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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】超音波ビーム経路決定とターゲティング
(51)【国際特許分類】
   A61N 7/00 20060101AFI20241125BHJP
   A61B 8/14 20060101ALI20241125BHJP
【FI】
A61N7/00
A61B8/14
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2023545224
(86)(22)【出願日】2022-01-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-06
(86)【国際出願番号】 US2022013066
(87)【国際公開番号】W WO2022164701
(87)【国際公開日】2022-08-04
【審査請求日】2023-09-15
(31)【優先権主張番号】17/161,022
(32)【優先日】2021-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】319011672
【氏名又は名称】ジーイー・プレシジョン・ヘルスケア・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(72)【発明者】
【氏名】ショーディ,デイヴィッド・アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】アッシュ,ジェフリー・マイケル
(72)【発明者】
【氏名】リー,ウォーレン
(72)【発明者】
【氏名】ファン,イン
【審査官】近藤 裕之
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-204929(JP,A)
【文献】特表2011-519666(JP,A)
【文献】特開平09-066057(JP,A)
【文献】特表2013-509267(JP,A)
【文献】特開平08-164135(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 7/00
A61B 8/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波治療送達システムであって、
被検体のターゲット領域に超音波エネルギーを送達するように構成されたエネルギー印加装置を備え、該エネルギー印加装置は、撮像ビームおよび治療ビームを放射するように構成された1つまたは複数のトランスデューサとコントローラとを含み、
前記コントローラは、
前記1つまたは複数のトランスデューサの一部または全部を作動させ、撮像ビームを放射させることと、
前記撮像ビームに反応して生成された画像データを受信することと、
前記撮像ビームによって走査された前記画像データ中に前記ターゲット領域の全部または一部が存在するか否かを特定することと、
前記画像データ中に前記ターゲット領域の少なくとも一部が存在するとの特定に応答して、超音波エネルギーの治療用量の全部または一部を前記ターゲット領域に与えるために、前記治療ビームを前記ターゲット領域に適用することができるか否かを決定することと、
前記治療ビームを前記ターゲット領域に放射して前記治療用量を与えることが可能であると決定したことに応答して、前記1つまたは複数のトランスデューサの一部または全部を作動させて前記治療ビームを放射し、前記ターゲット領域に前記治療用量の全部または一部を与えることと、
を含むアクションを実行するように構成され、
前記ターゲット領域へ前記治療用量の全部または一部を与えることに応答して前記ターゲット領域からの神経伝達物質放出および/または前記ターゲット領域の神経伝達物質の活性化が達成され、超音波治療送達システム。
【請求項2】
超音波治療送達システムであって、
被検体のターゲット領域に超音波エネルギーを送達するように構成されたエネルギー印加装置を備え、該エネルギー印加装置は、撮像ビームおよび治療ビームを放射するように構成された1つまたは複数のトランスデューサとコントローラとを含み、
前記コントローラは、
前記1つまたは複数のトランスデューサの一部または全部を作動させ、撮像ビームを放射させることと、
前記撮像ビームに反応して生成された画像データを受信することと、
前記撮像ビームによって走査された前記画像データ中に前記ターゲット領域の全部または一部が存在するか否かを特定することと、
前記画像データ中に前記ターゲット領域の少なくとも一部が存在するとの特定に応答して、超音波エネルギーの治療用量の全部または一部を前記ターゲット領域に与えるために、前記治療ビームを前記ターゲット領域に適用することができるか否かを決定することと、
前記治療ビームを前記ターゲット領域に放射して前記治療用量を与えることが可能であると決定したことに応答して、前記1つまたは複数のトランスデューサの一部または全部を作動させて前記治療ビームを放射し、前記ターゲット領域に前記治療用量の全部または一部を与えることと、
を含むアクションを実行するように構成され、
前記撮像ビームと前記治療ビームが同じ周波数で放射される、超音波治療送達システム。
【請求項3】
前記エネルギー印加装置は、さらに、
被検体の皮膚表面に接触するように構成された音波透過性キャップと、
前記音波透過性キャップと前記1つ以上のトランスデューサの少なくとも一部との間のスタンドオフ領域と、
を備える、請求項1に記載の超音波治療送達システム。
【請求項4】
前記治療用量の全部または一部を与えるために、前記治療ビームを前記ターゲット領域に適用することができるか否かを決定することは、
治療ビーム経路内にある妨害解剖学的領域またはオフターゲット解剖学的領域の一方または両方を前記画像データ内で特定することと、
前記妨害解剖学的領域または前記オフターゲット解剖学的領域の存在に基づいて、前記治療ビーム経路によって治療用量基準またはオフターゲット安全性基準の一方または両方が満たされるかどうかを判定することと、
を含む、請求項1に記載の超音波治療送達システム。
【請求項5】
前記治療ビームを放射するために前記1つまたは複数のトランスデューサの一部または全部を作動させることが、妨害解剖学的領域またはオフターゲット解剖学的領域の前記画像データ内の識別に基づいて前記1つまたは複数のトランスデューサのサブセットを作動させることを含む、請求項1に記載の超音波治療送達システム。
【請求項6】
前記治療用量の全部または一部を与えるために、前記治療ビームを前記ターゲット領域に適用することができるか否かを決定することは、前記治療ビームによって調節される前記ターゲット領域の一部と有効性の閾値とを比較するを含む、請求項1に記載の超音波治療送達システム。
【請求項7】
センサデータを生成するように構成された1つまたは複数のセンサをさらに備え、前記1つまたは複数のセンサが、電極、圧力センサ、またはパッシブキャビテーション検出センサのうちの1つまたは両方を備える、請求項1に記載の超音波治療送達システム。
【請求項8】
前記治療用量の全部または一部を与えるために、前記治療ビームを前記ターゲット領域に適用することができるか否かを決定することは、前記画像データまたは前記センサデータを用いて、前記エネルギー印加装置の前記被検体への音響結合が十分であることを判断することを含み、
前記1つまたは複数のトランスデューサの一部または全部を作動させることは、前記エネルギー印加装置の前記被検体への前記音響結合が十分であることに基づいて、前記1つまたは複数のトランスデューサのサブセットを作動させることを含む、請求項7に記載の超音波治療送達システム。
【請求項9】
前記治療用量の全部または一部を与えるために、前記治療ビームを前記ターゲット領域に適用することができるか否かを決定することは、前記画像データまたは前記センサデータを使用して、被検体に対する前記エネルギー印加装置のリフトオフイベントの有無を判定することを含む、請求項7に記載の超音波治療送達システム。
【請求項10】
前記1つまたは複数のトランスデューサの一部または全部を作動させることは、前記被検体に対する前記エネルギー印加装置のリフトオフイベントの存在に基づいて、前記1つまたは複数のトランスデューサのサブセットを作動させることを含む、請求項9に記載の超音波治療送達システム。
【請求項11】
前記1つ以上のトランスデューサは、前記治療ビームを放射するように構成された1つまたは複数の治療トランスデューサと、ことを含む撮像ビームを放射するように構成された1つまたは複数の撮像トランスデューサとを含み、前記撮像ビームは、前記治療ビームが前記ターゲット領域まで通る経路の少なくとも一部を走査する、請求項1に記載の超音波治療送達システム。
【請求項12】
前記1つまたは複数の治療トランスデューサは、第1の周波数範囲内で前記治療ビームを放射し、前記1つまたは複数の撮像用トランスデューサは、前記第1の周波数範囲よりも高い第2の周波数範囲内で前記撮像ビームを放射する、請求項11に記載の超音波治療送達システム。
【請求項13】
前記1つまたは複数のトランスデューサは、固定環状アレイとして構成された治療トランスデューサアレイと、治療トランスデューサアレイの中央領域に配置された回転可能な撮像トランスデューサアレイとを含む、請求項1記載の超音波治療提供システム。
【請求項14】
前記コントローラは、さらに、
前記画像データに前記ターゲット領域の十分な部分が存在しないという判定、または前記治療用量を与えるために前記ターゲット領域に前記治療ビームを印加することができないという判定に応答して、前記エネルギー印加装置を再配置または再配向することのうちの1つ以上を実行するための通知またはメッセージを生成することと、
前記画像データ中に前記ターゲット領域が存在するという判定と、前記ターゲット領域に前記治療ビームを放射することができるという判定とを、両方の判定が肯定的な結果となるまで繰り返し、その後、前記治療ビームを放射するために前記1つまたは複数のトランスデューサの一部または全部を作動させること、
の動作を実行するように構成されている、請求項1に記載の超音波治療送達システム。
【請求項15】
前記コントローラは、さらに、
前記画像データに前記ターゲット領域の十分な部分が存在しないという判定、または前記治療用量を与えるために前記ターゲット領域に前記治療ビームを印加することができないという判定に応答して、前記1つまたは複数のトランスデューサの位置または向きの一方または両方を自動的に調整することと、
前記画像データ中に前記ターゲット領域が存在するという判定と、前記ターゲット領域に前記治療ビームを放射することができるという判定とを、両方の判定が肯定的な結果となるまで繰り返し、その後、前記治療ビームを放射するために前記1つまたは複数のトランスデューサの一部または全部を作動させること、
の動作を実行するように構成されている、請求項1に記載の超音波治療送達システム。
【請求項16】
前記撮像ビームが、前記音波透過性キャップを越えた少なくとも1つの次元において、前記治療ビームの範囲を完全に包含する、請求項3に記載の超音波治療送達システム。
【請求項17】
前記治療ビームを放射するために前記1つまたは複数のトランスデューサの一部または全部を作動させることは、複数のトランスデューサを選択的に作動させること、または動作パラメータを調整することの一方または両方を含む、請求項1に記載の超音波治療送達システム。
【請求項18】
超音波治療エネルギーの送達方法であって、
超音波撮像ビームを使用して被検体の画像データを取得するステップと、
前記画像データ中に治療対象領域の全部または一部が存在するかどうかを判定するステップと、
前記画像データ中に前記ターゲット領域の少なくとも一部が存在すると決定することに応答して、前記ターゲット領域に超音波エネルギーの治療用量の全部または一部を与えるために前記ターゲット領域に超音波治療ビームを印加することができるか否かを決定するステップであって、前記超音波治療ビームの経路が、前記被検体内の前記超音波撮像ビームの経路と少なくとも部分的に重なる、前記ステップと、
前記治療用量を与えるために前記超音波治療ビームを前記ターゲット領域に印加することができると判断したことに応答して、1つまたは複数のトランスデューサを作動させて前記超音波治療ビームを放射し、前記治療用量の全部または一部を被検体のターゲット領域に与えるステップと、を含み、
前記ターゲット領域へ前記治療用量の全部または一部を与えることに応答して前記ターゲット領域からの神経伝達物質放出および/または前記ターゲット領域の神経伝達物質の活性化が達成され、方法。
【請求項19】
超音波治療エネルギーの送達方法であって、
超音波撮像ビームを使用して被検体の画像データを取得するステップと、
前記画像データ中に治療対象領域の全部または一部が存在するかどうかを判定するステップと、
前記画像データ中に前記ターゲット領域の少なくとも一部が存在すると決定することに応答して、前記ターゲット領域に超音波エネルギーの治療用量の全部または一部を与えるために前記ターゲット領域に超音波治療ビームを印加することができるか否かを決定するステップであって、前記超音波治療ビームの経路が、前記被検体内の前記超音波撮像ビームの経路と少なくとも部分的に重なる、前記ステップと、
前記治療用量を与えるために前記超音波治療ビームを前記ターゲット領域に印加することができると判断したことに応答して、1つまたは複数のトランスデューサを作動させて前記超音波治療ビームを放射し、前記治療用量の全部または一部を被検体のターゲット領域に与えるステップと、を含み、
前記撮像ビームと前記治療ビームが同じ周波数で放射される、方法。
【請求項20】
前記治療用量の全部または一部を与えるために、前記治療ビームを前記ターゲット領域に適用することができるか否かを決定するステップは、
前記超音波治療ビームの経路内にある妨害解剖学的領域またはオフターゲット解剖学的領域の一方または両方を前記画像データ内で特定するステップと、
前記妨害解剖学的領域または前記オフターゲット解剖学的領域の存在に基づいて、前記治療ビーム経路によって治療用量基準またはオフターゲット安全性基準の一方または両方が満たされるかどうかを判定するステップと、
を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記超音波治療ビームを放射するために前記1つまたは複数のトランスデューサを作動させるステップは、治療ビーム経路内にある妨害解剖学的領域またはオフターゲット解剖学的領域の画像データ内の識別に基づいて複数のトランスデューサのサブセットを作動させることを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記治療用量の全部または一部を与えるために、前記治療ビームを前記ターゲット領域に適用することができるか否かを決定するステップは、前記治療ビームによって調節される前記ターゲット領域の一部と有効性の閾値とを比較するステップを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記1つまたは複数のトランスデューサの一部または全部を作動させるステップは、前記エネルギー印加装置の前記被検体への前記音響結合が十分であることに基づいて、複数のトランスデューサのサブセットを作動させるステップを含み、
前記超音波治療ビームを放射するために前記1つ以上のトランスデューサを作動させるステップが、前記被検体に対する前記エネルギー印加装置のリフトオフイベントの存在に基づいて複数のトランスデューサのサブセットを作動させるステップを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記超音波治療ビームを放射するために前記1つまたは複数のトランスデューサを作動させることは、
前記超音波治療ビームを放射するように構成された1つ以上の治療トランスデューサと、
前記超音波撮像ビームを放射するように構成された1つまたは複数の撮像トランスデューサであって、前記超音波撮像ビームが、前記ターゲット領域への前記超音波治療ビームが通る経路の少なくとも一部を走査する、複数のトランスデューサとのサブセットを起動することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
前記画像データに前記ターゲット領域の十分な部分が存在しないという判定、または前記超音波治療ビームを前記ターゲット領域に放射して前記治療用量を与えることができないという判定に応答して、前記エネルギー印加装置を再配置または再配向することのうちの1つ以上を実行するための通知またはメッセージを生成するステップと、
前記画像データ中に前記ターゲット領域が存在するという判定と、前記ターゲット領域に前記超音波治療ビームを放射することができるという判定との両方の判定が肯定的な結果となるまで繰り返し、前記超音波治療ビームを放射するために前記1つまたは複数のトランスデューサを作動させるステップと、をさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項26】
前記画像データに前記ターゲット領域の十分な部分が存在しないという判定、または前記超音波治療ビームを前記ターゲット領域に放射して前記治療用量を与えることができないという判定に応答して、前記1つまたは複数のトランスデューサの位置または向きの一方または両方を自動的に調整するステップと、
前記ターゲット領域が前記画像データ中に存在するという判定と、前記超音波治療ビームを前記ターゲット領域に印加することができるという判定との両方の判定が肯定的な結果となるまで繰り返し、その後、前記超音波治療ビームを放射するために前記1つ以上のトランスデューサの一部または全部を作動させるステップと、をさらに含む、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示される主題は、エネルギー(例えば、神経調節エネルギー:neuromodulating energy)の適用を介して、対象の関心領域を同定し、標的化し、および/または投与して、標的化された生理学的結果を引き起こすことに関する。特に、開示された技術は、標的化された領域に既知の用量(known dose)を正確に送達(deliver)するのに有用であり得る。
【背景技術】
【0002】
神経調節はさまざまな臨床症状(clinical conditions)の治療に用いられてきた。しかし、神経調節による特定の組織ターゲティングは困難である。例えば、神経調節エネルギーの正確な集束は、個々の患者の解剖学的構造に基づいて異なる場合がある。特定の患者は、身長、体重、年齢、性別、臨床状態などに基づいて、他の患者に対して臓器の大きさや位置にばらつきがある場合があり、このようなばらつきは、様々な神経調節技術を使用する際のターゲティングや投与量送達(dose delivery)に影響を及ぼす可能性がある。
【0003】
超音波デバイスを使用した神経調節において、所定の投与量(prescribed dose:規定の用量)で正確な超音波治療を行うための他の一般的な課題には、治療プローブと患者との間の音響結合不良(poor acoustic coupling)、患者からのプローブの一部の「リフトオフ:lift off」、または治療ビーム経路における音響反射体または吸収体(例えば、肋骨などの骨構造、腸ガスなど)の存在が含まれる。このような要因により、不正確な投与量が与えられたり、患者に不快感を与えたりする可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開2010/0069753明細書
【発明の概要】
【0005】
開示された実施形態は、特許請求される主題の範囲を限定することを意図しておらず、むしろ、これらの実施形態は、可能な実施形態の簡単な要約を提供することのみを意図している。実際、本開示は、以下に記載される実施形態に類似し得るか又は異なる様々な形態を包含し得る。
【0006】
一実施形態では、超音波治療送達システム(ultrasonic therapy delivery system)が提供される。この実施形態に従って、超音波治療送達システムは、被検体(subject:対象)内のターゲット領域に超音波エネルギーを送達するように構成されたエネルギー印加装置(energy application device)を備え、エネルギー印加装置は、撮像ビームおよび治療ビームを放出するように構成された1つまたは複数のトランスデューサと、コントローラとを備える。コントローラは、以下を含む動作を実行するように構成されている。1つ又は複数のトランスデューサの一部又は全部を作動させて撮像ビームを放射するステップと、撮像ビームに応答して生成された画像データを受信するステップと、撮像ビームによって走査された画像データ中にターゲット領域の全部又は一部が存在するか否かを判定するステップと、画像データ中にターゲット領域の少なくとも一部が存在すると判定されたことに応答して、ターゲット領域に超音波エネルギーの治療用量の全部又は一部を与える(administer:投与する)ためにターゲット領域に治療ビームを印加することができるか否かを判定するステップと、ターゲット領域に治療ビームを放射して治療用量を与えることができると判定したことに応答して、1つまたは複数のトランスデューサの一部または全部を作動させて治療ビームを放射し、ターゲット領域に治療用量の全部または一部を与える。
【0007】
別の実施形態では、超音波治療エネルギーの送達方法が提供される。この方法によれば、超音波撮像ビームを用いて被検体の画像データが取得される。治療のターゲット領域の全部又は一部が画像データ中に存在するか否かの判定が行われる。ターゲット領域の少なくとも一部が画像データ中に存在すると判定することに応答して、超音波エネルギーの治療用量の全部または一部をターゲット領域に与えるために、超音波治療ビームをターゲット領域に印加することができるか否かの判定が行われる。超音波治療ビームの経路は、被検体内の超音波撮像ビームの経路と少なくとも部分的に重なる。治療用量(therapy dose)を与えるために超音波治療ビームをターゲット領域に適用することができると決定することに応答して、1つまたは複数のトランスデューサが作動して超音波治療ビームを放射し、治療用量の全部または一部を被検体のターゲット領域に与える。
【0008】
本発明のこれらおよび他の特徴、態様、および利点は、以下の詳細な説明を添付の図面を参照しながら読むと、よりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の実施形態による経路決定および治療送達システムの概略図である。
図2】本開示の実施形態による経路決定および治療提供システムのブロック図である。
図3】本開示の態様による、超音波プローブで使用するための静的トランスデューサ配置の一実施形態を示す。
図4】本開示の態様による、超音波プローブで使用するための静的トランスデューサ配置のさらなる実施形態を示す。
図5】本開示の態様による、超音波プローブで使用するための静的トランスデューサ配置の追加実施形態を示す。
図6】本開示の態様による、超音波プローブで使用するための静的トランスデューサ配置の別の実施形態を示す。
図7】本開示の態様に従って、集束治療ビームを放出する図6のトランスデューサ配置の一例を示す。
図8】本開示の態様に従って、集束された治療ビームおよび治療ビームを包含する撮像ビームを放出する図6のトランスデューサ配置の一例を示す。
図9】本開示の態様による、超音波プローブで使用するための動的トランスデューサ配置の一実施形態を示す。
図10】本開示の態様による、超音波プローブで使用するための動的トランスデューサ配置のさらなる実施形態を示す。
図11】本開示の態様による、超音波プローブで使用するための動的トランスデューサ配置の追加実施形態を示す。
図12】本開示の態様による、超音波プローブで使用するための動的トランスデューサ配置の別の実施形態を示す。
図13】本開示の態様による、超音波プローブで使用するための動的トランスデューサ配置のさらなる実施形態を示す。
図14】本開示の態様による、超音波プローブで使用するための動的トランスデューサ配置の追加実施形態を示す。
図15】本開示の態様に従って、超音波プローブで使用され、外部運動を受けるトランスデューサ配置の一実施形態を示す。
図16】本開示の態様による、周囲センサの配置を含む超音波プローブヘッドの図を示す。
図17】本開示の態様による、キャビテーション事象を検出するステップのプロセスフローを示す。
図18】本開示の態様に従って、経路決定を行い、治療を適用するステップのプロセスフローを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、1つまたは複数の具体的な実施形態について説明する。これらの実施形態の簡潔な説明を提供するために、実際の実装のすべての特徴が本明細書に記載されているわけではない。このような実際の実装の開発では、あらゆるエンジニアリングまたは設計プロジェクトと同様に、システム関連およびビジネス関連の制約への準拠など、開発者の特定の目標を達成するために、実装ごとに異なる多数の実装固有の決定を行わなければならないことが理解されるべきである。さらに、このような開発努力は複雑で時間がかかるかもしれないが、それにもかかわらず、本開示の利益を有する通常の技術者にとっては、設計、製造、および製造の日常的な事業であることが理解されるべきである。
【0011】
本明細書で示される例または図解は、それらが使用されるいかなる用語または用語の制限、限定、または明示的な定義(restrictions on, limits to, or express definitions)とみなされるものではない。代わりに、これらの例または図示は、様々な特定の実施形態に関して記載され、例示的なものとしてのみ見なされる。当業者であれば、これらの例または図解が使用される任意の用語または用語は、本明細書においてそれとともに、または他の場所で与えられるか、または与えられない他の実施形態を包含し、すべてのそのような実施形態は、その用語または用語の範囲内に含まれることが意図されることを理解するであろう。このような非限定的な例および図示を指定する言語には、これらに限定されないが、以下が含まれる:“例えば”、“例示的には”、“例を挙げると”、“含む”、“特定の実施形態において”、“いくつかの実施形態において”、および “一実施形態において”。
【0012】
本明細書で議論するように、(神経調節の目的など)患者内のターゲット領域への超音波治療エネルギーの適用を評価またはガイドするために画像ベースの技術を使用する際に生じ得る1つの問題は、治療ビームによって横断される(traversed)が画像化技術によって見られない患者の領域に対応し得る「盲点:blind spots」である。本明細書で使用されるように、治療ビームの経路(すなわち、治療ビーム経路;therapy beam path)は、ターゲット領域近傍の物体又は構造に加えて、ターゲット領域から「ターゲット領域を越えて:from-to-beyond」(すなわち、変換器からターゲット領域まで及びターゲット領域を越えて:from the transducer to the target region and beyond the target region)領域を包含する。実用的な目的のために、治療ビームは、変換器からターゲット領域へ収束する円錐と、ターゲット領域から彼方へ発散する別の円錐として想定することができる。この経路に沿って治療ビームが横切るが、撮像ビームによって撮像されない死角(blind spots:盲点)に関して、これらの死角は、治療が「オフターゲット:off target」(すなわち、ターゲット領域の一部ではない患者領域に影響を与えるか、またはエネルギーを適用する:affecting or applying energy to patient regions that are not part of the target region)変調すること、および/または患者に所定の投与量を送達することに失敗することにつながる可能性がある。一例として、患者の皮膚に近接又は隣接して適用される中央の撮像アレイ及び外側の治療アレイの場合、皮膚に近い(near the skin line)患者領域は、撮像アレイによって観察されないが、治療ビームによって横断(traverse)されることがある。このような死角は画像誘導治療(image-guided therapy context)において問題となる。
【0013】
さらに、画像誘導技術(image-guided techniques)を使用して正確で安全な超音波治療を行う際の他の課題として、治療装置と患者との間の音響結合不良、患者に対する治療装置の一部の「リフトオフ」、治療ビーム経路内の音響反射体または吸収体(例えば、肋骨などの骨構造、腸ガスなどのガス充填ポケットまたは領域)の存在が考えられる。これらの要因に関して、音響結合不良は、必ずしも画像の端に現れるとは限らないが、過度にぼやけた画像または薄暗い画像として現れることがあり、これは「リフトオフ」事象をより示す可能性がある。部分的な“リフトオフ”は、画像なし、または画像の縁に沿った薄暗い画像で示され、治療トランスデューサの加熱と投与量送達の低下をもたらす可能性がある。トランスデューサが影の原因となる構造(例えば、肋骨)の上にある場合、音響反射または吸収(例えば、「シャドーイング:shadowing」)が発生することがある。このような要因により、不正確な投与(delivery of an inaccurate dosing)が行われる可能性があり、及び/又は患者に不快感を与える可能性がある。
【0014】
さらに、超音波圧力波は、内部組織に加えられる機械的な力を生み出す。この機械的な力が大きくなりすぎると、望ましくない機械的な生体影響(undesired mechanical bioeffects)が生じる可能性がある。また、超音波ビームは、組織が超音波エネルギーを吸収する際に、内部組織を発熱させる可能性がある。出力の増加や有効デューティサイクルなどの要因により、内部加熱が大きくなる。内部加熱が大きすぎると、多くの望ましくない熱的生体効果が生じる可能性がある。さらに、組織の減衰や音響インピーダンスは組織の種類によって異なる。例えば、骨の減衰とインピーダンスは、次に高い内部軟部組織よりもそれぞれ~15倍と~5倍大きい。減衰が大きいと骨が加熱される可能性があり、音響インピーダンスの差が大きいと組織と骨の界面で強い反射が生じ、音響エネルギーがデフォーカスまたはリダイレクト(defocusing or redirecting)される可能性がある。さらに、内部気体構造(internal gas structures)が高い機械力で励起されると、キャビテーションが発生し(cavitate)、周辺組織に影響を及ぼす可能性がある。
【0015】
上述の問題のために、また、正確な投与量送達(したがって、効果的な治療)を保証するために、ターゲット領域まで及びターゲット領域を超えた治療ビーム経路に関して「障害物の無い(clear:クリアな)」経路があるかどうかを知ることが望ましい。このような経路の決定または解析は、複数の要因(例えば、骨またはその他の高密度で音響的に反射する構造がないこと、ガスが充填された空洞がないこと、超音波エネルギーの一部を受信するのに望ましくない他の解剖学的構造がないこと、良好な音響結合、プローブインターフェースの「リフトオフ」がないことなど)を包含する場合があり、これらはすべて所定の経路決定において考慮される場合もあれば、考慮されない場合もある。どの要因(1つまたは複数)を考慮するかは、治療プロトコル、患者の解剖学的構造、システム形状、所定の周波数および/または投与量(dose)などの考慮事項に依存する。さらに、いくつかの実施態様では、パスの決定又は解析は、考慮される様々な因子の一部又は全部について、単独で又は組み合わせて、許容可能な範囲に及ぶことがあり、そのような場合、決定は、単純化された二元的な「クリア/クリアでない:clear/not clear」の決定ではなく、段階的又は定量化されたクリアランスの測定基準であることがある。そのような状況(contexts:文脈)では、決定された「クリア」経路の程度は、今度は、適切な次のステップを決定するために活用され得る。例えば、エネルギー適用デバイスの位置を変更および/または向きを変えるように使用者に通知すること、または、経路決定の情報を活用するために適用デバイス要素を電子的に操作すること、例えば、デバイスが操作される電力レベルを調整すること、経路を調整するためにデバイス内の1つまたは複数のトランスデューサを掃引(sweep)すること、利用可能なトランスデューサのサブセットを選択的に活性化すること、などである。実際には、経路決定の評価および使用は、二値形式または段階的形式(binary or graded form)のいずれかで、安全基準、治療用量基準(例えば、観察されたクリアな経路測定値を考慮して適用することができる治療用量の程度および特性に基づいて、予測分析に基づいて、どのくらいの投与量エネルギーまたは電力がターゲット領域に送達されるか、および超音波ビームプロファイルがどのように見えるか(すなわち、空間的にどこにエネルギーが供給されるのか、ビームは通常の集束ビームのように見えるのか、障害物はより大きな領域にエネルギーをデフォーカスさせるのか、またはビームは意図しない場所にシフトするのか)、および/または有効性閾値(例えば、評価された経路に沿ってターゲット領域に適用され得る投与量は、特定の標的解剖学、患者、および処方などの臨床的要因だけでなく、あらゆる障害物(1または複数)および評価されているビーム特性を考慮して供給され得ると決定されたものに基づいて、指定された有効性閾値(specified threshold effectiveness)を超えるのに十分な投与量またはエネルギーを供給し得ること)。
【0016】
本明細書で議論されるように、様々な要因が経路判定又は解析の一部として考慮され得るが、特定の実施形態では、このような判定は、治療のためのターゲット領域が「可視:visible」であり(すなわち、撮像ビーム内に存在し:lies within the imaging beam)、したがって治療ビームにアクセス可能(accessible)であるという判定を(主に又は1つの構成要素として)含み得る。一例として、経路決定又は解析の最初の側面は、撮像ビームによって撮像された経路内にターゲット領域が(部分的に又は完全に)存在するか否かである。このような状況では、撮像ビームによって見られる撮像領域内にターゲット領域のどの部分が存在しないことも、更なる要因の評価を妨げる可能性がある。すなわち、ターゲット領域が撮像ビームに見えない場合、ターゲット領域への治療ビームの経路はないと推定され、さらなる経路の考慮は無視されることがある。ある状況(contexts)では、ターゲット領域が撮像ビームに対して可視(visible)であるかどうかの評価が、唯一の考慮事項であってもよい。他の実施形態では、ターゲット領域の一部又は全部が撮像ビームにおいて可視である限り、付加的な要因(例えば、「リフトオフ」事象、音響結合)が評価され得る。 さらに、撮像ビームが視認可能なターゲット領域の範囲(全体より少ない場合;if less than total)は、有効性の閾値又は治療用量の基準(threshold for effectiveness or a therapy dose criterion)と比較され、利用可能な経路が経路に沿って治療ビームを適用するのに十分であるか否かを決定することができる。
【0017】
このことを念頭に置いて、本明細書で議論される技術およびアプローチは、標的への超音波療法の安全かつ正確な送達を提供するために採用され得る物理的実施形態および制御/分析スキームの組み合わせ(combinations of physical embodiments and control/analysis schemes)から構成される。実際、現在説明されている技術およびアプローチは、訓練された技術者が患者のターゲット領域に超音波療法治療を施すのに有用であるが、これらの技術およびアプローチは、患者自身を含む医学的に訓練されていない個人(medically untrained individual)が、怪我を負わせる危険性なく、所望の医療効果を達成しながら、超音波療法治療を安全に施すことを可能にするためにも採用され得る。
【0018】
そのために、開示されたビーム経路分析および決定技術は、治療プロトコル(treatment protocol)の一部として超音波エネルギーを送達するために使用されるように構成された超音波治療システム(例えば、神経調節システム)と共に使用され得る。一例として、図1は、エネルギーの印加に応答してシナプスの構成要素(例えば、シナプス前細胞、シナプス後細胞)の神経伝達物質放出および/または活性化などの神経調節効果を達成するための神経調節システム10の概略図である。描かれているシステムは、エネルギー印加装置12(例えば、超音波トランスデューサ)に結合されたパルス発生器14を含む。エネルギー印加装置12は、例えば、リード線または無線接続を介して、受信するように構成されるか、さもなければ、使用時に、被検体の内部組織または器官内のターゲット領域に向けられ、その結果、標的生理学的結果(targeted physiological outcome、例えば、神経伝達物質、タンパク質などの放出など)をもたらすエネルギーパルスを生成するように構成される。
【0019】
特定の実施形態では、エネルギー印加装置12および/またはパルス発生器14は、例えば、パルス発生器14に順番に指示を提供し得るコントローラ16と無線で通信し得る。他の実施形態では、エネルギー印加装置12は、体外デバイスであってもよく、例えば、被検体の体外の位置から経皮的(transdermally)にまたは非侵襲的にエネルギーを印加するように動作してもよく、特定の実施形態では、パルス発生器14および/またはコントローラ16と一体化されていてもよい。エネルギー印加装置12が体外式(extracorporeal)である実施形態では、エネルギー印加装置12は、介護者、または患者によって操作され、エネルギーパルスが所望の内部組織に経皮的に送達されるように、被検体の皮膚上またはその上の場所に位置決めされ得る。所望の部位にエネルギーパルスを印加するように位置決めされると、システム10は、標的化された生理学的結果または臨床効果を達成するために、1つまたは複数の神経経路の神経調節を開始することができる。いくつかの実施形態では、システム10は、要素の一部または全部が互いに有線または無線で通信し得るように実装され得る。
【0020】
特定の実施形態では、システム10は、コントローラ16に結合され、エネルギー印加装置12の配置および向きに関してターゲット領域への明確なまたは十分な経路が存在するかどうかを示す特性を評価する評価装置またはロジック(assessment device or logic)20を含み得る。本明細書で使用されるように、このような経路分析は、十分な音響結合の判定、プローブの一部が患者と接触していない「リフトオフ」がないことの判定、およびプローブとターゲット領域との間にブロックする解剖学的構造または構造(例えば、骨または骨類似構造、ガス充填空洞など)がないか、または限られていることの判定の一部または全部を含み得る。一実施形態では、評価装置またはロジック20は、治療および撮像を実行するために、エネルギー印加装置12の同じトランスデューサまたは異なるトランスデューサによって放出される超音波エネルギーの異なる周波数を利用することができる。他の実施形態では、超音波エネルギーの治療及び評価周波数は、エネルギー印加装置12の異なるトランスデューサ(例えば、撮像トランスデューサ及び治療トランスデューサ)又は構造によって放出されてもよい。さらに、非画像感知モダリティ(non-image sensing modalities 、例えば、電極、圧力センサ、キャビテーションセンサなど)もまた、評価される1つ以上の経路因子を決定するのに役立つデータまたは測定値を生成することができる。
【0021】
経路評価に基づいて、治療用超音波エネルギーの供給は、所定の治療結果を達成するように自動的に変更、変調、または誘導される。加えて、または代替的に、治療用超音波エネルギーのための十分に明確なまたは適切な経路の有無を示すため、またはそのような経路を達成するようにエネルギー印加装置12の配置および/または向きに関するガイダンスを提供するために、可聴または可視インジケータ(audible or visible indicators)を介してなど、指示またはガイダンスがユーザに提供され得る。
【0022】
この例で提供されるシステム10は、有効量のエネルギーを適用するための治療プロトコルの一部として、様々な変調パラメータに従ってエネルギーパルスを提供することができる。例えば、変調パラメータ(modulation parameters)は、連続的なものから断続的なものまで、様々な刺激時間パターンを含み得る。断続的刺激では、信号オン時間の間、ある周波数で一定時間エネルギーが供給される。信号オン時間の後には、信号オフ時間と呼ばれるエネルギーが供給されない時間が続く。変調パラメータには、刺激印加の周波数と持続時間も含まれる。印加頻度は、連続的であってもよいし、様々な時間帯、例えば、1日又は1週間以内に印加されてもよい。さらに、治療プロトコルは、エネルギーを印加する1日の時間帯、または食事もしくは他の活動に対する時間を指定することができる。目標とする生理学的結果を引き起こすための治療持続時間は、数分から数時間までを含むがこれらに限定されない様々な時間持続することができる。特定の実施形態では、特定の刺激パターンによる治療持続時間は、1分~1時間持続してもよく、一定の間隔(例えば、72時間間隔)で繰り返してもよい。特定の実施形態において、エネルギーは、より高い頻度(例えば、2時間または3時間間隔)で、より短い持続時間(例えば、1分)で供給されてもよい。治療持続時間、周波数、および振幅などの変調パラメータに従ったエネルギーの適用は、所望の結果を達成するために調節可能に制御され得る。
【0023】
図2は、システム10の一実施態様の特定の構成要素のブロック図である。特に、システム10の一実施態様の態様および構成要素は、エネルギー印加装置12、パルス発生器14、評価構成要素(assessment component)20、および/またはコントローラ16に関して上述した特定の機能性に対応するモジュールとして示されている。例えば、図2のブロック図には、図1に関して本明細書で説明した機能を実行するために使用され得る治療モジュール40およびプローブモジュール42が図示されている。撮像モジュール44も図示されているが、特定の実施形態では、このような撮像モジュール44はなくてもよいことが理解されよう。そのような代替実施形態では、超音波エネルギーの撮像周波数と理解され得るもので取得されたデータ上で実行される分析は、画像への再構成または画像上で実行される分析なしに、再構成されていない(すなわち、生の:raw)撮像データ上で実行され得る。一例として、撮像トランスデューサ52を使用して、または撮像モジュール44で取得されたデータに基づいて本明細書で議論されるような経路決定または分析は、再構成された画像(例えば、再構成されたデータ内のシグネチャ:signatures within the reconstructed data)に基づいてもよいし、再構成されていない画像データに存在する超音波シグネチャ(ultrasound signatures)に基づいてもよい。
【0024】
まず、プローブモジュール42を説明すると、描かれている例では、プローブモジュール42はトランスデューサ50を含む。描かれている例では、トランスデューサ50は、撮像トランスデューサ52(ある周波数または周波数範囲で動作する)と治療トランスデューサ54(撮像トランスデューサ52と同じ周波数または異なる周波数範囲で動作してもよい)の両方を含む。一実施形態では、トランスデューサ52は128個の撮像トランスデューサと4個の治療トランスデューサを含むことができるが、代わりに他の量またはいずれかのタイプの変換器が採用されてもよい。簡略化された超音波信号伝達の場合では、超音波は、撮像トランスデューサアレイおよび/または治療トランスデューサアレイの領域または規定された部分を介して連続的に送受信され得る。
【0025】
代替実施形態では、トランスデューサ50は、代わりに、それぞれのタイプのそれぞれの動作のために別個のトランスデューサ(separate transducers)が提供されないように、それぞれの撮像及び治療の両方の周波数で動作可能な1つ又は複数のタイプのトランスデューサ52から構成されてもよい。一例として、この状況(context)におけるトランスデューサ52は、撮像動作と治療動作の両方に対して同じ周波数又は周波数範囲で動作するように構成されてもよいし、撮像用の第1の周波数範囲と治療用の第2の周波数範囲で動作するように構成されてもよい。このような実施形態では、単一の変換器または変換器の種類を、治療を提供し、本明細書で議論されるクリアな経路の判定で使用される撮像タイプのデータを取得する両方のために動作させることができる。このような単一トランスデューサタイプのアプローチは、ターゲット領域が浅く、かつ/または高出力が必要でない場合に適している。
【0026】
撮像トランスデューサ52と治療トランスデューサ54に関して、実際には、撮像トランスデューサ52は、治療トランスデューサ54に対して、より高い周波数で動作し、かつ/または、より小さな開口サイズを有することがある。対照的に、治療トランスデューサ54は、通常、より低い周波数で(減衰を少なくするために)、および/または、より大きな面積で(より大きな集束利得のために)動作し、より深いターゲットにより大きなパワーを供給する。一実施態様では、治療トランスデューサ54は、0.2MHz~2MHz(0.5MHzまたは2MHzなど)の周波数で動作することができる。このような実施態様では、治療トランスデューサ(単数または複数)54は、PZT-4(ただし、これに限定されない)などの圧電材料などの適切な材料から構成することができる。一実施態様では、撮像トランスデューサ(単数または複数)52は、2MHz~12MHz(3MHz~10MHzまたは5MHz~12MHzなど)の周波数範囲で動作することができる。このような実施態様では、撮像トランスデューサ(単数又は複数)52は、PZT-5のような圧電材料(ただし、これに限定されない)のような適切な材料から構成されてもよい。
【0027】
描かれている例では、プローブモジュール42は、ハードウェアコントローラ60も含み、このハードウェアコントローラ60は、描かれている例では、治療モジュール40のマスターコントローラ(例えば、プロセッサ)110と通信するマイクロコントローラ(MCU)62と、MCU62と、プローブモジュール42に関連するセンサ70および/またはアクチュエータ80と通信するフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)64とを含む。この構成では、MCU62およびFPGA64は、マスターコントローラ110の構成要素(例えば、データロガー122)と双方向通信して、プローブモジュール42の側面、またはアクチュエータ80および/もしくはセンサ70などのプローブモジュール42に直接的もしくは間接的に関連する構成要素の動作を調整および/もしくは記録することができる。図2においてプローブモジュール42の一部として示されているが、アクチュエータ80および/またはセンサ70の一部または全部は、存在する場合、プローブモジュール42とは別個に、またはプローブモジュール42の外部に、例えば、別個の部分または構成要素として提供されてもよいことが理解されるべきである。あるいは、アクチュエータ80および/またはセンサ70の一部または全部は、存在する場合、プローブモジュール42の内部に設けられるか、またはプローブモジュール42と一体的に設けられる。
【0028】
アクチュエータ80に関して、描かれている例では、アクチュエータは、第1のモータ82および第2のモータ84の一方または両方を含むことができる。モータの一方または両方は、プローブモジュール42自体、および/または撮像トランスデューサ52および/または治療トランスデューサ54などのプローブモジュール42の別個の向き(separate aspects)を動かすように構成され得る。モータ82、84は、特に、ハードウェアコントローラ60の一部として提供されるFPGA64からの信号に応答して、プローブモジュール42、撮像トランスデューサ52、および/または治療トランスデューサ54の移動を自動化された方法で実現するように構成されてもよく、それにより、治療モジュール40から受信される通信がそれぞれの構成要素の運動を制御することを可能にする。さらに、図2に示すように、特定の実施形態では、ベルト、シンチ(cinch)、手動配置インターフェースなどの手動調整機構86(例えば、患者固有の手動調整)を設けて、患者上のインターフェース領域に対するプローブモジュール42の手動調整または移動を可能にすることができる。
【0029】
センサ70に関しては、様々な種類のセンサをプローブモジュール42と一体化してもよいし、別体の場合はプローブモジュール42と通信してもよい。一例として、センサ70は、呼吸センサ、姿勢および運動センサ、電極、圧力センサ、加速度センサ、および/または安全センサ(a respiration sensor, a posture and motion sensor, electrodes, pressure sensors, accelerometers, and/or a safety sensor)のうちの1つ以上を含むことができる。例えば、呼吸センサは、患者の呼吸に関連する定量的または定性的データを取得するために使用することができ、それによって呼吸運動の期間を特定することができ、これは、経路決定または分析を実行することができるか、または実行する必要があるか、または治療を適用することができる時間を特定するのに有用である。同様に、姿勢及び運動センサを使用して、患者の随意的又は不随意的な運動、患者の位置、及び患者の姿勢又は向きを特定することができる。このような情報は、経路の決定や分析が実行され得る、あるいは実行されるべき時、あるいは治療が適用され得る時を特定するためにも使用され得る。安全センサは、安全条件または閾値が破られたときに信号を送るように較正(calibrate)されることがある。従って、このセンサからの信号は、安全条件が再び満たされるまで、プローブモジュール42の動作を制御(例えば、停止)するために使用することができる。さらに、本明細書で論じるように、電極、圧力センサ、および他のそのようなセンサは、経路分析または判定ルーチンに寄与し得る特定の要因(音響結合の十分性の判定、「リフトオフ」事象が発生したかどうかの判定など)を判定または分析するために採用され得る。このようなセンサデータは、これらの条件が存在するかどうか、または存在する場合にその程度を判定するために、画像データの解析に加えて、または解析の代わりに採用することができる。図2に示すように、1つまたは複数のセンサ70は、存在する場合、FPGA64またはその他のハードウェアコントローラ60に通信可能に結合される場合がある。
【0030】
治療モジュール40に関して、前述のように、治療モジュール40の実装は、マスターコントローラ(例えば、プロセッサ)110を含むことができ、それ自体は、様々なサブモジュールまたはルーチンを含むか、または実行することができる。この例では、マスタープロセッサは、画像ストリーマおよび遠隔制御112、人工知能(AI)解剖学的認識および追跡114、誘導投与エンジン116、ユーザインタフェース118、サポート分析120、およびデータロガー122の機能を提供するモジュールまたはルーチンを含むか、または実行し、この例では、MCU62またはプローブモジュール42と通信するように示されている。
【0031】
プローブモジュールと同様に、特定の実施形態では、治療モジュール40は、独自のMCU122およびFPGA124を含むハードウェアコントローラ126を含むことができる。図示および説明の目的で別個のモジュールとして描かれているが、実際には、プローブモジュール42および治療モジュール40は、実際には一体であってもよい(すなわち、本明細書で説明するように、治療モジュールおよびプローブモジュールの両方の機能を実行するように構成された一体構造または装置であってもよい)。このことを念頭に置いて、本明細書では別々に論じるが、実際には、ハードウェアコントローラ60および126は、単一のハードウェアコントローラとして実装されてもよい。描かれている例では、MCU122は、マスターコントローラ110およびそのコンポーネントおよびモジュールと通信するように描かれている。FPGA124は、治療パルサーレシーバ(therapy pulser-receivers)130(プローブモジュール42の治療トランスデューサ54と通信しているように描かれている)、安全回路132、および/または電力管理回路(power management circuitry)134など、治療モジュールの他のコンポーネントと通信し、および/または制御する。
【0032】
実行時には、マスターコントローラ110は、ハードウェアコントローラ60、126と連動して、本明細書に記載のプロセスおよび構造に従って、治療の適用に加えて、経路決定および分析を実行するように、治療モジュール40およびプローブモジュール42の動作を制御することができる。一例として、マスターコントローラ110は、いくつかの実施形態では、本明細書で説明するように、経路決定または分析を実行するために使用されてもよく、ハードウェアコントローラ126、60と協働して、トランスデューサ50によって生成された撮像超音波パルスおよび治療超音波パルスを電子的にインターリーブして、撮像/治療の二重機能を実行し、および/またはトランスデューサ50および/またはプローブモジュール42の(モータ82、84のうちの1つまたは複数を使用するような)動作を制御してもよい。この態様において、マスターコントローラ110は、適切又は許容可能な経路の検出に基づいて、ゲートされた投与量送達を含む超音波療法投与シーケンスを制御することができる。幾つかの実施態様では、モジュール114を介するようなマスターコントローラ110は、プローブモジュール42内で又は患者の解剖学的構造に関して撮像トランスデューサ(単数又は複数)52を移動させるときなど、経路を評価するために使用される解剖学的コンテキスト(anatomical context)を構築及び追跡することができる。
【0033】
描かれている実施例では、撮像モジュール44も全体的なシステムの構成要素として描かれている。このようなモジュールは、存在する場合、トランスデューサ50(例えば、撮像トランスデューサ52)の動作を制御又は監視して、撮像データの生成、収集、及び/又は処理(例えば、再構成)を制御することができる。描かれている実施例では、撮像モジュール44はまた、治療モジュール40のマスターコントローラ110、特に、撮像モジュール44の動作を制御するか、または撮像モジュール44からのフィードバックおよびデータに応答し得る画像ストリーマおよび遠隔制御サブモジュール112と通信するものとして示されている。上述したプローブモジュール42および治療モジュール40と同様に、機能概念の図示および説明を容易にするために、図2において撮像モジュール44は別個のモジュールとして図示されている。しかしながら、前述の実施例と同様に、撮像モジュール44は、実際には、プローブモジュール42及び治療モジュール40の一方又は両方と一体であってもよい(すなわち、本明細書で論じるように、撮像モジュールと、治療モジュール及びプローブモジュールの一方又は両方との組み合わされた機能を実行するように構成された一体構造又は装置であってもよい)。
【0034】
前述のシステムの説明を念頭に置き、この前後関係において(as context)、本技術は画像(または再構成されていない画像データ)誘導超音波治療システム(guided ultrasonic therapy system)に関する。特定の実施形態では、このようなシステムは、別個の撮像トランスデューサ52および治療トランスデューサ54を利用することができる。あるいは、他の実施形態では、単一のトランスデューサまたは複合トランスデューサが、撮像および治療の両方の超音波エネルギー用途に利用されてもよい。別個の撮像用トランスデューサ52及び治療トランスデューサ54が採用される実施形態では、トランスデューサは、それぞれの目的に最適化され、撮像用トランスデューサ52を使用して内部の解剖学的標的を定位させ、治療トランスデューサ54を使用して一旦定位された標的(target once localized)に超音波投与量を送達することによって、動作的にインターリーブされ得る。このプロセスは、蓄積された投与量(accumulated dose amount)に達するまで繰り返すことができる。
【0035】
正確で安全な超音波治療を行う上での課題には、エネルギー印加装置と患者との音響的結合不良、治療中の患者からの印加装置の一部(例えば、端部又は角部)の「リフトオフ」、治療ビーム経路における音響反射体又は吸収体(すなわち、骨又は肋骨、ガス充填空洞)のような障害物の存在、及び/又は、超音波ビームの経路に収差を生じさせ、治療を妨げ又は防止する標的組織周辺の音響特性の相違が含まれる。このような要因は、不正確な投与量の放射、及び/又は、治療の妨害、患者の不快感、又は、意図しない標的外作用の原因となり得る。このことを念頭に置いて、本明細書で説明するように、超音波治療送達システムの特定の物理的およびアルゴリズム的側面が開発されており、これは、治療ビームがプローブの出口面からターゲット領域およびその先まで伝播するための問題の無い経路(例えば、骨または骨類似構造、ガス充填ポケットまたは空洞などがないこと、良好な音響結合、および「リフトオフ」がないこと)を確保するために採用され得、それにより、正確な投与および患者の安全性を提供する。さらに、このような技術は、訓練を受けた技術者または医療従事者が超音波を用いた治療を行う場合、または、患者を含む訓練を受けていない人が超音波を用いた治療を行う場合に採用することができ、これにより、訓練を受けていない人でも、傷害の危険性なしに、所定の用量をターゲット領域に効果的に送達することができる。
【0036】
一例として、一実施形態では、1または複数の撮像トランスデューサ52及び1または複数の治療トランスデューサ54は、オフセット構成又はスタンドオフ構成(offset or standoff configuration)で配置され、撮像ビームのアクティブエリアは、身体への侵入点(すなわち、皮膚表面とプローブの出口面とによって形成される界面)における治療ビームのアクティブエリアを含む。このような構成を用いると、超音波画像データまたは再構成画像の解析により、上述の課題を軽減することができる。例えば、結合不良は、異常に低い画質または画像の欠落部分として現れることがあり、「リフトオフ」は、しばしば、画像の部分的に黒く塗りつぶされた部分をもたらし、治療経路内の骨は、その背後の領域も黒く塗りつぶす画像内の大きな反射体として見られる。従って、ある実施態様では、プローブは、治療トランスデューサ54と撮像用トランスデューサ52の形状が撮像ビームと治療ビームが確実に交差するように物理的に構成される。次いで、プロセッサ実行可能ルーチンが自動化された方法で採用され、安全で正確な投与を確実にするために、超音波画像(または生画像データ)中の上記の問題徴候の一部または全部を識別または他の方法で検出する。幾つかの実施形態では、撮像トランスデューサ52又は治療トランスデューサ54の一方又は両方は、問題の無い経路(clear path:クリアな経路)を確保するために、関連するマスター制御及び画像分析ルーチンによって生成された信号又は制御ルーチンに基づくなどして、(内部又は外部の運動又はモータのいずれかによって)動かされ得る。他の実施形態では、簡略化された超音波パルスシーケンス又は代替センサデータが、クリアな経路の判定のための1つ以上の基準を決定するために使用される。
【0037】
このことを念頭に置いて、本明細書では、再構成画像又は生画像データを治療ビーム(例えば、超音波治療ビーム)と併用して、神経調節治療などの治療又は処置を適用するための様々な例示的実施形態が説明される。様々な例示的な実施形態は、異なる撮像トランスデューサ52及び治療トランスデューサ54の形状及び向き、トランスジューサアセンブリの内部及び外部の動きのオプション、撮像ビームが治療ビームの全音響ウィンドウ(full acoustic window)を実質的に又は完全に包含することを確実にする制御スキーム、及びクリアな経路の決定を行うために画像データ及び/又はセンサデータを分析するアルゴリズム概念を例示する。
【0038】
第1の実施形態は、静的トランスデューサ構成として特徴付けられ、その例が図3~5に示されている。特定のこのような実施態様では、撮像トランスデューサ52及び治療トランスデューサ54は、使用時に患者に接触するように構成されたキャップ150(例えば、音波透過性キャップ:sonolucent cap)を含むプローブ内にある。すなわち、撮像トランスデューサ52及び治療トランスデューサ54は、キャップ150と、トランスデューサをキャップ150から分離する内部スタンドオフ(internal standoff)152とによって、使用時に患者から分離される。スタンドオフ152は、少なくとも1つの寸法において、患者インターフェース以降における画像ビームによる治療ビーム経路の被覆を確実にする(すなわち、死角(blind spots)がキャップ150によって包含される空間内で移動される)ような大きさ又は寸法にされる。静的構成ではトランスデューサ要素の動きがないため、これら及び他の静的トランスデューサ構成における内部スタンドオフ152は、固体又は流体材料から構成され得る。
【0039】
このような3つの静的トランスデューサの実施例を図3~5に示す。これらの3つの図(および後続の構成図)では、それぞれの構成に対応する3つの異なる図が示されている(1)音響窓に対応する上面図、(2)方位角図(azimuth view:アジマスビュー)、(3)方位角図に対して90°回転した仰角図(elevation view:エレベーションビュー)。
【0040】
図3では、隣り合ったトランスデューサ構成(side-by-side transducer configuration)が描かれており、撮像トランスデューサ52のアレイが、一対の治療トランスデューサ54アレイと直線的に隣り合った構成で配置されている。この例では、この構成で生成される画像ビーム160及び治療ビーム162の範囲が図示されている。この例に示すように、この構成では、トランスデューサ50と患者インターフェースまたは接触位置との間のオフセットにより、患者インターフェース(すなわち、キャップ150)から外側に向かって、撮像ビーム160による治療ビーム162のオーバーラップが存在する。すなわち、キャップ150から患者の体内への治療ビーム162の伝播方向において、治療ビーム162が通る経路は、撮像ビーム160内に完全に包含される(fully encompassed)。
【0041】
図4に目を向けると、患者インターフェース(すなわち、キャップ150)から外側に向かって、撮像ビーム160による治療ビーム162の部分的なオーバーラップを提供する同心トランスデューサ構成(co-centric transducer configuration)が図示されている。特に、底面立面図に見られるように、治療ビーム162は、皮膚表面付近(すなわち、キャップ150付近)では部分的に撮像ビーム160の範囲外にあるが、より深いところでは撮像ビーム160に包含される。このようなアプローチは、治療ビーム162のエネルギー密度の実質的な割合(例えば、70%)が撮像ビーム160によって皮膚表面で交差されることを保証するために、経路決定または評価の基準が緩和される状況(contexts)において好適であり得る。
【0042】
図5に目を向けると、電子リアルタイム3次元(e4D)イメージャ(例えば、撮像トランスデューサ52のアレイ)を採用した実施形態が描かれており、e4Dイメージャは、一連の連続画像内で治療ビーム162と完全に交差するようにXY次元でステアリングすることができる。描かれている例では、e4Dイメージトランスデューサアレイが中央に配置された同心トランスデューサ構成(co-centric transducer configuration)が図示されているが、サイドバイサイド構成も適している。撮像ビーム160のステア性により、治療ビーム162の範囲の完全なカバレッジを効果的に得ることができる。
【0043】
前述のことを念頭に置いて、図6~8は、静的トランスデューサの実施形態のさらなる例を描いており、この例では、撮像トランスデューサ52は、プローブ面の外周に沿って1つ以上の環状リングとして(すなわち、環状撮像トランスデューサアレイとして)提供されてもよい。特定の実施態様では、撮像トランスデューサ52のアレイは、完全にサンプリングされた2Dアレイと比較してより少ないチャネルを利用し、合成開口ビームフォーミング(synthetic aperture beamforming)などの技術を使用して高品質の体積イメージング(high quality volumetric imaging)をサポートするスパース2Dアレイとして提供されてもよい。この周囲撮像アレイ(perimeter imaging array)は、本明細書で論じるように、プローブ42と皮膚表面200との間の完全な接触の検証を容易にする。環状イメージングトランスデューサアレイ内には、環状及び円形の治療トランスデューサ54が凹状に配置されている(すなわち、多素子治療トランスデューサアレイ)。この配置は、活性高強度集束(active high intensity focused)超音波(HIFU)開口面積を最大化し、図6の透視図に見ることができる。
【0044】
図7では、これと同じ配置が描かれているが、治療トランスデューサ54によって生成された治療ビーム162が図示されている。この描写では、円錐形(cone-shaped)の治療ビーム162が、ターゲット領域をターゲットにするために使用され得る焦点スポット56に集束して示されている。一実施形態では、図7の焦点スポット56に関連する移動矢印(movement arrows)で示すように、焦点深度を可変または設定可能にするために、治療トランスデューサ54を位相調整することができる。
【0045】
図8には、治療ビーム162と画像ビーム160の両方が、さらなる関連性を提供し、画像ビーム160の範囲が治療ビーム162の範囲を超えることを説明するために一緒に示されている。更に、環状の画像変換器アレイがプローブの患者接触面の外周に配置され、図示の実施形態では凸状(即ち、ドーム状)の患者接触面のため、プローブの「リフトオフ」事象が画像変換器アレイを用いて検出され得る。すなわち、完全な接触がない場合、取得された画像データにリフトオフのアーチファクトが観察され、警告または治療停止が開始されることがある。
【0046】
図3~8は静的トランスデューサ配置を描いているが、撮像トランスデューサ52または治療トランスデューサ54の一方または両方が動作中に移動する(すなわち、動的トランスデューサ配置)他の実施態様も考えられる。例えば、図9図13は、撮像トランスデューサ52又は治療トランスデューサ54の一方又は両方が動作中に移動する「動的」変換器構成と特徴付けることができるものの例を描いている。一例として、図9及び図10は、撮像トランスデューサ52及び治療トランスデューサ54が、動作のために位置の内外を移動する矩形アレイ(矩形音響窓180によって符号化される)として提供される例を描いている。変換器要素の動きのために、これら及び他の動的変換器構成の内部スタンドオフ152は流体で満たされることがある。
【0047】
これを念頭に置いて、図9は、撮像トランスデューサ52と治療トランスデューサ54のアレイが内部振り子(振り子アーム(pendulum arms)182を有する)によって交互に動作位置に移動され、撮像トランスデューサ52と治療トランスデューサ54が実質的に前後に揺動され、トランスデューサの一方のセットが動作位置(すなわち、音響窓180)にあるときに他方のセットが動作位置にないようにする例を描いている。同様に、図10は、一度に1組のトランスデューサのみが動作位置(すなわち、音響窓180内)にあるように、撮像トランスデューサ52と治療トランスデューサ54とを動作位置間で移動させるために、直線運動ステージまたは回転運動ステージが採用される(直線運動アーム184によって示される)別の実施形態を示す。両実施形態に示されるように、画像ビーム160は、方位角及び仰角の両方の観点(both the azimuthal and elevation perspective)から治療ビーム162を完全に包含(fully encompasse)する。
【0048】
図11には別の動的変換器構成(dynamic transducer configuration)が描かれている。この例では、治療用トランスデューサ54のアレイは、画像トランスジューサ52の回転可能なアレイがリング構造の空の中央領域に配置される固定環状アレイとして提供される。この例の画像変換器アレイ52は、動作中に画像ビーム160を掃引して、画像掃引中に治療ビーム162の全範囲をカバーするように、軸を中心に少なくとも部分的に回転するように構成されている。一例として、一実施形態では、撮像トランスデューサ52のアレイは、治療トランスデューサ54のアレイによって形成されたリング構造を通る中心軸を中心として±90°回転又は振動(動き矢印186によって描かれる)することができる。このようにして、撮像トランスデューサ52によって生成された画像ビーム160の各掃引は、方位角及び仰角の両方の観点から治療ビーム162の範囲を包含する。
【0049】
図12及び図13には、動的変換器構成に使用するために、さらに2つの一般的に環状の治療用変換器アレイが描かれている。これらの実施例では、治療トランスデューサアレイ構造は、円形とは対照的に楕円形であるが(代わりに円形アレイ構造が採用されてもよいが)、撮像トランスデューサ52のアレイが配置される中央開口を保持している。撮像トランスデューサ52のアレイが治療トランスデューサ54の環状アレイによって画定された平面内で回転する図11の実施例とは対照的に、これらの実施例では、撮像トランスデューサ52のアレイは、動作中に仰角方向に掃引するように、治療トランスデューサ54によって形成された平面(運動矢印(motion arrows)188によって描かれている)に対して傾斜している。図12及び図13の実施例は、治療トランスデューサ54のアレイが撮像トランスデューサアレイと共に傾斜するか(図13)、傾斜しないか(図12)において異なる。
【0050】
例えば、図12に目を向けると、この実施態様では、治療トランスデューサ54のアレイは、動作中(during operation)に撮像ビーム160を仰角方向に傾斜(すなわち、掃引)させることができるように、撮像トランスデューサ52の中央の傾斜可能なアレイに対して固定されている(すなわち、回転しない)。この実施例では、最大傾斜角は、図12に示すように、治療ビーム162が患者に入る最も遠い範囲を撮像ビーム160によって見ることを可能にする。このようにして、撮像ビーム160は、治療ビーム162の全活動領域(entire active area)にわたって掃引され得る。
【0051】
図13では、同様の配置が図示されているが、治療トランスデューサ54のアレイと撮像トランスデューサ52のアレイとは、仰角方向に(in the elevation dimension)一緒に移動(すなわち、傾斜)するように固定または接着されている。画像ビーム160と治療ビーム162の同時傾斜により、画像ビーム160は、治療ビーム162が交差する音響窓全体を見ることができる。この例では、最大傾斜角度(maximum tilt angle)により、図13に示すように、治療ビーム162が患者に入射する最も遠い範囲(furthest extent)を見ることができる。
【0052】
この配置が採用される手順では、イメージングビーム160を使用して経路評価を実行できるように、トランスデューサを一緒に傾斜(jointly tilte)させる間、治療ビーム162のスイッチを切ることができる。例えば、コントローラ又は制御回路は、経路の決定又は分析を容易にするために、トランスデューサアレイの動き(例えば、傾斜)をシーケンス化することができる。経路が決定され、及び/又は許容可能であることが確認されると、コントローラ又は制御回路は、トランスデューサアレイを再度センタリングし、治療ビーム162をオンにすることができる。
【0053】
図14に目を向けると、さらなる動的実施形態が側断面図で図示されている。この例では、プローブ42を治療部位で患者に固定または配置するために、ベルトまたは他の取り付け装置などによって患者に取り付けることができるプローブ42の本体が描かれている。描かれている実施形態では、治療トランスデューサ54は、治療ビーム162の移動を引き起こすように内部(すなわち、プローブ内)で動かされる(例えば、揺動される)。しかし、撮像トランスデューサ52は所定の位置に固定されており、それに対応して画像ビーム160は移動しない。しかし、画像ビーム160は、使用時に治療ビーム162の可動範囲の範囲を包含する。
【0054】
この実施形態を念頭に置いて、このような構成の使用例を提供することができる。この例では、プローブ42は、ベルト、ハーネス、または他の取り付け機構を使用して、X寸法およびY寸法において±2cm(プラスマイナス2cm)以内など、治療部位に粗く位置合わせされることがある。撮像ビーム160の視野は、治療ビーム162の運動範囲を包含するのに十分広い。ある実施態様では、治療トランスデューサ54は、X次元において±15°(プラスマイナス15度)の範囲で機械的に制御され、Z次元において±4cm(プラスマイナス4cm)の範囲で電子的に集束される。このような可動範囲および集束範囲は、8cm±4cm(プラスマイナス4cm)の深さのターゲット領域を標的とするのに適している。このような構成は、撮像ビーム160を使用してターゲット領域のクリアな経路の決定及び標的化を実行するために、及び/又は、呼吸及び/又は心臓の動きによるような内部運動を受けるターゲット領域の自動化された移動及び追跡を可能にするために、標的化及び治療ロジックを有するプローブ42の粗雑な配置(coarse placement)を可能にするのに有用であり得る。
【0055】
先の実施形態では、プローブ42の内部の機構(例えば、モータ、82、84)を利用して、撮像トランスデューサ52または治療トランスデューサ54のアレイの一方または両方のプローブ42内での運動を引き起こす。変換器アレイの内部運動は、治療ビーム162が通過するターゲット領域上で画像ビーム160を移動または走査するために使用される。図15に目を向けると、更なる代替案では、トランスデューサに加えられる運動は、代わりに、ユーザが誘導する手動運動又は取り付け又は取り付け構造に設けられた外部モータを含む外力(すなわち、トランスデューサアレイに内部的に加えられるのとは対照的に、プローブ又はプローブ本体自体に外部から加えられる力によって引き起こされる運動)であってもよい。
【0056】
図15において、描かれている構造は図13に示されているものと同様であるが、撮像トランスデューサ52と治療トランスデューサ54のアレイはプローブ42のヘッド内の所定の位置に固定されている。その代わりに、患者に対するトランスデューサ50の移動は、プローブ42の外部移動によって達成される。すなわち、描かれている実施例は、実質的に、動的な外部運動を受ける静的な変換器構造であり、この動的な外部運動は、プローブマウント内の外部モータによって、および/または、ユーザが誘導する手動運動によって提供され得る。この実施例では、立面図(elevation views)において、撮像トランスデューサ52と治療トランスデューサ54は、プローブ42のヘッドまたは接触部分のコンテキストで示されている。プローブ42は、クリアな経路を考慮して、評価中の潜在的な治療領域に対して画像ビーム160を掃引するように、外力又は運動の適用によって、例えば、平行移動及び/又は傾斜移動(translated and/or tilted)させることができる。一例として、一実施形態では、プローブ42は、治療ビーム162の印加前又は印加中に経路分析又は評価を行うことができるように、患者の皮膚200に対して1自由度又はそれ以上の自由度(one or more degrees-of-freedom)で動かすことができる。
【0057】
前述の議論は、一般的に、超音波治療を提供するための超音波プローブ内の撮像トランスデューサ52と治療トランスデューサ54の両方の使用に関するものである。前述したように、特定の実施形態では、特定の問題をよりよく識別し対処するために、他のセンサまたはセンサ配列(sensors or sensing arrangements)も採用することができる。このことを念頭に置いて、図16に目を向けると、センサ70を含む超音波プローブヘッドの患者に面する表面が示されている。この実施例では、同心撮像トランスデューサ(co-centric image transducers)52及び治療トランスデューサ54が、説明の目的で特定の先行実施例に従って図示されているが、本議論は、理解され得るように、他の実施例にも関連し得る。従って、それぞれの変換器によって生成される画像ビーム及び治療ビームは、使用時に完全に又は部分的に重なることがある。本実施例において描かれているセンサ70は、音響窓の周囲にリング状のセンサとして設けられている。
【0058】
一実施形態では、センサ70の一部またはすべてが電極であり、「リフトオフ」チェックおよび/または音響結合チェックを実行するために使用することができる。例えば、センサ70が電極である場合の「リフトオフ」チェックの状況(contexts)では、各電極のインピーダンスは、システム起動時などの開回路構成(open circuit configuration)で測定することができる。処置を行う前にプローブを患者に接触させると、各電極のインピーダンスが再び測定されることがある。その後、各電極のインピーダンスが、電極の完全接触に対して予想されるインピーダンスの範囲内または予想されるインピーダンスの範囲内で著しく低下したことを判定するために、各電極に対してチェック(例えば、1対1チェック:one-to-one check)が実行されてもよい。すなわち、各電極の初期インピーダンス値とそれぞれの電極の接触後インピーダンス値を比較し、インピーダンスの低下が完全接触を示すと決定されたしきい値を超えていることを確認する。電極が同様のインピーダンス値を持つことを確認するために、電極をチェックまたは比較することもある。接触不良または「リフトオフ」を示すインピーダンス値の比較は、プローブを再配置するよう警告または指示をもたらすことがある。逆に、良好な接触および/または“リフトオフ”がないことを示すインピーダンス値の比較は、治療を開始するか、または治療ビームの現在の経路の評価に寄与する。
【0059】
センサ70が電極である別の実施態様では、音響結合チェック(acoustic coupling check)が実行されてもよい。この例では、治療を行う前にプローブを患者の体に当てると、電流がプローブ面(すなわち、音響開口部;acoustic aperture)を横切って1つの電極から別の電極に送られることがある。例えば、電極Aから電極Eへ、電極Bから電極Fへ、電極Cから電極Gへ、電極Dから電極Hへ、といった電流励起パターンを採用することができる。各電流パターンについて、測定されたインピーダンスを、音響開口部全体にわたる完全なゲル結合について予想されるインピーダンスの範囲(すなわち、開口部全体にわたる良好な音響結合とゲル塗布を仮定したインピーダンス値の範囲)と比較する。音響結合の程度が良好であれば、電流パターンは体をほとんど貫通せず、代わりに皮膚表面のゲル層を横切って流れるため、インピーダンス値は低くなる。逆に、インピーダンス値が所定の閾値を超えると、音響結合が悪いことを示す場合があり、音響ゲルの追加塗布および/またはプローブの再配置が必要となる。しかし、測定されたインピーダンス値が閾値以下であれば、音響結合は許容範囲内であり、治療を続行することができる。
【0060】
更なる実施形態では、センサ70は代わりに圧力センサであってもよい。そのような実施形態では、圧力センサは、「リフトオフ」チェックを実行するために使用されてもよい。このような実施形態では、各圧力センサは、システム起動時などの「非接触」構成用に初期較正または再較正される(initially calibrated or re-calibrated)。その後、各圧力センサにおける接触力は、治療セッションの開始前にプローブが患者の身体に適用された(applied)ときに測定され得る。
【0061】
次に、プローブが患者に接触しているときに測定された接触力が、音響開口部の全周囲の完全な接触を示していることを確認するために、各圧力センサに対してチェック(例えば、1対1のセンサチェック:one-to-one sensor check)を実行することができる。すなわち、各圧力センサの初期接触力がそれぞれの圧力センサの接触後の接触力と比較され、測定された接触力が周囲の完全接触を示すと決定されたしきい値を超えていることが確認される。接触不良または「リフトオフ」を示す接触力の測定値は、警告またはプローブの再配置を指示する結果とすることができる。逆に、接触が良好であること、および/または「リフトオフ」がないことを示す接触力の測定値では、治療が開始することができる。
【0062】
さらなる実施形態では、センサ70は、代わりに受動的キャビテーション検出センサ(passive cavitation detection sensor)であってもよい。このような実施形態では、キャビテーション検出は、組織の損傷を回避するために音響キャビテーション(acoustic cavitation)の発生を監視するために使用することができる。音響キャビテーションとは、液体中の超音波場の影響下で既存の微小気泡が成長し崩壊することである。キャビテーションには、非慣性キャビテーションと慣性キャビテーション(non-inertial cavitation and inertial cavitation)の2つの段階がある。非慣性キャビテーションは、音響場の強度が気泡の完全崩壊を引き起こすには不十分である場合に、液体中の小さな気泡(small bubbles)が音響場の存在下で強制的に振動させられるプロセスである。慣性キャビテーションは、流体の慣性によって気泡が激しく崩壊するプロセスである。キャビテーションのこれら2つの段階は、キャビテーション検出センサによって検出することができる。図17に目を向けると、このような実施形態では、キャビテーションセンサは、単一素子の超音波センサ、または選択/較正された周波数範囲を有するイメージングアレイの1つのチャンネルとすることができる。キャビテーションセンサは、単一ビーム(Aライン)超音波信号を送信/受信することができる(ステップ250)。受信されたAライン信号(A-line signal、例えば、時間領域信号)252は、次いで処理され得る(ステップ254)。信号処理手順は、Aライン信号に対してフーリエ変換を実行することによって時間領域信号252を周波数領域信号256に変換することを含んでよい。周波数領域信号256は、周波数領域信号における高調波、低調波、および広帯域ノイズ(harmonics, subharmonics, and broadband noise:ハーモニクス、サブハーモニクス及びブロードバンドノイズ)の出現について監視されてもよい。高調波および低調波の出現は、非慣性キャビテーション264の発生を示す場合がある。広帯域ノイズの出現は、慣性キャビテーション262の発生を示すことがある。その後、音響場がキャビテーション限界の閾値以下であり、治療を実行しても安全であることを確認するために(ステップ266)、キャビテーション検出センサに対してチェック(例えば、1対1のセンサチェック)が実行されてもよい。
【0063】
前述は、クリアな経路判定に適した様々な構造的実施形態及びトランスデューサ構成の例に関するものであるが、図18は、これらの実施形態のうちの特定のものを使用する際のステップを示すサンプルプロセスフローを描いている。一例として、図18は、画像ベースの経路評価(path evaluation)及び対応する治療送達(therapy delivery)を実行するのに適し得るステップに関する。図示されたプロセスフローに目を向けると、それぞれのプローブ構造42の撮像トランスデューサ52(または組み合わされたトランスデューサ50)を用いて、最初に画像データ302が取得される(ステップ300)。画像データ302は(再構成された画像の形態で、又は再構成されていない未加工の(生の)データとして)、ターゲット領域の全部又は一部が画像データ中に可視である(visible)か、そうでなければ存在するかを決定するために分析される(決定ブロック306)ことがある。実際には、この決定306は、治療プロトコルに基づき、患者の解剖学的構造又は人口統計学など(patient anatomy or demographics, and so forth)に基づき、ユーザによって指定され得る閾値ターゲット領域可視性310(例えば、可視性パーセント)に基づいてもよい。さらに、実際には、このような閾値可視性は、パーセント可視性、適用可能な治療エネルギーの範囲、治療プロトコルが適用可能な持続時間範囲、可視性であるターゲット領域内の関心のある特定の特徴などの関数であり得る有効性基準のうちの1つ以上に基づいて、ターゲット領域の特定のプロトコル固有の特徴が可視であるかどうかに基づいて、生のパーセント(raw percentage、例えば、50%可視性、75%可視性、95%可視性など)に基づいてもよい。このようにして、判定306は、治療ビーム162を作動して(activate:活性化して)治療セッションを実行するのに十分な程度に、撮像ビーム160(治療ビーム162と実質的に又は完全に一致する)内にターゲット領域が存在するか否かを実質的に判定する。
【0064】
このようなアプローチにさらなる背景を与えうる様々な実世界のシナリオを参照すると、脾臓と肝臓(spleen and liver)の2つが例示的な例となる。脾臓に関しては、標的化された超音波ベースの治療の効果は、一般的に脾臓組織上で均一であり、それに応じて、より低いパーセンテージの可視性(例えば、50%)が許容され、依然として所望の治療効果が得られる可能性がある。しかし、脾臓をターゲットにするために、トランスデューサは一般的に肋骨の間に配置されるため、肋骨が不注意にもビーム経路内に入る可能性がある。さらに、膵臓は脾臓の近くにあるため、標的組織と非標的組織が不注意に重なる可能性もある。これに対応して、脾臓に基づく治療では、安全基準334の高い割合(例えば90%)が、許容される低い可視性とともに採用される可能性がある。
【0065】
逆に肝臓では、超音波治療の効果は肝臓組織に対して非均一的(nonhomogeneous)である。すなわち、所望の治療効果を得るためには、肝臓(肝門部(porta hepatis)など)の特定の領域、サブ領域、または解剖学的構造またはサブ構造を標的とする必要がある場合がある。その結果、脾臓の例とは対照的に、所望の治療効果を得るために、より高いパーセンテージの可視性(例えば75%)が指定され得る。さらに、脾臓の例とは対照的に、肝臓の場合、肝臓へのアクセスは、骨を避ける心窩部(epigastric、すなわち、トランスデューサは、胸郭の下の腹部の軟部組織の皮膚上に配置されることがある)であり、標的外のエネルギーは、主に、治療効果がほとんどない肝臓の他の葉に主に当たる(primarily land)ため、より低い安全基準が許容されることがある。これにより、安全基準を低く、あるいは低くすることができるかもしれない(例えば、75%の安全基準)。このような安全基準の引き下げは、必ずしも安全上の懸念がないことを示すものではないが(肝臓の近くには胃や腸があるため)、想定されるビーム経路(すなわち、腹部におけるプローブの位置や肝臓の解剖学的構造)を考慮すると、安全上の懸念はいくらか緩和される可能性がある。
【0066】
対象領域が撮像された領域に存在しない(又は十分に存在しない)場合、是正動作(remediating action:改善処置)320が実行され得る。このような是正動作320は、プローブ構造42の位置を変更及び/又は向きを変更するようにユーザ(例えば、特定の例では患者)に通知を提供することを含み得る。通知に応答して、ユーザは、ターゲット領域を含み、そうでなければ適切であると判定された経路が存在すると判定されるまで、プローブヘッドを平行移動及び/又は傾斜(translate and/or tilt)させることができる。あるいは、是正動作は、プローブの性能を電子的に適合させる(例えば、撮像ビーム及び/又は治療ビームを電子的に掃引してターゲット領域への経路を見出す、(本明細書で論じるような動的トランスデューサ構成で)トランスデューサ素子を内部的に移動させて経路を見出す、又はそうでなければ、経路を達成するために本明細書で論じるようにトランスデューサ50の位置及び/又は動作パラメータを自動的に調整する)ように、システムによって自動的に実行されてもよい。例えば、プローブ42において電子ビームステアリングが可能である範囲において、プローブ42は、ターゲット領域を識別する試み及び/又は経路評価基準を満たす試みにおいて、埋め込まれた電子運動制御を用いて、走査可能領域を自動的に掃引することができる。
【0067】
プローブ42からターゲット領域まで経路が存在すると判定された場合、評価中の経路に対して他の関連する因子または条件が満たされているかどうかを確認するために、さらなる判定330が行われることがある。例として、判定330の一部として、評価中の経路の安全基準334、治療用量336、及び治療効果338に関する因子が考慮されることがある。これらの要因のうちの1つ以上により治療ビームが適用されるべきではないと判定された場合、上述したように是正動作320が実行される。
【0068】
特定の実施形態では、判定330は、画像データ302の解析に全体的または部分的に基づくことができる。画像データ302は、従来のアプローチを用いて、または機械学習もしくは人工知能アプローチによって解析されてもよい。このような解析は、軟組織に対して相対的に高密度又は低密度の構造又は領域(例えば、骨、軟骨、ガス充填空洞)であって、ターゲット領域への経路に存在する構造又は領域を示す画像又は画像データ領域を識別することを含むことができる。このような構造は、画像解析と治療送達の両方において、超音波エネルギーの音響吸収または反射(例えば、シャドーイング)に関連する可能性がある。患者とプローブ構造42との間の音響結合の適切さもまた、判定330の要因となり得、音響結合不良は、十分な音響結合の条件下で取得された画像データに対して過度にぼやけている又は薄暗い画像データ302内の領域又は領域に基づいて判定される。プローブ42の一部(例えば、端部)が患者の皮膚に押し付けられておらず、画像データの端部に沿って画像がないか又は薄暗い画像によって示され得る「リフトオフ」状態を判定するための画像データ302の分析もまた実行され得る。
【0069】
判定ブロック330において、治療ビーム162を印加することができると判定された場合、トランスデューサ50(例えば、1以上の治療トランスデューサ52)を作動させて、ターゲット領域に標的化された治療ビーム162を印加する(ステップ340)ことができる。治療ビーム162は、時間間隔にわたってターゲット領域に印加することができる。治療セッションが完了したと判定されると(判定ブロック344)(例えば、所定の治療用量がターゲット領域に蓄積された:the prescribed therapy dose has accumulated at the target region)、治療ビーム162をオフにして治療を終了することができる(ステップ346)。逆に、設定時間が経過しても治療が完了しない場合は、治療が完了するまで(プローブ42の再位置決め後などに)経路評価とトランスデューサの位置合わせを繰り返すことができる。また、図18に関してステップの1つの順序が描かれているが、実際には、ステップの特定の順序は異なる順序で実行されてもよいことが理解されるべきである。
【0070】
本技術のさらなる態様では、経路分析または評価の結果に基づいて、治療トランスデューサ54のそれぞれのサブセットの選択的な活性化および非活性化(activation and deactivation:作動および非作動)を可能にする治療トランスデューサおよび制御スキームを採用することができる。一例として、経路分析に基づいて、ターゲット領域へのクリアな経路を有する治療トランスデューサ54のサブセットを活性化のために選択することができる一方、対応して、経路分析に基づいてクリアな経路を欠く治療トランスデューサ54の異なるサブセットを、所定の治療投与のために選択的に非活性化することができる。このような実施形態では、図18に示されたプロセスフローに関して、決定ブロック306および330の一方または両方における経路分析決定は、条件付きまたは部分的(qualified or partial)であってもよい、すなわち、クリアな経路が、治療トランスデューサ54のすべてではなく、治療トランスデューサ54の一部について存在すると決定されてもよい。この実施態様では、使用者にプローブの位置変更および/または方向転換を要求する代わりに、治療トランスデューサ54の閾値量または割合(例えば、50%、75%、85%、95%など)がクリアな経路を有すると判定され、クリアな経路を有する治療トランスデューサ54のみを作動させることによって治療が実施され得る。さらに、このようなシナリオでは、プローブ42の所与の位置および/または向きに対して治療投与を最適化するために、活性化された治療トランスデューサ54のサブセットの強度および/または持続時間を動的に調整するために、コンピュータに実装されたルーチンまたは制御スキームが採用されることがある。このような状況では、治療トランスデューサ54の作動および/または動作パラメータに対して行われる動的調整により、プローブ42の再位置決めおよび/または再方向付け(repositioning and/or reorientation:再配置および/または再配向)が低減または排除される可能性がある。
【0071】
本明細書で論じるように、実際には、これらの考慮事項のうちの特定のものは、電極、キャビテーションセンサ、圧力センサなど、プローブ42の内部または外部に設けられた1つまたは複数のセンサ70を使用して取得されたセンサデータ360(ステップ362)も利用することができる。このようなセンサデータ360は、治療ビーム適用を続行するか否かを決定する際に考慮され得る特定の因子を評価する目的で、画像データ302に加えて、または画像データ302の代わりに利用され得る。さらに、いくつかの実施態様では、治療トランスデューサアレイの個々の要素(すなわち、治療トランスデューサ54)によって生成された信号を、妨害解剖学的構造(blocking anatomy)を示すエコー中の大きな反射または他のシグネチャ(signatures)を識別するため、音響結合の十分性を判定するためなど、経路判定の一部として使用することができる。描写された実施例では、センサデータ360は、プローブヘッド「リフトオフ」事象の有無を決定するために(ステップ364)、画像データ302に加えて又は画像データ302の代わりに使用されることがあり、その結果は、決定ブロック330で考慮される因子であることがある。同様に、プローブヘッドと患者との間の音響結合の十分性を判定するために(ステップ366)、画像データ302に加えて、又は画像データ302の代わりに、同じ又は異なるセンサデータ360を使用することができ、その結果は、判定ブロック330で考慮される要因となり得る。
【0072】
前述の議論は、患者治療の状況において治療ビーム経路を分析または評価し、安全な方法で患者のターゲット領域に所定の超音波投与量を送達するためにそのような決定を使用するために利用され得る様々な装置、トランスデューサ構成、および方法論(methodologies)およびステップに関する。実際、本明細書で議論されるような経路評価技術の使用は、医療訓練をほとんど受けていない個人、あるいは患者自身さえも含めて、そのような投与量を適用する訓練を受けていない人による超音波治療の安全な適用を可能にする可能性がある。入射点および治療ビーム162の伝搬経路にクリアな経路があることを保証することにより、有害なトランスデューサの設計制約(detrimental transducer design constraints、例えば、画像処理および治療性能の妥協が必要となるコヒーレント画像処理(coherent imaging)および治療周波数)を課す必要がない。また、治療ビームを可視化することによって治療送達を定量化し、撮像と治療送達を同時に行いながら画像の破損を緩和するような精巧な制御やアルゴリズムも必要ない。これらの利点により、撮像と治療を目的とした低コストのシステムが可能になる。
【0073】
さらに、代替案に関して、他のアプローチが同等の機能を提供するためには、本明細書に記載されている以外の何らかの手段によって、ターゲット領域における治療ビームを定量化する必要がある。厳密な超音波ベースのシステムでは、これはおそらく、画像内の治療ビームを視覚化するか、または体内深部の実際の超音波エネルギーを測定する他の高度な信号処理技術を含むであろう。本アプローチは、そのような視覚化や測定の必要なしに機能する。
【0074】
特に、真の投与量(true dose:正しい用量)を定量化することは魅力的かもしれないが、これは実際には困難であり、画像/治療システムの多くの側面を困難、大規模、高価にする可能性のある追加要件を伴う。例えば、ビームを可視化するために、コヒーレントイメージングと治療周波数(coherent imaging and therapy frequencies)が採用されることがある。この場合、撮像周波数は所望の周波数より低く(分解能が低下)、治療周波数は所望の周波数より高く(減衰が大きく、治療効果がないと思われるレベルまで治療パワーが低下)、妥協が必要となる。その結果、このアプローチでは画像化と治療の性能が最適とは言えず、新しい広帯域トランスデューサ材料の開発が必要となる。さらに、治療ビームを可視化するために、画像信号と治療超音波信号が同時に印加される。このような配置では、治療用超音波信号が画像を乱し、標的の位置特定が難しくなる。さらに、代わりに他の高度な信号処理技術を使用する場合、非常に高い画像解像度が必要となり、大型コンソールシステムと同様の複雑なシステムを使用する必要がある。このようなシステムは、現在のアプローチとは対照的に、家庭での使用や訓練を受けていない個人による使用には非現実的である。
【0075】
開示された技術では、(1)治療ビーム経路内の非軟組織領域(骨または骨類似構造、ガス充填空洞など)の存在、(2)プローブヘッドの部分的な「リフトオフ」、または(3)音響結合の十分性、のうちの1つ以上を評価するクリアな経路の判定と連動して、超音波治療エネルギー(例えば、神経調節エネルギー)をターゲット領域に送達することができる。これらの要因の一部またはすべてに関してクリアな経路が決定または確認されると、治療ビームがターゲット領域に放射される。
【0076】
本明細書では、実施例を用いて、最良の態様を含む本発明を開示するとともに、任意の装置またはシステムの製造および使用、ならびに組み込まれた方法の実行を含め、当業者であれば誰でも本発明を実施できるようにする。本発明の特許可能な範囲は特許請求の範囲によって定義され、当業者に思いつく他の実施例を含むことができる。そのような他の実施例は、特許請求の範囲の文言と異ならない構造要素を有する場合、または特許請求の範囲の文言と実質的に異ならない同等の構造要素を含む場合、特許請求の範囲に含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0077】
10:神経調節システム 12:エネルギー印加装置 14:パルス発生器 16:コントローラ 20:評価装置 40:治療モジュール 42:プローブモジュール 44:撮像モジュール 50:トランスデューサ 52:撮像トランスデューサ 54:治療トランスデューサ 56:焦点スポット 60、126:HWコントローラ 62、122:MCU 64、124:FPGA 70:センサ 80:任意のアクチュエータ 82:モータ1 84:モータ2 86:患者固有の手動調整 110:マスターコントローラ 112:画像ストリーマ及びリモートコントロール 114:AI解剖学的認識及び追跡 116:誘導投与エンジン 118:ユーザインタフェース 120:サポート分析 122:データロガー 130:治療パルサーレシーバ 132:安全回路 134:電力管理回路 150:キャップ 152:内部スタンドオフ 160:撮像ビーム 162:治療ビーム 180:音響窓 182:振り子アーム 184:直線運動アーム 186、188:運動矢印 200:皮膚
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