特許 7592917 工作機械のパレット交換装置

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B1)

(11)【特許番号】

(24)【登録日】2024-11-22

(45)【発行日】2024-12-02

(54)【発明の名称】工作機械のパレット交換装置

(51)【国際特許分類】

   B23Q 7/00 20060101AFI20241125BHJP

   B23Q 11/08 20060101ALI20241125BHJP

【ＦＩ】

B23Q7/00 G

B23Q11/08 Z

【請求項の数】 3

(21)【出願番号】P 2024046310

(22)【出願日】2024-03-22

【審査請求日】2024-03-22

(73)【特許権者】

【識別番号】000154990

【氏名又は名称】株式会社牧野フライス製作所

(74)【代理人】

【識別番号】100099759

【弁理士】

【氏名又は名称】青木 篤

(74)【代理人】

【識別番号】100123582

【弁理士】

【氏名又は名称】三橋 真二

(74)【代理人】

【識別番号】100160705

【弁理士】

【氏名又は名称】伊藤 健太郎

(74)【代理人】

【識別番号】100227835

【弁理士】

【氏名又は名称】小川 剛孝

(72)【発明者】

【氏名】岩下 大輝

(72)【発明者】

【氏名】正和 裕太

(72)【発明者】

【氏名】渡邉 大輔

【審査官】亀田 貴志

(56)【参考文献】

【文献】特開２００１－１７０８３９（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開平４－８４４８（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２００５－１８６１８６（ＪＰ，Ａ）

【文献】韓国公開特許第１０－２０１２－００１５７４３（ＫＲ，Ａ）

【文献】米国特許第５５３１００４（ＵＳ，Ａ）

【文献】特開２０２１－９４６３６（ＪＰ，Ａ）

(58)【調査した分野】(Int.Cl.，ＤＢ名)

Ｂ２３Ｑ ７／００ － ７／１８

Ｂ２３Ｑ １１／０８

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

工作機械のパレット交換装置であって、
両側にパレットを配置可能な旋回アームであって、段取り室と加工室との間でパレットを交換するために、旋回機構によって旋回可能に構成された旋回アームと、
前記旋回アームに配置された係合部と、
前記旋回アームの上方側に、前記段取り室と前記加工室とを隔てるように配置された旋回扉であって、前記係合部と係合するための被係合部を有し、被係合部と前記係合部とが係合したときに前記旋回アームと共に旋回可能な旋回扉と、
前記旋回扉に取り付けられ、前記旋回アームの長手方向が、前記段取り室側から前記加工室側を見たときの前記旋回扉の幅方向に沿って配置されるときに、前記旋回アームの上方側を覆う、切りくずカバーと、
を具備することを特徴とした工作機械のパレット交換装置。

【請求項2】

前記旋回扉が旋回しないときに、前記旋回扉を保持する旋回扉保持部を備え、
前記旋回アームと前記旋回扉とは、前記旋回アームの長手方向が前記旋回扉の幅方向と直角なパレット交換位置にある場合、及び、前記旋回扉の幅方向に沿って配置される格納位置にある場合に係合する、請求項１に記載の工作機械のパレット交換装置。

【請求項3】

前記係合部及び前記被係合部は、前記旋回アームから突出する係合ピン及び前記旋回扉の底部において前記係合ピンと係合可能に形成されたガイド穴、又は、前記旋回扉の底部から突出する係合ピン及び前記旋回アームにおいて前記係合ピンと係合可能に形成されたガイド穴である、請求項１又は請求項２に記載の工作機械のパレット交換装置。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、工作機械のパレット交換装置に関する。

【背景技術】

【0002】

ワークをセッティングしたパレットを工作機械本体へ搬入し、工作機械本体から搬出するパレット交換装置について、用途に応じてパレットの搬入出方法の異なる多種多様の装置が開示されている。例えば、特許文献１には、３軸の直線軸と２軸の回転軸とを有する５軸の工作機械において、往復台の移動方向に移動可能、かつ、旋回軸と共に旋回するように支持された旋回アームを備えたパレット交換装置が開示されている。また、特許文献２には、パレットを把持するための爪を備えた交換手段（アーム）と、交換手段を垂直軸の周りに回転させるための回転ドライブ手段と、交換手段を上昇及び下降させるための昇降手段を備えるパレット交換装置が開示されている。しかしながら、これらのアームは、パレットを交換しない待機時を含めて常に工作機械やテーブルから見て露出している。このため、加工により生じた切りくずが堆積しやすい。また、これらのパレット交換装置は、構造が複雑で、工作機械内において広いスペースを必要とする。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0003】

【文献】実用新案登録第２６０４０５５号公報

【文献】特許第６４２７３０９号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0004】

本発明は、上記事情に鑑み、ＡＰＣアームに切りくずが堆積することを抑制又は防止するパレット交換装置の提供を目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0005】

本発明の一の態様によれば、両側にパレットを配置可能な旋回アームであって、段取り室と加工室との間でパレットを交換するために、旋回機構によって旋回可能に構成された旋回アームと、旋回アームに配置された係合部と、旋回アームの上方側に、段取り室と加工室とを隔てるように配置された旋回扉であって、係合部と係合するための被係合部を有し、被係合部と係合部とが係合したときに旋回アームと共に旋回可能な旋回扉と、旋回扉に取り付けられ、旋回アームの長手方向が、段取り室側から加工室側を見たときの旋回扉の幅方向に沿って配置されるときに、旋回アームの上方側を覆う、切りくずカバーと、を具備することを特徴とした工作機械のパレット交換装置が提供される。

【発明の効果】

【0006】

本発明の一の態様に係る工作機械のパレット交換装置によると、パレットを交換するために、旋回機構によって旋回可能に構成された旋回アームと、旋回アームの上方側に配置され、被係合部が旋回アームに配置された係合部と係合することによって旋回アームと共に旋回可能な旋回扉と、旋回扉に取り付けられ、旋回アームの長手方向が、段取り室側から加工室側を見たときの旋回扉の幅方向に沿って配置されるときに、旋回アームの上方側を覆う切りくずカバーを備える。このため、旋回アームが段取り室と加工室との間でパレットを交換するために、パレットを配置可能な両側を旋回扉の下方側から露出しない場合、すなわち、旋回扉の幅方向に沿って配置されている場合には、切りくずカバーに覆われた旋回アームに切りくずが堆積することを防止又は抑制することができる。

【図面の簡単な説明】

【0007】

【図1】図１は、本実施形態に係るパレット交換装置を備える工作機械の平面図を示す。

【図2】図２は、本実施形態に係るＡＰＣアームの斜視図を示す。

【図3】図３は、旋回扉に格納されたＡＰＣアームの斜視図を示す。

【図4】図４は、パレットを受け渡しするために９０度旋回したＡＰＣアームの斜視図を示す。

【図5】図５は、パレットを交換するために１８０度旋回するＡＰＣアームの斜視図を示す。

【図6】図６は、段取り室側から見たＡＰＣアームの３段階の高さ位置を示す。

【発明を実施するための形態】

【0008】

以下、添付図面を参照して、実施形態に係るパレット交換装置について説明する。同様な又は対応する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。理解を容易にするために、図の縮尺を変更して説明する場合がある。

【0009】

図１に、本実施形態に係るパレット交換装置４４を備える工作機械１０の概略的な平面図を示す。工作機械１０は、加工によって生じる切りくずの飛散等を防止するためのスプラッシュガード１６に覆われている。また、スプラッシュガード１６内部は、鉛直方向に平行な旋回軸ＲＡ２周り（図５参照）に回転可能（旋回可能）に配置された旋回扉４６によって、加工室１２と段取り室１４とに仕切られている。さらに、スプラッシュガード１６には、作業者（図示省略）が外部から加工室１２及び段取り室１４内部へアクセスできるように、オペレータ扉１２ａ及び段取り室扉１４ａがそれぞれ取り付けられている。また、工作機械１０は段取り室１４側を機械正面とする。

【0010】

なお、ここでは、スプラッシュガード１６は、加工室１２及び段取り室１４の両方を覆うように構成されているものとして説明するが、これに限らない。スプラッシュガードは、加工室だけを覆ってもよい。加工室だけを覆う構成であっても、加工によって生じる切りくずの飛散等を防止することができる。

【0011】

加工室１２内には、被加工物としてのワークＷ１、Ｗ２（図５参照）を加工するための主軸２６、Ｃ軸ロータリテーブル３６などの機器が配置されている。工作機械１０には、設置する工場等の床面に配置されるベッド１８の上面に機械正面から見て左右方向、すなわちＸ軸方向に沿って延在する一対のＸ軸直動ガイド３０が配置され、Ｘ軸直動ガイド３０上には、これに沿って往復動可能なコラム２２が立設配置されている。また、工作機械１０は、コラム２２の前面に、鉛直方向（Ｙ軸方向、図１の紙面に対して垂直方向）に沿って延在する一対のＹ軸直動ガイド（図示省略）を備え、Ｙ軸直動ガイドには、これに沿って往復動可能なサドル２４が配置されている。サドル２４の前方側には、水平方向に沿った中心軸周りに回転可能に構成された主軸２６が配置されている。さらに、主軸２６の前方側（段取り室１４側）には、ワークＷ１、Ｗ２を加工するための工具２８が脱着可能に取り付けられている。工作機械１０は、主軸２６と電気的に接続され、加工を制御するためのＮＣ装置（図示省略）を備えており、工具２８を用いたワークＷ１、Ｗ２の加工を制御可能に構成されている。なお、図５に示されているワークＷ１、Ｗ２の形状は、発明者が設計上で想定する最大のワーク形状であり、あくまで参考の図示であることに留意されたい。

【0012】

工作機械１０の主軸２６の前方側には、ベッド１８の上面に前後方向、すなわちＺ軸方向に沿って延在する一対のＺ軸直動ガイド３８を備え、Ｚ軸直動ガイド３８上には、これに沿って往復動可能なＺ軸テーブル３２が配置されている。また、Ｚ軸テーブル３２上には、鉛直方向に平行な回転軸周り（Ｂ軸周り）に回転可能に構成されたＢ軸ロータリテーブル３４が配置されている。さらに、Ｂ軸ロータリテーブル３４上には、取り付けられるパレット７６（第１のパレット）の上面７６ａ（図２参照）が鉛直面側にある直立状態となるように構成されたテーブルとしてのＣ軸ロータリテーブル３６が配置されている。Ｃ軸ロータリテーブル３６は、また、パレット７６を保持するロケートピンなどのパレット保持機構（図示省略）を持ち、取り付けたワークＷ１及びパレット７６を水平方向に沿った中心軸周り（Ｃ軸周り）に回転可能に構成されている。このように、Ｚ軸テーブル３２、Ｂ軸ロータリテーブル３４及びＣ軸ロータリテーブル３６によって、ワークＷ１、Ｗ２と工具２８との位置合わせをすることができる。さらに、工作機械１０は、コラム２２をＸ軸直動ガイド３０に沿って駆動させるためのＸ軸送り装置、サドル２４をＹ軸直動ガイドに沿って駆動させるためのＹ軸送り装置、及び、Ｚ軸テーブル３２をＺ軸直動ガイド３８に沿って駆動させるためのＺ軸送り装置（いずれも図示省略）を備える。これらによって、工作機械１０は、Ｘ軸，Ｙ軸，Ｚ軸の３つの直動軸と、Ｂ軸とＣ軸の２つの回転軸を持つ５軸制御工作機械として構成されている。なお、これは例示の一つに過ぎず、例えば、５軸制御工作機械であっても直動軸３つに加えて回転軸がＡ軸とＢ軸、又は、Ａ軸とＣ軸の組合せである形態や、回転軸を１つしか持たない４軸制御工作機械や、Ａ軸、Ｂ軸、Ｃ軸の全てを備えた６軸制御工作機械であってもよい。また、工作機械１０は、主軸２６側がＸ軸とＹ軸とを有し、ワークＷ１側がＺ軸、Ｂ軸及びＣ軸を有する構造となっているが、主軸側とワーク側とに直動軸及び回転軸をいかなる態様で配置してもよい。

【0013】

段取り室１４内には、加工前のワークＷ１をパレット７６に取付け（組付け）、加工後のワークＷ２を取り外すといった段取りを行うための段取りステーション４０が配置されている。段取りステーション４０は、パレット７６に取付けられたワークＷ１の姿勢を変更するためのパレット姿勢変更装置４２を備える。また、段取りステーション４０は、パレット７６並びにパレット７６に取付けられたワークＷ１及び/又は治具の何れかに、油、エア、切削液を含む媒体を供給する媒体供給部８０を備える。媒体供給部８０は、パレット７６の下面７６ｂ（図２参照）に取り付けられたカプラ（図示省略）を介して媒体を供給するように構成されている。

【0014】

加工室１２と段取り室１４とを仕切る旋回扉４６は、後述するように、旋回アームとしてのＡＰＣアーム５０の高さ位置が、第２の高さ位置Ｈ２から第３の高さ位置Ｈ３にあるときにはＡＰＣアーム５０に積載され、また、パレット７６の交換時に旋回扉４６との係合が解除され、ＡＰＣアーム５０が第１の高さ位置Ｈ１に下降しているときには、旋回扉４６は、スプラッシュガード１６の側壁の下方側に配置された旋回扉保持部４８に載置されている。具体的には、旋回扉４６及び旋回扉保持部４８の双方に形成された嵌め合い部分（図示省略）が嵌め合わされた状態で載置されている。また、旋回扉４６は、機械正面から見て左右方向、すなわち、Ｘ軸方向を幅方向とする。旋回扉４６の下方側には、旋回扉４６とは別個に、又は、旋回扉４６と連動して、鉛直方向（Ｙ軸方向）に平行な旋回軸ＲＡ２周りに旋回可能に構成されたパレット交換装置４４が配置されている。パレット交換装置４４は、段取り室１４と加工室１２との間で加工前のワークＷ１及び加工後のワークＷ２を受渡しするために、鉛直方向（Ｙ軸方向）に平行な旋回軸ＲＡ２周りに旋回可能（回転可能）に配置された旋回アームとして作動するＡＰＣアーム５０と、ＡＰＣアーム５０を旋回させるための旋回機構としてのＡＰＣアーム駆動機構５６とを備える。また、ＡＰＣアーム５０は、ＡＰＣアーム駆動機構５６によって、鉛直方向（図２のＹ１方向）に沿って上下動可能に構成されている。ＡＰＣアーム駆動機構５６は、油圧シリンダ、空圧シリンダ、又は、細かい作動設定及び調整を可能にするサーボモータといったアクチュエータ（図示省略）を有しており、アクチュエータによってＡＰＣアーム５０を旋回させ、上下動させる。また、アクチュエータは、工作機械１０に配置された制御装置（図示省略）によって制御可能に構成されている。ここで、「ＡＰＣ」とは、「Ａｕｔｏｍａｔｉｃ Ｐａｌｌｅｔ Ｃｈａｎｇｅ」の略称である。なお、旋回扉保持部４８は、スプラッシュガード１６の側壁の下方側に配置されているとして説明したが、これに限らず、旋回扉保持部は、ベッド、又は、床面に直接設置されてもよい。また、旋回扉保持部は、ＡＰＣアームが第１の高さ位置Ｈ１へと下降し、旋回扉と係合していないときに、ＡＰＣアームに代えて旋回扉の回転方向及び重力方向の動きを規制できればよいため、嵌め合い部分以外の態様によって旋回扉を保持してもよい。

【0015】

ＡＰＣアーム５０は、図６に示すように３段階の高さ位置を有する。ここでは、３段階の高さ位置を、下方側から順番に、第１の高さ位置Ｈ１、第２の高さ位置Ｈ２及び第３の高さ位置Ｈ３と定義する。第１の高さ位置Ｈ１は、パレット保持部８２、８４（図２）などの突起部分を旋回扉４６と干渉させることなくＡＰＣアーム５０を単体で旋回するための高さ位置である。このため、ＡＰＣアーム５０と旋回扉４６との係合は解除され、旋回扉４６は旋回扉保持部４８に積載される。第２の高さ位置Ｈ２は、ワークＷ１、Ｗ２の加工を待機するための高さ位置である。このため、旋回扉４６は、旋回扉保持部４８に積載され、ＡＰＣアーム５０は旋回扉４６と当接又は密接している。このとき、パレット保持部８２、８４などの突起部分は、旋回扉４６の下端側に形成されたスペース（図示省略）に収容される。第３の高さ位置Ｈ３は、パレット７６、９４を交換するために、旋回扉４６を積載した状態で共に旋回する時の高さ位置である。また、ＡＰＣアーム５０は、工作機械１０によるワークＷ１、Ｗ２の加工を待機するなどのワークの受け渡しをしないときは、格納位置として、その長手方向が旋回扉４６の幅方向、すなわち、Ｘ軸方向に沿うように位置付けられる。このとき、ＡＰＣアーム５０は、旋回扉４６との間に隙間が生じないように密接又は当接させるため、第２の高さ位置Ｈ２へと移動され、旋回扉４６の下端側と係合した状態で格納される。また、旋回扉４６の下方側には、その下方側（鉛直方向下側）へ向かうにつれて、段取りステーション４０及び加工室１２の側（Ｚ軸方向前方側及び後方側）へ向けて延在する傾斜面を有する切りくずカバー５２（図３参照）が形成されている。切りくずカバー５２は、旋回扉４６と係合したＡＰＣアーム５０を上方側から覆うように形成されており、加工室１２における加工によって生じた切りくず等がＡＰＣアーム５０に付着することを防止又は抑制することができる。また、ＡＰＣアーム５０は、パレット交換を行う際は、第３の高さ位置Ｈ３へ移動すると共に、その長手方向が旋回扉４６の幅方向と直角となる、すなわち、Ｚ軸方向に沿うように位置付けられる。

【0016】

なお、ここでは、切りくずカバー５２は、旋回扉４６の下方側に形成されているとして説明するが、これに限らない。切りくずカバーは、例えば、旋回扉の上方側から全体に亘って形成されてもよく、また、旋回扉とは別個に形成されてもよい。さらに、切りくずカバーは、ＡＰＣアームを覆うことができればよく、外周形状が傾斜面ではなく、例えば、四分球状などに形成されてもよい。

【0017】

図２に示すように、ＡＰＣアーム５０は、その長手方向の両端部に、パレット７６を保持するための第１のパレット保持部８２及び第２のパレット保持部８４を備える。第１のパレット保持部８２及び第２のパレット保持部８４は、それぞれＡＰＣアーム５０の幅方向両端部に柱状部材を有し、ＡＰＣアーム５０の長手方向から見て凹形状である。パレット７６のＡＰＣアーム５０と対向する側面となる当接側面７６ｄには、保持部材７６ｆが取り付けられており、保持部材７６ｆは、第１のパレット保持部８２及び第２のパレット保持部８４の凹形状部分に嵌め込むことができる寸法の板状に形成されている。このため、パレット７６が直立状態にあるときには、保持部材７６ｆが第１のパレット保持部８２及び第２のパレット保持部８４の凹形状部分に嵌め込まれると共に、第１のパレット保持部８２及び第２のパレット保持部８４の両端部の柱状部材の上面がパレット７６の当接側面７６ｄと当接する。これによって、ＡＰＣアーム５０は、パレット７６を支持し、直立状態のパレット７６及びこれに組付けられた治具（図示省略）及びワークＷ１を保持することができる。

【0018】

なお、ここでは、ＡＰＣアーム５０の第１のパレット保持部８２及び第２のパレット保持部８４は、保持部材７６ｆを凹形状部分に嵌め込み、両端部の柱状部材の上面がパレット７６の当接側面７６ｄと当接することによってパレット７６を支持すると説明するが、これに限らない。例えば、ＡＰＣアームの保持部は、パレットの上面及び下面を挟み込むような機構で構成されてもよく、板形状以外の保持部材が凹形状以外の形状（例えば楔形状）を有する部分に嵌め込まれ、挿し込まれてもよい。

【0019】

また、図１に示すように、ＡＰＣアーム５０と旋回扉４６とは係合機構５４によって係合することができる。係合機構５４は、ＡＰＣアーム５０側の係合部としての係合ピン５４ａ及び旋回扉４６側の被係合部としてのガイド穴４６ａを含んで構成されている。係合ピン５４ａは、ＡＰＣアーム５０の上面側に、上方側へ向けて延在して形成されている。このため、係合ピン５４ａは、ＡＰＣアーム５０の上下動に伴って上下動するように構成されている。また、ガイド穴４６ａは、旋回扉４６の底部において、挿し込まれた係合ピン５４ａと係合可能に形成されている。ここでは、係合ピン５４ａはＡＰＣアーム５０の旋回軸ＲＡ２を中心とし１８０°等配で２つ配置され、ガイド穴４６ａは係合ピン５４ａと対応するようにＡＰＣアーム５０の旋回軸ＲＡ２を中心として９０°等配に４箇所形成されている。なお、係合ピン５４ａ及びガイド穴４６ａは最低１対を配置すればよい。係合機構５４は、係合ピン５４ａとガイド穴４６ａとが係合、又は、係合解除できるように構成されており、これによって、ＡＰＣアーム５０と旋回扉４６とを係合することができる。このため、ＡＰＣアーム５０と旋回扉４６とが係合している場合には、ＡＰＣアーム５０と旋回扉４６とを一体で旋回させることができる。また、ＡＰＣアーム５０と旋回扉４６との係合が解除されている場合には、ＡＰＣアーム５０にパレット７６、９４の受け渡しをさせるため、あるいは、受け渡しをしていないＡＰＣアーム５０を格納位置に格納するために、ＡＰＣアーム５０を単独で旋回させることができる。なお、ここでは、ＡＰＣアーム５０が、係合ピン５４ａを有し、旋回扉４６の底部にはガイド穴４６ａが形成されているものとして説明するが、これに限らず、例えば、旋回扉は、底部から延在する係合ピンを有してもよく、ＡＰＣアームにガイド穴が形成されてもよい。また、係合ピン５４ａとガイド穴４６ａとの組み合わせだけでなく、ＡＰＣアーム及び旋回扉の双方に配置された爪部等を互いに係合／係合解除するように構成されてもよい。さらに、係合ピンは、棒状又は柱状のものに限らず、例えば、係合機構に配置された駆動機構を用いて上下動可能に構成されてもよい。

【0020】

パレット交換装置４４は、具体的には、以下のように作動する。工作機械１０において、パレット７６の受け渡しを開始すると、ＡＰＣアーム駆動機構５６は、格納位置にあるＡＰＣアーム５０を第２の高さ位置Ｈ２から第１の高さ位置Ｈ１へと下降させる。このとき、旋回扉４６は、係合機構５４の係合ピン５４ａとガイド穴４６ａとの係合が解除されることによってＡＰＣアーム５０との係合が解除され、旋回扉保持部４８に嵌め合わされ、載置される。ＡＰＣアーム５０が第１の高さ位置Ｈ１へと下降すると、ＡＰＣアーム駆動機構５６は、ＡＰＣアーム５０を９０度（又は２７０度）旋回させる（図４参照）。このため、ＡＰＣアーム５０の第１のパレット保持部８２及び第２のパレット保持部８４は、回転軌跡ＴＲ１に沿ってＣ軸ロータリテーブル３６及びパレット姿勢変更装置４２の側へ移動し（パレット交換位置へ移動し）、ＡＰＣアーム５０の長手方向がＺ軸方向に沿った状態（旋回扉４６の幅方向と直角な状態）となる。また、パレット７６、９４の受渡しのために、Ｃ軸ロータリテーブル３６はＡＰＣアーム５０側へ移動し、パレット姿勢変更装置４２は、パレット７６を保持した状態で直立位置へとアーム６４を回動させる。

【0021】

第１のパレット保持部８２及び第２のパレット保持部８４がＣ軸ロータリテーブル３６及びパレット姿勢変更装置４２の側へ移動すると、ＡＰＣアーム駆動機構５６はＡＰＣアーム５０を第２の高さ位置Ｈ２へと上昇させる。ＡＰＣアーム５０が第２の高さ位置Ｈ２へ上昇することによって、係合機構５４の係合ピン５４ａはガイド穴４６ａに挿入され、係合する。これによって、旋回扉４６とＡＰＣアーム５０とが係合し、旋回扉４６は、旋回扉保持部４８に代えてＡＰＣアーム５０に積載される。

【0022】

ＡＰＣアーム５０が旋回扉４６を積載すると、ＡＰＣアーム駆動機構５６は、旋回扉４６及びＡＰＣアーム５０を第３の高さ位置Ｈ３へと上昇させる。これによって、第１のパレット保持部８２及び第２のパレット保持部８４の凹形状部分にパレット７６の保持部材７６ｆを嵌め込み、パレット７６の当接側面７６ｄに両端部の柱状部材を当接させることによって、パレット７６を保持することができる。ここで、Ｃ軸ロータリテーブル３６はパレット保持機構を解除し、また、パレット姿勢変更装置４２は、フィンガ７２（図２参照）を用いてパレットの保持を解除し、ＡＰＣアーム５０へとパレット７６が受け渡される。Ｃ軸ロータリテーブル３６及び／またはパレット姿勢変更装置４２はＡＰＣアーム５０にパレット７６をパレット受渡位置において受け渡したら、旋回するＡＰＣアーム５０や旋回扉４６と干渉しない退避位置に退避する。これに続いて、ＡＰＣアーム５０は、これらを一体で１８０度旋回させる（図５参照）。これによって、ＡＰＣアーム５０が保持するパレット７６を加工室１２側と段取り室１４側とで入れ替えることができる。パレット７６が入れ替えられると、Ｃ軸ロータリテーブル３６及び／又はパレット姿勢変更装置４２のアーム６４は、退避位置からパレット受渡位置へと移動し、入れ替えられたパレット７６、９４をＣ軸ロータリテーブル３６のパレット保持機構及び／又はパレット姿勢変更装置４２のフィンガ７２を用いて保持する。さらに、ＡＰＣアーム駆動機構５６は、旋回扉４６とパレット７６を保持した状態のＡＰＣアーム５０とを第２の高さ位置Ｈ２に下降し（図５参照）、ＡＰＣアーム５０だけに積載されていた旋回扉４６は、旋回扉保持部４８に嵌め合わされた状態で載置される。また、係合機構５４の係合ピン５４ａは、ガイド穴４６ａから引き抜かれ、係合が解除される。ＡＰＣアーム駆動機構５６は、ＡＰＣアーム５０を第１の高さ位置Ｈ１へと下降させた上で９０度旋回して第１のパレット保持部８２及び第２のパレット保持部８４を旋回扉４６の下方側へ移動する。

【0023】

第１のパレット保持部８２及び第２のパレット保持部８４が旋回扉４６の下方側へ移動すると、ＡＰＣアーム駆動機構５６は、ＡＰＣアーム５０を第２の高さ位置Ｈ２へと上昇させ、旋回扉４６は旋回扉保持部４８に代えてＡＰＣアーム５０に積載される。さらに、係合機構５４の係合ピン５４ａはガイド穴４６ａに挿入され、これらは係合する。これによって、ＡＰＣアーム５０は旋回扉４６の下方側の格納位置に格納される（図３参照）。

【0024】

図２に示すように、段取りステーション４０には、段取りした加工前のワーク及び加工後のワークＷ２が組付けられたパレット７６をＡＰＣアーム５０との間で受渡しするためのパレット姿勢変更装置４２が配置されている。パレット７６は、ワークＷ１及び治具（図示省略）を組付ける上面７６ａと、下面７６ｂとを有する板状に形成されている。また、パレット７６は、上面７６ａ及び下面７６ｂに接し、パレット７６のＸ軸方向外側に位置する２つの係合側面７６ｅと、２つの係合側面７６ｅの間に位置し、パレット７６のＺ軸方向後方側に位置し、ＡＰＣアーム５０と対向する当接側面７６ｄと、パレット７６のＺ軸方向前方側に位置し、段取り室扉１４ａと対向する前方側面７６ｃを有する。さらに、２つの係合側面７６ｅは、パレット７６と一体で形成され、その外側、すなわち、Ｘ軸方向外側へ向けて延伸するピン７８を有する。ここでは、各係合側面７６ｅには、係合側面７６ｅの面方向に沿って延伸する円柱状のピン７８が２つずつ形成されている。２つのピン７８は、間隔をあけて、係合側面７６ｅの長手方向（Ｚ軸方向）の両端側に１つずつ形成されている。なお、ピンは、各係合側面に１つずつ形成されてもよく、また、角柱形状や三角柱形状等、円柱形状以外の形状に形成されてもよい。

【0025】

段取り室１４の段取りステーション４０にパレット７６を配置し、これにワーク及び治具を組み付ける作業者は、パレット７６の上面７６ａを水平面側へ向けた水平状態で、パレット７６を媒体供給部８０の上に配置する。このため、段取りステーション４０とパレット７６が直立状態で取り付けられるＣ軸ロータリテーブル３６との間でパレット７６を受け渡しするために、パレット姿勢変更装置４２は、パレット７６を保持し、水平状態と直立状態との間を含んで姿勢変更するように構成されている。具体的には、パレット姿勢変更装置４２は、旋回扉４６及びＡＰＣアーム５０のＺ軸方向前方側にＸ軸方向に沿って配置されたベース６０と、ベース６０に取り付けられ、Ｘ軸方向（水平方向）に沿って延在する回転軸を回転中心軸ＲＡ１周り（Ｒ１方向）に回動可能に構成された駆動部６２と、駆動部６２に回転可能に取り付けられ、２つの係合側面７６ｅに対向したときに、これらと平行になるように延在し、パレット７６を保持することのできる一対のアーム６４とを備える。ベース６０は、ＡＰＣアーム５０の旋回軸ＲＡ２位置に配置されたＡＰＣアーム駆動機構５６の外周部からＺ軸方向前方側（段取り室扉１４ａ側）へ向けて延在する。

【0026】

駆動部６２は、油圧シリンダ、空圧シリンダ、又は、細かい作動設定及び調整を可能にするサーボモータといったアクチュエータ（図示省略）を有しており、アクチュエータによって回転軸を回転させる。また、アクチュエータは、工作機械１０に配置された制御装置（図示省略）によって制御可能に構成されている。さらに、パレット姿勢変更装置４２は、直立状態と水平状態との間だけではなく、直立状態における直立位置から水平状態における係合位置を越えた退避位置までアーム６４を回動させ、位置決め可能（静止可能）に構成されている。また、パレット姿勢変更装置４２は、直立位置と係合位置との間の待機位置といった中間位置においても位置決め可能（静止可能）に構成されている。

【0027】

なお、以下の説明では、パレット７６は平面視で正方形状に形成されており、互いに平行な２つの係合側面７６ｅが、互いに平行な一対のアーム６４によって保持されるものとして説明するが、これに限らない。例えば、パレットは、角部が面取りされている場合やパレットが平面視で八角形状又は丸形状といった正方形状以外の形状も含みうる。さらに、パレットが正方形状以外の形状であるために２つの係合側面が互いに平行でない場合であっても、一対のアームは、例えば、２つの係合側面と平行になるように平面視でＶ字状に延在するといった互いに平行ではない場合も含みうる。パレットが丸形状の場合、アーム形状を湾曲させ、パレットの外形に沿うように設計してもよい。

【0028】

アーム６４は、駆動部６２の回転軸に連結されるアーム基端部６６と、係合側面７６ｅに対向できるように、アーム基端部６６のＸ軸方向外側部分から直線状に延在するアーム係合部６８とを有する。アーム６４のベース６０側となるアーム基端部６６のＸ軸方向内側には、アーム６４によってパレット７６を保持したときに、当接側面７６ｄと対向する位置に受け部７４が形成されている。受け部７４は、水平状態で工作機械１０の側方（Ｘ軸方向外側）から見たときに、Ｌ字状又は逆Ｌ字状に形成されており、アーム６４に対して垂直方向に延在する平面状の第１のパレット受け面７４ａと、アーム６４の長手方向に沿って延在する平面状の第２のパレット受け面７４ｂとを有し、第１のパレット受け面７４ａに当接側面７６ｄを、第２のパレット受け面７４ｂに下面７６ｂを当接できるように寸法決めされている。なお、第１のパレット受け面及び第２のパレット受け面は、厳密に寸法決めされる必要はなく、パレットに当接してパレットの自重を確実に受け止める程度に形成されていればよい。このため、第１のパレット受け面及び第２のパレット受け面は平面に限らず、例えば、曲面形状や多角錐形状に形成されてもよく、これによって、パレットを点接触又は線接触の状態で支持してもよい。

【0029】

各アーム６４は、アーム係合部６８の長手方向の両端部、すなわち、Ｚ軸方向の両端部に、アーム係合部６８の長手方向に沿ってスライド可能に構成された２つのスライド部７０を備える。また、２つのスライド部７０には、パレット７６と係合するためのフィンガ７２がそれぞれ取り付けられている。２つのフィンガ７２の間隔は、２つのピン７８の間隔に対応するように構成されている。２つのスライド部７０にはアーム係合部６８内に配置されたロッドが一体で接続され、ロッドは油圧シリンダ、空圧シリンダ、又は、細かい作動設定及び調整を可能にするサーボモータといったアクチュエータに接続される（何れも図示省略）。このため、アクチュエータによるロッドの作動に応じて、スライド部７０及びフィンガ７２をパレット係合位置とパレット係合解除位置との間で同一方向に連動させることができる。ここでは、パレット係合位置がパレット係合解除位置よりもアーム基端部６６側となるように構成されている。また、スライド部７０及びフィンガ７２を作動するアクチュエータは、工作機械１０に配置された制御装置（図示省略）によって制御可能に構成されている。フィンガ７２は、アーム６４の長手方向から見たときに、パレット７６側へ向けた凹状に形成されている。フィンガ７２は、その深さ方向の寸法、すなわち、Ｘ軸方向の寸法は、ピン７８の延伸方向の寸法、すなわち、Ｘ軸方向の寸法と一致するように形成されている。このため、アーム係合部６８をパレット７６の係合側面７６ｅの側方へ移動し、フィンガ７２とピン７８とがＸ軸方向に沿って対向していない位置（パレット係合解除位置）からフィンガ７２とピン７８とがＸ軸方向に沿って対向する位置（パレット係合位置）へ移動する（スライドする）ことによって、パレット７６にフィンガ７２を係合させることができる。これによって、アーム６４は、パレット７６を安定して保持することができる。また、凹形状のフィンガ７２とピン７８との間に加工により生じる切りくずを挟み込むことを防止又は抑制することができる。

【0030】

なお、ここでは、フィンガ７２は、アーム６４の長手方向から見たときにパレット７６側へ向けた凹状に形成されているとして説明するが、これに限らず、ピンに係合できる形状であればよく、例えば、フィンガは、アームの長手方向から見たときにピンの側へ向けた開放したＶ字状等の他の形状で形成されてもよい。

【0031】

さらに、アーム係合部６８の係合側面７６ｅと対向する幅方向内側、すなわち、Ｘ軸方向内側には、係合側面７６ｅ側へ向けて延在するアーム凸部８６（図示省略）が形成されている。また、係合側面７６ｅには、パレット７６の内側へ凹むように形成されたパレット溝８８が形成されており、アーム凸部８６を挿し込むことができるように構成されている。これによって、アーム６４は、フィンガ７２とアーム凸部８６の両方を用いてパレット７６を保持することができるため、パレット７６を安定して保持することができる。

【0032】

なお、ここでは、アーム係合部６８のフィンガ７２は、アーム係合部６８の長手方向、すなわち、Ｚ軸方向に沿ってパレット係合解除位置とパレット係合位置との間をスライド可能に構成されているとして説明するが、これに限らず、フィンガをＸ軸方向、すなわち、パレットと対向する方向にスライドして、パレットを保持するように構成されてもよい。このように構成した場合は、フィンガはアームの長手方向には変位しないため、長手方向についてはアームを省スペースにすることができ、アームをコンパクトに構成することができる。

【0033】

図３から図５に示すように、パレット７６、９４を交換するために作動されるＡＰＣアーム５０の説明を通じて、本実施形態に係る工作機械１０のパレット交換装置４４の作用効果を以下に説明する。

【0034】

図３に示すパレット交換装置４４は、工作機械１０において、パレット７６、９４の受け渡しを開始すると、ＡＰＣアーム駆動機構５６は格納位置にあるＡＰＣアーム５０を第２の高さ位置Ｈ２から第１の高さ位置Ｈ１へと下降させる。このとき、係合機構５４の係合ピン５４ａはガイド穴４６ａから引き抜かれ、係合が解除される。そして、ＡＰＣアーム５０に積載されていた旋回扉４６は、ＡＰＣアーム５０に代えて旋回扉保持部４８に嵌め合わされた状態で載置される。

【0035】

図４に示すように、ＡＰＣアーム５０が第１の高さ位置Ｈ１へと下降すると、ＡＰＣアーム駆動機構５６は、ＡＰＣアーム５０を９０度（又は２７０度）旋回させる。このため、ＡＰＣアーム５０の第１のパレット保持部８２及び第２のパレット保持部８４は、回転軌跡ＴＲ１に沿ってＣ軸ロータリテーブル３６及びパレット姿勢変更装置４２の側（パレット交換位置）へ移動し、ＡＰＣアーム５０の長手方向がＺ軸方向に沿った状態となる。また、Ｃ軸ロータリテーブル３６及びパレット姿勢変更装置４２のアーム６４はパレット受渡位置へ移動する。第１のパレット保持部８２及び第２のパレット保持部８４がＣ軸ロータリテーブル３６及びパレット姿勢変更装置４２の側へ移動すると、ＡＰＣアーム駆動機構５６はＡＰＣアーム５０を第２の高さ位置Ｈ２へと上昇させる。これによって、旋回扉４６は旋回扉保持部４８に代えてＡＰＣアーム５０に積載され、係合ピン５４ａはガイド穴４６ａに挿入され、旋回扉４６とＡＰＣアーム５０とが係合する。

【0036】

図５に示すように、ＡＰＣアーム５０がＹ１方向に沿って第３の高さ位置Ｈ３へと上昇することによって、第１のパレット保持部８２及び第２のパレット保持部８４の凹形状部分にパレット７６、９４の保持部材７６ｆを嵌め込み、パレット７６の当接側面７６ｄに両端部の柱状部材を当接させる。これによって、ＡＰＣアーム５０は、パレット７６、９４を保持することができる。ここで、Ｃ軸ロータリテーブル３６はパレット保持機構を解除すると共に、パレット姿勢変更装置４２はフィンガ７２を用いパレットの保持を解除するため、Ｃ軸ロータリテーブル３６及び／又はパレット姿勢変更装置４２からＡＰＣアーム５０へとパレット７６、９４が受け渡される。Ｃ軸ロータリテーブル３６及び／又はパレット姿勢変更装置４２は、ＡＰＣアーム５０にパレット７６を受け渡したら、旋回するＡＰＣアーム５０や旋回扉４６と干渉しない退避位置に退避する。

【0037】

ＡＰＣアーム５０がパレット７６、９４を受け取ると、ＡＰＣアーム駆動機構５６は旋回扉４６とパレット７６、９４を保持した状態のＡＰＣアーム５０とをこれらを一体で１８０度旋回させる（図中Ｒ２方向）。これによって、ＡＰＣアーム５０が保持するパレット７６、９４を加工室１２側と段取り室１４側とで入れ替えることができる。パレット７６、９４を入れ替ると、Ｃ軸ロータリテーブル３６及び／又はパレット姿勢変更装置４２のアーム６４は、退避位置からパレット受渡位置へと移動し、入れ替えられたパレット７６をＣ軸ロータリテーブル３６のパレット保持機構と、パレット姿勢変更装置４２のフィンガ７２を用いて保持する。さらに、ＡＰＣアーム駆動機構５６は、旋回扉４６と係合した状態のＡＰＣアーム５０を第２の高さ位置Ｈ２へと下降させ、ＡＰＣアーム５０に積載されていた旋回扉４６は、旋回扉保持部４８に再度載置される。さらに、係合機構５４の係合ピン５４ａはガイド穴４６ａから引き抜かれるため、これらの係合が解除される。続いて、ＡＰＣアーム駆動機構５６は、ＡＰＣアーム５０を第１の高さ位置Ｈ１へと下降させた上で９０度旋回して第１のパレット保持部８２及び第２のパレット保持部８４を旋回扉４６の下方側へ移動する。第１のパレット保持部８２及び第２のパレット保持部８４が旋回扉４６の下方側へ移動すると、ＡＰＣアーム駆動機構５６は、ＡＰＣアーム５０を第２の高さ位置Ｈ２へと上昇させる。また、旋回扉４６は、旋回扉保持部４８に代えてＡＰＣアーム５０に積載され、係合機構５４の係合ピン５４ａはガイド穴４６ａに挿入され、旋回扉４６とＡＰＣアーム５０とを係合させる。これによって、ＡＰＣアーム５０は旋回扉４６の下方側に格納される（図３参照）。

【0038】

本実施形態に係るパレット交換装置４４は、パレット７６、９４を交換するために、ＡＰＣアーム駆動機構５６によって旋回可能に構成されたＡＰＣアーム５０と、ＡＰＣアーム５０の上方側に配置され、係合ピン５４ａとガイド穴４６ａからなる係合機構５４と係合することによってＡＰＣアーム５０と共に旋回可能な旋回扉４６と、旋回扉４６に取り付けられ、ＡＰＣアーム５０が旋回扉４６の幅方向に沿って配置されているとき（格納位置にあるとき）に、ＡＰＣアーム５０の上方側を覆う切りくずカバー５２を備える。このため、ＡＰＣアーム５０が、段取り室１４と加工室１２との間でパレット７６、９４を交換するために、これらを保持するための第１のパレット保持部８２及び第２のパレット保持部８４が旋回扉４６の下方側から露出しない場合、すなわち、格納位置にある場合には、切りくずカバー５２によってＡＰＣアーム５０を覆うことができるため、ＡＰＣアーム５０に切りくずが堆積することを防止又は抑制することができる。

【0039】

また、本実施形態に係るパレット交換装置４４によれば、係合機構５４は、ＡＰＣアーム５０から旋回扉４６側（上方側）へ向けて突出する係合ピン５４ａと、旋回扉４６は、底部において、係合ピン５４ａと係合可能に形成されたガイド穴４６ａとを含んで構成されている。このため、係合ピン５４ａとガイド穴４６ａとを係合させることによって、ＡＰＣアーム５０と旋回扉４６とを安定して係合させることができる。

【0040】

さらに、本実施形態に係るパレット交換装置４４によれば、上述したように、工作機械１０によるワークの加工を待機するなどのワークの受け渡しをしないときは、ＡＰＣアーム５０を旋回扉４６の幅方向に沿って配置することができる。このため、第１のパレット保持部８２及び第２のパレット保持部８４は加工室１２側に突き出さない。これによって、Ｚ軸テーブル３２、Ｂ軸ロータリテーブル３４及びＣ軸ロータリテーブル３６とＡＰＣアーム５０との干渉を抑制する（減らす）ことができるため、Ｚ軸直動ガイド３８のストロークを長く取ることができる。

【0041】

また、本実施形態に係るパレット交換装置４４によれば、旋回扉４６が旋回しないときに、これを嵌め合わせた状態で載置する旋回扉保持部４８を備える。また、パレット交換装置４４は、ＡＰＣアーム５０と旋回扉４６とは、ＡＰＣアーム５０の長手方向が旋回扉４６の幅方向と直角なパレット交換位置にある場合、及び、旋回扉４６の幅方向に沿って配置される格納位置にある場合に係合し、ＡＰＣアーム５０が旋回扉４６を積載するように構成されている。このため、切りくずカバー５２を備えた旋回扉４６を旋回扉保持部４８又はＡＰＣアーム５０によって常に安定して保持することができ、格納状態におけるＡＰＣアーム５０に切りくずが堆積することをより効果的に抑制又は防止することができる。

【0042】

以上の説明のとおり、本実施形態に係る工作機械１０のパレット交換装置４４によれば、ＡＰＣアーム５０に切りくずが堆積することを抑制又は防止することができる。

【0043】

なお、ここでは、ＡＰＣアーム５０は、上下動可能に構成されているとして説明したが、これに限らず、ＡＰＣアームは、パレットの構造に応じて旋回だけをするように構成されてもよく、係合機構は、このことに対応するように様々な形式のものが用いられてもよい。また、本実施形態では、ＡＰＣアームは、直立状態のパレットを保持し、交換する形態となっているが、水平状態のパレットを保持し、交換する形態のパレット交換機構であってもよい。また、ＡＰＣアームは、旋回扉との間にすき間が生じなければよいため、格納位置において、厳密に第２の高さＨ２へと移動するのではなく、わずかに第２の高さ位置Ｈ２の下方側で停止してもよい。

【0044】

以上、工作機械１０のパレット交換装置４４の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されない。上記のほか、当業者であれば、上記の実施形態の様々な変形が可能であることを理解できると考えられる。

【符号の説明】

【0045】

１０ 工作機械
１２ 加工室
１４ 段取り室
４４ パレット交換装置
４６ 旋回扉
４６ａ ガイド穴（被係合部）
５０ ＡＰＣアーム（旋回アーム）
５２ 切りくずカバー
５４ 係合機構
５４ａ 係合ピン（係合部）
５６ ＡＰＣアーム駆動機構（旋回機構）

【要約】

【課題】ＡＰＣアームに切りくずが堆積することを抑制又は防止するパレット交換装置を提供する。
【解決手段】工作機械１０のパレット交換装置４４は、段取り室１４と加工室１２との間でパレット７６、９４を交換するために、ＡＰＣアーム駆動機構５６によって旋回可能に構成されたＡＰＣアーム５０と、ＡＰＣアーム５０に配置された係合ピン５４ａと、ＡＰＣアーム５０の上方側に、段取り室１４と加工室１２とを隔てるように配置され、係合ピン５４ａと係合するためのガイド穴４６ａを有し、係合ピン５４ａとガイド穴４６ａとが係合したときにＡＰＣアーム５０と共に旋回可能な旋回扉４６と、旋回扉４６に取り付けられ、ＡＰＣアーム５０の長手方向が、段取り室１４側から加工室１２側を見たときの旋回扉４６の幅方向に沿って配置されるときに、ＡＰＣアーム５０の上方側を覆う、切りくずカバー５２と、を具備する。
【選択図】図３

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】