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特許7592875非接触給電モジュール及び非接触給電システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】非接触給電モジュール及び非接触給電システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/10 20160101AFI20241125BHJP
   H01F 38/14 20060101ALI20241125BHJP
【FI】
H02J50/10
H01F38/14
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023538598
(86)(22)【出願日】2022-07-27
(86)【国際出願番号】 JP2022028967
(87)【国際公開番号】W WO2023008487
(87)【国際公開日】2023-02-02
【審査請求日】2024-03-13
(31)【優先権主張番号】P 2021124410
(32)【優先日】2021-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002255
【氏名又は名称】SWCC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 顯
(72)【発明者】
【氏名】三浦 聖
(72)【発明者】
【氏名】野内 健太郎
【審査官】杉田 恵一
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-110294(JP,A)
【文献】特開2007-165876(JP,A)
【文献】特開2021-061706(JP,A)
【文献】特表2018-534808(JP,A)
【文献】国際公開第2019/189138(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 38/14
H02J 50/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面に埋設される給電モジュールと、
クラスIに属する医用電気機器の電源ケーブルに接続される受電モジュールと、
を備える非接触給電システムであって、
前記給電モジュールは、
電力の伝送に用いられる給電コイルと、
前記給電コイルを収容する凹部を有する給電側筐体と、
接地線に接続され、表面が露出する状態で前記給電側筐体の前記凹部の開口に沿って配置される給電側接地部と、を有し、
前記受電モジュールは、
電力の伝送に用いられる受電コイルと、
前記受電コイルを収容する凹部を有する受電側筐体と、
表面が露出する状態で前記受電側筐体の前記凹部の開口に沿って配置される受電側接地部と、を有し、
前記給電コイルと前記受電コイルとの間で非接触で電力の伝送が行われるとともに、
前記給電側接地部と物理的に接触することにより前記受電側接地部が接地される、
非接触給電システム。
【請求項2】
前記給電側筐体及び前記受電側筐体は、導電性を有し、
前記給電側接地部及び前記受電側接地部は、それぞれの前記凹部の開口端に配置され、物理的かつ電気的に接続されている
請求項1に記載の非接触給電システム
【請求項3】
前記給電側筐体と前記給電側接地部、及び前記受電側筐体と前記受電側接地部は、それぞれ、異種材料で形成されている、
請求項2に記載の非接触給電システム
【請求項4】
前記給電モジュールは、前記給電側筐体の前記凹部の開口に配置される保護体を備え、
前記給電側接地部と前記保護体の表面は、面一である、
請求項1から3のいずれか一項に記載の非接触給電システム
【請求項5】
前記受電側接地部は、表面に凹凸構造を有する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の非接触給電システム
【請求項6】
前記受電側接地部は、表面に、加圧変形可能なバネ構造を有する、
請求項1から5のいずれか一項に記載の非接触給電システム
【請求項7】
前記受電側接地部は、表面にブラシ部を有する、
請求項1から6のいずれか一項に記載の非接触給電システム
【請求項8】
前記給電コイル及び前記受電コイルは、電線を同一平面上に所定の巻数で巻線した環状の渦巻き型コイルである、
請求項1から7のいずれか一項に記載の非接触給電システム。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の非接触給電システムの前記給電モジュールとして用いられる非接触給電モジュール。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか一項に記載の非接触給電システムの前記受電モジュールとして用いられる非接触給電モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触で給電を行うための非接触給電モジュール及び非接触給電システムに関し、特に、保護接地が必要な電気機器(例えば、医用電気機器)への給電に好適な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、病院等の医療施設においては、安全な手術環境の実現のため、手術室等に設置される医用電気機器のケーブルレス化が進められており、非接触給電システムの利用が検討されている。非接触給電システムは、例えば、交流電源から電圧が供給される給電コイルを有する給電モジュールと、給電コイルに対向して配置され給電コイルと磁気的に結合する受電コイルを有する受電モジュールとを備え、電磁誘導又は磁気共鳴を利用して非接触で給電を行う(例えば、特許文献1、2参照)。本明細書では、給電モジュールと受電モジュールを合わせて「非接触給電モジュール」と総称する。
【0003】
手術室等においては、手術台や医用電気機器などの重量物の移動のしやすさ、医療従事者のつまずき防止、床面の清掃のしやすさの観点から、床面は平坦であることが好ましい。また、手術室等の床面には、消毒液や血液等の液体が飛散することもある。そのため、電気接点となる端子が外部に露出している従来の電源コンセントを床面に設置することは、作業性及び安全性の面で適さない。これに対して、非接触給電システムの場合、給電コイル及び受電コイルが外部に露出している必要はないので、床面の平坦性を維持しつつ給電モジュールを設置することができ、医用電気機器のケーブル配線を簡素化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2021-61706号公報
【文献】国際公開第2019/189138号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、医用電気機器に非接触給電システムを適用するに際し、医用電気機器の安全規格(JIS T 0601-1)「医療機器-第1部:安全に関する一般要求事項」に適合する必要がある。具体的には、クラスIに属する医用電気機器には、施設の医用接地端子に接続する手段を備えることが求められている。
【0006】
特許文献1に開示の非接触給電システムでは、給電コイル(20)と受電コイル(50)を対向させて給電を行う際に、給電側の接地された透過板(16)に受電側の透過板(46)が接触して、電気機器(100)が保護接地されるようになっている。しかしながら、給電コイル(20)と透過板(16)とが並置され、また、受電コイル(50)と透過板(46)とが並置されており、医用電気機器の配置が固定されてしまう為、様々なシーンへの対応に課題がある。具体的には、患者の手術部位や術者の対応しやすい位置や角度に応じて、医用電気機器の配置を柔軟に変更することができず、利便性の面で改善の余地がある。
【0007】
本発明の目的は、電気機器の保護接地を容易に実現できるとともに、利便性を向上できる非接触給電モジュール及び非接触給電システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る非接触給電システムは、
床面に埋設される給電モジュールと、
クラスIに属する医用電気機器の電源ケーブルに接続される受電モジュールと、
を備える非接触給電システムであって、
前記給電モジュールは、
電力の伝送に用いられる給電コイルと、
前記給電コイルを収容する凹部を有する給電側筐体と、
接地線に接続され、表面が露出する状態で前記給電側筐体の前記凹部の開口に沿って配置される給電側接地部と、を有し、
前記受電モジュールは、
電力の伝送に用いられる受電コイルと、
前記受電コイルを収容する凹部を有する受電側筐体と、
表面が露出する状態で前記受電側筐体の前記凹部の開口に沿って配置される受電側接地部と、を有し、
前記給電コイルと前記受電コイルとの間で非接触で電力の伝送が行われるとともに、
前記給電側接地部と物理的に接触することにより前記受電側接地部が接地される。
【0009】
本発明に係る非接触給電モジュールは、
上記の非接触給電システムの前記給電モジュール又は前記受電モジュールとして用いられる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電気機器の保護接地を容易に実現できるとともに、給電モジュール及び受電モジュールの小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施の形態に係る非接触給電システム1の概略構成を示す図である。
図2図2A図2Bは、給電モジュールの構成を模式的に示す断面図及び平面図である。
図3図3A図3Bは、受電モジュールの構成を模式的に示す断面図及び平面図である。
図4図4は、非接触給電システムの使用状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、実施の形態に係る非接触給電システム1の概略構成を示す図である。非接触給電システム1は、例えば、医用電気機器45の装置電源44への給電に用いられる。医用電気機器45は、JIS T 0601-1で規定されている保護接地が必要なクラスIに属する電気機器である。
【0013】
図1に示すように、非接触給電システム1は、給電コイル11を備える給電モジュール10と、受電コイル21を備える受電モジュール20と、で構成される。
給電モジュール10は、手術室等の床Fに、例えば、手術台を取り囲むように埋設される。受電モジュール20は、受電ケーブル41及び受電回路42を介して、医用電気機器45の3ピンプラグ付き電源ケーブル43に接続される。給電時には、給電モジュール10の上に受電モジュール20が載置され、給電コイル11と受電コイル21とが離間した状態で対向して配置されることとなる。
【0014】
本実施の形態では、給電コイル11は、給電ケーブル31を介して、共振用コンデンサー(図示略)等を含む給電回路32に接続されている。同様に、受電コイル21は、受電ケーブル41を介して、共振用コンデンサー(図示略)を含む受電回路42に接続されている。また、受電回路42は、3ピンプラグ付き電源ケーブル43を介して、医用電気機器45の装置電源44に接続されている。なお、受電回路42は、3ピンプラグ付き電源ケーブル43に着脱可能なソケット構造を有している。
【0015】
例えば、交流電源33から供給された商用電源は、給電回路32で高周波数の交流電圧に変換され、給電コイル11に印加される。給電コイル11に交流電流が流れると、給電コイル11の周囲に磁界が発生し、給電コイル11及び受電コイル21の双方と鎖交する磁束により、受電コイル21に電位差(電圧)が生じる。そして、受電コイル21に誘導電流が流れ、受電ケーブル41、受電回路42及び3ピンプラグ付き電源ケーブル43を介して医用電気機器45の装置電源44に電力が供給される。
【0016】
図2Aは、給電モジュール10の断面図であり、図2Bは、給電モジュール10を給電側筐体13の開口端側から見た図である。
図2A図2Bに示すように、給電モジュール10は、給電コイル11、給電側接地リング12、給電側筐体13、給電側磁気シールド14、及び給電側保護体15等を備える。
【0017】
給電コイル11は、電線を同一平面上に所定の巻数で巻線した環状の渦巻き型コイル(パンケーキ型コイルとも呼ばれる)である。給電コイル11及び受電コイル21を円環形状とした場合、受電モジュール20が回転してもコイル同士の対向姿勢は変わらないので、容易に位置合わせを行うことができる。なお、給電コイル11の形状は円環形状に限定されず、例えば、長円形状(小判形状やレーストラック形状)であってもよい。給電コイル11及び受電コイル21を長円形状とした場合、コイルの直線部分同士が対向していれば、直線部分に沿う長手方向に位置ずれが生じても、電力伝送効率の低下を抑制することができる。
【0018】
給電コイル11を形成する電線には、例えば、導体に絶縁被膜を焼き付けたエナメル線(素線)を複数本撚り合わせたリッツ線が適用される。給電コイル11の両端部には、例えば、半田付けなどにより給電ケーブル31の電力線の端子金具(図示略)が接続される。
【0019】
給電側筐体13は、凹部13aを有する有底筒体であり、例えば、円筒形状を有する。給電側筐体13は、凹部13aに、給電コイル11及び給電側磁気シールド14を収容する。
【0020】
給電側筐体13は、例えば、アルミニウム等の金属材料で形成される。給電側筐体13は、例えば、給電ケーブル31の接地線の端子金具(図示略)に接続され、接地される。この場合、給電側筐体13は、外部への電磁波の放射及び外部からの電磁波の入射を防止する電磁シールドとしても機能する。
なお、給電側筐体13は、給電ケーブル31とは別に設けられた給電側接地線を介して接地されてもよい。また、給電モジュール10の磁気シールドを別途設ける場合、給電側筐体13は、例えば、エポキシ樹脂にフィラー(ガラス繊維など)を混入させた繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Plastic)などの樹脂材料で形成されてもよい。この場合、誘導加熱による給電側筐体13の発熱を防止することができ、さらには、FRPのフィラーとして熱伝導性のよいものを採用して、給電側筐体13の放熱性を向上させることもできる。
【0021】
給電側接地リング12は、導電性の材料で形成され、給電側筐体13の凹部13aの開口に対応する環形状(例えば、円環形状)を有する。給電側接地リング12は、表面が露出する状態で、凹部13aの開口に沿って配置される。給電側接地リング12は、給電側接地線を介して接地される。本実施の形態では、給電側接地リング12は、金属製の給電側筐体13と接合され、給電側筐体13を介して接地されている。この場合、給電側接地リング12は、全体として環形状を呈していればよく、部分的に分断されていてもよい。
【0022】
給電側接地リング12と給電側筐体13は、同種材料で形成されてもよいし、異種材料で形成されてもよい。
給電側接地リング12と給電側筐体13とを同種材料で形成する場合、すなわち、給電側筐体13の一部が給電側接地リング12となる場合、部品点数が少なくなるので、給電モジュール10の製造工程が簡素化され、製造コストを低減することができる。
一方、給電側接地リング12と給電側筐体13とを異種材料で形成する場合、それぞれの機能を実現するために適した材料を選定することができる。例えば、給電側筐体13にアルミニウム、給電側接地リング12にハステロイ(登録商標)などのニッケル合金を適用することで、給電側筐体13の軽量化を図りつつ、床面として露出する給電側接地リング12の耐食性を向上することができる。
【0023】
給電側接地リング12の表面は、後述する受電側接地リング22のように凹凸構造を有していてもよいが、床面の掃除のしやすさや、つまずき防止の観点から、平坦であることが好ましい。
【0024】
給電側磁気シールド14は、給電コイル11の外面(受電コイル21に対向する面を除く)を覆うように配置される。給電側磁気シールド14は、例えば、フェライト等の磁性材料で形成される。給電側磁気シールド14を設けることにより、磁気抵抗の低い通路が形成されるので、結果として給電コイル11の性能(Q値)が高まり、漏れ磁束が少なくなる。したがって、効率よく磁力線を集束して電力伝送効率を向上できるとともに、ノイズの発生を抑制することができる。また、金属製の給電側筐体13の発熱を抑制することができる。
【0025】
給電側保護体15は、給電側筐体13の凹部13aに給電コイル11及び給電側磁気シールド14を固定する。給電側保護体15は、絶縁性媒体151(例えば、エポキシ樹脂)及び表面保護層152を含む。
【0026】
給電側筐体13の凹部13aに給電コイル11及び給電側磁気シールド14を配置した状態で、絶縁性媒体151(例えば、エポキシ樹脂)を充填し、硬化させることで、給電コイル11及び給電側磁気シールド14は、凹部13aに固定される。絶縁性媒体151は、表面保護層152の厚み分(例えば、2mm)だけ、給電側接地リング12の端面よりも凹んで形成される。
【0027】
表面保護層152は、絶縁性媒体151の開放面に、給電側接地リング12と面一となるように形成される。表面保護層152は、絶縁性媒体151の表面を保護するとともに、給電モジュール10が設置される床の床面を形成する。表面保護層152は、例えば、手術室等に使用されるクッション性を有する樹脂性床材(例えば、塩化ビニル樹脂製床材)で形成される。表面保護層152は、給電モジュール10が設置される床に使用されている床材と同一材料で形成されることが好ましい。
【0028】
給電モジュール10は、手術室等の床Fに、給電モジュール10の給電側接地リング12及び表面保護層152と床Fとが面一となるように設置される。給電側接地リング12は、表面に露出しているが、床面の平坦性は確保されているので、医用電気機器45等の重量物の移動を妨げない。
【0029】
図3Aは、受電モジュール20の断面図であり、図3Bは、受電モジュール20を受電側筐体23の開口端側から見た図である。図3A図3Bに示すように、受電モジュール20は、構成自体は給電モジュール10とほぼ同様である。受電モジュール20の説明のうち、給電モジュール10と同一又は対応する構成要素については、簡単に説明する。
【0030】
受電モジュール20は、受電コイル21、受電側接地リング22、受電側筐体23及び受電側磁気シールド24等を備える。
【0031】
受電コイル21は、電線を同一平面上に所定の巻数で巻線した円環状の渦巻き型コイルである。受電コイル21の形状は、典型的には、給電コイル11の形状と同じである。受電コイル21の両端部には、例えば、半田付けにより受電ケーブル41の電力線の端子金具(図示略)が接続される。
【0032】
受電側筐体23は、凹部23aを有する有底筒体であり、例えば、円筒形状を有する。受電側筐体23は、凹部23aに、受電コイル21及び受電側磁気シールド24を収容する。
【0033】
受電側筐体23は、例えば、アルミニウム等の金属材料で形成される。受電側筐体23は、例えば、受電ケーブル41の接地線の端子金具(図示略)に接続される。この場合、受電側筐体23は、外部への電磁波の放射及び外部からの電磁波の入射を防止する電磁シールドとして機能する。
なお、受電モジュール20の電磁シールドを別途設ける場合、受電側筐体23は、繊維強化プラスチック(FRP)などの樹脂材料で形成されてもよい。この場合、誘導加熱による受電側筐体23の発熱を防止することができ、さらには、FRPのフィラーとして熱伝導性のよいものを採用して、受電側筐体23の放熱性を向上させることもできる。
【0034】
受電側接地リング22は、導電性の材料で形成され、受電側筐体23の凹部23aの開口に対応する環形状(例えば、円環形状)を有する。受電側接地リング22は、表面が露出する状態で、凹部23aの開口に沿って配置される。受電側接地リング22は、給電モジュール10の上に受電モジュール20を載置したとき、給電側接地リング12と接触し、接地される。本実施の形態では、受電側接地リング22は、金属製の受電側筐体23と接合されており、受電側筐体23を介して受電ケーブル41の接地線が接地される。この場合、受電側接地リング22は、全体として環形状を呈していればよく、部分的に分断されていてもよい。
【0035】
受電側接地リング22と受電側筐体23は、同種材料で形成されてもよいし、異種材料で形成されてもよい。
受電側接地リング22と受電側筐体23とを同種材料で形成する場合、すなわち、受電側筐体23の一部が受電側接地リング22となる場合、部品点数が少なくなるので、受電モジュール20の製造工程が簡素化され、製造コストを低減することができる。
一方、受電側接地リング22と受電側筐体23とを異種材料で形成する場合、それぞれの機能を実現するために適した材料を選定することができる。例えば、受電側筐体23にアルミニウム、受電側接地リング22に導電性とばね性の高い銅合金(例えば、ベリリウム銅)を適用することで、受電側筐体23の軽量化を図りつつ、接地抵抗を効率よく低減することができる。また、受電側接地リング22の表面には、耐食性を高めるためにNi等からなるめっき層を形成してもよい。
【0036】
受電側接地リング22は、表面に凹凸構造を有していることが好ましい。給電モジュール10は床面に設置され、給電側接地リング12は外気に曝されるので、給電側接地リング12の表面に経時的に酸化皮膜が形成される虞がある。受電側接地リング22の表面に凹凸構造が形成されている場合、給電側接地リング12と受電側接地リング22が接触するときに、給電側接地リング12に形成された酸化皮膜が受電側接地リング22の凹凸構造によって破壊されるので、良好な電気的導通を確保する上で有用である。なお、受電側接地リング22における接触面積は、受電側接地リング22を含む接地経路における接地抵抗が10Ω以下となるように確保される。
【0037】
また、受電側接地リング22は、表面に、バネ構造を有することが好ましい。この場合、給電モジュール10の上に受電モジュール20を載置するときに、受電モジュール20の自重によってバネ構造が加圧変形する。これにより、給電側接地リング12と受電側接地リング22とが確実に接触し、接地不良が防止されるので、電気的導通を確保する上で有用である。バネ構造には、例えば、受電側接地リング22の周方向において等間隔で配置される板バネ(いわゆるシールドフィンガー(商品名))を適用することができる。
【0038】
受電側磁気シールド24は、受電コイル21の外面(給電コイル11に対向する面を除く)を覆うように配置される。受電側磁気シールド24は、例えば、フェライト等の磁性材料で形成される。受電側磁気シールド24を設けることにより、磁気抵抗の低い通路が形成されるので、結果として受電コイル21の性能(Q値)が高まり、漏れ磁束が少なくなる。したがって、効率よく磁力線を集束して電力伝送効率を向上できるとともに、ノイズの発生を抑制することができる。また、金属製の受電側筐体23の発熱を抑制することができる。
【0039】
受電側保護体25は、受電側筐体23の凹部23aに受電コイル21及び受電側磁気シールド24を固定する。受電側保護体25は、例えば、エポキシ樹脂等の絶縁性材料で形成される。
【0040】
受電側筐体23の凹部23aに受電コイル21及び受電側磁気シールド24を配置した状態で、絶縁性材料を充填し、硬化させて受電側保護体25を形成することで、受電コイル21及び受電側磁気シールド24は、凹部23aに固定される。受電側保護体25は、受電側接地リング22の端面よりも凹んで形成される。
【0041】
図4は、非接触給電システム1の使用状態を示す図である。
図4に示すように、給電モジュール10から受電モジュール20に給電を行う場合、給電コイル11と受電コイル21が対向するように、給電モジュール10の上に受電モジュール20が載置される。このとき、床Fに露出している環状の給電側接地リング12を目印として位置決めすることができる。
給電モジュール10の上に受電モジュール20が載置されると、給電側接地リング12と受電側接地リング22が接触し、給電側接地リング12及び給電側筐体13を介して、受電側接地リング22は接地される。受電側接地リング22は、受電側筐体23を介して受電ケーブル41の接地線に接続されており、受電ケーブル41の接地線は、受電回路42を介して3ピンプラグ付き電源ケーブル43の接地線に接続されているので、医用電気機器45は保護接地される。
【0042】
このように、実施の形態に係る給電モジュール10(非接触給電モジュール)は、電力の伝送に用いられる給電コイル11と、給電コイル11を収容する凹部13aを有する給電側筐体13と、給電ケーブル31の接地線に接続され、表面が露出する状態で凹部13aの開口に沿って配置される給電側接地リング12(接地部)と、を備える。
また、受電モジュール20(非接触給電モジュール)は、電力の伝送に用いられる受電コイル21と、受電コイル21を収容する凹部23aを有する受電側筐体23と、受電ケーブル41の接地線に接続され、表面が露出する状態で凹部23aの開口に沿って配置される受電側接地リング22(接地部)と、を備える。
また、非接触給電システム1は、給電モジュール10と、受電モジュール20と、を備え、給電モジュール10の給電側接地リング12と受電モジュール20の受電側接地リング22とが接触した状態で、電力の伝送が行われる。
【0043】
給電モジュール10、受電モジュール20及び非接触給電システム1によれば、給電モジュール10の上に受電モジュール20を載置したときに、給電側接地リング12と受電側接地リング22が接触することにより、受電ケーブル41等を介して受電モジュール20に接続されている3ピンプラグ付き電源ケーブル43の接地線が接地される。また、給電側接地リング12及び受電側接地リング22は、それぞれ凹部13a、23aの開口に沿って配置されている、すなわち環状に形成されているので、受電モジュール20を載置するときに載置方向を意識せずに容易に位置決めすることができ、患者の手術部位や術者の対応しやすい位置や角度に応じて、医用電気機器45の配置を柔軟に変更することができる。したがって、医用電気機器45等のクラスI機器の保護接地を容易に実現することができるとともに、非接触給電システム1の利便性が格段に向上する。また、給電側接地リング12及び受電側接地リング22を配置するために筐体を大きくする必要はないので、給電モジュール10及び受電モジュール20の小型化を図ることができる。
【0044】
また、給電モジュール10において、給電側筐体13は、導電性を有し、給電側接地リング12は、凹部13aの開口端に配置され、物理的かつ電気的に接続されている。受電モジュール20において、受電側筐体23は、導電性を有し、受電側接地リング22は、凹部23aの開口端に配置され、物理的かつ電気的に接続されている。
これにより、給電側筐体13及び受電側筐体23を利用して容易に保護接地を実現することができるとともに、給電モジュール10及び受電モジュール20における電磁シールドを図ることができる。
【0045】
また、給電モジュール10において、給電側筐体13及び給電側接地リング12は、異種材料で形成されている。受電モジュール20において、受電側筐体23及び受電側接地リング22は、異種材料で形成されている。これにより、それぞれの機能を実現するために適した材料を選定することができるので、設計の自由度が向上する。
【0046】
また、給電モジュール10は、凹部13aの開口に配置される保護体15をさらに備え、給電側接地リング12と表面保護層152(保護体15の表面)は、面一である。これにより、給電側接地リング12及び表面保護層152と床面とが面一となるように給電モジュール10を設置することで、床面の平坦性が確保されるので、医用電気機器45等の重量物をスムーズに移動させることができるとともに、医療従事者のつまずき防止、床面清掃の作業性の向上を図ることができる。
【0047】
また、受電モジュール20において、受電側接地リング22は、表面に凹凸構造を有する。好ましくは、受電側接地リング22は、表面に、加圧変形可能なバネ構造を有する。これにより、良好な電気的導通を確保しやすくなる。
【0048】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0049】
例えば、非接触給電システム1は、受電モジュール20のXYZ方向の位置決め、具体的には、受電モジュール20を備える可動体(例えば、医用電気器用のワゴン)の平面上での移動及び受電モジュール20の昇降を、自動で行う位置決め装置を備えてもよい。
【0050】
また例えば、受電モジュール20の受電側接地リング22の表面には、ワイヤーブラシ等のブラシ部を設けてもよい。これにより、給電モジュール10の上に受電モジュール20を載置する際に、給電側接地リング12の表面の汚れや酸化被膜が除去されるので、接地不良を効率よく防止することができる。
【0051】
また、給電側保護体15の絶縁性媒体151及び受電側保護体25の絶縁性材料は、給電コイル11及び受電コイル21を固定できればよく、その構成材料は特に限定されない。例えば、給電側保護体15の絶縁性媒体151及び受電側保護体25の絶縁性材料を、エポキシ樹脂にフィラーを添加した樹脂材料で形成してもよい。この場合、エポキシ樹脂による防水効果が得られる上、給電モジュール10及び受電モジュール20の強度を高めることができる。さらに、放熱性の高いフィラーを採用した場合、給電コイル11及び受電コイル21の放熱性を高めることができる。
【0052】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0053】
2021年7月29日出願の特願2021-124410の日本出願に含まれる明細書、図面および要約書の開示内容は、すべて本願に援用される。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、非接触で給電を行うための非接触給電モジュール及び非接触給電システムにかかり、特に、保護接地が必要な電気機器への給電に有用である。
【符号の説明】
【0055】
1 非接触給電システム
10 給電モジュール
11 給電コイル
12 給電側接地リング
13 給電側筐体
14 給電側磁気シールド
15 給電側保護体
151 絶縁性媒体
152 表面保護層
20 受電モジュール
21 受電コイル
22 受電側接地リング
23 受電側筐体
24 受電側磁気シールド
25 受電側保護体
31 給電ケーブル
43 3ピンプラグ付き電源ケーブル
図1
図2
図3
図4