(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】導電性フィルム
(51)【国際特許分類】
H01B 5/14 20060101AFI20241125BHJP
H01B 13/00 20060101ALI20241125BHJP
【FI】
H01B5/14 A
H01B13/00 503B
(21)【出願番号】P 2024145190
(22)【出願日】2024-08-27
【審査請求日】2024-08-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003812
【氏名又は名称】弁理士法人いくみ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】碓井 圭太
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 帆奈美
【審査官】間宮 嘉誉
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-174140(JP,A)
【文献】特開2000-59075(JP,A)
【文献】特開2015-125629(JP,A)
【文献】特開2017-220150(JP,A)
【文献】特開2018-51784(JP,A)
【文献】特開2018-174051(JP,A)
【文献】特開2008-147356(JP,A)
【文献】特開2019-83020(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0224960(US,A1)
【文献】国際公開第2016/151909(WO,A1)
【文献】国際公開第2022/190825(WO,A1)
【文献】JAYATISSA, Ahalapitiya H. et al.,Fabrication of Cuprous and Cupric Oxide Thin Films by Heat Treatment,Applied Surface Science,NL,Elsevier B.V.,2009年09月15日,Vol.255, No.23,pp.9474-9479,[online],[retrieved on 2024-10-31],Retrieved from the Internet: <URL: https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0169433209010770>,https://doi.org/10.1016/j.apsusc.2009.07.072
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 3/02
H01B 5/00- 5/16
H01B 13/00-13/016
H01B 13/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムと、低反射層と、金属層とを厚み方向にこの順で備え、
前記低反射層が、Cuと、Cu
2Oを含むCu化合物とを含み、
前記低反射層の前記基材フィルム側の表面における前記Cuと前記Cu化合物との合計量中に含まれる前記Cu
2Oの量より、前記表面から前記金属層に向かって2.5nmの深さの位置における前記Cuと前記Cu化合物との合計量中に含まれる前記Cu
2Oの量が低い、導電性フィルム。
【請求項2】
前記低反射層が、InOxを含むIn化合物を含み、
前記表面における前記In化合物中の前記InOxの量が、80原子%以上である、請求項1に記載の導電性フィルム。
【請求項3】
前記低反射層の厚みが、3nm以上である、請求項1または2に記載の導電性フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タッチパネルなどの表示装置の導電層として、透明性の高いITOなどの金属酸化物層に代えて、低抵抗性の金属の微細パターンを備える導電性フィルムの開発が進められている。導電性フィルムでは、金属の微細パターン化により、視認性は向上できるものの、金属特有の高い反射率によるギラつきを生じる場合がある。これに対して、金属層に隣接して、低反射層を配置することにより、金属層による反射を抑制する技術が知られている。
【0003】
このような導電性フィルムとしては、透明な基板と、基板上に形成された金属層と、金属層の少なくとも一方の面に接するように形成された低反射層とからなる積層体が提案されている。この積層体の実施例においては、低反射層は、スパッタ圧力が0.16~0.44Paの条件で、Cuを含むターゲットを用いたスパッタリングにより製造されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、このような導電性フィルムは、基材と低反射層との界面の密着性が低く、これらが剥がれてしまうことがある。
【0006】
本発明は、基材フィルムと、低反射層との密着性が向上した、導電性フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明[1]は、基材フィルムと、低反射層と、金属層とを厚み方向にこの順で備え、前記低反射層が、Cuと、Cu2Oを含むCu化合物とを含み、前記低反射層の前記基材フィルム側の表面における前記Cuと前記Cu化合物との合計量中に含まれる前記Cu2Oの量より、前記表面から前記金属層に向かって2.5nmの深さの位置における前記Cuと前記Cu化合物との合計量中に含まれる前記Cu2Oの量が低い、導電性フィルムを含んでいる。
【0008】
本発明[2]は、前記低反射層が、InOxを含むIn化合物を含み、前記表面における前記In化合物中の前記InOxの量が、80原子%以上である、上記[1]に記載の導電性フィルムを含んでいる。
【0009】
本発明[3]は、前記低反射層の厚みが、3nm以上である、上記[1]または[2]に記載の導電性フィルムを含んでいる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の導電性フィルムは、基材フィルムと、低反射層と、金属層とを厚み方向にこの順で備える。そして、低反射層が、Cuと、Cu2Oを含むCu化合物とを含み、低反射層の基材フィルム側の表面におけるCuとCu化合物との合計量中に含まれる前記Cu2Oの量より、表面から金属層に向かって2.5nmの深さの位置におけるCuとCu化合物との合計量中に含まれるCu2Oの量が低い。そのため、導電性フィルムにおける、基材フィルムと、低反射層との密着性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の導電性フィルムの一実施形態の断面模式図を示す。
【
図2】
図2は、本発明の導電性フィルムの変形例の断面模式図を示す。
【
図3】
図3は、本発明の導電性フィルムのピール測定法の手順を示す概略図を示す。
【
図4】
図4は、本発明の導電性フィルムのピール測定法の手順を示す概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.第1実施形態
<導電性フィルム>
本発明の一実施形態である導電性フィルム10を、
図1に示す。導電性フィルム10は、基材フィルム1と、低反射層2と、金属層3とをこの順で備える。導電性フィルム10は、基材フィルム1、低反射層2、金属層3の順で、厚み方向他方側から一方側に向かって配置されている。
【0013】
導電性フィルム10は、例えば、所定の厚みを有するフィルム形状(シート形状を含む)を有する。また、導電性フィルム10は、厚み方向と直交する面方向に延びる。導電性フィルム10の厚み方向一方面(下面)および厚み方向他方面(上面)は、例えば、平坦である。導電性フィルム10は、可撓性を有する。
【0014】
導電性フィルム10の厚みは、強度および取扱性の観点から、例えば、5μm以上、好ましくは、20μm以上、より好ましくは、50μm以上、さらに好ましくは、80μm以上であり、また、例えば、1000μm以下、好ましくは、500μm以下、より好ましくは、200μm以下、さらに好ましくは、150μm以下である。
【0015】
導電性フィルム10の、基材フィルム1の他方側から測定した、視感反射率(Y値)は、低反射層2の光吸収性を確保する観点から、例えば、20%以下、好ましくは、15%以下、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは、8%以下であり、また、例えば、1%以上である。視感反射率(Y値)は、分光光度計を用いて、波長380~780nmの測定範囲でスキャンさせることにより測定される。
【0016】
[基材フィルム]
基材フィルム1は、導電性フィルム10の最下層であり、導電性フィルム10の強度を確保する支持フィルムである。基材フィルム1は、低反射層2の厚み方向他方面に接する。
【0017】
基材フィルム1は、フィルム形状(シート形状を含む)を有する。また、基材フィルム1は、例えば、可撓性を有する透明な樹脂フィルムである。
【0018】
基材フィルム1の厚みは、導電性フィルム10の強度および取扱性の観点から、例えば、5μm以上、好ましくは、20μm以上、より好ましくは、50μm以上、さらに好ましくは、80μm以上であり、また、例えば、1000μm以下、好ましくは、500μm以下、より好ましくは、200μm以下、さらに好ましくは、150μm以下である。
【0019】
基材フィルム1の厚みは、例えば、膜厚計を用いて測定することができる。
【0020】
基材フィルム1の可視光透過率(JISK-7105)は、例えば、80%以上、好ましくは、85%以上、より好ましくは、88%以上、さらに好ましくは、90%以上、また、例えば、100%以下である。
【0021】
基材フィルム1は、
図1に示すように、透明フィルム1aと、第1硬化樹脂層1bと、第2硬化樹脂層1cとを備える。第1硬化樹脂層1bは、透明フィルム1aの厚み方向一方面に配置されている。第2硬化樹脂層1cは、透明フィルム1aの厚み方向他方面に配置されている。
【0022】
(透明フィルム)
透明フィルム1aは、フィルム形状(シート形状を含む)を有する。また、透明フィルム1aは、例えば、可撓性を有する透明な樹脂フィルムである。
【0023】
透明フィルム1aの材料としては、樹脂が挙げられる。樹脂としては、例えば、セルロース樹脂、ポリエステル樹脂、(メタ)アクリル樹脂(アクリル樹脂および/またはメタクリル樹脂)、オレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリアリレート樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ノルボルネン樹脂、および、ポリビニルアルコール樹脂が挙げられる。ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、および、ポリエチレンナフタレートが挙げられる。ポリオレフィン樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、および、シクロオレフィンポリマー(COP)が挙げられる。セルロース樹脂としては、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)が挙げられる。透明フィルム1aは、透明性、耐熱性、機械的強度などの観点から、好ましくは、ポリエステルフィルムが挙げられる。より好ましくは、シクロオレフィン樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、さらに好ましくは、シクロオレフィン樹脂フィルム)が挙げられる。透明フィルム1aの材料は、単独使用または2種以上併用できる。
【0024】
透明フィルム1aの厚みは、導電性フィルム10の強度および取扱性の観点から、例えば、5μm以上、好ましくは、20μm以上、より好ましくは、50μm以上、さらに好ましくは、80μm以上であり、また、例えば、1000μm以下、好ましくは、500μm以下、より好ましくは、200μm以下、さらに好ましくは、150μm以下である。
【0025】
透明フィルム1aの厚みは、例えば、膜厚計を用いて測定することができる。
【0026】
(第1硬化樹脂層)
第1硬化樹脂層1bは、フィルム形状を有しており、透明フィルム1aの厚み方向一方面に配置されている。第1硬化樹脂層1bは、透明フィルム1aと、低反射層2との間に配置されている。第1硬化樹脂層1bは、透明フィルム1aに接する。
【0027】
第1硬化樹脂層1bは、例えば、ハードコート層、光学調整層、および、アンチブロッキング層が挙げられる。ハードコート層は、例えば、透明フィルム1aの露出表面に擦り傷が形成されにくくする層である。光学調整層は、例えば、導電性フィルム10の光学物性(例えば、屈折率)を調整する層である。アンチブロッキング層は、例えば、導電性フィルム10を厚み方向に積層した場合などに、互いに接触する複数の導電性フィルム10のそれぞれの表面に耐ブロッキング性を付与する層である。
【0028】
第1硬化樹脂層1bは、硬化性樹脂組成物の硬化物である。具体的には、第1硬化樹脂層1bは、透明フィルム1aの厚み方向一方面に、硬化性樹脂組成物を塗布し、必要により乾燥後、硬化することにより形成できる。
【0029】
硬化性樹脂組成物は、硬化性樹脂を含む組成物であり、例えば、紫外線硬化性樹脂を含む組成物、および、熱硬化性樹脂を含む組成物が挙げられる。硬化性樹脂組成物としては、製造効率の観点から、好ましくは、紫外線硬化型樹脂を含む組成物である。つまり、第1硬化樹脂層1bは、好ましくは、紫外線硬化型樹脂を含む組成物の硬化物層である。
【0030】
紫外線硬化性樹脂としては、例えば、(メタ)アクリレート樹脂が挙げられる。(メタ)アクリレート樹脂としては、例えば、アクリルウレタン樹脂およびアクリル樹脂(アクリルウレタン樹脂を除く)が挙げられる。好ましくは、アクリルウレタン樹脂が挙げられる。また、アクリルウレタン樹脂と多官能アクリレートとの共重合体を含む。紫外線硬化性樹脂は、単独使用または2種以上併用することができる。なお、(メタ)アクリレート樹脂は、メタクリレート樹脂および/またはアクリレート樹脂である。
【0031】
つまり、硬化性樹脂組成物は、好ましくは、(メタ)アクリレート樹脂を含有する。より好ましくは、アクリルウレタン樹脂を含有する。また、硬化性樹脂組成物は、より好ましくは、アクリルウレタン樹脂と多官能アクリレートとの共重合体を含む。
【0032】
なお、硬化性樹脂組成物は、他の紫外線硬化性樹脂を含んでもよい。
【0033】
他の紫外線硬化性樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂(アクリルウレタン樹脂を除く)、アミド樹脂、エポキシ樹脂、および、メラミン樹脂が挙げられる。他の紫外線硬化性樹脂は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0034】
硬化性樹脂組成物は、粒子を含有してもよい。硬化性樹脂組成物は、好ましくは、粒子を含有する。
【0035】
粒子としては、例えば、有機粒子および無機粒子が挙げられる。
【0036】
有機粒子の材料としては、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、アクリル・スチレン共重合体、および、ポリカーボネートが挙げられる。
【0037】
無機粒子としては、例えば、無機酸化物粒子が挙げられる。無機酸化物粒子の材料としては、例えば、金属酸化物および半金属酸化物が挙げられ、具体的には、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化カルシウム、酸化スズ、酸化インジウム、酸化カドミウム、および、酸化アンチモンなどが挙げられる。なお、無機酸化物粒子の材料としては、上記した金属酸化物が複合した金属複合酸化物でもよい。また、無機酸化物粒子の表面には、樹脂との密着性および親和性を高める目的で、アクリル基、エポキシ基などの官能基が導入されていてもよい。
【0038】
粒子の平均一次粒子径は、特に限定されず、例えば、5nm以上、好ましくは、10nm以上、より好ましくは20nm以上であり、また、例えば、500nm以下、好ましくは、300nm以下、より好ましくは、100nm以下、さらに好ましくは、50nm以下である。
【0039】
なお、粒子の平均粒子径は、比表面積測定(BET)法により測定できる。
【0040】
硬化性樹脂組成物(固形分)中の粒子の含有割合は、硬化性樹脂100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、1質量部以上、より好ましくは、5質量部以上である、また、例えば、30質量部以下、好ましくは、20質量部以下、より好ましくは、15質量部以下である。
【0041】
第1硬化樹脂層1bの厚みは、耐擦傷性、配線パターンの視認抑制の観点から、例えば、0.1μm以上、好ましくは、0.5μm以上であり、また、例えば、10μm以下、好ましくは、5μm以下である。
【0042】
第1硬化樹脂層1bの厚みは、例えば、分光エリプソメーターにより測定することができる。
【0043】
(第2硬化樹脂層)
第2硬化樹脂層1cは、導電性フィルム10の厚み方向他方側の最表面に配置されている。第2硬化樹脂層1cは、透明フィルム1aの厚み方向他方面に配置されている。第2硬化樹脂層1cは、透明フィルム1aと接する。
【0044】
第2硬化樹脂層1cは、例えば、ハードコート層、光学調整層、および、アンチブロッキング層が挙げられる。ハードコート層は、例えば、透明フィルム1aの露出表面に擦り傷が形成されにくくする層である。光学調整層は、例えば、導電性フィルム10の光学物性(例えば、屈折率)を調整する層である。アンチブロッキング層は、例えば、導電性フィルム10を厚み方向に積層した場合などに、互いに接触する複数の導電性フィルム10のそれぞれの表面に耐ブロッキング性を付与する層である。
【0045】
第2硬化樹脂層1cは、硬化性樹脂組成物の硬化物である。第2硬化樹脂層1cに用いられる硬化性樹脂組成物は、第1硬化樹脂層1bに用いられる硬化性樹脂組成物と同様であり、第2硬化樹脂層1cは、第1硬化樹脂層1bと同様の方法により形成される。
【0046】
第2硬化樹脂層1cの厚みは、耐擦傷性、配線パターンの視認抑制の観点から、例えば、0.1μm以上、好ましくは、0.5μm以上であり、また、例えば、10μm以下、好ましくは、5μm以下である。
【0047】
第2硬化樹脂層1cの厚みは、例えば、分光エリプソメーターにより測定することができる。
【0048】
[低反射層]
低反射層2は、基材フィルム1の厚み方向一方面に配置されている。低反射層2は、基材フィルム1の厚み方向一方面に接する。
【0049】
低反射層2は、基材フィルム1の上に金属層3を直接配置した場合と比較して、基材フィルム1と金属層3との間に低反射層2を配置した場合においては、基材フィルム1側から測定した反射率をより低くすることができる層であって、すなわち、光吸収性が高い層、例えば、黒化層である。導電性フィルム10においては、低反射層2により基材フィルム1側からの金属層3の視認性を抑制している。
【0050】
低反射層2は、金属化合物と金属(単体金属)を含む。金属化合物としては、例えば、金属酸化物、金属水酸化物、金属窒化物、および、金属炭化物が挙げられる。なお、金属化合物とは、金属と非金属との化合物である。
【0051】
低反射層2は、金属化合物としてCu2O(酸化銅(I))を含む。低反射層2は、好ましくは、Cu2Oに加えて、CuO(酸化銅(II))、CuOH2(水酸化銅)のいずれか1種以上を含む。低反射層2は、さらに、その他のCu(銅)化合物を含んでもよい。
【0052】
また、低反射層2は、高い光吸収性を実現する観点から、好ましくは、金属化合物としてInOx(酸化インジウム)を含む。低反射層2は、より好ましくは、InOxと、In(OH)x(水酸化インジウム)とを含む。低反射層2は、さらに、その他のIn(インジウム)化合物を含んでもよい。
【0053】
低反射層2は、上記した金属化合物以外の、その他の金属化合物を含んでもよい。
【0054】
その他の金属化合物としては、Cu(銅)およびIn(インジウム)以外の金属化合物(例えば、金属酸化物、金属水酸化物、金属窒化物、および、金属炭化物、好ましくは、金属酸化物)が挙げられる。Cu(銅)およびIn(インジウム)以外の金属としては、例えば、Mo(モリブデン)、および、Fe(鉄)が挙げられる。
【0055】
低反射層2は、金属(単体金属)としてCu(銅)を含む。低反射層2は、好ましくは、Cuに加えて、In(インジウム)を含む。
【0056】
低反射層2は、上記した単体金属以外の、その他の単体金属を含んでもよい。
【0057】
その他の単体金属としては、例えば、Mo(モリブデン)、Fe(鉄)が挙げられる。
【0058】
低反射層2における金属化合物の割合は、金属化合物と単体金属の合計量を100原子%としたとき、低反射層2において高い光吸収性を実現する観点から、好ましくは5原子%以上、より好ましくは15原子%以上であり、また、好ましくは95原子%以下、より好ましくは85原子%以下である。すなわち、低反射層2における金属化合物の割合は、好ましくは5~95原子%、より好ましくは15~85原子%である。
【0059】
低反射層2における単体金属の割合は、金属化合物と単体金属の合計量を100原子%としたとき、低反射層2において高い光吸収性を実現する観点から、好ましくは5原子%以上、より好ましくは15原子%以上であり、また、好ましくは95原子%以下、より好ましくは85原子%以下である。すなわち、低反射層2における単体金属の割合は、好ましくは5~95原子%、より好ましくは15~85原子%である。
【0060】
低反射層2における銅の割合は、金属化合物と単体金属の合計量を100原子%としたとき、低反射層2において高い光吸収性を実現する観点から、好ましくは5原子%以上、より好ましくは10原子%以上であり、また、好ましくは50原子%以下、より好ましくは40原子%以下である。
【0061】
低反射層2が酸化インジウムを含む場合、低反射層2におけるInの割合は、金属化合物と単体金属の合計量を100原子%としたとき、低反射層2において高い光吸収性を実現する観点から、好ましくは40原子%以上、より好ましくは50原子%以上であり、また、好ましくは90原子%以下、より好ましくは85原子%以下である。
【0062】
低反射層2は、有機材料を含んでもよい。耐光性の観点から、好ましくは、有機材料を含まない。
【0063】
有機材料を含む場合、低反射層2としては、例えば、熱可塑性樹脂と着色剤とを含む。熱可塑性樹脂としては、特に限定されない。着色剤としては、黒色の着色剤であれば、特に限定されず、例えば、カーボンブラックが挙げられる。
【0064】
また、低反射層2では、金属化合物と単体金属の合計量(100原子%)中に含まれる、金属化合物の量(原子%)に関し、厚み方向他方面に比べて、厚み方向他方面より所定の深さの位置における金属化合物の量(原子%)が低い。すなわち、低反射層2の基材フィルム1側の表面におけるCuとCu化合物との合計量(100原子%)中に含まれるCu2Oの量(原子%)より、表面から金属層3に向かって2.5nmの深さの位置におけるCuとCu化合物との合計量中に含まれるCu2Oの量(原子%)が低い。
【0065】
すなわち、低反射層2の基材フィルム1側の表面におけるCuとCu化合物との合計量中に含まれるCu2Oの量が多い。Cu2O(酸化銅(I))は、CuO(酸化銅(II))と比較して銅に対する酸素の結合数が少ないため、低反射層2の基材フィルム1側の表面において、Cuに結合している酸素が少ないことを意味する。そして、Cu2O(酸化銅(I))は、CuO(酸化銅(II))と比較して、より基材フィルム1と強く結合するため、その結果、基材フィルム1と低反射層2との密着性を向上することができる。
【0066】
また、低反射層2の基材フィルム1側の表面におけるCuとCu化合物との合計量(100原子%)中に含まれるCu2Oの量(原子%)は、例えば、9原子%以上、好ましくは、10原子%以上、より好ましくは11原子%以上であり、また、例えば、20原子%以下、好ましくは、15原子%以下である。基材フィルム1側の表面におけるCu2Oの量を上記範囲内とすることにより、基材フィルム1と低反射層2との密着性をさらに向上することができる。
【0067】
また、低反射層2の基材フィルム1側の表面におけるCuとCu化合物との合計量(100原子%)中に含まれるCuOの量(原子%)は、例えば、2.5原子%以下、好ましくは、2.0原子%以下、より好ましくは、1.5原子%以下、さらに好ましくは、1.0原子%以下であり、また、例えば、0原子%以上である。基材フィルム1側の表面におけるCuOの量を上記範囲内とすることにより、基材フィルム1と低反射層2との密着性をさらに向上することができる。
【0068】
また、低反射層2の基材フィルム1側の表面から金属層3に向かって2.5nmの深さの位置におけるCuとCu化合物との合計量(100原子%)中に含まれるCu2Oの量(原子%)は、例えば、1原子%以上、好ましくは、2原子%以上、より好ましくは3原子%以上であり、また、例えば、9原子%以下、好ましくは、7原子%以下、より好ましくは5原子%以下である。基材フィルム1側の表面から金属層3に向かって2.5nmの深さの位置におけるCu2Oの量を上記範囲内とすることにより、基材フィルム1と低反射層2との密着性をさらに向上することができる。
【0069】
また、低反射層に含まれる、低反射層2の基材フィルム1側の表面におけるIn化合物(100原子%)中のInOxの量(原子%)が、例えば、80原子%以上、好ましくは、82原子%以上、より好ましくは、84原子%以上であり、また、例えば、95原子%以下であり、好ましくは、90原子%以下である。基材フィルム1側の表面におけるInOxの量を上記範囲内とすることにより、基材フィルム1と低反射層2との密着性をさらに向上することができる。
【0070】
低反射層2の厚みは、例えば、3nm以上であり、好ましくは、4nm以上であり、より好ましくは、6nm以上、さらに好ましくは、8nm以上、特に好ましくは、10nm以上、最も好ましくは、12nm以上である、また、例えば、100nm以下、好ましくは、60nm以下、より好ましくは、40nm以下、特に好ましくは、25nm以下、最も好ましくは、20nm以下である。
【0071】
低反射層2の厚みは、例えば、分光エリプソメーターにより測定することができる。
【0072】
[金属層]
金属層3は、導電性フィルム10の厚み方向において、低反射層2の一方側に配置されている。金属層3は、低反射層2の厚み方向一方面に接する。金属層3は、例えば、導体層または配線層である。
【0073】
金属層3を形成する金属としては、例えば、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、マグネシウム、タングステン、コバルト、亜鉛、鉄、およびそれらの合金が挙げられる。好ましくは、金、銀、および銅が挙げられ、より好ましくは、コストおよび加工性の観点から、銅が挙げられる。
【0074】
金属層3の厚みは、例えば、10nm以上、好ましくは、40nm以上、より好ましくは、80nm以上、さらに好ましくは、150nm以上であり、また、例えば、2000nm以下、好ましくは、1000nm以下、より好ましくは、500nm以下、さらに好ましくは、300nm以下である。
【0075】
金属層3の厚みは、例えば、分光エリプソメーターにより測定することができる。
【0076】
<導電性フィルムの製造方法>
次に、上記の導電性フィルム10の製造方法について、説明する。導電性フィルム10は、例えば、ロールトゥロール方式において、下記のように製造される。
【0077】
導電性フィルム10の製造方法は、例えば、基材フィルム1を用意する用意工程と、基材フィルム1の厚み方向一方面に、低反射層2、および金属層3を順に積層する成膜工程とを備える。
【0078】
(用意工程)
用意工程では、まず、透明フィルム1aを用意する。そして、透明フィルム1aの厚み方向一方面に第1硬化樹脂層1bを積層し、透明フィルム1aの厚み方向他方面に第2硬化樹脂層1cを積層する。
【0079】
第1硬化樹脂層1bおよび第2硬化樹脂層1cを積層するには、例えば、上述の硬化性樹脂組成物を溶媒で希釈した希釈液を調整する。希釈液を透明フィルム1aの厚み方向一方面に塗布し、希釈液を乾燥した後、硬化性樹脂組成物を紫外線で硬化させ、第1硬化樹脂層1bを形成する。続いて、希釈液を透明フィルム1aの厚み方向一他方面に塗布し、希釈液を乾燥した後、硬化性樹脂組成物を紫外線で硬化させ、第2硬化樹脂層1cを形成する。
【0080】
これにより、透明フィルム1aと、透明フィルム1aの厚み方向一方面に積層された第1硬化樹脂層1bと、透明フィルム1aの厚み方向他方面に積層された第2硬化樹脂層1cとを備える基材フィルム1を用意する。
【0081】
(成膜工程)
低反射層2および金属層3は、例えば、ドライコーティング法により形成される。ドライコーティング法としては、例えば、スパッタリング法および蒸着法が挙げられる。好ましくは、スパッタリング法が挙げられる。スパッタリング法としては、例えば、2極スパッタリング法、ECR(電子サイクロトロン共鳴)スパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法、イオンビームスパッタリング法が挙げられる。好ましくは、マグネトロンスパッタリング法が挙げられる。
【0082】
成膜工程におけるターゲットに対する電圧印加のための電源としては、例えば、DC電源、AC電源、MF電源、および、RF電源が挙げられ、好ましくは、DC電源が挙げられる。
【0083】
スパッタリング法では、具体的には、スパッタ成膜装置が備える各成膜室内に真空条件下でスパッタリングガス(不活性ガス)を導入しつつ、各成膜室内のカソード上に配置されたターゲットにマイナスの電圧を印加する。これにより、グロー放電を発生させてガス原子をイオン化し、このガスイオンを高速でターゲット表面に衝突させ、ターゲット表面からターゲット材料を弾き出し、弾き出されたターゲット材料を、基材フィルム1上に順に堆積させる。
【0084】
本実施形態の成膜工程では、基材フィルム1の厚み方向一方面に、低反射層2、および金属層3を順に積層する。具体的には、第1スパッタ成膜では、基材フィルム1の厚み方向一方面に、低反射層2を形成し(低反射層形成工程)、続いて、第2スパッタ成膜では、低反射層2の厚み方向一方面に、金属層3を形成する(金属層形成工程)。すなわち、成膜工程は、低反射層形成工程と、金属層形成工程とを備える。
【0085】
第1スパッタ成膜(低反射層形成工程)におけるスパッタリングガスとしては、不活性ガスが挙げられる。不活性ガスとしては、例えば、アルゴン、クリプトン、キセノン、および、これらの混合ガスが挙げられ、好ましくは、アルゴンが挙げられる。
【0086】
また、スパッタリングガスとして、反応性ガス(例えば、酸素)を併用することもできる。反応性ガスを併用する場合、反応性ガスの量は、流量比で、例えば、20体積%(vol%)以下、好ましくは、15体積%以下、より好ましくは、10体積%以下、さらに好ましくは、5体積%以下である。
【0087】
スパッタリングガスとしては、不活性ガスを用いることが好ましく、不活性ガスのみを用いることがさらに好ましい。スパッタリングガスとして、不活性ガスのみを用いることにより、低反射層2の色味を向上することができる。
【0088】
第1スパッタ成膜(低反射層形成工程)における成膜室内の気圧(スパッタリングガス、または、スパッタリングガスおよび反応性ガスを導入した際の成膜室内の気圧)は、例えば、0.45Pa以上、好ましくは、0.6Pa以上、より好ましくは、0.7Pa以上、さらに好ましくは、0.8Pa以上、また、例えば、2.0Pa以下、好ましくは、1.6Pa以下、より好ましくは、1.2以下、さらに好ましくは、1.1Pa以下である。
【0089】
第1スパッタ成膜の成膜室内の気圧を、上記範囲内とすることにより、低反射層2の基材フィルム1側の表面におけるCuとCu化合物との合計量中のCu2Oの量より、表面から金属層3に向かって2.5nmの深さの位置におけるCuとCu化合物との合計量中のCu2Oの量を低くすることができる。その結果、導電性フィルム10における基材フィルム1と低反射層2との密着性を向上することができる。
【0090】
これは、例えば、成膜室の比較的低い気圧(例えば0.3~0.4Pa)の条件下においては、スパッタリングにより基材フィルム1に衝突する原子が高いエネルギーを有する。そのため、基材フィルム1上に低反射層2を形成する際には、高いエネルギーを有する原子が衝突し、この衝突により基材フィルム1から酸素などのガスが発生する。そして、この発生するガスに起因して基材フィルム1側の表面にCu2O(酸化銅(I))よりもCuO(酸化銅(II))ができやすくなる。一方、成膜室の気圧を上記のように比較的高くすれば、スパッタリングにより基材フィルム1に衝突する原子のエネルギーが低くなるため、酸素などのガスの発生が比較的少なくなる。このため、基材フィルム1上に低反射層2を形成する際には、CuO(酸化銅(II))の形成が抑制され、低反射層2の基材フィルム1側の表面に、より多くのCu2O(酸化銅(I))形成される。
【0091】
第1スパッタ成膜(低反射層形成工程)における成膜温度(成膜時の基材フィルム1の温度)としては、例えば、150℃以下、好ましくは、100℃以下、より好ましくは、50℃以下であり、また、例えば、-20℃以上、好ましくは、0℃以上、より好ましくは、30℃以上である。
【0092】
第1スパッタ成膜(低反射層形成工程)における成膜室内のカソード上に配置されるターゲットの材料としては、上記した、低反射層2の材料が挙げられる。具体的には、低反射層2を形成するためのターゲット材料としては、例えば、金属と金属酸化物とが挙げられ、好ましくは、Cu(銅)と酸化インジウムとが挙げられる。
【0093】
第2スパッタ成膜(金属層形成工程)におけるスパッタリングガスとしては、不活性ガスが挙げられる。不活性ガスとしては、例えば、アルゴン、クリプトン、キセノン、および、これらの混合ガスが挙げられ、好ましくは、アルゴンが挙げられる。
【0094】
また、スパッタリングガスとして、反応性ガス(例えば、酸素)を併用することもできる。反応性ガスを併用する場合、用いられる反応性ガスの量は、流量比で、例えば、20体積%(vol%)以下、好ましくは、15体積%以下、より好ましくは、10体積%以下、さらに好ましくは、5体積%以下である。
【0095】
第2スパッタ成膜(金属層形成工程)における成膜室内の気圧は、例えば、0.02Pa以上、好ましくは、0.1Pa以上、より好ましくは0.2Pa以上であり、また、例えば、1.0Pa以下、好ましくは0.6Pa以下、より好ましくは、0.5Pa以下である。
【0096】
第2スパッタ成膜(金属層形成工程)の成膜温度(低反射層2が形成された基材フィルム1の温度)としては、例えば、150℃以下、好ましくは、100℃以下、より好ましくは、50℃以下であり、また、例えば、-20℃以上、好ましくは、0℃以上、より好ましくは、30℃以上である。
【0097】
第2スパッタ成膜(金属層形成工程)における成膜室内のカソード上に配置されるターゲットの材料としては、上記した、金属層3の材料が挙げられる。具体的には、金属層3を形成するためのターゲット材料としては、金属が挙げられ、例えば、Cu(銅)が挙げられる。
【0098】
上記のようにして、基材フィルム1と、低反射層2と、金属層3をこの順で備える導電性フィルム10が得られる。
【0099】
<作用効果>
本発明の導電性フィルム10は、基材フィルム1と、低反射層2と、金属層3とを厚み方向にこの順で備える。低反射層2が、Cuと、Cu2Oを含むCu化合物とを含み、低反射層の基材フィルム1側の表面におけるCuとCu化合物との合計量中に含まれるCu2Oの量より、表面から金属層3に向かって2.5nmの深さの位置におけるCuとCu化合物との合計量中に含まれるCu2Oの量が低い。そのため、導電性フィルム10における、基材フィルム1と、低反射層2との密着性を向上できる。
【0100】
2.変形例
本発明の変形例の導電性フィルム10aを
図2に示す。導電性フィルム10aは、基材フィルム1と、低反射層2と、金属層3とをこの順で備えることは、上述の第1実施形態と同様である。しかし、導電性フィルム10aにおいては、基材フィルム1は第1硬化樹脂層1bおよび第2硬化樹脂層1cを備えず、透明フィルム1aのみから構成されている。この場合、導電性フィルム10aは、基材フィルム1、低反射層2、金属層3の3層のみから構成される。
【実施例】
【0101】
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、何ら実施例および比較例に限定されない。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0102】
<導電性フィルムの製造>
(実施例1)
先ず、透明フィルムとしてシクロオレフィン樹脂(COP)フィルム(品名「ゼオノア ZF16」、厚み100μm、ZEON社製)を用意した。COPフィルムの厚み方向一方面に、硬化性樹脂組成物C1を塗布して塗膜を形成した。硬化性樹脂組成物C1は、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂(品名「アイカトロンZ844L」、アイカ社製)100質量部(樹脂分量)と、シリカ粒子(品名「CSZ9281」、平均一次粒子径30nm、CIKナノテック社製)10質量部と、溶媒としてのメチルイソブチルケトンとを含有する。次に、COPフィルム上の塗膜を乾燥させた後、紫外線照射によって塗膜を硬化させて、厚み1μmの第1硬化樹脂層を形成した。
【0103】
次に、第1硬化樹脂層が形成されたCOPフィルムの厚み方向他方面に、硬化性樹脂組成物C2を塗布して塗膜を形成した。硬化性樹脂組成物C2は、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂(品名「アイカトロンZ844L」、アイカ社製)100質量部(固形分)と、シリカ粒子(品名「CSZ9281」、平均一次粒子径30nm、CIKナノテック社製)10質量部と、溶媒としてのメチルイソブチルケトンとを含有する。次に、COPフィルム上の塗膜を乾燥させた後、紫外線照射によって塗膜を硬化させて、厚み1μmの第2硬化樹脂層を形成した。
【0104】
これにより、COPフィルムと、COPフィルムの厚み方向一方面に積層された第1硬化樹脂層と、COPフィルムの厚み方向他方面に積層された第2硬化樹脂層とを備える基材フィルムを用意した(用意工程)。
【0105】
次に、スパッタリング法により第1硬化樹脂層の厚み方向一方面に、低反射層と、金属層とを、この順で成膜した。この成膜工程では、ロールトゥロール方式のスパッタ成膜装置(DCマグネトロンスパッタ成膜装置)を使用した。同装置は、繰出し室と、第1成膜室と、第2成膜室と、巻取り室とを備える。
【0106】
成膜工程では、繰出し室から繰り出された基材フィルムに対して、第1成膜室において低反射層を形成する第1スパッタ成膜(低反射層形成工程)と、第2成膜室において金属層を形成する第2スパッタ成膜(金属層形成工程)とを順に実施し、その後に、巻取り室において導電性フィルムを巻き取った。第1スパッタ成膜では、基材フィルムの厚み方向一方面に、厚み15nmの低反射層を形成した。続く第2スパッタ成膜にでは、低反射層の厚み方向一方面に、厚み200nmの銅層を形成した。各スパッタ成膜の条件は、次のとおりである。
【0107】
第1スパッタ成膜(低反射層形成工程)においては、基材フィルムの厚み方向一方面に、低反射層(In2O3+Cu層)を成膜した。具体的には、スパッタ成膜装置内を真空排気した後、第1成膜室内に、スパッタリングガスとして、アルゴンを導入し、第1成膜室内の気圧を0.9~1.0Paとした。また、ターゲットとしては、銅インジウム酸化物ターゲット(品名「In2O3+Cu」、銅インジウム酸化物、In2O3割合は81.2(±1)質量%、Cu割合は18.8質量%、三井金属社製)を用いた。ターゲットに対する電圧印加のための電源としては、DC電源を用いた。成膜温度(基材フィルムの温度)は40℃とした。
【0108】
第2スパッタ成膜(金属層形成工程)においては、低反射層の厚み方向一方面に、銅層を成膜した。具体的には、スパッタ成膜装置内を真空排気した後、第2成膜室内に、スパッタリングガスとして、アルゴンを導入し、第2成膜室内の気圧を0.3~0.4Paとした。ターゲットとしては、Cuターゲットを用いた。ターゲットに対する電圧印加のための電源としては、DC電源を用いた。成膜温度(低反射層が形成された基材フィルムの温度)は40℃とした。
【0109】
以上のように、基材フィルム(両面に硬化樹脂層を備える、厚み102μm)、低反射層(In2O3+Cu層、厚み15nm)、および金属層(銅層、厚み200nm)の順で厚み方向一方側に向かって配置される実施例1の導電性フィルムを製造した。
【0110】
(実施例2)
第1スパッタ成膜(低反射層形成工程)において、スパッタリングガスとして、アルゴンに加えて、流量比0.5体積%の割合で酸素を導入した以外は、実施例1と同様に導電性フィルムを製造した。
【0111】
(比較例1)
第1スパッタ成膜(低反射層形成工程)において、第1成膜室内に、スパッタリングガスとして、アルゴンを導入した際、第1成膜室内の気圧を0.3~0.4Paとした以外は、実施例1と同様に導電性フィルムを製造した。
【0112】
【0113】
<評価>
[組成分析]
製造した各例の導電性フィルムを1cmの大きさに切り出して試料とし、試料台に押さえて固定し、X線光電子分光分析装置(品名「Quantera SXM」、アルバック・ファイ社製)を用いて、表2に示す条件で組成分析した。
【0114】
低反射層の基材フィルム側の表面(深さ0nm)についてワイドスキャン測定し、定性分析し、表面の元素比率(原子%、atm%)を算出した。その後、Arイオンエッチングによるデプスプロファイルを測定し、低反射層の表面から金属層に向かって2.5nmの深さの位置(深さ2.5nm)の元素比率を算出した。その結果より、Cu元素、In元素の結合状態を解析し、元素当たりの結合状態の比率を算出した。また、それぞれの状態に相当する化合物を決定し、それらの比率として表に示した。Cu元素の結果を表3に、In元素の結果を表4に示す。
【0115】
【0116】
【0117】
【0118】
[ピール特性]
図3、4に示すように、以下の手順で各例の導電性フィルムの初期のピール力を評価した。なお、
図3、4では第1硬化樹脂層および第2硬化樹脂層は省略している。
【0119】
各例の導電性フィルムを300×200mmサイズに切り出した(
図3A)。そして銅層の厚み方向一方面に、電解めっきにて、銅層の厚みが合計20μmとなるように以下の条件で銅をめっきした(
図3B)。
装置:バッチめっき試験機(山本鍍金試験機社製)
条件:定電流 2ASD(12A)
【0120】
そして、銅層の厚みが20μmの導電性フィルムを10mm×100mmサイズに切り出した。そして、粘着テープ6(品名「スコッチ PPS-15」、3M社製)が張り合せられた金属支持基板5(SUS板)に、導電性フィルムをハンドローラにて張り合せた(
図3C)。
【0121】
次に、カッターを用いて、導電性フィルムの幅方向中央部に、5mmの間隔で、長手方向に沿って2本の100mmの切り込みCを入れた(
図3Da、
図3Db)。そして、長手方向一方側から0~30mmの区間(
図4E)において、切り込みCの間の導電性フィルムを基材フィルム1と低反射層2の間で剥離した。これにより、長手方向一方側から0~30mmの区間の剥離部分である「きっかけS」を備えた各例の試験サンプルを作製した(
図4F)。
【0122】
そして、各例の試験サンプルをオートグラフ(品名「AG-IS」、SHIMAZU社製)に設置し、ロードセル部分と「きっかけS」の厚み方向一方面側とをテープを介して接続した。そして、剥離角度180°、剥離速度50mm/minの条件で、長手方向一方側から30~80mmの区間で剥離した(
図4G)。そして、剥離した際の、ロードセルに加わった力をデータ出力した。データのうち、長手方向一方側から40~70mmの区間においてロードセルに加わった力の平均をピール力とした。ピール力の評価結果を表5に示す。
【0123】
【符号の説明】
【0124】
1 基材フィルム
2 低反射層
3 金属層
10、10a 導電性フィルム
【要約】
【課題】基材フィルムと、低反射層との密着性が向上した、導電性フィルムを提供すること。
【解決手段】導電性フィルム10は、基材フィルム1と、低反射層2と、金属層3とを厚み方向にこの順で備える。低反射層2が、Cuと、Cu
2Oを含むCu化合物とを含み、低反射層2に含まれる、CuとCu化合物との合計量を100原子%としたとき、低反射層2の基材フィルム1側の表面におけるCuとCu化合物との合計量中に含まれるCu
2Oの量より、表面から金属層3に向かって2.5nmの深さの位置におけるCuとCu化合物との合計量中に含まれるCu
2Oの量が低い。
【選択図】
図1