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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】ナット
(51)【国際特許分類】
   F16B 37/10 20060101AFI20241125BHJP
   F16B 39/28 20060101ALI20241125BHJP
   F16B 37/04 20060101ALI20241125BHJP
【FI】
F16B37/10
F16B39/28 Z
F16B37/04 W
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2024032674
(22)【出願日】2024-03-05
【審査請求日】2024-03-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592176778
【氏名又は名称】種市 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100080838
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 光康
(74)【代理人】
【識別番号】100194261
【弁理士】
【氏名又は名称】栢原 崇行
(72)【発明者】
【氏名】種市 薫
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-47244(JP,A)
【文献】特開2006-226422(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 37/10
F16B 39/28
F16B 37/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナットセグメント収納部を複数個有するナット本体と、内側にメネジ部がそれぞれ形成され、前記複数個のナットセグメント収納部にそれぞれ収納された複数個のナットセグメントと、前記複数個のナットセグメントが前記ナットセグメント収納部から脱落しないように保持する保持手段とで構成され、
前記ナットセグメント収納部は断面視において上方から略垂直の内壁部、直径が縮小する方向に傾斜する傾斜部、前記ナットセグメントの底部を支持する略水平の支持部とからなり、
前記ナットセグメントは、内側に前記メネジ部が形成され、外側は断面視において上方から略垂直の外周部と、前記外周部の下端部に連続し、前記傾斜部と略同角度に形成され、ボルトが挿入された際に前記傾斜部をスライドするスライド部と、前記スライド部の下端部に連続し、前記支持部に支持される前記底部とからなり、
前記ボルトが挿入された場合には、前記ナットセグメントが前記傾斜部に沿って前記複数個のナットセグメントの内径が拡大する方向へ移動可能であり、
前記ナットセグメントの底部が前記支持部に支持されている状態において、前記メネジ部は前記ボルトのオネジ部と密着するように形成されており、
前記ナットセグメントが半径方向に移動した場合であっても、前記メネジ部の内径が前記ボルトのオネジ部の外径よりも小さくなるような移動制限手段が設けられており、
前記傾斜部及び前記スライド部の角度が前記メネジ部のネジ山の上部側の面と略直交する角度に形成されているナット。
【請求項2】
前記移動制限手段は、前記ナットセグメントが前記メネジ部のネジ山の高さの10%乃至20%に相当する長さだけ前記複数個のナットセグメントの内径が拡大する方向へ移動可能に制限するものであることを特徴とする請求項1に記載のナット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複数個のナットセグメントを備えるナットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ボルトと螺合するナットにおいては、ボルトのネジ山とナットのネジ山との間に微小なクリアランスを設けなければボルトをねじ込むことができないものであり、このクリアランスがボルト・ナットの螺合状態が緩む原因ともなっていた。このような微小なクリアランスをなくして緩みを防止するために、ボルト・ナットを締め付けた後にこのナットに密着するように、更にナットを締め付け、いわゆるダブルナットとする方法が一般的に知られている。
【0003】
具体的には、「ボルトの雄螺子部に螺合する雌螺子孔を中心軸に有し、2つ重ねて各々の雌螺子孔を上記ボルトの雄螺子部にそれぞれ螺合させるとともに一方に対して他方を接近するように増し締めすることにより、上記ボルトからの脱落を防ぐよう構成された同一形状のナットを2つ重ねたダブルナットであって、 上記雌螺子孔の一方側の開口周縁には、上記中心軸に沿う方向に突出するとともに当該中心軸を中心に周方向に延びる環状突条部が設けられ、 上記雌螺子孔の他方側の開口周縁には、上記中心軸に沿う方向に段差状に窪むとともに当該中心軸を中心に周方向に延びる環状段差部が設けられ、 上記環状突条部の中心線は、上記雌螺子孔の中心軸から距離Dだけ偏心しており、 上記環状段差部は、上記環状突条部が上記雌螺子孔の中心軸に沿う方向に嵌合可能なように上記環状突条部の形状に対応する形状をなしており、上記環状段差部の中心線は、上記雌螺子孔の中心軸から上記距離Dだけ偏心していることを特徴とするダブルナット。」(特許文献1)が知られている。
【0004】
しかしながら、このナットは複数のナットを使用する必要があり、その複数のナットのいずれも締め付けなければならないため、手間がかかるという欠点があった。また、ナットを複数個用いるため、ボルトの軸心方向の長さが長くなりスペースも多く必要となるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6805466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上のような従来の欠点に鑑み、ボルトに1つのナットを締め付けるだけで緩みを防止することができるナットを提供することを目的としている。
【0007】
本発明の前記ならびにそのほかの目的と新規な特徴は次の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、より完全に明らかになるであろう。
【0008】
ただし、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の本発明のナットは、ナットセグメント収納部を複数個有するナット本体と、内側にメネジ部がそれぞれ形成され、前記複数個のナットセグメント収納部にそれぞれ収納された複数個のナットセグメントと、前記複数個のナットセグメントが前記ナットセグメント収納部から脱落しないように保持する保持手段とで構成され、前記ナットセグメント収納部は断面視において上方から略垂直の内壁部、直径が縮小する方向に傾斜する傾斜部、前記ナットセグメントの底部を支持する略水平の支持部とからなり、前記ナットセグメントは、内側に前記メネジ部が形成され、外側は断面視において上方から略垂直の外周部と、前記外周部の下端部に連続し、前記傾斜部と略同角度に形成され、ボルトが挿入された際に前記傾斜部をスライドするスライド部と、前記スライド部の下端部に連続し、前記支持部に支持される前記底部とからなり、前記ボルトが挿入された場合には、前記ナットセグメントが前記傾斜部に沿って前記複数個のナットセグメントの内径が拡大する方向へ移動可能であり、前記ナットセグメントの底部が前記支持部に支持されている状態において、前記メネジ部は前記ボルトのオネジ部と密着するように形成されており、前記ナットセグメントが半径方向に移動した場合であっても、前記メネジ部の内径が前記ボルトのオネジ部の外径よりも小さくなるような移動制限手段が設けられており、前記傾斜部及び前記スライド部の角度が前記メネジ部のネジ山の上部側の面と略直交する角度に形成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載のナットの前記間隙は、前記メネジ部のネジ山の高さの10%乃至20%に相当する長さであることを特徴とする請求項1に記載のナット。
【0011】
請求項3に記載のナットの前記ナットセグメント収納部の前記支持部は、前記ナットセグメントの前記ネジ山が前記ボルトのオネジと連続的に螺合する段差が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
以上の説明から明らかなように、本発明にあっては次に列挙する効果が得られる。
(1)請求項1に記載の発明においては、複数個のナットセグメントを備えており、ボルトが挿入された場合には、前記ナットセグメントが前記傾斜部に沿って内径が拡大する方向へ移動可能なので、ナットセグメントが支持部に着座した状態でメネジ部とボルトのオネジ部のネジ山がぴったりと密着する(クリアランスが生じない)寸法にメネジ部を形成しても、ナットセグメントの内径が拡大するためボルトをメネジ部にねじ込むことができる。
(2)傾斜部及び前記スライド部の角度が前記メネジ部やボルトのネジ山の上部側の面と略直交する角度に形成されているので、複数個のナットセグメントの内径が拡大する方向に動いた後、半径が縮小する方向に復帰する際に、メネジ部とオネジ部のネジ山の上部側の面が面接触した状態を保ってスライド移動させることができる。
したがって、ナットセグメントが着座するとオネジ部とメネジ部がぴったりと密着してクリアランスがほとんどない状態となることで一体化し、緩み止めとして作用する。
(3)請求項2に記載の発明においても前記(1)~(2)と同様な効果が得られるとともに、前記メネジ部のネジ山の高さの10%乃至20%に相当する長さを移動できるよう移動制限手段が設けられているので、ナットセグメントが不必要に動くことなく、さらに効率よく締め付け等を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1乃至図8は本発明の第1の実施形態を示す説明図である。
図1】第1の実施形態のナットの平面図。
図2図1の2-2線断面図。
図3】第1の実施形態のナットの分解斜視図。
図4】ナット本体の縦断面図。
図5】ナットセグメント収納部にナットセグメントを収納した状態の説明図。
図6】ボルトを挿入する際のナットセグメントの動作説明図。
図7】ボルトを締め付ける際のナットセグメントの動作説明図。
図8】ボルトを締め付けた後の状態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に示す本発明を実施するための形態により、本発明を詳細に説明する。
【0015】
図1乃至図8に示す本発明を実施するための第1の形態において、1は内径が拡大する方向にスライド移動する複数個のナットセグメント2を備えるナットである。
【0016】
ナット1は、図1乃至図3に示すように、ナットセグメント収納部3を複数個有するナット本体4と、内側にメネジ部5がそれぞれ形成され、前記複数個のナットセグメント収納部3にそれぞれ収納された複数個のナットセグメント2と、前記複数個のナットセグメント2が前記ナットセグメント収納部3から脱落しないように保持する保持手段6とで構成されている。
【0017】
ナット本体4は、本実施形態では、金属製でボルトが貫通できるように形成されており、図4に示すように、平面視六角形状で、その内部には周方向に所定間隔を有して合計2つの隔壁7により区切られた2つのナットセグメント収納部3が形成されている。なお、ナット本体4を樹脂等の材質で形成してもよく、ナットセグメント収納部3も3つ以上形成してもよいし、ナット本体4の形状を平面視略多角形状、円形状等にしてもよい。
【0018】
このナットセグメント収納部3は、断面視において上方から略垂直の内壁部8、直径が縮小する方向に傾斜する傾斜部9、前記ナットセグメント2の底部13を支持する略水平の支持部10とで構成されており、2つのナットセグメント収納部3にそれぞれナットセグメント2が収納される。
【0019】
このナットセグメント2は、平面視において略半円形状に形成されており、内側(内周部)にボルト14のオネジ部14aのネジ山と螺合するメネジ部5が形成されており、このメネジ部5は、支持部10に着座した状態で、挿入されるボルト14のオネジ部14aとぴったり密着する(クリアランスがほとんどない)ようにネジ山が形成されている。このナットセグメント2の外側は断面視において上方から略垂直の外周部11と、前記外周部11の下端部に連続し、前記傾斜部9と略同角度に形成され、ボルト14が挿入された際に前記傾斜部9をスライドするスライド部12と、前記スライド部12の下端部に連続し、前記支持部10に支持される略水平の前記底部13とで構成されている。このようにナットセグメント2及びナットセグメント収納部3を構成することにより、ボルト14が挿入された場合には、前記ナットセグメント2が前記傾斜部9に沿って前記複数個のナットセグメント2のメネジ部5の内径が拡大する方向へ移動することが可能となる。
【0020】
このナットセグメント2は、底部13が前記支持部10に支持されている状態において、前記メネジ部5は前記ボルト14のオネジ部14aと密着するように形成されており、前記ナットセグメント2が半径方向に移動しメネジ部5の内径が最大に広がった場合でもボルト14のオネジ部14aの外径よりは小径となるような移動制限手段15が設けられている。この移動制限手段15は、本実施形態においては、ナットセグメント2がスライド部12をスライドして斜め上方に移動した際に、ナットセグメント2のメネジ部5の内径がオネジ部の外径を超える前にナットセグメント2の上面が保持手段6と接触し、それ以上上方へ移動できないように形成した間隙15を移動制限手段15としている。このように構成することで、ボルト14を挿入した際にボルト14のオネジ部14aのネジ山がメネジ部5を超えて移動することなく、かつ、締付けを可能にするメネジ部5のネジ山とボルト14のオネジ部14aのネジ山の間のクリアランスを確保することができる。
【0021】
なお、前記内壁部8と前記外周部11の間に、ナットセグメント2が半径方向に移動しメネジ部5の内径が最大に広がった場合でもボルト14のオネジ部14aの外径よりは小径となるような間隙を形成し、移動制限手段15としてもよい。このような場合には、内壁部8と外周部11が当接してナットセグメント2の半径方向への移動を制限する。さらに、ナットセグメント2の上面が保持手段6に接触し、かつ、内壁部8と外周部11が当接してナットセグメント2の半径方向への移動を制限する移動制限手段15としてもよい。
【0022】
本実施形態においては、前記メネジ部5のネジ山やボルト14のネジ山の高さの10%乃至20%に相当する長さのみナットセグメント2が半径方向へ移動できるような移動制限手段15を用いている。例えばオネジ部14aのネジ山の高さが1.25mmである場合、移動制限手段15により半径方向への移動可能距離は0.125mm~0.25mm程度に制限される。このような移動制限手段15を設けることにより、より容易に螺合できるとともに、締付ける際には効率よくナットセグメントのメネジ部5とオネジ部14aを一体化させることができる。
【0023】
ナットセグメント収納部3に形成された傾斜部9及びナットセグメント2のスライド部11の角度は、図5に示すように、前記メネジ部5やボルト14のオネジ部14aのネジ山の上部側の面と略直交する角度に形成されている。ここでネジ山の上部側の面とは、ネジ山を頂点から水平方向に2分割した際に、上部側の面と水平線がなす角度である。例えばメートルねじのネジ山を形成したボルト14とこのボルト14に螺合するメネジ部5を有するナットセグメント2を用いる場合、ネジ山の角度は60度であり、このネジ山の上部側の面と水平線がなす角度は30度となる。この上部側の面と略直交する角度に形成されているので、傾斜部9やスライド部11の角度は120度(鋭角側の角度を読む場合には60度)となる。傾斜部9やスライド部11の角度をこのような角度にすることによって、ナットセグメント2とボルト14とが一体化することにより緩み止めとなる。具体的には、ボルト14をナット本体4の下側から挿入すると、ボルト14に押圧されてナットセグメント2が傾斜部9に沿って外方へ移動し、ナットセグメント2のメネジ部5の内径が若干広くなる。この状態でボルト14を締め付けることにより、ボルト14とナットセグメント2のメネジ部5が螺合可能なクリアランスを保った状態でボルト14又はナット本体4を回転させて締め付けることができる。ある程度ボルト14を締め付けていくと被締結物がぴったりと密着する状態となり、その後ナットセグメント2のメネジ部5のネジ山の下側の面がボルト14オネジ部14aのネジ山の下側の面に押圧されて傾斜部9に沿って下方へスライド移動する。ナットセグメント2の底部12が支持部10に当接するまで下降すると、ナットセグメント2のメネジ部5のネジ山の下側の面だけでなく上側の面とオネジ部14aのネジ山がぴったりと密着し、クリアランスがほとんどない状態となることで、ナットセグメント2とボルト14とが一体化することにより緩み止めとなる。
【0024】
なお、ナットセグメント収納部3を分割する隔壁7にガイド部を形成するとともに、ナットセグメント2の両側面に前記ガイド部に挿入される被ガイド部を設けてもよい。このようなガイド部及び被ガイド部を形成する場合、前記傾斜部9やスライド部12と略同角度に形成するとよい。なお、溝状のガイド部を隔壁に形成するものだけでなく、隔壁7に線状又は帯状のガイド部を形成し、ナットセグメントに凹所状の被ガイド部を形成してもよい。
【0025】
ナット本体4の下端部側には、ボルト14が挿入されるボルト通し孔16が形成されており、ナット本体4の上端部側には、ナットセグメント2がナットセグメント収納部3から脱落しないように保持手段6が設けられている。
【0026】
なお、本実施形態において支持部10はフラットな状態なっているが、ナットセグメント収納部3の前記支持部10にナットセグメント2のメネジ部5がボルト14のオネジ部14aと連続的に螺合する段差を形成してもよい。このような場合には、段差に対応するように蓋体に段差を設けるか、内壁部8と外周部11との間の間隙を所定の長さとして移動制限手段15とするとよい。このような段差を形成することにより、同じナットセグメント2を用いても隣り合うナットセグメント2のメネジ部5がボルト14のオネジ部と連続的に螺合するように接続するため、どのナットセグメント2をどのナットセグメント収納部3に収納してもナットとして機能させることができる。すなわち、同一のナットセグメント2を用いることができるので、組立ミスによりメネジ部5が連続せず、ナットとして機能しないことを防止でき、1種類のナットセグメント2を製造すればよく、コストを低減できる。
【0027】
この保持手段6は、本実施形態においてはナット本体4の上端部付近にカシメ、溶接、接着等によって固定された板状の蓋体17で構成されている。この蓋体17の中心部にはボルト通し孔16が形成されている。この蓋体17の底部とナットセグメント2の上面との間に所定の間隙を設けることにより移動制限手段15としている。
【0028】
なお、本実施形態においてはナット本体4の上端部にカシメにより蓋体17を設けたが、例えば、外径が6角形状でナット本体4の外周部及び上部を覆った状態でナット本体に固定することができるカバー部材を用いて保持手段6としてもよい。このようなカバー部材は、溶接、係止、接着等によりナット本体に固定される。なお、保持手段6としては、その他公知の保持手段6を用いることができる。
【0029】
隔壁7は、例えば図3で示すように平面視において、略長方形状に形成されており、ナット本体4の内側に対向するように設けられている。なお、隔壁7は、例えば略扇形形状、台形状又は三角形状等、ナットセグメント2の両側部と隔壁7が常時略当接できる形状であれば、どのような形状にしてもよい。
【0030】
本発明のナット1は、例えば、木造住宅、鉄構造物、コンクリート構造物等に用いられる。なお、この他にも、宇宙・航空・航海機器等、様々な機器に用いることができる。
【0031】
このナット1を使用する場合には、ナット本体4の下側からボルト14をボルト通し孔16に挿入し、ナットセグメント2の底部と当接させる。そうすると、図6に示すように、ボルト14の先端部がナットセグメント収納部3に収納されたナットセグメント2を下方から押圧し、ナットセグメント2がナット本体4の半径方向へ傾斜部9に沿って移動し、蓋体17の底部とナットセグメント2の上面が接触するまで半径方向に移動する。
【0032】
このようにナットセグメント2が移動することにより、図7に示すように、ボルト14のオネジ部14aとナットセグメントのメネジ部5の間に螺合できるだけのクリアランスが確保され、ボルト14をメネジ部5にねじ込むことができるようになる。
【0033】
ボルト14を締め付けて締結対象物どうしが接触した状態となり、ボルト14を更に締め付けると、ナットセグメント2のメネジ部5のネジ山の下側の面がボルト14オネジ部14aのネジ山の下側の面に押圧されて傾斜部9に沿って下方へスライド移動する。この状態でさらにナットを締め付けるとナットセグメント2の底部12が支持部10に当接する手前、具体的にはナットセグメント2の底部12と支持部10の間に0.1mm程度の間隙を有した状態で締め付けが終了する。
【0034】
次にボルトを回転させないと、傾斜部9に沿ってナットセグメント2が下方へ滑り、圧着固定される。
【0035】
すなわち、ナットセグメント2の底部12が支持部10に当接するまで下降すると、図8に示すように、ナットセグメント2のメネジ部5のネジ山の下側の面だけでなく上側の面とオネジ部14aのネジ山がぴったりと密着し、クリアランスがほとんどない状態となることで、ボルト14が回転できなくなり、ナットセグメント2とボルト14とが一体化して緩み止めとなる。
なお、座金を有さないナットについて説明したが、ビス孔又は爪を有する座金を設けてもよいし、その他の公知の座金を用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明はナットを製造する産業で利用される。
【符号の説明】
【0037】
1:ナット、 2:ナットセグメント、
3:ナットセグメント収納部、 4:ナット本体、
5:メネジ部、 6:保持手段、
7:隔壁、 8:内壁部、
9:傾斜部、 10:支持部、
11:外周部、 12:スライド部、
13:底部、 14:ボルト、
15:移動制限手段、 16:ボルト通し孔、
17:蓋体。
【要約】      (修正有)
【課題】ボルトに1つのナットを締め付けるだけで緩みを防止することができるナットを提供する。
【解決手段】ナット本体と内側にメネジ部がそれぞれ形成された複数個のナットセグメントとナットセグメントがナットセグメント収納部から脱落しないように保持する保持手段とで構成され、ナットセグメント収納部は内壁部、傾斜部、支持部とからなり、ナットセグメントは内側にメネジ部が形成され、外側は外周部とスライド部と底部とからなり、ボルトが挿入された場合にはナットセグメントが内径が拡大する方向へ移動可能であり、底部が支持部に支持されている状態において、メネジ部はボルトのオネジ部と密着するように形成され、ナットセグメントが半径方向に移動した場合でもメネジ部の内径がボルトのオネジ部の外径よりも小さくなるような移動制限手段が設けられ、傾斜部及びスライド部の角度がメネジ部のネジ山の上部側の面と略直交する角度に形成されている。
【選択図】図6
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8