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  • 特許-分析方法および分析装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】分析方法および分析装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/48 20060101AFI20241125BHJP
   G01N 1/00 20060101ALI20241125BHJP
   G01N 1/22 20060101ALI20241125BHJP
【FI】
H01M10/48 Z
G01N1/00 101R
G01N1/22 A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2024081792
(22)【出願日】2024-05-20
【審査請求日】2024-08-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000130259
【氏名又は名称】株式会社コベルコ科研
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(74)【代理人】
【識別番号】100139354
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 昌子
(74)【代理人】
【識別番号】100208708
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 健志
(74)【代理人】
【識別番号】100215371
【弁理士】
【氏名又は名称】古茂田 道夫
(74)【代理人】
【識別番号】100187997
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 厳輝
(72)【発明者】
【氏名】戸塚 裕文
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 正俊
(72)【発明者】
【氏名】松田 洋明
(72)【発明者】
【氏名】青才 大介
(72)【発明者】
【氏名】常本 邦明
【審査官】赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-181212(JP,A)
【文献】特開2016-051683(JP,A)
【文献】特開2015-056308(JP,A)
【文献】特表2024-509621(JP,A)
【文献】特開2017-090223(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/42-10/48
G01N 1/00-1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスを導入する流路を電池の周囲に配置する工程と、
上記流路が配置された上記電池に異常を発生させる工程と、
異常が発生した上記電池から噴出するガスを経時的に上記流路に導入させる工程と、
上記流路に導入されたガスをガス分析器で分析する工程と
を備え
上記流路における導入口と上記電池とが、上記ガスが自由に拡散できる開放環境下で離間して配置される分析方法。
【請求項2】
上記分析する工程で、上記電池から噴出したガス中の特定成分を分析する請求項1に記載の分析方法。
【請求項3】
上記配置する工程で、複数の上記流路を配置する請求項1に記載の分析方法。
【請求項4】
上記分析する工程で、複数の上記ガス分析器で分析する請求項1に記載の分析方法。
【請求項5】
上記配置する工程で、上記流路に固体物を捕集するフィルタを配置する請求項1に記載の分析方法。
【請求項6】
上記配置する工程で、上記流路に内部を負圧にする負圧器を配置する請求項1に記載の分析方法。
【請求項7】
上記配置する工程で、上記流路に内部を加温する加温器を配置する請求項1に記載の分析方法。
【請求項8】
上記電池が全固体電池である請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の分析方法。
【請求項9】
異常が発生した電池から噴出されたガスを経時的に導入する流路と、
上記流路に接続されているガス分析器と
を備え
上記流路における導入口と上記電池とが、上記ガスが自由に拡散できる開放環境下で離間して配置される分析装置。
【請求項10】
複数の上記流路を備える請求項に記載の分析装置。
【請求項11】
複数の上記流路と複数の上記ガス分析器とを備える請求項に記載の分析装置。
【請求項12】
上記流路と上記ガス分析器とが一対一で接続されている請求項11に記載の分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池から噴出されたガスを分析する分析方法および分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯端末、自動車、再生可能エネルギーなど、多分野で電池の利用が増大している。電池は、使用環境、使用状況によって発熱し、この発熱による熱の制御が不能になって内容物を噴出することがある。このような異常によって電池から噴出するガスを分析する方法が知られている(特表2021-500717号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2021-500717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、チャンバ内に電池を配置し、この電池がガスを噴出すると上記チャンバに誘導ガスが供給されると共に上記チャンバの安全弁が開放され、上記誘導ガスが上記ガスを上記安全弁から分析器に誘導することで上記ガスの分析をしている。特許文献1の分析方法では、上記チャンバ内で一時的に留めたガスを分析することはできるが、連続的に噴出するガスを経時的に分析することはできないおそれがある。
【0005】
このような事情を鑑みて、本開示は、電池から噴出するガスの経時的な分析を容易に行うことできる分析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた本開示の一態様に係る分析方法は、ガスを導入する流路を電池の周囲に配置する工程と、上記流路が配置された上記電池に異常を発生させる工程と、異常が発生した上記電池から噴出するガスを経時的に上記流路に導入させる工程と、上記流路に導入されたガスをガス分析器で分析する工程とを備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様に係る分析方法は、電池から噴出するガスの経時的な分析を容易に行うことできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本開示の一実施形態に係る分析装置を示す模式的斜視図である。
図2図2は、図1とは異なる分析装置を示す模式的斜視図である。
図3図3は、図1および図2とは異なる分析装置を示す模式的斜視図である。
図4図4は、図1ないし図3とは異なる分析装置を示す模式的斜視図である。
図5図5は、図1ないし図4とは異なる分析装置を示す模式的斜視図である。
図6図6は、図1ないし図5とは異なる分析装置を示す模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0010】
(1)本開示の一態様に係る分析方法は、ガスを導入する流路を電池の周囲に配置する工程と、上記流路が配置された上記電池に異常を発生させる工程と、異常が発生した上記電池から噴出するガスを経時的に上記流路に導入させる工程と、上記流路に導入されたガスをガス分析器で分析する工程とを備える。
【0011】
当該分析方法は、周囲に流路を配置した電池にガスを噴出させ、このガスを上記流路が経時的に導入してガス分析器で分析する。当該分析方法は、特許文献1に記載されているようなチャンバなどにガスを一時的に貯留して分析することなく、電池から噴出するガスを上記流路が直接的に導入しているため、上記ガス分析器は上記ガスの変化を経時的に分析できる。
【0012】
(2)上記(1)において、上記分析する工程で、上記電池から噴出したガス中の特定成分を分析してもよい。すなわち、例えば、上記ガス中に含まれている未特定(未同定)の複数の成分を特定するための分析を行ってもよいが、上記ガス中に含まれている既知の成分に着目し、この成分の経時的な濃度の変化などを分析してもよい。
【0013】
(3)上記(1)または上記(2)において、上記配置する工程で、複数の上記流路を配置してもよい。複数の流路を配置することで、上記電池から噴出するガスを導入することの容易性を向上できる。
【0014】
(4)上記(1)から上記(3)のいずれかにおいて、上記分析する工程で、複数の上記ガス分析器で分析してもよい。複数の上記ガス分析器を用いることにより、複数の分析を同時に行うことができ、あるいは同一の分析を行う場合には分析精度を向上できる。
【0015】
(5)上記(1)から上記(4)のいずれかにおいて、上記配置する工程で、上記流路に固体物を捕集するフィルタを配置してもよい。上記流路に固体物を捕集するフィルタを配置することで上記ガスの分析精度を向上できる。
【0016】
(6)上記(1)から上記(5)のいずれかにおいて、上記配置する工程で、上記流路に内部を負圧にする負圧器を配置してもよい。上記流路に内部を負圧にする負圧器を配置することで、上記流路が上記ガスを導入することの容易性を向上できる。
【0017】
(7)上記(1)から上記(6)のいずれかにおいて、上記配置する工程で、上記流路に内部を加温する加温器を配置してもよい。上記流路に内部を加温する加温器を配置することで、上記流路内で上記ガスの一部が冷却されて固着することを抑制でき、上記流路が上記ガスを上記ガス分析器に供給することの確実性を向上できる。
【0018】
(8)上記(1)から上記(7)のいずれかにおいて、上記電池が全固体電池であってもよい。すなわち、当該分析方法は、異常が発生した全固体電池が噴出するガスの分析を行うことができる。
【0019】
(9)上記(1)から上記(8)のいずれかにおいて、上記流路における導入口と上記電池とが開放環境下に配置されてもよい。すなわち、上記電池と上記流路における上記ガスの導入口とが閉鎖された空間内に配置されないとよい。閉鎖された空間内に滞留することで経時的な分析が困難になるおそれがある。上記電池と上記流路における上記ガスの導入口とが開放環境下に配置されることで、上記ガスの経時的な分析を行うことの容易性および確実性が向上できる。
【0020】
(10)本開示の一態様に係る分析装置は、異常が発生した電池から噴出されたガスを経時的に導入する流路と、上記流路に接続されているガス分析器とを備える。
【0021】
当該分析装置は電池から噴出するガスを経時的に導入する流路を備えるため、電池から噴出するガスを容易かつ連続して捕捉できる。さらに、当該分析装置は上記流路に接続されているガス分析器を備えるため、上記流路から供給される上記ガスを経時的に分析できる。
【0022】
(11)上記(10)において、当該分析装置が複数の上記流路を備えてもよい。当該分析装置が複数の上記流路を備えることで、上記電池から噴出するガスを導入することの容易性を向上できる。
【0023】
(12)上記(10)において、当該分析装置が複数の上記流路と複数の上記ガス分析器とを備えてもよい。当該分析装置が複数の上記流路と複数の上記ガス分析器とを備えることで、上記電池から噴出するガスを導入することの容易性と、上記ガスの分析精度とを向上できる。
【0024】
(13)上記(12)において、上記流路と上記ガス分析器とが一対一で接続されてもよい。上記流路と上記ガス分析器とを一対一で接続することにより、上記ガスの上記流路ごとの分析ができる。
【0025】
[発明を実施するための形態の詳細]
以下、図面を参照しつつ、本開示の実施の形態を詳説する。
【0026】
<分析方法>
当該分析方法は、ガスを導入する流路を電池の周囲に配置する工程と、上記流路が配置された上記電池に異常を発生させる工程と、異常が発生した上記電池から噴出するガスを経時的に上記流路に導入させる工程と、上記流路に導入されたガスをガス分析器で分析する工程とを備える。当該分析方法は、例えば図1ないし図6で例示されるような分析装置を用いて行われるとよい。
【0027】
<分析装置>
当該分析装置は、異常が発生した電池Bから噴出されたガスを経時的に導入する流路10と、流路10に接続されているガス分析器20とを備える。
【0028】
〔電池〕
電池Bとしては、異常によって内容物を噴出(解放)させるものであれば特に限定されるものでなく、例えばリチウムイオン電池などの蓄電池が挙げられる。また、電池は、剛性を有する筐体で略直方体状、円筒状などに形成されたものであってもよいし、柔軟性を有するシート状部材をラミネートして袋状に形成されたものであってもよい。電池Bは、全固体電池であってもよい。
【0029】
上記噴出物(電池の内容物)は、主にガスであり、液体、固体(粒子状の固体物)が含まれる。上記ガスとしては、例えば二酸化炭素や一酸化炭素などの無機ガス、可燃性ガスなどが含まれる。上記噴出物は、異常が発生した電池が部分的に損傷することにより、その損傷部分から噴出する。あるいは、電池の筐体に噴出物を開放するための安全弁、または噴出物を開放するための脆弱部分(上記筐体の破れ易い部分)が形成されているものであれば、上記安全弁または上記脆弱部分(以下、これらを単に「解放部」という)から上記噴出物が噴出する。上記異常とは、充電、蓄電および放電といった正常な機能を電池が発揮できない状態(制御不能状態)であって、例えば、熱暴走、短絡、電気分解などの化学的損壊、衝撃などによる損傷(物理的損壊)などを意味する。
【0030】
分析される電池Bの態様としては、特に限定されるものではなく、単一の電池(電池単体)であってもよいし、複数の電池で構成されている電池モジュールであってもよいし、複数の電池あるいは複数の電池モジュールを筐体内に含む電池パックであってもよいし、電池、電池モジュールあるいは電池パックを有する製品であってもよい。つまり、流路10は、電池、電池モジュールあるいは電池パックの周囲に配置してもよいし、電池、電池モジュールあるいは電池パックを有する製品の周囲に配置してもよい。上記製品としては、例えば、発電所、給電施設、病院などに設置される蓄電気装置、自動車などの電気輸送機器などが挙げられる。以下、分析対象とする電池(電池単体)、上記電池モジュール、上記電池パック、および上記製品のことを単に「分析対象物」ともいう。
【0031】
〔流路〕
流路10は、筒状(管状)に形成され、上記分析対象物(各図では電池B)から噴出するガスを経時的に内部に導入し、導入したガスをガス分析器20に供給する。流路10の導入口11(開口部)は、上記分析対象物の周囲で上記分析対象物に向けて開口するように配置されるとよい。電池単体を上記分析対象物とする場合であって、この電池の筐体に上記解放部が形成されているものであれば、上記解放部の周囲に上記流路を配置してもよい。つまり、噴出物の噴出箇所が予測できるものであれば、その予測される噴出箇所の周囲に流路を配置してもよい。噴出物の噴出箇所が予測できない(上記解放部を有しない)電池であれば、電池Bの周囲の任意の箇所に流路10を配置してもよい。
【0032】
当該分析装置は、流路10に配置され、固体物を捕集するフィルタ40を有するとよい。すなわち、当該分析方法は、上記配置する工程で、流路10に固体物を捕集するフィルタ40を配置するとよい。流路10にフィルタ40を配置することで、フィルタ40がガス分析器20に供給される上記ガス中に含まれる固体物を捕集して除去することができ、ガス分析器20が損傷などすることを抑制できる。また、上記固体物が除去されることで上記ガスの純度を向上でき、分析精度を向上できる。
【0033】
当該分析装置は、流路10の内部を負圧にする負圧器30を有するとよい。すなわち、当該分析方法は、上記配置する工程で、流路10の内部を負圧にする負圧器30を配置するとよい。負圧器30としては、特に限定されるものではなく、例えば公知の真空ポンプが挙げられる。負圧器30で流路10内を減圧することで、上記ガスを容易に導入できる。
【0034】
当該分析装置は、流路10を加温する加温器(不図示)を有するとよい。すなわち、当該分析方法は、上記配置する工程で、流路10の内部を加温する加温器を配置するとよい。電池Bから噴出したガスは、吸着性を有する成分(例えば硫化水素など)を含むことがある。このような成分が流路10内を流通する間に流路10の内面に付着すると、ガス分析器20に供給されるガスの成分、濃度などが変動し、分析精度が低下するおそれがある。上記加温器が流路10を加温することで、流路10内を流通するガスの内面吸着を抑制できる。
【0035】
フィルタ40、負圧器30および上記加温器の配置は、上記ガスを流路10に導入させる前であれば特に限定されるものではなく、流路10を上記分析対象物の周囲に配置する前であってもよく、配置した後であってもよい。
【0036】
〔ガス分析器〕
ガス分析器20としては、流路10から供給されたガスを分析できるものであれば特に限定されるものでなく、公知のガス分析方法でガスを分析するものであってもよい。分析されたガスは排気管12を介してガス分析器20から排出される。
【0037】
ガス分析器20は持ち運び可能なものであることが好ましい。持ち運び可能なガス分析器20を用いることで当該分析装置を容易に設置でき、また設置する場所(当該分析方法を行う場所)の自由度を向上できる。
【0038】
〔配置する工程〕
ガスを導入する流路10を電池Bの周囲に配置する工程では、一の流路10を配置してもよいし、複数の流路10を配置してもよい。上記解放部を有しない電池にあっては、複数の流路10を上記電地の周囲で離間して配置することが好ましい。複数の流路10を離間して配置することで、上記噴出箇所の予測ができない電池から噴出する上記ガスを捕捉することの確実性を向上できる。また、上記電池パック、上記電気モジュールおよび上記製品を分析対象物とする際においても、複数の電池を有するため上記ガスの噴出箇所を予測することが困難であり、かつ分析対象物の外形(寸法)が大きくなるため、上記ガスを捕捉することの確実性を向上するために複数の流路10を上記分析対象物の周囲で離間して配置することが好ましい。
【0039】
上記配置する工程では、流路10の導入口11を上記分析対象物に接するように配置してもよいし、電池Bと離間して配置してもよいし、複数の流路10を配置する際には、一部の導入口11が上記分析対象物に接して残部の導入口11が上記分析対象物と離間するように配置してもよい。上記分析対象物と離間して配置される複数の導入口11における上記分析対象物からの距離は、全て等距離であってもよいし、全てが異なる距離であってもよいし、一部の導入口11を等距離にして残部の導入口11を異なる距離にしてもよい。電池が上記解放部を有するものであれば、少なくとも1つの流路の導入口を上記解放部に近接または当接させて配置してもよい。
【0040】
上記配置する工程は、流路10をガス分析器20に接続する手順を有する。上記接続する手順では、複数の流路10を途中で合流させて一つのガス分析器20に接続してもよいし(図2および図4参照)、流路10を途中で分岐させて複数のガス分析器20に接続してもよい(図3参照)。流路10とガス分析器20とを一対一で接続してもよい(図1および図5参照)。一対一で接続した流路10およびガス分析器20と、複数の流路10を接続した一つのガス分析器20と、一つの流路10を接続した複数のガス分析器20とは、混在してもよい(図6参照)。
【0041】
流路10は、上記分析対象物とガス分析器20との間で直線的に配置してもよいし、湾曲するように配置してもよいし、部分的に湾曲または屈曲させて配置してもよい。
【0042】
流路10における導入口11と電池Bとは開放環境下に配置されるとよい。すなわち、ガスが自由に噴出できる環境下に流路10の導入口11と上記分析対象物とが配置されるとよい。換言すれば、導入口11と上記分析対象物とが、ガスを少なくとも一時的に滞留(貯留)させる環境に配置されないとよい。例えば、ガスを少なくとも一時的に滞留させるための空間を形成するための部材(ケーシング)などの中に上記分析対象物を収容すると、噴出したガスが上記部材内に一時的に滞留し、上記ガスの成分、濃度などが均一化されるおそれがある。また、噴出しているガスの噴出方向、噴出圧力などが規制されるおそれがあり、上記ガスの一部が上記部材内に付着するおそれがある。このため、噴出するガスを噴出開始と同時に連続的に捕捉できないおそれがある。導入口11と上記分析対象物とを開放環境下に配置することで、噴出するガスを噴出開始と略同時に連続的に捕捉して導入でき、経時的な分析を容易に行うことができる。上記開放環境とは、上記分析対象物から噴出したガスが自由に拡散できる環境を意味する。換言すれば、上記分析対象物から噴出したガスが滞留しない環境である。例えば、平面視で上記分析対象物の四方に壁を配置し、上記分析対象物の上方にガスが噴出する(上記分析対象物の上方に流路を配置する)ことは「開放環境下」の範疇である。
【0043】
上記配置する工程は、流路10に固体物を捕集するフィルタ40を配置する手順、流路10の内部を負圧にする負圧器30を配置する手順、および流路10の内部を加温する加温器を配置する手順の少なくとも一つを有してもよい。上記フィルタ40を配置する手順、上記負圧器30を配置する手順、および上記加温器を配置する手順(以下、これらを3つの配置手順という)のそれぞれまたはいずれかは、流路10を電池の周囲に配置する前に行ってもよく、流路10を電池の周囲に配置した後に行ってもよい。流路10を配置する前に行う場合は、準備した流路10に上記3つの配置手順のそれぞれまたはいずれかを行ってもよく、上記3つの配置手順のそれぞれまたはいずれかが行なわれた流路10を準備してもよい。
【0044】
〔発生させる工程〕
電池Bに異常を発生させる方法としては、電池Bにガスを噴出させる方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、過充電による自己発熱あるいは加熱器での加熱によって熱暴走させること、釘刺しなどによる穴開けあるいは内部に導電性の異物を混入することによって短絡させること、塩水などに電池を浸付けして水の電気分解(化学反応)をさせること、衝撃を加えて損傷させることなどが挙げられる。このようにすることで、電池Bに異常を発生させてガスを噴出させることができる。電池Bの複数の箇所から上記ガスを噴出させてもよい。
【0045】
〔導入させる工程〕
導入させる工程では、異常が発生した電池Bから噴出するガスを流路10内に経時的に導入させる。複数の流路10を上記分析対象物の周囲に配置することで、噴出したガスを導入する確実性を向上できる。複数の流路10は、その全部が噴出したガスを導入してもよく、一部がガスを導入してもよい。
【0046】
〔分析する工程〕
分析する工程では、流路10に導入されたガスを複数のガス分析器20で分析する。電池Bから噴出したガスは、一つの流路10で導入されたガスであっても成分濃度が経時的に変化することがあり、複数の流路10と複数のガス分析器20を配置した場合では、捕捉された位置(ガスを導入した流路10ごと)によって異なる成分が検出されることがある。当該分析方法は、流路10で連続的に捕捉したガスをガス分析器20で分析するため、上記成分の経時的な変化を分析することができ、複数の流路10と複数のガス分析器20を配置した場合では、流路10ごとの経時的な成分変化の異同を容易に分析することができる。また、当該分析方法は、一時的に滞留させたガスを捕集して分析するのではなく、流路10で上記分析対象物から直接的かつ連続的にガスを導入しているため、上記ガスの噴出開始からの経時的な分析を容易に行うことができる。
【0047】
上記分析する工程で、電池Bから噴出したガス中の特定成分を分析してもよい。すなわち、例えば上記ガスに含まれている成分を特定するための分析をしてもよいが、上記ガスに含まれている成分が予め特定できている場合は、その特定成分の経時的な変化(例えば、濃度の変化)などを分析してもよい。上記特定成分としては、上記ガス中に含まれる成分であれば特に限定されるものではなく、例えば、全固体電池の燃焼などによって発生することがある硫化水素、一酸化炭素などが挙げられる。
【0048】
当該分析方法および当該分析装置は、電池から噴出するガスを一時的に滞留させる部材(ケーシングなど)を用いていないため、上記ガスの経時的な変化を容易に分析できると共に、分析コストを低減することができ、分析場所(当該分析装置を設置する場所)を選ばず、上記製品のような比較的大きな対象物であっても分析の対象物とすることができる。つまり、上記ケーシングなどがある試験施設に、上記分析対象物および当該分析装置を持ち込む必要がなく、上記分析対象物がある場所に当該分析装置を持ち込むことでガスの分析を行うことができる。当該分析方法および当該分析装置は、上記ケーシングなどを用いていないため、ケーシング内に滞留したガスを分析器に搬送するためのキャリアガス、およびキャリアガスを貯留するタンクなどを準備する必要がなく、簡易かつ低コストで上記ガスを分析できる。
【0049】
電池単体よりも電池が集積した電池モジュール、電池パック、あるいはこれらを組み込んだ製品(例えば、自動車など)のように、電池が実際に使用される状況に近い比較的大型の分析対象物を測定するニーズがある。当該分析方法および当該分析装置は、上記ケーシングなどを用いていないため、上記大型の分析対象物であっても容易に分析対象とすることができる。また、離間して配置した複数の流路と、複数の分析器とを用いた当該分析装置を使うと、ガスの発生場所によるガス中の成分の種類、濃度、流路に導入した(分析器で分析した)タイミングなどの異同を容易に明らかでき、ガスを導入した場所による違いを明らかにすることの容易性を向上でき、上記複数の流路と上記複数の分析器とを一対一で接続することで流路ごとの違いをより精度よく分析できる。当該分析方法および当該分析装置は、電池単体の分析をしてもよく、実際の使用状況に近い電池パック、電池モジュールあるいは製品から上記ガスを取り込むことで電池から噴出されたガスを実際の使用状況に近い分析を行うこともできる。
【0050】
[その他の実施形態]
上記実施形態は、本発明の構成を限定するものではない。従って、上記実施形態は、本明細書の記載および技術常識に基づいて上記実施形態各部の構成要素の省略、置換または追加が可能であり、それらは全て本発明の範囲に属するものと解釈されるべきである。
【0051】
上記フィルタ、上記負圧器および上記加温器は、必須の構成ではなく、いずれかが配置されなくてもよく、全部が配置されなくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本開示の分析方法は、電池から噴出するガスの経時的な分析ができるため、電池の安全性向上、品質改善などの開発に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0053】
10 流路
11 導入口
12 排気管
20 ガス分析器
30 負圧器
40 フィルタ
B 電池
【要約】
【課題】本開示は、電池から噴出するガスの経時的な分析を容易に行うことできる分析方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本開示の一態様に係る固体物の分析方法は、ガスを導入する流路を電池の周囲に配置する工程と、上記流路が配置された上記電池に異常を発生させる工程と、異常が発生した上記電池から噴出するガスを経時的に上記流路に導入させる工程と、上記流路に導入されたガスをガス分析器で分析する工程とを備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6