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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】自動走行運転で車両を動作させる方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20241125BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20241125BHJP
【FI】
G08G1/16 C
B60W60/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2024516354
(86)(22)【出願日】2022-07-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-20
(86)【国際出願番号】 EP2022070559
(87)【国際公開番号】W WO2023041226
(87)【国際公開日】2023-03-23
【審査請求日】2024-05-28
(31)【優先権主張番号】102021004646.3
(32)【優先日】2021-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】メルセデス・ベンツ グループ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Mercedes-Benz Group AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 120,70372 Stuttgart,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100176946
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 智恵
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ケンペ シュテフェン
(72)【発明者】
【氏名】ラルーシ リハブ
(72)【発明者】
【氏名】ウルフ ダニエラ
【審査官】宮地 将斗
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-064402(JP,A)
【文献】国際公開第2017/022417(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
G01C 21/00 - 21/36
G01C 23/00 - 25/00
B60W 60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動走行運転で車両(F)を動作させる方法において、
前記車両(F)の周辺検出センサ(S)のそれぞれの範囲(R)が、前記周辺検出センサ(S)のセンサ信号の評価によって推定され、
前記周辺検出センサ(S)のそれぞれが前記自動走行運転のために十分な推定範囲(R)を有しているか否かがチェックされ、ここで、それぞれの前記推定範囲(R)が十分であると評価されるのは、前記推定範囲(R)内で所定の減速を伴って前記車両(F)を制動して停止させることができる場合、及び/又は前記それぞれの推定範囲(R)が前記車両(F)の現在の速度に対して設定された最小センサ範囲を超えている場合であり、
前記周辺検出センサ(S)のうちの1つだけが十分な推定範囲(R)を有していないと判定された場合、又は、前記周辺検出センサ(S)の所定のサブセットだけがそれぞれ十分な推定範囲(R)を有していないと判定された場合、前記車両(F)は引き続き前記自動走行運転で動作し、このとき前記車両(F)の速度は一定に保たれ、又は所定どおりにわずかに低減され、運転タスクを引き継ぐ要請は、即座に又は所定の遅延時間の後に車両運転者に出力され、
全ての前記周辺検出センサ(S)が、又は前記所定のサブセットよりも多くの又はこれと異なる周辺検出センサ(S)が、それぞれ十分な推定範囲(R)を有していないと判定された場合、前記車両(F)は引き続き前記自動走行運転で動作し、このとき前記車両(F)の前記速度は所定どおりに大幅に低減され、前記車両(F)の前記運転タスクを引き継ぐ前記要請が即座に前記車両運転者に出力される
ことを特徴とする、方法
【請求項2】
前記自動走行運転は、前記要請の前記出力から、予め設定可能な又は予め設定された引継時間インターバル内に前記車両運転者が前記運転タスクを引き継がなかった場合、終了される
ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記車両(F)の周辺を検出するために設けられた前記車両(F)の前記周辺検出センサ(S)の、前記車両(F)の進行方向における前記それぞれの範囲(R)が推定される
ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
それぞれ異なる型式の前記周辺検出センサ(S)の前記それぞれの範囲(R)が推定される
ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つのレーダーセンサ、少なくとも1つのライダーセンサ、及び少なくとも1つのカメラセンサの前記それぞれの範囲(R)が推定される
ことを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記運転タスクを引き継ぐ前記要請が前記車両運転者に出力されるまでの前記所定の遅延時間の間に、前記周辺検出センサ(S)が前記自動走行運転のために十分な推定範囲(R)をそれぞれ有していると判定された場合には、前記自動走行運転が当初の速度で続行され、前記運転タスクを引き継ぐ前記要請が前記車両運転者に出力されない
ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記それぞれの推定範囲(R)がまず妥当性についてチェックされ、前記それぞれの妥当性がチェックされた推定範囲(R)を用いて、前記周辺検出センサ(S)が前記自動走行運転のために十分な推定範囲(R)をそれぞれ有しているか否かがチェックされる
ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記それぞれの周辺検出センサ(S)の前記推定範囲(R)について妥当性がないと評価されるのは、前記周辺検出センサ(S)が、推定範囲(R)によれば検出していなければならないはずの物体を、所定の期間にわたって検出しない場合である
ことを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記周辺検出センサ(S)の前記推定範囲(R)に妥当性がないと評価された場合、前記周辺検出センサ(S)の前記推定範囲(R)が更に小さい値へと修正される
ことを特徴とする、請求項又はに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動走行運転で車両を動作させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
欧州特許出願公開第19934670(A1)号明細書に記載されているように、自動車のための物体検知システムが知られている。これは、それぞれ異なる検知領域及び/又は異なる検知範囲を有する、少なくとも3つの物体検知器の組み合わせで構成されている。
【0003】
独国特許発明第3735267(C3)号明細書には、視界測定をする装置が記載されている。この装置は、光パルスないし閃光を生成するための光源と、光パルスないし閃光が放射されたときに散乱ゾーンから光路に後方散乱される光を記録するための光センサと、光センサの出力信号を評価するための回路とを備えている。自動車の運転室ないし運転室のフロントガラスの外側で散乱ゾーンにより引き起こされる後方散乱が評価可能である。更に、フロントガラスの汚れによって引き起こされる後方散乱が評価可能である。そのために光源並びに光センサはフロントガラスの内面に配置され、光パルスないし閃光がフロントガラスに向けられ、これを通過するように外方へと向けられる。それぞれ異なる波長の光のための複数の光源が配置され、それにより、散乱ゾーンの光散乱粒子のサイズに依存して決まる散乱挙動を、それぞれ異なる種類の視界妨害の区別のために評価する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、自動走行運転で車両を動作させる新規の方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は本発明によると、請求項1の構成要件を有する、自動走行運転で車両を動作させる方法によって解決される。
【0006】
本発明の有利な実施形態は、従属請求項の対象である。
【0007】
自動化された、特に高度自動化された、又は自律的な走行動作で車両を動作させる方法において、本発明によると、車両の周辺検出センサのそれぞれの範囲が、周辺検出センサのセンサ信号の評価によって推定される。このことは特に、車両の周辺検出センサのうち、車両の進行方向における車両の周辺、特に車両の前方のまっすぐ及び斜め方向の周辺、特に車両の走行車線及びこれと隣接する少なくとも1つの車線、又はこれとそれぞれ両側で隣接する少なくとも1つの車線に関する周辺を検出するために用いられるものだけを対象とする。特にこのような周辺検出センサは、自動化された、特に高度自動化された、又は自律的な走行動作(走行運転,運転操作)を実行するために必要だからである。
【0008】
推定範囲を用いて、続いて、周辺検出センサが、自動化された、特に高度自動化された、又は自律的な走行動作のため十分な範囲を有するか否か、すなわち、それぞれの推定範囲が十分であるか否かが、チェック(確認,検査)される。それぞれの範囲、すなわち、それぞれの周辺検出センサの推定範囲が、十分であるとみなされるのは、すなわち評価(判断)されるのは、当該範囲内で所定の減速を伴って車両を制動して停止させることができる場合であり、及び/又はそれぞれの範囲、すなわち、それぞれの周辺検出センサの推定範囲が、車両の現在の速度に対して設定される最小センサ範囲を超えている場合である。
【0009】
たとえば、車両の現在の速度として、ないしは、推定範囲内で所定の減速を伴って車両を制動して停車させることができるか否かの判定のために利用される速度として、車両の自由走行のもとでの自動化された、特に高度自動化された、又は自律的な走行動作の標準的な実行のために予め設定される速度、たとえば車両運転者により設定される速度、又は、自動化された、特に高度自動化された、又は自律的な走行動作のために予め設定される最高速度、を利用することができる。すなわち、この実施形態では、車両の現在の速度は、特に、現在の予め設定された目標速度である。代替的に、たとえば、車両の現在の速度として、ないしは、推定範囲内で所定の減速を伴って車両を制動して停車させることができるか否かの判定のために利用される速度として、たとえば実際に走行している現在速度、すなわち車両が現在実際に走っている速度が、利用されることが意図される。自由走行のもとでは、このような現在の速度は、たとえば上で述べた速度、すなわち、車両の自由走行のもとでの自動化された、特に高度自動化された、又は自律的な走行動作の標準的な実行のために設定される速度に相当し、すなわち、たとえば車両運転者により設定される速度、又は、自動化された、特に高度自動化された、又は自律的な走行動作について設定される最高速度に相当する。しかし、それが不可能である交通状況の場合、たとえば渋滞のとき、及び/又は通行が混み合っているとき、及び/又は車両前方に他の低速の交通関与者がいるときなどには、現在実際に走行している車両の速度は低くなる。したがってこの実施形態では、そのような場合には、現在実際に走行している、車両のこのような低下した速度が車両の現在の速度、すなわち、推定範囲内で所定の減速を伴って停車するまで車両を制動することができるか否かの判定のために利用される速度として利用される。
【0010】
周辺検出センサのうちの1つだけが十分な範囲を有していないことが判定された場合、すなわち、その推定範囲が十分でないと判定された場合、又は、周辺検出センサの所定のサブセット(部分集合)だけがそれぞれ十分な範囲を有していないことが判定された場合、すなわち、それらの推定されたそれぞれの範囲が十分でないと判定された場合、車両は引き続き自動化された、特に高度自動化された、又は自律的な走行運転で動作することが好ましく、このとき車両の速度はたとえば一定に保たれ、又は、たとえば特にパーセントで表される所定の相対値の分だけ、又は、特に単位km/hで表される所定の絶対値の分だけ、所定どおりにわずかに低減され、運転タスクを引き継ぐ要請が、たとえば即座に、又は所定の遅延時間の後に、車両運転者に出力される。このとき、たとえば車両の速度が低減される相対値又は絶対値を1つだけ事前に設定してもよく、又は、たとえばそれぞれの推定範囲に応じて利用される、複数の相対値及び/又は複数の絶対値が設定されることが意図されていてよい。すなわちその場合、相対値及び/又は絶対値がそれぞれの範囲の値又は範囲の値のレンジに割り当てられたうえで、それぞれの推定範囲の値又は範囲の値のレンジに割り当てられている相対値又は絶対値が利用される。
【0011】
全ての周辺検出センサが、又は所定のサブセットよりも多くの周辺検出センサが、又は所定のサブセットとは異なる周辺検出センサが、それぞれ十分な範囲を有していないと判定された場合、すなわちそれぞれの推定範囲が十分でないと判定された場合、車両は引き続き自動化された、特に高度自動化された、又は自律的な走行運転で動作することが好ましく、このとき車両の速度はたとえば所定どおりに大幅に、すなわち上述した所定どおりのわずかな低減よりも大幅に低減され、運転タスクを引き継ぐ要請が、たとえば即座に車両運転者に出力される。それ以外の場合、特に全ての周辺検出センサが十分な範囲をそれぞれ有している場合には、すなわち、それぞれの推定範囲が十分である場合には、自動化された、特に高度自動化された、又は自律的な走行動作が特に制限なく続行されるのが好ましい。
【0012】
このように本発明の方法は、周辺検出センサの範囲に応じて、自動化された、特に高度自動化された、又は自律的な走行動作を制御することを可能にする。その際に、周辺検出センサの全てが十分な範囲を有しているわけではない状態が生じていることが確認されると、上で説明したように、次の操作オプションのうちの1つが選択されることが好ましい:
-オプションA:一定の速度で、又はわずかにのみ低減された速度で、走行を続け、即座に、又は遅延時間を伴って、引継要請を車両運転者に出力する。
-オプションB:大幅に低減された速度で走行を続け、引継要請を即座に出力する。
【0013】
周辺検出センサのうちの1つだけが、又は周辺検出センサのうちの所定のサブセットだけが、十分な範囲を有していない場合には、オプションAが選択されることが好ましい。そうでない場合には、すなわち全ての周辺検出センサが、又は所定のサブセットよりも多い、もしくは所定のサブセットとは異なる周辺検出センサが、十分な範囲を有していない場合には、オプションBが選択されることが好ましい。
【0014】
本発明の解決策により、自動化された、特に高度自動化された、又は自律的な、車両の安全な走行動作が確保され、それは、周辺検出センサがその範囲に関して所定の要求事項を満たしている場合にのみ、そのような走行動作が許容されることによる。
【0015】
上述した方法で、車両運転者に車両の運転タスクを引き継ぐ要請が出力された後、このような要請が出力されてから、予め設定可能な又は予め設定された引継時間インターバル内で車両運転者が運転タスクを引き継がなかった場合には、自動化された、特に高度自動化された、又は自律的な走行動作が終了されることが好ましい。その場合、車両の車両乗員及び他の交通関与者の危険を回避するために、車両がたとえば安全な場所へと誘導されて、停車するまで制動される。たとえばその場合、車両が走行している車線の内部で停車するまで制動され、すなわち、更に別の場所まで誘導されないことが意図されていてもよい。
【0016】
上述した解決策の背景には、自動化された、特に高度自動化された、又は自律的な走行動作が、所定の最高速度を下回る速度向けに設計されているという問題がある。このとき車両の速度は、周辺検出センサの範囲に合わせて適合化されていなければならず、それによって車両が適切に、特に所定の減速を伴って、周辺検出センサの検出領域に急に入ってくる障害物に反応できるようになっている。その際に問題となるのは、周辺検出センサの範囲が、汚れ、たとえば過熱などの機能障害、及び/又は、たとえば霧及び/又は雨などの気象条件によって、自動化された、特に高度自動化された、又は自律的な、現在の速度での安全な走行動作を確保できなくなる程度まで減少し得るということにある。上述した解決策は、そうした場合でどのような措置が講じられるべきかを明確にする。
【0017】
特に、上で説明した方式により、たとえば少なくとも1つのレーダーセンサ、少なくとも1つのライダーセンサ、及び少なくとも1つのカメラセンサといった、異なる型式の周辺検出センサのそれぞれの範囲が推定される。このようなさまざまなセンサ技術によって、それぞれの利点を活用することができ、更に特にそれぞれの欠点を補い合うことができる。
【0018】
ライダーセンサやレーダーセンサでは、範囲の推定が、たとえば地面反射及び/又は物体反射の強度と、反射場所からの距離との評価に基づく。カメラセンサでは、範囲の推定が、たとえば検出可能な最も遠くの物体までの距離の決定に基づく。車両から遠ざかっていく物体との距離を追跡することで、範囲を推定することもできる。その場合、周辺検出センサの推定された範囲は、追跡される物体が、周辺検出センサによって認識されなくなったときの距離に相当する。
【0019】
たとえば、全ての周辺検出センサが、自動化された、特に高度自動化された、又は自律的な走行動作のためにそれぞれ十分な範囲を有しているか否かがチェックされ、それは、周辺検出センサについてそれぞれ推定された範囲のうちから最小の範囲が周期的に選択され、推定されたその最小の範囲が、自動化された、特に高度自動化された、又は自律的な走行動作のために十分であるか否かがチェックされることによる。したがって、このようなチェックを、全ての周辺検出センサについて実行しなくてよく、推定された最小の範囲を有する周辺検出センサについてのみ実行するだけでよいという利点がある。
【0020】
1つの考えられる実施形態では、運転タスクを引き継ぐ要請が車両運転者に出力されるまでの所定の遅延時間の間に、周辺検出センサが、自動化された、特に高度自動化された、又は自律的な走行動作のために十分な推定範囲を有していると判定された場合には、自動化された、特に高度自動化された、又は自律的な走行動作が当初の速度で続行され、運転タスクを引き継ぐ要請が車両運転者に出力されないことが意図される。このとき当初の速度は、特に、速度が低減される前に車両によって走行されていた速度であり、すなわち、このような速度低減の前に、推定範囲内で所定の減速を伴って車両を制動して停車させることができるか否かの判定のために利用されていた速度である。これは上で説明したとおり、たとえば自動化された、特に高度自動化された、又は自律的な走行動作について設定される目標速度、たとえば車両運転者により設定される速度、又は自動化された、特に高度自動化された、又は自律的な走行動作について設定される最高速度であってよく、又は、上で説明したように、特にそれぞれの交通状況に基づいて生じるこれよりも低い速度であってよい。それにより、車両の乗員や他の交通関与者にとってまだ危険を表すものではない、一時的にのみ十分でない推定範囲に基づく、不必要な引継要請が回避される。当初の車両速度は、車両の現在の速度として、ないしは、推定範囲内で所定の減速を伴って車両を制動して停車させることができるか否かの判定のための速度として利用され、特に、維持されるべきである当初の速度、又は自動化された、特に高度自動化された、又は自律的な走行動作の続行にあたって車両が再びこれに合わせて加速されるべきである車両の当初の速度が利用される。すなわち、当初の車両速度は、特に所定の目標速度、たとえば車両運転者によって設定される速度、又は自動化された、特に高度自動化された、又は自律的な走行動作について設定される最高速度、又は、上述したように、たとえば交通状況に基づいて生じた低い速度として利用されるが、現在利用されている可能性のある、低減された車両の速度として利用されるのではない。
【0021】
1つの考えられる実施形態では、それぞれの推定範囲がまず妥当性についてチェックされてから、それぞれの妥当性がチェックされた推定範囲を用いて、上で説明した以後の方法ステップが実行される。すなわち、特に、それぞれの妥当性についてチェックされた推定範囲を用いて(参照して)、周辺検出センサが、自動化された、特に高度自動化された、又は自律的な走行動作のために十分な推定範囲をそれぞれ有しているか否かがチェックされる。これによって、特に、物体が誤って認識されなくなる可能性がある、実際には存在しない、範囲の広すぎる推定が回避される。それにより、車両の乗員や他の交通関与者の危険が回避される。
【0022】
それぞれの周辺検出センサの推定範囲に妥当性がないと評価されるのは、推定範囲によれば検出していなければならないはずの物体を、たとえば周辺検出センサが所定の期間にわたって検出しない場合である。このような物体が、周辺検出センサの推定範囲内にあるという情報は、たとえば他の周辺検出センサにより形成される。
【0023】
周辺検出センサの推定範囲に妥当性がないと評価された場合、周辺検出センサの推定範囲が、更に小さい値へと修正されることが好ましい。このことは、たとえば推定範囲が値ゼロに設定されることに帰結する。これにより、周辺検出センサの推定範囲が、少なくとも、実際の範囲に相当することが保証され、又は安全性の理由から、実際の範囲よりも狭いことが保証される。それにより、周辺検出センサの範囲に制約があることを理由に存在する物体が検知されなかったり検知が遅くなりすぎたりして、そのような物体への反応がなされないことが回避され、又は、十分に反応がなされないことが回避される。
【0024】
範囲という用語は、特に、それぞれの周辺検出センサの検出範囲であると理解される。したがって推定範囲は、それぞれの周辺検出センサの推定された検出範囲である。
【0025】
以下では、本発明の実施例を、図面を用いて詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】周辺検出センサを有する車両を模式的に示す。
図2】自動走行運転で動作させる方法中に推定される、車両の周辺検出センサの範囲の妥当性チェックの実施例を模式的に示す。
図3】妥当性チェックの別の実施例を模式的に示す。
図4】妥当性チェックの別の実施例を模式的に示す。
図5】妥当性チェックの別の実施例を模式的に示す。
図6】妥当性チェックの別の実施例を模式的に示す。
図7】妥当性チェックの別の実施例を模式的に示す。
図8】妥当性チェックの別の実施例を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
いずれの図においても、相互に対応する部分には、同一の参照符号を付している。
【0028】
以下において、図1に例示として示す車両Fを自動走行運転(自動化された、特に高度自動化された、又は自律的な走行動作)で動作させる方法について説明する。この方法では、後に詳述するように、車両Fの周辺検出センサSのそれぞれの範囲Rが推定される。この推定範囲Rは、妥当性についてチェックされることが好ましい。図2~8は、このような妥当性チェックのさまざまな例を示している。
【0029】
自動化された、特に高度自動化された、又は自律的な走行動作は、所定の最高速度を下回る速度向けに設計されている。このとき車両Fの速度は、車両Fが適切に、特に所定の減速をもって、周辺検出センサSの検出領域に急に入ってくる障害物に反応できるように、周辺検出センサSの範囲に合わせて適合化されていなければならない。その際に問題となるのは、周辺検出センサSの範囲が、汚れ、たとえば過熱などの機能障害、及び/又は、たとえば霧及び/又は雨などの気象条件によって、自動化された、特に高度自動化された、又は自律的な、現在の速度での安全な走行動作を確保できなくなる程度まで減少し得るということにある。以下に説明する解決策は、そうした場合にどのような措置が講じられるべきかを明確にする。
【0030】
要約すると、ここで説明している、自動化された、特に高度自動化された、又は自律的な走行動作で車両Fを作動させるための方法では、車両Fの周辺検出センサSのそれぞれの範囲Rが、周辺検出センサSのセンサ信号の評価によって推定されることが意図される。その対象となるのは、特に、車両Fの周辺検出センサSのうち、図1~8に示すように、車両Fの進行方向で車両Fの周辺を検出するために設けられるものだけである。周辺検出センサSが、自動化された、特に高度自動化された、又は自律的な走行動作のために十分な推定範囲Rを有しているか否かがチェックされる。それぞれの推定範囲Rが十分であるとみなされる、すなわち評価されるのは、この推定範囲R内で所定の減速を伴って車両Fを制動して停車させることができる場合であり、及び/又はそれぞれの推定範囲Rが、車両Fの現在の速度に対して設定される最小センサ範囲を超えている場合である。
【0031】
周辺検出センサSのうちの1つだけが十分な推定範囲Rを有していないと判定された場合、又は、周辺検出センサSの所定のサブセットだけがそれぞれ十分な推定範囲Rを有していないと判定された場合、車両Fは引き続き自動化された、特に高度自動化された、又は自律的な走行運転で動作し、このとき車両Fの速度は一定に保たれ、又は、たとえば特にパーセントで表される所定の相対値の分だけ、又は、特に単位km/hで表される設定された絶対値の分だけ、所定どおりにわずかに低減され、運転タスクを引き継ぐ要請が、即座に、又は所定の遅延時間後に車両Fの車両運転者に出力される。このとき、たとえば車両Fの速度が低減される1つの相対値又は絶対値だけが設定されることが意図されていてよく、又は、たとえばそれぞれの推定範囲Rに応じて利用される、複数の相対値及び/又は複数の絶対値が設定されることが意図されていてよい。すなわちその場合、相対値及び/又は絶対値がそれぞれの範囲の値又は範囲の値のレンジに割り当てられたうえで、それぞれの推定範囲Rの範囲の値又は範囲の値のレンジに割り当てられている相対値又は絶対値が利用される。
【0032】
全ての周辺検出センサSが、又は所定のサブセットよりも多くの周辺検出センサSが、又は所定のサブセットとは異なる周辺検出センサSが、それぞれ十分な推定範囲Rを有していないと判定された場合、車両Fは引き続き自動化された、特に高度自動化された、又は自律的な走行運転で動作し、このとき車両Fの速度はたとえば所定どおりに大幅に、すなわち上で挙げた所定どおりのわずかな低減よりも大幅に、低減され、即座に、運転タスクを引き継ぐ要請が車両Fの車両運転者に出力される。
【0033】
以下において、このような解決策について再度詳細に説明する。
【0034】
車両Fは、自動化された、特に高度自動化された、又は自律的な走行動作のために設定されている。車両Fは、たとえば、特にレーダーセンサ、ライダーセンサ、及びカメラセンサといった、それぞれ異なる型式の3つの周辺検出センサSを備え、これらは車両Fの進行方向で周辺を検出するために設けられる。本方法は、3つよりも多い周辺検出センサSによっても、同様の方式で同じように機能する。
【0035】
自動化された、特に高度自動化された、又は自律的な走行動作は、たとえば60km/hである所定の最高速度よりも下方でのみ可能である。自動化された、特に高度自動化された、又は自律的な走行動作のとき、車両Fは最大で所定の最高速度まで加速される。車両運転者がこれよりも高速で走行したいときは、運転タスクを自分で担い、それに伴って、自動化された、特に高度自動化された、又は自律的な走行動作を終了させなければならない。
【0036】
たとえば、範囲の推定は、周期的に、特に時間周期的に、実行される。それぞれの周辺検出センサSについて、その範囲Rは、たとえば各々の時間周期ごとに推定される。ライダーセンサやレーダーセンサでは、このような推定は、たとえば地面反射及び/又は物体反射の強度、及び反射場所との距離の評価に基づく。カメラセンサでは、推定は、たとえば検出可能な最も遠くの物体までの距離の決定に基づく。車両Fから遠ざかっていく物体までの距離を追跡することでセンサ範囲を判定し、特に推定することもできる。その場合、周辺検出センサSの範囲R、特に推定範囲Rは、追跡される物体が、周辺検出センサSによって認識されなくなったときの距離に相当する。
【0037】
たとえば、車両Fの現在の速度での自動化された、特に高度自動化された、又は自律的な走行動作を許容するために必要である最小センサ範囲が設定される。すなわち、それぞれの周辺検出センサSの推定範囲Rは、それが最小センサ範囲よりも広い場合、自動化された、特に高度自動化された、又は自律的な走行動作(走行運転)のために十分である。
【0038】
自動化された、特に高度自動化された、又は自律的な走行動作では、たとえばここで説明している例では3つの周辺検出センサSについて推定された範囲Rのセット(集合)から、最小の推定範囲Rが周期的に選択されて、この最小の推定範囲Rが最小センサ範囲よりも広いか否かがチェックされる。すなわち全ての周辺検出センサSが、自動化された、特に高度自動化された、又は自律的な走行動作のために十分な推定範囲Rを有するか否かが判定される。それが該当する場合、自動化された、特に高度自動化された、又は自律的な走行動作が通常通り実行される。
【0039】
推定範囲Rのセットのうち、推定範囲Rのうちの1つだけが最小センサ範囲よりも狭い場合、すなわち、周辺検出センサSのうちの1つだけが、自動化された、特に高度自動化された、又は自律的な走行動作のために十分な推定範囲Rを有していない状態が生じている場合、運転タスクを引き継ぐように車両運転者が要請されることが好ましく、自動化された、特に高度自動化された、又は自律的な走行動作はさしあたり変更なしに、又はわずかに低減された速度をもって、続行されることが好ましい。このような引継要請は所定の待機時間の後で初めて、すなわち所定の遅延時間をもって、出力されることが好ましい。特に引継要請は、周辺検出センサSのうちの1つだけが十分な推定範囲Rを有していない状態が、待機時間の経過時に依然として生じている場合にのみ出力される。
【0040】
全ての周辺検出センサSが再び十分な推定範囲Rを有する状態が待機時間中に生じた場合、運転タスクを車両運転者に引き渡す必要性はなくなり、その場合には引継要請が出力されず、自動化された、特に高度自動化された、又は自律的な走行動作が変更なく続行されることが好ましい。
【0041】
自動化された、特に高度自動化された、又は自律的な走行動作は、引継要請の出力後に車両運転者が、引継要請の出力後の設定可能な、又は設定された、引継時間インターバル内に運転タスクを引き継がなかった場合には、終了されることが好ましい。
【0042】
推定範囲Rのセットのうち、複数の範囲Rが最小センサ範囲よりも狭い場合、すなわち、複数の周辺検出センサSが、自動化された、特に高度自動化された、又は自律的な走行動作のために十分な推定範囲Rを有していない状態が生じている場合、車両運転者が運転タスクを引き継ぐように要請されることが好ましく、車両Fが所定の速度まで大幅に減速されるブレーキ介入を伴って、自動化された、特に高度自動化された、又は自律的な走行動作が続行されることが好ましい。要請後の設定可能な、又は設定された、引継時間インターバル内に車両運転者が運転タスクを引き継がなかった場合には、自動化された、特に高度自動化された、又は自律的な走行動作が終了されることが好ましい。
【0043】
上述した各方法ステップ、特に、車両Fの周辺検出センサSのそれぞれの範囲Rが推定された後の各方法ステップは、これらの推定範囲Rの妥当性チェックの後で初めて実行されることが好ましい。このとき、それぞれの周辺検出センサSの推定範囲Rに妥当性がないと評価されるのは、たとえば周辺検出センサSが、推定範囲によれば検出していなければならないはずの特定の物体を所定の期間にわたって検出していない場合である。このような特定の物体が推定範囲R内にあるという情報は、たとえば他の周辺検出センサSを参照して形成される。周辺検出センサSの推定範囲Rに妥当性がないと評価された場合には、これが更に小さい値へと修正されることが好ましい。極端なケースでは、推定範囲Rの値をゼロに設定することもできる。
【0044】
詳細には、それぞれの周辺検出センサSの推定範囲Rの妥当性チェックはたとえば次のように実行される:
関連する周辺領域、たとえば車両Fの車線上及び隣接車線上で、融合物体とも呼ばれる特定の物体、たとえば動いている他の車両F1,F2,F3が、センサデータの融合によって認識される。周辺検出センサSにより推定された範囲Rは、特に本方法を実施し、それに応じて設計及び設定されるシステムであって、特に車両Fの構成要素であり、特に自動化された、特に高度自動化された、又は自律的な、車両Fの走行動作を実行するために設計及び設定されたシステムにより、融合物体を参照したうえで妥当性チェック、すなわち確認がされる。
【0045】
周辺検出センサSの推定範囲Rが妥当性ありと分類、すなわち確認されるのは、融合物体が十分な品質をもって認識され、信号伝達されている場合である。周辺検出センサSの推定範囲Rが妥当性なしと分類されるのは、融合物体が、又は融合物体のうちの1つ若しくは複数が、十分な品質をもって認識されず、信号伝達されていない場合である。
【0046】
十分な品質をもって認識されず、信号伝達されないこのような融合物体は逆指標とみなされる。逆指標が認識されたとき、これは、妥当性のない推定範囲Rを示す示唆を与えている可能性がある。
【0047】
逆指標の候補は、それが逆指標として確認される前に、一連の基準を満たしていなければならないことが好ましい。逆指標は、たとえば周辺検出センサSの推定範囲R内に存在しなければならない。逆指標は、たとえば定められた検知領域、すなわち周辺検出センサSの検出領域内に存在しなければならない。たとえば逆指標は、周辺検出センサSによって検出可能でなければならない。逆指標の候補、すなわち物体、特に融合物体は、周辺検出センサSにとって検出可能であるために、たとえば所定の特性、たとえば所定の反射性を有していなくてはならない。逆指標の候補は、たとえば周辺検出センサSに対して隠れていてはならない。物体がたとえば逆指標の候補にすぎず、又はすでに逆指標であるのは、それが周辺検出センサSによって十分な頻度で認識されない場合、及び/又は、物体、特に融合物体に関わる、周辺検出センサSのヒット率及び/又はたとえば真陽性率(True-Positive-Rate)が、所定の最低ヒット率及び/又は真陽性率と相違しており、特に、所定の最低ヒット率及び/又は所定の真陽性率を下回っている場合である。物体が、たとえば逆指標の候補にすぎず、又はすでに逆指標であるのは、それが周辺検出センサSによって検出されているが、検出グレード及び/又は検出品質が十分でない場合である。物体が、たとえば逆指標の候補にすぎず、又はすでに逆指標であるのは、生じている状況のもとで周辺検出センサSがセンサ仕様に従って物体の優先順位を下げたり見落としたりすることが許可されていない場合、たとえば信号インターフェースがフルである場合、たとえば周辺検出センサSがセンサ仕様に基づいて物体を重要でないと分類することを許可していない場合である。フルである信号インターフェースという概念は、特に、それぞれの周辺検出センサSが特にバス通信を介して、たとえば評価ユニットへ、限られた数の物体しか伝送できないことであると理解される。非常に多くの物体が検知された場合、すなわち最大の伝送可能数よりも多く検知された場合、それぞれの周辺検出センサSは、どの物体を伝送するか優先順位付けをしなければならない。このことは特に、周辺検出センサSに仕様で指定されている所定の優先順位規則を参照して行われる。
【0048】
図2~8にはそれぞれ、本例において複数の車線を含む車道上に車両Fとともに存在する、すなわち、それぞれ車両Fの車線上又はこれに隣接する車線上に存在する、他の車両F1,F2,F3としての融合物体が示されている。これらの車両はそれぞれ、車両Fよりも前方に存在する。推定範囲Rの妥当性チェックがされるべき周辺検出センサSによって、他の車両F1,F2,F3のうちのどれが検出されたかが、チェックマークで模式的に図示されている。周辺検出センサSによって、他の車両F1,F2,F3のうちのどれが検出されなかったかが、バツ印で模式的に図示されている。周辺検出センサSによって検出されなかった他の車両F1,F2,F3は、推定範囲Rの妥当性についての逆指標となる。周辺検出センサSの推定範囲Rは、破線によって示されている。
【0049】
図2では、周辺検出センサSが、推定範囲R内にある両方の他の車両F1,F2を検出している。したがって、他の車両F1,F2が推定範囲R内にあり、周辺検出センサSの実際の範囲内にもあることが確認される。推定範囲Rには逆指標はない。したがって、周辺検出センサSの推定範囲Rは妥当性があると評価される。
【0050】
図3では、周辺検出センサSの推定範囲Rの外部にあるにもかかわらず、周辺検出センサSが他の車両F1を検出している。推定範囲Rには逆指標はない。したがって、周辺検出センサSの推定範囲Rは妥当性があると評価される。
【0051】
図4では、周辺検出センサSはより遠方にある第2の他の車両F2を検出していないが、この車両F2は、周辺検出センサSの推定範囲R内にあるので、この車両F2を検出していなければならないはずである。これにより、第2の他の車両F2は、周辺検出センサSの実際の範囲の外部にあることが確認される。したがって、第2の他の車両F2は、推定範囲Rについての逆指標となる。これよりも遠く離れていない他の車両F1は、周辺検出センサSによって検出されている。したがって、この第1の他の車両F1までのセンサ範囲が確実であることが確認される。周辺検出センサSの推定範囲Rは逆指標に基づいて妥当性がないと評価され、第1の他の車両F1までの、確実であることが確認されたセンサ範囲BRへと修正され、すなわち、確実であることが確認されたセンサ範囲BRが、新たな推定範囲Rとなる。
【0052】
図5では、周辺検出センサSは、第1の他の車両F1を検出していないが、この車両F1は、周辺検出センサSの推定範囲R内にあるので、この車両F1を検出していなければならないはずである。したがって、第1の他の車両F1は周辺検出センサSの実際の範囲の外部にあることが確認される。周辺検出センサSは、同じく推定範囲R内にある、更に遠く離れた第2の他の車両F2を検出しているものの、更に遠く離れた第2の他の車両F2のこのような検出は、これよりも遠く離れていない第1の他の車両F1の不検出に基づいて不確実であると確認される。第1の他の車両F1は、推定範囲Rについての逆指標となる。したがって、周辺検出センサSの推定範囲Rは妥当性がないと評価される。周辺検出センサSの、確実であると確認されるセンサ範囲BRが存在しないため、この範囲はゼロに設定される。したがって、周辺検出センサSの新たな推定範囲Rはゼロとなる。
【0053】
図6では、周辺検出センサSは第2の他の車両F2を検出していないが、この車両F2は周辺検出センサSの推定範囲R内にあるので、この車両F2を検出していなければならないはずである。したがって、第2の他の車両F2は、周辺検出センサSの実際の範囲の外部にあることが確認される。周辺検出センサSは、同じく推定範囲R内にある、更に遠く離れている第3の他の車両F3を検出しているものの、更に遠く離れている第3の他の車両F3のこのような検出は、これよりも遠く離れていない第2の他の車両F2の不検出に基づいて不確実であると確認される。第2の他の車両F2は、推定範囲Rについての逆指標となる。車両Fの周辺検出センサSの最も近くに位置する第1の他の車両F1は、周辺検出センサSによって検出されている。したがって、この第1の他の車両F1までの周辺検出センサSの範囲が、確実であると確認される。周辺検出センサSの推定範囲Rは逆指標に基づいて妥当性がないと評価され、確実であることが確認された、第1の他の車両F1までのセンサ範囲BRに合わせて修正される。したがって、これが新たな推定範囲Rとなる。
【0054】
図7では、周辺検出センサSは他の車両F1を検出していないが、この車両F1は周辺検出センサSの推定範囲R内にあるので、この車両F1を検出していなければならないはずである。したがって、他の車両F1は、周辺検出センサSの実際の範囲の外部にあることが確認される。それに伴って他の車両F1は、推定範囲Rについての逆指標となる。したがって、周辺検出センサSの推定範囲Rは妥当性がないと評価される。確実であることが確認されている、周辺検出センサSのセンサ範囲BRが存在しないため、この範囲は値ゼロに設定される。したがって、周辺検出センサSの新たな推定範囲Rはゼロとなる。
【0055】
図8では、周辺検出センサSは第1の他の車両F1を検出していないが、この車両F1は周辺検出センサSの推定範囲R内にあるので、この車両F1を検出していなければならないはずである。したがって、第1の他の車両F1は、周辺検出センサSの実際の範囲の外部にあることが確認される。周辺検出センサSは、更に遠く離れた第2の他の車両F2を、それが周辺検出センサSの推定範囲Rの外部にあるにもかかわらず検出しているものの、更に遠く離れた第2の他の車両F2のこのような検出は、これよりも遠くに離れていない第1の他の車両F1の不検出に基づき、不確実であると確認される。第1の他の車両F1は、周辺検出センサSの推定範囲Rについての逆指標となる。したがって、周辺検出センサSの推定範囲Rは、妥当性がないと評価される。確実であることが確認されている、周辺検出センサSのセンサ範囲BRが存在しないため、この範囲は値ゼロに設定される。したがって、周辺検出センサSの新たな推定範囲Rはゼロとなる。
【0056】
たとえば、周辺検出センサSの推定範囲Rを参照して、システム範囲が判定される。システム範囲は、たとえば車両Fの全ての周辺検出センサSの推定範囲Rの最小値に相当する。
【0057】
たとえば、特に車両Fの周辺検出センサSの所定のサブセットの推定範囲Rを参照して、部分システム範囲が判定される。たとえば部分システム範囲は、メインセンサの推定範囲Rの最小値に相当する。すなわち、周辺検出センサSのサブセットはこのようなメインセンサ、たとえばレーダーセンサとカメラセンサだけを含む。代替として、サブセットは、たとえばそれぞれの状況での最良の周辺検出センサS、すなわち、その状況のもとで最良の、すなわち最大の、推定範囲Rを有する、周辺検出センサSのみを含む。その場合に部分システム範囲は、たとえばそれぞれの状況での、そのような最良の周辺検出センサSの推定範囲Rの最小値に相当する。
【0058】
たとえば車両Fは、上ですでに述べたように、3つの周辺検出センサSを有する。
【0059】
考えられる1つの実施例では、第1の周辺検出センサSは70mの推定範囲Rを有し、第2の周辺検出センサSは150mの推定範囲Rを有し、第3の周辺検出センサSは200mの推定範囲を有する。システム範囲としての、3つすべての推定範囲Rの最小値は70mとなる。したがって、現在の状況での部分システム範囲としての、2つの最良の周辺検出センサSの推定範囲Rの最小値は150mになる。
【0060】
考えられる1つの実施例では、第1の周辺検出センサSは0mの推定範囲Rを有し、第2の周辺検出センサSは0mの推定範囲Rを有し、第3の周辺検出センサSは200mの推定範囲を有する。システム範囲としての、3つすべての推定範囲Rの最小値は0mとなる。したがって、現在の状況での部分システム範囲としての、2つの最良の周辺検出センサSの推定範囲Rの最小値は0mになる。
【0061】
考えられる1つの実施例では、第1の周辺検出センサSは0mの推定範囲Rを有し、第2の周辺検出センサSは150mの推定範囲Rを有し、第3の周辺検出センサSは200mの推定範囲を有する。システム範囲としての、3つすべての推定範囲Rの最小値は0mとなる。現在の状況での部分システム範囲としての、2つの最良の周辺検出センサSの推定範囲Rの最小値は150mになる。
【0062】
その場合、たとえば自動化された、特に高度自動化された、又は自律的な走行動作のために十分でないシステム範囲のもとで、運転タスクを引き継ぐ要請が車両運転者に出力されることが意図される。自動化された、特に高度自動化された、又は自律的な走行動作のために部分システム範囲が十分であるケースでは、たとえば車両運転者が運転タスクを引き継ぐまで、追加的に車両Fの速度が一定に保たれ、又は軽微に低減される。自動化された、特に高度自動化された、又は自律的な走行動作のために部分システム範囲が十分でないケースでは、たとえば車両Fが大幅に減速され、又は、特にいっそう強力な別のシステム反応が惹起される。
【0063】
自動化された、特に高度自動化された、又は自律的な走行動作のために部分システム範囲が十分であるケースでは、たとえば、運転タスクを引き継ぐ要請がさしあたり車両運転者に出力されず、車両Fの走行が部分システム範囲を参照したうえで、さしあたり所定の最大時間続行されることが意図されてよい。この時間にシステム範囲が再び改善される場合があり、システム範囲に関して、及びその結果として生じる、自動化された、特に高度自動化された、又は自律的な走行動作についての速度に関して、制約がなくなる。システム範囲が再び改善されなかった場合、すなわち、特に既存の問題が引き続き存続する場合には、別のシステム反応、特に、運転タスクを引き継ぐ要請の出力を車両運転者に対して行うことができる。このように、車両運転者に対して運転タスクを引き継ぐようにというこのような要請が時間的に遅延して出力され、このような時間的遅延のなかでシステム範囲が再び十分に改善された場合には、このような出力が不要となる。
【0064】
以上を簡略にまとめると、たとえば、特に1つ又は複数のメインセンサの推定範囲Rが、自動化された、特に高度自動化された、又は自律的な走行動作の実行のために十分でなくなっている場合、このことは所定の時間のあいだ、他の周辺検出センサSによってカバーされ、それは、これらの他の周辺検出センサSが十分な推定範囲Rを有していて、それに伴ってその状況を掌握できる場合であることが意図される。そして、この所定の時間の経過後に初めて、不十分な推定範囲Rに対して対応がなされ、それは特に、運転タスクを引き継ぐ要請が車両運転者に出力されることによる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0065】
【文献】欧州特許出願公開第19934670号明細書
【文献】独国特許発明第3735267号明細書
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8