(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】電磁波シールドフィルム
(51)【国際特許分類】
H05K 9/00 20060101AFI20241125BHJP
B32B 3/30 20060101ALI20241125BHJP
B32B 7/025 20190101ALI20241125BHJP
C09J 7/30 20180101ALI20241125BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20241125BHJP
【FI】
H05K9/00 W
B32B3/30
B32B7/025
C09J7/30
C09J201/00
(21)【出願番号】P 2023511451
(86)(22)【出願日】2022-03-30
(86)【国際出願番号】 JP2022015769
(87)【国際公開番号】W WO2022210820
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2024-01-16
(31)【優先権主張番号】P 2021060396
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000108742
【氏名又は名称】タツタ電線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】高見 晃司
(72)【発明者】
【氏名】上農 憲治
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 正博
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-010995(JP,A)
【文献】国際公開第2018/147426(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
B32B 3/30
B32B 7/025
C09J 7/29
C09J 7/30
C09J 201/00
H01L 23/00
H01L 23/29
H01L 23/31
H01L 21/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護層と、
前記保護層に積層されたシールド層と、
前記シールド層に積層された接着剤層とからなり、
前記シールド層の前記接着剤層側には複数の導電性バンプが形成されており、
前記シールド層を前記接着剤層側から平面視すると、
前記導電性バンプは、1種の多角形で平面充填された各多角形の頂点に位置するように配置されており、かつ、
前記複数の導電性バンプのそれぞれにつき、各前記導電性バンプと最も近い位置にある最近接の導電性バンプとを結ぶ線分を描き、それらの線分のうち一つの線分を通る直線を引いた際に、
前記直線上に3つ以上の前記線分が連続しないように、前記導電性バンプが配置されていることを特徴とする電磁波シールドフィルム。
【請求項2】
前記多角形は凸多角形である請求項1に記載の電磁波シールドフィルム。
【請求項3】
前記多角形は、非凸多角形である請求項1に記載の電磁波シールドフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波シールドフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブルプリント配線板に代表されるプリント配線板は、小型化、高機能化が急速に進む携帯電話、ビデオカメラ、ノートパソコンなどの電子機器において、複雑な機構の中に回路を組み込むために多用されている。さらに、その優れた可撓性を生かして、プリンタヘッドのような可動部と制御部との接続にも利用されている。これらの電子機器では、電磁波シールド対策が必須となっており、装置内で使用されるプリント配線板においても、電磁波シールドフィルムを貼付する等の電磁波シールド対策を施したプリント配線板(以下、「シールドプリント配線板」とも記載する)が用いられるようになってきた。
【0003】
一般的に、電磁波シールドフィルムは、最外層の保護層と、電磁波をシールドするためのシールド層と、プリント配線板に貼付するための接着剤層とからなる。
シールドプリント配線板を製造する際には、電磁波シールドフィルムの接着剤層が、プリント配線板に接触するように、電磁波シールドフィルムがプリント配線板に貼付されることになる。
【0004】
また、プリント配線板のグランド回路は、筐体等の外部グランドに電気的に接続されることになるが、プリント配線板に貼付された電磁波シールドフィルムを介して、プリント配線板のグランド回路と外部グランドとを電気的に接続することも行われている。
【0005】
なお、一般的に、個々のプリント配線板に合わせ、電磁波シールドフィルムを設計することは行われておらず、電磁波シールドフィルムには、どのようなプリント配線板に対しても電磁波をシールドする機能が要求される。
これは、プリント配線板の形状、配線等の構成は無数にあり、個々のプリント配線板に合わせ、最適となるように電磁波シールドフィルムを設計することは費用対効果の面から現実的でないためである。
【0006】
例えば、特許文献1には、このような要求に応えることができる電磁波シールドフィルムとして、保護層と、前記保護層に積層されたシールド層と、前記シールド層に積層された接着剤層とからなり、前記シールド層の前記接着剤層側には導電性バンプが形成されており、前記導電性バンプの体積は、30000~400000μm3であることを特徴とする電磁波シールドフィルムが開示されている。
特許文献1では、プリント配線板のグランド回路とシールド層との間の接続抵抗を充分に小さくするために、電磁波シールドフィルムのシールド層に導電性バンプを形成し、その導電性バンプをプリント配線板のグランド回路に接触させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載された電磁波シールドフィルムを用いてシールドプリント配線板を作製すると、そのシールドプリント配線板において、伝送損失が大きくなる場合があった。
【0009】
本発明は、上記問題を鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、伝送損失を小さくすることができる電磁波シールドフィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、特許文献1に係る電磁波シールドフィルムにおいて、電磁波シールドフィルムを平面視した際に、導電性バンプが直線上に等間隔で配列されていると、伝送損失が大きくなる場合があることを見出し本発明に到達した。
【0011】
すなわち、本発明の電磁波シールドフィルムは、保護層と、上記保護層に積層されたシールド層と、上記シールド層に積層された接着剤層とからなり、上記シールド層の上記接着剤層側には複数の導電性バンプが形成されており、上記シールド層を上記接着剤層側から平面視すると、上記導電性バンプは、1種の多角形で平面充填された各多角形の頂点に位置するように配置されており、かつ、上記複数の導電性バンプのそれぞれにつき、各上記導電性バンプと最も近い位置にある最近接の導電性バンプとを結ぶ線分を描き、それらの線分のうち一つの線分を通る直線を引いた際に、上記直線が他の上記線分と重複しない部分を有するように、上記導電性バンプが配置されていることを特徴とする。
【0012】
導電性バンプがこのように配列されているということは、シールド層を接着剤層側から平面視した際に、隣り合う導電性バンプが、直線上に等間隔に配列されていないことを意味する。
【0013】
本発明の電磁波シールドフィルムは、プリント配線板に配置されることになる。
まず、導電性バンプが直線上に等間隔で配列されている電磁波シールドフィルムをプリント配線板に用いると、伝送損失が大きくなる原因について説明する。
一般的に、プリント配線板のグランド回路の近くには、グランド回路とは別の信号回路が配置されている。電磁波シールドフィルムをプリント配線板に配置する際、電磁波シールドフィルムの導電性バンプがこのような信号回路の上に位置することがあり、これにより寄生回路が発生して伝送損失が大きくなることがある。
特に、導電性バンプが直線上に等間隔で配置されていると、導電性バンプの配列方向と、信号回路の形成方向が一致した際に、信号回路の上に位置する導電性バンプの数が多くなる。この場合、多数の寄生回路が発生して伝送損失が大きくなる。
また、信号回路が複数ある場合、導電性バンプとの間に発生する寄生回路の数が、信号回路毎に偏ってしまうことがある。このような場合さらに伝送損失が大きくなる。
【0014】
しかし、本発明の電磁波シールドフィルムでは、導電性バンプが直線上に等間隔に配列されていないので、プリント配線板の信号回路の上に導電性バンプが位置することにより寄生回路が生じることを抑制することができ、その結果、伝送損失を小さくすることができる。
【0015】
信号回路の上に多数の導電性バンプが配置されることを抑制するために、導電性バンプの配置をランダムにする方法も考えられる。しかし、導電性バンプをランダムに配置すると、導電性バンプとグランド回路との接触が不充分になる部分が生じやすい。
本発明の電磁波シールドフィルムでは、導電性バンプは、1種の多角形で平面充填された各多角形の頂点に位置するように配置されている。つまり、本発明の電磁波シールドフィルムでは、導電性バンプは規則的にジグザグに配置されている。
導電性バンプが規則的にジグザグに配列されていると、導電性バンプとグランド回路とを確実に接触させることができる。
その結果、電磁波シールドフィルムのシールド層と、プリント配線板のグランド回路との接続安定性を高くすることができる。
【0016】
本発明の電磁波シールドフィルムでは、上記多角形は凸多角形であってもよく、非凸多角形であってもよい。
なお、凸多角形とは、各角の角度が180度未満である多角形のことを意味する。
また、非凸多角形とは、角度が180度を超える角を少なくとも1つ有する多角形のことを意味する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の電磁波シールドフィルムは、グランド回路が形成されているプリント配線板に配置される。この際、本発明の電磁波シールドフィルムの導電性バンプと、プリント配線板のグランド回路は接触する。
本発明の電磁波シールドフィルムでは、隣り合う導電性バンプが、直線上に等間隔に配列されていないので、プリント配線板の信号回路の上に導電性バンプが位置することにより寄生回路が生じることを抑制することができ、その結果、伝送損失を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1A】
図1Aは、本発明の第1実施形態に係る電磁波シールドフィルムの一例を模式的に示す断面図である。
【
図1B】
図1Bは、
図1Aに示す電磁波シールドフィルムのシールド層を接着剤層側から平面視した際の導電性バンプの配列を模式的に示す平面図である。
【
図1C】
図1Cは、
図1A及び
図1Bに示す電磁波シールドフィルムにおいて、導電性バンプの配列が本発明の特徴を有することを説明する平面図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1実施形態に係る電磁波シールドフィルムが用いられたシールドプリント配線板の一例を模式的に示す断面図である。
【
図4】
図4は、導電性バンプが直線上に等間隔に配列されている電磁波シールドフィルムを備えるシールドプリント配線板において、導電性バンプとグランド回路との位置関係の一例を模式的に示す平面図である。
【
図5A】
図5Aは、本発明に係る電磁波シールドフィルムのシールド層を接着剤層側から平面視した際に、最近接の導電性バンプを結ぶ線分を通る直線上に、導電性バンプが配置されている場合の配列の一例を模式的に示す平面図である。
【
図5B】
図5Bは、
図5Aに示す配列の導電性バンプを有する電磁波シールドフィルムが本発明の電磁波シールドフィルムの特徴を有することを説明する平面図である。
【
図6A】
図6Aは、本発明に係る電磁波シールドフィルムのシールド層を接着剤層側から平面視した際の導電性バンプの配列の一例を模式的に示す平面図である。
【
図6B】
図6Bは、本発明に係る電磁波シールドフィルムのシールド層を接着剤層側から平面視した際の導電性バンプの配列の一例を模式的に示す平面図である。
【
図6C】
図6Cは、本発明に係る電磁波シールドフィルムのシールド層を接着剤層側から平面視した際の導電性バンプの配列の一例を模式的に示す平面図である。
【
図6D】
図6Dは、本発明に係る電磁波シールドフィルムのシールド層を接着剤層側から平面視した際の導電性バンプの配列の一例を模式的に示す平面図である。
【
図6E】
図6Eは、本発明に係る電磁波シールドフィルムのシールド層を接着剤層側から平面視した際の導電性バンプの配列の一例を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の電磁波シールドフィルムについて具体的に説明する。しかしながら、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。
【0020】
本発明に係る電磁波シールドフィルムは、保護層と、上記保護層に積層されたシールド層と、上記シールド層に積層された接着剤層とからなり、上記シールド層の上記接着剤層側には複数の導電性バンプが形成されており、上記シールド層を上記接着剤層側から平面視すると、上記導電性バンプは、1種の多角形で平面充填された各多角形の頂点に位置するように配置されており、かつ、上記複数の導電性バンプのそれぞれにつき、各上記導電性バンプと最も近い位置にある最近接の導電性バンプとを結ぶ線分を描き、それらの線分のうち一つの線分を通る直線を引いた際に、上記直線が他の上記線分と重複しない部分を有するように、上記導電性バンプが配置されていることを特徴とする。
本発明の第1実施形態に係る電磁波シールドフィルムはこのような特徴を有していれば、発明の効果を奏する範囲で、他にどのような特徴を有していてもよい。
【0021】
以下に、本発明の第1実施形態に係る電磁波シールドフィルムの一例について図面を用いて説明する。
図1Aは、本発明の第1実施形態に係る電磁波シールドフィルムの一例を模式的に示す断面図である。
【0022】
図1Aに示すように、電磁波シールドフィルム10は、保護層11と、保護層11に積層されたシールド層12と、シールド層12に積層された接着剤層13とからなる。
保護層11、シールド層12及び接着剤層13は順に積層されている。
また、シールド層12の接着剤層13側には複数の導電性バンプ14が形成されている。
【0023】
電磁波シールドフィルム10の導電性バンプ14の配列について説明する。
図1Bは、
図1Aに示す電磁波シールドフィルムのシールド層を接着剤層側から平面視した際の導電性バンプの配列を模式的に示す平面図である。
【0024】
図1Bに示すように、電磁波シールドフィルム10では、導電性バンプ14は、四角形50で平面充填された各四角形50の頂点に位置するように配置されている。
なお、
図1Bでは、説明の便宜上、符号50で示す四角形を強調して図示しているが、強調して図示した四角形50は、他の四角形と構造的な相違点や、機能的な相違点等は無い。
【0025】
四角形50は第1角51a、第2角51b、第3角51c及び第4角51dを有する凸四角形である。
第1角51aと第2角51bとは第1辺52aで結ばれており、第2角51bと第3角51cとは第2辺52bで結ばれており、第3角51cと第4角51dとは第3辺52cで結ばれており、第4角51dと第1角51aとは第4辺52dで結ばれている。
第1角51a、第2角51b、第3角51c及び第4角51dの角度は互いに異なる。
また、第1辺52a、第2辺52b、第3辺52c及び第4辺52dの長さは互いに異なる。
【0026】
次に、四角形50による平面充填の態様について説明する。
2個の四角形50を組み合わせて平行六辺形(
図1B中、符号55で示す図形)とする。
任意の合同な平行六辺形であれば平面充填をすることが可能なので、このように組み合わせた平行六辺形55を連続的に並べることにより
図1Bに示すような四角形50による平面充填を行うことができる。
【0027】
次に、導電性バンプ14の配列について説明する。
電磁波シールドフィルム10では、導電性バンプ14のそれぞれにつき、導電性バンプ14と最も近い位置にある最近接の導電性バンプ14とを結ぶ線分(以下、「最近接の導電性バンプを結ぶ線分」とも記載する)を描き、それらの線分のうち一つの線分を通る直線を引いた際に、直線が他の線分と重複しない部分を有するように導電性バンプ14が配置されている。
【0028】
導電性バンプ14がこのように配列されていることを、図面を用いて具体的に説明する。
図1Cは、
図1A及び
図1Bに示す電磁波シールドフィルムにおいて、導電性バンプの配列が本発明の特徴を有することを説明する平面図である。
【0029】
図1Cに示すように、まず、各導電性バンプ14と最も近い位置にある最近接の導電性バンプ14とを結ぶ線分(
図1Cにおいて導電性バンプ14同士を結ぶ実線で示す線分)を描く。
【0030】
図1Cにおいて、導電性バンプ14の中の導電性バンプ14a及び導電性バンプ14bに着目する。導電性バンプ14aは、導電性バンプ14bに最も近い位置にある最近接の導電性バンプである。導電性バンプ14aと導電性バンプ14bとは、線分A1により結ばれている。
線分A1を通る直線a
1を引くと、直線a
1上には、線分A1以外の最近接の導電性バンプを結ぶ線分が存在しない。すなわち、直線a
1は、各導電性バンプと最も近い位置にある最近接の導電性バンプとを結ぶ線分と重複しない部分を有する。
【0031】
導電性バンプ14がこのように配列されているということは、シールド層12を接着剤層13側から平面視した際に、隣り合う導電性バンプ14が、直線上に等間隔に配列されておらず、規則的にジグザグに配置されていることを意味する。
【0032】
電磁波シールドフィルム10は、プリント配線板に配置され、シールドプリント配線板の構成要素の一部となった際に効果を発揮する。
そこで、電磁波シールドフィルム10を備えるシールドプリント配線板について説明する。
【0033】
図2は、本発明の第1実施形態に係る電磁波シールドフィルムが用いられたシールドプリント配線板の一例を模式的に示す断面図である。
図2に示すように、シールドプリント配線板1は、ベースフィルム21と、ベースフィルム21の上に形成された複数のグランド回路22aを含むプリント回路22と、プリント回路22を覆うカバーレイ23とを備え、カバーレイ23にはグランド回路22aを露出する開口部23aが形成されているプリント配線板20と、プリント配線板20に配置された電磁波シールドフィルム10とを構成要素として含む。
【0034】
シールドプリント配線板1では、電磁波シールドフィルム10の導電性バンプ14は、接着剤層13を貫き、プリント配線板20のグランド回路22aと接触している。
【0035】
ここで、導電性バンプが直線上に等間隔で配列されている電磁波シールドフィルムをプリント配線板に用いると、伝送損失が大きくなる原因について説明する。
一般的に、プリント配線板のグランド回路の近くには、グランド回路とは別の信号回路が配置されている。電磁波シールドフィルムをプリント配線板に配置する際、電磁波シールドフィルムの導電性バンプがこのような信号回路の上に位置することがあり、これにより寄生回路が発生して伝送損失が大きくなることがある。
特に、導電性バンプが直線上に等間隔で配置されていると、導電性バンプの配列方向と、信号回路の形成方向が一致した際に、信号回路の上に位置する導電性バンプの数が多くなる。この場合、多数の寄生回路が発生して伝送損失が大きくなる。
また、信号回路が複数ある場合、導電性バンプとの間に発生する寄生回路の数が、信号回路毎に偏ってしまうことがある。このような場合さらに伝送損失が大きくなる。
【0036】
しかし、電磁波シールドフィルム10では、導電性バンプ14が直線上に等間隔に配列されていないので、プリント配線板20の信号回路の上に導電性バンプ14が位置することにより寄生回路が生じることを抑制することができ、その結果、伝送損失を小さくすることができる。
【0037】
次に、導電性バンプ14とグランド回路22aとの位置関係を説明する。
図3は、
図2のA-A線断面図である。なお、
図3では、説明の便宜上、1つのグランド回路22aのみを示している。
図3に示すように、グランド回路22aは直線状に形成されている。
また、
図3に示すように、電磁波シールドフィルム10の導電性バンプ14が規則的にジグザグに配置されていると、導電性バンプ14とグランド回路22aとを確実に接触させることができる。つまり、導電性バンプ14dがグランド回路22aに接触できない位置に配置されたとしても、導電性バンプ14cがグランド回路22aに接触できる。
そのため、シールドプリント配線板1において、電磁波シールドフィルム10のシールド層12と、プリント配線板20のグランド回路22aとの接続安定性を高くすることができる。
【0038】
電磁波シールドフィルムにおいて導電性バンプが直線上に等間隔に配列されている場合の導電性バンプとグランド回路との位置関係に基づく問題点についても説明する。
図4は、導電性バンプが直線上に等間隔に配列されている電磁波シールドフィルムを備えるシールドプリント配線板において、導電性バンプとグランド回路との位置関係の一例を模式的に示す平面図である。
【0039】
図4に示すように、導電性バンプ14´が直線上にのみ配置されていると、グランド回路22aが形成されている方向と、導電性バンプ14´の配列方向とが一致した際に、導電性バンプ14´がグランド回路22aに接触しないように位置している場合、その直線上に配置された導電性バンプ14´の全てがグランド回路22aに接触できない状態となる。特にグランド回路22aの幅が狭い場合にこのようなことが生じやすい。その結果、電磁波シールドフィルムのシールド層とプリント配線板のグランド回路22aとは、その直線状に配置された導電性バンプ14´を介して電気的に接続できない状態となる。
【0040】
しかし、上記の通り電磁波シールドフィルム10を用いたシールドプリント配線板1では、このような問題は生じにくい。
【0041】
次に、電磁波シールドフィルム10の各構成について好ましい態様を説明する。
【0042】
(保護層)
保護層11の材料は特に限定されないが、熱可塑性樹脂組成物、熱硬化性樹脂組成物、活性エネルギー線硬化性組成物等から構成されていることが好ましい。
【0043】
上記熱可塑性樹脂組成物としては、特に限定されないが、スチレン系樹脂組成物、酢酸ビニル系樹脂組成物、ポリエステル系樹脂組成物、ポリエチレン系樹脂組成物、ポリプロピレン系樹脂組成物、イミド系樹脂組成物、アクリル系樹脂組成物等が挙げられる。
【0044】
上記熱硬化性樹脂組成物としては、特に限定されないが、エポキシ系樹脂組成物、ウレタン系樹脂組成物、ウレタンウレア系樹脂組成物、スチレン系樹脂組成物、フェノール系樹脂組成物、メラミン系樹脂組成物、アクリル系樹脂組成物及びアルキッド系樹脂組成物からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂組成物が挙げられる。
【0045】
上記活性エネルギー線硬化性組成物としては、特に限定されないが、例えば、分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する重合性化合物等が挙げられる。
【0046】
保護層11は、1種単独の材料から構成されていてもよく、2種以上の材料から構成されていてもよい。
【0047】
保護層11には、必要に応じて、硬化促進剤、粘着性付与剤、酸化防止剤、顔料、染料、可塑剤、紫外線吸収剤、消泡剤、レベリング剤、充填剤、難燃剤、粘度調節剤、ブロッキング防止剤等が含まれていてもよい。
【0048】
保護層11の厚さは、特に限定されず、必要に応じて適宜設定することができるが、1~15μmであることが好ましく、3~10μmであることがより好ましい。
保護層の厚さが1μm未満であると、薄すぎるのでシールド層及び接着剤層を充分に保護しにくくなる。
保護層の厚さが15μmを超えると、厚すぎるので保護層が折り曲がりにくくなり、また、保護層自身が破損しやすくなる。そのため、耐折り曲げ性が要求される部材へ適用しにくくなる。
【0049】
(シールド層)
シールド層12は、電磁波をシールドすることができれば、その材料は特に限定されず、例えば、金属からなっていてもよく、導電性樹脂からなっていてもよい。
【0050】
シールド層12が金属からなる場合、金属としては金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、スズ、パラジウム、クロム、チタン、亜鉛等が挙げられる。これらの中では、銅であることが好ましい。銅は、導電性及び経済性の観点からシールド層にとって好適な材料である。
【0051】
なお、シールド層12は、上記金属の合金からなっていてもよい。
また、シールド層12は、金属箔であってもよく、スパッタリングや無電解めっき、電解めっき等の方法で形成された金属膜であってもよい。
【0052】
シールド層12が導電性樹脂からなる場合、シールド層12は、導電性粒子と樹脂から構成されていてもよい。
【0053】
導電性粒子としては、特に限定されないが、金属微粒子、カーボンナノチューブ、炭素繊維、金属繊維等であってもよい。
【0054】
導電性粒子が金属微粒子である場合、金属微粒子としては、特に限定されないが、銀粉、銅粉、ニッケル粉、ハンダ粉、アルミニウム粉、銅粉に銀めっきを施した銀コート銅粉、高分子微粒子やガラスビーズ等を金属で被覆した微粒子等であってもよい。
これらの中では、経済性の観点から、安価に入手できる銅粉又は銀コート銅粉であることが好ましい。
【0055】
導電性粒子の平均粒子径D50は、特に限定されないが、0.5~15.0μmであることが好ましい。導電性粒子の平均粒子径が0.5μm以上であると、導電性樹脂の導電性が良好となる。導電性粒子の平均粒子径が15.0μm以下であると、導電性樹脂を薄くすることができる。
【0056】
導電性粒子の形状は、特に限定されないが、球状、扁平状、リン片状、デンドライト状、棒状、繊維状等から適宜選択することができる。
【0057】
導電性粒子の配合量は、特に限定されないが、15~80質量%であることが好ましく、15~60質量%であることがより好ましい。
【0058】
樹脂としては、特に限定されないが、スチレン系樹脂組成物、酢酸ビニル系樹脂組成物、ポリエステル系樹脂組成物、ポリエチレン系樹脂組成物、ポリプロピレン系樹脂組成物、イミド系樹脂組成物、アミド系樹脂組成物、アクリル系樹脂組成物等の熱可塑性樹脂組成物や、フェノール系樹脂組成物、エポキシ系樹脂組成物、ウレタン系樹脂組成物、メラミン系樹脂組成物、アルキッド系樹脂組成物等の熱硬化性樹脂組成物等が挙げられる。
【0059】
(導電性バンプ)
導電性バンプ14は、接着剤層13を貫き、グランド回路22aに接触することになる。
導電性バンプ14の形状は、特に限定されないが、円柱、三角柱、四角柱等の柱体状であってもよく、円錐、三角錐、四角錐等の錐体状であってもよい。
これらの中では、錐体状であることが好ましい。
導電性バンプ14の形状が錐体状であると、導電性バンプ14が接着剤層13を貫きやすくなり、グランド回路22aと接触しやすくなる。
【0060】
1個当たりの導電性バンプ14の体積は、30000~400000μm3であることが好ましく、50000~400000μm3であることがより好ましい。
1個当たりの導電性バンプ14の体積が上記範囲内であると、導電性バンプ14がグランド回路22aにしっかり接触することができる。
1個当たりの導電性バンプの体積が30000μm3未満であると、導電性バンプがグランド回路に接触しにくくなり、グランド回路-シールド層間の接続抵抗が大きくなりやすくなる。
1個当たりの導電性バンプの体積が400000μm3を超えると、接着剤層において、導電性バンプが占める割合が大きくなる。
そのため、接着剤層がある領域全体の比誘電率及び誘電正接が高くなりやすくなる。従って、伝送特性が悪化しやすくなる。
【0061】
複数の導電性バンプ14の高さ(
図1A中、符号「H」で示す高さ)は略同一であることが好ましい。
複数の導電性バンプ14の高さが略同一であると、均等に複数の導電性バンプ14が接着剤層13を貫き、グランド回路22aと接触しやすくなる。
【0062】
導電性バンプ14の高さは、1~50μmであることが好ましく、5~30μmであることがより好ましい。
【0063】
なお、導電性バンプの形状、高さ、体積は、コンフォーカル顕微鏡(Lasertec社製、OPTELICS HYBRID、対物レンズ20倍)を用いて、導電性バンプを形成したシールド層の表面の任意の5か所を測定した後、データ解析ソフト(LMeye7)を用い解析できる。2値化のパラメータは高さで、自動しきい値アルゴリズムはKittler法を用いることができる。
【0064】
導電性バンプ14は、樹脂組成物と導電性フィラーとからなることが好ましい。
すなわち、導電性バンプ14は、導電性ペーストからなっていてもよい。
導電性ペーストを用いることにより、導電性バンプ14を任意の位置に任意の形状で容易に形成することができる。
また、導電性バンプ14は、スクリーン印刷により形成されていてもよい。
導電性ペーストを用いてスクリーン印刷により導電性バンプ14を形成する場合、導電性バンプ14を任意の位置に任意の形状で容易にかつ効率よく形成することができる。
【0065】
導電性バンプ14が樹脂組成物と導電性フィラーとからなる場合、樹脂組成物としては、特に限定されないが、スチレン系樹脂組成物、酢酸ビニル系樹脂組成物、ポリエステル系樹脂組成物、ポリエチレン系樹脂組成物、ポリプロピレン系樹脂組成物、イミド系樹脂組成物、アミド系樹脂組成物、アクリル系樹脂組成物等の熱可塑性樹脂組成物や、フェノール系樹脂組成物、エポキシ系樹脂組成物、ウレタン系樹脂組成物、メラミン系樹脂組成物、アルキッド系樹脂組成物等の熱硬化性樹脂組成物等を用いることができる。
樹脂組成物の材料はこれらの1種単独であってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0066】
導電性バンプ14が樹脂組成物と導電性フィラーとからなる場合、導電性フィラーとしては、特に限定されないが、金属微粒子、カーボンナノチューブ、炭素繊維、金属繊維等であってもよい。
【0067】
導電性フィラーが金属微粒子である場合、金属微粒子としては、特に限定されないが、銀粉、銅粉、ニッケル粉、ハンダ粉、アルミニウム粉、銅粉に銀めっきを施した銀コート銅粉、高分子微粒子やガラスビーズ等を金属で被覆した微粒子等であってもよい。
これらの中では、経済性の観点から、安価に入手できる銅粉又は銀コート銅粉であることが好ましい。
【0068】
導電性フィラーの平均粒子径D50は、特に限定されないが、0.5~15.0μmであることが好ましい。
【0069】
導電性フィラーの形状は、特に限定されないが、球状、扁平状、リン片状、デンドライト状、棒状、繊維状等から適宜選択することができる。
【0070】
導電性バンプ14が樹脂組成物と導電性フィラーとからなる場合、導電性フィラーの重量割合は、30~99%であることが好ましく、50~99%であることがより好ましい。
【0071】
また、導電性バンプ14は、めっき法や蒸着法等により形成された金属からなっていてもよい。
この場合、導電性バンプは、銅、銀、スズ、金、パラジウム、アルミニウム、クロム、チタン、亜鉛、及びこれらのいずれか1つ以上を含む合金からなることが好ましい。
めっき法や蒸着法は従来の方法を用いることができる。
【0072】
(接着剤層)
上記の通り電磁波シールドフィルム10は、接着剤層13によりプリント配線板20に接着されることになる。
【0073】
電磁波シールドフィルム10では、接着剤層13のシールド層12に接する面と反対側の面は平坦であることが好ましい。
この面が平坦であると、複数の導電性バンプ14が接着剤層13を均等に貫くことになる。
そのため、複数の導電性バンプ14が均等に複数のグランド回路22aに接触することになる。
【0074】
電磁波シールドフィルム10では、接着剤層13の厚さは、5~30μmであることが好ましく、8~20μmであることがより好ましい。
接着剤層の厚さが5μm未満であると、接着剤層を構成する樹脂の量が少ないため、充分な接着性能が得られにくい。また、破損しやすくなる。
接着剤層の厚さが30μmを超えると、全体が厚くなり、柔軟性が失われやすい。また、導電性バンプが接着剤層を貫きにくくなる。
【0075】
電磁波シールドフィルム10では、接着剤層13を構成する樹脂の周波数1GHz、23℃における、比誘電率は1~5であることが好ましく、2~4であることがより好ましい。
また、接着剤層13を構成する樹脂の周波数1GHz、23℃における、誘電正接は0.0001~0.03であることが好ましく、0.001~0.002であることがより好ましい。
このような範囲であると、電磁波シールドフィルム10を用いて製造するシールドプリント配線板1の伝送特性を向上させることができる。
【0076】
なお、電磁波シールドフィルム10では、接着剤層13は、導電性絶着剤層であってもよく、絶縁性接着剤層であってもよいが、接着剤層13は、比誘電率及び誘電正接を低くする観点から絶縁性接着剤層であることが好ましい。
上記の通り、電磁波シールドフィルム10は、接着剤層13によりプリント配線板20に接着されることになる。
上記接着剤層13が絶縁性接着剤層である場合、接着剤層13は導電性フィラー等の導電性物質を含まないため、比誘電率及び誘電正接が充分に小さくなる。この場合、電磁波シールドフィルム10を用いて製造されたシールドプリント配線板1では、伝送特性が良好になる。
【0077】
なお、接着剤層13が導電性を有する場合、接着剤層13は、導電性フィラー等の導電性物質を含むことになる。接着剤層13が、このような導電性物質を多く含むと、接着剤層13全体の比誘電率及び誘電正接が高くなりやすい。
その一方で、製造されるシールドプリント配線板1の伝送特性を良好にするためには、接着剤層13全体の比誘電率及び誘電正接は低い方が好ましい。
そのため、接着剤層13が導電性物質を含む場合であったとしても、接着剤層13全体の比誘電率及び誘電正接が低くなるように、その含有量は少ない方が好ましい。
【0078】
接着剤層13は、熱硬化性樹脂組成物からなっていてもよく、熱可塑性樹脂組成物からなっていてもよい。
【0079】
熱硬化性樹脂組成物としては、例えば、フェノール系樹脂組成物、エポキシ系樹脂組成物、ウレタン系樹脂組成物、メラミン系樹脂組成物、ポリアミド系樹脂組成物及びアルキッド系樹脂組成物等が挙げられる。
また、熱可塑性樹脂組成物としては、例えば、スチレン系樹脂組成物、酢酸ビニル系樹脂組成物、ポリエステル系樹脂組成物、ポリエチレン系樹脂組成物、ポリプロピレン系樹脂組成物、イミド系樹脂組成物、及び、アクリル系樹脂組成物が挙げられる。
また、エポキシ樹脂組成物としては、アミド変性エポキシ樹脂組成物であることがより好ましい。
これらの樹脂組成物は、接着剤層を構成する樹脂として適している。
接着剤層の材料はこれらの1種単独であってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0080】
次に、プリント配線板20の各構成について好ましい態様について説明する。
【0081】
(ベースフィルム及びカバーレイ)
ベースフィルム21及びカバーレイ23の材料は、特に限定されないが、エンジニアリングプラスチックからなることが好ましい。このようなエンジニアリングプラスチックとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、架橋ポリエチレン、ポリエステル、ポリベンズイミダゾール、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイドなどの樹脂が挙げられる。
また、これらのエンジニアリングプラスチックの内、難燃性が要求される場合には、ポリフェニレンサルファイドフィルムが好ましく、耐熱性が要求される場合にはポリイミドフィルムが好ましい。なお、ベースフィルム21の厚みは、10~40μmであることが好ましく、カバーレイ23の厚みは、10~30μmであることが好ましい。
【0082】
開口部23aの大きさは特に限定されないが、0.1mm2以上であることが好ましく、0.3mm2以上であることがより好ましい。
また、開口部23aの形状は、特に限定されず、円形、楕円形、四角形、三角形等であってもよい。
【0083】
(プリント回路)
プリント回路22及びグランド回路22aの材料は、特に限定されず、銅箔、導電性ペーストの硬化物等であってもよい。
【0084】
上記のように電磁波シールドフィルム10では、導電性バンプ14は、四角形50で平面充填された各四角形50の頂点に位置するように配置されている。
また、電磁波シールドフィルム10では導電性バンプ14は、最近接の導電性バンプを結ぶ線分を通る直線上に等間隔で配列されていない。
しかし、本発明の電磁波シールドフィルムでは、導電性バンプは、等間隔で配列されていなければ、最近接の導電性バンプを結ぶ線分を通る直線上に配置されていてもよい。
このような導電性バンプの配列について以下に図面を用いて説明する。
【0085】
図5Aは、本発明に係る電磁波シールドフィルムのシールド層を接着剤層側から平面視した際に、最近接の導電性バンプを結ぶ線分を通る直線上に、導電性バンプが配置されている場合の配列の一例を模式的に示す平面図である。
【0086】
図5Aに示すように、導電性バンプ114は、四角形150で平面充填された各四角形150の頂点に位置するように配置されている。
なお、
図5Aでは、説明の便宜上、符号150で示す四角形を強調して図示しているが、強調して図示した四角形150は、他の四角形と構造的な相違点や、機能的な相違点等は無い。
【0087】
四角形150は第1角151a、第2角151b、第3角151c及び第4角151dを有する凸四角形である。
また、第1角151aと第2角151bとは第1辺152aで結ばれており、第2角151bと第3角151cとは第2辺152bで結ばれており、第3角151cと第4角151dとは第3辺152cで結ばれており、第4角151dと第1角151aとは第4辺152dで結ばれている。
第1角151a及び第3角151cは直角であり、第2角151bは鈍角であり、第4角151dは鋭角である。第2角151bの角度及び第4角151dの角度の合計値は180度である。
第2辺152b及び第3辺152cの長さは同じであり、第1辺152a及び第4辺152dの長さは異なる。また、第1辺152a及び第2辺152cの長さは異なり、第2辺152b及び第4辺152dの長さは異なる。
【0088】
次に、四角形150による平面充填の態様について説明する。
まず、4個の四角形150を組み合わせて正方形(
図5A中、符号155で示す図形)とする。
このように組み合わせられた正方形155を一列に並べて長方形156とする。
次に、長方形156の短辺の方向に、長方形156を連続的に並べる。この際、隣り合う長方形156が、長方形156の長辺方向に第1辺152aの長さだけずれるように長方形156を配置する。
これにより、
図5Aに示すような四角形150による平面充填を行うことができる。
【0089】
次に、
図5Aに示す配列の導電性バンプを有する電磁波シールドフィルムが本発明の電磁波シールドフィルムに含まれる理由を説明する。
図5Bは、
図5Aに示す配列の導電性バンプを有する電磁波シールドフィルムが本発明の電磁波シールドフィルムの特徴を有することを説明する平面図である。
【0090】
図5Bに示すように、まず、各導電性バンプ114と最も近い位置にある最近接の導電性バンプ114とを結ぶ線分(
図5Bにおいて導電性バンプ114同士を結ぶ実線で示す線分)を描く。
【0091】
図5Bにおいて、導電性バンプ114の中の導電性バンプ114a及び導電性バンプ114bに着目する。導電性バンプ114aは、導電性バンプ114bに最も近い位置にある最近接の導電性バンプである。
導電性バンプ114aと導電性バンプ114bとは、線分A2により結ばれている。
線分A1を通る直線a
2を引くと、直線a
2上には、導電性バンプ114bと隣り合う導電性バンプ114cが配置されている。
しかし、導電性バンプ114cの最近接の導電性バンプは導電性バンプ114dである。
そのため、導電性バンプ114bと導電性バンプ114cとを結ぶ線分Bは、最近接の導電性バンプを結ぶ線分ではない。
すなわち、直線a
2は、各導電性バンプと最も近い位置にある最近接の導電性バンプとを結ぶ線分と重複しない部分を有する。
導電性バンプ114がこのように配列されているということは、シールド層を接着剤層側から平面視した際に、隣り合う導電性バンプ114が、直線上に等間隔に配列されていないことを意味する。
以上より、
図5Aに示す配列の導電性バンプ114を有する電磁波シールドフィルムが本発明の電磁波シールドフィルムに含まれると言える。
【0092】
図5Aに示す配列の導電性バンプ114を有する電磁波シールドフィルムをプリント配線板に配置すると、プリント配線板の信号回路の上に導電性バンプが位置することにより寄生回路が生じることを抑制することができ、その結果、伝送損失を小さくすることができる。
【0093】
次に、本発明に係る電磁波シールドフィルムにおける導電性バンプの別の配置について説明する。
図6A~
図6Dは、本発明に係る電磁波シールドフィルムのシールド層を接着剤層側から平面視した際の導電性バンプの配列の一例を模式的に示す平面図である。
なお、
図6A~
図6Eでは、説明の便宜上、1つの多角形及び多角形の組み合わせを強調して図示しているが、本発明の電磁波シールドフィルムでは、強調して図示した多角形及び多角形の組み合わせと、他の多角形との間には構造的な相違点や、機能的な相違点等は無い。
【0094】
図6Aに示すように、多角形は、四角形250であってもよい。
四角形250は、第1角251a、第2角251b、第3角251c及び第4角251dを有する凸四角形である。
第1角251aと第2角251bとは第1辺252aで結ばれており、第2角251bと第3角251cとは第2辺252bで結ばれており、第3角251cと第4角251dとは第3辺252cで結ばれており、第4角251dと第1角251aとは第4辺252dで結ばれている。
第2角251b及び第4角251dは直角であり、第1角251aは鋭角であり、第3角251cは鈍角である。第1角251aの角度及び第3角251cの角度の合計値は180度である。
第1辺252a、第2辺252b、第3辺252c及び第4辺252dの長さは互いに異なる。
【0095】
次に、四角形250による平面充填の態様について説明する。
4個の四角形250を組み合わせ、
図6A中、符号255で示す八角形とする。
八角形255を連続的に並べることにより
図6Aに示すような四角形250による平面充填を行うことができる。
【0096】
また、導電性バンプ214は、四角形250の頂点に位置するように配置されている。
【0097】
図6Bに示すように、多角形は、四角形350であってもよい。
四角形350は、第1角351a、第2角351b、第3角351c及び第4角351dを有する非凸四角形である。
また、第1角351aと第2角351bとは第1辺352aで結ばれており、第2角351bと第3角351cとは第2辺352bで結ばれており、第3角351cと第4角351dとは第3辺352cで結ばれており、第4角351dと第1角351aとは第4辺352dで結ばれている。
第3角351cの角度は180度を超えており、第1角351a、第2角351b、第3角351c及び第4角351dの角度は互いに異なる。
また、第1辺352a、第2辺352b、第3辺352c及び第4辺352dの長さは互いに異なる。
【0098】
次に、四角形350による平面充填の態様について説明する。
2個の四角形350を組み合わせて平行六辺形(
図6B中、符号355で示す図形)とする。
任意の合同な平行六辺形であれば平面充填をすることが可能なので、このように組み合わせた平行六辺形355を連続的に並べることにより
図6Bに示すような四角形350による平面充填を行うことができる。
【0099】
また、導電性バンプ314は、各四角形350の頂点に位置するように配置されている。
【0100】
図6Cに示すように多角形は五角形450であってもよい。
五角形450は、第1角451a、第2角451b、第3角451c、第4角451d及び第5角451eを有し、第1角451aと第2角451bとは第1辺452aで結ばれており、第2角451bと第3角451cとは第2辺452bで結ばれており、第3角451cと第4角451dとは第3辺452cで結ばれており、第4角451dと第5角451eとは第4辺452dで結ばれており、第5角451eと第1角451aとは第5辺452eで結ばれている。
第2角451b及び第5角451eは直角である。
第1角451a、第3角451c及び第4角451dの角度の合計は360度であり、第3角451c及び第4角451dの角度は同じである。
また、第1辺452a、第2辺452b、第4辺452d及び第5辺452eの長さは同じである。
なお、第1辺452a及び第3辺452cは同じ長さであってもよく、異なる長さであってもよい。
【0101】
次に、五角形450による平面充填の態様について説明する。
4個の五角形450を組み合わせ、平行六辺形(
図6C中、符号455で示す図形)とする。
任意の合同な平行六辺形であれば平面充填をすることが可能なので、このように組み合わせた平行六辺形455を連続的に並べることにより
図6Cに示すような五角形450による平面充填を行うことができる。
【0102】
また、導電性バンプ414は、各五角形450の頂点に位置するように配置されている。
【0103】
図6Dに示すように、多角形は五角形550であってもよい。
五角形550は、第1角551a、第2角551b、第3角551c、第4角551d及び第5角551eを有し、第1角551aと第2角551bとは第1辺552aで結ばれており、第2角551bと第3角551cとは第2辺552bで結ばれており、第3角551cと第4角551dとは第3辺552cで結ばれており、第4角551dと第5角551eとは第4辺552dで結ばれており、第5角551eと第1角551aとは第5辺552eで結ばれている。
第1角551a、第3角551c及び第4角551dの角度は120度である。
また、第2角551b及び第5角551eの角度は異なる。
第1辺552a及び第5辺552eの長さは同じである。
第2辺552b及び第4辺552dの長さの合計は、第3辺552cの長さと同じである。
【0104】
次に、五角形550による平面充填の態様について説明する。
3個の五角形550を組み合わせ正六角形(
図6D中、符号555で示す図形)とする。
合同な正六角形であれば平面充填をすることが可能なので、このように組み合わせた正六角形555を連続的に並べることにより
図6Dに示すような五角形550による平面充填を行うことができる。
【0105】
また、導電性バンプ514は、各五角形550の頂点に位置するように配置されている。
【0106】
図6Eに示すように、多角形は平行六辺形650であってもよい。
平行六辺形650は、第1角651a、第2角651b、第3角651c、第4角651d、第5角651e及び第6角651fを有し、第1角651aと第2角651bとは第1辺652aで結ばれており、第2角651bと第3角651cとは第2辺652bで結ばれており、第3角651cと第4角651dとは第3辺652cで結ばれており、第4角651dと第5角651eとは第4辺652dで結ばれており、第5角651eと第6角651fとは第5辺652eで結ばれており、第6角651fと第1角651aとは第6辺652fで結ばれている。
第1角651a、第2角651b、第3角651c、第4角651d、第5角651e及び第6角651fの角度は、120度である。
第1辺652a、第2辺652b、第4辺652d及び第5辺652eが同じ長さである。また、第3辺652c及び第6辺652fが同じ長さである。さらに、第1辺652aは、第3辺652cよりも短い長さである。
任意の合同な平行六辺形であれば平面充填をすることが可能なので、平行六辺形650を連続的に並べることにより
図6Eに示すような平行六角形650による平面充填を行うことができる。
【0107】
また、導電性バンプ614は、各平行六辺形650の頂点に位置するように配置されている。
【0108】
導電性バンプ214、導電性バンプ314、導電性バンプ414、導電性バンプ514又は導電性バンプ614が上記のように配置された電磁波シールドフィルムをプリント配線板に配置すると、プリント配線板の信号回路の上に導電性バンプが位置することにより寄生回路が生じることを抑制することができ、その結果、伝送損失を小さくすることができる。
【0109】
これまで説明してきた導電性バンプは、
図1B、
図5A、
図6A~
図6Eに示すように配列されていたが、本発明に係る電磁波シールドフィルムでは、導電性バンプが、1種の多角形で平面充填された各多角形の頂点に位置するように配置されており、かつ、導電性バンプのそれぞれにつき、各導電性バンプと最も近い位置にある最近接の導電性バンプとを結ぶ線分を描き、それらの線分のうち一つの線分を通る直線を引いた際に、直線が他の線分と重複しない部分を有するように配置されていれば、導電性バンプの配置は上記配列に限られない。
例えば、導電性バンプが、等脚台形や凧形等の図形で平面充填された各多角形の頂点に配置されており、かつ、最近接の導電性バンプを結ぶ線分を通る直線上に等間隔に導電性バンプが配置されないような電磁波シールドフィルムは、本発明の電磁波シールドフィルムに含まれる。
その一方で、導電性バンプが、正方格子、矩形格子、斜方格子、平行体格子の頂点に配置されている場合は、最近接の導電性バンプを結ぶ線分を通る直線上に等間隔に導電性バンプが配置されてしまう。そのため、このように配置された導電性バンプを含む電磁波シールドフィルムは、本発明の電磁波シールドフィルムに含まれない。
【0110】
また、平面充填する多角形は、凸多角形や、非凸多角形であってもよい。
【符号の説明】
【0111】
1 シールドプリント配線板
10 電磁波シールドフィルム
11 保護層
12 シールド層
13 接着剤層
14、14a、14b、114、114a、114b、114c、114d、214、314、414、514、614 導電性バンプ
20 プリント配線板
21 ベースフィルム
22 プリント回路
22a グランド回路
23 カバーレイ
23a 開口部