(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】磁気共鳴イメージングにおけるスキャンシーケンシング
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20241125BHJP
【FI】
A61B5/055 370
A61B5/055 390
(21)【出願番号】P 2023518798
(86)(22)【出願日】2021-09-17
(86)【国際出願番号】 EP2021075572
(87)【国際公開番号】W WO2022063690
(87)【国際公開日】2022-03-31
【審査請求日】2024-01-04
(32)【優先日】2020-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ウェイス シュテッフェン
【審査官】永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-093098(JP,A)
【文献】特開平8-10238(JP,A)
【文献】特開2004-202043(JP,A)
【文献】Christopher M. Kramer, et al.,Standardized cardiovascular magnetic resonance imaging (CMRI) protocols: 2020 update,Journal of Cardiovascular Magnetic Resonance,2020年02月24日,22:17,1-18
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気共鳴イメージングシステムの制御システムであって、
前記磁気共鳴イメージングシステムを制御して、複数のスキャンからなる検査を実行する制御モジュールと、
前記磁気共鳴イメージングシステムの患者状態検知システムから受信したセンサデータに基づいて、患者の睡眠状態をモニタリングするモニタモジュールと、
前記制御モジュールが前記磁気共鳴イメージングシステムを制御して前記スキャンを実行するシーケンスの少なくとも一部を動的に決定するシーケンシングモジュールであって、前記決定は、前記患者のモニタリングされた前記睡眠状態に従って、且つ前記スキャンのうちの1つ又は複数に関連付けられている睡眠適切性スコアに従って行われる、シーケンシングモジュールと、
を備える、制御システム。
【請求項2】
前記シーケンシングモジュールは、前記シーケンスにおける次のスキャンとして、第1の睡眠適切性スコアを有する第1のスキャンを、第2の睡眠適切性スコアを有する第2のスキャンよりも優先させることによって、前記患者が前記睡眠状態に入ったことを示す前記患者のモニタリングされた前記睡眠状態に応答し、前記第1の睡眠適切性スコアは、前記第2の睡眠適切性スコアよりも高い、請求項1に記載の制御システム。
【請求項3】
前記シーケンシングモジュールは、ルールベースのスコアリングアルゴリズムを使用して、前記1つ又は複数のスキャンをそれぞれの睡眠適切性スコアに関連付け、前記ルールベースのスコアリングアルゴリズムは、(i)スキャン持続時間、(ii)スキャンノイズレベル、(iii)
患者体動に対する感度に関連するスキャンタイプ、(iv)前記スキャン中の患者交流レベルのうちの1つ又は複数を入力パラメータpとして取る、請求項1又は2に記載の制御システム。
【請求項4】
前記ルールベースのスコアリングアルゴリズムは、重み係数w
iを各々含む複数の項の合計と、前記入力パラメータpに依存する関数f
i(p)とに基づいて、対応する上記スキャンの前記睡眠適切性スコアSを決定する、請求項3に記載の制御システム。
【請求項5】
前記入力パラメータpとしてスキャン持続時間を取る前記項の前記関数は、f(p)=pとして定義される、請求項4に記載の制御システム。
【請求項6】
前記入力パラメータpとしてスキャンノイズレベルを取る前記項の前記関数は、f(p)=-p
2として定義される、請求項4又は5に記載の制御システム。
【請求項7】
前記入力パラメータpとしてスキャンタイプ又は患者交流レベルを取る前記項の前記関数は、値の表として定義され、各値は、前記スキャンタイプ又は患者交流レベルのうちの1つに帰属している、請求項4又は5に記載の制御システム。
【請求項8】
前記制御モジュールは、前記磁気共鳴イメージングシステムによって前記スキャンが実行されている間に、モニタリングされた前記睡眠状態に従ってスキャンパラメータを調整する、請求項1から7のいずれか一項に記載の制御システム。
【請求項9】
前記制御モジュールは、前記患者は目が覚めていると検出されるときは、スキャン持続時間を短縮することによって、及び/又は前記患者は寝ていると検出されるときは、スキャン持続時間を延長することによって、前記スキャンパラメータを調整する、請求項8に記載の制御システム。
【請求項10】
前記シーケンシングモジュールは、前記患者が前記睡眠状態に入ったことを示す前記患者のモニタリングされた前記睡眠状態に応答して、1つ又は複数の後続スキャンの体動追跡部分を前記シーケンスから除外する、請求項1から9のいずれか一項に記載の制御システム。
【請求項11】
前記磁気共鳴イメージングシステムの前記患者状態検知システムから受信する前記センサデータは、(i)体動センサデータ、(ii)患者心拍数データ、(iii)患者呼吸数データ、(iv)患者の閉眼の検出を示すデータのうちの1つ又は複数を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の制御システム。
【請求項12】
前記磁気共鳴イメージングシステムの環境制御サブシステムに、ボア内照明条件を制御して睡眠支援状態を採用するように指示する環境制御モジュールを更に備える、請求項1から11のいずれか一項に記載の制御システム。
【請求項13】
前記磁気共鳴イメージングシステムの環境制御サブシステムに、個々の患者の個人的な睡眠トリガとして識別されている音楽及び/又は動画を再生するように指示する環境制御モジュールを更に備える、請求項1から12のいずれか一項に記載の制御システム。
【請求項14】
磁気共鳴イメージングシステムを制御するコンピュータ実施方法であって、
前記磁気共鳴イメージングシステムを制御して、複数のスキャンからなる検査を実行するステップと、
前記磁気共鳴イメージングシステムの患者状態検知システムから受信したセンサデータに基づいて、患者の睡眠状態をモニタリングするステップと、
前記磁気共鳴イメージングシステムが制御されて前記スキャンを実行するシーケンスの少なくとも一部を動的に決定するステップであって、前記決定は、前記患者のモニタリングされた前記睡眠状態に従って、且つ前記スキャンのうちの1つ又は複数に関連付けられている睡眠適切性スコアに従って行われる、決定するステップと、
を有する、コンピュータ実施方法。
【請求項15】
コンピュータによって実行されると、前記コンピュータが請求項14に記載の方法を実行できるようにするコンピュータ実行命令が保存された、コンピュータ可読媒体。
【請求項16】
請求項1から13のいずれか一項に記載の制御システムを備える、磁気共鳴イメージングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴イメージングにおけるスキャンシーケンシングに関し、特に、磁気共鳴イメージングシステムの制御システム及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
患者の体動は、磁気共鳴イメージング(MRI)において、画像アーチファクトの最も重要な原因である。これは、小病変の見落とし、重要な構造の不明瞭化、又は一般的には画質の低下につながることが多いため、多くのスキャンを繰り返す必要がある。様々なアプローチが患者の体動に対処するために提案されてきている。第1のアプローチでは、外部センサによって提供されるデータ又はMRデータ自体を使用して体動を検出し、それによって、そうしなければアーチファクトをもたらす可能性のあるMRデータの一部を取得しないか又は廃棄することを選択する。このアプローチでは、一般的にスキャン時間が長くなる。第2のアプローチでは、簡便な位置調整、固定、又は患者指導によって患者の体動を最小限に抑えようと務める。いくつかの小児イメージング事例では、患者の体動を回避するための最終手段として、明らかな追加の努力や副作用がある鎮静剤を使用することでさえ検討される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
自律的な環境で、スタッフの介入を最小限に抑えて、患者の体動を効果的に回避又は対処する技術が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この必要性は、独立請求項の主題によって満される。任意選択の特徴は、従属請求項によって、また、次の説明によって提供される。
【0005】
第1の態様によれば、磁気共鳴イメージングシステムの制御システムが提供される。この制御システムは、磁気共鳴イメージングシステムを制御して、複数のスキャンからなる検査を実行するように構成されている制御モジュールを備える。この制御システムは更に、磁気共鳴イメージングシステムの患者状態検知システムから受信したセンサデータに基づいて、患者の睡眠状態をモニタリングするモニタモジュールを備える。この制御システムは更に、制御モジュールが磁気共鳴イメージングシステムを制御してスキャンを実行するシーケンスの少なくとも一部を決定するように動的に構成されているシーケンシングモジュールを備える。この決定は、患者のモニタリングされた睡眠状態に従って、且つスキャンのうちの1つ又は複数に関連付けられている睡眠適切性スコアに従って行われる。
【0006】
このようにして、睡眠によって体動問題が効果的に且つ患者にとって好都合に解決されるという洞察に基づき、患者の睡眠が支援され、イメージングアーチファクトを低減し、イメージング時間を節約するために利用され、したがって、費用有効性が向上する。
【0007】
第2の態様によれば、磁気共鳴イメージングシステムを制御するコンピュータ実施方法が提供される。この方法は、磁気共鳴イメージングシステムを制御して、複数のスキャンからなる検査を実行するステップを有する。この方法は更に、磁気共鳴イメージングシステムの患者状態検知システムから受信したセンサデータに基づいて、患者の睡眠状態をモニタリングするステップを有する。この方法は更に、磁気共鳴イメージングシステムが制御されてスキャンを実行するシーケンスの少なくとも一部を動的に決定するステップを有する。この決定は、患者のモニタリングされた睡眠状態に従って、且つスキャンのうちの1つ又は複数に関連付けられている睡眠適切性スコアに従って行われる。
【0008】
第3の態様によれば、命令を含むコンピュータプログラム製品が提供される。この命令は、コンピュータによってプログラムが実行されると、コンピュータが、第2の態様の方法を実行できるようにする。
【0009】
第4の態様によれば、コンピュータによって実行されると、コンピュータが第2の態様の方法を実行できるようにする第3の態様のコンピュータプログラム製品及び/又はコンピュータ実行命令が保存されたコンピュータ可読媒体が提供される。
【0010】
第1の態様に関連して説明される任意選択の特徴又は下位態様は、必要に応じて第2~第4の態様のいずれかに適用される。
【0011】
「睡眠状態」とは、患者が寝ているか若しくは目が覚めているかを示す2値的な指標、又は、目が覚めている、レム睡眠、ノンレム睡眠など、睡眠の深さや睡眠相を追加的に示す3つ以上の状態からなるセットから選択される状態を意味する。また、「睡眠状態」とは、患者心拍数、呼吸数(ともに、例えばバイタルサインカメラから)、及び通常のカメラビジョンなど、患者が寝ているかどうかを決定するのに十分な情報を提供する患者測定値又は患者測定値のベクトルとしても理解される。
【0012】
「スキャン」とは、特定のタイプの1回のスキャンを意味し、これは、多数のそのようなスキャンからなるより大きな「検査」の一部として、単一の目的のために行われる。スキャンのいくつかの例としては、グラジエントエコースキャン、エコープラナースキャン、スピンエコースキャン、拡散スキャンが挙げられる。したがって、本明細書で使用される場合、「シーケンス」とは、複数のそのようなスキャンを指すだけでなく、スキャンが実行される順序をも指し、また、「シーケンシング」はそれに応じて解釈される。
【0013】
別の言い方をすれば、画質を向上させ、イメージング時間を短縮し、鎮静剤の使用を減らすことを全体の目的として、睡眠習慣及び睡眠状態が決定され、睡眠習慣に従って検査及び検査内でのスキャンのスケジューリングが適応されたり、睡眠状態に従ってスキャンパラメータが調整されたりする、MRスキャンスケジューリングシステム及び方法が提供される。
【0014】
本発明のこれら及び他の態様は、以下の詳細な説明から明らかになり、また、当該説明を参照して明瞭にされる。
【0015】
以下では、添付の図面を参照して、実施例がより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】制御システムを含む磁気共鳴イメージングシステムを示す。
【
図2】
図1の制御システムによって実行される方法を表す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、例示的な磁気共鳴イメージングシステム100を示している。磁気共鳴イメージングシステム100は、超電導円筒型磁石といった磁石104を備え、その中に、支持体120上で被検者118を受容するのに十分な大きさのボア106がある。円筒磁石104のボア106内には、磁気共鳴イメージングを実行するのに磁場が十分に強力で均一であるイメージングゾーン108がある。ボア106内には、イメージングゾーン108内の磁気スピンを空間的にエンコードするための磁気共鳴データの取得に使用される磁場傾斜コイル110のセットもある。磁場傾斜コイル110は、3つの直交空間方向に空間的にエンコードするための3つの別個のコイルセットを含む。磁場傾斜コイル110は、磁場傾斜コイル110に電流を供給する磁場傾斜コイル電源112に接続されている。イメージングゾーン108に隣接して、イメージングゾーン108内の磁気スピンの向きを操作したり、イメージングゾーン108内のスピンからの無線送信を受信したりする無線周波数アンテナ114がある。無線周波数アンテナ114は、複数のコイル要素を含む。無線周波数コイル114は、無線周波数トランシーバ116に接続されている。無線周波数アンテナ114及び無線周波数トランシーバ116は、別個の送信コイル及び受信コイル、並びに別個の送信器及び受信器によって置換されてもよい。本明細書では、磁気共鳴イメージングシステム100の詳細は、例示のみを目的として提供されており、本明細書に説明する手法は、任意のMRIシステム又は患者の体動によるイメージングアーチファクトの影響を受けやすい任意の他のイメージングシステムに適用されるものであることが理解されるであろう。磁気共鳴イメージングシステム100は更に、患者状態検知システム102と、任意選択で、環境制御サブシステム122とを備える。
【0018】
磁場傾斜コイル電源112、トランシーバ116、患者状態検知システム102、及び環境制御サブシステム122は、制御システム126のハードウェアインターフェース128に接続されている。
【0019】
制御システム126は、ユーザインターフェース132、コンピュータストレージ134、及びコンピュータメモリ136とともにハードウェアインターフェース128に接続されたプロセッサ130を備える。コンピュータストレージ134には、使用中に、患者状態検知システム102を使用して取得したセンサデータ310が含まれている。コンピュータストレージ134には、任意選択で、ボア内照明制御データ312と音楽/動画データ314も含まれている。コンピュータメモリ136には、制御モジュール250、モニタモジュール252、シーケンシングモジュール254、及び、任意選択で環境制御モジュール256が含まれている。各モジュール250~256には、コンピュータ実行可能命令が含まれている。
【0020】
制御モジュール250には、プロセッサ130が磁気共鳴イメージングシステム100の動作及び機能を本明細書に説明されているように制御できるようにするコンピュータ実行可能コードが含まれている。特に、制御モジュール250は、磁気共鳴イメージングシステム100を制御して、複数のスキャンからなる検査を実行するように構成されている。制御モジュール250は、磁気共鳴イメージングシステム100によって上記のスキャンが実行されている間に、モニタリングされた睡眠状態に従ってスキャンパラメータを調整するように構成されている。
【0021】
モニタモジュール252は、患者状態検知システム102から受信したセンサデータ310に基づいて、患者の睡眠状態をモニタリングするように構成されている。この実施例では、モニタモジュール252は、センサデータ310に基づいて、患者が寝ている(睡眠状態)か、目が覚めている(非睡眠状態)かを検出するように構成されている。睡眠は、心拍数や呼吸数のカメラベースの測定や閉眼検出などの方法で検出できる。したがって、患者状態検知システム102から受信するセンサデータ310には、(i)体動センサデータ、(ii)患者心拍数データ、(iii)患者呼吸数データ、(iv)患者の閉眼の検出を示すデータのうちの1つ又は複数が含まれる。
【0022】
シーケンシングモジュール254は、制御モジュールが磁気共鳴イメージングシステムを制御してスキャンを実行するシーケンスの少なくとも一部を決定するように動的に構成されている。決定は、患者のモニタリングされた睡眠状態に従って、且つスキャンのうちの1つ又は複数に関連付けられている睡眠適切性スコアに従って行われる。シーケンシングモジュール254は、シーケンスにおける次のスキャンとして、第1の睡眠適切性スコアを有する第1の上記のスキャンを、第2の睡眠適切性スコアを有する第2の上記のスキャンよりも優先させることによって、患者が睡眠状態に入ったことを示す患者のモニタリングされた睡眠状態に応答するように構成されている。第1の睡眠適切性スコアは、第2の睡眠適切性スコアよりも高い。したがって、有利には、患者が眠っている間により睡眠に適したスキャンが優先して行われ、他の睡眠にあまり適していないスキャンは、スケジューリングにおいて優先順位が低いため、検査中の任意の他の時間に行われる。
【0023】
シーケンシングモジュール254は、ルールベースのスコアリングアルゴリズムを使用して、1つ又は複数のスキャンをそれぞれの睡眠適切性スコアに関連付けるように構成されている。このルールベースのアルゴリズムは、次のパラメータ:(i)スキャン持続時間、(ii)スキャンノイズレベル、(iii)スキャンタイプ(患者の体動に対する感度に関連する)、(iv)スキャン中の患者交流レベル、のうちの1つ又は複数を入力パラメータとして取る。睡眠適切性スコアSは、重み付け係数wiを各々含む複数の項の合計と、パラメータpに依存する関数fi(p)として定義される。係数wiは、パラメータの相対的な重みを設定するために経験的に調整される。関数は、パラメータpの多項式、指数関数、又は他の関数としての任意の解析関数である。スキャン持続時間の場合、この関数は単純に恒等関数f(p)=pとなる。スキャンノイズレベルの場合、ノイズレベルが高いほど睡眠にはより不適切になるため、関数はf(p)=-p2と定義される。パラメータスキャンタイプは、患者の体動に対する様々なスキャンタイプの感度を考慮するためにスコアに導入される。体動により敏感なスキャンタイプほど、高いスコアになる。これらは、睡眠中に実行することがより適切であるためである。また、その逆も同様である。したがって、対応する関数は、値の表であり、各値は、複数のスキャンタイプのうちの1つに帰属している。例えば、表の値は、拡散スキャンでは、5に設定され、全ての非拡散デカルトスキャンでは、3に設定され、非拡散ラジアル及びスパイラルスキャンに対しては1に設定される。患者交流レベルを表すパラメータの関数も表として実施できる。例えば、息止めコマンドとして患者が要求に応答する必要があるスキャンには、値-1を割り当て、全ての他のスキャンには0が割り当てられる。
【0024】
シーケンシングモジュール254は、患者の入眠を支援するために、シーケンスの始まりに又は始まりの近くで行われるように、少なくとも1つの他の上記のスキャンに関連付けられているノイズレベルよりも低いノイズレベルに関連付けられている上記のスキャンのシーケンシングが優先するように構成されている。スキャンには、患者交流の程度が関与する少なくとも1つのインタラクティブスキャンが含まれている。インタラクティブスキャンは、患者の再位置調整及び患者の息止めのうちの1つ又は複数の要件に関連付けられている。このような場合は、シーケンシングモジュール254は更に、患者の睡眠状態が目が覚めている状態と決定されるシーケンス中の時点で行われるようにインタラクティブスキャンのシーケンシングを優先するように構成される。これは、有利には、スキャンの終わりに又は終わりの近くで行われ、インタラクティブスキャンが患者の入眠を妨げるのを防止する。シーケンシングモジュール254は、患者が睡眠状態に入ったことを示す患者のモニタリングされた睡眠状態に応答して、1つ又は複数の後続スキャンの体動追跡部分をシーケンスから除外するように構成されている。体動追跡は、体動に敏感な多くのスキャンの一部を形成し、通常はそれらを長くする。したがって、有利には、患者が寝ていることが検出されたときに、これらのスキャン内で体動追跡を除外すると、スキャン時間が短縮される。
【0025】
前述のように、制御モジュール250は、磁気共鳴イメージングシステム100によって上記のスキャンが実行されている間に、モニタリングされた睡眠状態に従ってスキャンパラメータを調整するように構成されている。ほとんどのMRスキャンでは、イメージング時間が短縮し、体動アーチファクトに対する感度が低下すると、画質や解像度が低下するというトレードオフがある。患者は目が覚めていると検出された場合は、このトレードオフをより短く、したがって、あまり敏感ではないスキャンの方向に調整することによってスキャンパラメータを調整できるが、現在寝ている患者については、ノイズレベルがより低いより長いスキャン時間が選択される。本明細書で開示されているルールベースのスコアリングアルゴリズムを使用してスキャンを調整して、例えば、最適化アルゴリズムを使用して、このトレードオフを達成できる。患者が現在寝ている場合は、スキャンパラメータを反復的に適応させて、対応するスキャンの睡眠適切性スコアを高めることができる。患者が現在目覚めている場合は、スキャンパラメータを反復的に適応させて、睡眠適切性スコアを下げることができる。最急傾斜降下法などの任意の既知の最適化アルゴリズムを使用してこの最適化を実行できる。最適化は、ユーザ定義のパラメータ空間で実行できる。例えば、スキャン持続時間のパラメータ空間は、最適化アルゴリズムがそれぞれ超えたり、下回ったりするべきではない最大スキャン持続時間と最小スキャン持続時間とによって与えられる。
【0026】
環境制御モジュール256は、環境制御サブシステム122に、例えば、ボア内照明制御データ312に基づいて、ボア内照明条件を制御して睡眠支援状態を採用するように指示するように構成されている。環境制御モジュール256は、環境制御サブシステム122に、個々の患者の個人的な睡眠トリガとして識別されている音楽及び/又は動画を再生するように指示するように構成されている。この音楽及び/又は動画は、例えば、音楽/動画データ314として事前に保存されている。
【0027】
図2は、磁気共鳴イメージングシステム100を制御するために制御システム126によって実行される方法を示している。この方法は、ステップ201で、磁気共鳴イメージングシステム100を(制御モジュール250によって)制御し、複数のスキャンからなる検査を実行することを有する。この方法は更に、ステップ202で、磁気共鳴イメージングシステム100の患者状態検知システム102から受信したセンサデータ310に基づいて、患者の睡眠状態を(モニタモジュール252によって)モニタリングすることを有する。この方法は更に、ステップ203で、磁気共鳴イメージングシステム100が制御されてスキャンを実行するシーケンスの少なくとも一部を(シーケンシングモジュール254によって)動的に決定することを有する。決定は、患者のモニタリングされた睡眠状態に従って、且つスキャンのうちの1つ又は複数に関連付けられている睡眠適切性スコアに従って行われる。
【0028】
本明細書で説明する手法の1つの使用事例は、次のアプローチのうちの1つ又は複数を含む。
1.潜在的な睡眠者を識別し、個人的な睡眠習慣及び睡眠トリガを導き出す。
2.検査中に眠るように患者に指導する。
3.睡眠習慣(時間帯、スキャナタイプ)に応じて患者をスケジューリングする。
4.検査の始まりに個々の睡眠トリガを適用する。
5.睡眠を支援するために検査内でのスキャンを再スケジューリングする。
6.睡眠状態に応じてスキャンを調整する。
7.睡眠を支援するようにイメージング環境を調整する(適応照明)。
【0029】
アプローチ1(「睡眠者を識別し、個人的な睡眠習慣及び睡眠トリガを導き出す」)に関して、潜在的な睡眠者は、次のような質問を含むアプリベースのアンケートに基づいて識別できる。
○「運転中や飛行中に眠ることはできますか?」
○「睡眠を妨げるノイズを1~5の尺度でどのように評価しますか?」
○「普段眠るのにどれくらい時間がかかりますか?」
○「あなたの最適な睡眠姿勢はどれですか?」(仰臥位でない場合は、睡眠者としては不適格)
○「新しい状況でも落ち着いて自信を持っていられますか?1~5で評価してください。」
○このアプリを使用して低レベルのMRノイズを生成することもでき、「今度のMR検査でも同様の音が聞こえます。この検査中に眠れると思いますか?眠れることはあなたにとっても画質にとっても有益です。」
【0030】
これらの質問はそれぞれ重みで評価され、睡眠支持の回答は、対応する重みを総合スコアに追加する。総合スコアが制限値を超えると、患者は睡眠者として識別される。
【0031】
決定睡眠者/非睡眠者の基準(重み、全体的な制限値)は、製品の発売時にヒューリスティックに設定され、製品の使用中に継続的に精緻化される。したがって、検査前の決定は、各患者の実際の検査中に得られた睡眠状態に関するデータと比較される。その後、あらゆる患者に対する正しい決定の数が最大になるように、基準は更新される。ここで正しいとは、患者が睡眠者であるという決定がなされた後で、患者が眠ったことを意味する。
【0032】
現在の基準に基づいて患者が「睡眠者」として適格である場合、患者の特性、個人用機器の使用、及び詳細なアンケートから睡眠習慣及び睡眠トリガが導き出される。特性の例として、睡眠時間は通常、年齢とともに変化するものであり、特定の患者の年齢に応じて、最も可能性の高い睡眠時間が可能になる。また、個人用機器の使用時間を評価して、個人的な睡眠時間を導き出すことができる。
【0033】
アプローチ2(「検査中に眠るように患者を促し、指導する」)に関して、ここでも睡眠が良い画質と患者体験との両方に役立つことを述べる情報が、個人用機器上のアプリを介して患者に提供できる。このアプリを使用してMRノイズを再生し、患者をこの音に慣れさせることができる。この音は自宅で患者が眠りについた直後に小音量で再生できる。
【0034】
アプローチ3(「睡眠習慣に応じて患者をスケジューリングし、睡眠トリガを適用する」)に関して、個人的な睡眠習慣を使用して、患者をスケジューリングできる。「夜型人間」は朝にスケジューリングされ、「朝型人間」は午後や夕方にスケジューリングされる。非睡眠者は、好ましくは、スキャンが一般的に中又は低磁場システムにおけるよりも短く、したがって、体動アーチファクトに対する感度が高くない高磁場システム(例えば3T)でスケジューリングされる。個人的な睡眠トリガをMR検査の始まりに適用できる(個人的な一曲や動画、いくつかの個人の持ち物、いつもの夜の飲み物(例えば夜間のお茶や食べ物))。
【0035】
アプローチ4(「睡眠を誘導又は維持するために検査内でのスキャンを再スケジューリングする」)に関して、MR検査の始まりでは大音量のスキャンを回避して患者が眠りにつけるようにしたり、実際の睡眠中に患者を起こさないようにしたりすることができる。大音量のスキャンは検査の終わりに再スケジューリングして、患者を再び目覚めさせることができる。同様に、能動的な患者交流(息止めスキャン、再位置調整など)を必要とするスキャンを、MR検査の始まりや睡眠中は回避できる。
【0036】
アプローチ5(「睡眠状態に応じて検査内での体動に敏感なスキャンを再スケジューリングする」)に関して、これは、MRスキャンは非常に異なる体動感度を有するという洞察に基づいている。より長いスキャン、拡散スキャン、及び機能的スキャンは、体動感度が非常に高い例である。このようなスキャンは、検出された睡眠相に再スケジューリングできる。
【0037】
アプローチ6(「睡眠習慣及び睡眠状態に応じてスキャンを調整する」)に関して、ほとんどのMRスキャンタイプでは、イメージング時間が短縮し、それに伴って体動アーチファクトに対する感度や、画質や解像度が低下するというトレードオフをすることができる。非睡眠者の場合はスキャン時間を短縮できるが、睡眠患者の場合はスキャン時間を長くすることができる。多くのスキャンタイプでは、追加のMRデータを取得して体動を追跡し、影響を受けているMR画像データを廃棄する(PROPELLER、RADIAL取得、MR Navigatorなど)。追加の取得には、追加のイメージング時間が必要である。スキャンは、患者の睡眠相中でのこの追加の取得は回避するように調整されて、イメージング時間を節約できる。
【0038】
アプローチ7(「睡眠を支援するようにイメージング環境を調整する」)に関して、室内条件やボア内照明条件を調整して睡眠を支援できる。患者が寝ている場合は、患者とのコミュニケーションは回避される。
【0039】
本発明の態様は、完全にハードウェアの実施形態、完全にソフトウェアの実施形態(ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコードなどを含む)、又はソフトウェア態様とハードウェア態様とを組み合わせた実施形態の形態を取ることができ、これらは全て本明細書では一般的に「モジュール」、又は「システム」と呼ばれる。更に、本発明の態様は、コンピュータ実行可能コードが具現化された1つ又は複数のコンピュータ可読媒体に具現化されたコンピュータプログラム製品の形態を取ることができる。1つ又は複数のコンピュータ可読媒体の任意の組み合わせを利用できる。コンピュータ可読媒体は、コンピュータ可読信号媒体又はコンピュータ可読記憶媒体である。本明細書で使用される「コンピュータ可読記憶媒体」には、コンピューティングデバイスのプロセッサによって実行可能な命令を記憶できる任意の有形記憶媒体が包含されている。コンピュータ可読記憶媒体は、非一時的コンピュータ可読的記憶媒体とも呼ばれ得る。「コンピュータメモリ」又は「メモリ」は、コンピュータ可読記憶媒体の一例である。コンピュータメモリは、プロセッサから直接アクセスできる任意のメモリである。「コンピュータストレージ」又は「ストレージ」は、コンピュータ可読記憶媒体の一例である。コンピュータストレージは、任意の不揮発性コンピュータ可読記憶媒体である。いくつかの実施形態では、コンピュータストレージはまた、コンピュータメモリでもあり、またその逆も同様である。本明細書で使用される「プロセッサ」には、プログラム、マシン実行可能命令、又はコンピュータ実行可能コードを実行可能である電子構成要素が包含されている。「プロセッサ」を含むコンピューティングデバイスへの参照は、複数のプロセッサ又は処理コアを含む可能性があると解釈するべきである。
【0040】
本発明は、図面及び上記の説明に詳細に例示及び説明されているが、このような例示及び説明は、例示的又は模範的と見なされるべきであって、限定的と見なされるべきではない。本発明は、開示された実施形態に限定されない。開示された実施形態の他の変形は、図面、開示及び添付の特許請求の範囲の検討から、請求項に係る発明を実施する際に当業者によって理解され、実行可能である。
【0041】
特許請求の範囲において、「備える」という語は、他の要素やステップを除外するものではなく、単数形は、複数を除外するものではない。単一のプロセッサ又は他のユニットが、特許請求の範囲に記載されているいくつかのアイテムの機能を果たしてもよい。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用できないことを意味するものではない。コンピュータプログラムは、他のハードウェアと一緒に又はその一部として供給される、光記憶媒体又は固体媒体などの任意の適切な媒体に保存/配布することができるが、インターネット又は他の有線若しくはワイヤレス通信システムを介してなど他の形式で配布することもできる。特許請求の範囲における任意の参照符号は、範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【符号の説明】
【0042】
100 磁気共鳴イメージングシステム
102 患者状態検知システム
104 磁石
106 ボア
108 イメージングゾーン
110 磁場傾斜コイル
112 磁場傾斜コイル電源
114 無線周波数アンテナ
116 無線周波数トランシーバ
118 被検者
120 支持体
122 環境制御サブシステム
126 制御システム
128 ハードウェアインターフェース
130 プロセッサ
132 ユーザインターフェース
134 コンピュータストレージ
136 コンピュータメモリ
201~203 方法ステップ
250 制御モジュール
252 モニタモジュール
254 シーケンシングモジュール
256 環境制御モジュール
310 センサデータ
312~314 他のデータ