(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】エレベータシステム
(51)【国際特許分類】
B66B 1/14 20060101AFI20241125BHJP
B66B 3/00 20060101ALI20241125BHJP
【FI】
B66B1/14 L
B66B1/14 K
B66B1/14 F
B66B3/00 K
(21)【出願番号】P 2024002515
(22)【出願日】2024-01-11
【審査請求日】2024-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】豊田 雄介
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/188639(WO,A1)
【文献】特開2006-056678(JP,A)
【文献】特開平04-354770(JP,A)
【文献】特開2001-322775(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/00-1/52
B66B 3/00-3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者の携帯端末を用いてエレベータの呼び登録を行うエレベータシステムにおいて、
複数の物件毎に設置され、それぞれにエレベータの運転を制御する複数のエレベータ制御装置と、
前記複数のエレベータ制御装置と通信ネットワークを介して接続されたサーバ装置とを備え、
前記携帯端末は、
前記利用者の属性を示す属性情報を設定する属性設定手段と、
前記属性設定手段によって設定された前記属性情報を記憶する記憶手段と、
前記複数の物件の中の任意の物件の乗場で、前記利用者が呼び情報を登録するときに、当該呼び情報に前記記憶手段に記憶された前記属性情報を付加して前記サーバ装置に送信する呼び登録手段とを具備し、
前記サーバ装置は、
前記携帯端末から前記呼び情報及び前記属性情報を受信したときに、前記属性情報に基づいて、前記呼び情報を特定呼びに置き換えて、前記任意の物件に設置された前記エレベータ制御装置に送信することで、前記利用者の属性を考慮した運転を実行させる運転制御手段と
を具備し
、
前記サーバ装置は、一般利用者の属性を示す第4属性情報を受信した場合に、前記呼び情報を前記エレベータ制御装置に送信し、
前記エレベータ制御装置は、
前記呼び情報を受信した場合に、前記乗場に設置されたカメラの画像を解析処理して、前記利用者の属性を判断する属性判断手段と、
前記属性判断手段の判断結果を受けて、前記呼び情報を特定呼びに置き換えて、前記利用者の属性を考慮した運転を実行するかご運転手段と
を具備するエレベータシステム。
【請求項2】
前記属性設定手段は、
前記利用者の属性を定めるための複数の項目を有する属性登録画面を有し、
前記属性登録画面上で前記利用者が任意に選択した項目に基づいて、前記属性情報を設定する
請求項1記載のエレベータシステム。
【請求項3】
前記属性登録画面は、車椅子利用者の属性を定めるための複数の第1項目が設けられ、
前記属性設定手段は、前記複数の第1項目のいずれか少なくとも1つが選択された場合に、前記車椅子利用者の属性を示す第1属性情報を設定する
請求項2記載のエレベータシステム。
【請求項4】
前記運転制御手段は、前記第1属性情報を受信した場合に、前記特定呼びとして、車椅子呼びを前記エレベータ制御装置に送信し、前記利用者に対して車椅子対応かごを応答させる
請求項3記載のエレベータシステム。
【請求項5】
前記属性登録画面は、乗り合わせ拒否の属性を定めるための複数の第2項目が設けられ、
前記属性設定手段は、前記複数の第2項目のいずれか少なくとも1つが選択された場合に、乗り合わせ拒否の属性を示す第2属性情報を設定する
請求項2記載のエレベータシステム。
【請求項6】
前記運転制御手段は、前記第2属性情報を受信した場合に、前記特定呼びとして、乗り合わせ拒否呼びを前記エレベータ制御装置に送信し、前記利用者が乗車する乗りかごに他者の同乗を禁止させる
請求項5記載のエレベータシステム。
【請求項7】
前記属性登録画面は、ペット連れの属性を定めるための複数の第3項目が設けられ、
前記属性設定手段は、前記複数の第3項目のいずれか少なくとも1つが選択された場合に、ペット連れの属性を示す第3属性情報を設定する
請求項2記載のエレベータシステム。
【請求項8】
前記運転制御手段は、前記第3属性情報を受信した場合に、前記特定呼びとして、ペット呼びを前記エレベータ制御装置に送信し、前記利用者がペット連れであることを通知させる
請求項7記載のエレベータシステム。
【請求項9】
利用者の携帯端末を用いてエレベータの呼び登録を行うエレベータシステムにおいて、
複数の物件毎に設置され、それぞれにエレベータの運転を制御する複数のエレベータ制御装置と、
前記複数のエレベータ制御装置と通信ネットワークを介して接続されたサーバ装置とを備え、
前記携帯端末は、
前記複数の物件の中の任意の物件の乗場で、前記利用者が呼び情報を登録するときに、当該呼び情報に予め設定された前記利用者の識別情報を付加して、前記サーバ装置に送信する呼び登録手段を具備し、
前記サーバ装置は、
前記携帯端末から前記呼び情報を受信したときに、前記エレベータ制御装置に属性要求を行い、前記エレベータ制御装置から前記利用者の属性を示す属性情報を取得する取得手段と、
前記取得手段によって得られた前記属性情報を、前記識別情報と関連付けて記憶する記憶手段と、
前記呼び情報に付加された前記識別情報に基づいて、前記記憶手段から前記属性情報を読み出す属性情報読み出し手段と、
前記属性情報読み出し手段によって読み出された前記属性情報に基づいて、前記呼び情報を特定呼びに置き換えて、前記任意の物件に設置された前記エレベータ制御装置に送信することで、前記利用者の属性を考慮した運転を実行させる運転制御手段とを具備し、
前記エレベータ制御装置は、
前記サーバ装置から前記属性要求があったときに、前記乗場に設置されたカメラの画像を解析処理して、前記利用者の属性を判断する属性判断手段と、
前記属性判断手段によって判断結果に応じて、前記属性情報を前記サーバ装置に提供する属性提供手段と
を具備するエレベータシステム。
【請求項10】
前記取得手段は、前記属性情報が前記記憶手段に記憶されていない場合に、前記エレベータ制御装置に前記属性要求を行い、前記エレベータ制御装置から前記属性情報を取得する
請求項
9記載のエレベータシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、エレベータの乗場には乗場呼びを登録するための乗場呼びボタンが設置されている。エレベータの利用者によって乗場呼びボタンが操作されると、乗りかごが乗場に応答する。
【0003】
近年では、乗場呼びボタンの代わりに、利用者のスマートフォン等の携帯端末から乗場呼びを登録できるシステムが考えられている。具体的には、携帯端末に表示される呼び登録画面上で、利用者が呼び情報(物件情報、登録階、行先方向)を入力すると、当該呼び情報がインターネット上のクラウドサーバを経由してエレベータ制御装置に送信され、乗場呼びとして登録される。
【0004】
ここで、エレベータには、車椅子利用者のために、車椅子呼びボタンが設置されていることがある。車椅子呼びボタンによって車椅子呼びが登録されると、例えば、戸開時間が長く設定された乗りかごが応答する。これにより、車椅子利用者は慌てずに乗りかごに乗車することができる。
【0005】
上述したシステムでは、携帯端末から送信された呼び情報は通常の乗場呼びとして扱われる。通常の乗場呼びとは別の車椅子呼びを登録できるようにするためには、呼び登録画面上に車椅子呼び登録用のインタフェース(ボタン等)を追加しなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2022-404号公報
【文献】特開2021-14369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、呼び登録画面にボタン類を増やすと、呼び登録の操作が煩雑となり、利用者がスムーズに呼び登録できない可能性がある。
【0008】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、携帯端末を用いて呼び登録を行うシステムにおいて、通常の乗場呼び以外の呼びを簡単に登録できるエレベータシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態に係るエレベータシステムは、呼び登録用のアプリケーションソフトがインストールされた携帯端末を用いて、エレベータの呼び登録を行う。前記エレベータシステムは、複数の物件毎に設置され、それぞれにエレベータの運転を制御する複数のエレベータ制御装置と、前記複数のエレベータ制御装置と通信ネットワークを介して接続されたサーバ装置とを備える。前記携帯端末は、属性設定手段と、記憶手段と、呼び登録手段とを具備する。前記属性設定手段は、利用者の属性を示す属性情報を設定する。前記記憶手段は、前記属性設定手段によって設定された前記属性情報を記憶する。前記呼び登録手段は、前記複数の物件の中の任意の物件の乗場で、前記利用者が呼び情報を登録するときに、当該呼び情報に前記記憶手段に記憶された前記属性情報を付加して前記サーバ装置に送信する。前記サーバ装置は、運転制御手段を具備する。前記運転制御手段は、前記携帯端末から前記呼び情報及び前記属性情報を受信したときに、前記属性情報に基づいて、前記呼び情報を特定呼びに置き換えて、前記任意の物件に設置された前記エレベータ制御装置に送信することで、前記利用者の属性を考慮した運転を実行させる。前記サーバ装置は、一般利用者の属性を示す第4属性情報を受信した場合に、前記呼び情報を前記エレベータ制御装置に送信する。前記エレベータ制御装置は、属性判断手段と、かご運転手段とを具備する。前記属性判断手段は、前記呼び情報を受信した場合に、前記乗場に設置されたカメラの画像を解析処理して、前記利用者の属性を判断する。前記かご運転手段は、前記属性判断手段の判断結果を受けて、前記呼び情報を特定呼びに置き換えて、前記利用者の属性を考慮した運転を実行する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係るエレベータシステムの構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係るエレベータ制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係るサーバ装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係る携帯端末の構成を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態に係る属性登録画面の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態に係る呼び登録画面の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態に係るサーバ装置に送信されるときの呼び情報と属性情報の構成を模式的に示した図である。
【
図8A】
図8Aは、第1実施形態に係る携帯端末及びサーバ装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図8B】
図8Bは、第1実施形態に係るエレベータ制御装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、第1実施形態の第1変形例に係る属性登録画面の一例を示す図である。
【
図10】
図10は、第1実施形態の第2変形例に係る属性登録画面の一例を示す図である。
【
図11】
図11は、第2実施形態に係るエレベータ制御装置の機能構成を示す図である。
【
図12】
図12は、第2実施形態に係るカメラの設置位置の一例を示す図である。
【
図13】
図13は、第3実施形態に係るエレベータ制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図14】
図14は、第3実施形態に係るサーバ装置の構成を示すブロック図である。
【
図15A】
図15Aは、第3実施形態に係る携帯端末及びサーバ装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図15B】
図15Bは、第3実施形態に係るエレベータ制御装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、各実施形態について説明する。
なお、開示はあくまで一例にすぎず、以下の実施形態に記載した内容により発明が限定されるものではない。当業者が容易に相当し得る変形は、当然に開示の範囲に含まれる。説明をより明確にするため、図面において、各部分のサイズ、形状等を実際の実施形態に対して変更して模式的に表す場合もある。複数の図面において、対応する要素には同じ参照数字を付して、詳細な説明を省略する場合もある。
【0012】
(第1実施形態)
図1は、一実施形態に係るエレベータシステムの構成の一例を示す図である。
図中の10a、10bは、本エレベータシステムが導入されたオフィスビルなどの建物(以下、物件と表記)を示す。物件10a、10bの各々には、エレベータ制御装置20a、20bが設置されている。なお、
図1の例では、便宜的に2つの物件10a、10bのみを示すが、実際には多数の物件が存在し、これらの物件毎に設けられたエレベータ制御装置が、後述する通信ネットワーク1を介してサーバ装置30に互いにデータ通信可能に接続されている。サーバ装置30は、各物件のエレベータを統括管理しているコンピュータである。
【0013】
エレベータ制御装置20aは、物件10aに備わる乗りかご(エレベータ)11-1a~11-3aの運転を制御する。乗りかご11-1a~11-3aは、昇降路内に立設された一対のガイドレールに昇降自在に支持されており、乗場呼び及びかご呼びに応答して、各階を移動する。「乗場呼び」とは、各階の乗場で登録される呼びの信号のことであり、登録階と行先方向の情報を含む。また、「かご呼び」とは、かご室内で登録される呼びの信号のことであり、行先階の情報を含む。
【0014】
本システムでは、後述するように、各利用者がそれぞれ所持する携帯端末40を用いて乗場呼びを登録可能である。このため、各階の乗場12aに設置された図示せぬ乗場呼びボタンの操作は不要となる。以下の説明では、便宜上、携帯端末40を用いて登録される乗場呼びを、「スマホ呼び」と表記する。
【0015】
エレベータ制御装置20bは、物件10bに備わる乗りかご11bの運転を制御する。乗りかご11bは、昇降路内に立設された一対のガイドレールに昇降自在に支持されており、乗場呼び及びかご呼びに応答して、各階を移動する。
【0016】
本実施形態に係るエレベータ制御装置20a、20bは、通常の乗場呼びとは異なる「車椅子呼び」が登録可能に設定されている。「車椅子呼び」とは、車椅子対応かごを呼ぶための乗場呼びのことである。車椅子呼びは、通常、乗場12a、12bに設置された車椅子呼びボタンにより登録されるが、本実施形態では、後述するように、利用者の携帯端末40を用いて車椅子呼びを登録できる。
【0017】
また、「車椅子対応かご」は、例えば、標準仕様の乗りかごよりも戸開時間が長く設定された乗りかごや、標準仕様の乗りかごよりも戸開閉速度が遅く設定された乗りかご、もしくは、かごの室内に車椅子利用者用の呼びボタンやバックミラー等が設置された乗りかごを含む。複数の乗りかご11-1a~11-3aを制御しているエレベータ制御装置20aは、車椅子呼びが登録される場合、乗りかご11-1a~11-3aのうち、車椅子対応かごとして設定された乗りかごを応答させる。また、1台の乗りかご11bを制御しているエレベータ制御装置20bは、車椅子呼びが登録される場合、乗りかご11bを車椅子対応かごとして応答させる。この場合、例えば、当該乗りかご11bの戸開時間が通常よりも長く設定される。
【0018】
エレベータ制御装置20a、20bは、サーバ装置30と通信ネットワーク1を介して接続される。サーバ装置30は、エレベータ制御装置20a、20bと連携してスマホ呼びに関する処理を実行する機能を有する。
【0019】
スマホ呼びに用いられる携帯端末40は、一般的な携帯電話機やスマートフォンなどである。携帯端末40には、予め呼び登録用のアプリケーションソフト40aがインストールされている。この呼び登録用のアプリケーションソフト40aは、エレベータの関連企業によって開発されたものであり、携帯端末40のOS(Operating System)に依存するWebサイトから自由にダウンロードできる。利用者は、このアプリケーションソフト40aの呼び登録画面(
図6参照)で所定の操作を行うことで、インターネット上のサーバ装置30を介して、スマホ呼びを登録する。
【0020】
図2は、本実施形態に係るエレベータ制御装置20aの構成を示すブロック図である。なお、エレベータ制御装置20bについても、
図2と同様の構成を有する。
【0021】
エレベータ制御装置20aは、記憶部21、制御部22、通信部23を備える。
記憶部21は、制御部22の処理に必要な各種プログラムや情報を記憶する。本実施形態では、記憶部21は呼び管理テーブル21aを有する。呼び管理テーブル21aには、各階の乗場12aにおいて登録された乗場呼び(スマホ呼びを含む)を登録階の情報と共に記憶し、これらの呼びが割り当てられた乗りかごの情報を記憶する。
【0022】
制御部22は、プログラムの起動により乗りかご11-1a~11-3aの運転に必要な各種処理を実行する部分である。制御部22は、かご運転部22a、戸開閉制御部22bを有する。
【0023】
かご運転部22aは、乗りかご11-1a~11-3aの運転制御を行う。詳しくは、かご運転部22aは、呼び管理テーブル21aに記憶された乗場呼びに、乗りかご11-1a~11-3aのうちいずれかを割り当てて応答させ、当該乗りかごを利用者の行先階に向かわせる。なお、かご運転部22aは、車椅子呼びには、車椅子対応かごとして設定された乗りかごを応答させる。
【0024】
戸開閉制御部22bは、乗りかご11-1a~11-3aが乗場12aに到着したときのかごドアの開閉動作を制御する。詳しくは、戸開閉制御部22bは、図示せぬ着床検出装置によって乗りかご11-1a~11-3aの何れかが乗場12aに着床したことを検出すると、当該乗りかごのかごドアを戸開方向に移動させて全開する。そして、戸開閉制御部22bは、所定時間経過後に、当該乗りかごのかごドアを戸閉方向に移動させて全閉する。また、かごドアの移動と共に乗場ドアも同じ方向に移動する。なお、乗場12aに着床した乗りかごが車椅子対応かごである場合には、かごドアが全開してから全閉するまでの所定時間が長く設定される。もしくは、車椅子対応かごの戸開閉速度が遅く設定される。通信部23は、エレベータ制御装置20aとサーバ装置30との間の通信処理を行う。
【0025】
図3は、本実施形態に係るサーバ装置30の構成を示すブロック図である。
サーバ装置30は、記憶部31、制御部32、通信部33を備える。記憶部31は、制御部32の処理に必要な各種プログラムや情報を記憶する。記憶部31は、物件情報を記憶した物件管理テーブル31aを有する。物件情報は、物件10a、10b毎に、物件名(もしくは、物件の識別情報)、及び当該物件に設置されたエレベータ制御装置の情報等が含まれる。
【0026】
制御部32は、サーバ装置30の全体の制御を行う部分であり、本実施形態ではスマホ呼びに関連した処理を実行するための運転制御部32aを有する。
【0027】
運転制御部32aは、サーバ装置30が携帯端末40から呼び情報及び属性情報を受信したときに、属性情報に基づいて、呼び情報を特定呼びに置き換えて、利用者のいる物件に設置されたエレベータ制御装置に送信することで、利用者の属性を考慮した運転を実行させる。なお、「呼び情報」とは、利用者がいる物件、乗車階、行先方向(もしくは、行先階)を含む情報である。通信部33は、サーバ装置30とエレベータ制御装置20a、20bとの間の通信処理を行う機能と、サーバ装置30と携帯端末40との間の通信処理を行う機能とを備える。
【0028】
図4は、本実施形態に係る携帯端末40の構成を示すブロック図である。
携帯端末40には、入力部41、表示部42、制御部43、記憶部44、通信部45等が備えられている。
【0029】
入力部41は、各種キーやボタンなどからなり、データの入力や指示を行う。表示部42は、例えばLCDからなり、データの表示を行う。なお、入力部41として、例えば透明のタッチパネルを用い、表示部42の画面上でデータ入力・指示を行う構成でも良い。
【0030】
制御部43は、CPUからなり、所定のプログラムの起動によって各種機能を実行する。本実施形態では、制御部43は、予め携帯端末40にインストールされている呼び登録用のアプリケーションソフト40aが起動されることによって、属性設定部43a、呼び登録部43bの処理を実行する。
【0031】
属性設定部43aは、利用者の属性を示す属性情報を設定するための処理を行う。具体的には、属性設定部43aは、利用者の所定の操作により、車椅子利用者の属性を定めるための複数の項目(第1項目)を有する属性登録画面A11(
図5参照)を表示部42に表示し、利用者によって任意に選択された項目に基づいて、当該利用者が車椅子利用者であることを示す属性情報(第1属性情報)を設定する(詳しくは、この属性情報を記憶部44に読み出し可能に記憶する)。
【0032】
呼び登録部43bは、利用者の呼び情報を登録するための処理を行う。具体的には、呼び登録部43bは、利用者の所定の操作により、表示部42に呼び登録画面A12(
図6参照)を表示し、この呼び登録画面A12上で入力された呼び情報を、サーバ装置30に送信する。このとき、呼び登録部43bは、記憶部44から利用者の属性情報を読み出し、当該属性情報を呼び情報に付加して送信する(
図7参照)。
【0033】
記憶部44は、制御部43の処理に必要な各種プログラムや、アプリケーションソフト40aを含む各種アプリケーションを記憶する。また、記憶部44は、属性設定部43aによって設定された利用者の属性情報を記憶する。通信部45は、携帯端末40とサーバ装置30との間の通信処理を行う。
【0034】
次に、アプリケーションソフト40aの構成について説明する。
アプリケーションソフト40aは、上述したように、制御部43に、属性設定部43aと呼び登録部43bの処理を実行させる機能を有する。アプリケーションソフト40aは、ネットワーク上に存在するアプリケーションストアから、利用者の携帯端末40にダウンロードされる。
【0035】
図5は、属性登録画面A11の一例を示す図である。属性登録画面A11は、アプリケーションソフト40aの起動後、例えば図示せぬメイン画面上で「ユーザ登録」のメニューをタップする等の所定の操作により表示される。属性登録画面A11は、車椅子利用の属性を定めるための複数の項目が設けられ、当該複数の項目をそれぞれ選択できるように、項目毎に選択ボタンを備える。
【0036】
図5の例では、属性登録画面A11には、選択ボタンB11と、選択ボタンB12が備えられている。選択ボタンB11は、「車椅子を利用している」状態(項目A)を選択するためのボタンである。選択ボタンB12は、「ケガをしている」状態(項目B)を選択するためのボタンである。選択ボタンB11、B12は、項目A及び項目Bのうちいずれか一つを選択できるラジオボタンで表示されてもよいし、両方を選択できるチェックボックスで表示されてもよい。
図5では、ラジオボタンで表示され、利用者によって項目Aが選択された場合を示している。利用者によって、これらの項目の少なくとも1つが選択された場合、「車椅子利用者」の属性が設定される。これに対し、選択ボタンの何れも選択されなかった場合は、「一般利用者」の属性(第4属性情報)が設定される。
【0037】
なお、属性登録画面A11に表示される項目は、
図5の例に限られず、車椅子対応かごを必要とする利用者の状態を選択するための項目がさらに表示されてもよい。例えば、松葉杖を利用していること、高齢であること、妊娠中であること等を示す項目が選択可能に表示されていてもよい。
【0038】
図6は、呼び登録画面A12の一例を示す図である。呼び登録画面A12は、アプリケーションソフト40aの起動後、例えば図示せぬメイン画面上で「呼び登録」のメニューをタップする等の所定の操作により表示される。
【0039】
呼び登録画面A12は、物件選択ボタンB13、乗車階入力フォームF11、行先階入力フォームF12、行先方向ボタンB14、送信ボタンB15を備える。
【0040】
物件選択ボタンB13は、利用者のいる物件を選択するためのボタンである。物件選択ボタンB13をタップすると、本エレベータシステムを利用可能な各物件のリストが表示され、そのリストの中で任意の物件を選択するように構成されている。
図6の例では、「Aビル」が選択されている。
【0041】
乗車階入力フォームF11は、利用者の乗車階を入力するための入力フォームである。乗車階入力フォームF11がタップされると、画面上に図示せぬキーパッドが表示される。このキーパッドの操作により利用者の乗車階を入力できる。
図6の例では、「2階」が入力されている。なお、利用者の乗車階の入力方式は、
図6の例のようなキーパッド方式に限られない。例えば、物件選択ボタンB13で任意の物件が選択されたときに、当該物件の階床一覧を表示し、その階床一覧の中から利用者が乗車階すると階床を選択するような構成であってもよい。
【0042】
行先方向ボタンB14は、利用者の行先方向として上方向又は下方向を選択するためのボタンである。
図6では、上方向が選択された場合を示している。なお、行先方向ボタンB14によって利用者の行先方向を選択するのでなく、行先階入力フォームF12に、利用者の行先階を直接入力するような構成であってもよい。この場合、入力された行先階はかご呼びとして扱われる。したがって、利用者が乗りかご内に乗車したときに、かご内操作盤の操作によって行先階を登録する必要がなくなる。
【0043】
送信ボタンB15は、呼び登録画面A12上で入力された各情報(物件、乗車階、行先方向あるいは行先階)を確定し、サーバ装置30に送信するためのボタンである。送信ボタンB15がタップされると、これらの情報が利用者の呼び情報として、属性情報と共に所定の形式でサーバ装置30に送信される。
【0044】
図7は、サーバ装置30に送信される呼び情報と属性情報の構成を模式的に示した図である。呼び情報は、
図7に示すように、呼び登録画面A12の物件選択ボタンB13により入力された「物件名」、乗車階入力フォームF11により入力された「乗車階」、行先方向ボタンB14により選択された「行先方向」を含む。なお、行先方向ボタンB14ではなく、行先階入力フォームF12に行先階が入力された場合は、行先方向の代わりに当該行先階が呼び情報に含まれる。
【0045】
ここで、「属性情報」は、送信ボタンB15がタップされたときに携帯端末40の記憶部44から読み出され、呼び情報に付加されて、サーバ装置30に送信される。
【0046】
次に、第1実施形態の動作について説明する。
ここでは、利用者Uが携帯端末40を持って、物件10aの任意の階の乗場12aに来た場合を想定する(
図1参照)。なお、携帯端末40の記憶部44には、利用者Uの属性情報が、
図5に示した属性登録画面A11を通じて予め記憶されているものとする。
【0047】
図8A及び
図8Bは、第1実施形態に係るエレベータシステムの処理の流れを示すフローチャートである。
図8Aは携帯端末40及びサーバ装置30の処理を示し、
図8Bはエレベータ制御装置20aの処理を示している。
【0048】
まず、
図8Aを参照して、携帯端末40及びサーバ装置30の処理の流れについて説明する。
利用者Uの所定の操作により、携帯端末40の表示部42に、
図6に示した呼び登録画面A12が表示される(ステップS11)。この呼び登録画面A12上で物件、乗車階、行先方向又は行先階の各情報が入力され、送信ボタンB15が操作されると(ステップS12のYES)、携帯端末40(呼び登録部34b)は、これらの情報を含んだ呼び情報を生成し、当該呼び情報に属性情報を付加して、
図7に示したような形式でサーバ装置30に送信する(ステップS13)。
【0049】
サーバ装置30(制御部32)は、携帯端末40から呼び情報及び属性情報を受信したとき、当該属性情報に基づいて、利用者Uが車椅子利用者であるか否かを判定する(ステップS14)。利用者Uが車椅子利用者であった場合(ステップS14のYES)、サーバ装置30は、携帯端末40から受信した呼び情報を車椅子呼びに置き換える。
【0050】
なお、「呼び情報を車椅子呼びに置き換える」とは、エレベータ制御装置に、当該呼び情報を車椅子呼びとして扱うよう要求することを含む。より具体的には、通常の乗場呼び(一般呼び)として登録される呼び情報を示すコード信号を、車椅子呼びボタンの押下によって登録される車椅子呼びを示すコード信号に変更することである。
【0051】
サーバ装置30は、上記車椅子呼びを利用者Uのいる物件10aに設置されたエレベータ制御装置20aに送信する(ステップS15)。具体的には、サーバ装置30は、呼び情報に含まれる物件の情報から、利用者Uのいる物件10aを特定し、物件管理テーブル31aを参照して、当該物件10aと対応するエレベータ制御装置20aに車椅子呼びを送信する。
【0052】
一方、利用者Uが車椅子利用者ではなく、一般利用者であった場合(ステップS14のNO)、サーバ装置30は、呼び情報を置き換えずに、エレベータ制御装置20aに送信する(ステップS16)。
【0053】
次に、
図8Bを参照して、エレベータ制御装置20aの処理の流れについて説明する。
エレベータ制御装置20aは、サーバ装置30から車椅子呼びを受信した場合(ステップS17のYES)、図示せぬ車椅子呼びボタンの押下によって登録された車椅子呼びと同様に、当該車椅子呼びを呼び管理テーブル21aに記憶する(ステップS18)。エレベータ制御装置20a(かご運転部22a)は、乗りかご11-1a、11-2a、11-3aの中で車椅子対応かごとして設定された乗りかごに当該車椅子呼びを割り当て、利用者Uの待つ階床に向かわせる(ステップS19)。
【0054】
一方、エレベータ制御装置20aは、サーバ装置30から車椅子呼びに置き換えられていない呼び情報を受信した場合(ステップS17のNO)、エレベータ制御装置20aは、乗場呼びボタンの押下によって登録された通常の乗場呼びと同様に、当該呼び情報を通常の乗場呼びとして呼び管理テーブル21aに記憶する(ステップS20)。エレベータ制御装置20a(かご運転部22a)は、乗りかご11-1a、11-2a、11-3aの中から車椅子対応かご以外の乗りかごに当該通常の乗場呼びを割り当て、利用者Uの待つ階床に向かわせる(ステップS21)。
【0055】
なお、
図8A及び
図8Bでは、利用者Uが物件10aで呼び登録を行う場合を想定して説明したが、利用者Uが物件10bで呼び登録を行う場合も同様である。すなわち、携帯端末40によって登録された通常の呼び情報が、属性情報に応じて車椅子呼びに置き換えられて、利用者Uがいる物件10bのエレベータ制御装置20bに送られる。エレベータ制御装置20bは、車椅子呼びを受信した場合、乗りかご11bを車椅子対応かごとして、利用者Uの待つ階床に向かわせる。
【0056】
このように第1実施形態によれば、予め利用者の携帯端末40に、車椅子利用者であることを示す属性情報を設定しておけば、通常の操作によって登録された通常の呼び情報が車椅子呼びに置き換えられて、利用者がいる物件のエレベータ制御装置に送られる。したがって、呼び登録画面A12に車椅子ボタンを追加するなどの改良は不要であり、利用者は煩雑な操作を必要とせずに、車椅子呼びを簡単に登録して、車椅子対応かごに乗車することができる。
【0057】
また、
図5に示したように、属性登録画面A11は、利用者の現在の状態を選択するための複数の選択ボタンB11、B12を有し、これらの選択ボタンB11、B12を通じて、車椅子利用者の属性情報が携帯端末40に設定される構成になっている。したがって、例えば利用者が車椅子を利用していなくても、現在、ケガをしている場合には、選択ボタンB12を通じて車椅子利用者の属性を設定しておくことで、任意の物件の乗場に来たときに、特に意識しなくても、車椅子呼びを簡単に登録して、車椅子対応かごに乗車できる。
【0058】
なお、車椅子呼びの登録機能を備えていないエレベータにおいて、新たに車椅子呼びを登録できるようにするためには、乗場に車椅子呼びボタンを設置し、エレベータ制御装置のソフトウェアの変更を必要とする。本システムを適用すれば、利用者の携帯端末を用いて車椅子呼びを登録できるので、車椅子呼びボタンを設置するといったハードウェアの改良を必要とせずに対応できる。
【0059】
(変形例)
上述した第1実施形態では、利用者の属性情報に応じて、「車椅子呼び」を登録する形態について説明したが、第1変形例では、「乗り合わせ拒否呼び」を登録する形態、第2変形例では、「ペット呼び」を登録する形態について説明する。なお、第1実施形態と同様の構成部分についてはその詳しい説明を省略し、ここでは第1実施形態と異なる部分について主に説明する。
【0060】
・第1変形例:乗り合わせ拒否呼び
まず、「乗り合わせ拒否呼び」を登録する形態について説明する。
第1変形例において、エレベータ制御装置20a、20bには、「乗り合わせ拒否呼び」の登録機能と運転制御機能が備えられているものとする。「乗り合わせ拒否呼び」とは、利用者が行先階に行くまでの途中階で他者との乗り合わせを拒否できる乗場呼びである。
【0061】
例えば、物件10aにおいて、乗り合わせ拒否呼びが登録されると、エレベータ制御装置20aは、乗りかごを利用者の出発階に応答させた後、この乗りかごが利用者の行先階に到着するまでの間、他の階で登録された乗場呼びの割り当てを禁止する。つまり、利用者の行先階まで直行運転させる。物件10bにおいても同様である。これにより、他の利用者が途中階から乗車しないため、乗り合わせを防ぐことができる。このような乗り合わせ拒否呼びは、通常、乗場に設置された乗り合わせ拒否用の呼びボタンの操作によって登録されるが、第1変形例では、利用者の携帯端末40を用いて登録可能とする。
【0062】
第1変形例において、属性設定部43aは、乗り合わせ拒否の属性を示す属性情報を設定するための処理を行う。具体的には、属性設定部43aは、利用者の所定の操作により、乗り合わせ拒否の属性を定めるための複数の項目(第2項目)を有する属性登録画面A13(
図9参照)を表示部42に表示し、利用者によって任意に選択された項目に基づいて、当該利用者が乗り合わせ拒否を要求している利用者であることを表す属性情報(第2属性情報)を設定する(詳しくは、この属性情報を記憶部44に読み出し可能に記憶する)。
【0063】
図9は、属性登録画面A13の一例を示す図である。属性登録画面A13は、アプリケーションソフト40aの起動後、例えば図示せぬメイン画面上で「ユーザ登録」のメニューをタップする等の所定の操作により表示される。属性登録画面A13は、乗り合わせ拒否の属性を定めるための複数の項目が設けられ、当該複数の項目をそれぞれ選択できるように、項目毎に選択ボタンを備える。
【0064】
図9の例では、属性登録画面A13には、選択ボタンB16と、選択ボタンB17が備えられている。選択ボタンB16は、「ストーカーに悩んでいる」状態(項目C)を選択するためのボタンである。選択ボタンB17は、「エレベータで人と乗り合わせるのが怖い」状態(項目D)を選択するためのボタンである。選択ボタンB16、B17は、項目C及び項目Dのうちいずれか一つを選択できるラジオボタンで表示されてもよいし、両方を選択できるチェックボックスで表示されてもよい。
図9では、ラジオボタンで表示され、利用者によって項目Cが選択された場合を示している。利用者によって、これらの項目の少なくとも1つが選択された場合、「乗り合わせ拒否」の属性が設定される。これに対し、いずれの項目も選択されなかった場合は、「一般利用者」の属性が設定される。属性情報は、上述した第1実施形態と同様に、呼び情報に付加されてサーバ装置30に送信される。
【0065】
サーバ装置30(運転制御部32a)は、携帯端末40から呼び情報を受信すると、その呼び情報に付加された属性情報を確認する。属性情報が乗り合わせ拒否であった場合、サーバ装置30は、通常の乗場呼び(一般呼び)として登録された呼び情報を乗り合わせ拒否呼びに置き換えて、利用者のいる物件のエレベータ制御装置に送信する。例えば、利用者が物件10aにいれば、サーバ装置30は、乗り合わせ拒否呼びをエレベータ制御装置20aに送る。
【0066】
これにより、エレベータ制御装置20aは、乗場12aで乗り合わせ拒否の呼びボタンが操作された場合と同様の処理を実行する。つまり、エレベータ制御装置20aは、乗りかご11-1a、11-2a、11-3aの中から乗り合わせ拒否呼びを割り当てる乗りかごを選出して、利用者の出発階に向かわせた後、当該乗りかごが利用者の行先階に到着するまでの間、他の階の乗場呼びの割り当てを禁止して、直行運転させる。
【0067】
なお、利用者が他者の同乗を拒否していることを考慮すると、乗りかごが利用者の乗車階に到着したときに、できるだけ、その乗りかごに利用者が乗車していないことが好ましい。そのため、乗り合わせ拒否呼びを割り当てる乗りかごを選出する場合に、乗りかご11-1a、11-2a、11-3a中で最も乗車人数が少ない乗りかご、あるいは、無人の乗りかごを優先的に選出することが好ましい。
【0068】
また、利用者の乗車階において、利用者が乗りかごに乗車するときに、他者が乗り込んできた場合に、同乗を拒否するために、ブザー音を鳴らすなどしてもよい。他者の乗り込みは、例えば乗りかごに設置されている荷重センサの値や、乗りかご内あるいは乗場に設置された監視カメラの画像などで検出できる。
【0069】
・第2変形例:ペット呼び
次に、「ペット呼び」を登録する形態について説明する。
第2変形例において、エレベータ制御装置20a、20bには、「ペット呼び」の登録機能と表示制御機能が備えられているものとする。「ペット呼び」とは、ペット連れの利用者によって登録される乗場呼びである。
【0070】
例えば、物件10aでは、乗場12aや乗りかご11-1a~11-3a内に図示せぬペットボタンが設けられる。このペットボタンの操作によってペット呼びが登録されると、エレベータ制御装置20aは、各階の乗場12aに設置された表示器にペット連れであることを表示して、当該乗場12aにいる他の利用者に通知する。物件10bにおいて、ペット呼びが登録された場合も同様である。これにより、ペットとの同乗を気にする他の利用者が、ペットとの乗り合わせを回避することができる。なお、「ペット」の表示は、少なくともペット呼びに応答した乗りかごがペット連れ利用者の行先階に向かう間に停止する各階の乗場で行われればよい。このようなペット呼びは、通常、乗場や乗りかごに設置されたペット呼びボタンの操作によって登録されるが、第2変形例では、利用者の携帯端末40を用いて登録可能とする。
【0071】
第2変形例において、属性設定部43aは、ペット連れの属性を示す属性情報を設定するための処理を行う。具体的には、属性設定部43aは、利用者の所定の操作により、ペット連れの属性を定めるための複数の項目(第3項目)を有する属性登録画面A14(
図10参照)を表示部42に表示し、利用者によって任意に選択された項目に基づいて、当該利用者がペット連れの利用者であることを表す属性情報(第3属性情報)を設定する(詳しくは、この属性情報を記憶部44に読み出し可能に記憶する)。
【0072】
図10は、属性登録画面A14の一例を示す図である。属性登録画面A14は、アプリケーションソフト40aの起動後、例えば図示せぬメイン画面上で「ユーザ登録」のメニューをタップする等の所定の操作により表示される。属性登録画面A14は、ペット呼びの属性を定めるための複数の項目が設けられ、当該複数の項目をそれぞれ選択できるように、項目毎に選択ボタンを備える。
【0073】
図10の例では、属性登録画面A14には、選択ボタンB18と、選択ボタンB19が備えられている。選択ボタンB18は、「ペットを連れている」状態(項目E)を選択するためのボタンである。選択ボタンB19は、「エレベータ内にペットが乗車していることを知らせたい」状態(項目F)を選択するためのボタンである。選択ボタンB18、B19は、項目E及び項目Fのうちいずれか一つを選択できるラジオボタンで表示されてもよいし、両方を選択できるチェックボックスで表示されてもよい。
図10では、ラジオボタンで表示され、利用者によって項目Fが選択された場合を示している。利用者によって、これらの項目の少なくとも1つが選択された場合、「ペット連れ」の属性が設定される。これに対し、選択ボタンの何れも選択されなかった場合は、「一般利用者」の属性が設定される。属性情報は、上述した実施形態と同様に、呼び情報に付加されてサーバ装置30に送信される。
【0074】
サーバ装置30(運転制御部32a)は、携帯端末40から呼び情報を受信すると、その呼び情報に付加された属性情報を確認する。属性情報がペット連れ利用者であった場合、サーバ装置30は、通常の乗場呼び(一般呼び)として登録された呼び情報をペット呼びに置き換えて、利用者のいる物件のエレベータ制御装置に送信する。例えば、利用者が物件10aにいれば、サーバ装置30は、ペット呼びをエレベータ制御装置20aに送る。
【0075】
これにより、エレベータ制御装置20aは、乗場12aでペット呼びボタンが操作された場合と同様の処理を実行する。つまり、エレベータ制御装置20aは、乗りかご11-1a、11-1b、11-1cの中からペット呼びを割り当てる乗りかごを選出して、利用者の出発階に向かわせた後、当該乗りかごが利用者の行先階に到着するまでの間、各階乗場12aに設置された図示せぬ表示器にペット連れの表示を行う。
【0076】
なお、上述した第1及び第2変形例では、「乗り合わせ拒否呼び」、「ペット呼び」について説明したが、例えば「音声案内呼び」などの他の呼びでも利用者の携帯端末40を用いて同様に登録することができる。
【0077】
「音声案内呼び」とは、目の不自由な利用者が登録する乗場呼びのことである。この音声案内呼びが登録されると、エレベータ制御装置は、例えばドアの開閉、ボタン操作、乗りかごの運転状態(かご位置や運転方向)などを音声で案内する。このような音声案内呼びを含め、様々な呼びを、利用者の属性を設定することで任意選択的に登録できる構成としてもよい。以下では、通常の乗場呼び以外の呼び(「車椅子呼び」、「乗り合わせ拒否呼び」、「ペット呼び」等)のことを特定呼びと称して説明する。
【0078】
また、複数の特定呼びの一部又は全てを組み合わせて登録できるようにしてもよい。例えば、属性登録画面A11、A13、A14を一つの画面で表示することで、複数の項目(項目A~F)から、利用者の状態に合う項目を選択できるようにしてもよい。この場合、属性情報に複数の属性が含まれることがある。携帯端末40から受信した属性情報に複数の属性が設定されている場合、サーバ装置30は、利用者がいる物件のエレベータ制御装置に、各属性に応じた運転を組み合わせて実行させる。例えば、サーバ装置30は、「車椅子利用者」の属性と「ペット連れ」の属性が、属性情報として含まれていた場合、当該利用者のいる物件のエレベータ制御装置に、当該呼びに車椅子対応かごを応答させるとともに、乗場に「ペット」表示させる。
【0079】
このように、変形例によれば、利用者は、利用者の属性情報として、「車椅子利用者」だけでなく、「乗り合わせ拒否」や「ペット連れ」等の他の属性も携帯端末40に設定しておくことで、これらの属性に応じた呼びを簡単に登録でき、利用者に適した乗りかごに乗車することができる。
【0080】
(第2実施形態)
第1実施形態では、利用者の属性情報を利用者の携帯端末40によって設定される形態について説明した。第2実施形態では、利用者が属性情報の設定を忘れた場合を考慮して、利用者の属性情報を乗場に設置されたカメラによっても判断する点において、第1実施形態と異なる。なお、上述した第1実施形態と同様の部分については同一符号を付して詳しい説明を省略する。以下の説明においては、第1実施形態と異なる部分について主に説明する。
【0081】
第2実施形態に係るエレベータシステムの全体の構成、サーバ装置30の構成、及び携帯端末40の構成については、上述した第1実施形態と同様である。
図11は、第2実施形態に係るエレベータ制御装置20aの機能構成を示す図である。物件10aにおいて、エレベータ制御装置20aは、乗場12aに設置されたカメラ24と接続される点、制御部22に属性判断部22cを有する点、及びかご運転部22aの処理が、第1実施形態と異なる。なお、エレベータ制御装置20bも同様の構成である。
【0082】
カメラ24は、エレベータ制御装置20aが設置されている物件10aの各階の乗場12aに設置され、乗場12aにいる利用者を撮影する。カメラ24の設置位置は、乗場12aにいる利用者を撮影できれば、何処に設置されてもよい。例えば、
図12に示すように、カメラ24は、乗場ドア13a~13c側から、乗場12aに向けて設置される。カメラ24によって撮影された利用者の画像は、リアルタイムにエレベータ制御装置20aに送信され、記憶部21に記憶される。
【0083】
なお、カメラ24は、常にONしておく必要はなく、サーバ装置30から、通常の乗場呼び(一般呼び)として登録された呼び情報を受信した場合だけ、カメラ24をONする構成としてもよい。
【0084】
制御部22の属性判断部22cは、サーバ装置30から、通常の乗場呼び(一般呼び)として登録された呼び情報を受信した場合に、カメラ24の画像を解析処理して、利用者の属性を判断する。この場合、画像解析によって利用者の属性を判断するので、「同乗拒否」のような利用者の気持ちに関わる属性は対象外であり、「車椅子利用者」や「ペット連れ」など、利用者の容姿から判断できる属性が対象となる。
【0085】
具体的には、属性判断部22cは、呼び情報を受信したときのカメラ24の画像を取得し、当該画像を解析処理する。上記解析処理には、画像上の利用者の特徴量を抽出し、その特徴量と予め学習された車椅子利用者等(車椅子利用者、松葉杖の利用者、高齢者、妊娠中の利用者等)及びペット連れの利用者の特徴量との類似性から判断する方法や、車椅子利用者等及びペット連れの利用者のパターン画像を数種類用意しておき、これらのパターン画像と撮影画像から得られた利用者の画像とを照らし合わせるパターンマッチング法等が用いられる。
【0086】
属性判断部22cは、解析処理の結果、画像上で車椅子利用者、松葉杖の利用者、高齢者、妊娠中の利用者を検出した場合、利用者の属性を「車椅子利用者」と判断する。また、属性判断部22cは、画像上でペットを連れた利用者を検出した場合、利用者の属性を「ペット連れ」と判断する。
【0087】
かご運転部22aは、属性判断部22cの判断結果を受けて、呼び情報を特定呼びに置き換えて、利用者の属性を考慮した運転を実行する。
具体的には、利用者の属性が「車椅子利用者」である場合、呼び情報を車椅子呼びに置き換えて、車椅子利用者を考慮した運転を行う。すなわち、かご運転部22aは、当該車椅子呼びに車椅子対応かごを応答させる。
【0088】
また、かご運転部22aは、利用者の属性が「ペット連れ」である場合は、呼び情報をペット呼びに置き換えて、ペット連れの利用者を考慮した運転を行う。すなわち、かご運転部22aは、各階の乗場12aに「ペット」表示を行う。画像上で車椅子利用者やペット連れの利用者が検出されなかった場合、呼び情報を置き換えずに、車椅子対応かご以外の乗りかごを、利用者の待つ階床に向かわせる。
【0089】
このように第2実施形態によれば、上記第1実施形態の構成に加え、カメラ24を用いて利用者の属性を判断する機能をエレベータ制御装置20aに持たせたことで、利用者が携帯端末40に属性情報を設定し忘れた場合であっても、エレベータ制御装置20a側で利用者の属性を判断して、その利用者に適した運転制御を行うことができる。なお、ここでは物件10aを例にして説明したが、他の物件10bでも同様である。
【0090】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。
上述した第1及び第2実施形態では、携帯端末40に利用者の属性を設定するための属性設定機能を持たせ、携帯端末40を用いて呼び登録する際に、利用者の属性情報をサーバ装置30に送ることで、利用者に適した乗りかごに乗車できるようにした。これに対し、第3実施形態では、エレベータ側に利用者の属性を判断する機能を持たせるとともに、この機能で得られた利用者の属性情報をサーバ装置30に保持させておく構成としている。なお、上述した第1及び第2実施形態と同様の部分については同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0091】
図13は、第3実施形態に係るエレベータ制御装置20aの構成を示すブロック図である。エレベータ制御装置20aは、記憶部21、制御部22、通信部23を有する。また、エレベータ制御装置20aは、各階の乗場12aに設置されたカメラ24と接続される。カメラ24による利用者の撮影画像は、リアルタイムに記憶部21に記憶される。
【0092】
なお、カメラ24は、常にONしておく必要はなく、サーバ装置30から属性要求があったときにだけ、カメラ24をONする構成としてもよい。後述するように、属性要求は、利用者の属性が判明していない場合にサーバ装置30から送られてくる。
【0093】
属性判断部22cは、サーバ装置30から利用者の属性を要求するための属性要求があった場合に、カメラ24によって撮影された利用者の画像を解析処理して、利用者の属性を判断する。画像の解析処理については、上述した第2実施形態と同様である。
【0094】
属性提供部22dは、属性判断部22cによる判断結果に応じて、利用者の属性情報をサーバ装置30に提供する。なお、乗場にカメラが設置されていない物件に設置されたエレベータ制御装置の構成は、
図2と同様の構成である。以下の説明では、物件10bの乗場12bにはカメラが設置されておらず、エレベータ制御装置20bは、
図2と同様の構成であるものとする。
【0095】
図14は、第3実施形態に係るサーバ装置30の構成を示すブロック図である。
サーバ装置30の記憶部31は、物件管理テーブル31a、及び属性管理テーブル31bを有する。属性管理テーブル31bには、利用者毎の属性情報が、利用者毎に予め定められた識別情報と関連付けて記憶されている。
【0096】
制御部32は、運転制御部32a、取得部32b、属性情報読み出し部32cを有する。
取得部32bは、携帯端末40から呼び情報を受信したときに、利用者のいる物件のエレベータ制御装置に属性要求を行い、当該利用者の属性情報を取得する。詳しくは、取得部32bは、携帯端末40から呼び情報と共に送られて来る利用者の識別情報に基づいて属性管理テーブル31bを検索し、当該利用者の属性情報が記憶されていない場合(つまり、当該利用者の属性が判明していない場合)にエレベータ制御装置に属性要求を行う。取得部32bは、属性要求に応答して送られて来る属性情報を当該利用者の識別情報と共に、記憶部31の属性管理テーブル31bに記憶する。
【0097】
属性情報読み出し部32cは、呼び情報に付加された識別情報に基づいて、記憶部31から利用者の属性情報を読み出す。
運転制御部32aは、属性情報読み出し部32cによって読み出された属性情報に基づいて、呼び情報を特定呼び(車椅子呼び等)に置き換えて、利用者のいる物件に設置されたエレベータ制御装置に送信することで、利用者の属性を考慮した運転を実行させる。
【0098】
第3実施形態において、携帯端末40は、
図4に示した第1実施形態の構成と同様に、入力部41、表示部42、制御部43、記憶部44、通信部45等を備える。ただし、第3実施形態では、利用者が携帯端末40を用いて属性を設定する必要がないため、制御部43に属性設定部43aを必ずしも必要としない。
【0099】
また、呼び登録部43bは、呼び情報を送信するとき、この呼び情報に利用者の識別情報を付加してサーバ装置30に送信する。利用者の識別情報は、予め携帯端末40に設定されている。
【0100】
次に、第3実施形態の動作について説明する。ここでは、利用者Uが携帯端末40を持って、物件10aの任意の階の乗場12aに来た場合を想定する(
図1参照)。
図15A及び
図15Bは、第3実施形態に係るエレベータシステムの処理の流れを示すフローチャートである。
図15Aは携帯端末40及びサーバ装置30の処理を示し、
図15Bはエレベータ制御装置20aの処理を示している。
【0101】
まず、
図15Aを参照して、携帯端末40及びサーバ装置30の処理の流れについて説明する。
利用者Uの所定の操作により、携帯端末40の表示部42に、
図6に示した呼び登録画面A12が表示される(ステップS31)。この呼び登録画面A12上で物件、乗車階、行先方向又は行先階の各情報が入力され、送信ボタンB15が操作されると(ステップS32のYES)、携帯端末40(呼び登録部43b)は、これらの情報を含んだ呼び情報を生成し、当該呼び情報に利用者Uの識別情報を付加して、サーバ装置30に送信する(ステップS33)。
【0102】
サーバ装置30は、携帯端末40から呼び情報及び識別情報を受信したときに、当該識別情報によって示される利用者Uの属性情報が属性管理テーブル31bに記憶されているか否かを判定する(ステップS34)。既に属性管理テーブル31bに利用者Uの属性情報が記憶されている場合、つまり、利用者Uの属性が判明している場合は(ステップS34のYES)、ステップS38に進む。
【0103】
一方、属性管理テーブル31bに利用者Uの属性情報が記憶されていない場合、つまり、利用者Uの属性が判明していない場合(ステップS34のNO)、サーバ装置30は、利用者Uのいる物件10aのエレベータ制御装置20aに、属性要求を送信する(ステップS35)。後述するように、エレベータ制御装置20aは、この属性要求を受けて、利用者Uの属性を判断する(
図15B参照)。
【0104】
サーバ装置30は、エレベータ制御装置20aから属性要求に応答して送られてきた属性情報を受信すると(ステップS36のYES)、当該属性情報を、利用者Uの識別情報と関連付けて、属性管理テーブル31bに保持(記憶)しておく(ステップS37)。これは、利用者Uが物件10aあるいは他の物件で携帯端末40から乗場呼びを登録した場合に、サーバ装置30側で属性管理テーブル31bを参照して利用者Uの属性を判断するためである。
【0105】
ここで、サーバ装置30は、エレベータ制御装置20aから受信した属性情報に基づいて、利用者Uが車椅子利用者であるか否かを判定する(ステップS38)。利用者Uが車椅子利用者であった場合(ステップS38のYES)、運転制御部32aは、携帯端末40から受信した呼び情報を車椅子呼びに置き換えて、エレベータ制御装置20aに送信する(ステップS39)。
【0106】
一方、利用者Uが車椅子利用者でなかった場合、つまり、一般利用者であった場合(ステップS38のNO)、サーバ装置30は、呼び情報を置き換えせずに、エレベータ制御装置20aに送信する(ステップS40)。
【0107】
次に、
図15Bを参照して、エレベータ制御装置20aの処理について説明する。
エレベータ制御装置20a(属性判断部22c)は、サーバ装置30から属性要求を受信すると(ステップS41のYES)、記憶部21から利用者Uの撮影画像を取得し(ステップS42)、当該画像を解析処理することによって、利用者Uの属性を判断(検出)する(ステップS43)。属性判断部22cによる画像の解析処理及び利用者Uの属性判断の方法については、第2実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
エレベータ制御装置20aは、ステップS43によって判断(検出)された利用者Uの属性情報を、サーバ装置30に提供する(ステップS44)。
【0108】
以降は、
図8Bに示した第1実施形態の処理と同様である。すなわち、エレベータ制御装置20aは、サーバ装置30から呼び情報(通常の乗場呼び)又は車椅子呼びを受信すると、当該呼びに応じた運転(すなわち、利用者の属性に応じた運転)で、利用者Uのいる階床に乗りかごを応答させる。
【0109】
なお、ここでは利用者Uが「車椅子利用者」の場合を想定して説明しているが、例えば利用者Uが「ペット連れ」の場合、サーバ装置30は、携帯端末40から受信した呼び情報をペット呼びに置き換えて、エレベータ制御装置20aに送信する。ペット呼びを受信したエレベータ制御装置20aは、第1実施形態の第2変形例と同様に、ペット連れの利用者を考慮した運転を行う。
【0110】
また、利用者Uと同じ乗場12aに他の利用者がいた場合、エレベータ制御装置20aは、その利用者の属性情報を利用者Uの属性情報として誤検出してしまう可能性がある。このような場合を考慮して、サーバ装置30は、同じ属性情報が所定の回数検出された場合に、当該属性情報を利用者Uの属性として確定し、属性管理テーブル31bに記憶するようにしてもよい。
【0111】
さらに、例えば、車椅子を使用していた利用者Uが怪我の回復などにより、車椅子を使用しなくなることもある。このような場合を考慮して、サーバ装置30は、利用者Uの呼び情報を受信する度に、属性要求によって得られた属性情報A(車椅子利用者)をテーブルに記憶しておいてもよい。ここで、怪我の回復などにより、属性情報Aとは異なる属性情報B(一般利用者)がテーブルに記憶された場合に、サーバ装置30は、その属性情報Bが所定回数に達した時点で、以後、属性情報Bを用いて呼び情報の置き換えを行う構成としてもよい。
【0112】
このように第3実施形態によれば、エレベータ側でカメラ24を用いて利用者の属性を判断し、サーバ装置30に送るようにしたことで、利用者は携帯端末40を操作して自分の属性を事前に設定しておかなくとも、乗場で呼び情報をサーバ装置30に送るだけで、自分の属性に応じた乗りかごに乗車できる。
【0113】
また、利用者の属性情報を当該利用者の識別情報と関連付けてサーバ装置30側の属性管理テーブル31bに記憶しておくことで、同じ利用者が再度呼び登録した場合に、サーバ装置30は、エレベータ制御装置20aに当該利用者の属性を求めなくとも、属性管理テーブル31bを参照して当該利用者の属性を判断できる。これにより、利用者の呼び情報から特定呼び(車椅子呼び等)への置き換えを速やかに行って、利用者に適した乗りかごを応答させることができる。
【0114】
さらに、一度、利用者の属性情報を属性管理テーブル31bに記憶させておけば、カメラ24で利用者の属性を判断する機能を備えていないエレベータの乗場に利用者が来た場合であっても、属性管理テーブル31bを参照して当該利用者の属性を判断できるので、上記同様に、利用者の呼び情報の置き換えを速やかに行って、利用者に適した乗りかごを応答させることができる。
【0115】
以上述べた少なくとも1つの実施形態によれば、携帯端末を用いて呼び登録を行うシステムにおいて、通常の乗場呼び以外の呼びを簡単に登録できるエレベータシステムを提供することができる。
【0116】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0117】
1…通信ネットワーク、10a,10b…物件、12a,12b…乗場、20a,12b…エレベータ制御装置、21…記憶部、21a…呼び管理テーブル、22…制御部、22a…かご運転部、22b…戸開閉制御部、22c…属性判断部、22d…属性提供部、23…通信部、24…カメラ、30…サーバ装置、31…記憶部、31a…物件管理テーブル、31b…属性管理テーブル、32…制御部、32a…運転制御部、32b…取得部、32c…属性情報読み出し部、33…通信部、40…携帯端末、40a…アプリケーションソフト、41…入力部、42…表示部、43…制御部、43a…属性設定部、43b…呼び登録部、44…記憶部、45…通信部、A11,A13,A14…属性登録画面、A12…呼び登録画面。
【要約】
【課題】携帯端末を用いて呼び登録を行うシステムにおいて、通常の乗場呼び以外の呼びを簡単に登録する。
【解決手段】一実施形態に係るエレベータシステムは、携帯端末を用いて呼び登録を行い、複数のエレベータ制御装置と、サーバ装置とを備える。携帯端末は、利用者の属性を示す属性情報を設定する属性設定手段と、属性情報を記憶する記憶手段と、複数の物件の中の任意の物件の乗場で、利用者が呼び情報を登録するときに、当該呼び情報に属性情報を付加してサーバ装置に送信する呼び登録手段とを具備する。サーバ装置は、携帯端末から呼び情報および属性情報を受信したときに、属性情報に基づいて、呼び情報を特定呼びに置き換えて、任意の物件に設置されたエレベータ制御装置に送信することで、利用者の属性を考慮した運転を実行させる運転制御手段を具備する。
【選択図】
図1