2変圧器42との電気的接続とが非同時に時間間隔を空けて行われるよう、第1遮断器31および第2遮断器41を制御する。第1制御器71が、第1遮断器31および第2遮断器41のうちの一方を開状態から閉状態に切り替えるタイミングと、第1遮断器31および第2遮断器41のうちの他方を開状態から閉状態に切り替えるタイミングとの間の時間間隔は、例えば、5秒以上である。
【0058】
第1変圧器32の交流母線2への電気的接続と、第2変圧器42の交流母線2への電気的接続とが時間間隔を空けて行われることにより、励磁突入電流を平準化することができ、交流母線2の電圧低下が抑制される。なお、第1変圧器32の交流母線2への接続、および、第2変圧器42の交流母線2への接続は、例えば、少なくとも1台の発電機Gが交流母線2に電力を供給している状態で行われる。
【0059】
(第3遮断器51、第4遮断器61、第2制御器72)
図1に記載の例では、船舶用電力供給システム1Aは、第3遮断器51と、第4遮断器61と、第2制御器72と、を備える。
【0060】
第3遮断器51は、交流母線2と第3変圧器52との間に配置され、交流母線2と第3変圧器52との間の3相交流電流路L31を開閉する。第4遮断器61は、交流母線2と第4変圧器62との間に配置され、交流母線2と第4変圧器62との間の3相交流電流路L41を開閉する。第3遮断器51および第4遮断器61の各々は、例えば、気中遮断器である。
【0061】
第2制御器72は、第3遮断器51、および、第4遮断器61を制御する。第2制御器72は、給電盤に含まれていてもよい。
【0062】
第2制御器72は、交流母線2と第3変圧器52との電気的接続と、交流母線2と第4変圧器62との電気的接続とが非同時に時間間隔を空けて行われるよう、第3遮断器51および第4遮断器61を制御する。なお、第3変圧器52の交流母線2への接続、および、第4変圧器62の交流母線2への接続は、例えば、少なくとも1台の発電機Gが交流母線2に電力を供給している状態で行われる。
【0063】
第1制御器71および第2制御器72は、第1変圧器32の交流母線2への電気的接続と、第2変圧器42の交流母線2への電気的接続と、第3変圧器52の交流母線2への電気的接続と、第4変圧器62の交流母線2への電気的接続との全てを、順次、時間間隔を空けて行うように構成されることが好ましい。複数の変圧器(31、41、51、61)の交流母線2への電気的接続が、1つずつ、異なるタイミングで行われることにより、励磁突入電流を平準化することができ、交流母線2の電圧低下が抑制される。なお、複数の変圧器(31、41、51、61)の交流母線2への電気的接続は、例えば、少なくとも1台の発電機Gが交流母線2に電力を供給している状態で行われる。
【0064】
(第1の実施形態の変形例)
図1に記載の例では、第1変圧器32がデルタ-デルタ型の変圧器であり、第2変圧器42がデルタ-スター型の変圧器である。代替的に、
図4に例示されるように、第1変圧器32がスター-スター型の変圧器であり、第2変圧器42がスター-デルタ型の変圧器であってもよい。換言すれば、
図1に記載の例において、第1変圧器32が、デルタ-デルタ型の変圧器から、スター-スター型の変圧器に置換され、第2変圧器42が、デルタ-スター型の変圧器から、スター-デルタ型の変圧器に置換されてもよい。なお、本明細書において、スター-スター型の変圧器とは、一次側(換言すれば、入力側)をスター結線、二次側(換言すれば、出力側)をスター結線とする三相2巻線変圧器を意味する。また、本明細書において、スター-デルタ型の変圧器とは、一次側(換言すれば、入力側)をスター結線、二次側(換言すれば、出力側)をデルタ結線とする三相2巻線変圧器を意味する。
【0065】
図1に記載の例では、第3変圧器52がデルタ-デルタ型の変圧器であり、第4変圧器62がデルタ-スター型の変圧器である。代替的に、
図4に例示されるように、第3変圧器52がスター-スター型の変圧器であり、第4変圧器62がスター-デルタ型の変圧器であってもよい。換言すれば、
図1に記載の例において、第3変圧器52が、デルタ-デルタ型の変圧器から、スター-スター型の変圧器に置換され、第4変圧器62が、デルタ-スター型の変圧器から、スター-デルタ型の変圧器に置換されてもよい。
【0066】
図4に記載の例においても、第1変圧器32の1次巻線の電圧位相は、第2変圧器42の1次巻線の電圧位相と同位相であるように構成され、第3変圧器52の1次巻線の電圧位相は、第4変圧器62の1次巻線の電圧位相と同位相であるように構成され、第1変圧器32の1次巻線の電圧位相は、第3変圧器52の1次巻線の電圧位相と15度だけ異なるように構成されることが好ましい。
【0067】
更に代替的に、第1系統の電力供給装置3、および、第2系統の電力供給装置4として、
図1に示される構成(例えば、第1変圧器32がデルタ-デルタ型の変圧器であり、第2変圧器42がデルタ-スター型の変圧器である構成)が採用され、第3系統の電力供給装置5、および、第4系統の電力供給装置6として、
図4に示される構成(例えば、第3変圧器52がスター-スター型の変圧器であり、第4変圧器62がスター-デルタ型の変圧器である構成)が採用されてもよい。
【0068】
(第2の実施形態)
図5乃至
図11を参照して、第2の実施形態における船舶用電力供給システム1Bについて説明する。
図5乃至
図8、
図10は、第2の実施形態における船舶用電力供給システム1Bの構成の一例を示す図である。
図9は、第1制御モードM1から第2制御モードM2に制御モードが切り替えられることに応じて、第1インバータ37が受け持つ第1電動機Q1の巻線の長さが変わる様子を模式的に示す図である。
図11は、第2の実施形態の変形例における船舶用電力供給システム1Bの構成の一例を示す図である。
【0069】
(構成・作用)
第2の実施形態における船舶用電力供給システム1Bは、第1開閉器81と、第2開閉器82と、第3開閉器83と、これらの開閉器を制御する第1制御装置76と、を備える点で、第1の実施形態における船舶用電力供給システム1Aとは異なる。
【0070】
第2の実施形態では、第1の実施形態と異なる点を中心に説明し、第1の実施形態において説明済みの事項についての繰り返しとなる説明は省略する。よって、第2の実施形態において明示的に説明されなかったとしても、第2の実施形態において、第1の実施形態で説明済みの事項を採用可能であることは言うまでもない。
【0071】
図5に例示されるように、第2の実施形態における船舶用電力供給システム1Bは、交流母線2と、第1系統の電力供給装置3と、第2系統の電力供給装置4と、を備える。付加的に、第2の実施形態における船舶用電力供給システム1Bは、第1遮断器31、第2遮断器41、第1制御器71を備えていてもよい。交流母線2、第1系統の電力供給装置3、第2系統の電力供給装置4、第1遮断器31、第2遮断器41、第1制御器71については、第1の実施形態において説明済みであるため、これらの構成についての繰り返しとなる説明は省略する。
【0072】
付加的に、第2の実施形態における船舶用電力供給システム1Bは、第3系統の電力供給装置5、および、第2系統の電力供給装置6を備えていてもよい。また、第2の実施形態における船舶用電力供給システム1Bは、第3遮断器51、第4遮断器61、第2制御器72を備えていてもよい。第3系統の電力供給装置5、第4系統の電力供給装置6、第3遮断器51、第4遮断器61、第2制御器72については、第1の実施形態において説明済みであるため、これらの構成についての繰り返しとなる説明は省略する。
【0073】
付加的に、第2の実施形態における船舶用電力供給システム1Bは、少なくとも1つの発電機(例えば、第1発電機G1、第2発電機G2、第3発電機G3等)、少なくとも1つの電動機(例えば、第1電動機Q1、第2電動機Q2等)、少なくとも1つのプロペラ(例えば、第1プロペラP1、第2プロペラP2等)を備えていてもよい。第1発電機G1、第2発電機G2、第3発電機G3、第1電動機Q1、第2電動機Q2、第1プロペラP1、第2プロペラP2については、第1の実施形態において説明済みであるため、これらの構成についての繰り返しとなる説明は省略する。
【0074】
図5に記載の例において、船舶用電力供給システム1Bは、第1開閉器81、第2開閉器82、第3開閉器83、および、第1制御装置76を備える。
【0075】
第1開閉器81は、第1インバータ37と第1電動機Q1とを接続する第1交流電流路L13(より具体的には、第1の3相交流電流路)を開閉する。第1開閉器81は、例えば、コンタクタ(換言すれば、電磁力により動作する電磁接触器)である。
【0076】
第2開閉器82は、第2インバータ47と第1電動機Q1とを接続する第2交流電流路L23(より具体的には、第2の3相交流電流路)を開閉する。第2開閉器82は、例えば、コンタクタ(換言すれば、電磁力により動作する電磁接触器)である。
【0077】
第3開閉器83は、第1交流電流路L13と第2交流電流路L23とを接続する第3交流電流路L5(より具体的には、第3の3相交流電流路)を開閉する。第3開閉器83は、例えば、コンタクタ(換言すれば、電磁力により動作する電磁接触器)である。なお、
図5に記載の例において、第3交流電流路L5の一方の端部は、第1開閉器81と第1電動機Q1との間において第1交流電流路L13に接続され、第3交流電流路L5の他方の端部は、第2開閉器82と第1電動機Q1との間において第2交流電流路L23に接続されている。
【0078】
第1制御装置76は、第1開閉器81、第2開閉器82、および、第3開閉器83を制御する。第1制御装置76は、第1開閉器81、第2開閉器82、および、第3開閉器83に加えて、他の機器を制御可能であってもよい。
【0079】
図6に例示されるように、第1制御装置76は、第1開閉器81を閉状態、第2開閉器82を閉状態、第3開閉器83を開状態にする第1制御モードM1を実行可能である。
図6に記載の例では、第1制御モードM1の実行時に、第1系統の電力供給装置3、および、第2系統の電力供給装置4の両方から供給される交流電力を用いて、第1電動機Q1が駆動されるように構成される。また、第1電動機Q1によって第1プロペラP1が駆動されるように構成される。
【0080】
図7に例示されるように、第1制御装置76は、第1開閉器81を閉状態、第2開閉器82を開状態、第3開閉器83を閉状態にする第2制御モードM2を実行可能である。
図7に記載の例では、第2制御モードM2の実行時には、第2系統の電力供給装置4は第1電動機Q1から切り離され、第1系統の電力供給装置3から供給される交流電力を用いて、第1電動機Q1が駆動されるように構成される。また、第1電動機Q1によって第1プロペラP1が駆動されるように構成される。
【0081】
図8に例示されるように、第1制御装置76は、第1開閉器81を開状態、第2開閉器82を閉状態、第3開閉器83を閉状態にする第3制御モードM3を実行可能である。
図8に記載の例では、第3制御モードM3の実行時には、第1系統の電力供給装置3は第1電動機Q1から切り離され、第2系統の電力供給装置4から供給される交流電力を用いて、第1電動機Q1が駆動されるように構成される。また、第1電動機Q1によって第1プロペラP1が駆動されるように構成される。
【0082】
(効果)
第2の実施形態は、第1の実施形態と同様の効果を奏する。また、第2の実施形態では、第1制御装置76は、第1制御モードM1と、第2制御モードM2と、第3制御モードM3とを選択的に実行可能である。よって、第1系統の電力供給装置3(例えば、第1遮断器31、第1変圧器32、第1整流回路35、第1インバータ37等)、および、第2系統の電力供給装置4(例えば、第2遮断器41、第2変圧器42、第2整流回路45、第2インバータ47等)のうちの一方が故障しても、健全な他方の電力供給装置を用いて第1電動機Q1の運転を継続することができる。
【0083】
(任意付加的な構成)
続いて、
図5乃至
図11を参照して、第2の実施形態において採用可能な任意付加的な構成について説明する。
【0084】
(第1通信回路85、第2通信回路89)
図5に記載の例では、船舶用電力供給システム1Bは、第1通信回路85(より具体的には、第1光通信回路)、および/または、第2通信回路89(より具体的には、第2光通信回路)を備える。
【0085】
第1通信回路85は、第1インバータ37および第2インバータ47のうちの一方であるマスター側インバータから、第1インバータ37および第2インバータ47のうちの他方であるスレーブ側インバータに、スレーブ側インバータをマスター側インバータに追従同期制御させるための信号S1を送信する(
図6を参照。)。信号S1を受信するスレーブ側インバータは、マスター側インバータの交流出力電圧の位相と同期するように、スレーブ側インバータの交流出力電圧の位相を調整する。マスター側インバータの交流出力電圧の位相と、スレーブ側インバータの交流出力電圧の位相とが同期されることにより、第1電動機Q1の運転効率が向上する。
図6に記載の例では、第2インバータ47がマスター側インバータであり、第1インバータ37がスレーブ側インバータである。代替的に、第1インバータ37がマスター側インバータであり、第2インバータ47がスレーブ側インバータであってもよい。
【0086】
第2通信回路89は、第3インバータ57および第4インバータ67のうちの一方であるマスター側インバータから、第3インバータ57および第4インバータ67のうちの他方であるスレーブ側インバータに、スレーブ側インバータをマスター側インバータに追従同期制御させるための信号S2を送信する(
図6を参照。)。信号S2を受信するスレーブ側インバータは、マスター側インバータの交流出力電圧の位相と同期するように、スレーブ側インバータの交流出力電圧の位相を調整する。マスター側インバータの交流出力電圧の位相と、スレーブ側インバータの交流出力電圧の位相とが同期されることにより、第2電動機Q2の運転効率が向上する。
図6に記載の例では、第4インバータ67がマスター側インバータであり、第3インバータ57がスレーブ側インバータである。代替的に、第3インバータ57がマスター側インバータであり、第4インバータ67がスレーブ側インバータであってもよい。
【0087】
なお、第1通信回路85、第2通信回路89の構成は、第1の実施形態においても採用可能である。
【0088】
(第4開閉器86、第5開閉器87、第6開閉器88、第2制御装置77)
図5に記載の例において、船舶用電力供給システム1Bは、第4開閉器86、第5開閉器87、第6開閉器88、および、第2制御装置77を備える。
【0089】
第4開閉器86は、第3インバータ57と第2電動機Q2とを接続する第4交流電流路L33(より具体的には、第4の3相交流電流路)を開閉する。第4開閉器86は、例えば、コンタクタ(換言すれば、電磁力により動作する電磁接触器)である。
【0090】
第5開閉器87は、第4インバータ67と第2電動機Q2とを接続する第5交流電流路L43(より具体的には、第5の3相交流電流路)を開閉する。第5開閉器87は、例えば、コンタクタ(換言すれば、電磁力により動作する電磁接触器)である。
【0091】
第6開閉器88は、第4交流電流路L33と第5交流電流路L43とを接続する第6交流電流路L6(より具体的には、第6の3相交流電流路)を開閉する。第6開閉器88は、例えば、コンタクタ(換言すれば、電磁力により動作する電磁接触器)である。なお、
図5に記載の例において、第6交流電流路L6の一方の端部は、第4開閉器86と第2電動機Q2との間において第4交流電流路L33に接続され、第6交流電流路L6の他方の端部は、第5開閉器87と第2電動機Q2との間において第5交流電流路L43に接続されている。
【0092】
第2制御装置77は、第4開閉器86、第5開閉器87、および、第6開閉器88を制御する。第2制御装置77は、第4開閉器86、第5開閉器87、および、第6開閉器88に加えて、他の機器を制御可能であってもよい。第2制御装置77は、後述の第4制御モードM4と、第5制御モードと、第6制御モードとを選択的に実行可能である。
【0093】
第2制御装置77は、第4開閉器86を閉状態、第5開閉器87を閉状態、第6開閉器88を開状態にする第4制御モードM4を実行可能である。
図6に記載の例では、第4制御モードM4の実行時に、第3系統の電力供給装置5、および、第4系統の電力供給装置6の両方から供給される交流電力を用いて、第2電動機Q2が駆動されるように構成される。また、第2電動機Q2によって第2プロペラP2が駆動されるように構成される。
【0094】
第2制御装置77は、第4開閉器86を閉状態、第5開閉器87を開状態、第6開閉器88を閉状態にする第5制御モードを実行可能である。第5制御モードの実行時には、第4系統の電力供給装置6は第2電動機Q2から切り離され、第3系統の電力供給装置5から供給される交流電力を用いて、第2電動機Q2が駆動されるように構成される。また、第2電動機Q2によって第2プロペラP2が駆動されるように構成される。
【0095】
第2制御装置77は、第4開閉器86を開状態、第5開閉器87を閉状態、第6開閉器88を閉状態にする第6制御モードを実行可能である。第6制御モードの実行時には、第3系統の電力供給装置5は第2電動機Q2から切り離され、第4系統の電力供給装置6から供給される交流電力を用いて、第2電動機Q2が駆動されるように構成される。また、第2電動機Q2によって第2プロペラP2が駆動されるように構成される。
【0096】
(第7開閉器34、第8開閉器44、第9開閉器54、第10開閉器64)
図5に例示されるように、第1系統の電力供給装置3は、第1変圧器32と第1整流回路35とを接続する第7交流電流路L7を開閉する第7開閉器34を有していてもよい。第7開閉器34は、例えば、コンタクタである。第7開閉器34は、第1制御装置76からの信号によって開閉される。代替的に、あるいは、付加的に、第1系統の電力供給装置3は、第7交流電流路L7を開閉する第5遮断器33(例えば、気中遮断器)を有していてもよい。第5遮断器33は、第1制御器71または第1制御装置76からの信号によって開閉される。
【0097】
図5に例示されるように、第2系統の電力供給装置4は、第2変圧器42と第2整流回路45とを接続する第8交流電流路L8を開閉する第8開閉器44を有していてもよい。第8開閉器44は、例えば、コンタクタである。第8開閉器44は、第1制御装置76からの信号によって開閉される。代替的に、あるいは、付加的に、第2系統の電力供給装置4は、第8交流電流路L8を開閉する第6遮断器43(例えば、気中遮断器)を有していてもよい。第6遮断器43は、第1制御器71または第1制御装置76からの信号によって開閉される。
【0098】
図5に例示されるように、第3系統の電力供給装置5は、第3変圧器52と第3整流回路55とを接続する第9交流電流路L9を開閉する第9開閉器54を有していてもよい。第9開閉器54は、例えば、コンタクタである。第9開閉器54は、第2制御装置77からの信号によって開閉される。代替的に、あるいは、付加的に、第3系統の電力供給装置5は、第9交流電流路L9を開閉する第7遮断器53(例えば、気中遮断器)を有していてもよい。第7遮断器53は、第2制御器72または第2制御装置77からの信号によって開閉される。
【0099】
図5に例示されるように、第4系統の電力供給装置5は、第4変圧器62と第4整流回路65とを接続する第10交流電流路L10を開閉する第10開閉器64を有していてもよい。第10開閉器64は、例えば、コンタクタである。第10開閉器64は、第2制御装置77からの信号によって開閉される。代替的に、あるいは、付加的に、第4系統の電力供給装置6は、第10交流電流路L10を開閉する第8遮断器63(例えば、気中遮断器)を有していてもよい。第8遮断器63は、第2制御器72または第2制御装置77からの信号によって開閉される。
【0100】
なお、第7開閉器34、第8開閉器44、第9開閉器54、第10開閉器64の構成は、第1の実施形態においても採用可能である。また、第5遮断器33、第6遮断器43、第7遮断器53、第8遮断器63の構成は、第1の実施形態においても採用可能である。
【0101】
(第1制御モードM1から第2制御モードM2への変更)
図6および
図7に記載の例において、第1制御装置76は、第1制御モードM1から第2制御モードM2に制御モードを変更する際に、第1インバータ37の内部パラメータである電動機定数を自動変更するように構成される。また、第1インバータ37は、第2制御モードM2が実行される際に、自動変更された電動機定数を含む内部パラメータと、第1インバータ37の外部から受け取る信号とに基づいて動作するように構成される。なお、電動機定数とは、電動機に固有の定数(例えば、電動機の電気抵抗を示す定数、電動機のリアクタンスを示す定数、電動機の時定数を示す定数)を意味するものとする。また、第1インバータ37が、第1インバータ37の外部から受け取る信号には、例えば、インバータの運転・停止指令、第1電動機Q1のトルク指令値を示す信号、第1電動機Q1の回転子の回転速度指令値を示す信号等が含まれる。
【0102】
第1制御モードM1の実行時に、第1インバータ37は、自動変更される前の電動機定数を含む内部パラメータと、上述の第1インバータ37の外部から受け取る信号とに基づいて動作するように構成される(より具体的には、自動変更される前の電動機定数を含む内部パラメータと、上述の第1インバータ37の外部から受け取る信号とに基づいて、第1インバータ37に入力される直流電圧をチョッピングするように構成される。)。また、第2制御モードM2の実行時に、第1インバータ37は、自動変更された電動機定数を含む内部パラメータと、上述の第1インバータ37の外部から受け取る信号とに基づいて動作するように構成される(より具体的には、自動変更された電動機定数を含む内部パラメータと、上述の第1インバータ37の外部から受け取る信号とに基づいて、第1インバータ37に入力される直流電圧をチョッピングするように構成される。)。
【0103】
第1制御モードM1が実行される通常運転時(
図6を参照。)と、第2制御モードM2が実行される時(
図7を参照。)とでは、1台のインバータ(より具体的には、第1インバータ37)が受け持つ第1電動機Q1の巻線の長さが変わるため、1台のインバータが受け持つ第1電動機Q1の電動機定数(電気抵抗、リアクタンス、時定数)も変わる。
図9には、第1制御モードM1から第2制御モードM2に制御モードが切り替えられることに応じて、第1インバータ37が受け持つ第1電動機Q1の巻線の長さが変わる様子が模式的に示されている。
【0104】
上述の例では、第1制御モードM1から第2制御モードM2に制御モードが変更される際に、第1インバータ37の内部パラメータである電動機定数(例えば、第1電動機Q1の電気抵抗を示す定数、第1電動機Q1のリアクタンスを示す定数、および/または、第1電動機Q1の時定数を示す定数)が自動変更される。このため、第1制御モードM1および第2制御モードM2の各々の実行時に、高効率に、第1電動機Q1を運転することができる。
【0105】
図6および
図7に記載の例では、第1制御装置76は、第1制御モードM1から第2制御モードM2に制御モードを変更する際に、第1通信回路85を用いた追従同期制御を有効状態から無効状態に切り替えるように構成される。例えば、第1制御装置76は、第1制御モードM1から第2制御モードM2に制御モードを変更する際に、第1インバータ37の内部パラメータの1つである、第1通信回路85を用いた通信の有無を特定するパラメータを、「有り」から「無し」に変更する。こうして、追従同期制御の解除が円滑に行われる。
【0106】
(第1制御モードM1から第3制御モードM3への変更)
図6および
図8に記載の例において、第1制御装置76は、第1制御モードM1から第3制御モードM3に制御モードを変更する際に、第2インバータ47の内部パラメータである電動機定数を自動変更するように構成される。また、第2インバータ47は、第3制御モードM3が実行される際に、自動変更された電動機定数を含む内部パラメータと、第2インバータ47の外部から受け取る信号とに基づいて動作するように構成される。なお、第2インバータ47が、第2インバータ47の外部から受け取る信号には、例えば、インバータの運転・停止指令、第1電動機Q1のトルク指令値を示す信号、第1電動機Q1の回転子の回転速度指令値を示す信号等が含まれる。
【0107】
第1制御モードM1の実行時に、第2インバータ47は、自動変更される前の電動機定数を含む内部パラメータと、上述の第2インバータ47の外部から受け取る信号とに基づいて動作するように構成される(より具体的には、自動変更される前の電動機定数を含む内部パラメータと、上述の第2インバータ47の外部から受け取る信号とに基づいて、第2インバータ47に入力される直流電圧をチョッピングするように構成される。)。また、第3制御モードM3の実行時に、第2インバータ47は、自動変更された電動機定数を含む内部パラメータと、上述の第2インバータ47の外部から受け取る信号とに基づいて動作するように構成される(より具体的には、自動変更された電動機定数を含む内部パラメータと、上述の第2インバータ47の外部から受け取る信号とに基づいて、第2インバータ47に入力される直流電圧をチョッピングするように構成される。)。
【0108】
第1制御モードM1が実行される通常運転時(
図6を参照。)と、第3制御モードM3が実行される時(
図8を参照。)とでは、1台のインバータ(より具体的には、第2インバータ47)が受け持つ第1電動機Q1の巻線の長さが変わるため、1台のインバータが受け持つ第1電動機Q1の電動機定数(電気抵抗、リアクタンス、時定数)も変わる。上述の例では、第1制御モードM1から第3制御モードM3に制御モードが変更される際に、第2インバータ47の内部パラメータである電動機定数(例えば、第1電動機Q1の電気抵抗を示す定数、第1電動機Q1のリアクタンスを示す定数、および/または、第1電動機Q1の時定数を示す定数)が自動変更される。このため、第1制御モードM1および第3制御モードM3の各々の実行時に、高効率に、第1電動機Q1を運転することができる。
【0109】
図6および
図8に記載の例では、第1制御装置76は、第1制御モードM1から第3制御モードM3に制御モードを変更する際に、第1通信回路85を用いた追従同期制御を有効状態から無効状態に切り替えるように構成される。
【0110】
(第4制御モードM4から第5制御モードへの変更)
第4制御モードM4から第5制御モードへの変更は、第1制御モードM1から第2制御モードM2への変更と同様である。よって、上述の「(第1制御モードM1から第2制御モードM2への変更)」の説明において、「第1制御モードM1」、「第2制御モードM2」、「第1制御装置76」、「第1インバータ37」、「第1電動機Q1」、「第1通信回路85」の用語を、それぞれ、「第4制御モードM4」、「第5制御モード」、「第2制御装置77」、「第3インバータ57」、「第2電動機Q2」、「第2通信回路89」に読み替えることにより、「(第4制御モードM4から第5制御モードへの変更)」の説明とみなし、「第4制御モードM4から第5制御モードへの変更」についての繰り返しとなる説明を省略する。
【0111】
(第4制御モードM4から第6制御モードへの変更)
第4制御モードM4から第6制御モードへの変更は、第1制御モードM1から第3制御モードM3への変更と同様である。よって、上述の「(第1制御モードM1から第3制御モードM3への変更)」の説明において、「第1制御モードM1」、「第3制御モードM3」、「第1制御装置76」、「第2インバータ47」、「第1電動機Q1」、「第1通信回路85」の用語を、それぞれ、「第4制御モードM4」、「第6制御モード」、「第2制御装置77」、「第4インバータ67」、「第2電動機Q2」、「第2通信回路89」に読み替えることにより、「(第4制御モードM4から第6制御モードへの変更)」の説明とみなし、「第4制御モードM4から第6制御モードへの変更」についての繰り返しとなる説明を省略する。
【0112】
(故障の検知から制御モードの変更までの流れ)
図5に記載の例では、船舶用電力供給システム1Bは、第1系統の電力供給装置3の故障、および、第2系統の電力供給装置4の故障の各々を検知可能な故障検知装置91を備える。故障検知装置91の少なくとも一部が、第1制御器71によって構成されていてもよい。代替的に、あるいは、付加的に、故障検知装置91の少なくとも一部が、第1制御装置76によって構成されていてもよい。
【0113】
第1制御モードM1の実行時(
図6を参照。)に、故障検知装置91が第1系統の電力供給装置3の故障を検知すると、第1制御装置76は、第1開閉器81を閉状態から開状態に切り替え、第2開閉器82を閉状態から開状態に切り替える(
図10を参照。)。付加的に、第1制御モードM1の実行時に、故障検知装置91が第1系統の電力供給装置3の故障を検知すると、第1制御装置76は、第7開閉器34を閉状態から開状態に切り替え、第8開閉器44を閉状態から開状態に切り替えてもよい(
図10を参照。)。
【0114】
第2開閉器82が開状態に切り替えられた後、第1制御装置76は、第2インバータ47の内部パラメータを半出力用のパラメータに自動変更する。より具体的には、第2開閉器82が開状態に切り替えられた後、第1制御装置76は、第2インバータ47の内部パラメータである電動機定数(例えば、第1電動機Q1の電気抵抗を示す定数、第1電動機Q1のリアクタンスを示す定数、第1電動機Q1の時定数を示す定数)を自動変更する。付加的に、第2開閉器82が開状態に切り替えられた後、第2インバータ47の上限設定パラメータの1つであるトルク電流指令の上限値を、半減された値に自動変更してもよい。
【0115】
第1開閉器81および第2開閉器82が開状態に切り替えられた後の任意のタイミングで、第1制御装置76は、第3開閉器83を開状態から閉状態に切り替える。また、第2インバータ47の内部パラメータである電動機定数が自動変更された後、第1制御装置76は、第2開閉器82を開状態から閉状態に切り替えて、第3制御モードM3を実行する(
図8を参照。)。付加的に、第2インバータ47の内部パラメータである電動機定数が自動変更された後、第1制御装置76は、第8開閉器44を開状態から閉状態に切り替えるように構成されてもよい。
【0116】
第1制御モードM1の実行時に、故障検知装置91が第2系統の電力供給装置4の故障を検知すると、第1制御装置76は、第1開閉器81を閉状態から開状態に切り替え、第2開閉器82を閉状態から開状態に切り替える(
図10を参照。)。付加的に、第1制御モードM1の実行時に、故障検知装置91が第2系統の電力供給装置4の故障を検知すると、第1制御装置76は、第7開閉器34を閉状態から開状態に切り替え、第8開閉器44を閉状態から開状態に切り替えてもよい(
図10を参照。)。
【0117】
第1開閉器81が開状態に切り替えられた後、第1制御装置76は、第1インバータ37の内部パラメータを半出力用のパラメータに自動変更する。より具体的には、第1開閉器81が開状態に切り替えられた後、第1制御装置76は、第1インバータ37の内部パラメータである電動機定数(例えば、第1電動機Q1の電気抵抗を示す定数、第1電動機Q1のリアクタンスを示す定数、第1電動機Q1の時定数を示す定数)を自動変更する。付加的に、第1開閉器81が開状態に切り替えられた後、第1インバータ37の上限設定パラメータの1つであるトルク電流指令の上限値を、半減された値に自動変更してもよい。
【0118】
第1開閉器81および第2開閉器82が開状態に切り替えられた後の任意のタイミングで、第1制御装置76は、第3開閉器83を開状態から閉状態に切り替える。また、第1インバータ37の内部パラメータである電動機定数が自動変更された後、第1制御装置76は、第1開閉器81を開状態から閉状態に切り替えて、第2制御モードM2を実行する(
図7を参照。)。付加的に、第1インバータ37の内部パラメータである電動機定数が自動変更された後、第1制御装置76は、第7開閉器34を開状態から閉状態に切り替えるように構成されてもよい。
【0119】
図5に記載の例では、船舶用電力供給システム1Bは、第3系統の電力供給装置5の故障、および、第4系統の電力供給装置6の故障の各々を検知可能な第2の故障検知装置92を備える。第2の故障検知装置92の少なくとも一部が、第2制御器72によって構成されていてもよい。代替的に、あるいは、付加的に、第2の故障検知装置92の少なくとも一部が、第2制御装置77によって構成されていてもよい。
【0120】
第2の故障検知装置92によって故障が検知されてから制御モードが変更されるまでの流れは、故障検知装置91によって故障が検知されてから制御モードが変更されるまでの流れと同様である。よって、上述の「(故障の検知から制御モードの変更までの流れ)」の説明において、「第1制御モードM1」、「故障検知装置91」、「第1系統の電力供給装置3」、「第1開閉器81」、「第2開閉器82」、「第7開閉器34」、「第8開閉器44」、「第1制御装置76」、「第2インバータ47」、「第1電動機Q1」、「第3開閉器83」、「第3制御モードM3」、「第2系統の電力供給装置4」、「第1インバータ37」、「第2制御モードM2」の用語を、それぞれ、「第4制御モードM4」、「第2の故障検知装置92」、「第3系統の電力供給装置5」、「第4開閉器86」、「第5開閉器87」、「第9開閉器54」、「第10開閉器64」、「第2制御装置77」、「第4インバータ67」、「第2電動機Q2」、「第6開閉器88」、「第6制御モード」、「第4系統の電力供給装置6」、「第3インバータ57」、「第5制御モード」に読み替えることにより、「第2の故障検知装置92によって故障が検知されてから制御モードが変更されるまでの流れ」の説明とみなし、当該流れについての繰り返しとなる説明を省略する。
【0121】
(第2の実施形態の変形例)
図5に記載の例では、第1変圧器32がデルタ-デルタ型の変圧器であり、第2変圧器42がデルタ-スター型の変圧器である。代替的に、
図11に例示されるように、第1変圧器32がスター-スター型の変圧器であり、第2変圧器42がスター-デルタ型の変圧器であってもよい。
【0122】
図5に記載の例では、第3変圧器52がデルタ-デルタ型の変圧器であり、第4変圧器62がデルタ-スター型の変圧器である。代替的に、
図11に例示されるように、第3変圧器52がスター-スター型の変圧器であり、第4変圧器62がスター-デルタ型の変圧器であってもよい。
【0123】
図5、
図11のいずれに記載の例においても、第1変圧器32の1次巻線の電圧位相は、第2変圧器42の1次巻線の電圧位相と同位相であるように構成され、第3変圧器52の1次巻線の電圧位相は、第4変圧器62の1次巻線の電圧位相と同位相であるように構成され、第1変圧器32の1次巻線の電圧位相は、第3変圧器52の1次巻線の電圧位相と15度だけ異なるように構成されることが好ましい。
【0124】
更に代替的に、第1系統の電力供給装置3、および、第2系統の電力供給装置4として、
図5に示される構成(例えば、第1変圧器32がデルタ-デルタ型の変圧器であり、第2変圧器42がデルタ-スター型の変圧器である構成)が採用され、第3系統の電力供給装置5、および、第4系統の電力供給装置6として、
図11に示される構成(例えば、第3変圧器52がスター-スター型の変圧器であり、第4変圧器62がスター-デルタ型の変圧器である構成)が採用されてもよい。
【0125】
(第3の実施形態)
図1乃至
図12を参照して、第3の実施形態における船舶100について説明する。
図12は、第3の実施形態における船舶100の一例を示す概略2面図である。
図12の上側には概略側面図が記載され、
図12の下側には概略底面図が記載されている。
【0126】
(構成・作用)
図12に例示されるように、第3の実施形態における船舶100は、船体105を備える。船体105には、第1の実施形態における船舶用電力供給システム1A(
図1乃至
図4を参照。)、または、第2の実施形態における船舶用電力供給システム1B(
図5乃至
図11を参照。)が搭載される。
【0127】
図12に記載の例では、船体105の船尾部分に、第1プロペラP1、および、第2プロペラP2が配置されている。
【0128】
(効果)
第3の実施形態における船舶100は、第1の実施形態における船舶用電力供給システム1Aまたは第2の実施形態における船舶用電力供給システム1Bを搭載しているため、第3の実施形態は、第1の実施形態または第2の実施形態と同様の効果を奏する。
【0129】
本発明は上記各実施形態または各変形例に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、各実施形態又は各変形例は適宜変形又は変更され得ることは明らかである。また、各実施形態又は各変形例で用いられる種々の技術は、技術的矛盾が生じない限り、他の実施形態又は他の変形例にも適用可能である。さらに、各実施形態又は各変形例における任意付加的な構成は、適宜省略可能である。
【符号の説明】
【0130】
1、1A、1B…船舶用電力供給システム、2…交流母線、3…第1系統の電力供給装置、4…第2系統の電力供給装置、5…第3系統の電力供給装置、6…第4系統の電力供給装置、11…発電機、12…交流母線、14…整流器、15…インバータ、16…推進用電動機、17…プロペラ、31…第1遮断器、32…第1変圧器、33…第5遮断器、34…第7開閉器、35…第1整流回路、37…第1インバータ、41…第2遮断器、42…第2変圧器、43…第6遮断器、44…第8開閉器、45…第2整流回路、47…第2インバータ、51…第3遮断器、52…第3変圧器、53…第7遮断器、54…第9開閉器、55…第3整流回路、57…第3インバータ、61…第4遮断器、62…第4変圧器、63…第8遮断器、64…第10開閉器、65…第4整流回路、67…第4インバータ、71…第1制御器、72…第2制御器、76…第1制御装置、77…第2制御装置、81…第1開閉器、82…第2開閉器、83…第3開閉器、85…第1通信回路、86…第4開閉器、87…第5開閉器、88…第6開閉器、89…第2通信回路、91…故障検知装置、92…第2の故障検知装置、100…船舶、105…船体、311…デルタ結線、411…デルタ結線、G…発電機、G1…第1発電機、G2…第2発電機、G3…第3発電機、L13…第1交流電流路、L23…第2交流電流路、L5…第3交流電流路、L33…第4交流電流路、L43…第5交流電流路、L6…第6交流電流路、L7…第7交流電流路、L8…第8交流電流路、L9…第9交流電流路、L10…第10交流電流路、M1…第1制御モード、M2…第2制御モード、M3…第3制御モード、M4…第4制御モード、P1…第1プロペラ、P2…第2プロペラ、Q1…第1電動機、Q2…第2電動機、S1、S2…信号、Um…U相主巻線、Us…U相位相巻線、Vm…V相主巻線、Vs…V相位相巻線、Wm…W相主巻線、Ws…W相位相巻線
【要約】
【課題】変圧器を交流母線に接続する際の励磁突入電流を抑制可能な船舶用電力供給システムを提供する。
【解決手段】船舶用電力供給システム1は、交流母線2と、第1変圧器32、第1整流回路35、および、第1インバータ37を有する第1系統の電力供給装置3と、第2変圧器42、第2整流回路45、および、第2インバータ47を有する第2系統の電力供給装置4と、を具備する。第1変圧器32がデルタ-デルタ型の変圧器であり、且つ、第2変圧器42がデルタ-スター型の変圧器であるか、あるいは、第1変圧器32がスター-スター型の変圧器であり、且つ、第2変圧器42がスター-デルタ型の変圧器である。
【選択図】
図1