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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】リーン車両の制御装置及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   B62J 45/00 20200101AFI20241125BHJP
   B60W 30/165 20200101ALI20241125BHJP
   B60W 30/08 20120101ALI20241125BHJP
   B60W 30/00 20060101ALI20241125BHJP
   B62J 45/41 20200101ALI20241125BHJP
   B62J 50/22 20200101ALI20241125BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20241125BHJP
   B60T 7/12 20060101ALI20241125BHJP
【FI】
B62J45/00
B60W30/165
B60W30/08
B60W30/00
B62J45/41
B62J50/22
G08G1/16 C
B60T7/12 C
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023568757
(86)(22)【出願日】2022-12-12
(86)【国際出願番号】 IB2022062041
(87)【国際公開番号】W WO2023119051
(87)【国際公開日】2023-06-29
【審査請求日】2024-03-13
(31)【優先権主張番号】P 2021209388
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(72)【発明者】
【氏名】プファウ ラース
【審査官】三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-088321(JP,A)
【文献】特開2021-079734(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102013209873(DE,A1)
【文献】国際公開第2019/180816(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 1/00 ー 99/00
B60W 30/00 ー 60/00
G08G 1/16
B60T 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リーン車両(100)の制御装置(20)であって、
前記リーン車両(100)に搭載される少なくとも一つの環境センサ(11a、11b、11c、11d)を含み、且つ、該リーン車両(100)の周辺に位置する物体の情報を検出する環境情報検出システム(11)の出力に基づいて、該リーン車両(100)に取り付けられて該リーン車両(100)の一部を構成するサイドケース(60)の情報であるサイドケース情報を取得する取得部(21)と、
前記サイドケース情報に基づいて、前記リーン車両(100)のライダー(200)の支援動作を実行する実行部(22)と、
を備えている、
制御装置(20)。
【請求項2】
前記取得部(21)は、前記サイドケース情報として、前記サイドケース(60)の有無の情報を取得する、
請求項1に記載の制御装置(20)。
【請求項3】
前記取得部(21)は、前記サイドケース情報として、前記サイドケース(60)の位置の情報を取得する、
請求項1に記載の制御装置(20)。
【請求項4】
前記取得部(21)は、前記サイドケース情報として、前記サイドケース(60)のサイズの情報を取得する、
請求項1に記載の制御装置(20)。
【請求項5】
前記取得部(21)は、前記環境センサ(11a、11b、11c、11d)における検出可否の情報に基づいて、前記サイドケース情報を取得する、
請求項1~4の何れか一項に記載の制御装置(20)。
【請求項6】
前記取得部(21)は、前記環境センサ(11a、11b、11c、11d)から前記サイドケース(60)までの距離及び/又は方向の情報に基づいて、前記サイドケース情報を取得する、
請求項1~の何れか一項に記載の制御装置(20)。
【請求項7】
前記支援動作は、前記ライダー(200)に対する報知動作を含む、
請求項1~の何れか一項に記載の制御装置(20)。
【請求項8】
前記支援動作は、前記リーン車両(100)の挙動制御動作を含む、
請求項1~の何れか一項に記載の制御装置(20)。
【請求項9】
前記取得部(21)は、前記環境情報検出システム(11)の出力に基づいて、前記リーン車両(100)と前記物体との位置関係情報を取得し、
前記実行部(22)は、前記サイドケース情報に加えて前記位置関係情報に基づいて、前記支援動作を実行する、
請求項1~の何れか一項に記載の制御装置(20)。
【請求項10】
前記取得部(21)は、前記リーン車両(100)の周辺のうちの前記サイドケース情報に応じて設定される領域に位置する前記物体に対して、前記位置関係情報を取得する、
請求項9に記載の制御装置(20)。
【請求項11】
前記実行部(22)は、前記サイドケース情報に基づいて、前記リーン車両(100)の走行によって占領される道路幅(Wo)を推定し、該推定の結果に応じて、前記支援動作を変化させる、
請求項9に記載の制御装置(20)。
【請求項12】
前記実行部(22)は、前記サイドケース情報に加えて前記リーン車両(100)の走行姿勢の情報である走行姿勢情報に基づいて、前記道路幅(Wo)を推定する、
請求項11に記載の制御装置(20)。
【請求項13】
前記実行部(22)は、前記推定の結果に応じて、前記支援動作としての自動加減速動作において速度追従の対象となる前記物体を異ならせる、
請求項11に記載の制御装置(20)。
【請求項14】
前記実行部(22)は、前記推定の結果に応じて、前記支援動作としての衝突抑制動作において衝突可能性判定の対象となる前記物体を異ならせる、
請求項11に記載の制御装置(20)。
【請求項15】
リーン車両(100)の制御方法であって、
前記リーン車両(100)の制御装置(20)の取得部(21)が、前記リーン車両(100)に搭載される少なくとも一つの環境センサ(11a、11b、11c、11d)を含み、且つ、該リーン車両(100)の周辺に位置する物体の情報を検出する環境情報検出システム(11)の出力に基づいて、該リーン車両(100)に取り付けられて該リーン車両(100)の一部を構成するサイドケース(60)の情報であるサイドケース情報を取得し、
前記制御装置(20)の実行部(22)が、前記サイドケース情報に基づいて、前記リーン車両(100)のライダー(200)の支援動作を実行する、
制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リーン車両の制御装置と、リーン車両の制御方法と、に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のリーン車両の制御装置として、ライダーの支援動作を実行するものが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-116882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リーン車両では、他の車両(例えば、乗用車、トラック等)と異なり、サイドケースの搭載が可能である。しかしながら、従来のリーン車両の制御装置では、サイドケースの情報を取得することができず、適切な支援動作を実行することが困難となる場合が生じ得る。
【0005】
本発明は、上述の課題を背景としてなされたものであり、ライダーを適切に支援し得る制御装置を得るものである。また、ライダーを適切に支援し得る制御方法を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る制御装置は、リーン車両の制御装置であって、前記リーン車両に搭載される少なくとも一つの環境センサを含み、且つ、該リーン車両の周辺に位置する物体の情報を検出する環境情報検出システムの出力に基づいて、該リーン車両に取り付けられて該リーン車両の一部を構成するサイドケースの情報であるサイドケース情報を取得する取得部と、前記サイドケース情報に基づいて、前記リーン車両のライダーの支援動作を実行する実行部と、を備えている。
【0007】
本発明に係る制御方法は、リーン車両の制御方法であって、前記リーン車両の制御装置の取得部が、前記リーン車両に搭載される少なくとも一つの環境センサを含み、且つ、該リーン車両の周辺に位置する物体の情報を検出する環境情報検出システムの出力に基づいて、該リーン車両に取り付けられて該リーン車両の一部を構成するサイドケースの情報であるサイドケース情報を取得し、前記制御装置の実行部が、前記サイドケース情報に基づいて、前記リーン車両のライダーの支援動作を実行する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る制御装置及び制御方法では、環境情報検出システムの出力に基づいてサイドケースの情報が取得され、サイドケースの情報に基づいてリーン車両のライダーの支援動作が実行される。そのため、サイドケースの情報を適切に取得することが可能となって、ライダーを適切に支援することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態に係る支援システムの、リーン車両への搭載状態を示す図である。
図2】本発明の実施の形態に係る支援システムの、構成を示す図である。
図3】本発明の実施の形態に係る支援システムの、直立走行するリーン車両を後方視した状態での、自動加減速動作及び衝突抑制動作を説明するための図である。
図4】本発明の実施の形態に係る支援システムの、傾き走行するリーン車両を後方視した状態での、自動加減速動作及び衝突抑制動作を説明するための図である。
図5】本発明の実施の形態に係る支援システムの、制御装置の動作フローの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明に係る制御装置及び制御方法について、図面を用いて説明する。
【0011】
なお、以下で説明する構成、動作等は、一例であり、本発明に係る制御装置及び制御方法は、そのような構成、動作等である場合に限定されない。
【0012】
例えば、以下では、本発明に係る制御装置及び制御方法が、二輪のモータサイクルに適用される場合について説明しているが、本発明に係る制御装置及び制御方法が、二輪のモータサイクル以外の他のリーン車両に適用されてもよい。リーン車両は、旋回時に旋回方向に傾斜した状態で走行する車両全般を意味する。リーン車両には、例えば、二輪のモータサイクル、三輪のモータサイクル、自転車等が含まれる。モータサイクルには、例えば、エンジンを推進源とする車両、電気モータを推進源とする車両等が含まれ、例えば、オートバイ、スクーター、電動スクーター等が含まれる。また、自転車は、ペダルに付与されるライダーの踏力によって路上を推進することが可能な乗物全般を意味する。自転車には、例えば、普通自転車、電動アシスト自転車、電動自転車等が含まれる。
【0013】
また、以下では、同一の又は類似する説明を適宜簡略化又は省略している。また、各図において、同一の又は類似する部分については、同一の符号を付すか又は符号を付すことを省略している。また、細かい構造については、適宜図示を簡略化又は省略している。
【0014】
実施の形態.
以下に、実施の形態に係る支援システムを説明する。
【0015】
<支援システムの構成>
実施の形態に係る支援システムの構成について説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る支援システムの、リーン車両への搭載状態を示す図である。図2は、本発明の実施の形態に係る支援システムの、構成を示す図である。
【0016】
図1及び図2に示されるように、支援システム1は、リーン車両100に搭載される。支援システム1は、少なくとも、リーン車両100の環境情報を検出するための環境情報検出システム11と、リーン車両100の走行状態情報を検出するための走行状態情報検出システム12と、制御装置(ECU)20と、を含む。支援システム1は、リーン車両100のライダー200を支援するものである。制御装置20には、必要に応じて、他の情報(例えば、ライダー200によるブレーキ操作の情報、ライダー200によるアクセル操作の情報等)を検出するための各種システム(図示省略)の検出結果も入力される。支援システム1の各部は、支援システム1に専ら用いられるものであってもよく、また、他のシステムと共用されるものであってもよい。
【0017】
環境情報検出システム11は、例えば、リーン車両100の前方に向けられている少なくとも1つの環境センサ11aと、リーン車両100の右方に向けられている少なくとも1つの環境センサ11bと、リーン車両100の左方に向けられている少なくとも1つの環境センサ11cと、リーン車両100の後方に向けられている少なくとも1つの環境センサ11dと、を含む。なお、図1では、環境センサ11cが紙面手前側に位置しているように図示されているが、実際には、環境センサ11cは、紙面奥側に位置している。環境センサ11a、11b、11c、11dは、リーン車両100に搭載される。環境センサ11a、11b、11c、11dは、例えば、超音波センサ、レーダー、Lidarセンサ、カメラ等である。環境センサ11a、11b、11c、11dは、検出範囲内に位置する物体(例えば、車両、障害物、道路設備、人、動物等)までの距離及び/又は方向に関連する情報(例えば、相対位置、相対距離、相対速度、相対加速度、相対加加速度、通過時間差、衝突に至るまでの予測時間等の情報)を非接触で検出するものであってもよく、また、検出範囲内に位置する物体の特徴(例えば、物体の種別、物体の形状、物体に付されているマーク等)を非接触で検出するものであってもよい。つまり、環境情報検出システム11は、環境センサ11a、11b、11c、11dを用いて、リーン車両100の周辺に位置する物体の情報を環境情報として検出するものである。環境センサ11a、11b、11c、11dのうちの一部の環境センサが、他の環境センサで兼用されていてもよい。また、必要に応じて、環境センサ11a、11b、11c、11dのうちの一部が省略されていてもよく、また、他の環境センサが追加されてもよい。
【0018】
走行状態情報検出システム12は、例えば、車輪速センサ12aと、慣性センサ(IMU)12bと、を含む。車輪速センサ12aは、リーン車両100の車輪の回転速度を検出する。車輪速センサ12aが、リーン車両100の車輪の回転速度に実質的に換算可能な他の物理量を検出するものであってもよい。慣性センサ12bは、リーン車両100に生じている3軸の加速度及び3軸(ロール、ピッチ、ヨー)の角速度を検出する。慣性センサ12bが、リーン車両100に生じている3軸の加速度及び3軸の角速度に実質的に換算可能な他の物理量を検出するものであってもよい。また、慣性センサ12bが、3軸の加速度及び3軸の角速度の一部のみを検出するものであってもよい。また、必要に応じて、車輪速センサ12a及び慣性センサ12bの少なくとも一方が省略されてもよく、また、他のセンサが追加されてもよい。
【0019】
制御装置20は、少なくとも、取得部21と、実行部22と、を含む。制御装置20の全て又は各部は、1つの筐体に纏めて設けられていてもよく、また、複数の筐体に分けられて設けられていてもよい。また、制御装置20の一部又は全ては、例えば、マイコン、マイクロプロセッサユニット等で構成されてもよく、また、ファームウェア等の更新可能なもので構成されてもよく、また、CPU等からの指令によって実行されるプログラムモジュール等であってもよい。
【0020】
取得部21は、環境情報検出システム11の出力に基づいて、サイドケース情報を取得する。サイドケース情報は、リーン車両100に着脱可能に取り付けられるサイドケース60の情報である。例えば、サイドケース60は、リーン車両100の車幅方向に突出する状態で、リーン車両100の車体に取り付けられる。サイドケース60は、例えば、荷物等を収容可能である。サイドケース60は、リーン車両100に取り付けられた状態で、リーン車両100の一部を構成する。また、取得部21は、走行状態情報検出システム12の出力に基づいて、リーン車両100の走行状態情報を取得する。
【0021】
例えば、環境センサ11b及び/又は環境センサ11c、つまり、リーン車両100に標準的なサイズのサイドケース60が標準的な位置に取り付けられている場合にサイドケース60の有る位置(例えば、リアフェンダー100Aの側方等)の方を向くと想定される環境センサが、近距離を検出不能である場合において、取得部21は、環境情報検出システム11の出力に基づいて、環境センサ11b及び/又は環境センサ11cの視野の全域又は一部が検出不能であるか否かを判定する。つまり、取得部21は、環境センサ11b及び/又は環境センサ11cにおける検出可否の情報を取得する。取得部21は、基準時間又は基準走行距離を超えて判定が肯定され続ける場合に、サイドケース60が有ると判定する。つまり、サイドケース情報は、サイドケース60の有無の情報を含む。また、取得部21は、基準時間又は基準走行距離を超えて判定が肯定され続ける場合に、環境センサ11b及び/又は環境センサ11cの視野のリーン車両100に対する相対位置の情報を用いて、サイドケース60の取り付けられている位置を推定する。例えば、環境センサ11bが検出不能で環境センサ11cが検出可能となっている場合には、取得部21は、サイドケース60がリーン車両100の右側のみに取り付けられていると推定する。また、例えば、環境センサ11bの視野の一部が検出不能になっている、又は、複数の環境センサ11bの一部のみが検出不能になっている場合には、取得部21は、その検出不能になっている領域のリーン車両100に対する相対位置の情報を用いて、サイドケース60の取り付けられている位置を推定する。つまり、サイドケース情報は、サイドケース60の位置の情報を含む。また、取得部21は、基準時間又は基準走行距離を超えて判定が肯定され続ける場合に、環境センサ11b及び/又は環境センサ11cの視野のリーン車両100に対する相対位置の情報を用いて、取り付けられているサイドケース60のサイズを推定する。例えば、環境センサ11bの視野の一部が検出不能になっている、又は、複数の環境センサ11bの一部のみが検出不能になっている場合には、取得部21は、その検出不能になっている領域のリーン車両100に対する相対位置の情報を用いて、取り付けられているサイドケース60のサイズを推定する。つまり、サイドケース情報は、サイドケース60のサイズの情報を含む。
【0022】
例えば、環境センサ11b及び/又は環境センサ11c、つまり、リーン車両100に標準的なサイズのサイドケース60が標準的な位置に取り付けられている場合にサイドケース60の有る位置(例えば、リアフェンダー100Aの側方等)の方を向くと想定される環境センサが、近距離を検出可能である場合において、取得部21は、環境情報検出システム11の出力に基づいて、環境センサ11b又は環境センサ11cからの距離が基準距離を下回る位置、及び/又は、環境センサ11b又は環境センサ11cからの方向が基準範囲内にある位置に何らかの物体、つまりサイドケース60が存在しているか否かを判定する。つまり、取得部21は、環境センサ11b又は環境センサ11cからサイドケース60までの距離及び/又は方向の情報を取得する。取得部21は、基準時間又は基準走行距離を超えて判定が肯定され続ける場合に、サイドケース60が有ると判定する。つまり、サイドケース情報は、サイドケース60の有無の情報を含む。また、取得部21は、基準時間又は基準走行距離を超えて判定が肯定され続ける場合に、環境センサ11b又は環境センサ11cからその物体、つまりサイドケース60までの距離及び/又は方向の情報を用いて、サイドケース60の取り付けられている位置及び/又はサイズを推定する。つまり、サイドケース情報は、サイドケース60の位置及び/又はサイズの情報を含む。
【0023】
環境センサ11b及び環境センサ11cの少なくとも一方が、サイドケース情報の取得に専ら用いられるものであってもよく、また、後述される衝突抑制動作における、リーン車両100に対するリーン車両100の側方に位置する物体の衝突可能性判定と兼用されるものであってもよい。また、環境センサ11a又は環境センサ11dの視野が広い場合に、環境センサ11b及び環境センサ11cの少なくとも一方が、環境センサ11a又は環境センサ11dによって代用されてもよい。特に、サイドケース情報を取得するための環境センサは、超音波センサであるとよい。そのような場合には、サイドケース情報の取得のために、超音波センサにおいて、反射波に含まれる距離情報及び/又は品質特性情報(例えば、振幅、相関係数、周波数等)が検出されてもよく、また、ノイズレベルが検出されてもよく、また、グランドクラッタが検出されてもよい。
【0024】
実行部22は、取得部21で取得されたサイドケース情報に基づいて、ライダー200の支援動作を実行する。実行部22は、例えば、リーン車両100に制動力を生じさせる制動装置30、リーン車両100に駆動力を生じさせる駆動装置40、ライダー200に対する報知(例えば、聴覚に作用する報知、視覚に作用する報知、触覚に作用する報知等)を発する報知装置50等に制御指令を出力して、ライダー200の支援動作を実行する。つまり、実行部22は、ライダー200の支援動作として、リーン車両100の挙動制御動作を実行してもよく、また、ライダー200に対する報知動作を実行してもよい。なお、報知装置50は、リーン車両100に設けられていてもよく、また、リーン車両100と通信可能に接続されたライダー200の着用物110(例えば、ヘルメット、ゴーグル、グローブ等)に設けられていてもよい。また、ライダー200に対する報知が、リーン車両100に瞬時的な加減速度の変化を生じさせるハプティクス動作によって行われてもよい。そのような場合には、制動装置30又は駆動装置40が、報知装置50の機能を担う。
【0025】
具体例として、実行部22は、報知動作として、サイドケース60がリーン車両100に取り付けられている旨をライダー200に報知する動作を実行する。また、実行部22は、報知動作として、サイドケース60の取り付けられている位置をライダー200に報知する動作を実行する。また、実行部22は、報知動作として、取り付けられているサイドケース60のサイズをライダー200に報知する動作を実行する。
【0026】
他の具体例として、実行部22は、挙動制御動作として、リーン車両100のスリップ制御(例えば、アンチロックブレーキコントロール、トラクションコントロール、横滑り抑制制御等)及び/又はサスペンション制御のモードを、サイドケース60の有無に応じて変化させる動作を実行する。実行部22は、サイドケース情報が、サイドケース60が取り付けられている旨を示す情報である場合に、リーン車両100が後ろ荷重になっていると仮定し、その状態に特化した閾値が設定されたモードを自動で設定する。実行部22が、サイドケース60のサイズから想定される、標準的なサイドケース60の重量及び/又は標準的な収容物の重量を、そのモードの設定に反映するとよい。また、実行部22が、サイドケース60の取り付けられている位置の情報を、そのモードの設定に反映するとよい。なお、実行部22が、報知動作として、モードの変更をライダー200に提案する動作を実行し、ライダー200の承認後にモードの変更が確定されてもよい。
【0027】
他の具体例として、実行部22は、サイドケース情報に加えて、リーン車両100と、リーン車両100の周辺に位置する物体(例えば、車両、障害物、道路設備、人、動物等)と、の位置関係情報に基づいて、ライダー200の支援動作を実行する。位置関係情報は、取得部21において、環境情報検出システム11の出力に基づいて取得される。位置関係情報は、例えば、相対位置、相対距離、相対速度、相対加速度、相対加加速度、通過時間差、衝突に至るまでの予測時間等の情報である。位置関係情報は、それらに実質的に換算可能な他の物理量の情報であってもよい。位置関係情報の取得のために、サイドケース情報の取得のために用いられた環境センサと異なる他の環境センサが用いられてよく、また、サイドケース情報の取得のために用いられた環境センサが用いられてもよい。
【0028】
例えば、実行部22は、ライダー200の支援動作として、取得部21で取得される位置関係情報に基づいて、リーン車両100の自動加減速動作を行う。自動加減速動作は、例えば、ライダー200によるブレーキ操作及びアクセル操作が無い状態で行われる先行車に対する速度追従制御(いわゆる、アダプティブクルーズコントロール)、ライダー200によるブレーキ操作又はアクセル操作が有る状態で行われる先行車に対する速度追従制御等である。取得部21は、リーン車両100と、リーン車両100の先行車、つまり速度追従の対象となる物体と、の相対距離、相対速度、又は、通過時間差の情報を取得する。実行部22は、制動装置30又は駆動装置40に制御指令を出力して、その相対距離、相対速度、又は、通過時間差の情報に応じた加減速度をリーン車両100に生じさせて、リーン車両100を先行車に速度追従させる。制動装置30が、減速度を生じさせる又は増加させるために制御されてもよく、また、加速度を生じさせる又は増加させるために制御されてもよい。駆動装置40が、加速度を生じさせる又は増加させるために制御されてもよく、また、減速度を生じさせる又は増加させるために制御されてもよい。実行部22は、自動加減速動作の実行時に、必要に応じて、報知装置50に制御信号を出力して、ライダー200に対する報知を生じさせる。例えば、実行部22は、後述されるように、サイドケース情報に基づいて、リーン車両100の走行によって占領される道路幅Woを推定し、その推定の結果に応じて自動加減速動作を変化させる。
【0029】
例えば、実行部22は、ライダー200の支援動作として、取得部21で取得される位置関係情報に基づいて、リーン車両100の衝突抑制動作を行う。取得部21は、リーン車両100と、リーン車両100の周辺(例えば、前方、右方、左方、後方等)に位置する物体(例えば、車両、障害物、道路設備、人、動物等)と、の衝突に至るまでの予測時間の情報、つまり衝突可能性の情報を取得する。実行部22は、衝突可能性が基準を上回ると判定される場合に、報知装置50に制御信号を出力して、ライダー200に対する報知を生じさせる。また、実行部22は、衝突可能性が基準を上回ると判定される場合に、制動装置30又は駆動装置40に制御指令を出力して、その衝突を抑制する加減速度をリーン車両100に生じさせる。制動装置30が、減速度を生じさせる又は増加させるために制御されてもよく、また、加速度を生じさせる又は増加させるために制御されてもよい。駆動装置40が、加速度を生じさせる又は増加させるために制御されてもよく、また、減速度を生じさせる又は増加させるために制御されてもよい。例えば、実行部22は、後述されるように、サイドケース情報に基づいて、リーン車両100の走行によって占領される道路幅Woを推定し、その推定の結果に応じて衝突抑制動作を変化させる。
【0030】
以下に、図3及び図4を用いて、リーン車両100の走行によって占領される道路幅Woの推定方法と、その推定の結果を用いた自動加減速動作及び衝突抑制動作を説明する。
図3は、本発明の実施の形態に係る支援システムの、直立走行するリーン車両を後方視した状態での、自動加減速動作及び衝突抑制動作を説明するための図である。図4は、本発明の実施の形態に係る支援システムの、傾き走行するリーン車両を後方視した状態での、自動加減速動作及び衝突抑制動作を説明するための図である。
【0031】
実行部22は、自動加減速動作の実行に際して、取得部21で取得されるリーン車両100の走行状態情報に基づいて、リーン車両100の走行位置Pの将来軌跡を取得する。そして、実行部22は、その将来軌跡を幅方向に拡張した領域を、リーン車両100の走行が想定される道路領域Sとして設定する。実行部22は、自動加減速動作を実行するに際して、その道路領域S内に位置する物体、つまり先行車を速度追従の対象として選択する。つまり、実行部22は、自動加減速動作を実行するに際して、その道路領域S内に位置しない物体、つまり先行車を速度追従の対象として選択しない。また、実行部22は、衝突抑制動作を実行するに際して、その道路領域S内に位置する物体(例えば、車両、障害物、道路設備、人、動物等)を衝突可能性の判定対象として選択する。つまり、実行部22は、衝突抑制動作を実行するに際して、その道路領域S内に位置しない物体を衝突可能性の判定対象として選択しない。実行部22は、サイドケース情報に基づいて、リーン車両100の走行によって占領される道路幅Woを推定し、その道路幅Woに基づいて道路領域Sを設定する。
【0032】
図3及び図4に示されるように、リーン車両100の走行によって占領される道路幅Woは、路面に平行で、且つ、リーン車両100の進行方向に直交する方向における、リーン車両100の左端と右端との距離として定義される。例えば、図3に示されるように、リーン車両100が直立走行する状態において、実行部22は、サイドケース情報が、サイドケース60が取り付けられていることを示す情報である場合に、サイドケース60が取り付けられていない状態でのリーン車両100の各部の寸法の情報に加えて、標準的なサイドケース60のサイズの情報を加味して、道路幅Woを推定する。また、例えば、図4に示されるように、リーン車両100が傾き走行する状態において、実行部22は、倒れ角θが拡大する程、道路幅Woを大きく推定する。つまり、実行部22は、サイドケース情報に加えて、リーン車両100の走行姿勢の情報である走行姿勢情報に基づいて、道路幅Woを推定する。実行部22は、サイドケース情報が、サイドケース60が取り付けられている位置の情報、及び/又は、取り付けられているサイドケース60のサイズの情報を含む場合に、その情報を加味した上で、道路幅Woを推定するとよい。実行部22は、道路幅Woに、右側マージンMr及び左側マージンMlを加えた領域を、リーン車両100の走行が想定される道路領域Sとして設定する。右側マージンMr及び左側マージンMlは、リーン車両100の進行方向の全域において同じ値で設定されてもよく、また、リーン車両100の進行方向においてリーン車両100から遠ざかるほど大きく設定されてもよい。なお、実行部22が、道路幅Wo自体を、リーン車両100の走行が想定される道路領域Sとして設定してもよい。また、図4に示される例において、実行部22が、ライダー200の標準的な座高、又は、実測される座高の情報を加味して、道路幅Woを推定してもよい。実行部22は、道路領域Sの設定に際して、走行位置Pに対する道路幅Woの中心位置Cのずれ量Dを加味するとよい。ずれ量Dは、リーン車両100の車幅方向における非対称性に依存するものであってもよく、また、図4に示されるように、倒れ角θに依存して生じるものであってもよい。
【0033】
なお、以上では、実行部22が、サイドケース情報に基づいて道路幅Woを推定し、その推定の結果に応じて支援動作を変化させる場合を説明したが、実行部22が、道路幅Woを推定することなく支援動作を変化させてもよい。例えば、実行部22は、自動加減速動作及び/又は衝突抑制動作において、リーン車両100に生じさせる加速度の上限値及び/又は減速度の上限値を、サイドケース60の有無、位置及び/又はサイズに応じて変化させてもよい。また、実行部22は、衝突抑制動作において、衝突可能性の判定の基準を、サイドケース60の有無、位置及び/又はサイズに応じて変化させてもよい。また、実行部22は、環境情報検出システム11に制御指令を出力して、サイドケース60を視野から除外するべく、環境センサ11b及び環境センサ11cの視野の方向を変更してもよい。実行部22が、取得部21に指令を出力して、環境情報検出システム11から出力されるデータのうちの、サイドケース60によって検出不能となっている領域、又は、サイドケース60を検出している領域についての、リーン車両100と、リーン車両100の周辺に位置する物体と、の位置関係情報を取得するための演算処理を省略させてもよい。つまり、取得部21は、リーン車両100の周辺のうちのサイドケース情報に応じて設定される領域に位置する物体に対して、位置関係情報を取得するものであってもよい。
【0034】
<支援システムの動作>
実施の形態に係る支援システムの動作について説明する。
図5は、本発明の実施の形態に係る支援システムの、制御装置の動作フローの一例を示す図である。
【0035】
制御装置20は、リーン車両100の走行中において、図5に示される動作フローを実行する。
【0036】
(取得ステップ)
ステップS101において、取得部21は、環境情報検出システム11の出力に基づいて、サイドケース情報を取得する。取得部21は、必要に応じて、環境情報検出システム11の出力に基づいて、リーン車両100と、リーン車両100の周辺に位置する物体(例えば、車両、障害物、道路設備、人、動物等)と、の位置関係情報を取得する。また、取得部21は、必要に応じて、走行状態情報検出システム12の出力に基づいて、リーン車両100の走行状態情報を取得する。
【0037】
(実行ステップ)
続いて、ステップS102において、実行部22は、少なくとも、取得部21で取得されたサイドケース情報に基づいて、ライダー200の支援動作を実行する。
【0038】
<支援システムの効果>
実施の形態に係る支援システムの効果について説明する。
制御装置20では、環境情報検出システム11の出力に基づいてサイドケース情報が取得され、サイドケース情報に基づいてリーン車両100のライダー200の支援動作が実行される。そのため、サイドケース60の情報を適切に取得することが可能となって、ライダー200を適切に支援することが可能となる。
【0039】
好ましくは、取得部21は、環境センサ(例えば、環境センサ11b、環境センサ11c等)における検出可否の情報に基づいて、サイドケース情報を取得する。また、好ましくは、取得部21は、環境センサ(例えば、環境センサ11b、環境センサ11c等)からサイドケース60までの距離及び/又は方向の情報に基づいて、サイドケース情報を取得する。それらのように構成されることで、サイドケース60の情報を適切に取得することが可能となる。
【0040】
好ましくは、取得部21は、環境情報検出システム11の出力に基づいて、リーン車両100と物体との位置関係情報を取得し、実行部22は、サイドケース情報に加えて位置関係情報に基づいて、支援動作を実行する。そのように構成されることで、ライダー200を適切に支援することが可能となる。特に、実行部22が、サイドケース情報に基づいて、リーン車両100の走行によって占領される道路幅Woを推定し、その推定の結果に応じて、支援動作を変化させるとよい。そのように構成されることで、ライダー200を適切に支援することが可能となる。
【符号の説明】
【0041】
1 支援システム、11 環境情報検出システム、11a、11b、11c、11d 環境センサ、12 走行状態情報検出システム、12a 車輪速センサ、12b 慣性センサ、20 制御装置、21 取得部、22 実行部、30 制動装置、40 駆動装置、50 報知装置、60 サイドケース、100 リーン車両、100A リアフェンダー、110 着用物、200 ライダー。
図1
図2
図3
図4
図5