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特許7592871血液灌流の1つ又は複数の様相のイメージングを提供するためのデバイス、方法及びシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】血液灌流の1つ又は複数の様相のイメージングを提供するためのデバイス、方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/026 20060101AFI20241125BHJP
【FI】
A61B5/026 120
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023537003
(86)(22)【出願日】2021-12-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-15
(86)【国際出願番号】 EP2021084611
(87)【国際公開番号】W WO2022128637
(87)【国際公開日】2022-06-23
【審査請求日】2024-04-04
(31)【優先権主張番号】20214843.3
(32)【優先日】2020-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】フェルクレイセ ウィレム
(72)【発明者】
【氏名】ファン ガステル マーク ヨセフス ヘンリクス
(72)【発明者】
【氏名】ファン ダルフセン エイジ ヨヘム
【審査官】▲高▼原 悠佑
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/148701(WO,A1)
【文献】特表2019-524295(JP,A)
【文献】特表2018-514244(JP,A)
【文献】国際公開第2016/135818(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/02 -5/03
A61B 5/145-5/1464
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の皮膚領域における心臓誘発性の血液の動きによって誘発される血液灌流の1つ又は複数の様相のイメージングを提供するデバイスであって、前記デバイスが、処理ユニットを備え、前記処理ユニットが、
前記皮膚領域を通して透過された又は前記皮膚領域から反射された、検出された電磁放射線から導出されたデータストリームを取得することであって、前記データストリームが、前記皮膚領域の複数の皮膚ピクセルに対する皮膚ピクセル単位のデータ信号を含み、第1のデータストリームが、パターン化された照射をされた前記皮膚領域の照射スポットから離れた前記皮膚領域から反射された電磁放射線から導出され、第2のデータストリームが、パターン化された照射及び/又は均一な照射をされた前記皮膚領域を通して透過された又は前記皮膚領域から反射された電磁放射線の空間積分から導出される、取得することと、
前記第1のデータストリームの前記データ信号を、前記第2のデータストリームの前記データ信号によって、皮膚ピクセル又は皮膚ピクセルのグループ単位で除算することによって、前記第1のデータストリーム及び前記第2のデータストリームの前記データ信号から、光学的深さ指標を、皮膚ピクセル又は皮膚ピクセルのグループ単位で決定することであって、前記光学的深さ指標が前記皮膚ピクセル又は皮膚ピクセルのグループにおける前記皮膚領域内の血流の深さを示す、決定することと、
決定された前記光学的深さ指標から、前記複数の皮膚ピクセルを含む前記皮膚領域の光学的深さ指標画像マップを作成することと、
前記第2のデータストリームの前記データ信号の振幅から、前記複数の皮膚ピクセルを含む前記皮膚領域の振幅画像マップを作成することと、
前記第2のデータストリームの前記データ信号の前記振幅を、決定された前記光学的深さ指標によって、皮膚ピクセル又は皮膚ピクセルのグループ単位で補正することによって、前記振幅画像マップを補正することと
を行う、デバイス。
【請求項2】
前記処理ユニットが、決定された前記光学的深さ指標から前記皮膚ピクセル又は皮膚ピクセルのグループにおける前記皮膚領域内の前記血流の信号源深さを推定することと、前記第2のデータストリームの前記データ信号の前記振幅を、前記血流の推定された前記信号源深さによって、皮膚ピクセル又は皮膚ピクセルのグループ単位で補正することとを行うことによって前記振幅画像マップを補正する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記第2のデータストリームの前記データ信号の前記振幅が、exp(-2μSD)に比例し、ここで、μが、所定の組織減衰係数であり、SDが、皮膚ピクセル又は皮膚ピクセルのグループにおける前記皮膚領域内の前記血液の動きの推定された前記信号源深さである、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記処理ユニットが、パターン化された照射の場合に、前記第2のデータストリームの前記データ信号を、前記皮膚領域を通して透過された又は前記皮膚領域から反射された前記電磁放射線の空間積分によって導出する、請求項1から3のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項5】
前記第1及び第2のデータストリームの前記データ信号が時間変動するAC成分と固定のDC成分とを含み、前記処理ユニットが、前記第2のデータストリームの前記データ信号の前記時間変動するAC成分と前記固定のDC成分との比を、皮膚ピクセル又は皮膚ピクセルのグループ単位で決定することによって前記振幅画像マップを作成する、請求項1から4のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記処理ユニットが、前記第1のデータストリームの前記データ信号の前記時間変動するAC成分と前記固定のDC成分との比を、前記第2のデータストリームの前記データ信号の前記時間変動するAC成分と前記固定のDC成分との前記比によって、皮膚ピクセル又は皮膚ピクセルのグループ単位で除算することによって、前記第1及び第2のデータストリームの前記データ信号から、前記光学的深さ指標を、皮膚ピクセル又は皮膚ピクセルのグループ単位で決定する、請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
前記処理ユニットが、前記皮膚ピクセル又は皮膚ピクセルのグループと前記パターン化された照射の照射スポットとの間の所定のラジアル距離において前記第1のデータストリームの前記データ信号の前記時間変動するAC成分と前記固定のDC成分との前記比の値を選択することによって、前記光学的深さ指標を、皮膚ピクセル又は皮膚ピクセルのグループ単位でさらに決定する、請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
前記第1及び第2のデータストリームの前記データ信号が、脈動成分及び/又は固定成分を含み、前記脈動成分が、前記皮膚領域の血管における前記心臓誘発性の脈動性の血液の動きを表し、前記固定成分が、前記皮膚領域の血管における平均化された非脈動性の血液の動きを表し、前記処理ユニットが、前記第2のデータストリームの前記データ信号の前記脈動成分又は前記固定成分から前記振幅画像マップを作成する、請求項1から4のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項9】
前記処理ユニットが、
i)前記第1のデータストリームの前記データ信号の前記脈動成分を、前記第2のデータストリームの前記データ信号の前記脈動成分によって、皮膚ピクセル又は皮膚ピクセルのグループ単位で除算すること、又は、
ii)前記第1のデータストリームの前記データ信号の前記固定成分を、前記第2のデータストリームの前記データ信号の前記固定成分によって、皮膚ピクセル又は皮膚ピクセルのグループ単位で除算するこ
行うことによって、前記第1及び第2のデータストリームの前記データ信号から、前記光学的深さ指標を、皮膚ピクセル又は皮膚ピクセルのグループ単位で決定する、請求項8に記載のデバイス。
【請求項10】
前記処理ユニットが、前記皮膚ピクセル又は皮膚ピクセルのグループと前記パターン化された照射の照射スポットとの間の所定のラジアル距離において前記第1のデータストリームの前記データ信号の前記脈動成分又は前記固定成分の値を選択することによって、前記光学的深さ指標を、皮膚ピクセル又は皮膚ピクセルのグループ単位でさらに決定する、請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
対象者の皮膚領域における心臓誘発性の血液の動きによって誘発される血液灌流の1つ又は複数の様相のイメージングを提供するためのシステムであって、
電磁放射線の狭い放射ビームを出射する、照射ユニットと、
前記照射ユニットによって出射された前記電磁放射線を拡散させて、前記対象者の前記皮膚領域を均一に、且つ/又はパターン化された照射によって照射する、光拡散器と、
前記対象者の前記皮膚領域を通して透過された又は前記皮膚領域から反射された前記電磁放射線を検出すると共に、検出された前記電磁放射線からデータストリームを導出する、イメージングユニットと、
取得された前記データストリームから、前記対象者の前記皮膚領域における前記心臓誘発性の血液の動きによって誘発される前記血液灌流の前記1つ又は複数の様相の前記イメージングを提供するための、請求項1から10のいずれか一項に記載のデバイスと
を備える、システム。
【請求項12】
前記イメージングユニットが、少なくとも2つの異なる波長チャネルを提供するフィルタを含む、光センシングアレイ、特に2次元画像センサを備え、
前記照射ユニットが、前記少なくとも2つの異なる波長チャネルにおける光で前記対象者の前記皮膚領域を照射するための前記電磁放射線を出射する、
請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
対象者の皮膚領域における心臓誘発性の血液の動きによって誘発される血液灌流の1つ又は複数の様相のイメージングを提供するためのシステムであって、
電磁放射線のパターンを出射してパターン化された照射によって前記対象者の前記皮膚領域を照射することで、前記第1のデータストリーム及び前記第2のデータストリームのうち、少なくとも前記第1のデータストリームを取得するための第1の照射ユニットと、
均一な照射プロファイルを出射して前記対象者の前記皮膚領域を均一に照射することで、前記第2のデータストリームを取得するための第2の照射ユニットと、
前記対象者の前記皮膚領域を通して透過された又は前記皮膚領域から反射された前記電磁放射線を検出すると共に、検出された前記電磁放射線からデータストリームを導出する、イメージングユニットと、
取得された前記データストリームから、前記対象者の前記皮膚領域における前記心臓誘発性の血液の動きによって誘発される前記血液灌流の前記1つ又は複数の様相の前記イメージングを提供するための、請求項1から10のいずれか一項に記載のデバイスと
を備える、システム。
【請求項14】
対象者の皮膚領域における心臓誘発性の血液の動きによって誘発される血液灌流の1つ又は複数の様相のイメージングを提供する、コンピュータ実施される方法であって、前記方法は、
前記皮膚領域を通して透過された又は前記皮膚領域から反射された、検出された電磁放射線から導出されたデータストリームを取得するステップであって、前記データストリームが、前記皮膚領域の複数の皮膚ピクセルに対する皮膚ピクセル単位のデータ信号を含み、第1のデータストリームが、パターン化された照射をされた前記皮膚領域の照射スポットから離れた前記皮膚領域から反射された電磁放射線から導出され、第2のデータストリームが、パターン化された照射及び/又は均一な照射をされた前記皮膚領域を通して透過された又は前記皮膚領域から反射された電磁放射線の空間積分から導出される、取得するステップと、
前記第1のデータストリームの前記データ信号を、前記第2のデータストリームの前記データ信号によって、皮膚ピクセル又は皮膚ピクセルのグループ単位で除算することによって、前記第1のデータストリーム及び前記第2のデータストリームの前記データ信号から、光学的深さ指標を、皮膚ピクセル又は皮膚ピクセルのグループ単位で決定するステップであって、前記光学的深さ指標が、前記皮膚ピクセル又は皮膚ピクセルのグループにおける前記皮膚領域内の血流の深さを示す、決定するステップと、
決定された前記光学的深さ指標から、前記複数の皮膚ピクセルを含む前記皮膚領域の光学的深さ指標画像マップを作成するステップと、
前記第2のデータストリームの前記データ信号の振幅から、前記複数の皮膚ピクセルを含む前記皮膚領域の振幅画像マップを作成するステップと、
前記第2のデータストリームの前記データ信号の前記振幅を、決定された前記光学的深さ指標によって、皮膚ピクセル又は皮膚ピクセルのグループ単位で補正することによって、前記振幅画像マップを補正するステップと
を有する、方法。
【請求項15】
コンピュータ上で実行されると、前記コンピュータに請求項14に記載の方法のステップを実行させるためのプログラムコード手段を備える、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象者の皮膚領域における心臓誘発性の血液の動きによって誘発される血液灌流の1つ又は複数の様相のイメージングを提供するためのデバイス、方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
血液灌流のイメージングは、組織の微小循環(毛細管、細静脈、細動脈)に関する情報へのアクセスをもたらし、抹消動脈疾患(PAD)及び重症虚血肢(CLI)などの血管疾患の診断及び治療的管理において非常に重要である。特に血管外科医及び画像下治療医は、医療を向上させるための血流の術前及び術後モニタリングに関心を示している。
【0003】
現行の灌流イメージングシステムは、典型的に、フォトプレチスモグラフィイメージング(PPGI)又はスペックルコントラストイメージング(SCI)に基づいている。両イメージング技法は、複数の類似点を持つが、いくつかの違いもある。
【0004】
PPGは、一般に、臓器又は身体部位のボリューム変化の測定を指し、特に、心拍ごとに対象者の身体を通って進む心血管脈動によるボリューム変化の検出を指す。より具体的には、PPGは、関心エリア又はボリューム(皮膚領域など)の光反射率又は光透過率の経時変化を評価する光学測定技法であり、血液が周囲組織よりも光を吸収するという原理に基づいている。したがって、心拍ごとの血液ボリュームの変動は、対応して透過率又は反射率に影響を及ぼす。PPGイメージング(PPGI)に関するさらなる詳細は、例えば、Verkruysseら、「Remote plethysmographic imaging using ambient light」、Opt. Express 16(26)、2008において見つけることができる。
【0005】
また、SCIは、レーザスペックルイメージングを使用して、血流及び/又は血流における変化を測定する光学測定技法である。レーザ光が、関心拡散エリア又はボリュームを照射すると、スペックルパターンとして知られるランダムな干渉効果を生ずる。物体内に運動がある場合、スペックルの強度が変動し、また、スペックルパターンの変動と、生体内の散乱中心の運動、例えば、赤血球細胞の運動との間には関連性がある。経時的なスペックルコントラスト画像から関心領域を平均化することで、PPGと同様に、心拍数及び呼吸数をモニタリングすることが可能となる。PPGとSCとの間の違い及び類似点に関するさらなる詳細は、例えば、Dunnら、「Comparison of speckleplethysmographic (SPG) and photoplethysmographic (PPG) imaging by Monte Carlo simulations and in vivo measurement」、Biomedical Optics Express 9(9)、2018において見つけることができる。
【0006】
WO2018/148701A1は、バイタルボディサインなどの生体の特性を非侵襲的にモニタリングするための、フォトプレチスモグラフィセンサなどのセンサを開示している。このセンサは、基板に配置された複数の光源と、光源から探査領域まで光を伝達するための光プロービングチャネルのアレイとを備える。ディテクタピクセルのアレイの各ディテクタピクセルは、探査領域のサブ領域との相互作用及び空間フィルタリング後にそれぞれの光検出チャネルから光を受け取り、対応するピクセル信号を生成する。プロセッサは、少なくとも複数のピクセル信号に基づいてバイタルボディサインの値を導出する。
【0007】
米国特許出願公開第2019/175030(A1)号は、血管硬化又は低心拍出量に起因してPPG信号が低下することがあり、したがって、PPG測定値に曖昧さが存在するという問題に対処する、対象者の末梢動脈灌流のモニタリングのためのデバイス、システム及び方法に関する。
【0008】
PPGI及びSCIによって作り出される画像は、典型的には、調査される皮膚領域における血液の動きによって誘発される灌流に比例する擬色を示唆している。しかしながら、これらの画像に対して生じる問題は、信号源、すなわち、PPGにおけるボリューム脈動性の発生源又はSCにおける血流の発生源が未知であるため、無視できない曖昧さが存在するということである。ベールの減衰の法則によれば、信号源深さに対する信号依存性は、指数関数的であるため、擬色画像の解釈は非常に困難である。これは、PPG及びSC画像における擬色が、深さ積分された(非線形的に重み付けられた)灌流信号を表しているため、ユーザが灌流画像を正確に解釈することが困難であるということを意味する。したがって、臨床医は、この曖昧さを容易に解決することはできず、このことが、これまでのところ、PPG及びSCIイメージングシステムの商業的成功を限定的なものにしている。
【0009】
これらの理由により、血液灌流イメージングを改善するために、PPG及びSCIの両方に対して、この曖昧さをどのように解決し得るかについての可能性を提供することが必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、ユーザに対して、特に擬色マップなどの画像マップの解釈及び精度を容易にするために、SCI及びPPGIを改善するための手段を提供することである。これはまた、血管外科医及び画像下治療医などの医療スタッフのための一般的なツールとなることで、SCI及びPPGIシステムのより多くの商業的な成功をもたらす。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様では、対象者の皮膚領域における心臓誘発性の血液の動きによって誘発される血液灌流の1つ又は複数の様相のイメージングを提供するためのデバイスが提示される。前記デバイスは、処理ユニットを備え、この処理ユニットは、
皮膚領域を通して透過された又は皮膚領域から反射された検出された電磁放射線から導出されたデータストリームを取得することであって、前記データストリームが皮膚領域の複数の皮膚ピクセルに対する皮膚ピクセル単位のデータ信号を含み、第1のデータストリームが、皮膚領域のパターン化された照射から導出され、第2のデータストリームが、皮膚領域のパターン化された照射及び/又は均一な照射から導出される、取得することと、
第1のデータストリームのデータ信号を、第2のデータストリームのデータ信号によって、皮膚ピクセル又は皮膚ピクセルのグループ単位で除算することによって、第1のデータストリーム及び第2のデータストリームのデータ信号から、光学的深さ指標(ODI)を、皮膚ピクセル又は皮膚ピクセルのグループ単位で決定することであって、ODIが皮膚ピクセル又は皮膚ピクセルのグループにおける皮膚領域内の血流の深さを示す、決定することと、
決定されたODIから、複数の皮膚ピクセルを含む皮膚領域のODI画像マップを作成することと、
第2のデータストリームのデータ信号の振幅から、複数の皮膚ピクセルを含む皮膚領域の振幅画像マップを作成することと、
第2のデータストリームのデータ信号の振幅を、決定されたODIによって、皮膚ピクセル又は皮膚ピクセルのグループ単位で補正することによって、振幅画像マップを補正することと
を行うように構成されている。
【0012】
本発明の別の態様では、対象者の皮膚領域における心臓誘発性の血液の動きによって誘発される血液灌流の1つ又は複数の様相のイメージングを提供するためのシステムが提供される。前記システムは、
電磁放射線の狭い放射ビームを出射するように構成された照射ユニットと、
照射ユニットによって出射された電磁放射線を拡散させて対象者の皮膚領域を均一に且つ/又はパターン化された照射によって照射するように構成された光拡散器と、
対象者の皮膚領域を通して透過された又は皮膚領域から反射された電磁放射線を検出すると共に、検出された電磁放射線からデータストリームを導出するように構成されたイメージングユニットと、
上で定義されたデバイスと
を備える。
【0013】
代替として、本発明の別の態様では、
電磁放射線のパターンを出射してパターン化された照射によって対象者の皮膚領域を照射するように構成された第1の照射ユニットと、
均一な照射プロファイルを出射して対象者の皮膚領域を均一に照射するように構成された第2の照射ユニットと、
対象者の皮膚領域を通して透過された又は皮膚領域から反射された電磁放射線を検出すると共に、検出された電磁放射線からデータストリームを導出するように構成されたイメージングユニットと、
本明細書で開示されるデバイスと
を備えるシステムが提供される。
【0014】
本発明のさらなる態様では、対応する方法と、コンピュータプログラムであって、前記コンピュータプログラムがコンピュータ上で実行されると、コンピュータに本明細書で開示される方法のステップを実行させるためのプログラムコード手段を備える、コンピュータプログラム、並びに、プロセッサによって実行されると、本明細書で開示される方法を実行させるコンピュータプログラム製品を内部に記憶する非一時的コンピュータ可読記録媒体とが提供される。
【0015】
本発明の好ましい実施形態は、従属請求項において定義される。特許請求される方法、システム、コンピュータプログラム及び媒体は、特許請求されるデバイス、特に従属請求項において定義され、本明細書で開示されるデバイスと類似及び/又は同一の好ましい実施形態を含むということを理解されたい。
【0016】
本発明は、信号源(PPGにおけるボリューム脈動性及びSCにおける血流)が未知であることによる、PPGIとSCIの両方に存在する無視できない曖昧さが、信号源の深さが決定されるという点で解決されるというアイデアに基づいている。これにより、対象者の皮膚領域における心臓誘発性の血液の動きによって誘発される血液灌流の1つ又は複数の様相のイメージングがより高い品質で可能にされる。これらの様相は、例えば、調査される皮膚領域におけるボリューム脈動性又は血流である。
【0017】
画像は、例えば、デバイスの処理ユニットに接続されるディスプレイユニットに表示される。しかしながら、処理ユニットは、血液灌流の1つ又は複数の様相のイメージングを提供するために、その前の全ての処理を単独で行う。
【0018】
上述したように、最先端のPPGI及びSCIで生じる1つの問題は、擬色が深さ積分された(非線形的に重み付けられた)灌流信号を表すというものであり、したがって、本発明は、PPGI又はSCI信号源の支配的な光学的深さの式である光学的深さ指標(ODI)の使用が、PPGI及びSCIの顕著な改善を可能にするという洞察に基づいている。
【0019】
このODIを決定するために、2つの異なるタイプの測定が必要であるということが分かった。第1のタイプの測定である広視野イメージングが、対象者の皮膚領域が均一に照射されるという原理(広視野露光)に基づいており、PPG又はSC信号が同じ皮膚領域にわたって測定されるため、これらの2つの異なるタイプは、以下で「広視野イメージング」及び「ラジアルイメージング」とも呼ばれる。このタイプの測定は、約10年前からカメラモードにおいて一般的に使用されている(例えば、Verkruysseら、「Remote plethysmographic imaging using ambient light」、Opt. Express 16(26)、2008、又はY. Sun及びN. Thakor、「Photoplethysmography revisited: from contact to noncontact, from point to imaging」、IEEE Trans Biomed Eng. 63(3)、2016を参照されたい)。
【0020】
皮膚領域のパターン化又は構造化された照射から反射されて戻った光の空間積分は、広視野イメージングのために使用することもでき、皮膚領域は、広視野イメージングの場合に必ずしも均一に照射されることはないということに留意されたい。また、スポット照射(すなわち、対象者の皮膚領域上の1つのレーザスポット)を使用して、皮膚領域から反射されて戻った全ての光の空間積分を決定することだけであっても、広視野イメージングには好適となる。したがって、「パターン化された照射」という表現は、本発明による単一のスポット(例えば、レーザスポット)を用いた照射である場合もある。しかしながら、多くの場合、均一な照射は調査される皮膚領域上の均一な光分布を確実にするため、広視野イメージングには均一な照射を使用することが好ましい。
【0021】
もう一方のタイプの測定であるラジアルイメージングは、皮膚領域が均一に照射されるのではなく、パターン化された照射によって照射されるという原理に基づいているが、やはり、これも単一のスポット(例えば、レーザスポット)を用いて皮膚領域を照射する可能性を含む。パターンは、例えば、対象者の皮膚領域上の複数のレーザスポットによって引き起こされてもよいし、大幅な空間強度変動を伴うどのような照射パターンであってもよい。均一な照射を使用することと比較して、パターン化された照射の使用はより小さい面積により多くの光強度が集められるため、数ピクセル内により強い信号強度を得るという利点をもたらし、これは、信号対雑音比がより小さいため、より正確なSC及びPPG信号を取得することについても好適である。
【0022】
広視野イメージングの典型的な問題は、一部の組織において、広視野信号が小さすぎるために測定できないということである(例えば、腕又は脚の下)。これは、細動脈が深すぎることによる可能性が高い。(侵入深さが他のスペクトル範囲よりも大きいことが知られている赤及び赤外スペクトル範囲であっても)これらの深さに到達する低量の光は、より浅い皮膚の深さから再出射されるはるかに高い強度の光によって圧倒される。そのような場合、信号が小さすぎ、例えば、ディテクタのノイズ及び/又は照射ノイズによって圧倒される。ラジアルイメージングは、僅かな皮膚ピクセル上に大量の光強度を提供するため、広視野及びラジアルイメージングの両方を使用することによって、イメージングにおけるこの問題も本発明によって解決される。これは、組織内の電磁放射線のより大きな侵入深さとより強い信号強度とをもたらす。
【0023】
両測定(広視野及びラジアルイメージング)から取得されるデータ信号を組み合わせることで、PPG及びSC信号がもたらされる深さについて解決が可能となることが分かった。これは、従来技術のシステムと比較して大きな利点である。なぜなら、これらの従来のイメージングシステムは、例えば、比較的深い信号源(例えば、表皮下0.5mm)が、表皮のはるかに近くに位置する(例えば、表皮下0.1mm)はるかに小さい灌流を伴うより浅い血管床と同じ信号強度を与えるということを示唆しているからである。
【0024】
これに関連して、本発明に従って作成済みのODIマップは、皮膚領域にわたる脈動性及び非脈動性の血液の動きの異なる深さを調査することを可能にするため、調査される皮膚領域における血液の動きに関する多くの洞察を与える。
【0025】
本発明によれば、信号源の深さに関するこれらの新たな洞察は、皮膚領域にわたる広視野PPG又は広視野SC信号の振幅の空間分布を表す従来の振幅画像マップを補正するために使用される。これにより、補正された振幅画像マップは、当技術分野で知られている従来の画像マップよりもはるかに正確な測定結果を提供する。したがって、臨床医などのユーザは、特定の皮膚ピクセルにおいて、別の皮膚ピクセルよりも組織が良好に灌流されているかどうかを、これらの両ロケーションが最初は同じ灌流強度を持つように見える(ただし実際にはそうでない)にも関わらず、判別することができる。
【0026】
PPGIにおいて、提案された技法は、信号源(脈動ボリュームを持つ血管)に関して信号源深さ補正画像マップを提供する。SCIにおいて、提案された技法は、信号の2つの成分、すなわち、脈動性の血流及び一定な血流に対して信号源深さ補正画像マップを提供する。これについては、後でより詳細に説明する。
【0027】
一実施形態によれば、処理ユニットは、決定されたODIから、皮膚ピクセル又は皮膚ピクセルのグループにおける皮膚領域内の血流の深さを推定することによって振幅画像マップを補正するように構成されている。上述したように、ODIは、各皮膚ピクセル又は皮膚ピクセルのグループにおけるPPG又はSC信号源の支配的又は特性的な光学的深さの式である。したがって、これらのODIは、信号源の物理的深さの直接的な式ではない。しかしながら、これらの信号(PPG信号又はSC信号)が到来する光学的深さを推定するためにこれらのODIを使用できることが分かった。この場合、処理ユニットは、第2のデータストリームのデータ信号の振幅を、血流の推定された信号源深さによって、皮膚ピクセル又は皮膚ピクセルのグループ単位で補正することによって振幅画像マップを補正するように構成されている。
【0028】
典型的には、第2のデータストリームのデータ信号の振幅は、exp(-2μSD)に比例し、ここで、μは、所定の組織減衰係数であり、SDは、皮膚ピクセル又は皮膚ピクセルのグループにおける皮膚領域内の血液の動きの推定された信号源深さである。これは、信号強度がベールの法則に従うことを表している。ベールの法則は、光の減衰を、光が中を通って進む物質の特性と関連付け、表皮下の比較的深い位置から生じた信号が、表皮にはるかに近い位置から生じた信号よりもはるかに多く減衰されるということを反映している。また、この法則は、PPG又はSC信号源が未知であるとなぜ無視できない曖昧さが存在するのかについても反映している。すなわち、信号源深さSDに対する信号依存性が指数関数的であること、及びこの非線形的な依存性が深さ情報の欠如により灌流マップの解釈を困難にしていることである。従来のPPGI及びSCIでしばしば生じるこの問題は、これにより解決される。
【0029】
大きい信号源深さSDが測定された信号の大きい減衰をもたらすことを定義するベールの法則により、大きい信号源深さがODIから推定される場合、第2のデータストリームのデータ信号の振幅は、振幅を増大させることによって補正される。なぜなら、この場合、低信号振幅は、おそらく低脈動性ではなく大きい減衰効果によるからである。一方、小さい信号源深さがODIから推定される場合、第2のデータストリームのデータ信号の振幅は、振幅を低下させることによって補正される。別の代替的な可能性は、減衰効果を補償するために、小さい信号源深さから生じる振幅よりも強い、大きい信号源深さから生じる振幅を補正することである。この補正は、振幅の増大又は低下のいずれかとすることができる。
【0030】
また、ODIは、測定のために使用される波長に依存するということに留意されたい。しかしながら、結果として得られるODIマップは、少なくとも理想的には、もはや波長依存的ではなく、これにより、従来の灌流マップのさらに別の曖昧さを排除する。これは、ODIが暗黙的に波長依存的であるからである。ODIに対して補正されたPPGI及びSCIマップは、少なくとも理想的には、もはや波長依存的ではない。
【0031】
パターン化された照射、すなわち、ドット、円、線などのパターンによって調査される皮膚領域を照射することによって広視野イメージング測定が実行される場合、好ましくは、皮膚領域を通して透過された又は皮膚領域から反射された電磁放射線の空間積分によって、第2の検出信号が処理ユニットによって導出される。したがって、第2のデータストリームのデータ信号は、例えば、カメラから処理ユニットへ送信された生画像データストリームからそのようなやり方で取得される。
【0032】
上述したように、本発明は、PPGI並びにSCIに関連している。しかしながら、両光学測定技法は、異なっており、また、2つの測定技法に対するデータ信号の処理が異なっている。これについて、以下で説明する。まずPPG測定の場合にデータ信号がどのように処理されるのかについて説明した後、SC測定の場合にデータ信号がどのように処理されるのかについての説明を行う。
【0033】
当技術分野で知られているように、PPG信号は、2つの成分、すなわち、1つの交流(AC)成分と1つの直流(DC)成分とを含む。AC成分は、脈動血流に依存しており、したがって、脈拍と同一の周波数で変動する。AC成分は、脈動血液と直接的に関係しているため、血液灌流を推定するために使用することができる。DC成分は、準固定であり、脈動血液に加えて、組織を構成するものに関連している。したがって、PPG測定の場合、第1及び第2のデータストリームのデータ信号は、時間変動するAC成分と固定のDC成分とを含む。PPG測定の場合、処理ユニットは、好ましくは、第2のデータストリームのデータ信号の、時間変動するAC成分と固定のDC成分との比を、皮膚ピクセル又は皮膚ピクセルのグループ単位で決定することによって振幅画像マップを作成するように構成されている。
【0034】
また、データ信号がPPG測定から導出される場合、処理ユニットは、第1のデータストリームのデータ信号の時間変動するAC成分と固定のDC成分との比を、第2のデータストリームのデータ信号の時間変動するAC成分と固定のDC成分との比によって、皮膚ピクセル又は皮膚ピクセルのグループ単位で除算することによって、第1及び第2のデータストリームのデータ信号から、ODIを、皮膚ピクセル又は皮膚ピクセルのグループ単位で決定するように構成される。したがって、ODIは、ラジアルPPG信号のAC成分とDC成分との比を取り、それを、広視野PPG信号のAC成分とDC成分との比によって除算することにより算出される。
【0035】
一実施形態によれば、処理ユニットは、皮膚ピクセル又は皮膚ピクセルのグループと、パターン化された照射の照射スポットとの間の所定のラジアル距離において、第1のデータストリームのデータ信号の時間変動するAC成分と固定のDC成分と比の値を選択することによって、ODIを、皮膚ピクセル又は皮膚ピクセルのグループ単位で決定するようにさらに構成される。皮膚領域上に複数の照射スポットがあるパターン化された照射の場合、これらのラジアル距離は、皮膚ピクセルと、それらの最も近い照射スポットとの間の距離となる。すなわち、ラジアル距離は、1つの照射スポットと対応する皮膚ピクセルとの間の最短距離を指す。好ましくは、これらのラジアル距離は、短い波長の場合(緑色光など)には数ミリメートル、より大きい波長の場合(赤色光など)には最大数センチメートルなど、0よりも大幅に大きい。データ信号が、SC測定から導出される場合、データ信号の処理が異なる。これについて、以下で説明する。
【0036】
SCIは、コヒーレントレーザ光などのコヒーレント光によって照射された組織からの後方散乱光が、ディテクタ又はイメージングユニットにおいてランダムな干渉パターン、いわゆる生スペックルパターンを形成するという原理に基づいている。組織内の粒子の運動は、このスペックルの変動を引き起こし、生スペックルパターンから導出される灌流信号は、脈動成分と、非脈動性の固定成分とを含む(より詳しくは、D. Briersら、「Laser speckle contrast imaging: theoretical and practical limitations」、Journal of Biomedical Optics、2013も参照されたい)。脈動成分は、調査される皮膚領域の血管における心臓誘発性の脈動性の血液の動きを表し、固定成分は、調査される皮膚領域の血管における平均化された非脈動性の血液の動きを表す。
【0037】
当技術分野では、PPG信号のAC成分及びDC成分も、「脈動成分」及び「固定成分」と呼ばれることが多いが、以下では、SCIにおける灌流信号の成分に対してのみ、「脈動成分」及び「固定成分」という表現を用いる。PPGに関しては、成分は、「AC成分」及び「DC成分」と呼ぶ。これにより、PPGデータ信号及びSCデータ信号が本発明に従ってどのように異なるやり方で処理されるのかを区別することが可能となる。
【0038】
光学測定がSC技法に基づいている一実施形態では、第1及び第2のデータストリームのデータ信号は、脈動成分及び/又は固定成分を含む。また、この実施形態では、処理ユニットは、第2のデータストリームのデータ信号の脈動成分又は固定成分から、振幅画像マップを作成するように構成されている。これは、第2のデータストリームのデータ信号から、脈動広視野SCIマップ又は固定広視野SCIマップが作成されることを意味する。したがって、振幅画像マップが時間変動するAC成分と固定のDC成分との比を取ることによって作成されるPPGとは異なり、SCIの場合には、振幅画像マップは、脈動成分又は固定成分のいずれかを取ることによって(PPGのように比を取らない)、作成される。好ましくは、例えば、まず脈動振幅画像マップを作成し、次いで、固定振幅画像マップを作成することによって、脈動成分及び固定成分の両方に対して振幅画像マップが作成される。この場合、血管内の脈動血流並びに血管内の平均化された非脈動血流に関する洞察が得られる。
【0039】
したがって、PPG及びSCIに対する一次データ信号は、非常に類似しているように見えるが、重要な違いがある。PPGでは、データ信号が光強度に関連する情報を含み、正規化が前記光強度を、AC成分及びDC成分が共にそれに比例しているため打ち消すので、DC成分によるAC成分の正規化は意味を持つ。SCIでは、一次データ信号は、SCIの技術分野で知られているように灌流信号である(D. Briersら、「Laser speckle contrast imaging: theoretical and practical limitations」、Journal of Biomedical Optics、2013、又は、Dunnら、「Comparison of speckleplethysmographic (SPG) and photoplethysmographic (PPG) imaging by Monte Carlo simulations and in vivo measurement」、Biomedical Optics Express 9(9)、2018も参照されたい)。したがって、PPGにおける正規化は意味を持たない。そうではなく、脈動成分又は固定成分は、本発明に従って、別個の独立した成分として処理される。
【0040】
SCIの場合には、処理ユニットは、第1及び第2のデータストリームのデータ信号から、ODIを、皮膚ピクセル又は皮膚ピクセルのグループ単位で決定するようにさらに構成される。ここで、脈動成分と固定成分との間の区別が必要となる。脈動成分に対しては、第1のデータストリームのデータ信号の脈動成分を、第2のデータストリームのデータ信号の脈動成分によって、皮膚ピクセル又は皮膚ピクセルのグループ単位で除算することによりODIが算出される。固定成分に対しては、第1のデータストリームのデータ信号の固定成分を、第2のデータストリームのデータ信号の固定成分によって、皮膚ピクセル又は皮膚ピクセルのグループ単位で除算することによりODIが算出される。
【0041】
一実施形態によれば、処理ユニットは、皮膚ピクセルのグループの皮膚ピクセルとパターン化された照射の照射スポットとの間の所定のラジアル距離において、第1のデータストリームのデータ信号の脈動又は固定成分の値を選択することによって、ODIを、皮膚ピクセル又は皮膚ピクセルのグループ単位で決定するようにさらに構成される。皮膚領域上に複数の照射スポットがあるパターン化された照射の場合には、これらのラジアル距離は、皮膚ピクセルとそれらの最も近い照射スポットとの間の距離となる。
【0042】
本発明による対象者の皮膚領域における心臓誘発性の血液の動きによって誘発される血液灌流の1つ又は複数の様相のイメージングを提供するためのシステムは、レーザなどの電磁放射線の狭い放射ビームを出射するように構成された1つの照射ユニットと、前記電磁放射線を拡散させるように構成された光拡散器とを備えたシステム、又は広視野イメージング及びラジアルイメージングに必要とされる異なる照射プロファイルを対象者の皮膚上に生成するように構成された2つの照射ユニット(第1の照射ユニット及び第2の照射ユニット)を備えたシステムのいずれかである。1つの照射ユニットのみを備えたシステムの場合、拡散器は、照射ユニットの出射光の経路内又は経路の外側に選択的に配置される。この場合、拡散広視野照射は、光の経路の内側に光拡散器を配置することによって得られ、ラジアル照射(単一のレーザスポットなど)は、光の経路の外側に光拡散器を配置することによって得られる。また、光拡散器は、複数の円、線、ドットなどを持つ構造化又はパターン化された照射が調査される皮膚領域上で得られるように構成される。
【0043】
一実施形態では、イメージングユニットは、少なくとも2つの異なる波長チャネルを提供するフィルタ(バンドパスフィルタなど)を含む光センシングアレイ、特に、2次元画像センサを備え、照射ユニットは、前記少なくとも2つの異なる波長チャネルにおける光で対象者の皮膚領域を照射するために、電磁放射線を出射するように構成される。2次元画像センサは、測定されたPPG又はSC信号の画像及び横方向分布を測定することを可能にする。1つのイメージングユニットを使用する代わりに、出射された電磁放射線の2つの異なる波長λ1及びλ2のためのバンドパスフィルタを備えた、2つの異なるカメラなどの2つの異なるイメージングユニットを使用することもオプションとなる。また、好ましくは、波長λ1及びλ2は、光学特性が侵入深さに著しく影響を及ぼさないほど、非常に類似し、十分に小さいことを確実にするために、これらの波長が極めて近くなるように(赤色光では50nm未満の差、また緑色光では10nm未満の差)選定される。この場合、バンドパスフィルタのパスバンドは、非常に小さい必要がある。光学特性(吸収率及び散乱率)が非常に類似した波長を選定することは、血液吸収率が著しく変化しない領域(例えば、約660nmの電磁範囲)となるように波長を選定することにより可能となる。代替として、赤又は赤外スペクトル範囲は、前記スペクトル範囲の対象者の皮膚において電磁放射線の侵入深さがより大きくなることにより灌流測定に好適であること知られているため、これらのスペクトル範囲になるように波長λ1及びλ2を選定することによって測定を実行することができる。したがって、赤及び近赤外スペクトル範囲における測定のためにより深い血管に到達することが可能となる。
【0044】
最後になるが、照射ユニット及びイメージングユニットは共に、対象者の皮膚領域と直接物理的に接触しているか、又は対象者の皮膚領域と直接物理的に接触していないかのいずれかであるということを述べておきたい。したがって、本発明は、対象者の皮膚に取り付けられた従来の指先センサを使用して実施されるか、又は照射ユニット並びにイメージングユニットが対象者の皮膚と直接物理的に接触していない、リモートPPGなどのリモート測定を実行することによって実施される(より詳しくは、Verkruysseら、「Remote plethysmographic imaging using ambient light」、Opt. Express 16(26)、2008を参照されたい)。
【0045】
さらなる利点は、説明及び添付の図面から得ることができる。上述した、及び以下で述べる特徴は、本発明の枠組みを離れることなく、示される組合せだけでなく、他の組合せ又は全体として使用されることを理解されたい。
【0046】
本発明のこれら及び他の態様は、以下で説明される実施形態の参照から明らかとなり、解明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】対象者の頭部に対する、当技術分野で知られているPPG測定によって作成された従来のPPG振幅画像マップを示す図である。
図2】変調深さの解釈における曖昧さが、測定された信号の皮膚の深さへの強い依存性によってどのように引き起こされるのかを例示する概略図である。
図3】対象者の手の写真及び対応する従来のPPG振幅画像マップを示す図である。
図4】一般的に、SC灌流画像がどのように生成されるかを例示する概略図である。
図5】測定されたPPG信号が、ボリューム脈動性、組織減衰、及び信号源深さに依存することを例示する概略図である。
図6A】広視野PPGのための対象者の皮膚領域を通る電磁放射線の経路を例示する概略図である。
図6B】ラジアルPPGのための対象者の皮膚領域を通る電磁放射線の経路を例示する概略図である。
図7A】広視野PPGのための検出された反射光を例示する概略図である。
図7B】ラジアルPPGのための検出された反射光を例示する概略図である。
図8】ラジアルPPG測定のための対象者の皮膚領域を通る光の経路のモンテカルロシミュレーションの概略図である。
図9A】浅い脈動層、中間の脈動層、及び深い脈動層を持つ3つの異なる皮膚構成のモンテカルロの結果を示す図である。
図9B】浅い脈動層、中間の脈動層、及び深い脈動層を持つ3つの異なる皮膚構成のモンテカルロの結果を示す図である。
図10】本発明による、対象者の皮膚領域における心臓誘発性の血液の動きによって誘発される血液灌流の1つ又は複数の様相のイメージングを提供するためのシステムを示す図である。
図11】本発明による、対象者の皮膚領域における心臓誘発性の血液の動きによって誘発される血液灌流の1つ又は複数の様相のイメージングを提供するためのさらなるシステムを示す図である。
図12】本発明による、皮膚領域における心臓誘発性の血液の動きによって誘発される血液灌流の1つ又は複数の様相のイメージングを提供するためのデバイスによって実行される方法を例示するフローチャートである。
図13図12に示す方法の処理ステップS20~S50を視覚化した概略図である。
図14図12に示す方法の処理ステップS50を視覚化した概略図である。
図15】SCとPPGとの間の類似点及び違いを例示する概略図である。
図16】広視野SCイメージング及びラジアルSCイメージングのためのコントラスト信号及びそれらの灌流信号への変換を例示する概略図である。
図17】本発明による、パターン化された照射のために使用される異なる照射パターンの写真である。
図18】点光源照射と円形照射との間の分析的比較の概略図である。
図19】異なるタイプの照射と、恣意性の低いODI決定の値を選択するための点とを例示する概略図である。
図20】ODIの解像度及び信号源深さ補正画像を改善するための複数の実施形態(オプション1~6)を例示する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
図1は、対象者の頭部に対する、当技術分野で知られているPPG測定によって作成された従来のPPG振幅画像マップ40を示す。PPGは、組織の微小血管床における血液ボリューム変化を検出するために使用することができ、ボリュームにおけるこれらの変化は、LEDなどの照射ユニットからの光で皮膚を照射し、次いで、カメラなどのイメージングユニットに対して透過されるか又は反射される光の量を測定することによって検出される。図1の左側の図は、そのような測定されたPPG信号の反射強度を一例として示しており、PPG信号が、2つの成分、すなわち、調査対象の血液ボリュームの心拍ごとの変化に起因する脈動波形(AC)と、呼吸及び交感神経系活動を主因とする低周波数変動のみを組み合わせた固定のベースライン(DC)又はオフセットとを含むことを示す。
【0049】
図1に示す従来のPPG振幅画像マップ40は、AC成分とDC成分との比を、各皮膚ピクセル又は皮膚ピクセルのグループに対して決定することによって作成される。振幅AC/DC(PPG信号の変調深さ)は、典型的には、擬色としてイメージングされる。図1に示すように、額に対するPPG信号の変調深さは、典型的に、大きい(この例では、最大変調深さがほぼ5×10-3である)。
【0050】
そのような従来のPPGイメージング(PPGI)で生じる問題は、PPG信号の振幅が、皮膚血液灌流に関して曖昧さのない情報を与えないということである。図1の皮膚ピクセルA及びBは、同じPPG振幅を与えることがあるが、臨床医などのユーザにとっては、なぜそれがまさに該当するのかが不明瞭である。
【0051】
図2は、変調の解釈における曖昧さが、測定された信号の皮膚の深さへの強い依存性によってどのように引き起こされるのかを例示する概略図を示す。図1では、皮膚ピクセルA及びBに対する変調深さ(振幅強度)は、同じであるが、信号源は、図2に示すように全く異なる場合がある。
【0052】
皮膚領域12の表皮13並びにその下にある非脈動血管14及び脈動血管16が図2に示されている。皮膚ピクセルAにおける信号I(t)は、表皮13の近くに位置する僅かな脈動血管によって引き起こされているということが分かる。一方、皮膚ピクセルBにおいて測定された信号は、はるかに深い場所にある、はるかに多くの脈動血管によって引き起こされている。したがって、より多くの血管が脈動しているため(組織に酸素を送り、CO2を取り去る動脈供給が、皮膚ピクセルBで皮膚ピクセルAよりも大きいことを示している)、相対的な全体の皮膚灌流は、皮膚ピクセルAよりも皮膚ピクセルBにおいてはるかに高い。
【0053】
図1及び図2における皮膚ピクセルA及びBの等しいPPG振幅は、皮膚ピクセルBにおいてより深い脈動血管に到達する光が、皮膚ピクセルAにおいて脈動血管に到達する光よりもはるかに低い強度の光であることが分かると理解することができる。このことは、図2の図に示されている皮膚の深さに依存する探査光の相対強度の非線形的な振る舞いによって分かる。これは、従来のPPG振幅画像マップが、深さ情報が欠如しているために曖昧であるということを意味するに他ならない。
【0054】
深さ依存性に加えて、灌流マップに存在する別の曖昧さは、通常、当技術分野において明示的に言及されることがないが、使用される波長が要因となるということである。この波長依存性は、灌流イメージングデバイスのユーザによっても知られていない。侵入性の高い波長が使用される場合、灌流マップは、侵入性の低い波長(例えば、緑)で測定されたものと異なる可能性が高い。
【0055】
図3は、対象者の手の写真及び対応する従来のPPG振幅画像マップ40を示す。典型的には、指先ではより大きいPPG振幅が、手のひらの内側中心ではより低い振幅が、また、腕でははるかに低い振幅が測定される(図3では明るいピクセルは大きいPPG振幅(AC/DC)を表す)。しかしながら、互いに近くに位置するロケーション間の振幅における測定差は、局所的な灌流におけるばらつきよりも、局所的な血管系の異なる深さによるものである可能性が高い。
【0056】
この曖昧さの問題は、同じ問題がスペックルコントラストイメージング(SCI)でも起こるため、PPGに限定されるわけではない。レーザスペックルコントラスト分析に使用される光は、より深い皮膚の深さへと進行するにつれて減衰される。結果として、より深い血管における流れは、より浅い血管における流れよりも総灌流信号に与える影響が小さい。したがって、従来のSCI灌流画像は、PPG画像と同じ曖昧さに直面する。
【0057】
図4は、一般的に、SC灌流画像がどのように生成されるのかを例示する概略図を示す。SCIは、レーザスペックルイメージングを使用して血流における変化を測定する光学測定技法である。レーザ光が、関心拡散エリア又はボリュームを照射すると、生スペックルパターンとして知られるランダムに現れる干渉効果を生じる。この生スペックルパターン42は、図4において見て取ることができ、実際には、決定論的干渉パターンである。関心ボリュームに運動があると、基礎を成す散乱粒子及び構造がそれらのロケーションを変えるため、スペックルパターンが変化する。これらの変動は、血液の運動に関する情報を提供することができる。有限な露光時間では、その時間期間中にスペックルパターンが変化した場合、写真記録が幾分ぼやけて見える。このため、干渉パターンが散乱の位置が異なることによって変化するということが分かると、コントラストの低減を理解することができる。スペックルコントラストの減少は、血球などの散乱する運動粒子によって引き起こされるドップラー幅の観点からも理解することができる。したがって、そのような生スペックル画像42は、高コントラストのセクション又はロケーションと、変動がスペックルのぼやけを引き起こし、局所的なスペックルコントラストの低減をもたらす、低コントラストのロケーションとを含む。このため、運動粒子から光子が散乱するとき、その搬送周波数がドップラーシフトされるので、光は、散乱後に単色となるということが分かると、このコントラストの低減を理解することができる。
【0058】
したがって、生スペックル画像42は、時間的様相を含む。すなわち、静的なレーザスペックルパターンは、血球の運動がないことを表し、動的なパターンは、血球の運動があることを示す。
【0059】
続くステップでは、生スペックル画像42からコントラスト画像44が生成され、最後のステップで、コントラスト画像44から最終灌流画像46が生成される。灌流は、典型的には、コントラストの逆数、並びに血流速度及び流動血液のボリュームに比例する。最終灌流画像46と生スペックル画像42とを比較することによって、低コントラストのロケーションが高灌流を持つことが明白となる。したがって、コントラスト画像は、空間的様相を含む。すなわち、高コントラストは、血球の運動がないことを表し、低コントラストは、血球の運動があることを表す。
【0060】
しかしながら、ここでも、先述したPPG画像に関して言えば、特定のロケーションの高灌流が深い血管の非常に強い灌流によって引き起こされるのか、又はより浅い血管の比較的中程度の灌流によって引き起こされるのかは不明瞭である。したがって、従来の灌流画像の解釈も、深さ情報の欠如によって曖昧である。
【0061】
図5は、測定されたPPG信号が、ボリューム脈動性VP、組織減衰μ、及び信号源深さSDに依存することを例示する概略図を示す。組織内の光は、光の減衰を、光が中を通って進む物質の特性と関連付ける、ベールの法則を用いてモデル化することができる。減衰係数μは、既知の光学及び組織特性から合理的に決定することができる。図5の上部に示すように、PPG振幅は、前記減衰係数μ、P(z)及び強度I(z)に比例し、ここで、P(z)は、p(z)及びVPによって置き換えることができ、zは、皮膚領域に侵入する光の組織進行距離である。VPは、個人間で、又は例えば、周囲温度の結果として個人内で、大きく異なり得る、全体的なボリューム的脈動性である。式p(z)は、細動脈レベルにおける脈拍(細動脈における局所的な脈動プロファイル)を表し、これは、皮膚レベルにおける異なるシャント状態に応じて変化し、また、細動脈の深さに依存している。同様に、組織減衰係数μも、波長に対する依存性が高いため、大きく変動する。しかしながら、出射光の既知の波長を使用することにより、既知の組織特性から前記減衰係数μを合理的に決定することができる。一般に、μは、p(z)ではなく、発色団の総量及び調査される組織の散乱特性に依存している。
【0062】
測定されたPPG信号が生じる支配的な信号源深さSDを定義することによって、図5における第2の式からp(z)及びI(z)を置き換えて、PPG振幅がボリューム脈動性VP、組織減衰μ及び信号源深さSDの3つの因子のみに依存する最終式を得ることができる。したがって、PPG振幅は、血管の全体的なボリューム的脈動性VPに線形に比例し、減衰係数μに線形に比例し、脈動血管の信号源深さSDに非線形に比例する(すなわち、光は、距離SDだけ、脈動血管の方へと下に進み、皮膚表面へと戻る必要がある)ということが想定される。
【0063】
したがって、深さ情報を抽出することにより、補正されたPPG振幅を決定することが可能となる。図5の最後の式からVP及びμを比定して、幾何形状、すなわち、信号源深さSDのみに(一意でなくとも)高く依存するPPG振幅の式を得ることが可能である。これは、後述する、PPG信号源に対してODIを決定するための本発明の手法の論理的根拠となる。SC信号源に対しても同じ原理が適用されるため、図5に示す算出は、PPGに対する一例のために作られたものに過ぎないことを理解されたい。
【0064】
また、ベールの法則と、収縮期及び拡張期に対する異なる減衰係数とを用いて組織内の光をモデル化することもオプションとなることに留意されたい。このように、組織進行距離zと、収縮期減衰係数と拡張期減衰係数との間の差分とのみに依存するPPG振幅AC/DCの式を見つけることが可能である。したがって、このモデルにより、PPG信号の信号源深さ(すなわち、その深さにおけるボリューム脈動性の)を推定することも可能となる。
【0065】
図6及び図6Bは、広視野PPG及びラジアルPPGに対する対象者の皮膚領域12を通る電磁放射線90の経路を例示する概略図を示す。本発明は、広視野イメージング及びラジアルイメージングという2つの異なる測定タイプを組み合わせる。図6A及び図6Bは、PPG測定の場合に、これら2つの異なる測定タイプがどのように実行され得るかを一例として示している。広視野PPGは、数年にわたってカメラモードで一般的に使用されているモードであり、照射ユニット200からの電磁放射線90による照射は、皮膚領域12にわたって均一に分布し、PPG信号は、同皮膚領域にわたって測定される。このモードは、図6Aに示されている。電磁放射線90は、非脈動血管14及び脈動血管16を持つ皮膚領域12を通って進んだ後、カメラなどのイメージングユニット300によって検出される。検出された電磁放射線90及び導出されたPPG信号は、カメラ300によって検出された全ての電磁放射線90の平均である。
【0066】
図6Bは、ラジアルPPGモードを示す。ラジアルPPGは、従来のコンタクトプローブPPG測定と非常に類似する原理による。皮膚領域12は、スポット(又は円、ストライプ、ドット等のパターンなどのパターン)によって照射され、PPG信号は、皮膚領域12上の1つ又は複数の照射スポットから数ミリメートル離れた場所で測定される。皮膚領域12上の1つの照射スポットと、PPG信号が測定されるスポットとの間のこのラジアル距離15が、図6Bにおいて、1つの反射ビームに関して一例として示されている。したがって、ラジアルPPG信号は、一般に、ラジアル距離15に依存する信号である。言い換えれば、対象者の皮膚領域12から反射される電磁放射線90は、照射スポットにおける表皮を通して皮膚領域に入り、皮膚領域の構成要素から反射され、照射スポットからラジアル距離15において(典型的には、照射スポットから数ミリメートル又は数センチメートル離れた場所で)表皮13を通して皮膚領域を出ることにより、前記皮膚領域から反射される。これにより、イメージングユニット300によって検出される電磁放射線90は、皮膚領域12から後方に散乱し、表皮13下の皮膚領域12に位置する異なる非脈動血管14及び脈動血管16から脈動情報を収集する。
【0067】
本発明が、これらの2つの異なる測定タイプ(ラジアルPPGイメージング及び広視野PPGイメージング)から得た結果を組み合わせることについて、後で示す。同様にラジアル及び広視野イメージングから得られる結果が組み合わせられるSC測定にも、同じことが適用される。
【0068】
図7A及び図7Bは、広視野PPG及びラジアルPPGのための検出された反射光を例示する概略図を示す。図7A及び図7Bの上部の概略図は、前の図6A及び図6Bを参照して既に論じたものと同じである。
【0069】
図7Aは、広視野PPGセットアップの検出された反射光を例示する図を(下部に)示す。この目的のために、縦座標軸は、反射された検出光を示し、横座標軸は、測定時間を示す。曲線は、DC成分及びAC成分を含む反射された検出光を示す。AC成分は、脈動動脈血に由来する光吸収率の脈動成分を表し、DC成分は、非脈動動脈血、静脈血及び他の組織からの寄与を含む非脈動成分を表す。
【0070】
図7Bは、ラジアルPPGセットアップの検出された反射光を例示する3つの図を、真ん中の列に示す。この目的のために、縦座標軸は、ここでも反射された検出光を示し、横座標軸は、測定時間を示す。3つの曲線から、対象者の皮膚を通って光が進んだ距離が長くなるほど(また、ラジアル距離15が大きくなるほど(図6B参照))、反射された検出光のDC成分が小さくなることが明白となる。これは、3つの異なる曲線のオフセットによって、それぞれ概略的に示されている。この理由は、光が皮膚を通ってより長い経路だけ進むと、より多くの光又は電磁放射線90が、皮膚領域12によって吸収及び/又は散乱されるということである。これにより、DC成分が低減される。
【0071】
この依存性は、図7Bの最下図にも示されている。この図は、反射された検出光のAC又はDC成分を縦座標軸で、ラジアル距離15を横座標軸で示している。一方の曲線は、反射された検出光のDC成分を示しており、他方の曲線は、反射された検出光のAC/DC比を示している。既に論じた傾向が明白となっている。また、ラジアル距離15が大きくなるほど、AC/DC比が大きくなる(相対的な脈動成分が大きくなる)ことも明らかになっている。
【0072】
図8は、ラジアルPPG測定のための対象者の皮膚領域12を通る光の経路のモンテカルロシミュレーションの概略図を示す。皮膚領域12内の光分布は、異なる侵入深さを示すために視覚化されている。
【0073】
図9A及び図9Bは、浅い脈動層、中間の脈動層、及び深い脈動層を持つ3つの異なる皮膚構成のモンテカルロの結果を示す。浅い脈動層、中間の脈動層、及び深い脈動層は、0.4mm、0.7mm及び1mmの異なる信号源深さ20を持つ。モンテカルロの結果から、脈動層の信号源深さ20は、広視野PPG及びラジアルPPGの両方の振幅に対して影響を持つことが分かる。広視野PPG信号の振幅は、信号源深さ20の増大と共に低下し、一方、ラジアルPPG信号の振幅は増大する。これは、ラジアルPPG信号(radPPG(r))の振幅が最も深い脈動層(1mmの皮膚の深さ20に位置する)に対して最大となり、広視野PPG信号(wfPPG)の振幅が、最も浅い脈動層(0.4mmの皮膚の深さ20に位置する)に対して最大となる、図9Aにおいて見て取ることができる。
【0074】
図9Aの最下図は、radPPG(r)信号を、wfPPG信号で除算することによって決定される、正規化されたラジアルPPG信号(radPPG_n)を示す。この式radPPG_nが、脈動層の支配的な信号源深さの推定を可能にすることが分かった。このことは、radPPG_n曲線が、より大きいスケールで再度示されている図9Bにおいて示されている。radPPG_n曲線の振幅が大きくなるほど、皮膚領域内の血流の深さを示すODIが高くなる。
【0075】
まとめると、PPGの場合、ODIの決定は、広視野PPGとラジアルPPGとを組み合わせることによって、より具体的には、radPPG(r)信号を広視野PPG信号で正規化し(radPPG_n(r)=radPPG(r)/wfPPG)、続いて、ODIを所定のラジアル距離におけるradPPG_n(r)の値として取ることによって行われる。
【0076】
これらの原理は、SC測定にも適用されるということを理解されたい。PPG変調深さに対するODIの決定と同様に、SCIのODIは、図9BにおいてPPGに関して一例として示すように、0.5mmなどの所定の距離rにおいてradSCI(r)/wfSCIの値を選択することによって決定される。PPG測定に関する図9Bの例では、r=0.5のODIは、それぞれ、浅い脈動層、中間の脈動層、及び深い脈動層に対して、ODI=2.2、3.2、及び4.1として決定される。
【0077】
図10は、本発明による、対象者の皮膚領域12における心臓誘発性の血液の動きによって誘発される血液灌流の1つ又は複数の様相のイメージングを提供するためのシステム500を示す。
【0078】
図10に示すように、システム500は、少なくとも、照射ユニット200と、イメージングユニット300と、対象者の皮膚領域12における心臓誘発性の血液の動きによって誘発される血液灌流の1つ又は複数の様相のイメージングを提供するための処理ユニット110を備えたデバイス100とを備える。前記デバイス100のより詳細な説明については、図12を参照して以下で与えられる。
【0079】
照射ユニット200は、電磁放射線90を出射して皮膚領域12を照射するように構成されている。好ましくは、前記照射ユニット200は、電磁放射線90の制御可能な狭いビームを出射するように構成されている。さらに好ましくは、電磁放射線90は、可視及び赤外スペクトル範囲に位置する。したがって、照射ユニット200はまた、少なくとも2つの異なる波長における電磁放射線90を出射し、且つ/又は、例えば、可視光と赤外光とを、電磁放射線90として交互に出射するように構成されてもよい。SCIとPPGIとの間の1つの違いは、SC測定の場合、出射光がコヒーレントである必要があり、一方、PPG測定の場合は、出射光は必ずしもコヒーレントである必要はない。しかしながら、コヒーレントな光源が照射ユニット200として使用される場合、SCI及びPPGIを共に、イメージングユニット300として同じ(従来の)カメラを使用して記録される同じ動画シーケンスから抽出することができる。
【0080】
図10に示す実施形態によれば、システム500は、任意選択として、対象者の皮膚領域12を、測定される限定された皮膚エリアに限定するためのサポート250をさらに備える。このサポート250は、図10に示すように対象者の皮膚の上に置かれ、好ましくは、可視又は赤外スペクトル範囲の入射する電磁放射線90に対して非透過性である材料で作製される。したがって、好ましくは、測定に使用される皮膚領域12は、測定されるエリアに沿って均一な表面を持つ皮膚部分を含むエリアに限定される。これにより、測定精度が向上する。
【0081】
追加として、図10に示すシステム500は、拡散器220をさらに備える。前記拡散器220は、照射ユニット200によって出射された電磁放射線90の制御可能な狭いビームを拡散させて、対象者の皮膚領域12上に、均一な照射プロファイル及び/又はドット、円、ストライプなどのパターンを生成するように構成されている。イメージングユニット300は、好ましくは、可視及び赤外スペクトル範囲の電磁放射線90を検出するように構成されるカメラである。カメラ300は、視野が照射ユニット200によって照射される皮膚領域12をカバーするように位置する。
【0082】
対象者の皮膚12が均一に照射される場合に限らず、広視野PPG又は広視野SC測定され得ることに留意されたい。スポットパターン(ドット、円、ストライプなど)などのパターンによって、又は単一のスポットのみによって皮膚領域12が照射される場合、そのやり方でも有効となる。その場合、PPG又はSC信号は、好ましくは、皮膚領域12を通して透過された又は皮膚領域12から反射された全ての電磁放射線90の空間積分によって導出される。処理ユニット100は、前記空間積分を実行するように構成されてもよい。また、対象者の皮膚領域12に対する均一な照射プロファイルの生成は、制御可能な狭いビーム(レーザなど)を出射するように構成された照射ユニット200と、前記狭いビームを拡散させるための拡散器220とを使用することだけでなく、バルブなど、均一な照射プロファイルを直接出射する1つ又は場合によっては複数の照射ユニットを使用することによっても得ることが可能であることに留意されたい。このことは、次の図11から明らかとなる。
【0083】
システムが、(図10に示すように)1つの照射ユニットのみを備えている場合、拡散器220は、照射ユニット200の出射光の経路内又は経路の外側に選択的に配置される。この場合、拡散広視野照射は、光の経路の内側に光拡散器を配置することによって得られ、ラジアル照射(単一のレーザスポットなど)は、光の経路の外側に光拡散器を配置することによって得られる。
【0084】
図11は、本発明による、対象者の皮膚領域12における心臓誘発性の血液の動きによって誘発される血液灌流の1つ又は複数の様相のイメージングを提供するためのさらなるシステム500’、500”を示す。
【0085】
両システム500、500”について示すように、2つの異なる照射ユニット200a、200bを使用する場合もある。第1の照射ユニット200aは、電磁放射線90のパターンを出射して、パターン化された照射によって対象者の皮膚領域12を照射するように構成され、第2の照射ユニット200bは、均一な照射プロファイルを出射して、対象者の皮膚領域を均一に照射するように構成されている。前記態様によれば、光の経路の内側又は外側に選択的に配置される光拡散器は、もはや必要ではない。
【0086】
典型的に生じる問題は、二次照射が、測定されたPPG又はSC信号を「汚染する」ということである。二次照射とは、組織から反射又は再出射された後、非組織物体に当たって反射されて、組織の2度目の照射を行う光である。この二次照射を抑制するために、システム500’は、再出射された光を吸収して二次照射を回避するように被覆された高吸収バッフル350を備える。これらのバッフル350は、測定されたSC又はPPG信号が、二次照射によって汚染されないように配置される。代替又は追加として、システム500”はまた、二次照射を最小限に抑えるための偏光器410、420を備える。
【0087】
図12は、本発明による、皮膚領域における心臓誘発性の血液の動きによって誘発される血液灌流の1つ又は複数の様相のイメージングを提供するためのデバイス100によって実行される方法を例示するフローチャートを示す。デバイス100は、図12に示すようにステップS10~S50を実行するように構成された処理ユニット110を備える。この処理ユニットが、血液灌流の1つ又は複数の様相をイメージングするように構成されるのではなく、この処理ユニットが、1つ又は複数の様相をイメージングする前に、全ての処理ステップを実行することによってイメージングを提供するように構成されていることは明らかである。処理ユニット110は、例えば、コンピュータのプロセッサであり、したがって、この処理ユニットは、処理ユニットに接続されたディスプレイユニットが1つ又は複数の様相をイメージングするために構成されるように、全てのステップS10~S50を実行するように構成される。
【0088】
第1のステップS10において、処理ユニットは、データストリームを取得する。データストリームは、調査される皮膚領域を通して透過された又は皮膚領域から反射された、検出された電磁放射線から導出される。また、前記データストリームは、皮膚領域の複数の皮膚ピクセルに対する皮膚ピクセル単位のデータ信号を含む。第1のデータストリームは、皮膚領域のパターン化された照射から導出され、第2のデータストリームは、皮膚領域のパターン化された照射及び/又は均一な照射から導出される。したがって、別の言い方をすれば、第1のデータストリームは、ラジアルイメージングから導出され、第2のデータストリームは、広視野イメージングから導出される。
【0089】
ステップS20において、処理ユニットは、第1のデータストリーム及び第2のデータストリームのデータ信号から、光学的深さ指標ODIを皮膚ピクセル又は皮膚ピクセルのグループ単位で決定する。このODIの決定は、第1のデータストリームのデータ信号を、第2のデータストリームのデータ信号によって、皮膚ピクセル又は皮膚ピクセルのグループ単位で除算することによって行われる。ODIは、皮膚ピクセル又は皮膚ピクセルのグループにおける皮膚領域内の血流の深さを示す。
【0090】
ステップS30において、決定されたODIから、複数の皮膚ピクセルを含む皮膚領域のODI画像マップが作成される。
【0091】
ステップS40において、第2のデータストリームのデータ信号から、複数の皮膚ピクセルを含む皮膚領域の振幅画像マップが作成される。
【0092】
最後になるが、最後のステップS50において、第2のデータストリームのデータ信号を、決定されたODIによって、皮膚ピクセル又は皮膚ピクセルのグループ単位で補正することによって、振幅画像マップが補正される。
【0093】
図13は、図12に示す方法の処理ステップS20~S50を視覚化した概略図を示す。広視野PPG画像マップwfPPG(x,y)140及びラジアルPPG画像マップradPPG(r,x,y)150が、図13の左側に示されている。広視野PPG画像マップ140は、以下では「振幅画像マップ」140とも呼ばれる。振幅画像マップ140は、好ましくは、皮膚領域の均一な照射(すなわち、広視野イメージング)から導出された第2のデータストリームのデータ信号112から作成される。したがって、振幅画像マップ140は、当技術分野で知られている従来のPPG画像マップである(Verkruysseら、「Remote plethysmographic imaging using ambient light」、2008も参照)。したがって、図13に示すように擬色マップである振幅画像マップ140は、各皮膚ピクセル又は皮膚ピクセルのグループに対する第2のデータストリームのデータ信号の振幅を反映する。PPGの場合、擬色は、広視野PPGイメージングから取得されたAC/DC比を反映する。SCの場合、擬色は、広視野SCイメージングから取得された灌流信号の脈動成分又は灌流信号の固定成分のいずれかを反映する。
【0094】
ラジアルPPG画像マップradPPG(r,x,y)150は、本発明に必ずしも必要なものではないが、パターン化された照射(すなわち、ラジアルイメージング)から導出された第1のデータストリームのデータ信号111から追加として作成される。PPGの場合、擬色は、ラジアルPPGイメージングから取得されたAC/DC比を反映する。SCの場合、擬色は、ラジアルSCイメージングから取得された灌流信号の脈動成分又は灌流信号の固定成分のいずれかを反映する。
【0095】
ODI画像マップODI(x,y)130が図13に示されている。このODI画像マップ130は、その前に決定されたODI120から作成される。これらのODIは、第1のデータストリームのデータ信号111を、第2のストリームのデータ信号112によって、皮膚ピクセル又は皮膚ピクセルのグループ単位で除算することにより決定される。すなわち、図13に示すODI画像マップ130は、振幅画像マップ140(図13のwfPPG(x,y))とラジアル画像マップ150とを組み合わせたものから作成される。
【0096】
好ましくは、座標(x,y)を持つ各皮膚ピクセル又は皮膚ピクセルのグループに対して、radPPGn(r)=radPPG(r)/wfPPGの比(PPG測定の場合)又はradSCn(r)=radSC(r)/wfSCの比(SC測定の場合)を決定することによってODIが決定される。一例として、図13は、PPG測定に関してODIがどのように決定されるのかを示す。ODI画像マップ130を作成するために、複数の皮膚ピクセルが逐次的又は同時に(ただし、互いから十分な距離を取って)照射される。これにより、異なる空間的な組織ロケーションに対してODI120を作成することが可能となり、したがって、図13に示すようなODI画像マップ130を形成することが可能となる。
【0097】
SC測定の場合、測定された灌流信号の脈動成分又は固定成分は、血管(細動脈の可能性が高い)における脈動流の深さを示す、ODIpuls(x,y)、又は血流を伴う全ての血管における平均化された非脈動流の深さを示す、マップODIconst(x,y)を算出するために使用される(両マップは、図13に示していない)。
【0098】
図13に示すODI画像マップ130は、対象者の額のODIが小さいのに対して、頬のODIが大きいことを示す。このことは、額で測定されたPPG又はSC信号が浅い血管から得られ、頬で測定されたPPG又はSC信号が、より深い血管から得られることを示す。一般に、ODIは、皮膚ピクセル又は皮膚ピクセルのグループにおける皮膚領域内の血流の深さを示す。
【0099】
PPGに関して図13にさらに示すように、皮膚ピクセル又は皮膚ピクセルのグループとパターン化された照射の照射スポットとの間の所定のラジアル距離15において、第1のデータストリームのデータ信号111の時間変動するAC成分と固定のDC成分との比の値を選択することによって(すなわち、radPPG(r)曲線の値を選択することによって)皮膚ピクセル又は皮膚ピクセルのグループ単位でODIが決定される。一例として、図13は、各皮膚ピクセル(x,y)に対して第1のデータストリームのデータ信号111のAC/DC比(radPPG(r=Rc=5mm)の値を選択するために、5mmの所定のラジアル距離15が使用されることを示す。
【0100】
最後のステップS50において、振幅画像マップ140が深さに関して補正される。
これは、振幅画像マップ140のデータ信号112を、決定されたODI画像マップ130の決定されたODI120によって、皮膚ピクセル又は皮膚ピクセルのグループ単位で補正することによって行われる。したがって、最後に信号源深さ補正振幅画像マップPPGsdc(x,y)160が得られる。この最後の補正ステップに関するさらなる詳細は、次の図14において見つけることができる。
【0101】
図14は、図12に示す方法の処理ステップS50を視覚化した概略図を示す。信号源深さ補正振幅画像マップPPGsdc(x,y)160は、深さに関して振幅画像マップ140を補正することによって得られる。式PPGsdc(x,y)=wfPPG(x,y)×Csd(ODI)は、振幅画像マップ140のデータ信号112が、決定されたODIに依存する補正係数Csd(ODI)によって、皮膚ピクセル又は皮膚ピクセルのグループ単位で補正されることを表している。これは、振幅画像マップ140のデータ信号112を補正するために、額及び頬に対して、異なる補正係数Csd(ODI)(額ではODI=2に対してCsd=0.28、頬ではODI=5に対してCsd=0.87)が使用されることを意味する。これは、額のODIが小さく(ODI=2)、頬のODIが大きい(ODI=5)からである。言い換えれば、振幅画像マップ140は、第2のデータストリームのデータ信号112を、決定されたODIによって、皮膚ピクセル又は皮膚ピクセルのグループ単位で補正することによって補正される。
【0102】
図15は、SCとPPGとの間の類似点及び違いを例示する概略図を示す。PPGの場合、好ましくは、wfPPG信号及びradPPG(r)信号を取得するために、広視野PPG及びラジアルPPGの両方に対する生反射強度信号から脈動強度AC/DCが算出される。また、PPGの場合、好ましくは、これらの信号の比を決定することによってODIPPG120が算出される。したがって、PPGの場合、(図13に示すように)第1及び第2のデータストリームのデータ信号111、112は、生強度信号である。
【0103】
SCの場合、第1及び第2のデータストリームのデータ信号111、112は、好ましくは、皮膚領域の血管における心臓誘発性の脈動性の血液の動き表す脈動成分と、皮膚領域の血管における平均化された非脈動性の血液の動きを表す固定成分とに分割される灌流信号である。脈動成分(「puls」)に対するradSCI(r)とwfSCIとの比を決定すること、又は固定成分(「const」)に対する前記比を決定することのいずれかによって、ODIsci,puls、ODIsci,const120が算出される。それはまた、図13に示す異なるODI画像マップ130が、好ましくは、灌流信号の脈動又は固定成分に対して作成されるということを意味する。また、図13に示す振幅画像マップwfPPGred(x,y)140及びラジアル画像マップradPPG(r,x,y)150も、灌流信号の脈動成分又は固定成分のいずれかから作成される。また、SCの場合、皮膚ピクセル又は皮膚ピクセルのグループとパターン化された照射の照射スポットとの間の所定のラジアル距離15において、第1のデータストリームのデータ信号の脈動又は固定成分の値を選択することによって、ODIが、皮膚ピクセル又は皮膚ピクセルのグループ単位で決定されるということを述べておきたい。また、一例として、前記所定のラジアル距離(r)15は、図15では、非常に大きく、曲線radSCI(r)/wfSCIは、停滞状態になっていく。
【0104】
SCIの場合に生スペックルパターンからどのように灌流信号を取得するかについてのプロセスが、図4に示されている。さらなる詳細については、次の図16においても見つけることができる。
【0105】
図16は、広視野SCI及びラジアルSCIのためのコントラスト信号及びそれらの灌流信号への変換を例示する概略図を示す。(コヒーレント又は非コヒーレント光が使用され得るPPGとは異なり)皮膚領域12がコヒーレント光で均一に照射されるか又はパターンによって照射される、広視野SCIイメージングでは、コントラストσが高く、脈動流のため時間変調する。皮膚領域12が1つのコヒーレントなペンシルビーム(又はコヒーレントなペンシルビームのパターン)で照射される、ラジアルSCIイメージングでは、コントラストは、レーザスポットからのより大きいラジアル距離15に対してより小さくなる。(脈動流からの)時間変調部分は、流れ全体と同様により大きくなる。本質的には、ラジアルSCIの場合、ラジアルPPGIの場合と同じ原理が使用される。すなわち、光が組織を通って進んだ距離が長くなるほど、光は、組織から関連信号をより多く拾っている(図6A及び図6Bも参照)。PPGでは、前記信号は、単純な、(ボリューム脈動血管から得られる)強度の変調深さである。SCIでは、前記信号は、流れのために低減されたスペックルコントラストである。
【0106】
PPG及びSCIに対する一次信号は、非常に類似して見えるが、重要な違いがあるということに留意されたい。PPGでは、第1及び第2のデータストリームの一次信号が光強度であり、正規化が光強度を、AC及びDCが共にそれに比例しているため打ち消すので、DC部分によるAC部分の正規化が意味を持つ。したがって、正規化後の変調深さは、好ましくは、さらに検討すべきデータ信号である。SCIでは、一次信号(すなわち、第1及び第2のデータストリームのデータ信号)は、好ましくは、灌流信号P(t)(図16参照)であり、PPGのような正規化は、意味を持たない。そうではなく、脈動成分及び固定成分は、別個の独立した成分として処理される。
【0107】
図17は、本発明による、パターン化された照射のために使用される異なる照射パターンの写真を示す。ラジアルPPG及びラジアルSC測定のために使用される照射は、これまで、対象者の皮膚上の1つの単一レーザスポットなどの1つのペンシルビームに関して主に論じてきた。図17は、使用される、ドット、円、又はストライプのパターンなどの種々の異なる照射パターンを示している。円又はリング及び線は、ペンシルビームの場合よりも、測定信号のDCレベルが、ラジアル距離15と共に減少する幅が大きくないため、ディテクタ(例えば、カメラ)のダイナミックレンジに対する要求が少なくなるという利点がある。円の場合、AC/DCのラジアル依存性(PPGに関するODI情報を含む)は、同様であるのに対して、ダイナミックレンジ(DC)は、より有利となる。線照射又は他のタイプの構造的照射に関しても、同様の主張を行うことができる。これは、点光源照射と円形照射との間の分析的比較を示す、次の図18にも示されている。円形照射によって、より有益なDCの範囲が得られるが、ラジアル距離15の範囲が限定されるという点で対価が支払われる。線照射、又は他のタイプの構造的照射についても、同様の妥協が存在する。
【0108】
図19は、異なるタイプの照射と、恣意性の低いODI決定の値を選択するための点とを例示する概略図を示す。図19に示すこれらの異なるタイプの照射は、一例として、円照射(i)、線照射(ii)、及びスポット照射(iii)に分けることができる。
【0109】
円照射(i)の場合、好ましくは、照射円の中心が、ODIを決定するために選定される。
【0110】
線照射(ii)の場合、好ましくは、照射線間の所定の距離又は2つの照射線間の中心が、ODIを決定するために選定される。
【0111】
スポット又は複数点照射(iii)の場合、好ましくは、最大灌流信号Pmax(r)を伴う点又は2つの照射スポット間の点のいずれかが、ODIを決定するために選定される。
【0112】
また、比較的粗い解像度点からより高い解像度画像マップを作製するために、図20を参照して以下で説明するいくつかの技法を提案する。これらの技法は、補間、並進、回転及びこれらの組合せを含む。
【0113】
図20は、ODIの解像度及び信号源深さ補正画像を改善するためのいくつかの実施形態(オプション1~6)を例示する概略図を示す。図20の上部に示すように、各yについてODI(x)が決定されるため、21本の線を持つ照射パターンから20本のODI(x)曲線を取得することが可能である。オプション1は、線測定値を離散化してピクセルを作製するステップを有する。したがって、各線jに対して、ODI(x)曲線が、ODIxjに離散化される。次いで、深さに関して灌流信号を補正するために、各皮膚ピクセル又は各皮膚ピクセルのグループi、jに対して、離散化されたODIからODI画像マップが作成される。
【0114】
別の、オプション2は、線照射によってODIxjデータを取得し、次いで、照射パターンを90°回転させてODIyjデータを取得するステップを有する。次いで、ODIxj及びODIyjデータの平均としてODIijを決定し、決定されたODIijからODI画像マップを作成するステップに進む。
【0115】
オプション3では、格子を用いて照射が実行され、各皮膚ピクセル又は皮膚ピクセルのグループの中心の値として皮膚ピクセルi、jのODIが選定される。オプション2に対して、このオプション3は、より高速であるという利点をもたらす。
【0116】
オプション4では、それぞれ波長λ1及びλ2を持つ、2つの直交する線L1及びL2のセットを用いて同時に照射が実行される。2つのカメラなどの2つの照射ユニットは、パスバンドが重複しないため、波長λ1及びλ2を通過して各線パターンを独立に記録するためのバンドパスフィルタを備える。波長λ1及びλ2は、組織の光学特性が、侵入深さに著しく影響を与えないほど、非常に類似し、小さいことを確実にするように、極めて近くなるように選定される。このため、バンドパスフィルタは、非常に小さいパスバンドを持つ。血液(支配的な発色団)が著しく変化しない領域における(例えば、約660nm範囲における)波長を選定することにより、光学特性(吸収率及び散乱率)が非常に類似した波長を選定することが可能となる。
【0117】
オプション5では、同じ波長の2つの直交する線のセットを用いて同時に照射が実行されるが、パターン及びイメージングユニットにおけるその記録が、時分割多重化される(時間変調又は周波数変調される)。
【0118】
最後のオプション6では、正方形の中心における光が、相当の深さ/距離だけ進行したことを確実にするように相当の大きさの正方形サイズ(例えば、5×5mm)の格子を用いて照射が実行される。より粗い格子から得られる画像解像度の低さを軽減するために、この格子の並進においても照射が実行され、粗い解像度の画像が組み合わされて、高解像度の1つの画像となる。好ましくは、4つの照射/記録は、オプション4の波長選定を使用して同時に行われるか、又はオプション5で提案されたように時分割多重化される。図20では、格子の3つの並進が、3つの矢印で示されており、例えば、0.5格子周期にわたる並進では、x及びyの両方向において2倍の解像度が得られる。当然ながら、0.333周期にわって並進された9つの照射は、より多く多重化する必要があるという代償を払って、さらに高く効果的な画像解像度をもたらす。また、そのような並進は、照射格子の場合だけでなく、図20のオプション6に示すように、円又は点の場合にも可能である。
【0119】
本発明は、図面及び前述の説明において詳細に例示及び説明されているが、そのような例示及び説明は、実例又は一例のためであり、制限的なものではない。すなわち、本発明は、開示される実施形態に限定されない。開示される実施形態に対する他の変形形態は、図面、開示、及び添付の特許請求の範囲の検討から、特許請求される本発明を実行する当業者によって、理解及び実施され得る。
【0120】
請求項の範囲において、「備える(有する、含む、持つ)」という単語は、他の要素又はステップを排除しない。また、単数形の表現は、複数を排除しない。単一の要素又は他のユニットが、特許請求の範囲に記載される複数の項目の機能を満たし得る。単に特定の措置が相互に異なる従属請求項に記載されていることが、利点を得るために、これらの措置の組合せを使用できないということを示しているわけではない。
【0121】
コンピュータプログラムは、他のハードウェアと一体に又は他のハードウェアの一部として供給される光学記憶媒体又はソリッドステート媒体などの好適な非一時的媒体上に記憶/配布されてもよいが、インターネット又は他の有線若しくは無線電気通信システムを介してなど、他の形態で配布されてもよい。
【0122】
特許請求の範囲における任意の参照符号は、範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A-7B】
図8
図9A-9B】
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20