(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】美容室業務支援システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20241126BHJP
H04N 7/18 20060101ALI20241126BHJP
G09G 5/00 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
G06Q50/10
H04N7/18 U
G09G5/00 550C
G09G5/00 510A
(21)【出願番号】P 2022004835
(22)【出願日】2022-01-17
【審査請求日】2023-10-05
(31)【優先権主張番号】P 2021117586
(32)【優先日】2021-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】517264580
【氏名又は名称】株式会社ピーエックス
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】与儀 実良
【審査官】佐藤 光起
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-136971(JP,A)
【文献】特開2015-005823(JP,A)
【文献】特開2018-018263(JP,A)
【文献】特開2002-229494(JP,A)
【文献】特開2002-007683(JP,A)
【文献】特開2013-084081(JP,A)
【文献】特開2011-093484(JP,A)
【文献】特開2016-189503(JP,A)
【文献】特開2004-029868(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q G06Q10/00-99/00
H04N 7/18
G09G 5/00
G09G 5/377
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
美容室用の業務支援システムであって、
着座して美容師による施術を受ける顧客の背面画像の撮影に供される背面カメラと、
前記背面画像を前記顧客に対して正面から表示させることが可能に構成されている表示装置と、
前記表示装置における表示の状態を制御可能に構成されている制御装置と、
前記顧客の正面画像の撮影に供される正面カメラと、を備え、
前記制御装置は、前記顧客に対する施術中に前記背面画像を前記表示装置の表示領域における少なくとも一部に表示させることが可能なモードを有
し、
前記表示装置は、着座した前記顧客の正面に配置される顧客側領域と、前記顧客の視線
から外れて前記美容師に向けて配置される美容師側領域と、を有し、
前記制御装置は、
施術中における前記顧客側領域への前記正面画像の表示をオフにする、または、前記顧
客側領域に他の画像を表示させる正面画像非表示モードを備える、
美容室用業務支援システム。
【請求項10】
前記コンテナの前記他端側には、施術準備スペースおよびトイレのスペースのうちのいずれかである非施術スペースが配置されている、
請求項
9に記載の美容室用業務支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、美容室の業務支援に供されるシステムに関する。
本発明は、理容室にも適用可能である。本明細書において、「美容室」は理容室を含むものとする。
【背景技術】
【0002】
店頭や屋外、交通機関等において、デジタルサイネージの利用が促進されている。デジタルサイネージは、電子広告として種々の情報を表示する他、カメラで撮影された画像を表示することにも使用されている(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載のデジタルサイネージシステムは、サイネージモニターと、カメラとを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、美容室業界では、鏡を備えた従来設備が大勢を占め、デジタルサイネージ等の表示装置の利用は進んでいない。しかし、鏡に映る鮮明な反射像に匹敵する表示装置の画質の精細化に鑑みると、表示装置の利用によって美容師および顧客の双方の利便性を向上させる余地がある。
また、近年は、美容室を出店するコストが、建築資材の逼迫や価格の高騰により増大しているため、新規出店や店舗展開等が容易でない。
【0005】
以上より、本発明は、表示装置を利用して、美容室用途に特化した業務支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、美容室用の業務支援システムであって、着座して美容師による施術を受ける顧客の背面画像の撮影に供される背面カメラと、背面画像を顧客に対して正面から表示させることが可能に構成されている表示装置と、表示装置における表示の状態を制御可能に構成されている制御装置と、を備える。制御装置は、顧客に対する施術中、特に顧客の後頭部の髪に対する施術中に背面画像を表示装置の表示領域における少なくとも一部に表示させることが可能なモードを有する。
【0007】
本発明の美容室用業務支援システムは、顧客の正面画像の撮影に供される正面カメラを備え、表示装置には、表示領域を囲む額縁部材が設けられ、正面カメラは、額縁部材に取り付けられていることが好ましい。
【0008】
本発明の美容室用業務支援システムは、顧客の正面画像の撮影に供される正面カメラと、データを保存する記憶装置と、を備え、制御装置は、施術完了後に撮影された顧客の少なくとも正面画像のデータを顧客毎に紐付けて記憶装置に保存させることが好ましい。
【0009】
本発明の美容室用業務支援システムは、顧客の正面画像の撮影に供される正面カメラと、背面カメラと、顧客の右側画像の撮影に供される右側カメラと、顧客の左側画像の撮影に供される左側カメラと、を備え、制御装置は、正面画像、背面画像、右側画像、および左側画像のうちの少なくとも1つを表示領域に選択的に表示させる表示画像選択部を含むことが好ましい。
【0010】
本発明の美容室用業務支援システムにおいて、表示装置は、着座した顧客の正面に配置される顧客側領域と、顧客の視線から外れて美容師に向けて配置される美容師側領域と、を有し、制御装置は、施術中における顧客側領域への正面画像の表示をオフにする、または、顧客側領域に他の画像を表示させる正面画像非表示モードを備えることが好ましい。
【0011】
また、本発明は、美容室用の業務支援システムであって、着座して美容師による施術を受ける顧客の背面画像の撮影に供される背面カメラと、可搬型の表示装置に背面画像を表示させることが可能に構成されている制御装置と、を備え、制御装置は、顧客に対する施術中に背面画像を表示装置の表示領域における少なくとも一部に表示させることが可能なモードを有する。
【0012】
本発明の美容室用業務支援システムは、背面カメラと、顧客の右側画像の撮影に供される右側カメラと、顧客の左側画像の撮影に供される左側カメラと、を備え、制御装置は、表示装置に備わるカメラにより撮影される正面画像、背面画像、右側画像、および左側画像のうちの少なくとも1つを表示領域に選択的に表示させることが可能なモードを有することが好ましい。
【0013】
本発明の美容室用業務支援システムは、データを保存する記憶装置を備え、制御装置は、表示装置に備わるカメラにより施術完了後に撮影された顧客の少なくとも正面画像のデータを顧客毎に紐付けて記憶装置に保存させることが好ましい。
【0014】
本発明の美容室用業務支援システムは、画像データを保存する記憶装置を備え、制御装置は、表示装置に備わるカメラにより撮影された顧客の画像データと、記憶装置に記憶されている画像データとの照合により、顧客を識別可能に構成されていることが好ましい。
【0015】
本発明の美容室用業務支援システムにおいて、制御装置は、実行されるコンピュータプログラムのモジュールとして、表示領域への複数の色の表示からヘアカラーの施術に用いる色の選択を促すカラー選択部と、顧客を撮影して得られた少なくとも正面画像のデータに対してカラー選択部により選択された色の着色を施し、表示領域に表示させる模擬画像表示部と、を有することが好ましい。
【0016】
本発明の美容室用業務支援システムは、背面カメラ、表示装置、および制御装置が内側に設置されるコンテナを備え、コンテナは、直方体状のフレームと、フレームにそれぞれ取り付けられるドアおよび複数の板材と、を有し、コンテナは、業務支援システムの筐体と、美容室の施術スペースと、美容室の待合スペースと、を兼ねていることが好ましい。
【0017】
本発明の美容室用業務支援システムにおいては、コンテナの長手方向に沿った一方の第1側壁に沿って、施術中に顧客が第1側壁を向いて座る複数の座席が長手方向に並び、複数の座席に個別に対応する背面カメラが、他方の第2側壁に沿って、長手方向に間隔をおいて配置されていることが好ましい。
【0018】
本発明の美容室用業務支援システムにおいては、コンテナの長手方向における一端から他端に向けて、ドア、待合スペース、施術スペースの順に配置されていることが好ましい。
【0019】
本発明の美容室用業務支援システムにおいて、コンテナの他端側には、施術準備スペースおよびトイレのスペースのうちのいずれかである非施術スペースが配置されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
顧客からは見えない後頭部を撮影した背面画像を表示装置により顧客に提示しながら後頭部のヘアカットを行うことができるので、顧客に後頭部の髪の状態を見てもらいながら、短すぎたり長すぎたりすることなく要望通りに施術を提供することができる。
本発明によれば、美容サービスに係る要望等について、表示装置に顧客の過去の画像、現在の画像、あるいは施術をシミュレーションした模擬画像等を表示させることで解決に導くことができる。
また、本発明の美容室用業務システムが船舶用コンテナ等のコンテナを筐体として備える場合には、コンテナの利用により、出店に必要なコストを抑えて美容事業を促進させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】(a)は、本発明の第1実施形態に係る美容室用業務支援システムとしてのコンテナ型美容室の内側を天井から見下ろす平面図である。(b)は、天井伏図である。
【
図2】(a)は、コンテナの第1側壁に設置される表示装置等の室内設備をコンテナの内側から示す図である。(b)は、コンテナの第2側壁に設置される室内設備をコンテナの内側から示す図である。
【
図3】(a)は、コンテナ型美容室およびを模式的に示す斜視図である。(b)は、
図1(a)の部分拡大図であり、正面カメラおよび背面カメラが設置される位置を模式的に示している。
【
図4】システム構成の一例および画像の表示状態の一例を示す模式図である。
【
図5】システム構成の一例を示すブロック図である。
【
図6】(a)は二分割の表示モードを示す模式図である。(b)は四分割の表示モードを示す模式図である。
【
図7】顧客カルテDBに含まれる情報の一例を示す模式図である。
【
図8】(a)はヘアカラーの色選択を促す画面を示す図である。(b)および(c)はヘアカラーのシミュレーション画像を示す図である。
【
図9】施術の開始前のカウセリングから施術完了までの流れの一例を示すフロー図である。
【
図10】(a)~(d)は、本発明の変形例を示す模式図である。(a)および(b)は、表示装置を示す平面図であり、(c)および(d)は、表示装置、顧客、および美容師を示す上面図である。
【
図11】本発明の第2実施形態に係る美容室用業務支援システムの構成の一例および画像の表示状態の一例を示す模式図である。
【
図12】システム構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。
[第1実施形態]
〔全体の構成概要〕
まず、コンテナの構造に言及しながら、全体の構成概要を説明する。
図1(a)、(b)および
図2(a)、(b)に示す美容室用業務支援システム1としてのコンテナ型美容室は、コンテナ10の内部に美容室用の設備が組み込まれたものである。
コンテナ10は、例えば、船舶に積載されて海上輸送に用いられていた船舶用コンテナを扱う市場から入手することができる。コンテナ10は、新造の船舶用コンテナであっても構わない。
本実施形態のコンテナ10は、船舶用コンテナのISO規格で言うところの40フィートのハイキューブドライコンテナ(ISO 40’HC Container)に相当する。ISO規格で定められた外寸としては、長さが12,192mm、幅が2,438mm、高さが2,896mmである。
その他、例えば、ハイキューブではない通常高さの40フィートのドライコンテナ(ISO 40’Container)や、45フィートのドライコンテナも使用可能である。
【0023】
コンテナ10は、略直方体状のフレーム11と、フレーム11にそれぞれ取り付けられるドア12および複数の板材13と、フレーム11の角隅に設けられるコーナー金物14とを備えている。フレーム11、板材13、およびコーナー金物14には、耐候性に優れた鋼材が使用されている。
フレーム11は、底の四隅から天井に向けて立ち上がる図示しない柱と、柱の上端および下端に設けられる複数の梁11A(その一部を示す)とを含む。フレーム11の角隅には、コンテナ10の積み下ろし時に吊り具が掛けられる合計で8つのコーナー金物14が設けられている。コーナー金物14は、他のコンテナ10や船舶との結合にも用いられる。
【0024】
両側に開く観音開き式のドア12は、コンテナ10の長手方向D1における一端の開口部を開閉するように、フレーム11がなす直方体の1面に配置されている。ドア12の内側には、ポーチ102および内側ドア103が設けられている。
【0025】
板材13は、波型鋼板からなり、周縁部がフレーム11に溶接されている。板材13は、
図3(a)に示すように、フレーム11がなす直方体の6面のうちドア12および底面を除く4面に配置されている。上面に配置される板材13は屋根130に相当する。長手方向D1に沿って配置される一対の板材13を第1側壁131および第2側壁132と称する。長手方向D1においてドア12と対向する板材13を第3側壁133と称する。
【0026】
フレーム11の底部の図示しない梁および補助梁の上には床材101(
図1(a)、
図2(a)、(b))が配置される。第1側壁131および第2側壁132の内側には、典型的には壁パネル151,152がそれぞれ設けられる。屋根130の内側には、典型的には天井パネル150(
図1(b))が設けられる。天井パネル150と屋根130との間には、典型的には断熱材が配置される。壁パネル151と第1側壁131との間、壁パネル152と第2側壁132との間、および床材101と底部の板材13との間にもそれぞれ、必要に応じて断熱材が配置される。
【0027】
天井パネル150には、
図1(b)、
図2(a)および(b)に示すように、複数のペンダント照明L1と、複数の天井埋め込みスポットライトL2とが設けられている。なお、照明器具の種類やレイアウトは、適宜に定めることができる。
【0028】
コンテナ10には、内部空間の冷暖房および換気を行う図示しない空調装置が設けられている。また、コンテナ10は、内部空間の設備に電力、ガス、水をそれぞれ供給する図示しない供給源に接続されている。
【0029】
内側ドア103が取り付けられている壁104から第3側壁133までの間の空間が、美容室に必要な複数のスペース16~18として用いられる。これらのスペース16~18は、内側ドア103から第3側壁133に向けて、待合スペース16、施術スペース17、および非施術スペース18の順に配置されている。
待合スペース16は、ドア12および内側ドア103を通じて入店した顧客が、美容師による施術の提供を待つスペースである。待合スペース16には、複数の椅子161と、施術のメニュー等を表示するデジタルサイネージ162等(
図2(a))が配置されている。
「施術」は、美容師によるカットやパーマ、ヘアカラー、ヘアセット等の技術を顧客に施すことを言うものとする。
【0030】
施術スペース17は、顧客が美容師による施術を受けるスペースである。施術スペース17には、複数の座席25と、雑誌等が置かれる棚26と、各座席25の正面に位置するデジタルサイネージ等である表示装置20と、表示装置20に表示される画像を撮影する複数のカメラ31,32等が設置されている。座席25には、施術中の顧客が第1側壁131を向いて座る。施術スペース17には、シャワー用設備27が配置される。
本実施形態においては、
図3(a)および(b)に示すように、3つの座席25が第1側壁131に沿って長手方向D1に並んでおり、各座席25に個別に対応する正面カメラ31および背面カメラが第2側壁132に沿って長手方向D1に並んでいる。
なお、座席25の数は、1つであってもよく、2つ、あるいは4つ以上であってもよい。
【0031】
非施術スペース18は、トイレスペース181と、施術準備スペース182とに区画されている。施術準備スペース182には、例えば、洗い場や、備品が収納された棚等を設置することができる。
【0032】
〔業務支援システムの構成例〕
コンテナ10は、美容室に必要な上述のスペース16~18と、表示装置20およびカメラ31,32等を含んで構成される美容室用業務支援システム1(以下、業務支援システム1)の筐体とを兼ねている。
図4および
図5はそれぞれ、業務支援システム1の構成の一例および表示装置20における表示状態の一例を示している。
【0033】
本実施形態の業務支援システム1は、通常の美容室に設置されている鏡に代えて座席25の前方に設置されている表示装置20と、顧客Cの少なくとも正面画像および背面画像の撮影に供される正面カメラ31および背面カメラ32と、表示装置20における表示の状態を制御可能に構成されている制御装置40(
図5)と、画像データやプログラム、種々のデータ等を記憶領域に格納して保存する記憶装置50とを備えている。記憶装置50は、例えば、ハードディスクドライブ(HDD;Hard Disk Drive)や、ソリッドステートドライブ(SSD;Solid State Drive)等の大容量記憶媒体であることが好ましい。
【0034】
(表示装置)
表示装置20としては、高精細な画像を表示させることが可能なデジタルサイネージが採用されていることが好ましい。表示装置20は、例えば、LED(Light Emitting Diode)等の光源、液晶ライトバルブ、およびカラーフィルタ等を備えた液晶ディスプレイ(LCD;Liquid Crystal Display)であって、入力される画像データから文字、動画、静止画等を例えば矩形状の表示領域20Rに表示させる。
【0035】
表示装置20は、表示領域20Rの表面を顧客Cや美容師Hが指先で触れることにより画面分割数や表示させる画像選択等の操作を含む種々の操作が可能なタッチパッドの機能を備えていてもよい。あるいは、赤外線通信等により多画面分割ユニット41と通信可能な図示しないリモートコントローラ(所謂リモコン)による画面上のメニュー選択等により同様の操作が可能である。
なお、複数画面による表示を実現するために表示領域20Rの分割機能は必ずしも必要がなく、座席25の前に複数の表示装置20を並べて設置することによっても、複数画面による表示を実現することができる。
【0036】
表示装置20の表示領域20Rの周囲には、表示領域20Rを四辺に沿って囲むように、額縁部材21が配置されている。額縁部材21は、例えば、室内装飾用のモールディングから矩形の枠状に形成されている。額縁部材21の上部には、正面カメラ31が取り付けられている。正面カメラ31は、額縁部材21に設けられた凹部または開口に配置されることが好ましい。表示領域20Rを囲む額縁部材21に正面カメラ31が設けられていると、正面カメラ31が目立たず、額縁部材21により与えられる表示装置20の外観意匠性に影響を与えない。
表示装置20、額縁部材21、および正面カメラ31は、壁パネル151に一体化される。壁パネル151は第1側壁131に設置されているので、表示装置20、額縁部材21、および正面カメラ31は、壁パネル151と共に第1側壁131に安定して支持される。表示装置20、額縁部材21、および正面カメラ31を一体に組み付けたものを図示しないブラケット等によって第1側壁131に直接支持させるとより安定する。
【0037】
本実施形態の表示装置20は、鏡による反射像に見劣りしない高品位な画像を表示させることができるため、鏡を設置する必要はない。但し、座席25の前に、表示装置20と鏡との両方が設置されることは妨げられない。また、表示装置20は、内部の光源の消灯時には鏡と同様に表示領域20Rに反射像が映るハーフミラーディスプレイであってもよい。
【0038】
(カメラ)
正面カメラ31および背面カメラ32は、いずれも静止画および動画を撮影可能であって、撮像素子により得られる信号を画像データとして出力するデジタルカメラである。
正面カメラ31は、
図3(b)に示すように、表示装置20に向けて座席25に着座した顧客Cに正対する表示装置20に取り付けられている。そのため、正面カメラ31は、顧客Cの正面から顧客Cの顔および前頭部を含む範囲を視野に収めて正面画像I01(
図6(a))を撮影可能である。
【0039】
背面カメラ32は、
図3(b)に示すように、表示装置20に正対した状態で着座した顧客Cの背中に対向する壁パネル152に取り付けられている。そのため、背面カメラ32は、顧客Cの背面から顧客Cの後頭部を含む範囲を視野に収めて背面画像I02(
図6(a))を撮影可能である。背面カメラ32は、壁パネル152と共に第2側壁132に安定して支持される。背面カメラ32をブラケット等によって第2側壁132に直接支持させるとより安定する。
【0040】
座席25の高さの調整により、顧客Cの体格によらず、頭部の高さを一定に調整することが可能である。体格に応じた座席25の高さ調整をなくす便宜のため、背面カメラ32は、図示しないスライドレール等により上下方向に昇降可能であることが好ましい。また、顧客Cの姿勢や座り方による頭部位置の左右方向へのずれに対応するため、背面カメラ32が、スライドレールや、軸を中心として旋回する構造により、左右方向に移動可能であると尚好ましい。
上下方向、あるいは上下方向に対して直交する方向に移動可能な構造は、正面カメラ31等の他のカメラにも採用することができる。
【0041】
業務支援システム1は、
図4および
図5に示すように、正面カメラ31および背面カメラ32に加えて、顧客Cの右側画像の撮影に供される右側カメラ33と、顧客Cの左側画像の撮影に供される左側カメラ34を備えていることが好ましい。
右側カメラ33は、座席25に座る顧客Cを基準として右側に配置され、右の側頭部を視野に収めて撮影する。左側カメラ34は、座席25に座る顧客Cを基準として左側に配置され、左の側頭部を視野に収めて撮影する。
右側カメラ33および左側カメラ34は、例えば、座席25の左右両側に設けられた図示しない仕切等に取り付けることができる。
図6(b)は、右側カメラ33による撮影により得られた右側画像I03と、左側カメラ34による撮影により得られた左側画像I04との一例を示している。
【0042】
その他、業務支援システム1は、例えば、ヘアセット等の際に頭頂部を撮影するカメラを顧客Cの頭上に備えていてもよい。
【0043】
(制御装置の構成例)
制御装置40は、
図4および
図5に示すように、例えば、多画面分割ユニット41と、コントローラ42とを備えており、表示装置20に画像データの信号を入力する。
多画面分割ユニット41は、表示装置20の例えばHDMI(High-Definition Multimedia Interface(登録商標))端子に接続されている。多画面分割ユニット41は、無線LAN(Local Area Network)または有線LANを通じてコントローラ42から画像データを受信するとともに、表示装置20の表示領域20Rを最大で4つの区画に分割し、各区画に画像を表示させる。
【0044】
コントローラ42は、正面カメラ31、背面カメラ32、右側カメラ33、および左側カメラ34によりそれぞれ撮影された画像のデータを無線LANまたは有線LANを通じて受信し、必要に応じて画像処理を行った後、多画面分割ユニット41を介して表示装置20へと送信する。コントローラ42は、カメラ31~34で撮影された画像以外の画像、例えば、インターネットのコンテンツを表示装置20に表示させることもできる。
【0045】
コントローラ42は、メモリ、演算処理部、および入出力部等を備えたコンピュータである。コントローラ42が、多画面分割ユニット41の機能を含んで構成されている場合は、コントローラ42を表示装置20に直接接続することができる。
【0046】
業務支援システム1は、同一座席25に対応する表示装置20およびカメラ31~34の1つのグループにつき1台の制御装置40、つまり合計で3台の制御装置40を備えていてもよいし、3つのグループのそれぞれの表示装置20およびカメラ31~34を制御装置40によりグループ毎に識別できる場合は、1台の制御装置40のみを備えていてもよい。
【0047】
コントローラ42は、記憶装置50から読み出されて実行されるプログラムの処理モジュールとして、撮影画像処理部421と、表示画像選択部422と、顧客カルテDB(データベース)処理部423と、施術前にヘアカラーをシミュレーションするためのヘアカラーシミュレーション部424とを含む。
【0048】
撮影画像処理部421は、カメラ31~34によりそれぞれ撮影された画像のデータから表示に適切な範囲を切り出したり、画像の明るさを調整したりといった処理を行う。
また、撮影画像処理部421は、制御装置40に録画モードが設定されている場合は、カメラ31~34によりそれぞれ撮影された画像データを記憶装置50に記憶させることができる。記憶させる画像データは、コマ送りの静止画でもよいし、動画でもよい。カメラ31~34のいずれかにマイクが搭載されている場合は、画像と共に音声も記録される。
記憶装置50の容量に応じて、現在時刻から所定時間遡った時刻までの画像データを記憶装置50に記録させることができる。過去の画像は、選別されて別途記憶装置50に記録されない限りは、随時最新の画像により上書きされる。
記録される画像データの画質を必要に応じて下げることによりデータサイズを抑えることができる。
【0049】
表示画像選択部422は、タッチパッドやリモートコントローラ等による操作を受けて、いずれも最新の正面画像I01、背面画像I02、右側画像I03、および左側画像I04のうちの少なくとも1つを表示領域20Rに選択的に表示させる。
図6(a)および
図4は、画面分割数が2であり、正面画像I01および背面画像I02を同時に表示させた例に該当する。
図6(b)は、画面分割数が4であり、正面画像I01、背面画像I02、右側画像I03、および左側画像I04の全てを同時に表示させた例に該当する。
【0050】
なお、表示画像選択部422により、正面画像、背面画像、右側画像、および左側画像のうちの2つ以上の画像を順次、表示領域20R全体に亘り表示させるようにしてもよい。つまり、表示領域20Rへの画像表示が、一定の時間間隔で、繰り返し切り替わる。
【0051】
業務支援システム1が、カメラ31~34と、画面分割表示や画像順次切り替え表示が可能な制御装置40とを備えていることにより、制御装置40は、表示領域20Rへの画像表示に係る多様な表示モードを有している。特に、背面カメラ32により撮影された背面画像をリアルタイムに表示領域20Rの少なくとも一部に表示させた状態で後頭部の髪のカットを行うことができることが業務支援システム1の特徴の一つである。
【0052】
顧客カルテDB処理部423は、画像データを含む顧客カルテ情報をデータベースとして編成し、情報の追加、蓄積データからの検索等を行う。顧客カルテDBは、例えば、
図7に示すように、顧客毎に紐付けて、来店日、施術完了後の正面画像および背面画像、施術内容、および担当美容師等の情報を蓄積したもので、次回の来店時に、希望するヘアスタイルや、行う施術を決める際の便宜とするものである。
【0053】
ヘアカラーシミュレーション部424は、カラー選択部424Aと、模擬画像表示部424Bとを含む。
カラー選択部424Aは、例えば、
図8(a)に示すように、ヘアカラーの仕上がり後の複数の色見本を表示領域20Rに表示させ、ヘアカラーの施術に用いる色の選択を促す。
例えばタッチパッドにより画面上の「次へ」ボタンが押されると、模擬画像表示部424Bは、例えば、
図8(b)に示すように、選択された色の着色が髪の範囲に施された顧客Cの画像(少なくとも正面画像)を画像処理により生成し、ヘアカラーを模擬した画像として表示領域20Rに表示させる。
模擬画像表示部424Bは、好ましくは、顧客の髪質や地毛の色、髪の量等のデータの入力に基づいて、模擬画像における着色部の色を補正し、補正後の模擬画像を表示領域20Rに表示させることが好ましい。
【0054】
図8(b)に示す例では、選択されている4色の模擬画像が、4分割された表示領域20Rのそれぞれの区画に表示される。模擬画像の生成に用いられる画像は、正面カメラ31等により顧客Cを撮影した最新の画像が用いられることが好ましい。ヘアカラー施術前の最新の画像に基づいて模擬画像が生成されることにより、ヘアカラーの前にカットやパーマが行われた場合でも、現在の髪形に即して適切なシミュレーションを提供することができる。
【0055】
4色のうち、タッチパッド等により1色を選択すると、模擬画像表示部424Bは、最新の正面画像、背面画像、右側画像、および左側画像を用いて、
図8(c)に示すように、当該色を髪の範囲に着色した4つの画像を生成し、表示領域20Rに表示させる。
なお、色見本の表示画面(
図8(a))において、1色のみが選択された場合は、
図8(b)の画面表示を省いて、
図8(c)の画面が表示されるようにしてもよい。
【0056】
〔施術の流れの一例〕
図9を参照し、施術開始前のカウンセリングから施術完了までの流れの一例を説明する。
施術前のカウンセリングにおいて、美容師は顧客の希望や相談事項を聞き取り、それに基づいて、例えば、カットにより除去する髪の長さ、パーマを掛ける範囲等の施術内容を確認する(ステップS01)。
そうしたカウセリングの際には、顧客カルテDB処理部423により顧客番号等の顧客ID(identifier)に紐づく情報を検索して、前回の来店日、あるいは来店履歴から選択された日における施術完了後に撮影された画像を表示領域20Rに表示させることができる。
【0057】
つまり、顧客カルテDB処理部423は、記憶装置50から顧客カルテDBを読み出し、検索の結果、例えば
図7に示すように、過去の来店時における施術完了後の画像がDBに登録されていれば、例えば
図6(a)に示すように正面画像および背面画像を表示させたり、あるいは、
図6(b)に示すように正面画像、背面画像、右側画像、および左側画像を表示させたりすることができる。表示領域20Rに表示された過去の画像を参考にして、今回行う施術内容を決めることができる。
図示を省略するが、過去の画像と、カメラ31~34により撮影した現在の画像とを表示領域20Rに並べて表示し、髪の長さ等を比較することも可能である。
【0058】
カウンセリングにより、顧客と美容師が今回行う施術内容に合意したならば、表示領域20Rには、カメラ31~34により撮影された顧客の最新の画像を表示させ、タッチパッドやリモートコントローラによる画像選択操作の方法を顧客に伝えた上で、施術を開始する(ステップS02)。このとき、例えば、正面画像と、任意に選択した他の画像とを表示させることができる。
【0059】
なお、顧客の要望等により、施術開始前に撮影した画像を記憶装置50に保存することができる。
【0060】
本例では、まずヘアカットが行われる。ヘアカットの工程において、後頭部の髪の長さや量の大勢が決まる重要な局面に至ったならば(ステップS03でYes)、美容師は、正面からは見えない背面の画像を表示させて後頭部のカットを行うことを顧客に伝え、例えば美容師による表示装置20のタッチパッドの操作により、後頭部ヘアカット中の背面画像表示モードを選択する(ステップS04)。このモード選択により、それまでは背面画像が表示されていなかったとしても、背面カメラ32により撮影された最新の背面画像が、好ましくは表示領域20Rの全体に亘り表示される。当該モードでは、背面画像への注視を顧客に促すため、表示画像選択部422は、タッチパッドやリモートコントローラの操作による他の画像への切り替え処理を無効化することが好ましい。つまり、表示領域20Rにおける画像表示を背面画像が表示された状態にロックするとよい。
【0061】
後頭部のヘアカットは、顧客の直接の目視によっては見えない後頭部の髪の状態を顧客の目前の表示装置20に提示しながら、後頭部のヘアカット終了まで(ステップS05でYes)行われるので、切除する髪の長さや量に関する顧客と美容師との認識のミスマッチを回避して、双方とも安心した状態で後頭部のヘアカットを行うことができる。
【0062】
後頭部の髪の長さや量の大勢に関わるカットを終えたならば(ステップS05でYes)、美容師によるタッチパッド等の操作により、後頭部ヘアカット中の背面画像表示モードを終了する。そして、例えば、正面画像と、任意に選択した他の画像とを表示させて(ステップS06)ヘアカットを続行する。
なお、側頭部の髪も顧客には見え難いので、側頭部のヘアカットを行う間に亘り、側方の画像、つまり右側画像または左側画像、あるいはその両方を表示領域20Rにおいて顧客に提示することが好ましい。このとき、必要に応じて、表示領域20Rにおける画像表示を側方画像にロックするとよい。
【0063】
ヘアカットの終了後、必要に応じて、例えばパーマやヘアカラー等の他の施術が行われる。
本例では、ヘアカットに続いてヘアカラーが行われる(ステップS07でYes)。ヘアカラーを実施するステップ(ステップS09)に先立ち、上述したヘアカラーシミュレーション部424により、ヘアカラーの施術後を模擬した顧客の画像を表示領域20Rに表示させることで、施術に用いるカラーを決定することができる(ステップS08)。
【0064】
ヘアカラーが完了したならば、洗髪、ヘアブロウ、微調整用のカット、ヘアセット等の仕上げが行われる(ステップS10)。
施術の最後には、表示領域20Rに少なくとも背面画像を表示させて顧客の確認を得る。例えば、正面画像および背面画像を表示させ(ステップS11)、次いで右側画像および左側画像を表示させるとよい(ステップS12)。従来施術の最後に行われる合わせ鏡による後頭部の髪の確認は不要である。施術中においても背面画像を表示領域20Rに表示させているので、最後の確認は簡単で足りる。
【0065】
以上により、施術の全ての工程が完了する。顧客の了解を得て、施術完了後に顧客を撮影した画像を顧客カルテDB処理部423により顧客カルテDBに登録し、画像データおよび顧客カルテDBを撮影画像処理部421により記憶装置50に保存する。施術開始前に撮影された画像が保存されている場合は、施術完了後の画像と併せて、顧客カルテDBに登録することができる。施術中に録画されたデータは、撮影画像処理部421により記憶装置50から削除することができる。
顧客カルテDBに登録される施術完了後の画像には、少なくとも正面画像が含まれる。好ましくは背面画像が含まれ、より好ましくは右側画像および左側画像が含まれる。
【0066】
〔本実施形態による主な効果〕
以上で説明した本実施形態の美容室用の業務支援システム1によれば、顧客からは見えない後頭部を撮影した背面画像を表示装置20により顧客に提示しながら後頭部のヘアカットを行うことができる。そのため、後頭部確認の常套手段として合わせ鏡による確認を施術中に頻回に亘り行わずとも、顧客に後頭部の髪の状態を見てもらいながら、短すぎたり長すぎたりすることなく要望通りに施術を提供することができる。こうした美容師と顧客とのコミュニケーションから、双方の信頼関係を醸成して、顧客の次回の来店や、新規顧客の紹介に繋げることができる。
【0067】
背面カメラ32および表示装置20の利用によれば、後頭部の切除する髪の長さ等を決める際に顧客の姿勢に合わせて合わせ鏡用の手鏡の位置を固定し、手鏡に映る後頭部の像を顧客に慎重に見せるといった手順を省きながら、効率よく施術を行うことができる。そのため、施術提供時間の短縮、および施術待ち時間の短縮に繋げることができる。
【0068】
加えて、美容室用業務システム1は、中古市場等から容易に調達可能なコンテナ10を筐体として備えているので、カメラ31~34や表示装置20等を設置するためだけに壁や支柱を追加することなく、コンテナ10の側壁131,132における任意の箇所に、特段の位置の制約なく、しかも安定して支持された状態にカメラ31~34や表示装置20等を設置することができる。そのため、法上の建築確認が必須の通常店舗を建造する場合と比べて総合的なコストを抑えながら、コンテナ10の内部のほぼ全体を美容室の室内空間として待合スペース16および施術スペース17等を空間効率よく収めて、需要が見込める適宜な場所に短期間で出店することができる。かかるコンテナ型美容室は、通常店舗と比べ、イベント会場などに短期間移設したり、商圏の変化に応じて場所を移したりすることを容易に行うことができる。
【0069】
また、本実施形態のコンテナ10は規格品であるため、同一規格のコンテナ10における同一の箇所あるいは類似の箇所に表示装置20やカメラ31~34等を組み込んだ複数個のコンテナ型美容室を容易に、製造数によるコストメリットを得ながら製造することができる。さらに、コンテナ10を並べたり積み重ねたりして、店舗の座席数を増加させることも容易である。
【0070】
以上より、本実施形態の美容室用業務支援システム1は、美容サービスに関する要望や不満、例えば、前回来店時のヘアスタイルを再現できない、施術の最後で合わせ鏡により行われる後頭部の髪の確認時にイメージと違っていて驚く、ヘアカラー後の髪色をイメージし難いといった事柄について、表示装置20に顧客の過去の画像、現在の画像、あるいは施術をシミュレーションした模擬画像を表示させることで解決に導くことができ、コンテナ10の利用によりコストを削減して顧客に還元することもできるので、顧客の満足を得て美容事業を有利に進めることができる。
【0071】
美容室用業務支援システム1は、長手方向D1の一端にドア12を備えたコンテナ10の他、例えば、第2側壁132の位置に開口部およびドアを備えたサイドオープンコンテナにも適用することができる。また、船舶用コンテナに限らず、建築用コンテナ等の他のコンテナにも適用可能である。
【0072】
〔第1実施形態の第1変形例〕
図10(a)に示す表示装置20-1、および
図10(b)に示す表示装置20-2のいずれも、施術中に自身の正面画像を見続けるよりは、雑誌を読んだり他の画像コンテンツを見たりしたいという顧客Cの需要に応えるものである。
表示装置20-1,20-2のいずれも、画像が表示される領域として、着座した顧客Cの正面に配置される顧客側領域201と、顧客Cの視線(矢印で示す)から外れて美容師Hに向けて配置される美容師側領域202とを有している。
【0073】
表示装置20-1における顧客側領域201と美容師側領域202との境界Bには、目隠し用の板22が設けられている。板22は、表示装置20-1の表面に対して交差(特に、直交)する向きに突出している。
表示装置20-2は、顧客側領域201と美容師側領域202との境界Bで、顧客Cに向けて凸の向きに屈曲、または湾曲している。
【0074】
表示装置20-1または表示装置20-2に画像を表示させる図示しない制御装置は、
図10(c)に示すように、施術中における顧客側領域201への正面画像の表示をオフにする、または、
図10(d)に示すように、顧客側領域201に他の画像を表示させる正面画像非表示モードを備えている。
顧客側領域201には顧客の画像が表示されていなくても、施術中の顧客の正面画像や他のアングルの画像を美容師側領域202に表示させることができるので、美容師による施術に支障はない。
顧客Cは
図10(d)に示すように、施術中にタッチパッドを用いて例えばインターネットショッピング等を楽しむことができる。勿論、顧客側領域201に自身の画像を表示させて施術の進捗状態を確認することが可能である。
【0075】
〔第1実施形態の第2変形例〕
制御装置40(
図5)は、顧客番号から顧客カルテDBの顧客データを識別することに代えて、顧客を撮影したデータから顧客カルテDBの顧客データを識別することも可能である。
その場合、コントローラ42は、プログラムの処理モジュールとして、例えば、正面カメラ31により撮影された正面画像のデータと、記憶装置50から読み出された顧客カルテDBに登録されている正面画像データとを照合し、人物の顔を識別する公知技術により顧客を識別可能に構成されている顔認証部(図示しない)を備えることができる。
【0076】
上記顔認証部を備えていることにより、顧客番号等の確認、入力を行うことなく、顧客カルテDBの顧客の顔画像のデータから容易に顧客を識別することができるので、顧客を待たせずに、すぐにカウンセリングを開始することができる。なお、顔画像の自動的な識別に加え、必要に応じて、顧客から聞き取った氏名等と、顧客カルテDBに登録されている氏名等との照合を行ってもよい。
顔認証部により識別された顧客について、顧客カルテDB処理部423により、顧客カルテDBの顧客データ、例えば、前回の来店日における施術完了後に撮影された画像を表示領域20Rに表示させることが可能である。
【0077】
[第2実施形態]
次に、
図11および
図12を参照し、本発明の第2実施形態に係る美容室用業務支援システム2を説明する。
美容室用業務支援システム2は、背面カメラ32、右側カメラ33、および左側カメラ34と、可搬型の表示装置としてのタブレット28と、制御装置60とを備えている。
第2実施形態の美容室用業務支援システム2は、コンテナ10の壁等に設置される表示装置20に代えて、タブレット28を使用し、かつ、正面カメラ31に代えて、タブレット28に備わる内蔵カメラ281を使用するものである。また、タブレット28に備わるタッチパッドを、タブレット28の表示領域28Rにおける表示の状態等を操作する手段として使用可能である。それらの点を除いて、第2実施形態の美容室用業務支援システム2は、第1実施形態の美容室用業務支援システム1とほぼ同様に構成されており、ほぼ同様の作用を得ることができる。
制御装置60のコントローラ42は、第1実施形態の第2変形例で説明した顔認証部と同様に構成されている顔認証部425を備えていることが好ましい。
【0078】
顧客は、施術中にタブレット28に表示される画像を見ることができるので、顧客の正面の壁に表示装置20が設置されている必要はない。そのため、正面の壁には、必要に応じて図示しない鏡を設置することができる。
【0079】
タブレット28は、その具体的な構成の説明を省略するが、演算処理装置、メモリ、記憶装置、表示領域28Rを含む入出力手段、および通信手段等を備えたパーソナルコンピュータに相当する。タブレット28に代えて、ノート型のパーソナルコンピュータや、スマートフォン等を用いることも可能である。タブレット28は、美容室が所有するものであっても、顧客が所有するものであってもよい。
【0080】
タブレット28には、コントローラ42に導入されているプログラムと協働して動作可能に構成されているプログラム(アプリケーション)が導入されている。このプログラムは、タブレット28への背面画像等の表示、タッチパッドによる表示画像の切り替え、ヘアカラーシミュレーション等を提供する顧客サービス用プログラムであり、例えばweb(World Wide Web)サーバからタブレット28にダウンロードすることができる。
【0081】
なお、タブレット28には、必ずしも顧客サービス用プログラムが導入されている必要はない。上記顧客サービス用プログラムにより提供されるサービスは、クラウドサービスとして、タブレット28に備わるwebブラウザにより利用可能なものであってもよい。
【0082】
顧客サービス用プログラムを起動し、顧客毎の識別IDによるログイン、あるいは、顔認証部425による顔画像のデータの識別に基づく個人認証を経ることで、当該プログラムにより提供されるサービスを使用することができる。顧客サービス用プログラムを動作させている間は、タブレット28は、例えば無線LAN(Local Area Network)により、コントローラ42とデータの送受信が可能に接続されている。
【0083】
制御装置60は、内蔵カメラ281により施術完了後に撮影された少なくとも正面画像のデータを顧客毎に紐付けて記憶装置50に保存させる。
【0084】
制御装置60は、内蔵カメラ281により撮影される正面画像、背面カメラ32により撮影される背面画像、右側カメラ33により撮影される右側画像、および左側カメラ34により撮影される左側画像のうちの少なくとも1つを表示画像選択部422により表示領域28Rに選択的に表示させることが可能なモードを有する。上記顧客サービス用プログラムが動作している間等、顧客サービスの利用中は、制御装置60を当該モードに設定することができる。当該モード中は、内蔵カメラ281により撮影された画像のデータがコントローラ42に送信される。そのため、コントローラ42は、内蔵カメラ281、背面カメラ32、右側カメラ33、および左側カメラ34のそれぞれから送信される画像データ(好ましくは動画)を表示領域28Rの少なくとも一部に選択的に表示させることができる。
【0085】
顧客は、施術中に表示領域28Rを見ながら、タッチパッドに相当する表示領域28Rへの指や入力デバイスによる入力により、表示領域28Rに表示させる画像を切り替えることができる。また、顧客によるタッチパッドへの入力により、ヘアカラーを選択して模擬画像を表示領域28Rに表示させることができる。
【0086】
ここで、別のタブレットやスマートフォン等の操作デバイスに導入されている顧客サービス用プログラム、あるいはそうしたデバイス上で利用可能なクラウドサービスとしての顧客サービス、あるいはリモートコントローラにより、美容師が、タブレット28の表示画像を切り替えたり、タブレット28におけるメニューの選択操作等を行ったりしてもよい。施術中にタブレット28を操作する主体は、顧客および美容師のいずれか一方または両方に適宜に変更することができる。
【0087】
美容室業務支援システム2によれば、例えば、
図9に示す例と同様にして施術を行うことができる。
カウンセリングを開始する際には、上記第1実施形態の第2変形例とほぼ同様に、顔認証部425により、内蔵カメラ281により撮影された正面画像のデータと、記憶装置50から読み出された顧客カルテDBに登録されている正面画像データとの照合により、顧客カルテDBの顧客データを識別することで、すぐにカウンセリングを開始することができる。
【0088】
後頭部の頭髪をカットするにあたっては、その旨を美容師から顧客に伝え、例えば美容師によるタブレット28の操作、あるいは、タブレット28と同様に顧客サービスを利用中の他のタブレットやスマートフォン、あるいはリモートコントローラ等を美容師が操作することで、第1実施形態の施術処理例(
図9)のステップS03~S05と同様に、背面画像表示モードを制御装置60に選択することができる。
つまり、背面画像表示モードの選択により、それまでは表示領域28Rに背面画像が表示されていなかったとしても、背面カメラ32により撮影された最新の背面画像、特に背面動画を表示領域28Rに表示させることができる。背面画像表示モードでは、背面画像への注視を顧客に促すため、表示画像の切り替え処理を無効化することが好ましい。後頭部のヘアカットが終了したならば、タブレット28におけるパスワードの入力、あるいは他のタブレット等の操作により、タブレット28における表示画像の切り替えのロックを解除することができる。
【0089】
第2実施形態によれば、タブレット28に備わる内蔵カメラ281やタッチパッドを利用することにより、美容室用業務支援システム2の導入に要するコストを抑えることができる。それでいて、第1実施形態と同様に、背面画像や側方からの画像を顧客に見てもらいながら、顧客の要望通りに施術を提供することができる。
また、タブレット28等の可搬型の表示装置を用いることによれば、壁に設置される表示装置20や鏡は必要でなく、鏡等を設置するための壁も必要でないため、美容室用業務支援システム2は、屋外における美容サービスの提供にも適している。
【0090】
上記以外にも、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
本発明は、例えば、以下の改変を含む。
制御装置40,60は、複数のカメラ31~34により撮影された画像データから3D(three dimensions)画像を生成し、顧客の頭部の3D画像を表示させるものであってもよい。
【0091】
制御装置40,60は、カメラ31~34によりリアルタイムに得られる画像データの画像処理により美容師Hが操る鋏の位置を特定し、鋏により髪がカットされている箇所が常に表示領域20R,28Rに表示されるようにしてもよい。その場合は、上述のフロー(
図9)における後頭部ヘアカット中の背面画像表示モードの選択(ステップS05)や、当該モードの終了(ステップS06)を美容師が判断することなく、自動的に、頭部における施術対象の箇所が表示装置20,28に表示されることを実現することができる。
【0092】
美容室用業務支援システム1,2は、必ずしもコンテナ10に設置される必要はなく、建物に入居する通常の美容室の部屋に設置することができる。
【符号の説明】
【0093】
1,2 美容室用業務支援システム
10 コンテナ
11 フレーム
11A 梁
12 ドア
13 板材
14 コーナー金物
16 待合スペース
17 施術スペース
18 非施術スペース
20,20-1,20-2 表示装置
20R,28R 表示領域
21 額縁部材
22 板
25 座席
26 棚
28 タブレット(可搬型の表示装置)
27 シャワー用設備
31 正面カメラ
32 背面カメラ
33 右側カメラ
34 左側カメラ
40,60 制御装置
41 多画面分割ユニット
42 コントローラ
50 記憶装置
101 床材
102 ポーチ
103 内側ドア
104 壁
130 屋根
131 第1側壁
132 第2側壁
133 第3側壁
150 天井パネル
151,152 壁パネル
161 椅子
162 デジタルサイネージ
181 トイレスペース
182 施術準備スペース
201 顧客側領域
202 美容師側領域
281 内蔵カメラ
421 撮影画像処理部
422 表示画像選択部
423 顧客カルテDB処理部
424 ヘアカラーシミュレーション部
424A カラー選択部
424B 模擬画像表示部
425 顔認証部
B 境界
C 顧客
H 美容師
D1 長手方向
I01 正面画像
I02 背面画像
I03 右側画像
I04 左側画像
L1 ペンダント照明
L2 スポットライト
S01~S12 ステップ