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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】栽培方法及び栽培液
(51)【国際特許分類】
   A01G 31/00 20180101AFI20241126BHJP
【FI】
A01G31/00 601A
A01G31/00 602
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021008209
(22)【出願日】2021-01-21
(65)【公開番号】P2022112383
(43)【公開日】2022-08-02
【審査請求日】2023-11-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000105947
【氏名又は名称】サカタインクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100214363
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】石塚 崇
(72)【発明者】
【氏名】塩島 瑞生
(72)【発明者】
【氏名】望月 保嗣
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-216872(JP,A)
【文献】特開2011-025203(JP,A)
【文献】国際公開第2018/158638(WO,A1)
【文献】特開2011-110028(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 31/00
A01G 7/00
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料ガスを圧力0.1~10気圧の条件でプラズマ化してプラズマ含有ガスを製造し、プラズマ含有ガスから直径が200μm以下であるプラズマ含有ガスの泡を栽培液中に生成して含有させて得られ直径が200μm以下であるプラズマ含有ガスの泡を含有する栽培液を用いる、栽培方法。
【請求項2】
原料ガスが、空気、酸素、二酸化炭素、窒素及び水蒸気からなる群より選ばれる1種類
以上である、請求項1に記載の栽培方法。
【請求項3】
プラズマ含有ガスの温度が0~99℃である、請求項1又は2に記載の栽培方法。
【請求項4】
原料ガスを圧力0.1~10気圧の条件でプラズマ化してプラズマ含有ガスを製造するプラズマ含有ガス製造手段、及び
プラズマ含有ガスから直径が200μm以下のプラズマ含有ガスの泡を栽培液中に生成して含有させる泡発生手段、
を少なくとも備える、栽培システム。
【請求項5】
原料ガスを圧力0.1~10気圧の条件でプラズマ化して得られたプラズマ含有ガスから生成した直径が200μm以下であるプラズマ含有ガスの泡を含有する、栽培液。
【請求項6】
原料ガスを圧力0.1~10気圧の条件でプラズマ化してプラズマ含有ガスを製造するプラズマ含有ガス製造手段、及び
得られたプラズマ含有ガスから直径が200μm以下のプラズマ含有ガスの泡を栽培液中に生成して含有させる泡発生手段、
を少なくとも備える、栽培液の製造装置。
【請求項7】
原料ガスを圧力0.1~10気圧の条件でプラズマ化してプラズマ含有ガスを得る工程、及び
泡発生手段により、プラズマ含有ガスから直径が200μm以下のプラズマ含有ガスの泡を栽培液中に生成して含有させる工程、
を有する、栽培液の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ含有ガスの泡を含有する栽培液を用いる栽培方法に関する。
また、本発明は、プラズマ含有ガス製造手段及び泡発生手段を備える栽培システム、プラズマ含有ガスの泡を含有する栽培液、プラズマ含有ガス製造手段及び泡発生手段を備える栽培液の製造装置及びプラズマ含有ガスの泡を含有する栽培液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
直径が1mm未満の微細な気泡を含む液体は、微細な泡に起因する各種機能を発揮することから、多種多様な分野で注目され、多種多様な用途とすることが知られている。
特許文献1~3には、直径が1mm未満の微細な気泡を含む養液を用い、植物の栽培を行うことが記載されている。
【0003】
また、プラズマ含有ガスを、多種多様な用途に使用することが知られている。
特許文献4~5には、プラズマ含有ガスを微細な泡として液中に含む、除菌機能や洗浄機能を有するプラズマバブル液が記載されている。
【0004】
しかし、これらの特許文献1~5には、直径が500μm以下であり、原料ガスを圧力0.1~10気圧の条件でプラズマ化して得られるプラズマ含有ガスの泡を含有する栽培液を構成し、これを栽培方法に用いることは記載も示唆もされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-206448号公報
【文献】特開2008-22740号公報
【文献】特開2011-24475号公報
【文献】国際公開第2015/072461号
【文献】特開2016-203082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、栽培対象の生長調整機能に優れる栽培方法、栽培システム、栽培液、その栽培液の製造装置及びその栽培液の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記の課題を解決するために鋭意検討した結果、以下の発明を完成した。
項1:原料ガスを圧力0.1~10気圧の条件でプラズマ化して得られ、直径が500μm以下であるプラズマ含有ガスの泡を含有する栽培液を用いる、栽培方法。
項2:原料ガスが、空気、酸素、二酸化炭素、窒素及び水蒸気からなる群より選ばれる1種類以上である、項1に記載の栽培方法。
項3:プラズマ含有ガスの温度が0~99℃である、項1又は2に記載の栽培方法。
項4:原料ガスを圧力0.1~10気圧の条件でプラズマ化してプラズマ含有ガスを製造するプラズマ含有ガス製造手段、及び
直径が500μm以下のプラズマ含有ガスの泡を生成し栽培液中に含有させる泡発生手段、
を少なくとも備える、栽培システム。
項5:原料ガスを圧力0.1~10気圧の条件でプラズマ化して得られ、直径が500μm以下であるプラズマ含有ガスの泡を含有する、栽培液。
項6:原料ガスを圧力0.1~10気圧の条件でプラズマ化してプラズマ含有ガスを製造するプラズマ含有ガス製造手段、及び
直径が500μm以下のプラズマ含有ガスの泡を生成し栽培液中に含有させる泡発生手段、
を少なくとも備える、栽培液の製造装置。
項7:原料ガスを圧力0.1~10気圧の条件でプラズマ化してプラズマ含有ガスを得る工程、及び
直径が500μm以下のプラズマ含有ガスの泡を生成し栽培液中に含有させる工程、
を有する、栽培液の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、栽培対象の生長調整機能に優れる、栽培方法、栽培システム、栽培液、その栽培液の製造装置及びその栽培液の製造方法が提供される。本発明は、既存の栽培システムを大幅に改変することなく簡単に組み込むことができ、設備投資等のコスト面でも有利である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の栽培方法により、リーフレタスを栽培した際の12日目の生育状態を示すグラフ。
図2】本発明の栽培方法により、液体肥料を含む栽培液を用いてリーフレタスを栽培した際の22日目の生育状態を示す写真。
図3】本発明の栽培方法により、ミニトマトを栽培した際の35日目の生育状態を示す写真。
図4】本発明の栽培方法により、メロンを栽培した際の19日目の生育状態を示す写真。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明において、植物の生長を調整する(以下、「生長調整」という場合がある。)とは、発芽率の増減、苗立ち率の増減、葉面積増減、葉色の調整、草丈の調整、植物体重量調整、着花・着果・種子・果実の数又は重量の調整、果実糖度の増減、根の長さ、断面の直径又は分岐の数の増減等をいう。
【0011】
[栽培方法]
本発明の請求項1に係る発明は、原料ガスを圧力0.1~10気圧の条件でプラズマ化して得られ、直径が500μm以下であるプラズマ含有ガスの泡を含有する栽培液を用いる、栽培方法である。また、本発明の請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、原料ガスが空気、酸素、二酸化炭素、窒素及び水蒸気からなる群より選ばれる1種類以上である栽培方法である。さらに、本発明の請求項3に係る発明は、請求項1に係る発明において、プラズマ含有ガスの温度が0~99℃である栽培方法である。
【0012】
<栽培液>
請求項1~3に係る発明の栽培方法で用いられる栽培液は、原料ガスを圧力0.1~10気圧の条件でプラズマ化して得られ、直径が500μm以下であるプラズマ含有ガスの泡を含有する。
【0013】
(原料ガス)
請求項1~3に係る発明の栽培方法で用いられる原料ガスは、プラズマ化し得るガスであれば特に限定されない。例えば、空気、酸素、二酸化炭素、窒素、水蒸気、アルゴン、ヘリウム、一酸化二窒素、一酸化窒素、二酸化窒素、これらの1種類以上の混合ガス等からなる群より選ばれる1種類以上である。好ましくは、空気、酸素、二酸化炭素、窒素、及び水蒸気からなる群より選ばれる1種類以上である。
原料ガスは、プラズマ含有ガスを得るためにプラズマ処理空間に導入され、その少なくとも一部がプラズマ化される。プラズマ処理空間に導入された原料ガスは、プラズマの原料ガスになるとともにキャリヤーガスにもなる。
原料ガス源としては、原料ガスの収容容器(ガスボンベ)であってもよく、また、ガスとして空気を用いる場合には、外気取入れブロアであってもよい。
本発明者は、空気を原料ガスとした場合、特に植物の生長促進作用・発芽促進作用が発揮され、酸素、二酸化炭素又は窒素を原料ガスとした場合、特に植物の生長抑制作用・発芽抑制作用が発揮されることを見出した。
【0014】
(プラズマ含有ガス)
プラズマ含有ガスは、原料ガスをプラズマ処理空間に導入することで得られる。
プラズマ処理空間においてプラズマを生成する際の圧力は、0.1~10気圧であり、好ましくは0.7~1.5気圧である。温和な圧力条件とすることで、装置が大掛かりになるおそれがなく、コスト面で有利である。
【0015】
プラズマ含有ガスの温度は、特に限定されないが、栽培液の取扱性や栽培対象への影響等を踏まえ、0~99℃であることが好ましい。より好ましくは5~60℃、さらに好ましくは10~40℃である。
プラズマ含有ガスの温度が99℃を超えると、(i)プラズマ含有ガスが高温であることから安全性、取扱性等の点で問題が生じる、(ii)栽培対象が熱の影響を受け、適切な栽培ができなくなる、(iii)栽培液を構成する液状媒体が沸点100℃以下(例えば、水)の場合、栽培液が沸騰し、液中に微細な泡として含ませることが難しくなる、等の影響が生じるおそれがある。
プラズマ含有ガスの温度が0℃未満であると、(i)栽培対象が低温の影響を受け、適切な栽培ができなくなる、(ii)栽培液を構成する液状媒体が融点0℃(例えば、水)の場合、液が凍結し、液中に微細な泡として含ませることが難しくなる、等の影響が生じるおそれがある。
【0016】
原料ガスをプラズマ処理空間へ導入する際の原料ガス供給量は、特に限定されない。例えば、0.001~100000L/minであり、好ましくは0.01~10000L/min、より好ましくは0.1~1000L/min、さらに好ましくは1~1000L/minである。原料ガス供給量が0.001L/min未満であると、プラズマ含有ガスの生成量が少なくなるため、栽培液の生長調整機能が低下するおそれがある。また、100000L/minを超えると、装置が大掛かりになるおそれがあり、また、プラズマ含有ガス中のプラズマ濃度が低下して、栽培液の生長調整機能が低下するおそれがある。
【0017】
プラズマ原料ガスが導入されるプラズマ処理空間は、電源に連接する一対の電極の間に設けられる。電源から高周波、パルス波、マイクロ波等が一対の電極に印加され、放電開始電圧を超えると、プラズマ処理空間内に電界が形成される。導入された原料ガスは、その少なくとも一部がプラズマ処理空間でプラズマ化された後に、プラズマ含有ガスとして放出される。したがって、プラズマ含有ガスは、原料ガスの少なくとも一部をプラズマ化処理して得られるすべてのガスを含む。
【0018】
プラズマ処理空間において発生させる電界強度は、特に限定されない。例えば、1~1000kV/cm、好ましくは2~300kV/cmである。電界強度が1000kV/cmを超えると、装置が大掛かりとなりコスト面で不利となるおそれがあり、電界強度が1kV/cm未満であると、十分な量のプラズマを得ることができないおそれがある。
【0019】
電界の立ち上がり所要時間(及び立ち下がり所要時間)は、プラズマ処理空間において、電圧が連続して増加(又は減少)するのに要する時間である。電界の立ち上がり所要時間は、特に限定されず、原料ガスのガス種、圧力、原料ガス供給量、電界強度、処理電圧、処理電流等に基づき任意に設定される。例えば10μs以下であり、好ましくは50ns~5μsである。電界の立ち上がりに要する時間を10μs以下とするためには、電極にはパルス波を印加することが好ましい。
【0020】
プラズマ処理空間における電力は、特に限定されず、原料ガスのガス種、圧力、原料ガス供給量、電界強度、処理電圧、処理電流等に基づき任意に設定される。例えば100kW/h以下、好ましくは10kW/h以下とすることができる。電力が100kW/hを超えると、装置が大掛かりとなりコスト面で不利となることがある。
プラズマ処理空間における処理電圧は、特に限定されず、原料ガスのガス種、圧力、原料ガス供給量、電界強度、処理電流等に基づき任意に設定される。例えば10~1000V、好ましくは20~600V、より好ましくは40~500Vとすることができる。
プラズマ処理空間における処理電流は、特に限定されず、原料ガスのガス種、圧力、原料ガス供給量、電界強度、処理電圧等に基づき任意に設定される。例えば0.001~1000A、好ましくは0.01~500A、より好ましくは0.1~100Aとすることができる。
プラズマ処理空間においてパルス波により電界をかける際の周波数は、特に限定されず、原料ガスのガス種、圧力、原料ガス供給量、電界強度、処理電圧、処理電流等に基づき任意に設定される。例えば0.001kHz以上、好ましくは0.01kHz~300MHz、より好ましくは、0.1kHz~150MHzとすることができる。
【0021】
請求項1~3に係る発明の栽培方法におけるプラズマとしては、科学的に定義されたプラズマであれば特に制限なく用いられる。プラズマは、電離によって生じた荷電粒子を含む、エネルギーが高い気体状態のもので、イオンと電子の数が同数又はほぼ同数で、電気的に中性又はほぼ中性の状態であればよい。プラズマは、互いに離間した電極間での放電等の種々の方法で生成することができる。
【0022】
プラズマ含有ガス中のプラズマは、生成直後は発光を伴う高エネルギー状態となっている。このため、プラズマ原料ガスの種類に応じた色に発光し、様々な化学反応を誘起させることができる。プラズマ含有ガス中のプラズマは、エネルギーの一部を失うことで不可視状態となる。例えば、プラズマ含有ガス中のプラズマは、気流に乗り長距離移送される際に、徐々にエネルギーを失って消光し、最終的に不可視状態となる。また、例えば、プラズマ含有ガス中の発光しているプラズマから、エネルギーを奪う操作等により、消光させて不可視状態とすることができる。なお、プラズマ含有ガス中のプラズマが消光した場合であっても、生長調整機能を十分に発揮し得るプラズマが含まれていることを、本発明者は確認している。
【0023】
(栽培液の構成成分)
請求項1~3に係る発明の栽培方法で用いられる栽培液は、液状媒体を構成成分とする。液状媒体は、液状の媒体であって栽培対象に有害でないものであれば特に限定されない。例えば、水道水、工業用水、超純水、イオン交換水、蒸留水、有機溶剤からなる群より選ばれる1種類以上があげられる。請求項1~3に係る発明の栽培方法においては、水道水、工業用水、超純水、イオン交換水、蒸留水等の水を用いることが好ましい。
【0024】
また、必要に応じて、液状媒体に各種成分を添加した混合液を用いてもよい。液状媒体に含まれる各種成分としては、特に限定されないが、例えば、溶質又は分散質としての無機化合物、低分子有機化合物、高分子化合物等からなる群より選ばれる1種類以上があげられる。これらの液状媒体に含まれる各種成分を用いることで、大気圧低温プラズマが有する機能に加えて、所望の機能を付与した液とすることができる。
各種成分としては、例えば、肥料成分(N、P、K、微量元素等を供給し得る塩等)、生長促進剤、農薬成分(殺菌殺生物剤)、担体(固体担体又は液体担体等)、界面活性剤、油剤、乳剤、水和剤、糖類、水溶性高分子、無機鉱物、防腐剤、着色剤、安定化剤等があげられる。
各種成分の配合量は、特に限定されず、所望の機能を付与するのに必要な量とすればよい。
【0025】
(プラズマ含有ガスの泡)
請求項1~3に係る発明の栽培方法で用いられる栽培液は、原料ガスを圧力0.1~10気圧の条件でプラズマ化して得られ、直径が500μm以下であるプラズマ含有ガスの泡を含有する。
請求項1~3に係る発明の栽培方法において、栽培液に含まれるプラズマ含有ガスの泡の直径とは、各泡を完全な球体と仮定した場合における、その直径に相当する値をいう。プラズマ含有ガスの泡の直径は、例えば、ナノ粒子トラッキング解析法(NTA法)により、栽培液中の泡(粒子)の散乱光とブラウン運動パターンから求めることができる。また、例えば、バブル発生直後の気泡をハイスピードマイクロスコープカメラで撮影し、得られた画像を画像解析装置で解析することにより求めることもできる。
泡の直径は、好ましくは200μm以下、より好ましくは100μm以下である。また、泡の直径の下限値は特に限定されないが、例えば、0.1nm以上、好ましくは0.5nm以上、より好ましくは1nm以上である。
このような微細な泡は、互いに合泡して大きな泡となることがほとんどなく、表面張力の影響で効率よく液中に分散・拡散・溶解し、液中で長時間存在し得ることができる。
このような微細な泡は、いわゆるナノバブル、ファインバブル又はマイクロバブルのいずれか1つ以上として知られている。請求項1~3に係る発明の栽培方法で用いられる栽培液には、このような微細な泡とともに、直径500μmを超える泡が含まれていてもよい。
請求項1~3に係る発明の栽培方法で用いられる栽培液は、プラズマ含有ガスの微細な泡が、液中に分散・拡散・溶解したものである。液中の微細なプラズマ含有ガス(に含まれるプラズマ)により、栽培対象の生長調整機能が高い栽培液を得ることができる。
【0026】
請求項1~3に係る発明の栽培方法で用いられる栽培液中に含まれるプラズマ含有ガスの泡の含有量は、特に限定されない。例えば、ナノ粒子トラッキング解析法(NTA法)により、液中の粒子の散乱光およびブラウン運動パターンから計測した粒子数と、処理液の体積から算出することができる。また、例えば、粒径と同様に、バブル発生直後の気泡をハイスピードマイクロスコープカメラで撮影し、そのようにして撮影した写真を、画像解析装置を用いて解析することにより算出することができる。
請求項1~3に係る発明の栽培方法において、栽培液中に含まれるプラズマ含有ガスの泡の含有量は、例えば、1×10個/mL以上、好ましくは1×10個/mL以上、より好ましくは1×10個/mL以上、さらに好ましくは1×10個以上である。また、泡の含有量の上限としては、特に限定されないが、例えば、1×1012個/mL以下、好ましくは1×1011個/mL以下、1×1010個/mL以下とすることができる。
【0027】
直径が500μm以下であるプラズマ含有ガスの泡は、旋回液流式、加圧溶解式、微細孔式など、任意の発生方法により発生させることができる。請求項1~3に係る発明の栽培方法において、例えば、坂本技研社製ファインバブル発生器(FB-M50A、FB-M40A、FB-S25A、FB-S25AI、FB-S15AI等)、ナック社製マイクロナノバブル発生装置Foamest(コラムタイプ FP-20-300等)、IDEC社製ultrafineGaLF(FZ1N-05S等)、ナノクス社製ナノフレッシャー(NF-WP0.4等)、エンバイロ・ビジョン社製YJノズル(YJ-21等)、テクニカルライト社製UFB DUAL等を用いることで発生させることができる。これらの装置を使用する場合、各装置のバブル発生方式に応じて、供給するプラズマ含有ガス圧(ガス流量)や液圧(液流量)、使用するフィルターの孔径などを調整することなどにより、所望の粒径および泡含有量とすることができる。なお、異なるバブル発生方式の装置を適宜組み合わせることによって、バブルを発生させてもよい。
【0028】
<栽培対象>
請求項1~3に係る発明の栽培方法が適用できる栽培対象としては、作物、キノコ、海藻等があげられる。
【0029】
作物としては、例えば、農作物、園芸作物(野菜、果樹、観賞)等があげられる。
農作物としては、例えば、トウモロコシ(馬歯種、硬粒種、軟粒種、爆裂種、糯種、甘味種、フィールドコーン)、イネ(長粒種、短粒種、中粒種、ジャポニカ種、熱帯ジャポニカ種、インディカ種、ジャワニカ種、水稲、陸稲、浮稲、直播、移植、糯米)、コムギ(パンコムギ(硬質、軟質、中質、赤コムギ、白コムギ)、マカロニコムギ、スペルトコムギ、クラブコムギ、それぞれの秋播き型、春播き型)、オオムギ(二条オオムギ(=ビールムギ)、六条オオムギ、ハダカムギ、もち麦、それぞれの秋播き型、春播き型)、ライムギ(秋播き型、春播き型)、ライコムギ(秋播き型、春播き型)、エンバク(秋播き型、春播き型)、ソルガム、ワタ(アップランド種、ピマ種)、ダイズ(完熟種子収穫品種、枝豆品種、青刈り品種、それぞれの無限伸育型、有限伸育型、半有限伸育型)、ラッカセイ(ピーナッツ)、サイトウ(インゲンマメ)、ライマメ、アズキ、ササゲ、リョクトウ、ウラドマメ、ベニバナインゲン、タケアズキ、モスビーン、テパリービーン、ソラマメ、エンドウ、ヒヨコマメ、レンズマメ、ルーピン、キマメ、アルファルファ、ソバ、テンサイ(製糖用、飼料用、根菜、葉菜、燃料)、ナタネ、カノーラ(秋播き型、春播き型)、ヒマワリ(搾油用、食用、観賞用)、サトウキビ、タバコ、チャノキ、クワ等があげられるがこれらに限定されるものではない。
【0030】
園芸作物(野菜)としては、例えば、ナス科野菜(ナス、トマト、ピーマン、トウガラシ、ベルペッパー、ジャガイモ等)、ウリ科野菜(キュウリ、カボチャ、ズッキーニ、スイカ、メロン、スカッシュ等)、アブラナ科野菜(ダイコン、カブ、セイヨウワサビ、コールラビ、ハクサイ、キャベツ、カラシナ、ブロッコリー、カリフラワー等)、キク科野菜(ゴボウ、シュンギク、アーティチョーク、レタス等)、ユリ科野菜(ネギ、タマネギ、ニンニク、アスパラガス等)、セリ科野菜(ニンジン、パセリ、セロリ、アメリカボウフウ等)、アカザ科野菜(ホウレンソウ、フダンソウ等)、シソ科野菜(シソ、ミント、バジル、ラベンダー等)、イチゴ、サツマイモ、ヤマノイモ、サトイモ、レンコン等があげられるがこれらに限定されるものではない。
【0031】
園芸作物(果樹)としては、例えば、仁果類(リンゴ、セイヨウナシ、ニホンナシ、チュウゴクナシ、カリン、マルメロ等)、核果類(モモ、スモモ、ネクタリン、ウメ、オウトウ、アンズ、プルーン等)、カンキツ類(ウンシュウミカン、オレンジ、レモン、ライム、グレープフルーツ等)、堅果類(クリ、クルミ、ハシバミ、アーモンド、ピスタチオ、カシューナッツ、マカダミアナッツ等)、液果類(ブルーベリー、クランベリー、ブラックベリー、ラズベリー等)、ブドウ、カキ、オリーブ、ビワ、バナナ、コーヒー、ナツメヤシ、ココヤシ、アブラヤシ、チャ、クワ等があげられるがこれらに限定されるものではない。
【0032】
園芸作物(鑑賞)としては、例えば、花木、街路樹(トネリコ、カバノキ、ハナミズキ、ユーカリ、イチョウ、ライラック、カエデ、カシ、ポプラ、ハナズオウ、フウ、プラタナス、ケヤキ、クロベ、モミノキ、ツガ、ネズ、マツ、トウヒ、イチイ、ニレ、トチノキ等)、サンゴジュ、イヌマキ、スギ、ヒノキ、クロトン、マサキ及びカナメモチ等の果樹以外の樹木類;シバ類(ノシバ、コウライシバ等)、バミューダグラス類(ギョウギシバ等)、ベントグラス類(コヌカグサ、ハイコヌカグサ、イトコヌカグサ等)、ブルーグラス類(ナガハグサ、オオスズメノカタビラ等)、フェスク類(オニウシノケグサ、イトウシノケグサ、ハイウシノケグサ等)、ライグラス類(ネズミムギ、ホソムギ等)、カモガヤ及びオオアワガエリ等の芝生類;オイルパーム及びナンヨウアブラギリ等の油糧作物類;花卉類(バラ、カーネーション、キク、トルコギキョウ、カスミソウ、ガーベラ、マリーゴールド、サルビア、ペチュニア、バーベナ、チューリップ、アスター、リンドウ、ユリ、パンジー、シクラメン、ラン、スズラン、ラベンダー、ストック、ハボタン、プリムラ、ポインセチア、グラジオラス、カトレア、デージー、バーベナ、シンビジューム、ベゴニア等);観葉植物等があげられるがこれらに限定されるものではない。
【0033】
キノコとしては、例えば、シイタケ、ブナシメジ、エリンギ、キクラゲ、ヒラタケ、タモギタケ、ナメコ、ヤマブシタケ、マツタケ、エノキダケ、マッシュルーム、ハナビラタケ及びマイタケ等があげられるがこれらに限定されるものではない。
【0034】
海藻としては、肉眼で判別できる海産種群の藻類、例えば、マコンブ、ワカメ、ヒジキ、ツノマタ、スジアオノリ、ホソエダアオノリ、トサカノリ、ボウアオノリ、ヒラアオノリ、ウスバアオノリ、アナアオサ、ヤブレグサ、ヒトエグサ(アオサ)、ヒロハノヒトエグサ、アラメ、ガゴメコンブ、ホンダワラ、アカモク、ツルモ、マツモ、メカブ、モズク、キリンサイ、クロバラノリ(別名を「スサビノリ」ともいう)、オゴノリ等があげられるがこれらに限定されるものではない。
【0035】
<栽培液の適用方法>
請求項1~3に係る発明の栽培方法において、原料ガスを圧力0.1~10気圧の条件でプラズマ化して得られ、直径が500μm以下であるプラズマ含有ガスの泡を含有する栽培液を、栽培対象に適用する手段は、特に限定されない。
例えば、原料ガスを圧力0.1~10気圧の条件でプラズマ化して得られ、直径が500μm以下であるプラズマ含有ガスの泡を含有する栽培液を、栽培対象又はその栽培地に施用して処理することができる。例えば、散布処理、土壌処理、灌水処理、種子処理、球根処理、苗処理等からなる群より選ばれる1種類以上があげられる。
栽培対象に適用する際に、栽培対象の種類、適用時期、適用箇所、適用時の気象状況等に応じて、適用方法や適用量を変化させることができる。
【0036】
散布処理としては、例えば、茎葉散布、樹幹散布等の植物の表面への散布、開花前から後の開花時期における花器あるいは植物全体への散布、出穂時期の穂あるいは植物全体に散布等があげられる。
土壌処理としては、例えば、土壌への散布、土壌混和、土壌への薬液潅注(薬液潅水、土壌注入、薬液ドリップ等)があげられる。処理する場所としては、例えば、植穴、作条、植穴付近、作条付近、栽培地の全面、植物地際部、株間、樹幹下、主幹畦、培土、育苗箱、育苗トレイ、苗床等があげられる。処理時期としては、例えば、育苗期(播種前、播種時、播種直後)、生育期(育苗時、定植前、定植時、定植後等)があげられる。
灌水処理としては、潅水液への混合があげられ、例えば、潅水設備(潅水チューブ、潅水パイプ、スプリンクラー等)への注入、条間湛水液への混入、水耕液へ混入、散水等があげられる。
種子処理、球根処理としては、栽培対象とする種子、球根等に、栽培液を霧状にして吹きつける吹きつけ処理、栽培液を塗布する塗沫処理、栽培液に一定時間浸漬する浸漬処理、フィルムコート処理、ペレットコート処理等があげられる。
苗処理としては、例えば、栽培液を苗全体に散布する散布処理、苗を浸漬する浸漬処理、苗全体に付着させる塗布処理等があげられる。
【0037】
処理は、栽培対象物の全体又は一部に対して行うことができる。また、栽培対象物の種々の生育ステージ、例えば、発芽期(播種前、播種時、播種後出芽前後等)、栄養生長期(育苗時、苗移植時、挿し木又は挿し苗時、定植後の生育時等)、生殖生長期(開花前、開花中、開花後、出穂直前又は出穂時等)、収穫期(収穫前、成熟前、成熟時、着色開始時等)に行うことができる。
【0038】
[栽培システム]
本発明の請求項4に係る発明の栽培システムは、原料ガスを圧力0.1~10気圧の条件でプラズマ化してプラズマ含有ガスを製造するプラズマ含有ガス製造手段、及び直径が500μm以下のプラズマ含有ガスの泡を生成し栽培液中に含有させる泡発生手段、を少なくとも備える、栽培システムである。
請求項4に係る発明の栽培システムが適用できる栽培対象としては、請求項1~3に係る発明の栽培方法が適用できる栽培対象(作物、キノコ、海藻等)があげられる。
【0039】
<プラズマ含有ガス製造手段>
プラズマ含有ガス製造手段は、原料ガスを少なくとも圧力0.1~10気圧の条件でプラズマ化処理することで、その少なくとも一部をプラズマ化してプラズマ含有ガスを製造できる製造手段であれば特に限定されない。
原料ガスとしては、請求項1~3に係る発明の栽培方法で用いられる原料ガスがあげられる。
プラズマ含有ガスとしては、請求項1~3に係る発明の栽培方法で用いられるプラズマ含有ガスがあげられる。
【0040】
プラズマ含有ガス製造手段は、原料ガスを導入する原料ガス導入部と、原料ガスをプラズマ化するプラズマ処理空間と、電界を形成することでプラズマ処理空間を形成する一対の電極と、電極に接続する電源と、プラズマ含有ガスを放出するプラズマ含有ガス放出部とを少なくとも有する。
プラズマ含有ガス製造手段は、圧力等の制御を容易にするために、プラズマ処理空間を覆う筐体を有することが好ましい。
【0041】
原料ガス導入部は、原料ガスのガス源とプラズマ処理空間とを接続する。なお、原料ガスが空気の場合、ブロア等の給気機を用いることもできる。
本発明者は、原料ガスの種類を変えることで、栽培対象の生長調整(生長促進又は生長抑制)を行うことが可能であることを見出した。この知見より、請求項4に係る発明の栽培システムにおいては、各種の原料ガス源と接続するとともに、必要に応じて任意の原料ガスを任意のタイミングで導入できるように切替弁等を設けることができる。このような場合には、同時に栽培を始めた場合であっても、原料ガスを調整するだけで栽培対象の生長を容易に調整することが可能となる。
【0042】
プラズマ処理空間を覆う筐体は、例えば、ガラス、セラミックのような誘電性を備えた材料で構成できる。また、チタン酸バリウム、酸化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素等の誘電率が2000以下の誘電体を用いることもできる。また、筺体の少なくとも一部を導電性の材料で構成することで、筺体自体を電極として用いることもできる。
筺体の形状は、特に限定されず、筒状、球状、箱状等の任意の形状とすることができる。プラズマ処理空間を覆う筺体は、プラズマ含有ガス放出部に近づくほど細くなるように加工されたノズル形状となっていてもよい。
【0043】
プラズマ処理空間内に電界を形成して放電させる手段は、特に限定されず、任意の手段を用いることができる。
例えば、筺体の外面又は内面に、互いに極性の異なる一対の電極を互いに離間して対向して形成し、それぞれの電極を、電源に接続して、電界を形成して放電させるための手段があげられる。一対の電極は、プラズマ処理空間を覆う筺体の内部に対向して設けることができる。また、表面に絶縁体等による層が形成された一対の電極の少なくとも一方を設置することもできる。放電用電極の間隔は、特に限定されず、電圧等を考慮して適宜好適化すればよく、例えば0.5~50.0mm、好ましくは0.5~5.0mm程度とすることができる。電極を用いて放電した場合、プラズマ濃度を高くすることができる。
【0044】
また、例えば、プラズマ処理空間を覆う筺体の外周又は内周に、コイルを設けるとともにプラズマ処理空間内に電極芯を設け、コイルと電極芯とを電源に接続して、電界を形成して放電させる手段があげられる。コイルの間隔、巻長、巻径、線径、電極芯とコイルの間隔、電極芯形状等は、特に限定されず、電圧等を考慮して適宜好適化される。原料ガス導入部からプラズマ含有ガス放出部が細長い筒状形状の筺体とした場合、筺体の外周又は内周に設けたコイル及び対応する電極芯を用いて放電すると、放電密度が比較的低いものの、プラズマ原料ガスが通過する放電体積を大きくすることができるため、多量のプラズマを生成することができる。
一対の電極又はコイルは、安定したプラズマ放電を得るために、プラズマ原料ガスと直接接触しない構成とするのが好ましい。そのため、一対の電極又はコイルの表面に、コーティング等の公知の手段により、石英、アルミナ等のガラス質材料やセラミック材料等の絶縁性被膜を設けてもよい。
【0045】
<泡発生手段>
泡発生手段は、少なくともガス導入部とガス吐出部とを有し、直径が500μm以下であるプラズマ含有ガスの泡を発生させることができれば特に限定されず、種々の形式のものを用いることができる。例えば、流動している液の液路にインライン接続し、旋回流方式によりガスを液中に吐出して混合し微細な泡であるバブルを発生させるもの、水中にガスを吐出する際に、撹拌部材等を用いることでガスと液とを混合して微細な泡であるバブルを発生させるもの等があげられる。
【0046】
直径が500μm以下であるプラズマ含有ガスの泡は、旋回液流式、加圧溶解式、微細孔式など、任意の発生方法により発生させることができる。請求項4に係る発明の栽培システムにおいては、例えば、坂本技研社製ファインバブル発生器(FB-M50A、FB-M40A、FB-S25A、FB-S25AI、FB-S15AI等)、ナック社製マイクロナノバブル発生装置Foamest(コラムタイプ FP-20-300等)、IDEC社製ultrafineGaLF(FZ1N-05S等)、ナノクス社製ナノフレッシャー(NF-WP0.4等)、エンバイロ・ビジョン社製YJノズル(YJ-21等)、テクニカルライト社製UFB DUAL等を用いることで発生させることができる。これらの装置を使用する場合、各装置のバブル発生方式に応じて、供給するプラズマ含有ガス圧(ガス流量)や液圧(液流量)、使用するフィルターの孔径などを調整することなどにより、所望の粒径および泡含有量とすることができる。なお、異なるバブル発生方式の装置を適宜組み合わせることによって、バブルを発生させてもよい。
また、泡発生手段のガス導入部、内部、及びガス吐出部のうちの少なくとも1つに、プラズマ処理空間を設けた、プラズマ含有ガス製造手段と泡発生手段との複合機を用いてもよい。
【0047】
プラズマ含有ガスの泡の直径及び栽培液中の含有量は、[栽培方法]における(プラズマ含有ガスの泡)に記載したものとすることができる。
プラズマ含有ガスの液中への吐出量は、特に限定されないが、例えば、0L/minを超える量、好ましくは0.01L/min以上、より好ましくは0.1L/min以上、さらに好ましくは0.5L/minである。ガス吐出量の上限は特に限定されず、製造量等に応じて設定することができる。例えば1000L/min以下、また、例えば100L/min以下とすることができる。
【0048】
<その他の機器等>
請求項4に係る発明の栽培システムは、プラズマ含有ガス製造手段と泡発生手段との間に、プラズマ含有ガスの温度を0~99℃、好ましくは5~60℃、より好ましくは10~40℃に保持するプラズマ含有ガス輸送路を設けることができる。これにより、プラズマ含有ガス製造手段と泡発生手段との間が離れている場合に、プラズマ含有ガスの移送中のプラズマの失活等を抑えることができる。
【0049】
請求項4に係る発明の栽培システムは、開放系であってもよく、密閉系であってもよい。例えば、栽培コンテナ等の筐体により栽培システムを格納して密閉系とすることができる。また、開放系の圃場、水中等に設けることもできる。
また、請求項4に係る発明の栽培システムは、必要に応じて、栽培液を貯留するための液槽(タンク)等、栽培液を流動させるための管路やポンプ等、栽培液を吐出・排出するためのノズル等、流量や液圧等の調節弁、流量、圧力、温度、酸素、二酸化炭素、湿度、水温等の各種センサ、撮像装置(カメラ)、撹拌装置、給排気装置、プラズマ含有ガスの処理装置、空調装置、照明装置、空気循環装置、原料ガスの輸送路等からなる群より選ばれる1種類以上の機器を設けることができる。
【0050】
栽培システムを構成する各種機器は、栽培システム外部からモニタリング又は操作できるように構成してもよい。
例えば、各種センサや撮像装置(カメラ)を、ネットワークを介してアクセス可能なコンピュータ等の端末に接続し、データ通信することにより、外部からも栽培コンテナ内の環境や生育状況等を適宜モニタリング可能にすることができる。
例えば、ポンプ、弁、各種装置等の機器を、ネットワークを介してアクセス可能なコンピュータ等の端末に接続し、データ通信することにより、外部からも栽培コンテナ内のポンプ、弁、各種装置等の機器を操作・制御することができる。
【0051】
[栽培液]
本発明の請求項5に係る発明の栽培液は、原料ガスを圧力0.1~10気圧の条件でプラズマ化して得られ、直径が500μm以下であるプラズマ含有ガスの泡を含有する、栽培液である。
請求項5に係る発明の栽培液は、請求項1~3に係る発明の栽培方法で用いられる栽培液と同様のものとすることができる。
請求項5に係る発明の栽培液が適用できる栽培対象としては、請求項1~3に係る発明の栽培方法が適用できる栽培対象(作物、キノコ、海藻等)があげられる。
【0052】
[栽培液の製造装置]
本発明の請求項6に係る発明の栽培液の製造装置は、原料ガスを圧力0.1~10気圧の条件でプラズマ化してプラズマ含有ガスを製造するプラズマ含有ガス製造手段、及び直径が500μm以下のプラズマ含有ガスの泡を生成し栽培液中に含有させる泡発生手段、を少なくとも備える、栽培液の製造装置である。
請求項6に係る発明の栽培液の製造装置におけるプラズマ含有ガス製造手段は、請求項4に係る発明の栽培システムにおけるプラズマ含有ガス製造手段と同様のものとすることができる。また、請求項6に係る発明の栽培液の製造装置における泡発生手段は、請求項4に係る発明の栽培システムにおける泡発生手段と同様のものとすることができる。
請求項6に係る発明の栽培液の製造装置で製造される栽培液が適用できる栽培対象としては、請求項1~3に係る発明の栽培方法が適用できる栽培対象(作物、キノコ、海藻等)があげられる。
【0053】
[栽培液の製造方法]
本発明の請求項7に係る発明の栽培液の製造方法は、原料ガスを圧力0.1~10気圧の条件でプラズマ化してプラズマ含有ガスを得る工程、及び直径が500μm以下のプラズマ含有ガスの泡を生成し栽培液中に含有させる工程、を有する、栽培液の製造方法である。
請求項7に係る発明の栽培液の製造方法におけるプラズマ含有ガスを得る工程は、請求項4に係る発明の栽培システムにおけるプラズマ含有ガス製造手段と同様の手段を用いて行うことができる。また、請求項7に係る発明の栽培液の製造方法におけるプラズマ含有ガスの泡を生成し栽培液中に含有させる工程は、請求項4に係る発明の栽培システムにおける直径が500μm以下のプラズマ含有ガスの泡を生成し栽培液中に含有させる泡発生手段と同様の手段を用いて行うことができる。
請求項7に係る発明の栽培液の製造方法で製造される栽培液が適用できる栽培対象としては、請求項1~3に係る発明の栽培方法が適用できる栽培対象(作物、キノコ、海藻等)があげられる。
【実施例
【0054】
以下、具体例をあげてさらに詳細に説明するが、本発明は以下の例のみに限定されるものではない。
【0055】
[試験例1]
<リーフレタスの肥料無し条件下での水耕栽培>
リーフレタス種子を2.5cm×2.5cmのウレタンスポンジ培地(リビングファーム社製、LFS-023)に播種した。12の培地をセットした栽培容器を5つ用意し、そのうち4つの栽培容器は、それぞれ、空気、酸素、二酸化炭素又は窒素を原料ガスとするプラズマ含有ガスの泡を含む水道水を栽培液として使用して、播種直後から水耕栽培を行った。それぞれの試験例を、「リーフレタス(肥料無)Air」、「リーフレタス(肥料無)O」、「リーフレタス(肥料無)CO」及び「リーフレタス(肥料無)N」とする。
また、対比のため、1つの栽培容器は、水道水を栽培液として使用して、播種直後からリーフレタスの水耕栽培を行った。この試験例を「リーフレタス(肥料無)対照例」とする。
表1に各栽培容器の播種後3日目の発芽率を、表2及び表3に各栽培容器の播種後5日目、10日目、12日目及び15日目の生育状態を示す。また、各栽培容器の播種後12日目の生育状態(茎、根及び葉それぞれの平均長)を図1に示す。
なお、表2及び表3の「葉の大きさ[mm]」欄中、例えば「10,10,3,」の表記は、葉が2枚有り、その大きさがそれぞれ20mmであることを示す。また、「枯」の表記は、葉が枯れたことを示す。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
【表3】
【0059】
栽培条件は、以下のとおりである。
(光照射条件)
播種後1日目~3日目:室内の暗室で保存した。
播種後4日目以降:室内にて日光照射した。
(温度条件)
栽培温度は、最低18℃/最高22℃であった。
(プラズマ含有ガスの泡を含む培養液の作製条件)
大気圧低温プラズマ含有ガス製造手段に、原料ガスを10L/minで供給し、圧力1気圧、電界強度3kV/cm、電流値0.32A(測定値)、電圧100V、及び電力25W/hの条件でプラズマ化して、40℃の低温大気圧プラズマ含有ガスを10L/minとなるように発生させた。
得られたプラズマ含有ガスを、プラズマ含有ガス製造手段のプラズマ含有ガス出口と泡発生手段(FB-S 15A:坂本技研社製;直径100μm以下のファインバブル発生器)のガス入口部の距離(プラズマ含有ガス輸送路長)を0m(直結)として泡発生手段に導入するとともに、10Lの水道水を液流20L/minで5分循環させることにより、水道水中に微細な泡として添加して栽培液とした。
(栽培液の交換頻度)
5回/週の割合で、栽培液全量を交換した。
【0060】
[試験例2]
<リーフレタスの肥料有り条件下での水耕栽培>
リーフレタス種子を試験例1で使用したものと同じウレタンスポンジ培地に播種した。12の培地をセットした栽培容器を2つ用意し、そのうち1つの栽培容器は、空気を原料ガスとするプラズマ含有ガスの泡を含む液体肥料溶液(ハイポニカ液体肥料(協和社製)を500倍に水道水で薄めた溶液)を、播種直後から栽培液として使用して水耕栽培を行った。この試験例を「リーフレタス(肥料有)Air」とする。
また、対比のため、1つの栽培容器は、ハイポニカ液体肥料を500倍に水道水で薄めた溶液を、播種直後から栽培液としてリーフレタスの水耕栽培を行った。この試験例を「リーフレタス(肥料有)対照例」とする。
表4に各栽培容器の播種後6日目の発芽率を、表5に各栽培容器の播種後22日目の生育状態を示す。また、各栽培容器の22日目の生育状態の写真を図2に示す。
なお、表5の「葉の大きさ[mm]」欄中、例えば「15,13,8,」の表記は、葉が3枚有り、その大きさがそれぞれ15mm、13m及び8mmであることを示す。
【0061】
【表4】
【0062】
【表5】
【0063】
栽培条件は、以下のとおりである。
(光照射条件)
播種後1日目:室内の暗室で保存した。
播種後2日目以降:室内にて日光照射した。
(温度条件)
栽培温度は、最低15℃/最高18℃であった。
(プラズマ含有ガスの泡を含む培養液の作製条件)
大気圧低温プラズマ含有ガス製造手段に、原料ガスとして空気を10L/minで供給し、圧力1気圧、電界強度3kV/cm、電流値0.32A(測定値)、電圧100V、及び電力25W/hの条件でプラズマ化して、40℃の低温大気圧プラズマ含有ガスを10L/minとなるように発生させた。
得られたプラズマ含有ガスを、プラズマ含有ガス製造手段のプラズマ含有ガス出口と泡発生手段(FB-S 15A:坂本技研社製;直径100μm以下のファインバブル発生器)のガス入口部の距離(プラズマ含有ガス輸送路長)を0m(直結)として泡発生手段に導入するとともに、10Lの液体肥料溶液を液流20L/minで5分循環させることにより、液体肥料溶液中に微細な泡として添加して栽培液とした。
(栽培液の交換頻度)
5回/週の割合で、栽培液全量を交換した。
【0064】
[試験例3]
<ミニトマトの肥料有り条件下での水耕栽培>
ミニトマト種子を2.5cm×2.5cmのウレタンスポンジ培地(リビングファーム社製、LFS-023)に播種した。
12の培地をセットした栽培容器を5つ用意し、そのうち4つの栽培容器は、それぞれ、空気、酸素、二酸化炭素又は窒素を原料ガスとするプラズマ含有ガスの泡を含む液体肥料溶液(ハイポニカ液体肥料(協和社製)を500倍に水道水で薄めた溶液)を、播種直後から栽培液として使用して水耕栽培を行った。それぞれの試験例を、「ミニトマトAir」、「ミニトマトO」、「ミニトマトCO」及び「ミニトマトN」とする。
また、対比のため、1つの栽培容器は、液体肥料溶液(ハイポニカ液体肥料(協和社製)を500倍に水道水で薄めた溶液)を、播種直後から栽培液として使用してミニトマトの水耕栽培を行った。この試験例を「ミニトマト対照例」とする。
表6及び表7に各栽培容器の播種後12日目、19日目、29日目、35日目及び50日目の生育状態を示す(なお、35日目において最も生育状態が良い株のみを、50日目まで生育させた。)。また、各栽培容器の播種後35日目の生育状態の写真を図3に示す。
【0065】
【表6】
【0066】
【表7】
【0067】
栽培条件は、以下のとおりである。
(光照射条件)
播種後、各セットを室内に置いた箱内に収納し、全スペクトル45WLED植物成長ランプ(JXZMKJYXGS社製、LED-45W-1)を18時間/1日照射した。
(温度条件)
栽培温度は、最低10℃/最高15℃であった。
(プラズマ含有ガスの泡を含む培養液の作製条件)
大気圧低温プラズマ含有ガス製造手段に、原料ガスを10L/minで供給し、圧力1気圧、電界強度3kV/cm、電流値0.32A(測定値)、電圧100V、及び電力25W/hの条件でプラズマ化して、40℃の低温大気圧プラズマ含有ガスを10L/minとなるように発生させた。
得られたプラズマ含有ガスを、プラズマ含有ガス製造手段のプラズマ含有ガス出口と泡発生手段(FB-S 15A:坂本技研社製;直径100μm以下のファインバブル発生器)のガス入口部の距離(プラズマ含有ガス輸送路長)を0m(直結)として泡発生手段に導入するとともに、10Lの水道水を液流20L/minで5分循環させることにより、水道水中に微細な泡として添加して栽培液とした。
(栽培液の交換頻度)
5回/週の割合で、栽培液全量を交換した。
【0068】
[試験例4]
<メロンの肥料有り条件下での水耕栽培>
メロン種子を2.5cm×2.5cmのウレタンスポンジ培地(リビングファーム社製、LFS-023)に播種した。
12の培地をセットした栽培容器を5つ用意し、そのうち4つの栽培容器は、それぞれ、空気、酸素、二酸化炭素又は窒素を原料ガスとするプラズマ含有ガスの泡を含む液体肥料溶液(ハイポニカ液体肥料(協和社製)を500倍に水道水で薄めた溶液)を、播種直後から栽培液として使用して水耕栽培を行った。それぞれの試験例を、「メロンAir」、「メロンO」、「メロンCO」及び「メロンN」とする。
また、対比のため、1つの栽培容器は、液体肥料溶液(ハイポニカ液体肥料(協和社製)を500倍に水道水で薄めた溶液)を、播種直後から栽培液として使用してメロンの水耕栽培を行った。この試験例を「メロン対照例」とする。
表8及び表9に各栽培容器の播種後12日目及び19日目の生育状態を示す。また、各栽培容器の播種後35日目の生育状態の写真を図3に示す。
なお、表8及び表9の「葉の大きさ[mm]」欄中、例えば「20,20,」の表記は、葉が2枚有り、その大きさがそれぞれ20mmであることを示す。また、「枯」の表記は、枯葉を示す。
【0069】
【表8】
【0070】
【表9】
【0071】
栽培条件は、以下のとおりである。
(光照射条件)
播種後、各セットを室内に置いた箱内に収納し、全スペクトル45WLED植物成長ランプ(JXZMKJYXGS社製、LED-45W-1)を18時間/1日照射した。
(温度条件)
栽培温度は、最低10℃/最高12℃であった。
(プラズマ含有ガスの泡を含む培養液の作製条件)
大気圧低温プラズマ含有ガス製造手段に、原料ガスを10L/minで供給し、圧力1気圧、電界強度3kV/cm、電流値0.32A(測定値)、電圧100V、及び電力25W/hの条件でプラズマ化して、40℃の低温大気圧プラズマ含有ガスを10L/minとなるように発生させた。
得られたプラズマ含有ガスを、プラズマ含有ガス製造手段のプラズマ含有ガス出口と泡発生手段(FB-S 15A:坂本技研社製;直径100μm以下のファインバブル発生器)のガス入口部の距離(プラズマ含有ガス輸送路長)を0m(直結)として泡発生手段に導入するとともに、10Lの水道水を液流20L/minで5分循環させることにより、水道水中に微細な泡として添加して栽培液とした。
(栽培液の交換頻度)
5回/週の割合で、栽培液全量を交換した。
【0072】
表1~表3及び図1に示すとおり、リーフレタスを肥料無し条件で栽培した場合、空気を原料ガスとして圧力0.1~10気圧の条件でプラズマ化して得られ、直径が500μm以下であるプラズマ含有ガスの泡を含有する栽培液を用いる栽培方法は、発芽発根促進及び生長促進効果が優れていることがわかる。
一方、窒素、酸素又は二酸化炭素を原料ガスとして圧力0.1~10気圧の条件でプラズマ化して得られ、直径が500μm以下であるプラズマ含有ガスの泡を含有する栽培液を用いる栽培方法は、発芽発根抑制及び生長抑制効果が優れていることがわかる。特に、二酸化炭素を原料ガスとした場合は、根の生長抑制効果を示し、窒素又は酸素を原料ガスとした場合は、葉及び茎の生長抑制効果を示した。
また、表4、表5及び図2に示すとおり、リーフレタスを肥料有り条件で栽培した場合においても、空気を原料ガスとした場合は、発芽発根促進及び生長促進効果が優れていることがわかる。
【0073】
表6、表7及び図3に示すとおり、ミニトマトを肥料有り条件で栽培した場合、空気を原料ガスとして圧力0.1~10気圧の条件でプラズマ化して得られ、直径が500μm以下であるプラズマ含有ガスの泡を含有する栽培液を用いる栽培方法は、発芽発根促進及び生長促進効果が優れていることがわかる。
一方、窒素、酸素又は二酸化炭素を原料ガスとして圧力0.1~10気圧の条件でプラズマ化して得られ、直径が500μm以下であるプラズマ含有ガスの泡を含有する栽培液を用いる栽培方法は、発芽発根抑制及び生長抑制効果が優れていることがわかる。
【0074】
表8、表9及び図4に示すとおり、メロンを肥料有り条件で栽培した場合、空気、酸素又は窒素を原料ガスとして圧力0.1~10気圧の条件でプラズマ化して得られ、直径が500μm以下であるプラズマ含有ガスの泡を含有する栽培液を用いる栽培方法は、発芽発根促進及び生長促進効果が優れていることがわかる。
一方、二酸化炭素を原料ガスとして圧力0.1~10気圧の条件でプラズマ化して得られ、直径が500μm以下であるプラズマ含有ガスの泡を含有する栽培液を用いる栽培方法は、発芽発根抑制及び生長抑制効果が優れていることがわかる。
【0075】
以上、本発明の各実施形態について述べたが、今回開示された各実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。特に、今回開示された各実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積等の値等は、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用することができる。
図1
図2
図3
図4