(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】家具部分を可動に支持するための家具金具
(51)【国際特許分類】
E05F 1/12 20060101AFI20241125BHJP
E05D 3/16 20060101ALI20241125BHJP
【FI】
E05F1/12
E05D3/16
(21)【出願番号】P 2023528251
(86)(22)【出願日】2021-11-05
(86)【国際出願番号】 AT2021060408
(87)【国際公開番号】W WO2022099332
(87)【国際公開日】2022-05-19
【審査請求日】2023-06-09
(32)【優先日】2020-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】597140501
【氏名又は名称】ユリウス ブルーム ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Julius Blum GmbH
【住所又は居所原語表記】Industriestrasse 1, 6973 Hoechst, Austria
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アーミン バルトライヒ
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー ズィーモン フローガウス
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ホルツアプフェル
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク ハグズピール
(72)【発明者】
【氏名】ペーター ガーベル
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-511651(JP,A)
【文献】カナダ国特許出願公開第03058692(CA,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05D 3/16
E05F 1/12
E05D 15/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
家具キャビネット(2)に少なくとも1つの家具部分(3)を可動に支持するための家具金具(4)であって、
- 前記少なくとも1つの家具部分(3)を運動させるためのレバー機構(5)であって、枢動軸(21a)を中心として旋回可能に支持された少なくとも1つのレバー(5a)を備え、前記少なくとも1つのレバー(5a)は、少なくとも1つ
の開口(23)を有し、前記開口(23)内に前記枢動軸(21a)は遊びを伴って配置されている、レバー機構(5)と、
- 前記レバー機構(5)に力を加えるため
の少なくとも1つの蓄力器(10)であって、少なくとも1つの前記枢動軸(21a)は、前記少なくとも1つのレバー(5a)の旋回運動時に前記少なくとも1つの蓄力器(10)の影響下で前記少なくとも1つの開口(23)内における第1の当付け箇所(24a)から前記少なくとも1つの開口(23)内における第2の当付け箇所(24b)に可動である、蓄力器(10)と
を備える、家具金具(4)において、
前記枢動軸(21a)に少なくとも、前記少なくとも1つのレバー(5a)の前記少なくとも1つの開口(23)内における前記少なくとも1つの
前記枢動軸(21a)の2つの前記当付け箇所(24a,24b)の仮想の接続ライン(26)
を横断する方向で力(F1,F2)を加える少なくとも1つのばね要素(25)が設けられている
ことを特徴とする、家具金具(4)。
【請求項2】
前記少なくとも1つの開口(23)は、円筒形である、請求項1記載の家具金具(4)。
【請求項3】
前記少なくとも1つの蓄力器(10)は、ばね装置を備える、請求項1または2記載の家具金具(4)。
【請求項4】
前記レバー機構(5)は、前記レバー機構(5)に前記少なくとも1つの蓄力器(10)によって閉鎖方向にも開放方向にも力が加えられない死点位置を有し、前記少なくとも1つの
前記枢動軸(21a)は、前記死点位置を越えた場合に前記第1の当付け箇所(24a)から前記第2の当付け箇所(24b)に可動であることを特徴とする、請求項1
から3までのいずれか1項記載の家具金具(4)。
【請求項5】
前記少なくとも1つのレバー(5a)の前記開口(23)は、前記第1の当付け箇所(24a)と前記第2の当付け箇所(24b)とを互いに接続する当付け輪郭部(24c)を有し、前記枢動軸(21a)は、前記少なくとも1つのレバー(5a)の旋回運動時に前記少なくとも1つの蓄力器(10)と前記少なくとも1つのばね要素(25)との影響下で前記当付け輪郭部(24c)に沿って滑動するように案内されていることを特徴とする、請求項1
から4までのいずれか1項記載の家具金具(4)。
【請求項6】
前記レバー機構(5)は、平行四辺形に配置された少なくとも1つのレバー構成を有し、前記少なくとも1つのレバー(5a)は、前記レバー構成の一部であ
ることを特徴とする、請求項1から
5までのいずれか1項記載の家具金具(4)。
【請求項7】
前記少なくとも1つのばね要素(25)は、前記レバー構成の2つの枢動軸(21a,21b)の間で有効であることを特徴とする、請求項6記載の家具金具(4)。
【請求項8】
前記少なくとも1つのレバー(5a)は、前記枢動軸(21a)を介して、前記レバー機構(5)の少なくとも1つの第2のレバー(5b)に結合されており、両方の前記レバー(5a,5b)の相対位置が、旋回運動時に可変であることを特徴とする、請求項1から
7までのいずれか1項記載の家具金具(4)。
【請求項9】
前記少なくとも1つの第2のレバー(5b)は、別の枢動軸(21b)を介して、前記レバー機構(5)の少なくとも1つの第3のレバー(5c)に旋回可能に結合されて
いることを特徴とする、請求項
8記載の家具金具(4)。
【請求項10】
前記少なくとも1つのばね要素(25)は、前記少なくとも1つのレバー(5a)を前記少なくとも1つの第2のレバー(5b)に結合する前記枢動軸(21a)に力(F1)を加えるだけでなく、前記別の枢動軸(21b)に力(F2)も加えることを特徴とする、請求項9記載の家具金具(4)。
【請求項11】
前記少なくとも1つのばね要素(25)は、前記枢動軸(21a)を少なくとも部分的に取り囲んでおり、かつ/または前記枢動軸(21a,21b)の周縁部を押圧することを特徴とする、請求項1から
10までのいずれか1項記載の家具金具(4)。
【請求項12】
前記少なくとも1つのばね要素(25)は、少なくとも1つのストッパ(27a,27b,27c)に支持可能で
あることを特徴とする、請求項1から
11までのいずれか1項記載の家具金具(4)。
【請求項13】
前記少なくとも1つのストッパ(27a,27b,27c)は、ピン状に形成されているかまたは前記レバー機構(5)の1つのレバー(5a,5b,5c,5d)のウェブとして形成されていることを特徴とする、請求項12記載の家具金具(4)。
【請求項14】
前記少なくとも1つのばね要素(25)は、
- 少なくとも部分的に湾曲されて形成されており、かつ/または
- 少なくとも部分的に弾性変形可能に形成されており、かつ/または
- 成形ばねとして形成されており、かつ/または
- 金属から成っており、かつ/または
- 前記レバー機構(5)の少なくとも2つの枢動軸(21a,21b)の間で有効である
ことを特徴とする、請求項1から
13までのいずれか1項記載の家具金具(4)。
【請求項15】
前記レバー機構(5)は、少なくとも5つ
の枢動
軸を有することを特徴とする、請求項1から
14までのいずれか1項記載の家具金具(4)。
【請求項16】
前記レバー機構(5)は、少なくとも7つの枢動軸を有することを特徴とする、請求項1から14までのいずれか1項記載の家具金具(4)。
【請求項17】
前記家具金具(4)は、前記レバー機構(5)に対する前記蓄力器(10)の力を調整するための少なくとも1つの調整装置(17)を有
することを特徴とする、請求項1から
16までのいずれか1項記載の家具金具(4)。
【請求項18】
前記調整装置(17)は、
- 操作要素(17a)を有し、前記レバー機構(5)に対する前記蓄力器(10)の力は、前記操作要素(17a)の操作によって調整可能であり、かつ/または
- ねじ山区分(20)を有し、前記蓄力器(10)の作用箇所(16)が、前記調整装置(17)の操作によって前記ねじ山区分(20)に沿って調整可能であり、かつ/または
- 前記調整装置(17)の操作要素(17a)が、前記家具金具(4)の取り付けられた状態で、可動の前記家具部分(3)に向けられていて、前記家具金具(4)のハウジング(9)の前側の領域に配置されている
ことを特徴とする、請求項17記載の家具金具(4)。
【請求項19】
前記調整装置(17)は、回動可能な操作要素(17a)を有し、前記レバー機構(5)に対する前記蓄力器(10)の力は、前記操作要素(17a)の操作によって調整可能であることを特徴とする、請求項17記載の家具金具(4)。
【請求項20】
前記家具金具(4)は、家具キャビネット(2)の家具プレート(6)内に挿入されるかまたは組み込まれるように形成されたハウジング(9)を有することを特徴とする、請求項1から
19までのいずれか1項記載の家具金具(4)。
【請求項21】
家具キャビネット(2)と、前記家具キャビネット(1)に対して相対的に可動の家具部分(3
)と、可動の前記家具部分(3)を運動させるための、請求項1から
20までのいずれか1項記載の家具金具(4)とを備える、家具(1)。
【請求項22】
前記可動の家具部分(3)は、前記家具キャビネット(1)に対して相対的に持上げ可能な家具フラップ(3a)である、請求項21記載の家具(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家具キャビネットに少なくとも1つの家具部分を可動に支持するための家具金具であって、
- 少なくとも1つの家具部分を運動させるためのレバー機構であって、枢動軸を中心として旋回可能に支持された少なくとも1つのレバーを備え、少なくとも1つのレバーは、少なくとも1つの、特に円筒形の開口を有し、開口内に枢動軸は遊びを伴って配置されている、レバー機構と、
- レバー機構に力を加えるための、特にばね装置を備える少なくとも1つの蓄力器であって、少なくとも1つの枢動軸は、少なくとも1つのレバーの旋回運動時に少なくとも1つの蓄力器の影響下で少なくとも1つの開口内における第1の当付け箇所から少なくとも1つの開口内における第2の当付け箇所に可動である、蓄力器と
を備える、家具金具に関する。
【0002】
さらに、本発明は、家具キャビネットと、家具キャビネットに対して相対的に可動に支持された家具部分、特に家具キャビネットに対して相対的に持上げ可能な家具フラップと、可動に支持された家具部分を運動させるための、以下に記載する形態の家具金具とを備える、家具に関する。
【0003】
このような家具金具は、例えば家具フラップを運動させるために使用され、家具金具の蓄力器は、家具フラップに作用する重量を補償するために設けられている。この場合、蓄力器から開放力がレバー機構に加えられるので、家具フラップの開放運動は蓄力器によってサポートされ、使用者は、特に重い家具フラップを運動させるために、より少ない力しか使う必要がない。他方、蓄力器は、家具フラップの閉鎖運動時に、死点位置を越えた後で閉鎖力をレバー機構に加えるためにも使用され、これによって、レバー機構に結合された家具フラップを閉鎖位置に引き込むことができ、閉鎖位置に保つ力によって家具キャビネットに押し付けておくことができる。
【0004】
つまり、死点位置の領域では、蓄力器の、レバー機構に加えられる力の方向転換が行われ、これによって、枢動軸も開口の内部で急激に第1の当付け箇所から第2の当付け箇所へと跳ねる。これによって、また、死点位置の領域における不確定で急激な運動挙動が発生し、望ましくない騒音が発生する。
【0005】
このような問題を解消するための端緒となる解決手段は、国際公開第2017/143379号に開示されている。同号には、互いに枢動自在に結合された少なくとも2つのレバーを備えた、家具フラップを運動させるためのアクチュエータが記載されていて、少なくとも2つのレバーは、枢動軸を介して互いに旋回可能に結合されている。ばね弾性的な第3のレバーによって、枢動軸は、相応に大きな力作用で開口の当付け輪郭部に不動に押圧され、これによって、開口の内部における枢動軸の急激な跳ねが阻止される。しかしながら、この構成には、枢動軸の摩擦が著しく高まり、これによって、家具金具を運動させるための手動による大きな力が必要であるという欠点がある。さらに、この構造は、材料使用の増大にも結び付いている。
【0006】
本発明の課題は、冒頭に述べた形態の家具金具を改良して、上述した欠点を回避するようにすることである。
【0007】
この課題は、本発明によれば、請求項1の特徴によって解決される。本発明の更なる有利な構成は、従属請求項に定義されている。
【0008】
つまり、本発明によれば、枢動軸に少なくとも、少なくとも1つのレバーの少なくとも1つの開口内における少なくとも1つの枢動軸の2つの当付け箇所の仮想の結合ラインに対して横方向で力を加える少なくとも1つのばね要素が設けられていることが特定されている。
【0009】
言い換えれば、枢動軸は、レバーの開口の内部でばね要素の力によって、ただ1つの当付け箇所に不動に固定されるのではない。その代わりに、本発明によれば、枢動軸は開口の内部で第1の当付け箇所から第2の当付け箇所に運動可能であるものの、枢動軸は、ばね要素によって加えられる横方向力によって、第1の当付け箇所と第2の当付け箇所とを互いに結合する当付け輪郭部に沿って滑り接触して案内されることが特定されている。
【0010】
枢動軸が前記当付け輪郭部に沿って滑り接触することによって、枢動軸が死点位置の領域で急激にかつ望ましくない騒音を発生させながら開口の当付け箇所に当接しないことが保証される。当付け輪郭部に枢動軸を押し付けるためには、比較的弱い蓄力器でも十分であるため、摩擦力が、国際公開第2017/143379号に記載された従来技術に比べて著しく低減されている。
【0011】
本発明は、特に、レバー機構が、レバー機構に少なくとも1つの蓄力器によって閉鎖方向にも開放方向にも力が加えられない死点位置を有し、少なくとも1つの枢動軸が、死点位置を越えた場合に第1の当付け箇所から第2の当付け箇所に可動である家具金具のために好適に使用することができる。
【0012】
本発明の更なる詳細および利点を、図面に示した実施例に基づき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1a】可動の家具部分を備えた家具を示す斜視図である。
【
図1b】可動の家具部分を備えた家具を示す分解図である。
【
図2】家具プレートに配置することができる家具金具を示す斜視図である。
【
図3a】家具駆動装置の形態の家具金具を示す斜視図である。
【
図3b】従来技術による、開口内に配置された枢動軸を概略的に示す図である。
【
図3c】従来技術による、開口内に配置された枢動軸を概略的に示す図である。
【
図3d】本発明による、開口内に配置された枢動軸を概略的に示す図である。
【
図4b】
図4aに示した家具金具の一部を示す拡大図である。
【
図5】ばね要素を備えたレバー機構を示す分解図である。
【
図6a】僅かに変更されたばね要素を備えた家具金具を示す側面図である。
【
図6b】
図6aに示した家具金具に所属のレバー機構を示す分解図である。
【0014】
図1aには、家具1が斜視図で示してあり、この家具1は、家具キャビネット2と、家具キャビネット2に対して相対的に可動に支持された家具部分3と、可動の家具部分3を運動させるための、例えば家具駆動装置4aの形態の少なくとも1つの家具金具4とを有している。家具1は、側壁の形態の家具プレート6と、天板7と、底板8とを有している。可動の家具部分3は、例えば水平な軸を中心として家具キャビネット2に対して相対的に旋回可能な家具フラップ3aとして形成されていてよい。
【0015】
図示の実施例では、家具金具4のハウジング9(
図1b)は、少なくとも部分的に、好ましくは実質的に完全に、家具プレート6として形成された側壁内に収容されている。可動の家具部分3は、家具キャビネット2を覆う閉鎖位置と、家具キャビネット2に対して相対的に持ち上げられた開放位置との間で可動に支持されている。
【0016】
もちろん、家具金具4を、水平に延びる家具プレートに組み込みこと、つまり、例えば天板7に、底板8にかつ/または天板7と底板8との間に配置された棚板に組み込むことも可能である。このような場合には、可動の家具部分3は、家具キャビネット2に対して相対的に、取付け位置で鉛直に延びる軸を中心として旋回可能に支持されている。
【0017】
家具金具4は、図示の実施例では、可動の家具部分3を運動させるためのレバー機構5と、レバー機構5に力を加えるための少なくとも1つの蓄力器10(
図1b)とを有している。
【0018】
図1bには、家具1が分解図で示してある。この家具1では、可動の家具部分3を運動させるための、家具駆動装置4aの形態の、好ましくは同一に形成された2つの家具金具4が設けられている。家具金具4は、家具キャビネット2に固定することができるそれぞれ1つのハウジング9を有している。
【0019】
1つの実施例によれば、家具金具4のハウジング9は取付け状態で、家具プレート6として形成された側壁の切欠き11の内部に少なくとも部分的に、好ましくは実質的に完全に収容されていることが特定されていてよい。取り付けられた状態でハウジング9は、家具プレート6の端面6aと実質的に面一を成していてよい。
【0020】
切欠き11は、例えば盲孔として形成されており、家具金具4のハウジング9は、前方からの取付け時に(つまり、家具プレート6の狭幅の端面6aを起点として)、家具プレート6の好ましくはポケット状の切欠き11内に押し込むことができる。取り付けられた状態で家具金具4のハウジング9は、実質的に完全に、家具プレート6の設定された壁厚さの内部に収容されている。
【0021】
ハウジング9内にはまたはハウジング9に接して、レバー機構5に力を加えるための、特にばね装置を備える少なくとも1つの蓄力器10が配置されている。ハウジング9の前側の端部領域には、カバー12が設けられており、レバー機構5の、可動に支持された少なくとも1つのレバー5a,5b,5c(
図3a)が、レバー機構5の開放位置でカバー12を通って進出している。
【0022】
図2には、家具プレート6内に配置することができる家具金具4が斜視図で示してあり、家具金具4のハウジング9は、取り付けられた状態で実質的に完全に家具プレート6の内部に配置可能である。家具プレート6は、家具金具4を収容するための、例えば盲孔状の切欠き11を備えている。つまり、家具金具4のハウジング9は、家具キャビネット2の家具プレート6内に挿入されるかまたは組み込まれるように形成されている。
【0023】
家具金具4のハウジング9は、実質的に直方体形に形成されていてよく、図示の実施例では、フラットに形成されかつ互いに平行に間隔を置いて配置された2つのハウジング壁9a,9bを備えており、両ハウジング壁9a,9bの間には、可動の家具部分3を運動させるためのレバー機構5と、レバー機構5に力を加えるための蓄力器10とが収容可能である。
【0024】
図3aには、家具駆動装置4aの形態の家具金具4が斜視図で示してある。レバー機構5に力を加えるための蓄力器10は、例えば複数のコイルばね、特に圧縮ばねを有していてよい。蓄力器10は、第1の端部領域で、回動軸15を中心として旋回可能な支持部分14に支持されている。蓄力器10の第2の端部領域は、調整装置17によってねじ山付きスピンドル20に沿って可動に支持された作用箇所16に支持されている。
【0025】
ねじ山付きスピンドル20は、図示の実施例では、回動軸19を中心として旋回可能な中間レバー18に配置されている。調整装置17の、好ましくは回動可能に支持された操作要素17aの操作によって、作用箇所16はねじ山付きスピンドル20に沿って可動であり、作用箇所16と中間レバー18の回動軸19との間の間隔、ひいては、蓄力器10の、レバー機構5に加えられるトルクは調整可能である。
【0026】
調整装置17の操作要素17aは、家具金具4の取り付けられた状態で可動の家具部分3に向けられていて、家具金具4のハウジング9の前側領域に配置されている。
【0027】
レバー機構5は、自体公知のように、可動の家具部分3に固定することができる金具要素22に解離可能にロック可能である。
【0028】
レバー機構5は、枢動軸21aを中心として旋回可能に支持された少なくとも1つのレバー5aを有しており、この少なくとも1つのレバー5aは、特に円筒形の少なくとも1つの開口23(
図3a~
図3d)を有していて、この開口23内には、枢動軸21aが遊びを伴って配置されている。図示の実施例では、レバー機構5は、可動の家具部分3を運動させるための複数のレバー5a,5b,5c,5dを有しており、これらのレバー5a,5b,5c,5dは、枢動軸21a,21b,21cによって互いに枢動自在に結合されている。
【0029】
図3bには、従来技術によるレバー5aの円筒形の開口23の内部における枢動軸21aの配置形態が示してある。枢動軸21aは、蓄力器10の影響下で開口23の第1の当付け箇所に接触している。
【0030】
レバー機構5の死点位置を越えると、蓄力器10の、レバー機構5に加えられる力の方向が転換し、つまり、レバー機構5の完全な閉鎖位置と死点位置との間における閉鎖領域の内部では、蓄力器10によって閉鎖力がレバー機構5に加えられる。これに反して、レバー機構5の死点位置と完全な開放位置との間の開放領域の内部では、蓄力器10によって開放力がレバー機構5に加えられる。
【0031】
ばね力のこの方向転換によって、枢動軸21aは、
図3bに示したように、レバー5aの開口23の内部における第1の当付け箇所24aから第2の当付け箇所24bに急激に跳ねることになる(
図3bの右側の図)。これによって、死点位置の領域ではレバー機構5の運動挙動が不確定なものになってしまう。さらに、第1の当付け箇所24aから第2の当付け箇所24bへの枢動軸21aの跳ねは、望ましくない騒音発生にも結び付いている。
【0032】
図3cにも同様に従来技術による1つの実施形態、つまり、明細書冒頭で既に述べた国際公開第2017/143379号に開示された実施形態が示してある。この従来技術では、枢動軸21aは、相応に大きな力作用を有するばね弾性的なレバーによって、開口23の当付け箇所24aに不動に押し付けられ、これによって、第2の当付け箇所24bへのレバー5aの、開口23の内部における枢動軸21aの急激な跳ねが阻止されるようになっている。この構成には、枢動軸21aと開口23の当付け輪郭部との間の摩擦もまた高められるという欠点がある。ゆえに、家具金具4を運動させるためには、手動による相応に大きな力も必要となる。
【0033】
図3dには、本発明の基本原理が略示してある。枢動軸21aを
図3cの従来技術のようにばね力によって当付け箇所24aに不動に固定する代わりに、
図3dによれば、枢動軸21a(つまり、好ましくは枢動軸21aの円筒形のピン)には、ばね要素25によって、レバー5aの開口23内における両方の当付け箇所24a,24bの仮想の接続ライン26に対して横方向で力が加えられる。この結果、枢動軸21aは、蓄力器10の力の方向転換時に、第1の当付け箇所24aと第2の当付け箇所24bとを互いに接続する当付け輪郭部24cに沿って蓄力器10およびばね要素25の力の影響下で開口23の円弧状の当付け輪郭部24cに沿って滑動するように案内されている。
【0034】
これによって、レバー5aの開口23の内部における枢動軸21aは、確かに、両方の当付け箇所24a,24bの間で運動することができるが、しかしながら、この運動は、当付け輪郭部24cと滑り接触するように行われる。こうして、開口23の内部における枢動軸21aの急激な跳ね、ひいては、これに伴う騒音発生が効果的に阻止される。ばね要素25の力は、比較的小さく設定することができるので、枢動軸21aと当付け輪郭部24cとの間における摩擦は、許容可能な範囲内に保つことができる。
【0035】
図4aには、家具駆動装置4aの形態の家具金具4が側面図で示してあり、
図4aでは、レバー機構5は、家具金具4のハウジング9に関して最大の開放位置にある。
【0036】
回動可能に支持された調整ホイール28aを備えた制限装置28によって、レバー機構5の最大開放位置の位置を制限することができる。こうして、可動の家具部分3と室天井との衝突を阻止することができる。
【0037】
レバー機構5は、枢動軸21aを中心として旋回可能に支持された少なくとも1つのレバー5aを有している。図示の実施例では、枢動軸21a,21b,21cを介して互いに枢動自在に結合された複数のレバー5a,5b,5c,5dが設けられている。例えば鋼製の成形ばねであるばね要素25によって、枢動軸21aには横方向力を加えることができる。ばね要素25は、少なくとも1つのストッパ27a,27bに支持可能であるので、十分に大きな力を枢動軸21aにもたらすことができる。
【0038】
レバー機構5は、少なくとも5つの、好ましくは少なくとも7つの枢動軸21a,21b,21cを有していてよい。
【0039】
少なくとも1つのレバー5aは、枢動軸21aを介してレバー機構5の少なくとも1つの第2のレバー5bに結合されており、旋回運動時における両方のレバー5a,5bの相対位置は可変である。
【0040】
図示の図では、少なくとも1つの第2のレバー5bは、別の枢動軸21bを介して、レバー機構5の少なくとも1つの第3のレバー5cに旋回可能に結合されている。好ましくは、少なくとも1つのばね要素25は、少なくとも1つのレバー5aと少なくとも1つの第2のレバー5bとを結合する枢動軸21aに作用する力と、別の枢動軸21bに作用する力とを加えることが特定されている。
【0041】
レバー機構5は、平行四辺形に配置されたレバー構成を有していてよく、少なくとも1つのレバー5aは、このレバー構成の一部である。ばね要素25は、レバー構成の2つの枢動軸21a,21bの間で有効であってよい。このことには、ただ1つのばね要素25によって少なくとも2つの枢動軸21a,21bに横方向力を加えることができるという利点がある。
【0042】
少なくとも1つの第2のレバー5bは、別の枢動軸21bを介して、レバー機構5の少なくとも1つの第3のレバー5cに旋回可能に結合されている。好ましくは、ばね要素25は、少なくとも1つのレバー5aと少なくとも1つの第2のレバー5bとを結合する枢動軸21aに作用する力と、別の枢動軸21bに作用する力とを加えることが特定されている。
【0043】
図4bは、
図4aにおいて枠で囲まれた領域を拡大して示す図である。この図から認識できるように、ストッパ27a,27bに支持されたばね要素25は、第1の枢動軸21aに第1の力F1を加えるだけでなく、第2の枢動軸21bに第2の力F2も加える。
【0044】
好適な実施形態によれば、少なくとも1つのばね要素25は、少なくとも1つの枢動軸21a,21bを部分的に取り囲んでおり、かつ/または枢動軸21a,21bの周縁部を押圧することが特定されている。
【0045】
ばね要素25は、少なくとも1つのストッパ27a,27bに支持可能である。ストッパ27a,27bは、ピン状に形成されていてもよいし、レバー機構5のレバー5a,5b,5cのウェブとして形成されていてもよい。
【0046】
本発明の1つの実施例によれば、少なくとも1つのばね要素25は、
- 少なくとも部分的に湾曲されて形成されており、かつ/または
- 少なくとも部分的に弾性変形可能に形成されており、かつ/または
- 成形ばねとして形成されており、かつ/または
- 金属から成っており、かつ/または
- レバー機構5の少なくとも2つの枢動軸21a,21b,21cの間で有効である
ことが特定されていてよい。
【0047】
図5には、少なくとも1つの枢動軸21a,21b,21c,21d,21e,21fに力を加えるためのばね要素25を備えたレバー機構5の分解図が示してある。レバー機構5は、互いに枢動自在に結合された複数のレバー5a,5b,5c,5dを備えていてよく、これらのレバー5a,5b,5c,5dは、枢動軸21a,21b,21c,21d,21e,21fを中心として旋回可能に支持されている。ばね要素25とストッパ27a,27bとによって、枢動軸21aと枢動軸21bとに力F1,F2を加えることができる。
【0048】
しかしながらまた、ただ1つのばね要素25によって2つ以上の枢動軸21a,21b,21c,21d,21e,21fに力を加えることも可能である。このことは、例えば、同時に複数の枢動軸21a,21b,21c,21d,21e,21fを押圧するばねクランプの形態のばね要素25によって行うことができる。
【0049】
図6aには、僅かに変更されたばね要素25を備えた、家具駆動装置4aとして形成された家具金具4が側面図で示してある。上述した実施例とは異なり、ばね要素25は、枢動軸21a,21b,21c,21d,21e,21fを中心として旋回可能に支持されており、ばね要素25は、枢動軸21a,21b,21c,21d,21e,21fを完全に取り囲んでいる。
【0050】
図示の実施例では、ばね要素25は、第1の枢動軸21aに旋回可能に支持されていて、中央領域でレバー5bの、ウェブとして形成されたストッパ27cに支持されていて、かつ1つの自由端部で第2の枢動軸21bの周縁部を押圧している。
【0051】
図6bには、
図6aに示した家具金具4のレバー機構5が分解図で示してある。この
図6bから認識できるように、枢動軸21aを中心として旋回可能なばね要素25は、レバー5bのストッパ27cに支持可能であり、かつ枢動軸21bを押圧可能である。