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特許7592881アモルファス基板上の窒化ガリウム系半導体デバイス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】アモルファス基板上の窒化ガリウム系半導体デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/36 20100101AFI20241125BHJP
   H01L 33/16 20100101ALI20241125BHJP
   H01L 33/32 20100101ALI20241125BHJP
   H01L 21/28 20060101ALI20241125BHJP
   H01L 29/41 20060101ALI20241125BHJP
【FI】
H01L33/36
H01L33/16
H01L33/32
H01L21/28 301B
H01L21/28 301R
H01L29/44 P
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023545181
(86)(22)【出願日】2022-08-04
(86)【国際出願番号】 JP2022029875
(87)【国際公開番号】W WO2023032583
(87)【国際公開日】2023-03-09
【審査請求日】2023-10-23
(31)【優先権主張番号】P 2021144296
(32)【優先日】2021-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】金城 拓海
(72)【発明者】
【氏名】西村 眞澄
(72)【発明者】
【氏名】青木 逸
【審査官】高椋 健司
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-036427(JP,A)
【文献】特開昭57-010280(JP,A)
【文献】特開2006-310527(JP,A)
【文献】特開平08-139361(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0125821(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/205
H01L 21/31
H01L 21/336
H01L 21/365
H01L 21/469
H01L 21/86
H01L 27/20
H01L 29/786
H01L 33/00 -33/64
H01L 41/00 -41/47
H03H 3/007- 3/06
H03H 9/00 - 9/135
H03H 9/15 - 9/24
H03H 9/30 - 9/40
H03H 9/46 - 9/62
H03H 9/66
H03H 9/70
H03H 9/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アモルファス基板と、
前記アモルファス基板上の導電性配向層と、
前記導電性配向層上の窒化ガリウム系半導体層と、
前記導電性配向層に接する補助電極層と、を含み、
前記補助電極層が、前記導電性配向層の外周を囲むように設けられ、
前記補助電極層が、前記導電性配向層の側面及び外周部の上面と接し、前記窒化ガリウム系半導体層の下面外周部が前記補助電極層と接し、前記下面外周部の内側で前記導電性配向層と接する、ことを特徴とする窒化ガリウム系半導体デバイス。
【請求項2】
アモルファス基板と、
前記アモルファス基板上の導電性配向層と、
前記導電性配向層上の窒化ガリウム系半導体層と、
前記導電性配向層に接する補助電極層と、を含み、
前記補助電極層が、前記導電性配向層の外周を囲むように設けられ、
前記補助電極層が、前記導電性配向層の下面と接する、ことを特徴とする窒化ガリウム系半導体デバイス。
【請求項3】
アモルファス基板と、
前記アモルファス基板上の導電性配向層と、
前記導電性配向層上の窒化ガリウム系半導体層と、
前記導電性配向層に接する補助電極層と、を含み、
前記補助電極層が、前記導電性配向層の外周を囲むように設けられ、
前記補助電極層が、前記導電性配向層の側面、及び前記窒化ガリウム系半導体層の側面の一部と接する、ことを特徴とする窒化ガリウム系半導体デバイス。
【請求項4】
アモルファス基板と、
前記アモルファス基板上の導電性配向層と、
前記導電性配向層上の窒化ガリウム系半導体層と、
前記導電性配向層に接する補助電極層と、を含み、
前記補助電極層が、前記導電性配向層の外周を囲むように設けられ、
前記補助電極層が、前記導電性配向層の下面の全面と接する、ことを特徴とする窒化ガリウム系半導体デバイス。
【請求項5】
アモルファス基板と、
前記アモルファス基板上の導電性配向層と、
前記導電性配向層上の窒化ガリウム系半導体層と、
前記導電性配向層に接する補助電極層と、を含み、
前記補助電極層が、前記導電性配向層の外周を囲むように設けられ、
前記補助電極層が、前記導電性配向層の上面又は下面に設けられ、格子状、ストライプ状、又は網目状のパターンを有する、ことを特徴とする窒化ガリウム系半導体デバイス。
【請求項6】
アモルファス基板と、
前記アモルファス基板上の導電性配向層と、
前記導電性配向層上の窒化ガリウム系半導体層と、
前記導電性配向層に接する補助電極層と、を含み、
前記導電性配向層及び前記窒化ガリウム系半導体層が積層された複数の積層体を含み、
前記複数の積層体が前記アモルファス基板上に離隔して配置され、
前記補助電極層が、前記複数の積層体のうち隣接するもの同士を接続する、ことを特徴とする窒化ガリウム系半導体デバイス。
【請求項7】
前記導電性配向層が前記アモルファス基板上に連続して設けられ、
前記窒化ガリウム系半導体層が前記導電性配向層上で離隔するように複数設けられ、
前記補助電極層が前記導電性配向層と接し、前記窒化ガリウム系半導体層の複数が離隔する領域間に設けられている、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の窒化ガリウム系半導体デバイス。
【請求項8】
前記アモルファス基板が、ガラス基板である、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の窒化ガリウム系半導体デバイス。
【請求項9】
前記導電性配向層が、c軸配向した金属膜又は金属酸化物膜である、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の窒化ガリウム系半導体デバイス。
【請求項10】
前記導電性配向層が、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ストロンチウム(Sr)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、及び金(Au)から選ばれた少なくとも1種の元素を含む金属膜、又は、酸化亜鉛(ZnO)及び二酸化チタン(TiO)のいずれか一種を含む金属酸化物膜である、請求項に記載の窒化ガリウム系半導体デバイス。
【請求項11】
前記窒化ガリウム系半導体層の上に上部電極層を有する、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の窒化ガリウム系半導体デバイス。
【請求項12】
前記窒化ガリウム系半導体層が、導電型の異なる複数の窒化ガリウム層を含む、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の窒化ガリウム系半導体デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、アモルファス基板上の結晶性化合物半導体層を含む半導体デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
結晶性サファイア基板上に有機金属化合物気相成長法(MOCVD法)により窒化ガリウム系化合物半導体を気相成長させて形成された窒化ガリウム系化合物半導体発光ダイオードが知られている(特許文献1参照)。結晶正サファイア基板上の窒化ガリウム系化合物半導体発光ダイオードは青色発光を実現し、高い変換効率と長寿命を有し、広く実用化されている。しかし、結晶性サファイア基板は高価であり大面積化も容易でないことから、アモルファス基板上に結晶性を有する窒化ガリウム系化合物半導体を作製する研究が進められている(特許文献2、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平3-252175号公報
【文献】国際公開第2017/155032号
【非特許文献】
【0004】
【文献】Jun Hee Choi, Andrei Zoulkarneev, Sun Il Kim, Chan Wook Baik, Min Ho Yang, Sung Soo Park, Hwansoo、“Nearly single-crystalline GaN light-emitting diodes on amorphous glass substrates”、Nature Photonics、 volume 5、p. 763-769 (2011)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
窒化ガリウム層を用いて発光デバイスを作製する場合、金属層の上に窒化ガリウム層を設け、当該金属層を電極として用いることができれば便利である。しかし、窒化ガリウム層の下地側に配置する金属層は、材質、膜厚に制約があるため、そのまま電極として用いることが困難である。すなわち、発光デバイスがアモルファス基板に形成される場合、電源線との接続部近傍では明るく発光するものの、電源との接続部から離れるに従い輝度が低下して暗くなることが懸念される。
【0006】
このような問題に鑑み本発明の一実施形態は、アモルファス基板上の窒化ガリウム系半導体層を用いた半導体デバイスにおいて、発光強度の面内均一性を図ることを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係る窒化ガリウム系半導体デバイスは、アモルファス基板と、アモルファス基板上の導電性配向層と、導電性配向層上の窒化ガリウム系半導体層と、導電性配向層に接する補助電極層と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A】本発明の一実施形態に係る窒化ガリウム系半導体デバイスにおいて補助電極層が導電性配向層の上層側に設けられる構造を示す。
図1B】本発明の一実施形態に係る窒化ガリウム系半導体デバイスにおいて補助電極層が導電性配向層の下層側に設けられる構造を示す。
図2A】本発明の一実施形態に係る窒化ガリウム系デバイスの平面図を示す。
図2B】本発明の一実施形態に係る窒化ガリウム系デバイスの断面図を示す。
図3A】本発明の一実施形態に係る窒化ガリウム系デバイスの平面図を示す。
図3B】本発明の一実施形態に係る窒化ガリウム系デバイスの断面図を示す。
図4A】本発明の一実施形態に係る窒化ガリウム系デバイスの平面図を示す。
図4B】本発明の一実施形態に係る窒化ガリウム系デバイスの断面図を示す。
図5A】本発明の一実施形態に係る窒化ガリウム系デバイスの平面図を示す。
図5B】本発明の一実施形態に係る窒化ガリウム系デバイスの断面図を示す。
図6A】本発明の一実施形態に係る窒化ガリウム系デバイスの平面図を示す。
図6B】本発明の一実施形態に係る窒化ガリウム系デバイスの断面図を示す。
図7A】本発明の一実施形態に係る窒化ガリウム系デバイスの平面図を示す。
図7B】本発明の一実施形態に係る窒化ガリウム系デバイスの断面図を示す。
図8A】本発明の一実施形態に係る窒化ガリウム系デバイスの平面図を示す。
図8B】本発明の一実施形態に係る窒化ガリウム系デバイスの断面図を示す。
図9A】本発明の一実施形態に係る窒化ガリウム系デバイスの平面図を示す。
図9B】本発明の一実施形態に係る窒化ガリウム系デバイスの断面図を示す。
図10A】本発明の一実施形態に係る窒化ガリウム系デバイスの平面図を示す。
図10B】本発明の一実施形態に係る窒化ガリウム系デバイスの断面図を示す。
図11A】本発明の一実施形態に係る窒化ガリウム系デバイスの平面図を示す。
図11B】本発明の一実施形態に係る窒化ガリウム系デバイスの断面図を示す。
図12A】本発明の一実施形態に係る窒化ガリウム系デバイスの平面図を示す。
図12B】本発明の一実施形態に係る窒化ガリウム系デバイスの断面図を示す。
図13】本発明の一実施形態に係る窒化ガリウム系デバイスの構造を示す。
図14】本発明の一実施形態に係る発光装置の構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を、図面等を参照しながら説明する。但し、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に例示する実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号(又は数字の後にa、bなどを付した符号)を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。さらに各要素に対する「第1」、「第2」と付記された文字は、各要素を区別するために用いられる便宜的な標識であり、特段の説明がない限りそれ以上の意味を有しない。
【0010】
本明細書において、ある部材又は領域が他の部材又は領域の「上に(又は下に)」あるとする場合、特段の限定がない限りこれは他の部材又は領域の直上(又は直下)にある場合のみでなく他の部材又は領域の上方(又は下方)にある場合を含み、すなわち、他の部材又は領域の上方(又は下方)において間に別の構成要素が含まれている場合も含む。
【0011】
[第1実施形態]
図1A及び図1Bは、本発明の一実施形態に係る窒化ガリウム系半導体デバイス100の断面構造を示す。図1A及び図1Bに示すように、窒化ガリウム系半導体デバイス100は、アモルファス基板102の上に、導電性配向層104、窒化ガリウム系半導体層106、上部電極層108が配置された構造を有する。窒化ガリウム系半導体デバイス100は、さらに、導電性配向層104に接触する補助電極層110を含む。
【0012】
窒化ガリウム系半導体デバイス100において、導電性配向層104及び上部電極層108は電極として用いられ、窒化ガリウム系半導体層106は所定の機能を発現させるための機能層として用いられる。所定の機能はデバイスの構造により変わるものであるが、例えば、発光、増幅、スイッチングなどの機能が含まれ得る。
【0013】
なお、本明細書において、窒化ガリウム系半導体デバイスとは、アモルファス基板上に形成された窒化ガリウム層を有し、所定の機能を発現するように構成された半導体デバイスを指すものとする。窒化ガリウム系半導体デバイスには、発光ダイオードのような発光デバイス、トランジスタのような能動デバイスが含まれ得る。また、窒化ガリウム系半導体層は、少なくとも1層の窒化ガリウム層を含む半導体層を指し、導電型の異なる複数の窒化ガリウム層が積層された構造を含む場合もある。
【0014】
次に、図1A及び図1Bに示す、窒化ガリウム系半導体デバイス100を構成する各部の詳細について説明する。
【0015】
アモルファス基板102としてガラス基板が用いられる。ガラス基板は、アルカリ成分の含有率が低く、熱膨張係数が低く、歪み点が高く、表面の平坦性が高いことが好ましい。アルカリ成分は通常のガラスの中に多く含まれる成分であるが、本実施形態で用いるガラス基板としては、ナトリウムのようなアルカリ金属が0.1%以下であることが好ましい。また、ガラス基板は、膨張係数が50×10-7/℃より小さく、歪み点が600℃以上であることが好ましい。ガラス基板が、アルカリ成分を含まず、高い耐熱性を有することで、後述されるように、スパッタリング法で結晶性を有する窒化ガリウム系半導体層を成膜し、半導体デバイスを形成することができる。
【0016】
尤も、アモルファス基板102には、サファイア基板のような1000℃以上の耐熱性は要求されない。むしろ、アモルファス基板102として、液晶ディスプレイや有機エレクトロルミネセンス(有機EL)ディスプレイに使用されるようなガラス基板を用いることで、マザーガラスと呼ばれる大面積ガラス基板に窒化ガリウム系半導体デバイスを作製することができる。また、アモルファス基板102として、ポリイミド基板、アクリル基板、シロキサン基板、フッ素樹脂基板などの樹脂基板が用いられてもよい。
【0017】
図1A及び図1Bには図示されないが、アモルファス基板102の表面に絶縁層が設けられてもよい。絶縁層として、例えば、窒化シリコン膜、酸化シリコン膜、酸化アルミニウム膜などを用いることができる。また、絶縁層は、複数種の絶縁膜が積層されていてもよく、例えば、窒化シリコン膜と酸化シリコン膜とが積層された構造を有していてもよい。
【0018】
導電性配向層104はアモルファス基板102の上に設けられる。導電性配向層104は、結晶性を有する導電膜である。導電性配向層104の結晶は配向性を有し、その結晶は、例えばc軸に配向していることが好ましい。導電性配向層104は回転対称性を有する結晶であることが好ましく、例えば、その結晶表面が6回回転対称を有することが好ましい。例えば、導電性配向層104は、六方最密構造、面心立方構造、又はこれらに準ずる構造を有することが好ましい。ここで、六方最密構造又は面心立方構造に準ずる構造とは、a軸およびb軸に対してc軸が90度とならない結晶構造を含む。六方最密構造又はこれに準ずる構造を有する導電性材料を用いた導電性配向層104は、アモルファス基板102に対して(0001)方向、すなわち、c軸方向に配向している(以下、六方最密構造の(0001)配向という)ことが好ましい。また、面心立方構造またはこれに準ずる構造を有する導電性配向層104は、アモルファス基板102に対して(111)方向に配向している(以下、面心立方構造の(111)配向という)ことが好ましい。
【0019】
導電性配向層104は、アモルファス基板102と窒化ガリウム系半導体層106との間に設けられる。窒化ガリウム系半導体層106は結晶性を有することが好ましく、導電性配向層104は緩衝層としての機能を有する。導電性配向層104が上記のような結晶性を有することにより、この上に成長される窒化ガリウム系半導体層106の結晶化を図り、また結晶化を促進することができる。すなわち、導電性配向層104が、六方最密構造又は面心立方構造のような6回回転対称を有する結晶性表面を有することで、窒化ガリウム系半導体層106のc軸が膜厚方向に成長するように制御することができる。
【0020】
さらに、窒化ガリウム系半導体層106の結晶性は、導電性配向層104の表面状態の影響を受ける。そのため、導電性配向層104は、平坦な表面を有することが好ましい。例えば、導電性配向層104は、表面の算術平均粗さ(Ra)が2.3nmより小さいことが好ましい。導電性配向層104が平坦な表面を有することにより、窒化ガリウム系半導体層106の結晶性を高めることができる。
【0021】
導電性配向層104は、平坦な表面を得るために、薄膜であることが好ましい。例えば、導電性配向層104の膜厚は、100nm以下、好ましくは50nm以下の膜厚を有することが好ましい。導電性配向層104の膜厚を50nm以下とすることで、結晶性を有しつつ、平坦な表面を形成することができる。
【0022】
導電性配向層104は、窒化ガリウム系半導体デバイスの電極として機能させるため、導電性を有することが好ましい。電極としての機能を実現するため、導電性配向層104は金属材料で形成されることが好ましい。例えば、導電性配向層104は、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)で形成されることが好ましく、その他の金属として、銀(Ag)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ストロンチウム(Sr)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、金(Au)などを用いることができる。また、導電性配向層104は、酸化亜鉛(ZnO)、二酸化チタン(TiO)などの導電性金属酸化物を用いることもできる。
【0023】
このような導電性配向層104は、成膜する金属材料で形成されたスパッタリングターゲットを用い、スパッタリング法で作製される。また、導電性配向層104は、真空蒸着法、電子ビーム蒸着法で作製されてもよい。
【0024】
窒化ガリウム系半導体層106は、少なくとも一層の窒化ガリウム(GaN)層を含む。窒化ガリウムは、ガリウム(Ga)と窒素(N)の化合物であり、半導体である。窒化ガリウム層は化学量論的組成を有していることが好ましいが、化学量論的組成からずれていてもよい。窒化ガリウム系半導体層106として用いられる窒化ガリウム層は、結晶性を有していることが好ましい。窒化ガリウム層の結晶性は、単結晶であることが好ましいが、多結晶、微結晶、又はナノ結晶であってもよい。窒化ガリウム層の結晶構造は、ウルツ鉱構造を有することが好ましい。窒化ガリウム系半導体層106として用いられる窒化ガリウム層は、c軸配向又は(111)配向を有していることが好ましい。
【0025】
窒化ガリウム系半導体層106として用いられる窒化ガリウム層の導電型は、実質的に真性であってもよいし、n型の導電性又はp型の導電性を有していてもよい。n型の導電性を有する窒化ガリウム層は、価電子制御を行うためのドーパントが含まれていなくてもよいし、n型ドーパントとしてシリコン(Si)又はゲルマニウム(Ge)から選ばれた一種の元素がドーピングされていてもよい。p型の導電性を有する窒化ガリウム層は、p型ドーパントとしてマグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、ベリリウム(Be)から選ばれた一種の元素がドーピングされていてもよい。n型の窒化ガリウム層は、ドーパントと添加する場合、1×1018/cm以上のキャリア濃度を有していることが好ましい。p型の窒化ガリウム層は、ドーパントを添加する場合、5×1016/cm以上のキャリア濃度を有していることが好ましい。また、実質的に真性(別言すれば、高抵抗である)窒化ガリウム層は、ドーパントとして亜鉛(Zn)が含まれていてもよい。
【0026】
窒化ガリウム系半導体層106として用いられる窒化ガリウム層には、インジウム(In)、アルミニウム(Al)、ヒ素(As)から選ばれた一種又は複数種の元素が含まれていてもよい。これらの元素によって、窒化ガリウム層のバンドギャップを調整することができる。
【0027】
窒化ガリウム系半導体層106として用いられる窒化ガリウム層は、導電性配向層104の上に設けられる。前述のように、導電性配向層104の表面(窒化ガリウム層と接する面)が、回転対称性、又はc軸配向した結晶面を含むことで、c軸配向又は(111)配向を有する窒化ガリウム層が得られる。窒化ガリウム層は、導電性配向層104と接する界面近傍にアモルファス構造が含まれてもよいが、バルクでは結晶性を有していることが好ましい。窒化ガリウム系半導体層106が結晶性を有することで、窒化ガリウム系半導体デバイス100の性能を高めることができる。例えば、窒化ガリウム系半導体デバイス100が発光デバイスである場合には発光強度を高めることができ、トランジスタのような能動デバイスの場合にはキャリア移動度を高めることができる。
【0028】
窒化ガリウム系半導体層106は、アモルファス基板102の歪み点以下の温度で成膜される。窒化ガリウム層は、一般にMOCVD法(有機金属化学気相成長法)で成膜されるが、この成膜法はプロセス温度が高いため、アモルファス基板102の耐熱性を考慮すると必ずしも適しているとはいえない。本実施形態では、窒化ガリウム系半導体層106をアモルファス基板102の歪み点以下の温度で成膜可能であるスパッタリング法で作製する。
【0029】
例えば、窒化ガリウム系半導体層106として用いられる窒化ガリウム層を、アモルファス基板102を100~600℃に加熱した状態でスパッタリング法により作製する。アモルファス基板102の被堆積表面には導電性配向層104が形成されているため、600℃以下の基板温度であっても、スパッタリング法により結晶性を有する(好ましくはc軸配向した)窒化ガリウム層を成長させることができる。
【0030】
窒化ガリウム系半導体層106として用いられる窒化ガリウム層は、窒化ガリウムの焼結体をスパッタリングターゲットとし、スパッタガスとしてアルゴン(Ar)又はアルゴン(Ar)と窒素(N)の混合ガスを用いてスパッタリングを行うことで作製される。スパッタリングは各種の方式を適用することができる。例えば、スパッタリング法として、2極スパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法、デュアルマグネトロンスパッタリング法、対向ターゲットスパッタリング法、イオンビームスパッタリング法、誘導結合プラズマ(ICP)スパッタリング法を適用することができる。
【0031】
窒化ガリウム系半導体層106の膜厚に限定はなく、デバイスの構造に応じて適宜設定される。窒化ガリウム系半導体層106は単層であってもよいし、導電型及び/又は組成が異なる複数の層が積層されていてもよい。
【0032】
上部電極層108は窒化ガリウム系半導体層106の上部に設けられる。上部電極層108は、窒化ガリウム系半導体デバイス100の電極としての機能を有する。上部電極層108は、窒化ガリウム系半導体層106とオーミック接触を形成するように設けられる。デバイスの構造によっては、上部電極層108は省略されてもよい。上部電極層108は、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タンタル(Ta)などの金属材料で形成される。また、上部電極層108は、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム酸化亜鉛(IZO)などの導電性を有し、透明電極として用いられる金属酸化物で形成されてもよい。
【0033】
補助電極層110が導電性配向層104に接するように設けられる。図1Aは、補助電極層110が導電性配向層104の上面(窒化ガリウム系半導体層106の側の面)及び側面と接するように設けられる構造を示す。図1Bは、補助電極層110が導電性配向層104の下面(アモルファス基板102の側の面)と接するように設けられる構造を示す。図1A及び図1Bに示すように、導電性配向層104の外周部が窒化ガリウム系半導体層106から突き出るように設け、その突き出た部分で補助電極層110が接触することで、接触面積を大きくすることができる。また、導電性配向層104の突出部で補助電極層110を接触させることで、補助電極層110により形成される段差部に窒化ガリウム系半導体層106が重ならないようにすることができ、結晶性に影響を与えないようにすることができる。
【0034】
導電性配向層104が50nm以下の膜厚で形成されるのに対し、補助電極層110は電気抵抗の低減のため50nm以上、好ましくは100nm~1000nmの膜厚で形成される。そのため、図1Bに示すように、補助電極層110を導電性配向層104の下面側と接触させるときは、端部がテーパー形状を有していることが好ましい。補助電極層110の端部が断面視でテーパー形状を有することで、導電性配向層104の段切れを防止することができる。
【0035】
図1A及び図1Bでは断面構造しか示されないが、補助電極層110は導電性配向層104の外周を囲むように設けられることが好ましい。補助電極層110が導電性配向層104に接するように設けられることで、電気的に接続された状態(導通状態)が形成される。
【0036】
導電性配向層104は窒化ガリウム系半導体デバイス100の電極として用いられる。導電性配向層104の膜厚が前述のように50nm以下の膜厚を有する場合、電極の高抵抗化が問題となる。例えば、導電性配向層104として用いられるチタン(Ti)の抵抗率は100nΩmであり、アルミニウム(Al)と比べて1桁大きい値を有する。したがって、導電性配向層104としてチタン(Ti)を用いた場合には、電極の抵抗損失によるデバイス特性への悪影響が懸念される。例えば、窒化ガリウム系半導体デバイス100が発光デバイスである場合、発光強度が面内で不均一になるという問題が生じ得る。すなわち、導電性配向層104が電源線と接続される場合、その接続部から離れるに従い発光強度が低下するという現象が生じ得る。
【0037】
このような問題に対し、図1A及び図1Bに示す窒化ガリウム系半導体デバイス100は、補助電極層110が設けられることにより、導電性配向層104の抵抗損失の問題を解消することができる。別言すれば、補助電極層110を導電性配向層104に電気的に接続された状態とし、導電性配向層104の表面抵抗抵抗率を低減するように設けることで、抵抗損失の問題を解消することができる。補助電極層110を設けることにより、窒化ガリウム系半導体デバイス100の面積を大きくした場合でも、導電性配向層104をそのまま電極として使用することができ、電極の高抵抗化の影響を抑制することができる。
【0038】
補助電極層110を形成する導電性材料としては、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、銀(Ag)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)などの金属材料が用いられる。補助電極層110は、低抵抗化のために導電性配向層104よりも厚膜化されていることが好ましい。また、補助電極層110は、耐熱性を高めるために、アルミニウム(Al)膜をチタン(Ti)などの高融点金属膜で挟んだ構造(例えば、Ti/Al/Ti)を有していてもよい。
【0039】
本実施形態に係る窒化ガリウム系半導体デバイス100において、補助電極層110は図1A及び図1Bに示す構造に限定されず、様々な構造で設けることができる。以下に、補助電極層110のいくつかの実施形態を例示する。
【0040】
[第2実施形態]
図2A及び図2Bは、第2実施形態に係る窒化ガリウム系半導体デバイス100の構造を示す。図2Aは本実施形態に係る窒化ガリウム系半導体デバイス100の平面図を示し、図2Bは、図2Aに示すA-B間に対応する断面図を示す。
【0041】
図2A及び図2Bに示す窒化ガリウム系半導体デバイス100は、補助電極層110が導電性配向層104の側面及び上面から接し、かつ、導電性配向層104の上で窒化ガリウム系半導体層106と重なる構造を有する。補助電極層110は、導電性配向層104の外周部を囲むように設けられる。補助電極層110は、配線112と接続されていてもよい。別言すれば、補助電極層110は、配線112を形成する導電層と同じ導電層で形成されてもよい。補助電極層110と配線112とを同じ導電層で形成することで、コンタクトホールのような接続部が不要となり、構造を簡略化することができる。
【0042】
図2A及び図2Bに示す補助電極層110の構造によれば、補助電極層110が設けられることで、導電性配向層104が高抵抗であることによる窒化ガリウム系半導体デバイス100の特性劣化を抑制することができる。例えば、窒化ガリウム系半導体デバイス100が発光デバイスである場合には発光領域の輝度ムラを解消することができ、トランジスタのような能動デバイスの場合には消費電力の増加を抑制することができる。導電性配向層104に突出部を設ける必要がないので、窒化ガリウム系半導体デバイス100のサイズを縮小することができる。それにより、デバイスの集積化を図る際に集積度を高めることができる。
【0043】
窒化ガリウム系半導体層106の結晶性は導電性配向層104の影響を受ける。補助電極層110は厚膜であり、導電性配向層104と結晶性が異なるため、窒化ガリウム系半導体層106への影響が懸念される。具体的には、図2A及び図2Bに示す窒化ガリウム系半導体層106の外周部114が、窒化ガリウム系半導体層106の外周部114より内側の領域の結晶性と異なる場合が考えられる。例えば、窒化ガリウム系半導体層106の外周部114は、補助電極層110の影響を受けて、内側の領域より結晶性が悪く、アモルファス状態である場合がある。この場合、外周部114の抵抗が高くなれば、上部電極層108と補助電極層110との間で、窒化ガリウム系半導体層106の端面を流れる漏れ電流を減少させることができる。
【0044】
補助電極層110が窒化ガリウム系半導体層106と重なる幅は、窒化ガリウム系半導体層106の全幅に対し僅かである。したがって、上述のように、外周部114に結晶性の異なる領域が形成されたとしても、窒化ガリウム系半導体デバイス100への影響は軽微である。むしろ、窒化ガリウム系半導体デバイス100に補助電極層110が設けられることにより、導電性配向層104の高抵抗化の影響を排除できるというメリットを得ることができる。本実施形態に係る窒化ガリウム系半導体デバイス100は、補助電極層110が窒化ガリウム系半導体層106と重なる領域を有すること以外は第1実施形態に示すものと同様であり、同様の作用効果を得ることができる。
【0045】
[第3実施形態]
図3A及び図3Bは、第3実施形態に係る窒化ガリウム系半導体デバイス100の構造を示す。図3Aは本実施形態に係る窒化ガリウム系半導体デバイス100の平面図を示し、図3Bは、図3Aに示すA-B間に対応する断面図を示す。
【0046】
図3A及び図3Bに示す窒化ガリウム系半導体デバイス100は、補助電極層110が導電性配向層104の下面と接する構造を有する。補助電極層110は、導電性配向層104の外周部を囲むように設けられる。補助電極層110は配線112と接続されていてもよく、補助電極層110は配線112を形成する導電層と同じ導電層で形成されてもよい。
【0047】
図3Bに示すように、補助電極層110が導電性配向層104の下面と接する構造により、窒化ガリウム系半導体層106は下面の全面が導電性配向層104と接する構造を有する。そのため、窒化ガリウム系半導体層106の結晶性は全面で均一なものとなる。窒化ガリウム系半導体層106は、導電性配向層104が補助電極層110と重なることで形成される段差部と重なる部分を含む。しかし、第2実施形態と同様に、段差部の面積が全体に占める割合は僅かであり、窒化ガリウム系半導体デバイス100への影響は軽微である。また、補助電極層110の端部がテーパー形状である場合、段差部もテーパー形状となるため、窒化ガリウム系半導体層106の結晶性への影響はほとんど無いものとなる。このように、図3A及び図3Bに示す構造は、第1実施形態に示す構造と比べて、窒化ガリウム系半導体層106が補助電極層の形成による影響を受けにくい構造といえる。
【0048】
本実施形態に係る窒化ガリウム系半導体デバイス100は、補助電極層110が導電性配向層104の下面と接すること以外は、第2実施形態に示すものと同様であり、同様の作用効果を得ることができる。
【0049】
[第4実施形態]
図4A及び図4Bは、第4実施形態に係る窒化ガリウム系半導体デバイス100の構造を示す。図4Aは本実施形態に係る窒化ガリウム系半導体デバイス100の平面図を示し、図4Bは、図4Aに示すA-B間に対応する断面図を示す。
【0050】
図4A及び図4Bに示す窒化ガリウム系半導体デバイス100は、補助電極層110が導電性配向層104の側面と接する構造を有する。補助電極層110は、導電性配向層104のみならず、窒化ガリウム系半導体層106の側面と接していてもよい。本実施形態においても、補助電極層110は、導電性配向層104、窒化ガリウム系半導体層106の外周側面を全周に亘って接するように設けられることが好ましい。
【0051】
図4Bには詳細が示されないが、窒化ガリウム系半導体層106は多層構造を有する場合がある。例えば、窒化ガリウム系半導体デバイス100が発光デバイスである場合、窒化ガリウム系半導体層106は、下層側から、n型窒化ガリウム半導体層、活性層(発光層)、p型窒化ガリウム半導体層が積層された構造を有する。このような場合、補助電極層110は、最下層であるn型窒化ガリウム半導体層の側面と接するように設けられることが好ましい。
【0052】
図4A及び図4Bに示す補助電極層110は、導電性配向層104の上に窒化ガリウム系半導体層106、上部電極層108を形成した後に形成される。具体的には、図4Bに示すような、導電性配向層104、窒化ガリウム系半導体層106、及び上部電極層108の積層体がアモルファス基板102上に形成された後、アモルファス基板102上にこの積層体の上面及び側面を覆うように導電膜を形成する。そして、導電膜を異方性エッチングによりエッチバックすることで、積層体の側面に導電層を残存させるようにすることで、補助電極層110を形成することができる。補助電極層110を形成するための導電膜は、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)などの金属材料で形成される。補助電極層110は、隣接する素子又は電源と接続するために、配線112と接続されてもよい。
【0053】
このように、補助電極層110を導電性配向層104の側面に接するように設けることで、窒化ガリウム系半導体層106の成膜に影響を与えないようにすることができる。別言すれば、導電性配向層104の上に窒化ガリウム系半導体層106を成膜し、さらに上部電極層108を形成した後に補助電極層110を形成することで、窒化ガリウム系半導体層106の結晶性に影響を与えないようにすることができる。これにより良好なデバイス特性を得ることができる。
【0054】
本実施形態に係る窒化ガリウム系半導体デバイス100は、補助電極層110が導電性配向層104の側面と接する構造を有すること以外は、第1実施形態に示すものと同様であり、同様の作用効果を得ることができる。
【0055】
[第5実施形態]
図5A及び図5Bは、第3実施形態に係る窒化ガリウム系半導体デバイス100の構造を示す。図5Aは本実施形態に係る窒化ガリウム系半導体デバイス100の平面図を示し、図5Bは、図5Aに示すA-B間に対応する断面図を示す。
【0056】
図5A及び図5Bに示す窒化ガリウム系半導体デバイス100は、補助電極層110が導電性配向層104の下面の全面と接する構造を有する。補助電極層110は配線112から連続する構造を有していてもよく、補助電極層110は配線112を形成する導電層と同じ導電層で形成されてもよい。図5A及び図5Bに示すように、補助電極層110は、導電性配向層104よりも面積が大きく端部が外側に配置されていてもよい。また、図示されないが、補助電極層110は、導電性配向層104と同じ大きさ又はそ導電性配向層104より面積が小さく端部が内側に内地されていてもよい。
【0057】
図5A及び図5Bに示すように、補助電極層110が導電性配向層104の下面の全面と接することにより、接触面積を大きくすることができ、より効果的に低抵抗化を図ることができる。すなわち、導電性配向層104のシート抵抗(表面抵抗)を実質的に小さくすることができる。
【0058】
図5A及び図5Bに示す構造は、窒化ガリウム系半導体層106が導電性配向層104の全面と接する構造を有する。そのため、窒化ガリウム系半導体層106の結晶性を均一化することができる。また、補助電極層110の面積を大きくすれば、導電性配向層104に段差が形成されないため、段差部の影響も排除することができる。このように、図5A及び図5Bに示す構造は、第2実施形態及び第3実施形態に示す構造と比べて、窒化ガリウム系半導体層106が補助電極層の形成による影響を受けにくい構造を有する。
【0059】
本実施形態に係る窒化ガリウム系半導体デバイス100は、補助電極層110が導電性配向層104の下面と接すること以外は、第1実施形態に示すものと同様であり、同様の作用効果を得ることができる。
【0060】
[第6実施形態]
図6A及び図6Bは、第6実施形態に係る窒化ガリウム系半導体デバイス100の構造を示す。図6Aは本実施形態に係る窒化ガリウム系半導体デバイス100の平面図を示し、図6Bは、図6Aに示すA-B間に対応する断面図を示す。
【0061】
図6A及び図6Bに示す窒化ガリウム系半導体デバイス100は、補助電極層110が格子状のパターンを有し、導電性配向層104の上面に設けられた構造を有する。補助電極層110の格子状のパターンは、導電性配向層104の全面に広がるように設けられる。格子状のパターンを有する補助電極層110は、端部において配線112と接続されていてもよい。補助電極層110は、導電性配向層104を形成する金属よりも低抵抗なアルミニウム(Al)、銀(Ag)などの金属材料で形成される。また、窒化ガリウム系半導体層106の結晶性への影響が最小化されるように、格子状バターンの線幅は細線化されている。
【0062】
図6A及び図6Bに示す補助電極層110の構造は、導電性配向層104シート抵抗(表面抵抗)を実質的に小さくすることができる。補助電極層110の格子状のパターンは、導電性配向層104の全面に広がるので、大面積化に有利である。例えば、窒化ガリウム系半導体デバイス100が発光デバイスである場合、発光領域を大面積化しても輝度ムラ(輝度傾斜)を抑制することができる。
【0063】
図7A及び図7Bに示す窒化ガリウム系半導体デバイス100は、格子状のパターンを有する補助電極層110が、導電性配向層104の下面と接するように設けられた構造を示す。ここで、図7Aは本実施形態に係る窒化ガリウム系半導体デバイス100の平面図を示し、図7Bは、図7Aに示すA-B間に対応する断面図を示す。格子状パターンを有する補助電極層110を、導電性配向層104の下面から接する構造とすることで、低抵抗化を図りつつ、窒化ガリウム系半導体層106の結晶性への影響を無くすことができる。別言すれば、格子状のパターンを有する補助電極層110は、アモルファス基板102と導電性配向層104との間に設けることで、窒化ガリウム系半導体層106の全面が導電性配向層104と接することができ、良好な結晶性を得ることができる。
【0064】
図示されないが、補助電極層110の格子状のパターンは、ストライプ状のパターン、網目状のパターンに置き換えられてもよい。本実施形態に示す補助電極層110の構成は、第1乃至第4実施形態に示す補助電極層と適宜組み合わせることができる。例えば、第1実施形態に示す導電性配向層104の外周部に配置された補助電極層110に、本実施形態で示す格子状のパターンが接続されるようにして、導電性配向層104の外周部及び面内に補助電極層110が設けられる構成としてもよい。
【0065】
本実施形態に係る窒化ガリウム系半導体デバイス100は、補助電極層110が導電性配向層104の下面と接すること以外は、第1実施形態に示すものと同様であり、同様の作用効果を得ることができる。
【0066】
[第7実施形態]
図8A及び図8Bは、第7実施形態に係る窒化ガリウム系半導体デバイス100の構造を示す。図8Aは本実施形態に係る窒化ガリウム系半導体デバイス100の平面図を示し、図8Bは、図8Aに示すA-B間に対応する断面図を示す。
【0067】
図8A及び図8Bは、導電性配向層104、窒化ガリウム系半導体層106、上部電極層108が積層された複数の積層体116がアモルファス基板102上に配置された窒化ガリウム系半導体デバイス100を示す。個々の積層体116は第2実施形態に示す構造を有する。複数の積層体116はアモルファス基板102上に離隔して配置され、複数の積層体116が離隔する領域に補助電極層110が設けられる。補助電極層110は、隣接する積層体116を接続するように設けられる。補助電極層110は、複数の積層体116が配置される領域の全体に広がるように配置される。このような配置によって、複数の積層体116を電気的に接続するだけでなく、低抵抗化を図ることができる。
【0068】
図9A及び図9Bは、複数の積層体116のそれぞれが、第3実施形態に示す構造と同じ構造を有する場合を示す。ここで、図9Aは窒化ガリウム系半導体デバイス100の平面図を示し、図9Bは、図9Aに示すA-B間に対応する断面図を示す。図9A及び図9Bに示すように、補助電極層110を導電性配向層104の下層側に配置する構成によっても、隣接する積層体116同士を接続することができる。
【0069】
図8A及び図8B、並びに図9A及び図9Bは、複数の積層体116の導電性配向層104の全てが同電位となるように接続される例を示すが、補助電極層110の構成は図示される例に限定されない。例えば、マトリクス状に配置される複数の積層体116が行方向又は列方向に接続されるように補助電極層110を設け、アモルファス基板102上で複数の積層体116が直並列に接続される構造が形成されてもよい。
【0070】
本実施形態に示す窒化ガリウム系半導体デバイス100は、例えば、比較的大面積の発光デバイスを実現する上で有利である。複数の積層体116は、個々の面積を大きくする必要がなく、導電性配向層104の抵抗による輝度ムラを防ぐことができ、補助電極層110により低抵抗化を図ることができる。それにより、発光時の輝度分布が均一化された発光デバイスを得ることができる。
【0071】
[第8実施形態]
図10A及び図10Bは、第8実施形態に係る窒化ガリウム系半導体デバイス100の構造を示す。図10Aは本実施形態に係る窒化ガリウム系半導体デバイス100の平面図を示し、図10Bは、図10Aに示すA-B間に対応する断面図を示す。
【0072】
図10A及び図10Bに示す窒化ガリウム系半導体デバイス100は、第7実施形態と同様に複数の積層体118が設けられた構成を有するが、導電性配向層104の構造が相違する。本実施形態においては、導電性配向層104が連続し、複数の積層体118に亘って共通に設けられた構成を有する。別言すれば、本実施形態に係る窒化ガリウム系半導体デバイス100は、アモルファス基板102上に導電性配向層104が設けられ、その上に、複数に分割された窒化ガリウム系半導体層と上部電極とが配置された構造を有する。
【0073】
補助電極層110は、複数に分割された窒化ガリウム系半導体層106が離隔する領域で、導電性配向層104の上面と接するように設けられる。別言すれば、図10Aに示すように、導電性配向層104の上に補助電極層110が格子状のパターンで設けられ、格子の開口部に窒化ガリウム系半導体層106及び上部電極層108のパターンが配置されている。このような構成によれば、補助電極層110が窒化ガリウム系半導体層106の結晶性に影響を与えないようにすることができる。また、補助電極層110を厚膜化することができ、導電性配向層104の補助電極として低抵抗化を図ることができる。
【0074】
図11A及び図11Bは、補助電極層110は導電性配向層104の下層側に設けられた構造を示す。ここで、図11Aは窒化ガリウム系半導体デバイス100の平面図を示し、図11Bは、図11Aに示すA-B間に対応する断面図を示す。図11A及び図11Bに示すように、補助電極層110を導電性配向層104の下層側に配置する構成によっても、低抵抗化を図ることができる。
【0075】
本実施形態に示す窒化ガリウム系半導体デバイス100は、第7実施形態と同様に、比較的大面積の発光デバイスを実現する上で有利である。個々の発光領域は面積を大きくする必要がなく、補助電極層110が設けられることで導電性配向層104の抵抗による輝度ムラを防ぐことができる。これにより、発光時の輝度分布が均一化された発光デバイスを得ることができる。
【0076】
[第9実施形態]
本実施形態は、窒化ガリウム系半導体層106の詳細な一例を示す。窒化ガリウム系半導体層106は、導電型の異なる複数の窒化ガリウム層を含むことができる。図12Aは、窒化ガリウム系半導体デバイス100が発光デバイスである場合の窒化ガリウム系半導体層106の構成を示す。窒化ガリウム系半導体層106は、導電性配向層104の上に、n型窒化ガリウム層120、発光層124、p型窒化ガリウム層130が積層された構造を有する。p型窒化ガリウム層130の上には上部電極層108が設けられる。上部電極層108は金(Au)、チタン(Ti)-金(Au)合金などの金属材料、又は酸化インジウムスズ(ITO)などの透明導電膜で形成される。発光層124の構造は様々であり、窒化ガリウム(GaN)層と窒化インジウムガリウム(InGaN)層が交互に積層された量子井戸層によって形成されていてもよい。
【0077】
図12Bは、発光デバイスに持ちられる窒化ガリウム系半導体層106の別の構成を示す。図12Bは、n型窒化ガリウム層120、n型窒化アルミニウムガリウム層122、窒化インジウムガリウム層126、p型窒化アルミニウムガリウム層128、p型窒化ガリウム層130が積層された構造を有する。これらの各層は、スパッタリング法で作製される。これらの各層は、組成が異なるため、それぞれの導電型に対応したドーパントを含むスパッタリングターゲットを用いて成膜される。n型のドーパントとしては、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)から選ばれた一種の元素を用いることができ、p型のドーパントとしては、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、ベリリウム(Be)から選ばれた一種の元素を用いることができる。これらの各層は真空中で連続して成膜されることが好ましいため、マルチチャンバ型のスパッタリング装置が用いられる。
【0078】
図13は、窒化ガリウム系半導体デバイス100がトランジスタである場合の窒化ガリウム系半導体層106の構成を示す。窒化ガリウム系半導体層106は、導電性配向層104の上に、n型窒化ガリウム層132、n型窒化ガリウム層134、p型窒化ガリウム層136、n型窒化ガリウム層138が積層された構造を有する。ソース電極140は、n型窒化ガリウム層138の上に設けられ、導電性配向層104がドレイン電極として用いられる。ゲート電極142はトレンチゲート構造を有し、ゲート絶縁層144を介してp型窒化ガリウム層130に埋め込まれるように設けられる。窒化ガリウム系半導体層106の各層はスパッタリング法で作製される。導電性配向層104に接して補助電極層110が用いられることにより、ドレイン電極の低抵抗化を図ることができ、パワートランジスタとして用いることができる。
【0079】
本実施形態に示す窒化ガリウム系半導体層106の構成は、第1乃至第8実施形態に示す構成に適用することができる。図12A及び図12B、並びに図13に示すように、窒化ガリウム系半導体層106は、様々な積層構造を有することができ、用途に応じたデバイスを構成することができる。
【0080】
[第10実施形態]
図14は、本発明の一実施形態に係る発光装置150の構成を示す概略図である。発光装置150は、アモルファス基板102上に画素部152及び端子部154が形成されている。画素部152はアモルファス基板102の中央部に形成され、端子部154はアモルファス基板102の端部に形成されている。画素部152は、マトリクス状に配置された複数の画素156を含む。複数の画素156の各々には第1実施形態乃至第6実施形態に示す構造を有する発光デバイスが設けられる。端子部154は、複数の端子158を含む。複数の端子158の各々には、電源供給線が接続され、画素156内の発光デバイスに電圧を印加する(電流を供給する)ことができる。なお、詳細は図示しないが、画素156にトランジスタを設け、トランジスタによって発光デバイスの発光を制御することもできる。
【0081】
本発明の実施形態として上述した第1乃至第10実施形態は、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。また、各実施形態を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除、もしくは設計変更を行ったもの、または、工程の追加、省略、もしくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0082】
上述した各実施形態によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、または、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0083】
100:窒化ガリウム系半導体デバイス、102:アモルファス基板、104:導電性配向層、106:窒化ガリウム系半導体層、108:上部電極層、110:補助電極層、112:配線、114:外周部、116:積層体、118:積層体、120:n型窒化ガリウム層、122:n型窒化アルミニウムガリウム層、124:発光層、126:窒化インジウムガリウム層、128:p型窒化アルミニウムガリウム層、130:p型窒化ガリウム層、132:n型窒化ガリウム層、134:n型窒化ガリウム層、136:p型窒化ガリウム層、138:n型窒化ガリウム層、140:ソース電極、142:ゲート電極、144:ゲート絶縁層、150:発光装置、152:画素部、154:端子部、156:画素、158:端子
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図13
図14