IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パイオニア株式会社の特許一覧 ▶ パイオニアスマートセンシングイノベーションズ株式会社の特許一覧

特許7592897情報処理装置、制御方法、プログラム及び記憶媒体
<>
  • 特許-情報処理装置、制御方法、プログラム及び記憶媒体 図1
  • 特許-情報処理装置、制御方法、プログラム及び記憶媒体 図2
  • 特許-情報処理装置、制御方法、プログラム及び記憶媒体 図3
  • 特許-情報処理装置、制御方法、プログラム及び記憶媒体 図4
  • 特許-情報処理装置、制御方法、プログラム及び記憶媒体 図5
  • 特許-情報処理装置、制御方法、プログラム及び記憶媒体 図6
  • 特許-情報処理装置、制御方法、プログラム及び記憶媒体 図7
  • 特許-情報処理装置、制御方法、プログラム及び記憶媒体 図8
  • 特許-情報処理装置、制御方法、プログラム及び記憶媒体 図9
  • 特許-情報処理装置、制御方法、プログラム及び記憶媒体 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】情報処理装置、制御方法、プログラム及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   G01S 17/89 20200101AFI20241125BHJP
   G01S 17/46 20060101ALI20241125BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20241125BHJP
【FI】
G01S17/89
G01S17/46
G06T1/00 315
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023575227
(86)(22)【出願日】2023-01-13
(86)【国際出願番号】 JP2023000778
(87)【国際公開番号】W WO2023140189
(87)【国際公開日】2023-07-27
【審査請求日】2024-03-07
(31)【優先権主張番号】P 2022007785
(32)【優先日】2022-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520001073
【氏名又は名称】パイオニアスマートセンシングイノベーションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107331
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 聡延
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雅美
(72)【発明者】
【氏名】松本 令司
【審査官】九鬼 一慶
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-236019(JP,A)
【文献】特開2002-343840(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0144579(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48- 7/51
G01S 17/00-17/95
G06T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測対象物が置かれた空間を計測する複数の計測装置が生成する計測データに基づき生成された前記計測対象物の3次元データを取得する取得手段と、
前記3次元データにおいて欠けている補間対象箇所を検出する検出手段と、
前記補間対象箇所での複数の方向の各々に対する前記計測対象物の傾斜角度に基づき、前記複数の方向の各々に対する前記補間対象箇所を補間する候補位置を決定する候補位置決定手段と、
前記候補位置に基づき、前記補間対象箇所に対応する前記3次元データの補間データを生成する補間データ生成手段と、
を有する情報処理装置。
【請求項2】
前記候補位置決定手段は、前記複数の方向の任意の方向に対する前記傾斜角度を、当該任意の方向に沿った位置における前記計測データに基づく前記計測対象物の被計測位置に基づき推定する、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記候補位置決定手段は、主成分分析、直線近似、又は多項式近似のいずれかに基づき、前記傾斜角度を算出する、請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記候補位置決定手段は、前記傾斜角度を、記憶手段に記憶された前記計測対象物の斜面の勾配に基づき決定する、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記補間データ生成手段は、前記補間対象箇所ごとの前記候補位置のうち、最も高い位置となる候補位置に基づき前記補間データを生成する、請求項1~4のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記3次元データが表す空間の水平面をグリッドに分割する分割手段をさらに有し、
前記検出手段は、前記計測データが示す被計測位置が存在しないグリッドを、前記補間対象箇所として検出する、請求項1~5のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記複数の方向は、前記水面上の方向であって、前記グリッドが縦、横又は斜めにおいて並ぶ方向に基づき決定される、請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記計測対象物は、複数の山が形成された堆積物であることを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記計測対象物は、粉状物の堆積物である、請求項8に記載の情報処理装置。
【請求項10】
コンピュータが、
計測対象物が置かれた空間を計測する複数の計測装置が生成する計測データに基づき生成された前記計測対象物の3次元データを取得し、
前記3次元データにおいて欠けている補間対象箇所を検出し、
前記補間対象箇所での複数の方向の各々に対する前記計測対象物の傾斜角度に基づき、前記複数の方向の各々に対する前記補間対象箇所を補間する候補位置を決定し、
前記候補位置に基づき、前記補間対象箇所に対応する前記3次元データの補間データを生成する、
制御方法。
【請求項11】
計測対象物が置かれた空間を計測する複数の計測装置が生成する計測データに基づき生成された前記計測対象物の3次元データを取得し、
前記3次元データにおいて欠けている補間対象箇所を検出し、
前記補間対象箇所での複数の方向の各々に対する前記計測対象物の傾斜角度に基づき、前記複数の方向の各々に対する前記補間対象箇所を補間する候補位置を決定し、
前記候補位置に基づき、前記補間対象箇所に対応する前記3次元データの補間データを生成する処理をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項12】
請求項11に記載のプログラムを記憶した記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、計測したデータの処理に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、被検出空間にレーザ光のパルスを照射し、その反射光のレベルに基づいて、被検出空間内の対象物を検出するレーザレーダ装置が知られている。例えば、特許文献1には、繰り返し出射される光パルスの出射方向(走査方向)を適切に制御することにより周辺空間を走査し、その戻り光を観測することにより、周辺に存在する物体に関する情報である距離、反射率などの情報を表す点群データを生成するライダが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-009831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ライダなどの計測装置を複数用いて計測対象物の3次元データを生成する場合、計測装置において死角となる部分や計測角度に起因して疎に計測される部分の存在により3次元データに穴(欠けた部分)が発生してしまう。
【0005】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、計測対象物の3次元データを補間する補間データを好適に生成することが可能な情報処理装置を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項に記載の発明は、
計測対象物が置かれた空間を計測する複数の計測装置が生成する計測データに基づき生成された前記計測対象物の3次元データを取得する取得手段と、
前記3次元データにおいて欠けている補間対象箇所を検出する検出手段と、
前記補間対象箇所での複数の方向の各々に対する前記計測対象物の傾斜角度に基づき、前記複数の方向の各々に対する前記補間対象箇所を補間する候補位置を決定する候補位置決定手段と、
前記候補位置に基づき、前記補間対象箇所に対応する前記3次元データの補間データを生成する補間データ生成手段と、
を有する情報処理装置である。
【0007】
また、請求項に記載の発明は、
コンピュータが、
計測対象物が置かれた空間を計測する複数の計測装置が生成する計測データに基づき生成された前記計測対象物の3次元データを取得し、
前記3次元データにおいて欠けている補間対象箇所を検出し、
前記補間対象箇所での複数の方向の各々に対する前記計測対象物の傾斜角度に基づき、前記複数の方向の各々に対する前記補間対象箇所を補間する候補位置を決定し、
前記候補位置に基づき、前記補間対象箇所に対応する前記3次元データの補間データを生成する、
制御方法である。
【0008】
また、請求項に記載の発明は、
計測対象物が置かれた空間を計測する複数の計測装置が生成する計測データに基づき生成された前記計測対象物の3次元データを取得し、
前記3次元データにおいて欠けている補間対象箇所を検出し、
前記補間対象箇所での複数の方向の各々に対する前記計測対象物の傾斜角度に基づき、前記複数の方向の各々に対する前記補間対象箇所を補間する候補位置を決定し、
前記候補位置に基づき、前記補間対象箇所に対応する前記3次元データの補間データを生成する処理をコンピュータに実行させるプログラムである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例に係る3次元データ生成システムの概略構成である。
図2】計測対象物が存在する空間でのライダの設置例を示す。
図3】情報処理装置のハードウェア構成の一例を示すブロック構成図である。
図4】ライダが出力する点群データに基づく堆積物の3次元データを表した図である。
図5】補間対象グリッド及びその隣接グリッドを示す図である。
図6】ある方向に沿った断面における計測高及び候補高を示す図である。
図7】本実施例におけるフローチャートの一例である。
図8】傾斜角度の第2算出例及び第3算出例において設定する解析領域を、計測対象物の被計測点を真上から観察した図において表している。
図9図8の解析領域1に対する「垂直方向に細長な解析領域」を計測対象物の被計測点の斜視図上において表している。
図10】スキャン方向1に沿った図9の計測対象物の断面図において主成分分析(又は直線近似又は多項式近似)に用いられる解析領域1内のグリッド点を表している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の好適な実施形態によれば、情報処理装置は、計測対象物が置かれた空間を計測する複数の計測装置が生成する計測データに基づき生成された前記計測対象物の3次元データを取得する取得手段と、前記3次元データにおいて欠けている補間対象箇所を検出する検出手段と、前記補間対象箇所での複数の方向の各々に対する前記計測対象物の傾斜角度に基づき、前記複数の方向の各々に対する前記補間対象箇所を補間する候補位置を決定する候補位置決定手段と、前記候補位置に基づき、前記補間対象箇所に対応する前記3次元データの補間データを生成する補間データ生成手段と、を有する。この態様によれば、情報処理装置は、複数の計測装置により計測した計測対象物の3次元データの補間データを好適に生成することができる。
【0011】
上記情報処理装置の一態様では、前記候補位置決定手段は、前記複数の方向の任意の方向に対する前記傾斜角度を、当該任意の方向に沿った位置における前記計測データに基づく前記計測対象物の被計測位置に基づき推定する。この態様により、情報処理装置は、各方向に対する傾斜角度を的確に推定することができる。好適な例では、前記候補位置決定手段は、主成分分析、直線近似、又は多項式近似のいずれかに基づき、前記傾斜角度を算出するとよい。
【0012】
上記情報処理装置の他の一態様では、前記候補位置決定手段は、前記傾斜角度を、記憶手段に記憶された前記計測対象物の斜面の勾配に基づき決定する。この態様によっても、情報処理装置は、各方向に対する傾斜角度を的確に決定することができる。
【0013】
上記情報処理装置の他の一態様では、前記補間データ生成手段は、前記補間対象箇所ごとの前記候補位置のうち、最も高い位置となる候補位置に基づき前記補間データを生成する。この態様により、情報処理装置は、補間対象箇所が計測対象物の谷間等であっても、高精度な補間データを生成することができる。
【0014】
上記情報処理装置の他の一態様では、前記3次元データが表す空間の水平面をグリッドに分割する分割手段をさらに有し、前記検出手段は、前記計測データが示す被計測位置が存在しないグリッドを、前記補間対象箇所として検出する。この態様により、情報処理装置は、補間対象箇所を的確に検出することができる。好適な例では、前記複数の方向は、前記水面上の方向であって、前記グリッドが縦、横又は斜めにおいて並ぶ方向に基づき決定されるとよい。
【0015】
上記情報処理装置の他の一態様では、前記計測対象物は、複数の山が形成された堆積物である。複数の山が形成された堆積物を計測対象物とする場合、山の間の谷部分において計測装置の死角が発生する。この場合においても、情報処理装置は、死角部分を的確に表した補間データを好適に生成することができる。好適には、計測対象物は、粉状物の堆積物であるとよい。
【0016】
本発明の他の好適な実施形態によれば、コンピュータが実行する制御方法であって、計測対象物が置かれた空間を計測する複数の計測装置が生成する計測データに基づき生成された前記計測対象物の3次元データを取得し、前記3次元データにおいて欠けている補間対象箇所を検出し、前記補間対象箇所での複数の方向の各々に対する前記計測対象物の傾斜角度に基づき、前記複数の方向の各々に対する前記補間対象箇所を補間する候補位置を決定し、前記候補位置に基づき、前記補間対象箇所に対応する前記3次元データの補間データを生成する制御方法である。コンピュータは、この制御方法を実行することで、複数の計測装置により計測した計測対象物の3次元データの補間データを好適に生成することができる。
【0017】
本発明の他の好適な実施形態によれば、計測対象物が置かれた空間を計測する複数の計測装置が生成する計測データに基づき生成された前記計測対象物の3次元データを取得し、前記3次元データにおいて欠けている補間対象箇所を検出し、前記補間対象箇所での複数の方向の各々に対する前記計測対象物の傾斜角度に基づき、前記複数の方向の各々に対する前記補間対象箇所を補間する候補位置を決定し、前記候補位置に基づき、前記補間対象箇所に対応する前記3次元データの補間データを生成する処理をコンピュータに実行させるプログラムである。コンピュータは、このプログラムを実行することで、複数の計測装置により計測した計測対象物の3次元データの補間データを好適に生成することができる。好適には、上記プログラムは、記憶媒体に記憶される。
【実施例
【0018】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例について説明する。
【0019】
(1)3次元データ生成システムの概要
図1は、実施例に係る3次元データ生成システム100の概略構成である。3次元データ生成システム100は、計測対象物の3次元データを生成するシステムであって、センサ群2が生成するデータに関する処理を行う情報処理装置1と、ライダ(Lidar:Light Detection and Ranging、または、Laser Illuminated Detection And Ranging)3を少なくとも含むセンサ群2と、を有する。図2は、計測対象物が存在する空間でのライダ3の設置例を示す。本実施例では、倉庫内に保管された堆積物4が計測対象物となっている。堆積物4は、石膏などの粒状物質が堆積されたものであり、複数の山4A~4Dが連なって形成されている。ライダ3は、堆積物4の全体を計測できるように、倉庫内において複数設置されている。
【0020】
情報処理装置1は、センサ群2と電気的に接続し、センサ群2に含まれる各種センサが出力するデータの処理を行う。本実施例では、情報処理装置1は、設置された複数のライダ3が出力する点群データを積算(合成)した点群データ(「積算点群データ」とも呼ぶ。)を、計測対象物の3次元形状を表す3次元データとして生成する。積算点群データは、例えば、倉庫内の空間の所定位置を原点とした3次元座標系(「基準座標系」とも呼ぶ。)において計測対象物の被計測位置を点により表したデータである。情報処理装置1は、複数のライダ3を積算する場合、例えば、予め計測した各ライダ3の設置位置及び姿勢に基づき各ライダ3が出力する点群データを基準座標系に変換し、基準座標系に変換後のデータを足し合わせる。以後では、基準座標系は、水平面と平行な軸を夫々X軸及びY軸とし、水平面と垂直な高さ方向をZ軸とする。なお、情報処理装置1は、上述した例に限らず任意の手法に基づきライダ3の点群データの積算(合成)を行ってもよい。
【0021】
ライダ3は、水平方向および垂直方向の所定の角度範囲(視野範囲)に対して角度を変えながら赤外線レーザであるパルスレーザを出射することで、外界に存在する物体までの距離を離散的に計測する。この場合、ライダ3は、照射方向(即ち走査方向)を変えながらレーザ光を照射する照射部と、照射したレーザ光の反射光(散乱光)を受光する受光部と、受光部が出力する受光信号に基づくデータを出力する出力部とを有する。パルスレーザが照射される照射方向ごとにライダ3が計測するデータは、受光部が受光したレーザ光に対応する照射方向と、上述の受光信号に基づき特定される当該レーザ光の応答遅延時間(所謂、Time of Flight)とに基づき生成される。そして、ライダ3は、走査周期ごとに、ライダ3の視野範囲(即ちパルスレーザの照射範囲)においてパルスレーザが照射された点に対応するデータの群を、1フレーム分の点群データとして生成する。ライダ3は、本発明における「計測装置」の一例である。なお、ライダ3は、上述したスキャン型のライダに限らず、2次元アレイ状のセンサの視野にレーザ光を拡散照射することによって3次元データを生成するフラッシュ型のライダであってもよい。以後では、照射部から出射されたパルスレーザが照射されることにより計測された点(及びその計測データ)を、「被計測点」とも呼ぶ。
【0022】
本実施例では、各ライダ3の視野範囲を合わせた全体の視野範囲内に堆積物4の全体が含まれるように、必要な台数のライダ3が設置されている。各ライダ3は、堆積物4を俯瞰する位置に夫々設けられている。
【0023】
なお、センサ群2には、ライダ3に加え、種々の外界センサ又は/及び内界センサが含まれてもよい。例えば、センサ群2は、位置情報の生成に必要なGNSS(Global Navigation Satellite System)受信機等を含んでもよい。
【0024】
(2)情報処理装置の構成
図3は、情報処理装置1のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。情報処理装置1は、主に、インターフェース11と、メモリ12と、コントローラ13と、を有する。これらの各要素は、バスラインを介して相互に接続されている。
【0025】
インターフェース11は、情報処理装置1と外部装置とのデータの授受に関するインターフェース動作を行う。本実施例では、インターフェース11は、ライダ3などのセンサ群2から出力データを取得し、コントローラ13へ供給する。インターフェース11は、無線通信を行うためのネットワークアダプタなどのワイヤレスインターフェースであってもよく、ケーブル等により外部装置と接続するためのハードウェアインターフェースであってもよい。また、インターフェース11は、入力装置、表示装置、音出力装置等の種々の周辺装置とのインターフェース動作を行ってもよい。
【0026】
メモリ12は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリなどの各種の揮発性メモリ及び不揮発性メモリにより構成される。メモリ12は、コントローラ13が所定の処理を実行するためのプログラムが記憶される。なお、コントローラ13が実行するプログラムは、メモリ12以外の記憶媒体に記憶されてもよい。また、メモリ12には、コントローラ13が生成した堆積物4の3次元データである積算点群データ及び補間データが記憶される。
【0027】
コントローラ13は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、TPU(Tensor Processing Unit)などの1又は複数のプロセッサを含み、情報処理装置1の全体を制御する。この場合、コントローラ13は、メモリ12等に記憶されたプログラムを実行することで、後述する種々の処理を実行する。本実施例では、コントローラ13は、ライダ3が出力する点群データに基づき、堆積物4の3次元データとなる積算点群データを生成する。さらに、コントローラ13は、生成した積算点群データにおいてデータが欠けた箇所(「補間対象箇所」とも呼ぶ。)を補間対象として検出し、検出した補間対象箇所での推定される堆積物4の位置を表す補間データを生成する。
【0028】
そして、コントローラ13は、「取得手段」、「検出手段」、「候補位置決定手段」、「補間データ生成手段」及びプログラムを実行するコンピュータ等として機能する。
【0029】
なお、コントローラ13が実行する処理は、プログラムによるソフトウェアで実現することに限ることなく、ハードウェア、ファームウェア、及びソフトウェアのうちのいずれかの組み合わせ等により実現してもよい。また、コントローラ13が実行する処理は、例えばFPGA(Field-Programmable Gate Array)又はマイコン等の、ユーザがプログラミング可能な集積回路を用いて実現してもよい。この場合、この集積回路を用いて、コントローラ13が本実施例において実行するプログラムを実現してもよい。
【0030】
(3)補間データの生成
まず、補正対象箇所について図4(A)及び図4(B)を参照して説明する。図4(A)及び図4(B)は、ライダ3が出力する点群データに基づく堆積物4の積算点群データを表した図である。ここで、図4(A)では、山の間に形成された谷部分がライダ3の死角となることによってデータが欠損した部分が生じている。また、図4(B)では、ライダ3の縦の隣接する走査ライン間の隙間が大きくなることに起因してデータが欠損した部分が生じている。このように、隣接する走査ラインの隙間は本来は死角ではないのにも関わらず、計測できない領域となる。
【0031】
以上のように、ライダ3を固定設置した場合、各ライダ3が出力する点群データを積算した積算点群データには欠けた部分(穴)が生じる。従って、情報処理装置1は、このような部分を補間対象箇所として検出し、当該補間対象箇所に対応する補間データを生成する。
【0032】
次に、具体的な補間データの生成方法について説明する。情報処理装置1は、XY平面を所定サイズのグリッドに分割後、グリッドごとに積算点群データに基づく高さを算出する。そして、情報処理装置1は、積算点群データの被計測点が存在しないグリッドを補間対象箇所として検出し、各補間対象箇所について、複数の方向において夫々推定される堆積物4の傾斜角度に基づき、該当する高さを推定する。以後では、補間対象箇所となるグリッドを「補間対象グリッド」と呼ぶ。また、グリッドごとの積算点群データに基づく堆積物4の高さを「計測高」と呼び、補間対象グリッドにおいて推定される堆積物4の高さを「推定高」と呼ぶ。
【0033】
まず、情報処理装置1は、計測対象物である堆積物4が存在する空間のXY平面(即ち水平面)に対し、X軸及びY軸について所定間隔ごとにメッシュを入れることにより所定長のグリッドに分割する。この場合のグリッドのサイズは、例えば、20cm又は10cmであり、必要とされる堆積物4の3次元データの分解能に応じて決定される。
【0034】
次に、情報処理装置1は、積算点群データをグリッドごとに分割し、グリッドごとに積算点群データに基づく計測高を算出する。ここで、情報処理装置1は、複数の被計測点が存在するグリッドでは、当該グリッド内の各被計測点の高さを平均した高さを計測高として算出する。
【0035】
次に、情報処理装置1は、被計測点が1個もないグリッド(即ち計測高が算出できないグリッド)を、補間対象グリッドとして検出する。そして、情報処理装置1は、複数の方向において推定される堆積物4の傾斜角度及び当該傾斜角度から推定される堆積物4の高さとに基づき、補間対象グリッドの推定高を算出する。ここで、傾斜角度から方向ごとに推定される堆積物4の高さは、推定高の候補となる高さであり、以後では「候補高」とも呼ぶ。
【0036】
図5は、補間対象グリッド及びそれに隣接する隣接グリッドGa~Ghを示す図である。本実施例では、情報処理装置1は、矢印A1、A2夫々に示される縦の2方向と、矢印A3、A4に示される横の2方向と、矢印A5~A8に示される斜めの4方向とについて、補間対象グリッドでの堆積物4の傾斜角度を求める。傾斜角度の算出方法については後述する。そして、情報処理装置1は、傾斜角度に基づき候補高を方向ごとに算出し、方向ごとの候補高から推定高を決定する。この場合、情報処理装置1は、堆積物4がほぼ一定の傾斜角度で山が形成されるという前提を利用し、任意の方向に沿った位置に存在する他のグリッドの計測高及びXY座標位置に基づき、当該任意の方向における上述の傾斜角度及び候補高を算出する。
【0037】
例えば、情報処理装置1は、矢印A1に沿った方向の候補高を求める場合、矢印A1に沿った方向に存在する所定個数分の近傍のグリッド(即ちグリッドGgを含むグリッド)の計測高及びグリッドのXY座標位置を取得する。そして、情報処理装置1は、取得した計測高及びグリッドのXY座標位置(例えばグリッドの中心位置)に基づき、幾何学的算出方法により、矢印A1の方向における傾斜角度及び候補高を推定する。
【0038】
そして、情報処理装置1は、矢印A1~A8の各方向に対応する候補高を算出し、算出した候補高のうち最も高い位置を示す候補高を、補間対象グリッドでの推定高として決定する。この方法によれば、情報処理装置1は、堆積物4の山の谷付近における補間対象グリッドについても高精度に高さを推定することができる。
【0039】
図6は、矢印A1~A8のうち平行となる2方向に沿った断面における計測高及び候補高を示す図である。図6は、堆積物4の山の谷付近でのグリッド1~8を示している。ここで、グリッド1~8のうち、グリッド4及びグリッド5が補間対象グリッドに相当し、グリッド1~3及びグリッド6~8がその近傍のグリッドに相当する。線70は、グリッド1~3の計測高及びXY座標位置に基づき推定された堆積物4の傾斜角度を示し、線71は、グリッド6~8の計測高及びXY座標位置に基づき推定された堆積物4の傾斜角度を示す。以後では、補間対象グリッドを基準としてグリッド1~3が存在する方向を「第1方向」と呼び、補間対象グリッドを基準としてグリッド6~8が存在する方向を「第2方向」と呼ぶ。
【0040】
この場合、情報処理装置1は、グリッド1~3が存在する第1方向について、グリッド1~3の計測高及びXY座標位置に基づき推定された堆積物4の傾斜角度(線70参照)を算出し、当該傾斜角度に基づき、第1方向でのグリッド4の候補高81及びグリッド5の候補高82を算出する。同様に、情報処理装置1は、グリッド6~8が存在する第2方向について、グリッド6~8の計測高及びXY座標位置に基づき推定された堆積物4の傾斜角度(線71参照)を算出し、当該傾斜角度に基づき、第2方向でのグリッド5の候補高83及びグリッド4の候補高84を算出する。このように、情報処理装置1は、第1方向及び第2方向を含む全ての方向に対するグリッド4及びグリッド5の候補高を算出する。
【0041】
そして、情報処理装置1は、グリッド4において最も高い位置となる候補高(図6では候補高81)とグリッド5において最も高い位置となる候補高(図6では候補高83)とを夫々のグリッドでの推定高として定める。そして、情報処理装置1は、補間対象グリッドの推定高を示す補間データを生成し、積算点群データと関連付けてメモリ12に記憶する。
【0042】
以上のように、情報処理装置1は、複数の方向における補間対象グリッドの候補高を他のグリッドの計測高に基づき算出し、そのうち最も高い候補高を補間対象グリッドの推定高として定める。これにより、堆積物4の谷付近に存在する補間対象グリッドの推定高についても高精度に算出することができる。
【0043】
図7は、本実施例において情報処理装置1が実行するフローチャートの一例である。
【0044】
まず、情報処理装置1は、複数のライダ3から夫々点群データを取得する(ステップS11)。そして、情報処理装置1は、複数のライダ3から取得した点群データを積算した積算点群データを生成する(ステップS12)。この場合、情報処理装置1は、各ライダ3の点群データを基準座標系に変換し、変換した点群データを統合したデータを積算点群データとして取得する。
【0045】
次に、情報処理装置1は、基準座標系の空間を水平面上において所定サイズのグリッドに分割し、グリッドごとに積算点群データに基づく計測高を算出し、かつ、計測高が算出できないグリッドを補間対象グリッドとして検出する(ステップS13)。
【0046】
そして、情報処理装置1は、各補間対象グリッドについて、方向ごとの候補高を算出する(ステップS14)。この場合、情報処理装置1は、図5に示される8方向の各々に対する候補高を各補間対象グリッドに対して設定する。
【0047】
そして、情報処理装置1は、補間対象グリッドごとに、最も高い候補高を推定高として決定する(ステップS15)。そして、情報処理装置1は、各補間対象グリッドの推定高を示す補間データを生成する(ステップS16)。
【0048】
(4)傾斜角度の算出方法
次に、傾斜角度の算出方法の具体例(第1算出例~第3算出例)について具体的に説明する。
【0049】
第1算出例は、事前計測をベースとする方法であり、計測対象物を自然に積上げた場合に(上方から装置等を用いてその物体を落とした場合等に)形成される山塊状の形における斜面の勾配を予め計測し、その値を予め情報処理装置1のメモリ12に記憶しておく。この場合、計測対象物の種類ごとに事前の計測を行い、メモリ12内のテーブル等に傾斜角度の計測結果を格納しておく。この場合、情報処理装置1は、メモリ12を参照することで、傾斜角度を好適に算出することができる。
【0050】
第2算出例は、主成分分析を用いる方法であり、情報処理装置1は、補間対象箇所を順に着目グリッドとして設定し、着目グリッドに関し、グリッドがあるかをスキャンする方向について、垂直方向に細長な解析領域(スキャン方向への幅と厚みを持つ領域)を設定し、その領域に含まれるグリッド点の集合に対して主成分分析を行う。そして、情報処理装置1は、その第二次主成分、第三次主成分の固有値が小さい結果となる場合(グリッド点の分布が直線的と判断出来る)の勾配を、その着目グリッドにおける、そのスキャン方向の傾斜角度として算出する。この場合、グリッド点の分布が直線的であると判断されなかった場合は補間計算の対象から除外する。なお、着目グリッドに対して上り勾配となる場合は補間計算の対象から除外しても良い。
【0051】
第3算出例は、直線近似又は多項式近似を用いる方法であり、情報処理装置1は、第2算出方法と同様に設定した着目グリッドに関し、グリッドがあるかをスキャンする方向について、垂直方向に細長な解析領域(スキャン方向への幅と厚みを持つ領域)を設定し、その領域に含まれるグリッド点の集合に対して直線近似または多項式近似を行う。直線近似の場合は直線の傾きを、多項式近似の場合は近似曲線の端点における接線の傾きを、その着目グリッドにおける、そのスキャン方向の傾斜角度として算出する。なお、着目グリッドに対して上り勾配となる場合は補間計算の対象から除外しても良い。
【0052】
図8は、第2算出例及び第3算出例において設定する解析領域を、計測対象物の被計測点を真上から観察した図において表している。また、図9は、図8の解析領域1に対する「垂直方向に細長な解析領域」を計測対象物の被計測点の斜視図上において表している。さらに図10は、スキャン方向1に沿った図9の計測対象物の断面図において主成分分析(又は直線近似又は多項式近似)に用いられる解析領域1内のグリッド点を表している。
【0053】
ここで、第2算出方法について補足説明する。第2算出方法では、情報処理装置1は、主成分分析により、空間に分布するグリッド点の集合の共分散行列を求め、その行列の固有値解析を行い、3つの固有ベクトル(互いに直行するベクトル)と、各ベクトルに対応した3つの固有値を求める。固有値の大きさが、対応する固有ベクトルの方向に関する点の分布状態を表している。点が直線的な分布となる場合、第一成分のみが突出して大きな値(=第二成分、第三成分は小さな値となる)になる。よって、情報処理装置1は、第一成分に対応する固有ベクトルの方向とXY平面との成す角を、傾斜角度として算出する。
【0054】
次に、第3算出方法について補足説明する。第3算出方法では、情報処理装置1は、直線近似もしくは多項式近似に基づき、空間に分布するグリッド点の集合を、最小二乗法を用いて直線の式(即ち一次式)、または多項式で近似する。そして、情報処理装置1は、直線近似の場合はその直線の方向ベクトルとXY平面のなす角を傾斜角度として算出し、多項式近似の場合は近似曲線の端点における接線の方向ベクトルとXY平面のなす角を傾斜角度として算出する。
【0055】
(4)変形例
補間対象グリッドに対して候補高が算出される方向は、グリッドが縦、横、斜めに並ぶ方向である図5の矢印A1~A8の8方向に限定されない。これに代えて、情報処理装置1は、例えば、同図における矢印A1~A4に示される縦横の4方向の候補高を算出してもよく、矢印A5~A8の4方向の候補高を算出してもよい。このように、情報処理装置1は、水平面上における複数の方向における候補高を算出し、最も高い候補高を推定高とする。これにより、堆積物4の谷付近での補間対象グリッドに対しても高精度な推定高を算出することができる。
【0056】
以上説明したように、本実施例に係る情報処理装置1のコントローラ13は、計測対象物が置かれた空間を計測する複数のライダ3が生成する点群データに基づき生成された計測対象物の3次元データである積算点群データを取得する。そして、コントローラ13は、積算点群データにおいて欠けている補間対象グリッドを検出する。そして、コントローラ13は、補間対象箇所での複数の方向の各々に対する計測対象物の傾斜角度に基づき、複数の方向の各々に対する補間対象グリッドを補間する候補高を決定する。そして、コントローラ13は、候補高に基づき、補間対象グリッドに対応する補間データを生成する。これにより、情報処理装置1は、ライダ3の死角等により形成された計測対象物の3次元データの穴を補間する補間データを好適に生成することができる。
【0057】
なお、上述した実施例において、プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータであるコントローラ等に供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記憶媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記憶媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記憶媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。
【0058】
以上、実施例を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施例に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。すなわち、本願発明は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。また、引用した上記の特許文献及び非特許文献等の各開示は、本書に引用をもって繰り込むものとする。
【符号の説明】
【0059】
1 情報処理装置
2 センサ群
3 ライダ
100 3次元データ生成システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10