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特許7592923太陽光発電システムの設置方法及び太陽光発電システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】太陽光発電システムの設置方法及び太陽光発電システム
(51)【国際特許分類】
   H02S 10/00 20140101AFI20241125BHJP
   H10K 39/12 20230101ALI20241125BHJP
   H10K 39/15 20230101ALI20241125BHJP
   H02S 20/10 20140101ALN20241125BHJP
   H10K 30/50 20230101ALN20241125BHJP
   H10K 30/40 20230101ALN20241125BHJP
【FI】
H02S10/00
H10K39/12
H10K39/15
H02S20/10 R
H10K30/50
H10K30/40
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2024086462
(22)【出願日】2024-05-28
【審査請求日】2024-05-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】511113785
【氏名又は名称】株式会社ミライト・ワン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】新城 卓哉
(72)【発明者】
【氏名】中島 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼野 潤
【審査官】吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-156518(JP,A)
【文献】特開2007-234795(JP,A)
【文献】国際公開第2020/246074(WO,A1)
【文献】特開2002-073184(JP,A)
【文献】特開2017-220985(JP,A)
【文献】国際公開第2023/144866(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02S 10/00-99/00
H01L 31/04-31/056
H10K 30/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに電気的に直列に接続された複数の第1の太陽電池モジュールを備えた第1の太陽電池ストリングと、前記第1の太陽電池ストリングに電気的に接続されて複数の前記第1の太陽電池モジュールにより発電された直流の発電電力を交流電力に変換して送配電事業者の電力系統と連系させる第1の電力変換装置とを備えた第1の太陽光発電システムと、
互いに電気的に直列に接続された複数の透過型の第2の太陽電池モジュールを備えた第2の太陽電池ストリングと、前記第2の太陽電池ストリングに電気的に接続されて複数の前記第2の太陽電池モジュールにより発電された直流の発電電力を交流電力に変換して送配電事業者の電力系統と連系させる、前記第1の電力変換装置とは別の第2の電力変換装置とを備えた第2の太陽光発電システムと、
を有する太陽光発電システムを、
それぞれの前記第1の太陽電池モジュールが前記第2の太陽電池モジュールを透過した太陽光によって発電するように、前記第1の太陽電池ストリングの上方に前記第2の太陽電池ストリングを重ねて設置するとともに、
前記第2の太陽電池モジュールとして、矩形形状の発電領域と、前記発電領域の外側に全周に亘って設けられた非発電領域とを備えた矩形形状のものを用い、
複数の前記第2の太陽電池モジュールを、前記第2の太陽電池モジュールに垂直な方向から見て、隣り合う前記第2の太陽電池モジュールの前記発電領域が互いに連なるように配置する、ことを特徴とする太陽光発電システムの設置方法。
【請求項2】
互いに電気的に直列に接続された複数の第1の太陽電池モジュールを備えた第1の太陽電池ストリングと、前記第1の太陽電池ストリングに電気的に接続されて複数の前記第1の太陽電池モジュールにより発電された直流の発電電力を交流電力に変換して送配電事業者の電力系統と連系させる第1の電力変換装置とを備えた第1の太陽光発電システムと、
互いに電気的に直列に接続された複数の透過型の第2の太陽電池モジュールを備えた第2の太陽電池ストリングと、前記第2の太陽電池ストリングに電気的に接続されて複数の前記第2の太陽電池モジュールにより発電された直流の発電電力を交流電力に変換して送配電事業者の電力系統と連系させる、前記第1の電力変換装置とは別の第2の電力変換装置とを備えた第2の太陽光発電システムと、
を有する太陽光発電システムであって、
それぞれの前記第1の太陽電池モジュールが前記第2の太陽電池モジュールを透過した太陽光によって発電するように、前記第1の太陽電池ストリングの上方に前記第2の太陽電池ストリングが重ねて設置されているとともに、
前記第2の太陽電池モジュールが、矩形形状の発電領域と、前記発電領域の外側に全周に亘って設けられた非発電領域とを備えた矩形形状であり、
複数の前記第2の太陽電池モジュールが、前記第2の太陽電池モジュールに垂直な方向から見て、隣り合う前記第2の太陽電池モジュールの前記発電領域が互いに連なるように配置されている、ことを特徴とする太陽光発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電システムの設置方法及び太陽光発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽光発電システムとして、互いに電気的に直列に接続された複数の太陽電池モジュールを備えた太陽電池ストリングと、太陽電池ストリングに電気的に接続された電力変換装置(PCS:パワーコンディショナー)とを備え、発電電力を電力変換装置によって送配電事業者の電力系統と連系させるように構成されたものが知られている。このような太陽光発電システムは、複数の太陽電池モジュールが、それぞれ互いに上下に重ならないように設置される。
【0003】
この種の太陽光発電システムにおいては、太陽電池モジュールの経年劣化等によって発電電力が低下することになる。太陽電池モジュールは、半導体、金属など、熱膨張率の異なる材質を電気的に接合した構造であるので、日夜ないし季節毎の寒暖の繰り返しによる熱ストレスのため長期的には漸次発電能力の低下を生じる上、落雷、暴風雨等に際して部材が突発的に破損することもあり、こうした要因によって太陽電池モジュール全体として発電不良に至ることは不可避である。
【0004】
一方、近年、ペロブスカイト結晶を発電層とする新たな太陽電池が開発されている(例えば、非特許文献1参照)。ペロブスカイト太陽電池は、例えば樹脂基板上に塗布工程や印刷工程によって作製が可能であるため、シリコン系太陽電池に対して低コストでの製造が可能であり、また、シリコン系太陽電池よりも軽量でフレキシビリティ(可撓性)を有する製品も作製可能であることから、様々な用途への適用が期待されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】宮坂 力、「ペロブスカイト型太陽電池の登場」、現代化学、株式会社東京化学同人、2014年2月18日、2014年3月号、P24~P32
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の設置方法で設置された太陽光発電システムでは、複数の太陽電池モジュールから電力変換装置に供給される発電電力は、それぞれの太陽電池モジュールのエネルギー変換効率に制約されるため、何れのタイプの太陽電池モジュールを用いた場合であっても、当該太陽電池モジュールのままでは太陽光発電システムの、単位面積当たりの太陽光エネルギーの電力への変換率(エネルギー利用率)を向上することができない、という問題があった。
【0007】
また、既設の太陽光発電システムの発電電力が、太陽電池モジュールの経年劣化等によって低下した場合に、その低下した分の電力を補償することは困難であるという問題があった。
【0008】
本発明は、前述の問題点に鑑みて提案されたものであり、その目的とするところは、単位面積当たりの太陽光エネルギーの電力への変換率を向上することが可能であり、且つ、経年劣化等によって低下した分の電力を容易に補償することが可能な太陽光発電システムの設置方法及び太陽光発電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の太陽光発電システムの設置方法は、互いに電気的に直列に接続された複数の第1の太陽電池モジュールを備えた第1の太陽電池ストリングと、前記第1の太陽電池ストリングに電気的に接続されて複数の前記第1の太陽電池モジュールにより発電された直流の発電電力を交流電力に変換して送配電事業者の電力系統と連系させる第1の電力変換装置とを備えた第1の太陽光発電システムと、互いに電気的に直列に接続された複数の透過型の第2の太陽電池モジュールを備えた第2の太陽電池ストリングと、前記第2の太陽電池ストリングに電気的に接続されて複数の前記第2の太陽電池モジュールにより発電された直流の発電電力を交流電力に変換して送配電事業者の電力系統と連系させる、前記第1の電力変換装置とは別の第2の電力変換装置とを備えた第2の太陽光発電システムと、を有する太陽光発電システムを、それぞれの前記第1の太陽電池モジュールが前記第2の太陽電池モジュールを透過した太陽光によって発電するように、前記第1の太陽電池ストリングの上方に前記第2の太陽電池ストリングを重ねて設置するとともに、前記第2の太陽電池モジュールとして、矩形形状の発電領域と、前記発電領域の外側に全周に亘って設けられた非発電領域とを備えた矩形形状のものを用い、複数の前記第2の太陽電池モジュールを、前記第2の太陽電池モジュールに垂直な方向から見て、隣り合う前記第2の太陽電池モジュールの前記発電領域が互いに連なるように配置する、ことを特徴とする。
【0014】
本発明の太陽光発電システムは、互いに電気的に直列に接続された複数の第1の太陽電池モジュールを備えた第1の太陽電池ストリングと、前記第1の太陽電池ストリングに電気的に接続されて複数の前記第1の太陽電池モジュールにより発電された直流の発電電力を交流電力に変換して送配電事業者の電力系統と連系させる第1の電力変換装置とを備えた第1の太陽光発電システムと、互いに電気的に直列に接続された複数の透過型の第2の太陽電池モジュールを備えた第2の太陽電池ストリングと、前記第2の太陽電池ストリングに電気的に接続されて複数の前記第2の太陽電池モジュールにより発電された直流の発電電力を交流電力に変換して送配電事業者の電力系統と連系させる、前記第1の電力変換装置とは別の第2の電力変換装置とを備えた第2の太陽光発電システムと、を有する太陽光発電システムであって、それぞれの前記第1の太陽電池モジュールが前記第2の太陽電池モジュールを透過した太陽光によって発電するように、前記第1の太陽電池ストリングの上方に前記第2の太陽電池ストリングが重ねて設置されているとともに、前記第2の太陽電池モジュールが、矩形形状の発電領域と、前記発電領域の外側に全周に亘って設けられた非発電領域とを備えた矩形形状であり、複数の前記第2の太陽電池モジュールが、前記第2の太陽電池モジュールに垂直な方向から見て、隣り合う前記第2の太陽電池モジュールの前記発電領域が互いに連なるように配置されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、単位面積当たりの太陽光エネルギーの電力への変換率を向上することが可能であり、且つ、経年劣化等によって低下した分の電力を容易に補償することが可能な太陽光発電システムの設置方法及び太陽光発電システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る太陽光発電システムの設置方法により設置された第1の実施形態に係る太陽光発電システムの構成を概略で示す図である。
図2図1に示す第1の太陽電池モジュールの構成を示す図である。
図3図1に示す第1の太陽電池ストリングの構成を示す図である。
図4図1に示す第2の太陽電池モジュールの構成を示す図である。
図5図4に示す第2の太陽電池モジュールの断面構造を示す図である。
図6図1に示す太陽光発電システムにおける、複数の第1の太陽電池モジュール及び複数の第2の太陽電池モジュールの配置の一態様を示す図である。
図7図6に示す複数の第1の太陽電池モジュール及び複数の第2の太陽電池モジュールの配置の一態様を、図6における矢視Aから見た図である。
図8】第1の太陽電池ストリングの上方に第2の太陽電池ストリングを設置、固定する方法の一態様を示す図である。
図9】各波長における太陽光スペクトルの放射照度と各種の太陽電池の光吸収の相対感度との関係を示す図である。
図10】変形例に係る太陽光発電システムの構成を概略で示す図である。
図11】他の変形例に係る太陽光発電システムの構成を概略で示す図である。
図12図11に示す他の変形例に係る太陽光発電システムにおける、複数の第1の太陽電池モジュール、複数の第2の太陽電池モジュール及び複数の第3の太陽電池モジュールの配置の一態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の太陽光発電システムの設置方法は、互いに電気的に直列に接続された複数の第1の太陽電池モジュールを備えた第1の太陽電池ストリングと、前記第1の太陽電池ストリングに電気的に接続され、第1の太陽電池ストリングからの直流電力を交流電力に変換する第1の電力変換装置とを備えた第1の太陽光発電システムと、互いに電気的に直列に接続された複数の透過型の第2の太陽電池モジュールを備えた第2の太陽電池ストリングと、前記第2の太陽電池ストリングに電気的に接続され、第2の太陽電池ストリングからの直流電力を交流電力に変換する第2の電力変換装置とを備えた第2の太陽光発電システムと、を有する太陽光発電システムを、それぞれの前記第1の太陽電池モジュールが前記第2の太陽電池モジュールを透過した太陽光によって発電するように、前記第1の太陽電池ストリングの上方に前記第2の太陽電池ストリングを重ねて設置することを特徴とする太陽光発電システムの設置方法である。
【0022】
また、本発明の太陽光発電システムは、互いに電気的に直列に接続された複数の第1の太陽電池モジュールを備えた第1の太陽電池ストリングと、前記第1の太陽電池ストリングに電気的に接続された第1の電力変換装置とを備えた第1の太陽光発電システムと、互いに電気的に直列に接続された複数の透過型の第2の太陽電池モジュールを備えた第2の太陽電池ストリングと、前記第2の太陽電池ストリングに電気的に接続された第2の電力変換装置とを備えた第2の太陽光発電システムと、を有する太陽光発電システムであって、それぞれの前記第1の太陽電池モジュールが前記第2の太陽電池モジュールを透過した太陽光によって発電するように、前記第1の太陽電池ストリングの上方に前記第2の太陽電池ストリングが重ねて設置されていることを特徴とする太陽光発電システムである。
【0023】
本発明の太陽光発電システムは、本発明の太陽光発電システムの設置方法により設置することができる。
【0024】
第1の太陽電池モジュールとしては、太陽光を受けて発電することが可能なものであれば、種々のタイプの太陽電池を用いることができる。また、第1の太陽電池ストリングは、互いに電気的に直列に接続された複数の第1の太陽電池モジュールを備え、それぞれの第1の太陽電池モジュールが第2の太陽電池モジュールを透過した太陽光によって発電するように配置された構成であれば、複数の第1の太陽電池モジュールの配置は適宜設定可能である。
【0025】
第2の太陽電池モジュールとしては、太陽光を受けて発電することが可能なものであって、受けた太陽光の一部を透過可能な透過型のものであれば、種々のタイプの太陽電池を用いることができる。また、第2の太陽電池ストリングは、互いに電気的に直列に接続された複数の透過型の第2の太陽電池モジュールを備えた構成であれば、それぞれの第2の太陽電池モジュールの配置は適宜設定可能である。
【0026】
第1の太陽電池モジュールと第2の太陽電池モジュールは、その形状ないしサイズ、数、発電性能が互いに同一のものであってもよく、互いに相違するものであってもよい。
【0027】
さらに、第1の太陽光発電システムは、第2の太陽光発電システムを設置する時点で既に設置されていたものでもよく、第2の太陽光発電システムを設置する時点で新設されるものであってもよい。
【0028】
本発明の太陽光発電システムの設置方法ないし太陽光発電システムによれば、複数の透過型の第2の太陽電池モジュールが太陽光を受けて発電するとともに、複数の第1の太陽電池モジュールがそれぞれ透過型の第2の太陽電池モジュールを透過した太陽光によって発電することができるので、太陽光発電システムの単位面積当たりの太陽光エネルギーの電力への変換率を高めることができる。
【0029】
また、本発明の太陽光発電システムの設置方法ないし太陽光発電システムによれば、既設の太陽光発電システムの発電電力が太陽電池モジュールの経年劣化等によって低下した場合に、経年劣化等によって発電電力が低下した複数の第1の太陽電池モジュールの上に複数の透過型の第2の太陽電池モジュールを設置することにより、経年劣化等によって低下した分の電力を複数の第2の太陽電池モジュールの発電により容易に補償することができる。
【0030】
さらに、本発明の太陽光発電システムの設置方法ないし太陽光発電システムによれば、既設の太陽光発電システムを性能限界まで使用することができるとともに、既設の太陽光発電システムの使用終了後には、既設の太陽光発電システムを、その上段に設置した新たな太陽光発電システムの基板として継続使用することができるので、既設の太陽光発電システムの撤去費用を留保でき、上段の太陽光発電システムでの発電収益を既設の太陽光発電システムの更改費用に充当することができる。
【0031】
さらに、本発明の太陽光発電システムの設置方法ないし太陽光発電システムによれば、第1の太陽電池モジュールないし第2の太陽電池モジュールの単位で個別に交換が可能であるので、第1の太陽電池モジュール及び第2の太陽電池モジュールの何れか一方の発電性能が劣化した場合に、第1の太陽電池モジュール及び第2の太陽電池モジュールの発電性能の劣化が許容される何れか一方をそのまま使用し、発電性能の劣化が許容されない他方のみを交換すればよく、タンデム型太陽電池(異種発電層を一体成型した太陽電池)モジュールのように太陽電池モジュール全体を交換する必要がない。したがって、本発明の太陽光発電システムの設置方法ないし太陽光発電システムによれば、太陽光発電システムの維持費用を低減することができる。
【0032】
以下、本発明をより具体的に図面を参照しつつ例示説明する。
【0033】
図1に示す本発明の一実施形態に係る太陽光発電システム1は、本発明の一実施形態に係る太陽光発電システムの設置方法により設置されたものである。この太陽光発電システム1は、第1の太陽光発電システム10と第2の太陽光発電システム20とを有している。
【0034】
第1の太陽光発電システム10は、互いに電気的に直列に接続された複数の第1の太陽電池モジュール11を備えた第1の太陽電池ストリング12と、第1の太陽電池ストリング12に電気的に接続された第1の電力変換装置(PCS:パワーコンディショナー)13とを備えている。第1の電力変換装置13は、第1の太陽電池ストリング12の直流電力を交流電力に変換する。
【0035】
図1に示す場合では、第1の太陽電池ストリング12は、複数の第1の太陽電池モジュール11が互いに紙面横方向に並列に並べて配置された構成とされている。隣り合う第1の太陽電池モジュール11の間には隙間(例えば数mm程度)があってもよい。
【0036】
なお、第1の太陽電池ストリング12は、複数の第1の太陽電池モジュール11が互いに電気的に直列に接続されていれば、複数の第1の太陽電池モジュール11の配置は適宜変更可能である。また、図1に示す場合では、第1の太陽光発電システム10は、1つの第1の太陽電池ストリング12のみを備えた構成とされているが、これに限らず、複数の第1の太陽電池ストリング12を備えた太陽電池アレイを有する構成とすることもできる。この場合、接続箱を用いて複数の第1の太陽電池ストリング12を互いに電気的に接続し、当該接続箱を介して第1の電力変換装置13に電気的に接続する構成とすればよい。
【0037】
第1の電力変換装置13は、インバータを備えた所謂パワーコンディショナ(PCS)である。第1の電力変換装置13は、複数の第1の太陽電池モジュール11により発電された直流の発電電力を交流電力に変換して電力系統に出力する。すなわち、第1の太陽光発電システム10は、第1の電力変換装置13によって、複数の第1の太陽電池モジュール11が発電した発電電力が送配電事業者の電力系統と連系されるように構成されている。
【0038】
なお、第1の電力変換装置13は、第1の太陽光発電システム10が複数の第1の太陽電池ストリング12を備えた構成とされた場合には、全ての第1の太陽電池ストリング12の発電電力を最大にするようにMPPT(Maximum Power Point Tracking)方式により電力を制御する構成とすることができる。
【0039】
第2の太陽光発電システム20は、互いに電気的に直列に接続された複数の太陽光透過型(以下、単に透過型と記載。)の第2の太陽電池モジュール21を備えた第2の太陽電池ストリング22と、第2の太陽電池ストリング22に電気的に接続された第2の電力変換装置(PCS:パワーコンディショナー)23とを備えている。第2の電力変換装置23は、第2の太陽電池ストリング22の直流電力を交流電力に変換する。
【0040】
図1に示す場合では、第2の太陽電池ストリング22は、複数の透過型の第2の太陽電池モジュール21が互いに紙面横方向に並列に並べて配置された構成とされている。
【0041】
なお、第2の太陽電池ストリング22は、複数の透過型の第2の太陽電池モジュール21が互いに電気的に直列に接続され、且つ、後述するように、それぞれの第1の太陽電池モジュール11が透過型の第2の太陽電池モジュール21を透過した太陽光によって発電するように第1の太陽電池ストリング11の上方に配置されていれば、複数の透過型の第2の太陽電池モジュール21の配置は適宜変更可能である。また、図1に示す場合では、第2の太陽光発電システム20は、1つの第2の太陽電池ストリング22のみを備えた構成とされているが、これに限らず、複数の第2の太陽電池ストリング22を備えた太陽電池アレイを有する構成とすることもできる。この場合、接続箱を用いて複数の第2の太陽電池ストリング22を互いに電気的に接続し、当該接続箱を介して第2の電力変換装置23に電気的に接続する構成とすればよい。
【0042】
第2の電力変換装置23は、インバータを備えた所謂パワーコンディショナ(PCS)である。第2の電力変換装置23は、複数の第2の太陽電池モジュール21により発電された直流の発電電力を交流電力に変換して電力系統に出力する。すなわち、第2の太陽光発電システム20は、第2の電力変換装置23によって、複数の第2の太陽電池モジュール21が発電した発電電力が送配電事業者の電力系統と連系されるように構成されている。
【0043】
なお、第2の電力変換装置23は、第2の太陽光発電システム20が複数の第2の太陽電池ストリング22を備えた構成とされた場合には、全ての第2の太陽電池ストリング22の発電電力を最大にするようにMPPT(Maximum Power Point Tracking)方式により電力を制御する構成とすることができる。
【0044】
このように、太陽光発電システム1は、第1の太陽光発電システム10と第2の太陽光発電システム20とが、互いに別系統の太陽光発電システムとなるように構成され、両太陽光発電システムは並行運転されている。
【0045】
本実施形態に係る太陽光発電システムの設置方法は、上記構成を有する太陽光発電システム1を設置場所に設置する際に、それぞれの第1の太陽電池モジュール11が透過型の第2の太陽電池モジュール21を透過した太陽光によって発電するように、第1の太陽電池ストリング12の上方に第2の太陽電池ストリング22を重ねて設置することを特徴としている。すなわち、本発明の一実施形態に係太陽光発電システム1においては、それぞれの第1の太陽電池モジュール11が透過型の第2の太陽電池モジュール21を透過した太陽光によって発電するように、第1の太陽電池ストリング12の上方に第2の太陽電池ストリング22が重ねて設置されている。
【0046】
したがって、本実施形態に係る太陽光発電システムの設置方法により設置された太陽光発電システム1では、複数の第2の太陽電池モジュール21がそれぞれ太陽光を受けて発電することができるとともに、複数の第1の太陽電池モジュール11が、それぞれ透過型の第2の太陽電池モジュール12により発電されず当該透過型の第2の太陽電池モジュール12を透過した太陽光によって発電することができるので、太陽光発電システム1の単位面積当たりの太陽光エネルギーの電力への変換率を高めることができる。
【0047】
また、本実施形態に係る太陽光発電システムの設置方法によれば、第1の太陽光発電システム10として既設の太陽光発電システムを用いることで、第1の太陽光発電システム10の発電電力が太陽電池モジュール11の経年劣化等によって低下した場合に、経年劣化等によって発電電力が低下した複数の第1の太陽電池モジュール11を備えた第1の太陽電池ストリング12の上に、複数の透過型の第2の太陽電池モジュール21を備えた第2の太陽電池ストリング22を設置することができる。これにより、太陽電池モジュール11の経年劣化等によって低下した分の電力を複数の第2の太陽電池モジュール21の発電により容易に補償することができる。
【0048】
さらに、本実施形態に係る太陽光発電システムの設置方法によれば、既設の太陽光発電システムである第1の太陽光発電システム10を性能限界まで使用することができるとともに、既設の第1の太陽光発電システム10の使用終了後には、第1の太陽光発電システム10を、その上段に設置した新たな第2の太陽光発電システム20の基板として継続使用することができる。これにより、第1の太陽光発電システム10の撤去費用を留保できるようにして、上段の第2の太陽光発電システム20での発電収益を既設の第1の太陽光発電システム10の更改費用に充当することができる。
【0049】
さらに、本実施形態に係る太陽光発電システムの設置方法により設置された太陽光発電システム1では、第1の太陽電池モジュール11ないし第2の太陽電池モジュール21をそれぞれの単位で個別に交換できるので、第1の太陽電池モジュール10及び第2の太陽電池モジュール21の何れか一方の発電性能が劣化した場合に、第1の太陽電池モジュール11及び第2の太陽電池モジュール21の発電性能劣化が許容される一方をそのまま使用し、発電性能劣化が許容されない他方のみを交換することができる。これにより、タンデム型太陽電池(異種発電層を一体成型した太陽電池)モジュールのように太陽電池モジュール全体を交換する必要をなくして、太陽光発電システム1の維持費用を低減することができる。
【0050】
本実施形態に係る太陽光発電システムの設置方法及び太陽光発電システム1では、第1の太陽電池モジュール11として、所定の波長域で太陽光吸収感度を有するものを用い、第2の太陽電池モジュール21として、上記の所定の波長域のうちの少なくとも一部の波長域において第1の太陽電池モジュール11よりも大きい太陽光吸収感度を有するものを用いるようにしている。より具体的には、本実施形態に係る太陽光発電システムの設置方法及び本実施形態に係る太陽光発電システム1では、第1の太陽電池モジュール11として結晶シリコン型太陽電池を用いるとともに、第2の太陽電池モジュール21として透過型のペロブスカイト太陽電池を用いている。
【0051】
図2に示すように、結晶シリコン型太陽電池を用いた第1の太陽電池モジュール11は、太陽電池セル(発電素子)11aが一定の間隔(例えば数mm)をもって平面上に整列配置された構成となっている。図2に示す場合では、太陽電池モジュール11は、太陽電池セル11aが紙面縦方向に8セル、横方向に6セルが整列配置されて全体として縦長の長方形形状となっている。なお、図2においては、便宜上、1つの太陽電池セル11aにのみ符号を付している。太陽電池セル11aの裏側にはバックシート11bが配置され、バックシート11bの外側において太陽電池セル11aは矩形形状の金属フレーム11cにより支持されている。太陽電池モジュール11は、長方形形状に太陽電池セル11aが整列配置された領域の4つの角(A、B、C、C)で囲まれる領域が、太陽光を受けることで発電する発電領域となっている。
【0052】
それぞれの太陽電池モジュール11は、図3において1つの太陽電池モジュール11について例示して示すように、その内部構成として、それぞれ16個の太陽電池セル11aが8個ずつ2列に並べて配置されるとともに電気的に直列に接続された3つのセルストリング11dと、セルストリング11dを迂回する電流経路上に設けられた3つのバイパスダイオード(BD)11eと、を含んで構成される3つのクラスタ11fを有し、それぞれのクラスタ11fが互いに電気的に直列に接続された構成となっている。図3においては、太い実線により、第1の太陽電池ストリング12の発電電流の経路を示している。また、図3において点線で囲まれた電流経路は、各々の第1の太陽電池モジュール11の背面に設置されるジャンクションボックス(図示せず)に収納された3つのバイパスダイオード11eと各第1の太陽電池モジュール11とを接続する発電電流ケーブルを含んで構成されるが、これらは第1の太陽電池モジュール11の背面に位置するように施工されている。
【0053】
バイパスダイオード11eは、影や遮蔽物等によってセルストリング11dに不均一に太陽光が照射されるなどして、クラスタ11f内のセルストリング11dの発電量が相対的に低下した部分の両端電圧が同じクラスタ11f内のセルストリング11dの正常に発電している部分によって発生した発電電圧より高くなってバイパスダイオード11eの順方向電圧に等しくなったときに作動し、セルストリング11dを迂回するように発電電流をバイパスさせて、セルストリング11dにホットスポットが発生することを回避するためのものである。したがって、正常な太陽電池モジュール11の全体に均一に太陽光が照射されると、各太陽電池セル11aの発電によって生じる起電力の合計がバイパスダイオード11eの順方向電圧以上となるので、図3中に太線で示すように、発電電流はバイパスダイオード11eを通らずに各セルストリング11dを順に流れることになる。
【0054】
なお、太陽電池モジュール11を構成するクラスタ11fの数及びクラスタ11fを構成する太陽電池セル11aの数はそれぞれ適宜変更可能である。
【0055】
図4に示すように、透過型のペロブスカイト太陽電池を用いた第2の太陽電池モジュール21は、矩形形状の発電領域21aと、発電領域21aの外側に全周に亘って設けられた非発電領域21bとを備えた矩形形状のシート状となっている。
【0056】
図5に示すように、透過型のペロブスカイト太陽電池を用いた第2の太陽電池モジュール21は、基板21cと、基板21cの上に設けられた複数のセル21dとを有している。それぞれのセル21dは、透明電極21e、電子輸送層21f、ペロブスカイト発電層21g、正孔輸送層21h、裏面電極21iがこの順で積層された構成を有している。
【0057】
基板21cは、比較的耐熱温度の高いポリマーフィルムであるポリエチレンナフタレート(PEN)などの合成樹脂材料やガラスなど、各種太陽電池が感度を有する波長域において透明(太陽光吸収がほとんどない)として扱うことが可能な材料で形成されている。基板21cをポリマーフィルムとする場合には、ガラス基板を採用する場合に比べて、2の太陽電池モジュール21を軽量かつフレキシビリティ(可撓性)を有するものとすることができる。一方、基板21cとしてガラス基板を採用する場合には、フレキシビリティはないが、風圧等への耐荷重性を有するものとすることができる。
【0058】
透明電極21eとしては、例えば透明導電膜(ITO)を用いることができる。また、電子輸送層21fとしては、例えば酸化チタン(TiO)を用いることができる。さらに、ペロブスカイト発電層21gとしては、例えば化学式CHNHPblで表される有機半導体材料を用いることができる。さらに、正孔輸送層21hは、太陽光による励起によって生じた正孔を正極へ移動させる機能を有し、例えばSpiro-OMeTADを用いることができる。電子輸送層21f及び正孔輸送層21hは、ともに基板21cと同様に各種太陽電池が感度を有する波長域では透明(太陽光吸収がほとんどない)として扱うことが可能である。さらに、裏面電極21iとしては、例えば透明な導電性ガラス(FTO:フッ素ドープ酸化錫)で形成された透明導電性酸化物(TCO)を用いることができる。
【0059】
透過型のペロブスカイト太陽電池を用いた第2の太陽電池モジュール21は、例えば、基板21c上にパターニングした透明電極21eの層上への電荷輸送層(正孔輸送層21h及び電子輸送層21f)とペロブスカイト発電層21gの多層製膜、電荷輸送層とペロブスカイト発電層21gを分離するためのスクライブ加工、裏面電極21iの製膜及びその電極分離によってセル21dが電気的に直列接続される各工程を経て形成される。基板21c側の透明電極21eの層からスクライブ加工を行ってセル21dを分離して直列接続構造とするのは、薄膜型太陽電池で一般的に採用されるように、第2の太陽電池モジュール21の直列抵抗を抑制するためである。
【0060】
図5に太線矢印で示すように、太陽光が基板21cの側から入射してセル21dのペロブスカイ発電層21gに達すると、ペロブスカイト発電層21gが有する半導体特性によって荷電担体(電子と正孔)が光励起によって生成され、電子は電子輸送層21fへ、正孔は正孔輸送層21hへそれぞれ移動する。電子は電子輸送層21fを経て基板21c側の透明電極21eへ移動し、さらに負極側の電極へと移動し、隣接するセル21dによって生成された正孔と結合する。このようにして、図5の太線矢印で示されるように光励起で生成した電子が次々と隣接するセル21dへ移送されることで第2の太陽電池モジュール21の負極側へ移動する。電子の流れと反対方向が発電電流の方向であるから、図5に示す第2の太陽電池モジュール21の負極側から正極側へ発電電流が流れることになる。
【0061】
なお、第2の太陽電池モジュール21の発電領域21aとは、第2の太陽電池モジュール21のセル21dが存在する領域である。一方、第2の太陽電池モジュール21の非発電領域21bとは、第2の太陽電池モジュール21においてペロブスカイト発電層21gが存在しない基板21cで構成される領域である。したがって、非発電領域21bでは発電しないので太陽光の吸収がなく、透光性を有する。
【0062】
このように、透過型のペロブスカイト太陽電池を用いた第2の太陽電池モジュール21は、正負の両方の電極として透明なものが用いられている。これにより、第2の太陽電池モジュール21は太陽光を透過可能な透過型となっている。
【0063】
なお、第2の太陽電池モジュール21の発電領域21aと非発電領域21bはともに透光性を有するが、発電領域21aはペロブスカイト太陽電池の光吸収波長域の太陽光を吸収し、非発電領域21bは太陽光を単に透過するので、発電領域21aと非発電領域21bとでは太陽光の透過率が異なっている。
【0064】
第2の太陽電池モジュール21を構成するペロブスカイト太陽電池としては、裏面電極21iとして金や銀などの金属が用いられたものであっても、裏面電極21iが太陽光を透過可能な透光性を有する膜厚、構造を有する場合には、透光性を有する第2の太陽電池モジュール21として用いることができる。
【0065】
複数の第2の太陽電池モジュール21として上記構成の透過型のペロブスカイト太陽電池を用いた場合には、複数の第2の太陽電池モジュール21を、第2の太陽電池モジュール21に垂直な方向(図7における紙面に垂直な方向)から見て、隣り合う第2の太陽電池モジュール21の発電領域21aが互いに隙間なく連なるように配置するのが好ましい。
【0066】
より具体的には、図6図7に示すように、隣り合う第2の太陽電池モジュール21の発電領域21aが互いに連続するように、これらの第2の太陽電池モジュール21を、非発電領域21bを含む外周縁において互いに重ねて設置する。第2の太陽電池モジュール21が上下に複数段に配置される場合には、上下左右に隣接する第2の太陽電池モジュール21の発電領域21aが互いに連続するように、これらの第2の太陽電池モジュール21を、非発電領域21bを含む外周縁において互いに重ねて設置する。これにより、複数の第2の太陽電池モジュール21の発電領域21aが連続して構成された全発電領域が、第1の太陽電池ストリング12に含まれる複数の第1の太陽電池モジュール11の全発電領域を覆うようにする。なお、複数の第2の太陽電池モジュール21の発電領域21aが連続して構成された全発電領域が覆う第1の太陽電池モジュール11の領域に非発電領域が含まれていてもよい。
【0067】
このような構成とすることにより、複数の第2の太陽電池モジュール21を透過した太陽光が複数の第1の太陽電池モジュール11のそれぞれに均一に、すなわち一様な太陽光として照射されるようにすることができる。したがって、第1の太陽電池ストリング12として図3に示す構成のものを採用しても、第1の太陽電池ストリング12を構成する第1の太陽電池モジュール11においてセルストリング11dにホットスポットが発生させることなく、第1の太陽光発電システム10を効率よく作動させることができる。
【0068】
なお、第1の太陽電池モジュール11の発電領域よりも第2の太陽電池モジュール21の発電領域21aが大きい場合には、第1の太陽電池モジュール11の発電領域の全体が第2の太陽電池モジュール21の発電領域21aの範囲内となるように設置すればよい。
【0069】
図8は、第1の太陽電池ストリング12の上方に第2の太陽電池ストリング22を設置、固定する方法の一態様を示す図である。図8に示すように、結晶シリコン型太陽電池を用いた第1の太陽電池モジュール11はスーパーストレート(Superstrate)構造となっている。すなわち、第1の太陽電池モジュール11は、受光面側にガラスなどの透明基板で形成された支持板11gを有し、支持板11gの内側に透明な充填材料(不図示)と裏面シート11hを用いてセルストリング11dを封入後、周囲をアルミフレーム等の枠体11iで枠組した構成となっている。枠体11iは、上記した金属フレーム11cに対応する。支持板11gを構成する透明基板としては、長波長光を活用するシリコン系太陽電池に適した熱強化白板ガラスなどを採用することができる。本実施形態では、このような構成の第1の太陽電池モジュール11の枠体11iの上部に第2の太陽電池モジュール21の非発電領域21bが配置されるように第1の太陽電池ストリング12の上方に第2の太陽電池ストリング22を重ねて配置し、枠体11iと第2の太陽電池モジュール21の非発電領域21bの一部とをクランプ式固定具30によって挟み込むことで、第1の太陽電池ストリング12の上方に第2の太陽電池ストリング22を固定するようにしている。クランプ式固定具30は、第1の太陽電池ストリング12と第2の太陽電池ストリング22とをスライドさせて挿入させ、上部に設けられたスクリュー型押圧機構31で第2の太陽電池モジュール21の非発電領域21bの部分を第1の太陽電池モジュール11の枠体11iに挟み込む構成となっている。
【0070】
なお、クランプ式固定具30は、例えば、互いに隣接する第1の太陽電池モジュール11の互いに接しない辺に取り付けるなど、風圧性、撤去容易性を考慮しつつ、枠体11iと第2の太陽電池モジュール21の非発電領域21bの一部とを挟み込むことが可能な適宜の位置に設ければよい。
【0071】
このような構成により、第1の太陽電池ストリング12の上方に第2の太陽電池ストリング22を容易に設置することができるとともに、第1の太陽電池ストリング12を構成する複数の第1の太陽電池モジュール11と第2の太陽電池ストリング22を構成する複数の第2の太陽電池モジュール21との間隔を狭めて、第2の太陽電池モジュール21を透過した太陽光を、より効率よく第1の太陽電池モジュール11に照射させることができいる。
【0072】
なお、第1の太陽電池ストリング12の上方に第2の太陽電池ストリング21を設置、固定する際には、第2の太陽電池モジュール21の電極線と電力ケーブルを接続する端子ボックスは、第1の太陽電池ストリング12の発電領域を遮光しないように、例えば、第1の太陽電池ストリング12の表面から外れるように適宜第2の太陽電池モジュール21の配向と配置を考慮して設置すればよい。
【0073】
上記の通り、本実施形態に係る太陽光発電システムの設置方法及び本実施形態に係る太陽光発電システム1では、第1の太陽電池モジュール11として、所定の波長域で太陽光吸収感度を有する結晶シリコン型太陽電池を用いるとともに、第2の太陽電池モジュール21として、上記の所定の波長域のうちの少なくとも一部の波長域において結晶シリコン型太陽電池よりも大きい太陽光吸収感度を有する透過型のペロブスカイト太陽電池を用いるようにしている。
【0074】
ここで、図9に示すように、太陽光スペクトルの波長領域において、結晶シリコン型の太陽電池、CIS型の太陽電池(銅(Cu)、インジウム(In)、セレン(Se)の3元素を主な原料とする化合物半導体太陽電池)は、それぞれ400nm~1200nmの波長域で太陽光吸収感度を有している。
【0075】
これに対し、ペロブスカイト太陽電池は、概ね350nm~800nmの波長域で太陽光吸収感度を有している。350nm~800nmの波長域は、太陽光の放射照度が他の波長域よりも大きな領域である。また、ペロブスカイト太陽電池の光吸収波長域においては、ペロブスカイト太陽電池の太陽光吸収感度は、結晶シリコン型の太陽電池及びCIS型の太陽電池の太陽光吸収感度よりも大きくなっている。
【0076】
したがって、ペロブスカイト太陽電池を用いた第2の太陽電池モジュール21により、放射照度が比較的大きい概ね350nm~800nmの波長域の太陽光を効果的に電力に変換することができるとともに、結晶シリコン型太陽電池を用いた第1の太陽電池モジュール11により、ペロブスカイト太陽電池を用いた第2の太陽電池モジュール21を透過してきた400nm~800nmの波長域の太陽光に加えて、ペロブスカイト太陽電池を用いた第2の太陽電池モジュール21では有効に電力に変換することができずに第2の太陽電池モジュール21を透過してきた800nm~1200nmの波長域の太陽光を効果的に電力に変換することができる。したがって、広い波長域の太陽光を効率よく電力に変換することができるようにして、太陽光発電システム1の単位面積当たりの太陽光エネルギーの電力への変換率をさらに向上させることができる。
【0077】
本実施形態に係る太陽光発電システム1では、第1の太陽電池モジュール10として結晶シリコン型の太陽電池を用いるようにしているが、これに限らず、第1の太陽電池モジュール10として、例えばCIS型の太陽電池などの他のタイプの非透過型の太陽電池を用いてもよく、例えば透過型のペロブスカイト太陽電池などの透過型の太陽電池を用いてもよい。
【0078】
また、本実施形態に係る太陽光発電システム1では、第2の太陽電池モジュール20として透過型のペロブスカイト太陽電池を用いるようにしているが、これに限らず、ペロブスカイト太陽電池以外の他の透過型の太陽電池を用いてもよい。
【0079】
図10に変形例として示すように、本実施形態に係る太陽光発電システムの設置方法は、第1の太陽光発電システム10を構成する第1の太陽電池ストリング12の上方に、複数の第2の太陽光発電システム20に対応した複数の第2の太陽電池ストリング22を複数段に重ねて設置する構成とすることもできる。すなわち、本実施形態に係る太陽光発電システム1は、1つの第1の太陽光発電システム10と複数の第2の太陽光発電システム20とを有し、第1の太陽光発電システム10を構成する第1の太陽電池ストリング12の上方に、複数の第2の太陽光発電システム20に対応した複数の第2の太陽電池ストリング22が複数段に重ねて設置された構成とすることもできる。
【0080】
図10には、第1の太陽光発電システム10を構成する第1の太陽電池ストリング12の上方に、2つの第2の太陽光発電システム20に対応した2つの第2の太陽電池ストリング22が重ねて設置された場合を示す。なお、第1の太陽光発電システム10を構成する第1の太陽電池ストリング12の上方に、3つ以上の第2の太陽光発電システム20に対応した3つ以上の第2の太陽電池ストリング22が重ねて設置された構成とすることもできる。
【0081】
この変形例においても、本実施形態に係る太陽光発電システムの設置方法により、それぞれの第1の太陽電池モジュール11が複数段の透過型の第2の太陽電池モジュール22のそれぞれを透過した太陽光によって発電するように、第1の太陽電池ストリング12の上方に複数段の第2の太陽電池ストリング22が重ねて設置された構成とされる。
【0082】
このような変形例の構成では、上段の透過型の第2の太陽電池モジュール21によって太陽光を電力に変換し、上段の第2の太陽電池モジュール21を透過した太陽光を下段の透過型の第2の太陽電池モジュール21によって電力に変換するとともに、下段の第2の太陽電池モジュール21を透過した太陽光を第1の太陽電池モジュール11によって電力に変換することができる。これにより、太陽光発電システム1の単位面積当たりの太陽光エネルギーの電力への変換率をより高めることができる。
【0083】
図10に示す変形例においては、第1の太陽光発電システム10の第1の太陽電池モジュール11として非透過型のペロブスカイト太陽電池が用いられているが、これに限らず、透過型のペロブスカイト太陽電池、結晶シリコン太陽電池、CIS太陽電池などの他のタイプの太陽電池を用いてもよい。
【0084】
また、図10に示す変形例においては、複数段の第2の太陽光発電システム20の第2の太陽電池モジュール21として、それぞれ透過型のペロブスカイト太陽電池が用いられているが、ペロブスカイト太陽電池以外の他の透過型の太陽電池を用いてもよい。
【0085】
図10に示す変形例に係る太陽光発電システム1においても、複数段の第2の太陽光発電システム20における複数の第2の太陽電池モジュール21の配置は、それぞれ図6に示す第2の太陽電池モジュール21の配置と同様の配置とすることができる。この場合、非透過型のペロブスカイト太陽電池で構成された第1の太陽電池モジュール11は、発電領域が互いに連続する配置とする必要はない。
【0086】
図11図12に他の変形例として示すように、本実施形態に係る太陽光発電システムの設置方法は、互いに電気的に直列に接続された複数の第3の太陽電池モジュール41を備えた第3の太陽電池ストリング42と、第3の太陽電池ストリング42に電気的に接続された第3の電力変換装置43とを備えた第3の太陽光発電システム40を、それぞれの第3の太陽電池モジュール41が第1の太陽電池モジュール11とは反対側を向くように、則ち、第3の太陽電池モジュール41への太陽光が第1の太陽電池モジュール11への太陽光とは反対向きになるように、第1の太陽電池ストリング12の下方に第3の太陽電池ストリング42を重ねて設置する構成とすることもできる。すなわち、本実施形態に係る太陽光発電システム1は、互いに電気的に直列に接続された複数の第3の太陽電池モジュール41を備えた第3の太陽電池ストリング42と、第3の太陽電池ストリング42に電気的に接続された第3の電力変換装置43とを備えた第3の太陽光発電システム40をさらに有し、それぞれの第3の太陽電池モジュール41が第1の太陽電池モジュール11とは反対側を向くように、第1の太陽電池ストリング12の下方に第3の太陽電池ストリング42が重ねて設置された構成とすることもできる。
【0087】
第1の太陽電池モジュール11の下方に配置された第3の太陽電池モジュール41は、基板41aが下方を向くように、第1の太陽電池モジュール11とは反対側すなわち下方に向けて配置されているので、太陽光発電システム1の周辺で反射した太陽光の反射光は、第3の太陽電池モジュール41に下方側から入射することができる。
【0088】
このように、図11図12に示す他の変形例においては、第1の太陽電池モジュール11の上方に透過型の第2の太陽電池モジュール21が配置されるとともに第1の太陽電池モジュール11の下方に第1の太陽電池モジュール11とは反対向き(背中合わせ)に第3の太陽電池モジュール41が配置されるので、透過型の第2の太陽電池モジュール21によって太陽光を電力に変換し、透過型の第2の太陽電池モジュール21を透過した太陽光を第1の太陽電池モジュール11によって電力に変換するとともに、第1の太陽電池モジュール11とは反対向きの第3の太陽電池モジュール41によって、太陽光発電システム1の周辺で反射した太陽光の反射光を電力に変換することができるので、太陽光発電システム1の単位面積当たりの太陽光エネルギーの電力への変換率をより高めることができる。
【0089】
図11図12に示す他の変形例においては、第1の太陽光発電システム10の第1の太陽電池モジュール11として非透過型のペロブスカイト太陽電池が用いられているが、これに限らず、透過型のペロブスカイト太陽電池、結晶シリコン太陽電池、CIS太陽電池などの他のタイプの太陽電池を用いてもよい。
【0090】
また、図11図12に示す他の変形例においては、第2の太陽光発電システム20の第2の太陽電池モジュール21として透過型のペロブスカイト太陽電池が用いられているが、ペロブスカイト太陽電池以外の他の透過型の太陽電池を用いてもよい。
【0091】
さらに、図11図12に示す他の変形例においては、第3の太陽光発電システム40の第4の太陽電池モジュール41として非透過型のペロブスカイト太陽電池が用いられているが、これに限らず、透過型のペロブスカイト太陽電池、結晶シリコン太陽電池、CIS型の太陽電池などの他のタイプの太陽電池を用いてもよい。
【0092】
さらに、図11図12に示す他の変形例においても、図10に示す変形例と同様に、第1の太陽光発電システム10を構成する第1の太陽電池ストリング12の上方に、複数の第2の太陽光発電システム20に対応した複数の第2の太陽電池ストリング22を重ねて設置する構成とすることもできる。
【0093】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0094】
1 太陽光発電システム
10 第1の太陽光発電システム
11 第1の太陽電池モジュール
11a 太陽電池セル
11b バックシート
11c 金属フレーム
11d セルストリング
11e バイパスダイオード
11f クラスタ
11g 支持板
11h 裏面シート
11i 枠体
12 第1の太陽電池ストリング
13 第1の電力変換装置
20 第2の太陽光発電システム
21 第2の太陽電池モジュール
21a 発電領域
21b 非発電領域
21c 基板
21d セル
21e 透明電極
21f 電子輸送層
21g ペロブスカイト発電層
21h 正孔輸送層
21i 裏面電極
22 第2の太陽電池ストリング
23 第2の電力変換装置
30 クランプ式固定具
31 スクリュー型押圧機構
40 第3の太陽光発電システム
41 第3の太陽電池モジュール
41a 基板
42 第3の太陽電池ストリング
43 第3の電力変換装置
【要約】
【課題】単位面積当たりの太陽光エネルギーの電力への変換率を向上することが可能であり、且つ、経年劣化等によって低下した分の電力を容易に補償することが可能な太陽光発電システムの設置方法及び太陽光発電システムを提供することである。
【解決手段】第1の太陽電池モジュール11を備えた第1の太陽電池ストリング12と第1の電力変換装置13とを備えた第1の太陽光発電システム10と、透過型の第2の太陽電池モジュール21を備えた第2の太陽電池ストリング22と第2の電力変換装置23とを備えた第2の太陽光発電システム20とを有する太陽光発電システム1を、第1の太陽電池モジュール11が第2の太陽電池モジュール21を透過した太陽光によって発電するように第1の太陽電池ストリング12の上方に第2の太陽電池ストリング22を重ねて設置する太陽光発電システムの設置方法及び太陽光発電システム1。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12