(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】エレベータシステム、エレベータの制御方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
B66B 3/02 20060101AFI20241125BHJP
B66B 17/20 20060101ALI20241125BHJP
B66B 1/14 20060101ALI20241125BHJP
【FI】
B66B3/02 V
B66B17/20 A
B66B1/14 E
(21)【出願番号】P 2024000146
(22)【出願日】2024-01-04
【審査請求日】2024-01-04
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 貴子
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-089046(JP,A)
【文献】特開2021-088458(JP,A)
【文献】特開2018-154436(JP,A)
【文献】特開2015-044674(JP,A)
【文献】特開2023-018561(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112978527(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 3/00-3/02
B66B 17/20
B66B 1/00-1/52
B66B 5/00-5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの乗りかごの床面と乗場の床面とを撮像する撮像装置と、
複数台のロボットが前記エレベータを利用する場合に、前記撮像装置から得られる画像を解析して、前記複数台のロボットの中の
第1のロボットが前記乗りかごに
乗車又は降車したときに生じる前記乗りかごの床面と前記乗場の床面との間の段差を検出する段差検出手段と、
前記第1のロボットが前記乗りかごに乗車又は降車した後、かつ、前記複数台のロボットの中の第2のロボットが前記乗りかごに乗車又は降車する前に、前記段差検出手段によって検出された段差に基づいて、前記乗りかごの前記乗場の床面に対する位置を調整する位置調整手段と、
を具備したことを特徴とするエレベータシステム。
【請求項2】
前記エレベータは、前記複数台の自律型のロボットの運転を制御するロボット制御装置と通信可能に接続され、
前記乗りかごの位置調整が完了するまでの間、前記
第1のロボットに続いて前記乗りかごに
乗車又は降車予定の
第2のロボットの移動を禁止するように前記ロボット制御装置に通知する通知手段と
を具備したことを特徴とする請求項1記載のエレベータシステム。
【請求項3】
前記エレベータは、前記乗りかごの乗降口付近に識別子を有し、
前記撮像装置は、前記識別子を撮像し、
前記段差検出手段は、前記撮像装置から得られる前記識別子の画像を解析して、前記識別子の状態から前記乗りかごの床面と前記乗場の床面との間の段差を検出する、
ことを特徴とする請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項4】
エレベータの乗りかごの床面と乗場の床面とを撮像する撮像装置と、
複数台のロボットが前記エレベータを利用する場合に、前記撮像装置から得られる画像を解析して、前記複数台のロボットの中の任意のロボットが前記乗りかごに乗車又は降車したときに生じる前記乗りかごの床面と前記乗場の床面との間の段差を検出する段差検出手段と、
前記段差検出手段によって検出された段差に基づいて、前記乗りかごの前記乗場の床面に対する位置を調整する位置調整手段と、
を具備し、
前記位置調整手段は、
前記ロボットが前記乗りかごに
乗車又は降車したときに前記乗りかごを位置調整したデータを前記ロボットと対応付けて記憶しておく学習テーブルを有し、
次回、前記ロボットが前記乗りかごに
乗車又は降車する場合に、前記学習テーブルに記憶されたデータに基づいて、前記乗りかごの位置調整を第1調整として実行する
ことを特徴とす
るエレベータシステム。
【請求項5】
前記位置調整手段は、
前記第1調整の後、前記段差検出手段によって一定値以上の段差が検出された場合に、そのときの段差を解消するように前記乗りかごの位置調整を第2調整として実行する
ことを特徴とする
請求項4記載のエレベータシステム。
【請求項6】
エレベータの制御装置によって実行されるエレベータの制御方法であって、
複数台のロボットが前記エレベータを利用する場合に、前記エレベータの乗りかごの床面と乗場の床面とが撮像された画像を解析して、前記複数台のロボットの中の第1のロボットが前記乗りかごに乗車又は降車したときに生じる前記乗りかごの床面と前記乗場の床面との間の段差を検出し、
前記第1のロボットが前記乗りかごに乗車又は降車した後、かつ、前記複数台のロボットの中の第2のロボットが前記乗りかごに乗車又は降車する前に、前記検出された段差に基づいて、前記乗りかごの前記乗場の床面に対する位置を調整する、
エレベータの制御方法。
【請求項7】
エレベータの制御装置が備えるコンピュータを、
複数台のロボットが前記エレベータを利用する場合に、前記エレベータの乗りかごの床面と乗場の床面とが撮像された画像を解析して、前記複数台のロボットの中の第1のロボットが前記乗りかごに乗車又は降車したときに生じる前記乗りかごの床面と前記乗場の床面との間の段差を検出する段差検出手段、
前記第1のロボットが前記乗りかごに乗車又は降車した後、かつ、前記複数台のロボットの中の第2のロボットが前記乗りかごに乗車又は降車する前に、前記検出された段差に基づいて、前記乗りかごの前記乗場の床面に対する位置を調整する位置調整手段、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、自律型のロボットと連動するエレベータシステム、エレベータの制御方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建物内において警備や荷物の運搬に自律走行型ロボット(以下、ロボットと称す)が利用されるようになってきた。このようなロボットは、エレベータシステムと連動することにより、エレベータの乗りかごを利用(乗りかごに乗車、もしくは、乗りかごから降車)して建物内の各階に移動することができる。
【0003】
ところで、この種のロボットは利用者に比べて重いため、乗りかごに乗車あるいは降車したときに、乗場の床面と乗りかごの床面との間に段差が生じやすい。段差が生じていると、後続するロボットがその段差で転倒する可能性がある。
【0004】
このような問題を解決する方法として、ロボットに段差を検出するためのセンサを設けておき、このセンサによって段差を検出した場合に、ロボットからエレベータシステム(エレベータ制御装置)に対して位置補正を指示する方法が考えられている。また、遠隔診断で段差を検出し、外部からの遠隔操作によって乗りかごの位置補正を行い、段差を解消しておく方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6620121号公報
【文献】特許第7332256号公報
【発明の概要】
【0006】
しかしながら、前者の方法は、ロボットにセンサを設置しておく必要があり、センサを持たないロボットには適用できない。また、エレベータシステム側では、ロボットからの指示を受けて位置補正を行うので、段差を解消するまでに時間を要し、その間、後続のロボットを止めておく必要がある。一方、後者の方法は、遠隔診断で段差を検出したときに位置補正を行うので、各々のロボットが乗降するときに生じる段差をリアルタイムに解消することはできない。
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、各々のロボットが乗降するときに生じる段差を速やかに解消し、後続のロボットが段差で転倒することを防ぐことのできるエレベータシステム、エレベータの制御方法およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態に係るエレベータシステムは、エレベータの乗りかごの床面と乗場の床面とを撮像する撮像装置と、段差検出手段と、位置調整手段とを具備する。前記段差検出手段は、複数台のロボットが前記エレベータを利用する場合に、前記撮像装置から得られる画像を解析して、前記複数台のロボットの中の任意の第1のロボットが前記乗りかごに乗車又は降車したときに生じる前記乗りかごの床面と前記乗場の床面との間の段差を検出する。前記位置調整手段は、前記第1のロボットが前記乗りかごに乗車又は降車した後、かつ、前記複数台のロボットの中の第2のロボットが前記乗りかごに乗車又は降車する前に、前記段差検出手段によって検出された段差に基づいて、前記乗りかごの前記乗場の床面に対する位置を調整する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は一実施形態に係るエレベータシステムの構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は同実施形態におけるロボットの構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は同実施形態における乗りかごを床面合わせする処理を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は同実施形態における複数台のロボットが乗りかごに乗車する場合に、乗りかごの床面合わせを行う一例を示す図である。
【
図5】
図5は同実施形態における複数台のロボットが乗りかごから降車する場合に、乗りかごの床面合わせを行う一例を示す図である。
【
図6】
図6は変化例として学習テーブルの一例を示す図である。
【
図7】
図7は前記学習テーブルを用いて床面合わせを行う処理を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は変化例として段差がない場合の画像の一例を示す図である。
【
図9】
図9は変化例として段差がある場合の画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、実施形態について説明する。
なお、開示はあくまで一例にすぎず、以下の実施形態に記載した内容により発明が限定されるものではない。当業者が容易に想到し得る変形は、当然に開示の範囲に含まれる。説明をより明確にするため、図面において、各部分のサイズ、形状等を実際の実施態様に対して変更して模式的に表す場合もある。複数の図面において、対応する要素には同じ参照数字を付して、詳細な説明を省略する場合もある。
【0011】
図1は、一実施形態に係るエレベータシステムの構成を示すブロック図であり、エレベータ制御装置と自律型のロボットの制御装置とが通信可能に接続された構成が示されている。
【0012】
乗りかご11は、エレベータ制御装置20の制御の下で、巻上機19の駆動により昇降路内を昇降動作する。乗りかご11内には、カメラ12(撮像装置)が設置されている。カメラ12は、例えば乗りかご11内のかごドア11a付近の天井面に設置され、乗りかご11のかご床面15と乗場床面16とを含む画像を連続的に撮像する。カメラ12は、図示せぬケーブルを介してエレベータ制御装置20に接続されている。なお、カメラ12の設置場所は、乗りかご11内の天井面に限らず、かご床面15と乗場床面16とを含む画像を撮像可能な場所であれば、どこに設置されていてもよい。
【0013】
ロボット13a,13bは、例えば、荷物の配送、警備、清掃等を行う自律走行型ロボットであり、乗りかご11に乗車して建物内の各階を移動可能である。以下、ロボット13aおよびロボット13bを特に区別しない場合は、ロボット13と称して説明する。ロボット13は、ロボット制御装置14からの指示に従って行動する。ロボット13とロボット制御装置14とは、所定の無線通信方式によって互いにデータ通信可能に接続されている。
【0014】
ロボット制御装置14は、エレベータ制御装置20と無線通信によって接続し、ロボット13の運転を制御する。ロボット制御装置14は、ロボット13が乗りかご11を乗降するとき、出発階(乗車階)と行先階(降車階)の情報を含む行先呼びの情報を当該ロボット13の種別情報とともにエレベータ制御装置20に送信する。
【0015】
各階の乗場には、乗場ドア17および乗場呼びボタン18が設置されている。乗場ドア17は、乗りかご11の乗降口に開閉自在に設置されている。乗場ドア17は、かごドア11aに係合して開閉動作する。なお、動力源(ドアモータ)は乗りかご11側にあり、乗場ドア17はかごドア11aに追従して開閉するだけである。
【0016】
乗場呼びボタン18は、利用者が乗場呼びを登録するためのボタンである。なお、「乗場呼び」とは、各階の乗場に設置された乗場呼びボタン18の操作により登録される呼びの信号のことであり、登録階と行先方向の情報を含む。これに対し、「かご呼び」とは、乗りかご11内に設けられた図示せぬ行先呼びボタンの操作により登録される呼びの信号のことであり、行先階の情報を含む。
【0017】
巻上機19は、モータを備え、モータを駆動させて乗りかご11と接続されたロープを巻き上げることにより、乗りかご11を昇降路内において昇降運動させる。
【0018】
エレベータ制御装置20は、CPU、ROM、RAM等を備えたコンピュータからなり、エレベータ全体の制御を行う。本実施形態において、エレベータ制御装置20は、呼び記憶部21、運転制御部22、段差検出部23、位置調整部24、通信部25を備える。
【0019】
呼び記憶部21は、各階の乗場に設置された乗場呼びボタン18の操作によって登録される乗場呼びと、乗りかご11内に設置された図示せぬかご呼びボタンの操作によって登録されるかご呼びとを記憶する。さらに、本実施形態では、呼び記憶部21は、ロボット制御装置14によって登録されるロボット13の行先呼びを当該ロボット13の種別情報とともに記憶する。
【0020】
運転制御部22は、呼び記憶部21に記憶された乗場呼び、かご呼び、行先呼びに基づいて、乗りかご11を各階に移動させるなどの運転制御を行う。詳しくは、運転制御部22は、巻上機19を制御することにより、乗りかご11を昇降路内で昇降運動させ、各階に移動させる。通常、乗りかご11が任意の階に着床したとき、かご床面15と乗場床面16とが面一になるように位置調整されている。しかし、利用者よりも重量があるロボット13が乗降すると、かご床面15と乗場床面16との間に段差が生じることがある。
【0021】
段差検出部23は、かご床面15と乗場床面16との間に生じる段差を検出する。詳しくは、段差検出部23は、カメラ12から得られる画像を解析処理することで、乗りかご11のかご床面15と乗場床面16との間で段差が生じているか否かを判断する。
【0022】
位置調整部24は、段差検出部23によって段差が検出されたとき、巻上機19を制御して、かご床面15と乗場床面16とが面一になるよう乗りかご11の位置を調整する。なお、この位置調整のことを(床面合わせとも言う。また、位置調整部24は、乗りかご11の床面合わせを行っている間、乗りかご11が床面合わせ中である旨の通知を通信部25に送信する。
【0023】
通信部25は、ロボット制御装置14を介してロボット13に対するデータの通信制御を行う。通信部25は、位置調整部24から乗りかご11が床面合わせ中である通知を受信すると、乗りかご11の床面合わせが完了するまでの間、ロボット13aに続いて乗りかご11に乗降予定のロボット13bの移動を禁止するようにロボット制御装置14に通知する。なお、通信部25は、ロボット制御装置14を介さずに、ロボット13と直接通信し、移動を禁止するようにロボット13に通知してもよい。
【0024】
図2はロボット13の機能構成を示すブロック図である。
ロボット13には、制御部31、センサ32、通信装置33、操作部34、表示部35、記憶部36、駆動部37などが備えられている。
【0025】
制御部31は、CPUからなり、所定のプログラムの起動により、エレベータシステムと連動して、建物の各階を含む所定領域内を自律移動するための制御を行う。センサ32は、例えばレーザ距離センサ(Laser Range Finder)や超音波距離センサ、デュアルカメラ、LIDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)などである。ロボット13は、このセンサ32により障害物を避けながら移動し、乗りかご11内の空きスペースを検出して乗車する。
【0026】
通信装置33は、ロボット制御装置14と無線通信する。操作部34は、例えば目的地を入力するなど、各種データの入力操作を行う部分である。表示部35は、各種データの表示を行う。記憶部36には、予めプログラムの他、ロボット13の移動経路を含む地図情報などが記憶されている。駆動部37は、ロボット13の底部に設置された車輪を駆動するためのモータなどを含む。
【0027】
次に、本システムの動作について説明する。
図3は、本システムの動作を示すフローチャートである。このフローチャートで示される処理は、主としてコンピュータであるエレベータ制御装置20によって実行される。
【0028】
いま、複数台のロボット13から同一階床を出発階とする行先呼びがエレベータ制御装置20に登録されたとする。エレベータ制御装置20の運転制御部22は、行先呼びの出発階に乗りかご11を応答させ、かごドア11aおよび乗場ドア17を戸開させる(ステップS11のYes)。通信部25は、ロボット制御装置14を介して複数台のロボット13の中から乗りかご11に一番近い先頭のロボット13に対し、乗りかご11への乗車許可通知を送信する(ステップS12)。
【0029】
乗車許可通知を受信した先頭のロボット13が乗りかご11に乗車すると、段差検出部23は、乗りかご11内に設置されたカメラ12から画像を取得し解析する(ステップS13)。段差検出部23は、解析結果から乗りかご11のかご床面15と乗場床面16との間に段差が生じているか否かを判断する(ステップS14)。具体的には、段差検出部23は、カメラ12の画像上で、かご床面15と乗場床面16の周辺部分の構造物(乗場ドア17や三方枠の左右の柱、かごドア11a、かご内の正面柱など)の位置関係からかご床面15と乗場床面16との間に一定値以上の段差(高さ方向の差)が生じているか否かを判断する。
【0030】
なお、「一定値」は、乗りかご11を利用するロボット13の特性によって決められてもよい。ロボット13の特性とは、ロボット13の全体の大きさ、車輪の大きさ、重量といった要素を含む。
【0031】
段差が検出された場合(ステップS14のYes)、位置調整部24は、乗車した先頭のロボット13を除く後続のロボット13に対して、一時的に乗りかご11への乗車を禁止する通知をロボット制御装置14に送信する(ステップS15)。これは、段差が生じている状態で、後続のロボット13が乗りかご11に乗車すると、その段差に躓いて転倒する可能性があるからである。この通知を受けて、ロボット制御装置14は、乗りかご11の床面合わせが終わるまでの間、後続のロボット13を待機させておく。
【0032】
位置調整部24は、段差検出部23によって検出された段差に基づいて、巻上機19を駆動することで、乗りかご11の高さ位置を調整し、かご床面15と乗場床面16とが面一になるように床面合わせを行う(ステップS16)。
【0033】
床面合わせが完了すると、位置調整部24は、通信部25およびロボット制御装置14を介して、後続のロボット13に乗りかご11への乗車許可通知を送信する(ステップS17)。この乗車許可通知を受けて、後続のロボット13が移動を再開し、乗りかご11に乗車する。このとき、段差が解消されているので、後続のロボット13が転倒することはない。
【0034】
位置調整部24は、呼び記憶部21に登録された行先呼びを参照して、この階を出発階とする行先呼びが登録された全てのロボット13が乗車したか否かを判断する(ステップS18)。また、ステップS14で段差を検出しなかった場合(ステップS14のNo)においても、ステップS17の処理を実行する。
【0035】
全てのロボット13が乗車したと判断された場合(ステップS18のYes)、
図3に示す処理を終了する。一方、まだ全てのロボット13が乗りかご11に乗車していない場合(ステップS18のNo)、つまり、乗場で待機している後続のロボット13がいる場合、再度ステップS13の処理を実行する。
【0036】
なお、
図3のフローチャートでは、出発階が同じ複数台のロボット13が乗りかご11に乗車する場合の処理を説明したが、行先階が同じ複数台のロボット13が乗りかご11から降車する場合においても同様である。つまり、降車時は、先頭のロボット13が乗りかご11から降車したときに生じる段差をカメラ12の画像を用いて検出し、その段差を解消するための床面合わせを行った後に、後続のロボット13を降車させるといった処理を全てのロボット13が降車するまで間、繰り返し行う。
【0037】
図4に複数台のロボットが乗りかごに乗車する場合の具体例を示す。
2台のロボット13a,13bが同じ階の乗場で待機しており、乗りかご11が来たときに順に乗車する場合を想定して説明する。
【0038】
ロボット13a,13bの行先呼びに応答して、乗りかご11がロボット13a,13bの出発階の乗場に到着し、かごドア11aおよび乗場ドア17が戸開すると、先頭のロボット13aに乗車許可通知が送信される。この乗車許可通知に従ってロボット13aが乗りかご11に乗車すると、カメラ12によって、乗場床面16よりかご床面15が下がった状態の画像が得られる。
【0039】
このカメラ12の画像を解析処理することで、乗りかご11のかご床面15と乗場床面16との間の段差が検出される。段差が検出されると、後続のロボット13bに対して一時的に乗りかご11への乗車が禁止される。さらに、現在の段差を解消するための床面合わせが行われる。床面合わせが完了して段差が解消されると、後続のロボット13bに乗車許可通知が送信される。ロボット13bは、この乗車許可通知を受けて、乗りかご11に乗車する。
【0040】
このように、ロボット13aが乗りかご11に乗車したことによって生じる段差が検出されると、その段差を解消するための床面合わせが行なわれるので、後続のロボット13bが乗りかご11に乗車するときに、段差で転倒することを防ぐことができる。
【0041】
図5に複数台のロボットが乗りかごから降車する場合の具体例を示す。
2台のロボット13a,13bが乗りかご11内に乗車しており、同じ階の乗場で順に降車する場合を想定して説明する。
【0042】
ロボット13a,ロボット13bの行先呼びに基づいて、乗りかご11がロボット13a,13bの行先階の乗場に到着し、かごドア11aおよび乗場ドア17が戸開すると、先頭のロボット13aに降車許可通知が送信される。この降車許可通知に従ってロボット13aが乗りかご11から降車すると、カメラ12によって、乗場床面16よりかご床面15が上がった状態の画像が得られる。
【0043】
このカメラ12の画像を解析処理することで、乗りかご11のかご床面15と乗場床面16との間の段差が検出される。段差が検出されると、後続のロボット13bに対して一時的に乗りかご11からの降車が禁止される。さらに、現在の段差を解消するための床面合わせが行われる。床面合わせが完了して段差が解消されると、後続のロボット13bに降車許可通知が送信される。ロボット13bは、この降車許可通知を受けて、乗りかご11から降車する。
【0044】
このように、ロボット13aが降車する場合も乗車時と同様に床面合わせによって段差が解消されるので、後続のロボット13bが乗りかご11からの降車するときに、段差で転倒することを防ぐことができる。
【0045】
以上のように本実施形態によれば、複数台のロボット13が乗りかご11に乗降する場合において、カメラ12を用いて、これらのロボット13の重量で生じる段差がその都度検出され、位置調整によって段差が解消される。したがって、後続のロボット13が乗りかご11に乗降するときに、段差で転倒することを防ぐことができる。
【0046】
また、カメラ12を用いて段差を検出するため、ロボット13には段差検出のためのセンサは不要であり、ロボット13からの指示を受けずに、エレベータ側の判断で位置合わせをリアルタイムに実行して、段差を速やかに解消できる。
【0047】
(変化例)
(1)学習テーブルを用いて床面合わせ
ロボット13が乗りかご11に乗降したときに、乗りかご11を位置調整したデータをロボット13の種別と対応付けて記憶する学習テーブルを有しておけば、次回、ロボット13が乗りかご11に乗降する場合に、学習テーブルに記憶されたデータに基づいて床面合わせを行う事ができる。
【0048】
図6は、学習テーブルの一例である。
位置調整部24は、学習テーブルT1を有する。位置調整部24は、ロボット13の乗降時に段差を解消するための床面合わせを行ったとき、当該ロボット13の種別と、位置調整データ(段差を解消するために床面合わせをしたときの高さ方向の長さ)と、床面合わせの実施日時とを関連付けて学習テーブルT1に記憶する。
【0049】
図6の例では、第1の学習データとして、ロボット種別:ロボットA,位置調整データ(段差の大きさ):3cm,日時:12/1―12:45が学習テーブルT1に記憶されている。これは、ロボットAの乗降時に3cmの段差が生じたため、12月1日の12時45分に床面合わせ(位置調整)を実施したことを示している。他の学習データについても同様である。
【0050】
なお、
図6の例では、ロボット13の乗車時と降車時の位置調整データを学習テーブルT1に記憶しておく構成としたが、乗車時の位置調整データと降車時の位置調整データを分けて学習テーブルT1に記憶しておくことでよい。
【0051】
図7は、学習テーブルを用いて乗りかごの床面合わせを行う場合の処理を示すフローチャートである。
いま、複数台のロボット13から同一階床を出発階とする行先呼びがエレベータ制御装置20に登録されたとする。エレベータ制御装置20の運転制御部22は、行先呼びの出発階に乗りかご11を応答させ、かごドア11aおよび乗場ドア17を戸開させる(ステップS21のYes)。通信部25は、ロボット制御装置14を介して複数台の全てのロボットに対し、乗りかご11への乗車許可通知を送信する(ステップS22)。
【0052】
ここで、先頭のロボット13が乗りかご11に乗車するときに、位置調整部24は、学習テーブルT1の中から当該ロボット13の種別に対応した位置調整データを読み出す(ステップS23)。例えば、先頭のロボット13の種別がロボットBである場合、学習テーブルT1の中からロボットBの乗降時に床面合わせを行ったときの位置調整データ(2cm,2cm)が読み出される。なお、ロボットBに関する位置調整データが複数存在する場合には、これらのデータの平均値を用いてもよいし、最新の値を用いてもよい。
【0053】
位置調整部24は、学習テーブルT1から読み出した位置調整データに基づいて、乗りかご11の床面合わせを行う(ステップS24)。つまり、位置調整部24は、学習テーブルT1から読み出した位置調整データが当該ロボットの乗降時に生じる段差として予測し、その段差を解消するように床面合わせを行う。
【0054】
床面合わせが完了すると、段差検出部23は、乗りかご11内に設置されたカメラ12から画像を取得し解析する(ステップS25)。段差検出部23は、解析結果から乗りかご11のかご床面15と乗場床面16との間に段差が生じているか否かを判断する(ステップS26)。これは、例えばロボット13が運搬用のロボット等である場合、運搬する荷物の重量により重量が変化し、学習テーブルT1に記憶された位置調整データの値よりも更に大きな段差が生じている可能性があるからである。
【0055】
一定値以上の段差が検出された場合(ステップS26のYes)、位置調整部24は、段差検出部23によって検出された段差に基づいて床面合わせを行い、かご床面15と乗場床面16とが面一になるように乗りかご11の高さ位置を再調整する(ステップS27)。
【0056】
このようにして、必要に応じて2段階の位置調整を行った後、位置調整部24は、呼び記憶部21に登録された行先呼びを参照して、この階を出発階とする行先呼びが登録された全てのロボット13が乗車したか否かを判断する(ステップS28)。また、ステップS26で段差が検出されなかった場合(ステップS26のNo)においても、ステップS28の処理を実行する。
【0057】
全てのロボット13が乗車したと判断された場合(ステップS28のYes)、
図7に示す処理を終了する。一方、全てのロボット13が乗りかご11に乗車していない場合(ステップS28のNo)、再度ステップS23の処理を実行する。
【0058】
なお、
図7のフローチャートでは、出発階が同じ複数台のロボット13が乗りかご11に乗車する場合の処理を説明したが、行先階が同じ複数台のロボット13が乗りかご11から降車する場合においても同様である。つまり、降車時は、先頭のロボット13が乗りかご11から降車したときに生じる段差を学習テーブルT1に記憶された位置調整データから予測して、その段差を解消するための床面合わせを行う(第1の位置調整)。さらに、カメラ12を用いて段差の確認し、一定値以上の段差が検出されれば、再度床面合わせを行う(第2の位置調整)。この処理を全てのロボット13が降車するまで間、繰り返し行う。
【0059】
このように、学習テーブルT1を用いることで、ロボット13の乗降時に生じる段差を事前に予測できるので、ロボット13が乗降途中に床面合わせを実施することができる。したがって、後続のロボット13を床面合わせのために一時的に停止させる必要がなくなり、複数台のロボット13が乗りかご11を利用する場合に、これらのロボット13の間隔を空けなくても、速やかに乗降させることが可能となる。
【0060】
また、学習テーブルT1を用いて床面合わせした後、カメラ12を用いて段差を確認した上で乗りかご11を微調整することで、学習データの値から大きく外れた段差が生じていた場合に、後続のロボット13が転倒することを防ぐことができる。
【0061】
(2)マークを基準に段差を検出
図8は、乗りかご11のかご床面15と乗場床面16との間に段差がない場合の画像を示す図である。かごドア11aと乗場ドア17とが戸開しており、かご床面15と乗場床面16とが面一の状態となっている。乗場には、行先呼びが登録されたロボット13aが待機している。
【0062】
乗りかご11のシル41と乗場のシル42に跨いで、所定の長さを有する直線形状のマーク43(識別子)が戸開閉方向に対して斜めに設けられている。マーク43は、かご床面15と乗場床面16との間に段差がない場合には、乗りかご11のシル41と乗場のシル42との間で直線上につながっている。かご床面15と乗場床面16との間に段差があると、マーク43が乗りかご11のシル41と乗場のシル42との境界で分離し、直線につながらない。この場合、段差が大きいほど、マーク43が分離したときの間隔が広がる。したがって、この間隔から段差の大きさがわかる。
【0063】
図9は、乗りかご11のかご床面15と乗場床面16との間に段差がある場合の画像を示す図である。ロボット13aが乗りかご11に乗車したことにより、乗りかご11のかご床面15と乗場床面16との間で段差が生じている。この段差により、マーク43が乗りかご11のシル41と乗場のシル42との境界で分離する。段差検出部23は、画像上でマーク43が分離したときの間隔を求め、その間隔に基づいて段差の大きさを検出する。
【0064】
このように、カメラ12の画像からかご床面15と乗場床面16との間の段差を検出する場合に、乗りかご11のシル41と乗場のシル42とに跨いで直線形状のマーク43を設けておくことで、そのマーク43の分離状態から段差を容易に検出することができる。
【0065】
以上述べた少なくとも1つの実施形態によれば、各々のロボットが乗降するときに生じる段差を速やかに解消し、後続のロボットが段差で転倒することを防ぐことが可能なエレベータシステムを提供することができる。
【0066】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0067】
11…乗りかご、11a…かごドア、12…カメラ、13(13a,13b)…ロボット、14…ロボット制御装置、15…かご床面、16…乗場床面、17…乗場ドア、18…乗場呼びボタン、19…巻上機、20…エレベータ制御装置、21…呼び記憶部、22…運転制御部、23…段差検出部、24…位置調整部、25…通信部、31…制御部、32…センサ、33…通信装置、34…操作部、35…表示部、36…記憶部、37…駆動部、41…乗りかごのシル、42…乗場のシル、43…マーク(識別子)、T1…学習テーブル。
【要約】
【課題】各々のロボットが乗降するときに生じる段差を速やかに解消し、後続のロボットが段差で転倒することを防ぐ。
【解決手段】一実施形態に係るエレベータシステムは、エレベータの乗りかごの床面と乗場の床面とを撮像する撮像装置と、段差検出手段と、位置調整手段とを具備する。段差検出手段は、複数台のロボットがエレベータを利用する場合に、撮像装置から得られる画像を解析して、複数台のロボットの中の任意のロボットが乗りかごに乗降したときに生じる乗りかごの床面と乗場の床面との間の段差を検出する。位置調整手段は、段差検出手段によって検出された段差に基づいて、乗りかごの乗場の床面に対する位置を調整する。
【選択図】
図1