(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】超音波イメージングを用いた動的試験方法
(51)【国際特許分類】
G01N 29/06 20060101AFI20241125BHJP
G01N 29/27 20060101ALI20241125BHJP
【FI】
G01N29/06
G01N29/27
(21)【出願番号】P 2023506144
(86)(22)【出願日】2021-07-29
(86)【国際出願番号】 FR2021051424
(87)【国際公開番号】W WO2022023681
(87)【国際公開日】2022-02-03
【審査請求日】2023-03-29
(32)【優先日】2020-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】508362664
【氏名又は名称】ヴァルレック チューブ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラッザリ,オリヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】ンダウ,バーダ
【審査官】福村 拓
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-150423(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0327520(US,A1)
【文献】米国特許第06162174(US,A)
【文献】特開平05-146437(JP,A)
【文献】特開2016-080567(JP,A)
【文献】特開2019-158876(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N29/00-G01N29/52
A61B 8/00-A61B 8/15
G01B17/00-G01B17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験対象金属部分(1)を表すデータを動的に取得するための方法であって、
前記試験対象金属部分(1)に関するデータを取得するステップであって、前記データは多素子センサ(2)によって得られ、前記多素子センサ(2)は送信素子および受信素子を備え、前記送信素子は、それぞれの超音波ショット(E)を前記試験対象金属部分(1)に向けて送信するように構成され、これにより、前記超音波ショット(E)は前記試験対象金属部分(1)を通って伝播することができ、前記受信素子は、前記超音波ショット(E)から生じた前記試験対象金属部分(1)で反射された波(R)を受信するように構成される、データ取得ステップを含み、
前記データ取得ステップは、1つの前記送信素子から前記超音波ショット(E)を送信するステップを含み、
前記受信素子は、聴取継続時間中に超音波を受信し、受信された前記超音波は、送信された前記超音波ショット(E)から生じた前記試験対象金属部分(1)で反射された前記波のうちの1つを含み、
前記受信素子が受信した前記波の関数として、前記試験対象金属部分(1)を表すデータを生成するステップをさらに含み、
前記データ取得ステップ中に、前記多素子センサ(2)と前記試験対象金属部分(1)との相対的移動を生成するように、前記試験対象金属部分(1)および前記多素子センサ(2)の中から1つを移動させるステップをさらに含み、
前記試験対象金属部分(1)を表す補正されたデータを生成するステップをさらに含み、
前記補正されたデータを生成するステップは、
前記多素子センサ(2)と前記試験対象金属部分(1)との相対的移動、基準位置、および基準瞬間に対する継続時間の関数として補正移動を計算するステップであって、前記基準位置は、前記基準瞬間における前記多素子センサ(2)と前記試験対象金属部分(1)との相対位置に対応し、前記基準瞬間は、前記データ取得ステップ中に発生し、前記補正移動は、前記基準瞬間に対する継続時間の瞬間における前記多素子センサ(2)と前記試験対象金属部分(1)との間の相対位置に対応する相対位置から前記基準位置までの、前記多素子センサ(2)と前記試験対象金属部分(1)との相対的移動に対応する、補正移動を計算するステップと、
前記継続時間の瞬間における前記多素子センサ(2)と前記試験対象金属部分(1)との相対位置から前記基準位置までの前記多素子センサ(2)と前記試験対象金属部分(1)との相対的移動をシミュレートすることによって、前記補正されたデータを生成するように、計算された前記補正移動の関数として前記試験対象金属部分(1)を表す前記データに補正を適用するステップと、
を含み、
前記聴取継続時間は、前記超音波ショットの送信瞬間に等しい開始瞬間を有し、前記聴取継続時間は、前記超音波ショットの送信と、前記多素子センサの前記受信素子のうちの1つによる、前記多素子センサに対向する前記試験対象金属部分(1)の面で反射された波の受信との間の最大飛行時間以上であり、その結果、前記補正移動は、前記超音波ショット(E)の送信瞬間と、前記超音波ショット(E)から生じた前記試験対象金属部分(1)で反射された前記波の前記受信素子による受信瞬間との間の伝播時間中の、前記多素子センサ(2)と前記試験対象金属部分(1)との間の相対的移動の関数として計算される、
ことを特徴とする、
動的取得方法。
【請求項2】
前記補正されたデータを生成するステップは、前記基準位置を選択するステップを含む、請求項1に記載の動的取得方法。
【請求項3】
前記データ取得ステップは、
複数回の超音波ショット(E)を送信するステップと、
前記超音波ショットのうちの1つを送信するステップごとに、それぞれの聴取継続時間中に、超音波を受信する前記多素子センサ(2)の前記受信素子の対応するステップであって、受信された前記超音波は、対応する送信された前記超音波ショットから生じた、前記試験対象金属部分(1)で反射された少なくとも1つの波を含む、ステップと、を含み、
前記基準瞬間は、前記複数回の超音波ショットのうちの1回の超音波ショットの送信瞬間であり、前記それぞれの聴取継続時間は、前記複数回の超音波ショットのうちの2回の連続する超音波ショットを分離する、前記基準瞬間に対する継続時間の倍数であり、その結果、前記補正移動は、2回の別個の超音波ショットが送信される間における前記多素子センサ(2)と前記試験対象金属部分(1)との間の相対的移動の関数として計算される、請求項1または2に記載の動的取得方法。
【請求項4】
前記試験対象金属部分(1)を表す前記データは、前記データ取得ステップ中に送信された前記複数回の超音波ショット(E)の部分画像を含み、前記試験対象金属部分(1)を表す前記データに補正を適用するステップは、補正された部分画像を生成して前記部分画像に示された前記多素子センサ(2)と前記試験対象金属部分(1)との間の相対位置から前記基準位置までの前記試験対象金属部分(1)の移動をシミュレートするために、前記部分画像を修正するステップを含む、請求項3に記載の動的取得方法。
【請求項5】
複数の補正された前記部分画像を重ね合わせることによって、前記試験対象金属部分(1)を表す画像を生成するステップをさらに含む、請求項4に記載の動的取得方法。
【請求項6】
前記試験対象金属部分(1)を表す前記データはマトリクスを含み、前記マトリクスの各行は、それぞれの超音波ショット(E)後に生成された前記試験対象金属部分(1)を表す前記データを含み、前記マトリクスの各列は、前記多素子センサ(2)のそれぞれの受信素子から生成された前記試験対象金属部分(1)を表す前記データを含み、前記補正移動を計算するステップは、超音波ショット(E)ごとに、前記多素子センサ(2)の受信素子の数に関してそれぞれの受信オフセットの計算を含み、前記補正を適用するステップは、前記マトリクスの行ごとに、前記行のセルに対して、対応する前記受信オフセットの前記セルの内容の、列の数に関するオフセットを適用するステップを含む、請求項3に記載の動的取得方法。
【請求項7】
前記試験対象金属部分(1)を表す前記データは、前記受信素子ごとに、前記受信素子の前記聴取
継続時間の関数として前記受信素子が受信した前記波の強度を表すそれぞれのAスキャン(18)を含む、請求項1に記載の動的取得方法。
【請求項8】
前記補正移動を計算するステップは、前記それぞれのAスキャン(18)を複数の時間ブロック(17)に分割するステップを含む、請求項7に記載の動的取得方法。
【請求項9】
前記補正移動を計算するステップは、前記多素子センサ(2)と前記試験対象金属部分(1)との間の相対的移動の関数として、前記複数の受信素子のうちの1つの前記受信素子による信号受信継続時間(d
tp)を計算するステップを含み、前記それぞれのAスキャン(18)のうちの1つの各時間ブロック(17)は、前記試験対象金属部分(1)に対する前記多素子センサの相対的移動のための前記受信素子の受信継続時間(d
tp)に等しい継続時間を有する、請求項8に記載の動的取得方法。
【請求項10】
前記補正移動を計算するステップは、受信素子の数に関するオフセットを、前記受信素子の相対位置、前記受信素子の信号受信継続時間(d
tp)、および前記超音波ショット(E)の送信瞬間の関数として計算するステップを含む、請求項9に記載の動的取得方法。
【請求項11】
元のAスキャンの所与の時間ブロック(17)に対して、前記オフセットは、前記多素子センサ(2)と前記試験対象金属部分(1)との間の相対的移動の方向における、次に連続する前記受信素子の最大数に等しく、かつ前記元のAスキャンの反射波を受信した前記受信素子から生じるものであり、前記信号受信継続時間(d
tp)の累積和は、前記基準瞬間と前記時間ブロック(17)の開始瞬間との間の経過時間よりも短い、請求項10に記載の動的取得方法。
【請求項12】
前記補正を適用するステップは、前記元のAスキャンの少なくとも1つの前記時間ブロック(17)に対して、目標Aスキャンの一部分を前記時間ブロック(17)に置き換えるステップを含み、前記目標Aスキャンは、前記多素子センサ(2)と前記試験対象金属部分(1)との相対的移動の方向において、前記元のAスキャンの反射波を受信した前記受信素子の後のn番目の受信素子から生成されたAスキャンに対応し、nは計算されたオフセットであり、前記目標Aスキャンの一部分は、前記時間ブロックと同じ開始および終了瞬間を有する、請求項11に記載の動的取得方法。
【請求項13】
前記多素子センサ(2)と前記試験対象金属部分(1)との間の相対的移動は、前記試験対象金属部分(1)の移動と、前記試験対象金属部分(1)の移動中における固定位置での前記多素子センサ(2)の保持とから生じ、前記試験対象金属部分(1)の移動は回転軸(3)を中心とした角度成分を有し、前記補正移動を計算するステップは、前記多素子センサ(2)と前記試験対象金属部分(1)との間の相対的移動中の前記試験対象金属部分(1)の角度移動(dθ)を計算するステップを含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の動的取得方法。
【請求項14】
前記補正移動を計算するステップは、前記多素子センサ(2)と前記試験対象金属部分(1)との間の相対的移動中の前記試験対象金属部分(1)の角度移動を計算するステップを含み、前記試験対象金属部分(1)を表す前記データを補正するステップは、前記基準位置までの前記データ取得ステップ中の前記試験対象金属部分(1)の角度移動の角度での前記試験対象金属部分(1)のその回転軸(3)を中心とした回転をシミュレートするステップを含む、請求項13に記載の動的取得方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製品の非破壊適合性試験などの非破壊試験の分野に関する。より具体的には、本発明は、管状金属製品内の欠陥の存在についての超音波試験に関する。
【背景技術】
【0002】
金属パイプは、発電、石油およびガス、ならびに機械工学などのエネルギー産業の様々な分野で広く使用されている。ほとんどの冶金製品と同様に、パイプは、鋼に含まれる材料、パイプの内面または外面上の亀裂、または多孔性など、製造欠陥の影響を受けやすい。一般に、鋼のマトリクス中のいかなる不均一性も、使用中のパイプの機械的強度に悪影響を及ぼす可能性が高い不完全さであると考えられている。
【0003】
そのため、パイプは、製造された後に、パイプの中の欠陥を検出するためだけでなく、これらの欠陥の危険性を評価するのに有用な、特にサイズ、深さ、位置、性質または向きを含む情報を適宜判定するため、およびこれらのパイプが規格に準拠しているかどうかを判定するためにも試験される。
【0004】
特に、超音波を用いた非破壊試験技術が使用される。超音波はパイプを通って伝播され、パイプで反射された波は、パイプの幾何学的形状に起因し得ない欠陥について検査される。材料の包含または不在などの欠陥は、波の伝播媒質内の変動を構成し、これにより、超音波が衝突したときにこれらの超音波のエネルギーの一部を反射させる。
【0005】
超音波を用いた試験に使用されるセンサの一種として、一般に「多素子トランスデューサ」または「フェーズドアレイトランスデューサ」と呼ばれる、多素子の逐次制御型のものが挙げられる。この種のセンサは、一般に圧電素子の形態の複数の電気音響素子を備える。これらの圧電素子は、「アレイ」を形成するように、試験対象のパイプを囲むセンサの活性面上で、または主整列方向に分布され得る。
【0006】
n個の素子を備える多素子センサを用いたFMC(フルマトリクスキャプチャ)と称される取得戦略では、センサの素子nの各々が1回励起され、これらのn個の素子は、n個の連続する超音波送信を発生させるために連続して励起される。処理回路は、n回の放射の各々に対して、センサのn個の素子の個々の応答(以下、Aスキャンと呼ぶ)を記録する。素子ごとに、この個々の応答は、その素子が所与の聴取継続時間にわたって受信した超音波の振幅を表す。これにより、TFM(トータルフォーカシングメソッド)アルゴリズムによってn2個の記録されたAスキャンを組み合わせて、パイプのセクションを表す画像を得ることが可能になる。
【0007】
パイプの表面全体にわたってTFM画像を得るために行う複数回の連続ショットからの取得は、パイプに対するセンサの順次的な相対的移動を必要とする。センサは、一連のn回のショット全体にわたってパイプに対して固定位置で保持されて、この位置におけるパイプの静的モードTFM画像を得る。次いで、センサは、パイプの次の画像を得るために、パイプに対して移動されて、次の一連のn回のショットを実行する。
【0008】
この方法は、パイプの正確な画像を得ることを可能にするが、長い取得時間を必要とする。そのため、試験対象部分の正確な画像を迅速かつ確実に得るための方法が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の背後にある1つの考えは、例えばTFM画像またはAスキャンなど、パイプの部分を表すデータを迅速かつ確実に取得することである。特に、本発明の背後にある1つの考えは、試験対象部分を表すデータを、このデータを取得するためのセンサと試験対象部分との相対的移動中に得ることである。より具体的には、本発明の背後にある1つの考えは、センサと試験対象部分との間の連続的な相対的移動中にこのデータを得ることである。本発明の背後にある1つの考えは、試験対象要素を表す確実で正確なデータを生成するために、センサと試験対象部分との相対的移動を考慮に入れることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一実施形態によれば、本発明は、試験対象部分を表すデータを動的に取得するための方法を提供する。該方法は、試験対象部分に関するデータを取得するステップを含む。ここで、データは多素子センサによって得られ、センサは送信素子および受信素子を備え、送信素子は、超音波ショットが試験対象部分を通って伝播するように、それぞれの超音波ショットを試験対象部分に向けて送信するように構成され、受信素子は、超音波ショットから生じた、試験対象部分で反射された、すなわち、部分的に反射された、および/または該部分を貫通し、次いで、少なくとも部分的に反射されて出る波を受信するように構成される。
【0011】
また、取得ステップは、1つの送信素子から超音波送信ショットを送信するステップを含む。
【0012】
また、受信素子は、聴取継続時間中に超音波を受信し、受信した超音波は、送信された超音波ショットから生じた試験対象部分で反射された波のうちの1つを含む。
【0013】
該方法は、受信素子が受信した波の関数として、試験対象部分を表すデータを生成するステップをさらに含む。
【0014】
また、該方法は、データ取得ステップ中に、センサと試験対象部分との相対的移動をさらに含むことを特徴とする。
【0015】
該方法は、試験対象部分を表す補正されたデータを生成するステップをさらに含む。
【0016】
補正されたデータを生成するステップは、センサと試験対象部分との相対的移動、基準位置、および基準瞬間に対する継続時間の関数として補正移動を計算するステップを含む。ここで、基準位置は、基準瞬間におけるセンサと試験対象部分との相対位置に対応し、基準瞬間は、データ取得ステップ中に発生し、補正移動は、基準瞬間に対する継続時間の瞬間におけるセンサと試験対象部分との相対位置に対応する相対位置から基準位置までの、センサと試験対象部分との相対的移動に対応する。
【0017】
また、補正されたデータを生成するステップは、計算された補正移動の関数として試験対象部分を表すデータに補正を適用するステップを含む。ここで、継続時間の瞬間におけるセンサと試験対象部分との相対位置から基準位置までの、センサと試験対象部分との相対的移動をシミュレートすることによって、補正されたデータが生成される。
【0018】
試験対象部分を表すデータは、試験対象部分の形状、厚さ、媒質の差異などに関する情報を意味すると理解される。例えば、試験対象部分を表すこのデータは、試験対象部分の断面画像の形態、試験対象部分の複数のAスキャンを含むマトリクス、試験対象部分のAスキャン、または任意の他の形態を想定することができる。さらに、基準瞬間に対する継続時間は、試験対象部分を表すデータの取得時間と基準瞬間との間の時間差に相当し、この継続時間は、取得時間が基準瞬間の前または後であるかに応じて正または負となる。
【0019】
これらの特徴により、試験対象部分を表すデータを迅速かつ確実に得ることが可能である。実際に、これらの特徴により、センサおよび試験対象部分が互いに対して移動しているので、このデータを迅速に得ることが可能である。さらに、センサと試験対象部分との相対的移動、基準位置、および基準瞬間に対する継続時間の関数として補正を適用することにより、基準位置における試験対象部分を表すデータを、データを取得するときのセンサと試験対象部分との相対的移動にかかわらず、高精度に得ることが可能である。
【0020】
本発明の実施形態によれば、このような動的取得方法は、以下の特徴のうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0021】
一実施形態によれば、センサと試験対象部分との相対的移動は連続的である。データを取得するときのこのような連続的な移動は、本方法に良好な実行速度を提供する。
【0022】
試験対象部分は、多くの形態を想定することができる。一実施形態によれば、試験対象部分はパイプである。このようなパイプは、円形、正方形、または他の形状など、多くの断面形状を想定することができる。同様に、このようなパイプは、一定のまたは変化される厚さを有することができる。
【0023】
一実施形態によれば、試験対象部分を表すデータに補正を適用するステップは、補正されたデータを生成するために、試験対象部分を表すデータに、例えば、試験対象部分の回転軸を中心とした仮想的回転などの仮想的移動を適用するステップを含む。仮想的移動は、試験対象部分のプロファイルを表すデータを修正して、試験対象部分の補正移動を、試験対象部分がこのような補正移動を物理的に行うことなくシミュレートすることを意味すると理解される。
【0024】
一実施形態によれば、補正移動を計算するステップは、該部分を表す1つのデータ、いくつかのデータ、または各データに対してそれぞれの補正移動を計算するステップを含む。一実施形態によれば、それぞれの補正移動のための基準瞬間に対する継続時間は、試験対象部分を表すデータによって表されるセンサと試験対象部分との相対位置に対応する瞬間と基準瞬間との間の時間差に対応する基準瞬間に対する継続時間に対応し、この継続時間は、補正される試験対象部分を表すデータによって表される瞬間が基準瞬間の前または後であるかに応じて正または負となる。一実施形態によれば、補正を適用するステップは、試験対象部分を表す1つのデータ、いくつかのデータ、または各データに対して、試験対象部分を表すデータに関連付けられたそれぞれの補正移動の関数として実行される。
【0025】
一実施形態によれば、データ取得ステップは、
・ 複数回の超音波ショットを、好ましくは経時的に連続して送信するステップと、
・ 超音波信号のうちの1つを送信するステップごとに、それぞれの聴取継続時間中に、センサの受信素子が超音波を受信する対応するステップと、
を含む。ここで、受信した超音波は、対応する送信された超音波ショットから生じた、試験対象部分で反射された少なくとも1つの波を含む。
【0026】
また、基準瞬間は、複数回の超音波ショットのうちの1回の超音波ショットの送信瞬間であり、継続時間は、複数回の超音波ショットのうちの2回の連続する超音波ショットを分離する継続時間の倍数である。これにより、補正移動は、2回の別個の超音波ショットが送信される間のセンサと試験対象部分との相対的移動の関数として計算される。
【0027】
2回の超音波ショット、好ましくはすべての超音波ショットは、別個の送信素子から送信された超音波間の干渉を回避するように、順次、すなわち別個の送信瞬間で発射される。
【0028】
補正移動は、センサと試験対象部分との相対的移動の異なる部分に対して計算することができる。一実施形態によれば、補正移動は、2回の別個の超音波ショット、例えば2回の連続する超音波ショットが送信される間のセンサと試験対象部分との相対的移動の関数として計算される。換言すれば、一実施形態によれば、基準位置は、超音波ショットの送信に対応する基準瞬間におけるセンサと試験対象部分との相対位置である。
【0029】
これらの特徴により、特に、センサの複数の送信素子から複数回のショットを撮影することにより、試験対象部分に関する情報を、試験対象部分の異なる配向で得ることが可能である。特に、各超音波ショットは、超音波の識別された経路に沿って試験対象部分に関するデータの組が取得されることを可能にし、経路は、送信素子の位置から始まり、受信した反射波を、反射波を受信する受信素子のそれぞれの位置で生成する。
【0030】
一実施形態によれば、補正されたデータを生成するステップは、基準位置を選択するステップを含む。一実施形態によれば、基準位置は、選択された超音波ショット中の試験対象部分とセンサとの相対位置に相当する。一実施形態によれば、基準位置、ひいては対応する基準瞬間は、例えばデフォルトで選択されることによって、例えば本方法を実施するシステムの記憶メモリに記憶されることによって、事前に提供される。一実施形態によれば、基準位置は、第1のショットの瞬間におけるセンサと試験対象部分との相対位置である。一実施形態によれば、基準位置は、最後に送信された超音波ショットの瞬間におけるセンサと試験対象部分との相対位置である。
【0031】
これにより、規定された位置、典型的には基準位置において、試験対象部分の鮮明な画像を得ることが可能である。
【0032】
試験対象部分を表すデータは、多くの形態を想定することができる。
【0033】
一実施形態によれば、試験対象部分を表すデータは、試験対象部分で反射され、経時的にセンサの1つもしくは複数または各受信素子が受信した超音波の強度を含む。この形態で試験対象部分を表すデータは、以下ではAスキャンと称される。一実施形態によれば、試験対象部分を表すデータは、Aスキャンを含む。Aスキャンは、センサの送信素子によって送信された同じ超音波信号から生じた、センサの受信素子のうちの1つ、いくつか、または各々が受信した超音波から生成される。
【0034】
一実施形態によれば、試験対象部分を表すデータは、Aスキャンを含む。Aスキャンは。センサの対応する送信素子によって連続的に送信された複数回の超音波ショットから生じた、また、好ましくはセンサのいくつかの別個の送信素子によって連続的に送信された複数回のそれぞれの超音波ショットから生じた、センサの受信素子の1つ、いくつか、または各々が受信した超音波から生成される。一実施形態によれば、試験対象部分を表すデータは、複数回の連続する超音波ショットから生成されたAスキャンと、超音波ショットから生じた試験対象部分で反射され、複数の受信素子が受信した波とを含むマトリクスを含む。
【0035】
一実施形態によれば、試験対象部分を表すデータは、取得ステップ中に送信された複数回の超音波ショットのうちの1回、数回、または各回の超音波ショットに関する部分画像を含む。ここで、試験対象部分を表すデータに補正を適用するステップは、補正された部分画像を生成するために部分画像に示されたトランスデューサと試験対象部分との相対位置から基準位置までの試験対象部分の移動をシミュレートするために、部分画像を修正するステップを含む。
【0036】
一実施形態によれば、部分画像は、同じ超音波ショットから生じた、試験対象部分で反射された波の関数として生成される。一実施形態によれば、部分画像の各点は、同じ超音波信号の送信後に受信素子が受信した、試験対象部分で反射された波から生成されたAスキャンの関数として決定される。
【0037】
一実施形態によれば、本方法は、補正されたデータの関数として、試験対象部分を表す画像を生成するステップを含む。一実施形態によれば、本方法は、複数の補正された部分画像を重ね合わせることによって、試験対象部分を表す画像を生成するステップをさらに含む。
【0038】
このような部分画像および補正された部分画像は、試験対象部分を表す画像が得られることを可能にする。これにより、試験対象部分に関する情報、例えば、試験対象部分に存在する欠陥の位置、寸法、および他の特徴に関する情報が、迅速で明確な方法で得られることを可能にする。
【0039】
一実施形態によれば、試験対象部分を表すデータはマトリクスを含み、マトリクスの各行は、それぞれの超音波ショット後に生成された試験対象部分を表すデータを含み、マトリクスの各列は、センサのそれぞれの受信素子から生成された試験対象部分を表すデータを含み、補正移動を計算するステップは、超音波ショットごとに、センサの受信素子の数に関してそれぞれの受信オフセットを計算するステップを含み、補正を適用するステップは、マトリクスの1行、数行、またはそれぞれの行ごとに、該行のセルに対して、対応する受信オフセットのセルの内容の、列の数に関するオフセットを適用するステップを含む。
【0040】
一実施形態によれば、聴取継続時間は、超音波ショットの送信瞬間に等しい開始瞬間を有する。聴取継続時間は、超音波ショットの送信と、センサの受信素子のうちの1つの受信素子による、センサに対向する試験対象部分の面で反射された波の受信との間の最大飛行時間以上である。これにより、補正移動は、超音波ショットの送信瞬間と、1つまたは複数の受信素子による超音波ショットから生じた、試験対象部分で反射された波の受信瞬間との間の伝播時間の間の、センサと試験対象部分との相対的移動の関数として計算される。一実施形態によれば、最終受信瞬間は、聴取継続時間、すなわち、超音波ショット後に、1つまたは複数の受信素子が、超音波、特に超音波ショットから生じた超音波を受信しなくなるように構成される瞬間に相当する。換言すれば、一実施形態によれば、補正移動は、同じ超音波ショットが、その送信から、1つまたは複数の受信素子による、この超音波ショットから生じた、試験対象部分で反射された波の受信まで伝播するときの、センサと試験対象部分との相対的移動の関数として計算される。
【0041】
一実施形態によれば、試験対象部分を表すデータは、受信素子ごとに、受信素子の聴取継続時間の関数として受信器が受信した波の強度を表すそれぞれのAスキャンを含む。
【0042】
一実施形態によれば、補正移動を計算するステップは、受信素子のそれぞれのAスキャンを複数の時間ブロックに分割するステップを含む。
【0043】
一実施形態によれば、補正移動を計算するステップは、センサと試験対象部分との相対的移動の関数として、複数の受信素子のうちの1つの受信素子による信号受信継続時間を計算するステップを含む。一実施形態によれば、1つのAスキャンの各時間ブロックは、試験対象部分に対するセンサの相対的移動のための受信素子の受信継続時間に等しい継続時間を有する。
【0044】
一実施形態によれば、複数の受信素子のうちの1つの受信素子の信号受信継続時間は、センサと試験対象部分との相対的移動中に、試験対象部分から連続的に送信された信号を受信素子が受信する継続時間に相当する。この受信継続時間よりも長い継続時間により、隣接する受信素子が連続信号を受信することができる。
【0045】
一実施形態によれば、1つ、いくつか、または各時間ブロックは、Aスキャンが生成されることを可能にした、試験対象部分で反射された波を受信した受信器の信号受信継続時間に等しい継続時間を有する。
【0046】
一実施形態によれば、補正移動を計算するステップは、受信素子の相対位置、受信素子の信号受信継続時間、および超音波信号の送信瞬間の関数として、受信素子の数に関するオフセットを計算するステップを含む。
【0047】
一実施形態によれば、オフセットは、元のAスキャンの所与の時間ブロックに対して、時間ブロックが試験対象部分とセンサとの相対的移動の方向にオフセットされなければならないAスキャンの数を表す整数である。換言すれば、オフセットは、元のAスキャンと、同じ時間範囲に対して継続時間ブロックが割り当てられなければならない目標Aスキャンとの間のAスキャンの数を表す。
【0048】
一実施形態によれば、元のAスキャンの所与の時間ブロックに対して、オフセットは、センサと試験対象部分との相対的移動の方向において、かつ元のAスキャンの反射波を受信した受信素子から生じる、すなわち、基準位置および部分の回転方向の関数として、次の連続する受信素子の最大数に等しく、信号受信継続時間の累積和は、基準瞬間と時間ブロックの開始瞬間との間の経過時間よりも短い。
【0049】
一実施形態によれば、補正を適用するステップは、元のAスキャンの少なくとも1つの時間ブロックに対して、目標Aスキャンの一部分を時間ブロックに置き換えるステップを含む。ここで、目標Aスキャンは、センサと試験対象部分との相対的移動の方向において、元のAスキャンの反射波のエネルギーの一部を受信した受信器の後のn番目の受信素子から生成されたAスキャンに対応しており、nは、計算されたオフセットであり、目標Aスキャンの一部分は、時間ブロックと同じ開始および終了瞬間を有する。
【0050】
一実施形態によれば、センサと試験対象部分との相対的移動は、試験対象部分の移動と、試験対象部分の移動中における固定位置でのセンサの保持とから生じ、試験対象部分の移動は回転軸を中心とした角度成分を有し、補正移動を計算するステップは、センサと試験対象部分との相対的移動中の試験対象部分の角度移動を計算するステップを含む。
【0051】
一実施形態によれば、補正移動を計算するステップは、センサと試験対象部分との相対的移動中の試験対象部分の角度移動を計算するステップを含み、試験対象部分を表すデータを補正するステップは、取得ステップ中の試験対象部分の角度移動に対応する角度での試験対象部分のその回転軸を中心とした回転をシミュレートするステップを含む。
【0052】
これにより、Aスキャンを直接補正することによって、同じ超音波ショットが試験対象部分の内部に伝播するときを含め、試験対象部分とセンサとの相対的移動を考慮に入れることによって、試験対象部分の鮮明で正確な画像を得ることが可能である。
【0053】
一実施形態によれば、センサと試験対象部分との相対的移動は、異なる種類の移動を含むことができる。
【0054】
一実施形態によれば、センサと試験対象部分との相対的移動は、試験対象部分の移動と、試験対象部分の移動中における固定位置でのセンサの保持とから生じる。一実施形態によれば、試験対象部分の移動は、回転軸、例えば、パイプの形態での試験対象部分の場合はパイプの縦軸を中心とした角度成分を有する。一実施形態によれば、試験対象部分の移動は、縦軸、例えば試験されたパイプの縦軸に沿った縦成分を有する。試験対象部分は、例えば、センサに対する螺旋移動に設定される。一実施形態によれば、センサと試験対象部分との相対的移動は、センサの移動と、固定位置での試験対象部分の保持とから生じる。
【0055】
一実施形態によれば、補正移動を計算するステップは、試験対象部分の角度移動を計算するステップを含む。一実施形態によれば、補正移動を計算するステップは、センサと試験対象部分との相対的移動の軸に沿ったセンサと試験対象部分との相対的移動を計算するステップを含む。
【0056】
一実施形態によれば、試験対象部分を表す画像は、補正されたAスキャンの関数として生成される。
【図面の簡単な説明】
【0057】
添付の図面を参照しながら非限定的な例示によってのみ提供される本発明のいくつかの特定の実施形態の以下の説明を通して、本発明はよりよく理解され、そのさらなる目的、詳細、特徴、および利点がより明確になるであろう。
【
図1】欠陥を有するパイプと、パイプを表すデータを生成するように構成された多素子センサとの断面図である。
【
図2】
図1のセンサから生成されたパイプを表すデータのマトリクスである。
【
図3】
図1のパイプが2回の連続する超音波ショットの間に角度αだけ回転したときのパイプの断面図である。
【
図4】パイプが0.109m/sの回転速度で移動したときに
図2のマトリクスから得られるパイプを表す画像である。
【
図5】パイプが0.36m/sの回転速度で移動したときの
図4と同様の画像である。
【
図6】パイプが0.8m/sの回転速度で移動したときの
図4と同様の画像である。
【
図7】
図1のパイプの断面図であり、パイプを囲む円形の多素子センサの場合のパイプの回転の関数として、パイプ欠陥の様々な位置を示す図である。
【
図8】
図7のセンサを用いて得られた
図2のマトリクスと同様のマトリクスを簡略化して示しており、パイプの回転の関数として行われた補正を示す図である。
【
図9】
図1のパイプの断面図であり、同じ超音波ショット中のパイプの回転の関数としてパイプ欠陥の様々な位置を示している。
【
図10】超音波ショット中に
図9のセンサによって得られた様々なAスキャンを示す図である。
【
図11】
図10に示す元のAスキャンから得られた様々な補正されたAスキャンを示す図である。
【
図12】原画像と、補正なしのこの原画像の列150における画素の振幅とを示す図である。
【
図13】パイプとセンサとの相対的移動、ならびにこの補正された画像の列150の画素の振幅を考慮に入れるために、
図12の原画像を生成するために使用されるデータを修正することによって得られた補正された画像である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
石油、ガスまたは他の作業は、多数のパイプを必要とする。これらのパイプは、設置時および運用時の両方において受ける多くの応力のため、劣化および環境への漏出を防止するために規格に準拠しなければならない。
【0059】
そのため、この種の運用のために製造された管状要素は、それらの運用を損なう可能性のある欠陥を有していないことを確実にするために試験する必要がある。この試験を実行するために、パイプを表すデータがセンサを用いて生成され、このデータは、パイプ内の欠陥の存在および特徴が検出されることを可能にする。このような欠陥の例として、パイプ壁の内側の材料の表面亀裂または不連続性が挙げられる。
【0060】
図1は、パイプ1およびセンサ2の断面図を概略的に示している。
【0061】
パイプ1は、円筒形状を有し、縦軸3を有する。パイプ1は、欠陥4を有する。欠陥4は、例えば、パイプ1の壁の亀裂であり、すなわち、この欠陥4は、パイプ1の外面5とパイプ1の内面6との間に位置する。
【0062】
パイプ1を表すデータを提供するために、センサ2は複数の素子7を備える。
図1に示す実施形態では、センサ2は、すべての素子7を支持するハウジング8を備える。これらの素子7は、センサ2の縦軸9に沿って整列される。
【0063】
各素子7は、一方では、超音波ショットEとも呼ばれる超音波Eを送信することができ、他方では、受信波Rを受信することができる。一例として、素子7は、1mmの幅および高さとも呼ばれる10mmの長さを有する圧電ストリップとすることができる。
【0064】
センサ2は、パイプ1の周囲、例えば上方に位置決めされ、その結果、素子7が超音波Eをパイプ1に向けて送信するように配向される。例えば、センサ2は、その縦軸9がパイプ1の縦軸3に対して垂直であるように位置決めされる。カップリングは、センサ2の表面からパイプ1を分離して、例えば、超音波の伝播を可能にする水、ゲル、または任意の他の媒質の柱など、超音波Eの伝播を可能にする。
【0065】
超音波が伝播するときに媒質の変化に遭遇すると、超音波のエネルギーの一部は新しい媒質に伝達され、超音波のエネルギーの一部は2つの媒質間の界面で反射される。これにより、センサ2の素子7によって送信された超音波Eのエネルギーの一部は、遭遇する伝播媒質の変化ごとに戻され、その結果、超音波Eのエネルギーの一部は、この超音波Eがパイプ1の外面5、欠陥4、またはさらにはパイプ1の内面6にそれぞれ到達したときに反射される。
【0066】
超音波Eの各送信後に、受信した超音波および/または素子7の各々が受信した超音波の不在を表す信号が記録される。これらの記録は、超音波Eの送信後の所定の期間中に行われる。この期間中、素子7が受信した超音波は、パイプ1上の超音波の反射から生じた波を含む。
【0067】
これにより、素子7は、パイプ1を表すAスキャンが、すべての受信波Rから、ひいては超音波ショットE後に反射された波から生成されることを可能にする。各Aスキャンは、時間の関数として素子7が受信した受信波Rの振幅を表し、この振幅は、素子7が超音波を受信しないときにゼロである。そのため、これらのAスキャンは、超音波Eを送信する素子の位置、反射波を受信する素子、超音波の飛行時間、および伝播媒質の関数として、パイプ1の状態を知ることを可能にする。
【0068】
パイプ1を試験するとき、超音波ショットEは、センサ2の素子7の各々を用いて連続的に発射される。これにより、超音波ショットEごとに、パイプ1で反射され、センサ2の素子7の各々が受信した超音波を含む複数のAスキャン型のデータが得られる。
【0069】
n個の素子7を備えるセンサ2の場合、連続する超音波ショットEから生成されたすべてのAスキャンおよびn個の素子7が受信した受信超音波Rは、
図2に示すようにマトリクスに記録され、素子nによる送信および素子mによる受信に対応するAスキャンは、セルE
nR
mに記録される。このようなマトリクスは、様々な方法で、すなわち、Aスキャンを取得するための様々な戦略に従って得ることができる。一実施形態によれば、マトリクスの取得戦略は、TFM(トータルフォーカシングメソッド)型である。一実施形態によれば、取得方法は、「スパースTFM」型(マトリクスのすべてのセルがAスキャン(素子のいくつかとの送信および/または受信)を含まないことを意味する)、PWI(平面波イメージング)、すなわち、超音波ビームを偏向させるための遅延法則を用いて、異なる入射角で、各超音波ショットの送信のためにいくつかまたはすべての素子が使用されるイメージング、スパースPWI、または1つもしくは複数の送信素子と1つもしくは複数の受信素子との間でカバーされる多数の超音波軌道に関連するAスキャンを記録することを伴う任意の他の取得方法である。
【0070】
このようなマトリクスでは、各行10は、i番目の素子7によって送信された超音波E
iの送信後にセンサ2のn個の素子7から生成されたすべてのAスキャンを表す。そのため、これらのAスキャンは、超音波E
iの送信後にn個の素子7が受信した受信波R
1~R
nを表す。これにより、
図2に示すマトリクスの第1の行10は、第1の素子7による超音波ショットE
1の送信後にn個の素子7が受信した受信波R
1、R
2...R
n-1およびR
nから生成されたAスキャンに対応するデータの組E
1R
1、E
1R
2...E
1R
n-1、E
1R
nを含む。同様に、このマトリクスの最後の行10は、n番目の素子7による超音波ショットE
nの送信後にn個の素子7が受信した受信波R
1~R
2から生成されたAスキャンに対応するデータの組E
nR
1、E
nR
2...E
nR
n-1およびE
nR
nを含む。
【0071】
さらに、このマトリクスの各列11は、n個の素子7によるn回の連続する超音波ショットE
1~E
n後にi番目の素子7が受信した受信波Riから生成されたすべてのAスキャンを含む。これにより、
図2に示すマトリクスの第1の列11は、n個の素子7によるn回の超音波ショットE
1~E
2後に第1の素子7が受信した受信波R
1から生成されたAスキャンに対応するデータの組E
1R
1、E
2R
1...E
nR
1を含む。
【0072】
そのため、
図2に示すマトリクス(「FMCマトリクス」とも呼ばれる)は、n行およびn列を含み、各行10は、センサ2のi番目の素子7による超音波ショットE
iの送信後に生成されたすべてのAスキャンに対応し、各列11は、センサ2のj番目の素子7が受信した受信波R
jから生成されたAスキャンに対応する。
【0073】
パイプ1を表すデータの組を含む
図2に示すマトリクスを用いて、パイプ1の断面図に対応するこのマトリクスから画像を再構成することが可能である。このような画像では、画像の各画素は、パイプ1の伝播媒質を表す値に関連付けられる。例えば、そのような画像は、画像の点ごとに、その画像の点における理論的な飛行時間の関数として、マトリクスの様々なAスキャンの値の合計を含む。換言すれば、マトリクスのすべてのAスキャンは、画像点におけるパイプ1の音響特性を定義するために解析され、コンパイルされる。超音波の理論的な飛行時間は、各Aスキャンおよび各画像点に関連付けられており、飛行時間は、超音波Eが送信素子を離れて目標とする画像点に到達するのに必要な時間に、目標とする画像点で反射された波がAスキャンに対応する受信素子に到達するのに必要な時間を加えた時間に相当する。
【0074】
このようにして求められた理論的な飛行時間におけるAスキャン信号の振幅は、目標とする点に対するパイプ1の構成材料を表す。パイプ1が目標とする画像点において媒質の性質に欠陥または変化を示さない場合、送信された超音波Eは目標とする点において反射されず、その結果、反射波はなく、受信素子7からのAスキャン信号は、求められた理論的な飛行時間において、ゼロの振幅を有するか、または、例えば電子システムまたは他の外乱に関連するバックグラウンドノイズに相当する振幅を有する。逆に、目標とする画像点がパイプ1内の媒質の欠陥または変化に対応する場合、送信された超音波Eは、目標とする画像点で反射され、その結果、受信素子7のAスキャンの信号は、理論的な飛行時間において非ゼロ振幅を有し、この非ゼロ振幅は、目標とする画像点で反射された波を表す。そのため、対応する理論的な飛行時間の関数として画素ごとの様々なAスキャンの振幅を加算することによって得られる画像は、超音波Eが画像内の各点において進行していた媒質の性質を求めるために使用することができる。
【0075】
連続する超音波ショットEが、センサ2とパイプ1との相対的移動なしで送信されると、飛行時間の関数としてマトリクスのすべてのAスキャンを解析することにより、パイプ1の鮮明で良好な品質の画像を得ることができる。しかしながら、パイプ1を表すデータを取得するときのセンサ2とパイプ1との間のこの相対的な不動性は、かなりのデータ取得時間を必要とする。実際に、センサ2とパイプ1との相対的な位置決めは、マトリクスのすべてのAスキャンを取得するとき、すなわち、第1の超音波ショットE1から、最後の受信素子7による最後の超音波ショットEn後の受信波Rnの受信まで、維持される必要がある。そのため、この解決策は、長いパイプ1の可能な限り最も速い解析を必要とする工業プロセスにほとんど適合しない。
【0076】
パイプ1を表すデータを取得する速度を向上させるために、パイプ1およびセンサ2は、データを取得するときに相対的移動に設定される。パイプ1とセンサ2との間、ひいては素子7の間のこの相対的移動は、連続的であることが好ましい。
【0077】
以下の説明では、パイプ1を表すデータは、センサ2、ひいては素子7を固定位置に保持し、パイプ1をその縦軸3を中心に螺旋状に移動させることによって取得される。パイプ1と素子7との間のこのような相対的移動は、一方では、パイプ1の縦軸3に沿った素子7の並進移動に相当し、他方では、パイプ1の縦軸3を中心とした回転に相当する。パイプ1のこのような螺旋移動は、例えば、1m/s程度のパイプ1の縦軸3を中心とした回転速度で行われる。しかしながら、パイプ1とセンサ2との間のこの相対的移動は、パイプ1を固定位置に保持し、パイプ1を中心にセンサ2を回転させることによって、またはセンサ2とパイプ1との間の任意の他の相対的移動によって得ることもできる。
【0078】
パイプ1と素子7との相対的移動は、素子7に対する欠陥4の相対的移動を含む。この相対的移動は、素子7に対するパイプ1の縦軸3を中心とした欠陥4の位置の角度オフセットをもたらす。そのため、2回の連続する超音波ショットEの間で、同じマトリクス内の素子7によって記録されたデータは、パイプ1と素子7との相対的移動に対応する角度オフセットを示す。
【0079】
図3は、2回の連続する超音波ショットE
iとE
i+1との間の角度θによる欠陥4のこのような移動を示している。欠陥4のこの移動は、縦軸3を中心とした回転方向24におけるパイプ1の回転に関連している。読みやすさおよび理解のために、
図3では、同じ欠陥4が第1の位置12および第2の位置13の両方に示されており、これにより、2回の連続する超音波ショットE
iとE
i+1との間の欠陥4の位置決めにおける角度θのオフセットを示している。
【0080】
この
図3に関して、上述の方法ではパイプ1の鮮明な画像を得ることができないことが明らかである。実際に、2回の連続する超音波ショットE
iとE
i+1との間の欠陥4のこの移動により、これらの2回の連続する超音波ショットE
iおよびE
i+1から生成されたAスキャンは、パイプ1内の同じ位置における欠陥4を表す振幅を有さない。パイプ1の画像の目標とする点について、超音波ショットE
iから生じたAスキャンは、第1の位置12における欠陥4の存在に対応する振幅を有するが、超音波ショットE
i+1から生じたAスキャンは、第2の位置13における欠陥4の存在に対応する振幅を有し、この第2の位置13は、第1の位置12に対する角度θによってオフセットされる。結果として、画像の目標とする点に対する様々なAスキャンの振幅の和は、画像の同じ目標とする点に対して、マトリクスの様々なAスキャンの振幅が欠陥4の同じ位置に対応しないため、パイプ1の構造を表さなくなる。そのため、このようにしてマトリクスから得られた画像はぼやけており、欠陥4は画像上に不正確に示され、欠陥4は明確に定義されたスポットではなく円の弧を形成する軌跡として現れる。
【0081】
画像は、縦軸3を中心としたパイプ1の回転速度が速いほどさらに大きくぼやける。実際に、パイプ1がその縦軸3を中心に速く回転するほど、2回の超音波ショットEiとEi+1との間の欠陥4の角度オフセットθが大きくなり、したがって、これらの2回の連続する超音波ショットEiとEi+1との間の欠陥4の角度位置決めオフセットが大きくなる。
【0082】
図4~
図6は、一例として、
図1~
図3を参照して上述したものと同様のパイプ1およびセンサ2の場合の生成された3つの画像を示しており、パイプ1は異なる速度で螺旋状に移動している。これらの正確な画像は、中心間で0.35mmだけ離間された64個の素子7を備える10MHzのセンサ2を用いて生成される。
【0083】
図4は、パイプ1の0.109m/sの回転速度でのすべての素子7の超音波ショットEの結果として得られた正確な画像を示す。
【0084】
図5は、パイプ1の0.36m/sの回転速度でのすべての素子7の超音波ショットEの結果として得られた正確な画像を示す。
【0085】
図6は、パイプ1の0.8m/sの回転速度でのすべての素子7の超音波ショットEの結果として得られた正確な画像を示す。
【0086】
パイプ1が0.109m/sの低減された回転速度で回転している状態で(
図4)、パイプ2の回転は、得られた画像に対して顕著な影響を有さず、得られた画像は、適切に配置され、確実にサイズ決めされた欠陥4を示す。しかしながら、この速度は低すぎ、工業的な速度に対応しない。
【0087】
パイプ1の0.36m/sの回転速度では、得られた画像により、この欠陥4に関するさらなる情報なしに欠陥4の存在を検出することができる。実際に、
図5のこの画像では、欠陥4はこのようにぼやけており、この画像では欠陥4の存在に関する情報のみが得られ、この欠陥4の特徴に関するさらなる詳細は示されていない。
図6に示すように、パイプ1の0.8m/sの回転速度では、得られた画像はさらにぼやけており、欠陥4が画像上で大きな表面積を占めるのでその振幅がさらに減少するため、その欠陥の検出さえも疑わしい可能性がある。
【0088】
パイプ1とセンサ2との相対的移動にもかかわらず、ぼやけていない画像を得るために、本発明による画像の再構成は、データを取得するときにパイプ1とセンサ2との相対的移動を考慮に入れることが有利である。このために、パイプ1とセンサ2との相対的移動中に得られたパイプ1を表すデータが補正される。
【0089】
この補正の背後にある1つの考えは、パイプ1とセンサ2との相対的移動中にパイプ1を表すデータを取得し、次いで、基準位置を中心としたパイプ1の移動をシミュレートすることによってこのデータを修正することである。この基準位置は、パイプ1の移動中のセンサ2とパイプ1との相対位置である。この基準位置は、予め決定することができ、または任意に選択することもできる。この基準位置は、パイプ1の移動中のセンサ2とパイプ1との間の任意の相対位置、例えば、第1の超音波ショットE1または最後の超音波ショットEnの送信瞬間に対応する基準瞬間におけるパイプ1とセンサ2との相対位置とすることができる。
【0090】
選択された基準位置までのパイプ1とセンサ2との相対的移動をシミュレートすることによってデータを修正することにより、基準位置でパイプ1とセンサ2との相対的移動がない場合に得られるデータに実質的に対応する補正されたデータを生成することができる。換言すれば、この考えは、パイプ1とセンサ2との相対的移動中にパイプ1を表すデータを生成し、次いで、パイプ1とセンサ2との間の静的な相対位置の場合のデータの取得をシミュレートするために、このデータを修正することである。
【0091】
説明の残りの部分を通して、この基準位置および関連する基準瞬間は、第1の超音波ショットE1の送信瞬間におけるパイプ1とセンサ2との相対位置に対応する。これにより、パイプ1の移動を考慮に入れると、ショットごとに、補正されるデータに対応する位置から第1の超音波ショットE1の位置までのパイプ1の移動の反転をシミュレートすることになる。
【0092】
2回の連続する超音波ショットEiとEi+1との間のパイプ1とセンサ2との相対的移動の反転をシミュレートするために、各超音波ショットEは、それぞれの部分画像を生成するために個々に処理される。この部分画像は、単一の超音波ショットEから生じたデータによって生成される、センサ2に対するパイプ1のそれぞれの相対位置におけるパイプ1の断面図に相当する。そのため、複数の部分画像が生成され、各部分画像が、それぞれの超音波ショットE後に得られたデータから生成される。これらの部分画像は、上述の方法と同様の方法で生成されるが、所与の超音波ショットE(すなわち、FMCマトリクスの単一の行)に対して得られたAスキャンのみを考慮に入れ、マトリクス全体のAスキャンからは考慮に入れない。
【0093】
このような部分画像は、部分画像の画素ごとに、単一の超音波ショットEから生成されたAスキャンの振幅の和を含む。そのため、部分画像の各画素は、単一の超音波ショットEからのAスキャンの振幅の和に関連付けられる。
【0094】
しかしながら、各部分画像が単一の超音波ショットEからのみ形成されるという事実により、各部分画像は、センサ2に対するパイプ1の特定の相対位置におけるパイプ1を表す。パイプ1の鮮明で正確な画像を得るために得られた様々な部分画像を組み合わせるために、様々な連続する超音波ショットEの間の角度オフセットを考慮に入れる必要がある。このために、マトリクスのAスキャンの行から生成された部分画像は、補正された部分画像を得るために、相対的な基準位置からのパイプ1とセンサ2との間の移動の反転をシミュレートすることによって修正される。
【0095】
パイプ1とセンサ2との相対的移動の反転をシミュレートするために、2回の連続する超音波ショットEiとEi+1との間のパイプ1とセンサ2との相対的移動量を知る必要がある。
【0096】
パイプ1を螺旋状に駆動し、その結果、パイプ1がその縦軸3を中心に速度Vrotで回転する場合、1秒当たりの超音波ショットのPRF(パルス繰り返し周波数)数を有するセンサ2を用いて、パイプ1の外面5は、式ΔL=Vrot/PRFに従って2回の連続する超音波ショットEiとEi+1との間で距離ΔLだけ移動する。
【0097】
しかしながら、時間tiにおいて送信素子iによって撮影された第1の超音波ショットEiと、時間ti+1において送信素子i+1によって撮影された第2の超音波ショットEi+1との間で、欠陥4は角度Δθだけ移動している。この角度Δθは、2回の連続する超音波ショットEiとEi+1との間のタイムスロットΔt=ti+1~tiの間のパイプ1の縦軸3を中心とした回転に相当する。そのため、2回の連続する超音波ショットEiとEi+1との間の外面5によってカバーされる距離ΔLは、式ΔL=R*Δθによって求められる。ここで、Rは外面5上のパイプ1の半径であり、Δθは2回の連続する超音波ショットEiとEi+1との間のパイプ1の縦軸3を中心とした回転に対応するラジアンで表される角度である。
【0098】
これらの2つの式から、Δθ=Vrot/(R*PRF)となる。
【0099】
図2に示すマトリクスにおいて、これは、マトリクスの2つの行10の間、ひいては2回の連続する超音波ショットE
iとE
i+1との間で、記録されたデータが式Δθ=V
rot/(R*PRF)に従って角度Δθだけオフセットされることを意味する。換言すれば、
図2に示すマトリクスの2つの連続する行10から生成された部分画像は、パイプ1の回転の中心、理論上はその軸3である点を中心とした角度Δθによる回転によって幾何学的にオフセットされる。
【0100】
上述したように、第1の超音波ショットE1から得られた部分画像は、相対的な基準位置として任意に選択される。次に、この基準角度位置に対するパイプ1の角度位置が、他のすべての超音波ショットEiに対して計算される。上記の例では、超音波ショットE2から得られた第2の部分画像は、パイプ1の角度オフセットが、基準部分画像に対するその回転軸を中心とした角度Δθであり、i番目の超音波ショットから得られたi番目の部分画像は、角度オフセットが、基準部分画像に対するその回転軸を中心とした角度(i-1)*Δθである。
【0101】
次に、部分画像は、計算された角度オフセットに対して逆である回転をその部分画像に示されたパイプ1の位置に適用することによって補正される。パイプ1が2回の連続する超音波ショットEiとEi+1との間で角度Δθだけ回転する場合、これは、部分画像を生成し、次いで、このように生成されたi番目の部分画像ごとに、パイプ1の回転方向とは逆の回転方向に角度α=(i-1)*Δθだけその縦軸3を中心としたその部分画像上のパイプ1の回転をシミュレートすることになる。
【0102】
図2に示すマトリクスに関して、第1の部分画像を基準画像とすると、マトリクスの第1の行10から生成された補正された部分画像は、この場合、i=1であり、基準部分画像に対して行われる補正が、パイプ1の縦軸3を中心とした角度α=(1-1)*Δθ=0の回転に対応するので、第1の行10から生成された部分画像と同一である。マトリクスの第2の行10から生成された補正された部分画像は、マトリクスの第2の行10から生成された部分画像におけるパイプ1の回転方向とは反対の回転方向に、パイプ1の縦軸3を中心として角度α=(2-1)*Δθ=Δθだけパイプ1の回転を加えることに相当する。一般に、マトリクスのn番目の行10から生成された補正された部分画像は、マトリクスのn番目の行10から生成された部分画像におけるパイプ1の回転方向とは反対の回転方向に、パイプ1の縦軸3を中心として角度α=(n-1)*Δθだけ回転を加えることに相当する。
【0103】
このような補正により、補正された部分画像は、単一のそれぞれの超音波ショットEからパイプ1に対して固定されたセンサ2によって得られる画像に相当するものとなる。そのため、このようにして得られた補正された部分画像は、欠陥4の同一の位置を、データを取得するときの欠陥4の移動にもかかわらず示しており、欠陥4のこの位置は基準位置に相当する。次に、回転後に得られた補正された部分画像を重ね合わせることによって、すなわち、合成された補正された部分画像の画素ごとにパイプ1の代表振幅を加算することによって、パイプ1の鮮明な画像を生成することができる。
【0104】
回転後に補正された部分画像を重ね合わせることによって得られる画像は、ぼやけることなく、パイプ1の鮮明で正確な画像が得られることを可能にし、その画像上で、検出された欠陥4の形状およびサイズを正確に特徴付けることが可能である。
【0105】
上記の例では、
図3に示すように、縦軸3に垂直な縦軸9に沿って整列された素子7に対して回転されるパイプ1の場合を説明したが、補正は、試験対象部分の任意の他の形状、ならびに任意の他の種類の相対的移動にも同様に適用することができる。この考えは、試験対象部分を表すデータを、部分とセンサとの相対的移動中に生成し、次いで、このデータを、補正されたデータが、試験対象部分とセンサとの相対的移動がない場合に得られるデータに相当するように、相対的移動をシミュレートすることによって修正することである。
【0106】
一例として、パイプ1の縦軸3に沿った並進移動の形態での相対的移動の場合、すなわちパイプ1が回転しない場合、補正のステップは、パイプ1の縦軸3に沿って基準位置までの相対的移動をシミュレートするステップ、すなわち、パイプ1の軸3に沿った並進移動によって補正された部分画像を、マトリクスから得られた部分画像を基準位置にもたらす並進方向に生成するステップを含むことになる。
【0107】
あるいは、部分画像を生成せずにパイプ1の移動の反転をシミュレートすることができる。代替的な実施形態では、補正は、マトリクス内のAスキャンを直接オフセットすることによって行われる。この実施形態は、補正されたマトリクスを得ることを可能にし、このことから、上述したAスキャンの振幅を加算するための方法を用いて、パイプ部の鮮明な画像を直接得ることができる。
【0108】
図7は、n個の素子を囲むセンサ2の場合を示している。この例では、パイプ1のみがその縦軸3を中心に回転される。特に、この
図7は、パイプ1の回転による受信波Rの受信オフセットを、受信素子7の数に関して示している。この
図7では、超音波ショットEが時間t
0で送信され、この超音波Eが時間t
iでパイプに入り、反射波Rが時間ti+Δtでパイプ1から出て、時間t
fで受信素子7が受信する。
【0109】
パイプ1がタイムスロットΔtの間に角度Δθだけ回転すると、パイプ1の回転は、センサ2の表面上で距離ΔLだけ超音波ショットEの送信点と受信点との間にオフセットを生成する。この現象を理解しやすくするために、
図7に示す例では、センサ2のピッチに等しいΔL、すなわち2つの隣接する素子7の中心間の距離の場合を提示しているが、本発明は、ΔLの任意の他の値にも同様に適用される。
【0110】
【0111】
ΔL=Rs×Δθ(1)
Δθ=Vθ×Δt(2)
Vrot=Vθ×Rt(3),
ここで、Rsはセンサ2の内半径であり、Vθはパイプ1の回転角速度(rad/s)であり、Vrotはパイプ1の回転速度(m/s)であり、Rtはパイプ1の外半径である。
【0112】
センサ2の素子7の数として表される、1回の同じ超音波ショットE中のセンサ2上の超音波ショットEの送信点と受信点との間の素子Delの数に関する距離は、ΔLとセンサ2のピッチpとの比に対応し、すなわち、以下の式に従う。
【0113】
Del=ΔL/p(4).
上記の式1~3に関して、次のようになる。
【0114】
D
el=(Rs×V
rot×Δt)/(p×Rt)(5).
これにより、取得の開始時に、典型的には第1の超音波ショットE
1を送信するときに、パイプ1の初期位置を基準位置として選択することによって、第1の超音波ショットE
1後に受信波Rを聴取した後のパイプ1の移動は、例えば、
図7に示すタイムスロットΔtの間に行われる回転に等しい。同様に、パイプ1のこの初期位置に対して、第2の超音波ショットE
2後に受信波を聴取した後のパイプ1の移動は、タイムスロットΔt+1/PRFの間の回転量に等しい。一般に、取得の開始時のパイプ1のこの初期位置に対して、k番目のショットから生じた受信波Rの受信時のパイプ1の移動は、タイムスロットΔt+(k-1)/PRFの間の回転量に等しい。
【0115】
そのため、センサ2上の送信点と受信点との間の距離Del(k)は、k番目のショットについて、センサ2の素子の数として表されると、以下の式に従う。
【0116】
Del(k)=(ΔL+ΔL2)/p(6),
とともに、
ΔL2=Rs×ΔθPRF(7)、および
ΔθPRF=Vθ/PRF(8),
ここで、ΔθPRFは、タイムスロット1/PRFの間のパイプ1の回転角である。
【0117】
したがって、以下が得られる。
【0118】
Del(k)=[(Rs×Vrot)/(p×Rt)]×[Δt+(k-1)/PRF)](9).
取得のn個の超音波ショットEの各々に対してDel(k)が計算されると、以下の近似を行うことができる。
【0119】
Del(k)<0.5の場合、素子の数に関するオフセットはゼロである。
【0120】
0.5<Del(k)<1.5の場合、素子の数に関するオフセットは1素子である。
【0121】
x+0.5<Del(k)<x+1.5の場合、素子の数に関するオフセットはx+1素子である。
【0122】
D
el計算では、マトリクスに記録されたAスキャンを直接オフセットすることによって、マトリクスを直接補正することができる。典型的には、
図2に関して上述したように、マトリクスが生成されると、マトリクスのセルE
iR
jは、素子iによって送信された超音波ショット後に受信され、反射波は、素子jが受信した波のAスキャンを含む。しかしながら、パイプ1とセンサ2との相対的移動がない場合に素子jが受信した超音波ショットE
iから生じた反射波は、データを取得するときのパイプ1の回転により、素子j+D
el(i)が受信する。これにより、AスキャンE
iR
jは、実際には、センサ2の素子7の番号付け方向に対するパイプ1の回転方向の関数として、マトリクスのセルE
iR
(j±Del(i))内にある。そのため、補正されたマトリクスを得るために、このオフセットD
elを考慮に入れる必要がある。その後、得られた補正されたマトリクスのAスキャンの振幅を加算することによって、上述の方法を用いて、完全なぼやけていない画像を得ることができる。
【0123】
図8は、E
iR
j(s)と示される生成されたAスキャンの初期位置と、E
iR
j(d)と示されるマトリクス内のAスキャンの補正された位置とを示す、マトリクスの一例を示している。この例では、計算された素子の数に関するオフセットD
elは、初期の超音波ショットE
1と比較して、新しい超音波ショットEごとに1素子だけ増加する。
【0124】
この
図8では、第1または初期の超音波ショットE
1は、第1の行10におけるAスキャンE
iR
j(s)のオフセットを必要としない。第2の行10のAスキャンE
iR
j(s)は、パイプ1の回転方向の関数として1列だけ、図示の例では左に1列だけオフセットされる。同様に、第3の行10のAスキャンE
iR
j(s)は、
図8の左に2列オフセットされる、などである。これにより、様々なセルに関連付けられたAスキャンE
iR
j(d)が、チューブ1とセンサ2との相対的移動がない場合に生成され得るAスキャンに対応する、補正されたマトリクスが得られる。その後、上述したように、AスキャンE
iR
j(d)の振幅をこの補正されたマトリクスの適切な飛行時間に加算することによって、鮮明な画像を生成することができる。
【0125】
オフセットDelがマトリクスの外側のセルの内容のオフセットをもたらすとき、マトリクスは、センサ2に仮想的に追加された素子7を考慮に入れた鮮明な画像の計算によって、対応する素子の数だけ有利に増加され、これらの素子7は、センサ2の素子7の連続性において、すなわち、同一のピッチで追加される。代替的な実施形態では、マトリクスの外側にオフセットされたこれらのAスキャンは無視することができるが、その後、減少した数のAスキャンから鮮明な画像が計算される。
【0126】
得られた画像の鮮明度を改善するために、各超音波ショットEがパイプ1内を伝播するときに、パイプ1の縦軸3を中心とした回転を考慮に入れることも可能である。実際に、パイプ1の回転速度が特に速い場合、欠陥4は、超音波ショットEが送信された瞬間と、この超音波ショットEから生じた反射された超音波を受信した瞬間との間で大幅に移動する可能性がある。
【0127】
以下では、超音波ショットEが伝播するときに欠陥4を移動させる高速回転の場合を説明するが、この移動は、回転速度以外の要因にも関連し得る。このような要因は、例えば、水柱の高さおよび/またはパイプ1の厚さであり得、これはまた、超音波の飛行時間、結果としてPRF(パルス繰り返し周波数)に影響を及ぼす。
【0128】
パイプ1のある一定の回転速度から、超音波ショットEの伝播中のパイプ1の回転は、同じ超音波ショットEによって送信されたエネルギーが、空間的な受信オフセットを有する素子7によって受信されるようなものである。これにより、センサ2の素子7による超音波ショットEの送信瞬間と、この超音波ショットEから生じた戻り反射波Rの受信瞬間との間で、パイプ1が固定されたままであった場合に反射波が目標とする受信素子7である素子7によって受信されず、別の素子7によって受信されるように、パイプ1が回転してもよい。
【0129】
図9は、パイプ1内の同じ超音波ショットEの伝播中の反射波の受信におけるオフセットのこの現象を示している。この
図9では、センサ2は円形であり、素子7はパイプ1の周りに円形に配置されている。
【0130】
この
図9では、超音波ショットE
nは、素子nによって送信される。この超音波ショットE
nは、時間tiでパイプ1の外面5に衝突し、欠陥4はそのとき、センサ2に対して第1の位置14にある。その後、超音波ショットE
nはパイプ1内を伝播する。
【0131】
時間ti+dtにおいて、dtはパイプ1の回転時間を表し、パイプ1は角度dξだけ回転している。時間ti+dtにおいて、超音波ショットEnは欠陥4に到達し、欠陥4はそのとき、第2の位置15を有し、この欠陥4からの超音波ショットEnの反射から生じた反射波16は、パイプ1の外面5に向かって進む。
【0132】
時間ti+k*dtにおいて、欠陥4へのショットEnの反射から生じた反射波16は、パイプ1の外面5に戻り、パイプ1から出る。時間ti+k*dtにおいて、パイプ1は、その縦軸3を中心に角度k*dξだけ回転している。時間k*dtの間、パイプ1の外面5は、式DL=Vrot*k*dtに従って距離DLだけ回転している。
【0133】
パイプ1内の超音波ショットEnの伝播時間k*dtおよび/またはパイプ1の回転速度Vrotが、DLが2つの隣接する素子7の中心を分離する角距離に対して、好ましくは2つに分割された2つの隣接する素子7の中心間の距離に対して無視できるようなものである場合、センサ2に対するパイプ1の移動は、同じ超音波ショットEの間、無視できると考えることができる。そのため、パイプ1の回転は、同じ超音波ショットEの間に受信オフセットを生成するには不十分であると考えられる。
【0134】
パイプ1内の超音波ショットEnの伝播時間k*dtおよび/またはパイプ1の回転速度Vrotが、DLが2つの隣接する素子7の中心を分離する距離よりも大きいようなものである場合、受信素子7が受信した反射波の一部は、通常、他の素子が受信する。結果として、送信素子26によって送信された超音波ショットE後に受信素子25が受信した反射波Rは、受信素子25と送信素子26との間の関連付けのための識別された伝播経路を表さない。そのため、受信素子25で反射された波の受信後に生成されたAスキャンは誤りである。
【0135】
マトリクスに記録されたデータEiRi、すなわち、各超音波ショットE後の様々な素子7が受信した受信波Riに対応するAスキャンは、それ自体が誤りである。その後、パイプ1の鮮明な画像を得るためにマトリクス内で補正しなければならないのは、AスキャンEiRi自体である。
【0136】
上述した部分画像またはマトリクスの補正と同様に、Aスキャンを補正するステップは、パイプ1とセンサ2との相対的移動がない場合に得られるAスキャンに対応する補正されたAスキャンを生成することができるように、基準位置までのパイプ1とセンサ2との相対的移動をシミュレートするステップを含む。
【0137】
Aスキャンにおけるこのオフセット現象を説明するために、i番目の素子7によって送信された超音波ショットEiと、この同じi番目の素子7が受信した超音波ショットEi後の受信波Riとの場合が使用される。
【0138】
センサ2とパイプ1との間の超音波Eiの伝播媒質がセンサ2に対して移動していない場合、界面エコーとも呼ばれる、パイプ1の外面5へのショットEiの衝突から生じた反射波は、パイプ1の回転によって影響されない。そのため、この界面エコーは、通常、i番目のトランスデューサ7が受信する。
【0139】
上述したように、ショットEiがパイプ1の外面5に衝突する瞬間tiと、反射波16がパイプ1の外面5に戻る瞬間ti+k*dtとの間で、パイプ1は、角度k*dξだけ回転している。
【0140】
k*dξが、パイプ1の中心と2つの隣接する素子7の中心とによって形成される角度ωよりも大きい場合、欠陥4へのショットEiの衝突から生じる。このため、パイプ1の外面5に垂直な方向に出る反射波は、パイプ1の回転がない場合にi番目の素子7が受信するが、i番目の素子7の反対側には出ない。結果として、i番目の素子7とは異なるj番目の素子がこの反射波を受信する。
【0141】
これにより、k*dξが角度ωよりも大きい場合、Aスキャンは歪んでおり、パイプ1内の超音波ショットEiの伝播中のパイプ1の回転k*dξを考慮に入れることによって補正される必要がある。上述したように、また、2回の連続する超音波ショットEiとEi+1との間のパイプ1の回転を考慮に入れるのと同様に、この考えは、パイプ1の移動がない場合に得られるAスキャンと実質的に同等である補正されたAスキャンを得るために、基準位置へのパイプ1の移動、典型的には基準位置が、ショットが送信された瞬間の位置であるときのパイプ1の移動の反転をシミュレートすることである。このために、超音波ショットEごとに、様々な素子7が受信した波Rから生じたAスキャンは、第1の場合において生成され、次いで、第2の場合において補正される。
【0142】
Aスキャンを補正する第1のステップは、2つの隣接する素子7の中心を分離する距離に等しい回転dlpをもたらす時間増分dtpを計算するステップを含む。
図9に示す例では、これは、2つの隣接する素子7の中心を分離する角度ωを求めるステップと、パイプ1がこの角度ωに相当する回転を完了するのに必要な時間dtpを計算するステップとに相当する。
【0143】
第2の場合では、Aスキャンは、継続時間dtpのブロック17に分割される。
図10および
図11では、各ブロック17は、基準E
iR
j(t
x~t
y)に関連付けられており、i番目の超音波ショット後のj番目の素子によって継続時間t
x~t
yにわたって受信した波Rを含むことを意味する。
【0144】
図10は、同じ超音波ショットE後の複数の素子7による受信波Rの受信から生じたAスキャン18を示している。この
図10では、図示した各Aスキャン18は、一連のタイムスロットdtpの間に素子7が受信した受信波Rから生成される。そのため、この
図10では、Aスキャン18の各々は、複数の時間ブロック17に分割され、各時間ブロック17は、2つの隣接する素子7の中心を分離する角度ωをカバーするのに必要なパイプ1の回転の継続時間に対応する継続時間dtpを有する。
【0145】
上述したように、
図10に示すAスキャン18では、様々な時間ブロック17は、Aスキャンが対応する飛行時間において生成されることを可能にした、送信素子26と受信素子25との間の識別された経路をすべて表すわけではない。実際に、パイプ1の回転により、これらのブロック17は、パイプ1の回転により他の素子7が受信すべきであったが受信素子25が受信した反射波から生成される。
【0146】
そのため、Aスキャンの補正は、素子7が受信した受信波Rから生成されたAスキャンごとに、別の素子7が受信すべきブロック17を選択するステップと、ブロック17を、通常受信すべき素子7と関連付けるステップと、を含む。パイプ1が回転する場合、これは、ブロック17を、素子7が受信した受信波Rから生成された元のAスキャンから、パイプ1の回転がない場合にブロック17に対応する反射波を通常受信すべきそれぞれの目標Aスキャンにオフセットさせることになる。
【0147】
図11は、
図10に示す元のAスキャンから様々な素子7に対して補正された様々なAスキャンを示している。
【0148】
図10では、i番目のブロック17は、期間d
ti~d
ti+1の間に受信された受信波Rから生成される。しかしながら、瞬間d
tiにおいて、パイプ1は、その縦軸3を中心に角度i*ωだけ回転している。そのため、これらのi番目のブロック17に表される反射波は、i個のブロック17によってオフセットされた素子7が受信した。換言すれば、期間d
ti~d
ti+1の間にk番目の素子7が受信した反射波は、センサ2とパイプ1との相対的移動がない場合には、k~i番目の素子7が受信していたことになる。
【0149】
そのため、超音波ショットの送信瞬間に対応する基準位置の場合、パイプ1の逆移動をシミュレートすることによるAスキャン18の補正は、パイプ1の回転の逆方向にAスキャン18の数iだけ期間dti~dti+1のi番目のブロック17をオフセットすることによって行うことができる。換言すれば、Aスキャン18を補正するために、n番目の素子7によって生成されたAスキャン18のブロック17dtpi~dtpi+1は、素子i+nの対応するブロック17、すなわち期間dtpi~dtpi+1のブロック17にオフセットされる。
【0150】
これにより、
図11では、
図10に示すAスキャン18のブロック17は、パイプ1の移動の反転をシミュレートするためにオフセットされる。そのため、
図10の各行のi番目のブロック17は、
図10のAスキャン18を補正するために、
図11ではi行だけオフセットされる。そのため、
図11では、この補正によって得られるように、各行は、パイプ1とセンサ2との相対的移動がない場合にその行に関連付けられた素子7によって得られるべきAスキャン18に対応する補正されたAスキャン18を有する。
【0151】
そのため、
図10と
図11とを比較することによって、タイムスロットd
tp1~d
tp2に対応する
図10の各行Lの第2のブロック17は、次の行、すなわち行L+1の第2のブロック17を置き換えるために、
図11では1行だけオフセットされることが分かる。同様に、タイムスロットd
tp2~d
tp3に対応する
図10の各行Lの第3のブロック17は、行L+2の第3のブロックを置き換えるために、
図11では2行だけオフセットされる。例えば、第5の素子7、典型的には
図11の第5の行に対応する
図11の補正されたAスキャン19は、時間t
0から時間d
tp4まで、
図10の第5の行の第1のブロック20、
図10の第4の行の第2のブロック21、
図10の第3の行の第3のブロック22、および
図10の第2の行の第4のブロック23を連続的に含む。そのため、この補正されたAスキャン19には、センサ2に対するパイプ1の回転に伴って様々な素子7が受信した受信波Rに対応するブロック20~23が含まれており、パイプ1とセンサ2との間に相対的移動がなかった場合に第5の素子7のみが受信されたはずの波が含まれている。
【0152】
図11では、空のボックスは、Aスキャンのゼロ振幅信号を有するブロック17に対応する。これらのブロック17は、空の振幅信号を表し、それ故に得られた画像を変化させないので、あまり障害を与えるものではない。いずれにしても、オフセットによって元のAスキャンのブロック17が目標Aスキャンの外側にオフセットされた場合、目標Aスキャンの継続時間は、上述のマトリクスのサイズの仮想的な増加に同様に対応するブロック17の数だけ有利に増加する。
【0153】
さらに、Aスキャン18に対して行われる補正を理解しやすくするために、
図9~
図11は、円形センサ2の場合を示しており、各素子7がパイプ1を中心とした同一の角度ωの円形部分をカバーするようにしている。これにより、パイプ1の回転によって、すべての素子7に対して同一である反射波Rの受信におけるオフセットが生じ、ブロック17を分割するための継続時間d
tpがすべてのAスキャン18に対して同一であるようにしている。しかしながら、素子7は、多くの方法で配置することができる。例えば、素子7は、
図1および
図3に示す実施形態の場合のように、縦軸に沿って整列させることができる。この場合、様々な素子7の位置に対するパイプ1の曲率を考慮に入れる必要がある。このために、1つまたは複数のd
tpは、反射波の出射角、または素子7の整列軸9上の投影されたDLなどの他のパラメータを考慮に入れることによって計算することができる。素子7ごとに、このような計算は、パイプ1に対する素子7の相対的な位置に応じて異なる継続時間を有するブロック17が得られることをもたらす。同様に、様々な素子7の間のブロック17のオフセットを求めるために、様々な素子7の間のブロック17の継続時間のこの差異を考慮に入れる必要がある。
【0154】
さらに、説明のために上述した例において補正されるパイプ1とセンサ2との相対的移動は、パイプ1の縦軸3に対する角度移動である。しかしながら、この移動は、縦軸3に沿った並進移動など、別の種類のものである場合がある。
【0155】
図12は、原画像(図の左側部分)と、この原画像の列150の画素の振幅(図の右側部分)とを示している。この原画像は、パイプ1とセンサ2との相対的移動中に取得された生データ、すなわち本発明による補正前の生データから生成される。この原画像は、パイプ1内の欠陥4を示しているが、欠陥4を正確に特徴付けることができないほどぼやけている。
【0156】
図13は、部分画像を用いた上述の方法を用いて補正された画像と、この補正された画像の列150内の画素の振幅とを示している。この補正された画像は、この補正された画像を生成するためのデータがパイプ1とセンサ2との相対的移動中に得られたという事実にもかかわらず、鮮明であり、欠陥4の正確で確実な特徴付けを容易に可能にする。補正によってもたらされる欠陥の振幅の利得は5.7dBである。これにより、本発明により、試験対象部分の鮮明で正確な画像を迅速かつ確実に得ることができ、この補正された画像を得ることを可能にするデータは、パイプ1とセンサ2との相対的移動中に取得される。
【0157】
上記では、例えば、金属パイプ1の場合を説明したが、試験対象要素は、形状および/または材料に関して任意の他の性質を想定することができる。
【0158】
また、上記では、超音波を等しく送信および受信することができる素子7を備えるセンサの場合を説明したが、このようなセンサは、別個の超音波送信および受信素子を備えることができる。
【0159】
本発明は、複数の特定の実施形態に関連して記載されているが、決してこれらの実施形態に限定されるものではなく、記載された手段のすべての技術的均等物、ならびにこれらの均等物が本発明の範囲内に入る場合にはこれらの均等物の組合せを含むことは明らかである。
【0160】
これにより、上述した例は、線形センサ2の範囲内で実行されるが、本方法は、2次元に配置された素子7を備えるセンサの範囲内で適用することができ、画像の2次元再構成について上述した再構成と同等の方法で、体積を3次元で再構成することができる。このようなセンサは、例えば、行および列に配置された複数の素子7を備える。
【0161】
動詞「備える(comprise)」または「含む(include)」およびその活用形の使用は、特許請求の範囲に記載されたもの以外の素子またはステップの存在を排除するものではない。
【0162】
また、特許請求の範囲において、括弧内の参照符号は、特許請求の範囲を限定するものとして解釈するべきではない。