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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】新規な柔軟な腸管吻合ステント
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/11 20060101AFI20241125BHJP
   A61L 31/06 20060101ALI20241125BHJP
   A61L 31/04 20060101ALI20241125BHJP
   A61L 31/12 20060101ALI20241125BHJP
【FI】
A61B17/11
A61L31/06
A61L31/04 100
A61L31/12
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023565951
(86)(22)【出願日】2022-04-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-11
(86)【国際出願番号】 CN2022088876
(87)【国際公開番号】W WO2023060870
(87)【国際公開日】2023-04-20
【審査請求日】2023-10-26
(31)【優先権主張番号】202111190317.2
(32)【優先日】2021-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522426722
【氏名又は名称】国科温州研究院(温州生物材料与工程研究所)
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】石 長燦
(72)【発明者】
【氏名】李 徐堅
(72)【発明者】
【氏名】季 志孝
(72)【発明者】
【氏名】潘 ▲る▼▲ち▼
(72)【発明者】
【氏名】楊 嘯
【審査官】滝沢 和雄
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第207445074(CN,U)
【文献】特開2009-011814(JP,A)
【文献】特表2007-513083(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0113323(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/11
A61L 31/06
A61L 31/04
A61L 31/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状のステント本体(1)を含み、前記ステント本体(1)は側壁を含む管吻合ステントにおいて、前記ステント本体(1)の上端と下端はそれぞれ入口端(11)と出口端(12)であり、前記ステント本体(1)の側壁には通孔(2)が1つ以上設けられ、前記貫通孔(2)は牛角状であり、前記牛角状の貫通孔(2)の一方の口部はステント本体(1)の外側における給液孔(21)であり、他方の口部はステント本体(1)の内側における排液孔(22)であり、前記給液孔(21)の口径は前記排液孔(22)の口径より大きく、各前記貫通孔(2)の給液孔(21)はステント本体(1)の入口端(11)の側にあり、排液孔(22)はステント本体(1)の出口端(12)の側にあり、前記ステント本体(1)はし、前記入口端(11)の環状の上縁にボス(3)が設けられ、前記出口端(12)の下縁は凹多角形の構造であり、前記凹多角形の構造の下縁側のそれぞれの優角(4)及び非優角辺にはいずれもステント本体(1)の側壁において内向きに折り畳まれる褶曲構造(41)が形成され、前記凹多角形の構造の下縁に力がかかって変形すると優角(4)の角度が小さくなり、前記牛角状の貫通孔(2)の深さは腸管吻合ステントの側壁より大きいことを特徴とする管吻合ステント。
【請求項2】
前記ステント本体(1)に縫合部が含まれ、前記縫合部は入口端(11)の環状の上縁及び出口端(12)の凹多角形の構造の下縁の非優角を含むことを特徴とする請求項1に記載の管吻合ステント。
【請求項3】
前記褶曲構造(41)の長さはステント本体(1)の高さの1/2~2/3であることを特徴とする請求項1に記載の管吻合ステント。
【請求項4】
前記ステント本体(1)の内壁の厚さは0.20~0.6mmであることを特徴とする請求項に記載の管吻合ステント。
【請求項5】
前記牛角状の貫通孔(2)の深さは1~2mmであることを特徴とする請求項1に記載の管吻合ステント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消化管の再建・吻合術用機器の技術分野に関し、具体的には、新規な柔軟な腸管吻合ステントに関する。
【背景技術】
【0002】
消化管の再建・吻合術は腹部外科で最も一般的な手術操作の1つであり、1世紀近くにわたる消化管外科の発展の歩みを見ると、吻合部漏出の発生率は明らかに低下しておらず、これは消化器外科手術の成功を妨げる世界的な難題の1つである。消化管の良性及び悪性腫瘍、消化管穿孔、消化管閉塞、出血、虚血などの腸管病変は、一般に病変腸管の一部を切除して吻合する必要があり、従来の方法では、手動縫合による吻合が殆どであるが、ここ数十年、管式吻合器による端々若しくは端側吻合、又は直線型切断吻合器(リニアステープラー)による側々吻合が多く行われるようになる。どの吻合方式であろうと、吻合部漏出という致命的な合併症は防げられないのである。
【0003】
現在、国内外の結腸直腸外科医によって一般的に認可及び実施されているのは、一時的なバイパスルート変更手術であり、例えば、一時的な回腸瘻造設又は結腸瘻造設であり、このような付加的な手術は吻合部漏出から起こる合併症を確実に避けられるが、吻合部漏出の発生率を低減できるかどうかについては言及している文献がまだない。しかしながら、ルート変更手術では計画的な二次手術で復元させる必要があり、再び復元を行うのは消化管の再建と吻合を再び行うことになるため、依然として吻合部漏出、吻合部狭窄などの関連合併症が発生する可能性はあるが、初回の手術と比べて発生の可能性は低い。吻合部の両端の血液供給が良好で、張力を伴わず突き合わせている場合、吻合部領域における腸管内容物、特に糞便内容物の隔離を実現して、相対的に隔絶している、清潔な局所環境を実現するのは、吻合部漏出や、腹膜炎、腹腔内膿瘍などの合併症を予防するための効果的な方式である。当該方式を実現する上で大きな技術的ボトルネックは理想的な吻合補助材料の取得である。腸管吻合の目的は吻合部の両端の腸管の物理学的、組織学的及び生理学的機能を回復させることである。現在、従来の吻合器の主な問題点は以下を含む。(1)金属吻合器は生分解性ではないため、体内に永続的に留置される。(2)分解性高分子材料吻合器は、創傷組織との機械的適合性が不十分である。(3)吻合器は組織修復の調節機能を備えないため、腸管の正常な機能の回復に対して合理的な調節を行えない。
【0004】
臨床的には、腸管吻合術の実施は、いずれも、行き届いた術前の準備、適切な手術タイミング、合理的な吻合(手術)方式及び入念な術後管理を含んでいる。そのうち、合理的な吻合方式は最も重要であり、それは手術の成否に直接関わるためである。[9]。理論的には、合理的な吻合方式は次の特徴を備えるべきである。(1)吻合効果が確実であり、吻合後の腸管癒合のプロセスは生理学的条件下の損傷修復過程に適合し、癒合の不足(吻合部漏出)もなければ、癒合の過剰(瘢痕化(繊維化)、吻合部狭窄)もない。(2)操作自体は吻合部の両端の腸壁組織に対する損傷が軽く、操作で用いる吻合部の初期接続物(縫合糸、金属釘など)が引き起こす体の異物反応は軽く、且つ癒合完了後に自ら消える(体外排出又は体内分解)。(3)操作が簡単で行いやすく、普及させやすく、学習曲線が短い。(4)操作の汎用性が高く、例えば、異なる手術部位(小腸、結腸直腸など)、異なる吻合方式(端々、端側など)及び異なる手術タイミング(救急又は手術日を選ぶ)など様々な外科的条件下で適用でき、さらには腹腔内感染、化学療法状態、栄養失調など複雑な全身又は腹腔の局所的な状態下でも適用できる。
【0005】
国内外の複数の研究センターが「体腔内支持法」による様々な消化管吻合術について研究しており、そのうち支持物として機能するキャリアは主に人工的に合成される様々な新規な高分子生分解性材料であり、例えば、Detweiler MBらが滑動型分解性ステントSAINT(sliding absorbable intraluminal nontoxic stent)を用いて腸管の吻合を行い、Buch Nらが通常の一層手術結腸吻合に迅速分解(2時間未満)型高分子ステントプロテーゼ(Polyglycols@Hoechst SBStube)を用いることで、吻合部の粘膜上皮の突き合わせ(mucosal epithelial covering)及び組織の酸素分圧を向上させることができ、Tsereteli Zらがポリエステル材料からなるPolyflexTM(商標)ステントを結腸術後吻合部漏出の動物モデルに用いて、Polynex(商標)ステントは術後合併症を軽減させ吻合部漏出の癒合を促進する役割を果たすということを証明しており、オランダのPolyganics BV社によって発明された「C-sealTM(商標)」も、生分解性高分子材料であり、吻合器と組み合わせて操作すれば、低位結腸直腸手術の吻合部漏出の発生率を低減させることができる。
【0006】
「体腔内支持法」は外科的腸管吻合分野で成功を収めているだけでなく、消化器内視鏡下で応用する場合も同じく優れたパフォーマンスを見せている。自己拡張型金属ステント(Self-expanding metallic stent、SEMS)は内視鏡下「体腔内支持法」の最も一般的な代表であり、使用者はその内部支持の機能を利用して消化管狭窄(又は閉塞)性疾患を治療できるだけでなく、SEMSは消化管穿孔及び吻合部漏出などもともと手術的処置を必要とする外科疾患の治療に用いられるということが繰り返し裏付けられ、ところが現在、その使用は選択肢を提供している症例に限られる。2009年、AmraniLらが「腔内ステントによって誘導される消化管の癒合及び再上皮化」(stent-guided regeneration and re-epithelialization)という概念を打ち出し、彼は腔内ステントが消化管の内容物を迂回させてそれと隔離させることで、癒合する部位(吻合又は損傷部位)は「邪魔のない」環境で癒合すると説明し、しかも癒合の過程では上皮細胞が這い上がるためのプラットフォームを腔内ステントが提供することで、「再上皮化」が促進される。近年、内視鏡学分野では「管腔内真空療法」(Endoluminal vacuumtherapy、EVT)が提案され、その理念は腔内ステントに似ており、つまり外部に負圧ドレナージを接続できる「スポンジ様」腔内インプラントを用いて、癒合部位の周りの腸内容物を体外に引き出すことで、吻合部は比較的低い圧力と相対的乾燥している条件で癒合を完了するものである。
【0007】
腸管修復機器に関連する国内の特許事情は次のとおりである。発明特許CN111449707Aは、ハンドルベースと、伝動アセンブリと、トリガーアセンブリと、キスカットアセンブリとを含む肛門-直腸吻合器を提案し、伝動アセンブリは、ハンドルベースの内部に設けられるボールねじと、ハンドルベースの尾端に設けられ前記ボールねじの尾端に接続される調節機構とを含み、ボールねじの前端にはステイプル当たり座が固定して取り付けられ、トリガーアセンブリは、ハンドルベースに設けられる可動ハンドルと、ボールねじに嵌設されるストレートプッシュロッドとを含み、キスカットアセンブリは、ステイプル押し板と、ステイプルカートリッジハウジングと、ステイプルカートリッジと、環状ナイフとを含む。当該発明ではステイプル押し板、ステイプルカートリッジハウジング及びステイプルカートリッジがいずれも金属材料で作製され、部品は体内で分解できないため、体内に永続的に留置されるか二次手術で取り出すしかない。特許CN109480943Aは分解性材料で作製され、ステイプルボディで穿孔して固定する方式を採用し、ステイプルボディの後端にサポートフレームが設計されるが、吻合リングは硬さが高く、弾性がないため、腸管の蠕動にうまく適応できず、明らかな異物感がある。似ている発明特許としてCN103230265Aがあり、それは分解性材料であるポリグリコール酸、ポリ乳酸を原料とし、消化管の吻合のために利用される。当該吻合器は崩れやすいという特性があるが、腸管組織との機械的適合性はやはり不十分である。理想的な吻合器は次の特徴を備える。(1)腸管内容物を効果的に隔離する。(2)吻合器の埋め込み操作は吻合部の腸壁に対する損傷が小さい。(3)操作が簡単で行いやすい。現在市場の吻合装置はどれもが上記の要件を同時に満たすことができない。
【0008】
上記の内視鏡下及び外科的実施における全ての応用をまとめると、腔内隔離及び腔内減圧は腸管の癒合を促進することができ、そして消化管穿孔、吻合部漏出などの高リスクの状況においても理想的な癒合を安全に実現できると言えよう。実は、外科医師はこの結論に疎くないはずであり、臨床的作業では一般的な胃内・腸管減圧及び腸管瘻造設ルート変更術が「腔内隔離と腔内減圧」の応用例である。「体腔内支持法」は一部の高分子材料を利用して従来の消化管「減圧+外ドレナージ」を「支持+内ドレナージ」に変えるようなもので、患者の生活の量を大幅に高めている。また、インプラントはその機能を遂行した後に自ら分解され、体内に留置されない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来技術の技術上の欠点を解決するために、新規な柔軟な腸管吻合ステントを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明が採用する技術的解決手段は次のとおりである。管状のステント本体を含む新規な柔軟な腸管吻合ステントであって、前記ステント本体は側壁を含み、前記ステント本体の上端と下端はそれぞれ入口端と出口端であり、前記ステント本体の側壁には特殊な形状の貫通孔がいくつか設けられ、前記貫通孔は牛角状であり、前記牛角状の貫通孔の大きな口部はステント本体の外側における給液孔であり、小さな口部はステント本体の内側における排液孔であり、各前記貫通孔の給液孔はステント本体の入口端の側に近く、排液孔はステント本体の出口端の側に近く、前記ステント本体は柔軟な材料を用いて作製され、前記側壁上の牛角状の貫通孔は押圧されて変形すると貫通孔内の分泌物を給液孔からステント本体の内部に排出する。
【0011】
前記入口端の環状の上縁にボスが設けられ、前記出口端の下縁は凹多角形の構造であり、前記凹多角形の構造の下縁のそれぞれの優角にはいずれもステント本体の側壁において内向きに折り畳まれる褶曲構造が形成され、前記凹多角形の構造の下縁に力がかかって変形すると優角の角度が小さくなる。
【0012】
前記ステント本体に縫合部が含まれ、前記縫合部は入口端の環状の上縁及び出口端の凹多角形の構造の下縁の非優角辺を含む。
【0013】
前記褶曲構造の長さはステント本体の高さの1/2~2/3である。
【0014】
前記ステント本体の内壁の厚さは0.20~0.6mmである。
【0015】
前記腸吻合ステントの褶曲構造における側壁の厚さは褶曲構造の上方の側壁の厚さより小さい。
【0016】
前記牛角状の貫通孔の深さは腸吻合ステントの側壁より大きい。
【0017】
前記牛角状の貫通孔の深さは1~2mmである。
【0018】
前記ステント本体は生体柔軟性エラストマーを用いて作製され、前記生体柔軟性エラストマーは、PTMC-b-PEG-b-PTMC共重合体と、PLA、PCL、PBSのうちの少なくとも1種をブレンドして得られ、前記PTMC-b-PEG-b-PTMC共重合体中のPEGの含有量は10~20%であり、前記PLA、PCL、PBSのうちの少なくとも1種のブレンド比は5~30%である。
【0019】
前記柔軟な腸管吻合ステントは以下のステップより製造される。
(1)PTMC-b-PEG-b-PTMC共重合体の合成:合成プロセスは水と酸素のない環境で操作する必要があり、95~80wt%のTMCモノマー、5~20wt%のPEG5000及び1~5wt%の触媒Sn(Oct)溶液を反応管に加え、反応管に撹拌子を入れ、反応管内に水と酸素がないことを保証して、管口を密封し、最後にパラフィルムで管口を密封して酸素と水分が入らないことを確保し、反応管をオイルバスに入れて反応させ、温度は120~150℃であり、反応時間は24~48時間であり、反応終了後、使用に備えて取り出す。
(2)PTMC-b-PEG-b-PTMCの溶解:1:5の固液比で、PTMC-b-PEG-b-PTMC共重合体をCHCl又はDMF又はTHFで溶解し、最初にCHCl又はDMF又はTHFで内壁を複数回洗浄して、シリコーングリース及び未反応のモノマーを落とし、次に過剰のCHCl又はDMF又はTHFを加えて、シェーカーに置き、シェーカーの温度を37℃と設定し、溶液が完全に溶解するのを待つ。
(3)PTMC-b-PEG-b-PTMCの精製:溶解した溶液をn-ヘキサン又はエタノールが入ったビーカーにゆっくりと注いで精製し、ゆっくりと注ぎながら不断に撹拌し、得られた綿状物PTMC-b-PEG-b-PTMCを吸引濾過し、続いて箱型真空乾燥機に入れて48時間乾燥する。
(4)エレクトロスピニング溶液の調製:PTMC-b-PEG-b-PTMC共重合体及びPLA、PCL、PBSのうちの少なくとも1種を配合し、溶媒DMF/THFに加え、DMF:THF=1:1であり、当該溶液の質量分率は5~10wt%であり、完全に溶解するまで37℃の恒温シェーカーに24時間置き、完全に溶解するとエレクトロスピニング工程を行う。
(5)エレクトロスピニングによる吻合管の製造:エレクトロスピニング装置においてエレクトロスピニングを行って前記柔軟な腸管吻合ステントを得て、前記エレクトロスピニングパラメータは、電圧(-5,30)Vであり、針先の押し速度V=1.0~5.0mL/hであり、ローラーの回転速度V=100~500rpmであり、温度T=25~35℃であり、湿度WET=20~40%である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の有益な効果は次のとおりである。本発明は新規な柔軟な腸管吻合ステントを提供し、それは腸管に適合する弾性を有し、三次元のメッシュマイクロナノ構造を有し、設けられた牛角状の貫通孔によって、腸管内壁及び縫合部の分泌物が牛角状のチャンネルに吸い込まれ、各貫通孔の給液孔がステント本体の入口端の側に近く、排液孔が出口端の側に近いため、腸管内容物によって押圧されて、チャンネル内の分泌物が給液孔からステント本体の内部に排出されることで、腸管内壁の縫合部が感染するリスクが低減され、且つステント本体の出口端の下縁は凹多角形の構造であり、凹多角形の構造の下縁のそれぞれの優角にはいずれもステント本体の側壁において内向きに折り畳まれる褶曲構造が形成され、褶曲構造の方も腸管内壁及び縫合部の分泌物を受け入れることができ、凹多角形の構造の下縁には腸管内容物から力がかかって変形すると優角の角度が小さくなり、これによって褶曲構造内の分泌物が褶曲方向に沿って下向きに排出され、腸管吻合部漏出及び他の合併症の発生の可能性が明らかに低減される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の構造概略図である。
図2】本発明の牛角状の貫通孔の構造断面図である。
図3】本発明のステント本体の出口端の下縁の構造概略図である。
図4】本発明のPTMC-b-PEG-b-PTMCトリブロック共重合体の反応機構図である。
図5】本発明の異なるPEGの含有量のPTMC-b-PEG-b-PTMC共重合体によるエレクトロスピニングステントのSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施例の図面を参照しながら、本発明の実施例の技術的解決手段を明瞭かつ完全に説明し、言うまでもないが、説明される実施例は本発明の全ての実施例ではなく、その一部の実施例に過ぎない。当業者が本発明の実施例に基づいて、新規性のある作業をせず得ている他の実施例は、全て本発明の請求範囲に属する。
【0023】
材料の組成:
PTMC-b-PEG-b-PTMC共重合体及びPLA、PCL、PBSのうちの少なくとも1種をブレンドして得られた生体柔軟性エラストマー腸吻合ステントであった。前記腸吻合ステントは全体としてPTMC-b-PEG-b-PTMC共重合体材料を用いて作製され、PLA、PCL、PBSのうちの少なくとも1種とブレンドして得られた。前記PTMC-b-PEG-b-PTMC共重合体は高分子医療材料TMC及びPEGに対して開環重合の方法を用いて合成されたトリブロックPTMC-b-PEG-b-PTMC共重合体であり、前記PTMC-b-PEG-b-PTMC共重合体中のPEGの含有量は10~20%であり、前記PLA、PCL、PBSのうちの少なくとも1種のブレンド比は5~30%であり、前記腸吻合ステントの厚さは0.2~0.6mmであった。
【0024】
製造プロセス:
エレクトロスピニング:エレクトロスピニング溶液の調製:溶液の質量分率は5~10%であり、溶媒はDMF:THF=1:1(V:V)であった。PTMC-b-PEG-b-PTMC共重合体及びPLA、PCL、PBSのうちの少なくとも1種を配合し、溶媒に加え、完全に溶解するまで37℃の恒温シェーカーに24時間に置いた。溶解したエレクトロスピニング溶液に対してエレクトロスピニングした。エレクトロスピニングの条件は、電圧(-5,30)V、針先の押し速度V=1.0~5.0mL/h、ローラーの回転速度V=100~500rpm、温度T=25~35℃、湿度WET=20~40%であった。
【0025】
具体的な製造方法は次のとおりである。
1.PTMC-b-PEG-b-PTMC共重合体の合成:合成プロセスは水と酸素のない環境で操作する必要があり、95~80wt%のTMCモノマー、5~20wt%のPEG5000及び1~5wt%の触媒Sn(Oct)溶液を反応管に加え、反応管に撹拌子を入れ、反応管内に水と酸素がないことを保証して、管口をシリコーングリースで密封し、最後にパラフィルムで管口を密封して酸素と水分が入らないことを確保した。反応管をオイルバスに入れて反応させ、温度は120~150℃であり、反応時間は24~48時間であり、反応終了後、使用に備えて取り出した。
【0026】
2.PTMC-b-PEG-b-PTMCの溶解:1:5の固液比で、合成材料をCHCl又はDMF又はTHFで溶解した。最初にCHCl又はDMF又はTHFで内壁を複数回洗浄して、シリコーングリース及び未反応のモノマーを落とし、次に過剰のCHCl又はDMF又はTHFを加えて、シェーカーに置き、シェーカーの温度を37℃と設定し、溶液が完全に溶解するのを待った。
【0027】
3.PTMC-b-PEG-b-PTMCの精製:溶解した溶液をn-ヘキサン又はエタノールが入ったビーカーにゆっくりと注いで精製し、ゆっくりと注ぎながらガラス棒で不断に撹拌した。得られた綿状物PTMC-b-PEG-b-PTMCを吸引濾過し、続いて箱型真空乾燥機に入れて48時間乾燥した。
【0028】
4.エレクトロスピニング溶液の調製:全ての物質を溶媒DMF/THF(DMF:THF=1:1)に溶解し、当該溶液の質量分率は5~10wt%であった。ここで、PTMC-b-PEG-b-PTMC共重合体及びPLA、PCL、PBSのうちの少なくとも1種を配合し、溶媒DMF/THF(DMF:THF=1:1)に加え、完全に溶解するまで37℃の恒温シェーカーに24時間に置いた。完全に溶解するとエレクトロスピニング工程を行った。
【0029】
5.エレクトロスピニングによる吻合管の製造:型番がTL-Pro-BMであるエレクトロスピニング装置において紡糸を行った。パラメータの設定範囲は、電圧(-5,30)V、針先の押し速度V=1.0~5.0mL/h、ローラーの回転速度V=100~500rpm、温度T=25~35℃、湿度WET=20~40%であった。
【表1】
【0030】
ポリエチレングリコールヒドロキシル基によって開始される炭酸トリメチレンの開環重合により、PTMC-b-PEG-b-PTMCトリブロック共重合体を合成した(図4)。Sn(Oct)の触媒で、TMCとPEGが共重合してPTMC-b-PEG-b-PTMCブロック共重合体が合成された。異なるPEGブロック比での共重合反応及び生成物の一部の物性を表2に示す。
【表2】
【0031】
異なる分子量のブロック共重合体の分解速度及び機械的特性に差が大きいが、投入比はブロック共重合体の分子量に大きな影響を与え、腸管に埋め込むから製品には適切な分解速度と優れた機械的特性が求められるため、当試験では、ブロック共重合体PTMC-b-PEG-b-PTMCの分子量及び特性に対する原料中のTMCモノマーとPEGの異なる比の影響を重点的に検討した。原料中のTMCモノマーとPEGの異なる質量比という要因を研究し、反応時間を24時間に限定し、結果を表2に示す。データは、原料中のPEGの割合の低減に伴い、PTMC-b-PEG-b-PTMCの固有粘度が増加し、分子量が増大することを示す。
【表3】
【0032】
材料の良好な親水性により、より良い生体適合性が得られ、PTMC-b-PEG-b-PTMCの親水性と疎水性を評価するために、動的接触角試験によってサンプルの表面の水接触角を測定し、表3に示す。結果は、共重合体中のPEGの含有量の低減に伴い、動的接触角が増大するということを明瞭に示し、これは共重合体の親水性が共重合体中のPEGの含有量に正比例することを示す。5分間ごとにサンプルの表面の水接触角を測定し、疎水性サンプルを含め全てのサンプルは時間の経過とともに接触角が小さくなることから、エレクトロスピニングより得た粗鬆の多孔質構造により材料は良い吸水性を有し、且つPEGの含有量の増加により、接触角の変化速度が増大するということが示された。
【0033】
PEGブロックの比率が異なることは、材料の機械的特性にも大きな影響を与える。PTMC-b-PEG-b-PTMCを用いてエレクトロスピニングより製造した吻合ステントの機械的特性を表3に示す。PEGブロックの比例の低減に伴い、共重合体の引張強さはそれぞれ6.38MPaから12.75MPaに増加した。これはPEGが半結晶性ミクロ相の状態であり、ステントに対して可塑化及び硬化させる効果があり、PEGの増加に伴い、材料の結晶化度が増大し、引張強さが低減するためであった。
【0034】
親水性、機械的特性などの総合的な要因から、目的に照らして、我々はPEGの含有量が10~20%である時、その機械的特性及び親水性は埋め込みの要件に適合すると考える。当該範囲内では、吻合ステントが一定の親水性を有し、且つ乾燥及び湿潤状態ではいずれも機械的特性が非常に安定的であり、一定の機械的強度が保たれ且つ優れた従順性があり、これは強度を満たすと同時に異物感と不快感がないことを保証し、腸管が損傷する時に良好な担体として組織を修復できる。したがって、PTMC-b-PEG-b-PTMC共重合体を主基材とし、硬質生分解性ポリマーを添加して配合することで、吻合ステントは良好な靭性を有し、体内に埋め込まれた後、2週以内に一定の機械的強度が保たれ、且つボディが分解しても、そのキャビティの変形が最も小さかった。
【0035】
本特許では後にPEGの含有量が15%であるサンプルを吻合ステントの主基材として選択し、PLA、PCL、PBSのうちの少なくとも1種と配合し、エレクトロスピニングより成形させて、特殊な構造及び形態を有する腸管吻合ステントを製造した。
【表4】
【0036】
なお、上記の特定の実施形態で本発明を説明しているが、本発明の趣旨は当該開示に限定されず、本発明の趣旨を用いた作り変えであれば、いずれも本特許の請求範囲に入るということを当業者は知るべきである。
【0037】
上述したのは本発明の好ましい実施形態に過ぎず、本発明の請求範囲は上記の実施例に限定されず、本発明の趣旨に基づく技術的解決手段であればいずれも本発明の請求範囲に属する。なお、当業者は本発明の原理を逸脱しない限りはいくつかの改良と修飾を行うことができ、これらの改良と修飾も本発明の請求範囲と見なすべきである。
【符号の説明】
【0038】
1…ステント本体
2…貫通孔
3…ボス
4…優角
11…入口端
12…出口端
21…給液孔
22…排液孔
41…褶曲構造
図1
図2
図3
図4
図5