(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
G02B 27/01 20060101AFI20241125BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20241125BHJP
F21V 5/04 20060101ALI20241125BHJP
F21V 9/14 20060101ALI20241125BHJP
B60K 35/23 20240101ALI20241125BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20241125BHJP
【FI】
G02B27/01
F21S2/00 340
F21V5/04 100
F21V9/14
F21S2/00 441
B60K35/23
F21Y115:10
(21)【出願番号】P 2023215567
(22)【出願日】2023-12-21
(62)【分割の表示】P 2020078094の分割
【原出願日】2020-04-27
【審査請求日】2023-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永井 利昌
(72)【発明者】
【氏名】杉山 寿紀
(72)【発明者】
【氏名】小野 長平
【審査官】山崎 晶
(56)【参考文献】
【文献】特許第7409953(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01
F21S 2/00
F21V 5/04
F21V 9/14
B60K 35/23
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両であって、
ウィンドシールドと、
車両情報を取得する情報取得部と、
光源装置と、
前記情報取得部により取得された前記車両情報に基づき、前記光源装置からの光を変調すること
で表示領域へ投影するための映像を作成する表示パネルと、
前記表示パネルで作成された前記映像を反射して前記ウィンドシールドの表示領域へ投影する反射ミラーと、
を備え、
前記光源装置は、
光源と、
前記光源と対向して配置され、前記光源から入射した光の焦点距離を調整する反射部を含むコリメータと、
前記コリメータの出射側に配置される導光体と、
を備え、
前記コリメータの反射部は、前記光源から出射し、前記コリメータに入射した光を略平行光に変換する通常焦点エリア、前記コリメータに入射した光を前記略平行光に比べ僅かに発散する光に変換する長焦点エリア、前記コリメータに入射した光を前記略平行光に比べ僅かに収束する光に変換する短焦点エリアを含む、
車両。
【請求項2】
請求項1に記載の車両において、
前記通常焦点エリア、前記短焦点エリア、および前記長焦点エリアにおける反射面の曲率がそれぞれ異なる、
車両。
【請求項3】
請求項2に記載の車両において、
前記短焦点エリアは、前記通常焦点エリアよりも前記反射面の曲率が大きく、前記長焦点エリアは、前記通常焦点エリアよりも前記反射面の曲率が小さい、
車両。
【請求項4】
請求項1に記載の車両において、
前記コリメータには、複数の前記長焦点エリアと前記短焦点エリアとが交互に形成される、
車両。
【請求項5】
請求項1に記載の車両において、
前記通常焦点エリア、前記短焦点エリア、および前記長焦点エリアは互いに滑らかに接続される、
車両。
【請求項6】
請求項1に記載の車両において、
複数の前記光源と、
それぞれの前記光源と対応する複数の前記コリメータと、
を有し、
前記コリメータごとに前記反射部の形状が異なる、
車両。
【請求項7】
請求項1に記載の車両において、
複数の前記光源と、
それぞれの前記光源と対応する複数の前記コリメータと、
を有し、
複数の前記光源は一列に配置され、
中央側の前記光源に対応する前記コリメータの前記反射部の形状と、端部側の前記光源に対応する前記コリメータの前記反射部の形状とが互いに異なる、
車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源装置を備える車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、小型・軽量で、光利用率が高く、モジュール化されて面状の光源として容易に利用可能な光源装置が開示されている。特許文献1の光源装置は、複数の半導体光源素子を含む光源部と、複数の各々の半導体光源素子の発光軸上に配置された複数の各々のコリメータ素子を含むコリメータと、コリメータの出射側に配置された偏光変換素子と、偏光変換素子の出射側に配置された導光体とを備えている。
【0003】
また、複数の半導体光源素子および複数のコリメータ素子は、発光軸に対して直交する第1方向(X方向)に配列され、偏光変換素子は、第1方向に延在し、第1方向と発光軸に対応する第2方向とが成す平面に対して対称の位置に配置されている偏光ビームスプリッタおよび位相板を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の光源装置は、例えば車載用のヘッドアップディスプレイ(Head Up Display、以下では「HUD」と記載する場合がある)に用いられる。HUDは、車速やエンジン回転数などの走行情報やナビゲーション情報などの各種情報をウィンドシールド(フロントガラス)などに投射して表示する。HUDを用いると、運転者は、ダッシュボードに組み込まれる計器盤、いわゆるインパネなどに視線を移動することなく運転に必要な情報を得ることができる。このため、HUDは、自動車等の安全運転に寄与している。
【0006】
ところで、光源とコリメータとの相対位置が所定の位置からずれると、表示画像輝度や表示画像輝度ムラが所定の設計値から外れる場合がある。なお、ここでの表示画像輝度ムラとは、表示画像内の最小輝度を表示画像の中心輝度で割った値である。言い換えれば、輝度ムラとは、表示画像の中心輝度に対する表示画像内の最小輝度の割合で規定される。
【0007】
表示画像輝度や表示画像輝度ムラが設計値から外れた製品は不良品となる。しかし、光源とコリメータとの位置合わせには高い精度が要求されるため、製造歩留まりを向上させることが難しい。
【0008】
本発明は、このようなことに鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、製造歩留まりを向上させることが可能な光源装置を備える車両を提供することにある。
【0009】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴については、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。代表的な車両は、車両であって、ウィンドシールドと、車両情報を取得する情報取得部と、光源装置と、前記情報取得部により取得された前記車両情報に基づき、前記光源装置からの光を変調することで表示領域へ投影するための映像を作成する表示パネルと、前記表示パネルで作成された前記映像を反射して前記ウィンドシールドの表示領域へ投影する反射ミラーと、を備え、前記光源装置は、光源と、前記光源と対向して配置され、前記光源から入射した光の焦点距離を調整する反射部を含むコリメータと、前記コリメータの出射側に配置される導光体と、を備え、前記コリメータの反射部は、前記光源から出射し、前記コリメータに入射した光を略平行光に変換する通常焦点エリア、前記コリメータに入射した光を前記略平行光に比べ僅かに発散する光に変換する長焦点エリア、前記コリメータに入射した光を前記略平行光に比べ僅かに収束する光に変換する短焦点エリアを含む。
【発明の効果】
【0011】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、光源装置を備える車両において、製造歩留まりを向上させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施の形態によるヘッドアップディスプレイ装置を搭載した車両の構成例を示す概略図である。
【
図2】
図1における映像表示ユニット周りの構成例を示す概略図である。
【
図3】
図2における映像表示ユニット周りのより詳細な構成例および動作例を示す図である。
【
図4】
図3の映像表示ユニットを含んだHUD装置の外形例を示す斜視図である。
【
図6】コリメータの構成の一例を示す断面図である。
【
図7】
図1のヘッドアップディスプレイ装置に含まれる制御系の主要部の構成例を示すブロック図である。
【
図8】
図6において、車両情報の取得に関わる箇所の構成例を示すブロック図である。
【
図9】実施例に係るコリメータの構成を説明する図である。
【
図10】実施例に係る表示画像輝度の分布を示す図である。
【
図11】実施例に係る表示画像輝度ムラの分布を示す図である。
【
図13】比較例に係るコリメータの構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0014】
《HUD装置の概要》
図1は、本発明の一実施の形態によるヘッドアップディスプレイ装置を搭載した車両の構成例を示す概略図である。
図1のヘッドアップディスプレイ(HUD)装置1は、車両2に搭載される。車両2は、代表的には、自動車であるが、必ずしもこれに限定されず、場合によっては鉄道車両等であってもよい。HUD装置1は、車両2の各部に設置された各種センサなどから車両情報4を取得する。各種センサは、例えば、車両2で生じた各種イベントを検出したり、走行状況に係る各種パラメータの値を定期的に検出したりする。
【0015】
車両情報4には、例えば、車両2の速度情報やギア情報、ハンドル操舵角情報、ランプ点灯情報、外光情報、距離情報、赤外線情報、エンジンON/OFF情報、車内外のカメラ映像情報、加速度ジャイロ情報、GPS(Global Positioning System)情報、ナビゲーション情報、車車間通信情報、および路車間通信情報などが含まれる。GPS情報の中には、現在時刻の情報も含まれる。HUD装置1は、このような車両情報4に基づいて、映像表示ユニット12を用いてウィンドシールド3の表示領域5へ投影映像を投影する。これによって、HUD装置1は、投影映像が重畳された風景を車両2の運転者に視認させる。
【0016】
図2は、
図1における映像表示ユニット周りの構成例を示す概略図である。
図2に示す映像表示ユニット12は、映像表示装置35と、反射ミラーM1,M2とを備える。反射ミラーM1は、例えば、凹面鏡(拡大鏡)である。映像表示装置35は、例えば、光源装置100(詳しくは後述する)から出射される投射光を用いてLCD(Liquid Crystal Display)に形成された映像を投射するプロジェクタである。LCDは、制御部から指示された映像データに基づいて映像を作成し、表示する。反射ミラーM1,M2は、例えば、自由曲面ミラーや光軸非対称の形状を有するミラーである。反射ミラーM2は、映像表示装置35で作成(表示)された映像をミラーM1へ向けて反射する。反射ミラーM1は、反射ミラーM2で反射された映像をウィンドシールド3へ向けて反射および拡大し、開口部7を介して表示領域5へ投影する。
【0017】
これにより、運転者6は、表示領域5に投射された投影映像を、透明のウィンドシールド3の先の虚像として、車外の風景(道路や建物、人など)に重畳される形で視認する。投影映像(虚像)の中には、例えば、道路標識や、自車の現速度や、風景上の対象物に付加される各種情報(AR情報)など、様々なものが含まれる。なお、
図2では、例えば、反射ミラーM1の設置角度を調整することで、ウィンドシールド3上の表示領域5の位置を調整可能となっており、運転者6が視認する虚像の位置を上下方向に調整可能となっている。また、例えば、反射ミラーM1をより大面積化することなどにより、表示領域5の面積を拡大でき、より多くの情報を表示領域5へ投影することが可能になる。これにより、風景上の対象物に各種情報を付加して表示するようなAR機能が実現される。
【0018】
図3は、
図2における映像表示ユニット周りのより詳細な構成例および動作例を示す図である。
図4は、
図3の映像表示ユニットを含んだHUD装置の外形例を示す斜視図である。
図3に示されるように、
図2の映像表示装置35は、詳細には、投射光を出射する光源装置100と、光源装置100からの投射光を変調することで表示領域5へ投影するための映像を作成(表示)する表示パネル64とを有する。光源装置100は、代表的には、LED(Light Emitting Diode)光源を含む。表示パネル64は、代表的には、液晶パネル(LCD)であり、入力された映像データに応じて、光源装置100からの光の透過率を画素毎に変調することで映像データに対応する映像を形成する。
【0019】
表示パネル64と反射ミラーM2との間には集光レンズ63が設置される。反射ミラーM1には、反射ミラーM1の設置角度を変更するための駆動機構62が取り付けられる。駆動機構62は、ステッピングモータ等を含む。駆動機構62は、反射ミラーM1の設置角度を変更することにより虚像の位置を調整する。
【0020】
また、
図3において、映像表示装置35、駆動機構62付きの反射ミラーM1、反射ミラーM2および集光レンズ63は、図示しない各種制御部と共に筐体61内に収容される。
【0021】
図4において、筐体61には、開口部7が形成され、当該開口部7に、グレアトラップ等と呼ばれる透明色のカバー部材71が設置される。筐体61内には、
図3に示したように、反射ミラーM2からの光をカバー部材71(開口部7)に向けて反射するように反射ミラーM1が設置される。
【0022】
《光源装置の構成》
次に、光源装置100の構成について説明する。
図5は、光源装置の構成の一例を示す断面図である。
図5に示すように、光源装置は、基板上に設けられたLED素子(光源)120、コリメータ140、偏光変換素子150、導光体160等を備えている。なお、
図5には1個のLED素子のみ示されているが、基板110上には複数(例えば8個)のLED素子120が設けられている。
【0023】
コリメータ140は、LED素子ごとに設けられ、各コリメータは、対応するLED素子120に対して所定の位置に(相対位置)に設置されている。すなわち、コリメータ140の個数は、LED素子120の個数と同数である。コリメータ140は、LED素子120から出射され、コリメータ140に入射する光の進行方向を調整する光学部材である。具体的には、コリメータ140は、反射部142において、反射部の形状を適宜最適化することにより、入射した光を略平行光に変換する。
【0024】
コリメータ140の出射側すなわちLED素子120と反対側には、偏光変換素子150が設けられている。コリメータ140は、LED素子120から出射した光が偏光変換素子150へ向かうように略平行光に変換する。
【0025】
図6は、コリメータの構成の一例を示す断面図である。
図6に示すように、コリメータ140の入射部141は、LED素子120と対向しており、LED素子120に対して凹んだ形状となっている。
【0026】
ここで以下LED素子120の中央から出射する光を、コリメータ140の反射部142において、略平行光に変換するエリアを通常焦点エリア、前記略平行光に対して、相対的に発散光に変換するエリアを長焦点エリア、前記略平行光に対して相対的に収束光に変換するエリアを短焦点エリアと定義する。
【0027】
コリメータ140の反射部142は、
図6に示すように、LED素子120から出射し、コリメータ140に入射した光を略平行光に変換する通常焦点エリア142a、入射した光を前記略平行光に比べ僅かに発散する光に変換する長焦点エリア142c、入射した光を前記平行光に比べ僅かに収束する光に変換する短焦点エリア142bを含んでいる。
【0028】
通常焦点エリア142a、短焦点エリア142b、および長焦点エリア142cは、外側の反射面の曲率がそれぞれ異なる。短焦点エリア142bは、通常焦点エリア142aよりも反射面の曲率が大きい。一方、長焦点エリア142cは、通常焦点エリア142aよりも反射面の曲率が小さい。
図6では、LED素子120側から見て、複数の長焦点エリア142cと短焦点エリア142cとが交互に形成されている。また、LED素子120から最も遠い位置には通常焦点エリア142aが形成されている。なお、各焦点エリアの配置はこれに限定されず、例えば、通常焦点エリア142a、短焦点エリア142b、および長焦点エリア142cが交互に設けられてもよい。また、LED素子120から最も遠い位置に短焦点エリア142bまたは長焦点エリア142cが設けられてもよい。
【0029】
このように、コリメータ140の反射部142に通常焦点エリア142a、短焦点エリア142b、および長焦点エリア142cを設けることにより、LED素子120に対するコリメータ140の相対位置がずれた場合でも、表示画像輝度や表示画像輝度ムラの変動が抑えられるようになっている。
【0030】
反射部142の形状は、コリメータ140ごとに異なってもよい。例えば、複数のコリメータ140が一列に配置された場合、中央側のコリメータ140と端部側のコリメータ140とで反射部142の形状が互いに異なってもよい。これにより、光学系を最適化し、光学性能を向上させ、光の利用効率を向上させることが可能となる。
【0031】
また、隣り合う焦点エリアは滑らかに接続される。
図6の例では、短焦点エリア142bおよび長焦点エリア142cが滑らかに接続される。また、長焦点エリア142cおよび通常焦点エリア142aが滑らかに接続される。なお、
図6以外にも、短焦点エリア142bおよび通常焦点エリア142aも滑らかに接続される。すなわち、通常焦点エリア142a、短焦点エリア142b、および長焦点エリア142cは互いに滑らかに接続される。
【0032】
具体的には、各焦点エリアの曲率は一様でなく、焦点エリアが接する領域では互いの焦点エリアの曲率がほぼ同じになっている。例えば短焦点エリア142bおよび長焦点エリア142cが接続される領域の曲率は、例えば通常焦点エリア142aと同等の曲率となる。したがって、短焦点エリア142bおよび長焦点エリア142cは部分的に通常焦点エリア142aと同等の機能を含むこととなる。このため、
図6のように通常焦点エリア142aの個数が少なくても、光源装置100の能力低下は抑えられる。
【0033】
図12は、従来のコリメータの断面図である。
図12に示すように、従来のコリメータ540の反射部542は、通常焦点エリア542aのみとなっている。このため、LED素子120に対するコリメータ540の相対位置がずれると、表示画像の輝度や表示画像の輝度ムラの変動が大きかった。
【0034】
偏光変換素子150は、
図5に示すように、偏光変換プリズム151および波長板(位相差板)152を含む。偏光変換プリズム151は、コリメータ140と対向して配置されている。偏光変換プリズム151に入射した光の一部は、偏光変換プリズム151をそのまま透過する。この光は、偏光変換プリズム151の出射側中央部から出射し、導光体160へ入射する。
【0035】
一方、これ以外の光は、偏光変換プリズム151内で反射した後、偏光変換プリズム151の出射側中央部を取り囲む出射側周辺部から出射する。偏光変換プリズムの出射側周辺部には波長板152が設けられ、偏光変換プリズム151の出射側周辺部から出射した光は、波長板152に入射する。波長板152に入射した光は、波長板152で所定の偏光変換が行われた後、導光体160へ入射する。
【0036】
導光体160は、
図5に示すように、例えば断面略三角形の角錐状である。導光体反射部162には、
図5に示すように、多数の反射面162aと連接面162bとが交互に鋸歯状に形成されている。導光体入射部161から入射した光は、導光体反射部162の反射面162aで反射し、導光体出射部へ向けて進行する。
【0037】
導光体出射部163と対向する位置には拡散板170が設けられている。また、拡散板170の出射側には表示パネル64が設けられている。導光体出射部163から出射した光は、拡散板170により強度が均一化される。拡散板170から出射した光は、映像の投射光として表示パネル64へ入射する。このように、コリメータ140から出射した光は、導光体160の働きにより図示で上方に配置された表示パネル64の入射面に導かれる。
【0038】
《HUD装置の制御系の構成》
図7は、
図1のヘッドアップディスプレイ装置に含まれる制御系の主要部の構成例を示すブロック図である。
図8は、
図7において、車両情報の取得に関わる箇所の構成例を示すブロック図である。
図7に示すヘッドアップディスプレイ(HUD)装置1は、制御部(ECU:Electronic Control Unit)10と、スピーカ11と、映像表示ユニット12とを備える。映像表示ユニット12は、
図3に示したような、映像表示装置35や、駆動機構62付きの反射ミラーM1等を含む。
【0039】
制御部10は、主に、HUD装置1における投影映像(虚像)の表示の制御や、音声出力の制御などを行う。制御部10は、例えば、配線基板などによって構成され、当該配線基板は、例えば、
図4の筐体61内に搭載される。制御部10は、配線基板上に実装される車両情報取得部15、マイクロコントローラ(MCU)16、不揮発性メモリ17、揮発性メモリ18、音声用ドライバ19、表示用ドライバ20、および通信部21等を備える。MCU16は、広く知られているように、CPU(Central Processing Unit)に加えて、各種周辺機能を備えている。したがって、
図7の制御部10内のMCU16を除く各ブロックは、適宜、MCU16内に搭載されてもよい。
【0040】
車両情報取得部15は、例えば、CAN(Controller Area Network)インタフェースやLIN(Local Interconnect Network)インタフェースなどであり、CANやLINなどの通信プロトコルに基づいて車両情報4を取得する。車両情報4は、
図8に示されるように、車両情報取得部15に接続される各種センサなどの情報取得デバイスによって生成される。
図8には、各種情報取得デバイスの一例が示される。
【0041】
例えば、車速センサ41は、
図1の車両2の速度を検出し、検出結果となる速度情報を生成する。シフトポジションセンサ42は、現在のギアを検出し、検出結果となるギア情報を生成する。ハンドル操舵角センサ43は、現在のハンドル操舵角を検出し、検出結果となるハンドル操舵角情報を生成する。ヘッドライトセンサ44は、ヘッドライトのON/OFFを検出し、検出結果となるランプ点灯情報を生成する。
【0042】
照度センサ45および色度センサ46は、外光を検出し、検出結果となる外光情報を生成する。測距センサ47は、車両2と外部の物体との間の距離を検出し、検出結果となる距離情報を生成する。赤外線センサ48は、車両2の近距離における物体の有無や距離などを検出し、検出結果となる赤外線情報を生成する。エンジン始動センサ49は、エンジンのON/OFFを検出し、検出結果となるON/OFF情報を生成する。
【0043】
加速度センサ50およびジャイロセンサ51は、車両2の加速度および角速度をそれぞれ検出し、検出結果として、車両2の姿勢や挙動を表す加速度ジャイロ情報を生成する。温度センサ52は、車内外の温度を検出し、検出結果となる温度情報を生成する。例えば、温度センサ52によって、HUD装置1の周囲温度Taを検出することが可能である。ただし、
図4で述べたように、HUD装置1内に、別途、温度センサを搭載してもよい。
【0044】
路車間通信用無線送受信機53は、車両2と、道路、標識、信号等との間の路車間通信によって路車間通信情報を生成する。車車間通信用無線送受信機54は、車両2と周辺の他の車両との間の車車間通信によって車車間通信情報を生成する。車内用カメラ55および車外用カメラ56は、それぞれ、車内および車外を撮影することで車内のカメラ映像情報および車外のカメラ映像情報を生成する。具体的には、車内用カメラ55は、例えば、
図2の運転者6の姿勢や、眼の位置、動きなどを撮影するDMS(Driver Monitoring System)用のカメラなどである。この場合、撮像された映像を解析することで、運転者6の疲労状況や視線の位置などが把握できる。
【0045】
一方、車外用カメラ56は、例えば、車両2の前方や後方などの周囲の状況を撮影する。この場合、撮像された映像を解析することで、周辺に存在する他の車両や人などの障害物の有無、建物や地形、雨や積雪、凍結、凹凸などといった路面状況、および道路標識などを把握することが可能になる。また、車外用カメラ56には、例えば、走行中の状況を映像で記録するドライブレコーダなども含まれる。
【0046】
GPS受信機57は、GPS信号を受信することで得られるGPS情報を生成する。例えば、GPS受信機57によって、現在時刻を取得することが可能である。VICS(Vehicle Information and Communication System、登録商標)受信機58は、VICS信号を受信することで得られるVICS情報を生成する。GPS受信機57やVICS受信機58は、ナビゲーションシステムの一部として設けられてもよい。なお、
図8の各種情報取得デバイスに関しては、適宜、削除することや、他の種類のデバイスを追加することや、他の種類のデバイスに置き換えることが可能である。
【0047】
図7において、MCU16は、このような車両情報4を、車両情報取得部15を介して受信し、当該車両情報4などに基づいて、スピーカ11に向けた音声データや、映像表示装置35に向けた映像データなどを生成する。具体的には、MCU16は、音声データ生成部27と、映像データ生成部28と、歪み補正部29と、光源調整部30と、ミラー調整部31と、保護処理部75とを備える。これらの各部は、主に、不揮発性メモリ17または揮発性メモリ18に格納されるプログラムをCPUが実行することで実装される。
【0048】
音声データ生成部27は、必要に応じて、車両情報4などに基づく音声データを生成する。音声データは、例えば、ナビゲーションシステムの音声案内を行う場合や、AR機能によって運転者6に警告を発行する場合などで生成される。音声用ドライバ19は、当該音声データに基づいてスピーカ11を駆動し、スピーカ11に音声を出力させる。
【0049】
映像データ生成部28は、車両情報4などに基づいて、
図2等の表示領域5に投影される投影映像の表示内容を定める映像データを生成する。歪み補正部29は、映像データ生成部28からの映像データに対して歪み補正を加えた補正後の映像データを生成する。具体的には、歪み補正部29は、
図2に示したように、映像表示装置35からの映像を表示領域5に投影した場合に、ウィンドシールド3の曲率によって生じる映像の歪みを補正する。
【0050】
表示用ドライバ20は、歪み補正部29からの補正後の映像データに基づいて、映像表示装置35内の表示パネル64に含まれる各表示素子(画素)を駆動する。これによって、映像表示装置35は、補正後の映像データに基づき、表示領域5へ投影するための映像を作成(表示)する。光源調整部30は、映像表示装置35内の光源65の輝度を制御する。ミラー調整部31は、ウィンドシールド3における表示領域5の位置を調整する必要がある場合に、駆動機構62を介して映像表示ユニット12内の反射ミラーM1の設置角度を変更する。
【0051】
不揮発性メモリ17は、主に、MCU16内のCPUで実行されるプログラムや、MCU16内の各部の処理で使用する設定パラメータや、規定の音声データおよび映像データなどを予め記憶する。
【0052】
揮発性メモリ18は、主に、取得した車両情報4や、MCU16内の各部の処理過程で使用される各種データを適宜保持する。通信部21は、HUD装置1外部との間で、CANやLINなどの通信プロトコルに基づいて通信を行う。通信部21は、車両情報取得部15と一体であってもよい。なお、
図4の制御部(ECU)10内の各部は、適宜、FPGA(Field Programmable Gate Array)などに実装されてもよい。
【0053】
[実施例]
次に、本実施の形態のコリメータ140を含む光源装置を用いたHUDの実施例について説明する。
図9は、実施例に係るコリメータの構成を説明する図である。本実施例では、8個のコリメータ140が一列に配置されたものが用いられている。
【0054】
図9のZ軸は、LED素子120の中心とコリメータ140の中心とを通る軸であり、例えばLED基板の鉛直方向である。図示で鉛直方向のR軸は、コリメータの径方向の軸である。Z軸とR軸の交点は基準点Oである。一列に並んだコリメータのうち、中央4個の反射部142の構成は、
図9の式1で表される。一方、一列に並んだコリメータ140のうち、両端4個の反射部142の構成は、
図9の式2で表される。
【0055】
ここで、反射部142における反射面の形状(すなわち外形の形状)は、式1および式2において、R>0として、Z軸を回転中心とした同心円形状で定義される。
【0056】
図13は、比較例に係るコリメータの構成を説明する図である。
図13に示すZ軸およびR軸は、
図9と同様である。比較例のコリメータ540の反射部542の構成は、
図13の式3で表される。
【0057】
図10は、実施例に係る表示画像輝度の分布を示す図である。なお、
図10には、
図12で説明した比較例のコリメータ540を用いた結果も示されている。
図10の横軸は、LED素子に対するコリメータの位置ずれ量を示している。横軸の「0」は、LED素子に対するコリメータの理想的な取り付け位置である。
図10の縦軸は、コリメータが理想的な位置にあるときの表示画像輝度(以下、理想表示画像輝度とも称する)に対する表示画像輝度の割合(相対輝度)を示している。
【0058】
図10によれば、本実施例に係るコリメータ140が理想的な位置よりLED素子120とは反対側(図示で正側)にずれたとき、表示画像輝度の低下量は、比較例よりも小さくなっている。特に、コリメータ140がLED素子120から離れるにつれて、比較例との表示画像輝度の差分は大きくなっており、表示画像輝度の改善が見られる。
【0059】
なお、本実施例に係るコリメータ140が理想的な位置よりLED素子120側(図示で負側)にずれたとき、表示画像輝度は、従来のコリメータ540を用いた場合よりも小さくなっている。ただし、この領域の表示画像輝度は、理想表示画像輝度の90%以上となっている。したがって、この場合においても、使用上十分な表示画像輝度を確保できており、この領域での表示画像輝度の低下は問題とならない。このように、本実施例によれば、コリメータ140の位置がずれたときでも、表示パネル64に入射する投射光の光量の変動が抑えられている。
【0060】
次に、表示画像輝度ムラについて説明する。
図11は、実施例に係る表示画像輝度ムラの分布を示す図である。なお、
図11においても、比較例のコリメータ540を用いた結果が示されている。
図11の横軸は、LED素子120に対するコリメータ140の位置ずれ量を示している。横軸の「0」は、LED素子120に対するコリメータ140の理想的な位置である。
図11の縦軸は、表示画像の中心輝度に対する表示画像内における最小輝度の割合を表示画像輝度ムラとして示している。詳しくは、
図11の縦軸は、コリメータ140が理想的な位置にあるときの表示画像輝度ムラに対する表示画像輝度ムラ(相対輝度ムラ)を示している。
【0061】
図11に示すように、コリメータ140が理想的な位置よりLED素子120側(図示で負側)にずれた場合、およびコリメータ140が理想的な位置よりLED素子120とは反対側(図示で正側)にずれた場合のいずれにおいても、相対輝度ムラが改善している。すなわち、本実施例では、表示画像輝度ムラが小さくなっている。このように、本実施例によれば、コリメータ140の位置がずれたときでも、表示パネル64の各領域間における投射光の光量の変動が抑えられている。
【0062】
<本実施の形態による主な効果>
本実施の形態によれば、コリメータ140の反射部142は、通常焦点エリア142a、短焦点エリア142b、および長焦点エリア142cを含む。この構成によれば、LED素子120に対するコリメータ140の位置(相対位置)がずれた場合でも、表示画像輝度の低下が抑えられ、表示画像輝度ムラが改善する。これにより、光源であるLED素子120とコリメータ140との位置合わせの精度が緩和されるので、製造歩留まりを向上させることが可能となる。
【0063】
また、本実施の形態によれば、通常焦点エリア142a、短焦点エリア142b、および長焦点エリア142cにおける反射面の曲率がそれぞれ異なる。具体的には、短焦点エリア142bは、通常焦点エリア142aよりも反射面の曲率が大きく、長焦点エリア142cは、通常焦点エリア142aよりも反射面の曲率が小さい。この構成によれば、コリメータ140の位置ずれが生じた場合でも、表示パネル64へ供給される投射光の光量の低下、表示パネル64の各領域間における投射光の光量の変動が抑えられる。
【0064】
また、本実施の形態によれば、コリメータ140には、複数の長焦点エリア142cと短焦点エリア142bとが交互に形成される。この構成によれば、コリメータ140の位置ずれが生じた場合でも、表示パネル64へ供給される投射光の光量の低下、表示パネル64の各領域間における投射光の光量の変動が抑えられる。
【0065】
また、本実施の形態によれば、通常焦点エリア142a、短焦点エリア142b、および長焦点エリア142cは互いに滑らかに接続される。この構成によれば、位置ずれがない場合の光量を確保しつつ、表示パネル64へ供給される投射光の光量の低下、表示パネル64の各領域間における投射光の光量の変動が抑えられる。
【0066】
また、本実施の形態によれば、コリメータ140ごとに反射部142の形状が異なる。この構成によれば、光源装置100の光学系を最適化することが可能となる。
【0067】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、前述した実施の形態は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施の形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施の形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0068】
1…HUD装置、3…ウィンドシールド、5…表示領域、10…制御部(ECU)、35…映像表示装置、64…表示パネル、100…光源装置、140…コリメータ、142…反射部、142a…通常焦点エリア、142b…短焦点エリア、142c…長焦点エリア、160…導光体